説明

蛍光体含有ガラス板及び発光装置の製造方法

【課題】耐湿性が劣る蛍光体の劣化を防止するとともに、耐熱性,耐光性及び非ガス透過性に優れた発光装置を得ること。
【解決手段】発光素子を蛍光体含有ガラスにより封止する発光装置の製造方法において、ガラス粉末と、少なくとも硫化物系蛍光体及びアルミン酸塩系蛍光体の一方を有する蛍光体粉末とを混合し、該蛍光体粉末が該ガラス粉末に分散された混合粉末を生成する混合工程と、前記混合粉末を加熱・軟化させて一体化させた後に、該混合粉末を固化して蛍光体分散ガラスを生成するガラス生成工程と、前記蛍光体分散ガラスをホットプレス加工により発光素子が搭載された搭載部に融着し、前記発光素子を前記搭載部上で前記蛍光体分散ガラスにより封止するガラス封止工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を均一に分散させた蛍光体含有ガラス板の製造方法、及び、これを用いて発光素子を封止する発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色光を発する発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)ランプが実用化されており、照明機器や液晶ディスプレイのバックライト等の用途に利用されている。
一般的に、白色LEDランプは、青色光を発するIII族窒化物系化合物半導体からなる青色LEDチップと、このLEDチップからの発光光を励起光として黄色光の波長変換光を発する黄色蛍光体の粉末を含有させたエポキシ系やシリコーン系等の透明樹脂によりLEDチップを封止して製造される。
【0003】
また、上記の白色LEDランプより高い演色性を得るために、黄色蛍光体の粉末に加え、緑色蛍光体や赤色蛍光体の粉末を透明樹脂に含有させてLEDチップを封止する白色LEDランプも提案されている。
【特許文献1】特開2006−253336号公報
【特許文献2】特開2002−203989号公報
【特許文献3】特開2003−258308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の白色LEDランプでは、透明樹脂を封止材として使用しているため、LEDチップの発光光や熱等によってLEDチップ近傍の透明樹脂が黄変してしまい、光取り出し効率が経時的に劣化する。特に、高いエネルギーを有する青色光等を発する短波長光LEDチップを使用する場合に透明樹脂の黄変は顕著に表れる。
【0005】
また、透明樹脂はガス透過性を有するため、透明樹脂に含有された蛍光体の粉末が大気中のガス(特に、水分)と反応等により、蛍光特性が経時的に劣化するものが多い。この特性の劣化は、加水分解しやすく、耐湿性に劣る硫化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体に顕著に表れる。これらの蛍光体は高励起効率の緑色蛍光体や赤色蛍光体として有用であるが、上記の理由により、その特性を維持することが困難であった。
【0006】
このように、透明樹脂による封止は、LEDランプに要求される耐熱性,耐光性及び非ガス透過性の特性を十分には満たしているとは言い難い。
【0007】
透明樹脂により生じるこれらの問題を解決する為に、透明樹脂にない耐熱性,耐光性及び非ガス透過性を有するガラスによりLEDチップを封止するガラス封止LEDランプが開発されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0008】
ガラス封止LEDランプにおいて白色光を得る場合、透明樹脂の場合と同様に、一般的に、蛍光体の粉末をガラスに含有させる方法が考えられる。この場合、LEDランプからの出射光の色むらを抑制するために、蛍光体を均一に分散させることが望ましい。しかしながら、ガラスは軟化が始まる温度(屈伏点(At))においても高粘度であるため、蛍光体が均一に分散することは現実的に難しい。蛍光体をガラスに均一に分散できるだけの低粘度とするためには、1000℃程度の温度まで加熱する必要がある。しかしながら、このような高温下では、蛍光体とガラスが反応してしまい、蛍光体はその蛍光特性を失う。
【0009】
ガラスに蛍光体を均一に分散させるために、ガラス粉末と無機蛍光体粉末とを樹脂バインダに添加して混合し、加圧成型により所望の形状の予備成型体を作製した後、予備成型体を焼成しつつ樹脂バインダを除去して蛍光体含有ガラスを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、樹脂バインダの残渣により強度や透明度等のガラス特性が劣化することが懸念される。また、焼成時の残渣の気化により、ガラス内に気泡を生じてしまい、ガス透過性を有する。そのため、耐湿性に劣る蛍光体に対し、その蛍光特性の劣化を抑制することができない。
【0010】
そこで、比較的低温の温度下で形成可能なゾルゲルガラスの前駆体(溶媒:アルコール、溶質:金属アルコキシド、からなる溶液)に蛍光体の粉末を含有させて白色光を得ることが考えられる。しかしながら、ゾルゲルガラスは多孔質であり、ガス透過性を有するため、耐湿性に劣る蛍光体に対し、その蛍光特性の劣化を抑制することができない。また、ゾルゲルガラスは、ガラス化の前後において体積変化が大きいので、厚膜を形成するとクラックが生じる。このような理由から、ある程度の膜厚が必要とされる封止材として使用することは困難である。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を鑑みてなされたものであって、耐湿性が劣る蛍光体の劣化を防止するとともに、耐熱性,耐光性及び非ガス透過性に優れた発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、発光素子を蛍光体含有ガラスにより封止する発光装置の製造方法において、ガラス粉末と、硫化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体及びケイ酸塩蛍光体の少なくとも1種を有する蛍光体粉末とを混合し、該蛍光体粉末が該ガラス粉末に分散された混合粉末を生成する混合工程と、前記混合粉末を加熱・軟化させて一体化させた後に、該混合粉末を固化して蛍光体分散ガラスを生成するガラス生成工程と、前記蛍光体分散ガラスをホットプレス加工により発光素子が搭載された搭載部に融着し、前記発光素子を前記搭載部上で前記蛍光体分散ガラスにより封止するガラス封止工程とを含むことを特徴とする発光装置の製造方法により解決される。
【0013】
このような製造方法を採用した発光装置は、耐湿性に劣る硫化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ケイ酸塩蛍光体が非ガス透過性のガラス中に含有されているので、蛍光体の特性の劣化が抑制される。尚、これらの蛍光体は、粉末ガラスを軟化により一体化する温度に対し充分な耐熱性を有するため、ガラス溶融による特性の劣化を生じることはない。また、これらの蛍光体が均一に分散したガラスにより発光素子が封止されているので、発光素子から発せられる発光光と上記の蛍光体から発せられる波長変換光との混合光に色むらが生じにくい。
【0014】
上記の製造方法では、前記ガラス封止工程において、複数の発光素子が前記搭載部上に配置され、前記ガラス封止工程の後に、個々の発光装置に個片化する個片化工程を有することが、量産性を向上させるために好ましい。
【0015】
また、前記ガラス封止工程又は前記個片化工程の後に、ガラス封止部の表面に前記蛍光体粉末とは異なる蛍光体を含有する蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程を有することが、ガラス溶融温度までの耐熱性を有さない蛍光体を利用できるため好ましい。
【0016】
さらに、前記ガラス生成工程にて生成された前記蛍光体分散ガラスを板状に加工する板状加工工程をさらに含み、前記ガラス封止工程にて、板状に加工された前記蛍光体分散ガラスを平坦な前記搭載部に融着することが、蛍光体分散ガラスの量産性の向上のために好ましい。
【0017】
上記の課題は、ガラス粉末と、硫化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体及びケイ酸塩蛍光体の少なくとも1種を有する蛍光体粉末とを混合し、該蛍光体粉末が該ガラス粉末に分散された混合粉末を生成する混合工程と、前記混合粉末を加熱・軟化させて一体化させた後に、該混合粉末を固化して蛍光体分散ガラスを生成するガラス生成工程と、該混合粉末を固化して蛍光体分散ガラスを生成するガラス生成工程と、前記蛍光体分散ガラスを板状にする板状加工工程ことを特徴とする蛍光体含有ガラス板の製造方法により解決される。
【0018】
上記の製造方法では、蛍光体の蛍光特性を失わせず、均一に分散した蛍光体ガラス板を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発光装置の製造方法によれば、耐湿性が劣る蛍光体の劣化を防止するとともに、耐熱性,耐光性及び非ガス透過性に優れた発光装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1から図7は本発明の実施形態を示し、図1はLEDランプの断面図であり、図2は本実施の形態で用いるLEDチップの断面図である。
【0021】
図1に示すLEDランプ(発光装置)1は、フリップチップ型のLEDチップ(発光素子)2と、LEDチップ2を搭載する配線基板3と、配線基板3に形成された配線4と、LEDチップ2を封止するとともに配線基板3と接着され蛍光体7を含有するガラス封止部6とを有する。
【0022】
LEDチップ2は、図2に示すように、結晶成長基板20の表面に、窒化ガリウム系化合物半導体(Al1−X−YInGaN、0≦X≦1,0≦Y≦1,0≦X+Y≦1)からなるバッファ層21と、n型層22と、発光層23と、p型層24を有機金属気相成長法(MOVPE法)により順次積層して形成されている。このLEDチップ2は、700℃以上でエピタキシャル成長されているため、耐熱温度は600℃以上であり、低融点ガラスを用いた封止加工における加工温度である500℃以上の耐熱性を有している。また、LEDチップ2の電極として、p型層24の表面のほぼ全面に設けられるp側電極25及びp側電極25上の一部に設けられたp側パッド電極26が形成されており、LEDチップ2の所定の領域をp型層24からn型層22までドライエッチングして露出させ、その底面のn型層22にn側電極27が形成されている。p側パッド電極26とn側電極27には、それぞれAuバンプ28が形成される。
【0023】
結晶成長基板20は、サファイア(Al),スピネル(MgAl),窒化ガリウム(GaN),炭化珪素(SiC),酸化ガリウム(Ga)等からなる。
【0024】
p側電極25は、p型層24と同等の熱膨張率を有するITO(Indium-Tin-Oxide)からなる。ITOは、窒化ガリウム半導体同等の熱膨張率(5×10−6/℃)と同等の熱膨張率であるため、LEDチップ2との熱膨張率差により生じるp側電極のLEDチップ2からの剥がれを抑制することができる。尚、LEDチップ2と配線基板3との間には、ガラスが充填されていない中空部5(屈折率:約1.0)が形成されている。従って、透明導電材料であるITO(屈折率:約2.0)を用いた場合も、これに接する中空部との屈折率差が大きく、臨界角が小さいため、発光層23から発せられる光は中空部とITOとの界面で結晶成長基板20の方向に反射されることになる。
【0025】
n側電極27は、バナジウム(V)/アルミニウム(Al)/金(Au)によって形成されている。n側電極27の配置は、図3(a)及び図4(a)に示すように、LEDチップ2の角部に形成してもよいし、図3(b)及び図4(b)の一辺の中央部に形成してもよい。
【0026】
LEDチップ2の熱膨張率(α)は、厚み方向の大部分を占める結晶成長基板の熱膨張率(α)と同等となっている。例えば、結晶成長基板としてサファイア基板を採用した場合、LEDチップ2のGaN層の熱膨張率は5×10−6/℃であるが、LEDチップ2全体としての熱膨張率はサファイア基板の熱膨張率(α)と同等の7×10−6/℃と同等となる。
【0027】
配線基板3は、アルミナ(Al)等のセラミックス基板からなり、厚さ0.25mmで1.0mm角に形成されている。アルミナの熱膨張率(α)が7×10−6/℃であり、LEDチップの熱膨張率(α)と同等となっている。図1(a)及び図1(c)に示すように、配線基板3の配線4は、基板表面に形成されてLEDチップ2と電気的に接続される表面配線41と、基板裏面に形成されて外部端子と接続可能な裏面配線42とを有している。表面配線41及び裏面配線42は、LEDチップ2の電極形状に応じてパターン形成されたタングステン(W)/ニッケル(Ni)/金(Au)を備えている。表面配線41と裏面配線42は、配線基板3を厚さ方向に貫通してWからなるビア43により電気的に接続されている。各ビア43は、配線基板3に平面視にて対角に配されている。
【0028】
ガラス封止部6は、図1(b)に示すように、ZnO−B−SiO−Nb−NaO−LiO系の低融点ガラス(以下、この組成の低融点ガラスを「低融点ガラスA」と表す。)からなり、緑色蛍光体7g,黄色蛍光体7y及び赤色蛍光体7rからなる蛍光体7の一方が均一に分散されている。尚、図1(b)では、A部の拡大断面図を示しているが、ガラス封止部6の任意の領域に対し、蛍光体7は均一に分散されている。緑色蛍光体7g及び赤色蛍光体7rは、硫化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体又はケイ酸塩蛍光体からなる。黄色蛍光体7yとしては、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet,YAl12:Ce3+)系蛍光体が挙げられる。
【0029】
硫化物蛍光体は、硫黄を蛍光体の母体に含む蛍光体であり、例えば、以下の蛍光体が挙げられる。
(AE)Ga:Eu2+ 緑色蛍光体
(AE)S:Eu2+ 赤色蛍光体
上記において、AEは、Ca,Srの少なくとも一種類である。
【0030】
アルミン酸塩蛍光体は、Alを母体とした蛍光体であり、例えば、以下の蛍光体が挙げられる。
(AE)M:Eu2+ 緑色蛍光体
上記において、AEは、Ca,Sr,Baの少なくとも一種類であり、Mは、B,Al,Gaの少なくとも一種類である。
【0031】
ケイ酸塩蛍光体は、SiOを母体とした蛍光体であり、例えば、以下の蛍光体が挙げられる。
(AE)MO:Eu2+ 橙色蛍光体
(AE):Ca,Sr,Baの少なくとも一種類である。
上記において、Mは、Si,Geの少なくとも一種類である。
【0032】
図1に示すように、ガラス封止部6は、配線基板3上に直方体状に形成され、厚さが0.5mmとなっている。ガラス封止部6の側面6aは、ホットプレス加工によって配線基板3と接着された板ガラスが、配線基板3とともにダイサーで個片化されることにより形成される。また、ガラス封止部6の上面6bは、ホットプレス加工によって配線基板3と接着された板ガラスの一面である。この低融点ガラスは、ガラス転移温度(Tg)が490℃で、屈伏点(At)が520℃であり、LEDチップ2のエピタキシャル成長層の形成温度よりも、ガラス転移温度(Tg)が十分に低くなっている。本実施形態においては、エピタキシャル成長層の形成温度よりも、ガラス転移温度(Tg)が200℃以上低くなっている。また、低融点ガラスの100℃〜300℃における熱膨張率(α)は6×10−6/℃である。熱膨張率(α)は、ガラス転移温度(Tg)を超えるとこれより大きな数値となる。これにより、低融点ガラスは約600℃で配線基板3と接着し、ホットプレス加工が可能となっている。また、ガラス封止部6の低融点ガラスの屈折率は1.7である。
【0033】
尚、低融点ガラスの組成は、ガラス転移温度(Tg)がLEDチップ2の耐熱温度よりも低く、熱膨張率(α)が配線基板3と同等であれば任意である。ガラス転移温度が比較的低く、熱膨張率(α)が比較的小さいガラスとしては、ZnO−SiO−RO系(RはLi、Na、K等のアルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1種)のガラス、リン酸系のガラス及び鉛ガラスが挙げられる。これらのガラスでは、ZnO−SiO−R2O系のガラスが、リン酸系のガラスに比して耐湿性が良好で、鉛ガラスのように環境的負荷物質を含有していないため、好適なガラス材料である。
【0034】
低融点ガラスは、一般に、樹脂において高粘度といわれるレベルより、桁違いに高い粘度で加工される。さらに、ガラスの場合には、屈伏点を数十℃超えても粘度が一般の樹脂封止レベルまで低くはならない。また、一般の樹脂成型時レベルの粘度にしようとすると、LEDチップの結晶成長温度を超える温度を要するもの、あるいは金型に付着するものとなり、封止・成形加工が困難になる。このため、10ポアズ以上で加工することが好ましい。
【0035】
ここで、ガラスの屈伏点と熱膨張率は、ガラスの結合力の要因が作用するため、相関関係があり、一般的に、屈伏点が低いと熱膨張率が大きくなるため、低融点ガラスは熱膨張係数が大きい。ガラスの熱膨張率(α)をセラミックス基板の熱膨張率(α=5ppm/℃〜10ppm/℃)と同等とする屈伏点は450℃以上となり、ガラスを均一に分散させることができる程度の粘度とするためには、その温度は1000℃以上となってしまい、蛍光体の蛍光特性を失ってしまう。また、ガラスがガラス状態でなく、固相(結晶)状態となりえる温度では、高温で低粘度の状態になるほど、結晶化により白濁しやすい。本発明では、ガラスと蛍光体とを粉体化し、屈伏点から200℃以内で高粘度の軟化状態でガラスを均一分散させるため、蛍光体の蛍光特性を失うことはなく、また、結晶化による白濁を生じないものとできる。
【0036】
蛍光体は、黄色蛍光体7y,赤色蛍光体7r及び緑色蛍光体7gからなる。本実施形態においては、黄色蛍光体7yとしてYAG系蛍光体が用いられ、赤色蛍光体7r及び緑色蛍光体7gは、硫化物蛍光体、アルミン酸蛍光体又はケイ酸塩蛍光体が用いられる。尚、赤色蛍光体7y及び緑色蛍光体は、そのいずれか1種のみを用いてもよい。
【0037】
このLEDランプ1の製造方法について、図5の工程説明図を参照しながら、以下に説明する。
【0038】
まず、低融点ガラスAを粉砕して、ふるいにより分級を施して、最小粒径が20μm、最大粒径が60μm、平均粒径が30μmのガラス粉末を生成する。尚、ガラス粉末の生成方法については、後述する。ガラス透明度このガラス粉末と平均粒径が10μmの複数種の蛍光体7r,7y,7gの粉末を所定の割合で混合し、蛍光体粉末7r,7y,7gがガラス粉末に均一に分散された混合粉末10を作製する。この段階で、平均粒径が20μmの光拡散性粉末を所定の割合で加え、ガラス粉末中に蛍光体粉末7r,7y,7gとともに均一に分散させてもよい。光拡散性粉末の材料としては、ジルコニア(ZrO),アルミナ(Al),シリカ(SiO)が挙げられる。このような光拡散性粉末を含有させるとLEDランプ1のガラス封止部6内の光拡散性が向上し、LEDチップ2の発光光と蛍光体7の波長変換光の混合性が向上し、LEDランプの出射光の色むらが更に抑制される。
【0039】
図6は蛍光体分散ガラスの生成工程及び加工状態を示す説明図であり、(a)は混合粉末から蛍光体分散ガラスを生成する加工装置を示し、(b)は混合粉末から生成された蛍光体分散ガラスを示し、(c)は得られた蛍光体分散ガラスを均一な厚みとなるように板状に薄片化した状態を示している。
【0040】
まず、ガラス粉末と蛍光体粉末の混合粉末にて生成された混合粉末10に荷重を加えながら溶融した後に、この混合粉末10を固化して蛍光体分散ガラス11を生成する。即ち、図6(a)に示すように、下台80の平坦な上面に、下台80上の所定領域を包囲する筒状の側面枠81を設けて、上方を開口した凹部を形成する。凹部82は上下にわたって同じ断面であり、凹部の断面形状に対応して形成された荷重治具83の下部が、凹部内で上下に移動可能となっている。この凹部に混合粉末10を入れた後、凹部内を加圧する荷重治具83をセットする。そして、空気雰囲気を、7.6Torrに減圧するとともに650℃に加熱し、荷重治具83を利用して20kg/cmの圧力を混合粉末10に加えてガラスを軟化させる。尚、ガラスの軟化条件は常圧、加圧なしでもよい。このように、屈伏点(At)から200℃以内の温度でガラスを軟化させることが好ましい。これを超えた温度でガラスを軟化させると、ガラスが固化する際にガラスが結晶化し、失透しやすくなる。この後、溶解した混合粉末10を冷却して固化することにより、図6(b)に示すような、光学的に影響が生じるサイズの残留気泡や白濁を生じることなく蛍光体7が分散された蛍光体分散ガラス11を得ることができる。ここで、光学的に影響が生じるサイズの残留気泡としては、300μm角のLEDチップ2に対して直径100μm以上の気泡であり、この気泡がLEDチップ2の近傍にあると、LEDチップ2から発した光がLEDチップ2へ再入射して発光効率の低下を招くおそれがある。生成された蛍光体分散ガラス11は、図6(c)に示すように、ガラス封止部6の厚さに対応するようスライスされて板状に加工される(板状加工工程)。本実施形態においては、ガラス封止部6の厚さは0.5mmである。
【0041】
尚、本実施形態においては、蛍光体分散ガラス11の生成に際してバインダを使用しない。これにより、樹脂バインダを利用して混合粉末を焼成するもののように、強度や透明度等のガラスの特性がバインダの残渣により劣化するようなことはない。また、LEDチップ2を封止した際に、気泡により気密性が損なわれるようなこともない。
【0042】
このようにして得られた蛍光体分散ガラス11は、溶解前に蛍光体7が分散されているのでほぼ均一に分散されることとなるが、具体的には、任意の{10×(蛍光体平均粒子幅)/(蛍光体含有体積比)1/3}3の体積で、蛍光体含有体積比が全体平均に対して50〜200%の範囲内が望ましく、80〜125%の範囲内であることがさらに望ましい。実際に得られた蛍光体分散ガラス11は、任意に直交する3方向で3等分することにより得られる9エリアの蛍光体7の含有体積比が80〜125%の範囲内となっており、蛍光体7が均一に分散されたものとなっている。尚、各エリアの蛍光体7の含有体積比は、90〜112%の範囲内となることがさらに望ましい。ここで、必要であれば、ガラスの粉砕度合いを高めて、蛍光体7の粒子と同等のサイズとすれば、よりミクロなエリアにおいて均一に分散させることができる。
【0043】
一方、蛍光体分散ガラス11とは別個に、ビア3aが形成された配線基板3を用意し、配線基板3の表面に配線に応じてWペーストをスクリーン印刷する。次いで、Wペーストを印刷された配線基板3を1000℃余で熱処理することによりWを配線基板3に焼き付け、さらに、W上にNiめっき、Auめっきを施すことで配線4を形成する(配線基板形成工程)。尚、多結晶アルミナ表面の粗面化は、配線4をファイン化する際に行う研磨による平坦化工程を省き、多結晶アルミナの粒界によるミクロな凹凸のある状態としてもよいし、ブラスト加工によって凹凸形成加工を施したものであってもよい。
【0044】
次に、配線基板3の配線4の表面配線41に複数のLEDチップ2を各Auバンプ28によって電気的に接合する(素子搭載工程)。
【0045】
その後、各LEDチップ2を搭載した配線基板3を下金型91、板状の蛍光体分散ガラス30を上金型92にセットする。下金型91及び上金型92にはそれぞれヒータが配置され、各金型91,92で独立して温度調整される。次いで、図7に示すように、略平坦な配線基板3の搭載面に蛍光体分散ガラス11を重ねて、下金型91及び上金型92を加圧することにより、ホットプレスする。これにより、LEDチップ2が搭載された配線基板3に蛍光体分散ガラス11が融着され、LEDチップ2は配線基板3上で蛍光体分散ガラス11により封止される(ガラス封止工程)。ここで、図7は、ホットプレス加工の状態を示す模式説明図である。本実施形態においては、20〜40kgf/cm程度として加圧により加工を行った。
【0046】
これにより、蛍光体分散ガラス30は配線基板3とこれらに含まれる酸化物を介して接着される。ホットプレス加工での低融点ガラスの粘度は10〜10ポアズとすることが好ましい。この粘度範囲とすることにより、粘度が低いことに起因するガラスの上金型92へ接合、ガラスの外部流出等を抑制して歩留まりを良好にすることができるとともに、粘度が高いことに起因するガラスの配線基板3への接合力低下、各Auバンプ28のつぶれ量の増大等を抑制することができる。
【0047】
また、上記のように、配線基板3は多結晶アルミナで表面が粗面状に形成されており、ガラス封止部6側の接合部の界面が配線基板3の表面に沿って粗面状に形成される。これは、ホットプレス加工時に圧力を加えるとともに、大気圧より低い減圧雰囲気で加工を行うことにより実現される。ここで、粗面化された多結晶アルミナの凹みにガラスが十分入り込む状態であれば、ホットプレス加工時の圧力条件や雰囲気の減圧条件は任意であり、ホットプレス時の加圧と雰囲気の減圧についていずれか一方だけ行って加工するようにしてもよいことは勿論である。この結果、ガラス封止部6と配線基板3との間にアンカー効果が生じ、ガラス封止部6と配線基板3との接合強度を高めることができる。
【0048】
ホットプレス加工のサイクルタイムを短縮するために、プレス前に予熱ステージを設けてガラス封止部6を予め加熱したり、プレス後に徐冷ステージを設けてガラス封止部6の冷却速度を制御するようにしてもよい。また、予熱ステージ及び徐冷ステージにおいてプレスすることも可能であり、ホットプレス加工時の工程は適宜に変更可能である。
【0049】
上記の工程を得て、複数のLEDランプ1が縦横方向に連結された状態の図7に示すようなLEDランプ前駆体13が作製される。この後、ガラス封止部6と一体化された配線基板3をダイサーにセットして、各LEDチップ2をダイシングして個片化することによりLEDランプ1が完成する(個片化工程)。ガラス封止部6及び配線基板3がともにダイサーによりカットされることで、配線基板3及びガラス封止部6の側面が同一面化する。
【0050】
更に、図8に示すように、LEDランプ1の外部接続端子44が配置される面以外の部分に蛍光体を含有させたゾルゲルガラスやシリコーン樹脂等の蛍光体層8を形成してもよい。この場合、BOS(Barium Orth Silicate,BaSiO)系蛍光体等の蛍光体を用いることができ、LEDランプ1の調光性を向上させることができる。このような蛍光体層を設ける場合、低融点ガラス中に蛍光体7yは混入させなくてもよい。
【0051】
このような製造方法により得られるLEDランプ1では、配線4を通じてLEDチップ2に電流を流すと、LEDチップ2から青色光が発せられる。LEDチップ2から発せられた青色光の一部はガラス封止部6内の蛍光体7により赤色光,緑色光,黄色光に変換される。そして、これらの光が混色し、LEDランプから白色光が放射される。
【0052】
ここで、ガラス封止部6内に均一に蛍光体7が分散されていることから、LEDチップ2から発せられる光を、放射される角度によらず均一に波長変換することができ、外部へ放射される光に色むらが生じることはない。
【0053】
また、ガラス封止部6内における気泡の発生が抑制されることから、ガラス封止部6内
で光が散乱反射することはなく、光取り出し効率を確保することができる。また、気泡によりLEDチップ2の気密性が損なわれることもない。
【0054】
ここで、混合粉末10におけるガラスの粒子サイズは、数μm〜200μmの範囲とすることが、粉砕時の不純物混入や物理的ダメージを避け、ガラス溶解時の残留気泡の発生を抑制し、かつ蛍光体7をガラス中に均一に分散するために望ましい。この結果、直径300μm以上の連続したエリアに蛍光体7が存在しないようなことがなくなる。
【0055】
また、本実施形態においては、荷重を加えながら混合粉末10を溶解するようにしたので、荷重を加えない場合よりも低い温度で粉末を溶解させることができる。また、屈伏点(At)付近での加工が可能であるため、不安定なZnO系のガラスを用いても安定的に結晶化を生じさせないものとすることができる。尚、荷重を加えずにガラス溶解を行っても蛍光体7を均一に分散させることができるし、プレス機を用いて50kgf/cmといった圧力を加えてガラスの溶解を行うようにしてもよい。尚、減圧雰囲気の程度、加圧の程度は、ガラスの特性に応じて適宜に設定することができる。また、雰囲気の減圧とガラスに対する加圧については必ずしも両方を行う必要はなく、減圧雰囲気と加圧のいずれか一方の条件下でガラスを溶解するようにしてもよいことは勿論である。
【0056】
また、ガラス封止部6として低融点ガラスAを用いたので、ガラス封止部6の安定性及び耐候性を良好とすることができる。従って、LEDランプ1が過酷な環境下等で長期間にわたって使用される場合であっても、ガラス封止部6の劣化が抑制され、光取り出し効率の経時的な低下を効果的に抑制することができる。さらに、ガラス封止部6が高屈折率でかつ高透過率特性のため、高信頼性と高発光効率の両立を実現できる。
【0057】
しかしながら、低融点ガラスAを用いても、所望の蛍光体の変換効率が得られない場合がある。そのため、本発明者は、その原因に調べるために下記の実験を行なった。
サンプルとして分級された低融点ガラスAのガラス粉末を、下記の3つの方法で作成した。
【0058】
まず、低融点ガラスAの組成となるように原材料となる種々の組成のガラス粉末を調合した。
【0059】
その後、第1のサンプルは以下の工程により作製した。まず、調合したガラス粉末を溶融させた後、大気中で固化させた。そして、固化したガラスを大気中でボールミルにより最大粒径が約100μm以下となるように粉砕し、ガラス粉末を作製した。次に、メッシュ目が60μmのふるいと20μmのふるいにかけることにより、最大粒径が60μm、最小粒径が20μmに分級されたガラス粉末を抽出した。
【0060】
2番目及び3番目のサンプルは、調合したガラス粉末を溶融させた状態で、常温水へ滴下し、熱衝撃により破砕ガラス粉末を作製した。そして、常温水を含ませた状態でボールミルにより粉砕し、ふるいにて60μm以下としたガラス粉末と常温水の混合物を作製した。次に、上記の水槽とは別に、常温水が満たされた分級用水槽を用意した。そして、上記のガラス粉末と常温水の混合物を分級用水槽へ注入し、上澄みした微細なガラス粉末は除去し、ふるいを透過したガラス粉末を抽出した。このような方法によれば、凡そ20μm以下のガラス粉末は上澄みとなるため、最大粒径が60μm、最小粒径が20μmに分級されたガラス粉末を抽出することができる。
【0061】
その後、第2のサンプルについては、温度が100℃、処理時間が2時間で乾燥処理した。また、第3のサンプルについては、温度が100℃、処理時間が24時間で乾燥処理を行い、ガラス粉末から完全に水分を取り除いた。
【0062】
次に、第1〜第3のサンプルを用い、各々(Sr,Ca)S:Eu2+蛍光体粉末を蛍光体粉末が混合粉末全体の重量の10wt%となるように混合した後、ガラスを軟化させることにより、厚さ0.7mmの3種類の蛍光体含有板状ガラス12を作成した。
【0063】
そして、これら3種類の蛍光体含有板状ガラス12に光源から青色光(ピーク波長:450nm)の波長を照射して(Sr,Ca)S:Eu2+蛍光体を励起させて波長変換光(ピーク波長:650nm)を発光させた。これらの光源からの光と波長変換光のピーク波長の出力を出力検知器100で検出した値を元に、各々の蛍光体含有板状ガラス12の蛍光体の波長変換効率を割り出した結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかな通り、乾式分級により作製したサンプル1を用いるよりも、湿式分級により作製したサンプル2及びサンプル3を用いて蛍光体含有板状ガラス12を形成した方が、良好な波長変換効率が得られることが分かった。その理由として、乾式分級では、ガラス粉末が静電気を帯びやすく、その表面に不純物が付着しやすいためと考えられる。
【0066】
また、サンプル2及びサンプル3により作製した蛍光体含有板状ガラス12の結果より、湿式分級により作製したサンプルでも乾燥を十分させることが好ましいことが分かる。
従って、蛍光体含有板状ガラス12を作製する際には、原材料となるガラス粉末を湿式分級を用いることが望ましく、更に言えば、湿式分級を用いた後、ガラス粉末から完全に水分を取り除くことが望ましい。
【0067】
また、ガラス封止部6として屈伏点(At)がLEDチップ2の半導体層のエピタキシャル成長温度より低いガラスを用いたので、ホットプレス時にLEDチップ2が熱的なダメージにより損なわれることがなく、半導体層の結晶成長温度に対して充分に低い加工が可能である。さらに、板状の低融点ガラスと配線基板3とを平行にセットし、高粘度状態でホットプレス加工することで、低融点ガラスが配線基板3の表面に平行移動して面状に密着し、GaN系のLEDチップ2を封止するためにボイドが生じることもない。
【0068】
また、配線基板3とガラス封止部6とが酸化物を介した化学結合に基づいて接着するので、より強固な封着強度が得られる。そのため、接合面積が小さい小形パッケージであっても具現化できる。
【0069】
さらに、配線基板3とガラス封止部6の熱膨張率(α)が同等であるので、高温で接着された後、常温あるいは低温状態としても剥離、クラック等の接着不良が生じにくい。しかも、ガラスは引っ張り応力にはクラックが生じ易いが、圧縮応力にはクラックは生じにくく、ガラス封止部6は配線基板3に対し、やや熱膨張率(α)が小さいものとしてある。
【0070】
さらに、一般にガラスはTg点以上の温度において熱膨張率(α)が増大する特性を有しており、Tg点以上の温度でガラス封止が行われる場合には、Tg点以下だけでなくTg点以上の温度における熱膨張率(α)も考慮することが安定したガラス封止を行うにあたり望ましい。すなわち、ガラス封止部6を構成するガラス材料は、上記したTg点以上の温度における熱膨張率を含む熱膨張率(α)と、配線基板3の熱膨張率(α)とを考慮した同等の熱膨張率(α)とすることで、配線基板3に反りを発生させる内部応力を抑制され、配線基板3とガラス封止部6との接着性が得られているにもかかわらずガラスのせん断破壊が生じることを防ぐことができる。従って、配線基板3やガラス封止部6のサイズを大きくとり、大量のLEDランプを一括して生産できるため、高い量産性を得られる。
【0071】
また、発明者の確認では、−40℃←→100℃の液相冷熱衝撃試験1000サイクルでも剥離、クラックは生じていない。さらに、5mm×5mmサイズのガラス片のセラミック基板への接合基礎確認として、ガラス、セラミック基板とも種々の熱膨張率(α)の組み合わせで実験を行ったところ、熱膨張率(α)が高い方の部材に対する低い方の部材の熱膨張率(α)の比が0.85以上ではクラックを生じることなく接合が行えることを確認した。部材の剛性やサイズ等にも依存するが、熱膨張率(α)が同等というのは、この程度の範囲を示す。
【0072】
さらに、発明者は、本実施の形態のLEDランプの効果を確認するために、以下の加速劣化試験を行った。図10は、加速劣化試験の結果を示すグラフである。試験サンプルとして、本実施の形態のLEDランプ及び従来のシリコン樹脂封止のLEDランプに対し、赤色蛍光体(硫化物蛍光体(CaS:Eu2+))を添加したサンプルと、緑色蛍光体(硫化物蛍光体(CaGa:Eu2+))を添加したサンプルを用い、これらに温度60℃、湿度90%の高温高湿下で、LEDチップに20mAの電流を通電させて、LEDランプの出射光の光度の維持率を測定することにより行なった。本実施の形態のLEDランプの測定結果では、図10(a),(b)に示すように、通電時間が3000時間でも出射光の光度は維持されているが、従来のLEDランプの測定結果では、図10(c),(d)に示すように、いずれの蛍光体の場合においても、通電時間が1000時間の前に、出射光の光度が低下している。
【0073】
LEDチップ2は、フリップ搭載することによりワイヤを不要とできるので、高粘度状態での加工に対しても電極の不具合を生じない。封止加工時の低融点ガラスの粘度は10から10ポアズと硬く、熱硬化処理前のエポキシ樹脂が5ポアズ程度の液状であることと比較して物性が大きく異なる。この結果、チップ表面の電極とリード等の給電部材とをワイヤで電気的に接続するフェイスアップ型のLEDチップを封止する場合、ガラス封止加工時にワイヤの潰れや変形を生じることがあるが、これを防ぐことができる。また、チップ表面の電極を金(Au)等のバンプを介してリード等の給電部材にフリップ搭載するフリップチップ型のLEDチップを封止する場合、ガラスの粘度に基づいてLEDチップに給電部材方向への圧力が付加されバンプの潰れやバンプ間での短絡が生じることがあるが、これも防ぐことができる。
【0074】
配線基板3の表面配線41は、ビア43により裏面配線42に引き出されるので、ガラスが不必要な箇所へ入り込むことや、電気端子が覆われること等への特別な対策を要することなく、製造工程を簡略化できる。また、板状の蛍光体分散ガラス11を複数のLEDチップ2に対して一括して封止加工できるので、ダイサーにより個片化することにより複数のLEDランプ1を容易に量産することができる。なお、低融点ガラスは高粘度状態で加工されるため、樹脂のように封止材料の流れ出しに対して充分な対策をとる必要はなく、ビアによらなくても外部端子が裏面に引き出されていれば充分に量産対応可能である。
【0075】
また、LEDチップ2をフリップ搭載とすることで、ガラス封止を具現化するにあたっての問題点を克服するとともに0.5mm角といった超小型のLEDランプ1を具現化できるという効果もある。これは、ワイヤのボンディングスペースが不要で、かつ、熱膨張率部材が同等のガラス封止部6と配線基板3とが選択されるとともに、化学結合に基づく強固な接合によって、わずかなスペースでの接着でも界面剥離が生じないことによる。
【0076】
さらに、LEDチップ2とガラス封止部6の熱膨張率(α)が同等であるので、配線基板3を含めた部材の熱膨張率(α)が同等となり、ガラス封止における高温加工と常温との温度差においても内部応力は極めて小さく、クラックを生じることのない安定した加工性が得られる。また、内部応力を小にできるので、耐衝撃性が向上し、信頼性に優れるガラス封止型LEDとできる。
【0077】
さらにまた、アルミナからなる配線基板3を用いることで、部材コストの低減を図れるとともに入手が容易であることから、量産性および装置コストの低減を実現できる。また、Alが熱伝導性に優れているので、大光量化、高出力化に対して余裕のある構成とできる。さらに配線基板3は光吸収が小さいことにより、光学的に有利である。
【0078】
尚、上記の実施形態では、LEDチップ2として窒化ガリウム系化合物半導体からなるものを用いたLEDランプ1を説明したが、LEDチップはGaN系のLEDチップ2に限定されず、例えば、セレン化亜鉛(ZnSe)系等の他の半導体材料からなるLEDチップであってもよい。
【0079】
また、LEDチップ2は、スクライブ加工に基づいて形成したものを使用することができる。この場合、スクライブ加工により形成されたLEDチップ2は、切断部である側面に尖った凹凸を有することがあり、LEDチップ2の側面をチップコート材でコーティングすることが望ましい。このチップコート材として、例えば、光透過性を有するSiO系コート材を用いることができる。チップコート材を用いることにより、オーバーモールドする際などにクラックやボイド発生を防止することができる。
【0080】
また、上記の実施形態のガラス封止部6は耐候性に優れているものの、装置の使用条件等によって結露が生じた場合には、ガラス封止部6が変質するおそれがある。これに対しては、結露が生じない装置構成とすることが望ましいが、ガラス封止部6の表面にシリコン樹脂コートなどを施すことで、高温状態での結露によるガラスの変質を防止することもできる。さらに、ガラス封止部6の表面に施すコーティング材としては、耐湿だけでなく、耐酸、耐アルカリ性を有するものとして、例えばSiO系、Al系等のような無機材料が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1(a),(b),(c)は、本発明の実施形態を示すLEDランプの断面図であり、図1(a)は、LEDランプ全体の断面図であり、図1(b)は、図1(a)のA部(ガラス封止部)の拡大断面図であり、図1(c)は、図1(a)のB部(配線基板)の拡大断面図でありLEDランプ全体の断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態を用いるLEDチップの断面図である。
【図3】図3(a),(b)は、本発明の実施形態を用いるLEDチップの電極形成面を示す平面図である。
【図4】図4(a),(b)は、本発明の実施形態を用いる配線基板上の配線の形成状態を示すLEDランプの上面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態を示すLEDランプの製造方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施形態の蛍光体分散ガラスの加工状態を示す断面図であり、(a)は混合粉末から蛍光体分散ガラスを生成する加工装置の断面図を示し、(b)は混合粉末から生成された蛍光体分散ガラスの側面図を示し、(c)は得られた蛍光体分散ガラスをスライスした状態の側面図を示している。
【図7】図7は、本発明の実施形態を示すホットプレス加工の状態を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施形態の変形例であるLEDランプを断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態の効果を調べる為の実験方法を示す模式図である。
【図10】図10(a),(b),(c),(d)は、本発明の実施の形態のガラス封止LEDランプと従来の樹脂封止LEDランプとの高温高湿度試験の測定結果したグラフであり、図10(a)は本発明の緑色蛍光体添加LEDランプのグラフであり、図10(b)は本発明の赤色蛍光体添加LEDランプのグラフであり、図10(c)は従来の緑色蛍光体添加LEDランプのグラフであり、図10(d)は従来の赤色蛍光体添加LEDランプのグラフである。
【符号の説明】
【0082】
1 LEDランプ
2 LEDチップ
3 配線基板
4 配線
41 表面配線
42 裏面配線
43 ビア
44 外部接続端子
5 中空部
6 ガラス封止部
7 蛍光体
8 蛍光体層
10 混合粉末
11 蛍光体分散ガラス
12 板状蛍光体分散ガラス
13 LEDランプ前駆体
20 結晶成長基板
21 バッファ層
22 n型層
23 発光層
24 p型層
25 p側電極
26 p側パッド電極
27 n側電極
28 Auバンプ
80 下台
81 側面枠
82 凹部
83 荷重治具
91 下金型
92 上金型
100 出力検出器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を蛍光体含有ガラスにより封止する発光装置の製造方法において、
ガラス粉末と、硫化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体及びケイ酸塩蛍光体の少なくとも1種を有する蛍光体粉末とを混合し、該蛍光体粉末が該ガラス粉末に分散された混合粉末を生成する混合工程と、
前記混合粉末を加熱・軟化させて一体化させた後に、該混合粉末を固化して蛍光体分散ガラスを生成するガラス生成工程と、
前記蛍光体分散ガラスをホットプレス加工により発光素子が搭載された搭載部に融着し、前記発光素子を前記搭載部上で前記蛍光体分散ガラスにより封止するガラス封止工程と
を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス生成工程では、前記混合粉末に圧力を加えつつ加熱・軟化させて一体化することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス封止工程において、複数の発光素子が前記搭載部上に配置され、前記ガラス封止工程の後に、個々の発光装置に個片化する個片化工程を有することを特徴とする請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス封止工程又は前記個片化工程の後に、ガラス封止部の表面に前記蛍光体粉末とは異なる蛍光体を含有する蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程を有することを特徴とする請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス生成工程にて生成された前記蛍光体分散ガラスを板状に加工する板状加工工
程をさらに含み、前記ガラス封止工程にて、板状に加工された前記蛍光体分散ガラスを平坦な前記搭載部に融着することを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
ガラス粉末と、硫化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体及びケイ酸塩蛍光体の少なくとも1種を有する蛍光体粉末とを混合し、該蛍光体粉末が該ガラス粉末に分散された混合粉末を生成する混合工程と、
前記混合粉末を加熱・軟化させて一体化させた後に、該混合粉末を固化して蛍光体分散ガラスを生成するガラス生成工程と、
前記蛍光体分散ガラスを板状にする板状加工工程
ことを特徴とする蛍光体含有ガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス生成工程では、前記混合粉末に圧力を加えつつ加熱して一体化することを特徴とする請求項6に記載の蛍光体含有ガラス板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−177131(P2009−177131A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253608(P2008−253608)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(391009936)株式会社住田光学ガラス (59)
【Fターム(参考)】