説明

衛星測位装置

【課題】途切れなく測位を行うことのできる「衛星測位装置」を提供する。
【解決手段】P1まで進行した時点で、ナビゲーション装置11によって、近い将来の上方閉塞空間への進入が予測されたならば、アシスト測位制御部15は、無線通信装置17とGPS受信機16を制御して、GPS受信機16と測位サーバ4との接続を確立する。そして、その後、地点Sで上空閉塞空間400に進入し、上空閉塞空間400内をP2まで進んだ時点で、GPS受信機16のCN比が劣化し所定のしきい値TH未満となったならば、アシスト測位制御部15は、GPS受信機16にアシスト測位モードを設定する。アシスト測位モードを設定された、GPS受信機16は、地点P1で既に接続が確立している測位サーバ4から補助データの取得を直ちに開始して、ネットワークアシスト方式の測位を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、衛星を利用した測位を行う衛星測位装置における、現在位置の算出精度向上の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星を利用した衛星測位の技術としては、GPS受信機単独で、GPS衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出する単独方式の測位の技術や、エフェメリスやアルマナックといった衛星軌道情報である補助データを、ネットワークを介して、当該補助データを提供する測位サーバから取得し、補助データを用いつつGPS衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位の技術が知られている。
【0003】
ここで、ネットワークアシスト方式の測位のように補助データを用いる場合には、GPS受信機が感応する受信電波の最小強度を単独方式の測位に比べて小さく設定しても測位精度を確保できる。そこで、通常、ネットワークアシスト方式の測位では、GPS受信機に感応させる受信電波の最小強度を単独方式の測位に比べて小さく設定することにより、単独方式の測位の場合よりもGPS受信機の受信感度を高め、屋内などの受信電波が微弱な環境でも正常に測位を行えるようにしている。一方、ネットワークアシスト方式の測位には、測位サーバとの間の通信に有料のネットワークを使用する場合には、当該通信の通信料が発生するといるデメリットがある。
【0004】
また、このような単独方式の測位とネットワークアシスト方式の測位をGPS受信機において組み合わせて使用する技術も知られている(たとえば、特許文献1)。この技術では、GPS受信機の起動時や、単独方式の測位が正常に行えない期間のみ、ネットワークアシスト方式の測位を行うことにより、測位精度を保ちつつ通信料の発生を抑制している。
【特許文献1】特開2002-228738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の技術のように、GPS受信機において、単独方式の測位が正常に行えない期間のみネットワークアシスト方式の測位を行うようにすると、ネットワークアシスト方式の測位の開始に先だって、測位サーバとの間の接続の確立や測位サーバからの補助データの取得を行う必要があるために、単独方式の測位が正常に行えなくなってからネットワークアシスト方式の測位が開始されるまでの間に、比較的長期間の測位を行えない期間が発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、できるだけ途切れなく測位を行うことのできる衛星測位装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、衛星からの受信電波に基づいて単独で現在位置を算出する単独方式の測位と、ネットワークを介して測位サーバから取得した測位補助用のデータを用いつつ前記衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位との双方を行うことのできる測位システム受信機を備えた衛星測位装置を、前記測位サーバと前記測位システム受信機との間の通信に用いる無線通信装置と、当該衛星測位装置が、上方が閉じられた空間である上方閉塞空間内に位置することを検出する検出部と、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が切断されているときに、前記検出部が前記上方閉塞空間内に位置することを検出した場合に、前記無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立する接続制御部と、前記測位システム受信機が前記単独方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより低下した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を開始させる測位方式切替部とを含めて構成したものである。
【0008】
以上のような衛星測位装置によれば、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより低下して単独方式の測位が行えなくなって、ネットワークアシスト方式の測位を開始する前に、電波の受信品質の低下が発生する蓋然性の大きい空間であるところの上方閉塞空間内に衛星測位装置が侵入したことが検出された時点で、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立しておくことができるので、ネットワークアシスト方式の測位を開始直後、直ちに、測位サーバから測位補助用のデータを取得して正常に測位を行うことができるようになる。
【0009】
なお、このようにしてネットワークアシスト方式の測位を開始する前に前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立しても、ネットワークアシスト方式の測位を開始するまでは、測位サーバから測位補助用のデータを取得しないので、データ従量制の課金が行われるネットワークを前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の通信に用いる場合における通信料金は、ネットワークアシスト方式の測位を開始してから前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立する場合に比べ、大きく増加することはない。
【0010】
以上のように、本衛星測位装置によれば、通信料金の増大を抑制しつつ上方閉塞空間内に進入した場合でも、途切れなく測位を行うことができるようになる。
【0011】
ここで、このような衛星測位装置は、前記測位方式切替部において、前記測位システム受信機が前記ネットワークアシスト方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより向上した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を終了させるように構成することが、データ従量制の課金が行われるネットワークを前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の通信に用いる場合等における通信料金の抑制を図る上で好ましい。
【0012】
また、以上のような衛星測位装置には、前記接続制御部において、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が確立されているときに、前記検出部が前記上方閉塞空間内に位置することを検出しなくなった場合に、前記無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を切断するように構成してもよい。
【0013】
なお、以上の衛星測位装置の前記検出部における前記現在位置算出部が算出した現在位置に対応する前記地図データが表す地図上の位置が、前記上方閉塞空間内に位置することの検出は、前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を設けて、前記検出部において、前記現在位置算出部が算出した現在位置に対応する前記地図データが表す地図上の位置が、上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置であるときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することにより行うようにしてもよいし、上方を含む方向を撮影するカメラを設け、前記検出部において、前記カメラが撮影した画像が、上方を閉じる物体の存在を示す特徴を有するときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することにより行うようにしてもよい。
【0014】
また、前記課題達成のために、本発明は、衛星からの受信電波に基づいて単独で現在位置を算出する単独方式の測位と、ネットワークを介して測位サーバから取得した測位補助用のデータを用いつつ前記衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位との双方を行うことのできる測位システム受信機を備えた衛星測位装置を、前記測位サーバと前記測位システム受信機との間の通信に用いる無線通信装置と、当該衛星測位装置の上方が閉じられた空間である上方閉塞空間内への侵入を予測する予測部と、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が切断されているときに、前記予測部が前記上方閉塞空間内に侵入することを予測した場合に、前記無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立する接続制御部と、前記測位システム受信機が前記単独方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより低下した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を開始させる測位方式切替部とを含めて構成したものである。
【0015】
このような衛星測位装置によれば、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより低下して単独方式の測位が行えなくなって、ネットワークアシスト方式の測位を開始する前に、電波の受信品質の低下が発生する蓋然性の大きい空間であるところの上方閉塞空間内に進入することが予測された時点で、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立しておくことができるので、ネットワークアシスト方式の測位を開始直後、直ちに、測位サーバから測位補助用のデータを取得して正常に測位を行うことができるようになる。
【0016】
なお、このようにしてネットワークアシスト方式の測位を開始する前に前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立しても、ネットワークアシスト方式の測位を開始するまでは、測位サーバから測位補助用のデータを取得しないので、データ従量制の課金が行われるネットワークを前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の通信に用いる場合における通信料金は、ネットワークアシスト方式の測位を開始してから前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立する場合に比べ、大きく増加することはない。
【0017】
以上のように、本衛星測位装置によれば、通信料金の増大を抑制しつつ上方閉塞空間内に進入した場合でも、途切れなく測位を行うことができるようになる。
ここで、このような衛星測位装置は、前記測位方式切替部において、前記測位システム受信機が前記ネットワークアシスト方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより向上した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を終了させるように構成することも、データ従量制の課金が行われるネットワークを前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の通信に用いる場合における通信料金の抑制を図る上で好ましい。
【0018】
また、以上のような衛星測位装置の前記予測部における、前記上方閉塞空間内に侵入することの予測は、前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を設け、前記予測部において、前記現在位置算出部が算出した現在位置の進行方向側に、所定期間内に到達すると予測される上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置が存在することが前記地図データに基づいて識別されるときに、前記上方閉塞空間内への侵入を予測することにより行うようにしてもよい。または、以上のような衛星測位装置の前記予測部における、前記上方閉塞空間内に侵入することの予測は、前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部と、設定された目的地までのルートを前記地図データに基づいて設定し、設定したルートを案内するルート案内部とを設け、前記予測部において、前記ルート案内部が設定したルート上の進行方向側に、前記現在位置算出した現在位置から所定期間内に到達すると予測される上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置が存在することが前記地図データに基づいて識別されるときに、前記上方閉塞空間内への侵入を予測することにより行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、できるだけ途切れなく測位を行うことのできる衛星測位装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、自動車に搭載される車載システムへの適用を例にとり説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
図示するように、車載システム1は、ナビゲーション装置11、方位センサや車速センサなどのナビゲーション装置11の自律航法用のセンサである自律航法センサ12、地図データを記憶した地図データベース13、車両外部上方を撮影するカメラ14、アシスト測位制御部15、GPS受信機16、移動電話機(携帯電話)などである無線通信装置17、表示装置18、入力装置19とを備えている。
【0021】
ここで、GPS受信機16は、外部から設定できる動作モードとして単独測位モードと、アシスト測位モードとを有する。そして、GPS受信機16は、単独測位モードが設定されているときには、GPS衛星2からの受信電波に基づいて現在位置を算出する単独方式の測位を行う。また、GPS受信機16は、アシスト測位モードが設定されているときには、GPS受信機16が感応する受信電波の最小強度を単独測位モード設定時よりも小さく設定すると共に、無線通信装置17を介してWAN3上の測位サーバ4からエフェメリスやアルマナックといった各GPS衛星2の衛星軌道情報である補助データを取得し、補助データを用いつつGPS衛星2からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位を行う。
【0022】
一方、ナビゲーション装置11は、GPS受信機16が測位した現在の車両の位置や、自律航法センサ12の出力より推定される現在の車両の位置と、地図データベース13に記憶された地図データとのマップマッチングによって車両の現在位置を算出したり、算出した現在位置を地図データが表す地図上に表示した案内画像を生成し、表示装置18に表示する処理を行う。また、ナビゲーション装置11は、ユーザから入力装置19を介して目的地の設定を受け付け、現在位置から受け付けた目的地までの推奨されるルートを地図データに基づいて探索し、探索したルートを、表示装置18に表示した前記案内画像上で案内する処理を行う。
【0023】
さて、このような構成において、アシスト測位制御部15は、GPS受信機16の単独測位モードとアシスト測位モードとの動作モードを制御するために、上方閉塞空間検出処理と、アシスト測位制御処理とを行う。
以下、この上方閉塞空間検出処理とアシスト測位制御処理について説明する。
まず、上方閉塞空間検出処理について説明する。
この上方閉塞空間検出処理は、立体駐車場内や高架下にある道路上などの車両の上方が閉じられた空間である上方閉塞空間内に車両が位置することを検出して上方閉塞空間走行中を設定したり、車両が上方閉塞空間内に近い将来に移動しようとしていることを予測して上方閉塞空間進入予測を設定する処理であり、図2に示す手順によって行う。
【0024】
すなわち、図示するように、この処理で、アシスト測位制御部15は、まず、ナビゲーション装置11が算出している現在位置が、上方閉塞空間内の位置であるかどうかをナビゲーション装置11に問い合わせることにより調べる(ステップ202)。
ここで、地図データベース13に格納された地図データには、各道路の形状、配置などの他、駐車場/立体駐車場/ガソリンスタンドなどの各種施設の形状、配置、施設の種別の識別や、各道路が高架道路であるか高架下にある道路であるかの識別なども登録されている。そして、ナビゲーション装置11は、ステップ202でアシスト測位制御処理部から発行された問い合わせに対して、このような地図データに基づいて、算出している現在位置が、立体駐車場内や高架下にある道路上などの車両の上方が閉じられた空間である上方閉塞空間内の位置であるかどうかを識別し、識別結果をアシスト測位制御部15に応答する。
【0025】
そして、ステップ202において、現在位置が上方閉塞空間内の位置ではないと判定された場合には、ステップ204に進んで、現在が昼間であってカメラ14の撮影画像の天空領域が暗であるかどうかを調べる。現在が昼間であるかどうかは、内蔵したカレンダーと時計によって判定する。また、カメラ14の撮影画像の天空領域が暗であるかどうかの判定は、カメラ14で撮影される車両上方の画像中の、天頂方向の被写体が写り込む領域の輝度が、車両の水平方向の被写体が写り込む領域の輝度よりも所定レベル以上大きくない場合に、カメラ14の撮影画像の天空領域が暗であると判定することにより行う。
【0026】
そして、ステップ204において、現在が昼間であってカメラ14の撮影画像の天空領域が暗であると判定されなかった場合には、ステップ206に進んで、カメラ14の撮影画像の天空領域に非天空パターンが存在するかどうかを調べる。カメラ14の撮影画像の天空領域に非天空パターンが存在するかどうかの判定は、カメラ14で撮影される車両上方の画像中の、天頂方向の被写体が写り込む領域に幾何学的パターンが写り込んでいる場合に、カメラ14の撮影画像の天空領域に非天空パターンが存在すると判定することにより行う。
【0027】
そして、ステップ206において、カメラ14の撮影画像の天空領域に非天空パターンが存在すると判定されなかった場合には、上方閉塞空間走行中の設定が成されている場合にはこれを解除し(ステップ208)、ステップ210に進む。
一方、ステッ202において、現在位置が上方閉塞空間内の位置であると判定された場合、ステップ204において現在が昼間であってカメラ14の撮影画像の天空領域が暗と判定された場合、ステップ206において、カメラ14の撮影画像の天空領域に非天空パターンがあると判定された場合には、いずれの場合にも、上方閉塞空間内走行中を設定する(ステップ216)。そして、ステップ210に進む。
【0028】
次に、このようにしてステップ210に進んだならば、ナビゲーション装置11において目的地までのルートを案内中かどうかをナビゲーション装置11に問い合わせて調べる。
そして、ルート案内中であれば、ルート上前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入するかどうかを、ナビゲーション装置11に問い合わせることにより調べる(ステップ212)。ここで、ナビゲーション装置11は、当該ステップ212で発行される問い合わせに応答して以下の処理を行う。すなわち、設定しているルートと前述した地図データと算出している現在位置に基づいて、進行方向側のルート上にある最寄りの立体駐車場内や高架下にある道路上などの車両の上方が閉じられた空間である上方閉塞空間に到達するまでの所要時間を、上方閉塞空間までのルートに沿った道程距離と車速より推定し、推定した所要時間が所定期間(たとえば、30秒)以内であれば、ルート上前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入すると識別し、識別結果をアシスト測位制御部15に応答する。
【0029】
一方、ステップ210で、ナビゲーション装置11においてルートを案内中でないと判定された場合には、走行中の道路の前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入するかどうかを、ナビゲーション装置11に問い合わせることにより調べる(ステップ218)。ここで、ナビゲーション装置11は、当該ステップ218で発行される問い合わせに応答して以下の処理を行う。すなわち、前述した地図データと算出している現在位置に基づいて、走行中の道路上の進行方向側にある最寄りの立体駐車場内や高架下にある道路上などの車両の上方が閉じられた空間である上方閉塞空間に到達するまでの所要時間を、上方閉塞空間までのルートに沿った道程距離と車速より推定し、推定した所要時間が所定期間以内であれば、走行中の道路の前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入すると識別し、識別結果をアシスト測位制御部15に応答する。
【0030】
そして、ステップ212でルート上前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入すると判定されなかった場合と、ステップ218で走行中の道路の前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入すると判定されなかった場合には、ステップ214に進んで、上方閉塞空間進入予測が設定されている場合にはこれを解除して、ステップ202からの処理に戻る。
【0031】
一方、ステップ212でルート上前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入すると判定された場合と、ステップ218で走行中の道路の前方に位置する上方閉塞空間に所定期間内に進入すると判定された場合には、いずれの場合にも、ステップ220に進んで、上方閉塞空間進入予測を設定し、ステップ202からの処理に戻る。
【0032】
以上、上方閉塞空間検出処理について説明した。
なお、本実施形態は、車載システム1に、カメラ14に代えて、レーダ装置等の車両上方の物体を検出するセンサを設けると共に、以上の上方閉塞空間検出処理において、当該センサにおいて車両上方が物体で閉塞されていることが検出されたときに、上方閉塞空間内走行中を設定するようにしてもよい。
【0033】
次に、アシスト測位制御部15が行うアシスト測位制御処理について説明する。
図3に、このアシスト測位制御処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、まず、GPS受信機16の動作モードを単独測位モードに設定する(ステップ302)。
そして、上述した上方閉塞空間検出処理によって、上方閉塞空間内走行中が設定されるか(ステップ304)、上方空間進入予測が設定される(ステップ318)のを待つ。
そして、上方閉塞空間内走行中か上方空間進入予測のいずれかが設定されたならば、無線通信装置17を制御し、測位サーバ4と無線通信装置17との間の通信路を確立すると共に、確立した通信路を用いたGPS受信機16と測位サーバ4との間の接続を確立させる(ステップ306)。
【0034】
そして、GPS受信機16のGPS衛星2からの受信電波のCN比(Carrier to Noise ratio)が所定のしきい値THより劣化することと(ステップ308、310)、上方閉塞空間内走行中と上方空間進入予測の双方が共に設定されていない状態となること(ステップ312、314)とを監視する。ここで、しきい値THは、GPS受信機16が単独方式の測位によって、正常に測位を行えるCN比の下限値、または、当該下限値に所定のマージンを加えた値とする。
【0035】
そして、GPS受信機16のCN比が所定のしきい値THより劣化する(ステップ308、310)前に、上方閉塞空間内走行中と上方空間進入予測の双方が共に設定されていない状態となったならば(ステップ312、314)、GPS受信機16に測位サーバ4との間の接続を解除させると共に無線通信装置17に測位サーバ4と無線通信装置17との間の通信路を切断させ(ステップ316)、ステップ304からの処理に戻る。
【0036】
一方、上方閉塞空間内走行中と上方空間進入予測の双方が共に設定されていない状態となる(ステップ312、314)前に、GPS受信機16のCN比が所定のしきい値THより劣化したならば(ステップ308、310)、GPS受信機16の動作モードをアシスト測位モードに設定する(ステップ320)。ここで、アシスト測位モードを設定されたGPS受信機16は、ネットワークアシスト方式の測位を開始し、ステップ306において既に接続が確立している測位サーバ4から、エフェメリスやアルマナックといった衛星軌道情報である補助データを直ちに取得して、補助データを用いた測位を行う。
【0037】
そして、GPS受信機16のCN比が所定のしきい値TH以上となるのを監視し(ステップ322、324)、GPS受信機16のCN比が所定のしきい値TH以上となったならば、ステップ308からの処理に戻る。
以上、アシスト測位制御処理について説明した。
ここで、図4に、以上のようなアシスト制御部の処理による車載システム1の動作例を示す。
いま、車載システム1を搭載した自動車が、P0-P1-P2-P3-P4-P5の順に進行する際に、P1とP2の間の地点SからP3とP4の間の地点Eまでの間で上空閉塞空間400内を走行するものとする。
この場合、P0の時点で単独測位モードが設定されており、ここからP1まで進行した時点で、上方閉塞空間検出処理によって、上方閉塞空間進入予測が設定されると、アシスト測位制御処理は、無線通信装置17とGPS受信機16を制御して、GPS受信機16と測位サーバ4を接続する。すなわち、ここでは、無線通信装置17とGPS受信機16を制御して、GPS受信機16が測位サーバ4から補助データを取得する前にGPS受信機16と測位サーバ4との間で行う必要のある全てのシーケンスを完了した状態とする。
【0038】
そして、その後、地点Sで上空閉塞空間400に進入すると、上方閉塞空間検出処理によって、上方閉塞空間走行中が設定される。また、さらに、上空閉塞空間400内をP2まで進んだ時点で、GPS受信機16のCN比が劣化し所定のしきい値TH未満となると、アシスト測位制御処理は、GPS受信機16にアシスト測位モードを設定する。すると、GPS受信機16は、ネットワークアシスト方式の測位を開始し、地点P1で既に接続が確立している測位サーバ4から補助データを直ちに取得して測位を行う。
【0039】
そして、その後、上空閉塞空間400内を進行し、上空閉塞空間400の出口付近の地点P3まで達した時点で、GPS受信機16のCN比が復活し所定のしきい値TH以上となると、アシスト測位制御処理は、GPS受信機16に単独測位モードを設定する。すると、GPS受信機16は、測位サーバ4から補助データの取得を停止して、単独方式の測位を開始する。
【0040】
そして、車両が地点Eを通過すると、地点E付近の地点P4において、上方閉塞空間検出処理によって、上方閉塞空間進入予測と上方閉塞空間走行中の設定が解除される。すると、アシスト測位制御処理は、無線通信装置17とGPS受信機16を制御して、測位サーバ4との間の通信を切断する。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明した。
以上のように、本実施形態によれば、GPS受信機16のGPS衛星2からの電波の受信品質が所定のCN比より低下して単独方式の測位が行えなくなって、ネットワークアシスト方式の測位を開始する前に、上方閉塞空間内に位置することが検出されたり上方閉塞空間内に進入することが予測された時点で、GPS受信機16と測位サーバ4との間の接続を確立しておくので、ネットワークアシスト方式の測位を開始直後、直ちに、測位サーバ4から補助データを取得して正常に測位を行うことができるようになる。
【0042】
なお、このようにネットワークアシスト方式の測位を開始する前にGPS受信機16と測位サーバ4との間の接続を確立しても、ネットワークアシスト方式の測位を開始するまでは、測位サーバ4から補助データを取得しないので、データ従量制の課金が行われるネットワークを前記測位システム受信機と前記測位サーバ4との間の通信に用いる場合における通信料金は、ネットワークアシスト方式の測位を開始してから前記測位システム受信機と前記測位サーバ4との間の接続を確立する場合に比べ、大きく増加することはない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る上方閉塞空間検出処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るアシスト測位制御処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る車載システムの動作例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1…車載システム、2…GPS衛星、3…WAN、4…測位サーバ、11…ナビゲーション装置、12…自律航法センサ、13…地図データベース、14…カメラ、15…アシスト測位制御部、16…GPS受信機、17…無線通信装置、18…表示装置、19…入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星からの受信電波に基づいて単独で現在位置を算出する単独方式の測位と、ネットワークを介して測位サーバから取得した測位補助用のデータを用いつつ前記衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位との双方を行うことのできる測位システム受信機を備えた衛星測位装置であって、
前記測位サーバと前記測位システム受信機との間の通信に用いる無線通信装置と、
当該衛星測位装置が、上方が閉じられた空間である上方閉塞空間内に位置することを検出する検出部と、
前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が切断されているときに、前記検出部が前記上方閉塞空間内に位置することを検出した場合に、前記無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立する接続制御部と、
前記測位システム受信機が前記単独方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより低下した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を開始させる測位方式切替部とを有することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項2】
請求項1記載の衛星測位装置であって、
前記測位方式切替部は、前記測位システム受信機が前記ネットワークアシスト方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより向上した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を終了させることを特徴とする衛星測位装置。
【請求項3】
請求項1記載の衛星測位装置であって、
前記接続制御部は、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が確立されているときに、前記検出部が前記上方閉塞空間内に位置することを検出しなくなった場合に、前記無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を切断することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項4】
請求項2記載の衛星測位装置であって、
前記接続制御部は、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が確立されているときに、前記検出部が前記上方閉塞空間内に位置することを検出しなくなった場合に、前記無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を切断することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項5】
請求項1記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を有し、
前記検出部は、前記現在位置算出部が算出した現在位置に対応する前記地図データが表す地図上の位置が、上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置であるときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項6】
請求項2記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を有し、
前記検出部は、前記現在位置算出部が算出した現在位置に対応する前記地図データが表す地図上の位置が、上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置であるときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項7】
請求項3記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を有し、
前記検出部は、前記現在位置算出部が算出した現在位置に対応する前記地図データが表す地図上の位置が、上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置であるときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項8】
請求項4記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を有し、
前記検出部は、前記現在位置算出部が算出した現在位置に対応する前記地図データが表す地図上の位置が、上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置であるときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項9】
請求項1記載の衛星測位装置であって、
上方を含む方向を撮影するカメラを備え、
前記検出部は、前記カメラが撮影した画像が、上方を閉じる物体の存在を示す特徴を有するときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項10】
請求項2記載の衛星測位装置であって、
上方を含む方向を撮影するカメラを備え、
前記検出部は、前記カメラが撮影した画像が、上方を閉じる物体の存在を示す特徴を有するときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項11】
請求項3記載の衛星測位装置であって、
上方を含む方向を撮影するカメラを備え、
前記検出部は、前記カメラが撮影した画像が、上方を閉じる物体の存在を示す特徴を有するときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項12】
請求項4記載の衛星測位装置であって、
上方を含む方向を撮影するカメラを備え、
前記検出部は、前記カメラが撮影した画像が、上方を閉じる物体の存在を示す特徴を有するときに、前記上方閉塞空間内に位置することを検出することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項13】
衛星からの受信電波に基づいて単独で現在位置を算出する単独方式の測位と、ネットワークを介して測位サーバから取得した測位補助用のデータを用いつつ前記衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位との双方を行うことのできる測位システム受信機を備えた衛星測位装置であって、
前記測位サーバと前記測位システム受信機との間の通信に用いる無線通信装置と、
当該衛星測位装置の、上方が閉じられた空間である上方閉塞空間内への侵入を予測する予測部と、
前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が切断されているときに、前記予測部が前記上方閉塞空間内に侵入することを予測した場合に、前記無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立する接続制御部と、
前記測位システム受信機が前記単独方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより低下した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を開始させる測位方式切替部とを有することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項14】
請求項13記載の衛星測位装置であって、
前記測位方式切替部は、前記測位システム受信機が前記ネットワークアシスト方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより向上した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を終了させることを特徴とする衛星測位装置。
【請求項15】
請求項13記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を有し、
前記予測部は、前記現在位置算出部が算出した現在位置の進行方向側に、所定期間内に到達すると予測される上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置が存在することが前記地図データに基づいて識別されるときに、前記上方閉塞空間内への侵入を予測することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項16】
請求項14記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部を有し、
前記予測部は、前記現在位置算出部が算出した現在位置の進行方向側に、所定期間内に到達すると予測される上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置が存在することが前記地図データに基づいて識別されるときに、前記上方閉塞空間内への侵入を予測することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項17】
請求項13記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部と、
設定された目的地までのルートを前記地図データに基づいて設定し、設定したルートを案内するルート案内部とを有し、
前記予測部は、前記ルート案内部が設定したルート上の進行方向側に、前記現在位置算出した現在位置から所定期間内に到達すると予測される上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置が存在することが前記地図データに基づいて識別されるときに、前記上方閉塞空間内への侵入を予測することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項18】
請求項14記載の衛星測位装置であって、
前記測位システム受信機が測位した位置と、地図データが表す地図とのマップマッチングによって現在位置を算出する現在位置算出部と、
設定された目的地までのルートを前記地図データに基づいて設定し、設定したルートを案内するルート案内部とを有し、
前記予測部は、前記ルート案内部が設定したルート上の進行方向側に、前記現在位置算出した現在位置から所定期間内に到達すると予測される上方が閉じられた施設内または上方が閉じられた道路上の位置が存在することが前記地図データに基づいて識別されるときに、前記上方閉塞空間内への侵入を予測することを特徴とする衛星測位装置。
【請求項19】
衛星からの受信電波に基づいて単独で現在位置を算出する単独方式の測位と、ネットワークを介して測位サーバから取得した測位補助用のデータを用いつつ前記衛星からの受信電波に基づいて現在位置を算出するネットワークアシスト方式の測位との双方を行うことのできる測位システム受信機を備えた衛星測位装置において、前記測位システム受信機の測位を制御する衛星測位制御方法であって、
当該衛星測位装置の、上方が閉じられた空間である上方閉塞空間内への進入を検出、または、予測するステップと、
前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続が切断されているときに、前記上方閉塞空間内への進入を検出、または、予測した場合に、前記測位サーバと前記測位システム受信機との間の通信に用いる無線通信装置と測位システム受信機を制御して、前記測位システム受信機と前記測位サーバとの間の接続を確立するステップと、
前記測位システム受信機が前記単独方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより低下した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を開始させるステップとを有することを特徴とする衛星測位制御方法。
【請求項20】
請求項19記載の衛星測位制御方法であって、
前記測位システム受信機が前記ネットワークアシスト方式の測位を行っているときに、前記測位システム受信機の前記衛星からの電波の受信品質が所定レベルより向上した場合に、前記測位システム受信機にネットワークアシスト方式の測位を終了させるステップを有することを特徴とする衛星測位制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−115573(P2009−115573A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288078(P2007−288078)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】