説明

表示装置の駆動方法

【課題】消費電力が少なく、表示品質の良い表示装置を提供することを課題の一とする。
【解決手段】第1の基板上に、端子部と、画素電極と、酸化物半導体を有するスイッチングトランジスタと、可視光に対して高い光感度を有する第1の光センサと、赤外光に光感度を有し、第1の光センサより可視光に対する光感度が低い第2の光センサを設ける。第1及び第2の光センサを用いて表示装置周囲の照度または色温度を検出して表示映像の輝度や色調を調整する。また、第1の基板に向かい合って第2の基板を設け、第2の基板上に対向電極を設ける。端子部からスイッチングトランジスタを介して対向電極へ電位を供給し、また、静止画を表示する期間において、スイッチングトランジスタを非導通状態として、対向電極を浮遊状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、薄膜半導体を用いた光センサと、該光センサを内蔵した表示装置に関
する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置に代表されるアクティブマトリクス型表示装置においては、画面サイ
ズが対角20インチ以上と大型化する傾向にあり、さらには、対角100インチ以上の画
面サイズも視野に入れた開発が行われている。加えて、画面の解像度も、ハイビジョン画
質(HD、1366×768)、フルハイビジョン画質(FHD、1920×1080)
と高精細化の傾向にあり、解像度が3840×2048または4096×2180といっ
た、いわゆる4Kデジタルシネマ用表示装置の開発も急がれている。
【0003】
画面サイズの大型化や高精細化により、トランジスタには高い電界効果移動度が求められ
ている。また、画面サイズが大きくなると消費電力の増加だけでなく、表示ムラや色調な
ど表示品質が観察者に認識されやすくなる。
【0004】
加えて、観察者が感じる輝度や発色などの表示品質は、表示装置が設置されている環境の
照度や色温度にも大きく左右される。例えば、特許文献1には、表示装置に入射する外光
の強度(照度)に応じて、表示装置の発光強度を制御する表示装置が開示されている。
【0005】
また、表示装置を屋内だけでなく屋外でも使用する場合は、低照度から高照度までの変化
量が大きいため、低照度用の光センサは、高照度下においては出力が飽和してしまい、高
照度用の光センサは、低照度下において照度検出そのものが困難となる。特許文献2には
、可視光域に光感度を持つ光センサと、赤外光域に光感度を持つ光センサを用いて屋内か
屋外かを判別する表示装置が開示されているものの、低照度から高照度まで安定した出力
が得られる光センサについては示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−112382号公報
【特許文献2】特開2003−29239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画面サイズの大型化や高精細化は、それにともなう配線抵抗や寄生容量の増加により、表
示装置の表示品質の低下や、消費電力の増加を生じてしまう。特にアクティブマトリクス
型表示装置においては、画面サイズが大きくなるほど、各画素に用いられるトランジスタ
のオフ電流や閾値などの特性バラツキが消費電力や表示品質などに大きく影響する。
【0008】
また、画面サイズが大きくなると消費電力の増加だけでなく、表示ムラや色調などの表示
品質が観察者に認識されやすくなるため、表示装置が設置されている環境の照度や色温度
に応じて、表示映像を適正な発光強度や色調に補正することで、表示装置の電力消費を抑
えつつ、周囲の環境に起因する表示品質低下の改善が求められている。
【0009】
本発明の一態様は、表示装置の省電力化を実現することを課題の一つとする。
【0010】
また、本発明の一態様は、周囲の環境に応じて最適な表示品質を提供することを課題の一
つとする。
【0011】
また、本発明の一態様は、室温から180℃程度の温度範囲で安定して動作するトランジ
スタ及びそれを用いた表示装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、可視光に対して高い光感度を有する非晶質薄膜光センサと、非晶質薄
膜光センサよりも可視光に対する光感度は低いが赤外光にも光感度を有する多結晶薄膜光
センサを用いて、表示装置周囲の照度や色温度を検出し、検出結果をもとに表示映像の輝
度や色調を調整することを特徴とする表示装置である。
【0013】
また、本発明の一態様は、可視光に対して高い光感度を有する非晶質薄膜光センサと、非
晶質薄膜光センサよりも可視光に対する光感度は低いが赤外光にも光感度を有する多結晶
薄膜光センサを用いて、表示装置周囲の照度や色温度を検出し、検出結果をもとに表示映
像の輝度や色調を調整し、静止画を表示する際の書き込み間隔を1秒以上とすることを特
徴とする表示装置である。
【0014】
また、本発明の一態様は、第1の基板上に、端子部と、画素電極と、スイッチングトラン
ジスタと、可視光に対して高い光感度を有する非晶質薄膜光センサと、赤外光に光感度を
有し、非晶質薄膜光センサよりも可視光に対する光感度が低い多結晶薄膜光センサを有し
、第2の基板上に対向電極を有し、端子部からスイッチングトランジスタを介して対向電
極へ電位を供給し、光センサを用いて表示装置周囲の照度や色温度を検出し、検出結果を
もとに表示映像の輝度や色調を調整し、静止画を表示する際は、スイッチングトランジス
タを非導通状態として、対向電極の電位を浮遊状態とすることを特徴とする表示装置であ
る。
【0015】
また、本発明の一態様は、第1の基板上に、第1の光センサと、第2の光センサと、複数
の画素を有する画素回路が形成され、第1の光センサは、非晶質半導体を有する第1の光
電変換素子と、酸化物半導体を有するトランジスタで構成された第1の増幅回路を有し、
第2の光センサは、多結晶半導体を有する第2の光電変換素子と、酸化物半導体を有する
トランジスタで構成された第2の増幅回路を有し、画素回路は、画素電極と、酸化物半導
体を有するトランジスタを有することを特徴とする表示装置である。
【0016】
また、本発明の一態様は、互いに向かい合って配置された第1の基板と第2の基板を有し
、第1の基板上に、端子部と、第1の光センサと、第2の光センサと、複数の画素を有す
る画素回路が形成され、第1の光センサは、非晶質半導体を有する第1の光電変換素子と
、酸化物半導体を有するトランジスタで構成された第1の増幅回路を有し、第2の光セン
サは、多結晶半導体を有する第2の光電変換素子と、酸化物半導体を有するトランジスタ
で構成された第2の増幅回路を有し、画素回路は、画素電極と、酸化物半導体を有するト
ランジスタを有し、第2の基板は対向電極を有し、対向電極は、第1の基板上に形成され
た酸化物半導体を有するトランジスタを介して端子部と電気的に接続されていることを特
徴とする表示装置である。
【0017】
また、本発明の一態様は、互いに向かい合って配置された第1の基板と第2の基板を有し
、第1の基板上に、端子部と、酸化物半導体を有するスイッチングトランジスタと、第1
の光センサと、第2の光センサと、複数の画素を有する画素回路と、画素回路と基板端部
の間に駆動回路が形成され、第1の光センサは、非晶質半導体を有する第1の光電変換素
子と、酸化物半導体を有するトランジスタで構成された第1の増幅回路を有し、第2の光
センサは、多結晶半導体を有する第2の光電変換素子と、酸化物半導体を有するトランジ
スタで構成された第2の増幅回路を有し、第2の基板は対向電極を有し、対向電極は、ス
イッチングトランジスタを介して端子部と電気的に接続され、スイッチングトランジスタ
と端子部を接続する配線は、駆動回路と基板端部の間に形成されていることを特徴とする
表示装置である。
【0018】
また、具体的には、キャリア密度を1×1014/cm未満、好ましくは1×1012
/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満とした酸化物半導体を用いる

【0019】
非晶質半導体は、非晶質シリコンを用いることができる。多結晶半導体は、多結晶シリコ
ンまたは微結晶シリコンを用いることができる。
【0020】
静止画を表示する期間において、ゲート線駆動回路または信号線駆動回路からの信号を停
止させることができる。
【0021】
静止画を表示する期間において、スイッチングトランジスタを非導通状態として、対向電
極を浮遊状態とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様により、消費電力が少なく、表示品質の良い表示装置を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】表示装置を説明する図。
【図2】光センサの光感度特性を示す図。
【図3】表示装置のブロック図。
【図4】表示装置の構成を説明する図。
【図5】表示装置の画素回路の構成を説明する図。
【図6】光センサ読み出し回路の構成を説明する図。
【図7】光センサの読み出し動作を説明するタイミングチャート。
【図8】トランジスタ及び光センサの作製工程を説明する図。
【図9】トランジスタ及び光センサの作製工程を説明する図。
【図10】トランジスタ及び光センサの作製工程を説明する図。
【図11】画素スイッチ用トランジスタの構成を説明する図。
【図12】トランジスタの構成を説明する図。
【図13】表示装置の構成を説明する図。
【図14】表示装置の動作を説明するタイミングチャート。
【図15】逆スタガ型のトランジスタの縦断面図。
【図16】図15におけるA−A’断面のエネルギーバンド図。
【図17】図15におけるB−B’断面のエネルギーバンド図。
【図18】真空準位と金属の仕事関数と酸化物半導体の電子親和力の関係を示す図。
【図19】電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。但し、本発
明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱
することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解され
る。従って本実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお
、以下に説明する本発明の構成において、同じ物を指し示す符号は異なる図面間において
共通とする。
【0025】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明
瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定
されない。
【0026】
本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは自然数)という用語は、構成要素
の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0027】
なお、電圧とは、ある電位と、基準の電位(例えばグラウンド電位)との電位差のことを
示す場合が多い。よって、電圧、電位、電位差を、各々、電位、電圧、電圧差と言い換え
ることが可能である。
【0028】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制御
するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは、
IGFET(Insulated Gate Field Effect Transi
stor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)
を含む。
【0029】
本明細書における回路図において、酸化物半導体層を用いるトランジスタと明確に判明で
きるように、酸化物半導体層を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。
【0030】
(実施の形態1)
本実施の形態では、光センサを内蔵する表示装置の一形態について説明する。図1は光セ
ンサを内蔵する表示装置800を示している。図1(A)は、表示部801の外側上部に
光センサ802及び光センサ803が設けられている。図1(B)は表示部801の周囲
に光センサ802及び光センサ803が複数設けられている。
【0031】
光センサ802は光電変換素子が非晶質半導体で構成されており、光センサ803は光電
変換素子が多結晶半導体で構成されている。光センサ802または光センサ803により
表示装置周囲の照度を検出し、表示装置の発光輝度を調整する。例えば、表示装置周囲の
照度が強い場合は表示部801の発光輝度を大きくし、表示装置周囲の照度が弱い場合は
表示部801の発光輝度を小さくすることで、使用者の体感上の輝度変化を軽減し、消費
電力の増加を抑えることができる。
【0032】
図1(B)に示したように、光センサ802及び光センサ803を複数配置することで、
表示装置周囲の照度をより正確に検出することができる。また、例えば幾つかの光センサ
が隠された場合においても、残りの光センサにより表示装置周囲の照度を検出することが
できる。
【0033】
図2(A)は、光電変換素子に非晶質半導体として非晶質シリコン薄膜を用いた光センサ
(以下、非晶質薄膜光センサという)と、光電変換素子に多結晶半導体として多結晶シリ
コン薄膜を用いた光センサ(以下、多結晶薄膜光センサという)の光感度特性を示す図で
ある。図2(A)中、特性811は非晶質薄膜光センサの光感度特性を示し、特性812
が多結晶薄膜光センサの光感度特性を示している。
【0034】
非晶質薄膜光センサおよび多結晶薄膜光センサとも、波長0.4〜0.8μmの可視光に
対して光感度を有している。また、非晶質薄膜光センサは可視光に対しての光感度が大き
く、波長0.6μm付近に最大感度を有している。多結晶薄膜光センサは、可視光に対す
る光感度は非晶質薄膜光センサよりも小さいものの、波長0.7μm付近に最大感度を有
しており、また、赤外光の検出も可能である。
【0035】
図2(B)は、入射照度に対する光センサの出力の関係を説明する図である。特性821
は非晶質薄膜光センサの入射照度と出力の関係を示しており、特性822は多結晶薄膜光
センサの入射照度と出力の関係を示している。非晶質薄膜光センサは可視光に対して光感
度が大きいため、比較的暗い環境下においても正確に照度を測定することができるが、屋
外などの照度が強いところでは出力が飽和してしまい、正確な照度を測定することができ
ない。一方、多結晶薄膜光センサは、非晶質薄膜光センサよりも可視光に対して光感度が
小さいため、入射照度が強くても出力が飽和しにくく、照度を正確に測定することができ
る。
【0036】
可視光に対して異なる光感度を持つ光センサを用いることで、表示装置周囲の明るさをよ
り正確に検出し、表示装置の輝度を最適な状態とすることができる。
【0037】
図3は、本実施の形態を適用した表示装置のブロック図である。中央制御部831は入出
力ポート、メモリなどを有している。外部入力833は、外部からの映像信号の入り口で
あり、各種映像信号は外部入力833を通じて中央制御部831に入力される。使用者は
操作部834において、輝度や色調などを別途設定することができる。光センサ841及
び光センサ842は、可視光の検出感度が異なる光センサであり、例えば、光センサ84
1として非晶質薄膜光センサを用い、光センサ842として多結晶薄膜光センサを用いる

【0038】
中央制御部831は、操作部834で設定された輝度や色調などを基に、光センサ841
及び光センサ842により検出された表示装置周囲の照度を考慮して、外部入力833か
ら入力された映像信号を変換し、表示部832に映像を表示する。
【0039】
中央制御部831は、光センサ841及び光センサ842の双方の信号出力を比較し、通
常は信号強度の強い光センサ841(非晶質薄膜光センサ)の出力をもとに表示部832
に表示する映像の輝度補正を行う。ただし、信号強度が強くても、信号出力が飽和してい
る場合は、光センサ842(多結晶薄膜光センサ)の信号出力をもとに表示部832に表
示する映像の輝度補正を行う。このようにして、光センサ841と光センサ842を使い
分けることで、表示装置周囲の照度変化が大きくても適切に輝度補正を行うことができる

【0040】
また、図2(A)で示した通り、非晶質薄膜光センサである光センサ841は赤外光を検
出しないが、多結晶薄膜光センサである光センサ842は赤外光も検出する。この特性差
を利用し、中央制御部831に予め記憶させた算出方法を用いて双方の出力差を検出する
ことで、表示装置周囲の赤外光の照度を検出することができる。
【0041】
例えば、通常は室内よりも屋外の方が赤外光の照度が強いため、赤外光の照度が強い場合
は、可視光の照度を基にした輝度補正のみでなく、屋外使用を前提とした色調補正を同時
に行うことで、表示品質を改善することができる。
【0042】
非晶質薄膜光センサは、例えば非晶質シリコン膜を用いたpin型のフォトダイオードを
用いることができる。まず、第1の半導体層としてp型の導電型を有する半導体層を形成
し、次に第2の半導体層として高抵抗な半導体層(i型半導体層)を形成し、次に第3の
半導体層としてn型の導電型を有する半導体層を形成する。
【0043】
第1の半導体層はp型半導体層であり、p型を付与する不純物元素を含む非晶質シリコン
膜により形成することができる。第1の半導体層は、13族の不純物元素(例えばボロン
(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料
ガスとしてはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl
、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まない
非晶質シリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該非晶質シリコン膜に
不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を
行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合に非晶質シリコン膜を形成する方
法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1
の半導体層の膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0044】
第2の半導体層は、i型半導体層(真性半導体層)であり、非晶質シリコン膜により形成
する。第2の半導体層は、半導体材料ガスを用いて、非晶質シリコン膜をプラズマCVD
法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH)を用いればよい。また
は、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよ
い。第2の半導体層の形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行
っても良い。第2の半導体層の膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成
することが好ましい。
【0045】
第3の半導体層は、n型半導体層であり、n型を付与する不純物元素を含む非晶質シリコ
ン膜により形成する。第3の半導体層は、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含
む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては
シラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl
、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まない非晶質シリコ
ン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該非晶質シリコン膜に不純物元素を
導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、
不純物元素を拡散させるとよい。この場合に非晶質シリコン膜を形成する方法としては、
LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3の半導体層の
膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0046】
また、第1の半導体層、第2の半導体層、及び第3の半導体層として、非晶質半導体では
なく多結晶半導体もしくは微結晶半導体を用いることで、多結晶薄膜光センサを形成する
ことができる。また、第2の半導体層のみを多結晶半導体もしくは微結晶半導体で形成し
てもよい。
【0047】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定
状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導
体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対し
て法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマン
スペクトルが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側に、シフトしている。
即ち、単結晶シリコンを示す520cm−1と非晶質シリコンを示す480cm−1の間
に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボ
ンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませて
いる。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格
子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0048】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、ま
たは周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる
。代表的には、SiH、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、S
iFなどの水素化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び
水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の
希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪
素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、
更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH、C
等の炭化物気体、GeH、GeF等のゲルマニウム化気体、F等を混入させてもよ
い。
【0049】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、半導体層を
積層して形成するpin型フォトダイオードの場合は、p型の半導体層側を受光面とする
とよい。
【0050】
このようにして、可視光に対して異なる光感度を持つ非晶質薄膜光センサと多結晶薄膜光
センサを用いることで、周囲の照度を正確に検出し、表示装置の発光輝度を最適な状態と
することで、使用者の体感上の輝度変化を軽減し、消費電力の増加を抑えることができる
。また、非晶質薄膜光センサと多結晶薄膜光センサの出力差により赤外光の照度を検出し
、表示部の色調補正を行うことで、表示品質を改善することができる。
【0051】
(実施の形態2)
本実施の形態では、光センサを内蔵する表示装置の実施の形態1とは異なる形態について
説明する。
【0052】
表示装置の一例として、本実施の形態では液晶表示装置を例として図4を参照して説明す
る。表示装置220は、画素回路221、表示素子制御回路222及び光センサ制御回路
223を有する。画素回路221は、マトリクス状に配置された複数の画素224を有す
る。各々の画素224は、表示素子225と光センサ226もしくは光センサ236を有
する。
【0053】
光センサ226は、実施の形態1で説明した非晶質薄膜光センサであり、光センサ236
は多結晶薄膜光センサである。図4では、光センサ226を有する画素と、光センサ23
6を有する画素が一列ずつ交互に配置する例が示されているが、特にこれに限定されない
。例えば、すべての画素に光センサ226もしくは光センサ236が配置されていなくて
もよく、一画素おきまたは数画素おきに配置されていてもよい。
【0054】
表示素子225は、トランジスタ、保持容量、液晶層を有する液晶素子などを有する。ト
ランジスタは、保持容量への電荷の注入もしくは排出を制御する機能を有する。保持容量
は、液晶層に印加する電圧に相当する電荷を保持する機能を有する。液晶層に電圧を印加
することで偏光方向が変化する現象を利用して、液晶層を透過する光の明暗(階調)を作
り、画像表示が実現される。液晶表示装置には、光源(バックライト)を液晶層の後面側
に設け、光源から液晶層を透過してきた光で画像を表示する透過型液晶表示装置と、外光
もしくは液晶層の前面側に設けた光源(フロントライト)の光を反射させて画像を表示す
る反射型液晶表示装置がある。
【0055】
なお、カラー画像表示を行う方式として、カラーフィルタを用いる方式、所謂、カラーフ
ィルタ方式がある。これは、液晶層を透過した光がカラーフィルタを通過することで、特
定の色(例えば、赤(R)、緑(G)、青(B))の階調を作ることができる。ここで、
カラーフィルタ方式を用いる際に、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色を発光
する機能を有する画素224を、各々、R画素、G画素、B画素と呼ぶことにする。なお
、白黒画像表示のみを行う場合は、カラーフィルタを用いなくてもよい。
【0056】
また、カラー画像表示を行う別の方式として、バックライトを特定の色(例えば、赤(R
)、緑(G)、青(B))の光源で構成して各色を順次点灯する方式、所謂、フィールド
シーケンシャル方式がある。フィールドシーケンシャル方式では、各色の光源が点灯して
いる期間に、液晶層を透過する光の明暗を作ることで、当該色の諧調を作ることができる

【0057】
なお、表示素子225が液晶素子を有する場合について説明したが、発光素子などの他の
素子を有していてもよい。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子で
あり、具体的には発光ダイオード、EL素子(有機EL素子(Organic Ligh
t Emitting Diode:OLED)、無機EL素子)などが挙げられる。
【0058】
本実施の形態で示す光センサ226及び光センサ236は、フォトダイオードなど、受光
することで電気信号を発する機能を有する素子(光電変換素子)と、トランジスタとを有
する。
【0059】
表示素子制御回路222は、表示素子225を制御するための回路であり、ビデオデータ
信号線などの信号線(「ソース信号線」ともいう)を介して表示素子225に信号を入力
する表示素子駆動回路227と、走査線(「ゲート信号線」ともいう)を介して表示素子
225に信号を入力する表示素子駆動回路228を有する。例えば、表示素子駆動回路2
28は、特定の行に配置された画素が有する表示素子225を選択する機能を有する。ま
た、表示素子駆動回路227は、選択された行の画素が有する表示素子225に任意の電
位を与える機能を有する。なお、表示素子駆動回路228により高電位を印加された表示
素子では、トランジスタが導通状態となり、表示素子駆動回路227により与えられる電
位が供給される。
【0060】
光センサ制御回路223は、光センサ226を制御するための回路であり、光センサ出力
信号線、光センサ基準信号線などの光センサ読み出し回路229と、光センサ駆動回路2
30を有する。光センサ駆動回路230は、特定の行に配置された画素が有する光センサ
226に対して、後述するリセット動作と選択動作とを行う機能を有する。また、光セン
サ読み出し回路229は、選択された行の画素が有する光センサ226の出力信号を取り
出す機能を有する。なお、光センサ読み出し回路229は、アナログ信号である光センサ
の出力を、OPアンプを用いてアナログ信号のまま表示装置外部に取り出す構成や、A/
D変換回路を用いてデジタル信号に変換してから表示装置外部に取り出す構成としてもよ
い。
【0061】
光センサを含む表示装置220において、酸化物半導体を用いたトランジスタを有する回
路を設ける構成とする。
【0062】
光センサを含む表示装置220に含まれる酸化物半導体層を用いるトランジスタは、その
電気的特性変動を抑止するため、変動要因となる水素、水分、水酸基又は水素化物(水素
化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体層より意図的に排除し、かつ不純物の排除
工程によって同時に減少してしまう酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給
することによって、酸化物半導体層を高純度化及び電気的にi型(真性)化する。
【0063】
よって酸化物半導体中の水素及びキャリアは少なければ少ないほどよく、本明細書に開示
するトランジスタは、酸化物半導体に含まれる水素が5×1019/cm以下、好まし
くは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下か、または1
×1016/cm未満として、酸化物半導体に含まれる水素をゼロに近いほど極力除去
し、キャリア密度を1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、
さらに好ましくは1×1011/cm未満とした酸化物半導体でチャネル形成領域が形
成されるトランジスタである。
【0064】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中にキャリアが極めて少ない(ゼロ
に近い)ため、トランジスタのオフ電流を少なくすることができる。トランジスタのオフ
電流は少なければ少ないほど好ましい。オフ電流とは、−1V〜−10Vの間のいずれか
のゲート電圧を印加した場合のトランジスタのソース、ドレイン間を流れる電流のことで
あり、本明細書に開示する酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネル幅(W)1μ
mあたりの電流値が10aA/μm以下、好ましくは1aA/μm以下、さらに好ましく
は1zA/μm以下である。さらに、pn接合がなく、ホットキャリア劣化がないため、
トランジスタの電気的特性がこれらの影響を受けない。
【0065】
画素224の回路図の一例について、図5を用いて説明する。画素224は、トランジス
タ201、保持容量202及び液晶素子203を有する表示素子225と、フォトダイオ
ード204、トランジスタ205及びトランジスタ206を有する光センサ226もしく
は光センサ236とを有する。
【0066】
トランジスタ201は、ゲートがゲート信号線207に、ソース又はドレインの一方がビ
デオデータ信号線210に、ソース又はドレインの他方が保持容量202の一方の電極と
液晶素子203の一方の電極に電気的に接続されている。保持容量202の他方の電極と
液晶素子203の他方の電極は一定の電位に保たれている。液晶素子203は、一対の電
極と、該一対の電極の間に液晶層を含む素子である。
【0067】
トランジスタ201は、ゲート信号線207に”H”が印加されると、ビデオデータ信号
線210の電位を保持容量202と液晶素子203に供給する。保持容量202は、供給
された電位を保持する。液晶素子203は、供給された電位により、光の透過率を変更す
る。
【0068】
酸化物半導体を用いたトランジスタであるトランジスタ201、205、206は、オフ
電流が非常に小さいため、保持容量は非常に小さくてよく、また設けなくてもよい。
【0069】
フォトダイオード204は、非晶質半導体、または多結晶半導体、または微結晶半導体で
形成され、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線208に、他方の電極がゲート
信号線213を介してトランジスタ205のゲートに電気的に接続されている。トランジ
スタ205は、ソース又はドレインの一方が光センサ基準信号線212に、ソース又はド
レインの他方がトランジスタ206のソース又はドレインの一方に電気的に接続されてい
る。トランジスタ206は、ゲートがゲート信号線209に、ソース又はドレインの他方
が光センサ出力信号線211に電気的に接続されている。
【0070】
なお、トランジスタ205とトランジスタ206の配置は、図5の構成に限定されない。
例えば、トランジスタ206のソース又はドレインの一方が光センサ基準信号線212に
、他方がトランジスタ205のソース又はドレインの一方に電気的に接続され、トランジ
スタ205のゲートがゲート信号線209に、ソース又はドレインの他方が光センサ出力
信号線211に電気的に接続される構成としてもよい。
【0071】
次に、光センサ読み出し回路229の構成の一例について、図6を用いて説明する。図6
において、光センサ読み出し回路229が有する画素1列に対応する光センサ駆動回路2
30は、トランジスタ231と保持容量232を有する。また、211は当該画素1列に
対応する光センサ出力信号線、233はプリチャージ信号線である。
【0072】
図5において、トランジスタ205、トランジスタ206、図6においてトランジスタ2
31は酸化物半導体層を用いるトランジスタである。
【0073】
図4に示した光センサ読み出し回路229が有する画素1列に対応する光センサ駆動回路
230では、画素内における光センサの動作に先立ち、光センサ出力信号線211の電位
を基準電位に設定する。光センサ出力信号線211に設定する基準電位は高電位でも低電
位でもよい。図6では、プリチャージ信号線233を”H”とすることで、光センサ出力
信号線211を基準電位である高電位に設定することができる。なお、保持容量232は
、光センサ出力信号線211の寄生容量が大きい場合には、特別に設けなくても良い。
【0074】
次に、表示装置における光センサの読み出し動作の一例について、図7のタイミングチャ
ートを用いて説明する。図7において、信号251〜信号254は、図5におけるフォト
ダイオードリセット信号線208、トランジスタ206のゲートが接続されたゲート信号
線209、トランジスタ205のゲートが接続されたゲート信号線213、光センサ出力
信号線211の電位に相当する。また、信号255は、図6におけるプリチャージ信号線
233の電位に相当する。
【0075】
時刻Aにおいて、フォトダイオードリセット信号線208の電位(信号251)を”H”
とする(リセット動作)と、フォトダイオード204が導通し、トランジスタ205のゲ
ートが接続されたゲート信号線213の電位(信号253)が”H”となる。また、プリ
チャージ信号線233の電位(信号255)を”H”とすると、光センサ出力信号線21
1の電位(信号254)は”H”にプリチャージされる。
【0076】
時刻Bにおいて、フォトダイオードリセット信号線208の電位(信号251)を”L”
にする(累積動作)と、フォトダイオード204の光電流により、トランジスタ205の
ゲートが接続されたゲート信号線213の電位(信号253)が低下し始める。フォトダ
イオード204は、光が照射されると光電流が増大するので、照射される光の量に応じて
トランジスタ205のゲートが接続されたゲート信号線213の電位(信号253)は変
化する。すなわち、トランジスタ205のソースとドレイン間の電流が変化する。
【0077】
時刻Cにおいて、ゲート信号線209の電位(信号252)を”H”にする(選択動作)
と、トランジスタ206が導通し、光センサ基準信号線212と光センサ出力信号線21
1とが、トランジスタ205とトランジスタ206とを介して導通する。すると、光セン
サ出力信号線211の電位(信号254)は、低下していく。なお、時刻C以前に、プリ
チャージ信号線233の電位(信号255)を”L”とし、光センサ出力信号線211の
プリチャージを終了しておく。ここで、光センサ出力信号線211の電位(信号254)
が特定の電位に達するまでの時間(電位が変化する速さ)は、トランジスタ205のソー
スとドレイン間の電流に依存する。すなわち、フォトダイオード204に照射されている
光の量に応じて変化する。
【0078】
時刻Dにおいて、ゲート信号線209の電位(信号252)を”L”にすると、トランジ
スタ206が遮断され、光センサ出力信号線211の電位(信号254)は、時刻D以後
、一定値となる。ここで、一定値となる電位は、フォトダイオード204に照射されてい
る光の量に応じて変化する。したがって、光センサ出力信号線211の電位を取得するこ
とで、フォトダイオード204に照射されている光の量を知ることができる。
【0079】
上記のように、個々の光センサの動作は、リセット動作、累積動作、選択動作を繰り返す
ことで実現される。表示装置において高速撮像を実現するためには、全画素のリセット動
作、累積動作、選択動作を高速に実行することが必要である。また、図5におけるトラン
ジスタ206のオフリーク電流が大きいと、トランジスタ205を介して、光センサ出力
信号線211から、光センサ基準信号線212へリーク電流が流れてしまう。すると、リ
セット動作中にトランジスタ205のゲート電圧が所望の電圧に達しない、光センサ出力
信号線211及び光センサ基準信号線212の電位が不安定になる、などの光センサ動作
の不具合が生じる恐れがある。
【0080】
しかし、本明細書に開示する発明においては、トランジスタ206を、酸化物半導体を用
いたトランジスタで形成しており、オフ電流が非常に小さいので上記不具合を低減するこ
とができる。
【0081】
本実施の形態では、光センサを表示部外ではなく表示部内に設けることで、より正確に輝
度や色調の補正が可能となる。また、光センサを表示部内に設けることで、光センサが隠
される可能性が極めて低くなる。
【0082】
また、画素内の光センサ上にカラーフィルタを設けることで、表示装置周囲の照度をRG
Bの各色成分に分光して検出することができる。表示装置周囲の照度をRGBに分光して
検出することで、表示装置周囲の色温度や色度分布をより正確に検出し、表示映像の緻密
な色調補正を実現することができる。
【0083】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態1及び実施の形態2で説明したトランジスタ及び光センサの
作製工程の一例を、図8乃至図11の断面図を参照して説明する。図10(B)に示すト
ランジスタ390はボトムゲート構造の一種であり、逆スタガ型トランジスタもしくはチ
ャネルエッチ型トランジスタともいう。光センサ391は非晶質薄膜光センサであり、非
晶質シリコンで形成したp層、i層、及びn層を積層したpin型のフォトダイオードを
有している。光センサ392は多結晶薄膜光センサであり、光電変換素子として一つの多
結晶シリコンもしくは微結晶シリコン層中に、p層、i層、及びn層を形成したpin型
のフォトダイオードを有している。なお、光センサ391及び光センサ392は、基板側
から入射する光ではなく、絶縁層312側から入射する外光350を検出することを前提
としている。
【0084】
なお、本実施の形態で示す光センサ391及び光センサ392は、光センサの光電変換素
子部分であるフォトダイオードの断面構造を示している。光センサのトランジスタ部分は
トランジスタ390と同様に作製することができる。
【0085】
また、トランジスタ390はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明するが、必
要に応じて、チャネル形成領域を複数有するマルチゲート構造のトランジスタとして形成
することもできる。
【0086】
以下、図8乃至図10を用いて、基板300上にトランジスタ390を作製する工程を説
明する。
【0087】
まず、絶縁表面を有する基板300上に導電層を形成した後、第1のフォトリソグラフィ
工程によりゲート電極層301、配線層302及び配線層303を形成する。形成された
ゲート電極層及び配線層の端部がテーパー形状であると、上に積層するゲート絶縁層の被
覆性が向上するため好ましい。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよ
い。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製
造コストを低減できる。
【0088】
基板300は、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板の他、本作製工
程の処理温度に耐えうる程度の耐熱性を有するプラスチック基板等を用いることができる
。また、基板に透光性を要しない場合には、ステンレス合金等の金属の基板の表面に絶縁
膜を設けたものを用いてもよい。他にも、結晶化ガラスなどを用いることができる。
【0089】
ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のもの
を用いると良い。また、ガラス基板には、例えば、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノ
ホウケイ酸ガラス若しくはアルミノケイ酸ガラス等の無アルカリガラス基板を用いるとよ
い。なお、酸化ホウ素(B)と比較して酸化バリウム(BaO)を多く含ませるこ
とで、より実用的な耐熱ガラスが得られる。このため、BよりBaOを多く含むガ
ラス基板を用いることが好ましい。
【0090】
また、基板300として、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600
mm×720mm、または620mm×750mm)、第4世代(680mm×880m
m、または730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6
世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8
世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm、または
2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のガラス
基板を用いることができる。
【0091】
基板300とゲート絶縁層304との間に、下地絶縁層を設けてもよい。下地絶縁層は、
基板300からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコ
ン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による
積層構造により形成することができる。下地絶縁層は、スパッタリング法、CVD法、塗
布法、印刷法等を適宜用いて形成することができる。下地絶縁膜の膜中にハロゲン元素、
例えばフッ素、塩素等を少量添加し、ナトリウム等の可動イオンの固定化をさせてもよい
。下地絶縁膜に含ませるハロゲン元素の濃度は、SIMS(二次イオン質量分析法)を用
いた分析により得られる濃度ピークが1×1015cm−3以上1×1020cm−3
下の範囲内とすることが好ましい。
【0092】
また、ゲート電極層301、配線層302及び配線層303(これと同じ層で形成される
配線層や電極層を含む)の材料は、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステ
ン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする
合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0093】
例えば、ゲート電極層301、配線層302及び配線層303の2層の積層構造としては
、アルミニウム層上にモリブデン層が積層された2層の積層構造、銅層上にモリブデン層
を積層した2層構造、銅層上に窒化チタン層若しくは窒化タンタル層を積層した2層構造
、窒化チタン層とモリブデン層とを積層した2層構造、又は窒化タングステン層とタング
ステン層とを積層した2層構造とすることが好ましい。3層の積層構造としては、タング
ステン層または窒化タングステン層と、アルミニウムとシリコンの合金層またはアルミニ
ウムとチタンの合金層と、窒化チタン層またはチタン層とを積層した積層とすることが好
ましい。
【0094】
次いで、ゲート電極層301、配線層302及び配線層303上にゲート絶縁層304を
形成する。
【0095】
ゲート絶縁層304は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコ
ン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、酸化アルミニウム層
、窒化アルミニウム層、酸化窒化アルミニウム層、窒化酸化アルミニウム層、又は酸化ハ
フニウム層を単層で又は積層して形成することができる。スパッタリング法により酸化シ
リコン膜を成膜する場合には、ターゲットとしてシリコンターゲット又は石英ターゲット
を用い、スパッタガスとして酸素又は、酸素及びアルゴンの混合ガスを用いる。
【0096】
なお、後に形成する高純度化された酸化物半導体(不純物を除去することによりi型化又
は実質的にi型化された酸化物半導体)は、界面準位、界面電荷に対して極めて敏感とな
るため、高純度化された酸化物半導体とゲート絶縁層(GI)の界面特性は特に重要であ
る。そのため高純度化された酸化物半導体に接するゲート絶縁層は、高品質化が要求され
る。
【0097】
例えば、μ波(2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVD法は、緻密で絶縁耐圧の
高い高品質な絶縁層を形成できるので好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質ゲ
ート絶縁層とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとするこ
とができるからである。
【0098】
もちろん、ゲート絶縁層として良質な絶縁層を形成できるものであれば、スパッタリング
法やプラズマCVD法など他の成膜方法を適用することができる。また、成膜後の熱処理
によってゲート絶縁層の膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁層であっても
良い。いずれにしても、ゲート絶縁層としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化
物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであれば良い。
【0099】
さらに、トランジスタに対して行う85℃、2×10V/cm、12時間のゲートバイ
アス・熱ストレス試験(BT試験)においては、酸化物半導体に不純物が含まれていると
、不純物と酸化物半導体の主成分との結合手が、強電界(B:バイアス)と高温(T:温
度)により切断され、生成された未結合手がしきい値電圧(Vth)のドリフトを誘発す
ることとなる。
【0100】
これに対して、本明細書に開示する発明は、酸化物半導体の不純物、特に水素や水等を極
力除去し、上記のようにゲート絶縁層との界面特性を良好にすることにより、BT試験に
対しても安定なトランジスタを得ることを可能としている。
【0101】
ゲート絶縁層304は、ゲート電極層301側から窒化物絶縁層と、酸化物絶縁層との積
層構造とすることもできる。例えば、第1のゲート絶縁層としてスパッタリング法により
膜厚50nm以上200nm以下の窒化シリコン層(SiN(y>0))を形成し、第
1のゲート絶縁層上に第2のゲート絶縁層として膜厚5nm以上300nm以下の酸化シ
リコン層(SiO(x>0))を積層して、膜厚100nmのゲート絶縁層とする。ゲ
ート絶縁層の膜厚は、トランジスタに要求される特性によって適宜設定すればよく350
nm乃至400nm程度でもよい。
【0102】
また、ゲート絶縁層304として、ハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y
>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOy(x>0、y>0)
)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOy(x>0、y>0))、
酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク
電流を低減できる。さらには、high−k材料と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化
窒化シリコン、窒化酸化シリコン、または酸化アルミニウムのいずれか一以上との積層構
造とすることができる。
【0103】
また、ゲート絶縁層304に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするため
に、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室でゲート電極層301が形成
された基板300、又はゲート絶縁層304までが形成された基板300を予備加熱し、
基板300に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、
予備加熱の温度としては、100℃以上400℃以下好ましくは150℃以上300℃以
下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この
予備加熱の処理は省略することもできる。
【0104】
次いで、ゲート絶縁層304上に、スパッタリング法により膜厚2nm以上200nm以
下の酸化物半導体層305を形成する(図8(A)参照。)。
【0105】
酸化物半導体層305はスパッタリング法により成膜する。酸化物半導体層305として
は、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O膜や、三元系金属酸化物である
In−Ga−Zn−O膜、In−Sn−Zn−O膜、In−Al−Zn−O膜、Sn−G
a−Zn−O膜、Al−Ga−Zn−O膜、Sn−Al−Zn−O膜や、二元系金属酸化
物であるIn−Zn−O膜、Sn−Zn−O膜、Al−Zn−O膜、Zn−Mg−O膜、
Sn−Mg−O膜、In−Mg−O膜、In−Ga−O膜や、In−O膜、Sn−O膜、
Zn−O膜などの酸化物半導体層を用いることができる。また、上記酸化物半導体層にS
iOを含んでもよい。
【0106】
酸化物半導体層305をスパッタリング法で作製するためのターゲットとして、酸化亜鉛
を主成分とする金属酸化物のターゲットを用いることができる。また、金属酸化物のター
ゲットの他の例としては、In、Ga、及びZnを含む金属酸化物ターゲット(組成比と
して、In:Ga:ZnO=1:1:1[mol数比]、In:Ga
:ZnO=1:1:2[mol数比])を用いることができる。また、In、Ga
、及びZnを含む金属酸化物ターゲットとして、In:Ga:ZnO=2:
2:1[mol数比]、またはIn:Ga:ZnO=1:1:4[mol数
比]の組成比を有するターゲットを用いることもできる。金属酸化物ターゲットの充填率
は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い
金属酸化物ターゲットを用いて形成した酸化物半導体層305は緻密な膜となる。
【0107】
本実施の形態では、酸化物半導体層305をIn−Ga−Zn−O系金属酸化物ターゲッ
トを用いてスパッタリング法により成膜する。また、酸化物半導体層305は、希ガス(
代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(代表的にはアルゴン)及び
酸素雰囲気下においてスパッタリング法により形成することができる。
【0108】
酸化物半導体層の形成は、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、基板を室温又
は400℃未満の温度に加熱する。そして、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水
分が除去されたスパッタガスを導入し、In−Ga−Zn−O系金属酸化物をターゲット
として基板300上に酸化物半導体層305を成膜する。処理室内の残留水分を除去する
ためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオ
ンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段とし
ては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを
用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(
より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該成膜室で成膜した酸
化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。また、クライオポンプにより処理室
内に残留する水分を除去しながらスパッタ成膜を行うことで、酸化物半導体層305を成
膜する際の基板温度は室温から400℃未満とすることができる。
【0109】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa
、直流(DC)電源電力0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適
用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する粉状物質(パー
ティクル、ゴミともいう)が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半
導体膜の膜厚は好ましくは5nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体
材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0110】
スパッタリング法にはスパッタ用電源に高周波電源を用いるRFスパッタリング法、直流
電源を用いるDCスパッタリング法、さらにパルス的にバイアスを与えるパルスDCスパ
ッタリング法がある。RFスパッタリング法は主に絶縁膜を成膜する場合に用いられ、D
Cスパッタリング法は主に金属膜を成膜する場合に用いられる。
【0111】
また、材料の異なるターゲットを複数設置できる多元スパッタ装置もある。多元スパッタ
装置は、同一チャンバーで異なる材料膜を積層成膜することも、同一チャンバーで複数種
類の材料を同時に放電させて成膜することもできる。
【0112】
また、チャンバー内部に磁石機構を備えたマグネトロンスパッタリング法を用いるスパッ
タ装置や、グロー放電を使わずマイクロ波を用いて発生させたプラズマを用いるECRス
パッタリング法を用いるスパッタ装置がある。
【0113】
また、スパッタリング法を用いる成膜方法として、成膜中にターゲット物質とスパッタガ
ス成分とを化学反応させてそれらの化合物薄膜を形成するリアクティブスパッタリング法
や、成膜中に基板にも電圧をかけるバイアススパッタリング法もある。
【0114】
酸化物半導体膜を成膜する際に用いるスパッタガスとしては、水素、水、水酸基又は水素
化物などの不純物が、濃度ppm程度、濃度ppb程度まで除去された高純度ガスが好ま
しい。
【0115】
次いで、酸化物半導体層305を第2のフォトリソグラフィ工程により島状の酸化物半導
体層306に加工する(図8(B)参照。)。また、島状の酸化物半導体層306を形成
するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをイン
クジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0116】
なお、ここでの酸化物半導体層305のエッチングは、ドライエッチングでもウェットエ
ッチングでもよく、両方を用いてもよい。
【0117】
ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例え
ば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(
CCl)など)が好ましい。
【0118】
また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(S
)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(H
Br)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガ
スを添加したガス、などを用いることができる。
【0119】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etch
ing)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導
結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングでき
るように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加さ
れる電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0120】
ウェットエッチングに用いるエッチング液としては、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液や、
アンモニア過水(31重量%過酸化水素水:28重量%アンモニア水:水=5:2:2容
量比)などを用いることができる。また、ITO−07N(関東化学社製)を用いてもよ
い。
【0121】
また、ウェットエッチング後のエッチング液はエッチングされた材料とともに洗浄によっ
て除去される。その除去された材料を含むエッチング液の廃液を精製し、含まれる材料を
再利用してもよい。当該エッチング後の廃液から酸化物半導体層に含まれるインジウム等
の材料を回収して再利用することにより、資源を有効活用し低コスト化することができる

【0122】
所望の加工形状にエッチングできるように、材料に合わせてエッチング条件(エッチング
液、エッチング時間、温度等)を適宜調節する。
【0123】
次いで、ゲート絶縁層304の上に半導体層307を形成する。半導体層307としては
、既知のCVD法、スパッタ法を用いて結晶構造が微結晶または多結晶である半導体層を
形成することができる。CVD法で形成する場合の堆積性気体としては、シリコンまたは
ゲルマニウムを含むガスを用いることができる。シリコンを含む堆積性気体としては、シ
ラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロロシラン(SiHC1)、Si
HCl、塩化珪素(SiCl)、フッ化珪素(SiF)などを用いることができる
。ゲルマニウムを含む堆積性気体としては、ゲルマン(GeH)、ジゲルマン(Ge
フッ化ゲルマン(GeF)などを用いることができる。
【0124】
また、多結晶半導体は、非晶質半導体または微結晶半導体を形成した後、600℃以上の
加熱処理、RTA処理、またはレーザー光照射により形成することができる。RTA処理
、レーザー光照射による結晶化は、半導体膜を瞬間的に加熱することができるため、歪点
が低い基板上に多結晶半導体を形成する場合に特に有効である。
【0125】
また、非晶質半導体または微結晶半導体に、結晶化を助長する元素を接触もしくは添加す
ることで、結晶化のための熱処理温度を450℃程度まで下げることができる。結晶化を
助長する金属元素としては鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウ
ム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスニウム(Os)、イリジウム
(Ir)、チタン(Ti)、白金(Pt)、銅(Cu)及び金(Au)から選ばれた一種
又は複数種類を用いることができる。
【0126】
本実施の形態では、半導体層307としてプラズマCVD法により非晶質シリコン層を形
成し、第3のフォトリソグラフィ工程により島状の半導体層とする。また、結晶化を助長
する金属元素として半導体層307にニッケル(Ni)を添加する。(図8(C)参照。

【0127】
次いで、酸化物半導体層306の脱水化または脱水素化を行う。脱水化または脱水素化を
行う第1の加熱処理の温度は、400℃以上750℃以下、好ましくは550℃以上60
0℃以下とする。この時、半導体層307の結晶化も同時に行う。なお、加熱処理時間は
、1時間以上行うこととする。ここでは、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入
し、酸化物半導体層に対して窒素雰囲気下において加熱処理を行った後、大気に触れるこ
となく、酸化物半導体層への水や水素の再混入を防ぐ。その後、同じ炉に高純度の酸素ガ
ス、高純度のNOガス、又は超乾燥エア(露点が−40℃以下、好ましくは−60℃以
下)を導入して冷却を行う。酸素ガスまたはNOガスに、水、水素などが含まれないこ
とが好ましい。または、加熱処理装置に導入する酸素ガスまたはNOガスの純度を、6
N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素
ガスまたはNOガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)と
することが好ましい。
【0128】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、例えば、GRTA(Gas Rapid Th
ermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal
Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用
いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノン
アークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのラ
ンプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。また、LR
TA装置、ランプだけでなく、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によっ
て、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。GRTAとは高温のガスを用いて加熱
処理を行う方法である。ガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処
理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。RTA法を用いて、600℃
〜750℃で数分間加熱処理を行ってもよい。
【0129】
また、脱水化または脱水素化を行う第1の加熱処理後に200℃以上400℃以下、好ま
しくは200℃以上300℃以下の温度で酸素ガスまたはNOガス雰囲気下での加熱処
理を行ってもよい。
【0130】
以上の工程を経ることによって、酸化物半導体層306及び半導体層307が多結晶化し
た半導体層308を得る。(図8(D)参照。)
【0131】
本実施の形態では、半導体層308を酸化物半導体層306と同様にゲート絶縁層304
上に形成しているが、半導体層308と酸化物半導体層306は異なる層位置となるよう
に形成してもよい。例えば、半導体層307を酸化物半導体層306の下層に形成し、第
1の加熱処理を行っても、酸化物半導体層306の脱水化または脱水素化と、半導体層3
07の多結晶化を同時に行うことができる。
【0132】
なお、本実施の形態で用いる酸化物半導体は、酸化物半導体に含まれる水素が5×10
/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017
cm以下か、または1×1016/cm未満であり、酸化物半導体に含まれる水素が
除去されている。即ち、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純
度化されている。なお、酸化物半導体層中の水素濃度測定は、二次イオン質量分析法(S
IMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)で行えば
よい。
【0133】
また、キャリア密度は、ホール効果(Hall effect)測定や、CV(Capa
citance Voltage)測定により測定することができる。ホール効果測定や
CV測定により測定される酸化物半導体のキャリア密度は、シリコンの真性キャリア密度
1.45×1010/cmと同等、もしくはそれ以下である。なお、フェルミディラッ
クの分布則に従って計算すると、シリコンの真性キャリア密度は1010/cmである
のに対し、エネルギーギャップが3eV以上ある酸化物半導体の真性キャリア密度は10
−7/cmである。即ち、酸化物半導体の真性キャリア密度は、限りなくゼロに近い。
【0134】
エネルギーギャップは2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以
上として、ドナーを形成する水素等の不純物を極力低減し、キャリア密度を1×1014
/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011
cm未満となるようにする。即ち、酸化物半導体層のキャリア密度を限りなくゼロに近
くすることができる。また、エネルギーギャップの広い酸化物半導体層を用いることで、
室温から180℃程度の実用的な範囲で温度特性を安定化させることができる。
【0135】
また、本実施の形態に係る酸化物半導体は、n型不純物である水素を酸化物半導体から除
去し、酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することによ
り真性(i型)とし、または真性型とせんとしたものである。すなわち、不純物を添加し
てi型化するのでなく、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物を極力除去するこ
とにより、高純度化されたi型(真性半導体)またはそれに近づけることを特徴としてい
る。そうすることにより、フェルミ準位(Ef)は真性フェルミ準位(Ei)と同じレベ
ルにまですることができる。
【0136】
このように酸化物半導体に含まれる水素を徹底的に除去することにより高純度化された酸
化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、チャネル幅が10mmの
場合でさえも、ドレイン電圧が1V及び10Vの場合において、ゲート電圧が−5Vから
−20Vの範囲において、トランジスタのドレイン電流を1×10−13A以下とするこ
とができる。
【0137】
上述の酸化物半導体を具備するトランジスタは、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を1
0aA/μm(1×10−17A/μm)以下、好ましくは1aA/μm(1×10−1
8A/μm)以下、さらに好ましくは1zA/μm(1×10−21A/μm)以下とす
ることができる。このように、酸化物半導体の主成分以外の不純物、代表的には水素、水
、水酸基または水素化物などが極力含まれないように高純度化することにより、トランジ
スタの動作を良好なものとすることができる。
【0138】
ここで、酸化物半導体を用いたトランジスタの電導機構につき、図15乃至図18を用い
て説明する。なお、以下の説明では、理解の容易のため理想的な状況を仮定しており、そ
のすべてが現実の様子を反映しているとは限らない。また、以下の説明はあくまでも一考
察に過ぎず、発明の有効性に影響を与えるものではないことを付記する。
【0139】
図15は、酸化物半導体を用いたトランジスタ(薄膜トランジスタ)の断面図である。ゲ
ート電極(GE1)上にゲート絶縁層(GI)を介して酸化物半導体層(OS)が設けら
れ、その上にソース電極(S)およびドレイン電極(D)が設けられ、ソース電極(S)
およびドレイン電極(D)を覆うように絶縁層が設けられている。
【0140】
図16には、図15のA−A’断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示す。また
、図16中の黒丸(●)は電子を示し、白丸(○)は正孔を示し、それぞれは電荷(−q
,+q)を有している。ドレイン電極に正の電圧(V>0)を印加した上で、破線はゲ
ート電極に電圧を印加しない場合(V=0)、実線はゲート電極に正の電圧(V>0
)を印加する場合を示す。ゲート電極に電圧を印加しない場合は高いポテンシャル障壁の
ために電極から酸化物半導体側へキャリア(電子)が注入されず、電流を流さないオフ状
態を示す。一方、ゲートに正の電圧を印加するとポテンシャル障壁が低下し、電流を流す
オン状態を示す。
【0141】
図17には、図15におけるB−B’の断面におけるエネルギーバンド図(模式図)を示
す。図17(A)は、ゲート電極(GE1)に正の電圧(V>0)が与えられた状態で
あり、ソース電極とドレイン電極との間にキャリア(電子)が流れるオン状態を示してい
る。また、図17(B)は、ゲート電極(GE1)に負の電圧(V<0)が印加された
状態であり、オフ状態(少数キャリアは流れない状態)である場合を示す。
【0142】
図18は、真空準位と金属の仕事関数(φ)、酸化物半導体の電子親和力(χ)の関係
を示す。常温において金属中の電子は縮退しており、フェルミ準位は伝導帯内に位置する
。一方、従来の酸化物半導体はn型であり、そのフェルミ準位(E)は、バンドギャッ
プ中央に位置する真性フェルミ準位(E)から離れて、伝導帯寄りに位置している。な
お、酸化物半導体において水素の一部はドナーとなりn型化する要因の一つであることが
知られている。
【0143】
これに対して開示する発明の一態様に係る酸化物半導体は、n型化の要因である水素を酸
化物半導体から除去し、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれな
いように高純度化することにより真性(i型)とし、または真性とせんとしたものである
。すなわち、不純物元素を添加してi型化するのでなく、水素や水等の不純物を極力除去
することにより、高純度化されたi型(真性半導体)またはそれに近づけることを特徴と
している。これにより、フェルミ準位(E)は真性フェルミ準位(E)と同程度とす
ることができる。
【0144】
酸化物半導体のバンドギャップ(E)は3.15eVで、電子親和力(χ)は4.3V
と言われている。ソース電極およびドレイン電極を構成するチタン(Ti)の仕事関数は
、酸化物半導体の電子親和力(χ)とほぼ等しい。この場合、金属−酸化物半導体界面に
おいて、電子に対してショットキー型の障壁は形成されない。
【0145】
このとき電子は、図17(A)で示すように、ゲート絶縁層と高純度化された酸化物半導
体との界面付近(酸化物半導体のエネルギー的に安定な最低部)を移動する。
【0146】
また、図17(B)に示すように、ゲート電極(GE1)に負の電位が与えられると、少
数キャリアであるホールは実質的にゼロであるため、電流は限りなくゼロに近い値となる

【0147】
このように酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高純
度化することにより、真性(i型)とし、または実質的に真性となるため、ゲート絶縁層
との界面特性が顕在化する。そのため、ゲート絶縁層には、酸化物半導体と良好な界面を
形成できるものが要求される。具体的には、例えば、VHF帯〜マイクロ波帯の電源周波
数で生成される高密度プラズマを用いたCVD法で作製される絶縁層や、スパッタリング
法で作製される絶縁層などを用いることが好ましい。
【0148】
酸化物半導体を高純度化しつつ、酸化物半導体とゲート絶縁層との界面を良好なものとす
ることにより、例えば、トランジスタのチャネル幅(W)が1×10μm、チャネル長
(L)が3μmの場合には、10−13A以下のオフ電流、0.1V/dec.のサブス
レッショルドスイング値(S値)(ゲート絶縁層の厚さ:100nm)が実現され得る。
【0149】
このように、酸化物半導体の主成分以外の元素(不純物元素)が極力含まれないように高
純度化することにより、トランジスタの動作を良好なものとすることができる。
【0150】
従って、単にバンドギャップの広い酸化物半導体をトランジスタに適用するのではなく、
酸化物半導体の主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することにより、キ
ャリア密度を1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに
好ましくは1×1011/cm未満となるようにすることで、実用的な動作温度で熱的
に励起されるキャリアを排除して、ソース側から注入されるキャリアのみによってトラン
ジスタを動作させることができる。それにより、オフ電流を1×10−17A以下にまで
下げると共に、温度変化によってオフ電流がほとんど変化しない極めて安定に動作するト
ランジスタを得ることができる。
【0151】
本発明の技術思想の一つは、酸化物半導体中に、更に加えることをせずに逆に不本意に存
在する水、水素という不純物を除去することにより、酸化物半導体自体を高純度化するこ
とにある。すなわち、ドナー準位を構成する水または水素を除去することにより、更に酸
素欠損を除去するために酸素を十分に供給することにより、酸化物半導体自体を高純度化
することを特徴としている。
【0152】
酸化物半導体は成膜直後ですら1020/cmのレベルの水素がSIMS(二次イオン
質量分析法)で観察される。このドナー準位を作る水または水素という不純物を意図的に
除去し、更に水または水素の除去に伴い同時に減少してしまう酸素(酸化物半導体の成分
の一つ)を酸化物半導体に加えることにより、酸化物半導体を高純度化し、電気的にi型
(真性)半導体とすることを技術思想の一つとしている。
【0153】
結果として、水素の量は少なければ少ないほど良く、酸化物半導体中のキャリアも少なけ
れば少ないほど良い。酸化物半導体は、絶縁ゲート型トランジスタに用いる場合に半導体
としてのキャリアを意図的に有するというよりも、逆に酸化物半導体のキャリアは無くし
てしまい、半導体としてはキャリアを通過させる通路としての意味を与えた、いわゆる高
純度化したi型(真性)半導体である。
【0154】
その結果、酸化物半導体中にキャリアが無い、または極めて少なくさせることにより、絶
縁ゲート型トランジスタではオフ電流が少なくなるというのが本発明の一態様における技
術思想である。すなわち、その指標として、キャリア密度は1×1014/cm未満、
好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm未満が求
められる。本発明の技術思想的には、ゼロまたはゼロに近いことが理想である。
【0155】
また結果として、酸化物半導体は通路(パス)として機能し、酸化物半導体自体がキャリ
アを有さない、または極めて少ないように高純度化したi型(真性)とし、キャリアはソ
ース側となる電極により供給される。供給の程度は、酸化物半導体の電子親和力χ、フェ
ルミレベル、理想的には真性フェルミレベルと一致したフェルミレベル、及びソース、ド
レインの電極の仕事関数より導かれるバリアハイト(障壁高さ)で決められる。
【0156】
このため、オフ電流は少なければ少ないほど良く、ドレイン電圧を1〜10Vのいずれか
の電圧とした場合の絶縁ゲート型トランジスタ特性において、オフ電流を10aA/μm
(チャネル幅1μm当たりの電流)以下、好ましくは1aA/μm以下とすることができ
る。
【0157】
次に、半導体層308中にドナーまたはアクセプタとなる不純物元素を添加し、n型不純
物領域308a、p型不純物領域308cを形成する。不純物元素の添加は、イオンドー
ピング装置を用いて実現することができる。イオンドーピング装置は、ソースガスを励起
してプラズマを生成し、プラズマ中からイオンを引き出し、質量分離せずにイオンを被処
理物に導入する。イオンドーピング装置を用いることにより、半導体層308中に均一に
イオンを導入することができる。なお、質量分離装置を備えているイオンドーピング装置
では、質量分離を伴うイオン注入を行うことができる。
【0158】
まず、第4のフォトリソグラフィ工程により、n型不純物領域308aとなる領域以外に
レジストマスクを形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい
。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造
コストを低減できる。
【0159】
次に、本実施の形態では不純物元素を含むソースガスとしてホスフィン(PH)を用い
、n型不純物領域308aにn型を付与する不純物元素が1×1019〜5×1020
cm程度の濃度で含まれるように添加する。本実施の形態では、n型を付与する不純物
元素としてリン(P)を用いる。
【0160】
次に、第5のフォトリソグラフィ工程により、p型不純物領域308cとなる領域以外に
レジストマスクを形成する。
【0161】
次に、本実施の形態では不純物元素を含むソースガスとしてジボラン(B)を用い
、p型不純物領域308cにp型を付与する不純物元素が1×1019〜5×1020
cm程度の濃度で含まれるように添加する。本実施の形態では、p型を付与する不純物
元素としてボロン(B)を用いる。
【0162】
n型不純物領域308aとp型不純物領域308cに挟まれた、i型領域308bは真性
半導体として機能する。真性半導体は、理想的には、不純物を含まずにフェルミレベルが
禁制帯のほぼ中央に位置する半導体であるが、ドナーとなる不純物(例えば、リン(P)
など)またはアクセプタとなる不純物(例えば、ボロン(B)など)を添加して、フェル
ミレベルが禁制帯の中央に位置するように調整してもよい。(図9(A)参照。)
【0163】
本実施の形態では、第1の加熱処理の後に半導体層308中に不純物を添加するが、第1
の加熱処理の前に不純物を添加してもよい。
【0164】
なお、配線層303は基板側から入射する光が、半導体層308に当たらないようにする
ための遮光膜としても機能する。さらに、半導体層308を透過した外光350を反射さ
せ、再度、半導体層308に入射させることで、光センサ392の検出感度を良好なもの
とすることができる。
【0165】
次いで、第6のフォトリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成し、配線層303と
重なるゲート絶縁層の一部を選択的にエッチング除去して、コンタクトホール309を形
成した後、レジストマスクを除去する。
【0166】
次いで、ゲート絶縁層304、及び酸化物半導体層306上に、ソース電極層またはドレ
イン電極層として機能する電極層310aおよび電極層310bを形成するための導電層
を形成する。導電層はスパッタリング法や真空蒸着法で形成すればよい。ソース電極層及
びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線層や電極層を含む)となる導電層の材
料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wからから選ばれた元素、または上
述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。ま
た、Al、Cuなどの金属層の一方または双方にCr、Ta、Ti、Mo、Wなどの高融
点金属層を積層させた構成としても良い。また、Si、Ti、Ta、W、Mo、Cr、N
d、Sc、YなどAl膜に生ずるヒロックやウィスカーの発生を防止する元素をAl材料
に添加することで、Al材料の耐熱性を向上させることが可能となる。
【0167】
また、導電層は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを
含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、Ti
膜と、そのTi膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にTi膜を成膜する
3層構造などが挙げられる。
【0168】
また、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線層を含む)とな
る導電層としては導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸
化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジ
ウム酸化スズ合金(In―SnO、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜
鉛合金(In―ZnO)または前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコ
ンを含ませたものを用いることができる。
【0169】
第7のフォトリソグラフィ工程により導電層上にレジストマスクを形成し、選択的にエッ
チングを行って電極層310a、電極層310b、電極層311a、電極層311bを形
成した後、レジストマスクを除去する(図9(B)参照。)。電極層311aは、n型不
純物領域308aに接続し、コンタクトホール309を介して配線層303と接続されて
いる。電極層311bは、p型不純物領域308cに接続し、図示していない共通配線層
に接続している。また、酸化物半導体層306に接続する電極層310aおよび電極層3
10bのどちらか一方は、トランジスタのソース電極層として機能し、他方はトランジス
タのドレイン電極層として機能する。
【0170】
第7のフォトリソグラフィ工程でのレジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレ
ーザ光やArFレーザ光を用いる。トランジスタのチャネル長Lは、酸化物半導体層30
6上で隣り合い、かつ、酸化物半導体層306と接する電極層310aの端部と、酸化物
半導体層306と接する電極層310bの端部までの距離によって決定される。なお、チ
ャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短
い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いて第7のフォトリソグラ
フィ工程でのレジストマスク形成時の露光を行う。超紫外線による露光は、解像度が高く
焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上
1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化でき、さらにオフ電
流値が極めて小さいため、低消費電力化も図ることができる。
【0171】
なお、導電層のエッチングの際に、酸化物半導体層306は除去されないようにそれぞれ
の材料及びエッチング条件を適宜調節する。
【0172】
本実施の形態では、導電層としてTi膜を用いて、酸化物半導体層306にはIn−Ga
−Zn−O系酸化物半導体を用いて、エッチャントとしてアンモニア過水を用いる。
【0173】
なお、第7のフォトリソグラフィ工程では、酸化物半導体層306は一部のみがエッチン
グされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。また、電極層310a
、電極層310bを形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい
。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造
コストを低減できる。
【0174】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過
した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマ
スクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマ
スクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形するこ
とができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる
。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応
するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ
、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0175】
第7のフォトリソグラフィ工程終了後、レジストマスクを除去した後にNO、N、ま
たはArなどのガスを用いたプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に
付着した吸着水などを除去してもよい。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズ
マ処理を行ってもよい。
【0176】
プラズマ処理を行った場合、大気に触れることなく、酸化物半導体層の一部に接する保護
絶縁膜となる酸化物絶縁層として絶縁層312を形成する(図9(C)参照。)。本実施
の形態では、酸化物半導体層306が電極層310a、電極層310bと重ならない領域
において、酸化物半導体層306と絶縁層312とが接するように形成する。
【0177】
本実施の形態では、絶縁層312として、基板300を室温又は100℃未満の温度に加
熱し、シリコン半導体のターゲットを用いて、スパッタガスとして水素及び水分が除去さ
れた高純度酸素を含むガスを導入し、スパッタリング法により欠陥を含む酸化シリコン層
を成膜する。
【0178】
例えば、純度が6Nであり、ボロンがドープされたシリコンターゲット(抵抗値1Ω・m
)を用い、基板とターゲットの間との距離(T−S間距離)を89mm、圧力0.4Pa
、直流(DC)電源電力6kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下でパルスDCス
パッタリング法により酸化シリコン膜を成膜する。膜厚は300nmとする。なお、シリ
コンターゲットに代えて石英(好ましくは合成石英)を酸化シリコン膜を成膜するための
ターゲットとして用いることができる。なお、スパッタガスとして酸素又は、酸素及びア
ルゴンの混合ガスを用いる。
【0179】
この場合において、処理室内の残留水分を除去しつつ絶縁層312を成膜することが好ま
しい。これは、酸化物半導体層306及び絶縁層312に水素、水酸基又は水分が含まれ
ないようにするためである。
【0180】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。
例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが
好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであ
ってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素原子や、水(H
O)など水素原子を含む化合物等が排気されるため、当該成膜室で成膜した絶縁層312
に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0181】
なお、絶縁層312として、酸化シリコン層に代えて、酸化窒化シリコン層、酸化アルミ
ニウム層、または酸化窒化アルミニウム層などを用いることもできる。
【0182】
さらに、絶縁層312と酸化物半導体層306とを接した状態で100℃乃至400℃で
加熱処理を行ってもよい。本実施の形態における絶縁層312は欠陥を多く含むため、こ
の加熱処理によって酸化物半導体層306中に含まれる水素、水分、水酸基又は水素化物
などの不純物を絶縁層312に拡散させ、酸化物半導体層306中に含まれる該不純物を
より低減させることができる。
【0183】
酸化物絶縁層上に保護絶縁層を設けてもよい。本実施の形態では、保護絶縁層313を絶
縁層312上に形成する。保護絶縁層313としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコ
ン膜、窒化アルミニウム膜、又は窒化酸化アルミニウム膜などを用いる。
【0184】
保護絶縁層313として、絶縁層312まで形成された基板300を100℃〜400℃
の温度に加熱し、水素及び水分が除去された高純度窒素を含むスパッタガスを導入しシリ
コンターゲットを用いて、スパッタリング法により窒化シリコン膜を成膜する。この場合
においても、絶縁層312と同様に、処理室内の残留水分を除去しつつ保護絶縁層313
を成膜することが好ましい。
【0185】
保護絶縁層313を形成する場合、保護絶縁層313の成膜時に100℃〜400℃に基
板300を加熱することで、酸化物半導体層中に含まれる水素若しくは水分を酸化物絶縁
層に拡散させることができる。この場合上記絶縁層312の形成後に加熱処理を行わなく
てもよい。
【0186】
絶縁層312として酸化シリコン層を形成し、保護絶縁層313として窒化シリコン層を
積層する場合、酸化シリコン層と窒化シリコン層を同じ処理室において、共通のシリコン
ターゲットを用いて成膜することができる。先に酸素を含むエッチングガスを導入して、
処理室内に装着されたシリコンターゲットを用いて酸化シリコン層を形成し、次にエッチ
ングガスを、窒素を含むエッチングガスに切り替えて同じシリコンターゲットを用いて窒
化シリコン層を成膜する。酸化シリコン層と窒化シリコン層とを大気に曝露せずに連続し
て形成することができるため、酸化シリコン層表面に水素や水分などの不純物が吸着する
ことを防止することができる。この場合、絶縁層312として酸化シリコン層を形成し、
保護絶縁層313として窒化シリコン層を積層した後、酸化物半導体層中に含まれる水素
若しくは水分を酸化物絶縁層に拡散させるための加熱処理(温度100℃乃至400℃)
を行うとよい。
【0187】
保護絶縁層313の形成後、さらに大気中、100℃以上200℃以下、1時間以上30
時間以下での加熱処理を行ってもよい。この加熱処理は一定の加熱温度を保持して加熱し
てもよいし、室温から、100℃以上200℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から
室温までの降温を複数回くりかえして行ってもよい。また、この加熱処理を、酸化物絶縁
層の形成前に、減圧下で行ってもよい。減圧下で加熱処理を行うと、加熱時間を短縮する
ことができる。この加熱処理によって、ノーマリーオフとなるトランジスタを得ることが
できる。よって表示装置の信頼性を向上できる。
【0188】
また、ゲート絶縁層上にチャネル形成領域とする酸化物半導体層を成膜するに際し、反応
雰囲気中の残留水分を除去することで、該酸化物半導体層中の水素及び水素化物の濃度を
低減することができる。
【0189】
上記の工程は、液晶表示パネル、エレクトロルミネセンス表示パネル、電子インクを用い
た表示装置などのバックプレーン(トランジスタが形成された基板)の製造に用いること
ができる。
【0190】
以上の工程で、水素、水分、水酸基又は水素化物の濃度が低減された酸化物半導体層30
6を有するトランジスタ390を形成することができる(図9(C)参照。)。
【0191】
次に、第8のフォトリソグラフィ工程により、レジストマスクを形成し、絶縁層312お
よび保護絶縁層313を選択的にエッチング除去することにより、コンタクトホール31
4を形成する。
【0192】
次いで、ゲート電極層301と同様の材料を用いて導電層を形成し、第9のフォトリソグ
ラフィ工程によりレジストマスクを形成し、導電層を選択的にエッチング除去することに
より、電極層315を形成する。ここでは電極層315としてチタンを単層で形成し、B
ClとClの混合ガスを用いてドライエッチングを行う。電極層315は、コンタク
トホール314を介して配線層302と接続されている(図9(D)参照。)。
【0193】
この時、酸化物半導体層306と重畳するように導電層を残し、ゲート電極層360を形
成してもよい。本実施の形態において、ゲート電極層360はいわゆるバックゲートとし
て機能する。ゲート電極層360を有することで、酸化物半導体層306中の電界を制御
することが可能であり、これによって、トランジスタ390の電気的特性を制御すること
ができる。なお、ゲート電極層360は、他の配線層や電極などと電気的に接続されて何
らかの電位が与えられても良いし、絶縁されてフローティング状態であっても良い。
【0194】
次に、電極層315上に第1半導体膜、第2半導体膜、第3半導体膜を順次積層する。こ
こでは、第1半導体膜は、n型半導体層であり、n型を付与する不純物元素を含む非晶質
シリコン膜により形成する。第1半導体膜は、15族の不純物元素(例えばリン(P))
を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとし
てはシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiH
Cl、SiCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まない非晶質シ
リコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該非晶質シリコン膜に不純物元
素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うこと
で、不純物元素を拡散させるとよい。この場合に非晶質シリコン膜を形成する方法として
は、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜
の膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0195】
第2半導体膜は、i型半導体層(真性半導体層)であり、非晶質シリコン膜により形成す
る。第2半導体膜は、半導体材料ガスを用いて、非晶質シリコン膜をプラズマCVD法に
より形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH)を用いればよい。または、
Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiF等を用いてもよい。
第2半導体膜の形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行っても
良い。第2半導体膜の膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成すること
が好ましい。
【0196】
第3半導体膜はp型半導体層であり、p型を付与する不純物元素を含む非晶質シリコン膜
により形成する。第3半導体膜は13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導
体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン
(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、S
iCl、SiF等を用いてもよい。また、不純物元素を含まない非晶質シリコン膜を
形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該非晶質シリコン膜に不純物元素を導入し
てもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物
元素を拡散させるとよい。この場合に非晶質シリコン膜を形成する方法としては、LPC
VD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜の膜厚は1
0nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0197】
また、第1半導体膜、及び第3半導体膜は、非晶質半導体ではなく、多結晶半導体または
微結晶半導体を用いて形成してもよい。
【0198】
次に、第9のフォトリソグラフィ工程を行い、レジストマスクを形成し、第1半導体膜、
第2半導体膜、および第3半導体膜の不要な部分を選択的にエッチング除去して、第1半
導体層316、第2半導体層317、第3半導体層318を形成する(図10(A)参照
)。なお、ここではCFとClの混合ガス、CFとOの混合ガス、CHFとH
eの混合ガス等を用いてドライエッチングを行い、テーパー部にエッチング残渣が残らな
いようにする。
【0199】
なお、電極層315は基板側から入射する光が、第2半導体層317に当たらないように
するための遮光膜としても機能する。さらに、第1半導体層316、第2半導体層317
、第3半導体層318を透過した外光350を反射させ、再度、第2半導体層317に入
射させることで、光センサ391の検出感度を良好なものとすることができる。
【0200】
次に、絶縁層319を形成する。絶縁層319は窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化
酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造に
より形成することができる。ここでは、絶縁層319として、酸化シリコン膜を形成する

【0201】
次に、第10のフォトリソグラフィ工程により、レジストマスクを形成し、第3半導体層
318上の絶縁層319を選択的にエッチング除去することにより、コンタクトホール3
20を形成する。
【0202】
次いで、ゲート電極層301と同様の材料を用いて導電膜を成膜し、第11のフォトリソ
グラフィ工程により、レジストマスクを形成し、導電膜の不要な部分を選択的にエッチン
グ除去して電極層321を形成する。ここでは、導電膜としてアルミニウムを主成分とす
る膜とチタン膜をスパッタリング法により積層して成膜する。
【0203】
電極層321は、コンタクトホール320を介して第3半導体層318と接続し、図示し
ていない共通配線層に接続している。
【0204】
上記の作製工程により、基板上にトランジスタおよび光センサを形成することができる。
本実施の形態では、光センサ392が有するpin型フォトダイオードを、p層、i層、
及びn層を横に並べて配置する横型のpin型フォトダイオードで説明したが、光センサ
391が有するpin型フォトダイオードの様に、p層、i層、及びn層を縦方向に積層
形成する構成としてもよい。
【0205】
図11は、上記の工程で作製したトランジスタを、画素スイッチ用トランジスタとして用
いる一例を示している。トランジスタ395は、酸化物半導体層306を有するトランジ
スタであり、図8乃至図10で説明したトランジスタ390とほぼ同様に作製することが
できる。トランジスタ395はバックゲートとして機能するゲート電極層360を有して
いないが、必要であれば適宜バックゲートを形成してもよい。
【0206】
図11では、トランジスタ395上に平坦化絶縁層として絶縁層331が形成されており
、絶縁層331の上に画素電極層332が形成されている。絶縁層331としてはポリイ
ミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱
性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(l
ow−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラ
ス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させる
ことで、絶縁層331を形成してもよい。
【0207】
画素電極層332としては、前述したゲート電極層や、ソース電極層、ドレイン電極層と
同様の材料を用いることができる。
【0208】
次に、トランジスタ395形成後から、画素電極層332を形成するまでの工程について
説明する。絶縁層319を形成した後、第10のフォトリソグラフィ工程により、コンタ
クトホール320を形成するが、この時同時に電極層310b上の絶縁層312、保護絶
縁層313、絶縁層319、を選択的にエッチング除去し、コンタクトホール330を形
成する。
【0209】
次いで、第11のフォトリソグラフィ工程により、レジストマスクを形成し、導電膜の不
要な部分を選択的にエッチング除去して電極層321を形成するが、電極層321の形成
と同時にコンタクトホール330を覆う電極層322を形成する。
【0210】
次いで、平坦化絶縁層として機能する絶縁層331を形成する。本実施の形態では、感光
性ポリイミド樹脂を用いて、第12のフォトリソグラフィ工程により、電極層322上の
ポリイミド樹脂を選択的に除去し、コンタクトホール333を形成する。感光性材料を用
いることで、レジストマスクの形成を省略することができる。
【0211】
次いで、絶縁層331上に画素電極を形成するための導電層を形成する。本実施の形態で
は、導電層としてITOを形成する。その後、第13のフォトリソグラフィ工程により、
レジストマスクを形成し、導電層の不要な部分を選択的にエッチング除去して画素電極層
332を形成する。画素電極層332は電極層322を介して電極層310bと接続され
ている。
【0212】
上記の作製工程により、基板上に画素スイッチ用トランジスタを形成することができる。
【0213】
また、本実施の形態では、ボトムゲート構造のチャネルエッチ型のトランジスタ395の
作製方法について説明したが、本実施の形態の構成はこれに限られるものではない。図1
2(A)に示すような、ボトムゲート構造のボトムコンタクト型(逆コプラナ型とも呼ぶ
)のトランジスタ381や、図12(B)に示すような、チャネル保護層334を有する
チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)のトランジスタ382等も同様の材料、
方法を用いて形成することができる。図12(C)は、トランジスタ395とは異なるチ
ャネルエッチ型トランジスタの例を示している。図12(C)に示すトランジスタ383
は、ゲート電極層310が酸化物半導体層306の端部よりも外側に伸びた構造となって
いる。
【0214】
なお、トランジスタのチャネル長Lは、チャネルエッチ型のトランジスタの場合は、前述
したように電極層310aと電極層310bとの距離で定義されるが、チャネル保護型の
トランジスタのチャネル長は、キャリアの流れる方向と平行な方向の、酸化物半導体層3
06と接するチャネル保護層334の長さで定義される。
【0215】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図13及び図14を用いて、液晶表示装置の概略図、回路図、及びタ
イミングチャート等について示し、本実施の形態の構成とすることによる効果について説
明することにする。まず図13を用いて、液晶表示装置の概略図について説明を行う。
【0216】
図13(A)で示す液晶表示装置は、第1の基板101、第2の基板102で構成される
。第1の基板101には、画素回路103、ゲート線駆動回路104、信号線駆動回路1
05、端子部106、スイッチングトランジスタ107を有する。第2の基板102には
、共通接続部108(コモンコンタクトともいう)、対向電極109を有する。
【0217】
第1の基板101上には、実施の形態1で説明した光センサが設けられ、端子部106に
接続されている。光センサ131は、非晶質薄膜光センサであり、光センサ132は、多
結晶薄膜光センサである。
【0218】
第1の基板101及び第2の基板102は、透光性を有し、且つ後の加熱処理に耐えうる
程度の耐熱性を有している必要がある。アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸
ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスのような電子工業用に使われるガラス基板(「無アル
カリガラス基板」とも呼ばれる)、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等を用
いることができる。
【0219】
なお図13(A)に示す画素回路103、ゲート線駆動回路104、信号線駆動回路10
5、及びスイッチングトランジスタ107は、第1の基板101上に形成されるトランジ
スタにより回路が構成されるものでもよい。なお、表示装置の大型化や高精細化に伴い、
ゲート線駆動回路104や、信号線駆動回路105、また、他の実施の形態で説明した、
光センサ駆動回路や、光センサ読み出し回路などの駆動回路に対して、さらなる高速動作
などが求められる場合は、必要に応じて、駆動回路の機能の一部または全部を、例えば単
結晶半導体を用いて別途基板上に作製し、第1の基板101上に単数もしくは複数に分け
て接続してもよい。
【0220】
なお、別途基板上に形成した駆動回路の接続方法は特に限定されるものではなく、COG
法、ワイヤボンディング法、或いはTAB法などを用いることができる。本実施の形態で
は、ゲート線駆動回路104及び信号線駆動回路105を、単結晶半導体で作製したいわ
ゆるIC(Integrated Circuit)またはLSI(Large Sca
le Integration)を用いて、COG法にて接続する。
【0221】
なお画素回路103には、ゲート線駆動回路104及び信号線駆動回路105より延在し
て、複数のゲート線及び信号線が設けられ、ゲート線及び信号線に環囲された複数の画素
が設けられる。そして複数の信号線には、各画素の画素電極に供給する画像信号が供給さ
れ、複数のゲート線は、信号線より供給される画像信号を選択して各画素の画素電極に供
給するよう画素トランジスタを制御する。またゲート線駆動回路104及び信号線駆動回
路105は、それぞれゲート線、信号線に供給する信号を生成し出力するための回路であ
る。
【0222】
なお、画素回路103における画像の表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース
方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては
、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(
Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したもの
がある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし
、本発明の一態様はカラー表示の液晶表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示
の液晶表示装置に適用することもできる。
【0223】
なお本明細書で述べるスイッチングトランジスタとは、ゲートに印加する電位に応じて、
ソース端子及びドレイン端子間の二端子間の導通または非導通を選択して、スイッチング
動作を実現しうるトランジスタによる素子を意味する。一例としては、トランジスタが線
形領域で動作するようゲート端子に印加する電位を調整して動作させた素子であればよい
。なおスイッチングトランジスタ107のゲートに印加する電位は、端子部106より配
線141を介して供給される構成とすればよい。また、配線142を介して端子部106
に接続される、スイッチングトランジスタ107のソース端子またはドレイン端子の一方
の端子を第1の端子、配線143及び共通接続部108を介して対向電極109に接続さ
れる、スイッチングトランジスタ107のソース端子またはドレイン端子の他方の端子を
第2の端子と呼ぶことにする。なおスイッチングトランジスタ107の第1の端子には、
対向電極109に供給する共通電位(コモン電位ともいう)が供給され、ゲート端子に印
加される電位によりスイッチングトランジスタ107の導通または非導通が制御されるこ
ととなる。
【0224】
配線141及び配線142は、ゲート線駆動回路104及び信号線駆動回路105の外側
、つまり、画素回路103が無い側の、ゲート線駆動回路104と基板端部の間、及び信
号線駆動回路105と基板端部の間を通って端子部106に接続する。このように、配線
141及び配線142を、ゲート線駆動回路104及び信号線駆動回路105を囲うよう
に配置することで、外部ノイズの進入や、静電気による破壊などを防ぐことができる。ま
た、配線は、配線141及び配線142だけでなく、Vdd電位線や、Vss電位線、グ
ラウンド電位線などを用いても構わない。
【0225】
なおスイッチングトランジスタの構造については逆スタガ型の構造でもよいし、順スタガ
型の構造でもよい。または、チャネル領域が複数の領域に分かれて直列に接続された、ダ
ブルゲート型の構造でもよい。または、ゲート電極がチャネル領域の上下に設けられたデ
ュアルゲート型の構造でもよい。また、スイッチングトランジスタを構成する半導体層を
複数の島状の半導体層にわけて形成し、スイッチング動作を実現しうるトランジスタ素子
としてもよい。
【0226】
また端子部106には、ゲート線駆動回路104、及び信号線駆動回路105より、画素
回路103で表示を行うパルス信号を出力するための信号(スタートパルスSP、クロッ
ク信号等)、画像信号(ビデオ電圧、ビデオ信号、ビデオデータともいう)、電源電圧で
ある高電源電位Vdd及び低電源電位Vss、対向電極109に供給する共通電位、並び
にスイッチングトランジスタ107を動作させるための信号等が供給されることとなる。
【0227】
なお高電源電位Vddとは、基準電位より高い電位のことであり、低電源電位とは基準電
位以下の電位のことをいう。なお高電源電位及び低電源電位ともに、トランジスタが動作
できる程度の電位であることが望ましい。
【0228】
共通電位は、画素電極に供給される画像信号の電位に対して基準となる電位であればよく
、一例としてはグラウンド電位であってもよい。
【0229】
共通接続部108は、第1の基板101でのスイッチングトランジスタ107の第2の端
子と、第2の基板102での対向電極109と、の電気的な接続を図るために設けられて
おり、配線142、スイッチングトランジスタ107、配線143及び共通接続部108
を介して、端子部106より共通電位が対向電極109に供給されることとなる。共通接
続部108の具体的な一例としては、金属薄膜が被覆された導電粒子により、配線143
と対向電極109との電気的な接続を図ればよい。なお、スイッチングトランジスタ10
7及び共通接続部108は、第1の基板101及び第2の基板102の間で複数箇所設け
られる構成としてもよい。
【0230】
対向電極109は、画素回路103が有する画素電極と重畳して設けられることが好まし
い。また対向電極109及び画素回路103が有する画素電極は、多様な開口パターンを
有する形状としてもよい。
【0231】
また、第1の基板101上には、実施の形態1で説明した光センサが設けられ、端子部1
06に接続されている。光センサ131は、非晶質薄膜光センサであり、光センサ132
は、多結晶薄膜光センサである。
【0232】
また画素回路103及びスイッチングトランジスタ107を第1の基板101に形成する
場合、各回路を構成するトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領
域に用いたトランジスタを用いる。高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタは
、オフ電流値が極めて小さいトランジスタである。
【0233】
このようにオフ電流値が極めて小さいトランジスタを用いて、スイッチング素子などを作
製した場合、オフ電流値が小さくほとんどリークがないため、当該スイッチング素子に接
続されるノードの電荷のリークを限りなく低減することができ、当該ノードでの電位の保
持時間を長くすることができる。
【0234】
上述の酸化物半導体を用いたトランジスタは、チャネル幅1μmあたりのオフ電流を1a
A/μm(1×10−18A/μm)以下にすること、さらには1zA/μm(1×10
−21A/μm)以下とすることができる。一方低温ポリシリコンを用いたトランジスタ
では、オフ電流が1×10−12A相当であると見積もって設計等行うこととなっている
。そのため、酸化物半導体を用いたトランジスタでは、電位の保持期間を低温ポリシリコ
ンを用いたトランジスタの10000倍程度に引き延ばすことができる。また、アモルフ
ァスシリコンを用いたトランジスタの場合、チャネル幅1μmあたりのオフ電流は、1×
10−13A/μm以上である。したがって、保持容量が同等(0.1pF程度)である
際、高純度の酸化物半導体を用いたトランジスタの方が、電圧の保持期間をアモルファス
シリコンを用いたトランジスタの10倍以上に引き延ばすことができる。
【0235】
具体的には、酸化物半導体を用いたトランジスタでは、各画素での画像信号の保持時間を
長くすることができるため、例えば、静止画を表示する際の書き込みの間隔は1秒以上、
好ましくは10秒以上、さらに好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上10分未
満とすることができる。すなわち、保持期間を長くとれることで、特に静止画の表示を行
う際に、画素電極及び対向電極への画像信号及び共通電位の供給を行う頻度を低減するこ
とができる。そのため、低消費電力化を図ることができる。
【0236】
なお、静止画表示において、保持期間中の液晶素子に印加されている電圧の保持率を考慮
して、適宜リフレッシュ動作してもよい。例えば、液晶素子の画素電極に信号を書き込ん
だ直後における電圧の値(初期値)に対して所定のレベルまで電圧が下がったタイミング
でリフレッシュ動作を行えばよい。所定のレベルとする電圧は、初期値に対してチラツキ
を感じない程度に設定することが好ましい。具体的には、表示対象が映像の場合、初期値
に対して1.0%低い状態、好ましくは0.3%低い状態となる毎に、リフレッシュ動作
(再度の書き込み)を行うのが好ましい。また、表示対象が文字の場合、初期値に対して
10%低い状態、好ましくは3%低い状態となる毎に、リフレッシュ動作(再度の書き込
み)を行うのが好ましい。
【0237】
なお、一例として、通常、低温ポリシリコンを用いたトランジスタを有する画素では表示
を60フレーム/秒(1フレームあたり16msec)で行っている。これは静止画であ
っても同じで、レートを低下させる(書き込みの間隔を伸ばす)と、画素の電圧が低下し
て表示に支障をきたすためである。一方、上述の酸化物半導体を用いたトランジスタを用
いた場合、オフ電流が小さいため、1回の信号書き込みによる保持期間を10倍の16
0秒程度とすることができる。
【0238】
そして、少ない画像信号の書き込み回数でも、表示部での静止画の表示を行うことができ
る。保持期間を長くとれるため、特に静止画の表示を行う際に、信号の書き込みを行う頻
度を低減することができる。例えば、一つの静止画像の表示期間に画素に書き込む回数は
、1回またはn回とすることができる。なお、nは2以上10回以下とする。こうして
、表示装置の低消費電力化を図ることができる。
【0239】
なお、トランジスタのオフ電流の流れ難さをオフ抵抗率として表すことができる。オフ抵
抗率とは、トランジスタがオフのときのチャネル形成領域の抵抗率であり、オフ抵抗率は
オフ電流から算出することができる。
【0240】
具体的には、オフ電流とドレイン電圧との値が分かればオームの法則からトランジスタが
オフのときの抵抗値(オフ抵抗R)を算出することができる。そして、チャネル形成領域
の断面積Aとチャネル形成領域の長さ(ソースドレイン電極間の距離に相当する)Lが分
かればρ=RA/Lの式(Rはオフ抵抗)からオフ抵抗率ρを算出することができる。
【0241】
ここで、断面積Aは、チャネル形成領域の膜厚をdとし、チャネル幅をWとするとき、A
=dWから算出することができる。また、チャネル形成領域の長さLはチャネル長Lであ
る。以上のように、オフ電流からオフ抵抗率を算出することができる。
【0242】
本実施の形態の酸化物半導体を用いるトランジスタのオフ抵抗率は1×10Ω・m以上
が好ましく、1×1010Ω・m以上がより好ましい。
【0243】
なお、静止画と動画像が交互に切り替わって表示を行う液晶表示装置の場合には、ゲート
線駆動回路104、及び信号線駆動回路105への画素回路103で表示を行うパルス信
号を出力するための信号の供給、及びスイッチングトランジスタの導通または非導通を制
御し、各駆動回路からのパルス信号の供給または停止、及びスイッチングトランジスタの
導通または非導通を繰り返すことで低消費電力化を図ることができる。
【0244】
なお動画像は、複数のフレームに時分割した複数の画像を高速に切り替えることで人間の
目に動画像として認識される画像のことをいう。具体的には、1秒間に60回(60フレ
ーム)以上画像を切り替えることで、人間の目にはちらつきが少なく動画像と認識される
、連続する画像信号のことである。一方静止画は、動画像と異なり、複数のフレーム期間
に時分割した複数の画像を高速に切り替えて動作させるものの、連続するフレーム期間、
例えばnフレーム目と、(n+1)フレーム目とで画像信号が変化しない画像信号のこと
をいう。
【0245】
なお静止画と動画像が交互に切り替わって表示を行う液晶表示装置の場合、動画像か静止
画かの判定については、別の基板等でフレーム間の画像の比較を行い、動画像か静止画か
の判定を行う構成とすればよい。一例としては記憶回路及び比較回路を設け、フレーム毎
に画像信号を記憶するために別途設けた記憶回路より連続するフレーム期間の画像信号を
選択的に読み出して、比較回路にて当該画像信号の比較を行い、差分を検出した際には動
画像、検出されない際には静止画と判定する回路を設ければよい。具体的な動作としては
、比較回路により動画像と判断、すなわち連続フレーム期間の画像信号の差分が抽出され
た場合には、画像信号、共通電位が画素回路103の各画素、対向電極に供給される。一
方、比較回路により静止画と判断、すなわち連続フレーム期間の画像信号の差分を抽出し
ない場合には、画素回路103の各画素、対向電極への画像信号、共通電位を停止するこ
ととなる。また静止画の場合に画像信号の停止とともに、高電源電位Vdd、低電源電位
Vss等の電源電圧の停止を行わない構成とすることで、さらなる低消費電力化を図るこ
とができる。
【0246】
なお画像信号、電源電圧、共通電位の供給とは、配線に所定の電位を供給することをいう
。また電源電圧の停止とは、配線への所定の電位、例えば高電源電位Vddの供給を停止
し、他の固定電位が供給される配線、例えば低電源電位Vssや共通電位が供給された配
線に接続することで、配線が接続された回路または回路を構成する素子に、動作可能とな
る電位を生じさせないことをいう。また画像信号、共通電位の停止とは、所定の電位を供
給されている配線との電気的な接続を切断し、配線を浮遊状態とすることをいう。
【0247】
なお画像信号、共通電位の停止は、画素回路103の各画素で画像信号を保持できる期間
にわたって行うことが望ましく、各画素での保持期間の後に再度画像信号及び共通電位を
供給する構成とすればよい。
【0248】
次いで図13(B)に、図13(A)での液晶表示装置の概略図について、特に画素回路
103の構成を詳細にした回路図について示す。
【0249】
図13(B)に示す液晶表示装置は、図13(A)と同様に、第1の基板101、第2の
基板102が設けられている。また第1の基板101には、画素回路103、ゲート線駆
動回路104、信号線駆動回路105、端子部106、スイッチングトランジスタ107
を有する。第2の基板102には、共通接続部108、対向電極109を有する。
【0250】
図13(B)においては、画素回路103において、複数のゲート線111、複数の信号
線112が縦横に設けられており、ゲート線111及び信号線112には、画素トランジ
スタ114、第1の電極と第2の電極との間に液晶が挟持されて形成される液晶素子11
5を有する画素113が設けられている様子を示している。図13(B)において、画素
トランジスタ114のソース端子またはドレイン端子の一方を第1の端子、ソース端子ま
たはドレイン端子の他方を第2の端子といい、第1の端子が信号線112に接続され、ゲ
ート端子がゲート線111に接続され、第2の端子が液晶素子115の第1の電極に接続
される。なお、液晶素子115の第1の電極は、画素電極に相当する。なお液晶素子11
5の第2の電極は、前述の対向電極109に相当する。
【0251】
なお、画素を構成する画素トランジスタ114は、スイッチングトランジスタ107と同
様に、半導体層として酸化物半導体を用いて形成される。酸化物半導体を用いることによ
り、画素トランジスタを流れるオフ電流を大幅に低減し、画素電極に供給される画像信号
に応じた電位の保持期間を長くすることができる。
【0252】
次いで、画素電極を有する画素の、一画素についての回路図を図13(C)に示す。図1
3(C)には、画素トランジスタ114、スイッチングトランジスタ107に着目して示
しており、画素トランジスタ114のゲート端子がゲート線111に接続され、画素トラ
ンジスタ114の第1の端子が信号線112に接続され、画素トランジスタ114の第2
の端子が画素電極121に接続される。またスイッチングトランジスタ107のゲート端
子が端子部106の端子106Aに接続され、スイッチングトランジスタ107の第1の
端子が端子部106の端子106Bに接続され、スイッチングトランジスタ107の第2
の端子が共通接続部108を介して電気的に対向電極122に接続される。なお画素電極
121と対向電極122との間には、液晶123が挟持され、画素電極121、対向電極
122、及び液晶123を併せて液晶素子と呼ぶこともある。
【0253】
なお図13(C)では、液晶素子に保持容量を並列に接続しても良い。なお、保持容量の
大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間
電荷を保持できるように設定すればよい。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流
等を考慮して設定すればよい。本実施の形態では、トランジスタとして高純度の酸化物半
導体を有するトランジスタを用いていることにより、各画素における液晶容量に対して1
/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である

【0254】
液晶123としては、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液
晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いる。これらの液晶材料は、条件により、コレ
ステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示
す。
【0255】
また、液晶123の固有抵抗は、1×1010Ω・m以上であり、好ましくは1×10
Ω・mを越えていることであり、さらに好ましくは1×1012Ω・mを越えているこ
とである。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。なお液
晶の固有抵抗は、電極間に挟持して液晶素子(液晶セルともいう)とした際、固有抵抗が
配向膜、シール材等の部材に起因して不純物の混入もあり得るため、1×10Ω・m以
上、より好ましくは1×1010Ω・mを越えていることとなることもある。
【0256】
液晶材料の固有抵抗が大きいほど液晶材料を介して漏れる電荷を減らすことができ、液晶
素子の動作状態を保持する電圧が経時的に低下する現象を緩和できる。その結果、保持期
間を長くとれるため、信号の書き込みを行う頻度を低減でき、液晶表示装置の低消費電力
化を図ることができる。
【0257】
また、液晶123としてブルー相を示す液晶材料を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一
つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移す
る直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を
改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用い
る。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下
と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配
向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き
起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽
減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。特に
、酸化物半導体を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特
性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体を用いるトラン
ジスタを有する液晶表示装置にブルー相の液晶材料を用いることはより効果的である。
【0258】
また、本実施の形態の構成は、液晶表示装置に限定されず、表示素子としてエレクトロル
ミネッセンス素子(EL素子ともいう)などの発光素子を用いた自発光型の表示装置にも
適用可能である。自発光型の表示装置の場合は、画像表示時に発光素子へ常に電荷を供給
する必要があるが、静止画を表示する際に、駆動回路に供給するクロック信号、及びスタ
ートパルスを停止することにより駆動回路を停止させ、低消費電力化を図ることができる

【0259】
また図14においては、図13(C)に示す回路図での各端子、ゲート線駆動回路104
、信号線駆動回路105に供給する信号の様子について表すタイミングチャート図を示し
ている。なお一例として説明をするために、図14に示す期間151は動画像書き込み期
間、期間152は静止画表示期間に相当し、前述の動画像または静止画の判定の結果によ
って、いずれかの期間とすればよい。また図14中でGCKはゲート線駆動回路104に
供給するクロック信号であり、GSPはゲート線駆動回路104に供給するスタートパル
スであり、SCKは信号線駆動回路105に供給するクロック信号であり、SSPは信号
線駆動回路105に供給するスタートパルスである。また、図14では併せて、信号線1
12の電位、画素電極121の電位、端子106Aの電位、端子106Bの電位、対向電
極122の電位、について示したものである。
【0260】
なお期間151の動画像書き込み期間は、前述の連続するフレーム期間の画像信号の比較
を行い、差分を検出した際の期間に相当する。また、期間152の静止画書き込み期間は
、前述の連続するフレーム期間の画像信号の比較を行い、差分を検出しない際の期間に相
当する。従って、期間151では、画像信号、共通電位が画素回路103の各画素、対向
電極に供給されるように動作することとなる。一方、期間152では、画素回路103の
各画素、対向電極への画像信号、共通電位を停止することとなる。
【0261】
具体的には図14に示すように期間151において、クロック信号GCKは常時クロック
信号を供給することとなる。また図14に示すように、スタートパルスGSPは、垂直同
期周波数に応じてパルスを供給することとなる。また図14に示すように期間151にお
いて、クロック信号SCKは常時クロック信号を供給することとなる。また図14に示す
ようにスタートパルスSSPは、1ゲート選択期間に応じてパルスを供給することとなる
。また図14に示すように、信号線112には各行の画素に供給するための画像信号da
taが供給され、ゲート線111の電位に応じて画素内の画素電極121に信号線112
の電位が供給されることとなる。また図14に示すように、スイッチングトランジスタ1
07のゲート端子にあたる端子106Aの電位は、スイッチングトランジスタ107を導
通状態とする電位を供給し、端子106Bの電位である共通電位が、対向電極122に供
給されることとなる。
【0262】
また図14に示すように期間152において、クロック信号GCK及びスタートパルスG
SPは共に停止する。また図14に示すように、クロック信号SCK及びスタートパルス
SSPも共に停止する。また図14に示すように信号線112に供給していた画像信号d
ataも停止する。また図14に示すように、クロック信号GCK及びスタートパルスG
SPは共に停止するため、画素トランジスタ114が非導通状態となり画像信号data
の供給が停止して、画素電極121が浮遊状態(フローティング)となる。また、スイッ
チングトランジスタ107のゲート端子にあたる端子106Aの電位は、スイッチングト
ランジスタ107を非導通状態とする電位を供給し、端子106Bの電位である共通電位
の供給が停止して、対向電極122が浮遊状態となる。
【0263】
すなわち、期間152では、液晶123の両端の電極、即ち画素電極121及び対向電極
122を浮遊状態とすることで新たに電位を供給することなく、静止画の表示を行うこと
ができる。ゲート線駆動回路104、信号線駆動回路105に供給するクロック信号、及
びスタートパルスを停止することにより低消費電力化を図ることができる。
【0264】
また、画素トランジスタ114及びスイッチングトランジスタ107を、オフ電流を著し
く低減することのできる酸化物半導体を用いたトランジスタで形成することで、液晶素子
の両端を非導通状態とした時の液晶素子の電位変動を著しく低減することができる。
【0265】
上述のように酸化物半導体を用いるトランジスタは、オフ電流が0.1fA以下とするこ
とができる。そのため、非晶質シリコン等を半導体層に用いたトランジスタに比べ、画素
電極121及び対向電極122を浮遊状態とする期間となる保持期間を大きくとることが
できる。そのため、本実施の形態における静止画の表示を行う際に低消費電力化を図るう
えでの相乗効果が見込めることとなる。
【0266】
なお図13(C)での液晶123の抵抗率は、おおよそ1×1010乃至1×1011
Ω・m]程度である。図14での期間152では、液晶123の両端の電極、即ち画素電
極121及び対向電極122を、オフ電流のほとんどないトランジスタによって浮遊状態
とすることにより、液晶123の両端に印加される電圧による液晶123を流れるオフ電
流を低減することができる。
【0267】
その結果、静止画表示を行う際、低消費電力化を図りつつ、且つ画像の乱れの低減された
液晶表示装置とすることができる。
【0268】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【0269】
(実施の形態5)
本実施の形態においては、上記実施の形態で説明した表示装置を具備する電子機器の例に
ついて説明する。
【0270】
図19(A)はテレビ受像器であり、筐体9630、表示部9631、スピーカ9633
、操作キー9635、接続端子9636、等を有することができる。図19(A)に示す
テレビ受像機は、テレビ用電波を処理して画像信号に変換する機能、画像信号を処理して
表示に適した信号に変換する機能、画像信号のフレーム周波数を変換する機能、等を有す
ることができる。なお、図示していないが、表示部9631は、実施の形態2で説明した
構成を適用し、光センサを有する。図19(A)に示すテレビ受像機が有する機能はこれ
に限定されず、様々な機能を有することができる。前述の実施の形態で説明した構成を用
いることで、周囲の光量や色温度を検出し、常に見やすい表示状態とすることができる。
また、低消費電力化を図りつつ、画像の乱れの低減された、安定した画像が得られる。
【0271】
このようにして、可視光に対して異なる光感度を持つ非晶質薄膜光センサと多結晶薄膜光
センサを用いることで、周囲の照度を正確に検出し、表示装置の発光輝度を最適な状態と
することで、使用者の体感上の輝度変化を軽減し、消費電力の増加を抑えることができる
。また、非晶質薄膜光センサと多結晶薄膜光センサの出力差により赤外光の照度を検出し
、表示部の色調補正を行うことで、表示品質を改善することができる。
【0272】
図19(B)は、電子書籍2700の一例を示している。例えば、電子書籍2700は、
筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐
体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動
作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能
となる。
【0273】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み
込まれている。図示していないが、表示部2705および表示部2707は実施の形態2
で説明した構成を適用し、光センサを有する。表示部2705および表示部2707は、
続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異な
る画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図19(B)では表示部27
05)に文章を表示し、左側の表示部(図19(B)では表示部2707)に画像を表示
することができる。
【0274】
また、図19では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2
701において、電源2721、操作キー2723、スピーカ2725などを備えている
。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキー
ボードやポインティングディバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や
側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタおよびUSB
ケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成
としてもよい。さらに、電子書籍2700は、電子辞書としての機能を持たせた構成とし
てもよい。
【0275】
また、電子書籍2700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、
電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすること
も可能である。
【0276】
前述の実施の形態で説明した構成を用いることで、周囲の光量や色温度を検出し、常に見
やすい表示状態とすることができる。また、低消費電力化を図りつつ、画像の乱れの低減
された、安定した画像が得られる。
【符号の説明】
【0277】
101 基板
102 基板
103 画素回路
104 ゲート線駆動回路
105 信号線駆動回路
106 端子部
107 スイッチングトランジスタ
108 共通接続部
109 対向電極
111 ゲート線
112 信号線
113 画素
114 画素トランジスタ
115 液晶素子
121 画素電極
122 対向電極
123 液晶
131 光センサ
132 光センサ
141 配線
142 配線
143 配線
151 期間
152 期間
201 トランジスタ
202 保持容量
203 液晶素子
204 フォトダイオード
205 トランジスタ
206 トランジスタ
207 ゲート信号線
208 フォトダイオードリセット信号線
209 ゲート信号線
210 ビデオデータ信号線
211 光センサ出力信号線
212 光センサ基準信号線
213 ゲート信号線
220 表示装置
221 画素回路
222 表示素子制御回路
223 光センサ制御回路
224 画素
225 表示素子
226 光センサ
227 表示素子駆動回路
228 表示素子駆動回路
229 回路
230 光センサ駆動回路
231 トランジスタ
232 保持容量
233 プリチャージ信号線
236 光センサ
251 信号
252 信号
253 信号
254 信号
255 信号
300 基板
301 ゲート電極層
302 配線層
303 配線層
304 ゲート絶縁層
305 酸化物半導体層
306 酸化物半導体層
307 半導体層
308 半導体層
309 コンタクトホール
310 ゲート電極層
312 絶縁層
313 保護絶縁層
314 コンタクトホール
315 電極層
316 半導体層
317 半導体層
318 半導体層
319 絶縁層
320 コンタクトホール
321 電極層
322 電極層
330 コンタクトホール
331 絶縁層
332 画素電極層
333 コンタクトホール
334 チャネル保護層
350 外光
360 ゲート電極層
381 トランジスタ
382 トランジスタ
383 トランジスタ
390 トランジスタ
391 光センサ
392 光センサ
395 トランジスタ
800 表示装置
801 表示部
802 光センサ
803 光センサ
811 特性
812 特性
821 特性
822 特性
831 中央制御部
832 表示部
833 外部入力
834 操作部
841 光センサ
842 光センサ
2700 電子書籍
2701 筐体
2703 筐体
2705 表示部
2707 表示部
2711 軸部
2721 電源
2723 操作キー
2725 スピーカ
9630 筐体
9631 表示部
9633 スピーカ
9635 操作キー
9636 接続端子
106A 端子
106B 端子
308a n型不純物領域
308b i型領域
308c p型不純物領域
310a 電極層
310b 電極層
311a 電極層
311b 電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に、端子部と、画素電極と、酸化物半導体を有するスイッチングトランジスタと、可視光に対して高い分光感度を有する第1の光センサと、赤外光に分光感度を有し、第1の光センサより可視光に対する分光感度が低い第2の光センサと、を有し、
第2の基板上に対向電極を有し、
前記端子部から前記スイッチングトランジスタを介して前記対向電極へ電位を供給する表示装置において、
前記第1及び第2の光センサを用いて前記表示装置周囲の照度を検出し、
前記照度を参照して表示映像の輝度を調整することを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項2】
請求項1において、
周囲の照度が弱い時は前記第1の光センサを用い、周囲の照度が強い時は前記第2の光センサを用いて、
前記表示装置の周囲の照度を検出することを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の光センサと前記第2の光センサの特性差を用いて、
前記表示装置の周囲の赤外光照度を検出することを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記第1の光センサまたは前記第2の光センサにより、前記表示装置の周囲の色温度を検出し、前記表示映像の色調補正を行うことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
静止画を表示する期間において、
前記スイッチングトランジスタを非導通状態として、前記対向電極を浮遊状態とすることを特徴とする表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−252359(P2012−252359A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186348(P2012−186348)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2010−278883(P2010−278883)の分割
【原出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】