説明

表面実装型圧電発振器

【課題】 搭載領域の無駄をなくしながら小型化・低背化に対応した表面実装型圧電発振器とその製造方法を提供する。
【解決手段】 圧電振動板3と集積回路素子2を収納する絶縁性のベース1を有する表面実装型圧電発振器であって、前記ベースは側壁部と第1の収納部10a、当該第1の収納部の側壁部と接続された段差部10cと、前記第1の収納部と前記段差部の上面に配置される第2の収納部10bとが形成されており、表裏面に配線パターンが形成された板状の回路基板4の上面側と前記圧電振動板と、当該回路基板の底面側と前記集積回路素子とがそれぞれ導電性接合材で接合されるとともに、前記段差部上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンの一部とが導電性接合材で接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性のベース上に圧電振動板と集積回路素子が実装された表面実装型圧電発振器に関するものであって、特に表面実装型圧電発振器のパッケージ構造を改善するものである。
【背景技術】
【0002】
水晶等の圧電振動板を用いた圧電発振器は、安定して精度の高い発振周波数を得ることができるため、電子機器等の基準周波数源として多種の分野で使用されている。表面実装型圧電発振器では、絶縁性のベースとしてセラミック多層基板を用い、当該ベースの収納部に発振回路用の集積回路素子を配置するとともに、当該集積回路素子の上方に水晶振動板を支持固定し、気密封止を行ったものである。このような構成は集積回路素子のカスタム化により比較的部品点数が少なく、シンプルな構成であり、低コスト化に寄与している。
【0003】
このような集積回路素子は、ベースに形成された配線パターンに対して、ワイヤボンディング工法を用いて接続するか、あるいは金属バンプ(Au等)を介したフェイスダウンボンディングの工法(以下「FCB」という)を用いて接続することで、圧電振動子や端子電極等と電気的に接続されている(例えば、下記する特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−356687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、電子機器の小型化が進んでおり、この小型化にともない上記したような表面実装型圧電発振器も小型化が進められている。そのため、例えば、上記した特許文献1に示すような表面実装型圧電発振器では、圧電振動板や集積回路素子を搭載するための平面領域を狭めて形成したり、収納部の高さをできるだけ低く形成することが求められている。
【0005】
また、集積回路素子を収納する収納部の大きさに応じて、上部に配置される圧電振動板の大きさが限定されるので、搭載領域の無駄が生じやすい。集積回路素子とベースの電気的な接続領域と圧電振動板とベースの電気的な接続領域も別々に形成されるので搭載領域の拡大につながるものであった。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、搭載領域の無駄をなくしながら小型化・低背化に対応した表面実装型圧電発振器とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の表面実装型圧電発振器では特許請求項1に示すように、励振電極と引出電極が形成された圧電振動板と一主面に配線パッドが形成された集積回路素子を有し、これらを収納する絶縁性のベースを有する表面実装型圧電発振器であって、前記ベースは上面側に側壁部と収納部、底面側に端子電極を有しており、前記収納部は内底面に前記集積回路素子が収納される第1の収納部と、当該第1の収納部の側壁部と接続された段差部と、前記圧電振動板が収納されるとともに前記第1の収納部と前記段差部の上面に配置される第2の収納部とが形成されており、表裏面に配線パターンが形成された板状の回路基板の上面側の配線パターンと前記圧電振動板の引出電極とが導電性接合材で接合され、当該回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッドとが導電性接合材で接合されるとともに、当該回路基板のみにより圧電振動板と集積回路素子とがお互いに電気的に接続されてなり、前記段差部上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンの一部とが導電性接合材で接合されることで、回路基板の配線パターンが前記ベースの端子電極に導出されてなることを特徴とする。
【0008】
上記構成により、表裏面に圧電振動板と集積回路素子が導電接合材により接合された板状の回路基板が前記ベースの段差部のみで導電性接合材により接合されているので、圧電振動板とベースとの電気的な接続領域、集積回路素子とベースの電気的な接続領域、および圧電振動板と集積回路素子との電気的な接続領域を別々にベースの側壁部、段差部、および収納部に形成する必要がなくなり、ベースの小型化・低背化に対応できる。
【0009】
また前記第1の収納部の平面積や集積回路素子の平面積に応じて搭載できる圧電振動板の大きさや保持形態が制限されることがなくなり、圧電発振器に使用する圧電振動板の設計の幅が飛躍的に広まり無駄がなくなる。特に第1の収納部より小さな圧電振動板でも容易に搭載でき、回路基板が圧電振動板を支えて第1の収納部に圧電振動板が傾いて搭載されることがない。
【0010】
さらに駆動時に発熱した集積回路素子の熱的な悪影響も回路基板が間に介在していることで、圧電振動板に対してより軽減された状態で伝わり、周波数温度特性などの電気的特性の低下が少ない。
【0011】
また、本発明の特許請求項2に示すように、上述の構成に加え、前記集積回路素子の配線パッドが形成されない主面が前記ベースの第1の収納部内底面に対して機械的に接合されてなり、前記回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッド、および前記ベースの段差部の上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンとを金属バンプにより接合してなることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、前記回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッド、および前記ベースの段差部の上面の配線パターンとを金属バンプのみにより接合しているので、導電性樹脂接着剤やろう材を用いて接合する場合に比べて各接合領域が省スペースでかつ確実な電気的機械的な接合が行え、接合する際に不要なガスが発生することがない。このため段差部の面積をより縮小することができ、ベースのさらなる小型化に対応できるだけでなく、圧電発振器の電気的な性能に悪影響を与えることがないので、エージング特性を向上させることができる。
【0013】
また、ワイヤボンディングを用いて集積回路素子とベースを接続する構成に比べて、ワイヤボンディングの上部に圧電振動板や回路基板などの他の部材が直接接触しないようなギャップとなる空間が不要となり、ベースの低背化により対応しやすい構成となる。
【0014】
さらに本発明ではベースの段差部と集積回路素子を介してベースの第1の収納部の上部に回路基板が接合されているので、ベースの機械的な曲げ強度を高めることができる。特にベースの曲げ強度を高めることで、シーム封止やビーム封止などの局所的な加熱で気密封止した際に生じやすいベースのクラックが抑制できる。
【0015】
また、上述の構成に加え、これらに使用される金属バンプは同材質で同形状のものを用いることが好ましい。このような構成では、前記回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッド、および前記ベースの段差部の上面の配線パターン間における金属バンプの接合強度を均一にできる。しかも同材質の金属バンプを用いることで接合条件が同じになるので、回路基板の上部から超音波を印加して同時にFCB接合することができ、その際の強度のバラツキが生じることもない。
【0016】
また、本発明の特許請求項3に示すように、上述の構成に加え、前記集積回路素子の配線パッドが形成されない主面が前記ベースの第1の収納部内底面に対して機械的に接合されてなり、前記回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッドを金属バンプにより接合してなり、前記ベースの段差部の上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンとを導電性樹脂接着材あるいは金属ろう材により接合してなることを特徴とする。
【0017】
上記構成により、上述の作用効果に加えて、前記回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッドを金属バンプにより接合してなり、前記ベースの段差部の上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンとを導電性樹脂接着材あるいは金属ろう材により接合しているので、ベースの段差部の平坦性のバラツキや前記回路基板とベースの段差部の隙間のバラツキを導電性樹脂接着材や金属ろう材の接合領域で吸収してより確実な電気的機械的な接合が行える。特に導電性樹脂接着材を用いた場合、圧電振動板に対する外部衝撃がやわらげられるので、耐衝撃性能が向上する。
【0018】
また、ワイヤボンディングを用いて集積回路素子とベースを接続する構成に比べて、ワイヤボンディングの上部に圧電振動板や回路基板などの他の部材が直接接触しないようなギャップとなる空間が不要となり、ベースの低背化により対応しやすい構成となる。
【0019】
さらに本発明ではベースの段差部と集積回路素子を介してベースの第1の収納部の上部に回路基板が接合されているので、ベースの機械的な曲げ強度を高めることができる。特にベースの曲げ強度を高めることで、シーム封止やビーム封止などの局所的な加熱で気密封止した際に生じやすいベースのクラックが抑制できる。
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明の表面実装型圧電発振器の製造方法では特許請求項4に示すように、励振電極と引出電極が形成された圧電振動板と、一主面に配線パッドが形成された集積回路素子と、前記集積回路素子が収納される第1の収納部と、当該第1の収納部の側壁部と接続された段差部と当該段差部上面に形成された配線パターンと、前記圧電振動板が収納されるとともに前記第1の収納部と前記段差部の上面に配置される第2の収納部とが形成されたベースと、表裏面に配線パターンが形成され、当該表裏の配線パターンがお互いに電気的に接続された板状の回路基板とを有する表面実装型圧電発振器の製造方法であって、前記集積回路素子の配線パッドが形成されない他主面を前記ベースの第1の収納部内底面にダイボンディングする工程と、前記集積回路素子の配線パッドと前記ベースの段差部の配線パターン、あるいは前記回路基板の裏面側の配線パターンのうちの少なくとも一方に金属バンプを形成する工程と、前記集積回路素子の配線パッドと前記ベースの段差部の配線パッドに対して前記金属バンプが介在した状態で前記回路基板の裏面側の配線パターンを重ね合わせて超音波接合することでお互いに電気的機械的に接合する工程と、前記集積回路素子とベースに接合された回路基板の上面側の配線パターンに対して圧電振動板の引出電極とを導電性接合材により接合する工程とからなることを特徴とする。
【0021】
上記製造方法により、前記回路基板の上部から超音波ボンディングツールを用いて、前記集積回路素子、前記ベース、および前記回路基板の三つを同時に極めて容易かつ効率的に電気的機械的に超音波接合することができる。これらが接合された回路基板の上面側に対して圧電振動板を導電性接合材により接合するので、第1の収納部に対して圧電振動板が落ち込んだり傾くことがなくなり、より安定した状態で圧電振動板と回路基板の接合が行える。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明は、搭載領域の無駄をなくしながら小型化・低背化に対応した表面実装型圧電発振器とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明による好ましい実施の形態について図面に基づいて説明する。本発明による実施形態につき表面実装型水晶発振器を例にとり図面とともに説明する。図1は本発明の実施の形態を示す断面図、図2は本発明の実施の形態を示す蓋をする前の平面図、図3は本発明の実施の形態を示す回路基板の平面図、図4は図3の底面図、図5は本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の概略工程図である。
【0024】
表面実装型水晶発振器は、上部が開口した凹部を有するセラミックベース1(絶縁性のベース)と、当該セラミックベースの中に収納される集積回路素子2と、同じく当該セラミックベース中の上部に収納される圧電振動板3と、当該圧電振動板を搭載する回路基板4と、セラミックベースの開口部に接合される蓋5とからなる。
【0025】
セラミックベース1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステンあるいはモリブデン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面で見て上面側に堤部(側壁部)11と収納部10を有し、底面側に端子電極14を有する略凹形状に構成されている。収納部10は第1の収納部10aと第2の収納部10bからなり、それぞれ集積回路素子2と圧電振動板3が収納される。収納部周囲には堤部(側壁部)11が形成されており、堤部11の上面は平坦であり、当該堤部上に周状の封止用部材11aが形成されている。当該封止用部材として例えば、タングステンあるいはモリブデンなどのメタライズ層が主体となるもの、コバールなどの金属リングが主体となるものがあげられる。
【0026】
セラミックベース1内部において、内底面には前述のとおり集積回路素子2を収納する第1の収納部10aが形成され、当該第1の収納部の側壁部と接続された段差部10cとが形成されており、後述する圧電振動板3が収納されるとともに前記第1の収納部と前記段差部の上面に配置される第2の収納部10bとが形成されている。
【0027】
前記段差部10cの上面には配線パターン12a,12b,12c,12dが形成されており、図示しないキャスタレーションや導電ビアを介して最終的にセラミックベースの底面に形成された端子電極14へと導かれるように構成されている。このような構成のセラミックベースは周知のセラミック積層技術やメタライズ技術を用いて形成され、前記各配線パターンは前述の金属層11a形成と同様にタングステンあるいはモリブデン等によるメタライズ層の上面にニッケルメッキ層、金メッキ層の各層が形成された構成である。
【0028】
前記第1の収納部に搭載される集積回路素子2は、圧電振動板3とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子であり、その上面には複数の配線パッドPが形成されている。当該集積回路素子2は、配線パッドが形成されない底面側で例えば樹脂接着剤Jを介して前記ベースの第1の収納部の内底面に対して機械的に接合されている。
【0029】
前記集積回路素子2の上方には所定の間隔をもって、エポキシ系樹脂基板やイミド系樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、水晶基板などからなる回路基板4が搭載される。この回路基板4は厚さを例えば200μ以下に設定しているおり、セラミックベース1の低背化を妨げることがない。回路基板4は、図3に示すようにその上面側には後述する圧電振動板3と接続される第2の配線パターン42a,42bが形成され、図4に示すようにその底面側には前記集積回路素子2と接続される例えば6つの第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fが複数並んで形成されている。このうち第2の配線パターン42aは図示しないキャスタレーションや導電ビアにより前記第1の配線パターン41cに接続されており、第2の配線パターン42bは図示しないキャスタレーションや導電ビアにより前記第1の配線パターン41bに接続されている。
【0030】
そして、前記回路基板4の第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fの一端部と、これらの第1の配線パターンの位置に対応して前記第1の収納部に搭載された集積回路素子2の上面の複数の配線パッドPとが金などの金属バンプC(導電性接合材)を介してFCBにより接続されるとともに、前記セラミックベース1の配線パターン12a,12b,12c,12dと、これらの配線パターンの位置に対応して前記回路基板4の第1の配線パターン41a,41d,41e,41fの他端部とが同じく金などの金属バンプCを介してFCBにより接続される。
【0031】
前記回路基板4の上方には所定の間隔をもって、圧電振動板3が搭載される。圧電振動板3は例えば矩形状のATカット水晶振動板であり、その表裏面に対向して一対の矩形状励振電極31,32(32については図示せず)と、この励振電極を前記回路基板の上面側に形成された第2の配線パターン42a,42bと導通するための引出電極33,34とが形成されている。なお図示していないが圧電振動板3の表裏両主面に対して引出電極33,34が引き回して形成されており、圧電振動板の表裏主面のどちらでも搭載できるように構成されている。これらの各電極は、クロムやニッケルなどの下地電極層と、銀や金などを主材料とする電極層とから構成された積層薄膜である。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。
【0032】
圧電振動板3と回路基板4との接合は、例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電性樹脂接着剤S(導電性接合材)を用いている。前記集積回路素子2とセラミックベース1に接合された回路基板4の上面側の第2の配線パターン42a,42bに対して、前記圧電振動板3の引出電極33,34が、例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電性樹脂接着剤S(導電性接合材)を用いて、お互いを電気的機械的に接合し、例えば図1に示すように、片持ち保持されている。なお、導電性接合材として本形態で示したシリコーン系の導電性樹脂接着剤に限らず、他の樹脂剤でもよく、さらにはんだ等の金属ろう材や金属バンプ、金属めっきバンプを用いてもよい。
【0033】
セラミックベース1を気密封止する蓋5は、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材などの封止材が形成された構成であり、より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、銀ろう層がセラミックベースの金属層と接合される構成となる。金属製の蓋の平面視外形はセラミックベースの当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0034】
収納部10に集積回路素子2と回路基板4、圧電振動板3が格納されたセラミックベース1を前記金属製の蓋5にて被覆し、金属製の蓋5の封止材とセラミックベースの封止用部材11aを溶融硬化させ、気密封止を行うことで表面実装型圧電発振器の完成となる。本実施の形態においては、封止用の金属リングを用いないシーム溶接による気密封止を行っており、前記金属製の蓋5の長辺と短辺の稜部に沿ってシームローラを走行させることで、金属製の蓋5に形成された銀ろう(封止材)とセラミックベース1の金属層11a(封止用部材)を溶接させ、気密封止が行われる。
【0035】
なお上記実施形態に限らず、図6に示すように、前記第1の収納部に搭載される集積回路素子2は、金属バンプCを介して前記回路基板4のみで電気的機械的に接合されるだけで、前記セラミックベースの第1の収納部の内底面に対して所定の隙間寸法が介在した状態で第1の収納部の内底面に対して機械的に接合されない構成であってもよい。この構成では予め集積回路素子2のみが金属バンプCを介してFCB接合された回路基板4をセラミックベース1の段差部10cに対して再び金属バンプCを介してFCB接合することで容易に得られる。
【0036】
次に、上記した表面実装型水晶発振器の製造工程の一例について、図5とともに説明する。
【0037】
図5(a)に示す工程では、前記集積回路素子2を収納する第1の収納部10aと、当該第1の収納部の側壁部と接続された段差部10cと、当該段差部上面の配線パターン12a,12b,12c,12dと、前記圧電振動板3が収納されるとともに前記第1の収納部と前記段差部の上面に配置される第2の収納部10bとが形成されたセラミックベース1を準備している。
【0038】
図5(b)に示す工程では、前記集積回路素子2の配線パッドが形成されない他主面を前記ベースの第1の収納部10aの内底面に対して、例えば樹脂接着剤Jを介して機械的に接合している(ダイボンディングする工程)。
【0039】
図5(c)に示す工程では、前記集積回路素子2の上面の複数の配線パッドPの上部、および前記ベースの段差部の配線パターン12a,12b,12c,12dの上部に対して、金などの金属バンプC(導電性接合材)を熱圧着等のワイヤボンディング技術を用いたバンプボンダにより図示しないボンディングツール(キャピラリ等)から連続して形成される。なお、この金属バンプCの形成は、前記回路基板4の第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fの上部に対してのみ同様の手法により形成してもよく、前記配線パッドPと前記配線パターン12a,12b,12c,12dの上部だけでなく、前記第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fの上部にも同様の手法により金属バンプCを両方とも形成してもよい。
【0040】
図5(d)に示す工程では、前記集積回路素子2の配線パッドPと前記ベースの段差部の配線パターン12a,12b,12c,12dに対して前記金属バンプCが介在した状態で前記回路基板4の裏面側の第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fを重ね合わせ、図示しないボンディングツール(超音波ウェルダ等)により回路基板4を金属バンプC上に押しつけ、静圧力を印加する。つまり、ボンディングツールを所定の周波数で振動させることにより、集積回路素子2と回路基板4、および回路基板4とセラミックベース1とを金属バンプCを介してFCB(Flip Chip Bonding)法により上記ボンディングツールにより超音波接合され、お互いに電気的機械的に接合する。
【0041】
図5(e)に示す工程では、前記集積回路素子2とセラミックベース1に接合された回路基板4の上面側の第2の配線パターン42a,42bと前記圧電振動板3の引出電極33,34との間に、例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電性樹脂接着剤S(導電性接合材)が介在しており、加熱により硬化させることで、お互いを電気的機械的に接合している。
【0042】
その後、周波数調整工程やアニーリング工程などの必要な処理を行い、蓋5により気密封止を行うことで表面実装型圧電発振器の完成となる。
【0043】
なお上記実施形態の製造方法に限らず、予め集積回路素子2のみを回路基板4に対して金属バンプCを介してFCB接合し、セラミックベースの段差部10c等に金属バンプCを取り付け、回路基板4とセラミックベース1のみを金属バンプCを介してFCB接合した後に、回路基板4とセラミックベース1の隙間からノズルを差し込むことで前記集積回路素子2の配線パッドが形成されない他主面を前記セラミックベースの第1の収納部10aの内底面に対して、例えば樹脂接着剤Jを介して機械的に接合してもよい。また、上記ダイボンディングする工程を省略して、予め集積回路素子2のみを回路基板4に対して金属バンプCを介してFCB接合した後に、セラミックベースの段差部10c等に金属バンプCを取り付け、回路基板4とセラミックベース1のみを金属バンプCを介してFCB接合してもよい。
【0044】
上記本発明の実施形態により、表裏面に圧電振動板3と集積回路素子2が導電性樹脂接着剤Sと金属バンプCにより接合された板状の回路基板4が前記セラミックベース1の段差部10cのみで金属バンプCにより接合されているので、圧電振動板3とセラミックベース1との電気的な接続領域、集積回路素子2とセラミックベース1の電気的な接続領域、および圧電振動板3と集積回路素子2との電気的な接続領域を別々にセラミックベースの堤部(側壁部)11、段差部10c、および収納部10に対して形成する必要がなくなり、セラミックベース1の小型化・低背化に対応できる。
【0045】
また前記第1の収納部10aの平面積や集積回路素子2の平面積に応じて搭載できる圧電振動板3の大きさや保持形態が制限されることがなくなり、圧電発振器に使用する圧電振動板3の設計の幅が飛躍的に広まり無駄がなくなる。特に第1の収納部10aより小さな圧電振動板3でも容易に搭載でき、回路基板4が圧電振動板3を支えて第1の収納部10aに圧電振動板3が傾いて搭載されることがない。
【0046】
さらに駆動時に発熱した集積回路素子2の熱的な悪影響も回路基板4が間に介在していることで、圧電振動板3に対してより軽減された状態で伝わり、周波数温度特性などの電気的特性の低下が少ない。
【0047】
また、前記回路基板4の底面側の第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fと前記集積回路素子2の配線パッドP、および前記ベースの段差部の上面の配線パターン12a,12b,12c,12dとを金属バンプCのみにより接合しているので、導電性樹脂接着剤やろう材を用いて接合する場合に比べて各接合領域が省スペースでかつ確実な電気的機械的な接合が行え、接合する際に不要なガスが発生することがない。このため段差部10cの面積をより縮小することができ、セラミックベース1のさらなる小型化に対応できるだけでなく、圧電発振器の電気的な性能に悪影響を与えることがないので、エージング特性を向上させることができる。
【0048】
また、ワイヤボンディングを用いて集積回路素子2とセラミックベース1を接続する構成に比べて、ワイヤボンディングの上部に圧電振動板3や回路基板4などの他の部材が直接接触しないようなギャップとなる空間が不要となり、セラミックベース1の低背化により対応しやすい構成となる。
【0049】
さらに本発明ではセラミックベースの段差部10cと集積回路素子2を介してセラミックベースの第1の収納部10aの上部に回路基板4が接合されているので、セラミックベース1の機械的な曲げ強度を高めることができる。特にセラミックベースの曲げ強度を高めることで、シーム封止やビーム封止などの局所的な加熱で気密封止した際に生じやすいセラミックベースのクラックが抑制できる。
【0050】
また、本実施形態では金属バンプCを金などからなる同材質で同形状のものを用いるため、前記回路基板の底面側の第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fと前記集積回路素子2の配線パッドP、および前記ベースの段差部の上面の配線パターン12a,12b,12c,12d間における金属バンプCの接合強度を均一にできる。しかも同材質の金属バンプCを用いることで接合条件が同じになるので、回路基板4の上部から超音波を印加して同時にFCB接合することができ、その際の強度のバラツキが生じることもない。
【0051】
また、本実施形態の製造方法により、前記回路基板4の上部から超音波ボンディングツールを用いて、前記集積回路素子2、前記セラミックベース1、および前記回路基板4の三つを同時に極めて容易かつ効率的に電気的機械的に超音波接合することができる。これらが接合された回路基板4の上面側に対して圧電振動板3を導電性樹脂接着剤Sにより接合するので、第1の収納部10aに対して圧電振動板3が落ち込んだり傾くことがなくなり、より安定した状態で圧電振動板3と回路基板4の接合が行える。
【0052】
本発明の他の実施形態について、図7とともに説明する。図7は本発明の他の実施の形態を示す断面図である。なお、基本構成は上述の実施の形態と同じであるので、同じ構成部分については同番号を用いるとともに、相違点のみを説明する。
【0053】
前記第1の収納部に搭載される集積回路素子2は、配線パッドが形成されない底面側で例えば樹脂接着剤Jを介して前記ベースの第1の収納部の内底面に対して機械的に接合されている。前記集積回路素子2の上方には所定の間隔をもって回路基板4が搭載される。この際、本変形例では、前記回路基板4の第1の配線パターン41a,41b,41c,41d,41e,41fと、これらの第1の配線パターンの位置に対応して前記第1の収納部に搭載された集積回路素子2の上面の複数の配線パッドPとが金などの金属バンプC(導電性接合材)を介してFCBにより接続される点では上記実施形態と同様である。しかし、前記セラミックベース1の段差部上面の配線パターン12a,12b,12c,12dと、これらの配線パターンの位置に対応して前記回路基板4の第1の配線パターン41a,41d,41e,41fとが例えばペースト状であり銀フィラー等の金属微小片を含有するシリコーン系の導電性樹脂接着剤S(導電性接合材)を用いて、お互いを電気的機械的に接合している点が相違している。なお、シリコーン系の導電性樹脂接着剤に限らず、他の樹脂剤でもよく、さらにはんだ等の金属ろう材を用いてもよい。この構成では、予め集積回路素子2のみを回路基板4に対して金属バンプCを介してFCB接合し、当該回路基板を導電性樹脂接着剤Sが塗布されたセラミックベースの段差部10cと樹脂接着剤Jが塗布されたセラミックベースの第1の収納部10aの内底面に対して搭載して接合することで容易に得られる。
【0054】
上記実施形態の変形例により、セラミックベースの段差部10cの平坦性のバラツキや前記回路基板4とセラミックベースの段差部10cの隙間のバラツキを前記導電性樹脂接着材Sの接合領域で吸収してより確実な電気的機械的な接合が行える。特にシリコーン系などの柔軟な導電性樹脂接着材を用いた場合、圧電振動板2に対する外部衝撃がやわらげられるので、耐衝撃性能が向上する。なお、本変形例では前記セラミックベース1の段差部と前記回路基板4との接合に用いる導電性接合材と、圧電振動板3と回路基板4との接合に用いる導電性接合材とを同材質のシリコーン系の導電性樹脂接着剤を用いている。このようにお互いの導電性接合材を同材質の物を用いることで、導電性接合材の接合するための工程上の条件(樹脂接着剤の場合には硬化温度、ろう材の場合には溶融温度等)を同じにすることができるため製造上好ましい形態となる。
【0055】
上記した本発明の各実施形態では、圧電振動板としてATカット水晶振動板を用いているが、これに限定されるものでなく、音叉型水晶振動板であってもよい。また、圧電振動板として水晶を材料としているが、これに限定されるものではなく、圧電セラミックスやLiNbO3等の圧電単結晶材料を用いてもよい。すなわち、任意の圧電振動板が適用可能である。また、圧電振動板を回路基板上部で片持ち保持するものを例にしているが、圧電振動板の両端を保持する構成であってもよい。また本発明の各実施形態における封止構成としては、シーム封止に限らず、ビーム封止(例えば、レーザビーム、電子ビーム)やガラス封止、ろう材封止等であってもよい。
【0056】
本発明は、その思想または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態を示す蓋をする前の平面図。
【図3】本発明の実施の形態を示す回路基板の平面図。
【図4】図3の底面図。
【図5】本発明の実施の形態にかかる表面実装型水晶発振器の概略工程図。
【図6】本発明の実施の形態の変形例を示す断面図。
【図7】本発明の他の実施の形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0058】
1 セラミックベース
2 集積回路素子
3 圧電振動板
4 回路基板
S 導電性樹脂接着剤
C 金属バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極と引出電極が形成された圧電振動板と一主面に配線パッドが形成された集積回路素子を有し、これらを収納する絶縁性のベースを有する表面実装型圧電発振器であって、
前記ベースは上面側に側壁部と収納部、底面側に端子電極を有しており、
前記収納部は内底面に前記集積回路素子が収納される第1の収納部と、
当該第1の収納部の側壁部と接続された段差部と、
前記圧電振動板が収納されるとともに前記第1の収納部と前記段差部の上面に配置される第2の収納部とが形成されており、
表裏面に配線パターンが形成された板状の回路基板の上面側の配線パターンと前記圧電振動板の引出電極とが導電性接合材で接合され、当該回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッドとが導電性接合材で接合されるとともに、当該回路基板のみにより圧電振動板と集積回路素子とがお互いに電気的に接続されてなり、
前記段差部上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンの一部とが導電性接合材で接合されることで、回路基板の配線パターンが前記ベースの端子電極に導出されてなることを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項2】
前記集積回路素子の配線パッドが形成されない主面が前記ベースの第1の収納部内底面に対して機械的に接合されてなり、前記回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッド、および前記ベースの段差部の上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンとを金属バンプにより接合してなることを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項3】
前記集積回路素子の配線パッドが形成されない主面が前記ベースの第1の収納部内底面に対して機械的に接合されてなり、前記回路基板の底面側の配線パターンと前記集積回路素子の配線パッドを金属バンプにより接合してなり、前記ベースの段差部の上面の配線パターンと前記回路基板の底面側の配線パターンとを導電性樹脂接着材あるいは金属ろう材により接合してなることを特徴とする特許請求項1記載の表面実装型圧電発振器。
【請求項4】
励振電極と引出電極が形成された圧電振動板と、
一主面に配線パッドが形成された集積回路素子と、
前記集積回路素子が収納される第1の収納部と、当該第1の収納部の側壁部と接続された段差部と当該段差部上面に形成された配線パターンと、前記圧電振動板が収納されるとともに前記第1の収納部と前記段差部の上面に配置される第2の収納部とが形成されたベースと、
表裏面に配線パターンが形成され、当該表裏の配線パターンがお互いに電気的に接続された板状の回路基板とを有する表面実装型圧電発振器の製造方法であって、
前記集積回路素子の配線パッドが形成されない他主面を前記ベースの第1の収納部内底面にダイボンディングする工程と、
前記集積回路素子の配線パッドと前記ベースの段差部の配線パターン、あるいは前記回路基板の裏面側の配線パターンのうちの少なくとも一方に金属バンプを形成する工程と、
前記集積回路素子の配線パッドと前記ベースの段差部の配線パッドに対して前記金属バンプが介在した状態で前記回路基板の裏面側の配線パターンを重ね合わせて超音波接合することでお互いに電気的機械的に接合する工程と、
前記集積回路素子とベースに接合された回路基板の上面側の配線パターンに対して圧電振動板の引出電極とを導電性接合材により接合する工程とからなることを特徴とする表面実装型圧電発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−239475(P2009−239475A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80933(P2008−80933)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】