説明

表面検査装置及び表面検査方法

【課題】計測した光学検出器の光電子増倍係数を基に計算した補正印加電圧を用いて光学検出器を駆動して補正値を検査することにより、基準となる試料を必要とすること無く、光学検出器の出力値を補正することが可能な表面検査装置を実現する。
【解決手段】表面検査装置において、個々の光学検出器8a〜8cの光電子増倍係数を計測し、計測した光電子増倍係数を基に制御部11が補正印加電圧を計算する。表面検査装置に組み込まれた検出器8a〜8cのそれぞれについて、計算した補正印加電圧を用いて光学検出器8a〜8cを駆動して補正値を検査する。これにより、基準となる試料を必要とすること無く、光学検出器の出力値を補正することが可能な表面検査装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の表面に存在する異物や欠陥などの分布状況について、レーザ光を用いて調べる表面検査装置及び表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、高純度なシリコンのインゴットをスライスした薄いウェハに対して研磨や結晶成長、イオン注入などを施して作成される。この際に、ウェハの表面に存在する微小な異物や欠陥が半導体デバイス作成の歩留まりに強く影響する。そのため、半導体デバイス作成の各工程でウェハの表面検査による異物や欠陥などの分布状況の検査が必要とされている。
【0003】
ウェハの表面に存在する微小な異物や欠陥を検査する方法としては電子ビーム等の荷電粒子線を用いる方法とレーザ光を用いる方法がある。
【0004】
レーザ光を用いる方法としては、ウェハの表面で散乱された光を受光素子で検出し光の散乱の程度からウェハの表面情報を解析するものとウェハの表面で正反射された光を受光素子で検出しウェハの表面情報を解析するものがある。
【0005】
レーザ光を用いたウェハの表面検査装置は、例えば、ウェハが回転ステージに置かれ、回転されながら径方向に移動される。その際にウェハにレーザ光が照射され、ウェハの表面に存在する異物や欠陥などからの散乱光を複数個の検出器で受光する。
【0006】
そして、得られた異物や欠陥などからの散乱光を光電変換し、出力電流を増幅やフィルタ処理、A/D変換、異物判定などを行いウェハの表面情報をファイルやディスプレイなどに出力する。
【0007】
表面検査装置の検出器には、微小な異物からの散乱光を受光して判別するために、微弱光を高感度、高速に応答して観測できる光電子増倍管(PMT)やCCDが使われている。しかし、このPMT等は、同じ型番のものであっても、個々に異なる光電子増倍係数を持っていて、個体差が大きく存在する。
【0008】
PMT等の光電子増倍係数は、入力と出力の累乗関係を表している。そのために、同じ条件下で同じウェハを検査しても、光電子増倍係数が違うPMT等が使われた各検出器の出力は違いが大きい。
【0009】
従来技術では、個体差があるPMT等からの検査結果を情報処理の部分で検出器ごとに基準値と等しくなるように処理が行われている。また、PMT等の個体差から、装置ごとに検出性能が異なるために、校正作業に手間や時間、人員コストが多く必要となっている。
【0010】
上記の解決策として、特許文献1に、検査装置内にキャリブレーション用の試料を載置して、その試料からの測定値と基準値との誤差を算出してディテクタを補正する基準値設定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−172813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記特許文献1記載されたような解決策では、キャリブレーション用試料を使用しなければならず、このキャリブレーション試料の装置内外での長期に亘っての保存を考えた場合、キャリブレーション試料への異物の付着や試料の化学変化などによって、キャリブレーション試料から得られる基準信号の変動が起こる可能性がある。
【0013】
また、表面検査装置における検出器の性能を、複数の表面検査装置で互いに等しくすることは困難である。
【0014】
本発明の目的は、表面検査装置において、計測した光学検出器の光電子増倍係数を基に計算した補正印加電圧を用いて補正値を算出し、基準となる試料を必要とすること無く、光学検出器の出力値を補正することが可能な表面検査装置及び表面検査方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、以下のように構成される。
【0016】
本発明の表面検査装置及び方法は、光学検出器の光電子増倍係数と理論光電子増倍係数とを比較し、上記光学検出器の光電子増倍係数を補正する補正電圧を算出し、上記電圧源から上記光学検出器に印加される駆動電圧を算出した補正電圧に基づいて補正する。
【発明の効果】
【0017】
表面検査装置において、計測した光学検出器の光電子増倍係数を基に計算した補正印加電圧を用いて補正値を算出し、基準となる試料を必要とすること無く、光学検出器の出力値を補正することが可能な表面検査装置及び表面検査方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用される表面検査装置の一例を示す簡略図である。
【図2】本発明の実施例における検出器の補正を行う全体動作フローチャートである。
【図3】本発明の実施例における個別のPMTの光電子増倍係数を求めるフローチャートである。
【図4】本発明の実施例における個別のPMTの特性を測定する測定治具の模式図である。
【図5】本発明の実施例における光学検出器の光電子増倍係数を求めるフローチャートである。
【図6】本発明の実施例における光学検出器における検査結果を表す画面を示す簡略図である。
【図7】本発明の実施例における各光学検出器への印加電圧設定を行う表示例を示す図である。
【図8】本発明の実施例におけるPMTの交換を促すアラームの表示例を示す図である。
【図9】本発明の実施例における個別のPMTの特性を測定する測定治具の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明が適用される表面検査装置の概略構成図である。
【0021】
本発明の実施例における表面検査装置や表面検査方法は、主に被検査物としてウェハ1が用いられるが、それ以外にも液晶パネルのガラス基板や太陽電池パネルなどの平面状の被検査物に適用可能である。ここでは、ウェハ1を一例にして、本発明を説明する。
【0022】
図1において、ウェハ1は、裏面吸着法また、エッジ部分の保持機構によって、ステージ3に固定される。そして、レーザ光源4からレーザ光が発振され、発振されたレーザ光は、照明光切替ミラー5で垂直照明機構6または斜方照明機構7で分けられ、ウェハ1に対して垂直方向または斜方方向からウェハ1に照射される。
【0023】
ステージ3は等速回転または加速度を変化する回転をして、走査機構2は径方向に移動する。これにより、ウェハ1の表面をスパイラル状にレーザ光が走査させられる。
【0024】
また、走査機構2の径方向への移動方法を等速移動ではなく、ウェハ1が一回転してから一定距離移動するようにして、レーザ光が同心円状にウェハ1の表面を走査することもできる。
【0025】
ウェハ1の表面に照明されたレーザ光は、ウェハ1の表面に存在する異物や欠陥などによってウェハ1の上方に散乱される。その散乱光をウェハ1の上方に取付けられたひとつまたは複数個の光学検出器8a〜8cによって受光される。これらの検出器8a〜8cは、ウェハ1の上方を覆うように配置しても、仰角を変えて2段以上配置してもよい。そして、この検出器8a〜8cには、PMT20(図4に示す)が使われている。
【0026】
本発明の実施例1においては、アノードが一つの場合の光電子倍増管が使用されている。
【0027】
検出器8a〜8cは、各PMT20に高電圧の駆動電圧を印加する印加電圧源9と、検査結果の増幅やフィルタ処理、A/D変換、異物判別などを行う情報処理部10と接続されている。印加電圧源9は、制御部11からの命令によって印加電圧を変更することができる。
【0028】
情報処理部10は、検出器8a〜8cの出力を基にウェハ1の表面の異物や欠陥の情報を制御部11に出力する。制御部11は、検査結果の保存や入出力装置12へ出力することとステージ3や照明系5、検出器8a〜8cなどの制御を行う。また、検査で用いられる各種パラメータと後述するPMT20の補正に必要な光電子増倍係数や補正項の値は、制御部11に記録されている。
【0029】
また、入出力装置12は、ネットワーク27を介して、複数の他の表面検査装置26a・・・26nと、ホストコンピュータ25とに接続されている。
【0030】
次に、図2〜図8を参照して、検出器8a〜8cの補正方法について説明する。
【0031】
まず、検出器8a〜8cを表面検査装置に搭載する前に、図2のステップ101において、使用する個別のPMT20の光電子増倍係数αを調べる。なお、αの「m」は、複数個あるPMT20の通し番号である。個別のPMT20の光電子増倍係数αを測定する流れを図3に示す。
【0032】
ここで、PMT20の出力電流Iと印加電圧HV、光電子増倍係数αは次式(1)のような関係にある。
【0033】
I=K・HVαm ・・・(1)
上記式(1)において、Kは検出器の仕様等によリ決定される比例係数を表している。PMT20は、材料や構造によって大きく光電子増倍係数αが異なる。また、同じ材料で同じ構造のものであっても、製造のバラツキによって光電子増倍係数αの個体差が存在している。
【0034】
個々のPMT20の光電子増倍係数αは、図4に示す光電子増倍係数測定治具を用いて出力電流Iと印加電圧HVとの関係を測定し、上記式(1)から算出する。図4において、PMT20に光を入射させる光源21には、LEDやレーザを用いる。また、PMT20に入射する光は、パルス光ではなく、連続光を用いて測定を行ってもよい。また、PMT20に入射させる光量は、光源21への入力電圧を可変にしたり、NDフィルタ23を用いたりして調節を行ってもよい。
【0035】
入射光は、レンズ22a、22bを用いて結像系を構成して、PMT20へ入射させる方法と光ファイバや透明なアクリル材を用いてPMT20の入射窓付近まで光を伝播させる方法などを組合せて行ってもよい。
【0036】
測定したPMT20の光電子増倍係数は、測定治具に接続されたパソコン24により図3に示すステップの動作及びデータ処理がなされ、入出力装置12に伝送され、制御部11に取り込まれる。
【0037】
測定治具によるPMT20の光電子増倍係数の測定では、図3のステップ201において、PMT20を図4に示す治具に置き、ステップ202にて一定の印加電圧HVを加える。そして、ステップ203にて、PMT20に光源21から、パルス光を入射し、ステップ204にてその時の出力値をパソコン24等に記録する。
【0038】
そして、ステップ205にて、印加電圧HVがHVmaxと等しいか否かが判断され、等しくなければ、ステップ206にて印加電圧を増加させて、ステップ203に戻り、同じパルス光をPMT20に入射させる。
【0039】
印加電圧HVが検査で使用する際の最大電圧値HVmaxと等しくなるまで、上記手順ステップ203〜206を数回繰り返し、図6のように測定結果を入出装置12に表示する。
【0040】
そして、ステップ207において、パソコン24は、出力値Iと印加電圧HVとの関係からPMT20の光電子増倍係数αを計算する。測定結果に対して累乗近似曲線を描き、その累乗近似曲線の累乗項を測定したPMT20の光電子増倍係数αとする。
【0041】
算出した個々のPMT20の光電子増倍係数αは、上述したように、パソコン24から入出力装置12を介して制御部11に伝達される。
【0042】
次に、制御部11は、PMT20を表面検査装置に組み込んだ後のPMTである検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’を理論光電子増倍係数αthに合わせる補正印加電圧を求める。
【0043】
図2のステップ102、103に示した検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’の測定についての流れを図5に示す。
【0044】
図5のステップ301において、光電子増倍係数の測定が終了した複数のPMT20が図1に示した表面検査装置に組み込まれる。
【0045】
そして、ステップ302〜307(図2のステップ103、104に対応)において、上記で測定した個別のPMT20の光電子増倍係数αと次式(2)から、印加電圧HVが、基準電圧HVの場合の出力を基準値にして、検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’が理想値αthと同等になるためのPMT20への補正印加電圧HVnewを求める。
【0046】
HVnew=(K/K1/αm・HVαth/αm、(1/K)=HVαth、
(1/K)=HVαm ・・・(2)
ただし、上記式(2)において、HVnewは補正印加電圧、HVは基準印加電圧、K、Kは比例係数、αthは理論光電子増倍係数を表している。
【0047】
比例係数K、Kは、表面検査装置の組み立て誤差、装置環境による誤差、経時変換による出力変動を考慮して適宜設定可能である。
【0048】
検査は、制御部11によって、記録しておいた各検出器8a〜8cのPMT20の光電子増倍係数αmを読み出し、設定した印加電圧を上記式(2)により補正印加電圧に変換して、その補正印加電圧を各検出器8a〜8cに印加して行われる。補正後の印加電圧の値は、ステップ305において、PMT20に印加できる上限の電圧値HVmax内であるか、または、小さすぎないか判断される。小さい場合は、ステップ306において、印加電圧HVを増加させて、ステップ303に戻る。
【0049】
そして、印加電圧HVが電圧値HVmaxと等しくなると、ステップ307にて、検出器の光電子増倍係数α’を計算する。
【0050】
図7の表示ディスプレイ28に例示するように、表面検査装置の使用者に、検出器毎に、補正前の印加電圧の値と、補正後の印加電圧の値が、いくつであるかを表示し、補正印加電圧がPMT20の仕様範囲内であるかを判断できるようになっていてもよい。
【0051】
次に、上記で求めた、各検出器8a〜8cの補正印加電圧HVnewを用いて、ウェハ1を検査して、検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’を調査する(ステップ104〜106)。検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’は、上記と同じく、図6のように測定結果を図示し、出力値と印加電圧の関係から検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’を計算する(ステップ307)。
【0052】
図2のステップ104〜106において、その調べた光電子増倍係数α’と理論光電子増倍係数αthとを比較して、機械誤差や組立誤差による、個別のPMT20の光電子増倍係数αと検出器8a〜8cの持つ光電子増倍係数α’との差が大きく、検出欠陥等のサイズのずれの許容範囲を超える場合(例えば、両光電子増倍係数の差がプラスマイナス0.3を越える場合)には、検出器8a〜8cの補正値Dmを求める(ステップ106)。
【0053】
差がない場合には、補正値Dmの値は1である。この各検出器8a〜8cの補正値Dmは、組立や装置環境による誤差、PMT20の経時変化による出力の変動具合を含んだ係数である。
【0054】
そこで、個別のPMT20の光電子増倍係数αと検出器8a〜8cの持つ光電子増倍係数α’に差が大きい場合には、補正値Dmと次式(3)とを用いて、検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’を理論光電子増倍係数αthに合わせる新たな補正印加電圧値HVnewを求める。
【0055】
HVnew=Dm1/αm・(K/K1/αm・HVαth/αm ・・・(3)
検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’と理論光電子増倍係数αthとを比較して、差が上記一定範囲内なるまで、補正値Dmを変えて検査を繰り返す(ステップ104〜106)。
【0056】
光電子増倍係数α’が理論光電子増倍係数αthと比較して、差が上記一定範囲内となった場合は、ステップ107において、求めた補正値を制御部11が有する記録媒体に保存する。
【0057】
保存した個々の検出器8a〜8cの補正値(補正印加電圧)を使用して、検出器8a〜8cの光電子増倍係数を補正し、ウェハの表面検査を行う。
【0058】
図4に示した測定治具を用いて、個々のPMT20の光電子増倍係数αを測定し、個々のPMT20を表面検査装置に取り付けた後、取り付けた個々のPMT20について、光電子増倍係数が理想値と一定誤差となるように、補正電圧を定め、記憶するように構成したが、測定治具を使用するのではなく、表面検査装置を用いて、個々のPMT20の光電子増倍係数を測定することも可能である。
【0059】
つまり、測定治具を用いてPMT20の光電子増倍係数αを求めずにウェハ1の検査を行って、その結果から、制御部11により個々の検出器8a〜8c光電子増倍係数を求めてから、検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’を補正する作業を行ってもよい。
【0060】
さらに、表面検査装置内にPMT20の光電子増倍係数αを求めるための治具と同じような、光源と各PMT20へ光を伝播させる系を持つPMT20の光電子増倍係数αを測定する機構を表面検査装置に設けて、その機構を用いて検出器8a〜8cを補正する作業を行ってもよい。
【0061】
また、定期的に上記の検出器8a〜8cの補正作業を行うことにより、その都度、検出器8a〜8cの補正値Dmを変化させることで、PMT20の劣化や装置環境の変化の影響を含んだ検査を行うことができる。また、常に安定した検査結果を得るために、検出器8a〜8cの補正値Dmがある一定範囲を超えたら、新しいPMT20への交換を判断することができる。
【0062】
PMT20の交換が必要と判断された場合には、図8に例示するアラーム29を入出力装置12のディスプレイに表示し、表面検査装置の利用者にPMT20の交換を促すことができる。
【0063】
次に、複数台の表面検査装置を通信ネットワークで接続した表面検査システムによる、検出器8a〜8cにおける機差低減対策方法を説明する。
【0064】
補正を行った複数台の表面検査装置26a〜26nの間において、各装置26a〜26nで同じウェハ1を測定した結果から、基準電圧での検出器ごとの出力比βmnを求める。βmnの「n」は、複数台ある表面検査装置の通し番号である。
【0065】
出力比βmnは、ホストコンピュータ25が、複数の表面検査装置26a〜26nから通信ネットワーク27を介して送信されてくるデータに従って算出する。検出器8a〜8cは、一つの表面検査装置に複数存在するが、各表面検査装置の対応する位置に配置された検出器どうしの出力比を算出する。
【0066】
ただし、出力比βmnを求める際の基準とする出力の値は、シミュレーションから求めてもよく、各検出器8a〜8cの出力の平均値としてもよく、基準となる装置を決めて、その装置の検出器の出力値としてもよい。
【0067】
求めた出力比βmnと次式(4)とを用いて複数台ある表面検査装置における検出器8a〜8cの補正印加電圧の計算を行う。そして、ホストコンピュータ25から通信ネットワーク27を介して表面検査装置26a〜26nに計算した補正印加電圧の値を伝達する。
【0068】
各検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’と出力比βmnを記録しておき、ウェハ1の検査時に記録媒体よりその値を読み出し、印加電圧を求め、その値で同じウェハ1を検査すると、補正を行った表面検査装置間において等しい検査結果を得ることができる。
【0069】
HVnew=βmn1/αm・D1/αm・(K/K1/αm・HVαth/αm ・・・(4)
なお、上記の各補正値は、個々の表面検査装置自体で管理してもよいが、ホストコンピュータ25に各表面検査装置26a〜26nの補正値を随時記録しておき、表面検査装置の状態をモニタリングすることができる。
【0070】
以上のように、本発明の実施例1においては、表面検査装置の複数の光学検出器8a〜8cの個々の光電子増倍係数αを測定し、測定した光電子増倍係数αに基づいて、理論光電子増倍係数αthと同等となるための補助印加電圧HVnewを算出する。算出した補助印加電圧HVnewを用いて、ウエハ1を検査して各検出器8a〜8cの光電子増倍係数α’を算出し、検出器の補正値Dを求め、求めた補正値Dにより補正印加電圧値HVnewを算出する。
【0071】
したがって、本発明の実施例1によれば、複数の光学検出器を有する表面検査装置において、個々の光学検出器の光電子増倍係数を計測し、計測した光電子増倍係数を基に補正印加電圧を計算し、その補正印加電圧を用いて光学検出器を駆動して補正値を検査することにより、基準となる試料を必要とすること無く、光学検出器の出力値を補正することが可能な表面検査装置及び表面検査方法を実現することができる。
【0072】
また、光学検出器8a〜8cの経時変化や故障の場合に、PMTである光学検出器8a〜8cを交換しても、交換した検出器の性能を短時間で他の光学検出器と同等にすることができ、メンテナンスを容易にすることができると共に、装置の稼働率を向上することができる。
【0073】
さらに、本発明の実施例1によれば、複数台の表面検査装置間の光学検出器の性能差を調整することができるので、複数の表面検査装置の性能差を縮小することが可能である。
【0074】
また、検出器ごとの性能を等しくできることにより、検査装置の機差を低減させることができる。それにより、装置ごとにレシピを作り変えなくても、同一のレシピで同じウェハを検査すれば同様な検査結果を得ることができ、作業効率を向上することができる。
【実施例2】
【0075】
本発明の実施例1は、アノードが一つの場合のPMTを用いた場合の例であるが、アノードが複数のマルチアノード型のPMTを用いる場合にも、本発明は適用可能である。
【0076】
実際、マルチアノード型PMTにおいても製造のバラツキによる個体差が大きく存在している。
【0077】
まず、図9に示すマルチアノード型PMT31の光電子増倍係数を測定する治具を用いて、PMT31の光電子増倍係数を測定する。
【0078】
光源21からの光をレンズ22とNDフィルタ23、エキスパンダ30により、PMT31に一様な光量を有する幅広い光を入射させる。
【0079】
次に、その時のマルチアノード型PMT31からの出力を記録して、個別のマルチアノード型PMT31の光電子増倍係数αを求める。
【0080】
そして、表面検査装置でPMT31の出力が等しくなるように、実施例1と同様に補正印加電圧を求め、その補正印加電圧を用いて検査することによりマルチアノード型PMT31を用いた装置においても機差低減ができる。
【0081】
各アノードに対して個別に印加電圧が加えられるマルチアノード型PMT31であれば、上記技術を用いてすべてのアノードからの出力を等しくすることができる。そうすることで、アノード間で出力に違いがあるマルチアノード型PMT31の出力を後段の回路などで複雑な構成や処理をすることなく、すべてのアノードで同じ出力を得ることができる。
【0082】
なお、上述した例においては、光学検出器をPMTとした例を説明したが、本発明は、PMTのみならず、CCD等の他の光学検出器にも適用可能である。
【0083】
さらに、上述した実施例1、実施例2においては、PMTが複数個使用される場合の例を説明したが、PMTは複数個ではなく、単一のPMTが使用される表面検査装置及び方法にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1・・・ウェハ、2・・・走査機構、3・・・ステージ、4・・・レーザ光源、5・・・照明光切替ミラー、6・・・垂直照明機構、7・・・斜方照明機構、8a〜8c・・・光学検出器、9・・・印加電圧源、10・・・情報処理部、11・・・制御部、12・・・入出力装置、20、31・・・PMT、21・・・光源、22a〜22b・・・レンズ、23・・・NDフィルタ、24・・・パソコン、25・・・ホストコンピュータ、26a〜26n・・・表面検査装置、27・・・通信ネットワーク、30・・・エキスパンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の表面を検査する表面検査装置において、
被検査物を移動する搬送手段と、
上記被検査物へ光を照射する照明手段と、
上記被検査物からの散乱光を検出する少なくとも1つの光学検出器と、
上記光学検出器に駆動電圧を印加する電圧源と、
上記光学検出器によって検出された光情報を処理し、検査結果を出力する情報処理部と、
上記光学検出器の光電子増倍係数と、理論光電子増倍係数とを比較し、上記光学検出器の光電子増倍係数を補正する補正電圧を算出し、上記電圧源から上記光学検出器に印加される駆動電圧を上記算出した補正電圧に基づいて補正する制御部と、
を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面検査装置において、上記光学検出器に電圧を印加し、印加した電圧と出力電流との関係から、上記光学検出器の光電子増倍係数を算出し、算出した光電子増倍係数を上記制御部に伝送する光電子増倍係数測定手段を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表面検査装置において、上記制御部は、上記光学検出器に上記電圧源から電圧を印加させ、印加電圧と出力電流との関係から、上記光学検出器の光電子増倍係数を算出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表面検査装置において、上記制御部は、表面検査装置の組立誤差、装置環境による誤差、または経時変化による出力変動を反映した値を用いて上記光学検出器を補正する電圧を算出することを特徴とする表面検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表面検査装置において、上記光学検出器は、光電子倍増管であることを特徴とする表面検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表面検査装置において、上記光電子倍増管はマルチアノード型光電子倍増管であることを特徴とする表面検査装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表面検査装置において、上記制御部によって、補正される前の上記駆動電圧と、補正された後の駆動電圧とを表示する表示手段を備えることを特徴とする表面検査装置。
【請求項8】
請求項1に記載の表面検査装置を複数個備える表面検査システムにおいて、
これら複数の表面検査装置に接続される通信ネットワークと、
上記通信ネットワークに接続され、上記複数の表面検査装置の光学検出器の光電子増倍係数の値を上記通信ネットワークを介して取得し、上記複数の表面検査装置の互いに対応する光学検出器の光電子増倍係数を比較し、上記複数の表面検査装置の差異を補正する補正電圧を算出し、上記複数の表面検出装置に上記ネットワークを介して伝達するホストコンピュータと、
を備えることを特徴とする表面検査システム。
【請求項9】
被検査物へ光を照射し、上記被検査物からの散乱光を光学検出器により検出し、上記光学検出器によって検出された光情報を処理し、検査結果を出力する被検査物の表面を検査する表面検査方法において、
上記光学検出器の光電子増倍係数と、理論光電子増倍係数とを比較し、上記光学検出器の光電子増倍係数を補正する補正電圧を算出し、上記光学検出器に印加する駆動電圧を上記算出した補正電圧に基づいて補正することを特徴とする表面検査方法。
【請求項10】
請求項9に記載の表面検査方法において、上記光学検出器に電圧を印加し、印加した電圧と出力電流との関係から、上記光学検出器の光電子増倍係数を算出する光電子増倍係数測定手段を用いることを特徴とする表面検査方法。
【請求項11】
請求項9に記載の表面検査方法において、表面検査装置の組立誤差、装置環境による誤差、または経時変化による出力変動を反映した値を用いて上記光学検出器を補正する電圧を算出することを特徴とする表面検査方法。
【請求項12】
請求項9に記載の表面検査方法において、上記光学検出器は、光電子倍増管であることを特徴とする表面検査方法。
【請求項13】
請求項12に記載の表面検査方法において、上記光電子倍増管はマルチアノード型光電子倍増管であることを特徴とする表面検査方法。
【請求項14】
請求項9に記載の表面検査方法において、補正される前の上記駆動電圧と、補正された後の駆動電圧とを表示することを特徴とする表面検査方法。
【請求項15】
請求項9に記載の表面検査方法において、複数の表面検査装置を通信ネットワークに接続し、上記通信ネットワークを介して上記複数の表面検査装置の光学検出器の光電子増倍係数の値を取得し、上記複数の表面検査装置の互いに対応する光学検出器の光電子増倍係数を比較し、上記複数の表面検査装置の差異を補正する補正電圧を算出し、上記複数の表面検出装置に上記ネットワークを介して伝達することを特徴とする表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−179947(P2011−179947A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43995(P2010−43995)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】