説明

被処理体の酸化装置及び酸化方法

【課題】最適化された還元性ガス流量等のプロセス条件を求めるための調整作業を簡単に且つ迅速に行うことができる被処理体の酸化装置を提供する。
【解決手段】被処理体Wに酸化処理を施すための処理容器24と、被処理体を複数枚支持する支持手段26と、加熱手段90と、容器内の雰囲気を真空引きする真空排気系86と、酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給系42と、還元性ガスを供給するための還元性ガス供給系44とを有する被処理体の酸化装置において、酸化性ガス供給系は、処理容器の長さ方向に沿って配設されると共に、所定のピッチで複数のガス噴射孔48A,48Bが形成された酸化性ガスノズル48を有し、還元性ガス供給系は、処理容器内の被処理体の収容領域を高さ方向に沿って区画した複数のゾーンに対応するようにその長さを異ならせて設けられると共に、その先端部側にガス噴射孔52A〜60Aが形成された複数の還元性ガスノズル52〜60を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体の表面に対して酸化処理を施す被処理体の酸化装置及び酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路を製造するためにはシリコン基板等よりなる半導体ウエハに対して、成膜処理、エッチング処理、酸化処理、拡散処理、改質処理等の各種の処理が行なわれる。上記各種の処理の中で、例えば酸化処理を例にとれば、この酸化処理は、単結晶或いはポリシリコン膜の表面等を酸化する場合、金属膜を酸化処理する場合等が知られており、特に、ゲート酸化膜やキャパシタ等の絶縁膜を形成する時に主に用いられる。
【0003】
この酸化処理を行なう方法には、圧力の観点からは、略大気圧と同等の雰囲気下の処理容器内で行なう常圧酸化処理方法と真空雰囲気下の処理容器内で行なう減圧酸化処理方法とがあり、また、酸化に使用するガス種の観点からは、例えば水素と酸素とを外部燃焼装置にて燃焼させることによって水蒸気を発生させてこの水蒸気を用いて酸化を行なうウェット酸化処理方法(例えば特許文献1等)と、オゾンのみ、或いは酸素のみを処理容器内へ流すなどして水蒸気を用いないで酸化を行なうドライ酸化処理方法(例えば特許文献2等)とが存在する。
【0004】
そして、絶縁膜としては耐圧性、耐腐食性、信頼性等の膜質特性を考慮すると、一般的には、ドライ酸化処理により形成された物よりも、ウェット酸化処理により形成された物の方が比較的優れている。また、形成される酸化膜(絶縁膜)の成膜レートやウエハ面内の均一性の観点からは、一般的には、常圧のウェット酸化処理により形成された物は、酸化レートは大きいが、膜厚の面内均一性に劣り、減圧のウェット酸化処理により形成された物は、逆に酸化レートは小さいが膜厚の面内均一性に優れている、という特性を有している。
【0005】
従来にあっては、半導体集積回路のデザインルールがそれ程厳しくなかったことから、酸化膜が適用される用途やプロセス条件、装置コスト等を適宜勘案して、上述したような種々の酸化方法が用いられていた。しかしながら、最近のように線幅や膜厚がより小さくなってデザインルールが厳しくなると、それに従って、膜質の特性や膜厚の面内均一性等がより高いものが要求されるようになってきており、酸化処理方法では、この要求に十分に対応することができない、といった問題が発生してきた。
【0006】
そこで、最近にあっては、H ガスとO ガスとを処理容器内へ個別に導入し、両ガスを処理容器内で反応させて水蒸気等を発生させ、これによりウエハ表面を酸化するようにした酸化装置が提案されている(特許文献3〜6)。
例えば特許文献3、5、6等においては、H ガスとO ガスとを1Torr程度の低い圧力下で、且つ酸化膜を形成するには比較的低温で、例えば900℃以下で反応させて酸素活性種と水酸基活性種を発生させ、これによりウエハ表面を酸化して、例えばシリコン酸化膜を形成するようにした技術が提案されている。
【0007】
図9は従来の被処理体の酸化装置の一例を示す断面図である。この酸化装置は、石英筒よりなる有天井の円筒体状の処理容器2を有しており、この中に石英製のウエハボート4が設けられる。このウエハボート4には、所定のピッチで複数枚、例えば25〜150枚程度の半導体ウエハWが多段に支持されている。このウエハボート4は保温筒6上に支持されて、図示しないボートエレベータによって処理容器2の下方側より昇降させて処理容器2内を挿脱可能に収容される。また、処理容器2の下端開口部は、上記ボートエレベータによって昇降される蓋部8によって気密に閉じられる。
【0008】
また処理容器2の下部には、酸素ガスを導入する1本のガスノズル10と水素ガスを導入する複数本のガスノズル12A〜12Eとがそれぞれ設けられると共に、ここには処理容器2内の雰囲気を排気する排気口14が設けられており、各容器の雰囲気を真空ポンプ16により真空引きできるようになっている。上記酸素用のガスノズル10はL字状になされて、その先端部が容器内の上部まで延びており、先端部に形成したガス噴射孔10Aから酸素をマスフローコントローラ10Bにより流量制御しつつ導入することにより、処理容器2内のガス流の上流側に酸素を供給するようになっている。
【0009】
また水素用の各ガスノズル12A〜12EはL字状になされて、処理容器2内の高さ方向の異なるゾーンに位置させるようにその長さをそれぞれ異ならせており、各ノズルの先端部にガス噴射孔13A〜13Eをそれぞれ設けている。
そして、この水素用の各ガスノズル12A〜12Eは、個別に設けたマスフローコントローラ15A〜15Eによりそれぞれガス流量を制御しつつ水素を導入できるようになっている。すなわち、ここでは処理容器2内のウエハ収容領域を5つのゾーン17A〜17Eに区画してそれぞれのゾーン17A〜17Eに最適化されたガス流量のH ガスをそれぞれ導入できるようになっている。また処理容器2の周囲には、筒体状の加熱ヒータ18が設けられており、ウエハWを所定の温度に加熱するようになっている。
【0010】
これにより、処理容器2内へ導入されたH ガスとO ガスとを1Torr程度の低い圧力下にて燃焼反応させて酸素活性種と水酸基活性種とを発生させて、ウエハ表面を酸化させるようになっている。上述のように、複数のゾーンに亘って水素用のガスノズル12A〜12Eを設けることによって、ウエハ表面で消費されてガス流の下流側で不足気味となるH ガスをその都度、追加導入できるようになっている。
【0011】
【特許文献1】特開平3−140453号公報
【特許文献2】特開昭57−1232号公報
【特許文献3】特開平4−18727号公報
【特許文献4】特開2004−22833号公報
【特許文献5】特開2005−277386号公報
【特許文献6】特開2005−175441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、上述のように、H ガスとO ガスとを低圧下で反応させてウエハ表面を酸化する酸化方法にあっては、反応によって発生した種々の活性種(以下「ラジカル」とも称す)は非常に反応性が高いことから、ウエハ表面に露出している結晶面の方位に関係なく酸化が行われるので、結晶の面方位依存性がなく、従って、ウエハ表面の凹凸パターンに関係なくその凹凸パターンの表面に沿って均一な膜厚の酸化膜を形成することができる、という利点を有する。
また上述のように発生した活性種の反応性が高いので、酸化し難い膜、すなわち耐酸化性の膜、例えばシリコン窒化膜等も酸化することができる、という利点を有する。
【0013】
しかしながら、上述した利点に対して、酸化処理すべきウエハ表面のパターン面積や膜種等に応じて活性種の消費量は大きく変動するので、その変動量に応じて供給するガス流量等のプロセス条件を最適化しなければならない。このため、パターン面積や膜種等に応じて最適化されたガス流量等のプロセス条件等を予め求めておかなければならないが、この最適化されたガス流量等のプロセス条件を求めるための調整作業が非常に煩わしい、といった問題があった。
【0014】
例えば図10は処理容器2内におけるウエハ位置とシリコン酸化膜の最適化された膜厚との関係を示すグラフである。ここで横軸のウエハ位置はガス流の上流側から下流側に向けて番号が付されており、ここでは処理容器2の上部側がウエハ位置は小さい値となっている。図中の直線L0が目標とする膜厚であり、ここでは膜厚の目標値を13nmに設定しており、ウエハ面間方向において全ウエハに形成される酸化膜の厚さが13nmになるための各ノズルにおけるH ガス流量をそれぞれ調整している。尚、O ガスの流量は固定である。
【0015】
上記のようにウエハ面間方向におけるシリコン酸化膜の膜厚を均一化させるためには、製品ウエハに見立てた表面にSiO 膜の形成された複数のダミーウエハ間に膜厚測定用のベアウエハ(SiO が表面に形成されておらずシリコンが露出している)よりなるモニタウエハを挿入し、このモニタウエハの表面に酸化により形成されたSiO 膜を測定し、この測定値を図10に示すようにプロットして曲線L3及びL5を求めてその時のH ガス流量を最適値として予め定めておく。
【0016】
ここで曲線L3は表面が平面状態のウエハの表面積に対して、表面に凹凸が付されて3倍の表面積になっている時のウエハに対して酸化処理を行った時の膜厚特性を示し、曲線L5は表面に凹凸が付されて5倍の表面積になっている時のウエハに対して酸化処理を行った時の膜厚特性を示している。
【0017】
上記した曲線L3、L5を作製する場合には、上述したようにO ガス供給量をある値で固定し、H ガス用の各ガスノズル12A〜12Eからの供給量をそれぞれ個別に調整し、その調整された各ガス流量を流して実際に対応する倍数の表面積の製品ウエハに対して酸化処理を行い、直線L0に示すような目標膜厚になるようにトライアンドエラーの操作を繰り返し行って求めている。従って、実際に製品ウエハを流す場合には、例えば製品ウエハ表面に凹凸が形成されて表面積が、平面状態のウエハ表面積の3倍程になっている製品ウエハに対して酸化処理を行う場合には、各H ガス用のガスノズル12A〜12Eからは特性曲線L3を形成した時のH ガス流量を各ガスノズル12A〜12Eから導入することになる。このようなトライアンドエラーの操作は、ウエハ表面積の整数倍の表面積に関して予め数種類行うことになる。ここで各特性曲線L3、L5では、全体の膜厚差は上下にシフトしているが、上流側から中流域の途中までは次第に増加しており、その後は略一定状態となっている。
【0018】
図10では、2種類の面積に対応する特性曲線L3、L5しか示していないが、実際には、更に細かな倍数の面積毎にその面間方向での調整差の異なる特性曲線をとってその時のH ガス流量を予め求めなければならず、最適化されたガス流量のプロセス条件を求める調整作業が大変で煩わしい、といった問題があった。
【0019】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、O 等の酸化性ガスを供給する酸化性ガスノズルに被処理体の収容領域に亘って所定のピッチで複数のガス噴射孔を形成し、被処理体の収容領域を高さ方向に区画したゾーン毎にH 等の還元性ガスを供給する長さの異なる複数の還元性ガスノズルを設けることによって、表面積が異なる被処理体に対して水平方向へ直線的になされた膜厚特性が得られ、もって、最適化された還元性ガス流量等のプロセス条件を求めるための調整作業を簡単に且つ迅速に行うことができる被処理体の酸化装置及び酸化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
請求項1に係る発明は、被処理体に酸化処理を施すために真空引き可能になされた所定の長さの処理容器と、前記被処理体を所定のピッチで複数枚支持すると共に、前記処理容器内へ挿脱可能になされた支持手段と、前記被処理体を加熱するための加熱手段と、前記処理容器内の雰囲気を真空引きする真空排気系と、前記処理容器内に酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給系と、該酸化性ガス供給系とは別個に設けられて、前記処理容器内に還元性ガスを供給するための還元性ガス供給系とを有する被処理体の酸化装置において、前記酸化性ガス供給系は、前記処理容器の長さ方向に沿って配設されると共に、所定のピッチで複数のガス噴射孔が形成された酸化性ガスノズルを有し、前記還元性ガス供給系は、前記処理容器内の被処理体の収容領域を高さ方向に沿って区画した複数のゾーンに対応するようにその長さを異ならせて設けられると共に、その先端部側にガス噴射孔が形成された複数の還元性ガスノズルを有することを特徴とする被処理体の酸化装置である。
【0021】
このように、O 等の酸化性ガスを供給する酸化性ガスノズルに被処理体の収容領域に亘って所定のピッチで複数のガス噴射孔を形成し、被処理体の収容領域を高さ方向に区画したゾーン毎にH 等の還元性ガスを供給する長さの異なる複数の還元性ガスノズルを設けることによって、表面積が異なる被処理体に対して水平方向へ直線的になされた膜厚特性が得られ、もって、最適化された還元性ガス流量等のプロセス条件を求めるための調整作業を簡単に且つ迅速に行うことができる。
【0022】
この場合、例えば請求項2に記載したように、前記複数の還元性ガスノズルは、供給する還元性ガスがそれぞれ個別に制御可能になされている。
また例えば請求項3に記載したように、前記各還元性ガスノズルのガス噴射孔は、対応するゾーン内においてそれぞれ所定のピッチで複数個設けられている。
また例えば請求項4に記載したように、前記各ガス噴射孔のガス噴射方向は、前記被処理体の輪郭に対する接線方向及び該輪郭のガス流れ方向の投影領域に対する接線方向よりも外側に向けて設定されている。
【0023】
また例えば請求項5に記載したように、前記酸化性ガスノズルは、前記処理容器の一端側から他端側に延びると共に、他端側にて折り返されて、その先端部が一端側まで延びている。
また例えば請求項6に記載したように、前記酸化性ガスノズルの折り返し後のノズル部分に所定のピッチで形成された各ガス噴射孔は、折り返し前のノズル部分に所定のピッチで形成された隣接するガス噴射孔間の中央部に位置するように設けられる。
また例えば請求項7に記載したように、前記酸化性ガスはO とN OとNOとNO とO よりなる群から選択される1つ以上のガスを含み、前記還元性ガスはH とNH とCH とHClと重水素よりなる群から選択される1つ以上のガスを含む。
【0024】
請求項8に係る発明は、真空引き可能になされた所定の長さの処理容器内に、支持手段に所定のピッチで配列して支持された複数枚の被処理体を収容し、前記処理容器内に酸化性ガスと還元性ガスとを供給して両ガスを反応させることによって発生した酸素活性種と水酸基活性種とを有する雰囲気中で前記被処理体の表面を酸化する酸化方法において、前記処理容器内に所定のピッチで複数のガス噴射孔が形成された酸化性ガスノズルで酸化性ガスを供給し、前記処理容器内にその高さ方向に沿って区画された複数のゾーンに対応するように長さを異ならせて設けた複数の還元性ガスノズルにより個別に流量制御可能に還元性ガスを供給するようにしたことを特徴とする酸化方法である。
【0025】
この場合、例えば請求項9に記載したように、前記被処理体の枚数が、前記支持手段の最大載置枚数よりも少ない場合には、前記被処理体はガスの流れ方向の上流側に向けて詰めた状態で前記支持手段に支持される。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る被処理体の酸化装置及び酸化方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
等の酸化性ガスを供給する酸化性ガスノズルに被処理体の収容領域に亘って所定のピッチで複数のガス噴射孔を形成し、被処理体の収容領域を高さ方向に区画したゾーン毎にH 等の還元性ガスを供給する長さの異なる複数の還元性ガスノズルを設けることによって、表面積が異なる被処理体に対して水平方向へ直線的になされた膜厚特性が得られ、もって、最適化された還元性ガス流量等のプロセス条件を求めるための調整作業を簡単に且つ迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明に係る被処理体の酸化装置及び酸化方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る酸化方法を実施するための被処理体の酸化装置の一例を示す構成図である。ここでは酸化性ガスとして酸素(O )を用い、還元性ガスとして水素(H )を用いる場合を例にとって説明する。
【0028】
この酸化装置22は、有天井になされた円筒体状の石英製の縦型になされた処理容器24を有している。この処理容器24は所定の長さに設定されている。この処理容器24内には、被処理体を保持するための支持手段としての石英製のウエハボート26が収容されており、このウエハボート26には被処理体としての半導体ウエハWが所定のピッチで多段に保持される。尚、このピッチは、一定の場合もあるし、ウエハ位置によって異なっている場合もある。
【0029】
この処理容器24の下端は開口されており、この開口にはOリング等のシール部材28を介してこの開口を気密に開閉するための蓋部30が設けられる。そして、この蓋部30には磁性流体シール32を介して貫通する回転軸34が設けられる。そして、この回転軸34の上端に回転テーブル36が設けられ、このテーブル36上に保温筒38を設け、この保温筒38上に上記ウエハボート26を載置している。そして、上記回転軸34は昇降可能なボートエレベータ40のアーム40Aに取り付けられており、上記蓋部30やウエハボート26等と一体的に昇降可能にしており、ウエハボート26は処理容器24内へその下方から挿脱可能になされている。尚、ウエハボート26を回転せずに、これを固定状態としてもよい。尚、上記処理容器24の下端部に、例えばステンレス製の円筒体状のマニホールドを設ける場合もある。そして、上記処理容器24の下部側壁には、流量制御された酸化性ガスと還元ガスとを処理容器24内へ導入するための酸化性ガス供給系42と還元性ガス供給系44がそれぞれ個別に設けられている。また、この処理容器24の下部側壁には、処理容器24内の雰囲気を排気するための大口径の排気口46が設けられている。
【0030】
具体的には、まず、上記酸化性ガス供給系42は、上記容器側壁を貫通して設けられる酸化性ガスノズル48を有しており、このノズル48には途中に例えばマスフローコントローラのような流量制御器50Aを介設したガス供給路50が接続され、酸化性ガスとしてここでは例えば酸素を流量制御しつつ供給できるようになっている。
上記酸化性ガスノズル48は、処理容器24の下部(一端)から上部(他端)まで延びて、そこで折り返されて先端部は処理容器24の下部まで延びている。すなわち、酸化性ガスノズル48は、処理容器24の高さ方向に沿ってU字状に形成されている。そして、この酸化性ガスノズル48には、その全体に亘って所定のピッチで、例えば直径が0.1〜0.4mm程度の複数のガス噴射孔48A、48Bが形成されており、各ガス噴射孔48A、48BからO ガスを噴射するようになっている。上記各ガス噴射孔48A、48Bのピッチは、例えば8〜200mm程度である。
【0031】
また、ここでは酸化性ガスノズル48の折り返し後のノズル部分に形成された各ガス噴射孔48Bは、折り返り前のノズル部分に形成されたガス噴射孔48Aの内の隣接する2つのガス噴射孔48A間の中央部に位置するように設けられている。これにより、処理容器24間の高さ方向に沿ってO ガスを可能な限り分散させて供給することができると共に、酸化性ガスノズル48内においてはO ガス流の上流側に位置するガス噴射孔48A、48B程、ノズル内を流れるO ガスのガス圧が高いのでより多くのガスを噴射することから、最上流側のガス噴射孔48Aと最下流側のガス噴射孔48Bとが位置的に対応するように組み合わせることで、処理容器24内の各ウエハWに対して略均等のガス流量でO ガスを噴射できるようになっている。
【0032】
また上記還元性ガス供給系44は、上記容器側壁を貫通して設けられる複数、図示例では5本の還元性ガスノズル52、54、56、58、60を有している。この各ノズル52〜60には途中に例えばマスフローコントローラのような流量制御器62A、64A、66A、68A、70Aをそれぞれ介設したガス供給路62、64、66、68、70がそれぞれ接続されており、還元性ガスとしてここでは例えば水素をそれぞれ個別に流量制御しつつ供給できるようになっている。
【0033】
そして、本実施例では、上記ウエハの収容領域(ウエハボート26に対応)は、高さ方向に沿って複数、すなわち上記還元性ガスノズル52〜60の本数に対応した数、例えば5つのゾーン72A、72B、72C、72D、72Eに区画されている。ここではガス流の上流側から下流側に向かって5つのゾーン72A〜72Eに区画される。そして、上記5つの還元性ガスノズル52〜60は、上記5つのゾーン72A〜72Eに対応するように、その長さを異ならせて設けられている。
【0034】
また各還元性ガスノズル52〜60は、その先端部側にガス噴射孔52A、54A、56A、58A、60Aがそれぞれ形成されており、各対応するゾーン72A〜72Eに対してH ガスを噴射できるようになっている。ここでは、各還元性ガスノズル52〜60には、それぞれ所定のピッチで形成された3個のガス噴射孔52A〜60Aが設けられている。尚、このガス噴射孔の数は3個に限定されない。各ガス噴射孔52A〜60Aの直径は0.1〜0.4mmであり、またそのピッチは例えば8〜200mm程度である。
【0035】
一方、上記処理容器24の下部側壁に設けた排気口46には、排気路80に圧力制御弁82と真空ポンプ84を介設してなる真空排気系86が接続されており、処理容器24内を真空引きするようになっている。また、処理容器24の外周には、円筒状の断熱層88が設けられており、この内側には、加熱手段として加熱ヒータ90が設けられて内側に位置するウエハWを所定の温度に加熱するようになっている。
ここで、処理容器24の全体の大きさに関しては、例えばウエハWのサイズを8インチ、ウエハ枚数を100枚(製品ウエハ)程度とすると、処理容器24の高さは略1300mm程度である。
【0036】
また、ウエハWのサイズが12インチの場合には、ウエハ枚数が25〜50枚程度、処理容器24の高さは略1500mm程度である。そして、この酸化装置22は、上記各流量制御器50A、62A〜70A、圧力制御弁82、加熱手段90等を制御して、上記両ガスの反応により酸素活性種と水酸基活性種とを発生する、例えばマスフローコントローラ等よりなる制御部92を有している。
【0037】
この制御部92は、この酸化装置22の全体の動作も制御するものであり、この酸化装置22の動作は、この制御部92からの指令によって行われる。また、この制御部92は、その制御動作を行なうためのプログラムが予め記憶されているフロッピディスクやフラッシュメモリやハードディスク等の記憶媒体94を有している。また、図示されてないが、必要に応じてN ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段も設けられている。
【0038】
次に、以上のように構成された酸化装置22を用いて行なわれる酸化方法について説明する。
まず、例えばシリコンウエハよりなる半導体ウエハWがアンロード状態で酸化装置22が待機状態の時には、処理容器24はプロセス温度より低い温度に維持されており、常温の多数枚、例えば100枚のウエハWが載置された状態のウエハボート26をホットウォール状態になされた処理容器24内にその下方より上昇させてロードし、蓋部30で処理容器24の下端開口部を閉じることにより処理容器24内を密閉する。
【0039】
そして、処理容器24内を真空引きして所定のプロセス圧力に維持すると共に、加熱ヒータ90への供給電力を増大させることにより、ウエハ温度を上昇させて酸化処理用のプロセス温度まで昇温して安定させ、その後、酸化処理を行なうに必要とされる所定の処理ガス、すなわちここではO ガスとH ガスとを流量制御しつつ各ガス供給手段42、44の酸化性ガスノズル48及び還元性ガスノズル52〜60からそれぞれ処理容器24内へ供給する。
【0040】
ここでO ガスはU字状に成形された酸化性ガスノズル48の各ガス噴射孔48A、48Bから水平方向に向けて噴射される。またH ガスは各還元性ガスノズル52〜60の各ガス噴射孔52A〜60Aから水平方向に向けて各ゾーン72A〜72E毎に流量制御された状態で供給される。
【0041】
この両ガスは処理容器24内を上方より下方に向けて降下しつつ真空雰囲気下にて反応して水酸基活性種と酸素活性種とが発生し、この雰囲気が回転しているウエハボート26に収容されているウエハWと接触してウエハ表面に対して酸化処理が施されることになる。これにより、例えばシリコンの表面が酸化されてSiO の酸化膜が形成される。そして、この処理ガス、或いは反応により生成したガスは処理容器24の下部側壁の排気口46から真空排気系86により系外へ排気されることになる。この時のガス流量は、処理容器24の大きさにもよるが、例えば8インチウエハを100枚程度収容できる大きさの場合には、O ガスは例えば10〜30000sccmの範囲内、H ガスは1〜5000sccmの範囲内である。
【0042】
上記酸化処理の具体的な流れは、処理容器24内へ別々に導入されたO ガスとH ガスは、ホットウォール状態となった処理容器24内を下降しつつウエハWの直近で水素の燃焼反応を介して酸素活性種(O*)と水酸基活性種(OH*)とを主体とする雰囲気が形成されて、これらの活性種によってウエハWのシリコンの表面が酸化されてSiO 膜が形成される。
【0043】
この時のプロセス条件は、ウエハ温度が450〜1100℃の範囲内で、例えば900℃、圧力は466Pa(3.5Torr)以下で、例えば46.6Pa(0.35Torr)である。また、処理時間は形成すべき膜厚にもよるが例えば10〜30分程度である。またプロセス温度が450℃よりも低いと、上記した活性種(ラジカル)が十分に発生せず、またプロセス温度が1100℃よりも高いと、処理容器24やウエハボート26等の耐熱温度を越えてしまい、安全な処理ができなくなってしまう。またプロセス圧力が3.5Torrよりも大きいと、上記した活性種が十分に発生しなくなってしまう。この時のプロセス圧力は、好ましくは1Torr以下が好ましい。
【0044】
ところで、前述したように、実際の製品ウエハでは、表面に凹凸が形成されていることから、表面が平面状態のウエハの表面積の数倍の表面積になっている場合があり、この表面積の倍数の大きさに応じて活性種の消費量は大きく異なるので、上記酸化処理を製品ウエハに対して施すに先立って、上記ウエハの表面積の変動量に応じて供給するガス流量等のプロセス条件を最適化しなければならない。従来の酸化装置では、図10にて説明したように、3倍面積の特性曲線L3や5倍面積の特性曲線L5に示すように、特性曲線が曲線状に変化しているので、ガス流量を求めるための調整作業がトライアンドエラーの方式で行われなければならず、非常に煩わしかった。
【0045】
これに対して、本実施例では、酸化性ガスであるO ガスを供給する酸化性ガスノズル48を処理容器24内の長さ方向、すなわちウエハの収容領域に沿って設けると共に、このノズル48に予定のピッチで形成したガス噴射孔48A、48BよりO ガスを供給するようにしているので、ウエハの収容領域に対してその水平方向から略均等にO ガスが供給されている。換言すれば、各ウエハWに対して、その水平方向から略均等にO ガスを供給するようにしている。更には、上記O ガスの供給態様に加えて、長さ、或いは高さの異なる複数、ここでは5本の還元性ガスノズル52〜60の各ガス噴射孔52A〜60Aよりそれぞれ対応するゾーンへその水平方向からH ガスを供給するようにしている。
【0046】
すなわち、処理容器24内へ供給されたO ガスとH ガスとが、上方から下流側の下方に向けて流れる際に、ウエハ表面で消費されて不足気味となるO ガスとH ガスとをそれぞれ順次追加して導入するようにしている。
上述したようなO ガスとH ガスの供給形態を採用することで、ウエハに形成される膜厚の面間均一性を高くするように上記各還元性ガスノズル52〜60からのガス供給量を最適化するための調整作業を簡単に且つ迅速化することができる。換言すれば、製品に見立てた表面にSiO 膜の形成された複数のダミーウエハ間に挿入した膜厚測定用のモニタウエハに形成されるSiO 膜の膜厚を面間方向で、すなわち、処理容器24内の高さ方向で略一定となるように各還元性ガスノズル52〜60のガス流量を調整することで、各最適化されたガス流量を求めることができる。
【0047】
この点を図2を参照して詳しく説明する。図2は本発明の酸化装置を用いた時の処理容器内におけるウエハ位置とシリコン酸化膜の最適化された膜厚との関係を原理的に説明するためのグラフである。ウエハ位置は、ガスの流れ方向に沿ってカウントされており、ウエハ位置の小さい値がガス流の上流側に位置され、大きい値がガス流の下流側に位置されている。図中の直線M0が目標とする膜厚であり、ここでは膜厚の目標値を13nmに設定しており、ウエハ面間方向において全ウエハに形成される酸化膜の厚さが13nmになるための各ノズルにおけるH ガス流量をそれぞれ調整している。尚、O ガスの流量は固定である。
【0048】
上記のようにウエハ面間方向におけるシリコン酸化膜の膜厚を均一化させるためには、上述したように製品ウエハに見立てた表面にSiO 膜の形成された複数のダミーウエハ間に膜厚測定用のベアウエハ(SiO が表面に形成されておらずシリコンが露出している)よりなるモニタウエハを挿入し、このモニタウエハの表面に酸化により形成されたSiO 膜を測定し、この測定値を図2に示すようにプロットして特性M3及びM5を求めてその時のH ガス流量を最適値として予め定めておく。
【0049】
ここで特性M3は表面が平面状態のウエハの表面積に対して、表面に凹凸が付され3倍の表面積になっている時のウエハに対して酸化処理を行った時の膜厚特性を示し、特性M5は表面に凹凸が付されて5倍の表面積になっている時のウエハに対して酸化処理を行った時の膜厚特性を示している。
上記した、例えば特性M5を作製する場合には、上述したようにO ガス供給量をある値で固定し、H ガス用の各還元性ガスノズル52〜60からの供給量をそれぞれ個別に調整し、その調整された各ガス流量を流して実際に対応する5倍の表面積の製品ウエハに対して酸化処理を行い、直線M0に示すような目標膜厚になるようにトライアンドエラーの操作を繰り返し行って求めている。
【0050】
ここで重要な点は、本実施例の場合には、図10中に示す特性曲線L3、L5とは異なって、特性M5は膜厚が面間方向で一定となっており、水平方向へ直線状に延びている。換言すれば、面間方向における全てのモニタウエハの膜厚が一定となるように各還元性ガスノズル52〜60のH ガス供給量をそれぞれ設定すれば、実際の製品ウエハに対して酸化処理を行った場合にも、ウエハの面間方向におけるSiO 膜の膜厚の面間均一性を高く維持することができることを意味する。
【0051】
また、この場合、従来装置では図10中の曲線L3、L5を求めるに際して、それぞれトライアンドエラーの操作を行わなければならなかった。すなわち、ウエハの表面積に対応させて複数の膜厚カーブが必要とされて、この膜厚カーブを求めるのが非常に煩雑であった。これに対して、本実施例の場合には、特性M5、或いは特性M3は水平方向に対して直線状に延びているので、1本の特性、例えば特性M5を求め、他の表面積の倍数の異なる特性、例えば特性M3は上下方向へ平行シフトするだけで、すなわち酸化処理のプロセス時間を調整するだけで簡単に求めることができる。換言すれば、表面積の異なる倍数の製品ウエハを処理する場合には、上記表面積5倍の特性M5を用いて、酸化処理のプロセス時間を短く、或いは長くするだけで処理を行うことができる。従って、最適化されたH ガス等のプロセス条件を求める調整作業を簡単に且つ迅速に行うことができる。
【0052】
このように、O 等の酸化性ガスを供給する酸化性ガスノズル48にウエハWの収容領域に亘って所定のピッチで複数のガス噴射孔48Aを形成し、ウエハWの収容領域を高さ方向に区画したゾーン毎にH 等の還元性ガスを供給する長さの異なる複数の還元性ガスノズル52〜60を設けることによって、表面積が異なるウエハWに対して水平方向へ直線的になされた膜厚特性が得られ、もって、最適化された還元性ガス流量等のプロセス条件を求めるための調整作業を簡単に且つ迅速に行うことができる。
【0053】
ここで、実際に、本発明に係る酸化装置を用いてシリコン酸化膜の膜厚を最適化して、その時のH ガス流量を用いて実際の製品ウエハに対して酸化処理を行ったので、その時の評価結果について説明する。図3は本発明に係る酸化装置を用いてシリコン酸化膜の膜厚を最適化した時の膜厚と製品ウエハに実際に形成されたシリコン酸化膜の膜厚との関係及びその時の膜厚の面内均一性を示すグラフである。ここでは、比較のために従来装置を用いた時のシリコン酸化膜の測定値も併記してある。また、グラフの上方には、本発明装置で用いたガスノズルの模式図が併せて記載されている。
【0054】
図3中において、曲線L5は従来装置を用いた表面積5倍の最適化された特性曲線を示し、曲線Lは従来装置を用いて表面積5倍の製品ウエハに対して実際に酸化処理を施した時の膜厚を示す。また曲線L5が得られた時のプロセス条件に関しては、プロセス圧力が0.35Torr、プロセス温度が900℃であり、O ガスの流量が5.0slm、H ガスの流量は図9に示すノズル12A〜12Eにおいて、ノズル12Aは0.40slm、ノズル12Bは0.65slm、ノズル12Cは0.45slm、ノズル12Dは0.40slm、ノズル12Eは0.35slmである。またプロセス時間は45分である。
【0055】
また直線M5は、本発明装置を用いた表面積5倍の最適化された特性直線を示し、曲線Mは本発明装置を用いて表面積5倍の製品ウエハに対して実際に酸化処理を施した時の膜厚を示す。この時の製品ウエハに対する目標膜厚は13nmである。また直線M5が得られた時のプロセス条件に関しては、プロセス圧力が0.35Torr、プロセス温度が900℃であり、O ガスの流量が5.0slm、H ガスの流量は、ノズル52からは0.2slm、ノズル54からは0.4slm、ノズル56からは0.42slm、ノズル58は0.45slm、ノズル60からは0.45slmである。またプロセス時間は45分である。
【0056】
また曲線Laは従来装置を用いた時の表面積5倍の製品ウエハにおける膜厚の面内均一性を示すグラフであり、曲線Maは本発明装置を用いた時の表面積5倍の製品ウエハにおける膜厚の面内均一性を示すグラフである。
特性L5に示すように従来装置の表面積5倍の特性曲線は膜厚が下流側に向けて次第に厚くなり、途中で略一定となるカーブを描いているが、直線M5に示すように本発明装置の表面積5倍の特性は膜厚が略16.5nm程度で一定となる直線を示している。
上記曲線L5や直線M5を求めた時の最適化された各ガス流量等のプロセス条件に基づいて製品ウエハに対して酸化処理をそれぞれ行った結果、特性L、Mに示すように、共に膜厚は面間方向において略13nmとなって、一定になっていることが判る。
【0057】
また膜厚の面内均一性に関しては、曲線Laに示すように従来装置の場合には、TOP(上流側)とBTM(下流側)でそれぞれ±1%まで上昇して膜厚の面内均一性が劣化している。これに対して、本発明装置の場合には、全てのウエハ位置において膜厚の面内均一性は±0.5%以下であり、膜厚の面内均一性が従来装置の場合よりも優れていることを確認することができた。
【0058】
この理由は、ウエハの酸化処理の一般的な傾向として、ガスがウエハ周辺からウエハ中心に入っていく際に、活性種が消費されつつ中心に流れるので、図4(A)に示すウエハ断面のように活性種が多いウエハ周辺でSiO 膜96の膜厚が厚く、活性種が少ない中心側で膜厚が薄くなる傾向にあるが、本発明装置のように、処理容器24の長手方向に沿って配置した各ノズル48、52〜60にそれぞれ複数のガス噴射孔48A、52A〜60Aを設けて、ウエハの収容領域の略全域にO ガスやH ガスをそれぞれ分散させて供給するようにしたので、図4(B)に示すようにウエハ中心部におけるガス(活性種)が不足せず、ウエハ周辺部と同等に酸化が行われる結果、図4(B)に示すようにウエハ中心部が少し盛り上がった状態でSiO 膜96の成膜が行われるからである、と考えられる。
【0059】
<ノズルの変形例>
次に、O ガスやH ガスを供給するノズルの変形例について説明する。図5はノズルの変形例を示す図である。上記実施例においては、酸化性ガスノズル48としてU字状に屈曲させて処理容器24の高さ方向へ1往復させたノズルを用いたが、これに限定されず、図5(A)に示すように、酸化性ガスノズル48として、所定のピッチで複数のガス噴射孔48Aが形成された1本の直線状に延びるノズルを用いるようにしてもよい。この時の各ガス噴射孔48Aのピッチは、図1に示す場合よりも小さく、例えば1/2程度に設定するのがよい。
【0060】
この場合には、処理容器24の高さ方向におけるO ガスの供給量の均一性は、図1の場合よりも少し劣る点を除いて、図1に示す装置と同様の作用効果を発揮することができる。
また還元性ガスノズル52〜60に関しては、各ノズルの上部にそれぞれ複数、例えば3つのガス噴射孔52A〜60Aを設けたが、これに限定されず、図5(B)に示すように1つのガス噴射孔52A〜60Aを設けるようにしてもよい。このノズルの構成は、図9に示す場合と同じである。
また図5(A)に示すノズル48と図5(B)に示すノズル52〜60とを組み合わせるようにしてもよい。これらのノズルのいずれの組み合わせも図1に示した酸化装置と同様の作用効果を発揮することができる。
【0061】
<膜厚の面内均一性の改善>
ところで、図1に示したような酸化装置を用いて行われた酸化処理で形成された酸化膜の面内均一性を各ウエハに対して検討すると、特定のウエハ位置で膜厚の面内均一性が大きく劣化していることがあった。この理由は、ガス噴射孔がウエハ方向に向いている結果、特定のウエハ位置でO とH ガスの混合のバランスが崩れるからであると考えられる。そのため、ガス噴射孔の向いている方向、すなわちガス噴射方向を変更してウエハWに直接的にガスが噴射されないようにするのが好ましい。
【0062】
図6はガス噴射方向の改良の前後におけるガス噴射孔を示す模式図、図7はガス噴射孔からのガス噴射方向の改良の前後における膜厚の面内均一性を示すグラフである。
ここでは酸化性ガスノズル48を例にとって説明すると、図6(A)に示すように酸化性ガスノズル48のガス噴射孔48A、48BがウエハWの方向を向いてガスがウエハWに対して直接的に噴射されると、図7中の特性Xに示すように、特定のウエハ位置で膜厚の面内均一性が極端に劣化してしまう。この理由は、上述したようにガスがウエハWに対してその側面方向から直接当たると、H ガスとO ガスの混合バランスが崩れて適正に燃焼反応が生じないからである。
【0063】
そこで、図6(B)に示すように、ガス噴射孔48A、48Bの向きを変えて、そのガス噴射方向をウエハWの輪郭に対する接線方向及びこの輪郭のガス流れ方向の投影領域(円筒状になる)に対する接線方向100よりも外側に向けて設定している。具体的には、図6(B)に示すように、ガス噴射方向を角度範囲θで示す範囲内に設定する。好ましくは、ガス噴射方向を、処理容器24の側壁の接線に直交する方向に対して角度θ1が45度になるように設定するのがよく、これによれば、ガス噴射孔48A、48Bから噴射されたガスが容器側壁に一度衝突してから拡散されるので、ウエハ表面にガスを偏りなく均等に分散させることができる。
尚、ここでは酸化性ガスノズル48を例にとって説明したが、H ガスを供給する還元性ガスノズル52〜60に関しても上述したと同様な構成とするのが望ましい。
【0064】
<ウエハ枚数可変プロセスにおける評価>
ところで、実際に製品ウエハに対して酸化処理を行う場合、処理すべき製品ウエハの枚数がウエハボートの最大載置枚数よりも少ない場合もあるので、酸化処理時にウエハボート26に常にウエハが満載状態になされるとは限らず、一部に空きスペースが存在する場合もある。例えば満載状態で100枚(最大載置枚数)の製品ウエハを保持できるウエハボート26に、25枚或いは50枚の製品ウエハを保持して他は空きスペースとし、この空きスペースには非製品となる表面SiO 膜付きのダミーウエハを保持させたまま酸化処理を行う場合もある。このような場合には、製品ウエハをウエハボート26に保持する時には、ガス流の上流側にウエハWを詰めた状態で保持させている。すなわち、図1に示す場合には、ガスは処理容器24の上方より下方に向けて流れるので、ウエハはウエハボート26に対して上詰め状態で保持されることになる。
【0065】
ここでウエハボートに対する満載時よりも少ない枚数で製品ウエハに対して酸化処理を施した時の実験を行ったので、その評価結果について説明する。図8はウエハボートに対する満載時よりも少ない枚数で製品ウエハに対して酸化処理を行った時の酸化膜の膜厚の変動状況を示すグラフである。図8(A)は図9に示す従来装置を用いて酸化処理を行った時の結果を示し、図8(B)は本発明装置を用いて酸化処理を行った時の結果を示す。図8(A)に示す場合は目標膜厚は5.5nmであり、図8(B)に示す場合は目標膜厚は6.0nmである。
【0066】
図8(A)において、曲線Y100は製品ウエハを100枚(満載)保持した時の特性を示し、曲線Y50は製品ウエハを50枚(非満載)保持した時の特性を示し、曲線Y25は製品ウエハを25枚(非満載)保持した時の特性を示す。
曲線Y100、Y50、Y25の全ての特性を得る酸化処理を行うにあたって、H 、O の各ガス流量、プロセス圧力、プロセス温度等は同じに設定されている。
また図8(B)において、Z100は製品ウエハを100枚(満載)保持した時の特性を示し、曲線Z25は製品ウエハを25枚(非満載)保持した時の特性を示す。
この場合にも、曲線Z100、Z25の全ての特性を得る酸化処理を行うにあたって、H 、O の各ガス流量、プロセス圧力、プロセス温度等は同じに設定されている。
【0067】
図8(A)に示すように、従来装置の場合には、製品ウエハの満載時には、曲線Y100に示すように全てのウエハの位置において膜厚から略一定となって膜厚の面間均一性は非常に優れているが、曲線Y50、Y25に示すように、製品ウエハの枚数が満載時よりも少ない場合には、それぞれの膜厚が変動するのみならず、膜厚はガス流の下流側に行く程上昇する傾向にあり、好ましくない。このことは、製品ウエハの枚数が変動することに応じて、予めその時のO 及びH の各ガス流量を最適化するための調整作業を行う必要があることを意味する。
【0068】
これに対して、図8(B)に示すように、本発明装置の場合には、曲線Z100及びZ25に示すように、製品ウエハの満載、非満載に関係なく、略膜厚は目標値となっており、しかも膜厚はウエハ位置に関係なく略一定であって膜厚の面間均一性は非常に優れていることを確認することができた。このことはウエハ枚数が満載時よりも少ない枚数の場合でも、ウエハ枚数の満載時に最適化されたプロセス条件(ガス流量)を用いることができることを意味する。従って、ガス流量を最適化するための調整作業を簡単化することが可能となる。
尚、上記実施例ではウエハの収容領域を5つのゾーンに区画するために長さの異なる5本の還元性ガスノズル52〜60を用いたが、このゾーン数は5に限定されず、どのような数に区画してもよく、その数に対応した数の高さの異なるノズルを設けることになる。
【0069】
また処理容器24としては、排気口46を下部に設けて容器内の上方より下方に向けてガスが流れるようにしたが、これに限定されず、処理容器24の天井部に排気口46を設けて容器内の下方より上方に向けてガスを流すようにしてもよい。また、処理容器24としては、単管構造に限定されず、内筒と外筒とを同心円状に設けた2重管構造を採用してもよい。
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る酸化方法を実施するための被処理体の酸化装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明の酸化装置を用いた時の処理容器内におけるウエハ位置とシリコン酸化膜の最適化された膜厚との関係を原理的に説明するためのグラフである。
【図3】本発明に係る酸化装置を用いてシリコン酸化膜の膜厚を最適化した時の膜厚と製品ウエハに実際に形成されたシリコン酸化膜の膜厚との関係及びその時の膜厚の面内均一性を示すグラフである。
【図4】半導体ウエハの表面に形成される薄膜の厚さの傾向を説明するための断面図である。
【図5】ノズルの変形例を示す図である。
【図6】ガス噴射方向の改良の前後におけるガス噴射孔を示す模式図である。
【図7】ガス噴射孔からのガス噴射方向の改良の前後における膜厚の面内均一性を示すグラフである。
【図8】ウエハボートに対する満載時よりも少ない枚数で製品ウエハに対して酸化処理を行った時の酸化膜の膜厚の変動状況を示すグラフである。
【図9】従来の被処理体の酸化装置を示す概略構成図である。
【図10】処理容器内におけるウエハ位置とシリコン酸化膜の最適化された膜厚との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
22 酸化装置
24 処理容器
26 ウエハボート(支持手段)
42 酸化性ガス供給系
44 還元性ガス供給系
48 酸化性ガスノズル
48A,48B ガス噴射孔
52〜60 還元性ガスノズル
52A〜60A ガス噴射孔
86 真空排気系
90 加熱ヒータ(加熱手段)
92 制御部
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に酸化処理を施すために真空引き可能になされた所定の長さの処理容器と、前記被処理体を所定のピッチで複数枚支持すると共に、前記処理容器内へ挿脱可能になされた支持手段と、前記被処理体を加熱するための加熱手段と、前記処理容器内の雰囲気を真空引きする真空排気系と、前記処理容器内に酸化性ガスを供給するための酸化性ガス供給系と、該酸化性ガス供給系とは別個に設けられて、前記処理容器内に還元性ガスを供給するための還元性ガス供給系とを有する被処理体の酸化装置において、
前記酸化性ガス供給系は、前記処理容器の長さ方向に沿って配設されると共に、所定のピッチで複数のガス噴射孔が形成された酸化性ガスノズルを有し、前記還元性ガス供給系は、前記処理容器内の被処理体の収容領域を高さ方向に沿って区画した複数のゾーンに対応するようにその長さを異ならせて設けられると共に、その先端部側にガス噴射孔が形成された複数の還元性ガスノズルを有することを特徴とする被処理体の酸化装置。
【請求項2】
前記複数の還元性ガスノズルは、供給する還元性ガスがそれぞれ個別に制御可能になされていることを特徴とする請求項1記載の被処理体の酸化装置。
【請求項3】
前記各還元性ガスノズルのガス噴射孔は、対応するゾーン内においてそれぞれ所定のピッチで複数個設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の被処理体の酸化装置。
【請求項4】
前記各ガス噴射孔のガス噴射方向は、前記被処理体の輪郭に対する接線方向及び該輪郭のガス流れ方向の投影領域に対する接線方向よりも外側に向けて設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の被処理体の酸化装置。
【請求項5】
前記酸化性ガスノズルは、前記処理容器の一端側から他端側に延びると共に、他端側にて折り返されて、その先端部が一端側まで延びていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の被処理体の酸化装置。
【請求項6】
前記酸化性ガスノズルの折り返し後のノズル部分に所定のピッチで形成された各ガス噴射孔は、折り返し前のノズル部分に所定のピッチで形成された隣接するガス噴射孔間の中央部に位置するように設けられることを特徴とする請求項5記載の被処理体の酸化装置。
【請求項7】
前記酸化性ガスはO とN OとNOとNO とO よりなる群から選択される1つ以上のガスを含み、前記還元性ガスはH とNH とCH とHClと重水素よりなる群から選択される1つ以上のガスを含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の被処理体の酸化装置。
【請求項8】
真空引き可能になされた所定の長さの処理容器内に、支持手段に所定のピッチで配列して支持された複数枚の被処理体を収容し、前記処理容器内に酸化性ガスと還元性ガスとを供給して両ガスを反応させることによって発生した酸素活性種と水酸基活性種とを有する雰囲気中で前記被処理体の表面を酸化する酸化方法において、
前記処理容器内に所定のピッチで複数のガス噴射孔が形成された酸化性ガスノズルで酸化性ガスを供給し、前記処理容器内にその高さ方向に沿って区画された複数のゾーンに対応するように長さを異ならせて設けた複数の還元性ガスノズルにより個別に流量制御可能に還元性ガスを供給するようにしたことを特徴とする酸化方法。
【請求項9】
前記被処理体の枚数が、前記支持手段の最大載置枚数よりも少ない場合には、前記被処理体はガスの流れ方向の上流側に向けて詰めた状態で前記支持手段に支持されることを特徴とする請求項8記載の酸化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−78452(P2008−78452A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257125(P2006−257125)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】