説明

複合フィルム

【課題】耐屈曲性に優れた複合フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムと、前記第一のガスバリアフィルムと第二のガスバリアフィルムの間に設けられた接着層とを有し、該接着層が、ドライラミネート用の接着剤と金属アルコキシドを含んでいる、複合フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルムを貼り合せてなる複合フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水蒸気や酸素の透過を遮断する性質、すなわち、ガスバリア性の向上を目的として、フィルム同士を貼り合せることが検討されている(特許文献1〜3参照)。ここで、有機層と無機層とを有するバリア層を有するガスバリアフィルム(以下、「有機無機積層型ガスバリアフィルム」ということがある)においても、フィルム同士を貼り合せることによって、バリア性が向上することが見込まれる。
一方、太陽電池のシートの部材として、有機無機積層型ガスバリアフィルムを貼り合わせたフィルム(以下、「複合フィルム」ということがある)を採用する場合、湿熱条件下で長時間置いた場合や屈曲した後にも高いバリア性を維持することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−285183号公報
【特許文献2】特開2001−213927号公報
【特許文献3】特開2002−275448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機無機積層型ガスバリアフィルムは、通常、緻密な層構成を有するため、貼り合せに作業等によって欠陥が生じやすく、かかる欠陥が、湿熱条件下に長時間置いた場合や屈曲した後に拡大してしまい、バリア性を低下させてしまうことがある。加えて、有機無機積層型ガスバリアフィルムは、貼り合わせをした後に新たな欠陥が生じ、かかる欠陥が、上記と同様にバリア性を低下させてしまう。すなわち、有機無機積層型ガスバリアフィルムを貼り合せると、湿熱条件下においた場合や、屈曲後に、バリア性を維持することが難しい。
本願発明はかかる問題点を解決することを目的としたものであって、有機無機積層型ガスバリアフィルムを貼り合せた複合フィルムであって、長期間に渡って、耐候性および耐屈曲性に優れた複合フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本願発明者は、鋭意検討した結果、有機無機積層型ガスバリアフィルムを貼り合わせるにあたり、金属アルコキシドを含有する接着剤を採用することにより、得られる複合フィルムの耐湿熱性および耐屈曲性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
具体的には、以下の手段により、達成された。
(1)基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムと、前記第一のガスバリアフィルムと第二のガスバリアフィルムの間に設けられた接着層とを有し、該接着層が、ドライラミネート用の接着剤と金属アルコキシドを含んでいる、複合フィルム。
(2)第一のガスバリアフィルムおよび第二のガスバリアフィルムの無機層が設けられている側が、それぞれ、前記接着層に接していることを特徴とする、(1)に記載の複合フィルム。
(3)前記接着層に接している層が、いずれも、無機層である、(1)に記載の複合フィルム。
(4)前記接着層に含まれる金属アルコキシドが、接着層の5〜30重量%を占める、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合フィルム。
(5)前記金属アルコキシドが、シランカップリング剤である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の複合フィルム。
(6)前記無機層が、アルミニウム含有化合物および/または珪素含有化合物である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の複合フィルム。
(7)前記ドライラミネート用の接着剤が、ポリウレタン系接着剤である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の複合フィルム。
(8)前記有機層が、紫外線硬化樹脂を含む、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の複合フィルム。
(9)前記有機層が、(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化してなる、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の複合フィルム。
(10)前記基材フィルムが、ポリエステル系の樹脂フィルムである、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の複合フィルム。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の複合フィルムを用いた太陽電池用部材。
(12)基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムとを、金属アルコキシドを含む接着剤によって貼り合せることを含む、ガスバリアフィルムの耐屈曲性を高める方法。
(13)基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムとを、金属アルコキシドを含む接着剤によって貼り合せることを含む、複合フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、耐屈曲性に優れた複合フィルムを提供することが可能になった。特に、経時後の耐屈曲性に優れた複合フィルムを提供することができるので、長期に使用される素子に好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の複合フィルムの好ましい態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本発明における(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタアクリレートの両方を意味する。
【0010】
<複合フィルム>
本発明の複合フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムと、前記第一のガスバリアフィルムと第二のガスバリアフィルムの間に設けられた接着層とを有し、該接着層が、ドライラミネート用の接着剤と金属アルコキシドを含んでいる、複合フィルムである。
このような、有機無機積層型ガスバリアフィルム同士をドライラミネート用の接着剤と金属アルコキシドを有する接着層を介して一体化することにより、バリア性を向上させることができるとともに、耐屈曲性を高めることができる。
【0011】
図1は、本発明の複合フィルムの実施形態の一例を示したものであって、1は基材フィルムを、2は有機層を、3は無機層を、4は接着層をそれぞれ示している。本実施形態では、有機層2および無機層3は、それぞれ、1層ずつ設けられているが、2層以上ずつ設けられていても良い。典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。また、有機層および無機層以外の他の構成層を含んでいてもよい。
本実施形態における複合フィルムは、いずれのガスバリアフィルムも、無機層が接着層に接しているが、有機層が接していても良い。本発明では、好ましくは、いずれのガスバリアフィルムも無機層が接着層に接している態様である。
【0012】
<ガスバリアフィルム>
本発明で用いるガスバリアフィルムは、上述のとおり、基材フィルムと、該基材フィルム上に形成された有機層および無機層を必須の要件とするものである。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、両面に有機層および無機層を設けられていてもよい。本発明におけるガスバリアフィルムは大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等を遮断する機能を有するバリア層を有するフィルム基板である。
【0013】
(有機層)
本発明における有機層とは有機ポリマーを主成分とする、有機層であることが好ましい。ここで主成分とは、有機層を構成する成分の第一の成分が有機ポリマーであることをいい、通常は、有機層を構成する成分の80重量%以上が有機ポリマーであることをいう。
有機ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステルおよびアクリロイル化合物などの紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
本発明における有機層は、好ましくは、重合性化合物を含む重合性組成物を硬化してなるものである。
(重合性化合物)
重合性化合物は、好ましくは、ラジカル重合性化合物および/またはエーテル基を官能基に有するカチオン重合性化合物であり、より好ましくは、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられ、(メタ)アクリレート系化合物および/またはスチレン系化合物が好ましく、(メタ)アクリレート系化合物がさらに好ましい。
【0015】
(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
【0016】
以下に、本発明で好ましく用いられる(メタ)アクリレート系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
(重合開始剤)
本発明における有機層を、重合性化合物を含む重合性組成物を塗布硬化させて作成する場合、該重合性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)等が挙げられる。
【0023】
(有機層の形成方法)
有機層の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
【0024】
本発明では、通常、重合性化合物を含む組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm2以上が好ましく、0.5J/cm2以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0025】
本発明における有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。
有機層を構成する重合性モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは重合性組成物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0026】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
【0027】
(無機層)
無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属含有化合物、具体的には、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、CeおよびTaから選ばれる1種以上の金属を含む化合物、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物または酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiから選ばれる金属の化合物、例えば、酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましく、特にSiまたはAlの化合物、例えば、金属酸化物、窒化物または酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。また、無機層に酸化珪素を用い、かつ、接着層にシランカップリング剤を添加することも本発明の好ましい実施形態として例示される。このような構成とすることにより、バリア性がより向上する傾向にある。さらに、酸化珪素の中でも化学式SiOxで表され、かつ、xが0.9〜1.5であるものが好ましく用いられる。このような無機層は、色がついてしまうので、有機EL素子等では、使われなかったが、太陽電池に用いる場合、着色が問題にならないためである。
本発明により形成される無機層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm以下がより好ましい。無機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0028】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。
【0029】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を順次繰り返し製膜することにより行うことができる。無機層を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空製膜法で形成する場合、有機層も前記フラッシュ蒸着法のような真空製膜法で形成することが好ましい。有機層と無機層を作製する間、途中で大気圧に戻すことなく、常に1000Pa以下の真空中で有機層と無機層を積層することが特に好ましい。圧力は100Pa以下であることがより好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、20Pa以下であることがさらに好ましい。
【0030】
(機能層)
本発明で用いる複合フィルムにおいては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、有機層および無機層の積層体の上、もしくはその他の位置に、機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、耐溶剤層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0031】
(基材フィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機層、無機層等の積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0032】
本発明の複合フィルムを後述する有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0033】
本発明の複合フィルムを、透明性を要求される用途に用いられる場合、プラスチックフィルムは透明であること、すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明におけるガスバリアフィルムに用いられる基材フィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるので特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらの基材フィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
【0034】
接着層
本発明における接着層は、ドライラミネート用接着剤と金属アルコキシドを含む。このように金属アルコキシドを含めることにより、時間が経過しても耐屈曲性が低下しない複合フィルムが得られる。また、高温および/または多湿下に長時間置いた場合のバリア性も良好に維持することができる。
ドライラミネート用接着剤としては、ポリウレタン系の接着剤が好ましく2液混合型であることがより好ましい。
金属アルコキシドは、金属成分として、ケイ素原子、アルミニウム原子、チタン原子、ジルコニウム原子、マグネシウム原子を有するものが好ましく、金属成分として、ケイ素原子を含むものがより好ましい。
金属アルコキシドの分子量は、130〜500であることが好ましく、200〜300であることがより好ましい。
接着層に含まれる金属アルコキシドが、接着層の5〜30重量%を占めることが好ましい。
さらに、本発明における接着層は、その90重量%以上が、金属アルコキシドとドライラミネート用接着剤で構成されることが好ましく、99重量%以上が、金属アルコキシドとドライラミネート用接着剤で構成されることがより好ましい。
【0035】
本発明の複合フィルムの厚さは特に定めるものではないが、例えば、10〜500μmであり、好ましくは25〜400μmである。
本発明の複合フィルムの、40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率は、例えば、0.05g/m2/day以下とすることができ、さらには、3e-3〜1e-4g/m2/dayとすることができる。
【0036】
本発明の複合フィルムは水や酸素等により常温常圧下における使用によっても経年劣化しうる素子の封止に好ましく用いられる。例えば、太陽電池および電子ペーパー等が挙げられる。
【0037】
(太陽電池)
本発明の複合フィルムは、太陽電池用のフロントシートやバックシートの部材として用いることができる。具体的には、太陽電池素子は通常、一対の基板の間に、太陽電池として働くアクテイブ部分が設けられた構成をしているが、この一対の基板の一方または両方の部材として本発明の複合フィルムを用いることができる。
本発明の複合フィルムが部材として好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【0038】
(電子ペーパー)
本発明の複合フィルムは、電子ペーパーにも用いることができる。電子ペーパーは反射型電子ディスプレイであり、高精細且つ高コントラスト比を実現することが可能である。
電子ペーパーは、基板上にディスプレイ媒体および該ディスプレイ媒体を駆動するTFTを有する。ディスプレイ媒体としては、従来知られているいかなるディスプレイ媒体でも用いることができる。電気泳動方式、電子粉粒体飛翔方式、荷電トナー方式、エレクトロクロミック方式等のいずれのディスプレイ媒体であっても好ましく用いられるが、電気泳動方式のディスプレイ媒体がより好ましく、なかでもマイクロカプセル型電気泳動方式のディスプレイ媒体が特に好ましい。電気泳動方式のディスプレイ媒体は、複数のカプセルを含むディスプレイ媒体であり、該複数のカプセルのそれぞれが懸濁流体内で移動可能な少なくとも1つの粒子を含む。ここでいう少なくとも1つの粒子は、電気泳動粒子または回転ボールであることが好ましい。また、電気泳動方式のディスプレイ媒体は、第1の面および該第1の面と対向する第2の面を有し、該第1および該第2の面の内の1つの面を介して観察イメージを表示する。
また、基板上に設けられるTFTは、少なくともゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極及びドレイン電極を有し、活性層とソース電極の間か活性層とドレイン電極の間の少なくとも一方に、電気的に接続する抵抗層をさらに有する。電子ペーパーは、電圧印加により光の濃淡を生じる。
【0039】
高精細なカラー表示の電子ディスプレイを製造する場合は、アライメント精度を確保するためにカラーフィルター上にTFTを形成することが好ましい。ただし、電流効率が低い通常のTFTで必要な駆動電流を得ようとしてもダウンサイジングに限界があるため、ディスプレイ媒体の高精細化に伴って画素内のTFTが占める面積が大きくなってしまう。画素内のTFTが占める面積が大きくなると、開口率が低下しコントラスト比が低下する。このため、透明なアモルファスIGZO型TFTを用いても、光透過率は100%にはならず、コントラストの低下は避けられない。そこで、例えば特開2009−021554号公報に記載されるようなTFTを用いることにより、画素内のTFTの占める面積を小さくして、開口率とコントラスト比を高くすることができる。また、この種のTFTをカラーフィルター上に直接形成すれば、高精細化も達成することができる。
【0040】
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5-127822号公報、特開2002-48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2002−865554号公報に記載の円偏光板、特開2007−30387号公報に記載の有機EL素子等に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
(ガスバリアフィルムの作成)
PETフィルム(コスモシャインA4300、100μm厚)を10cm角に裁断し、その表面に以下の手順で有機層、無機層を形成して評価した。
【0043】
有機層の作成
PETフィルム上に、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、DIC社製)、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ製、Cibaイルガキュア184)0.6g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート190gからなる重合性組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、窒素置換法によって酸素濃度が0.1%以下で高圧水銀ランプの紫外線を照射(積算照射量1.5J/cm2)して有機層を硬化させ、膜厚が約1μmの有機層を形成した。
【0044】
無機層の作成
スパッタリング装置あるいは蒸着装置を用いて、前記有機層の上に無機層(酸化珪素層)を形成した。ターゲットとして珪素を、放電ガスとしてアルゴンを、反応ガスとして酸素を用いた。製膜圧力は0.1Pa、到達膜厚は60nmであった。このようにして有機層の上に無機層を積層してガスバリアフィルムを作成した。
【0045】
(接着剤組成物の調整)
接着剤として、2液混合型ウレタン系接着剤(大日精化工業株式会社製、主剤:E−372、硬化剤:C−76を用い、該接着剤に、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製、Z−6044)を添加して調整した。接着剤組成物は、接着剤90重量%と、シランカップリング剤10重量%で構成されている。
【0046】
(ガスバリアフィルムの貼り合わせ)
上記で得られたガスバリアフィルムの無機層の上に、上記接着剤組成物をバーコート法によって塗布し、その上に、さらに、ガスバリアフィルムを重ねた。このとき、無機層側が接着層と接するように重ねて、複合フィルムを得た。
【0047】
実施例2〜4、比較例1〜6
さらに、上記において、下記表に記載のとおり構成を変えた他は同様に行って、他の実施例および比較例の複合フィルムを作成した。なお、実施例3では、シランカップリング剤の添加量を変更し、実施例4では、シランカップリング剤に代えてアルミニウムトリイソプロポキサイドを添加している。
【0048】
上記実施例および比較例において得られた複合フィルムについて、下記方法にて、水蒸気透過率および耐屈曲性を測定した。また、85℃85%RH中1000時間経過後の水蒸気透過率および耐屈曲性についても測定した。
【0049】
<接着力の測定>
複合フィルムについて、JIS K6854に準じて、T型剥離試験を行った。
【0050】
<カルシウム法による水蒸気透過率の測定>
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%とした。結果を下記表に示した。
【0051】
<耐屈曲後の水蒸気透過率>
複合フィルムを、直径20mmマンドリルを用いて180度の折り曲げを10回行ったあと、上記の水蒸気透過率の測定方法に従って、水蒸気透過率を測定した。
【0052】
<経時の接着力および水蒸気透過率>
上記で作成した複合フィルムを、それぞれ、85℃、相対湿度85%の下に、250時間静置した後、接着力および水蒸気透過率について、上記の方法に従って測定した。
【0053】
【表1】

【0054】
上記表から明らかなとおり、有機無機積層型ガスバリアフィルム同士を貼り付ける場合、シランカップリング剤を含有する接着剤を用いることにより(実施例1〜3)、屈曲試験後及び湿熱試験後のいずれにおいても、水蒸気透過率の低下が抑制されることが分かった。一方、金属アルコキシドを含有しない接着剤を用いた場合(比較例1、4)、屈曲試験後及び湿熱試験後の水蒸気透過率が低下することが分かった。
同様に、無機層のみを有するガスバリアフィルム同士を貼り付ける場合(比較例2、3、5、6)、屈曲試験後及び湿熱試験後の水蒸気透過率は、シランカップリング剤の有無に関わらず、等しく劣ることがわかった。このことは、シランカップリング剤を含有する接着剤は、接着性を高めるため、多少、バリア性を高めるが、耐湿熱性や耐屈曲性には影響しないことを意味している。
以上より、無機層のみを有するガスバリアフィルム同士を貼り合せる場合、接着剤に金属アルコキシドが含まれているか否かに関わらず、屈曲試験後及び湿熱試験後の水蒸気透過率が低下するが、有機無機積層型ガスバリアフィルム同士を貼り付ける場合、金属アルコキシドを含有する接着剤を用いることにより、屈曲試験後及び湿熱試験後の水蒸気透過率が低下するのを抑制することが可能になった。すなわち、本願発明は、従来のフィルムの貼り合せとは全く異なる技術に基づくものである。そして、その成果は、極めて意義のあるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 基材フィルム
2 有機層
3 無機層
4 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムと、前記第一のガスバリアフィルムと第二のガスバリアフィルムの間に設けられた接着層とを有し、該接着層が、ドライラミネート用の接着剤と金属アルコキシドを含んでいる、複合フィルム。
【請求項2】
第一のガスバリアフィルムおよび第二のガスバリアフィルムの無機層が設けられている側が、それぞれ、前記接着層に接していることを特徴とする、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記接着層に接している層が、いずれも、無機層である、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記接着層に含まれる金属アルコキシドが、接着層の5〜30重量%を占める、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記金属アルコキシドが、シランカップリング剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記無機層が、アルミニウム含有化合物および/または珪素含有化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項7】
前記ドライラミネート用の接着剤が、ポリウレタン系接着剤である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記有機層が、紫外線硬化樹脂を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記有機層が、(メタ)アクリレートを含む重合性組成物を硬化してなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルムが、ポリエステル系の樹脂フィルムである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合フィルムを用いた太陽電池用部材。
【請求項12】
基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムとを、金属アルコキシドを含む接着剤によって貼り合せることを含む、ガスバリアフィルムの耐屈曲性を高める方法。
【請求項13】
基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第一のガスバリアフィルムと、基材フィルムと、該基材フィルム上に設けられた、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層を有する第二のガスバリアフィルムとを、金属アルコキシドを含む接着剤によって貼り合せることを含む、複合フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−51195(P2011−51195A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201314(P2009−201314)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】