説明

複雑性が緩和された自動繊維配置装置及び方法

複合積層体を基板上に形成する方法であって、該方法は:基板の上で自動繊維配置ヘッドを移動させ;繊維配置ヘッドを使用して、複数の平行する複合テープストリップ(36)を基板(102)上に置き、これには、少なくとも特定のテープストリップの開始点ずらして曲線パターン(Aからf)を形成することが含まれ;単一の切刃(92)を使用して、全てのテープストリップの端部を切断することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、自動繊維配置システム、特に複合構造を積層するのに使用される自動繊維配置システムに関し、さらに具体的には、繊維を配置するだけでなく関連方法のための簡易化された装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、海洋、航空宇宙産業において使用されるもの等の複合構造は、一般に自動繊維配置(AFP)機械と呼ばれる自動複合材料応用機械を使用して加工することができる。AFP機械を航空機産業において、例えばより広い帯状にコリメートされた、比較的狭いストリップ状の複合、スリットテープ、又は「トウ」を製造ツール周囲に巻きつけることによって、構造形状及び外板アセンブリを加工する等に使用することが可能である。AFP機械は、通常6個以上の複数のテープストリップを一列に並べて連続的に端と端が接触するように配置して、ツール上に置かれツールに接触して締固められる、単一の広い共形帯幅を形成する。
【0003】
大きく複雑な積層複合アセンブリを加工するために、現在のAFP機械は比較的高い運転柔軟性を有する繊維配置ヘッドを使用することができる。例えば、現在の配置ヘッドは、各テープストリップに対して単独の、別々に制御可能なカッターを供給することによって、傾斜を加える、あるいは、任意又は全ての連続的なテープストリップを他の全てのテープストリップとは別々に切断する能力を持つことができる。現在の配置ヘッドはしたがって、比較的複雑で大きく重くなり得る。
【0004】
現在の配置ヘッドの大きさ、重量及び複雑性のために、比較的小さい複合積層アセンブリの加工、又は比較的高い配置分解能が要求される積層体の加工におけるこれらのヘッドの使用が不可能になり得る。さらに、その複雑性のために、現在の配置ヘッドは比較的高価である。
【0005】
したがって、機械的複雑性が緩和され、より高い配置分解能及び/又は簡易化されたテープ応用が要求される繊維の応用向けに、大きさ及び重量がいずれも縮小された自動繊維配置装置が必要である。さらに、繊維を配置して傾斜した又は曲線のテープパターンを形成することを可能にする、複雑性がより緩和された配置機械を使用する繊維配置方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
比較的小さい積層複合繊維構造だけでなく、高いテープ配置分解能が求められるより大きい複合構造を加工するのに特に有用な自動繊維配置装置及び関連方法が提供されている。進行路の最後で全てのテープストリップの端部を同時に切断する、単一の切断機構を用いることにより、各テープストリップ用の個別の切断機構の必要が削減され、配置ヘッドの複雑性、大きさ及び重量が縮小される。この機械的複雑性の緩和に関わらず、曲線状の又は傾斜したテープ応用パターンは、ストリップの帯が置かれる時に各テープストリップの配置を順次開始することによって達成可能である。
【0007】
ある開示の実施形態によると、基板上に複合積層体を形成する方法が提供されており、この方法は:基板の上で自動繊維配置ヘッドを移動させ;繊維配置ヘッドを使用して複数の平行する複合テープストリップを基板上に置き、これには、少なくとも特定のテープストリップの開始点をずらして曲線パターンを形成することが含まれ;そして単一の切刃を使用して、全てのテープストリップの端部を切断することを含む。テープストリップの端部の切断は、単一の切刃を全てのテープストリップにほぼ同時に通すことによって行うことができる。
【0008】
別の方法の実施形態によると、自動繊維配置ヘッドを使用した基板上への複合繊維テープの配置は:開始位置から終了位置まで、基板を横切って繊維配置ヘッドを移動させ;基板上への個別の繊維テープストリップの配置を順次開始して、配置が開始位置から終了位置まで移動する際に帯を形成し;そして、終了位置においてほぼ同時に帯の全てのテープストリップを切断することを含む。個別の繊維テープストリップの配置の順次開始は、繊維配置ヘッド上の個別テープスレッディング機構を順次始動させることによって行うことができる。全てのテープストリップの切断は、繊維配置ヘッド上の単一の切刃機構を始動させて、単一の切刃機構を使用して全てのテープストリップを切断することにより行うことができる。
【0009】
さらなる方法の実施形態によれば、基板機構を有する基板上に複合繊維積層体を形成する方法は:自動テープ配置ヘッドを基板を横切って基板機構から離れるように第1方向に移動させ;配置ヘッドが第1方向に基板を横切って移動する時に、配置ヘッドを使用して複合テープストリップの第1帯を置き、これには、第1グループのうちの少なくとも特定のテープストリップの開始点をずらして基板機構の片側に傾斜パターンを形成することが含まれ;第1帯のテープストリップの終了点において、第1帯のすべてのテープストリップを切断し;自動テープ配置ヘッドを基板を横切って第2方向に基板機構から離れるように移動させ;配置ヘッドが第2方向に基板を横切って移動する時に、配置ヘッドを使用して複合テープストリップの第2帯を置き、これには、第2帯のうちの少なくとも特定のテープストリップの開始点をずらして基板機構の別の側に第2傾斜パターンを形成することが含まれ;そして、第2帯のテープストリップの終了点において第2帯の全てのテープストリップを切断することを含む。第1及び第2帯のテープストリップの切断は、ほぼ同時にグループ内の全てのテープストリップに単一の切刃を通すことによって行われる。第1及び第2帯のそれぞれのテープストリップの配置は、配置ヘッドが一回通過する時に行うことができる。第1及び第2方向それぞれにおける配置ヘッドの移動は、基板機構のほぼ全体を通る中心線から開始される。複合テープストリップの配置は、繊維配置ヘッド上の個別テープスレッディング機構を順次始動させることによって行うことができる。
【0010】
別の開示の実施形態によると、基板上に繊維テープを配置する繊維テープ配置装置が提供され、この装置は:繊維テープの補給品をそれぞれ保持する複数のテープ供給装置;基板上でテープを締固める装置;テープ供給装置にそれぞれ関連し、テープ供給装置のうちの一つから締固め装置へのテープの送りを開始するためにそれぞれ稼動可能である複数のスレッディング機構;及び、ほぼ同時に締固め装置に送られる全てのテープの端部を切断するための単一の切刃を含む切断装置を備える。切刃は、締固め装置にテープが送られる経路を横切って延在する刃先を含む。切断装置は、テープに向かって及びテープから離れるように切刃をずらすアクチュエータを含むことができる。テープは、締固め装置にテープが送られるときに並べて配置することができ、テープが並んでいる間にテープの端部を切断するように切刃を位置づけすることができる。
【0011】
開示の実施形態は、複雑性が緩和された自動繊維配置装置、及び曲線パターンを有する積層体を形成可能にする関連方法の必要を満たす。
【0012】
開示の実施形態の他の特徴、利点及び長所は、下記の実施形態の説明を添付の図面及び添付の請求項に従って読むことにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は複雑性が緩和された繊維配置機械を有する単一のパーツ加工セルの斜視図である。
【図2】図2は複雑性が緩和された繊維配置機械を有する大規模な繊維配置セルの斜視図である。
【図3】図3は複雑性が緩和された繊維配置機械の基盤要素を示すブロック図である。
【図4】図4は複雑性が緩和された繊維配置機械の側面図である。
【図5】図5は図4に示す機械の上面図である。
【図6】図6は図4に示す機械の下面図である。
【図7】図7は図4〜6に示す機械の一部を形成する再スレッドアセンブリの分解斜視図である。
【図8】図8は再スレッドアセンブリの斜視図である。
【図9】図9はさらに詳細を示すためにカバーが取り外されている、図4〜6に示す機械の斜視図である。
【図10】図10は図4〜9に示す機械の一部を形成するテープ切断機構の簡略化した全面立面図である。
【図11】図11は複雑性が緩和された繊維配置機械を使用してテープの帯が配置されたツールの斜視図である。
【図12】図12は共通の切断ポイントで切れている個々のテープストリップの順次の、時限の開始点を示すあるテープ帯の平面図である。
【図13】図13は複雑性が緩和された自動繊維配置機械を使用して基板上に複合テープを配置する一方法の基本ステップを示すフロー図である。
【図14】図14は基板上に連続的にテープストリップを配置する代替方法を示す概略平面図である。
【図15】図15は図14に示す基板上にテープを配置する代替方法のさらなる詳細を示すフロー図である。
【図16】図16は基板機構周囲に配置された2つのテープストリップの帯を示す平面図である。
【図17】図17は図16に示す基板機構周囲にテープストリップを配置する方法を示すフロー図である。
【図18】図18は航空機の製造及び就航方法のフロー図である。
【図19】図19は航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず図1を参照すると、数字18でおおむね表示される単一のパーツ加工セルは、比較的小さい個別のパーツ26をツール28の上に積層するのに使用できる複雑性が緩和された複合繊維配置(AFP)機械20を用いる。AFP機械20は、NC、CNC又はPLCコントローラを備えることができる好適なコントローラ(図示せず)によって部分的に又は完全に自動制御可能である。AFP機械20はまた、少なくとも部分的にオペレータ24によって制御可能である。
【0015】
図示した実施例では、AFP機械20は25において示す直角のx、y、z軸に沿って移動するように取り付けられている。さらに具体的には、テープアプリケーションヘッド40は、Z軸に沿って滑動するようにガイド30に取り付けられており、ガイド30はその一方でx軸に沿って滑動するようにガントリー32に取り付けられている。ガントリー32は、テーブル22上に支持されるレール34によってz軸に沿って滑動するように取り付けられている。AFP機械20は、複合繊維テープ36をツール28に接触してテープ36を締固める締固めローラ42を含むアプリケーションヘッド40に複合繊維テープ36を送るテープ供給リール38を含む。本明細書で使用される「複合繊維テープ」、「繊維テープ」、「テープ」及び「テープストリップ」は、例えば限定しないが3インチ又は6インチ等の標準幅のもの、そして例えば8分の1インチ又は4分の1インチ(「トウ」)等の基準外の幅を持つものを含む、広範囲のテープ、「トウ」及び粗紡を含んでいる。
【0016】
後にさらに詳しく説明するように、締固めローラ42とツール28の表面の間のニップ(図示せず)にテープを送る、後に説明するテープスレッド機構によってリール38からテープ36が引き出される。AFP機械20の移動により、リール38からテープ36が引き出され、テープ36は後に説明する、簡易テープ切断機構によってある長さに切断される。
【0017】
ここで図2を参照すると、AFP機械20aの代替形態は、レール46に沿って平行移動するために取り付けられたロボット44に設置されたエンドエフェクタとして使用することができる。例えば円筒形マンドレル50等のツールは支持体54上で回転するためにスピンドル42によって取り付けられている。ロボット44及び配置ヘッド20aの操作だけでなく、ツール50の回転は、NC又はCNCコントローラ48によって制御可能である。配置ヘッド20aを使用して、高い曲線分解能でマンドレル50上にテープ36の帯28を積層することができる。
【0018】
ここで図3を参照すると、AFP機械20は、簡易テープ供給システム56、テープ配列及び独立再スレッドモジュール58、及びテープ36全てを切断するのに使われる単一のテープ切断機構70を広く含む。簡易材料供給システム56は、予め巻かれたテープリール38からのテープ36の引き出しにそれぞれ使用される複数の個別テープ供給モジュール57を備えることができる(図1)。
【0019】
各テープ供給モジュール57は、同様に位置あわせした形で、それぞれ関連するテープ配列及び再スレッドモジュール58にテープ36を送るために共に稼働する、例えば空気圧で操作されるディスクブレーキ(図示せず)等の簡易張力抵抗ブレーキ(図示せず)及び慣性制限装置を含むことができる。テープ配列及び再スレッドモジュール58は、機構間隔を置くために織り模様に予め設定できるスロットガイド(図示せず)の組み合わせを使用して、複数の個々のテープ36を平行した、切端が接触した状態に配列させる。各配列及び再スレッドモジュール58内にパッケージ化されているのは、テープ再スレッド機構90である(図6)。図面には具体的に示されていないが、テープ再スレッド機構90は摩擦接触を利用して、個々のテープ36を駆動して締め付ける。テープ供給モジュール57、配列及び再スレッドモジュール58、及び再スレッド機構90のさらなる詳細は、1987年10月13日発行の米国特許第4699683号明細書、及び2007年2月8日発行の米国特許出願公開第2007/0029030A1号明細書に記載されている。
【0020】
ここで図4〜9を参照すると、テープ配置ヘッド40はロボット44(図2)に接続されるように構成されている上板62又はテープ36が配置されるべき基板を横切って配置ヘッド40を移動させるのに使用される他のツールを有するフレームアセンブリ41を含む。テープ配列及び再スレッドモジュール58は、フレームアセンブリ41内に保持される中心体91(図7)に隣り合わせに取り付けられている。各モジュール58は、テープ36のうちの一つの入口チャネル76を形成する一組の平坦ローラ72とU形ローラ74を含む。平坦ローラ72は、回転アーム66上に運ばれる軸60に取りつけられている。バネ84によって、回転アーム66が、テープ36の厚さにおおむね対応して、平坦ローラ72がU形ローラ74から予め選択された距離の間隔を置いている通常の閉鎖位置に向かって偏る。入口チャネル76の高さ又は厚さは、止めネジ68を通して調節可能である。リール38から供給されるテープ36(図1)は入口チャネル76にそれぞれ挿入され、カバープレート93によって封入されたスロットガイド80(図7)によって、並んで位置あわせされた状態で維持される。
【0021】
テープ36はスロットガイド80を通じて、空気圧シリンダ86によってテープ36と嵌合するように移動するテープ嵌合ローラ90aを含む再スレッド機構90に送られる。ローラ90aはモータ99を備えたベルト97によって駆動される。特定の再スレッド機構90の作動によって、対応するテープ36のスレッドが始動し、このテープ36は次にスロットガイド80の一つを介してガイド部材83に送られ、ガイド部材83はテープ36を所定の角度でニップ74に移動し、テープ36はニップ74において締固めローラ42によって基板28上に貼り付けられ締固められる。繊維光センサ89(図9)は、テープ36の端部の通過を含めて、テープ36の位置を感知し、テープの送り及び配置を制御するのに使用可能な位置信号を発信する。繊維光センサ89はまた、刃92の操作を感知するのに使用することもでき、これにより、AFP機械20の他の機能と刃の操作を同期する、又は刃92が適切に動作しているかを単に確認することのいずれか、あるいは両方が可能になる。
【0022】
前述から分かるように、特定のテープ36が「開始する」、基板表面82(図4)上の場所は、テープスレッド機構90が作動してテープ36を締固めローラ42に送り始める時点によって変化する。テープスレッド機構90はアクチュエータ86によって別々に作動させることができるため、各テープ36の開始点を別々に制御することができ、これにより下にさらに詳しく説明するように、これらの開始点を任意の所望のパターンにずらすことができる。
【0023】
図9においてよく分かるように、開示の実施形態によれば、テープ配置ヘッド40は単一の切刃92に往復運動させる空気圧アクチュエータ96を備えるテープ切断機構70をさらに含む。空気圧アクチュエータ96は、電気バルブ制御シリンダ87によって制御される空気マニホルド85から空気を取り入れる。切断機構はまた、図10にも図式的に示されている。単一の切刃92は、適切な駆動結合98を介して空気圧アクチュエータ96に接続されている。刃92は、配置ヘッド40によって置かれたテープ36の帯106全体に及ぶ刃先92aを含む。刃92は、図10の矢印100によって示すように往復運動することにより、テープ36の帯106全体を一回のせん断で同時に切断する。下の説明から明らかなように、テープ36の開始点に関わらず、テープ36の端部はテープを置くプロセス中に同じポイントで切断される。
【0024】
本明細書で使用されるように、「同時の」又は「ほぼ同時の」帯106の全てのテープ36の切断は、刃92又は他の切断装置によって、進行路の終了においてほぼ同じポイントで帯106の全てのテープ36を切断することを意味する。したがって、図示した実施形態に示すように、全く同時に帯106の全てのテープ36と接触し切断する代わりに、カッター(図示せず)を帯106を横切って横方向に一回引いて、進行路の終了において帯106のテープ36を順次切断することが可能である。さらに、「一回の切断で」又は「一回刃を入れる」ことによる帯106のテープ36の切断は同様に、帯106の全てのテープ36が、同時か、あるいは続けざまかのいずれかの方法で、この終了点においてテープに接触し切断する単一の刃の動きを通して、進行路の終了においてほぼ同じポイントで切断されることを意味する。
【0025】
複雑性が緩和されたAFP機械20を使用して積層体を形成する一方法の実施形態を示す図11〜13をここで参照する。図11に示す実施例では、平行する連続的なテープストリップ36の曲線に合わせた帯106が、基盤104上に支持されるツール102に積層される。ツール102は、帯106の曲線に合わせた部分88がほぼ一致し得る曲線の縁部108を含む。図13のステップ114で示すように、配置ヘッド40が、帯106の第1テープの開始点「A」に対応する開始位置にまず移動する。図13及び図11のステップ116に示すように、配置ヘッド40は開始位置「A」から終了位置「G」までの進行方向112に平行移動する。ステップ118において、配置ヘッド40が開始位置「A」から終了位置「G」まで移動する時に、個別テープスレッド機構90が作動して、テープ1〜6の配置を逐次的なやり方で開始することにより、テープがそれぞれポイントA〜Fにおいて追加される。
【0026】
上述したテープ1〜6の逐次的な開始により、テープ36の始まりがずれ、これによりツール102の曲線縁部108におおむね一致する縁部の曲線又は外形88(図11)が形成される。帯106がポイント「F」において同じになるまで、帯107へのテープ36の逐次的な追加が継続される。事前に選択したポイントにおいてステップ120に示すように、切断機構70が作動して、刃92による一回のせん断により、帯106全体を終了又は切断ポイント「G」において切断する。当然ながら、外形88の分解能は、一回の切断が開始された時に、切断機構70の下にあるテープ36の数によって決定することができる。したがって、分解能がより高いところでは、特定の進行路においてより少ない数のテープ36が帯106の幅の範囲内に含まれていてよい。
【0027】
ここで、複雑性が緩和されたAFP機械20を使用してテープ36を配置する代替方法の実施形態を示す図14及び15に注目する。まずステップ124において、配置ヘッド40が第1テープの配置準備のために開始位置121へ移動する。ステップ126及び128に示すように、配置ヘッド40が進行方向112に平行移動すると、単一のテープスレッド機構90が始動し、これにより第1テープがツール基板82上に配置される。ステップ130に示すように、第1テープは進行路の終了において又は番号122によって表される切断点で切断される。
【0028】
次に、配置ヘッド40は、ステップ132において示すように、第2テープの開始位置まで復路123を通って平行移動する。ステップ134及び136において、配置ヘッド40は再び矢印方向112に平行移動し、それと同時にテープスレッド機構90のうちの一つが始動して、第2テープを第1テープに平行に連続するように置くことを開始する。第2テープは切断点122において、切断機構90によって切断される。次に、ステップ140において、配置ヘッド40を次のテープの開始位置129まで復路を通って平行移動させるプロセスが、テープ36の逐次的な個々の進行路それぞれに対して繰り返される。
【0029】
図示した実施例では、テープヘッド40が開始点129から切断点122まで平行移動し、この間にテープスレッド機構90のうちの一つが始動して第3テープを置き、この第3テープは次に切断点122において切断機構70によって切断される。前に注記したように、切断パターン又は傾斜した外形88の分解能は、テープ36が切断される時点でカッター70の下にあるテープ36の数によって決定される。したがって、図14及び15に示す方法を用いて、より高い外形分解能を達成するために全進行路の帯106の範囲内により少ない数のテープ36を含むことができる。図示した実施例では、テープ配置ヘッド40が通過するごとに、一つのテープ36だけが配置され切断されているが、応用形態によっては、2つ以上のテープ36を同時に配置して切断し、所望の分解能を得ることが可能である。
【0030】
ここで、複雑性が緩和されたAFP機械20が基板機構周囲にテープ36を積層するために使用され、図示した実施例では基盤機構が基板145に今後形成されるべきスルーホールを備えている、別の方法の実施形態を示す図16及び17に注目する。まずステップ150において、配置ヘッド40は、基板機構148の中心線142に対応する開始位置まで移動する。次に152において、配置ヘッド40は中心線142から終了位置144まである進行方向112に平行移動する。配置ヘッド40が平行移動すると、154において示すようにテープスレッド機構90が作動して、これによりテープの第1帯147が置かれ、ここで独立したテープ36の開始点が基板機構148周囲で段のある傾斜したパターンを形成する。第1帯147の全てのテープ36は、図16及び17のステップ156に示すように、144において同時に切断される。
【0031】
次に、ステップ158に示すように第2進行路149の配置準備のために、配置ヘッド40が中心線の位置142に移動して戻る。ステップ160に示すように、ヘッド40は中心線142から終了位置146まで平行移動し、この間にテープスレッド機構90が所定の時間系列で作動して、これにより第2帯149の個別テープ36の開始位置が、基板機構148周囲の段のある傾斜したパターンを形成する。ステップ164においては、第2帯149の全てのテープストリップ36が、終了又は切断点146において同時に切断される。
【0032】
開示の実施形態は、様々な可能性のある応用形態、特に例えば航空宇宙、海洋、及び自動車への応用を含む運送業において使用することができる。したがって、ここで図18及び19を参照すると、開示の実施形態は図18に示すような航空機の製造及び就航方法166及び図19に示すような航空機167において使用可能である。開示の実施形態の航空機の応用は、例えば非限定的に、機体外板、翼外板、操縦翼面、ハッチ、床板、ドアパネル、アクセスパネル及び尾翼等の複合補強部材を含むことができるが、これはごく一部に過ぎない。試作段階においては、例示の方法166は航空機167の仕様及び設計168と、材料調達170を含むことができる。製造段階においては、航空機167の部品及びサブアセンブリの製造172と、システム統合174がおこなわれる。そのあとに、航空機167は、認可及び納品176を経て就航178される。顧客によって就航されている間、航空機167には所定の整備及び保守180(変更、再構成、改装等も含むことができる)が予定される。
【0033】
本方法90の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客等)によって行う又は実施することができる。この説明のために、システムインテグレータは限定しないが、任意の数の航空機メーカー、及び主要システムの下請け業者を含むことができ;第三者は限定しないが、任意の数の供給メーカー、下請け業者、及びサプライヤを含むことができ;オペレータは、航空会社、リース会社、軍部、サービス組織等であってよい。
【0034】
図19に示すように、例示の方法166で製造された航空機167は、複数のシステム184と内装186を有する機体182を含むことができる。高レベルシステム184の例は、一又は複数の推進システム188、電気システム190、油圧システム192、及び環境システム194が挙げられる。任意の数の他のシステムを含むことができる。航空宇宙での実施例を示したが、本発明の原理は例えば海洋及び自動車産業等の他の産業分野に応用することが可能である。
【0035】
本明細書に具現化されたシステム及び方法は、任意の一又は複数の製造及び就航方法166の段階において採用することができる。例えば、製造プロセス166に対応する部品又はサブアセンブリは、航空機167が就航している間に製造される部品又はサブアセンブリと同じ方法で加工又は製造することができる。また、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、又はこれらの組み合わせを、例えば、航空機167を実質的に組立てしやすくする、又は航空機167にかかる費用を削減することによって、製造段階172及び174において用いることが可能である。同様に、一又は複数の装置の実施形態、方法の実施形態、またはこれらの組み合わせを、航空機167が就航している間に、例えば限定しないが、整備及び保守180に用いることができる。
【0036】
本発明の実施形態を特定の実例となる実施形態に関連させて説明してきたが、当然ながら特定の実施形態は説明のためであり、限定するものではなく、当業者が他の変形例を発想することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複合積層体を形成する方法であって:
基板の上で自動繊維配置ヘッドを移動させ;
前記繊維配置ヘッドを使用して、基板上に複数の平行する複合テープストリップを置き、これには、少なくとも特定のテープストリップの開始点をずらすことが含まれ;そして一回の切断で、全てのテープストリップの端部を切断する
ことを含む方法。
【請求項2】
基板が曲線を持ち、基板上の複数の平行する複合テープストリップが曲線パターンを形成している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全てのテープストリップにほぼ同時に単一の切刃を通すことによって、テープストリップの端部の切断が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の平行するテープストリップを置くステップが、開始位置から終了位置まで配置ヘッドを一回通過させる間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配置ヘッドの移動が、配置ヘッドを複数回通過するように移動させることを含み;
通過させるたびに、少なくとも一つのテープストリップを置くことによって、複数の平行するテープストリップを置くステップが行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
航空機のサブアセンブリを組立てるための、請求項1に記載の方法の使用。
【請求項7】
請求項1に記載の方法によって形成された複合積層体。
【請求項8】
自動繊維配置ヘッドを使用して、基板上に複合繊維テープを配置する方法であって:
開始位置から終了位置まで基板を横切って繊維配置ヘッドを移動させ;
配置ヘッドが開始位置から終了位置まで移動するときに、個別繊維テープストリップの基板上への配置を順次開始して帯を形成し;
帯の全てのテープストリップを終了位置においてほぼ同時に切断する
ことを含む方法。
【請求項9】
個別繊維テープストリップの配置の順次開始が、繊維配置ヘッド上の個別テープスレッド機構を順次始動させることによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
全てのテープストリップの切断が:
繊維配置ヘッド上の単一の切刃機構を始動させ;
単一の切刃機構を使用して全てのテープストリップを切断する
ことによって行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
個別繊維テープストリップの配置の順次開始が、テープストリップの曲線路を形成するように行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
単一の切刃を使って、全てのテープストリップの切断が行われ;
共通軸に沿ってテープストリップを切断するのに単一の切刃が使用される
請求項8に記載の方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法によって配置された複合繊維テープから形成される航空機のサブアセンブリ。
【請求項14】
基板機構を有する基板上に複合繊維積層体を形成する方法であって:
自動テープ配置ヘッドを基板を横切って基板機構から離れるように第1方向に移動させ;
配置ヘッドが基板を横切って第1方向へ移動する時に、配置ヘッドを使用して複合テープストリップの第1帯を置き、これには、第1グループのうちの少なくとも特定のテープストリップの開始点をずらして基板機構の片側に第1傾斜パターンを形成することが含まれ;
第1帯のテープストリップの終了点において、第1帯のすべてのテープストリップを切断し;
自動テープ配置ヘッドを基板を横切って第2方向に基板機構から離れるように移動させ;
配置ヘッドが基板を横切って第2方向に移動する時に、配置ヘッドを使用して複合テープストリップの第2帯を置き、これには、第2帯のうちの少なくとも特定のテープストリップの開始点をずらして基板機構の別の側に第2傾斜パターンを形成することが含まれ;
第2帯のテープストリップの終了点において第2帯の全てのテープストリップを切断する
ことを含む方法。
【請求項15】
第1及び第2帯のテープストリップの切断が、ほぼ同時に帯の全てのテープストリップに単一の切刃を通すことによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1帯のテープストリップを置くステップが、基板の上で配置ヘッドを第1方向に最初に一回通過させる間に行われ、
第2帯のテープストリップを置くステップが、基板の上で配置ヘッドを第2方向に2回目に一回通過させる間に行われる、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第1及び第2方向それぞれへの配置ヘッドの移動は、中心線から開始して、基板機構のほぼ全体を通過する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
第1及び第2帯の複合テープストリップを置くステップが、繊維配置ヘッド上の個別テープスレッド機構を順次始動させることによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
第1及び第2帯それぞれの全てのテープストリップの切断が:
繊維配置ヘッド上の単一の切刃機構を始動させ;
単一の切刃機構を使用して、全てのテープストリップを切断する
ことによって行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
請求項14に記載の方法によって形成された複合繊維積層体から形成される航空機のサブアセンブリ。
【請求項21】
基板上に繊維テープを配置するための繊維テープ配置装置であって:
繊維テープの供給品をそれぞれ保持する複数のテープ供給装置、
基板上にテープを締固める装置、
テープ供給装置にそれぞれ付随し、且つテープ供給装置のうちの一つから締固め装置へのテープの送りを開始するのに各々操作可能な複数のスレッド機構、及び
ほぼ同時に締固め装置へ送られる全てのテープの端部を切断する単一の切刃を含む切断装置
を備える装置。
【請求項22】
切刃が、締固め装置へテープが送られる経路を横方向に横切って延在する刃先を含む、請求項21に記載の繊維テープ配置装置。
【請求項23】
テープが締固め装置へ送られるときに、テープが並べて配置され、
テープが並んでいる間に、切刃がテープの端部を切断する位置にある、
請求項21に記載の繊維テープ配置装置。
【請求項24】
自動繊維テープ配置機械を使用して、曲線に合わせた複合積層体を形成する方法であって:
ツールを横切って自動テープ配置ヘッドを移動させ;
テープ供給源からスレッド装置へ複数の繊維テープを送り;
スレッド装置を使用して、締固めローラへのテープの送りを順次開始して、積層体の曲線を生成し;
締固めローラを使用して、ツール上にテープを当てて締固め;
単一のカッターを使用して、ほぼ同時に全てのテープの端部を切断する
ことを含む方法。
【請求項25】
機構を有する基板上に繊維テープを配置する繊維テープ配置ヘッドであって:
テープの供給品をそれぞれ保持する複数のテープ供給装置;
テープの移動を誘導する複数のガイド;
テープ供給装置からテープの送りをそれぞれ開始する複数のスレッド機構;
スレッド機構によって送られたテープを受け入れて、基板上にテープを締固める締固めローラ;及び
単一のアクチュエータと、一回のストロークで全てのテープの端部を同時に切断する単一の切刃を含む、スレッド機構と締固めローラの間のテープ切断機構
を備える繊維テープ配置ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2011−515242(P2011−515242A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548789(P2010−548789)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/034048
【国際公開番号】WO2009/108517
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】