説明

角速度検出振動片の製造方法

【課題】本発明は、角速度検出振動片の離調周波数の調整範囲を拡大することを目的としている。
【解決手段】相互に反対を向いて厚みを定義する第1及び第2の表面12,14を有し、基部16及び基部16から厚み方向に交差する方向に延びる少なくとも1つの腕部18を含む支持体10であって、腕部18の第1の表面12に、駆動用圧電積層体70及び検出用圧電積層体80が形成され、腕部18に、第2の表面14が露出している露出領域30を有する支持体10を用意する。第2の表面14の露出領域30をエッチングする。駆動用圧電積層体70及び検出用圧電積層体80のそれぞれは、下部電極膜22,82と、下部電極膜22,82上に形成された圧電膜24,84と、圧電膜24,84上に形成された上部電極膜26,86と、を含む。エッチングによって厚みを減らして、腕部18の厚み方向に関する曲げ剛性を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角速度検出振動片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
角速度に応じて振動が変化する性質を利用した角速度検出振動片においては、駆動方向の固有振動周波数と、コリオリ力が働く方向の固有振動周波数との差、即ち、離調周波数を調整する必要がある。なぜなら、離調周波数が低いとノイズが多くなり、離調周波数が高いと検出感度が低下するからである。従来の角速度検出振動片の離調周波数の調整としては、圧電振動片を切削する方法が知られている(特許文献1、2)。しかし、切削は生産効率が低く量産には適さなかった。また別の方法として、角速度検出振動片の錘部や電極膜を除去して離調周波数を調整する方法が知られている(特許文献3)。しかし、この方法を用いると、駆動方向の固有振動周波数とコリオリ力が働く方向の固有振動周波数がともに高くなるように変化してしまう。また、音叉型圧電振動片においては、支持部自体の質量を減らすことで固有振動周波数を調整する方法が知られているが(特許文献4)、この方法を角速度検出振動片に適用しても、駆動方向の固有振動周波数とコリオリ力が働く方向の固有振動周波数がともに高くなるように変化してしまう。このように駆動方向の固有振動周波数とコリオリ力が働く方向の固有振動周波数がとも高くなるように変化する方法では、離調周波数の調整効果が小さいため、調整範囲が狭くなっていた。
【特許文献1】特開平11−94555号公報
【特許文献2】特開平10−253363号公報
【特許文献3】特開2006−105614号公報
【特許文献4】特開2001−217677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、離調周波数の調整範囲を拡大することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る角速度検出振動片の製造方法は、
相互に反対を向いて厚みを定義する第1及び第2の表面を有し、基部及び前記基部から前記厚み方向に交差する方向に延びる少なくとも1つの腕部を含む支持体であって、前記腕部の前記第1の表面に、駆動用圧電積層体及び検出用圧電積層体が形成され、前記腕部に、前記第2の表面が露出している露出領域を有する支持体を用意し、
前記第2の表面の前記露出領域をエッチングする工程を含み、
前記駆動用圧電積層体及び前記検出用圧電積層体のそれぞれは、下部電極膜と、前記下部電極膜上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極膜と、を含み、
前記エッチングによって前記厚みを減らして、前記腕部の前記厚み方向に関する曲げ剛性を低くする。本適用例によれば、腕部の厚みを調整し、曲げ剛性を調整することによって駆動方向の固有振動周波数を選択的に調整することができる。腕部の厚みによる固有振動周波数調整は重さによる調整よりも調整量が大きいので、離調周波数の調整範囲を拡大することができる。
[適用例2]本適用例に係る角速度検出振動片の製造方法において、
前記エッチングを行う前に、前記腕部の前記第2の表面には錘金属膜が形成されており、
前記露出領域をエッチングする工程において、前記錘金属膜の表面もエッチングする。
[適用例3]本適用例に係る角速度検出振動片の製造方法は、
相互に反対を向いて厚みを定義する第1及び第2の表面を有し、基部及び前記基部から前記厚み方向に交差する方向に延びる少なくとも1つの腕部を含む支持体であって、前記腕部の前記第1の表面に、駆動用圧電積層体及び検出用圧電積層体が形成され、前記腕部に、前記第2の表面が露出している露出領域を有する支持体を用意し、
前記第2の表面の前記露出領域に補強金属膜を形成する工程を含み、
前記駆動用圧電積層体及び前記検出用圧電積層体のそれぞれは、下部電極膜と、前記下部電極膜上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極膜と、を含み、
前記補強金属膜によって、前記腕部の前記厚み方向に関する曲げ剛性を高くする。本適用例によれば、腕部の厚みを調整し、曲げ剛性を調整することによって駆動方向の固有振動周波数を選択的に調整することができる。また、腕部の厚みによる固有振動周波数調整は重さによる調整よりも調整量が大きいので、離調周波数の調整範囲を拡大することができる。
[適用例4]本適用例に係る振動片の製造方法において、
前記支持体は、圧電材料から構成されてなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動片の製造方法を説明する図である。図2(A)は、図1に示す角速度検出振動片のIIA−IIA線断面図であり、図2(B)は、図1に示す角速度検出振動片のIIB−IIB線断面図である。
【0006】
本実施の形態では、支持体10を用意する。支持体10は、水晶などの圧電材料(例えば、Zカット板、ATカット板、Xカット板)から構成してもよいし、シリコンから構成してもよい。支持体10は、相互に反対を向いて厚みを定義する第1及び第2の表面12,14を有する。支持体10は、基部16及び基部16から厚み方向に直交して並んで延びる少なくとも1つの腕部18を含む。基部16及び腕部18の形状は、板材をエッチング(ウエットエッチング及びドライエッチングの少なくとも一方)することによって得ることができる。
【0007】
腕部18の第1の表面12には、駆動用圧電積層体70が形成されている。駆動用圧電積層体70は、腕部18の長さに沿って延びており、腕部18の幅方向の中央に位置している。駆動用圧電積層体70は、下部電極膜22と、下部電極膜22上に形成された圧電膜24と、圧電膜24上に形成された上部電極膜26と、を含む。下部電極膜22及び上部電極膜26の間に電圧を印加すると、電界の方向によって圧電膜24が圧縮・伸張し、第1の表面12がこれに従うので腕部18が屈曲する。例えば、圧電膜24が伸びると腕部18は第2の表面14の方向に屈曲し、圧電膜24が縮むと腕部18は反対方向(第1の表面12の方向)に屈曲する。
【0008】
駆動力が腕部18に働いて、腕部18が動くときに、腕部18の延びる方向(腕部18が動く方向と直交する方向)の軸周りに角速度ωの回転が加えられると、腕部18には、図1に示すコリオリ力F=mvωが働く(mは腕部18の速度vで動く箇所の質量)。これにより、腕部18は、駆動力とコリオリ力Fの合成力によって屈曲する。
【0009】
下部電極膜22は、基部16上に至るように形成する(図示せず)。下部電極膜22の形成は、スパッタリングや蒸着によって導電膜を形成し、その後、導電膜をエッチングによってパターニングするプロセスを含んでもよい。あるいは、パターニングされたマスクを支持体10に形成してから、支持体10のマスクに覆われていない領域に導電膜を形成してもよい。圧電膜24は、ZnO、AlN、PZTなどの水晶よりも圧電性の高い材料から形成する。圧電膜24は、下部電極膜22の、腕部18上の部分の全体を覆っている。圧電膜24の形成には、材料を除いて、下部電極膜22を形成する技術のほか、CVD法、PVD法、ゾルゲル法などを適用することができる。上部電極膜26は、基部16上に至るように形成する(図示せず)。上部電極膜26の形成には、下部電極膜22を形成する技術を適用することができる。
【0010】
腕部18の第1の表面12には、検出用圧電積層体80が形成されている。検出用圧電積層体80は、腕部18の長さに沿って延びており、駆動用圧電積層体70と並んで配置されている。図1の例では、検出用圧電積層体80は、駆動用圧電積層体70を挟む両側(腕部18の幅方向の端部)に配置されている。検出用圧電積層体80は、下部電極膜82と、下部電極膜82上に形成された圧電膜84と、圧電膜84上に形成された上部電極膜86と、を含む。腕部18の屈曲に伴って圧電膜84が圧縮・伸張すると、その圧電効果によって、下部電極膜82及び上部電極膜86の間に電圧が生じる。下部電極膜82、上部電極膜86及び圧電膜84の材料、形状、配置及び形成方法には、駆動用圧電積層体70について説明した内容を適用することができる。
【0011】
腕部18の第2の表面14には錘金属膜28が形成されている。錘金属膜28は、腕部18の、基部16とは反対側の先端部に形成する。錘金属膜28は、第2の表面14の少なくとも一部が露出領域30を有するように形成する。第2の表面14には、錘金属膜28を除いて、電極膜が形成されていない。
【0012】
図2(A)及び図2(B)に示すように、腕部18の第2の表面14の露出領域30をエッチングする。エッチングには、CF、Cなどのプラズマガスを使用したドライエッチングを適用することができる。露出領域30をエッチングするときに、腕部18の側面(第1及び第2の表面12,14を接続する面)もエッチングされてもよい。ただし、腕部18の厚み方向のエッチングレートを、腕部18の幅方向のエッチングレートの2倍より高くする。これは、腕部18の厚みが減る量を、腕部18の幅が減る量より大きくして離調周波数の調整効果を確保するためである。また、露出領域30をエッチングするときに、錘金属膜28の表面がエッチングされるとしても、錘金属膜28を残すようにエッチングを止める。錘金属膜28がマスクになるので、支持体10(腕部18)の錘金属膜28にて覆われた部分は、表面がエッチングされず、錘金属膜28にて覆われた部分の表面と、エッチングされた部分の表面とで段が形成される。支持体10の錘金属膜28にて覆われた部分(腕部18の先端部)は、エッチングされた部分よりも厚くなっているので錘としての効果がある。
【0013】
本実施の形態によれば、第2の表面14の露出領域30をエッチングするので、腕部18の厚みが減り、腕部18を厚み方向に曲がりやすくすることができる。そして、腕部18の厚みを調整することによって、腕部18の厚み方向の曲がりやすさを調整し、駆動方向の固有振動周波数を選択的に調整することができる。腕部18の厚みによる固有周波数調整は重さによる調整よりも調整量が大きいので、離調周波数の調整範囲を拡大することができる。
【0014】
腕部18の曲がりにくさ・曲がりやすさの指標として、厚み方向に関する曲げ剛性EIを用いる。図15に示すように腕部18(広義には、梁)に曲げモーメントM(Sは中立面を指す。)が加わった際に、腕部18が曲率1/ρ(=dθ/dx)で静的にたわんでいる場合は、
1/ρ=M/EI
の関係を有する。曲げ剛性EIが高いほど曲がりにくい。
【0015】
なお、Eは材料固有のヤング率、Iは断面2次モーメントである。
【0016】
断面2次モーメントIは、微小断面要素dAに、曲げた際に引張応力が0である中立軸AXからの距離yの2乗を、掛けた値の総和であり、式で表わすと次のように定義される。
【0017】
I=∫dA
図16に示すように、中立軸AXに平行な辺の長さ(幅)b、中立軸AXに垂直な辺の長さ(厚み)tの長方形の断面を有する腕部18の断面2次モーメントIは、
=bt/12
となる。したがって、厚み方向に関する断面2次モーメントおよび曲げ剛性は、腕部18の厚みtの3乗に比例するため、厚みを調整することで、厚み方向の曲がりやすさを大きく制御することができる。
【0018】
なお、腕部の厚み方向の固有振動周波数F、腕部18の長さL、腕部18の厚み(振動する方向の厚み)tは、
F=k・t/L(k:比例定数)
の関係を有する。腕部18の幅の変化は、厚み方向の固有振動周波数に影響しない。
【0019】
(変形例)
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動片の製造方法の変形例を説明する図である。この変形例では、腕部18をエッチングする代わりに、第2の表面14に補強膜60を形成する。例えば、SiO、Au、Cr、Al等で成膜することで補強膜60を形成する。補強膜60によって腕部18の厚みを大きくして、腕部18の厚み方向に関する曲げ剛性を高くする。その他の構成及びプロセスは、上記実施の形態で説明した内容が該当する。この変形例でも、腕部18の厚みを調整し、曲げ剛性を調整することによって駆動方向の固有振動周波数変化させ、離調周波数を調整することができる。
【0020】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る振動子の製造方法を説明する図である。本実施の形態では、上述したプロセスによって角速度検出振動片1を得る。
【0021】
振動子の製造方法では、パッケージ32を用意する。パッケージ32は、角速度検出振動片1を固定するための底部34と、底部34を囲む枠壁部36と、を含む。パッケージ32は、その全体を金属で形成してもよいが、主としてセラミックス等の非金属で形成する場合には、枠壁部36の上端面はメタライズされている。底部34には、真空引きを行うための通気孔38が形成されている。パッケージ32(底部34)の内面には固定電極40が形成されている。パッケージ32(底部34)の外面には外部端子42が形成されている。固定電極40と外部端子42は図示しない配線で電気的に接続されている。外部端子42は、ハンダなどによって回路基板の配線パターン(図示せず)に実装される。パッケージ32の枠壁部36には、ロウ接合によってリング44を固定しておく。
【0022】
そして、角速度検出振動片1をパッケージ32の内部に収容する。角速度検出振動片1は、第2の表面14を底部34に向けて、上部電極膜26が固定電極40に対向するように配置する。角速度検出振動片1は、腕部18が基部16から枠壁部36に向かって延びるように固定する。基部16を底部34に固定して、腕部18をパッケージ32から浮かす。底部34は、腕部18の先端部と対向する領域が低くなっており、腕部18が曲がっても底部34に接触し難いようになっている。
【0023】
パッケージ32と角速度検出振動片1の固定は接合部材46によって図る。接合部材46は、導電性樹脂材料やハンダ等の金属材料であってもよい。金属材料は加熱してもガスが出ないので好ましい。接合部材46は、基部16とパッケージ32を接合し、腕部18をパッケージ32から浮いた状態に保持する。接合部材46は、基部16にある上部電極膜26と固定電極40を電気的及び機械的に接合する。
【0024】
リング44には、蓋48を固定する。蓋48は、角速度検出振動片1が固定されるパッケージ32とオーバーラップしてパッケージ32の開口を塞ぐ。蓋48は、表面及び裏面を貫通する貫通穴50を有する。貫通穴50は、円形の開口形状をなしている。蓋48は、ガラス又は樹脂などの材料からなる光透過性部材52を含む。光透過性部材52は、貫通穴50の内面に密着してなる。
【0025】
パッケージ32の開口を蓋48によって塞いだ後に、パッケージ32に形成された通気孔38を介して、蓋48によって塞がれたパッケージ32内を真空にし、その後、ロウ材54で通気孔38を塞ぐ。
【0026】
振動子の製造方法は、腕部18の先端部にある錘金属膜28の一部を除去する工程をさらに含む。この工程は、パッケージ32の開口を蓋48によって塞いだ後(例えばさらに真空引き工程後)に行う。この工程は、光透過性部材52を通して、錘金属膜28に対してレーザービームを照射して行う。こうすることで、錘金属膜28を軽くすることができる。錘金属膜28が形成された腕部18の先端部の重さが重いほど腕部18の固有振動周波数が低くなり、軽いほど腕部18の固有振動周波数が高くなる。これを利用して周波数調整を行うことができる。上述した腕部18のエッチングによる固有振動周波数調整を粗調といい、錘金属膜28のトリミングによる固有振動周波数調整を微調ということができる。ここで、錘金属膜28が形成されている第2の表面14を下向きにして、図示しない引出し電極を介して、角速度検出振動片1を接合部材46に接続しても良い。そうすれば、錘金属膜28を除去する際に、除去された金属がパッケージ32の底部34に付着し、角速度検出振動片1に付着することを防ぐことができる。
【0027】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動子の動作を説明する断面図である。本実施の形態により製造される角速度検出振動子は、上記プロセスから自明な構成を含む。
【0028】
駆動用圧電積層体70の下部電極膜22と上部電極膜26の間に交流電圧を印加すると、圧電膜24が圧縮・伸張する。圧電膜24が伸びて腕部18が屈曲して腕部18が移動するときに、腕部18の延びる方向(腕部18が動く方向と直交する方向)を軸に角速度ωの回転が生じると、腕部18の速度vで動く箇所にはコリオリ力Fが働く。腕部18は、駆動力とコリオリ力Fの合成力によって屈曲する。圧電膜24が縮んで腕部18のある箇所が速度−vで屈曲するときに、角速度ωの回転が加えられると、そのある箇所にはコリオリ力−Fが働く。腕部18は、駆動力とコリオリ力−Fの合成力によって屈曲する。圧電膜24が圧縮・伸張を繰り返すと、図5に示すように、腕部18は、腕部18の長さに直交する断面が楕円運動するように屈曲振動する。
【0029】
腕部18が屈曲振動すると、検出用圧電積層体80には、圧電膜84の圧電効果によって、下部電極膜82及び上部電極膜86の間に交流電圧が生じる。駆動用圧電積層体70に印加する交流電圧と、検出用圧電積層体80で生じる交流電圧に位相差があれば、腕部18の屈曲にコリオリ力Fの成分が含まれていることになる。
【0030】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動子の制御回路を模式的に示すブロック図である。角速度検出振動子は制御回路100を含む。
【0031】
制御回路100は、駆動回路110と、検出回路120とを備えている。駆動回路110は、駆動用圧電積層体70を励振するための回路である。駆動用圧電積層体70の上部電極膜26及び下部電極膜22の一方は増幅回路111の入力に接続され、増幅回路111の出力は発振回路112の入力に接続され、発振回路112の出力は駆動用圧電積層体70の上部電極膜26及び下部電極膜22の他方に接続される。圧電膜24は、上部電極膜26及び下部電極膜22に挟まれ、圧電および逆圧電効果によって圧縮・伸張を繰り返す。また、増幅回路111の出力(駆動信号A)は、分岐して検出回路120の移相回路126に入力される。
【0032】
検出回路120は、駆動信号Aの位相をずらした基準信号Bで検出用圧電積層体80の出力信号を位相検波して出力する回路である。一方の検出用圧電積層体80において、上部電極膜86及び下部電極膜82の一方は接地され、他方は増幅回路124に接続され、増幅回路124の出力(第1の検出信号C)は差動増幅器127に入力される。同様に、他方の検出用圧電積層体80において、上部電極膜86及び下部電極膜82の一方は接地され、他方は増幅回路125に接続され、増幅回路125の出力(第2の検出信号D)は差動増幅器127に入力される。
【0033】
差動増幅回路127は、第1の検出信号Cと第2の検出信号Dとの差に応じた差動検出信号Eを出力するので、第1の検出信号Cと第2の検出信号Dに共通する成分を除去できる。
【0034】
第1の検出信号Cと第2の検出信号Dに共通する成分は、ノイズの他に、角速度検出振動片の駆動振動に対応する信号がある。角速度ωが0の時、即ちコリオリ力Fが働かない場合は、検出用圧電積層体80は、角速度検出振動片の駆動振動によって同時に圧縮・伸張を繰り返す。そのため、第1の検出信号Cの駆動振動に対応する信号と第2の検出信号Dの駆動振動に対応する信号は共通する。
【0035】
移相回路126は、駆動信号Aの位相をπ/2進ませた基準信号Bを出力する。移相検波回路128は、差動検出信号Eを基準信号Bで位相検波した位相検波信号Fを出力する。位相検波は、例えば、乗算回路によって行う。ローパスフィルタ129は、位相検波信号Fを平滑化した平滑信号を、信号調整回路131に入力する。信号調整回路131は、図示しない0点調整回路を含み、角速度ωが0の場合の出力が所望の値になるオフセット処理をして、検出回路120の出力端子に出力する。
【0036】
図7は、図6に示す信号A〜Fのタイミングチャートである。第1の検出信号Cは、駆動振動に起因する成分と、駆動信号Aに対して位相がπ/2進んだコリオリ力に起因した成分とが合成されている。第2の検出信号Dは、駆動振動に起因する成分と、駆動振動Aに対して位相がπ/2遅れたコリオリ力に起因した成分とが合成されている。差動検出信号Eは、第1の検出信号Cと第2の検出信号Dとの差である。したがって、駆動信号Aに対して位相がπ/2進んだコリオリ力に起因した成分が増幅され、さらに、駆動振動に起因する成分やノイズ成分など、第1の検出信号Cと第2の検出信号Dとに共通する信号成分がキャンセルされる。位相検波信号Fは、駆動信号Aの位相をπ/2進ませた基準信号Bと、駆動信号Aよりπ/2位相が進んだ差動検出信号Eとを乗算した信号である。即ち、駆動信号Aよりπ/2位相が進んだコリオリ力起因の信号が同期検波されている。
【0037】
(第2の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る角速度検出振動片を説明する図である。図9は、図8に示す角速度検出振動片のIX−IX線断面図である。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した方法を適用して角速度検出振動片を製造する。
【0038】
角速度検出振動片は、一対の腕部218を有する。それぞれの腕部218に駆動用圧電積層体270が形成されている。一方の腕部218の駆動用圧電積層体270の上部電極膜226と、他方の腕部218の駆動用圧電積層体270の下部電極膜222が電気的に接続されている。そのため、一方の腕部218の駆動用圧電積層体270の圧電膜224と、他方の腕部218の駆動用圧電積層体270の圧電膜224とは、圧縮・伸張が逆になる。そして、一方の腕部218が速度vで屈曲すると、他方の腕部218は速度−vで屈曲する。
【0039】
一方の腕部218には、駆動用圧電積層体270を挟むように検出用圧電積層体280が形成されているが、他方の腕部218には、検出用圧電積層体280がない。検出用圧電積層体280のない腕部218はバランサとして機能する。
【0040】
角速度検出振動片を駆動して、一対の腕部218を屈曲振動させているときに、角速度ωの回転が加えられると、一対の腕部218は、屈曲方向が逆であることから、反対方向のコリオリ力F,−Fが生じる。そのため、一対の腕部218は、接近・離間を繰り返すように運動する。
【0041】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第3の実施の形態に係る角速度検出振動片を説明する図である。図11は、図10に示す角速度検出振動片のX−X線断面図である。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した方法を適用して角速度検出振動片を製造する。
【0042】
角速度検出振動片は、第1及び第2の腕部310,320を有する。第1の腕部310に駆動用圧電積層体370が形成され、第2の腕部320に一対の検出用圧電積層体380が形成されている。
【0043】
第1の腕部310が速度vで屈曲すると、その反力で、第2の腕部320は、駆動用圧電積層体370がなくても第1の腕部310とは反対方向に速度−vで屈曲する。
【0044】
角速度検出振動片を駆動して、第1及び第2の腕部310,320を屈曲振動させているときに、角速度ωの回転が加えられると、第1及び第2の腕部310,320は、屈曲方向が逆であることから、反対方向のコリオリ力F,−Fが生じる。そのため、第1及び第2の腕部310,320は、接近・離間を繰り返すように運動する。
【0045】
(第4の実施の形態)
図12は、本発明の第4の実施の形態に係る角速度検出振動片を説明する図である。図13は、図12に示す角速度検出振動片のXIII−XIII線断面図である。図14は、図12に示す角速度検出振動片のXIV−XIV線断面図である。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した方法を適用して角速度検出振動片を製造する。
【0046】
角速度検出振動片は、第1、第2、第3及び第4の腕部410,420,430,440を有し、H形状をなしている。第1及び第2の腕部410,420が並んで配置され、第3及び第4の腕部430,440が並んで配置されている。第1及び第4の腕部410,440が基部から反対方向に延び、第2及び第3の腕部420,430が基部416から反対方向に延びている。
【0047】
第1及び第2の腕部410,420に駆動用圧電積層体470が形成されている。第1及び第2の腕部410,420の駆動用圧電積層体470において、一方の上部電極膜426と他方の下部電極膜422が電気的に接続されている。そのため、第1の腕部410の駆動用圧電積層体470の圧電膜424と、第2の腕部420の駆動用圧電積層体470の圧電膜424とは、圧縮・伸張が逆になる。そして、第1の腕部410が速度vで屈曲すると、第2の腕部420は速度−vで屈曲する。
【0048】
第3の腕部430には、検出用圧電積層体480が形成されている。第4の腕部440には、駆動用圧電積層体470及び検出用圧電積層体480のいずれも形成されていない。
【0049】
角速度検出振動片を駆動して、第1及び第2の腕部410,420を屈曲振動させているときに、角速度ωの回転が加えられると、第1及び第2の腕部410,420は、屈曲方向が逆であることから、反対方向のコリオリ力F,−Fが生じる。そのため、第1及び第2の腕部410,420は、接近・離間を繰り返すように運動する。第3及び第4の腕部430,440は、第1及び第2の腕部410,420の接近・離間運動の反力で、その反対方向に、接近・離間を繰り返すように運動する。
【0050】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動片の製造方法を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動片の製造方法を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動片の製造方法の変形例を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動子の製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動子の動作を説明する断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る角速度検出振動子の制御回路を模式的に示すブロック図である。
【図7】図6に示す信号A〜Fのタイミングチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る角速度検出振動片を説明する図である。
【図9】図8に示す角速度検出振動片のIX−IX線断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る角速度検出振動片を説明する図である。
【図11】図10に示す角速度検出振動片のX−X線断面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る角速度検出振動片を説明する図である。
【図13】図12に示す角速度検出振動片のXIII−XIII線断面図である。
【図14】図12に示す角速度検出振動片のXIV−XIV線断面図である。
【図15】腕部の曲げモーメントとたわみを表わす図である。
【図16】断面2次モーメントを説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1…角速度検出振動片、 10…支持体、 12…第1の表面、 14…第2の表面、 16…基部、 18…腕部、 22…下部電極膜、 24…圧電膜、 26…上部電極膜、 28…錘金属膜、 30…露出領域、 32…パッケージ、 34…底部、 36…枠壁部、 38…通気孔、 40…固定電極、 42…外部端子、 44…リング、 46…接合部材、 48…蓋、 50…貫通穴、 52…光透過性部材、 54…ロウ材、 60…補強膜、 70…駆動用圧電積層体、 80…検出用圧電積層体、 82…下部電極膜、 84…圧電膜、 86…上部電極膜、 100…制御回路、 110…駆動回路、 111…増幅回路、 112…発振回路、 120…検出回路、 124…増幅回路、 125…増幅回路、 126…移相回路、 127…差動増幅器、 128…移相検波回路、 129…ローパスフィルタ、 131…信号調整回路、 218…腕部、 270…駆動用圧電積層体、 280…検出用圧電積層体、 222…下部電極膜、 224…圧電膜、 226…上部電極膜、 310…第1の腕部、 320…第2の腕部、 370…駆動用圧電積層体、 380…検出用圧電積層体、 410…第1の腕部、 416…基部、 420…第2の腕部、 430…第3の腕部、 440…第4の腕部、 470…駆動用圧電積層体、 480…検出用圧電積層体、 422…下部電極膜、 424…圧電膜、 426…上部電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に反対を向いて厚みを定義する第1及び第2の表面を有し、基部及び前記基部から前記厚み方向に交差する方向に延びる少なくとも1つの腕部を含む支持体であって、前記腕部の前記第1の表面に、駆動用圧電積層体及び検出用圧電積層体が形成され、前記腕部に、前記第2の表面が露出している露出領域を有する支持体を用意し、
前記第2の表面の前記露出領域をエッチングする工程を含み、
前記駆動用圧電積層体及び前記検出用圧電積層体のそれぞれは、下部電極膜と、前記下部電極膜上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極膜と、を含み、
前記エッチングによって前記厚みを減らして、前記腕部の前記厚み方向に関する曲げ剛性を低くする角速度検出振動片の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された角速度検出振動片の製造方法において、
前記エッチングを行う前に、前記腕部の前記第2の表面には錘金属膜が形成されており、
前記露出領域をエッチングする工程において、前記錘金属膜の表面もエッチングする角速度検出振動片の製造方法。
【請求項3】
相互に反対を向いて厚みを定義する第1及び第2の表面を有し、基部及び前記基部から前記厚み方向に交差する方向に延びる少なくとも1つの腕部を含む支持体であって、前記腕部の前記第1の表面に、駆動用圧電積層体及び検出用圧電積層体が形成され、前記腕部に、前記第2の表面が露出している露出領域を有する支持体を用意し、
前記第2の表面の前記露出領域に補強金属膜を形成する工程を含み、
前記駆動用圧電積層体及び前記検出用圧電積層体のそれぞれは、下部電極膜と、前記下部電極膜上に形成された圧電膜と、前記圧電膜上に形成された上部電極膜と、を含み、
前記補強金属膜によって、前記腕部の前記厚み方向に関する曲げ剛性を高くする角速度検出振動片の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された角速度検出振動片の製造方法において、
前記支持体は、圧電材料から構成されてなる角速度検出振動片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−236885(P2009−236885A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86942(P2008−86942)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】