説明

計測システム

【課題】1台の計測装置で複数の計測対象を計測可能とし、かつ、計測対象の絶対位置を精度良く計測することを可能とする。
【解決手段】 この計測システムは、計測対象38までの距離と方向を計測する計測装置34と、計測装置が取付けられているロボット装置(20,32)と、計測対象の近傍に設置されている絶対位置が既知の参照計測対象36と、計測装置34とロボット装置(20,32)を制御すると共に、計測結果から計測対象38の絶対位置を演算する制御装置12を備えている。制御装置12は、参照計測対象36までの距離と方向を計測するキャリブレーション工程と、計測対象38までの距離と方向を計測する計測工程と、を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測対象の絶対位置を計測する計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
計測対象の絶対位置を計測する計測システムが開発されている。この種の計測システムでは、計測対象の絶対位置を計測するために、計測対象までの距離と方向(すなわち、計測装置に対する相対的な位置)を計測する計測装置が利用されている。かかる計測システムにおいては、計測装置によって計測装置から計測対象までの距離と方向を計測し、その計測結果と計測装置の絶対位置から計測対象の絶対位置を算出している。特許文献1には、このような計測システムに利用される計測装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2008−196892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した計測システムにおいて、計測対象の絶対位置を精度良く計測するためには、計測装置の絶対位置を精度良く特定(計算又は計測)する必要がある。このため、従来の技術では、計測装置を固定台に移動不能に取付け、計測装置の絶対位置が変化しないようにしている。しかしながら、計測装置を固定台に移動不能に取付けると、計測できる範囲が限定されてしまう。このため、複数の計測対象を計測する場合(例えば、自動車ボディの各部の絶対位置を計測する場合)には、計測対象毎に計測装置が必要となってしまう。また、計測対象の位置が変更されたときは、その変更に柔軟に対応することができないという問題もある。
そこで、ロボット装置の可動部(例えば、手先)に計測装置を取付け、計測装置を移動可能とすることが検討されている。計測装置が移動可能となることで、1台の計測装置で位置が異なる複数の計測対象が計測可能となる。また、計測対象の位置が変わっても、ロボット装置のプログラムを変更するだけでよいため、その変更に柔軟に対応することができる。しかしながら、ロボット装置に計測装置を取付けた場合、以下の問題が生じる。すなわち、ロボット装置の絶対位置精度が低いため、ロボット装置に取付けられた計測装置の絶対位置精度が低下する。上述したように、計測対象の絶対位置は、計測装置で計測された計測結果と計測装置の絶対位置によって算出される。計測装置の絶対位置の精度が低下すると、計測対象の絶対位置計測精度も低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、1台の計測装置で複数の計測対象を計測可能とし、かつ、計測対象の絶対位置を精度良く計測することを可能とする計測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の計測システムは、計測対象までの距離と方向を計測する計測装置と、計測装置を支持し、少なくとも1自由度で計測装置を駆動可能な支持装置と、計測対象の近傍に設置されている参照計測対象(その絶対位置が既知)と、計測装置と支持装置を制御する制御手段と、計測装置で計測された計測結果から計測対象の絶対位置を演算する演算手段と、を備えている。そして、制御手段は、(1)支持装置を駆動することで参照計測対象を計測可能な位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により参照計測対象までの距離と方向を計測するキャリブレーション工程と、(2)支持装置を駆動することで計測対象を計測可能な位置に位置決めすると共に、計測装置により計測対象までの距離と方向を計測する計測工程と、を実施する。そして、演算手段は、各工程において計測された距離と方向の計測値と、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の計測装置の移動量と移動方向から、計測対象の絶対位置を演算することを特徴とする。
この計測システムでは、支持装置に計測装置が取付けられるため、支持装置を駆動することで計測装置を複数の位置に移動(位置決め)させることができる。これによって、1台の計測装置で複数の計測対象を計測することができる。また、計測対象の近傍には参照計測対象が設置され、計測装置によって参照計測対象までの距離と方向を計測することでキャリブレーション工程が実施される。すなわち、参照計測対象の絶対位置は既知であるため、計測装置によって参照計測対象までの距離と方向を計測すれば、参照計測対象を計測した時の計測装置の絶対位置(支持装置の手先の絶対位置(即ち、計測装置を取付けた部位の絶対位置))を精度良く算出することができる。また、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の計測装置の移動量と移動方向は、支持装置の絶対移動量から求めることができる。このため、計測対象を計測した時の計測装置の絶対位置を算出することができる。したがって、計測対象までの距離と方向を計測することで、計測対象の絶対位置を算出することができる。この計測システムでは、絶対位置が既知の参照計測対象を利用して計測対象の絶対位置を算出するため、計測対象の絶対位置を精度良く計測することができる。
【0007】
なお、キャリブレーション工程は、計測対象を計測する毎(すなわち、計測工程を実施する毎)に行うことができる。あるいは、参照計測対象を利用してキャリブレーションを実施した後は、キャリブレーション工程を省いて計測工程のみを実施することもできる。計測工程のみを実施する場合には、支持装置に経時変化が現れるタイミング、適当な周期(例えば、工場に配備される場合は、ライン稼動開始時の最初の計測時)、あるいは、測定条件(例えば、雰囲気温度の変化)が変化したとき等に、キャリブレーション工程を実施することが好ましい。
また、参照計測対象は、計測対象毎に設置することができる。あるいは、複数の計測対象に対して1つの参照計測対象を設置するようにしてもよい。
【0008】
前記支持装置は、少なくとも1自由度を備えたロボット装置とすることができる。この場合、計測装置はロボット装置の手先に支持することができる。そして、演算手段は、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の移動量と移動方向として、ロボット装置の手先の移動量を用いることができる。
【0009】
また、前記支持装置は、少なくとも1自由度を備えた高精度微小位置決め装置とすることができる。この場合、演算手段は、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の移動量と移動方向として、高精度微小位置決め装置の移動量を用いることができる。支持装置として高精度微小位置決め装置を用いるため、計測装置の微小な位置調整(位置決め)を精度良く行うことができる。また、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の計測装置の移動量と移動方向を、精度良く算出することができる。
なお、高精度微小位置決め装置は、汎用ロボットの手先に取り付けられていてもよい。このような構成によると、汎用ロボットを駆動することで微小位置決め装置を広い範囲に移動させることができ、その結果、計測装置も広い範囲に移動させることができる。
【0010】
汎用ロボットと高精度微小位置決め装置を備えた計測システムの一つの態様では、例えば、制御手段は、(1)汎用ロボット及び/又は高精度微小位置決め装置を駆動して参照計測対象を計測可能な第1計測位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により参照計測対象までの距離と方向を計測し、(2)汎用ロボット及び/又は高精度微小位置決め装置を駆動して第1計測位置から計測対象を計測可能な第2計測位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により計測対象までの距離と方向を計測する。そして、演算手段は、参照計測対象の絶対位置と、第1計測位置で計測された参照計測対象までの距離と方向と、第1計測位置から第2計測位置までの距離と方向と、第2計測位置で計測された計測対象までの距離と方向とから、計測対象の絶対位置を算出する。
この態様の計測システムでは、第1計測位置で参照計測対象までの距離と方向を計測し、次いで、第1計測位置から第2計測位置まで計測装置を移動させ、第2計測位置で計測対象までの距離と方向を計測する。参照計測対象の絶対位置は既知であるため、第1計測位置で参照計測対象までの距離と方向を計測すれば、第1計測位置の絶対位置を算出することができる。また、第1計測位置から第2計測位置までの距離と方向はロボットの絶対移動量から算出できるため、第2計測位置から計測対象までの距離と方向を計測すれば、計測対象の絶対位置を算出することができる。ここで、汎用ロボットの相対位置決め精度は高いため、第1計測位置から第2計測位置への計測装置の相対的な位置決めを精度良く行うことができる。このため、一旦、ロボットの第1計測位置と第2計測位置間の絶対移動量を求めておけば、計測対象の絶対位置を精度良く算出することができる。
【0011】
上記の態様の計測システムでは、制御手段は、汎用ロボットを駆動することなく高精度微小位置決め装置のみを駆動して第1計測位置から第2計測位置まで計測装置を移動させることもできる。
このような構成によると、高精度微小位置決め装置のみを駆動して計測装置を第1計測位置から第2計測位置まで移動させる。このため、第1計測位置から第2計測位置への計測装置の位置決めを精度良く行うことができる。また、第1計測位置と第2計測位置の間の絶対移動量も精度良く求めることができる。これによって、計測対象の絶対位置の計測精度をより高めることができる。
【0012】
また、上記の計測システムの他の態様では、制御手段は、(1)計測装置により計測される参照計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となるように、汎用ロボット及び/又は高精度微小位置決め装置を駆動し、(2)計測装置により計測される計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となるように、汎用ロボット及び/又は高精度微小位置決め装置を駆動する。そして、演算手段は、参照計測対象の絶対位置と、参照計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となったときの計測装置の位置と、計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となったときの計測装置の位置とから、計測対象の絶対位置を算出することができる。
このような構成によると、計測対象の絶対位置を算出するための手順を簡便にすることができる。
【0013】
また、上記の計測システムの他の態様では、制御手段は、ロボット装置を駆動して参照計測対象と計測対象の両者が計測可能な位置に計測装置を位置決めし、計測装置により参照計測対象までの距離と方向を計測すると共に計測対象までの距離と方向を計測する。そして、演算手段は、参照計測対象の絶対位置と、計測された参照計測対象までの距離と方向と、計測された計測対象までの距離と方向とから、計測対象の絶対位置を算出する。
この計測システムでは、計測装置により計測された参照計測対象までの距離と方向から計測装置の絶対位置を算出することができる。そして、その計測装置の絶対位置と計測装置により計測された計測対象までの距離と方向から計測対象の絶対位置を算出することができる。計測装置の絶対位置を参照計測対象を利用して算出するため、計測対象の絶対位置を精度良く算出することができる。
【0014】
また、本発明の計測システムは、次の態様で実施することもできる。すなわち、支持装置は少なくとも1自由度を備えた汎用ロボットであり、計測装置が汎用ロボットの手先に取付けられている。そして、制御手段は、(1)汎用ロボットを駆動して参照計測対象を計測可能な第3計測位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により参照計測対象までの距離と方向を計測し、(2)汎用ロボットを予め設定された移動量(その移動量の絶対値は既知)だけ移動させて計測対象を計測可能な第4計測位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により計測対象までの距離と方向を計測する。演算手段は、参照計測対象の絶対位置と、計測された参照計測対象までの距離と方向と、第3計測位置から第4計測位置までの距離と方向と、計測された計測対象までの距離と方向とから、計測対象の絶対位置を算出する。
この計測システムでは、汎用ロボットの相対位置決め精度が高いことを利用して、計測対象の絶対位置の計測精度を高めている。すなわち、第3計測位置の絶対位置は、第3計測位置で参照計測対象までの距離と方向を計測することで算出することができる。汎用ロボットの相対位置決め精度が高いことから、計測装置を第3計測位置から第4計測位置に高精度に移動させることができる。第3計測位置から第4計測位置への移動量の絶対値は既知であるため、第4計測位置の絶対位置を高精度に算出することができる。これによって計測対象の絶対位置を精度良く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る計測システムの全体構成を示す模式図。
【図2】3次元寸法計測装置と制御装置の構成を示す図。
【図3】TVカメラで撮影される画像の一例を示す図。
【図4】計測対象の絶対位置を計測する一手順を示すフローチャート。
【図5】図4に示すフローチャートに従って絶対位置を計算する際の手順を説明するための図。
【図6】計測対象の絶対位置を計測する他の手順を示すフローチャート。
【図7】図6に示すフローチャートに従って絶対位置を計算する際の手順を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
下記に詳細に説明する実施例の主要な特徴を最初に列記する。
(形態1)計測装置は、スリット光を計測対象に投射するスリット光源と、計測対象を撮影するカメラを備えている。
(形態2)スリット光源から投射されるスリット光は十字スリット光である。
【実施例】
【0017】
(第1実施例) 本発明の一実施例に係る計測システムについて、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施例の計測システム10は、汎用ロボット20と微小位置決め装置32から構成されるロボット装置(20,32)と、ロボット装置(20,32)に取付けられている3次元寸法計測装置34と、ロボット装置(20,32)と3次元寸法計測装置34を制御する制御装置12と、計測対象38の近傍に設定されている参照計測対象36を備えている。
【0018】
汎用ロボット20は、5自由度の垂直多関節型のロボットであり、複数のアーム22,25,28と、ロボットベースとアーム22を連結する第1関節21と、アーム22とアーム25を連結する第2関節24と、アーム25とアーム28を連結する第3関節26と、アーム28とロボット手先31を連結する関節29,30を有している。各関節21,24,26,29,30には、図示しないアクチュエータが装備されている。各関節21,24,26,29,30に装備されたアクチュエータは、制御装置12によって独立して制御可能となっている。関節24が駆動されることで、アーム22に対してアーム25が運動する。関節26が駆動されることで、アーム25に対してアーム28が運動する。各関節21,24,26,29,30が駆動されることで、アーム28の先端31が所定の動作範囲(可動空間)を移動することができる。アーム22の先端31の動作範囲は、複数の計測対象38の全てをカバーできるように設計される(図1では計測対象38が一つしか示されていないが、本実施例の計測システム10は複数の計測対象38を計測することができる。)。汎用ロボット20の可搬質量は、3次元寸法計測装置34と微小位置決め装置32を併せた質量(例えば、15kg程度)とされている。また、汎用ロボット20の絶対位置精度は通常の市販品レベル(±5mm以内程度)とされ、その繰り返し精度は通常の市販品の上級レベル(±0.1mm程度)とされている。なお、本実施例では、垂直多関節型のロボットを用いたが、本発明のロボット装置はこのような例に限られず、直交型のロボットや、スカラ型のロボットなど各種のタイプを用いることができる。
【0019】
微小位置決め装置32は、汎用ロボット20(アーム28)の先端31に取付けられている。微小位置決め装置32は、アーム28の先端31に対して3自由度(例えば、並進方向に3自由度、並進方向に1自由度で回転方向に2自由度)を有しており、それぞれの自由度毎にアクチュエータ(図示しない)を備えている。これらのアクチュエータを制御装置12が駆動することで、アーム28の先端31に対して微小位置決め装置32を移動させることができる。微小位置決め装置32には、直交型、デルタ機構、スチュワートプラットホーム、パラレル3軸型の位置決め装置を用いることができる。微小位置決め装置32は、汎用ロボット20と比較して動作範囲は狭いが、高分解能であって微小な位置決めが可能となっている。微小位置決め装置32の動作範囲は、汎用ロボット20の絶対位置精度(±5mm以内程度)以上とされるが、汎用ロボット20の動作範囲よりも小さく設計される。また、微小位置決め装置32の絶対位置精度は汎用ロボット20よりも高く(±0.05mm以内程度)、繰り返し精度も汎用ロボット20よりも高くされている。なお、微小位置決め装置32の可搬質量は、3次元寸法計測装置34の質量(例えば、10kg程度)とされている。
【0020】
3次元寸法計測装置34は、微小位置決め装置32に取付けられている。このため、制御装置12が汎用ロボット20及び微小位置決め装置32を駆動することで、3次元寸法計測装置34の位置を変えることができる。
3次元寸法計測装置34は、三角測量原理に基づいて、計測対象までの距離と方向(3次元寸法計測装置34に対する相対的な位置)を計測する。図2に示すように、3次元寸法計測装置34は、スリット光源42とTVカメラ44を備えている。スリット光源42及びTVカメラ44の制御は、制御装置12によって行われる。スリット光源42は、計測対象にスリット光を投射する。本実施例では、直交する2本のスリット光(いわゆる十字スリット光)を投射する。TVカメラ44は、計測対象に投射されたスリット光の反射像を撮影する。図3に示すように、2本のスリット光56a,56bは、TVカメラ44で撮影される画像54の中心で交差するように設定されている。このため、図3に示すように、TVカメラ44で撮影される画像54の中心に計測対象36が位置するように3次元寸法計測装置34の位置を調整すると、その参照計測対象36に2本のスリット光56a,56bが上下左右均等に投射されることになる。TVカメラ44で撮影された画像は、制御装置12に入力される。制御装置12は、入力された画像から計測対象までの距離と方向を算出する。制御装置12の撮影画像から計測対象までの距離と方向を算出する手順については、特開2008−196892号公報に開示されているため、ここではその詳細な説明を省略する。
なお、本実施例では、スリット光の反射像から光学的に計測対象までの距離と方向を計測したが、これ以外にも、ステレオカメラ、共焦点センサ、レーザのTOF(time of flight)を計測する計測装置等を利用することができる。
【0021】
参照計測対象36は計測対象38の近傍に設置されている。参照計測対象36を設置する位置は、汎用ロボット20(アーム28)の先端31の姿勢を変更することなく、参照計測対象36を計測する位置から計測対象38を計測する位置へ3次元寸法計測装置34を移動できるように設定されている。参照計測対象36の基準座標からの絶対位置Poは既知とされている。参照計測対象36の絶対位置Poの座標は制御装置12内に格納されている(図2の符号50参照)。なお、本実施例では、参照計測対象36として壁等に描いた円マークを用いている。ただし、参照計測対象36には、円マークの他に、球(拡散反射面、セラミック)、□マーク、同心円マーク等を用いることもできる。
【0022】
制御装置12は、ロボット装置(汎用ロボット20,微小位置決め装置32)と3次元寸法計測装置34を制御する制御部16と、3次元寸法計測装置34で撮影された画像から計測対象38の絶対位置を算出する演算部14を備えている。
【0023】
制御部16は、3次元寸法計測装置34を構成するスリット光源42及びTVカメラ44のON/OFFを行う。また、制御部16は、汎用ロボット20及び微小位置決め装置32を駆動し、参照計測対象36を計測する位置と計測対象38を計測する位置に3次元寸法計測装置34を位置決めする。3次元寸法計測装置34を各計測位置に位置決めする時は、制御部16は、まず汎用ロボット20を駆動して大まかな位置決めを行い、次いで微小位置決め装置32を駆動して微小な位置調整を行う。微小位置決め装置32により位置調整を行う際は、3次元寸法計測装置34のTVカメラ44で撮影される画像から計測対象が画像内のどこにあるかを判定し、計測対象が画像(カメラ視野)の中心となり、かつ、適切な大きさとなるようにする。
なお、計測対象をカメラ視野の中心に位置するように駆動するのは、次の理由による。すなわち、3次元寸法計測装置34は、スリット光源42とTVカメラ44を用いて、三角測量原理に基づいて計測対象までの距離と方向を計測する。上述したように、スリット光源42からのスリット光56a,56bはカメラ視野の中心で交差するように設定されている。このため、TVカメラ44で撮影される画像の中央付近に計測対象が位置すると、スリット光56a,56bが計測対象に左右・上下均等に投射されることとなる。従って、スリット光56a,56bの中心を求める際に左右・上下どちらか一方への偏りが小さくなり、最も精度が出るためである。
また、計測対象をカメラ視野に対して適切な大きさとするのは、次の理由による。すなわち、カメラ視野に対して計測対象が小さすぎると、TVカメラ44で撮影された画像の1画素あたりの分解能が低下する。一方、カメラ視野に対して計測対象が大きすぎると、わずかのずれで計測対象がカメラ視野から外れてしまう。これらのため、計測対象をカメラ視野に対して適切な大きさとしている。なお、計測対象は、カメラ視野の変動可能範囲内でカメラ視野から外れず、かつ、カメラ視野内でできるだけ大きくなるように調整することが好ましい。
【0024】
演算部14は、A/D変換部46とメモリ48と参照計測対象座標記憶部50と絶対位置算出部52とから構成されている。A/D変換部46には、TVカメラ44から出力される画像信号が入力される。A/D変換部46は、TVカメラ44から入力された画像信号を画像データに変換する。メモリ48は、A/D変換部46で変換された画像データ等を記憶する。参照計測対象座標記憶部50は、参照計測対象36の絶対位置Poを記憶する。絶対位置算出部52は、TVカメラ44で撮影された画像から計測対象までの距離と方向を算出し、その結果とロボット装置(20,32)の駆動量等から計測対象38の絶対位置を算出する。
【0025】
次に、上述した計測システム10により計測対象38の絶対位置を計測する手順の一例を、図4を参照して説明する。図4に示すように、制御装置12は、まず、汎用ロボット20を駆動して、予め設定された第1の位置に3次元寸法計測装置34を位置決めする(ステップS10)。ここで、第1の位置は、参照計測対象36の近傍に予め設定されており、その座標は制御装置12に記憶されている。
【0026】
次いで、制御装置12は、スリット光源42及びTVカメラ44をONする(ステップS12)。これによって、スリット光源42から参照計測対象36に向かってスリット光56a,56bが投射される。また、TVカメラ44はスリット光56a,56bの反射像を撮影し、その撮影した画像を制御装置12に出力する。なお、3次元寸法計測装置34が第1の位置に位置決めされた状態においては、TVカメラ44の視野内に参照計測対象36が入るように調整されている。
【0027】
次いで、制御装置12は、TVカメラ44の画像の中心に参照計測対象36が位置し、かつ、参照計測対象36が画像内で適切な大きさとなるように、微小位置決め装置32を駆動する(ステップS14)。すなわち、制御装置12は、TVカメラ44で撮影される画像から参照計測対象36が画像内のどこにあるかを特定し、参照計測対象36が画像の中心となり、かつ、適切な大きさとなるように微小位置決め装置32を駆動する。これによって、スリット光源42からのスリット光56a,56bが参照計測対象36に上下・左右等分に投射されることとなる(図3に示す状態)。
【0028】
ステップS14で3次元寸法計測装置34の位置決めが完了すると、3次元寸法計測装置34により、3次元寸法計測装置34に対する参照計測対象36の位置Pn(すなわち、3次元寸法計測装置34から参照計測対象36までの距離と方向)を計測する(ステップS16)。具体的には、3次元寸法計測装置34のTVカメラ44で撮影された画像から、3次元寸法計測装置34から参照計測対象36までの距離と方向を算出する。ステップS16で算出した参照計測対象36の位置Pnは制御装置12に記憶される。
また、制御装置12は、参照計測対象36を計測したときの微小位置決め装置32の位置Pa(すなわち、汎用ロボット20の先端31に対する3次元寸法計測装置34の位置)を記憶する(ステップS18)。微小位置決め装置32の位置Paは、微小位置決め装置32の駆動量から算出される。
【0029】
次いで、制御装置12は、TVカメラ44の画像の中心に計測対象38が位置し、かつ、計測対象38が画像内で適切な大きさとなるように、微小位置決め装置32を駆動する(ステップS20)。すなわち、制御装置12は、まず、TVカメラ44で撮影される範囲が広範囲となるように微小位置決め装置32を駆動する。これによって、TVカメラ44の画像内に計測対象38が入る。次いで、制御装置12は、TVカメラ44で撮影される画像から計測対象38が画像内のどこにあるかを特定し、計測対象38が画像の中心となり、かつ、適切な大きさとなるように微小位置決め装置32を駆動する。これによって、スリット光源42からのスリット光56a,56bが計測対象38に上下・左右等分に投射される。
【0030】
ステップS20で3次元寸法計測装置34の位置決めが完了すると、3次元寸法計測装置34に対する計測対象38の位置Pm(3次元寸法計測装置34から計測対象38までの距離と方向)を計測する(ステップS22)。計測された計測対象38の位置Pmは、制御装置12に記憶される。
また、制御装置12は、計測対象38を計測したときの微小位置決め装置32の位置Pb(汎用ロボット20の先端31に対する3次元寸法計測装置34の位置)を記憶する(ステップS24)。微小位置決め装置32の位置Pbは、微小位置決め装置32の駆動量から算出される。
【0031】
次いで、制御装置12は、参照計測対象36の絶対位置Poと、ステップS16で計測した3次元寸法計測装置34に対する参照計測対象36の位置Pnと、ステップS18で記憶した参照計測対象36を計測したときの微小位置決め装置32の位置Paと、ステップS22で計測した3次元寸法計測装置34に対する計測対象38の位置Pmと、ステップS24で記憶した計測対象38を計測したときの微小位置決め装置32の位置Pbとから、計測対象38の絶対位置P1を算出する(ステップS26)。ステップS26で計測対象38の絶対位置を算出すると、スリット光源42及びTVカメラ44をOFFし(ステップS28)、計測処理を終了する。
【0032】
ここで、図5を参照して制御装置12によるステップS26の計算手順を説明する。既に説明したように、参照計測対象36の絶対位置Po(Poは絶対位置を表すベクトル)は既知である。このため、図5に示すように、絶対位置PoからステップS16で計測した参照計測対象36の位置Pn(3次元寸法計測装置34に対する参照計測対象36の位置を表すベクトル)を減算することで、参照計測対象36を計測したときの3次元寸法計測装置34の絶対位置Po−Pnを算出することができる。また、ステップS18で参照計測対象36を計測したときの微小位置決め装置32の位置Pa(汎用ロボット20の先端31に対する微小位置決め装置32の位置を表すベクトル)を記憶しているため、汎用ロボット20の先端31の絶対位置はPo−Pn−Paとなる。さらに、この絶対位置Po−Pn−Paに、ステップS22で計測した計測対象38の位置Pm(3次元寸法計測装置34に対する計測対象38の位置を表すベクトル)と、ステップS24で計測対象38を計測したときの微小位置決め装置の位置Pb(汎用ロボット20の先端31に対する微小位置決め装置32の位置を表すベクトル)を加算すると、計測対象38の絶対位置P1=Po−Pn−Pa+Pb+Pmを算出することができる。
【0033】
上述したようにステップS26では、計測対象38の絶対位置をPo−Pn−Pa+Pb+Pmで算出する。参照計測対象36の絶対位置Poは既知である。また、微小位置決め装置32によって、計測対象36,38に対して3次元寸法計測装置34を適切な位置に位置決めするため、3次元寸法計測装置34で計測されるPn,Pmの計測精度は高い。さらに、微小位置決め装置32の絶対位置精度が高いため、微小位置決め装置32の駆動量から算出されるPa,Pbの精度も高い。このため、計測対象38の絶対位置Po−Pn−Pa+Pb+Pmも精度が高い。
【0034】
なお、上述した実施例では、計測対象38を一つのみを測定していたが、計測対象38が複数ある場合には、次の計測対象についても同様に計測することができる。例えば、計測対象の計測が終了すると、次の計測対象の計測位置に3次元寸法計測装置34を移動させ、次の計測対象の位置を計測し、この計測結果から次の計測対象の絶対位置を算出すればよい。その場合、(1)参照測定対象の計測、(2)移動、(3)第1計測対象の計測、(4)移動、(5)第2計測対象の計測、といった一連の計測シーケンスを実行するように、制御装置12をプログラムすることができる。
【0035】
上述した説明から明らかなように、本実施例の計測システム10では、汎用ロボット20の先端31に3次元寸法計測装置34を取付けることで、1台の3次元寸法計測装置34で複数の計測対象を計測することができる。また、汎用ロボット20の先端31に3次元寸法計測装置34が取付けられているため、3次元寸法計測装置34を参照計測対象36や計測対象38に近づけた状態で、参照計測対象36や計測対象38の位置を計測することができる。このため、三角測量原理に基づく3次元寸法計測装置34を小型化することが可能となる。
また、この計測システム10では、汎用ロボット20の先端31に微小位置決め装置32を介して3次元寸法計測装置34を取付けている。このため、3次元寸法計測装置34の微小な位置決めが可能となり、適切な位置で計測対象36,38の位置を計測することができる。これによって、3次元寸法計測装置34の計測精度が高められている。
さらに、上述した計測方法では、計測対象38の近傍に設置された参照計測対象36(絶対位置が既知)を3次元寸法計測装置34で計測することによって、参照計測対象36を計測したときの汎用ロボット20の手先(先端31)の絶対位置を精度良く算出することができる。このため、汎用ロボット20の絶対位置精度が高くなくても、計測対象38の絶対位置を精度良く算出することができる。また、参照計測対象36を計測することで汎用ロボット20の手先(先端31)の絶対位置が算出できるため、他の計測装置を使用して汎用ロボット20の手先(先端31)の絶対位置を計測する必要もない。
【0036】
(変形例1) 次に、上述した計測システム10により、計測対象38の絶対位置を計測する手順の変形例を説明する。本変形例でも、図4に示す計測手順と同様、参照計測対象36の位置Pnを計測するまでの手順(ステップS10〜S18)は同一である。ただし、本変形例では、微小位置決め装置32を駆動するだけでは計測対象38がTVカメラ44の視野に入らないため、汎用ロボット20の先端31を動かす点で相違する。以下、図6を参照して変形例の手順を説明する。
【0037】
図6に示すように、制御装置12は、まず、汎用ロボット20を駆動して、予め設定された第1の位置に3次元寸法計測装置34を位置決めし(ステップS30)、スリット光源42及びTVカメラ44をONする(ステップS32)。次いで、制御装置12は、微小位置決め装置32を駆動し、TVカメラ44の画像の中心に参照計測対象36が位置し、かつ、参照計測対象36が画像内で適切な大きさとし(ステップS34)、3次元寸法計測装置34によって、3次元寸法計測装置34に対する参照計測対象36の位置Pnを計測する(ステップS36)。そして、制御装置12は、参照計測対象36を計測したときの微小位置決め装置32の位置Paを記憶する(ステップS38)。
【0038】
既に説明したように、本変形例では微小位置決め装置32を駆動するだけではTVカメラ44の視野に計測対象38が入らない。このため、ステップS40では、制御装置12は汎用ロボット20を駆動して、予め設定された第2の位置に3次元寸法計測装置34を位置決めする。ここで、第2の位置は、計測対象38の近傍に予め設定されており、その座標は制御装置12に記憶されている。これによって、TVカメラ44の視野に計測対象38が入ることとなる。そして、汎用ロボット20の移動量Psを記憶する(S41)。
【0039】
次いで、制御装置12は、TVカメラ44で撮影される画像に基づいて微小位置決め装置32を駆動し、TVカメラ44の画像の中心に計測対象38が位置し、かつ、計測対象38が画像内で適切な大きさとなるようにする(ステップS42)。次いで、3次元寸法計測装置34によって計測対象38の3次元寸法計測装置34に対する位置Pmを計測し(ステップS44)、計測対象38を計測したときの微小位置決め装置32の位置Pbを記憶する(ステップS46)。
【0040】
次いで、制御装置12は、参照計測対象36の絶対位置Poと、ステップS36で計測した3次元寸法計測装置34に対する参照計測対象36の位置Pnと、ステップS38で記憶した参照計測対象36を計測したときの微小位置決め装置32の位置Paと、第1の位置(ステップS30参照)に対する第2の位置(ステップS40参照)の相対位置Psと、ステップS44で計測した3次元寸法計測装置34に対する計測対象38の位置Pmと、ステップS46で記憶した計測対象38を計測したときの微小位置決め装置32の位置Pbとから、計測対象38の絶対位置を算出する(ステップS48)。計測対象38の絶対位置を算出すると、スリット光源42及びTVカメラ44をOFFし(ステップS50)、計測処理を終了する。
【0041】
図7を参照して、制御装置12によるステップS48の計算手順を詳細に説明する。図7に示すように、まず、参照計測対象36の絶対位置PoからステップS36で計測した参照計測対象36の位置Pnを減算し、参照計測対象36を計測したときの3次元寸法計測装置34の絶対位置Po−Pnを算出する。次に、この絶対位置Po−PnからステップS38で記憶した微小位置決め装置32の位置Paを減算し、参照計測対象36を計測したときの汎用ロボット20の先端31の絶対位置Po−Pn−Paを算出する。次に、この絶対位置Po−Pn−Paに、第1の位置に対する第2の位置の相対位置Psを加算し、計測対象38を計測したときの汎用ロボット20の先端31の絶対位置Po−Pn−Pa+Psを算出する。次いで、この絶対位置Po−Pn−Pa+Psに、ステップS44で計測した計測対象38の位置Pmと、ステップS46で記憶した微小位置決め装置の位置Pbを加算し、計測対象38の絶対位置Po−Pn−Pa+Ps+Pb+Pmを算出する。
なお、第1の位置に対する第2の位置Psの距離と方向の絶対値は予め求めておく必要がある。しかしながら、これの移動量を小さく、かつ、移動方向も大きく変化させなければ、限られた範囲の絶対位置計測だけを行えばよく、大掛かりな絶対位置計測装置を必要とせず、簡便に行うことができる。例えば、直線上を方向も変えずに移動するようにすれば、直線上の絶対距離および微小な方向の変位を計測するだけでよい。
【0042】
既に説明したように、絶対位置Poは既知であり、Pn,Pmの計測精度は高く、Pa,Pbの絶対位置精度も高い。また、汎用ロボット20は、絶対位置精度は低いが、相対位置決め精度(繰り返し精度)は高い。このため、第1の位置から第2の位置へ移動する際の相対位置決め精度は高い。したがって、第1の位置に対する第2の位置の相対位置Psの精度は高い。したがって、この変形例によっても、計測対象38の絶対位置を精度良く算出することができる。このように本変形例では、汎用ロボット20の相対位置決め精度が高いことを利用して、計測対象38の絶対位置を高精度に計測している。
【0043】
(変形例2) 次に、上述した計測システム10により、計測対象38の絶対位置を計測する手順の他の変形例を説明する。本変形例では、図4に示す計測手順とは異なり、3次元寸法計測装置34で計測される参照計測対象36の位置Pnと、計測対象38の位置Pmとが同一となるように微小位置決め装置32を駆動する点で相違している。その他の点は、図4に示す計測手順と同一である。以下、図4に示す手順とは異なる点を中心に説明する。
【0044】
本変形例では、図4のステップS14,16に代えて、制御装置12は、TVカメラ44の画像の中心に参照計測対象36が位置し、かつ、参照計測対象36までの距離が所定の距離となるように、微小位置決め装置32を駆動する。次いで、所定の距離となったときの微小位置決め装置32の位置Paを記憶する。同様に、図4のステップS20,S22に代えて、制御装置12は、TVカメラ44の画像の中心に計測対象38が位置し、かつ、計測対象38までの距離が所定の距離となるように、微小位置決め装置32を駆動する。次いで、所定の距離となったときの微小位置決め装置32の位置Pbを記憶する。そして、これらの計測結果から計測対象38の絶対位置を算出する。上述した説明から明らかなように、本変形例では、3次元寸法計測装置34で計測される参照計測対象36の位置Pnと計測対象38の位置Pmが同一となる。このため、計測対象38の絶対位置(Po−Pn−Pa+Pb+Pm)は(Po−Pa+Pb)となる。したがって、PaとPbのみを特定すればよい。このような変形例によっても、計測対象38の絶対位置を精度良く計測することができる。なお、変形例2の計測方法は、図6に示す計測手順にも適用することができる。
【0045】
(変形例3) 次に、上述した計測システム10により、計測対象38の絶対位置を計測する手順の他の変形例を説明する。本変形例では、図4に示す計測手順と異なり、参照計測対象36の位置Pnを計測するときの3次元寸法計測装置34の位置と、計測対象38の位置Pmを計測するときの3次元寸法計測装置34の位置とを同一とする点で相違している。その他の点は、図4に示す計測手順と同一である。以下、図4に示す手順とは異なる点を中心に説明する。
【0046】
本変形例では、図4のステップS14に代えて、制御装置12は、TVカメラ44の画像内に参照計測対象36と計測対象38が位置するように、微小位置決め装置32を駆動する。そして、3次元寸法計測装置34により参照計測対象36の位置を計測し、そのときの微小位置決め装置32の位置Paを記憶する。次に、図4のステップS20をスキップして(すなわち、微小位置決め装置32を駆動することなく)、3次元寸法計測装置34により計測対象38の位置を計測する。そして、これらの計測結果から計測対象38の絶対位置を算出する。
【0047】
上述した説明から明らかなように、本変形例では、参照計測対象36の位置Pnを計測するときの3次元寸法計測装置34の位置Paと、計測対象38の位置Pmを計測するときの3次元寸法計測装置34の位置Pbが同一となる。このため、計測対象38の絶対位置(Po−Pn−Pa+Pb+Pm)は(Po−Pn+Pm)となる。したがって、PaとPbが不要となり、PnとPmのみを特定すればよい。このような変形例によっても、計測対象38の絶対位置を精度良く計測することができる。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0049】
例えば、上述した実施例では、汎用ロボット20の先端31に微小位置決め装置32を介して3次元寸法計測装置34を取付けている。しかしながら、汎用ロボットの位置・姿勢決めの分解能が十分に高ければ(すなわち、汎用ロボットだけで3次元寸法計測装置を必要な位置・姿勢に位置決めできれば)、微小位置決め装置を省略することができる。
この場合、汎用ロボットの相対位置決め精度が高いことを利用して、計測対象の絶対位置を高精度に計測することができる。すなわち、制御装置は、まず、汎用ロボットを駆動して参照計測対象を計測する位置(予め設定された第3位置)に3次元寸法計測装置を位置決めし、参照計測対象の位置Pnを計測する。次いで、制御装置は、汎用ロボットを予め設定された駆動量だけ駆動して計測対象を計測する位置(予め設定された第4位置)に3次元寸法計測装置を位置決めし、計測対象の位置Pmを計測する。そして、制御装置は、参照計測対象の絶対位置と、計測された参照計測対象の位置Pnと、第3位置に対する第4位置の相対位置Psと、計測された計測対象の位置Pmとから、計測対象の絶対位置を算出する。
この方法では、汎用ロボットの相対位置精度はよいため、第3位置から第4位置への移動を精度良く行うことができる。第3位置の絶対位置は参照計測対象を計測することで精度良く算出することができるため、第4位置の絶対位置を精度良く算出することもできる。これによって、計測装置の絶対位置を精度良く算出することができる。このように、微小位置決め装置を省略しても、汎用ロボットの相対位置決め精度が高いことを利用することで、計測対象の絶対位置を精度良く算出することができる。
【0050】
また、上述した各実施例では、参照計測対象の位置Pnを計測し、その後に計測対象の位置Pmを計測している。しかしながら、参照計測対象の位置Pnの計測を省略するようにしてもよい。例えば、制御装置は、汎用ロボットの先端を計測対象を計測する位置に直接位置決めし、次いで、微小位置決め装置を駆動して3次元寸法計測装置の位置を微調整し、その後、計測対象の位置Pmを測定するようにしてもよい。なお、かかる構成を採用する場合、TVカメラにズームアウト機能を搭載することで、TVカメラの視野に計測対象を捕らえやすくするようにしてもよい。
あるいは、まずは、参照計測対象を計測する位置に汎用ロボットの先端を位置決めし、次いで、参照計測対象の計測を行うことなく、計測対象を計測する位置に汎用ロボットの先端を位置決めする。そして、微小位置決め装置を駆動して微調整し、計測対象の位置Pmを測定するようにしてもよい。このように構成することで、汎用ロボットの相対位置決め精度が高いことを利用して、計測対象の絶対位置を算出することができる。すなわち、参照計測対象を計測する位置に位置決めしたときの汎用ロボットの手先の絶対位置は、事前に参照計測対象を計測することで算出しておくことができる。汎用ロボットの相対位置決め精度は高いため、参照計測対象を計測する位置から計測対象を計測する位置に汎用ロボットの手先を精度良く移動させることができる。このため、参照計測対象を計測する位置に位置決めしたときの汎用ロボット先端の絶対位置が予め算出されていれば、計測対象を計測する位置に位置決めしたときの汎用ロボット先端の絶対位置も精度良く算出することができる。これによって、計測対象を精度良く算出することができる。なお、参照測定対象を計測することによる汎用ロボット先端の絶対位置の算出は、適宜のタイミング(例えば、経年変化が生じるタイミング、1日の操業が開始されるタイミング等)で行えばよい。
【0051】
なお、上述した計測システムで複数の計測対象を計測する場合は、参照計測対象を複数設置することができる。この場合、計測対象毎に参照計測対象を設置することができる。あるいは、一つの計測対象群に対して一つの参照計測対象を設置し、他の計測対象群に対して他の参照計測対象を設置するようにしてもよい。
【0052】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
10:計測システム
12:制御装置
14:演算部
16:制御部
20:汎用ロボット
22、25,28:アーム
21,24,26,29,30:関節
30:手先
32:微小位置決め装置
34:3次元寸法計測装置
36:参照計測対象
38:計測対象
42:スリット光源
44:TVカメラ
46:A/D変換部
48:メモリ
52:絶対位置算出部
54:画像
56a,56b:スリット光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象までの距離と方向を計測する計測装置と、
計測装置を支持し、少なくとも1自由度で計測装置を駆動可能な支持装置と、
計測対象の近傍に設置されており、その絶対位置が既知である参照計測対象と、
計測装置と支持装置を制御する制御手段と、
計測装置で計測された計測結果から計測対象の絶対位置を演算する演算手段と、を備えており、
制御手段は、支持装置を駆動することで参照計測対象を計測可能な位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により参照計測対象までの距離と方向を計測するキャリブレーション工程と、
支持装置を駆動することで計測対象を計測可能な位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により計測対象までの距離と方向を計測する計測工程と、を実施し、
演算手段は、各工程において計測された距離と方向の計測値と、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の計測装置の移動量と移動方向から、計測対象の絶対位置を演算することを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記支持装置は、少なくとも1自由度を備えたロボット装置であり、
前記計測装置は、ロボット装置の手先に支持されており、
前記演算手段は、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の計測装置の移動量と移動方向として、ロボット装置の手先の移動量を用いることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記支持装置は、少なくとも1自由度を備えた高精度微小位置決め装置であり、
前記演算手段は、計測装置が参照計測対象を計測した位置から計測対象を計測した位置に移動する際の計測装置の移動量と移動方向として、高精度微小位置決め装置の移動量を用いることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
前記高精度微小位置決め装置は、汎用ロボットの手先に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の計測システム。
【請求項5】
前記制御手段は、(1)計測装置により計測される参照計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となるように、汎用ロボット及び/又は高精度微小位置決め装置を駆動し、(2)計測装置により計測される計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となるように、汎用ロボット及び/又は高精度微小位置決め装置を駆動し、
前記演算手段は、参照計測対象の絶対位置と、参照計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となったときの計測装置の位置と、計測対象までの距離と方向が所定の距離と方向となったときの計測装置の位置とから、計測対象の絶対位置を算出することを特徴とする請求項4に記載の計測システム。
【請求項6】
前記支持装置は、少なくとも1自由度を備えた汎用ロボットであり、前記計測装置が汎用ロボットの手先に取付けられており、
前記制御手段は、(1)汎用ロボットを駆動して参照計測対象を計測可能な第3計測位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により参照計測対象までの距離と方向を計測し、(2)汎用ロボットを予め設定された駆動量だけ駆動して計測対象を計測可能な第4計測位置に計測装置を位置決めすると共に、計測装置により計測対象までの距離と方向を計測し、
前記演算手段は、参照計測対象の絶対位置と、計測された参照計測対象までの距離と方向と、第3計測位置から第4計測位置までの距離と方向と、計測された計測対象までの距離と方向とから、計測対象の絶対位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−207990(P2010−207990A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58537(P2009−58537)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】