説明

計測データ伝送システム

【課題】 維持管理の手間や設備にかかる費用を大幅に削減すると共に、信頼性を向上する計測データ伝送システムを提供する。
【解決手段】 下水道9等内の複数地点において各物理量13a〜13cを計測する複数の被監視局3と、この被監視局3を介して全体的な下水道の監視を行なう中央監視局とからなる計測データ伝送システム1であって、被監視局3が、下水道9内の各物理量13a〜13cを計測する計測器11と、この計測器11によって計測された物理量13a〜13cを計測時間Dtとともに計測データDとして例えば5分間隔毎に記録するデータロガー20と、データロガー20に記録された計測データDを所定の様式の電子メールMに編集すると共にこの電子メールMを例えば1 時間毎に携帯電話回線網を用いて中央監視局側に伝送する通信機16とを有し、かつ、前記中央監視局2が、前記電子メールMを受信する通信機6と、各被監視局3によって計測された各物理量13a〜13cを受信した電子メールMを用いて解読し出力する処理部7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、計測データ伝送システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、下水道における流量計測は、下水道管渠を接続する市町村への料金徴収体系の中で、最も重要な要素である。また、下水道内の複数地点における水深,流量,水質などの各物理量を計測し、これを監視することにより、環境維持のための排水規制や下水道の異常検知を行って、早急な対応をとることが求められている。そこで、従来より下水道内の複数の人孔内などにおいて各物理量を計測し、計測値を集計する監視装置を取付けることが行われている。
【0003】従来の監視装置は、一般的に各物理量を計測する計測器と、この計測器によって計測された計測値を記録したり、状態の信号(アナログ信号およびデジタル信号)を記録するためのデジタル式プリンタやアナログ記録計などの記録装置とを有しており、管理者が定期的にこれらの記録装置に記録された計測値を確認することが行われていた。そして、各監視装置を管理する計測センタでは管理者によって確認された計測値を基に、データの解析を行って、下水道内の状態を把握していた。
【0004】また、流量計測システムの管理効率を上げるため、現在では専用電話回線を利用したテレメータシステムが広く利用されている。つまり、計測器に、専用回線などによって計測信号をデータ通信する通信機を取り付けて、計測信号を中央処理部に送信し、中央で集中監視するデータ通信システムを構築することがあった。計測信号をテレメータシステムによって集計することにより、各地点における各計測信号がほゞリアルタイムに計測でき、現状の監視をより厳密に行えるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、専用回線を用いてデータ通信を行う場合には配線工事費などの設備投資が大きくなるだけでなく、計測点の変更を容易に行うことができないという問題があった。また、中央処理部においても各計測点に設けられた複数の通信機とデータ通信する必要があるので、テレメータ盤のような大型の装置が必要とされ、設備が大げさにならざるを得ない。
【0006】また、一般公衆回線を用いて複数の現場とデータ通信を行なう場合には、中央の回線側に全ての処理が集中するので、競合などの問題があり、中央処理部側の処理能力を極めて高いものとする必要があった。
【0007】さらに、計測器と中央処理部との間のデータのやり取りを通信回線によるデータ通信に頼っているので回線の使用料がランニングコストの引き上げにつながっていた。そして、通信回線に異常が発生したときに、計測信号が消失する場合もあり、各物理量の継続的な監視を行う点で問題があった。
【0008】本発明は、上記の点を考慮に入れてなされたものであって、その目的とするところは、維持管理の手間や設備にかかる費用を大幅に削減すると共に、信頼性を向上する計測データ伝送システムを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明の計測データ伝送システムは、下水道内の複数地点において各物理量を計測する複数の被監視局と、この被監視局を介して全体的な下水道の監視を行なう中央監視局とからなる計測データ伝送システムであって、被監視局が、下水道内の各物理量を計測する計測器と、この計測器によって計測された物理量を計測時間とともに計測データとして所定の記録間隔毎に記録するデータロガーと、データロガーに記録された計測データを所定の様式の電子メールに編集すると共にこの電子メールを所定の通信間隔毎に携帯電話回線網を用いて中央監視局側に伝送する通信機とを有し、かつ、前記中央監視局が、前記電子メールを受信する通信機と、各被監視局によって計測された各物理量を、受信した電子メールを用いて解読し出力する処理部とを有することを特徴としている。
【0010】したがって、本発明の計測データ伝送システムは、携帯電話回線網を経由する電子メールを利用することによりデータ転送を行うので、専用回線のような設備投資が不要であり、中央側もテレメータ盤のような大型の装置が一切不要となる。また、データ転送はインターネットなどのネットワークを用いた電子メールのやりとりであるから、中央監視局側の回線は一つで十分であり、競合などの回線の問題が発生することがない。
【0011】つまり、本発明によれば、多数の被監視局からの計測データを受け取る計測データ伝送システムであっても、その設備が極めて簡素で安価であるから、既設の計測システムから容易に本発明の計測データ伝送システムを形成することができる。加えて、被監視局側のコントロール装置がデータロガー機能を兼ね備えているので、計測器それぞれの側で計測データを一定期間保持可能であり、通信障害時のデータ欠損等のトラブル発生を抑えることができる。
【0012】前記被監視局が、前記計測データを圧縮して通信機に出力する処理部を有し、かつ、中央監視局側の処理部が圧縮された計測データを復元する機能を有する場合には、通信にかかる費用を必要最小限に抑えることができ、ランニングコストを引き下げることができる。とりわけ、携帯電話回線網を用いた電子メールの送受信にはパケット通信が用いられるので、パケット料金を安くすることができる。
【0013】ネットワークに常時接続されて前記電子メールを蓄積するメールサーバを有し、前記中央監視局がこのメールサーバとのデータ通信によって前記電子メールを受け取るように構成された場合には、中央監視局が常にネットワークに接続されている必要はなく、任意の時点でメールサーバに蓄積された電子メールを受け取って、各被監視局からの計測データを受信することができる。なお、中央監視局側に固有のメールサーバを所有することも可能であり、この場合には、計測器側、中央側とも、そのメールサーバのアドレスを使用可能である。
【0014】計測データは電子メールで送信されるため、複数箇所に監視局を設置することも可能で、一度にそれら複数の監視局へデータの電子メールを同時に送信することができる。
【0015】前記被監視局が、計測された物理量が予想される通常の計測範囲の閾値を越えた時点で、その時点までの計測データを所定の様式の電子メールに編集して中央監視局側に伝送する緊急通報機能を有する場合には、送信から受信までの伝達遅延時間の範囲内で、異常の発生を中央監視局に通知することができる。
【0016】前記中央監視局が、各被監視局を制御する制御信号を所定の電子メールに編集する機能と、この電子メールを各被監視局側に伝送する機能を有すると共に、前記被監視局が、所定の様式の電子メールを受け取ってこれを制御信号に変換する機能と、この制御信号に従って所定の動作を行なう機能を有する場合には、中央監視局側から各被監視局を制御して、下水のサンプリングやバルブの開閉などの所定の遠隔操作を行うことができる。とりわけ、制御信号を電子メールによって送信することにより、一度のメール送信によって複数の被監視局に制御信号を同時に送信することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1,2は本発明の計測データ伝送システム1の全体的な構成を示す図である。図1,2において、2は所定の地域における下水道内の水位や流量などの監視を行なう中央監視局、3は中央監視局2によって監視された状態で、所定の位置における下水道内の状態を計測する複数の被監視局(図には一つの被監視局のみを示している)である。
【0018】4はインターネットなどのネットワーク、5はインターネットのプロバイダが管理するメールサーバ、6はインターネット4に接続されたルータなどの通信機、7はこの通信機6によってインターネット4に接続された処理部、8は処理部7に接続されたプリンタ等の出力装置である。すなわち、本例の中央監視局2はルータ6と、処理部7と、プリンタ等の出力装置8とからなっている。
【0019】一方、9は計測対象となる下水道渠、10はこの下水道渠9に通ずる人孔の開口部であり、11は下水道渠9を流れる下水の各物理量を計測する計測器、12は計測器11にケーブル接続された制御部である。つまり、本例の被監視局3は大きくわけて計測器11とその制御部12とからなる。また、各被監視局3は、それぞれ、異なるID(本例の場合ID:001の被監視局3のみを例示している)を有している。
【0020】図2は、被監視局3のより詳しい構成を示している。すなわち、前記計測器11には例えば水位13a,流量13b,pH13cなどを表わす各物理量を計測するための各センサ13と、これらのセンサ13に接続されて計測値をアナログ信号14a,パルス信号14b,接点信号14cに変換する変換器14とを有している。
【0021】本例では例えば、流量や水位などの連続値をアナログ信号14aとして出力しており、流れた下水の総量が例えば1m3 毎に1パルス出力されるパルス信号14bや、流量が所定の範囲の閾値を越える場合やpHの計測値が通常では考えられない閾値を越える場合に異常発生を出力する接点信号14cがある。すなわち、計測器11から出力される信号は、状態の量に見合ったアナログ信号14a、単位量の積算パルス信号14b、警報信号のような接点信号14cなどがある。
【0022】また、前記制御部12は例えば前記信号14a〜14cを入力して適宜の処理を行なう処理部15と、信号処理された各計測値を所定の間隔で、中央監視局2側に送信する通信機16とからなっている。
【0023】そして、処理部15は例えば前記アナログ信号14aをデジタル変換するAD変換器17と、パルス信号14bや接点信号14cを入力するためのインターフェース18と、これらの入力部17,18を介して入力した各物理量を処理するCPU19と、このCPU19によってまとめられた計測データDを順次記録するデータロガー20とを有している。
【0024】通信機16はPAD機能(Packet Assembly and Disassembly) を有する通信機であり、例えば、シリアル通信によって受信した後述のデータD’を所定の様式の電子メールMに編集するプロトコル変換器21と、変換された電子メールMをパケット通信するための携帯電話端末22とからなる。一方、インターネット4側には、各携帯電話端末22と電磁波のやり取りをしてこれをインターネット4に接続する携帯電話会社による電磁波通信システム4aを有している。
【0025】計測データDは例えば水位D1 ,流量D2 ,パルス数D3 ,pHの測定値D4等の各物理量および異常発生状態D5 などからなる1レコードのデータであり、記録時刻Dtを付してなる。前記水位D1 ,流量D2 ,pHの測定値D4 などのアナログ信号は記録する瞬間の値であり、パルス数D3 は前回の記録の後から今回の記録の瞬間までの入力数、異常発生状態D5 などの接点信号については記録の瞬間の状態(ONかOFFか)を記録してなるものである。
【0026】また、前記データD1 〜D5 は変換器14またはCPU19によるデータ処理によって前記センサ13による測定信号14a〜14cを基に算出されて求められるものである。なお、本例では、水位D1 および流量D2 などの連続的な物理量は、0から通常考えられる最大水位および最大流量を、例えば0〜1023の10ビットデータで表わしている。このアナログ値をどの程度の分解能で表わすかは任意に選択可能である。
【0027】そして、本例では、前記計測データDを所定の間隔として5分ごとに1レコード分のデータを記録する例を示している。すなわち、1時間で12レコード分の計測データDが保存される例を示している。さらに、この計測データDの記録する間隔を短くすることにより、より厳密な計測を行うことが可能である。逆に、記録する間隔を長くすることにより、通信費を抑えることができランニングコストを削減できる。
【0028】さらに、本例に示す被監視局3はCPU19が各センサ13によって計測された物理量13a〜13cをモニタし、これら及びこれらにより演算された結果が予想される通常の計測範囲の閾値を越えた時点で異常発生を検出し、異常発生状態D5 はONとなる。そして、その時点までの計測データDを所定の様式の電子メールMに編集して中央監視局2側に伝送する緊急通報機能を有している。すなわち、異常発生状態D5 が1であるとき、5分毎の計測データDの蓄積に捕らわれることなく、それ以下の短い間隔で計測データDを記録し、これを順次電子メールMに編集して送信する機能を有している。したがって、異常発生時には現状を直ちに中央監視局2側に伝送し、その詳細な変化を報告できるようにしている。
【0029】そして、中央監視局2で異常発生時の非定時メールを受信した場合には、直ちにそのメールに対応したメッセージを表示させることができる。
【0030】また、データロガー20には例えば過去3日分程度の計測データDが残るように順次保存されており、それ以上過去の計測データDは上書き更新されるように構成されている。さらに、データロガー20に保存された計測データDを外部から吸い出し可能に構成している。すなわち、何らかの原因によって通信不能になった場合であっても、データロガー20に計測データDが残っているかぎり、計測値が消失することはない。
【0031】なお、データロガー20に保存される計測データDの量は3日間に限定されるものではないことはいうまでもない。より長い期間保存されるように構成することにより、安全性を更に高めることが可能であるが、データロガー20の容量を削減して製造コストを引き下げるようにしてもよい。また、以下の説明では、計測データDがデータロガー20に保存されることを前提に説明を行うが、本発明はデータロガー20を省略して、前記計測データDを記憶部や外部記憶装置などに記憶するなど様々な変形が可能であることはいうまでもない。
【0032】前記CPU19は、データロガー20に保存された計測データDを所定の間隔として例えば1時間毎にこれを圧縮して、その容量を削減した通信用のデータD’を形成する。そして、このデータD’を通信機16に出力することにより、これが電子メールMに変換された後に中央監視局2側のメールアドレスに送信されて、インターネット4上のメールサーバ5に蓄積される。なお、本例ではメールサーバ5を電話会社が管理するものとしているが、本発明はこの点を限定するものではない。すなわち、中央監視局2を構成する処理部7をメールサーバ5として動作させるように構成してもよい。
【0033】メールサーバ5は各被監視局3から受け取った電子メールMを順次蓄積する。このとき、各被監視局3には予め独特のメールアドレスMaが付与されており、メールサーバ5は少なくとも各電子メールMを受け取った時刻Mtと、その電子メールMの送信元のメールアドレスMaを保存している。なお、本例では理解しやすいように、被監視局3毎に割り振られたID番号を用いてメールアドレスMaを表記しているが、本発明は各被監視局3に付与されるメールアドレスMaの形を限定するものではない。
【0034】本例の場合、メールサーバ5が昼のちょうど1時にIDが001から004までの4つの被監視局3から同時に電子メールMを受信しているが、各電子メールMはインターネット4を用いた受信であるから、メールサーバ5は競合などの問題が全く発生することなく各被監視局3からの電子メールMを同時に受信することができる。
【0035】また、IDが003の被監視局3(図外)からは5分間隔で電子メールMが届いていることが分かる。すなわち、被監視局3における計測によって何らかの異常を検知し、より短い間隔で緊急事態発生を知らせる電子メールMが送られている。本例のように被監視局3が、異常事態の発生に伴って直ちに電子メールMが送られる緊急通報機能を有する場合には、ほゞリアルタイムに緊急事態発生が通知されるので、より早急な対応を取ることができる。
【0036】本発明の計測データ伝送システム1は、計測点が公共下水道などの一般公道のマンホール内になることが多く、監視装置を設置する場所の選定や電源引き込みの難しさがあるが、本例では電源をバッテリとすることにより任意の位置に設置可能としている。また、携帯電話端末22を利用した通報システムを採用しているので、被監視局3の設置位置を容易に変更することができる。なお、本例の場合、携帯電話端末22を有する制御部12を人孔の外側の電柱などに取り付けているので、電磁波による通信を妨げるものを少なくしているが、この携帯電話端末22を人孔内に設置し、人孔の鉄蓋に携帯電話端末器のアンテナ22aを取り付けることによって、交通に影響を与えることのないシステムを構築できる。
【0037】一方、インターネット4を介してメールサーバ5に接続された処理部7は、各被監視局3からの電子メールMをルータ6などの通信機を介して順次受け取って、これらの電子メールMを用いて各被監視局3によって計測された各物理量を解読した日報や月報などに編集し、これをプリンタ等の出力装置8などを介して出力することができる。
【0038】このとき処理部7はインターネット4に接続できてメールサーバ5から順次電子メールMを受け取るだけで、複数の被監視局3からの計測データDを受信できるので、従来のような大がかりなテレメータシステムのようなものを一切必要としておらず、被監視局3の数が増大しても競合などの問題が一切発生することがない。すなわち、図2に一点鎖線で示すように前記中央監視局2は、ノートブック型のパーソナルコンピュータ程度の処理部7’と、ワイヤレスモデム6’とからなる可搬型の中央監視局2’とすることも可能であり、その構成を可及的に簡素化することができる。
【0039】さらに、仮に前記通信機16によるデータ通信が何らかの原因で行うことができなくなったとしても、計測データDがデータロガー20に蓄積されているので、このデータロガー20に可搬型の処理部7’などを接続することにより、この計測データDを転送することが可能となり、計測データDの消失を防ぐことができる。
【0040】図3は中央監視局2(2’)側のデータの流れを示す図である。図3において、23は各被監視局3のIDと、メールアドレス,被監視局3の所在地,計測された各物理量D1 〜D5 の単位やその範囲などの情報を記録してなるマスタ情報である。本図に示した例では、マスタ情報23は、IDが001の被監視局3が、「大阪都島区…」に設置されていることを示し、記録されたデータの一つ目は水位で最大値が100cmであり、2つ目のデータは流量で最大値が100m3/hであることを示している。
【0041】24はこのマスタ情報23を作成したり維持するためのマスタメンテナンスプログラム、25はメールサーバ5から電子メールMを受信してこれに含まれる圧縮データD’を復元すると共にマスタ情報23を用いて各被監視局3によって測定された各計測データDを復元するデータ復元プログラムである。すなわち、データ復元プログラム25によって各電子メールMを復元することにより、処理部15に入力される各被監視局3によって測定された各物理量(水位,流量,pHなど)を受信することができる。
【0042】26はデータ復元プログラム25を用いて復元された計測データ(物理量)を各被監視局3毎に順次保管された計測情報、27はマスタ情報23および計測情報26を用いて日報や月報などの帳票28を作成する帳票作成プログラム、29はマスタ情報23および計測情報26を用いて、測定した任意の範囲の計測結果をグラフ30にして出力するグラフ作成プログラムである。
【0043】なお、前記帳票作成プログラム27およびグラフ作成プログラム29は、前記情報23,26を用いて帳票28やグラフ30を出力することを可能とする市販の表計算ソフトを用いてもよいことはいうまでもない。また、出力はディスプレイに表示するだけでなく、プリンタ等の出力装置8によって印刷などすることも可能である。
【0044】さらに、前記中央監視局2が、各被監視局3を制御する制御信号Cを所定の電子メールMcに編集する機能と、この電子メールMcを各被監視局3側に伝送する機能を有すると共に、前記被監視局3が、所定の様式の電子メールMcを受け取ってこれを制御信号Cに変換する機能と、この制御信号Cに従って所定の動作を行なう機能を有する場合には、中央監視局2側から各被監視局3を制御することも可能である。
【0045】すなわち、例えば中央監視局2が各被監視局3によって測定された各物理量を監視し、所定濃度異常の汚染物質が流れていることを検出したときに、その監視局3に対して制御信号Cを送信して、排水を自動採取させ、原因を突き止めることも可能となる。さらに、バルブの開閉などの動作を所定の動作として行なうことも可能である。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように本発明の計測データ伝送システムによれば、携帯電話回線網を経由する電子メールを利用することによりデータ転送を行うので、テレメータシステムのような大がかりな装置が一切不要となる。また、データ転送はインターネットなどのネットワークを用いた電子メールのやりとりであるから、中央監視局側の回線は一つで十分であり、競合などの回線の問題が発生することがない。
【0047】すなわち、本発明によれば、被監視局の数が増大しても各被監視局からの計測データを極めて簡素化された機構で受け取ることができ、既設の計測システムから容易に本発明の計測データ伝送システムを形成することができる。加えて、被監視局側のコントロール装置がデータロガー機能を兼ね備えているので、計測器それぞれの側で計測データを一定期間保持可能であり、通信障害時のデータ欠損等のトラブル発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の全体的な構成を示す図である。
【図2】被監視局側の構成および計測データの管理を説明する図である。
【図3】中央監視局側の動作を説明する図である。
【符号の説明】
1…計測データ伝送システム、2…中央監視局、3…被監視局、5…メールサーバ、9…下水道、11…計測器、13a〜13c…物理量、15…処理部、16…通信機、20…データロガー、C…制御信号、D…測定データ、M,Mc…電子メール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下水道内の複数地点において各物理量を計測する複数の被監視局と、この被監視局を介して全体的な下水道の監視を行なう中央監視局とからなる計測データ伝送システムであって、被監視局が、下水道内の各物理量を計測する計測器と、この計測器によって計測された物理量を計測時間とともに計測データとして所定の記録間隔毎に記録するデータロガーと、データロガーに記録された計測データを所定の様式の電子メールに編集すると共にこの電子メールを所定の通信間隔毎に携帯電話回線網を用いて中央監視局側に伝送する通信機とを有し、かつ、前記中央監視局が、前記電子メールを受信する通信機と、各被監視局によって計測された各物理量を、受信した電子メールを用いて解読し出力する処理部とを有することを特徴とする計測データ伝送システム。
【請求項2】 前記被監視局が、前記計測データを圧縮して通信機に出力する処理部を有し、かつ、中央監視局側の処理部が圧縮された計測データを復元する機能を有する請求項1に記載の計測データ伝送システム。
【請求項3】 ネットワークに常時接続されて前記電子メールを蓄積するメールサーバを有し、前記中央監視局がこのメールサーバとのデータ通信によって前記電子メールを受け取るように構成された請求項1または2に記載の計測データ伝送システム。
【請求項4】 前記被監視局が、計測された物理量が予想される通常の計測範囲の閾値を越えた時点で、その時点までの計測データを所定の様式の電子メールに編集して中央監視局側に伝送する緊急通報機能を有する請求項1〜3の何れかに記載の計測データ伝送システム。
【請求項5】前記中央監視局が、各被監視局を制御する制御信号を所定の電子メールに編集する機能と、この電子メールを各被監視局側に伝送する機能を有すると共に、前記被監視局が、所定の様式の電子メールを受け取ってこれを制御信号に変換する機能と、この制御信号に従って所定の動作を行なう機能を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の計測データ伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2003−6780(P2003−6780A)
【公開日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−191817(P2001−191817)
【出願日】平成13年6月25日(2001.6.25)
【出願人】(591236035)株式会社エヌケーエス (3)
【出願人】(500524419)株式会社アイシーティー (1)
【Fターム(参考)】