認識システム
【課題】他の通信装置から送信されてくる位置情報の精度を高めることができる認識システムの提供。
【解決手段】前方車両情報とインフラ情報とを照合し(S210〜S230)、同一の車両とみなせる情報について、位置及び速度の情報の平均を取ってその車両の情報とする(S260、S265)。また、一体の車両の情報とみなせる情報を探して(S270)、それを一体化する(S275)。さらに走行情報を用いることで未来の速度及び位置の推定値を補正する(S2800)。そして、自車線確率の計算(S290)、及び、衝突時間の計算(S293)を行い、衝突の危険がある車両に向けて自車両の情報を送信する(S295)。
【解決手段】前方車両情報とインフラ情報とを照合し(S210〜S230)、同一の車両とみなせる情報について、位置及び速度の情報の平均を取ってその車両の情報とする(S260、S265)。また、一体の車両の情報とみなせる情報を探して(S270)、それを一体化する(S275)。さらに走行情報を用いることで未来の速度及び位置の推定値を補正する(S2800)。そして、自車線確率の計算(S290)、及び、衝突時間の計算(S293)を行い、衝突の危険がある車両に向けて自車両の情報を送信する(S295)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を認識するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両周辺の他車両の位置情報を、その他車両が備える通信機から得て、ユーザに報知するシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。このシステムは、GPS(Global Positioning System)から得られる情報に基づいて各車両が自らの位置を測定して、その位置情報を利用する。
【特許文献1】特開2005−301581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
先述した技術の課題は、他の車両から得た情報は、必ず誤差を含むので、活用できる用途が限られてしまうということである。その理由は、それぞれが測定した位置情報を照合して得られる情報には、大きな誤差が含まれるからである。さらに、GPSから得られる情報そのものにも誤差が含まれている。これらの誤差は、車両のサイズに対して無視できない大きさである。
【0004】
本発明は、先述した課題を鑑み、他の通信装置から送信されてくる位置情報の精度を高めて、その通信装置の位置を正確に認識できる認識システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
先述した課題を解決するためになされた請求項1に記載の認識システムは、通信装置と認識装置とを備える。この認識システムには、通信装置が一つまたは複数設けられている。そして、通信装置は、自身の現在の位置情報を無線によって周辺に送信する第一通信手段を備える。
【0006】
認識装置は、第二通信手段と、解析手段と、位置取得手段と、認識手段と、位置補正手段と、を備える。第二通信手段は、通信装置が備える第一通信手段によって送信される位置情報を受信可能なものである。
【0007】
解析手段は、レーダー波を発射し、このレーダー波が単数または複数の物体に反射して戻ってくる反射波の受波結果に基づいて、単数の物体の位置または複数の物体の各位置を求める。一方、位置取得手段は、当該認識装置の現在位置情報を取得する。
【0008】
認識手段は、解析手段の解析結果と、第二通信手段が受信した位置情報と、位置取得手段の取得結果とに基づいて、解析手段によって位置が求められた物体のうち、通信装置を搭載していると推定される物体を、周辺装置として認識する。
【0009】
位置補正手段は、位置取得手段の取得結果と、解析手段の解析結果とに基づいて、第二通信手段が受信した周辺装置の位置情報を補正する。
請求項1に記載された認識システムによれば、認識装置において、レーダーによる捕捉範囲内に存在する通信装置を搭載する物体の位置を正確に取得できる。なぜなら、通信によって得られた情報を、レーダーによって得られた情報で補正するからである。従って、従来よりも、正確に周辺装置の位置を認識できる。
【0010】
ところで、このような効果は、レーダーによって得られた情報のみによっては得られない。なぜなら、レーダーによって得られた情報からは、レーダーを反射したものが何であるかを認識するのが難しいからである。つまり当該認識システムが認識の対象としている周辺装置以外のものであっても、レーダー波を反射し得る物体であれば、解析手段が解析の対象としてしまう。そのために、得られた情報から物体を推測するような処理などが必要である。しかし、このような処理を行ったとしても、その物体が何であるかは、当然ながら推測の域を出ない。
【0011】
それに対して本発明は、通信装置を備えた周辺物体であることを通信によって確実に認識しつつ、その位置をレーダーによって得られる情報で補正する。これによって、先述した特有の効果が得られる。
【0012】
ところで、請求項1に記載の認識システムは、請求項2に記載のように構成されるとよい。請求項2に記載の認識システムが備える認識装置は、移動体に搭載される。また、この認識装置は、認識手段が認識した周辺装置のうち、自装置が搭載された移動体に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する特定手段を備える。
【0013】
また、認識装置が備える第二通信手段は、特定手段によって特定された周辺装置が備える通信装置に対して、当該認識装置が搭載された移動体の存在情報を無線によって送信するように構成される。そして、通信装置が備える第一通信手段は、認識装置が備える第二通信手段から送信されてくる存在情報を、無線によって受信可能に構成されている。
【0014】
請求項2に記載された認識システムによれば、通信装置は、衝突の危険性がある移動体の存在を知ることができる。通信装置が衝突の危険を知ることができれば、その通信装置は受信した存在情報を利用して、例えば、衝突を回避するような処理を実行できる。
【0015】
請求項2に記載の認識システムは、請求項3に記載のように構成されるとよい。請求項3に記載の認識システムは、認識装置が、車両に搭載されたものである。そして、認識装置は、位置推定手段と、自車線確率算出手段とを備える。
【0016】
位置推定手段は、位置補正手段が補正した位置情報に基づいて、自車両に対する周辺装置の未来における位置を推定する。また、自車線確率算出手段は、位置推定手段によって推定された周辺装置の未来における位置に基づき、未来において、自車両と周辺装置とが同一車線に位置する確率である自車線確率を算出する。そして、特定手段は、自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、車両に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する。
【0017】
請求項3に記載された認識システムによれば、衝突の危険性を定量的に算出できる。認識装置が車両に搭載されているので、衝突の危険が高いのは、同じ車線上に位置する物体である。そこで、周辺装置の自車線確率に基づいて、衝突の危険性を判断する。従って、より正確な判断に基づいて、認識装置が自身の存在情報を送信できる。
【0018】
なお自車線確率とは、自車両と前方車両とが同じ車線に位置する確率である。
請求項3に記載の認識システムは、請求項4に記載のように構成されるとよい。特定手段は、位置推定手段の推定結果及び自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、自車両との距離が所定閾値以内に接近する周辺装置であって、自車線確率算出手段によって算出された自車線確率が閾値以上である周辺装置を、車両に対して衝突する危険性がある周辺装置として特定する。
【0019】
請求項4に記載された認識システムによれば、衝突の危険性をより定量的に算出できる。
請求項2〜請求項4の何れかに記載の認識システムは、請求項5に記載のように構成されるとよい。請求項5に記載の認識システムが備える通信装置は、報知手段を備える。この報知手段は、第一通信手段が受信した存在情報に基づいて、存在情報を送信した第二通信手段を備える移動体の存在を、自装置のユーザに向けて報知する。
【0020】
請求項5に記載された認識システムによれば、周辺装置としての通信装置のユーザが、自身に衝突の危険がある車両の存在を知ることができる。従って、そのユーザは、危険を回避する行動を取りやすくなり、安全性が増す。
【0021】
請求項5に記載の認識システムは、請求項6に記載のように構成されるとよい。請求項6に記載の認識システムにおいては、存在情報が、当該存在情報を送信する第二通信手段を備える移動体の位置の情報を含むものである。そして、報知手段は、画像および音の少なくとも一方によって、自装置のユーザに向けて移動体の位置を報知する。
【0022】
請求項6に記載された認識システムによれば、通信装置のユーザが、画像および音の両方または一方によって、衝突の危険がある車両の存在と位置とを確認できる。それによって、そのユーザが危険をより一層に認識でき、その危険を回避する行動を取りやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面と共に説明する。図1は、車両に搭載されて用いられる車車間通信装置11の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、車車間通信装置11は、通信アンテナ13と、通信制御ECU15と、レーダー21と、レーダー制御ECU23と、車内LAN25と、GPSアンテナ29と、全体制御ECU31と、スピーカー33と、表示装置35と、を備える。
【0024】
通信アンテナ13は、他の車車間通信装置11と通信を行うための電波を送受信するアンテナであり、通信制御ECU15によって制御される。通信アンテナ13からは、到達距離が数十mから数百m程度になるような電波が出力される。
【0025】
通信制御ECU15は、車内LAN25から受け取ったデータに基づいて送信信号を生成すると共に通信アンテナ13に電波として送信させ、他の車両に搭載された車車間通信装置11にデータを送信する。また、通信制御ECU15は、他の車両に搭載された車車間通信装置11から発せられると共に通信アンテナ13によって受信された電波に基づいてデータを復元し、車内LAN25に出力する。
【0026】
レーダー21は、車車間通信装置11が搭載された車両の前方に向けてミリ波を出力すると共に、車両の前方に存在する物体からの反射波を受波する(図2)。
レーダー制御ECU23は、レーダー21を制御すると共に、レーダー21が出力したミリ波が反射波として帰ってくるまでの時間に基づいて、車両の前方に存在する物体までの距離を計測し、その計測結果の情報を車内LAN25に出力する。
【0027】
GPSアンテナ29は、GPS衛星からの電波を受信するアンテナであり、受信信号を全体制御ECU31に出力する。
スピーカー33は、各種の警告音や音声を出力する。表示装置35は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成され、映像を表示する。
【0028】
全体制御ECU31は、GPSアンテナ29からの出力信号から当該車両の位置を算出する。また、車内LAN25から各種の情報を取得すると共に、車内LAN15に接続された各ECUを制御するための情報を車内LAN25に出力する。また、スピーカー33及び表示装置35を制御する。
【0029】
この他、全体制御ECU31は、自車両に関するインフラ情報(詳細後述)を取得すると共に、取得したインフラ情報を通信アンテナ13を介して、周辺に送信するように構成されている。
【0030】
図2には、先述した車車間通信装置11を搭載した車両が走行する様子を示す。図2は、車両A、車両B、車両C、車両D及び車両Eが、片側三車線の道路上を走行している様子を示した図である。ここでは、紙面の下から上に向かって車両が走行しているものとし、車両A、車両B、車両C及び車両Eには、車車間通信装置11が搭載されているものとする。一方、車両Dには、車車間通信装置11が搭載されていないものとする。図2においては、このような前提の下で、車両A、車両B及び車両Cのインフラ情報が、車両Eに向けて送信される様子を示す。
【0031】
次に、図3を用いてインフラ情報の詳細を説明する。図3に示す表は、インフラ情報の具体例である。ここで言うインフラとは、一般的な意味とは少し異なる。ここでは、自車両に搭載された車車間通信装置11以外の他の車車間通信装置11をインフラ(インフラストラクチャ)と定義する。そして、他の車車間通信装置から送信されてくる情報のことを、インフラ情報と言う。また、他車両に送信するために収集した自車両についてのインフラ情報を、自車両のために使うこともある。他車両から送信されてきたのではないけれど、このときもインフラ情報と呼ぶ。
【0032】
図3に示すように、インフラ情報は、各車両に固有な固有情報と、GPSアンテナ29を介して得られるGPS情報と、車内LAN25を介して得られる走行情報とから成る。
固有情報は、各車両に固有なIDである車両IDと、車両の全長×全幅とから成る。これらの情報は、設計時において、全体制御ECU31に予め記憶させておく。
【0033】
また、GPS情報は、緯度・経度と、進行方向と、時刻とから成る。これらの情報は、GPS衛星から得た情報に基づいて、全体制御ECU31が導出する。ちなみに、進行方向は、0度が真北を表し、一周は360度で、時計回りに値が増加する。
【0034】
そして、走行情報は、速さと、ウインカと、ブレーキとの各情報から成る。速さの情報は、車両の速さでスカラー値である。なお、以下で「速度」と言えばベクトルを指す。ウインカの情報は、OFF、右、左、ハザードの四パターンの値をとる。ここで、「OFF」とはウインカが動作していないこと、「右(左)」とは右(左)のウインカが動作していること、「ハザード」とは両方のウインカが動作していることを表す。また、ブレーキ情報とは、フットブレーキ又はサイドブレーキが作動しているか否かを表す情報である。
【0035】
ここで、図4を用いてインフラ情報生成送信処理を説明する。この処理は、全体制御ECU31が主体となって繰り返し実行するものである。この処理を実行することで、自車両のインフラ情報が生成されると共に周囲に送信される。
【0036】
まず、GPSアンテナ29を通じて、GPS衛星から発信される時刻情報と軌道情報を取得する(S110)。そして、取得した軌道情報に基づいて、自車両の現在位置としての緯度・経度および進行方向を求める(S120)。次にLAN25を通じて、自車両の速さの情報、ウインカ情報およびブレーキ情報を取得する(S130)。そして、全体制御ECU31自身が予め記憶している固有情報を読み出す(S140)。最後に、これまでのステップで取得した情報を一組にして、インフラ情報を生成し、これを通信制御ECU15に通信アンテナ13を通じて周囲に送信させて(S150)、この処理を終える。
【0037】
このようにして送信されるインフラ情報を、周囲の車両に搭載された車車間通信装置11の全体制御ECU31は、通信アンテナ13を通じて受信すると共に記憶する。ところで、他車両から取得したインフラ情報を全て記憶する必要はない。例えば、同じ車両から送られてきた情報は最新のもの一つで足りる。また、その車両については最新であっても、十分に時間が経過した古い情報は不要である。
【0038】
そこで、このような不要な情報の整理の仕方について、図5を用いて説明する。図5は、インフラ情報受信更新処理を表すフローチャートである。このインフラ情報受信更新処理は、全体制御ECU31が主体となって、繰り返し実行する処理である。
【0039】
まず、通信アンテナ13を介してインフラ情報を取得したかを判断する(S310)、通信アンテナ13を介してインフラ情報を取得しなかったと判断すると(S310でNo)、S350に進む。
【0040】
一方、通信アンテナ13を介してインフラ情報を取得したと判断すると(S310でYes)、その取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を、自身が既に記憶しているかを判断する(S320)。その取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を、既に記憶していると判断すると(S320でYes)、新たに取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を削除する(S330)。一方、その取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を、記憶していないと判断すると(S320でNo)、削除する対象が無いので何もせず、次に進む。
【0041】
次は、新たに取得したインフラ情報を記憶する(S340)。そして、インフラ情報に含まれる時刻が、現在よりも所定時間以上前のものがあるか否かを判断する(S350)。インフラ情報に含まれる時刻が、現在よりも所定時間以上前のものがあると判断すると(S350でYes)、現在よりも所定時間以上前の時刻を含むインフラ情報を削除して(S360)、インフラ情報受信更新処理を終える。
【0042】
一方、インフラ情報に含まれる時刻が、現在よりも所定時間以上前のものがないと判断すると(S350でNo)、削除する対象が無いので何もせず、インフラ情報受信更新処理を終える。このインフラ情報受信更新処理を繰り返すことで、図3に示したインフラ情報が、全体制御ECU31が備えるメモリ内で、随時、更新されていく。
【0043】
図2に戻る。各車両に搭載された車車間通信装置11が備える全体制御ECU31は、自身を搭載する車車間通信装置11が備えるレーダー21及びレーダー制御ECU23を用いて、前方車両情報を取得するように構成されている。図2には、車両Eが備えるレーダー21の捕捉範囲が示されており、車両A、車両B及び車両Dは、この範囲内に位置する。そして、車両A、車両B及び車両Dに反射したレーダーの情報を、車両Eが備える全体制御ECU311がレーダー21及びレーダー制御ECU23を通じて取得する。
【0044】
また、全体制御ECU31は、独自のxy座標系によって前方車両情報を算出する。この座標系の定義の仕方は以下の通りである。座標中心は自車両の中心、x方向は全幅方向、y方向は全長方向、yの正の向きは車両の前方の向きである。
【0045】
次に、図6を用いて、前方車両情報について説明する。図6は、各車両の前方車両情報をグラフで表したものである。前方車両情報の内容は、前方車両中心のx座標およびy座標、前方車両の自車両に対する相対速度(x方向)及び相対速度(y方向)、並びに、前方車両の自車両に対する相対加速度(x方向)及び相対加速度(y方向)である。そして、これらの情報は時間の関数として値が計算される。つまり、前方車両情報は、現在を中心に、過去から未来に渡って、各前方車両の位置、速度および加速度を推定したものである。
【0046】
なお、以下では、過去の時間帯の前方車両情報を過去値、現在の前方車両情報を現在値、未来の時間帯の前方車両情報を未来値とそれぞれ呼ぶ。また、一定時間にわたりレーダーによって捕捉できなかった車両の情報を破棄するように、全体制御ECU31は構成されている。
【0047】
ここで、図7を用いて、前方車両情報の求め方を説明する。この求め方は、既知なので、簡単に説明する。図7は、前方車両情報の求める際に全体制御ECU31により実現される各機能の関係を表した機能ブロック図である。全体制御ECU31は、この機能ブロック図に示す関係に従って、各機能に対応する演算を実行することで、各車両の前方車両情報を求める。
【0048】
まず、所定の角度間隔で発射した発射波の位相の情報と、各発射波に対応する反射波の位相の情報とをレーダー制御ECU15から得る(FB10・FB20)。そして、発射波を発射した角度毎に、二つの位相の情報から位相差を求めて、レーダー波の飛行時間を求める(FB30)。その飛行時間から発射波を反射した物体までの距離を求める(FB40)。ただし、反射波が微弱で、所定距離内に物体が無いと推測される角度については距離を求めない。
【0049】
そして、角度毎に求められた距離と、過去に求めた位置・速度・加速度の情報とを、所定のフィルタ(カルマンフィルタなど)に入力する(FB50)ことで、レーダー波を反射した物体毎に、現在の位置、速度および加速度、並びに、現在を基点とした未来における予め定められた各時点での物体の位置・速度・加速度を算出する。
【0050】
そして、算出した位置・速度・加速度を、現在を基点とした過去における予め定められた各時点での物体の位置・速度・加速度の情報と組み合わせることで、レーダーを反射した物体毎に、先述した前方車両情報を算出する(FB60)。そして、求めた前方車両情報を、算出した時刻と関連付けて記憶する(FB70)。時刻と関連付けて記憶する理由は、インフラ情報も時刻の情報を持っているので、後の処理で前方車両情報とインフラ情報とを比較などをするときに、時刻の情報が必要だからである。
【0051】
尚、ここで記憶したものが、所定時間経過後にこの機能ブロックを実行するときに、FB50において入力される過去に求めた値として扱われる。なお、この種の技術の詳細については、特開2002−99986や特願2007−210275を参考にされたい。
【0052】
次に、送信処理を説明する。図8は、送信処理を表すフローチャートである。この送信処理は、全体制御ECU31が主体となって実行する処理である。この処理では、インフラ情報を前方車両情報によって補正する。合わせて、補正した情報によって衝突の危険がある車両を特定し、その車両に対して自車両の情報を送信する。
【0053】
また、この処理は、前方車両情報とインフラ情報とをそれぞれ一つ以上は記憶していると、全体制御ECU31自身が判断することを契機に実行開始される。そして、以下の説明における具体例では、車両Eが備える全体制御ECU31が主体となる場合について説明する。
【0054】
まず、各前方車両情報と各インフラ情報とのペアを全通り作った上で、各ペアにおいて、時間の関数である前方車両情報から、インフラ情報の時刻情報と同時刻の情報のみを抽出して、これを処理対象に設定する(S210)。つまり、時間の関数であるレーダー情報から、ある時刻における情報を抽出して、その抽出した情報のみを以下の処理の対象とする。そして、ここではインフラ情報が示す時刻を現在とする。また、この時刻での前方車両情報が示す位置を「レーダー位置」、この時刻での前方車両情報が示す速度を「レーダー速度」、と以下で呼ぶ。
【0055】
S210の処理を具体例で説明する。図2で説明した、車両Eの立場で考えた場合だと、インフラ情報が示す車両は、車両A、車両B、車両Cの三つある。以下、車両Aに対応するインフラ情報をa、車両Bに対応するインフラ情報をb、車両Cに対応するインフラ情報をcと呼ぶ。また、前方車両情報が示す車両が4つあるとして、それぞれx、y、z、wと呼ぶことにする。
【0056】
また、z及びwは、レーダー捕捉範囲に入ってきたばかりで、レーダーによる捕捉回数が少ないとする。ちなみに「発明が解決しようとする課題」で述べたように、このような情報は従来技術によっては信頼度が低いので、車両の情報として出力できない。
【0057】
前方車両情報が示す車両は、x及びyは車両A、zは車両B、wは車両Dである。本来この情報は、後の処理によって、インフラ情報と前方車両情報とを統合することで初めてわかる情報である。しかし、具体例での説明を分かりやすくするために先に述べた。
【0058】
ところで、Aに対応する前方車両情報が2つある。これについて、図9を用いて説明する。図9は、車両Aと車両Eとを横から示した図である。そして、車両Eが備えるレーダー21が発射するレーダー及びその反射波を点線で示してある。図に示すように、車両Aのボデーに大きな段差があると、車両Aが2台であるかのように誤認識することがある。x及びyが車両Aに対応するのは、このような現象によるものである。
【0059】
S210の説明に戻る。インフラ情報と前方車両情報とのペアは、ax、ay、az、aw、bx、by、…といった具合に12通りできる。そして、例えばaxにおいては、aが示す時刻と同時刻におけるxの情報を、このペアにおいては使用する。他のペアにおいても同様にする。
【0060】
次に、それぞれのペアにおいて、自車両と他車両とのインフラ情報に含まれる緯度・経度の情報を基にして、インフラ情報が示す車両の位置を、レーダー位置と同じxy座標系によって表す(S220)。また、ここで求めた位置情報を「インフラ位置」と以下で呼ぶ。
【0061】
そして、レーダー位置とインフラ位置との距離を計算し、その距離が所定の閾値以下のペアがあるかを判断する(S230)。S220及びS230の目的は、どの前方車両情報と、どのインフラ情報とが同じ車両についての情報であるかを特定することにある。
【0062】
計算した距離の差が所定の閾値以下のペアがないと判断すると(S230でNo)、そのまま送信処理を終える。一方、計算した距離の差が所定の閾値以下のペアがあると判断すると(S230でYes)、その計算した距離の差が所定の閾値以下のペア以外のペアの情報を破棄する(S242)。図2の例では、ax、ay、bzがペアになる。そうすると、他のペアの情報はすべて破棄する。
【0063】
この段階で、全体制御ECU31は、x及びyが車両Aに関する情報であり、zが車両Bに関する情報であることを認識することになる。
次に、破棄していないペアについて、各ペアにおけるレーダー位置とインフラ位置との平均を取る(S260)。また、その各ペアにおいて、前方車両情報による速度と、インフラ情報による速度との平均を取る(S265)。前方車両情報による速度は、レーダー速度における相対速度(x方向)と相対速度(y方向)とを合成して算出する。
【0064】
また、インフラ情報による速度については、事前に他車両のインフラ情報を座標変換する必要がある。平均を取るためには、前方車両情報の座標系と一致させる必要があるからである。具体的な方法は、インフラ情報に対応する他車両の速度から自車両の速度を引き算して算出する。このとき、各インフラ情報が示す「速さ」を各速度の大きさ、各インフラ情報が示す「進行方向」を各速度の向きにする。
【0065】
また、S260及びS265の処理において、前方車両情報がより反映されるように重みを付けて、平均を取ってもよい。理由は、前方車両情報の方が信頼度が高いからである。
【0066】
次に、S260で算出された位置に車両を配置するときに、車両同士が所定の面積以上重なるものがあるかを判断する(S270)。ここで言う配置について説明する。この配置とは、鉛直方向の概念を含まない2次元的なものである。つまり、地上を真上から見下ろした図に、車両を近似した長方形を配置することである。
【0067】
この長方形の中心位置は、S260で求めた位置にする。また、長方形の長辺はインフラ情報の「全長」、短辺はインフラ情報の「全幅」にする。さらに、長方形の長辺の向きは、S265で求めた速度の向きにする。このようにして、各ペアについて、車両にみたてた長方形を配置するときに、所定の面積以上の重なりがある長方形同士があるか否かを判断するのが、S270の処理である。
【0068】
S260で算出された位置に車両を配置したときに、車両同士が所定の面積以上重なるかものがあると判断すると(S270でYes)、その車両同士を一つの車両とみなして、所定面積以上重なる各車両についてS260で求めた位置の平均を計算すると共に、所定面積以上重なる各車両についてS265で求めた速度の平均を計算し、さらに、所定面積以上重なる各車両についての前方車両情報に含まれる加速度の平均を計算することで、その一つの車両の位置・速度・加速度を求める(S275)。
【0069】
S275の処理の目的は、誤認識の修正である。先述したように車両Aついては、レーダー21によって得られる情報のみから判断すると、2台の車両であると誤認識してしまう。このようなときに、インフラ情報を活用することで、正しい情報に修正できる。ただ、このときに注意点がある。それは、同じインフラ情報を持つペア同士についてのみ、同一車両とみなすようにする必要がある、ということである。例えば、axとayとの組み合わせは問題ない。しかし、axとbzとの組み合わせ、又は、ayとbzとの組み合わせは、例え距離が近くても、避けなければいけない。なぜなら、インフラ情報が違えば、車両も違うからである。
【0070】
ここまでの処理は現在値を対象にしたものであった。次に、補正処理を行う(S2800)。この補正処理は、先述したフィルタによる処理(FB50)によって求められる位置および速度の未来値を補正する処理である。図6、図7を用いて説明したように、未来値は、過去値や現在値を基にして従来技術によって計算できる。ここまでの処理によって補正された現在値を基に未来値を計算すれば、それだけでも従来技術よりも有利な効果を奏する。本実施例では、さらに、この未来値をインフラ情報に含まれる走行情報によって補正をする。
【0071】
図10を用いて説明する。まず、各前方物体について、前回以前のS2870で求めた値を、FB70に代わる入力値とし、更に、今回のS260の処理で求めた現在位置を、レーダー波の飛行時間から求めた前方車両までの距離として、図7の機能ブロック図で説明したフィルタに改めて入力することで、現在位置、現在速度、及び、未来速度を推定する(S2805)。つまり、この補正処理で対象とするのは、S260〜S275で対象としていたペアであり、単に、先述したレーダーから得られる情報をフィルタに入力して得られる値ではない。
【0072】
なお、S2805では、現在および未来における加速度の情報も得られる。ただし、これ以降の補正処理では加速度の情報を使わないので、加速度については触れない。
そして、推定した現在位置、現在速度、及び、未来速度を、緯線・経線を基準とした位置・速度に変換する(S2807)。具体的には、推定した値を自車両のインフラ情報によって変換する。つまり、自車両の位置としての緯度・経度の情報を用いることで、自車両を基準として求められた前方車両情報における位置を、緯度・経度を基準とした位置に変換する。速度についても同様である。
【0073】
そして、インフラ情報のブレーキ情報がONであるか否かを判断する(S2820)。インフラ情報のブレーキ情報がONであると判断すると(S2820でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの大きさに、1未満の定数(例えば0.8)を乗じて(S2825)、S2860に進む。一方、インフラ情報のブレーキ情報がOFFであると判断すると(S2820でNo)、何もせずS2830に進む。
【0074】
S2830に進むと、インフラ情報のウインカ情報が左であるか否かを判断する。インフラ情報のウインカ情報が左であると判断すると(S2830でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの向きを、左回りに所定角度、回転させ(S2835)、S2860に進む。一方、インフラ情報のウインカ情報が左でないと判断すると(S2830でNo)、何もせず、S2840に進む。
【0075】
S2840に進むと、インフラ情報のウインカ情報が右であるか否かを判断する。インフラ情報のウインカ情報が右であると判断すると(S2840でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの向きを、右回りに所定角度、回転させ(S2845)、S2860に進む。一方、インフラ情報のウインカ情報が右でないと判断すると(S2840でNo)、何もせず、S2850に進む。
【0076】
S2850に進むと、インフラ情報のウインカ情報がハザードであるか否かを判断する。インフラ情報のウインカ情報がハザードであると判断すると(S2850でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの大きさに、1未満の定数(例えば0.8)を乗じて(S2855)、S2860に進む。一方、インフラ情報のウインカ情報がハザードでないと判断すると(S2850でNo)、何もせず、S2860に進む。
【0077】
S2860に進むと、これまでの補正処理で求めた速度及びS2807の処理で求めた位置の現在値に基づいて、未来位置を求める。この求め方を図11を用いて説明する。
図11は、未来速度によって未来位置が求められていく様子を示した図である。また、図11(a)はS2807で求められた未来速度に基づいて未来位置を算出したものである。まず、現在の位置を(x0,y0)、現在の速度を(vx0,vy0)とする。そうすると、微小時間Δt後の位置(x1,y1)は、(x0+vx0・Δt,y0+vy0・Δt)となる。そして、現在から微小時間Δt後の速度を(vx1,vy1)とすると、さらにΔt後の位置は、(x1+vx1・Δt,y1+vy1・Δt)となる。
【0078】
それに対して図11(b)は、S2860で求められた結果を示したものである。また、S2807で求められた未来速度に対して、S2820〜S2855で補正がされたものとする。具体的には、(vx0,vy0)が(vx0’,vy0’)、(vx1,vy1)が(vx1’,vy1’)に補正されたとする。そうすると、現在から微小時間Δt後の位置(x1’,y1’)は、(x0+vx0’・Δt,y0+vy0’・Δt)となる。そして、現在から微小時間Δt後の速度を(vx1’,vy1’)とすると、さらにΔt後の位置は、(x1’+vx1’・Δt,y1’+vy1’・Δt)となる。
【0079】
フローチャートの説明に戻る。これまでの処理で求めた未来位置および未来速度を、自車両を基準とした座標系に変換する(S2870)。つまり、S2807と逆のことをする。具体的には、緯度・経度を基準として求められた自車両および他車両の位置から、自車両を基準とした他車両の位置を求める。速度についても同様である。そして、補正処理を終える。
【0080】
なお、先述したように、S2870で算出される値は、次回以降の補正処理におけるS2805で使用される。つまり、現在値および未来値として求めた値は、時間経過によって過去値に変化するので、それをS2805での過去値として取り扱う。また、加速度の情報は、S2805で算出される値を次回以降のS2805で過去値として取り扱う。
【0081】
補正処理を終え、S290に進むと、各車両について求めた未来の各時刻の位置情報に基づき、所定時間後までの未来における各時刻の自車線確率を算出する。自車線確率の具体的な算出方法は、特開平8−279099に記載されている。そして、S290で算出した自車線確率が所定の閾値以上の車両について、衝突時間を計算する(S293)。
【0082】
衝突時間とは、自車両と対象としている物体とが衝突するまでの時間の予測値である。計算の仕方を説明する。補正処理で求めた未来の各時刻における位置を用いて、現在から単位時間毎に時間を進めていくときに、自車両と前方車両との距離が閾値よりも接近する時刻があるならば、現在からその時刻までを衝突時間として求めることができる。
【0083】
最後に、衝突時間が閾値以下の車両に対して、その車両に対する自車両の相対位置および相対速度を記した危険車両情報を通信制御ECU15および通信アンテナ13を介して送信して(S295)、処理を終える。もし、自車線確率が所定の閾値以上の車両がなかったり、衝突時間が閾値以下の車両がなかったりすれば、S295を実行せずに送信処理を終える。
【0084】
この送信処理の説明を簡単にまとめる。S210〜S275では、インフラ情報が示す車両位置(緯度・経度)、進行方向、及び、速さの情報を、前方車両情報によって補正する。そしてS2800で、その補正した現在値と、ウインカ情報およびブレーキ情報と基づいて、未来値を推定する。そして、衝突時間が閾値以下の車両を、自車両との衝突の危険がある車両として特定し、その車両に対して自車両の速度および位置を、危険車両情報として送信する。
【0085】
そして、送信された危険車両情報の送信先の車両が備える車車間通信装置11が、その危険車両情報を受信すると、報知処理を実行する。そこで、図12を用いて報知処理を説明する。なお、以下で説明する動作が特許請求の範囲に記載した報知手段に対応する。
【0086】
図12は、報知処理を表すフローチャートである。この処理は、危険車両情報を受信したことを契機に、車車間通信装置11が備える全体制御ECU31が主体となって実行するものである。まず、危険車両情報に含まれる位置を、自車両との位置関係が分かるように表示装置35に表示する。具体的には、自車両と危険車両情報に含まれる車両の位置を地図上に示す(S410)。そして、その位置関係の情報をスピーカー33を通じて音声によって報知する(S420)。具体的には、位置関係を八方向に分類して、最も当てはまる方向を選択して報知する。八方向とは、前後左右、並びに、右前、左前、右後ろ、及び、左後ろである。そして、この処理を終える。
【0087】
以上に説明した各処理によって得られる効果は、インフラ情報がより正確になって、その正確になったインフラ情報を基にして、運転支援のための車車間通信が可能になることである。図2の例で説明する。もし、どの車両も車線変更をしないのであれば、車両Eと衝突の可能性があるのは、車両Aだけと考えてよい。従って、もし車両Aと車両Eとの衝突時間が閾値以下であれば、車両Aに向けて自車両の位置および速度の情報を送信する。そして、車両Aが備えるスピーカー33及び表示装置35を通じて、車両Aの運転者に報知する。
【0088】
一方、車両Bの右ウインカが動作しているとする。この場合、車両Bが車両Eと同じ車線に向かって車線変更しようとしていると推測される。この推測に基づいて計算された未来の自車線確率が高くなって閾値を越えたとする。そうすると、車両Bに向けて、自車両の位置および速度の情報を送信する。そして、車両Bが備えるスピーカー33及び表示装置35を通じて、車両Bの運転者に報知する。
【0089】
このような運転支援は、従来の車車間通信装置によっては実現できなかった。なぜなら「発明が解決しようとする課題」で述べたように、GPSによって得られる情報は精度が低く、衝突の危険性を推測するのには使えなかったからである。例えば、同じ車線を走る前方車両に注意喚起の情報を送信したくても、どの車両が同じ車線を走っているのかが分からなかったのである。
【0090】
本実施例では、この課題を前方車両情報の活用で解決した。このようにして、正確な情報に基づいて衝突の危険性がある車両を特定できると共に、その車両に対して自車両の情報を送信できることが、大きな効果を生むことになる。
【0091】
また、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態は、先述した実施例に限られない。例えば、通信装置を携帯電話としてもよい。この場合、レーダーの捕捉対象としては、人、自転車、バイク、四輪自動車などが考えられる。そして、車両に搭載された車車間通信装置11は、衝突の危険があると判断すると、その携帯電話に注意喚起の情報を送信する。情報を受信した携帯電話は、画面およびスピーカーを通じてユーザにその注意喚起の情報を報知する。
【0092】
このように構成されれば、携帯電話のユーザが交通事故にあう危険を減らすことができる。なぜなら、携帯電話の画面を注視していたり、会話に気を取られていたりして、携帯電話のユーザが衝突の危険に気づかないことがあるからである。本発明は、そのような状況が原因の交通事故を予防するのに有効である。
【0093】
最後に、特許請求の範囲と実施例との関係を説明する。ただし自明なものについては説明を省く。解析手段はFB10からFB70、認識手段はS210〜S242、位置補正手段はS260、位置推定手段はS2800、特定手段はS290及びS293、によってそれぞれ実現される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明が適用された車車間通信装置11の概略構成を示すブロック図である。
【図2】車両が走行すると共に、その車両に搭載された車車間通信装置11が情報をやり取りする様子を表した図である。
【図3】インフラ情報の具体例を示す表である。
【図4】インフラ情報生成送信処理を表すフローチャートである。
【図5】インフラ情報受信更新処理を表すフローチャートである。
【図6】前方車両情報を表すグラフである。
【図7】前方車両情報の求め方を表す機能ブロック図である。
【図8】送信処理を表すフローチャートである。
【図9】レーダーによる情報によって誤認識する様子を表す図である。
【図10】補正処理を表すフローチャートである。
【図11】未来位置が補正される様子を表す図である。
【図12】報知処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
11…車車間通信装置、13…通信アンテナ、15…通信制御ECU、21…レーダー、23…レーダー制御ECU、25…LAN、29…GPSアンテナ、31…全体制御ECU、33…スピーカー、35…表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を認識するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両周辺の他車両の位置情報を、その他車両が備える通信機から得て、ユーザに報知するシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。このシステムは、GPS(Global Positioning System)から得られる情報に基づいて各車両が自らの位置を測定して、その位置情報を利用する。
【特許文献1】特開2005−301581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
先述した技術の課題は、他の車両から得た情報は、必ず誤差を含むので、活用できる用途が限られてしまうということである。その理由は、それぞれが測定した位置情報を照合して得られる情報には、大きな誤差が含まれるからである。さらに、GPSから得られる情報そのものにも誤差が含まれている。これらの誤差は、車両のサイズに対して無視できない大きさである。
【0004】
本発明は、先述した課題を鑑み、他の通信装置から送信されてくる位置情報の精度を高めて、その通信装置の位置を正確に認識できる認識システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
先述した課題を解決するためになされた請求項1に記載の認識システムは、通信装置と認識装置とを備える。この認識システムには、通信装置が一つまたは複数設けられている。そして、通信装置は、自身の現在の位置情報を無線によって周辺に送信する第一通信手段を備える。
【0006】
認識装置は、第二通信手段と、解析手段と、位置取得手段と、認識手段と、位置補正手段と、を備える。第二通信手段は、通信装置が備える第一通信手段によって送信される位置情報を受信可能なものである。
【0007】
解析手段は、レーダー波を発射し、このレーダー波が単数または複数の物体に反射して戻ってくる反射波の受波結果に基づいて、単数の物体の位置または複数の物体の各位置を求める。一方、位置取得手段は、当該認識装置の現在位置情報を取得する。
【0008】
認識手段は、解析手段の解析結果と、第二通信手段が受信した位置情報と、位置取得手段の取得結果とに基づいて、解析手段によって位置が求められた物体のうち、通信装置を搭載していると推定される物体を、周辺装置として認識する。
【0009】
位置補正手段は、位置取得手段の取得結果と、解析手段の解析結果とに基づいて、第二通信手段が受信した周辺装置の位置情報を補正する。
請求項1に記載された認識システムによれば、認識装置において、レーダーによる捕捉範囲内に存在する通信装置を搭載する物体の位置を正確に取得できる。なぜなら、通信によって得られた情報を、レーダーによって得られた情報で補正するからである。従って、従来よりも、正確に周辺装置の位置を認識できる。
【0010】
ところで、このような効果は、レーダーによって得られた情報のみによっては得られない。なぜなら、レーダーによって得られた情報からは、レーダーを反射したものが何であるかを認識するのが難しいからである。つまり当該認識システムが認識の対象としている周辺装置以外のものであっても、レーダー波を反射し得る物体であれば、解析手段が解析の対象としてしまう。そのために、得られた情報から物体を推測するような処理などが必要である。しかし、このような処理を行ったとしても、その物体が何であるかは、当然ながら推測の域を出ない。
【0011】
それに対して本発明は、通信装置を備えた周辺物体であることを通信によって確実に認識しつつ、その位置をレーダーによって得られる情報で補正する。これによって、先述した特有の効果が得られる。
【0012】
ところで、請求項1に記載の認識システムは、請求項2に記載のように構成されるとよい。請求項2に記載の認識システムが備える認識装置は、移動体に搭載される。また、この認識装置は、認識手段が認識した周辺装置のうち、自装置が搭載された移動体に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する特定手段を備える。
【0013】
また、認識装置が備える第二通信手段は、特定手段によって特定された周辺装置が備える通信装置に対して、当該認識装置が搭載された移動体の存在情報を無線によって送信するように構成される。そして、通信装置が備える第一通信手段は、認識装置が備える第二通信手段から送信されてくる存在情報を、無線によって受信可能に構成されている。
【0014】
請求項2に記載された認識システムによれば、通信装置は、衝突の危険性がある移動体の存在を知ることができる。通信装置が衝突の危険を知ることができれば、その通信装置は受信した存在情報を利用して、例えば、衝突を回避するような処理を実行できる。
【0015】
請求項2に記載の認識システムは、請求項3に記載のように構成されるとよい。請求項3に記載の認識システムは、認識装置が、車両に搭載されたものである。そして、認識装置は、位置推定手段と、自車線確率算出手段とを備える。
【0016】
位置推定手段は、位置補正手段が補正した位置情報に基づいて、自車両に対する周辺装置の未来における位置を推定する。また、自車線確率算出手段は、位置推定手段によって推定された周辺装置の未来における位置に基づき、未来において、自車両と周辺装置とが同一車線に位置する確率である自車線確率を算出する。そして、特定手段は、自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、車両に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する。
【0017】
請求項3に記載された認識システムによれば、衝突の危険性を定量的に算出できる。認識装置が車両に搭載されているので、衝突の危険が高いのは、同じ車線上に位置する物体である。そこで、周辺装置の自車線確率に基づいて、衝突の危険性を判断する。従って、より正確な判断に基づいて、認識装置が自身の存在情報を送信できる。
【0018】
なお自車線確率とは、自車両と前方車両とが同じ車線に位置する確率である。
請求項3に記載の認識システムは、請求項4に記載のように構成されるとよい。特定手段は、位置推定手段の推定結果及び自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、自車両との距離が所定閾値以内に接近する周辺装置であって、自車線確率算出手段によって算出された自車線確率が閾値以上である周辺装置を、車両に対して衝突する危険性がある周辺装置として特定する。
【0019】
請求項4に記載された認識システムによれば、衝突の危険性をより定量的に算出できる。
請求項2〜請求項4の何れかに記載の認識システムは、請求項5に記載のように構成されるとよい。請求項5に記載の認識システムが備える通信装置は、報知手段を備える。この報知手段は、第一通信手段が受信した存在情報に基づいて、存在情報を送信した第二通信手段を備える移動体の存在を、自装置のユーザに向けて報知する。
【0020】
請求項5に記載された認識システムによれば、周辺装置としての通信装置のユーザが、自身に衝突の危険がある車両の存在を知ることができる。従って、そのユーザは、危険を回避する行動を取りやすくなり、安全性が増す。
【0021】
請求項5に記載の認識システムは、請求項6に記載のように構成されるとよい。請求項6に記載の認識システムにおいては、存在情報が、当該存在情報を送信する第二通信手段を備える移動体の位置の情報を含むものである。そして、報知手段は、画像および音の少なくとも一方によって、自装置のユーザに向けて移動体の位置を報知する。
【0022】
請求項6に記載された認識システムによれば、通信装置のユーザが、画像および音の両方または一方によって、衝突の危険がある車両の存在と位置とを確認できる。それによって、そのユーザが危険をより一層に認識でき、その危険を回避する行動を取りやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面と共に説明する。図1は、車両に搭載されて用いられる車車間通信装置11の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、車車間通信装置11は、通信アンテナ13と、通信制御ECU15と、レーダー21と、レーダー制御ECU23と、車内LAN25と、GPSアンテナ29と、全体制御ECU31と、スピーカー33と、表示装置35と、を備える。
【0024】
通信アンテナ13は、他の車車間通信装置11と通信を行うための電波を送受信するアンテナであり、通信制御ECU15によって制御される。通信アンテナ13からは、到達距離が数十mから数百m程度になるような電波が出力される。
【0025】
通信制御ECU15は、車内LAN25から受け取ったデータに基づいて送信信号を生成すると共に通信アンテナ13に電波として送信させ、他の車両に搭載された車車間通信装置11にデータを送信する。また、通信制御ECU15は、他の車両に搭載された車車間通信装置11から発せられると共に通信アンテナ13によって受信された電波に基づいてデータを復元し、車内LAN25に出力する。
【0026】
レーダー21は、車車間通信装置11が搭載された車両の前方に向けてミリ波を出力すると共に、車両の前方に存在する物体からの反射波を受波する(図2)。
レーダー制御ECU23は、レーダー21を制御すると共に、レーダー21が出力したミリ波が反射波として帰ってくるまでの時間に基づいて、車両の前方に存在する物体までの距離を計測し、その計測結果の情報を車内LAN25に出力する。
【0027】
GPSアンテナ29は、GPS衛星からの電波を受信するアンテナであり、受信信号を全体制御ECU31に出力する。
スピーカー33は、各種の警告音や音声を出力する。表示装置35は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成され、映像を表示する。
【0028】
全体制御ECU31は、GPSアンテナ29からの出力信号から当該車両の位置を算出する。また、車内LAN25から各種の情報を取得すると共に、車内LAN15に接続された各ECUを制御するための情報を車内LAN25に出力する。また、スピーカー33及び表示装置35を制御する。
【0029】
この他、全体制御ECU31は、自車両に関するインフラ情報(詳細後述)を取得すると共に、取得したインフラ情報を通信アンテナ13を介して、周辺に送信するように構成されている。
【0030】
図2には、先述した車車間通信装置11を搭載した車両が走行する様子を示す。図2は、車両A、車両B、車両C、車両D及び車両Eが、片側三車線の道路上を走行している様子を示した図である。ここでは、紙面の下から上に向かって車両が走行しているものとし、車両A、車両B、車両C及び車両Eには、車車間通信装置11が搭載されているものとする。一方、車両Dには、車車間通信装置11が搭載されていないものとする。図2においては、このような前提の下で、車両A、車両B及び車両Cのインフラ情報が、車両Eに向けて送信される様子を示す。
【0031】
次に、図3を用いてインフラ情報の詳細を説明する。図3に示す表は、インフラ情報の具体例である。ここで言うインフラとは、一般的な意味とは少し異なる。ここでは、自車両に搭載された車車間通信装置11以外の他の車車間通信装置11をインフラ(インフラストラクチャ)と定義する。そして、他の車車間通信装置から送信されてくる情報のことを、インフラ情報と言う。また、他車両に送信するために収集した自車両についてのインフラ情報を、自車両のために使うこともある。他車両から送信されてきたのではないけれど、このときもインフラ情報と呼ぶ。
【0032】
図3に示すように、インフラ情報は、各車両に固有な固有情報と、GPSアンテナ29を介して得られるGPS情報と、車内LAN25を介して得られる走行情報とから成る。
固有情報は、各車両に固有なIDである車両IDと、車両の全長×全幅とから成る。これらの情報は、設計時において、全体制御ECU31に予め記憶させておく。
【0033】
また、GPS情報は、緯度・経度と、進行方向と、時刻とから成る。これらの情報は、GPS衛星から得た情報に基づいて、全体制御ECU31が導出する。ちなみに、進行方向は、0度が真北を表し、一周は360度で、時計回りに値が増加する。
【0034】
そして、走行情報は、速さと、ウインカと、ブレーキとの各情報から成る。速さの情報は、車両の速さでスカラー値である。なお、以下で「速度」と言えばベクトルを指す。ウインカの情報は、OFF、右、左、ハザードの四パターンの値をとる。ここで、「OFF」とはウインカが動作していないこと、「右(左)」とは右(左)のウインカが動作していること、「ハザード」とは両方のウインカが動作していることを表す。また、ブレーキ情報とは、フットブレーキ又はサイドブレーキが作動しているか否かを表す情報である。
【0035】
ここで、図4を用いてインフラ情報生成送信処理を説明する。この処理は、全体制御ECU31が主体となって繰り返し実行するものである。この処理を実行することで、自車両のインフラ情報が生成されると共に周囲に送信される。
【0036】
まず、GPSアンテナ29を通じて、GPS衛星から発信される時刻情報と軌道情報を取得する(S110)。そして、取得した軌道情報に基づいて、自車両の現在位置としての緯度・経度および進行方向を求める(S120)。次にLAN25を通じて、自車両の速さの情報、ウインカ情報およびブレーキ情報を取得する(S130)。そして、全体制御ECU31自身が予め記憶している固有情報を読み出す(S140)。最後に、これまでのステップで取得した情報を一組にして、インフラ情報を生成し、これを通信制御ECU15に通信アンテナ13を通じて周囲に送信させて(S150)、この処理を終える。
【0037】
このようにして送信されるインフラ情報を、周囲の車両に搭載された車車間通信装置11の全体制御ECU31は、通信アンテナ13を通じて受信すると共に記憶する。ところで、他車両から取得したインフラ情報を全て記憶する必要はない。例えば、同じ車両から送られてきた情報は最新のもの一つで足りる。また、その車両については最新であっても、十分に時間が経過した古い情報は不要である。
【0038】
そこで、このような不要な情報の整理の仕方について、図5を用いて説明する。図5は、インフラ情報受信更新処理を表すフローチャートである。このインフラ情報受信更新処理は、全体制御ECU31が主体となって、繰り返し実行する処理である。
【0039】
まず、通信アンテナ13を介してインフラ情報を取得したかを判断する(S310)、通信アンテナ13を介してインフラ情報を取得しなかったと判断すると(S310でNo)、S350に進む。
【0040】
一方、通信アンテナ13を介してインフラ情報を取得したと判断すると(S310でYes)、その取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を、自身が既に記憶しているかを判断する(S320)。その取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を、既に記憶していると判断すると(S320でYes)、新たに取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を削除する(S330)。一方、その取得したインフラ情報が含む車両IDと同一の車両IDを含むインフラ情報を、記憶していないと判断すると(S320でNo)、削除する対象が無いので何もせず、次に進む。
【0041】
次は、新たに取得したインフラ情報を記憶する(S340)。そして、インフラ情報に含まれる時刻が、現在よりも所定時間以上前のものがあるか否かを判断する(S350)。インフラ情報に含まれる時刻が、現在よりも所定時間以上前のものがあると判断すると(S350でYes)、現在よりも所定時間以上前の時刻を含むインフラ情報を削除して(S360)、インフラ情報受信更新処理を終える。
【0042】
一方、インフラ情報に含まれる時刻が、現在よりも所定時間以上前のものがないと判断すると(S350でNo)、削除する対象が無いので何もせず、インフラ情報受信更新処理を終える。このインフラ情報受信更新処理を繰り返すことで、図3に示したインフラ情報が、全体制御ECU31が備えるメモリ内で、随時、更新されていく。
【0043】
図2に戻る。各車両に搭載された車車間通信装置11が備える全体制御ECU31は、自身を搭載する車車間通信装置11が備えるレーダー21及びレーダー制御ECU23を用いて、前方車両情報を取得するように構成されている。図2には、車両Eが備えるレーダー21の捕捉範囲が示されており、車両A、車両B及び車両Dは、この範囲内に位置する。そして、車両A、車両B及び車両Dに反射したレーダーの情報を、車両Eが備える全体制御ECU311がレーダー21及びレーダー制御ECU23を通じて取得する。
【0044】
また、全体制御ECU31は、独自のxy座標系によって前方車両情報を算出する。この座標系の定義の仕方は以下の通りである。座標中心は自車両の中心、x方向は全幅方向、y方向は全長方向、yの正の向きは車両の前方の向きである。
【0045】
次に、図6を用いて、前方車両情報について説明する。図6は、各車両の前方車両情報をグラフで表したものである。前方車両情報の内容は、前方車両中心のx座標およびy座標、前方車両の自車両に対する相対速度(x方向)及び相対速度(y方向)、並びに、前方車両の自車両に対する相対加速度(x方向)及び相対加速度(y方向)である。そして、これらの情報は時間の関数として値が計算される。つまり、前方車両情報は、現在を中心に、過去から未来に渡って、各前方車両の位置、速度および加速度を推定したものである。
【0046】
なお、以下では、過去の時間帯の前方車両情報を過去値、現在の前方車両情報を現在値、未来の時間帯の前方車両情報を未来値とそれぞれ呼ぶ。また、一定時間にわたりレーダーによって捕捉できなかった車両の情報を破棄するように、全体制御ECU31は構成されている。
【0047】
ここで、図7を用いて、前方車両情報の求め方を説明する。この求め方は、既知なので、簡単に説明する。図7は、前方車両情報の求める際に全体制御ECU31により実現される各機能の関係を表した機能ブロック図である。全体制御ECU31は、この機能ブロック図に示す関係に従って、各機能に対応する演算を実行することで、各車両の前方車両情報を求める。
【0048】
まず、所定の角度間隔で発射した発射波の位相の情報と、各発射波に対応する反射波の位相の情報とをレーダー制御ECU15から得る(FB10・FB20)。そして、発射波を発射した角度毎に、二つの位相の情報から位相差を求めて、レーダー波の飛行時間を求める(FB30)。その飛行時間から発射波を反射した物体までの距離を求める(FB40)。ただし、反射波が微弱で、所定距離内に物体が無いと推測される角度については距離を求めない。
【0049】
そして、角度毎に求められた距離と、過去に求めた位置・速度・加速度の情報とを、所定のフィルタ(カルマンフィルタなど)に入力する(FB50)ことで、レーダー波を反射した物体毎に、現在の位置、速度および加速度、並びに、現在を基点とした未来における予め定められた各時点での物体の位置・速度・加速度を算出する。
【0050】
そして、算出した位置・速度・加速度を、現在を基点とした過去における予め定められた各時点での物体の位置・速度・加速度の情報と組み合わせることで、レーダーを反射した物体毎に、先述した前方車両情報を算出する(FB60)。そして、求めた前方車両情報を、算出した時刻と関連付けて記憶する(FB70)。時刻と関連付けて記憶する理由は、インフラ情報も時刻の情報を持っているので、後の処理で前方車両情報とインフラ情報とを比較などをするときに、時刻の情報が必要だからである。
【0051】
尚、ここで記憶したものが、所定時間経過後にこの機能ブロックを実行するときに、FB50において入力される過去に求めた値として扱われる。なお、この種の技術の詳細については、特開2002−99986や特願2007−210275を参考にされたい。
【0052】
次に、送信処理を説明する。図8は、送信処理を表すフローチャートである。この送信処理は、全体制御ECU31が主体となって実行する処理である。この処理では、インフラ情報を前方車両情報によって補正する。合わせて、補正した情報によって衝突の危険がある車両を特定し、その車両に対して自車両の情報を送信する。
【0053】
また、この処理は、前方車両情報とインフラ情報とをそれぞれ一つ以上は記憶していると、全体制御ECU31自身が判断することを契機に実行開始される。そして、以下の説明における具体例では、車両Eが備える全体制御ECU31が主体となる場合について説明する。
【0054】
まず、各前方車両情報と各インフラ情報とのペアを全通り作った上で、各ペアにおいて、時間の関数である前方車両情報から、インフラ情報の時刻情報と同時刻の情報のみを抽出して、これを処理対象に設定する(S210)。つまり、時間の関数であるレーダー情報から、ある時刻における情報を抽出して、その抽出した情報のみを以下の処理の対象とする。そして、ここではインフラ情報が示す時刻を現在とする。また、この時刻での前方車両情報が示す位置を「レーダー位置」、この時刻での前方車両情報が示す速度を「レーダー速度」、と以下で呼ぶ。
【0055】
S210の処理を具体例で説明する。図2で説明した、車両Eの立場で考えた場合だと、インフラ情報が示す車両は、車両A、車両B、車両Cの三つある。以下、車両Aに対応するインフラ情報をa、車両Bに対応するインフラ情報をb、車両Cに対応するインフラ情報をcと呼ぶ。また、前方車両情報が示す車両が4つあるとして、それぞれx、y、z、wと呼ぶことにする。
【0056】
また、z及びwは、レーダー捕捉範囲に入ってきたばかりで、レーダーによる捕捉回数が少ないとする。ちなみに「発明が解決しようとする課題」で述べたように、このような情報は従来技術によっては信頼度が低いので、車両の情報として出力できない。
【0057】
前方車両情報が示す車両は、x及びyは車両A、zは車両B、wは車両Dである。本来この情報は、後の処理によって、インフラ情報と前方車両情報とを統合することで初めてわかる情報である。しかし、具体例での説明を分かりやすくするために先に述べた。
【0058】
ところで、Aに対応する前方車両情報が2つある。これについて、図9を用いて説明する。図9は、車両Aと車両Eとを横から示した図である。そして、車両Eが備えるレーダー21が発射するレーダー及びその反射波を点線で示してある。図に示すように、車両Aのボデーに大きな段差があると、車両Aが2台であるかのように誤認識することがある。x及びyが車両Aに対応するのは、このような現象によるものである。
【0059】
S210の説明に戻る。インフラ情報と前方車両情報とのペアは、ax、ay、az、aw、bx、by、…といった具合に12通りできる。そして、例えばaxにおいては、aが示す時刻と同時刻におけるxの情報を、このペアにおいては使用する。他のペアにおいても同様にする。
【0060】
次に、それぞれのペアにおいて、自車両と他車両とのインフラ情報に含まれる緯度・経度の情報を基にして、インフラ情報が示す車両の位置を、レーダー位置と同じxy座標系によって表す(S220)。また、ここで求めた位置情報を「インフラ位置」と以下で呼ぶ。
【0061】
そして、レーダー位置とインフラ位置との距離を計算し、その距離が所定の閾値以下のペアがあるかを判断する(S230)。S220及びS230の目的は、どの前方車両情報と、どのインフラ情報とが同じ車両についての情報であるかを特定することにある。
【0062】
計算した距離の差が所定の閾値以下のペアがないと判断すると(S230でNo)、そのまま送信処理を終える。一方、計算した距離の差が所定の閾値以下のペアがあると判断すると(S230でYes)、その計算した距離の差が所定の閾値以下のペア以外のペアの情報を破棄する(S242)。図2の例では、ax、ay、bzがペアになる。そうすると、他のペアの情報はすべて破棄する。
【0063】
この段階で、全体制御ECU31は、x及びyが車両Aに関する情報であり、zが車両Bに関する情報であることを認識することになる。
次に、破棄していないペアについて、各ペアにおけるレーダー位置とインフラ位置との平均を取る(S260)。また、その各ペアにおいて、前方車両情報による速度と、インフラ情報による速度との平均を取る(S265)。前方車両情報による速度は、レーダー速度における相対速度(x方向)と相対速度(y方向)とを合成して算出する。
【0064】
また、インフラ情報による速度については、事前に他車両のインフラ情報を座標変換する必要がある。平均を取るためには、前方車両情報の座標系と一致させる必要があるからである。具体的な方法は、インフラ情報に対応する他車両の速度から自車両の速度を引き算して算出する。このとき、各インフラ情報が示す「速さ」を各速度の大きさ、各インフラ情報が示す「進行方向」を各速度の向きにする。
【0065】
また、S260及びS265の処理において、前方車両情報がより反映されるように重みを付けて、平均を取ってもよい。理由は、前方車両情報の方が信頼度が高いからである。
【0066】
次に、S260で算出された位置に車両を配置するときに、車両同士が所定の面積以上重なるものがあるかを判断する(S270)。ここで言う配置について説明する。この配置とは、鉛直方向の概念を含まない2次元的なものである。つまり、地上を真上から見下ろした図に、車両を近似した長方形を配置することである。
【0067】
この長方形の中心位置は、S260で求めた位置にする。また、長方形の長辺はインフラ情報の「全長」、短辺はインフラ情報の「全幅」にする。さらに、長方形の長辺の向きは、S265で求めた速度の向きにする。このようにして、各ペアについて、車両にみたてた長方形を配置するときに、所定の面積以上の重なりがある長方形同士があるか否かを判断するのが、S270の処理である。
【0068】
S260で算出された位置に車両を配置したときに、車両同士が所定の面積以上重なるかものがあると判断すると(S270でYes)、その車両同士を一つの車両とみなして、所定面積以上重なる各車両についてS260で求めた位置の平均を計算すると共に、所定面積以上重なる各車両についてS265で求めた速度の平均を計算し、さらに、所定面積以上重なる各車両についての前方車両情報に含まれる加速度の平均を計算することで、その一つの車両の位置・速度・加速度を求める(S275)。
【0069】
S275の処理の目的は、誤認識の修正である。先述したように車両Aついては、レーダー21によって得られる情報のみから判断すると、2台の車両であると誤認識してしまう。このようなときに、インフラ情報を活用することで、正しい情報に修正できる。ただ、このときに注意点がある。それは、同じインフラ情報を持つペア同士についてのみ、同一車両とみなすようにする必要がある、ということである。例えば、axとayとの組み合わせは問題ない。しかし、axとbzとの組み合わせ、又は、ayとbzとの組み合わせは、例え距離が近くても、避けなければいけない。なぜなら、インフラ情報が違えば、車両も違うからである。
【0070】
ここまでの処理は現在値を対象にしたものであった。次に、補正処理を行う(S2800)。この補正処理は、先述したフィルタによる処理(FB50)によって求められる位置および速度の未来値を補正する処理である。図6、図7を用いて説明したように、未来値は、過去値や現在値を基にして従来技術によって計算できる。ここまでの処理によって補正された現在値を基に未来値を計算すれば、それだけでも従来技術よりも有利な効果を奏する。本実施例では、さらに、この未来値をインフラ情報に含まれる走行情報によって補正をする。
【0071】
図10を用いて説明する。まず、各前方物体について、前回以前のS2870で求めた値を、FB70に代わる入力値とし、更に、今回のS260の処理で求めた現在位置を、レーダー波の飛行時間から求めた前方車両までの距離として、図7の機能ブロック図で説明したフィルタに改めて入力することで、現在位置、現在速度、及び、未来速度を推定する(S2805)。つまり、この補正処理で対象とするのは、S260〜S275で対象としていたペアであり、単に、先述したレーダーから得られる情報をフィルタに入力して得られる値ではない。
【0072】
なお、S2805では、現在および未来における加速度の情報も得られる。ただし、これ以降の補正処理では加速度の情報を使わないので、加速度については触れない。
そして、推定した現在位置、現在速度、及び、未来速度を、緯線・経線を基準とした位置・速度に変換する(S2807)。具体的には、推定した値を自車両のインフラ情報によって変換する。つまり、自車両の位置としての緯度・経度の情報を用いることで、自車両を基準として求められた前方車両情報における位置を、緯度・経度を基準とした位置に変換する。速度についても同様である。
【0073】
そして、インフラ情報のブレーキ情報がONであるか否かを判断する(S2820)。インフラ情報のブレーキ情報がONであると判断すると(S2820でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの大きさに、1未満の定数(例えば0.8)を乗じて(S2825)、S2860に進む。一方、インフラ情報のブレーキ情報がOFFであると判断すると(S2820でNo)、何もせずS2830に進む。
【0074】
S2830に進むと、インフラ情報のウインカ情報が左であるか否かを判断する。インフラ情報のウインカ情報が左であると判断すると(S2830でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの向きを、左回りに所定角度、回転させ(S2835)、S2860に進む。一方、インフラ情報のウインカ情報が左でないと判断すると(S2830でNo)、何もせず、S2840に進む。
【0075】
S2840に進むと、インフラ情報のウインカ情報が右であるか否かを判断する。インフラ情報のウインカ情報が右であると判断すると(S2840でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの向きを、右回りに所定角度、回転させ(S2845)、S2860に進む。一方、インフラ情報のウインカ情報が右でないと判断すると(S2840でNo)、何もせず、S2850に進む。
【0076】
S2850に進むと、インフラ情報のウインカ情報がハザードであるか否かを判断する。インフラ情報のウインカ情報がハザードであると判断すると(S2850でYes)、これまでに求めた未来速度のベクトルの大きさに、1未満の定数(例えば0.8)を乗じて(S2855)、S2860に進む。一方、インフラ情報のウインカ情報がハザードでないと判断すると(S2850でNo)、何もせず、S2860に進む。
【0077】
S2860に進むと、これまでの補正処理で求めた速度及びS2807の処理で求めた位置の現在値に基づいて、未来位置を求める。この求め方を図11を用いて説明する。
図11は、未来速度によって未来位置が求められていく様子を示した図である。また、図11(a)はS2807で求められた未来速度に基づいて未来位置を算出したものである。まず、現在の位置を(x0,y0)、現在の速度を(vx0,vy0)とする。そうすると、微小時間Δt後の位置(x1,y1)は、(x0+vx0・Δt,y0+vy0・Δt)となる。そして、現在から微小時間Δt後の速度を(vx1,vy1)とすると、さらにΔt後の位置は、(x1+vx1・Δt,y1+vy1・Δt)となる。
【0078】
それに対して図11(b)は、S2860で求められた結果を示したものである。また、S2807で求められた未来速度に対して、S2820〜S2855で補正がされたものとする。具体的には、(vx0,vy0)が(vx0’,vy0’)、(vx1,vy1)が(vx1’,vy1’)に補正されたとする。そうすると、現在から微小時間Δt後の位置(x1’,y1’)は、(x0+vx0’・Δt,y0+vy0’・Δt)となる。そして、現在から微小時間Δt後の速度を(vx1’,vy1’)とすると、さらにΔt後の位置は、(x1’+vx1’・Δt,y1’+vy1’・Δt)となる。
【0079】
フローチャートの説明に戻る。これまでの処理で求めた未来位置および未来速度を、自車両を基準とした座標系に変換する(S2870)。つまり、S2807と逆のことをする。具体的には、緯度・経度を基準として求められた自車両および他車両の位置から、自車両を基準とした他車両の位置を求める。速度についても同様である。そして、補正処理を終える。
【0080】
なお、先述したように、S2870で算出される値は、次回以降の補正処理におけるS2805で使用される。つまり、現在値および未来値として求めた値は、時間経過によって過去値に変化するので、それをS2805での過去値として取り扱う。また、加速度の情報は、S2805で算出される値を次回以降のS2805で過去値として取り扱う。
【0081】
補正処理を終え、S290に進むと、各車両について求めた未来の各時刻の位置情報に基づき、所定時間後までの未来における各時刻の自車線確率を算出する。自車線確率の具体的な算出方法は、特開平8−279099に記載されている。そして、S290で算出した自車線確率が所定の閾値以上の車両について、衝突時間を計算する(S293)。
【0082】
衝突時間とは、自車両と対象としている物体とが衝突するまでの時間の予測値である。計算の仕方を説明する。補正処理で求めた未来の各時刻における位置を用いて、現在から単位時間毎に時間を進めていくときに、自車両と前方車両との距離が閾値よりも接近する時刻があるならば、現在からその時刻までを衝突時間として求めることができる。
【0083】
最後に、衝突時間が閾値以下の車両に対して、その車両に対する自車両の相対位置および相対速度を記した危険車両情報を通信制御ECU15および通信アンテナ13を介して送信して(S295)、処理を終える。もし、自車線確率が所定の閾値以上の車両がなかったり、衝突時間が閾値以下の車両がなかったりすれば、S295を実行せずに送信処理を終える。
【0084】
この送信処理の説明を簡単にまとめる。S210〜S275では、インフラ情報が示す車両位置(緯度・経度)、進行方向、及び、速さの情報を、前方車両情報によって補正する。そしてS2800で、その補正した現在値と、ウインカ情報およびブレーキ情報と基づいて、未来値を推定する。そして、衝突時間が閾値以下の車両を、自車両との衝突の危険がある車両として特定し、その車両に対して自車両の速度および位置を、危険車両情報として送信する。
【0085】
そして、送信された危険車両情報の送信先の車両が備える車車間通信装置11が、その危険車両情報を受信すると、報知処理を実行する。そこで、図12を用いて報知処理を説明する。なお、以下で説明する動作が特許請求の範囲に記載した報知手段に対応する。
【0086】
図12は、報知処理を表すフローチャートである。この処理は、危険車両情報を受信したことを契機に、車車間通信装置11が備える全体制御ECU31が主体となって実行するものである。まず、危険車両情報に含まれる位置を、自車両との位置関係が分かるように表示装置35に表示する。具体的には、自車両と危険車両情報に含まれる車両の位置を地図上に示す(S410)。そして、その位置関係の情報をスピーカー33を通じて音声によって報知する(S420)。具体的には、位置関係を八方向に分類して、最も当てはまる方向を選択して報知する。八方向とは、前後左右、並びに、右前、左前、右後ろ、及び、左後ろである。そして、この処理を終える。
【0087】
以上に説明した各処理によって得られる効果は、インフラ情報がより正確になって、その正確になったインフラ情報を基にして、運転支援のための車車間通信が可能になることである。図2の例で説明する。もし、どの車両も車線変更をしないのであれば、車両Eと衝突の可能性があるのは、車両Aだけと考えてよい。従って、もし車両Aと車両Eとの衝突時間が閾値以下であれば、車両Aに向けて自車両の位置および速度の情報を送信する。そして、車両Aが備えるスピーカー33及び表示装置35を通じて、車両Aの運転者に報知する。
【0088】
一方、車両Bの右ウインカが動作しているとする。この場合、車両Bが車両Eと同じ車線に向かって車線変更しようとしていると推測される。この推測に基づいて計算された未来の自車線確率が高くなって閾値を越えたとする。そうすると、車両Bに向けて、自車両の位置および速度の情報を送信する。そして、車両Bが備えるスピーカー33及び表示装置35を通じて、車両Bの運転者に報知する。
【0089】
このような運転支援は、従来の車車間通信装置によっては実現できなかった。なぜなら「発明が解決しようとする課題」で述べたように、GPSによって得られる情報は精度が低く、衝突の危険性を推測するのには使えなかったからである。例えば、同じ車線を走る前方車両に注意喚起の情報を送信したくても、どの車両が同じ車線を走っているのかが分からなかったのである。
【0090】
本実施例では、この課題を前方車両情報の活用で解決した。このようにして、正確な情報に基づいて衝突の危険性がある車両を特定できると共に、その車両に対して自車両の情報を送信できることが、大きな効果を生むことになる。
【0091】
また、特許請求の範囲に記載された発明の実施形態は、先述した実施例に限られない。例えば、通信装置を携帯電話としてもよい。この場合、レーダーの捕捉対象としては、人、自転車、バイク、四輪自動車などが考えられる。そして、車両に搭載された車車間通信装置11は、衝突の危険があると判断すると、その携帯電話に注意喚起の情報を送信する。情報を受信した携帯電話は、画面およびスピーカーを通じてユーザにその注意喚起の情報を報知する。
【0092】
このように構成されれば、携帯電話のユーザが交通事故にあう危険を減らすことができる。なぜなら、携帯電話の画面を注視していたり、会話に気を取られていたりして、携帯電話のユーザが衝突の危険に気づかないことがあるからである。本発明は、そのような状況が原因の交通事故を予防するのに有効である。
【0093】
最後に、特許請求の範囲と実施例との関係を説明する。ただし自明なものについては説明を省く。解析手段はFB10からFB70、認識手段はS210〜S242、位置補正手段はS260、位置推定手段はS2800、特定手段はS290及びS293、によってそれぞれ実現される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明が適用された車車間通信装置11の概略構成を示すブロック図である。
【図2】車両が走行すると共に、その車両に搭載された車車間通信装置11が情報をやり取りする様子を表した図である。
【図3】インフラ情報の具体例を示す表である。
【図4】インフラ情報生成送信処理を表すフローチャートである。
【図5】インフラ情報受信更新処理を表すフローチャートである。
【図6】前方車両情報を表すグラフである。
【図7】前方車両情報の求め方を表す機能ブロック図である。
【図8】送信処理を表すフローチャートである。
【図9】レーダーによる情報によって誤認識する様子を表す図である。
【図10】補正処理を表すフローチャートである。
【図11】未来位置が補正される様子を表す図である。
【図12】報知処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
11…車車間通信装置、13…通信アンテナ、15…通信制御ECU、21…レーダー、23…レーダー制御ECU、25…LAN、29…GPSアンテナ、31…全体制御ECU、33…スピーカー、35…表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の現在の位置情報を無線によって周辺に送信する第一通信手段を備える、単数または複数の通信装置と、
前記通信装置が備える前記第一通信手段によって送信される位置情報を受信可能な第二通信手段を備える認識装置と、
を備える認識システムであって、
前記認識装置は、
レーダー波を発射し、このレーダー波が単数または複数の物体に反射して戻ってくる反射波の受波結果に基づいて、前記単数の物体の位置または前記複数の物体の各位置を求める解析手段と、
当該認識装置の現在位置情報を取得する位置取得手段と、
前記解析手段の解析結果と、前記第二通信手段が受信した位置情報と、前記位置取得手段の取得結果とに基づいて、前記解析手段によって位置が求められた前記物体のうち、前記通信装置を搭載していると推定される物体を、周辺装置として認識する認識手段と、
前記位置取得手段の取得結果と、前記解析手段の解析結果とに基づいて、前記第二通信手段が受信した前記周辺装置の位置情報を補正する位置補正手段と、
を備える
ことを特徴とする認識システム。
【請求項2】
前記認識装置は、
移動体に搭載され、
前記認識手段が認識した周辺装置のうち、前記移動体に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する特定手段
を備えた構成にされ、
前記認識装置が備える前記第二通信手段は、前記特定手段によって特定された周辺装置が備える前記通信装置に対して、当該認識装置が搭載された前記移動体の存在情報を無線によって送信するように構成され、
前記通信装置が備える前記第一通信手段は、前記認識装置が備える前記第二通信手段から送信されてくる存在情報を、無線によって受信可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の認識システム。
【請求項3】
前記移動体は、車両であり、
前記認識装置は、
前記位置補正手段が補正した位置情報に基づいて、自車両に対する前記周辺装置の未来における位置を推定する位置推定手段と、
前記位置推定手段によって推定された前記周辺装置の未来における位置に基づき、未来において、自車両と前記周辺装置とが同一車線に位置する確率である自車線確率を算出する自車線確率算出手段と、
を備え、
前記特定手段は、前記自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、前記車両に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の認識システム。
【請求項4】
前記特定手段は、前記位置推定手段の推定結果及び前記自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、自車両との距離が所定閾値以内に接近する周辺装置であって、前記自車線確率算出手段によって算出された自車線確率が閾値以上である前記周辺装置を、前記車両に対して衝突する危険性がある周辺装置として特定する
ことを特徴とする請求項3に記載の認識システム。
【請求項5】
前記通信装置は、
前記第一通信手段が受信した前記存在情報に基づいて、前記存在情報を送信した第二通信手段を備える移動体の存在を、自装置のユーザに向けて報知する報知手段
を備える
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の認識システム。
【請求項6】
前記存在情報は、当該存在情報を送信する前記第二通信手段を備える移動体の位置の情報を含み、
前記報知手段は、画像および音の少なくとも一方によって、自装置のユーザに向けて前記移動体の位置を報知する
ことを特徴とする請求項5に記載の認識システム。
【請求項1】
自身の現在の位置情報を無線によって周辺に送信する第一通信手段を備える、単数または複数の通信装置と、
前記通信装置が備える前記第一通信手段によって送信される位置情報を受信可能な第二通信手段を備える認識装置と、
を備える認識システムであって、
前記認識装置は、
レーダー波を発射し、このレーダー波が単数または複数の物体に反射して戻ってくる反射波の受波結果に基づいて、前記単数の物体の位置または前記複数の物体の各位置を求める解析手段と、
当該認識装置の現在位置情報を取得する位置取得手段と、
前記解析手段の解析結果と、前記第二通信手段が受信した位置情報と、前記位置取得手段の取得結果とに基づいて、前記解析手段によって位置が求められた前記物体のうち、前記通信装置を搭載していると推定される物体を、周辺装置として認識する認識手段と、
前記位置取得手段の取得結果と、前記解析手段の解析結果とに基づいて、前記第二通信手段が受信した前記周辺装置の位置情報を補正する位置補正手段と、
を備える
ことを特徴とする認識システム。
【請求項2】
前記認識装置は、
移動体に搭載され、
前記認識手段が認識した周辺装置のうち、前記移動体に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する特定手段
を備えた構成にされ、
前記認識装置が備える前記第二通信手段は、前記特定手段によって特定された周辺装置が備える前記通信装置に対して、当該認識装置が搭載された前記移動体の存在情報を無線によって送信するように構成され、
前記通信装置が備える前記第一通信手段は、前記認識装置が備える前記第二通信手段から送信されてくる存在情報を、無線によって受信可能に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の認識システム。
【請求項3】
前記移動体は、車両であり、
前記認識装置は、
前記位置補正手段が補正した位置情報に基づいて、自車両に対する前記周辺装置の未来における位置を推定する位置推定手段と、
前記位置推定手段によって推定された前記周辺装置の未来における位置に基づき、未来において、自車両と前記周辺装置とが同一車線に位置する確率である自車線確率を算出する自車線確率算出手段と、
を備え、
前記特定手段は、前記自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、前記車両に対して衝突する危険性がある周辺装置を特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の認識システム。
【請求項4】
前記特定手段は、前記位置推定手段の推定結果及び前記自車線確率算出手段の算出結果に基づいて、自車両との距離が所定閾値以内に接近する周辺装置であって、前記自車線確率算出手段によって算出された自車線確率が閾値以上である前記周辺装置を、前記車両に対して衝突する危険性がある周辺装置として特定する
ことを特徴とする請求項3に記載の認識システム。
【請求項5】
前記通信装置は、
前記第一通信手段が受信した前記存在情報に基づいて、前記存在情報を送信した第二通信手段を備える移動体の存在を、自装置のユーザに向けて報知する報知手段
を備える
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の認識システム。
【請求項6】
前記存在情報は、当該存在情報を送信する前記第二通信手段を備える移動体の位置の情報を含み、
前記報知手段は、画像および音の少なくとも一方によって、自装置のユーザに向けて前記移動体の位置を報知する
ことを特徴とする請求項5に記載の認識システム。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図2】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図2】
【図11】
【公開番号】特開2009−230390(P2009−230390A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74043(P2008−74043)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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