説明

走行支援装置

【課題】運転者の操作によって推奨速度への速度調整を容易に実施できる走行支援装置を提供することを課題とする。
【解決手段】運転者の操作に応じて自車両の速度を調整可能な自車速調整手段を備える車両に搭載される走行支援装置1であって、自車両の推奨速度を取得する推奨速度取得手段51と、自車両の速度を検出する自車速検出手段12,22と、推奨速度と自車両の速度との偏差に応じて自車速調整手段の操作特性を変更する操作特性変更手段51とを備えることを特徴とし、操作特性変更手段51は、推奨速度と自車両の速度との偏差が大きいほど、自車両の速度が推奨速度に一致する方向に速度変化し易くなるように自車速調整手段の操作特性を変更すると好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の負担を軽減するために、様々な走行支援装置が開発されている。走行支援装置としては、例えば、目標速度になるように自車両の速度を制御する装置がある。特許文献1に記載の装置では、前方を走行する複数の先行車両の速度に基づいて自車両の目標速度を算出し、その目標速度に基づいて自車両の速度を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−213299号公報
【特許文献2】特開2007−126038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目標速度になるように車両側で自動制御するのではなく、運転者による操作によって目標速度へ速度調整を行う場合がある。しかし、上記装置では、運転者による操作系について考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、運転者の操作によって推奨速度への速度調整を容易に実施できる走行支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る走行支援装置は、運転者の操作に応じて自車両の速度を調整可能な自車速調整手段を備える車両に搭載される走行支援装置であって、自車両の推奨速度を取得する推奨速度取得手段と、自車両の速度を検出する自車速検出手段と、推奨速度取得手段で取得した推奨速度と自車速検出手段で検出した自車両の速度との偏差に応じて自車速調整手段の操作特性を変更する操作特性変更手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この走行支援装置を搭載する車両は、自車速調整手段を備えており、運転者が速度を調整するために操作を行うと、その操作に応じて自車速調整手段で自車両の速度を調整する。走行支援装置では、推奨速度取得手段によって自車両の推奨速度を取得する。また、走行支援装置では、自車速検出手段によって自車両の速度を検出する。そして、走行支援装置では、操作特性変更手段によって、推奨速度と自車両の速度との偏差に応じて自車速調整手段の操作特性を変更する。このように、走行支援装置では、推奨速度と自車両の速度との偏差に応じて自車速調整手段の操作特性を変更することにより、運転者の操作によって推奨速度への速度調整を容易に実施できる。
【0008】
なお、推奨速度としては、例えば、自車両周辺の交通流に適した目標速度、走行中道路の制限速度、赤信号で停止しない速度(すなわち、各交差点を青信号で通過し続けるための速度)がある。自車速調整手段としては、例えば、運転者によるアクセルペダルに対する操作に応じた加速手段、運転者によるブレーキペダルに対する操作に応じた減速手段、運転者によるアクセル操作オフに応じたエンジンブレーキによる減速手段、運転者による設定操作に応じたクルーズ制御の目標速度変更手段(クルーズ制御の目標速度を変更することによって、クルーズ制御で自車両の速度を変更できる)がある。自車速調整手段の操作特性としては、例えば、アクセルペダル操作やブレーキペダル操作に応じた加減速の場合にはペダル操作量に応じて目標加速度や目標減速度を求めるときのゲインあるいはペダルに対する反力特性、アクセルペダル操作オフに応じたエンジンブレーキの場合には減速度(あるいは、減速度を求めるときのゲイン)、クルーズ制御の目標速度変更の場合には変更操作量に応じて目標速度を変更するときのゲインがある。操作特性を変更する場合、推奨速度>自車両の速度のときには加速する側の操作特性やクルーズの目標速度をアップする側の操作特性だけを変更してもよいしあるいはそれに加えて減速する側の操作特性やクルーズの目標速度をダウンする側の操作特性も変更してもよい、また、推奨速度<自車両の速度のときには減速する側の操作特性やクルーズの目標速度をダウンする側の操作特性だけを変更してもよいしあるいはそれに加えて加速する側の操作特性やクルーズの目標速度をアップする側の操作特性も変更してもよい。
【0009】
本発明の上記走行支援装置では、操作特性変更手段は、推奨速度取得手段で取得した推奨速度と自車速検出手段で検出した自車両の速度との偏差が大きいほど、自車両の速度が推奨速度に一致する方向に速度変化し易くなるように自車速調整手段の操作特性を変更すると好適である。
【0010】
この走行支援装置では、操作特性変更手段によって、推奨速度と自車両の速度との偏差が大きいほど自車両の速度が推奨速度に一致する方向に速度変化し易くなるように自車速調整手段の操作特性を変更する。このように自車速調整手段の操作特性を変更することにより、走行支援装置では、推奨速度と自車両の速度との偏差が大きいときには、運転者の操作に応じて自車両の速度を推奨速度側に通常よりも大きく変化させることができ、自車両の速度を迅速に推奨速度に近づけることができる。また、走行支援装置では、推奨速度と自車両の速度との偏差が小さいときには、運転者が操作しても速度を変化させ難く、推奨速度付近での安定した走行ができる。
【0011】
本発明の上記走行支援装置では、推奨速度取得手段は、自車両周辺を走行する他車両の速度に基づいて推奨速度を算出する構成としてもよい。
【0012】
この走行支援装置では、推奨速度取得手段によって自車両周辺を走行する他車両の速度に基づいて推奨速度を算出し、操作特性変更手段によってその推奨速度に基づいて自車速調整手段の操作特性を変更する。このように、走行支援装置では、自車両周辺の交通流に適した推奨速度とすることにより、運転者の操作によって周辺の交通流に適応した速度への速度調整を容易に実施でき、交通流に従った走行ができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、推奨速度と自車両の速度との偏差に応じて自車速調整手段の操作特性を変更することにより、運転者の操作によって推奨速度への速度調整を容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るACCシステムの構成図である。
【図2】自車両が渋滞末尾に突入する走行シーンの一例である。
【図3】自車両周辺が流れている走行シーンの一例である。
【図4】対象車両に対する重み付けの説明図である。
【図5】第1の実施の形態に係る車両制御ECUにおける交通流クルーズ制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係る車両制御ECUにおける交通流クルーズ制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る走行支援装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施の形態では、本発明に係る走行支援装置を、車車間通信及び路車間通信が可能な車両に搭載されるACC[Adaptive Cruise Control]システムに適用する。本実施の形態に係る車両は、車車間通信で自車両周辺の他車両の情報を取得するとともに、路車間通信でインフラ装置(例えば、光ビーコン)からの情報を取得する。本実施の形態に係るACCシステムでは、レーダで自車両の前方の先行車両を検知し、先行車両を検知できた場合には先行車両との車間時間(車間距離)が目標車間時間(目標車間距離)になるように先行車両追従制御を行い、先行車両を検知できない場合には自車速が目標速度になるようにクルーズ制御(ノーマルクルーズ制御、交通流クルーズ制御)を行う。本実施の形態には、2つの形態があり、第1の実施の形態が交通流クルーズ制御時に運転者が目標速度を変更するためのクルーズレバー操作に対するゲインを変更する形態であり、第2の実施の形態が交通流クルーズ制御時に運転者が速度(ひいては、目標速度)を変更するためのアクセルペダル操作とブレーキペダル操作に対するゲインを変更する形態である。
【0017】
図1〜図4を参照して、第1の実施の形態に係るACCシステム1について説明する。図1は、本実施の形態に係るACCシステムの構成図である。図2は、自車両が渋滞末尾に突入する走行シーンの一例である。図3は、自車両周辺が流れている走行シーンの一例である。図4は、対象車両に対する重み付けの説明図である。
【0018】
ACCシステム1は、運転者によるクルーズレバー操作によって設定された目標速度に基づいてクルーズ制御を行う。特に、ACCシステム1では、自車両周辺の他車両から情報を取得できる場合(交通流クルーズ制御時)、その他車両の情報から得られる自車両周辺の交通流(実勢速度)に適応した目標速度を算出し、運転者のクルーズレバー操作によってその交通流目標速度への目標速度調整を容易にするために、クルーズレバー操作に対するレバー用ゲインを変更する。したがって、交通流クルーズ制御時には、運転者が周辺の交通流に目標速度を合わせようとしてクルーズレバー操作を行うと、交通流目標速度に一致する方向へは目標速度が通常よりも迅速かつ容易に変わる。
【0019】
ACCシステム1について具体的に説明する前に、図2及び図3を参照して、自車両周辺の交通流に適応した目標速度について説明しておく。図2に示す例が自車両前方が渋滞している場合であり、図3に示す例が自車両周辺が流れている場合である。
【0020】
図2に示す例では、自車両MVは、高速道路などで高い目標速度でクルーズ制御を行っているときに、前方で発生している渋滞の末尾に突入してゆく。この場合、渋滞中の前方の他車両OV10,OV11,・・・は、低い速度で走行している。また、自車両MVでは、通常、レーダの検知範囲RA内に前方の他車両OV10が入るまで、この高い目標速度でクルーズ制御を継続し、高い速度で走行することになる。そのため、レーダで前方の他車両OV10を検知したときには、自車両MVと前方の他車両OV10との相対速度は、非常に大きい。このような場合、自車両MVは、前方の交通流と速度が合っていないので、事前に前方の交通流との相対速度を小さくしてゆく必要がある。
【0021】
図3に示す例では、自車両MVは、比較的低い目標速度でクルーズ制御を行っているときに、周辺(特に、前方)が流れている。この際、自車線の前方の他車両OV20,OV21,・・・は、自車両MVの目標速度よりも多少高い速度で走行している。この場合、自車両MVは、周辺の交通流と同じ流れ(実勢速度)に溶け込めていない。また、自車両MVの目標速度が低すぎると、自車両MVを先頭として後続車両OV23,OV24が詰まる場合もある。このような場合、自車両MVは、周辺の交通流と同じ流れ(実勢速度)に迅速に溶け込んでゆく必要がある。
【0022】
そこで、レーダの検知範囲RAよりも広い通信範囲CAを持つ車車間通信によって、自車両MV周辺の他車両から速度などの情報を取得する。そして、この取得した他車両の速度を用いて、自車両MVの速度が周辺(特に、前方)の交通流の実勢速度に一致するように働く交通流適応加速度を求め、交通流適応加速度に応じて交通流に適応した目標速度を求めておく。このように、車車間通信で他車両から情報を取得できる場合には、システム側で交通流に適応した目標速度を求めておき、運転者が目標速度変更操作を行ったときにこの交通流目標速度に向かって目標速度を変化させ易くなるようにゲインを変更しておき、運転者による目標速度変更操作によって変更された目標速度に基づいて交通流クルーズ制御を行う。なお、交通流クルーズ制御時に、運転者が目標速度変更操作を行わない場合には運転者によって設定されていた目標速度がそのまま使用される。
【0023】
この交通流クルーズ制御では、現在の交通流目標速度Vtgt_nowと交通流適応加速度aenvを用いて、式(1)によって次の交通流目標速度Vtgt_nextを算出する。式(1)におけるΔtは、制御周期である。交通流適応加速度aenvは、自車両の速度をVとし、交通流適応加速度を求める対象の各車両の速度をV,V,・・・とすると、式(2)によって定義できる。式(2)におけるc,c,・・・は、ゲインである。
【数1】

【0024】
図2に示す例の場合、自車両MVが位置P10に到達するまでの車車間通信の通信範囲CA(特に、自車両の前方)内に他車両が存在しない区間NCでは、運転者によって設定された一定の目標速度Vtgtに基づいてノーマルクルーズ制御を行う。自車両MVが位置P10から位置P12までの車車間通信の通信範囲CA内に他車両が存在する区間TCでは、システム側で制御周期Δt毎に交通流目標速度Vtgt_nextを算出し、運転者による操作に応じて目標速度Vtgtが交通流目標速度Vtgt_nextに変化し易いように操作に対するゲインを変更しており、運転者による操作によって変更された目標速度Vtgtに基づいて交通流クルーズ制御を行う。特に、自車両MVが位置P10を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV13からの情報を受信開始し、他車両OV13の速度に基づいて交通流適応加速度aenv10を求め、この交通流適応加速度aenv10に応じて交通流目標速度Vtgt_nextを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV13をダンパC10で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV13の速度との相対速度に応じてダンパC10によって減速側に引っ張られる制御となる。さらに、自車両MVが位置P11を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV11からの情報も受信開始し、他車両OV13の速度と他車両OV11の速度に基づいて交通流適応加速度aenv11を求め、この交通流適応加速度aenv11に応じて交通流目標速度Vtgt_nextを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV13をダンパC10で接続した制御モデルと自車両MVと他車両OV11をダンパC11で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV13の速度との相対速度に応じてダンパC10によって減速側に引っ張られかつ自車両MVの速度と他車両OV11の速度との相対速度に応じてダンパC11によって減速側に引っ張られる制御となる。そして、自車両MVが位置P12以降でのレーダの検知範囲RA内に他車両OV10が存在する区間FCでは、目標車間時間に基づいて先行車両追従制御を行う。なお、ダンパC10,C11の減衰係数が、上記の式(2)のゲインに相当する。
【0025】
図3に示す例の場合も、図2の例と同様に、区間NCではノーマルクルーズ制御を行い、区間TCでは交通流クルーズ制御を行い、区間FCでは先行車両追従制御を行う。特に、区間TCでは、自車両MVが位置P20を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV21からの情報を受信開始し、他車両OV21の速度に基づいて交通流適応加速度aenv20を求め、この交通流適応加速度aenv20に応じて交通流目標速度Vtgt_nextを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV21をダンパC20で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV21の速度との相対速度に応じてダンパC20によって加速側に引っ張られる制御となる。さらに、自車両MVが位置P21を通過した時点から、車車間通信可能な他車両OV22からの情報も受信開始し、他車両OV21の速度と他車両OV22の速度に基づいて交通流適応加速度aenv21を求め、この交通流適応加速度aenv21に応じて交通流目標速度Vtgt_nextを更新してゆく。ここで、自車両MVと他車両OV21をダンパC20で接続した制御モデルと自車両MVと他車両OV22をダンパC21で接続した制御モデルを想定した場合、自車両MVの速度と他車両OV21の速度との相対速度に応じてダンパC20によって加速側に引っ張られかつ自車両MVの速度と他車両OV22の速度との相対速度に応じてダンパC21によって加速側に引っ張られる制御となる。なお、ダンパC20,C21の減衰係数が、上記の式(2)のゲインに相当する。
【0026】
特に、実際の交通の流れでは、速度の低い車両ほど後続車両群の流れに影響を与える。例えば、前方の交通流の実勢速度を車車間通信で情報を取得できる車両の平均速度とし、この平均速度を目標速度としてクルーズ制御を行った場合を想定する。この場合、自車両は前方の交通流の実勢速度(平均速度)に一致するように加減速するが、前方の車群の中にその実勢速度よりも低い速度の車両が存在すると、その低速度の車両で後続車両が詰まるので、自車両も詰まる。その結果、自車両では、減速が必要となる。そこで、交通流適応加速度(ひいては、交通流目標速度)を求める場合には、車車間通信で情報を取得できる他車両の中で速度の低い車両ほど重視する必要がある。したがって、交通流適応加速度を求めるときの交通流の実勢速度は、車車間通信で情報を取得できる他車両の中で速度の低い車両ほど重視された速度となる。
【0027】
図4に示す例の場合、自車両MVの前方の他車両OV30,・・・,OV36のうち、3台の他車両OV31,OV33,OV36が車車間通信可能な車両であり、速度を取得できる。例えば、他車両OV31の速度を100km/h、他車両OV33の速度を50km/h、他車両OV36の速度を70km/hとした場合、100km/hで走行している他車両OV31は、50km/hで走行して他車両OV33に追い付き、減速することになる。したがって、他車両OV31の後続の自車両MVも、他車両OV31,OV36よりも、他車両OV33の影響を最も受けて走行することになる。したがって、他車両OV33の速度を最も重視して、交通流適応加速度を求める必要がある。
【0028】
上記の式(2)は、交通流適応加速度を求める対象の車両からなる車群の参照速度Vref(交通流の実勢速度に相当)と自車両の速度Vを用いて式(3)に変形できる。式(3)におけるcは、ゲインであり、実験などによって予め決められた値である。この参照速度refは、交通流適応加速度を求める対象の各車両の速度V,V,・・・,Vを用いて、式(4)によって算出できる。式(4)におけるm,m,・・・,mは、各車両に対する重みであり、交通流適応加速度を求めるときに重視する車両ほど大きいな値が設定される。式(5)に示すように、重みm,m,・・・,mは、合計が1になるように、0以上1以下の値が割り振られる。
【数2】

【0029】
それでは、ACCシステム1の各部について具体的に説明する。ACCシステム1は、前方車間距離センサ10、無線アンテナ11、車速センサ12、加速度センサ13、クルーズレバー14、前方センサECU[Electronic Control Unit]20、無線制御ECU21、車速センサECU22、加速度センサECU23、エンジン制御ECU30(アクセルペダルセンサ15、スロットルアクチュエータ40)、ブレーキ制御ECU31(ブレーキペダルセンサ16、ブレーキアクチュエータ41)及び車両制御ECU51を備えている。前方センサECU20、無線制御ECU21、車速センサECU22、加速度センサECU23、クルーズレバー14と車両制御ECU51との間では通信・センサ系のCAN[Controller Area Network]60で通信を行っており、エンジン制御ECU30、ブレーキ制御ECU31と車両制御ECU51との間では制御系のCAN61で通信を行っている。
【0030】
なお、第1の実施の形態では、クルーズレバー14及び車両制御ECU51による運転者のレバー操作に応じた目標速度を設定する機能が特許請求の範囲に記載する自車速調整手段に相当し、車速センサ12及び車速センサECU22が特許請求の範囲に記載する自車速検出手段に相当し、車両制御ECU51における各処理が特許請求の範囲に記載する推奨速度取得手段及び操作特性変更手段に相当する。
【0031】
前方車間距離センサ10は、ミリ波などを利用して前方の車両を検出するレーダセンサである。前方車間距離センサ10は、自車両の前端部の中央の所定の高さ位置(検出対象の車両を確実に検出可能な高さ位置)に取り付けられる。前方車間距離センサ10では、レーダビームを左右方向にスキャンしながら自車両から前方に向けて送信し、反射してきたレーダビームを受信する。そして、前方車間距離センサ10では、その受信できた各反射点(検出点)についてのレーダ情報(左右方向のスキャン角、送信時刻、受信時刻、受信強度など)を前方センサECU20に送信する。
【0032】
前方センサECU20では、前方車間距離センサ10から送信されたレーダ情報に基づいて、前方車間距離センサ10の検出範囲内の自車線において自車両前方に車両が存在するか否かを判定する。車両(先行車両)が存在すると判定した場合、前方センサECU20では、レーダ情報を各種処理し、デジタル値で先行車両までの相対距離(車間距離)などを出力する。そして、前方センサECU20では、この先行車両の有無や先行車両が存在する場合には距離などの情報を前方車間距離信号として車両制御ECU51に送信する。
【0033】
無線アンテナ11は、送受信兼用の無線アンテナである。また、無線アンテナ11は、車車間通信用と路車間通信用の共用アンテナである。車車間通信する場合、無線アンテナ11では、通信範囲内に存在する車車間通信可能な車両からの信号を受信するとともに通信範囲内の車両に信号を送信する。信号を送信する場合、車車間送信信号が無線制御ECU21から無線アンテナ11に送られる。信号を受信した場合、車車間受信信号が無線アンテナ11から無線制御ECU21に送られる。路車間通信する場合、無線アンテナ11では、インフラ装置(例えば、光ビーコン)からの信号を受信するとともにインフラ装置に信号を送信する。信号を送信する場合、路車間送信信号が無線制御ECU21から無線アンテナ11に送られる。信号を受信した場合、路車間受信信号が無線アンテナ11から無線制御ECU21に送られる。
【0034】
無線制御ECU21は、無線で送受信される各種信号を制御する。車車間通信の場合、無線制御ECU21では、車両制御ECU51からの車車間送信情報に各種変換処理を施して車車間送信信号を生成し、その車車間送信信号を無線アンテナ11に送る。また、無線制御ECU21では、無線アンテナ11で受信した車車間受信信号に各種変換処理を施して情報を取り出し、その情報を車車間受信情報信号として車両制御ECU51に送信する。車車間通信で送受信される情報としては、例えば、車両の速度、位置、加速度、走行車線、道路種別(高速道路、一般道路など)、車両識別情報(車両IDなど)がある。路車間通信の場合、無線制御ECU21では、車両制御ECU51からの路車間送信情報に各種変換処理を施して路車間送信信号を生成し、その路車間送信信号を無線アンテナ11に送る。また、無線制御ECU21では、無線アンテナ11で受信した路車間受信信号に各種変換処理を施して情報を取り出し、その情報を路車間受信情報信号として車両制御ECU51に送信する。路車間通信で送信される情報としては、例えば、車両識別情報がある。路車間通信で受信される情報としては、例えば、VICS[Vehicle Information Communication System]情報(渋滞情報、交通規制情報、VICS旅行速度など)やインフラ情報(信号サイクル情報など)がある。各車両の走行車線の情報を路車間通信で受信できる場合もある。
【0035】
なお、車車間通信及び路車間通信で共用で使用する無線アンテナ及び無線制御ECUとしたが、車車間通信と路車間通信とで別々の無線アンテナ及び無線制御ECUとしてもよい。また、路車間通信では、情報を送受信するのではなく、情報を受信するだけでもよい。
【0036】
車速センサ12は、自車両の速度を検出するためのセンサである。車速センサ12では、一定時間毎に、自車両の速度に関する情報を検出し、その検出した情報を車速センサECU22に送信する。
【0037】
車速センサECU22は、車速センサ12から送信された情報を各種処理し、デジタル値の自車両の速度を出力する。そして、車速センサECU22では、その自車両の速度を車速信号として車両制御ECU51に送信する。
【0038】
加速度センサ13は、自車両の加速度を検出するためのセンサである。加速度センサ13では、一定時間毎に、自車両の加速度に関する情報を検出し、その検出した情報を加速度センサECU23に送信する。
【0039】
加速度センサECU23は、加速度センサ13から送信された情報を各種処理し、デジタル値の自車両の加速度を出力する。そして、加速度センサECU23では、その自車両の加速度を加速度信号として車両制御ECU51に送信する。
【0040】
クルーズレバー14は、ACCシステム1のオン(起動)/オフ(停止)操作や目標速度の設定操作(所定速度間隔毎の速度アップ操作と速度ダウン操作が可能)などの各種操作を行うためのレバーである。クルーズレバー14では、運転者によって行われた操作情報をクルーズレバー信号として車両制御ECU51に送信する。この操作情報としては、オン操作とオフ操作、目標速度をアップする側の操作量とダウンする側の操作量などがある。なお、先行車両追従制御時の目標車間時間(目標車間距離)を設定(例えば、長、中、短の設定)するために、レバーあるいはスイッチを別体で設けてもよいし、あるいは、クルーズレバー14に組み込んでもよい。
【0041】
アクセルペダルセンサ15は、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(アクセル開度)を検出するセンサである。アクセルペダルセンサ15では、一定時間毎に、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をアクセルペダル信号としてエンジン制御ECU30に送信する。
【0042】
エンジン制御ECU30は、エンジンを制御する制御装置である。エンジン制御ECU30では、通常、一定時間毎に、アクセルペダルセンサ15からのアクセルペダル信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量とアクセル用ゲインに基づいて目標加速度を演算する。そして、エンジン制御ECU30では、その目標加速度になるために必要なスロットルバルブの目標開度を設定し、その目標開度を目標スロットル開度信号としてスロットルアクチュエータ40に送信する。特に、車両制御ECU51からのエンジン制御信号を受信した場合、エンジン制御ECU30では、エンジン制御信号に示される目標加速度となるための目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータ40に送信する。
【0043】
スロットルアクチュエータ40は、スロットルバルブの開度を調整するアクチュエータである。スロットルアクチュエータ40では、エンジン制御ECU30からの目標スロットル開度信号を受信すると、その目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。
【0044】
ブレーキペダルセンサ16は、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量を検出するセンサである。ブレーキペダルセンサ16では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、その検出した踏み込み量をブレーキペダル信号としてブレーキ制御ECU31に送信する。
【0045】
ブレーキ制御ECU31は、各輪のブレーキを制御する制御装置である。ブレーキ制御ECU31では、通常、一定時間毎に、ブレーキペダルセンサ16からのブレーキペダル信号に基づいて、運転者によるブレーキペダルの踏み込み量とブレーキ用ゲインに基づいて目標減速度を演算する。そして、ブレーキ制御ECU31では、その目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダ(図示せず)の目標ブレーキ油圧を設定し、その目標ブレーキ油圧を目標油圧信号としてブレーキアクチュエータ41に送信する。特に、車両制御ECU51からのブレーキ制御信号を受信した場合、ブレーキ制御ECU31では、ブレーキ制御信号に示される目標減速度となるための目標油圧信号をブレーキアクチュエータ41に送信する。
【0046】
ブレーキアクチュエータ41は、各輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ41では、ブレーキ制御ECU31からの目標油圧信号を受信すると、その目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0047】
車両制御ECU51は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[RandomAccess Memory]などからなる電子制御ユニットであり、ACCシステム1を統括制御する。車両制御ECU51では、クルーズレバー14からのクルーズレバー信号に示されるON操作情報に応じて起動すると、ROMに格納されているアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することにより、制御切替制御、先行車両追従制御、ノーマルクルーズ制御、交流流クルーズ制御などを行う。車両制御ECU51では、制御周期Δt毎に、制御切替制御で先行車両追従制御、ノーマルクルーズ制御、交流流クルーズ制御のうちのいずれの制御を行うかを決定し、その決定した制御を行う。
【0048】
車両制御ECU51では、クルーズレバー14からのクルーズレバー信号に示される目標速度を設定するためのアップ操作量又はダウン操作量を取得する毎に、その操作量にレバー用ゲインを乗算してアップ分又はダウン分の速度を演算し、そのアップ分又はダウン分の速度を現在設定されている目標速度に加味した新たな目標速度を演算する。この運転者によって設定される目標速度は、運転者が視認できるように表示される。レバー用ゲインは、基本的には予め設定された固定値であるが、交流流クルーズ制御時には交通流目標速度と自車両の速度との偏差に応じて変更される。この交通流クルーズ制御時にレバー用ゲインを変更する場合、目標速度をアップする側とダウンする側とで別々にゲインが設定される。
【0049】
制御切替制御について説明する。車両制御ECU51では、前方センサECU20からの前方車間距離信号に基づいて、自車両の前方に先行車両が存在するか否かを判定する。先行車両が存在すると判定した場合、車両制御ECU51では、先行車両追従制御を行う。先行車両が存在しないと判定した場合、車両制御ECU51では、無線制御ECU21からの車車間受信情報信号に基づいて、自車両周辺(特に、前方)に車車間通信可能な他車両が存在するか否かを判定する。自車両周辺に車車間通信可能な他車両が存在しないと判定した場合、車両制御ECU51では、ノーマルクルーズ制御を行う。自車両周辺に車車間通信可能な他車両が存在すると判定した場合、車両制御ECU51では、交通流クルーズ制御を行う。
【0050】
先行車両追従制御について説明する。車両制御ECU51では、前方センサECU20からの前方車間距離信号に示される先行車両との車間距離と車速センサECU22からの車速信号に示される自車両の速度を用いて、先行車両との車間時間(=車間距離/自車速)を演算する。そして、車両制御ECU51では、車間時間と目標車間時間との差に基づいて、先行車両との車間時間が目標車間時間になるために必要な目標加減速度を演算する。目標加減速度がプラス値の場合(加速制御が必要な場合)、車両制御ECU51では、目標加速度を設定し、その目標加速度をエンジン制御信号としてエンジン制御ECU30に送信する。目標加減速度がマイナス値の場合(減速制御が必要な場合)、車両制御ECU51では、目標減速度を設定し、その目標減速度をブレーキ制御信号としてブレーキ制御ECU31に送信する。なお、先行車両追従制御で用いられる目標車間時間は、上記したレバーなどで運転者によって設定される目標車間時間である(デフォルト値は、例えば、「長」の目標車間時間である)。
【0051】
ノーマルクルーズ制御について説明する。車両制御ECU51では、車速センサECU22からの車速信号に示される自車両の速度と目標速度との差に基づいて、自車両の速度が目標速度になるために必要な目標加減速度を演算する。目標加減速度がプラス値の場合、車両制御ECU51では、目標加速度を設定し、その目標加速度をエンジン制御信号としてエンジン制御ECU30に送信する。目標加減速度がマイナス値の場合、車両制御ECU51では、目標減速度を設定し、その目標減速度をブレーキ制御信号としてブレーキ制御ECU31に送信する。
【0052】
交通流クルーズ制御について説明する。車両制御ECU51では、無線制御ECU21からの車車間受信情報信号に含まれる自車両周辺の車車間通信可能な他車両毎の車両ID、速度、加速度、位置、走行車線、道路種別などの情報を取得する。また、車両制御ECU51では、インフラ装置から信号を受信できた場合には、無線制御ECU21からの路車間受信情報信号に含まれる車両ID毎の走行車線などの情報を取得する。そして、車両制御ECU51では、他車両からの情報とインフラ情報(取得できた場合のみ)に基づいて、車車間通信可能な他車両の中から交通流適応加速度(ひいては、交通流目標速度)を求めるための対象の車両を選択する。この選択方法としては、自車両の前方で同方向を走行している他車両を選択し、その中でも基本的には自車線の前方を走行している他車両であるが、場合によっては他車線を走行している他車両や後方を走行している他車両も選択する。他車両の走行車線の情報が取得できない場合、同じ道路種別の他車両を選択する。
【0053】
車両制御ECU51では、選択した全ての対象車両の速度に基づいて、速度の低い対象車両ほど大きな重みとなるように、各対象車両に対して重みmをそれぞれ設定する。この重み付け方法としては、例えば、車両の速度が低いほど大きな重みが対応付けられたマップを用いて、全ての重みの合計値が1となるように(式(5)参照)、速度が低い対象車両ほど大きな重みを設定する。このマップは、対象車両の台数、走行シーン(例えば、前方が渋滞のシーン、渋滞中で走行しているシーン、低速で流れているシーン、高速で流れているシーン)などに応じてチューニングされたものにしてもよい。なお、選択された対象車両が1台の場合、その対象車両の重みが1となる。
【0054】
車両制御ECU51では、各対象車両の速度Vと重みmを用いて、上記の式(4)により参照速度Vrefを算出する。さらに、車両制御ECU51では、参照速度Vrefと自車両の速度Vを用いて、上記の式(3)により交通流適応加速度aenvを算出する。そして、車両制御ECU51では、交通流適応加速度aenvと現在の交通流目標速度Vtgt_nowを用いて、上記の式(1)により次の交通流目標速度Vtgt_nextを算出する。
【0055】
車両制御ECU51では、この算出した交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差(つまり、自車両の速度Vの交通流目標速度Vtgt_nextからの偏差)に応じてクルーズレバー操作のレバー用ゲインを変更する。具体的には、車両制御ECU51では、まず、交通流目標速度Vtgt_nextが自車両の速度Vより高いか否かを判定する。
【0056】
交通流目標速度Vtgt_nextが自車両の速度Vより高い場合、車両制御ECU51では、クルーズレバー操作に応じて目標速度が交通流目標速度に一致する方向(目標速度アップ方向)に変化し易くなるように、目標速度をアップする側のゲインとして交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きなゲインを設定する。この際、目標速度をダウンする側のゲインについては、通常値よりも小さくしてもよいしあるいは通常値のままでもよい。
【0057】
交通流目標速度Vtgt_nextが自車両の速度Vより低い場合、車両制御ECU51では、クルーズレバー操作に応じて目標速度が交通流目標速度に一致する方向(目標速度ダウン方向)に変化し易くなるように、目標速度をダウンする側のゲインとして交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きなゲインを設定する。この際、目標速度をアップする側のゲインについては、通常値よりも小さくしてもよいしあるいは通常値のままでもよい。
【0058】
なお、速度差が大きいほど大きなゲインを設定する場合、例えば、速度差とゲインとを対応付けたマップを用いてゲインを求めてもよいし、あるいは、所定の演算式(速度差に比例したゲインを演算する式など)を用いてゲインを演算してもよい。
【0059】
さらに、車両制御ECU51では、目標速度をアップする側のゲインを変更している場合、自車両の速度Vが(交通流目標速度Vtgt_next+速度制限値)以上になると目標速度をアップする側のゲインを0に設定する。また、車両制御ECU51では、目標速度をダウンする側のゲインを変更している場合、自車両の速度Vが(交通流目標速度Vtgt_next−速度制限値)以下になると目標速度をダウンする側のゲインを0に設定する。この速度制限値は、自車両の速度(クルーズ制御の目標速度)を交通流目標速度を少し超える程度までに制限するための値であり、例えば、数km/h程度の値が設定される。
【0060】
交通流クルーズ制御中に運転者がクルーズレバー操作を行った場合、車両制御ECU51では、クルーズレバー14からのクルーズレバー信号に示される目標速度を設定するためのアップ操作量又はダウン操作量に変更したレバー用ゲインを乗算してアップ分又はダウン分の速度を演算し、そのアップ分又はダウン分の速度を現在設定されている目標速度に加味した新たな目標速度を演算する。そして、車両制御ECU51では、その新たに求めた目標速度を用いて、ノーマルクルーズ制御と同様の加減速制御を行う。
【0061】
図1を参照して、ACCシステム1における交通流クルーズ制御中の動作について説明する。特に、車両制御ECU51における交通流クルーズ制御の処理については図5のフローチャートに沿って説明する。図5は、第1の実施の形態に係る車両制御ECUにおける交通流クルーズ制御の流れを示すフローチャートである。ここでは、運転者によるクルーズレバー14でのON操作に応じてACCシステム1が起動しており、車車間通信で自車両の周辺の車車間通信可能な他車両から情報を取得できるが、前方車間距離センサ10で先行車両を検知できていない。
【0062】
前方車間距離センサ10では、一定時間毎に、自車両の前方をスキャンしながらレーダビームを送信するとともに反射してきた場合にはそのレーダビームを受信し、そのレーダ情報を前方センサECU20に送信している。前方センサECU20では、このレーダ情報を受信し、レーダ情報に基づいて先行車両が存在しないと判定し、そのことを示す前方車間距離信号を車両制御ECU51に送信する。
【0063】
無線アンテナ11では、通信範囲内の他車両からの信号が送信される毎に、その送信された信号を受信し、車車間受信信号を無線制御ECU21に送信する。無線制御ECU21では、この車車間受信信号を受信すると、車車間受信信号から他車両の各種情報を取り出し、車車間受信情報信号を車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この車車間受信情報信号を受信し、自車両周辺の他車両の情報を取得する(S10)。
【0064】
また、無線アンテナ11では、自車両がインフラ装置の送信エリアを通過するときに、インフラ装置から送信された信号を受信し、路車間受信信号を無線制御ECU21に送信する。無線制御ECU21では、この路車間受信信号を受信すると、路車間受信信号からインフラ情報を取り出し、路車間受信情報信号を車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この路車間受信情報信号を受信し、インフラ情報を取得する(S11)。
【0065】
車速センサ12では、一定時間毎に、自車両の速度に関する情報を検出し、その情報を車速センサECU22に送信する。車速センサECU22では、この車速センサ12からの情報を受信すると、各種処理を行ってデジタル値の自車両の速度を車速信号として車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この車速信号を受信し、自車両の速度を取得する。
【0066】
加速度センサ13では、一定時間毎に、自車両の加速度に関する情報を検出し、その情報を加速度センサECU23に送信する。加速度センサECU23では、この加速度センサ13からの情報を受信すると、各種処理を行ってデジタル値の自車両の加速度を加速度信号として車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、この加速度信号を受信し、自車両の加速度を取得する。
【0067】
アクセルペダルセンサ15では、一定時間毎に、アクセルペダルの踏み込み量を検出し、アクセルペダル信号をエンジン制御ECU30に送信している。エンジン制御ECU30では、このアクセルペダル信号を受信し、アクセルペダルの踏み込み量を取得する。
【0068】
ブレーキペダルセンサ16では、一定時間毎に、ブレーキペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキペダル信号をブレーキ制御ECU31に送信している。ブレーキ制御ECU31では、このブレーキペダル信号を受信し、ブレーキペダルの踏み込み量を取得する。
【0069】
制御周期Δt毎に、車両制御ECU51では、自車両周辺の車車間通信可能な他車両の情報とインフラ情報(取得できている場合だけ)に基づいて、自車両周辺の車車間通信可能な他車両の中から交通流適応加速度を求める対象の車両を選別する(S12)。そして、車両制御ECU51では、その選別した各対象車両の速度Vに基づいて、対象車両毎に重み付けを行う(S13)。
【0070】
車両制御ECU51では、各対象車両の重みmと速度Vに基づいて、式(4)により参照速度Vrefを演算する(S14)。そして、車両制御ECU51では、参照速度Vrefと自車両の速度Vに基づいて、式(2)により交通流適応加速度aenvを演算する(S15)。さらに、車両制御ECU51では、交通流適応加速度aenvと現交通流目標速度Vtgt_nowに基づいて、式(1)により次交通流目標速度Vtgt_nextを演算する(S16)。
【0071】
車両制御ECU51では、次交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差に応じてクルーズレバー操作のレバー用ゲインを演算する(S17)。
【0072】
次交通流目標速度Vtgt_next>自車両の速度Vの場合、目標速度をアップする側のレバー用ゲインが、次交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きな値になる。このとき、運転者がクルーズレバー14によって目標速度をアップする操作を行うと、クルーズレバー14では、そのアップ側の操作量をクルーズレバー信号として車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、このクルーズレバー信号を受信すると、そのクルーズレバー信号に示されるアップ操作量に変更されているアップする側のレバー用ゲインを乗算してアップ分の速度を演算し、そのアップ分の速度を現在設定されている目標速度に加算した新たな目標速度を設定する。これによって、自車両の速度Vと交通流目標速度Vtgt_nextとの速度差が大きいときには、目標速度をアップする側のレバー用ゲインが大きいので、運転者による少しのレバー操作でも、目標速度が通常よりも大きく増加する。目標速度の増加によって自車両の速度Vが交通流目標速度Vtgt_next付近になったときには、目標速度をアップする側のレバー用ゲインが小さいので、運転者がレバー操作をしても、目標速度があまり増加しない。
【0073】
次交通流目標速度Vtgt_next<自車両の速度Vの場合、目標速度をダウンする側のレバー用ゲインが、次交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きな値になる。このとき、運転者がクルーズレバー14によって目標速度をダウンする操作を行うと、クルーズレバー14では、そのダウン側の操作量をクルーズレバー信号として車両制御ECU51に送信する。車両制御ECU51では、このクルーズレバー信号を受信すると、そのクルーズレバー信号に示されるダウン操作量に変更されているダウンする側のレバー用ゲインを乗算してダウン分の速度を演算し、そのダウン分の速度を現在設定されている目標速度から減算した新たな目標速度を設定する。これによって、自車両の速度Vと交通流目標速度Vtgt_nextとの速度差が大きいときには、目標速度をダウンする側のレバー用ゲインが大きいので、運転者による少しのレバー操作でも、目標速度が通常よりも大きく減少する。目標速度の減少によって自車両の速度Vが交通流目標速度Vtgt_next付近になったときには、目標速度をダウンする側のレバー用ゲインが小さいので、運転者がレバー操作をしても、目標速度があまり減少しない。
【0074】
車両制御ECU51では、運転者によるクルーズレバー操作に応じて設定(変更)された目標速度と自車両の速度Vとの差に基づいて、自車両の速度が目標速度になるために必要な目標加減速度を演算する(S18)。目標加減速度がプラス値の場合、車両制御ECU51では、目標加速度を設定し、エンジン制御信号をエンジン制御ECU30に送信する(S18)。エンジン制御ECU30では、このエンジン制御信号を受信すると、エンジン制御信号に示される目標加速度になるために必要なスロットルバルブの目標開度を設定し、目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータ40に送信する。スロットルアクチュエータ40では、この目標スロットル開度信号を受信すると、目標スロットル開度信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。これによって、自車両では、運転者によって設定された目標速度になるように加速する。目標加減速度がマイナス値の場合、車両制御ECU51では、目標減速度を設定し、ブレーキ制御信号をブレーキ制御ECU31に送信する(S18)。ブレーキ制御ECU31では、このブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に示される目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダの目標ブレーキ油圧を設定し、目標油圧信号をブレーキアクチュエータ41に送信する。ブレーキアクチュエータ41では、この目標油圧信号を受信すると、目標油圧信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。これによって、自車両では、運転者によって設定された目標速度になるように減速する。
【0075】
このACCシステム1によれば、交通流目標速度と自車両の速度との差に応じてクルーズレバー操作に対するレバー用ゲインを変更することにより、運転者のクルーズレバー操作によって交通流目標速度への目標速度の調整を容易に実施できる。この調整した目標速度に基づくクルーズ制御によって、無駄な加減速を抑制でき、安全で交通流に乗ったスムーズな走行が可能となる。例えば、前方の渋滞に突入する場合にはレーダで前方の車両を検知する前に事前に減速でき、周辺が流れている場合にはその流れに迅速に溶け込んで走行できる。
【0076】
特に、ACCシステム1では、交通流目標速度と自車両の速度との差が大きいほど大きなレバー用ゲインを設定することにより、運転者による少しのレバー操作でも大きく目標速度を変化させることができ、目標速度を迅速に交通流目標速度に近づけることができる。また、ACCシステム1では、交通流目標速度と自車両の速度との差が小さいほど小さなレバー用ゲインを設定することにより、運転者によるレバー操作に対して小さくしか目標速度が変化せず、交通流目標速度付近での目標速度の微調整を容易に行うことができる。
【0077】
また、ACCシステム1では、自車両の速度(目標速度)が交通流目標速度を超えて速度制御値以上になるとレバー用ゲインを0に設定することにより、交通流の実勢速度に応じて目標速度(ひいては、クルーズ制御による自車両の速度)を制限でき、無駄な加速や減速を更に抑制できる。例えば、交通流目標速度よりもかなり高い目標速度が設定された場合にはこの目標速度に基づくクルーズ制御で必要以上の加速によって前方の交通流に沿った車両に追い付き、その後に無駄な減速を行うことになるが、このような無駄な加速や減速を行うことを防止できる。
【0078】
また、ACCシステム1では、車車間通信可能な自車両周辺の他車両の速度に基づいて交通流に適応した交通流目標速度を求めることにより、周辺の交通流に適応した速度への調整を容易に実施でき、交通流に従った走行ができる。
【0079】
図1を参照して、第2の実施の形態に係るACCシステム2について説明する。
【0080】
ACCシステム2は、第1の実施の形態に係るACCシステム1と比較すると、交通流クルーズ制御時に運転者のアクセル操作やブレーキ操作によって交通流目標速度への速度調整を容易にするために、アクセル操作やブレーキ操作に対する各ゲインを変更する点が異なる。したがって、交通流クルーズ制御時には、運転者が周辺の交通流に合わせようとしてアクセル操作やブレーキ操作を行うと、交通流目標速度に一致する方向へ自車両の速度が通常よりも迅速かつ容易に変化する。この際、運転者がアクセル操作又はブレーキ操作を開始するとその操作量に応じて加減速制御を行うが、運転者がその操作をオフした後に自車両の速度が交通流目標速度付近になると、そのときの自車両の速度を目標速度としてクルーズ制御を行う。
【0081】
したがって、ACCシステム2は、第1の実施の形態に係るACCシステム1の構成と比較すると、車両制御ECU52だけが異なる。但し、エンジン制御ECU30では、車両制御ECU52からアクセル用ゲイン変更信号を受信すると、そのアクセル用ゲイン変更信号に示されるアクセル用ゲインと運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に基づいて目標加速度を演算する。また、ブレーキ制御ECU31では、車両制御ECU52からブレーキ用ゲイン変更信号を受信すると、そのブレーキ用ゲイン変更信号に示されるブレーキ用ゲインと運転者によるブレーキペダルの踏み込み量に基づいて目標減速度を演算する。
【0082】
なお、第2の実施の形態では、アクセルペダルセンサ15、エンジン制御ECU30、スロットルアクチュエータ40による運転者のアクセル操作に応じた加速する機能及びブレーキペダルセンサ16、ブレーキ制御ECU31、ブレーキアクチュエータ41による運転者のブレーキ操作に応じた減速する機能が特許請求の範囲に記載する自車速調整手段に相当する。
【0083】
車両制御ECU52は、第1の実施の形態に係る車両制御ECU51と比較すると、交通流クルーズ制御の処理だけが異なる。そこで、車両制御ECU52における交通流クルーズ制御についてのみ説明する。
【0084】
交通流クルーズ制御について説明する。車両制御ECU52では、第1の実施の形態に係る車両制御ECU51と同様の処理により、車車間通信可能な他車両の中から交通流適応加速度を求めるための対象の車両を選択し、参照速度Vref、交通流適応加速度aenv、次交通流目標速度Vtgt_nextを順次算出する。
【0085】
車両制御ECU52では、この算出した交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差に応じてアクセル操作のアクセル用ゲイン及びブレーキ操作のブレーキ用ゲインを変更する。具体的には、車両制御ECU52では、まず、交通流目標速度Vtgt_nextが自車両の速度Vより高いか否かを判定する。
【0086】
交通流目標速度Vtgt_nextが自車両の速度Vより高い場合、車両制御ECU52では、アクセルペダル操作に応じて自車両の速度が交通流目標速度に一致する方向(加速側)に変化し易くなるように、アクセル用ゲインとして交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きなゲインを設定する。この際、ブレーキ用ゲインについては、通常値のままとする。
【0087】
交通流目標速度Vtgt_nextが自車両の速度Vより低い場合、車両制御ECU52では、ブレーキペダル操作に応じて自車両の速度が交通流目標速度に一致する方向(減速側)に変化し易くなるように、ブレーキ用ゲインとして交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きなゲインを設定する。この際、アクセル用ゲインについては、通常値よりも小さくしてもよいしあるいは通常値のままでもよい。また、アクセル操作をオフした場合のエンジンブレーキによる減速度を大きくしてもよい。
【0088】
そして、車両制御ECU52では、アクセル用ゲインを変更した場合にはそのアクセル用ゲインを示すアクセル用ゲイン変更信号をエンジン制御ECU30に送信し、ブレーキ用ゲインを変更した場合にはそのブレーキ用ゲインを示すブレーキ用ゲイン変更信号をブレーキ制御ECU31に送信する。
【0089】
車両制御ECU52では、アクセル操作中であった場合にはアクセルペダル信号に基づいてアクセル操作がオフされたか否か又はブレーキ操作中であった場合にはブレーキペダル信号に基づいてブレーキ操作がオフされたか否かを判定する。アクセル操作オフ後又はブレーキ操作オフ後、車両制御ECU52では、自車両の速度Vが(交通流目標速度Vtgt_next−目標速度変更範囲値)から(交通流目標速度Vtgt_next+目標速度変更範囲値)の範囲になった場合には、その自車両の速度Vを目標速度として設定する。この目標速度変更範囲値は、クルーズ制御の目標速度を交通流目標速度付近に設定するための値であり、例えば、数km/h程度の値が設定される。目標速度を設定した場合、車両制御ECU52では、その設定した目標速度を用いて、ノーマルクルーズ制御と同様の加減速制御を行う。
【0090】
図1を参照して、ACCシステム2における交通流クルーズ制御中の動作について説明する。特に、車両制御ECU52における交通流クルーズ制御の処理については図6のフローチャートに沿って説明する。図6は、第2の実施の形態に係る車両制御ECUにおける交通流クルーズ制御の流れを示すフローチャートである。ここでは、第1の実施の形態で説明したACCシステム1における動作と比較すると、車両制御ECU52における処理だけが異なるので、車両制御ECU52における処理のみ説明する。
【0091】
車両制御ECU52では、S20〜S26の各処理については第1の実施の形態に係る車両制御ECU51におけるS10〜S16の各処理と同様の処理を行う。S26で次交通流目標速度を演算すると、車両制御ECU52では、次交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差に応じて、次交通流目標速度Vtgt_next>自車両の速度Vの場合にはアクセル操作のアクセル用ゲインを演算し、次交通流目標速度Vtgt_next<自車両の速度Vの場合にはブレーキ操作のブレーキ用ゲインを演算する(S27)。そして、車両制御ECU52では、アクセル用ゲインを変更した場合にはアクセル用ゲイン変更信号をエンジン制御ECU30に送信し、ブレーキ用ゲインを変更した場合にはブレーキ用ゲイン変更信号をブレーキ制御ECU31に送信する。
【0092】
次交通流目標速度Vtgt_next>自車両の速度Vの場合、アクセル用ゲインが、次交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きな値になる。このとき、運転者がアクセル操作を行うと、エンジン制御ECU30では、アクセルペダルセンサ15からのアクセルペダル信号に示される踏み込み量に変更されているアクセル用ゲインを乗算して目標加速度を演算し、目標加速度になるために必要なスロットルバルブの目標開度を設定し、目標スロットル開度信号をスロットルアクチュエータ40に送信する。スロットルアクチュエータ40では、この目標スロットル開度信号を受信すると、目標スロットル開度信号に示される目標開度に応じて作動し、スロットルバルブの開度を調整する。これによって、自車両の速度Vと交通流目標速度Vtgt_nextとの速度差が大きいときには、アクセル用ゲインが大きいので、運転者による少しのアクセル操作でも、通常よりも大きく加速する。この大きな加速によって自車両の速度Vが交通流目標速度Vtgt_next付近になったときには、アクセル用ゲインが小さいので、運転者がアクセル操作をしても、あまり加速しない。
【0093】
次交通流目標速度Vtgt_next<自車両の速度Vの場合、ブレーキ用ゲインが、次交通流目標速度Vtgt_nextと自車両の速度Vとの差が大きいほど大きな値になる。このとき、運転者がブレーキ操作を行うと、ブレーキ制御ECU31では、ブレーキペダルセンサ16からのブレーキペダル信号に示される踏み込み量に変更されているブレーキ用ゲインを乗算して目標減速度を演算し、目標減速度になるために必要な各輪のホイールシリンダの目標ブレーキ油圧を設定し、目標油圧信号をブレーキアクチュエータ41に送信する。ブレーキアクチュエータ41では、この目標油圧信号を受信すると、目標油圧信号に示される目標ブレーキ油圧に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。これによって、自車両の速度Vと交通流目標速度Vtgt_nextとの速度差が大きいときには、ブレーキ用ゲインが大きいので、運転者による少しのブレーキ操作でも、通常よりも大きく減速する。この大きな減速によって自車両の速度Vが交通流目標速度Vtgt_next付近になったときには、ブレーキ用ゲインが小さいので、運転者がブレーキ操作をしても、あまり減速しない。
【0094】
車両制御ECU52では、アクセル操作中であった場合にはアクセルペダル信号に基づいてアクセル操作がオフしたか否か又はブレーキ操作中であった場合にはブレーキペダル信号に基づいてブレーキ操作がオフしたか否かを判定する。アクセル操作がオフしたと判定又はブレーキ操作がオフしたと判定した後、車両制御ECU52では、自車両の速度Vが(交通流目標速度Vtgt_next±目標速度変更範囲値)の範囲内になったか否かを判定する。自車両の速度Vが(交通流目標速度Vtgt_next±目標速度変更範囲値)の範囲内と判定した場合、車両制御ECU52では、そのときの自車両の速度Vを目標速度として設定する。そして、車両制御ECU52では、その目標速度を用いて、第1の実施の形態に係る車両制御ECU51におけるS18で説明した同様の加減速制御を行う(S28)。これによって、自車両では、目標速度(次交通流目標速度Vtgt_next付近)になるように加減速する。
【0095】
このACCシステム2は、交通流目標速度と自車両の速度との差に応じてアクセル操作やブレーキ操作に対するゲインを変更することにより、運転者の加減速操作によって交通流目標速度への速度調整を容易に実施できる。これによって、無駄な加減速を抑制でき、安全で交通流に乗ったスムーズな走行が可能となる。
【0096】
特に、ACCシステム2では、交通流目標速度と自車両の速度との差が大きいほど大きなゲインを設定することにより、運転者による少しの加減速操作でも大きく加速又は減速させることができ、自車両の速度を迅速に交通流目標速度に近づけることができる。また、ACCシステム2では、交通流目標速度と自車両の速度との差が小さいほど小さなゲインを設定することにより、運転者による加減速操作に対して小さくしか加速又は減速せず、交通流目標速度付近での自車両の速度の微調整を容易に行うことができる。
【0097】
また、ACCシステム2では、加減速操作オフ後の自車両の速度が交通流目標速度の目標速度変更範囲値内の場合には自車両の速度を目標速度として設定することにより、交通流目標速度付近でのクルーズ制御に簡単に移行でき、使用性が向上する。
【0098】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0099】
例えば、本実施の形態では先行車両追従制御とクルーズ制御を行うACCシステムに適用したが、クルーズ制御だけを行う装置などの他の装置にも適用可能である。あるいは、クルーズ制御を行わない車両において、第2の実施の形態のように交通流目標速度と自車両の速度との差に応じてアクセル操作及びブレーキ操作のゲインを変更する装置にも適用可能である。
【0100】
また、本実施の形態では推奨速度として交通流に適応した目標速度としたが、走行中道路の制限速度、赤信号で停止しない速度(すなわち、各交差点を青信号で通過し続けるための速度)などの他の速度としてもよい。また、本実施の形態では自車両周辺の車車間通信可能な他車両の速度に基づいて速度の低い車両ほど重視して交通流に適応した目標速度を求める構成としたが、他車両の位置、走行状態、属性なども考慮して交通流に適応した目標速度を求めてもよいし、あるいは、他車両の速度の平均化などの他の方法で目標速度を求めてもよい。
【0101】
また、本実施の形態では選別された対象車両に対して重みをそれぞれ設定し、各対象車両の速度と重みに基づいて参照速度を算出し、その参照速度と自車両の速度に基づいて交通流適応加速度を算出し、その交通流適応加速度と現交通流目標速度に基づいて自車両の次交通流目標速度を算出する構成としたが、対象車両の速度と設定される重みを用いて自車両の交通流目標速度を算出する方法としては他の方法でもよい。例えば、交通流適応加速度を求めることなく、対象車両毎の速度と重みから自車両の交通流目標速度を直接算出する。
【0102】
また、本実施の形態では交通流目標速度と自車両の速度との差に応じてゲインを変更する構成としたが、交通流適応加速度に応じてゲインを変更してもよい。
【0103】
また、本実施の形態では交通流目標速度と自車両の速度との差が大きいほどゲインを大きくする構成としたが、ゲインを通常値よりも一定量大きくするなど、ゲインを他の方法で変更してもよい。
【0104】
また、第1の実施の形態では自車両の速度が(交通流目標速度+速度制限値)以上になると目標速度をアップする側のゲインを0に設定あるいは自車両の速度が(交通流目標速度−速度制限値)以下になると目標速度をダウンする側のゲインを0に設定する構成としたが、このような制限を設けない構成としてもよい。
【0105】
また、本実施の形態ではACCシステムに適用し、交通流クルーズ制御において交通流目標速度と自車両の速度との差に応じてクルーズレバー操作のゲインあるいはアクセル操作及びブレーキ操作のゲインを変更する構成としたが、運転者の操作に応じて自車両の速度を調整可能な他の自車速調整手段の操作特性を変更してもよい。
【0106】
他の自車速調整手段の操作特性を変更する例としては、ペダルの反力特性を制御するアクティブアクセルペダルやアクティブブレーキペダルに適用した場合、交通流目標速度と自車両の速度との差に応じてアクセルペダルやブレーキペダルの反力特性を変更する。具体的には、速度差と反比例したペダル反力にすると、速度差が大きいときには反力が小さくなり、弱いアクセル操作やブレーキ操作でも強い加速や減速となり、速度が変化し易くなり、速度差が小さいときには反力が大きくなり、アクセル操作やブレーキ操作に対して弱い加速や減速となり、速度が変化し難い。また、自車両の速度が交通流目標速度付近ではペダル反力を大きくすることにより、運転者がペダルに足を置くこともでき、操作負担を軽減できる。このようなアクティブペダルによって、運転者にとっては、交通流に乗せ易い操作反力特性となり、ペダル操作の使用性が向上する。特に、交通流目標速度>自車両の速度の場合にはアクセルペダルの反力特性だけを変更し、交通流目標速度<自車両の速度の場合にはブレーキペダルの反力特性だけを変更するとよい。
【0107】
また、DABC[Driver Assist Breaking Control]に適用した場合、交通流目標速度<自車両の速度の場合に交通流目標速度と自車両の速度との差に応じて運転者がアクセルOFFしたときのエンジンブレーキの減速度(減速度を求めるためのゲインでもよい)を変更する。具体的には、速度差と比例した減速度にすると、速度差が大きいときには減速度が大きくなり、強い減速となり、速度差が小さいときには減速度が小さく、弱い減速となる。このようなDABCによって、運転者にとっては、普段の運転操作の延長上で、素早く、エンジンブレーキで周辺の交通流に乗せることができ、使用性が向上する。
【符号の説明】
【0108】
1,2…ACCシステム、10…前方車間距離センサ、11…無線アンテナ、12…車速センサ、13…加速度センサ、14…クルーズレバー、15…アクセルペダルセンサ、16…ブレーキペダルセンサ、20…前方センサECU、21…無線制御ECU、22…車速センサECU、23…加速度センサECU、30…エンジン制御ECU、31…ブレーキ制御ECU、40…スロットルアクチュエータ、41…ブレーキアクチュエータ、51,52…車両制御ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操作に応じて自車両の速度を調整可能な自車速調整手段を備える車両に搭載される走行支援装置であって、
自車両の推奨速度を取得する推奨速度取得手段と、
自車両の速度を検出する自車速検出手段と、
前記推奨速度取得手段で取得した推奨速度と前記自車速検出手段で検出した自車両の速度との偏差に応じて前記自車速調整手段の操作特性を変更する操作特性変更手段と
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記操作特性変更手段は、前記推奨速度取得手段で取得した推奨速度と前記自車速検出手段で検出した自車両の速度との偏差が大きいほど、自車両の速度が推奨速度に一致する方向に速度変化し易くなるように前記自車速調整手段の操作特性を変更することを特徴とする請求項1に記載する走行支援装置。
【請求項3】
前記推奨速度取得手段は、自車両周辺を走行する他車両の速度に基づいて推奨速度を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−20511(P2011−20511A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165832(P2009−165832)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】