説明

車両およびその制御方法

【課題】燃費の向上と異音や振動の抑制との何れを優先するか自由に選択できるようにする。
【解決手段】ハイブリッド自動車20では、ECOスイッチ88がオンされているときに、車速Vと通常時許容最大充電電力設定用マップに比べてバッテリ50の充電を許容する傾向の第2の関係たるECOモード時許容最大充電電力設定用マップとを用いて許容最大充電電力Pcmaxが設定され(ステップS130)、ステップS140にて許容最大充電電力Pcmaxの範囲内でバッテリ50の状態に基づいて設定される要求充電電力としての実行用充放電要求パワーPb*でバッテリ50が充電されると共に走行に要求される要求トルクTr*が得られるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される(ステップS150〜S280)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の車両として、バッテリと共にキャパシタを備え、バッテリ充電量が所定値以下のときには、エンジンを最高効率点近傍で運転して発電機から得られる発電電力によりキャパシタを充電し、キャパシタの容量が所定値以上になった以降にキャパシタからバッテリへの充電を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、このような充電制御を実行することにより燃費の向上を図っている。
【特許文献1】特開平7−23504
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の車両では、燃費の向上を図るためにキャパシタを備える関係上、装置構造が複雑化する。また、バッテリを充電する際には、上述の車両のようにエンジンを効率のよい運転ポイントで運転することにより燃費の向上を図ることができるが、停車しているときや車速が比較的小さいときにバッテリを充電するためにエンジンを効率のよい運転ポイントで運転すると、走行には不要な高い回転数やトルクが生じてしまい、このようなエンジン音や振動等により運転者や乗員に違和感を生じさせてしまうおそれもある。一方、運転者の中には、このような違和感が多少生じたとしても燃費の向上を望む者もいると考えられる。
【0004】
そこで、本発明による車両およびその制御方法は、燃費の向上と異音や振動の抑制との何れを優先するか自由に選択できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両およびその制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0006】
本発明による車両は、
動力を出力可能な内燃機関と、
前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な発電手段と、
前記発電手段と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
燃費を優先する燃費優先モードを選択するための燃費優先モード選択スイッチと、
前記燃費優先モード選択スイッチがオフされているときには第1の関係を用いて前記蓄電手段の充電に許容される最大電力である許容最大充電電力を設定し、前記燃費優先モード選択スイッチがオンされているときには前記第1の関係に比べて前記蓄電手段の充電を許容する傾向の第2の関係を用いて前記許容最大充電電力を設定する許容最大充電電力設定手段と、
前記設定された許容最大充電電力の範囲内で前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充電するための要求充電電力を設定する要求充電電力設定手段と、
車両に要求される要求動力を設定する要求動力設定手段と、
前記設定された要求充電電力で前記蓄電手段が充電されると共に前記設定された要求動力が得られるように前記内燃機関と前記発電手段とを制御する制御手段と、
を備えるものである。
【0007】
この車両では、燃費優先モード選択スイッチがオフされているときには、第1の関係を用いて蓄電手段の充電に許容される最大電力である許容最大充電電力が設定され、燃費優先モード選択スイッチがオンされているときには、第1の関係に比べて蓄電手段の充電を許容する傾向の第2の関係を用いて許容最大充電電力が設定される。そして、この許容最大充電電力の範囲内で蓄電手段の状態に基づいて設定される要求充電電力で蓄電手段が充電されると共に車両に要求される要求動力が得られるように内燃機関と発電手段とが制御される。これにより、燃費優先モード選択スイッチがオフされているときには、発電手段により発電された電力による蓄電手段の充電が若干抑制されるものの、比較的高い回転数やトルクで内燃機関が運転されることによる異音や振動の発生を抑制することが可能となる。また、燃費優先モード選択スイッチがオンされているときには、発電手段により発電された電力による蓄電手段の充電が促進され、内燃機関が若干高い回転数やトルクで運転されることにより異音や振動が発生するものの、内燃機関をより効率のよい運転ポイントで運転することができるから、燃費を向上させることが可能となる。従って、この車両では、燃費優先モード選択スイッチを操作するだけで燃費の向上と異音や振動の抑制との何れを優先するか自由に選択することができる。
【0008】
この場合、上記車両は、車速を検出する車速検出手段を更に備えてもよく、前記第1および第2の関係は、それぞれ前記検出された車速が低いほど前記許容最大充電電力を小さくする傾向を有するものであってもよく、前記第2の関係は、同一の車速に対する前記許容最大充電電力を前記第1の関係に比べて大きく規定するものであってもよい。このように、第1および第2の関係を車速が低いほど許容最大充電電力を小さくするものとすれば、車速が低くてもロードノイズ等により内燃機関からの振動や異音をマスクすることができる。また、第2の関係を同一の車速に対する許容最大充電電力を第1の関係に比べて大きく規定するものとすれば、燃費優先モード選択スイッチがオンされたときに、燃費優先モード選択スイッチがオフされたときに比べて蓄電手段の充電がより許容されるようにすることができる。
【0009】
また、前記要求充電電力設定手段は、前記蓄電手段の状態に基づく基本充電電力と前記設定された許容最大充電電力とのうちの小さい方を前記要求充電電力として設定するものであってもよい。
【0010】
更に、前記制御手段は、走行に要求される要求駆動力を得るのに必要なパワーと前記設定された要求充電電力で前記蓄電手段を充電するのに必要なパワーとを含む要求パワーに基づいて前記内燃機関を間欠運転制御することができるものであってもよい。すなわち、この車両では、燃費優先モード選択スイッチがオンされているときに、内燃機関を効率よく運転しながら発電手段の発電電力による蓄電手段の充電を促進させ、それにより内燃機関の間欠運転の機会を増やすことで燃費をより向上させることができる。
【0011】
また、上記車両は、少なくとも前記蓄電手段からの電力を用いて所定の車軸に走行用の動力を出力可能な電動機を更に備えるものであってもよい。この場合、前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記車軸または該車軸とは異なる他の車軸とに連結され、電力と動力の入出力を伴って前記出力軸側と前記車軸側に動力を入出力する手段であってもよい。更に、上記車両は、前記内燃機関からの動力を前記車軸または該車軸とは異なる他の車軸に伝達可能な無段変速機を更に備えるものであってもよい。
【0012】
本発明による車両の制御方法は、動力を出力可能な内燃機関と、該内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な発電手段と、該発電手段と電力をやり取り可能な蓄電手段と、燃費を優先する燃費優先モードを選択するための燃費優先モード選択スイッチとを備えた車両の制御方法であって、
(a)前記燃費優先モード選択スイッチがオフされているときには第1の関係を用いて前記蓄電手段の充電に許容される最大電力である許容最大充電電力を設定し、前記燃費優先モード選択スイッチがオンされているときには前記第1の関係に比べて前記蓄電手段の充電を許容する傾向の第2の関係を用いて前記許容最大充電電力を設定するステップと、
(b)ステップ(a)で設定された許容最大充電電力の範囲内で前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充電するための要求充電電力を設定するステップと、
(c)ステップ(b)で設定された要求充電電力で前記蓄電手段が充電されると共に車両に要求される要求動力が得られるように前記内燃機関と前記発電手段とを制御するステップと、
を含むものである。
【0013】
この方法によれば、燃費優先モード選択スイッチがオフされているときには、発電手段により発電された電力による蓄電手段の充電が若干抑制されるものの、比較的高い回転数やトルクで内燃機関が運転されることによる異音や振動の発生を抑制することが可能となる。また、燃費優先モード選択スイッチがオンされているときには、発電手段により発電された電力による蓄電手段の充電が促進され、内燃機関が若干高い回転数やトルクで運転されることにより異音や振動が発生するものの、内燃機関をより効率のよい運転ポイントで運転することができるから、燃費を向上させることが可能となる。従って、この車両では、燃費優先モード選択スイッチを操作するだけで燃費の向上と異音や振動の抑制との何れを優先するか自由に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る車両としてのハイブリッド自動車20の概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車20は、エンジン22と、エンジン22の出力軸であるクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された車軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに接続されたモータMG2と、ハイブリッド自動車20の全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70等とを備えるものである。
【0016】
エンジン22は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料の供給を受けて動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により燃料噴射量や点火時期、吸入空気量等の制御を受けている。エンジンECU24には、エンジン22に対して設けられて当該エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号が入力される。そして、エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号や上記センサからの信号等に基づいてエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0017】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行う遊星歯車機構として構成されている。機関側回転要素としてのキャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、車軸側回転要素としてのリングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、動力分配統合機構30は、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側とにそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構37およびデファレンシャルギヤ38を介して最終的に駆動輪である車輪39a,39bに出力される。
【0018】
モータMG1およびモータMG2は、何れも発電機として作動すると共に電動機として作動可能な周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介して二次電池であるバッテリ50と電力のやり取りを行う。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2の何れか一方により発電される電力を他方のモータで消費できるようになっている。従って、バッテリ50は、モータMG1,MG2の何れかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになり、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されないことになる。モータMG1,MG2は、何れもモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や、図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流等が入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号等が出力される。モータECU40は、回転位置検出センサ43,44から入力した信号に基づいて図示しない回転数算出ルーチンを実行し、モータMG1,MG2の回転子の回転数Nm1,Nm2を計算している。また、モータECU40は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号等に基づいてモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0019】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からのバッテリ温度Tb等が入力されている。バッテリECU52は、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU70やエンジンECU24に出力する。更に、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量SOCも算出している。
【0020】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ(スタートスイッチ)80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置であるシフトポジションSPを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサ86からのブレーキペダルストロークBS、車速センサ87からの車速V等が入力ポートを介して入力される。また、実施例のハイブリッド自動車20の運転席近傍には、走行時の制御モードとして、異音や振動の抑制よりも燃費を優先するECOモード(燃費優先モード)を選択するためのECOスイッチ(燃費優先モード選択スイッチ)88が設けられており、このECOスイッチ88もハイブリッドECU70に接続されている。ECOスイッチ88が運転者等によりオンされると、通常時(スイッチオフ時)には値0に設定される所定のECOフラグFecoが値1に設定されると共に、予め定められた燃費優先時用の各種制御手順に従ってハイブリッド自動車20が制御されることになる。そして、ハイブリッドECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と各種制御信号やデータのやり取りを行っている。
【0021】
上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20では、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクが計算され、この要求トルクに対応する動力がリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1とモータMG2とが制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御モードとしては、要求トルクに見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2から要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するように運転制御するモータ運転モード等がある。
【0022】
次に、上述のように構成されたハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2は、ハイブリッドECU70により所定時間毎(例えば、数msec毎)に実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0023】
図2の駆動制御ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70のCPU72は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ87からの車速V、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリ50の残容量SOC、充放電要求パワーPb、バッテリ50の充放電に許容される電力である入出力制限Win,Wout、ECOスイッチフラグFecoの値といった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、モータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の残容量SOCおよび充放電要求パワーPbは、バッテリECU52から通信により入力するものとした。ここで、実施例のバッテリECU52の図示しないROMには、残容量SOCと充放電要求パワーPbとの関係を定めた充放電要求パワー設定用マップが記憶されており、バッテリECU52は、充放電電流の積算値に基づく残容量SOCに対応した充放電要求パワーPbを当該マップから導出・設定する。図3に充放電要求パワー設定用マップの一例を示す。図3に示すように、この充放電要求パワー設定用マップは、残容量SOCが低残量側閾値SL未満のときには充放電要求パワーPbを一定の充電量Pcに設定すると共に残容量SOCが高残量側閾値SH以上であるときには充放電要求パワーPbを一定の放電量Pdに設定し、残容量SOCが低残量側閾値SL以上かつ高残量側閾値SH未満であるときには充放電要求パワーPbを所定の勾配で残容量SOCに比例して増減するように設定するものとされている。なお、以下の説明において、充放電要求パワーPb(Pb*)は、充電要求側であるときに負の値となり、放電要求側であるときに正の値となるものとする。同様に、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の温度Tbとバッテリ50の残容量SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0024】
続いて、ECOフラグFecoが値0であるか否か、すなわち運転者等によりECOスイッチ88がオフされているか否かを判定する(ステップS110)。ECOスイッチ88がオフされており、ECOフラグFecoが値0である場合には、ステップS100にて入力した車速Vと第1の関係としての通常時許容最大充電電力設定用マップとを用いてバッテリ50の充電に許容される最大電力である許容最大充電電力Pcmax(実施例では負の値)を設定する(ステップS120)。また、運転者等によりECOスイッチ88がオンされており、ECOフラグFecoが値1に設定されている場合には、ステップS100にて入力した車速Vと第2の関係としてのECOモード時許容最大充電電力設定用マップとを用いて許容最大充電電力Pcmaxを設定する(ステップS130)。図4に例示するように、通常時許容最大充電電力設定用マップ(図中実線参照)とECOモード時許容最大充電電力設定用マップ(図中破線参照)とは、それぞれ車速Vと許容最大充電電力Pcmaxとの関係を規定するものであり、予め実験、解析を経て作成されてROM74に記憶されている。そして、通常時許容最大充電電力設定用マップとECOモード時許容最大充電電力設定用マップとは、それぞれ車速Vが低いほど許容最大充電電力Pcmaxを小さくする傾向を有するが、ECOモード時許容最大充電電力設定用マップは、同一の車速Vに対する許容最大充電電力Pcmaxを通常時許容最大充電電力設定用マップに比べて大きく規定するものとされている。ステップS120またはS130では、与えられた車速Vに対応した許容最大充電電力Pcmaxが通常時許容最大充電電力設定用マップまたはECOモード時許容最大充電電力設定用マップから導出・設定される。
【0025】
こうして許容最大充電電力Pcmaxを設定したならば、設定した許容最大充電電力PcmaxとステップS100にて入力した充放電要求パワーPbとのうちの大きい方を実行用充放電要求パワーPb*として設定する(ステップS140)。上述のように、実施例では、充放電要求パワーPbが充電要求側であるときに負の値とされ、放電要求側であるときに正の値とされるから、ステップS100にて入力した充放電要求パワーPbが放電要求側の正の値であるときには、ステップS140にて当該充放電要求パワーPbが実行用充放電パワーPb*として設定されることになる。また、ステップS100にて入力した充放電要求パワーPbが充電要求側の負の値(基本充電電力)であるときには、当該充放電要求パワーPbと許容最大充電電力Pcmaxの大きい方、すなわち充電電力として小さい方が実行用充放電パワーPb*として設定されることになる。次いで、ステップS100にて入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動輪たる車輪39a,39bに連結された車軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定した上で、車両全体に要求される要求パワーP*を設定する(ステップS150)。実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係が予め定められて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶されており、要求トルクTr*としては、与えられたアクセル開度Accと車速Vとに対応したものが当該マップから導出・設定される。図5に要求トルク設定用マップの一例を示す。また、実施例において、要求パワーP*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものと実行用充放電要求パワーPb*(ただし放電要求側を正とする)とロスLossとの総和として計算される。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、図示するようにモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除するか、あるいは車速Vに換算係数kを乗じることによって求めることができる。更に、設定した要求パワーP*が所定の閾値Pref以上であるか否かを判定する(ステップS160)。要求パワーP*が閾値Pref以上であるときには当該要求パワーP*をエンジン22に出力させるものとし、更にエンジン22が運転されているか否かを判定する(ステップS170)。そして、エンジン22が停止されている場合には、図示しないエンジン始動時駆動制御ルーチンの実行を指示すべくエンジン始動フラグをオンし(ステップS180)、本ルーチンを終了させる。なお、エンジン始動時駆動制御ルーチンは、本発明の中核をなすものではないから、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0026】
ステップS170にてエンジン22が運転されていると判断した場合には、ステップS150にて設定した要求パワーP*に基づいてエンジン22が効率よく運転されるようにエンジン22の目標運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS190)。実施例では、予め定められたエンジン22を効率よく動作させるための動作ラインと要求パワーP*とに基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定するものとした。図6に、エンジン22の動作ラインと目標回転数Ne*と目標トルクTe*との相関曲線とを例示する。同図に示すように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とは、動作ラインと要求パワーP*(Ne*×Te*)が一定となることを示す相関曲線との交点として求めることができる。エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定したならば、目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)とを用いて次式(1)に従いモータMG1の目標回転数Nm1*を計算した上で、計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づく式(2)の計算を実行してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップS200)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。また、動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図7に例示する。図中、左側のS軸はモータMG1の回転数Nm1に一致するサンギヤ31の回転数を示し、中央のC軸はエンジン22の回転数Neに一致するキャリア34の回転数を示し、右側のR軸はモータMG2の回転数Nm2を変速機60の現在のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。また、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1からトルクTm1を出力したときにこのトルク出力によりリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。モータMG1の目標回転数Nm1*を求めるための式(1)は、この共線図における回転数の関係を用いれば容易に導出することができる。そして、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0027】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) …(1)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt …(2)
【0028】
ステップS200にてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定したならば、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと、トルク指令Tm1*と現在のモータMG1の回転数Nm1との積として得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で除することによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および式(4)を用いて計算する(ステップS210)。次いで、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとに基づいてモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを次式(5)を用いて計算し(ステップS220)、モータMG2のトルク指令Tm2*をステップS210にて計算したトルク制限Tmin,Tmaxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値として設定する(ステップS230)。このようにしてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定することにより、車軸としてのリングギヤ軸32aに出力するトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。なお、式(5)は、図7の共線図から容易に導出することができる。こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS240)、再度ステップS100以降の処理を実行する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを得るための制御を実行する。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*を用いてモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*を用いてモータMG2が駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0029】
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(3)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr …(5)
【0030】
一方、要求パワーP*が閾値Pref未満であると判断した場合には、ステップS100にて入力した車速Vが所定の間欠許容上限車速Vref以下であるか否かを判定する(ステップS250)。実施例において、間欠許容上限車速Vrefは、例えば50〜70kmの範囲から選択される値である。そして、車速Vが間欠許容上限車速Vref以下であれば、エンジン22を停止させるべくエンジン22の目標運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とをそれぞれ値0に設定すると共に(ステップS260)、モータMG1に対するトルク指令Tm1*を値0に設定し(ステップS280)、上述のステップS210以降の処理を実行する。これにより、実施例では、車両全体に要求される要求パワーP*が比較的小さければ、車速Vが間欠許容上限車速Vref以下であることを条件としてエンジン22の間欠運転の実行が許容され、モータMG2からの動力のみによりハイブリッド自動車20を走行させることができる。また、ステップS250にて車速Vが間欠許容上限車速Vrefを上回っていると判断された場合には、エンジン22の間欠運転を許容しないものとして、エンジン22が実質的にトルクの出力を行なうことなく自立運転されるように図示しない自立回転数設定用マップを用いてエンジン22の目標回転数Ne*を車速Vに応じた自立回転数に設定すると共に目標トルクTe*を値0に設定し(ステップS270)、上述のステップS280およびステップS210以降の処理を実行する。
【0031】
このように、実施例では、運転者等によりECOスイッチ88がオンされていれば、許容最大充電電力PcmaxがECOスイッチ88のオフ時に比べて大きな値に設定される。従って、ハイブリッド自動車20では、運転者等によりECOスイッチ88がオンされていると、ECOスイッチ88のオフ時であれば要求パワーP*が比較的小さくなるとき(車速Vが比較的低くエンジン22の間欠運転が許容されるようなとき)に、要求パワーP*が比較的大きな値に設定されることになるから、ECOスイッチ88のオフ時に比べてエンジン22が比較的高い回転数や大きなトルクを生じる効率のよい運転ポイントで運転されることになる。これにより、ハイブリッド自動車20では、ECOスイッチ88がオンされているときに、モータMG1により発電された電力によるバッテリ50の充電が促進され、エンジン22が若干高い回転数やトルクで運転されることにより異音や振動が発生するものの、エンジン22をより効率のよい運転ポイントで運転して、その燃費を向上させることが可能となる。
【0032】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、燃費優先モード選択スイッチとしてのECOスイッチ88がオフされているときには、車速Vと第1の関係たる通常時許容最大充電電力設定用マップとを用いてバッテリ50の充電に許容される許容最大充電電力Pcmaxが設定され(ステップS120)、ECOスイッチ88がオンされているときには、車速Vと通常時許容最大充電電力設定用マップに比べてバッテリ50の充電を許容する傾向の第2の関係たるECOモード時許容最大充電電力設定用マップとを用いて許容最大充電電力Pcmaxが設定される(ステップS130)。そして、ステップS140にて許容最大充電電力Pcmaxの範囲内でバッテリ50の状態に基づいて設定される要求充電電力としての実行用充放電要求パワーPb*でバッテリ50が充電されると共に走行に要求される要求トルクTr*が得られるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される(ステップS150〜S280)。これにより、ECOスイッチ88がオフされているときには、モータMG1により発電された電力によるバッテリ50の充電が若干抑制されるものの、走行には不要な高い回転数やトルクでエンジン22が運転されることによる異音や振動の発生を抑制することが可能となる。また、ECOスイッチ88がオンされているときには、モータMG1により発電された電力によるバッテリ50の充電が促進され、エンジン22が若干高い回転数やトルクで運転されることにより異音や振動が発生するものの、エンジン22をより効率のよい運転ポイントで運転することができるから、その燃費を向上させることが可能となる。従って、実施例のハイブリッド自動車20では、ECOスイッチ88を操作するだけで燃費の向上と異音や振動の抑制との何れを優先するか自由に選択することが可能となる。
【0033】
また、通常時許容最大充電電力設定用マップとECOモード時許容最大充電電力設定用マップとを車速Vが低いほど許容最大充電電力Pcmaxを小さくするものとすれば、車速Vが低くてもロードノイズ等によりエンジン22からの振動や異音をマスクすることができる。更に、実施例のように、ECOモード時許容最大充電電力設定用マップを同一の車速Vに対する許容最大充電電力Pcmaxを通常時許容最大充電電力設定用マップに比べて大きく規定するものとすれば、ECOスイッチ88がオンされたときに、ECOスイッチ88がオフされたときに比べてバッテリ50の充電がより許容されるようにすることができる。そして、実施例のハイブリッド自動車20では、ECOスイッチ88がオンされているときにエンジン22を効率よく運転しながらモータMG1の発電電力によるバッテリ50の充電を促進させ、それにより要求トルクTr*を得るのに必要なパワー(Tr*×Nm2/Gr)とバッテリ50を充電するのに必要な実行用充放電要求パワーPb*とを含む要求パワーP*に基づいてエンジン22を間欠運転する機会を増やすことで燃費をより向上させることができる。
【0034】
なお、実施例のハイブリッド自動車20は、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aに接続された車軸に出力するものであるが、本発明の適用対象は、これに限られるものでもない。すなわち、本発明は、図8に示す変形例としてのハイブリッド自動車20Aのように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aに接続された車軸(車輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図8における車輪39c,39dに接続された車軸)に出力するものに適用されてもよい。更に、上記実施例のハイブリッド自動車20は、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して車輪39a,39bに接続される車軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものであるが、本発明の適用対象は、これに限られるものでもない。すなわち、本発明は、図9に示す変形例としてのハイブリッド自動車20Bのように、エンジン22のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と車輪39a,39bに動力を出力する車軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を車軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えたものに適用されてもよい。
【0035】
また、上記ハイブリッド自動車20は、車軸側回転要素としてのリングギヤ32および機関側回転要素としてのキャリア34を有する動力分配統合機構30を有するものであるが、本発明は、動力分配統合機構30の代わりに、エンジン22の動力を車軸側に伝達する動力伝達手段として無段変速機(以下「CVT」という)を備えた車両に適用されてもよい。このような車両の一例であるハイブリッド自動車20Cを図10に示す。同図に示す変形例のハイブリッド自動車20Cは、エンジン22からの動力をトルクコンバータ130や前後進切換機構135、ベルト式のCVT140、ギヤ機構37、デファレンシャルギヤ38等を介して例えば前輪である車輪39a,39bに出力する前輪駆動系と、同期発電電動機であるモータMGからの動力をギヤ機構37′、デファレンシャルギヤ38′等を介して例えば後輪である車輪39c,39dに出力する後輪駆動系と、車両全体を制御するハイブリッドECU70とを備える。この場合、トルクコンバータ130は、ロックアップ機構を有する流体式トルクコンバータとして構成される。また、前後進切換機構135は、例えばダブルピニオンの遊星歯車機構とブレーキとクラッチとを含み、前後進の切り換えやトルクコンバータ130とCVT140との接続・切離を実行する。CVT140は、機関側回転要素としてのインプットシャフト141に接続された溝幅を変更可能なプライマリプーリ143と、同様に溝幅を変更可能であって車軸側回転要素としてのアウトプットシャフト142に接続されたセカンダリプーリ144と、プライマリプーリ143およびセカンダリプーリ144の溝に巻き掛けられたベルト145とを有する。そして、CVT140は、CVT用電子制御ユニット146により駆動制御される油圧回路147からの作動油によりプライマリプーリ143およびセカンダリプーリ144の溝幅を変更することにより、インプットシャフト141に入力した動力を無段階に変速してアウトプットシャフト142に出力する。なお、CVT140は、トロイダル式のCVTとして構成されてもよい。そして、モータMGは、インバータ45を介してエンジン22により駆動されるオルタネータ29や、当該オルタネータ29からの電力ラインに出力端子が接続されたバッテリ(高圧バッテリ)50に接続されている。これにより、モータMGは、オルタネータ29やバッテリ50からの電力により駆動されたり、回生を行って発電した電力によりバッテリ50を充電したりする。このように構成されたハイブリッド自動車20Cは、運転者のアクセルペダル83の操作に応じて主としてエンジン22からの動力を例えば前輪である車輪39a,39bに出力して走行し、必要に応じて車輪39a,39bへの動力の出力に加えてモータMGからの動力を例えば後輪である車輪39c,39dに出力して4輪駆動により走行する。
【0036】
更に、本発明は、いわゆるシリーズ方式のハイブリッド自動車(図示省略)に適用されてもよい。また、本発明は、エンジン22からの動力をCVT140により車輪39a,39bに伝達すると共に、エンジン22により駆動されるオルタネータ29の発電電力により充電されるバッテリ50Dを備えた図11に例示する自動車20Dに適用されてもよい。
【0037】
ここで、上記実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明しておく。すなわち、リングギヤ軸32a等に動力を出力可能なエンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1、対ロータ電動機230、オルタネータ29が「発電手段」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、異音や振動の抑制よりも燃費を優先するECOモードを選択するためのECOスイッチ88が「燃費優先モード選択スイッチ」に相当し、図2の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッドECU70等が「許容最大充電電力設定手段」、「要求充電電力設定手段」、「要求動力設定手段」および「制御手段」に相当し、モータMG,MG2が「電動機」に相当する。なお、これら実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行われるべきものである。
【0038】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、自動車の製造産業等において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】実施例のハイブリッドECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】充放電要求パワー設定用マップの一例を示す説明図である。
【図4】通常時許容最大充電電力設定用マップとECOモード時許容最大充電電力設定用マップとを例示する説明図である。
【図5】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】エンジン22の動作ラインと目標回転数Ne*と目標トルクTe*との相関曲線とを例示する説明図である。
【図7】動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を例示する説明図である。
【図8】変形例に係るハイブリッド自動車20Aの概略構成図である。
【図9】他の変形例に係るハイブリッド自動車20Bの概略構成図である。
【図10】他の変形例に係るハイブリッド自動車20Cの概略構成図である。
【図11】他の変形例に係る自動車20Dの概略構成図である。
【符号の説明】
【0041】
20,20A,20B,20C ハイブリッド自動車、20D 自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、29 オルタネータ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37,37′ ギヤ機構、38,38′ デファレンシャルギヤ、39a〜39d 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42,45 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50,50D バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルストロークセンサ、87 車速センサ、88 ECOスイッチ、130 トルクコンバータ、135 前後進切換機構、140 CVT、141 インプットシャフト、142 アウトプットシャフト、143 プライマリプーリ、144 セカンダリプーリ、145 ベルト、146 CVT用電子制御ユニット、147 油圧回路、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG,MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力を出力可能な内燃機関と、
前記内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な発電手段と、
前記発電手段と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
燃費を優先する燃費優先モードを選択するための燃費優先モード選択スイッチと、
前記燃費優先モード選択スイッチがオフされているときには第1の関係を用いて前記蓄電手段の充電に許容される最大電力である許容最大充電電力を設定し、前記燃費優先モード選択スイッチがオンされているときには前記第1の関係に比べて前記蓄電手段の充電を許容する傾向の第2の関係を用いて前記許容最大充電電力を設定する許容最大充電電力設定手段と、
前記設定された許容最大充電電力の範囲内で前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充電するための要求充電電力を設定する要求充電電力設定手段と、
車両に要求される要求動力を設定する要求動力設定手段と、
前記設定された要求充電電力で前記蓄電手段が充電されると共に前記設定された要求動力が得られるように前記内燃機関と前記発電手段とを制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
車速を検出する車速検出手段を更に備え、
前記第1および第2の関係は、それぞれ前記検出された車速が低いほど前記許容最大充電電力を小さくする傾向を有するものであり、前記第2の関係は、同一の車速に対する前記許容最大充電電力を前記第1の関係に比べて大きく規定する車両。
【請求項3】
前記要求充電電力設定手段は、前記蓄電手段の状態に基づく基本充電電力と前記設定された許容最大充電電力とのうちの小さい方を前記要求充電電力として設定する請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御手段は、走行に要求される要求駆動力を得るのに必要なパワーと前記設定された要求充電電力で前記蓄電手段を充電するのに必要なパワーとを含む要求パワーに基づいて前記内燃機関を間欠運転制御することができる請求項1から3の何れかに記載の車両。
【請求項5】
少なくとも前記蓄電手段からの電力を用いて所定の車軸に走行用の動力を出力可能な電動機を更に備える請求項1から4の何れかに記載の車両。
【請求項6】
前記発電手段は、前記内燃機関の出力軸と前記車軸または該車軸とは異なる他の車軸とに連結され、電力と動力の入出力を伴って前記出力軸側と前記車軸側に動力を入出力する手段である請求項5に記載の車両。
【請求項7】
前記内燃機関からの動力を前記車軸または該車軸とは異なる他の車軸に伝達可能な無段変速機を更に備える請求項5に記載の車両。
【請求項8】
動力を出力可能な内燃機関と、該内燃機関からの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な発電手段と、該発電手段と電力をやり取り可能な蓄電手段と、燃費を優先する燃費優先モードを選択するための燃費優先モード選択スイッチとを備えた車両の制御方法であって、
(a)前記燃費優先モード選択スイッチがオフされているときには第1の関係を用いて前記蓄電手段の充電に許容される最大電力である許容最大充電電力を設定し、前記燃費優先モード選択スイッチがオンされているときには前記第1の関係に比べて前記蓄電手段の充電を許容する傾向の第2の関係を用いて前記許容最大充電電力を設定するステップと、
(b)ステップ(a)で設定された許容最大充電電力の範囲内で前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充電するための要求充電電力を設定するステップと、
(c)ステップ(b)で設定された要求充電電力で前記蓄電手段が充電されると共に車両に要求される要求動力が得られるように前記内燃機関と前記発電手段とを制御するステップと、
を含む車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−168860(P2008−168860A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6066(P2007−6066)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】