説明

車両およびその制御方法

【課題】出力すべき駆動力を一端低下させその後上昇させたときに出力すべき駆動力により近い駆動力を出力する。
【解決手段】駆動輪の空転によるスリップが生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いて上限回転数Nemaxを設定すると共に(S210)、上限回転数Nemaxを用いてエンジン目標回転数Ne*を設定し(S240〜S260)、目標回転数Ne*でエンジンが運転されると共にバッテリの入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸に出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する(S270〜S320)。これにより、エンジンの回転数の急増を抑制し、駆動軸に実行用要求トルクT*により近いトルクを出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、エンジンからの動力とモータからの動力とにより走行可能なハイブリッド車において、モータ走行中に駆動輪のいずれかに空転によるスリップが生じたときにはモータの回転軸の回転角加速度に基づいて設定されるトルク上限値によりモータからのトルクを制限することによりスリップを抑制するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、モータからのトルクを制限することによりスリップを抑制した直後に、エンジンを始動すると共に駆動輪にブレーキにより制動力を作用させることによってスリップを抑制するスリップ抑制制御に切り替えることにより、バッテリ50の過大な電力による放電を伴うことなく運転者の要求する駆動力を出力することができるようにしている。
【特許文献1】特開2006−44536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エンジンと、エンジンの出力軸にキャリアが接続されると共に車軸側にリングギヤが接続された遊星歯車機構と、この遊星歯車機構のサンギヤに接続された第1モータと、車軸側に動力を出力する第2モータと、第1モータや第2モータと電力のやりとりを行なうバッテリとを備える車両として、駆動輪が空転によりスリップをすると、走行に要求されるトルクを制限することによりスリップを抑制するスリップ抑制制御が実施されているものがある。こうしたスリップ抑制制御では、出力トルクの制限を受けるためにエンジンからの出力トルクも小さくするために、エンジンの回転数を低下させることも行なわれている。この場合、スリップが抑制されて収束すると出力トルクの制限も解除されるが、エンジンやバッテリから出力されたパワーの一部が回転数を低下させたエンジンの回転数を上昇させるために用いられるため、必要な出力トルクを出力できない場合が生じ、運転者に違和感を生じさせてしまう。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、駆動力を制限することにより駆動輪の空転によるスリップを抑制した後に駆動力の制限を解除したときのように、出力すべき駆動力を一端低下させその後上昇させたときに、出力すべき駆動力により近い駆動力を出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
内燃機関と、
車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を出力する電力動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、
走行のために前記駆動軸に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記設定された要求駆動力と車両の状態とに基づいて実行用駆動力を設定する実行用駆動力設定手段と、
前記設定された実行用駆動力に基づいて前記内燃機関を運転すべき目標回転数を含む目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記設定した実行用駆動力が所定時間の間に第1駆動力以上低下して第2駆動力以上上昇する所定駆動力低下上昇時ではないときには、単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで運転されると共に前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定駆動力低下上昇時であるときには該所定駆動力低下上昇時に至ってから所定の復帰条件が成立するまでは単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として前記第1変化量より小さい第2変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで運転されると共に前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、走行のために前記駆動軸に要求される要求駆動力と車両の状態とに基づいて実行用駆動力を設定し、この設定した実行用駆動力に基づいて内燃機関を運転すべき目標回転数を含む目標運転ポイントを設定する。そして、設定した実行用駆動力が所定時間の間に第1駆動力以上低下して第2駆動力以上上昇する所定駆動力低下上昇時ではないときには、単位時間当たりの内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量の範囲内で内燃機関が設定した目標運転ポイントで運転されると共に蓄電手段の入出力制限の範囲内で設定した実行用駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御し、所定駆動力低下上昇時であるときには所定駆動力低下上昇時に至ってから所定の復帰条件が成立するまでは単位時間当たりの内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量より小さい第2変化量の範囲内で内燃機関が設定した目標運転ポイントで運転されると共に蓄電手段の入出力制限の範囲内で設定した実行用駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。即ち、所定駆動力低下上昇時であるときには内燃機関の回転数の上昇率を抑えることにより、内燃機関の回転数の上昇に用いられるパワーを小さくして、実行用駆動力により近い駆動力が駆動軸に出力されるようにするのである。これにより、所定駆動力低下上昇時でも出力すべき駆動力により近い駆動力を出力することができ、運転者に違和感を生じさせるのを抑制することができる。ここで、第1駆動力と第2駆動力は、乗員に駆動力の変化を感じさせることができる程度以上の値であり、第2駆動力は第1駆動力と同一の値としてもよいし異なる値としてもよい。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記車軸に取り付けられた駆動輪の空転によるスリップを検出するスリップ検出手段を備え、前記実行用駆動力設定手段は、前記スリップ検出手段によりスリップを検出しないときには前記設定された要求駆動力を前記実行用駆動力として設定し、前記スリップ検出手段によりスリップが検出されたときには該スリップを抑制するために前記設定された要求駆動力を制限してなる駆動力を前記実行用駆動力として設定する手段である、ものとすることもできる。この場合、所定駆動力低下上昇時はとしては、スリップを抑制するために要求駆動力を制限し、その後、要求駆動力の制限が解除されたときが相当する。この他、所定駆動力低下上昇時としては、運転者が踏み込んでいたアクセルペダルを戻し、直ちに再び踏み込んだときなども相当する。
【0009】
また、本発明の車両において、前記所定の復帰条件は、所定時間経過する条件または前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで運転されている条件であるものとすることもできる。即ち、所定の復帰条件は、ある程度、定常状態に戻ったこととして捉えることができる。
【0010】
さらに、本発明の車両において、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記電動機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であるものとすることもできる。
【0011】
本発明の車両の制御方法は、
内燃機関と、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
(a)走行のために前記駆動軸に要求される要求駆動力と車両の状態とに基づいて実行用駆動力を設定すると共に該設定した実行用駆動力に基づいて前記内燃機関を運転すべき目標回転数を含む目標運転ポイントを設定し、
(b)前記設定した実行用駆動力が所定時間の間に第1駆動力以上低下して第2駆動力以上上昇する所定駆動力低下上昇時ではないときには、単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定した目標運転ポイントで運転されると共に前記蓄電手段の状態に基づく該蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限の範囲内で前記設定した実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定駆動力低下上昇時であるときには該所定駆動力低下上昇時に至ってから所定の復帰条件が成立するまでは単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として前記第1変化量より小さい第2変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定した目標運転ポイントで運転されると共に前記入出力制限の範囲内で前記設定した実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
【0012】
この本発明の車両の制御方法では、走行のために前記駆動軸に要求される要求駆動力と車両の状態とに基づいて実行用駆動力を設定し、この設定した実行用駆動力に基づいて内燃機関を運転すべき目標回転数を含む目標運転ポイントを設定する。そして、設定した実行用駆動力が所定時間の間に第1駆動力以上低下して第2駆動力以上上昇する所定駆動力低下上昇時ではないときには、単位時間当たりの内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量の範囲内で内燃機関が設定した目標運転ポイントで運転されると共に蓄電手段の入出力制限の範囲内で設定した実行用駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御し、所定駆動力低下上昇時であるときには所定駆動力低下上昇時に至ってから所定の復帰条件が成立するまでは単位時間当たりの内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量より小さい第2変化量の範囲内で内燃機関が設定した目標運転ポイントで運転されると共に蓄電手段の入出力制限の範囲内で設定した実行用駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。即ち、所定駆動力低下上昇時であるときには内燃機関の回転数の上昇率を抑えることにより、内燃機関の回転数の上昇に用いられるパワーを小さくして、実行用駆動力により近い駆動力が駆動軸に出力されるようにするのである。これにより、所定駆動力低下上昇時でも出力すべき駆動力により近い駆動力を出力することができ、運転者に違和感を生じさせるのを抑制することができる。ここで、第1駆動力と第2駆動力は、乗員に駆動力の変化を感じさせることができる程度以上の値であり、第2駆動力は第1駆動力と同一の値としてもよいし異なる値としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、駆動輪39a,39bや図示しない従動輪のブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ92と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0015】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0016】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0017】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構37およびデファレンシャルギヤ38を介して、最終的には車両の駆動輪39a,39bに出力される。
【0018】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0019】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
【0020】
ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキペダル85の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ90の圧力(ブレーキ圧)と車速Vとにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動トルクが駆動輪39a,39bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したり、ブレーキペダル85の踏み込みに無関係に、駆動輪39a,39bや従動輪に制動トルクが作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したりすることができるように構成されている。以下、ブレーキアクチュエータ92の作動により駆動輪39a,39bや図示しない従動輪に制動力を作用させる場合を油圧ブレーキと称する。ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)94により制御されている。ブレーキECU94は、図示しない信号ラインにより、駆動輪39a,39bや従動輪に取り付けられた図示しない車輪速センサからの車輪速や図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力して、運転者がブレーキペダル85を踏み込んだときに駆動輪39a,39bや従動輪のいずれかがロックによりスリップするのを防止するアンチロックブレーキシステム機能(ABS)や車両が旋回走行しているときに姿勢を保持する姿勢保持制御(VSC)なども行なう。ブレーキECU94は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってブレーキアクチュエータ92を駆動制御したり、必要に応じてブレーキアクチュエータ92の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,駆動輪39a,39bに取り付けられた車輪速センサ98a,98bからの車輪速Vwa,Vwbなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,ブレーキECU94,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,ブレーキECU94,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に駆動輪39a,39bが空転によりスリップした際の動作について説明する。図5はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,車輪速センサ98a,98bからの車輪速Vwa,Vwb,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪39a,39bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0026】
続いて、車輪速センサ98a,98bからの車輪速Vwa,Vwbと車速Vとに基づいて各車輪のスリップ率((Va−V)/V,(Vb−V)/V)のうち大きい方をスリップ率αとして計算すると共に(ステップS120)、計算したスリップ率αに基づいて駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているか否かを判定する(ステップS130)。駆動輪39a,39bの空転によるスリップが生じているか否かの判定は、スリップ率αが空転によるスリップが発生したとみなすことのできる閾値を超えているか否かを判定することにより行なうことができる。
【0027】
駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないと判定されると、設定した要求トルクTr*を実行用要求トルクT*として設定し(ステップS150)、スリップ判定フラグFの値を調べる(ステップS190)、いま、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないときを考えているから、スリップ判定フラグFには値0が設定されている。この場合、エンジン22の回転数Neにレート値Nert1を加えた値をエンジン22の上限回転数Nemaxとして設定する(ステップS200)。ここで、レート値Nert1は、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないとき、即ち、通常時にエンジン22の回転数を上昇させる際の駆動制御ルーチンの起動間隔当たりの許容される変化量として設定されるものであり、エンジン22の性能やモータMG1の性能などにより定められるものである。
【0028】
こうして実行用要求トルクT*とエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると、設定した実行用要求トルクT*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和としての値をエンジン22から出力すべきパワーである要求パワーPe*として設定すると共に(ステップS240)、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての仮回転数Netmpと仮トルクTetmpとを設定し(ステップS250)、設定した仮回転数Netmpと設定した上限回転数Nemaxとのうち小さい方をエンジン22の目標回転数Ne*として設定すると共に要求パワーPe*を目標回転数Ne*で除して得られる値をエンジン22の目標トルクTe*として設定する(ステップS260)。ここでリングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。また、仮回転数Netmpと仮トルクTetmpとの設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と仮回転数Netmpと仮トルクTetmpとを設定する様子を図7に示す。図示するように、仮回転数Netmpと仮トルクTetmpは、動作ラインと要求パワーPe*(Netmp×Tetmp)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0029】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm1tmpを計算する(ステップS270)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0030】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (1)
Tm1tmp=ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0031】
続いて、式(3)および式(4)を共に満たすモータMG1から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm1min,Tm1maxを設定し(ステップS280)、設定した仮トルクTm1tmpを式(5)によりトルク制限Tm1min,Tm1maxで制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップ290)。ここで、式(3)はモータMG1やモータMG2によりリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が値0から要求トルクTr*までの範囲内となる関係であり、式(4)はモータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内となる関係である。トルク制限Tm1min,Tm1maxの一例を図9に示す。トルク制限Tm1min,Tm1maxは、図中斜線で示した領域内のトルク指令Tm1*の最大値と最小値として求めることができる。
【0032】
0≦−Tm1/ρ+Tm2・Gr≦Tr* (3)
Win≦Tm1・Nm1+Tm2・Nm2≦Wout (4)
Tm1*=max(min(Tm1tmp,Tm1max),Tm1min) (5)
【0033】
そして、実行用要求トルクT*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(6)により計算すると共に(ステップS300)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(7)および式(8)により計算すると共に(ステップS310)、設定した仮トルクTm2tmpを式(9)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS320)。ここで、式(6)は、図8の共線図から容易に導くことができる。
【0034】
Tm2tmp=(T*+Tm1*/ρ)/Gr (6)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (7)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (8)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (9)
【0035】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS330)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに実行用要求トルクT*を出力して走行することができる。
【0036】
一方、ステップS130,S140の判定で駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていると判定されると、スリップ率αに基づいてトルク上限値Tlimを設定すると共に(ステップS160)、設定したトルク上限値Tlimにより要求トルクTr*を制限して、即ちトルク上限値Tlimと要求トルクTr*とのうち小さい方を、実行用要求トルクT*として設定し(ステップS170)、スリップ判定フラグFに値1をセットする(ステップS180)。ここで、トルク上限値Tlimの設定は、実施例では、スリップ率αとトルク上限値Tlimとの関係を予め設定してトルク上限値設定用マップとしてROM74に記憶しておき、スリップ率αが与えられるとマップから対応するトルク上限値Tminを導出することにより行なうものとした。トルク上限値設定用マップの一例を図10に示す。
【0037】
次に、スリップ判定フラグFの値を調べるが(ステップS190)、いま、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているときを考えているから、直前の処理でスリップ判定フラグFには値1がセットされている。この場合、エンジン22の回転数Neに駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないとき(スリップ判定フラグFに値0が設定されているとき)のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を加えた値をエンジン22の上限回転数Nemaxとして設定する(ステップS210)。ここで、レート値Nert2は、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているときにエンジン22の回転数を上昇させる際の駆動制御ルーチンの起動間隔当たりの許容される変化量として設定されるものであり、実施例では、スリップが生じていないときのレート値Nert1の1/10や1/20などの値を用いた。
【0038】
そして、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じてから所定時間経過したか否かを判定する(ステップS220)。ここで、所定時間は、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが収束し、グリップした状態である程度の時間(1秒程度)が経過するまでに要する時間であり、実施例では、1.5秒や2秒などを用いた。いま、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じた直後を考えているから、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じてから所定時間経過していないと判定される。この場合、トルク上限値Tlimによって制限された実行用要求トルクT*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和を要求パワーPe*として設定すると共に(ステップS240)、設定した要求パワーPe*と上述した図7の動作ラインを用いて仮回転数Netmpと仮トルクTetmpとを設定し(ステップS250)、設定した仮回転数Netmpと小さなレート値Nert2を用いて設定したエンジン22の上限回転数Nemaxとのうち小さい方をエンジン22の目標回転数Ne*として設定すると共に要求パワーPe*を目標回転数Ne*で除して得られる値をエンジン22の目標トルクTe*として設定する(ステップS260)。そして、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを用いてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し(ステップS270〜S320)、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS330)、駆動制御ルーチンを終了する。こうした制御により、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じたときには、要求トルクTr*をトルク制限値Tlimで制限した実行用要求トルクT*をバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するから、駆動輪39a,39bの空転によるスリップを抑制することができる。
【0039】
次に、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じ、スリップは収束したが、スリップが生じてから所定時間経過していないときを考える。この場合、ステップS130,S140では、スリップしていないと判定されるため、要求トルクTr*が実行用要求トルクT*に設定され(ステップS150)、スリップ判定フラグFは値1であるため、小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxが設定される(ステップS210)。そして、設定した実行用要求トルクT*と上限回転数Nemaxとを用いて上述したステップS240〜S260によりエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、この設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを用いて上述したステップS270〜S320によりモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS330)、駆動制御ルーチンを終了する。この場合の動作を直前の動作と共に考える。
【0040】
要求パワーPe*は、直前まではトルク上限値Tlimにより制限された実行用要求トルクT*に基づいて設定されていたために小さな値が設定されていたが、要求トルクTr*が実行用要求トルクT*に設定されたことにより、急増する。要求パワーPe*が急増すると、要求パワーPe*に基づいて設定される仮回転数Netmpも急増するが、小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxが設定されるため、エンジン22の目標回転数Ne*は若干の増加となる。いま、エンジン22の目標回転数Ne*が急増する場合を考えると、エンジン22の回転数を急増させるために大きなエネルギが用いられ、その分だけ、駆動軸としてのリングギヤ軸32aにトルクを出力することができなくなる。つまり、モータMG1をトルク指令Tm1*で駆動してもエンジン22の回転数を急増させるためにそのパワーが用いられ、−Tm1*/ρとして計算されるトルクがリングギヤ軸32aには出力されないことになり、−Tm1*/ρとして計算されるトルクがリングギヤ軸32aには出力されることを前提にモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータMG2を駆動する結果、リングギヤ軸32aには実行用要求トルクT*を出力することができないものとなる。しかし、実施例では、小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定してエンジン22の目標回転数Ne*を若干の増加に抑えるため、エンジン22の回転数の増加に用いられるエネルギを小さく抑えることができる。このため、モータMG1をトルク指令Tm1*で駆動制御することにより、−Tm1*/ρとして計算されるトルクに近いトルクをリングギヤ軸32aに出力することができる。この結果、駆動軸としてのリングギヤ軸32aには実行用要求トルクT*により近いトルクを出力することができる。このことは、以下のことからも理解することができる。エンジン22から出力されるパワーをエンジンパワーPe、バッテリ50に充放電されるパワーを充放電パワーPbat、走行に必要なパワーを走行用パワーPv、損失として失われるパワーを損失パワーPloss、エンジン22の回転数の変化に必要なパワーを回転数変化用パワーPiner、とすると、エネルギ収支を考えれば、次式(10)が成立する。エンジンパワーPeと充放電パワーPbatとを実行用要求トルクT*や充放電要求パワーPb*とを用いてエンジン22やバッテリ50から出力するものとしても、回転数変化用パワーPinerが大きいと、その分だけ走行用パワーPvが小さくなってしまう。実施例では、回転数変化用パワーPinerを小さくすることにより走行用パワーPvを確保するのである。
【0041】
Pe+Pbat=Pv+Ploss+Piner (10)
【0042】
なお、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じてから所定時間経過すると、スリップ判定フラグFに値0が設定される(ステップS230)。このため、次に駆動制御ルーチンが実行されたときから、要求トルクTr*が実行用要求トルクT*として設定されると共に(ステップS150)、通常時にエンジン22の回転数を上昇させる際のレート値Nert1を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxが設定され(ステップS200)、設定した実行用要求トルクT*と上限回転数Nemaxとを用いて設定されたエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*やモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*によりエンジン22やモータMG1,MG2が制御される(ステップS240〜S330)。
【0043】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御することにより、エンジン22の回転数の急増を抑制し、これにより、駆動軸としてのリングギヤ軸32aにバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*により近いトルクを出力することができる。この結果、駆動輪39a,39bの空転によるスリップが生じた直後に十分なトルクを出力することができないことによって運転者に違和感を生じさせるのを抑制することができる。もとより、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないときには、通常時のレート値Nert1を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御することにより、運転者の操作に対してエンジン22の回転数を迅速に変更してバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに実行用要求トルクT*を出力することができる。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22やモータMG1,MG2を制御するものとしたが、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じ、スリップが収束し、その後、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いて設定されたエンジン22の上限回転数Nemaxを用いて制限されたエンジン22の目標回転数Ne*が本来の目標回転数である仮回転数Netmpに至るまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22やモータMG1,MG2を制御するものとしてもよい。スリップの発生から所定時間の経過を待ったり、エンジン22の目標回転数Ne*が本来の目標回転数である仮回転数Netmpに至るまで待ったりする条件は、ある程度、エンジン22が定常運転状態になるのを待つ条件と考えることができるからである。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、車輪速センサ98a,98bからの車輪速Vwa,Vwbと車速Vとに基づいて各車輪のスリップ率((Va−V)/V,(Vb−V)/V)のうち大きい方をスリップ率αとして計算すると共に計算したスリップ率αに基づいて駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているか否かを判定するものとしたが、駆動軸としてのリングギヤ軸32aの回転角加速度のピーク値(最大値)が駆動輪39a,39bの空転によるスリップが生じているか否かを判定する閾値より大きいときにスリップが生じていると判定するものとしてもよい。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、駆動輪39a,39bの空転によるスリップが生じた直後の動作について説明したが、こうした現象は、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき実行用要求トルクT*が急に減少すると共にその直後に急に増加するときであれば同様に生じる。例えば、運転者が踏み込んでいたアクセルペダル83を急に戻し、その直後に再びアクセルペダル83を踏み込んだときを考えることができる。この場合、図5の駆動制御ルーチンに代えて図11の駆動制御ルーチンを実行すればよい。この図11の駆動制御ルーチンのステップS100〜S110の処理およびステップS180〜S330の処理は、図5の駆動制御ルーチンのステップS100〜S110の処理およびステップS180〜S330の処理と同一である。図11の駆動制御ルーチンでは、要求トルクTr*を設定すると、要求トルクTr*をそのまま実行用要求トルクT*として設定する(ステップS142)。そして、実行用要求トルクT*が閾値Tref1以上低下し、所定時間(例えば、0.5秒や1秒)以内に閾値Tref2以上増加する変動が生じたか否かを判定する(ステップS144)。ここで、閾値Tref1や閾値Tref2は、運転者や乗員にトルク変化を感じさせることができる程度以上の値を用いることができ、車両の特性などによって定めることができる。こうしたトルクの低下および上昇の変動が生じたときに変動判定フラグFに値1を設定する(ステップS180)。この図11の駆動制御ルーチンでは、トルクの低下および上昇の変動が生じていないときには、通常時のレート値Nert1を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御し、トルクの低下および上昇の変動が生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxを用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータMG1,MG2を制御することになる。このため、トルクの低下および上昇の変動が生じてから所定時間経過するまでは、エンジン22の回転数の急増を抑制し、駆動軸としてのリングギヤ軸32aにバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*により近いトルクを出力することができる。この場合、「トルクの低下および上昇の変動が生じてから所定時間経過するまで」に代えて、「エンジン22の目標回転数Ne*が本来の目標回転数である仮回転数Netmpに至るまで」を適用するものとしてもよい。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、上述した式(3),(4)を満たす範囲内でモータMG1の仮トルクTm1tmpを制限するトルク制限Tm1min,Tm1maxを求めてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共に式(7),(8)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxを求めてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定したが、式(3),(4)を満たす範囲内によるトルク制限Tm1min,Tm1maxの制限を受けることなくモータトルクTm1tmpをそのままモータMG1のトルク指令Tm1*として設定すると共にこのトルク指令Tm1*を用いて式(7),(8)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxを求めてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定するものとしても構わない。この他、モータMG2の回転数Nm2や予想モータ回転数Nm2estを用いてバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG1,MG2のトルク指令Tm1,*Tm2*を設定するものであれば、如何なる手法を用いるものとしても構わない。
【0048】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0049】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図12の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図12における車輪39c,39dに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0050】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪39a,39bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪39a,39bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0051】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両の形態としてもよいし、車両の制御方法の形態としてもよい。
【0052】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、動力分配統合機構30とモータMG1とが「電力動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づくバッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算するバッテリECU52が「入出力制限設定手段」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS110の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求駆動力設定手段」に相当し、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないときには要求トルクTr*を実行用要求トルクT*として設定し、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているときにはスリップ率αに基づいて設定されるトルク上限値Tlimによって要求トルクTr*を制限して実行用要求トルクT*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS130〜S170の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「実行用駆動力設定手段」に相当し、実行用要求トルクT*に基づいて要求パワーPe*を設定すると共に要求パワーPe*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとに基づいて仮回転数Netmp,仮トルクTetmpを設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS240,S250の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標運転ポイント設定手段」に相当し、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないときには、通常時のレート値Nert1を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して送信し、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して送信する図5の駆動制御ルーチンのステップS190〜S330の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。また、車輪速センサ98a,98bからの車輪速Vwa,Vwbと車速Vとに基づいて各車輪のスリップ率((Va−V)/V,(Vb−V)/V)のうち大きい方をスリップ率αとして計算すると共に計算したスリップ率αに基づいて駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているか否かを判定する図5の駆動制御ルーチンのステップS120,S130の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「スリップ検出手段」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。また、対ロータ電動機230も「電力動力入出力手段」に相当する。また、要求トルクTr*をそのまま実行用要求トルクT*に設定する図11の駆動制御ルーチンのステップS142の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70も「実行用駆動力設定手段」に相当し、運転者が踏み込んでいたアクセルペダル83を急に戻し、その直後に再びアクセルペダル83を踏み込んだときに要求トルクTr*がそのまま設定された実行用要求トルクT*が閾値Tref1以上低下し、所定時間(例えば、0.5秒や1秒)以内に閾値Tref2以上増加する現象であるトルクの低下および上昇の変動が生じていないときには、通常時のレート値Nert1を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して送信し、トルクの低下および上昇の変動が生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して送信する図11の駆動制御ルーチンのステップS190〜S330の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40との組み合わせも「制御手段」に相当する。
【0053】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電力動力入出力手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電力動力入出力手段や電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「入出力制限設定手段」としては、バッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいて入出力制限Win,Woutを演算するものに限定されるものではなく、残容量(SOC)や電池温度Tbの他に例えばバッテリ50の内部抵抗などに基づいて演算するものなど、蓄電手段の状態に基づいて蓄電手段を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求駆動力設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づいて要求トルクを設定するものや走行経路が予め設定されているものにあっては走行経路における走行位置に基づいて要求トルクを設定するものなど、走行のために駆動軸に要求される要求駆動力を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「実行用駆動力設定手段」としては、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないときには要求トルクTr*を実行用要求トルクT*として設定し、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているときにはスリップ率αに基づいて設定されるトルク上限値Tlimによって要求トルクTr*を制限して実行用要求トルクT*を設定するものに限定されるものではなく、要求トルクTr*をそのまま実行用要求トルクT*に設定するものとするなど、設定された要求駆動力と車両の状態とに基づいて実行用駆動力を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「目標運転ポイント設定手段」としては、実行用要求トルクT*に基づいて要求パワーPe*を設定すると共に要求パワーPe*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとに基づいて仮回転数Netmp,仮トルクTetmpを設定するものに限定されるものではなく、実行用要求トルクT*に基づいて要求パワーPe*を設定すると共に要求パワーPe*とエンジン22から最もトルクを出力する動作ラインとに基づいて仮回転数Netmp,仮トルクTetmpを設定するものとしたり、実行用要求トルクT*に基づいて要求パワーPe*を設定すると共に要求パワーPe*と騒音を排除しながらエンジン22を効率よく運転する動作ラインとに基づいて仮回転数Netmp,仮トルクTetmpを設定するものとしたりするなど、設定された実行用駆動力に基づいて内燃機関を運転すべき目標回転数を含む目標運転ポイントを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じていないときには、通常時のレート値Nert1を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22やモータMG1,MG2を制御し、駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22やモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、運転者が踏み込んでいたアクセルペダル83を急に戻し、その直後に再びアクセルペダル83を踏み込んだときに要求トルクTr*がそのまま設定された実行用要求トルクT*が閾値Tref1以上低下し、所定時間(例えば、0.5秒や1秒)以内に閾値Tref2以上増加する現象であるトルクの低下および上昇の変動が生じていないときには、通常時のレート値Nert1を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22やモータMG1,MG2を制御し、トルクの低下および上昇の変動が生じてから所定時間経過するまでは、通常時のレート値Nert1より小さなレート値Nert2を用いてエンジン22の上限回転数Nemaxを設定すると共にこの設定した上限回転数Nemaxにより仮回転数Netmpを制限してエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによりエンジン22が運転されると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で実行用要求トルクT*が駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22やモータMG1,MG2を制御するものとするなど、設定した実行用駆動力が所定時間の間に第1駆動力以上低下して第2駆動力以上上昇する所定駆動力低下上昇時ではないときには、単位時間当たりの内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量の範囲内で内燃機関が設定された目標運転ポイントで運転されると共に設定された入出力制限の範囲内で設定された実行用駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御し、所定駆動力低下上昇時であるときには所定駆動力低下上昇時に至ってから所定の復帰条件が成立するまでは単位時間当たりの内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量より小さい第2変化量の範囲内で内燃機関が設定された目標運転ポイントで運転されると共に設定された入出力制限の範囲内で設定された実行用駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「スリップ検出手段」としては、車輪速センサ98a,98bからの車輪速Vwa,Vwbと車速Vとに基づいて各車輪のスリップ率((Va−V)/V,(Vb−V)/V)のうち大きい方をスリップ率αとして計算すると共に計算したスリップ率αに基づいて駆動輪39a,39bに空転によるスリップが生じているか否かを判定するものに限定されるものではなく、駆動軸としてのリングギヤ軸32aの回転角加速度のピーク値(最大値)が駆動輪39a,39bの空転によるスリップが生じているか否かを判定する閾値より大きいときにスリップが生じていると判定するものなど、車軸に取り付けられた駆動輪の空転によるスリップを検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0054】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図8】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図9】トルク制限Tm1min,Tm1maxを設定する様子を説明する説明図である。
【図10】トルク上限値設定用マップの一例を示す説明図である。
【図11】変形例の駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図12】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図13】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0057】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、 39c,39d 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 ブレーキマスターシリンダ、92 ブレーキアクチュエータ、94 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、96a〜96d ブレーキホイールシリンダ、98a,98b 車輪速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を出力する電力動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、
走行のために前記駆動軸に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記設定された要求駆動力と車両の状態とに基づいて実行用駆動力を設定する実行用駆動力設定手段と、
前記設定された実行用駆動力に基づいて前記内燃機関を運転すべき目標回転数を含む目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記設定した実行用駆動力が所定時間の間に第1駆動力以上低下して第2駆動力以上上昇する所定駆動力低下上昇時ではないときには、単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで運転されると共に前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定駆動力低下上昇時であるときには該所定駆動力低下上昇時に至ってから所定の復帰条件が成立するまでは単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として前記第1変化量より小さい第2変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで運転されると共に前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記車軸に取り付けられた駆動輪の空転によるスリップを検出するスリップ検出手段を備え、
前記実行用駆動力設定手段は、前記スリップ検出手段によりスリップを検出しないときには前記設定された要求駆動力を前記実行用駆動力として設定し、前記スリップ検出手段によりスリップが検出されたときには該スリップを抑制するために前記設定された要求駆動力を制限してなる駆動力を前記実行用駆動力として設定する手段である、
車両。
【請求項3】
前記所定の復帰条件は、所定時間経過する条件または前記内燃機関が前記設定された目標運転ポイントで運転されている条件である請求項1または2記載の車両。
【請求項4】
前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記電動機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段である請求項1ないし3いずれか記載の車両。
【請求項5】
内燃機関と、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を出力する電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
(a)走行のために前記駆動軸に要求される要求駆動力と車両の状態とに基づいて実行用駆動力を設定すると共に該設定した実行用駆動力に基づいて前記内燃機関を運転すべき目標回転数を含む目標運転ポイントを設定し、
(b)前記設定した実行用駆動力が所定時間の間に第1駆動力以上低下して第2駆動力以上上昇する所定駆動力低下上昇時ではないときには、単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として第1変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定した目標運転ポイントで運転されると共に前記蓄電手段の状態に基づく該蓄電手段を充放電してもよい許容最大電力である入出力制限の範囲内で前記設定した実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定駆動力低下上昇時であるときには該所定駆動力低下上昇時に至ってから所定の復帰条件が成立するまでは単位時間当たりの前記内燃機関の回転数の上昇側の変化量として前記第1変化量より小さい第2変化量の範囲内で前記内燃機関が前記設定した目標運転ポイントで運転されると共に前記入出力制限の範囲内で前記設定した実行用駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする車両の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−247265(P2008−247265A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92911(P2007−92911)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】