説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】運転者の嗜好に関する情報の記憶量および処理負荷を抑制しつつ、初めて走行する経路において、運転者の嗜好を考慮した走行モードで車両を走行させる。
【解決手段】ECUは、車速V、地図メッシュ番号、道路属性、走行位置、走行曜日、走行時間帯、および道路状況のモニタを開始するステップ(S100)と、モニタされた情報に基づいて、学習シートおよびデータ区分を特定するステップ(S102、S104)と、モニタされた情報に基づいて、平均速度を記憶すべきデータ区分を変更すると判断されると(S106にてYES)、特定されたデータ区分に平均速度を記憶するステップ(S108)とを含むプログラムを実行する。学習シートは、地図メッシュ、走行曜日ごとに設けられて管理される。データ区分は、学習シート内に設けられ、走行時間帯、道路状況、道路属性に基づいて分類される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御に関し、特に、エネルギ収支が異なる複数の走行モードを有する車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の動力源としてエンジンとモータとを併用したハイブリッド車両が公知である。ハイブリッド車両は、エンジンとモータとを同時に使用するモード(以下、HVモードとも記載する)や、エンジンを停止させてモータのみを用いて走行するモード(以下、EVモードとも記載する)など、複数の走行モードを有する。これらの走行モードを道路状況に応じて切り換えて走行する車両においては、目的地までの経路を複数の区間に分割し、ナビゲーション装置から道路データと走行履歴とを取得して各区間の負荷を推定し、推定した負荷とエンジンの燃料消費特性とに基づいて、目的地までの燃料消費量が最少となるように、各区間の走行モードを設定する。このような車両において、運転者の運転嗜好を十分に反映して走行モードを設定することができる技術が、たとえば特開2004−248455号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
この公報に開示されたハイブリッド車両の駆動制御システムは、目的地までの経路を設定するための手段と、設定された経路が定常的に走行する経路である場合に、設定された経路の走行データおよび走行環境情報を記憶して統計的に処理するための手段と、現在の走行環境情報と記憶された走行データとに基づいて、設定された経路の走行パターンを予測するための手段と、予測された走行パターンに基づいてエンジンおよびモータの運転スケジュールを設定し、設定された運転スケジュールに従ってエンジンおよびモータの動作を制御するための手段とを含む。
【0004】
この公報に開示された駆動制御システムによると、定常的に走行する経路の走行データおよび走行環境情報が記憶されて統計的に処理され、現在の走行環境情報と統計的に処理された走行データとに基づいて、定常的に走行する経路の走行パターンが予測される。そのため、定常的に走行する経路において、運転者の運転特性(運転嗜好)を十分に反映した走行パターンを予測して、適切な運転スケジュールを設定することができるので、エンジンの燃料消費量を十分に低減することができる。
【特許文献1】特開2004−248455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された駆動制御システムにおいて、初めて走行する経路においても、運転者の運転嗜好を十分に反映した走行パターンを予測することが望ましい。しかし、走行経路の各地点や走行時間ごとに走行パターンを記憶するのでは、走行パターンのデータ量が膨大となってしまう。また、膨大な走行データから最適な情報を呼び出す処理にも大きな負荷を与えてしまう。しかしながら、特許文献1には、定常的に走行する経路以外の経路における走行パターンの具体的な記憶方法や予測方法については何ら開示されていない。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者の嗜好に関する情報の記憶量および処理負荷を抑制しつつ、初めて走行する経路において、運転者の嗜好を考慮した走行モードで車両を走行させることができる制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る制御装置は、複数の走行モードを有する車両を制御する。この制御装置は、運転者の嗜好に影響される車両の走行情報を検出するための手段と、少なくとも道路情報に基づいて分類されたカテゴリごとに、走行情報を記憶するための記憶手段と、検出された走行情報を更新して記憶手段に記憶するための記憶制御手段と、目的地までの走行経路を探索するための手段と、探索された走行経路における道路情報を特定するための手段と、特定された道路情報に基づいて、探索された走行経路に対応するカテゴリを特定するための手段と、特定されたカテゴリにおける走行情報を記憶手段から読み出すための手段と、読み出された走行情報に基づいて、探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための予測手段と、予測されたエネルギ収支に基づいて、探索された走行経路における走行モードを設定するための設定手段と、設定された走行モードで走行するように、車両を制御するための手段とを含む。第9の発明に係る制御方法は、第1の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0008】
第1または9の発明によると、運転者の嗜好に影響される車両の走行情報(たとえば車両の速度情報)が検出される。検出された走行情報は、記憶手段にカテゴリごとに更新されて記憶される。このカテゴリは、少なくとも道路情報(たとえば道路の法定速度など)に基づいて分類される。そのため、たとえば走行情報を各地点ごとに記憶する場合に比べて、記憶手段の記憶容量を抑制することができる。これに伴って、走行情報を記憶手段に記憶する際の処理負荷を抑制することができる。探索された走行経路における道路情報に基づいて、探索された走行経路に対応するカテゴリが特定され、特定されたカテゴリにおける走行情報が記憶手段から読み出される。そのため、たとえばカテゴリを各地点ごとに分類する場合に比べて、カテゴリを特定する際の処理負荷および特定されたカテゴリにおける走行情報を読み出す際の処理負荷を抑制することができる。さらに、たとえ探索された走行経路を走行したことがなくても、道路情報が同一の道路を過去に走行していた場合には、探索された走行経路に対応するカテゴリには走行情報が既に記憶されていることになる。そのため、初めて走行する道路であっても、走行情報が読み出され、読み出された走行情報に基づいてエネルギ収支が予測される。これにより、初めて走行する道路であっても、運転者の嗜好を考慮したエネルギ収支を予測することができる。このように予測されたエネルギ収支に基づいて、探索された走行経路における走行モードが設定される。その結果、運転者の嗜好に関する情報の記憶量および処理負荷を抑制しつつ、初めて走行する道路において、運転者の嗜好を考慮した走行モードで車両を走行させることができる制御装置および制御方法を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、走行情報は、車両の速度情報である。カテゴリは、道路が設けられる地域、道路の管轄先、法定速度、勾配、車線数の少なくともいずれかに基づいて分類される。第10の発明に係る制御方法は、第2の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0010】
第2または10の発明によると、車両で消費されるエネルギの量(すなわち車両の走行負荷)は、車両の速度によって異なる場合が多い。車両の速度は、たとえば同じ道路を走行する場合であっても、運転者の嗜好によって異なる。そこで、車両の走行負荷および運転者の嗜好を表わす走行情報として、車両の速度情報が検出される。また、車両の速度は、たとえば、道路が設けられる地域が市街地であるか否か、道路が国道であるか否か、高速道路であるか否か、登坂路であるか否か、片側2車線以上であるか否かなどによっても異なる傾向にある。そこで、速度情報が記憶されるカテゴリが、道路が設けられる地域、道路の管轄先、法定速度、勾配、車線数の少なくともいずれかに基づいて分類される。このようなカテゴリで分類された速度情報に基づいて、エネルギ収支が予測される。これにより、走行する道路の違いによって生じる速度差および運転者の嗜好の違いを考慮して、エネルギ収支を適切に予測することができる。
【0011】
第3の発明に係る制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、地域は、地図データがメッシュ状に予め分割されて設定された領域である。第11の発明に係る制御方法は、第3の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0012】
第3または11の発明によると、速度情報が、地図データがメッシュ状に予め分割された領域ごとに記憶される。すなわち、走行地域の違いによって生じる運転者の嗜好の違いが、地図データに関連付けられて記憶される。これにより、エネルギ収支を予測する際、走行位置と地図データとを比較することにより、走行地域にける運転者の嗜好を考慮することができる。
【0013】
第4の発明に係る制御装置においては、第2または3の発明の構成に加えて、カテゴリは、道路情報に加えて、車両が走行した曜日、時間および道路の渋滞状況の少なくともいずれかに基づいて分類される。第12の発明に係る制御方法は、第4の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0014】
第4または12の発明によると、車両の速度は、たとえば、走行日が平日か否か、走行時間が通勤時間帯や帰宅時間帯であるか否か、道路が渋滞しているか否かなどによっても異なる傾向にある。そこで、速度情報が記憶されるカテゴリが、道路情報に加えて、車両が走行した曜日、時間および道路の渋滞状況の少なくともいずれかに基づいて分類される。これにより、車両の走行日、時間および渋滞状況の違いによって生じる速度差および運転者の嗜好の違いを考慮して、エネルギ収支を適切に予測することができる。
【0015】
第5の発明に係る制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、予測手段は、読み出された走行情報が存在するか否かを判断するための手段と、読み出された走行情報が存在すると、読み出された走行情報に基づいて、探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための手段と、読み出された走行情報が存在しないと、特定されたカテゴリに類似するカテゴリであって、かつ走行情報が記憶されたカテゴリを検索するための検索手段と、類似するカテゴリに記憶された走行情報に基づいて、探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための類似予測手段とを含む。第13の発明に係る制御方法は、第5の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0016】
第5または13の発明によると、特定されたカテゴリにおける走行情報が存在しない場合には、特定されたカテゴリに類似するカテゴリであって、かつ走行情報が記憶されたカテゴリが検索される。たとえば、特定された道路情報と類似する道路情報により分類されるカテゴリであって、かつ走行情報が記憶されたカテゴリが、類似するカテゴリとして検索される。類似するカテゴリに記憶された走行情報に基づいて、エネルギ収支が予測される。そのため、エネルギ収支を予測する際、たとえ道路情報が同一の道路を過去に走行していない場合であっても、運転者の嗜好を考慮することができる。
【0017】
第6の発明に係る制御装置においては、第5の発明の構成に加えて、類似予測手段は、特定された道路情報と、類似するカテゴリにおける道路情報とに基づいて、類似するカテゴリに記憶された走行情報を補正するための手段と、補正された走行情報に基づいて、探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための手段とを含む。第14の発明に係る制御方法は、第6の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0018】
第6または14の発明によると、特定されたカテゴリにおける走行情報が存在しない場合には、特定された道路情報と、類似するカテゴリにおける道路情報とに基づいて、類似するカテゴリに記憶された走行情報が補正され、補正された走行情報に基づいて、エネルギ収支が予測される。たとえば、特定された地域が市街地であって、類似するカテゴリの地域が市街地以外であった場合には、市街地における道路の混雑状況を考慮して、類似するカテゴリに記憶された速度情報を小さくなるように補正する。このように補正された速度情報に基づいて、エネルギ収支が予測される。これにより、類似するカテゴリの走行情報を用いる場合であっても、エネルギ収支をより適切に予測することができる。
【0019】
第7の発明に係る制御装置においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、車両は、内燃機関およびモータの少なくともいずれかを走行源とするハイブリッド車両である。複数の走行モードは、内燃機関とモータとを同時に使用する第1モードと、内燃機関を停止させてモータを用いて走行する第2モードとを含む。第15の発明に係る制御方法は、第7の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0020】
第7または15の発明によると、内燃機関とモータとを同時に使用する第1モードと、内燃機関を停止させてモータを用いて走行する第2モードとを、予測されたエネルギ収支に基づいてバランスよく設定することにより、燃料消費効率を向上させることができる。
【0021】
第8の発明に係る制御装置においては、第7の発明の構成に加えて、ハイブリッド車両には、外部電源からの電力を充電してモータに供給することができる蓄電機構が備えられる。予測手段は、探索された走行経路における蓄電機構の蓄電状態を予測するための手段を含む。設定手段は、目的地における蓄電状態が予め定められた蓄電量よりも少なくなるように、探索された走行経路における走行モードを設定するための手段を含む。第16の発明に係る制御方法は、第8の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【0022】
第8または16の発明によると、ハイブリッド車両には、外部電源からの電力を充電してモータに供給することができる蓄電機構が備えられる。このようなハイブリッド車両においては、目的地での外部電源からの充電が可能であるため、燃料消費効率を向上させるためには、走行中において蓄電機構の余剰電力を使い切るように、モータで走行することが望ましい。そこで、目的地における蓄電状態が予め定められた蓄電量よりも少なくなるように走行モードが設定される。これにより、走行中において蓄電機構の余剰電力を使い切ることができ、不要な燃料消費を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両1について説明する。なお、本発明に係る制御装置を適用できる車両は、エネルギ収支が異なる複数の走行モードを有する車両であれば、図1に示すハイブリッド車両に限定されず、他の態様を有するハイブリッド車両であってもよい(いわゆるパラレル型であってもよくパラレルシリーズ型であってもよい)。また、ハイブリッド車両以外の車両であってもよい。
【0025】
ハイブリッド車両1は、前輪20R,20Lと、後輪22R,22Lと、エンジン2と、プラネタリギヤ16と、デファレンシャルギヤ18と、ギヤ4,6とを含む。
【0026】
ハイブリッド車両1は、さらに、車両後方に配置されるバッテリBと、バッテリBの出力する直流電力を昇圧する昇圧ユニット32と、昇圧ユニット32との間で直流電力を授受するインバータ36と、プラネタリギヤ16を経由してエンジン2と結合され主として発電を行なうモータジェネレータMG1と、回転軸がプラネタリギヤ16に接続されるモータジェネレータMG2とを含む。
【0027】
インバータ36は、モータジェネレータMG1,MG2に接続され、交流電力と昇圧ユニット32からの直流電力との変換を行なう。
【0028】
プラネタリギヤ16は、第1〜第3の回転軸を有する。第1の回転軸はエンジン2に接続され第2の回転軸はモータジェネレータMG1に接続され第3の回転軸はモータジェネレータMG2に接続される。
【0029】
この第3の回転軸にはギヤ4が取付けられ、このギヤ4はギヤ6を駆動することによりデファレンシャルギヤ18に動力を伝達する。デファレンシャルギヤ18はギヤ6から受ける動力を前輪20R,20Lに伝達するとともに、ギヤ6,4を経由して前輪20R,20Lの回転力をプラネタリギヤの第3の回転軸に伝達する。
【0030】
プラネタリギヤ16は、エンジン2およびモータジェネレータMG1,MG2の間で動力を分割する役割を果たす。すなわち、プラネタリギヤ16の3つの回転軸のうち2つの回転軸の回転が定まれば、残る1つの回転軸の回転は強制的に決定される。したがって、エンジン2を最も効率のよい領域で動作させつつ、モータジェネレータMG1の発電量を制御してモータジェネレータMG2を駆動させることにより車速の制御を行ない、全体としてエネルギ効率のよい自動車を実現している。
【0031】
なお、モータジェネレータMG2の回転を減速してプラネタリギヤPGに伝達する減速ギヤを設けても良く、その減速ギヤの減速比を変更可能にした変速ギヤを設けてもよい。
【0032】
直流電源であるバッテリBは、たとえばニッケル水素またはリチウムイオンなどの二次電池を含み、直流電力を昇圧ユニット32に供給するとともに、昇圧ユニット32からの直流電力によって充電される。なお、バッテリBの種類は特に限定されるものではない。また、バッテリBの代わりにキャパシタを用いても構わない。
【0033】
昇圧ユニット32は、バッテリBから受ける直流電圧を昇圧してその昇圧された直流電圧をインバータ36に供給する。インバータ36は供給された直流電圧を交流電圧に変換してエンジン始動時にはモータジェネレータMG1を駆動制御する。また、エンジン始動後には、モータジェネレータMG1が発電した交流電力はインバータ36によって直流に変換され、昇圧ユニット32によってバッテリBの充電に適切な電圧に変換されてバッテリBが充電される。
【0034】
また、インバータ36はモータジェネレータMG2を駆動する。モータジェネレータMG2はエンジン2を補助して前輪20R,20Lを駆動する。制動時には、モータジェネレータは回生運転を行ない、車輪の回転エネルギを電気エネルギに変換する。得られた電気エネルギは、インバータ36および昇圧ユニット32を経由してバッテリBに戻される。バッテリBは組電池であり、直列に接続された複数の電池ユニットB0〜Bnを含む。昇圧ユニット32とバッテリBとの間にはシステムメインリレー28,30が設けられ、車両非運転時には高電圧が遮断される。
【0035】
ハイブリッド車両1は、さらに、ECU(Electric Control Unit)100を含む。ECU100は、運転者の指示および車両に取付けられた各種センサからの出力に応じて、エンジン2、インバータ36、昇圧ユニット32およびシステムメインリレー28,30の制御を行なう。
【0036】
図2を参照して、ECU100について説明する。図2は、図1のECU100の機能ブロックと関連する周辺装置とを示した図である。なお、ECU100は、ソフトウェアでもハードウェアでも実現が可能である。
【0037】
ECU100は、ハイブリッド制御部62と、ナビゲーション制御部64と、バッテリ制御部66と、エンジン制御部68とを含む。
【0038】
バッテリ制御部66は、バッテリBの蓄電状態SOCをバッテリBの充放電電流の積算などにより求めてこれをハイブリッド制御部62に送信する。
【0039】
エンジン制御部68は、エンジン2のスロットル制御を行なうとともに、エンジン2のエンジン回転数Neを検出してハイブリッド制御部62に送信する。
【0040】
ハイブリッド制御部62は、アクセルポジションセンサ42の出力信号Accと車速センサ44で検出された車速Vとに基づいて、運転者の要求する出力(要求パワー)を算出する。ハイブリッド制御部62は、この運転者の要求パワーに加え、バッテリBの蓄電状態SOCを考慮して必要な駆動力(トータルパワー)を算出し、エンジンに要求する回転数とエンジンに要求するパワーとをさらに算出する。
【0041】
ハイブリッド制御部62は、エンジン制御部68に要求回転数と要求パワーとを送信し、エンジン制御部68にエンジン2のスロットル制御を行なわせる。
【0042】
ハイブリッド制御部62は、走行状態に応じた運転者要求トルクを算出し、インバータ36にモータジェネレータMG2を駆動させるとともに、必要に応じてモータジェネレータMG1に発電を行なわせる。
【0043】
エンジン2の駆動力は、車輪を直接駆動する分とモータジェネレータMG1を駆動する分とに分配される。モータジェネレータMG2の駆動力とエンジンの直接駆動分との合計が車両の駆動力となる。
【0044】
さらに、ハイブリッド車両1には、EV優先スイッチ46が設けられている。運転者がこのEV優先スイッチ46を押すとエンジンの作動が制限される。これにより車両は、原則としてエンジンを停止させモータジェネレータMG2の駆動力のみで走行する。深夜、早朝の住宅密集地での低騒音化や屋内駐車場、車庫内での排気ガス低減化のために、運転者は必要に応じてEV優先スイッチ46を押すことができる。
【0045】
しかし、エンジンをずっと停止させておくとバッテリが充電不足になったり、必要なパワーが得られなかったりすることがあるので、1)EV優先スイッチ46をオフにする、2)バッテリの蓄電状態SOCが所定値よりも低下する、3)車速が所定値以上となる、4)アクセル開度が規定値以上となる、といういずれかの条件が成立するとEV優先スイッチ46のオン状態は解除される。
【0046】
さらに、ハイブリッド車両1は、バッテリBに対して外部から充電を行なうための充電ユニット202を含む。充電ユニット202は、たとえば、家庭用の商用電源AC100Vを受けて直流に変換してバッテリBに充電電圧を与える。
【0047】
図3を参照して、ECU100としてコンピュータを用いた場合の一般的な構成について説明する。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)180と、A/D変換器181と、ROM182と、RAM183と、インターフェース部184とを含む。
【0048】
A/D変換器181は、各種センサの出力等のアナログ信号AINをデジタル信号に変換してCPU180に出力する。またCPU180はデータバスやアドレスバス等のバス186でROM182と、RAM183と、インターフェース部184とに接続されデータ授受を行なう。
【0049】
ROM182は、たとえばCPU180で実行されるプログラムや参照されるマップ等のデータが格納されている。RAM183は、たとえばCPU180がデータ処理を行なう場合の作業領域であり、各種変数等のデータを一時的に記憶する。
【0050】
インターフェース部184は、たとえば他のECUとの通信を行なったり、ROM182として電気的に書換可能なフラッシュメモリ等を使用した場合の書換データの入力などを行なったり、メモリカードやCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からのデータ信号SIGの読込みを行なったりする。
【0051】
なお、CPU180は、入出力ポートからデータ入力信号DINやデータ出力信号DOUTを授受する。
【0052】
ECU100は、このような構成に限られるものでなく、複数のCPUを含んで実現されるものであってもよい。また、図2のハイブリッド制御部62、ナビゲーション制御部64、バッテリ制御部66、エンジン制御部68の各々が図3のような構成を有するものであってもよい。
【0053】
本実施の形態において、ハイブリッド車両1は、エネルギ収支が異なる複数の走行モードを有する。複数の走行モードには、EVモードと、HVモードとが含まれる。
【0054】
EVモードでは、ECU100は、エンジン2を停止させた状態でモータ(主としてモータジェネレータMG2)のみを駆動してハイブリッド車両1を走行させる。このとき、バッテリBの電力が消費され、バッテリBの蓄電状態(SOC)が減少する。
【0055】
HVモードでは、ECU100は、エンジン2を運転させる。エンジン2のトルクはプラネタリギヤ16に伝達され、モータジェネレータMG1に発電を行なわせるトルクと、ギヤ4を回転させるトルクとに分配される。ギヤ4は、エンジン2からプラネタリギヤ16を介して伝達されたトルクとモータジェネレータMG2のトルクとによって回転される。このときモータジェネレータMG1で発電された電力は、モータジェネレータMG2に供給される。したがって、HVモードではEVモードに比べて、バッテリBの消費電力が抑制され、バッテリBのSOCの減少量は抑制される。なお、ハイブリッド車両1が有する走行モードは、これらのモードに限定されない。
【0056】
本実施の形態において、ナビゲーション制御部64は、乗員の操作に基づいて目的地を設定する設定処理を行ない、起点から目的地までの走行経路を設定する探索処理を行なう。
【0057】
さらに、ナビゲーション制御部64は、タッチディスプレイを含む表示部48から乗員によって設定された目的地の情報を得る。また、ナビゲーション制御部64は、ナビゲーション装置50およびジャイロセンサ52からの信号に基づいて、探索された走行経路における情報を検出する。探索された走行経路における情報には、車両の走行位置、道路が設けられる地域の地図メッシュ番号、道路属性、走行曜日、走行時間帯が含まれる。道路属性には、走行している道路が、高速道路、国道、県道、その他のいずれの道路であるのかを表わす情報が含まれている。なお、道路属性に含まれる情報はこれに限定されず、たとえば、高速道路であるか否かの情報や道路の管轄先に加え、法定速度、勾配、車線数、道路幅、道路がカーブ半径などの情報が含まれるようにしてもよい。走行時間帯には、走行している時間帯が朝、昼、夕方、夜のいずれであるのかを表わす情報が含まれている。なお、地図メッシュとは、道路地図データが予め定められた規則(たとえば100メートル四方)で網の目状に分割されて設定された領域である。各地図メッシュには、地図メッシュ番号およびメッシュ内の地域が市街地なのか否かを表わす地域区分が付与されている。
【0058】
さらに、ナビゲーション制御部64は、通信用アンテナ51または携帯電話クレドール53を経由して、道路状況を検出する。道路状況には、道路が混雑(渋滞)しているのか、順調であるのかを表わす情報が含まれる。道路状況は、VICS(Vehicle Information and Communication System)等のサービスで提供される。なお、道路状況はこれに限定されず、たとえば、渋滞のレベルを表わす情報が含まれるようにしてもよい。
【0059】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置の機能ブロック図について説明する。図4に示すように、この制御装置は、平均速度検出部102と、平均速度記憶部104と、走行パターン設定部106と、走行制御部108とを含む。
【0060】
平均速度検出部102は、車速センサ44およびナビゲーション装置50などからの信号に基づいて、平均車速を検出する。なお、平均車速は、車両の走行負荷および運転者の運転嗜好を表わす情報として検出される。
【0061】
平均速度記憶部104は、検出された平均車速を、地図メッシュ番号や道路属性などに基づいて分類されたデータ区分ごとに記憶する。なお、データ区分については、後に詳述する。
【0062】
走行パターン設定部106は、記憶された平均車速に基づいて、走行パターンを設定する。
【0063】
走行制御部108は、設定された走行パターンに基づいて、車両を走行させるように、エンジン2、インバータ36および昇圧ユニット32に制御信号を送信する。
【0064】
このような機能ブロックを有する本実施の形態に係る制御装置は、デジタル回路やアナログ回路の構成を主体としたハードウェアでも、ECUに含まれるCPUおよびメモリとメモリから読み出されてCPUで実行されるプログラムとを主体としたソフトウェアでも実現することが可能である。一般的に、ハードウェアで実現した場合には動作速度の点で有利で、ソフトウェアで実現した場合には設計変更の点で有利であると言われている。以下においては、ソフトウェアとして制御装置を実現した場合を説明する。なお、このようなプログラムを記録した記録媒体についても本発明の一態様である。
【0065】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU100が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0066】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU100は、車速センサ44およびナビゲーション装置50などからの信号に基づいて、車速V、地図メッシュ番号、道路属性、走行位置、走行曜日、走行時間帯、および道路状況のモニタを開始する。
【0067】
S102にて、ECU100は、モニタされた地図メッシュ番号および走行曜日に基づいて、学習シートを特定する。
【0068】
学習シートとは、平均速度を記憶するためのデータシートである。なお、学習シートに記憶される情報は、車両の走行負荷および運転者の運転嗜好を表わす情報であれば、平均速度に限定されない。学習シートは、地図メッシュ、曜日ごとに設けられて管理される。各学習シートには、該当する地図メッシュ番号、曜日および地域区分が付与されている。各学習シートには、図6に示すように、走行した時間帯、道路状況、道路属性に基づいて分類されたデータ区分が設けられている。平均速度は、データ区分ごとに記憶される。図6に示した学習シートは、地図メッシュ番号が「1」、曜日が「日」、地域区分が「市街地」であり、たとえば時間帯が「朝」、道路状況が「順調」、道路属性が「高速(道路)」のデータ区分に、平均速度「55(km/h)」が記憶されている例を示している。データ区分に表示される「−」は、平均速度がまだ記憶されていないことを示す。なお、学習シートの態様および分類方法は、これに限定されない。
【0069】
S104にて、ECU100は、モニタされた走行曜日、走行時間帯および道路状況に基づいて、S102で特定された学習シートのうちの、平均速度を記憶すべきデータ区分を特定する。
【0070】
S106にて、ECU100は、モニタされた走行位置、地図メッシュ番号、道路属性、走行曜日、走行時間帯、および道路状況に基づいて、平均速度を記憶すべきデータ区分を変更するか否かを判断する。たとえば、ECU100は、地図メッシュ、道路属性、走行曜日、走行時間帯、および道路状況の少なくともいずれかの変化点を検出した場合に、データ区分を変更すると判断する。データ区分を変更すると判断されると(S106にてYES)、処理はS108に移される。そうでないと(S106にてNO)、処理はS106に戻される。
【0071】
S108にて、ECU100は、S104で特定されたデータ区分の平均速度を更新する。たとえば、ECU100は、今サイクルでモニタされた速度Vと既に記憶されていた平均速度とに基づいて、今サイクルにおける平均速度を算出し、特定されたデータ区分の平均速度を算出された平均速度に更新する。なお、ECU100は、特定されたデータ区分に平均速度が記憶されていない場合には、今サイクルでモニタされた速度Vをそのまま記憶する。なお、平均速度の記憶方法および算出方法は、これに限定されない。
【0072】
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU100が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0073】
S200にて、ECU100は、操作者により表示部48にあるタッチディスプレイが操作されて、目的地が設定されたか否かを判断する。目的地が設定されると(S200にてYES)、処理はS202に移される。そうでないと(S200にてNO)、この処理は終了する。
【0074】
S202にて、ECU100は、目的地までの走行経路を探索する。この際、推奨ルート、別ルート等複数の走行経路を探索するようにしてもよい。なお、このようなルートの探索については、一般的なカーナビゲーション装置でよく用いられているので、ここでは詳細な説明は行なわない。
【0075】
S204にて、ECU100は、探索された走行経路が通過する地図メッシュ番号、道路属性、走行曜日、走行時間帯、および道路状況を特定する。たとえば、ECU100は、走行経路における地図メッシュの変化点、道路属性の変化点、曜日の変化点、時間帯の変化点、および道路状況の変化点を検出し、各変化点間における各情報を順次特定していく。
【0076】
S206にて、ECU100は、S204で特定された情報に基づいて、探索された走行経路に対応するデータ区分を特定する。
【0077】
S208にて、ECU100は、対応する各データ区分の記憶された平均速度を読み出し、平均速度が記憶されているか否かを判断する。平均速度が記憶されていると(S208にてYES)、処理はS214に移される。そうでないと(S208にてNO)、処理はS210に移される。
【0078】
S210にて、ECU100は、平均速度が記憶されていないデータ区分に類似するデータ区分を検索する。たとえば、ECU100は、平均速度が記憶されていないデータ区分における地図メッシュ番号、道路属性、走行曜日、走行時間帯、道路状況と一致する情報が多いデータ区分であって、平均速度が記憶されているデータ区分を、類似するデータ区分として検索する。この類似の判断の際、一致する情報を、たとえば、地図メッシュ番号、走行曜日、走行時間帯、道路状況、道路属性の順に優先させるようにしてもよい。なお、類似するデータ区分の検索方法はこれに限定されない。たとえば、地図メッシュの地域区分や道路の密集度が略同じであることなどを条件にして、類似するデータ区分を検索するようにしてもよい。
【0079】
S212にて、ECU100は、類似するデータ区分に記憶された平均速度を補正する。たとえば、ECU100は、平均速度が記憶されていないデータ区分の分類に用いられる情報と、類似するデータ区分の分類に用いられる情報とに基づいて、類似するデータ区分に記憶された平均速度を補正する。たとえば、ECU100は、図8に示すようなマップに基づいて、類似するデータ区分に記憶された平均速度を補正する。
【0080】
図8に示すマップにおいては、類似するデータ区分における地域区分が「村」であり、走行経路に対応するデータ区分における地域区分が「市街地」である場合(図8のNO.2の場合)、「市街地」において停止および発進を繰り返すことが多いことを考慮して、類似するデータ区分における平均速度を小さくなるように補正する。類似するデータ区分の時間帯が「夜」であり、対応するデータ区分の時間帯が「夕方」である場合(図8のNO.3の場合)、夕刻の方が渋滞が発生しやすいことを考慮して、類似するデータ区分における平均速度を小さくなるように補正する。なお、類似するデータ区分の時間帯が「朝」であり、対応するデータ区分の時間帯が「夕方」である場合(図8のNO.4の場合)には、双方とも渋滞が発生しやすい時間帯であることを考慮して、類似するデータ区分における平均速度を補正せず、そのまま使用する。類似するデータ区分の道路属性が「高速」であり、対応するデータ区分の道路属性が「県道」である場合(図8のNO.5の場合)、県道の方が法定速度が低い場合が多いことを考慮して、類似するデータ区分における平均速度を小さくなるように補正する。類似するデータ区分の道路状況が「順調」であり、対応するデータ区分の道路状況が「混雑」である場合(図8のNO.7の場合)、混雑時の車速の低下を考慮して、類似するデータ区分における平均速度を小さくなるように補正する。逆に、類似するデータ区分の道路状況が「混雑」であり、対応するデータ区分の道路状況が「順調」である場合(図8のNO.8の場合)、類似するデータ区分における平均速度を大きくなるように補正する。曜日が相違する場合(図8のNO.9,10の場合)は、類似するデータ区分における平均速度を補正せず、そのまま使用する。なお、平均速度の補正方法はこれに限定されない。
【0081】
S214にて、ECU100は、走行経路全体の平均速度パターンを予測する。ECU100は、図9に示すように、目的地までの平均速度をデータ区分ごとに並べたデータを、走行経路全体の平均速度パターンとして予測する。なお、図9には、区間Aおよび区間Bにおける平均速度がS212の処理で補正された例が示されている。
【0082】
S216にて、ECU100は、走行経路全体の平均速度パターンに基づいて、エネルギ収支を考慮した走行パターンを設定する。たとえば、ECU100は、平均速度が最も高い区間(図9においては区間A)をHV走行モードに設定し、その他の区間をEVモードに設定して、走行経路におけるSOCの収支を予想して算出する。目的地におけるSOCが下限値近傍になっているか否かを判断する。目的地におけるSOCが下限値近傍になるまでは、HVモードの設定区間を平均速度が次に高い区間に順次拡大していく。そして、目的地におけるSOCが下限値近傍になると、各区間の走行モードを、走行パターンとして設定して記憶する。図9に示す走行パターンにおいては、区間A〜CがHVモードに設定され、その他の区間がEVモードに設定されている。
【0083】
S218にて、ECU100は、設定された走行パターンに基づいた走行制御を実行する。たとえば、ECU100は、現在の走行位置を検出し、検出された走行位置において設定された走行モードで車両を走行させる。
【0084】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU100により制御されるハイブリッド車両1の動作について説明する。
【0085】
まず、ハイブリッド車両1が、車両の走行負荷および運転者の運転嗜好を表わす情報としての平均速度を記憶する際の動作について説明する。図10に示すように、ハイブリッド車両1が、道路R1,R4,R6を走行する場合を想定する。なお、現在位置を含む地図メッシュ(図10の太線で囲んだ部分)内には、2つの交差点K1、K2で区切られた7つの道路R1〜R7が含まれる。
【0086】
ハイブリッド車両1が道路R1を走行する際、現在走行している道路R1が設けられる地図メッシュの番号、道路R1の道路属性、走行曜日、走行時間帯、および道路状況がモニタされ(S100)、平均速度を記憶すべきデータ区分が特定される(S102、S104)。その後、交差点K1を右折して道路R4を走行したり、さらに交差点K2を直進して道路R6を走行したりしても、道路R1,R4,R6の道路属性が同一であり、かつその他の分類情報も同じであると、平均速度に大きな相違がないことを考慮して、特定されたデータ区分は変更されない(S106にてNO)。すなわち、道路R1,R4,R6を走行したときの平均速度が、1つのデータ区分に更新して記憶される(S108)。そのため、道路R1,R4,R6ごとに平均速度を記憶する場合に比べて、平均速度の記憶量および平均速度を記憶すべきデータ区分の特定処理負荷を抑制することができる。
【0087】
さらに、データ区分は、道路属性に加えて、走行曜日、走行時間帯および道路状況によって分類されている。これにより、道路属性、走行曜日、走行時間帯および道路の渋滞状況の違いによって生じる速度差および運転者の嗜好の違いを考慮して、平均速度を記憶することができる。
【0088】
さらに、データ区分は、地図メッシュごとに管理されている。すなわち、走行地域の違いによって生じる速度差や運転者の嗜好の違いが、地図データに関連付けられて記憶される。これにより、走行している地域にける運転者の嗜好を考慮して、平均速度を記憶することができる。
【0089】
次に、ハイブリッド車両1が、目的地までの走行経路における走行パターンを設定する際の動作について説明する。
【0090】
目的地が設定されると(S200にてYES)、目的地までの走行経路が設定され(S202)、探索された走行経路が通過する地図メッシュ番号、道路属性、走行曜日、走行時間帯、および道路状況が特定され(S204)、探索された走行経路に対応するデータ区分が特定される(S206)。特定されたデータ区分の平均速度が読み出され、平均速度が記憶されているか否かが判断される(S208)。
【0091】
上述のように、データ区分は、地図メッシュ、道路属性、走行曜日、走行時間帯および道路状況によって分類されている。そのため、たとえばデータ区分が各道路における各地点ごと、走行時間ごとなどに細かく分類されている場合に比べて、各データ区分に平均速度が記憶されているか否かを判断する際の処理負荷および各データ区分から平均速度を読み出す際の処理負荷を抑制することができる。
【0092】
さらに、平均速度が記憶されていないデータ区分がある場合には(S208にてNO)、平均速度が記憶されていないデータ区分に類似するデータ区分が検索される(S210)。これにより、たとえば同じ地域の道路を過去に走行していない場合であっても、類似する地域の平均速度の情報を得ることができる。
【0093】
さらに、平均速度が記憶されていないデータ区分の分類に用いられる情報と、類似するデータ区分の分類に用いられる情報とに基づいて、類似するデータ区分に記憶された平均速度が補正される(S212)。これにより、類似するデータ区分に記憶された平均速度を用いる場合であっても、両データ区分の違いによって生じる速度差および運転者の嗜好の違いを考慮して補正することができる。そのため、より適切な平均速度の情報を得ることができる。
【0094】
各データ区分における平均速度に基づいて、走行経路全体の平均速度パターンが予測され(S214)、平均速度パターンに基づいて、目的地においてSOCが下限値近傍になるように、走行パターンが設定される(S216)。これにより、目的地においてバッテリBの余剰電力を使い切るようにハイブリッド車両1を走行させることができるため、不要な燃料消費を抑制することができる。
【0095】
なお、目的地において、外部から充電を行なうための充電ユニット202を用いて、バッテリBを充電することができる。そのため、バッテリBを充電するために、エンジン2を運転してモータジェネレータMG1,MG2で発電する必要はない。
【0096】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、車両の走行負荷および運転者の運転嗜好を表わす情報として、平均速度が記憶される。平均速度は、データ区分ごとに分類されて記憶される。データ区分は、走行道路が設けられる地域や走行道路の属性に基づいて分類される。そのため、たとえば各道路における各地点ごとに平均速度を記憶する場合に比べて、平均速度の記憶量および処理負荷を抑制することができる。
【0097】
なお、本実施の形態においては、平均速度が記憶されていないデータ区分がある場合において、類似するデータ区分の平均速度を補正する場合について説明した。これに対し、類似するデータ区分の平均速度を補正するのではなく、たとえば、平均速度が記憶されていないデータ区分に対応する区間のSOCの収支を補正するようにしてもよい。
【0098】
また、本実施の形態において、走行経路の各区間における平均速度の精度を運転者を含むユーザに報知するために、平均速度を補正した区間あるいはSOCの収支を補正した区間を表示部48に表示してもよい。
【0099】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載される車両の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るECUの機能ブロックと関連する周辺装置とを示した図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るECUとしてコンピュータを用いた場合の一般的な構成を示した図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る制御装置の制御構造を示すフローチャート(その1)である。
【図6】本発明の実施の形態に係る学習シートを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る制御装置の制御構造を示すフローチャート(その2)である。
【図8】本発明の実施の形態に係る平均速度の補正内容を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る目的地までの距離と、予測される平均速度パターンと、算出されるSOCと、走行パターンとの関係を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の走行経路を示す図である。
【符号の説明】
【0101】
1 ハイブリッド車両、2 エンジン、4,6 ギヤ、16 プラネタリギヤ、18 デファレンシャルギヤ、20R,20L 前輪、22R,22L 後輪、28,30 システムメインリレー、32 昇圧ユニット、36 インバータ、42 アクセルポジションセンサ、44 車速センサ、46 EV優先スイッチ、48 表示部、50 ナビゲーション装置、51 通信用アンテナ、52 ジャイロセンサ、53 携帯電話クレドール、62 ハイブリッド制御部、64 ナビゲーション制御部、66 バッテリ制御部、68 エンジン制御部、100 ECU、102 平均速度検出部、104 平均速度記憶部、106 走行パターン設定部、108 走行制御部、181 変換器、184 インターフェース部、186 バス、202 充電ユニット、B バッテリ、B0,B1,Bn 電池ユニット、K1,K2 交差点、R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7 道路、MG1,MG2 モータジェネレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走行モードを有する車両の制御装置であって、
運転者の嗜好に影響される前記車両の走行情報を検出するための手段と、
少なくとも道路情報に基づいて分類されたカテゴリごとに、前記走行情報を記憶するための記憶手段と、
前記検出された走行情報を更新して前記記憶手段に記憶するための手段と、
目的地までの走行経路を探索するための手段と、
前記探索された走行経路における道路情報を特定するための手段と、
前記特定された道路情報に基づいて、前記探索された走行経路に対応するカテゴリを特定するための手段と、
前記特定されたカテゴリにおける走行情報を前記記憶手段から読み出すための手段と、
前記読み出された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための予測手段と、
前記予測されたエネルギ収支に基づいて、前記探索された走行経路における走行モードを設定するための設定手段と、
前記設定された走行モードで走行するように、前記車両を制御するための手段とを含む、制御装置。
【請求項2】
前記走行情報は、前記車両の速度情報であり、
前記カテゴリは、前記道路が設けられる地域、前記道路の管轄先、法定速度、勾配、車線数の少なくともいずれかに基づいて分類される、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記地域は、地図データがメッシュ状に予め分割されて設定された領域である、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記カテゴリは、前記道路情報に加えて、前記車両が走行した曜日、時間および前記道路の渋滞状況の少なくともいずれかに基づいて分類される、請求項2または3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記予測手段は、
前記読み出された走行情報が存在するか否かを判断するための手段と、
前記読み出された走行情報が存在すると、前記読み出された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための手段と、
前記読み出された走行情報が存在しないと、前記特定されたカテゴリに類似するカテゴリであって、かつ前記走行情報が記憶されたカテゴリを検索するための検索手段と、
前記類似するカテゴリに記憶された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための類似予測手段とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の制御装置。
【請求項6】
前記類似予測手段は、
前記特定された道路情報と、前記類似するカテゴリにおける道路情報とに基づいて、前記類似するカテゴリに記憶された走行情報を補正するための手段と、
前記補正された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するための手段とを含む、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記車両は、内燃機関およびモータの少なくともいずれかを走行源とするハイブリッド車両であり、
前記複数の走行モードは、前記内燃機関と前記モータとを同時に使用する第1モードと、前記内燃機関を停止させて前記モータを用いて走行する第2モードとを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の制御装置。
【請求項8】
前記ハイブリッド車両には、外部電源からの電力を充電して前記モータに供給することができる蓄電機構が備えられ、
前記予測手段は、前記探索された走行経路における前記蓄電機構の蓄電状態を予測するための手段を含み、
前記設定手段は、前記目的地における蓄電状態が予め定められた蓄電量よりも少なくなるように、前記探索された走行経路における走行モードを設定するための手段を含む、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
複数の走行モードを有する車両の制御方法であって、
運転者の嗜好に影響される前記車両の走行情報を検出するステップと、
少なくとも道路情報に基づいて分類されたカテゴリごとに、前記検出された走行情報を更新して記憶する記憶ステップと、
目的地までの走行経路を探索するステップと、
前記探索された走行経路における道路情報を特定するステップと、
前記特定された道路情報に基づいて、前記探索された走行経路に対応するカテゴリを特定するステップと、
前記特定されたカテゴリにおける走行情報を前記記憶ステップから読み出すステップと、
前記読み出された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測する予測ステップと、
前記予測されたエネルギ収支に基づいて、前記探索された走行経路における走行モードを設定する設定ステップと、
前記設定された走行モードで走行するように、前記車両を制御するステップとを含む、制御方法。
【請求項10】
前記走行情報は、前記車両の速度情報であり、
前記カテゴリは、前記道路が設けられる地域、前記道路の管轄先、法定速度、勾配、車線数の少なくともいずれかに基づいて分類される、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記地域は、地図データがメッシュ状に予め分割されて設定された領域である、請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記カテゴリは、前記道路情報に加えて、前記車両が走行した曜日、時間および前記道路の渋滞状況の少なくともいずれかに基づいて分類される、請求項10または11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記予測ステップは、
前記読み出された走行情報が存在するか否かを判断するステップと、
前記読み出された走行情報が存在すると、前記読み出された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するステップと、
前記読み出された走行情報が存在しないと、前記特定されたカテゴリに類似するカテゴリであって、かつ前記走行情報が記憶されたカテゴリを検索する検索ステップと、
前記類似するカテゴリに記憶された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測する類似予測ステップとを含む、請求項9〜12のいずれかに記載の制御方法。
【請求項14】
前記類似予測ステップは、
前記特定された道路情報と、前記類似するカテゴリにおける道路情報とに基づいて、前記類似するカテゴリに記憶された走行情報を補正するステップと、
前記補正された走行情報に基づいて、前記探索された走行経路におけるエネルギ収支を予測するステップとを含む、請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
前記車両は、内燃機関およびモータの少なくともいずれかを走行源とするハイブリッド車両であり、
前記複数の走行モードは、前記内燃機関と前記モータとを同時に使用する第1モードと、前記内燃機関を停止させて前記モータを用いて走行する第2モードとを含む、請求項9〜14のいずれかに記載の制御方法。
【請求項16】
前記ハイブリッド車両には、外部電源からの電力を充電して前記モータに供給することができる蓄電機構が備えられ、
前記予測ステップは、前記探索された走行経路における前記蓄電機構の蓄電状態を予測するステップを含み、
前記設定ステップは、前記目的地における蓄電状態が予め定められた蓄電量よりも少なくなるように、前記探索された走行経路における走行モードを設定するステップを含む、請求項15に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−12605(P2009−12605A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176345(P2007−176345)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】