説明

車両の駆動力制御装置

【課題】何らかの原因によってアクセルペダルが戻らない事態に陥っても駆動力を十分に低減できる車両の駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】アクセルペダル及びブレーキペダルの両方の踏み込みに基づいてフェールセーフ制御が必要であるか否かを判定するフェールセーフ判定部(110)と、アクセル操作量に基づいてエンジンを制御するための制御用アクセル操作量を設定し、フェールセーフ制御が必要であるときに制限された制御用アクセル操作量に基づいてエンジン出力を制限するエンジン制御部(130〜160)と、トランスミッションの変速比を設定する基本変速モードとその基本変速モードに比較して大きい変速比が選択される駆動力重視変速モードとを備え、フェールセーフ制御が必要であるときに駆動力重視変速モードを禁止して基本変速モードに制限して制御用アクセル操作量に基づいて変速制御するトランスミッション制御部(200)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の駆動力を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルの操作量を電気信号に変換して、この信号に基づいてアクチュエーターを駆動してスロットルバルブの開度を調整する、いわゆるドライブ・バイ・ワイヤ(drive-by-wire)システムが広く採用されている。
【0003】
また、アクセルペダルに何らかの不具合、たとえば、ドライバーがフロアマットを新たに設置し、アクセルペダルがこの新たに設置したフロアマットに引っかかることにより、踏み込んだまま戻らなくなったとしても、ブレーキペダルを踏み込めば車両を停止させることができるようにすることが求められる。
特許文献1には、車速が所定車速より小さく、かつ、アクセルペダルが所定量以上踏み込まれているときに、ブレーキペダルが踏み込まれていれば、スロット弁開度を所定開度に制限することが記載されている。
【0004】
そして、特許文献2では、スロットルバルブが固着した場合に備えて、アクセルペダルがたとえ踏まれていると検知したときでも、ブレーキペダルが踏まれている間、トランスミッションを最小変速比に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−182274号公報
【特許文献2】特開平4−50551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近の車両には、ドライバーの好みや車両の運転状態によってより大きな車両駆動力を得るために、変速比が大きくなる方向に変速特性が設定されたスポーツモードレンジや、変速比を最大変速比に固定するLモードレンジが設定されている。このように車両の駆動力を重視した変速特性で走行している状態で、前述の特許文献1のようにスロット弁開度を所定開度に制限し、さらに、前述した特許文献2のようにトランスミッションを最小変速比に制御すると、エンジンブレーキを活用できず、また、車両の運転状態によっては車両が予期せぬ挙動を発生する場合がある。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、何らかの原因によってアクセルペダルが戻らない事態に陥っても、駆動力を十分に低減できる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0009】
本発明の車両の駆動力を制御する装置は、アクセルペダル及びブレーキペダルの両方の踏み込みに基づいて、フェールセーフ制御が必要であるか否かを判定するフェールセーフ判定部と、アクセル操作量に基づいて、エンジンを制御するための制御用アクセル操作量を設定し、フェールセーフ制御が必要であるときに、制限された制御用アクセル操作量に基づいてエンジン出力を制限するエンジン制御部と、トランスミッションの変速比を設定する基本変速モードと駆動力重視変速モードとを備え、駆動力重視変速モードは基本変速モードと比較して大きい変速比が選択され、フェールセーフ制御が必要であるときに、駆動力重視変速モードを禁止して基本変速モードに制限し、前記制御用アクセル操作量に基づいて変速制御するトランスミッション制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フェールセーフ制御が必要であるときには、エンジン出力を制限するとともに、駆動力重視変速モードを禁止して基本変速モードに制限するようにしたので、エンジン出力が低下とともに変速比が十分に小さくなり、車両の駆動力が低下する。またマスターバックの負圧が大きくなってブレーキが効きやすくなるので、車速が十分に低下し安全に停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による車両の駆動力制御装置の第1実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】フェールセーフ制御判定ユニット110の制御ルーチンを説明する図である。
【図3】制御用アクセル操作量出力ユニット130の制御ルーチンを説明する図である。
【図4】ATCU200の制御ルーチンを説明する図である。
【図5】ATCU200のマップ採用処理ルーチンを説明する図である。
【図6】変速マップを例示する図である。
【図7】本発明による車両の駆動力制御装置の第2実施形態のATCU200の制御ルーチンを説明する図である。
【図8】本発明による車両の駆動力制御装置の第3実施形態のATCU200の制御ルーチンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では図面等を参照して本発明を実施するための形態について、さらに詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明による車両の駆動力制御装置の第1実施形態を示す機能ブロック図である。
【0013】
本発明による車両の駆動力制御装置は、何らかの異状事態、たとえば、ドライバーがフロアマットを新たに設置し、アクセルペダルがこの新たに設置したフロアマットに引っかかることによってアクセルペダルから足を離してもアクセルペダルが戻らなくなっても、車両を安全に停止可能にする駆動力制御装置である。
【0014】
車両の駆動力制御装置1は、エンジンコントロールモジュール(Engine Control Module;以下「ECM」と称す)100と、オートマチックトランスミッションコントロールユニット(Automatic Transmission Control Unit;以下「ATCU」と称す)200と、を含む。車両の駆動力制御装置1は、スタートスイッチがオンされると、微小時間(たとえば数ミリ秒)ごとに以下の制御を繰り返し実行する。
【0015】
なお本実施形態では、ECM100とATCU200とを分けて図示しているが、単一のコントローラーであってもよい。
【0016】
以下では実施形態の理解を容易にするために、各コントローラーの機能を仮想的なユニットとして説明する。
【0017】
ECM100は、フェールセーフ制御判定ユニット110と、A/D変換ユニット120と、制御用アクセル操作量出力ユニット130と、トルク変換各種補正ユニット140と、スロットル目標開度変換ユニット150と、スロットルモーター制御ユニット160と、を含む。
【0018】
フェールセーフ制御判定ユニット110は、ニュートラルスイッチ信号、車速信号、ブレーキスイッチ信号、アクセル実操作量に基づいてフェールセーフ制御が必要であるか否かを判定する。詳細は、後述する。なおニュートラルスイッチ信号は、シフトレバーがNレンジ又はPレンジのときにオン/それ以外のレンジのときにオフとなる信号である。ブレーキスイッチ信号は、ブレーキが踏まれていればオン/踏まれていなければオフとなる信号である。アクセル操作量センサーは、アクセルペダルの実操作量を検出して電圧として出力する。
【0019】
A/D変換ユニット120は、電圧として出力されたアクセル操作量センサー信号をアクセル実操作量に換算する。
【0020】
制御用アクセル操作量出力ユニット130は、エンジン及びオートマチックトランスミッションを制御するためのアクセル操作量を出力する。詳細は、後述する。
【0021】
トルク変換各種補正ユニット140は、制御用アクセル操作量に基づいて必要なエンジントルクを演算する。そして、そのエンジントルクを、ビークルダイナミックコントロール(Vehicle Dynamic Control)、トラクションコントロール(Traction Control)、クルーズコントロール(Cruise Control)のような、車両側からの要求トルクで補正して、目標トルクを算出する。
【0022】
スロットル目標開度変換ユニット150は、算出された目標トルクに基づいて、吸気スロットルの目標開度を算出する。
【0023】
スロットルモーター制御ユニット160は、算出された目標開度になるように、スロットルモーターを制御する。
【0024】
ATCU200は、フェールセーフ制御判定信号に基づいて、オートマチックトランスミッションをコントロールする。詳細は、後述する。
【0025】
図2は、フェールセーフ制御判定ユニット110の制御ルーチンを説明する図である。
【0026】
ステップS111においてECM100は、フェールセーフ制御中であるか否かを判定する。具体的にはフェールセーフ制御フラグが「1」であればフェールセーフ制御中であると判定する。フェールセーフ制御フラグが「0」であればフェールセーフ制御中ではないと判定する。制御中でなければECM100はステップS112に処理を移行する。制御中であればECM100はステップS117に処理を移行する。
【0027】
ステップS112においてECM100は、ニュートラルスイッチがオンであるか否かを判定する。オンであればECM100はステップS113に処理を移行する。オフであればECM100は一旦処理を抜ける。
【0028】
ステップS113においてECM100は、アクセル操作量が基準値よりも大きいか否かを判定する。大きければECM100はステップS114に処理を移行する。大きくなければECM100は一旦処理を抜ける。
【0029】
ステップS114においてECM100は、ブレーキスイッチがオンであるか否かを判定する。オフであればECM100は一旦処理を抜ける。オンであればECM100はステップS115に処理を移行する。
【0030】
ステップS115においてECM100は、車速が基準値よりも大きいか否かを判定する。大きくなければECM100は一旦処理を抜ける。大きければECM100はステップS116に処理を移行する。
【0031】
ステップS116においてECM100は、フェールセーフ制御フラグに「1」をセットする。
【0032】
ステップS117においてECM100は、ブレーキスイッチがオフであるか否かを判定する。オンであればECM100は一旦処理を抜ける。オフであればECM100はステップS118に処理を移行する。
【0033】
ステップS118においてECM100は、フェールセーフ制御フラグに「0」をセットする。
【0034】
図3は、制御用アクセル操作量出力ユニット130の制御ルーチンを説明する図である。
【0035】
ステップS131においてECM100は、フェールセーフ制御フラグが「1」であるか否かを判定する。「0」であればECM100はステップS132に処理を移行する。「1」であればECM100はステップS133に処理を移行する。
【0036】
ステップS132においてECM100は、アクセル操作量制限値としてフルオープン値を設定する。したがって実質的にはアクセル操作量を制限しない。
【0037】
ステップS133においてECM100は、アクセル操作量制限値として所定リミット値を設定する。この所定リミット値は、車両の仕様に応じて予め決められている。
【0038】
ステップS134においてECM100は、アクセル実操作量がアクセル操作量制限値を超えるか否かを判定する。超えなければECM100はステップS135に処理を移行する。超えればECM100はステップS136に処理を移行する。
【0039】
ステップS135においてECM100は、制御用アクセル操作量としてアクセル実操作量を出力する。
【0040】
ステップS136においてECM100は、制御用アクセル操作量としてアクセル操作量制限値を出力する。
【0041】
図4は、ATCU200の制御ルーチンを説明する図である。
【0042】
ステップS201においてATCU200は、フェールセーフ制御フラグが「1」であるか否かを判定する。「0」であればATCU200はステップS202に処理を移行する。「1」であればATCU200はステップS203に処理を移行する。
【0043】
ステップS202においてATCU200は、通常の処理で変速マップを採用する。なお変速マップについては後述する。
【0044】
ステップS203においてATCU200は、駆動力重視変速マップを禁止して基本変速マップに制限する。
【0045】
ステップS204においてATCU200は、車速と制御用アクセル操作量とを変速マップに適用して変速制御する。
【0046】
図5は、ATCU200のマップ採用処理ルーチンを説明する図である。
【0047】
ステップS2021においてATCU200は、駆動力重視変速マップを採用する必要があるか否かを判定する。たとえばドライバーが変速比が大きくなる方向に変速特性が設定されたスポーツモードレンジを自らの意思で選択している場合には駆動力重視変速マップを採用する必要があると判定する。またドライバーの運転性向に基づいて駆動力重視変速マップを採用する必要があるか否かを判定してもよい。さらに運転環境に基づいて駆動力重視変速マップを採用する必要があるか否かを判定してもよい。すなわち変速数から想定される加速度よりも大きければ運転環境が上り坂であると判定して、駆動力重視変速マップを採用する必要があると判定してもよい。変速数から想定される加速度よりも小さければ運転環境が下り坂であると判定して、エンジンブレーキを効かすために駆動力重視変速マップを採用する必要があると判定してもよい。
【0048】
駆動力重視変速マップを採用する必要がなければ、ATCU200はステップS2022に処理を移行する。駆動力重視変速マップを採用する必要があれば、ATCU200はステップS2023に処理を移行する。
【0049】
ステップS2022においてATCU200は、基本変速マップを採用する。
【0050】
ステップS2023においてATCU200は、駆動力重視変速マップを採用する。
【0051】
図6は、変速マップを例示する図であり、図6(A)は基本変速マップを示し、図6(B)は駆動力重視変速マップを示す。
【0052】
図6(A)は通常の走行時に使用される基本変速マップの一例である。
【0053】
横軸が車速であり、縦軸がアクセル操作量である。図中太線がシフトアップで使用される変速ラインである。図中細線がシフトダウンで使用される変速ラインである。
【0054】
図6(B)は通常の走行よりも大きな駆動力が要求されるときに使用される駆動力重視変速マップの一例である。
【0055】
図6(A)の基本変速マップと図6(B)の駆動力重視変速マップとを比較すると、特にアクセル操作量が小さい領域において、駆動力重視変速マップのほうが基本変速マップよりもロー側の変速数、すなわち大きい変速比が選択されることが判る。換言すれば基本変速マップのほうが駆動力重視変速マップよりもハイ側の変速数、すなわち小さい変速比が選択されることが判る。
【0056】
本実施形態の制御を実行すると以下のようになる。
【0057】
すなわち走行中に、何らかの異状事態によってアクセルペダルから足を離してもアクセルペダルが戻らなくなっても、ブレーキペダルが踏まれると、フェールセーフ制御判定ユニット110は、ステップS111→S112→S113→S114→S115→S116と処理して、フェールセーフ制御フラグに「1」をセットする。
【0058】
そして、制御用アクセル操作量出力ユニット130は、ステップS131→S133→S134→S136と処理して、制御用アクセル操作量として、アクセル実操作量よりも小さいアクセル操作量制限値を出力する。そして、トルク変換各種補正ユニット140が目標トルクを算出し、スロットル目標開度変換ユニット150が吸気スロットルの目標開度を算出し、スロットルモーター制御ユニット160がスロットルモーターを制御する。これによってスロットル開度が絞られてエンジン出力が低下する。またスロットル開度が絞られると吸気負圧が上昇するので、マスターバックの負圧が大きくなりブレーキが効きやすくなる。
【0059】
一方、ATCU200は、ステップS201→S203→S204と処理して、駆動力重視変速マップを禁止して基本変速マップに制限する。上述のように、基本変速マップのほうが駆動力重視変速マップよりもハイ側の変速数、すなわち小さい変速比が選択される。
【0060】
図6(B)の駆動力重視変速マップのA点で走行している場合であって2速に制御されているときにフェールセーフ制御フラグが「1」にセットされると、図6(A)の基本変速マップに切り替わる。またアクセル実操作量よりも小さいアクセル操作量制限値が制御用アクセル操作量として採用されるので、白抜き矢印のように、途中のB点で3速にシフトアップされ、さらに、途中のC点で4速にシフトアップされる。もし仮に、フェールセーフ制御フラグが「1」にセットされても、変速マップが切り替わらずに駆動力重視変速マップのままであると、図6(B)の白抜き矢印のように、途中のD点で3速にシフトアップされるだけである。
【0061】
車両の駆動力は、エンジン出力と変速比との積算に比例する。本実施形態では駆動力重視変速マップ(駆動力重視変速モード)が選択されている場合に、単に変速比を下げるのではなく、変速マップを基本変速マップ(基本変速モード)に切り替える。このようにすることで、エンジン出力が低下とともに変速比が十分に小さくなり、車両の駆動力が低下する。またマスターバックの負圧が大きくなってブレーキが効きやすくなるので、車速が十分に低下し安全に停止することができる。
【0062】
なお変速比を最小変速比まで下げては、エンジンブレーキを活用できない。また駆動力が大きく変化して、車両が予期せぬ挙動を発生する可能性がある。これに対して本実施形態では、駆動力重視変速マップ(駆動力重視変速モード)が選択されている場合に、単に変速比を下げるのではなく、変速マップを基本変速マップ(基本変速モード)に切り替えることで、車速やアクセル操作量に適した範囲で変速比が下がり、車速が十分に低下し安全に停止することができるのである。
【0063】
(第2実施形態)
図7は、本発明による車両の駆動力制御装置の第2実施形態のATCU200の制御ルーチンを説明する図である。
【0064】
なお以下では前述と同様の機能を果たす部分には同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0065】
ステップS211においてATCU200は、フェールセーフカウンターをリセットする。
【0066】
ステップS212においてATCU200は、フェールセーフカウンターをインクリメントする。
【0067】
ステップS213においてATCU200は、フェールセーフカウンターに基づいて所定時間が経過したか否かを判定する。上述のように、この処理は一定時間ごとに実行されるので、インクリメントされたフェールセーフカウンターによってフェールセーフ制御フラグが「1」になってからの経過時間が判る。所定時間が経過するまではATCU200はステップS202に処理を移行する。所定時間が経過したらATCU200はステップS203に処理を移行する。
【0068】
本実施形態の制御を実行すると以下のようになる。
【0069】
ATCU200は、フェールセーフ制御フラグが「1」になったら、ステップS201→S212→S213と処理する。そして所定時間が経過したらステップS213→S203と処理して駆動力重視変速マップを禁止して基本変速マップに制限する。
【0070】
ドライバーが誤ってブレーキを踏む場合がある。このような場合は、ドライバーはすぐにブレーキから足を離す。このような場合にフェールセーフ制御フラグが「1」になって即オートマチックトランスミッションを制御すると、ドライバーがすぐにブレーキから足を離したら再びオートマチックトランスミッションを制御しなければならなくなってしまう。
【0071】
しかしながらオートマチックトランスミッションは、エンジンに比べて応答に時間を要する。また、ひとつのシーケンスが完了するまでは次のシーケンスを実行できない。したがってブレーキペダルから足を離して遅れて変速制御が開始することとなる。そして変速ショックが生じるので、ドライバーは違和感を感じてしまう。
【0072】
これに対して本実施形態では、所定時間の経過を待って駆動力重視変速マップを禁止して基本変速マップに制限する。したがって、ドライバーが誤ってブレーキを踏む場合については、オートマチックトランスミッションを制御しない。したがって、上述のような違和感を生じさせない。
【0073】
(第3実施形態)
図8は、本発明による車両の駆動力制御装置の第3実施形態のATCU200の制御ルーチンを説明する図である。
【0074】
ステップS221においてATCU200は、アクセルペダルがオフされたか否かを判定する。アクセルペダルがオフされなければATCU200は、ステップS204へ処理を移行する。アクセルペダルがオフされたらATCU200は、ステップS202へ処理を移行する。なおステップS202では、マップ採用を通常処理する。仮に基本変速マップに制限されておらず、もともと通常処理していれば、ステップS202の前後で処理は変更されない。
【0075】
本実施形態の制御を実行すると以下のようになる。
【0076】
ATCU200は、フェールセーフ制御フラグが「0」になったら、ステップS201→S221→S204と処理する。そしてアクセルペダルから足が離されたらステップSS221→S202と処理してマップ採用を通常処理する。
【0077】
もともと駆動力重視変速マップを採用していた場合に、一旦ステップS203で基本変速マップに制限されてから通常処理すると、再び駆動力重視変速マップを採用することになる。この場合にドライバーがアクセルペダルを踏んでいるにもかかわらず、変速マップを切り替えては、急激なシフトダウン(キックダウン)によって、ドライバーは大きな変速ショックを感じてしまう。しかしながら本実施形態のように、アクセルがオフされるのを待って通常処理するようにした。このとき駆動力重視変速マップを採用されても、大きな変速ショックを生じない。
【0078】
なおもともと基本変速マップを採用していた場合には、通常処理しても変速マップは変わらない。
【0079】
以上説明した実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内において種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれることが明白である。
【0080】
たとえば運転環境を判定するときに、カーナビゲーションシステムの情報を利用してもよい。
【0081】
また、駆動力重視変速モードとして、変速比を最大変速比に固定するLモードレンジや、ドライバーの意思に沿って変速できるマニュアルモードを使うこともできる。
【符号の説明】
【0082】
100 エンジンコントロールモジュール(ECM)
110 フェールセーフ制御判定ユニット(フェールセーフ判定部)
130 制御用アクセル操作量出力ユニット(エンジン制御部)
140 トルク変換各種補正ユニット(エンジン制御部)
150 スロットル目標開度変換ユニット(エンジン制御部)
160 スロットルモーター制御ユニット(エンジン制御部)
200 オートマチックトランスミッションコントロールユニット(トランスミッション制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダル及びブレーキペダルの両方の踏み込みに基づいて、フェールセーフ制御が必要であるか否かを判定するフェールセーフ判定部と、
アクセル操作量に基づいて、エンジンを制御するための制御用アクセル操作量を設定し、フェールセーフ制御が必要であるときに、制限された制御用アクセル操作量に基づいてエンジン出力を制限するエンジン制御部と、
トランスミッションの変速比を設定する基本変速モードと駆動力重視変速モードとを備え、駆動力重視変速モードは基本変速モードと比較して大きい変速比が選択され、フェールセーフ制御が必要であるときに、駆動力重視変速モードを禁止して基本変速モードに制限し、前記制御用アクセル操作量に基づいて変速制御するトランスミッション制御部と、
を備える車両の駆動力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記トランスミッション制御部は、ドライバーの意思に基づいて駆動力重視変速モードを採用する、
ことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記トランスミッション制御部は、ドライバーの運転性向又は運転環境に基づいて駆動力重視変速モードを採用する、
ことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記トランスミッション制御部は、前記フェールセーフ判定があって所定時間経過してから、駆動力重視変速モードを禁止して基本変速モードに制限する、
ことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両の駆動力制御装置において、
前記トランスミッション制御部は、フェールセーフ制御が不要と判定されたら、アクセルペダルがオフされるのを待って、変速モードの制限を解除する、
ことを特徴とする車両の駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−219023(P2011−219023A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92181(P2010−92181)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】