説明

車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラム

【課題】モータを駆動源とする電動車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、燃料消費量が最少となるように、モータの制御スケジュールを設定することを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】駆動源として駆動モータ5を備え、電磁サスペンション13A〜13Dの変位により発電した電力でバッテリ7の充電を行うことが可能な電動車両に対し、車両が今後に走行を予定する走行予定経路内にある充電区間について、各充電区間でのバッテリ7の充電量を推定し(S9〜S11)、推定された充電量を用いて目的地までの燃料消費量が最少となるように、走行予定経路を車両が走行する際のエンジン4と駆動モータ5の駆動スケジュールを設定する(S13)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを駆動源とする車両の車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、バッテリから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両等の電動車両が多く存在する。特にハイブリッド車両では、アクセル開度、車速等の車両駆動状態を検出してエンジンとモータの使用分担をコントロールしている。また、このハイブリッド車両では、要求される運転状態に応じてモータ駆動、エンジン駆動等の一方又は両方を適宜選択して、エンジン効率の良い回転数・出力で運転すると共に、モータ駆動によって排気ガス量を減少させた運転が行われる。
【0003】
そして、このような電動車両が備えるバッテリの充電を行う方法としては、自宅や専用の充電施設で充電を行う他に、車両走行中において減速時や降坂路走行中に発生するモータの回生電力やエンジンの駆動力の一部を用いて充電を行う方法がある。そこで、従来よりこのような走行中に行われる充電について考慮して、目的地までの燃料消費量が最少となるようにエンジンやモータの制御スケジュールを設定することが提案されている。例えば、特開2000−333305号公報には、目的地までの走行経路を、発進と停止が予測される地点で複数の区間に分割し、ナビゲーション装置から道路データと走行履歴とを取得して各区間毎の走行速度パターンを推定し、推定した走行速度パターンとエンジンの燃料消費特性とに基づいて、目的地までの燃料消費量が最少となるように、エンジン及びモータの制御スケジュールを設定するハイブリッド車両の車両制御装置について記載されている。
【0004】
一方で、従来では車両の車体と車輪の間に配設され、車体の車輪に対する振動を減衰させるサスペンションを用いて発電を行うことも提案されている。具体的に、特開2006−161881号公報には、シリンダ内にコイルを巻装し、このコイルに磁石を装着したピストンを摺動自在に内挿し、シリンダ及びピストンを車輪及び車体にそれぞれ連結すると共に、コイルに電気的負荷を接続することにより、車体の振動に伴うピストンの摺動時に、コイルと磁石との電磁作用によりコイルに発電エネルギーを生じさせる電磁サスペンションについて記載されている。
【特許文献1】特開2000−333305号公報(第5頁〜第7頁、図9〜図10)
【特許文献2】特開2006−161881号公報(第4頁〜第6頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、前記した特許文献1に記載された車両制御装置では、上記特許文献2に記載された電磁サスペンションによる発電した電力を用いてバッテリの充電を行う場合には、その充電を考慮してエンジンやモータの制御スケジュールを設定することが出来なかった。従って、設定された制御スケジュール通りに車両を制御した場合であっても、走行中にバッテリが不足することにより発進時や上り坂等のエンジン効率が悪い場面でエンジンによる駆動を行ったり、バッテリの残量が十分であるのにエンジンによる駆動を行ったりして、燃料消費量を最適にすることができなかった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、モータを駆動源とする電動車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、モータの制御スケジュールを設定することを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る車両制御装置(3)は、車両(2)の駆動力を発生させるモータ(5)を備えた車両制御装置において、車両の車体と車輪の間に配設され、車体の車輪に対する振動を減衰させるサスペンション(13A〜13D)と、前記サスペンションに設けられ、前記サスペンションの変位に応じて発電する発電手段(19)と、前記発電手段による発電及び前記モータによる回生電力により充電されるとともに前記モータに電力を供給するバッテリ(7)と、車両の走行予定経路を特定する経路特定手段(33)と、前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定手段(33)と、前記充電推定手段によって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定手段(33)と、を有することを特徴とする。
ここで、「車両」とはバッテリから供給される電力に基づいて駆動されるモータを駆動源とする電気自動車以外にも、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両も含む。
【0008】
また、請求項2に係る車両制御装置(3)は、請求項1に記載の車両制御装置であって、車両(2)の駆動力を発生させるエンジン(4)を備え、前記バッテリは、前記エンジンの駆動による発電、前記発電手段(19)による発電及び前記モータ(5)による回生電力により充電されるとともに前記モータに電力を供給し、前記駆動スケジュール設定手段(33)は、前記充電推定手段(33)によって推定された充電量に基づいて、前記エンジンと前記モータの駆動スケジュールを設定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る車両制御装置(3)は、バッテリ(7)から供給される電力により車両(2)の駆動力を発生させるモータ(5)を制御する車両制御装置において、車両の走行予定経路を特定する経路特定手段(33)と、前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンション(13A〜13D)の変位に応じた発電及び前記モータによる回生電力に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定手段(33)と、前記充電推定手段によって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定手段(33)と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る車両制御装置(3)は、バッテリ(7)から供給される電力により車両(2)の駆動力を発生させるモータ(5)と、車両の駆動力を発生させるエンジン(4)とを制御する車両制御装置において、車両の走行予定経路を特定する経路特定手段(33)と、前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンション(13A〜13D)の変位に応じた発電、前記モータによる回生電力及び前記エンジンの駆動による発電に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定手段(33)と、前記充電推定手段によって推定された充電量に基づいて、前記エンジンと前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定手段(33)と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る車両制御装置(3)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御装置であって、前記充電推定手段(33)は、前記走行予定経路上に設けられた段差区間、コーナ区間又は右左折区間のうち少なくとも一つを車両(2)が走行する場合におけるサスペンション(13A〜13D)の変位量を予測する変位量予測手段(33)を備え、前記変位量予測手段により予測されたサスペンションの変位量と前記モータ(5)の発電効率に基づいて前記バッテリ(7)に充電される充電量を推定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る車両制御装置(3)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御装置であって、経路上に設けられた段差区間及びカーブ区間を過去に車両(2)が走行した際に前記バッテリ(7)に充電された充電量を記憶する充電量記憶手段(46)を有し、前記充電推定手段(33)は、前記充電量記憶手段に記憶された充電量に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る車両制御装置(3)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御装置であって、運転者の過去の車両操作を記憶する車両操作履歴記憶手段(47)を有し、前記充電推定手段(33)は、前記運転者の過去の車両操作に基づいて前記バッテリ(7)に充電される充電量を推定することを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る車両制御方法は、バッテリ(7)から供給される電力により車両(2)の駆動力を発生させるモータ(5)を制御する車両制御方法において、車両の走行予定経路を特定する経路特定ステップ(S8)と、前記経路特定ステップによって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンション(13A〜13D)の変位に応じた発電及び前記モータによる回生電力に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定ステップ(S9〜S11)と、前記充電推定ステップによって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定ステップ(S13)と、を有することを特徴とする。
【0015】
更に、請求項9に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、バッテリ(7)から供給される電力により車両(2)の駆動力を発生させるモータ(5)の制御を実行させるコンピュータプログラムにおいて、車両の走行予定経路を特定する経路特定機能(S8)と、前記経路特定機能によって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンション(13A〜13D)の変位に応じた発電及び前記モータによる回生電力に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定機能(S9〜S11)と、前記充電推定機能によって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定機能(S13)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
前記構成を有する請求項1に記載の車両制御装置によれば、モータを駆動源とする電動車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、燃料消費量が最少となるように、モータの制御スケジュールを設定することが可能となる。従って、走行中にバッテリが不足することなく、目的地までの経路を走行する際の燃料消費量を最適にすることができる。
【0017】
また、請求項2に記載の車両制御装置によれば、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、燃料消費量が少なくなるように、エンジン及びモータの制御スケジュールを設定することが可能となる。従って、走行中にバッテリが不足することなく、目的地までの経路を走行する際の燃料消費量を抑えることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の車両制御装置によれば、モータを駆動源とする電動車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、燃料消費量が少なくなるように、モータの制御スケジュールを設定することが可能となる。従って、走行中にバッテリが不足することなく、目的地までの経路を走行する際の燃料消費量を抑えることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の車両制御装置によれば、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、燃料消費量が少なくなるように、エンジン及びモータの制御スケジュールを設定することが可能となる。従って、走行中にバッテリが不足することなく、目的地までの経路を走行する際の燃料消費量を抑えることができる。
【0020】
また、請求項5に記載の車両制御装置によれば、サスペンションに変位が生じる区間におけるサスペンションの変位量を予測することにより、目的地までの経路を走行する際のバッテリの充電量を正確に推定することが可能となり、より的確な駆動スケジュールを設定することができる。
【0021】
また、請求項6に記載の車両制御装置によれば、サスペンションに変位が生じる段差区間、カーブ区間におけるバッテリの予測充電量を、車両が過去に走行した際の充電履歴を用いることにより正確に算出することが可能となる。従って、より的確な駆動スケジュールを設定することができる。
【0022】
また、請求項7に記載の車両制御装置によれば、運転者の過去の車両操作から運転者の操作特性を把握でき、車両走行中におけるバッテリの充電量を正確に推定することが可能となる。従って、より的確な駆動スケジュールを設定することができる。
【0023】
また、請求項8に記載の車両制御方法によれば、モータを駆動源とする電動車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、燃料消費量が少なくなるように、モータの制御スケジュールを設定することが可能となる。従って、走行中にバッテリが不足することなく、目的地までの経路を走行する際の燃料消費量を抑えることができる。
【0024】
更に、請求項9に記載のコンピュータプログラムによれば、モータを駆動源とする電動車両において、サスペンションによる発電によりバッテリの充電を行うことも考慮して、燃料消費量が少なくなるように、モータの制御スケジュールを設定することが可能となる。従って、走行中にバッテリが不足することなく、目的地までの経路を走行する際の燃料消費量を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る車両制御装置についてナビゲーション装置を含む電動車両制御システムに具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1を車載機として搭載した電動車両2の電動車両制御システム3の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る電動車両制御システム3の概略構成図、図2は本実施形態に係る電動車両制御システム3の制御系を模式的に示すブロック図である。尚、電動車両としてはモータのみを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両があるが、以下に説明する本実施形態ではハイブリッド車両を用いることとする。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る電動車両制御システム3は、車両2に対して設置されたナビゲーション装置1と、エンジン4と、駆動モータ5と、発電機6と、バッテリ7と、プラネタリギヤユニット8と、車両制御ECU9と、エンジン制御ECU10と、駆動モータ制御ECU11と、発電機制御ECU12と、電磁サスペンション13A〜13Dと、電磁サスペンション制御ECU14と、から基本的に構成されている。
【0027】
ここで、ナビゲーション装置1は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、車両周辺の地図や目的地までの探索経路を表示する液晶ディスプレイ15や、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16等を備えている。そして、GPS等によって車両2の現在位置を特定するととともに、目的地が設定された場合においては目的地までの経路の探索、並びに設定された経路に従った案内を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて行う。また、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、後述するようにエンジン4や駆動モータ5の駆動スケジュールの設定も行う。尚、ナビゲーション装置1の詳細な構成については後述する。
【0028】
また、エンジン4はガソリン、軽油、エタノール等の燃料によって駆動される内燃機関等のエンジンであり、車両2の第1の駆動源として用いられる。そして、エンジン4の駆動力であるエンジントルクはプラネタリギヤユニット8に伝達され、プラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動輪17A、17Bが回転させられ、車両2が駆動される。
【0029】
また、駆動モータ5はバッテリ7から供給される電力に基づいて回転運動するモータであり、車両2の第2の駆動源として用いられる。駆動モータはバッテリ7から供給された電力により駆動され、駆動モータ5のトルクである駆動モータトルクが発生する。そして、発生した駆動モータトルクにより駆動輪17A、17Bが回転させられ、車両2が駆動される。特に、ハイブリッド車両では基本的にエンジン4の効率が悪い発進時や上り坂路等の低回転域において、駆動モータ5により車両2が駆動される。また、加速走行時にはエンジン4と駆動モータ5の両方により駆動力を発生させ、車両2が駆動される。
更に、エンジンブレーキ必要時及び制動停止時において、駆動モータ5は回生ブレーキとして車輌慣性エネルギを電気エネルギとして回生する。具体的には、定常低・中速走行及び降坂路走行等によりエンジン4の出力に余裕がある場合、バッテリ7の残容量に応じて、駆動モータ5を発電機として機能させてバッテリ7を充電する。特に、降坂時においてエンジンブレーキを要求する場合、発電機として機能する駆動モータ5の回生電力を大きくして、充分なエンジンブレーキ効果を得ることができる。また、運転者がフットブレーキを踏んで車両2の停止を要求する場合には、駆動モータ5の回生電力を更に大きくして、回生ブレーキとして作動し、車両2の慣性エネルギを電力として回生して、摩擦ブレーキに基づく熱によるエネルギ放散を減少する。また、中速域においても、エンジン4をより高出力、高効率な領域で運転できるように、駆動モータ5を回生状態する。それにより、エンジン効率を向上できると共に、上記回生によるバッテリ7の充電に基づきモータ走行を増大することができ、エネルギ効率が向上する。尚、駆動モータ5としては交流モータやDCブラシレスモータ等が用いられる。
【0030】
また、発電機6はプラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動され、電力を発生させる発電装置である。そして、発電機6は図示されない発電機用インバータを介してバッテリ7に接続されており、発生した交流電流を直流電流に変換し、バッテリ7に供給する。尚、駆動モータ5と発電機6を一体的に構成しても良い。
【0031】
また、バッテリ7は充電と放電とを繰り返すことができる蓄電手段としての二次電池であり、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が用いられる。更に、バッテリ7は車両2の側壁に設けられた充電コネクタ18と接続されている。そして、自宅や所定の充電設備を備えた充電施設において、充電コネクタ18をコンセント等の電力供給源に接続することにより、バッテリ7の充電を行うことが可能となる。更に、バッテリ7は上記駆動モータで発生した回生電力や発電機で発電された電力や、後述の電磁サスペンション13A〜13Dがそれぞれ備える電動アクチュエータ19によって発電された電力によっても充電される。
【0032】
また、プラネタリギヤユニット8はサンギヤ、ピニオン、リングギヤ、キャリア等によって構成され、エンジン4の駆動力の一部を発電機6へと分配し、残りの駆動力を駆動輪17A、17Bへと伝達する。
【0033】
また、車両制御ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)9は、車両2の全体の制御を行う電子制御ユニットである。また、車両制御ECU9には、エンジン4の制御を行う為のエンジン制御ECU10、駆動モータ5の制御を行う為の駆動モータ制御ECU11、発電機6の制御を行う為の発電機制御ECU12が接続されるとともに、ナビゲーション装置1が備える後述のナビゲーションECU33に接続されている。
そして、車両制御ECU9は、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラム等が記録されたROM23等の内部記憶装置を備えている。
【0034】
また、エンジン制御ECU10、駆動モータ制御ECU11及び発電機制御ECU12は、図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、それぞれエンジン4、駆動モータ5、発電機6の制御を行う。尚、本実施形態に係る電動車両制御システム3では、ナビゲーション装置1により設定された駆動スケジュールに従って、エンジン4と駆動モータ5の制御を行う。
【0035】
一方、電磁サスペンション13A〜13Dは、車両2の車体と車輪17A〜17Dの間に配設され、車体と車輪17A〜17Dに対する振動を減衰させる車両懸架装置である。車輪17Aに対して電磁サスペンション13Aが、車輪17Bに対して電磁サスペンション13Bが、車輪17Cに対して電磁サスペンション13Cが、車輪17Dに対して電磁サスペンション13Dがそれぞれ対応して取り付けられる。また、電磁サスペンション13A〜13Dは、後述するようにサスペンションの変位に応じて発電する発電手段としての電動アクチュエータ19を備える。そして、電動アクチュエータ19によって発電された電力をバッテリ7に供給する。尚、電磁サスペンション13A〜13Dの詳細な構成については後述する。
【0036】
また、電磁サスペンション制御ECU14は、図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、各電磁サスペンション13A〜13Dを独立して制御する。
【0037】
続いて、ナビゲーション装置1の構成について図2を用いて説明する。
図2に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、自車の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(経路特定手段、充電推定手段、駆動スケジュール設定手段、変位量予測手段)33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して自車周辺の地図を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、から構成されている。また、ナビゲーションECU33には、自車の走行速度を検出する車速センサ等が接続される。
【0038】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、地磁気センサ42、距離センサ43、ステアリングセンサ44、方位検出部としてのジャイロセンサ45、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位等を検出することが可能となっている。
【0039】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された充電履歴DB(充電量記憶手段)46、車両操作履歴DB(車両操作履歴記憶手段)47、地図情報DB48、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0040】
ここで、充電履歴DB46は、段差区間やカーブ区間を過去に車両2が走行した際に、電動アクチュエータ19によってバッテリ7に充電された充電量の履歴を記憶するDBである。具体的には、過去に車両が走行した段差区間やカーブ区間の位置座標とともに、その段差区間やカーブ区間において電動アクチュエータ19により充電された電力量(kW)が累積的に記憶される。そして、ナビゲーションECU33は充電履歴DB46に記憶された充電履歴に基づいて、予め特定された走行予定経路を車両2が走行する際に、電動アクチュエータ19等により充電されるバッテリ7の充電量や充電区間を推定する。
【0041】
また、車両操作履歴DB47は、運転者の車両操作履歴を記憶するDBである。具体的には、過去に車両が走行したリンクとともに、そのリンクにおける運転者のフットブレーキの踏み回数やアクセルの踏み量が累積的に記憶される。そして、ナビゲーションECU33は車両操作履歴DB47に記憶された車両操作履歴情報に基づいて、予め特定された走行予定経路を車両2が走行する際に、駆動モータ5の回生等により充電されるバッテリ7の充電量や充電区間を推定する。
【0042】
また、地図情報DB48は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。具体的には、レストランや駐車場等の施設に関する施設データ、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。また、特に本実施形態に係るナビゲーション装置1は、段差のある段差区間、カーブ区間、右左折区間(交差点等)、道路の勾配等に関する情報についても記録されている。そして、ナビゲーションECU33は予め特定された走行予定経路にある段差区間、カーブ区間及び右左折区間に関する情報に基づいて、その走行予定経路を車両2が走行する際に、電動アクチュエータ19等により充電されるバッテリ7の充電量や充電区間を推定する。
【0043】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの誘導経路を設定する誘導経路設定処理、車両が誘導経路等の走行予定経路を走行する際におけるバッテリ7の充電量や充電区間を推定する充電量推定処理、推定された充電量に基づいてエンジン4や駆動モータ5の駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、駆動スケジュール設定処理プログラム(図4、図5参照)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。
【0044】
操作部34は、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0045】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0046】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0047】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB48の更新等が行われる。
【0048】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。尚、通信モジュール38で受信した渋滞情報、規制情報等をエンジン4や駆動モータ5の駆動スケジュールを設定するのに用いても良い。
【0049】
次に、電磁サスペンション13A〜13Dの構成について図3を用いて説明する。尚、電磁サスペンション13A〜13Dは基本的に同一の構成をしている。従って、以下では電磁サスペンション13Aを例に挙げて説明することとし、他の電磁サスペンション13B〜13Dの説明については省略する。図3は本実施形態に係る電磁サスペンション13Aの構成を示した概略構成図である。
【0050】
図3に示すように、電磁サスペンション13Aは、電動アクチュエータ19、ボールねじ61、ボールねじナット62、ロッド63、アウターシェル64、軸受65〜67、ダストシール68、回転角センサ69を備えたショックアブソーバ70と、車輪17Aを車体に弾性支持するコイルスプリング71と、ショックアブソーバ70を車体に結合するアッパーサポート72とから構成される。
【0051】
そして、軸受65はロッド63内部においてボールねじ61を回動可能に支持し、また軸受66、67は、アウターシェル64内部においてロッド63を摺動可能に支持する。
また、ダストシール68は、アウターシェル64内にゴミなどの異物が入り込むのを防止する。回転角センサ69は、電動アクチュエータ19の回転量を検出する。
【0052】
また、ショックアブソーバ70は、コイルスプリング71による車体の上下振動を減衰させる。
コイルスプリング71は、車両2の車体部分の重量を支持し、また路面からの振動や衝撃が車輪17Aを通して車体に伝わらないようにする。
【0053】
ここで、ボールねじ61、ロッド63及びアウターシェル64は同軸に配置されている。アウターシェル64には、雌ねじ部分を有するボールねじナット62が内設される。ボールねじ61は雄ねじ部分を有し、ボールねじナット62に螺合した状態にある。電動アクチュエータ19は、電気式のモータであり、ボールねじ61の一端を回動可能にセレーションで支持する。
そして、電動アクチュエータ19を駆動すると、ボールねじ61がボールねじナット62に対して相対回転し、電動アクチュエータ19に対してアウターシェル64が下方に押し下げられ、又は上方に引き上げられる。
【0054】
次に、電磁サスペンション13A〜13Dの制御について簡単に説明する。
車両2が良路を走行している場合、電磁サスペンション制御ECU14はそれぞれの電磁サスペンション13A〜13Dの電動アクチュエータ19に印加する電流値を、例えば0[A]である基準電流値に設定する。路面に凹凸があって、車輪17A〜17Dが上下動する場合、ロッド63とアウターシェル64との相対運動によりコイルスプリング71が伸縮する。このとき、ボールねじ61がボールねじナット62に対して相対回転することにより、電動アクチュエータ19が回転して発電機として作用し、このときに生じる抵抗力により減衰力が発生する。図示しない電流センサにより、電動アクチュエータ19内部で電磁誘導により発生した電流を検出し、電磁サスペンション制御ECU14に伝達する。電磁サスペンション制御ECU14は、コイルスプリング71の伸縮を抑制する方向の電流、すなわち電磁誘導により生じた電流とは逆向きの電流を電動アクチュエータ19に印加する。更に、電磁サスペンション制御ECU14は、車体の上下方向の加速度に応じて電動アクチュエータ19に印加する電流を設定し、減衰力を調整する。
【0055】
上記したように電動アクチュエータ19は、車体と車輪17A〜17Dの間の相対振動に応じて発電する発電手段として機能する。そして、電動アクチュエータ19において発生した電力はバッテリ7に供給される。これにより、バッテリ7の充電を行う。
【0056】
続いて、前記構成を有する電動車両制御システム3のナビゲーション装置1においてナビゲーションECU33が実行する駆動スケジュール設定処理プログラムについて図4に基づき説明する。図4は本実施形態に係る駆動スケジュール設定処理プログラムのフローチャートである。ここで、駆動スケジュール設定処理プログラムはユーザにより操作部34で所定の操作が行われた場合に実行され、車両が誘導経路等の走行予定経路を走行する際におけるエンジン4や駆動モータ5の駆動スケジュールを設定するプログラムである。尚、以下の図4及び図5にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0057】
先ず、駆動スケジュール設定処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU51は現在位置検出部31により自車の現在位置に関する情報を取得する。また、取得した自車の現在位置を地図上で特定するマップマッチングも行われる。更に、S1でCPU51は、自車に搭載されたバッテリ7のSOC値(バッテリ7の残容量)についても車両制御ECU9から取得する。
【0058】
次に、S2でCPU51は、現在、ナビゲーション装置1において目的地までの誘導経路が設定されているか否かに関する情報をRAM52等から取得する。そして、S3でCPU51は、現在、ナビゲーション装置1で誘導経路の設定がされているか否か判定する。
【0059】
そして、誘導経路の設定がされていると判定された場合(S3:YES)には、ナビゲーション装置1で設定されている誘導経路を取得し(S4)、取得した経路を自車が今後に走行する予定の走行予定経路として特定する(S8)。
【0060】
一方、誘導経路の設定がされていないと判定された場合(S3:NO)には、CPU51はGPS41によって現在の時刻を取得し、現在の時刻に対応する推定目的地を検出する。具体的には、車両の過去の走行履歴や過去に設定された誘導経路等をRAM52等に記憶しておき、過去の同時刻において所定回数以上目的地に設定された地点や、過去の同時刻における走行経路で所定回数以上終着点となっている地点を推定目的地として検出する。
【0061】
そして、S6でCPU51は、前記S5の検出処理の結果、推定目的地が検出できたか否かを判定する。その結果、推定目的地が検出できたと判定された場合(S6:YES)には、自車の現在位置から検出された推定目的地までの経路を探索し、探索された経路を推定経路として取得する(S7)。更に、取得された推定経路を自車が今後に走行する予定の走行予定経路として特定する(S8)。尚、上記S8が経路特定手段の処理に相当する。
尚、目的地が選択された場合に走行履歴から経路を読み出して、取得された推定経路を自車が今後に走行する予定の走行予定経路として特定するようにしても良い。
【0062】
一方、推定目的地が検出できなかったと判定された場合(S6:NO)、即ち、過去の同時刻において所定回数以上目的地に設定された地点や、過去の同時刻における走行経路で所定回数以上終着点となっている地点が無い場合には、自車の走行予定経路が特定できないので当該駆動スケジュール設定処理プログラムを終了する。
【0063】
続いて、S9においてCPU51は、前記S8で特定された走行予定経路を自車が走行すると仮定した場合において、駆動モータ5の回生によってバッテリ7が充電される充電区間の検索を行う。ここで、駆動モータ5の回生によってバッテリ7が充電される充電区間は、降坂路や交差点やカーブ等の制動が行われる区間等が該当する。そして、S9では後述するように検索の結果、抽出された各充電区間について予想されるバッテリの充電量の算出も行う。
【0064】
次に、S10においてCPU51は、前記S8で特定された走行予定経路を自車が走行すると仮定した場合において、エンジントルクの一部により駆動される発電機6の発電によってバッテリ7が充電される充電区間の検索を行う。ここで、発電機6の発電によってバッテリ7が充電される充電区間は、直線道路等の定常低・中速走行が行われる区間や降坂路等のエンジン4の出力に余裕がある区間が該当する。そして、S10では後述するように検索の結果、抽出された各充電区間について予想されるバッテリの充電量の算出も行う。
【0065】
更に、S11においてCPU51は、前記S8で特定された走行予定経路を自車が走行すると仮定した場合において、電磁サスペンション13A〜13Dの発電によってバッテリ7が充電される充電区間の検索を行う。ここで、電磁サスペンション13A〜13Dの発電によってバッテリ7が充電される充電区間は、電磁サスペンション13A〜13Dに変位が生じる路面に段差のある段差区間、カーブ区間、交差点等の右左折区間が該当する。
例えば、図6に示す出発地81から目的地82までの走行予定経路83が特定されている場合には、段差区間84、右左折区間85、カーブ区間86〜89がそれぞれ充電区間として抽出される。そして、S11では後述するように検索の結果、抽出された各充電区間について予想されるバッテリの充電量の算出も行う(図5参照)。尚、上記S9〜S11が充電推定手段の処理に相当する。
【0066】
続いて、S12でCPU51は、前記S8で特定された走行予定経路の全エリアについて、上記S9〜S11の充電区間の検索が完了したか否か判定する。そして、走行予定経路の全エリアについて前記S9〜S11の充電区間の検索が完了したと判定された場合(S12:YES)には、S13へと移行する。一方、走行予定経路の内、前記S9〜S11の充電区間の検索が完了していないエリアがあると判定された場合(S12:YES)にはS9へと戻り、引き続き充電区間の検索が行われる。
【0067】
S13においてCPU51は、前記S1で取得したバッテリ7のSOC値と、前記S9〜S11で検索された充電区間と各充電区間での予測される充電量とに基づいて、目的地までの燃料消費量が最少となるように、走行予定経路を自車が走行する際のエンジン4と駆動モータ5の駆動スケジュールを設定する。具体的には、走行予定経路を、エンジン4のみを駆動源とするエリアと、駆動モータ5のみを駆動源とするエリアと、エンジン4と駆動モータ5の両方を駆動源とするエリアとに区分したスケジュールを設定する。
そして、その後に車両が走行を開始すると、設定された駆動スケジュールに沿ってエンジン制御ECU10及び駆動モータ制御ECU11はエンジン4や駆動モータ5の制御を行う。尚、上記S13が駆動スケジュール設定手段の処理に相当する。
【0068】
次に、上記S11のサスペンション充電区間検索処理のサブ処理について図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係るサスペンション充電区間検索処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【0069】
先ず、S21でCPU51は、自車の車両パラメータ情報を車両制御ECU9から取得する。ここで、前記S21で取得される車両パラメータ情報は、例えば、車重、サスばね係数、ダンパー減衰比、スタビばね定数、モータの発電効率等であり、車両制御ECU9のRAM22に記憶されている。
【0070】
次に、S22でCPU51は、運転者の車両操作履歴情報を車両操作履歴DB47から取得する。ここで、前記S22で取得される車両操作履歴情報は、例えば、特定された走行予定経路を構成する各リンクにおける運転者のフットブレーキの踏み回数やアクセルの踏み量等がある。また、CPU51はこれらの車両操作履歴情報に基づいて、運転者の運転操作特性を導出する。そして、CPU51は導出された運転操作特性に基づいて、後述する充電区間での充電量のより正確な算出が可能となる。
【0071】
更に、S23でCPU51は、段差区間、カーブ区間、右左折区間等の充電区間を過去に自車が走行した際の充電量の履歴を充電履歴DB46から取得する。そして、CPU51はこれらの充電履歴に基づいて、後述する充電区間での充電量のより正確な算出が可能となる。
【0072】
次に、S24においてCPU51は、前記S8で特定された走行予定経路にある段差区間の情報について地図情報DB48から取得する。具体的には、段落区間の開始点と終了点の各座標と、段差の強弱に関する情報を段差区間が複数ある場合には段差区間毎に取得する。
【0073】
続いて、S25でCPU51は、前記S24で取得された段差区間情報に基づいて、走行予定経路にある段差区間でバッテリ7の充電される予測充電量を算出する。ここで、図7は前記S25における段差区間でのバッテリ7の充電量の算出方法の一例を示した説明図である。
【0074】
図7に示すように、段差区間でのバッテリ7の充電量を算出する為には、先ず経路上の段差区間の範囲を段差の大きい段差強区間と段差の小さい段差弱区間に区分して特定する。そして、段差強区間及び弱区間を走行した場合の電磁サスペンション13A〜13Dの各予測変位量を、前記S21で取得した車両パラメータ(車重、サスばね係数、ダンパー減衰比、スタビばね定数)から算出する。その後、算出された電磁サスペンション13A〜13Dの予測変位量とモータの発電効率から予測充電量を算出する。尚、前記S22で取得した車両操作履歴情報や前記S23で取得した充電履歴情報を用いることにより、より正確な充電量の算出が可能となる。また、過去に同一の段差区間を走行した際の充電履歴がある場合には、過去の充電量と同一の値又は平均値を今回の予測充電量としても良い。
【0075】
次に、S26においてCPU51は、前記S8で特定された走行予定経路にあるカーブ区間の情報について地図情報DB48から取得する。具体的には、カーブ区間の開始点と終了点の各座標と、カーブのRに関する情報をカーブ区間が複数ある場合にはカーブ区間毎に取得する。
【0076】
続いて、S27でCPU51は、前記S26で取得されたカーブ区間情報に基づいて、走行予定経路にあるカーブ区間でバッテリ7の充電される予測充電量を算出する。ここで、図8は前記S27におけるカーブ区間でのバッテリ7の充電量の算出方法の一例を示した説明図である。
【0077】
図8に示すように、カーブ区間でのバッテリ7の充電量を算出する為には、先ず経路上のカーブ区間の範囲をカーブのRの小さい急コーナ区間と、Rの大きい緩コーナ区間と、その間の中コーナ区間に区分して特定する。そして、カーブのRと、推奨車速(カーブ走行中に車両にかかる横旋回Gが計算上0.2Gとなる車速)から横旋回Gを算出する。その後、カーブ区間を走行した場合の電磁サスペンション13A〜13Dの予測変位量を、車両パラメータ(車重、サスばね係数、ダンパー減衰比、スタビばね定数)から算出する。更に、算出された電磁サスペンション13A〜13Dの予測変位量とモータの発電効率から予測充電量を算出する。尚、前記S22で取得した車両操作履歴情報や前記S23で取得した充電履歴情報を用いることにより、より正確な充電量の算出が可能となる。また、過去に同一のカーブ区間を走行した際の充電履歴がある場合には、過去の充電量と同一の値又は平均値を今回の予測充電量としても良い。
【0078】
その後、S28においてCPU51は、前記S8で特定された走行予定経路にある右左折区間の情報について地図情報DB48から取得する。具体的には、右左折区間(例えば交差点)の開始点と終了点の各座標に関する情報を右左折区間が複数ある場合には右左折区間毎に取得する。
【0079】
続いて、S29でCPU51は、前記S28で取得された右左折区間情報に基づいて、走行予定経路にある右左折区間でバッテリ7の充電される予測充電量を算出する。ここで、図9は前記S29における右左折区間でのバッテリ7の充電量の算出方法の一例を示した説明図である。
【0080】
図9に示すように、右左折区間でのバッテリ7の充電量を算出する為には、先ず経路上の右左折区間において車両が右折又は左折するかを特定する。そして、右左折区間で右左折をした場合の電磁サスペンション13A〜13Dの予測変位量を、車両パラメータ(車重、サスばね係数、ダンパー減衰比、スタビばね定数)から算出する。更に、算出された電磁サスペンション13A〜13Dの予測変位量とモータの発電効率から予測充電量を算出する。尚、前記S22で取得した車両操作履歴情報や前記S23で取得した充電履歴情報を用いることにより、より正確な充電量の算出が可能となる。また、過去に同一の右左折区間を右折又は左折した際の充電履歴がある場合には、過去の充電量と同一の値又は平均値を今回の予測充電量としても良い。
その後、S12の判定処理へと移行する。尚、上記S25、S27、S29が変位量予測手段の処理に相当する。
【0081】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る電動車両制御システム3、電動車両制御システム3による車両制御方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、駆動源として駆動モータ5を備え、電磁サスペンション13A〜13Dの変位により発電した電力でバッテリ7の充電を行うことが可能な電動車両に対し、車両が今後に走行を予定する走行予定経路内にある充電区間について、各充電区間でのバッテリ7の充電量を推定し(S9〜S11)、推定された充電量を用いて目的地までの燃料消費量が最少となるように、走行予定経路を車両が走行する際のエンジン4と駆動モータ5の駆動スケジュールを設定する(S13)ので、電磁サスペンション13A〜13Dによる発電によりバッテリ7の充電を行うことも考慮したエンジン4や駆動モータ5の制御スケジュールを設定することが可能となる。従って、走行中にバッテリ7が不足することなく、目的地までの経路を走行する際の燃料消費量を抑えることができる。
また、特に電磁サスペンション13A〜13Dに変位が生じる充電区間である段差区間、カーブ区間、右左折区間について、サスペンションの変位量を予測する(S25、S27、S29)ことにより、目的地までの経路を走行する際のバッテリの充電量を正確に推定することが可能となり、より的確な駆動スケジュールを設定することができる。
また、サスペンションに変位が生じる段差区間、カーブ区間、右左折区間におけるバッテリの予測充電量を、車両が過去に走行した際の充電履歴を用いることにより正確に算出することが可能となる。
また、運転者の過去の車両操作に基づいてバッテリ7に充電される充電量を推定するので、運転者の過去の車両操作から運転者の操作特性を把握でき、車両走行中におけるバッテリの充電量を正確に推定することが可能となる。従って、より的確な駆動スケジュールを設定することができる。
【0082】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではハイブリッド車両に搭載されたナビゲーション装置により駆動スケジュールの設定を行うこととしているが、駆動スケジュールの設定は車両制御ECU9で実行しても良い。その場合には、車両制御ECU9はナビゲーション装置1より車両の現在位置情報、充電履歴情報、車両操作履歴情報、地図情報等を取得する構成とするのが望ましい。
【0083】
また、本実施形態では車両の現在位置を出発地として目的地までの走行予定経路を特定しているが、ユーザの選択した任意の出発地から目的地までの走行予定経路を特定するようにしても良い。
【0084】
また、上記実施形態では本願発明をモータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両に適用した場合を説明したが、モータのみを駆動源とする電気自動車にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態に係る電動車両制御システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る電動車両制御システムの制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係る電磁サスペンションの構成を示した概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る駆動スケジュール設定処理プログラムのフローチャートである。
【図5】本実施形態に係るサスペンション充電区間検索処理のサブ処理プログラムのフローチャートである。
【図6】走行予定経路の一例を示した説明図である。
【図7】ステップ25における段差区間でのバッテリの充電量の算出方法の一例を示した説明図である
【図8】ステップ27におけるカーブ区間でのバッテリの充電量の算出方法の一例を示した説明図である。
【図9】ステップ29における右左折区間でのバッテリの充電量の算出方法の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0086】
1 ナビゲーション装置
2 車両
3 電動車両制御システム
4 エンジン
5 駆動モータ
7 バッテリ
13A〜13D 電磁サスペンション
19 電動アクチュエータ
33 ナビゲーションECU
46 充電履歴DB
47 車両操作履歴DB
48 地図情報DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力を発生させるモータを備えた車両制御装置において、
車両の車体と車輪の間に配設され、車体の車輪に対する振動を減衰させるサスペンションと、
前記サスペンションに設けられ、前記サスペンションの変位に応じて発電する発電手段と、
前記発電手段による発電及び前記モータによる回生電力により充電されるとともに前記モータに電力を供給するバッテリと、
車両の走行予定経路を特定する経路特定手段と、
前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定手段と、
前記充電推定手段によって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定手段と、を有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
車両の駆動力を発生させるエンジンを備え、
前記バッテリは、前記エンジンの駆動による発電、前記発電手段による発電及び前記モータによる回生電力により充電されるとともに前記モータに電力を供給し、
前記駆動スケジュール設定手段は、前記充電推定手段によって推定された充電量に基づいて、前記エンジンと前記モータの駆動スケジュールを設定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
バッテリから供給される電力により車両の駆動力を発生させるモータを制御する車両制御装置において、
車両の走行予定経路を特定する経路特定手段と、
前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンションの変位に応じた発電及び前記モータによる回生電力に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定手段と、
前記充電推定手段によって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定手段と、を有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
バッテリから供給される電力により車両の駆動力を発生させるモータと、車両の駆動力を発生させるエンジンとを制御する車両制御装置において、
車両の走行予定経路を特定する経路特定手段と、
前記経路特定手段によって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンションの変位に応じた発電、前記モータによる回生電力及び前記エンジンの駆動による発電に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定手段と、
前記充電推定手段によって推定された充電量に基づいて、前記エンジンと前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定手段と、を有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
前記充電推定手段は、
前記走行予定経路上に設けられた段差区間、コーナ区間又は右左折区間のうち少なくとも一つを車両が走行する場合におけるサスペンションの変位量を予測する変位量予測手段を備え、
前記変位量予測手段により予測されたサスペンションの変位量と前記モータの発電効率に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項6】
経路上に設けられた段差区間及びカーブ区間を過去に車両が走行した際に前記バッテリに充電された充電量を記憶する充電量記憶手段を有し、
前記充電推定手段は、前記充電量記憶手段に記憶された充電量に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項7】
運転者の過去の車両操作を記憶する車両操作履歴記憶手段を有し、
前記充電推定手段は、前記運転者の過去の車両操作に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項8】
バッテリから供給される電力により車両の駆動力を発生させるモータを制御する車両制御方法において、
車両の走行予定経路を特定する経路特定ステップと、
前記経路特定ステップによって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンションの変位に応じた発電及び前記モータによる回生電力に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定ステップと、
前記充電推定ステップによって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定ステップと、を有することを特徴とする車両制御方法。
【請求項9】
コンピュータに搭載され、
バッテリから供給される電力により車両の駆動力を発生させるモータの制御を実行させるコンピュータプログラムにおいて、
車両の走行予定経路を特定する経路特定機能と、
前記経路特定機能によって特定された走行予定経路を走行する場合に、車両の車体と車輪の間に配設されたサスペンションの変位に応じた発電及び前記モータによる回生電力に基づいて前記バッテリに充電される充電量を推定する充電推定機能と、
前記充電推定機能によって推定された充電量に基づいて、前記モータの駆動スケジュールを設定する駆動スケジュール設定機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−17612(P2009−17612A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173095(P2007−173095)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】