説明

車両用地図表示装置

【課題】 ディスプレイを水平面内に傾けて取り付けた地図表示装置において、画面上で視認される地図上進行方向と車両の実進行方向との整合度を高め、両者のずれに由来した違和感を生じにくくする。
【解決手段】 平面内傾角θを生じて取り付けられるディスプレイ10の画面の上下方向を基準指示方向としたとき、地図上進行方向Adが車両の実進行方向へ近付くように、地図を画面面内に回転させて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーナビゲーションシステム等に使用する車両用地図表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2006−313144号公報
【0003】
カーナビゲーションシステムにおいて地図上に車両の進行方向を表示する方法は主に2通りある。1つは、車両進行方向が地図表示画面上にて常に上向きとなるように、GPSやジャイロスコープを用いて特定された車両進行方向に応じて地図をその都度回転させる方法(いわゆる、ヘディングアップ)であり、他方は、地図表示画面上にて北が常に上向きとなるように地図の向きを固定し、車両進行方向を、その都度特定された向きに随時変えながら表示する方法(いわゆる、ノースアップ)である。ノースアップの場合、画面上の地図の向きが固定されるので、方位感覚が十分に身についたドライバであれば、車両の地図上の絶対位置と進行方位を常に正確に把握できる利点がある。ただし、検出される車両進行方向に変化があれば、その画面上の表示方向も変化することになり、例えば車両が南向きに走行している場合は、車両の実走行方向が地図上の走行方向と逆になり、慣れていないと右左折等の向きを勘違いしたりする可能性もある。
【0004】
これに対し、ヘディングアップでは表示される地図上両進行方向が常に上向きに固定され、これに合わせて地図のほうが画面上で回転するので、方位把握は難くなるものの、車両の実進行行方向が地図上走行方向と常に一致しているので、地図を見ながらの右左折方向判断等が容易である。また、車内から見えるランドマーク等の方向も、地図上に表示される方向と一致するので、現在位置確認も行ないやすい。
【0005】
一方、カーナビゲーションシステムのディスプレイは、従来は画面水平方向が、車両の進行方向を基準としてみたときの水平方向と一致するよう、例えば車両のインパネ中央前面やコンソール部に取り付けられることが多かった。ヘディングアップではこの場合、画面上下方向に地図上進行方向を定めたとき、これが車両の実走行方向と一致するので違和感はない。しかし、ディスプレイの画面を斜め横方向から視認することになるので、特に、ディスプレイをフロントガラス側に近付けて配置した(つまり、ドライバから進行方向側へ遠ざけて配置した)カーナビゲーションシステムの場合、地図表示内容が見づらくなる問題がある。そこで、これを解決するために、その画面法線がドライバを見込む方向に向くよう、ディスプレイを水平面内に傾角を生ずる形で傾けて取り付けた車両が増えてきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ディスプレイを水平面内に傾けると、画面上下方向に地図上進行方向を設定すると、ディスプレイが水平面内傾角を有して傾いているために、地図上進行方向が車両の実進行方向からずれて表示され、違和感を生じやすくなる欠点がある。
【0007】
本発明の課題は、ディスプレイを水平面内に傾けて取り付けた地図表示装置において、画面上で視認される地図上進行方向と車両の実進行方向との整合度を高め、両者のずれに由来した違和感を生じにくくする点にある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の車両用地図表示装置は、上記の課題を解決するために、
車両進行方向に対し少なくとも水平面内に傾角を生ずる形で画面が傾けて取り付けられたディスプレイと、
車両の現在地を特定する現在地特定手段と、
ディスプレイの画面上に、特定された現在地を含む地図を表示する地図表示手段と、
地図上における車両の進行方向である地図上進行方向を特定する地図上進行方向特定手段とを備え、
ディスプレイの画面の上下方向を、該ディスプレイを平面内傾角ゼロにて取り付けたと考えた場合の地図上進行方向を示す基準指示方向として、地図表示手段は、該平面内傾角を生じて取り付けられたディスプレイの画面上に地図を、地図上進行方向を基準指示方向と一致させた標準地図表示状態よりも、当該地図上進行方向が車両の実進行方向へ近付くように、画面の面内に回転させて表示することを特徴とする。
【0009】
上記本発明の構成によると、ディスプレイの画面の上下方向を基準指示方向(従来通りディスプレイを平面内傾角ゼロにて取り付けたときの地図上進行方向)としたとき、平面内傾角を生じて取り付けられるディスプレイの画面上に、地図上進行方向を上記基準指示方向と一致させた標準地図表示状態(つまり、従来の地図表示状態)よりも、当該地図上進行方向が車両の実進行方向へ近付くように、地図を画面面内に回転させて表示する。これにより、画面上で視認される地図上進行方向と車両の実進行方向との整合度が高まり、両者のずれに由来した違和感を低減することができる。
【0010】
例えばカーナビゲーションシステム等に適用する場合、本発明の地図表示装置は、車両の運転席に着座するユーザから見て前方助手席寄り側にディスプレイを、画面左右端のうち運転席に近い側が走行方向前方側に、同じく遠い側が走行方向後方側に位置するよう傾けて配置することができる。これにより、地図が表示される画面がドライバ側を向くので、地図表示内容がより見やすくなる。この場合、地図表示手段は、画面上に地図を、地図上進行方向が、画面上下方向に定められた基準指示方向から運転席側に傾くよう、画面面内に回転させた状態で表示することができる。つまり、上記のように傾けて配置されたディスプレイは、左右端のうち運転席側が走行方向前側に位置しているので、地図上進行方向が運転席側に傾くように地図を回転させて表示することで、地図上進行方向と実進行方向との整合度を効果的に高めることができる。
【0011】
次に、地図上の現在地には、地図上進行方向を示す指示キャラクタを表示しておくと、車両の現在の走行方向を地図上にて視覚的に把握しやすくなる。この場合、その指示キャラクタ表示手段は、基準指示方向から車両の実進行方向へ近付く向きに地図とともに傾斜して該指示キャラクタを表示するよう構成することが、指示キャラクタが示す地図上進行方向と実進行方向との整合度を高める上で当然望ましい。
【0012】
指示キャラクタは画面上の定位置に固定表示することが現在地や進行方向の把握を容易にする観点において望ましい。この場合、地図表示手段は、画面の面内に該指示キャラクタの表示位置を中心として回転させた状態で地図を表示するようにしておけばよい。また、地図表示手段は、現在地が該地図上進行方向に沿って変化するに伴い、傾斜した指示キャラクタが示す地図上進行方向と逆の向きに、地図を画面上にて斜め後方へスクロール表示するようにしておくと、車両の進行が、実進行方向を反映した地図スクロールによりリアルに実感することができる。
【0013】
地図表示手段は、画面上に地図を地図面が画面と平行になるよう2次元表示するものとできる。この場合、地図の回転角度は、ディスプレイの平面内傾角と同等に定めておくことが、地図上進行方向と実進行方向との整合度を高める上で望ましい。
【0014】
他方、地図表示手段は、画面上に地図を地図面が画面の奥行き方向に仮想的に傾斜した形で3次元俯瞰表示するものとして構成することができる。この場合、該地図面の奥行き方向傾角をゼロと考えた場合の地図の回転角度をディスプレイの平面内傾角と同等の基準回転角度として定めたとき、奥行き方向傾角が大きくなるほど該基準回転角度に対する増加方向の差分が大きくなるように、該地図の回転角度を補正する回転角度補正手段を設けておくことが望ましい。すなわち、地図の3次元俯瞰表示が可能となるように構成した場合、地図面は画面奥行き方向に仮想的に傾斜し、その画面への正射投影画像として視認される。そして、地図上進行方向の基準指示方向からの視認角度変位は、その正射投影により、地図面の(仮想的な)奥行き方向傾角(つまり、地図の俯瞰角度)が増加するほど大きくなる。従って、奥行き方向傾角が大きくなるほど該基準回転角度に対する増加方向の差分が大きくなるように、該地図の回転角度を補正する回転角度補正を設けておくことで、地図の3次元俯瞰表示を行なった場合においても、地図上進行方向と実進行方向との整合度を良好に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の地図表示装置の機能を組み込んだカーナビゲーションシステムの電気的構成の一例を示すブロック図である。カーナビゲーションシステム100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、リモートコントロール(以下リモコンと称する)センサ11、音声案内などを行なう音声合成回路24およびスピーカ15、不揮発メモリ9、ディスプレイ10、ハードディスク装置(HDD)21、それらが接続された制御回路8及びリモコン端末12等を備えている。
【0016】
位置検出器1は現在地特定手段の要部をなすものであり、周知の地磁気センサ2、車両101の回転角速度を検出するジャイロスコープ3、車両101の走行距離を検出する距離センサ4、および衛星からの電波に基づいて車両101の位置を検出するGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2、3、4、5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ例えば車速センサ23等を用いてもよい。
【0017】
操作スイッチ群7は、例えばディスプレイ10と一体になったタッチパネル22もしくはメカニカルなスイッチが用いられる。タッチパネル22は、ディスプレイ10の画面上にガラス基盤と透明なフィルムにスペーサと呼ばれる隙間を介してX軸方向、Y軸方向に電気回路が配線され、フィルム上をユーザがタッチすると、押された部分の配線がショートして電圧値が変わるため、これを2次元座標値(X、Y)として検出する、いわゆる抵抗膜方式が広く用いられる。その他に、いわゆる静電容量方式を用いてもよい。メカニカルスイッチの他に、マウスやカーソル等のポインティングデバイスを用いてもよい。
【0018】
また、マイク31および音声認識ユニット30を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、マイク31から入力された音声信号を、音声認識ユニット30において周知の隠れマルコフモデル等に基づく音声認識技術により処理を行ない、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。これら操作スイッチ群7、リモコン端末12、マイク31によって、種々の指示を入力することが可能である。
【0019】
送受信機13は、例えば道路に沿って設けられた送信機(図示せず)から出力される光ビーコン、または電波ビーコンによってVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム)センタ14から道路交通情報を受信、あるいはFM多重放送を受信するための装置である。また、ETC(Electronic Toll Collection:自動料金収受システム)車載器16と通信することにより、ETC車載器16がETC路上器(図示せず)から受信した料金情報などをナビゲーション装置100に取り込むことができる。また、ETC車載器16によって外部ネットワークと接続し、VICSセンタ14等との通信を行なう構成をとってもよい。また、通信ユニット25は、管制センタ105とのデータの送受信を行なうための送信部、受信部およびアンテナを含んで構成される。送信部、受信部およびアンテナの構成は周知のものであるため詳細な説明は割愛する。
【0020】
次に、制御回路8は通常のコンピュータとして構成されており、周知のCPU81、ROM82、RAM83及び入出力部84をバスライン85により接続したものである。CPU81は、HDD21に記憶されたナビプログラム21pおよびデータにより制御を行なう。また、HDD21へのデータの読み書きの制御もCPU81によって行なわれる。A/D変換部86は周知のA/D(アナログ/デジタル)変換回路を含み、例えば位置検出器1などから制御回路8に入力されるアナログデータをCPU81で演算可能なデジタルデータに変換するものである。ROM82に、HDD21が故障した場合にナビゲーション機能のうちで必要最低限の動作を行なうためのプログラムを記憶しておいてもよい。また、描画部87は、HDD21等に記憶された表示用のデータや表示色のデータからディスプレイ10に表示させるための表示画面データを生成する。
【0021】
HDD21には、ナビプログラム21pの他に位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、道路の接続を表した道路データを含む地図データ21mが記憶される。地図データ21mは、表示用となる所定の地図画像情報を記憶するとともに、リンク情報やノード情報等を含む道路網情報を記憶する。リンク情報は、各道路を構成する所定の区間情報であって、位置座標、距離、所要時間、道幅、車線数、制限速度等から構成される。また、ノード情報は、交差点(分岐路)等を規定する情報であって、位置座標、右左折車線数、接続先道路リンク等から構成される。また、リンク間接続情報には、通行の可不可を示すデータなどが設定されている。
【0022】
また、HDD21には経路案内の補助情報や娯楽情報、その他にユーザが独自にデータを書き込むことができ、ユーザデータ21uとして記憶される。これらのユーザデータ21uは、操作スイッチ群7、タッチパネル22およびリモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって内容の書き換えが可能である。また、ナビゲーション装置100の動作に必要なデータや各種情報をデータベース21dとして記憶してもよい。
【0023】
また、ナビプログラム21p、地図データ21mおよびユーザデータ21uは、地図データ入力器6を介して記憶媒体20からそのデータの追加・更新を行なうことが可能である。記憶媒体20は、そのデータ量からCD−ROMやDVDを用いるのが一般的であるが、例えばメモリカード等の他の媒体を用いてもよい。また、外部ネットワークを介してデータをダウンロードする構成を用いてもよい。
【0024】
不揮発メモリ9はEEPROM(Electrically Erasable & Programmable Read Only Memory:電気的消去・プログラム可能・読出し専用メモリ)やフラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体メモリによって構成され、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータが記憶されている。なお、不揮発メモリ9は、車両101のアクセサリスイッチがオフ状態すなわち、ナビゲーション装置100がオフ状態になっても、記憶内容が保持されるようになっている。また、不揮発メモリ9の代わりにナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータをHDD21に記憶してもよい。さらに、ナビゲーション装置100の動作に必要な情報およびデータを不揮発メモリ9とHDD21に分けて記憶してもよい。
【0025】
また、ディスプレイ10は周知のカラー液晶ディスプレイで構成され、ドット・マトリックスLCD(Liquid Crystal Display)およびLCD表示制御を行なうための図示しないドライバ回路を含んで構成されている。ドライバ回路は、制御回路8から送られる表示指令および表示画面データに基づいて地図表示を行なう。なお、ディスプレイ10として有機EL(ElectroLuminescence:電界発光)ディスプレイ、プラズマディスプレイを用いてもよい。
【0026】
スピーカ15は周知の音声合成回路24に接続され、ナビプログラム21pの指令によって不揮発メモリ9あるいはHDD21に記憶されるデジタル音声データを音声合成回路24においてアナログ音声に変換したものが送出される。なお、音声合成の方法には、音声波形をそのままあるいは符号化して蓄積しておき、必要に応じて繋ぎあわせる録音編集方式などがある。
【0027】
本発明の報知手段である車速センサ23は周知のロータリエンコーダ等の回転検出部を含み、例えば車輪取り付け部付近に設置されて車輪の回転を検出してパルス信号として制御回路8に送るものである。制御回路8では、その車輪の回転数を車両101の速度に換算して、車両101の現在位置から所定の場所までの予想到達時間を算出したり、車両101の走行区間毎の平均車速を算出する。
【0028】
LAN(Local Area Network) I/F26は車内LAN27を介して他の車載機器やセンサとのデータの遣り取りを行なうためのインターフェース回路である。また、LAN I/F26を介して車速センサ23からのデータ取り込み、あるいはETC車載器16との接続を行なってもよい。
【0029】
このような構成を持つことにより、カーナビゲーションシステム100は、制御回路8のCPU81によりナビプログラム21pが起動されると、ユーザが操作スイッチ群7、タッチパネル22、リモコン端末12の操作あるいはマイク31からの音声入力によって、ディスプレイ10上に表示されるメニューから目的地経路をディスプレイ10に表示させるための経路案内処理を選択した場合、次のような処理を実施する。
【0030】
すなわち、ユーザが地図上の任意の地点あるいは施設検索や住所検索、ユーザが設定した登録地などから地点を選択して目的地として設定すると、位置検出器1により車両101の現在位置が求められ、該現在位置を出発地として目的地までの最適な案内経路を求める処理が行われる。そして、ディスプレイ10上の道路地図に案内経路を重ねて表示し、ユーザに適切な経路を案内する。このような自動的に最適な案内経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。また、ディスプレイ10およびスピーカ15の少なくとも一方によって、操作時のガイダンスや動作状態に応じたメッセージの報知を行なう。
【0031】
次に、図2に示すように、ディスプレイ10は、車両の運転席に着座するユーザから見て前方助手席寄り側に、画面左右端のうち運転席に近い側が走行方向(実進行方向:D0)前方側に、同じく遠い側が走行方向後方側に位置するよう、平面内傾角θにて傾けて配置されている。具体的には、インパネ部のハンドル左脇位置(メーター等が配置されるコックピット部の左隣(右ハンドル車の場合は、この逆となる)にディスプレイ10がはめ込まれている。これにより、図3に示すように、地図MPが表示される画面SCRがドライバDRV側を向くので地図表示内容がより見やすくなる。そして、ディスプレイの画面SCR上には、地図MPが、地図上進行方向Adが、画面SCR上下方向に定められた基準指示方向から運転席側に傾くよう、画面SCR面内に回転させた状態で表示されている。
【0032】
従来の多くの車両においては、ディスプレイ10は実進行方向D0と直角に取り付けられることが多く、ヘッディングアップ表示形態の場合、画面SCRの上下方向が地図上進行方向となる。この地図上進行方向は実進行方向と整合し、特に問題はない。しかし、上記のように画面SCR(ディスプレイ)が、平面内傾角θをもって傾けて取り付けられていると、該画面SCRの左右端のうち運転席側が走行方向前側に位置しているので、図4に示すように、画面SCRの上下方向を基準指示方向として、これに地図上進行方向Ad’を合わせ込む従来形態を援用した形で地図表示を行なうと、地図上進行方向Ad’が実進行方向から平面内傾角θだけずれることになり、車両の進む向きと地図上進行方向Ad’との不一致により違和感を感じることになる。そこで、この状態から地図MPを回転させ、図3に示すごとく、地図上進行方向Adを、画面SCR上下方向に定められた基準指示方向と一致した状態から運転席側に傾ければ、地図上進行方向Adと実進行方向との整合度が高まり、上記の違和感を効果的に低減できる。なお、図中の符号NDは、実進行方向と直交する平面を示す。
【0033】
図3に示すように、地図MPは地図面が画面SCRと平行になるよう2次元表示されている。地図MPの回転角度は、ディスプレイ10の平面内傾角θと同等に定められている。GPS受信機5(図1)により特定される現在地情報は、地図MP上の対応位置にプロットされる(現在地特定手段)。そして、その現在地に、地図上進行方向Adを示す指示キャラクタDI(地図上進行方向Adを示す矢印図形が指示キャラクタに援用されている)が表示されている。この指示キャラクタDI(Ad)は、基準指示方向から車両の実進行方向D0へ近付く向きに地図MPとともに傾斜して表示される。
【0034】
また、指示キャラクタDIは画面SCR上の定位置(例えば画面中央位置)に固定表示される。地図MPは、画面SCRの面内に該指示キャラクタDIの表示位置を中心として、実進行方向D0へ近付ける回転がなされている。そして、現在地が該地図上進行方向Adに沿って変化するに伴い、傾斜した指示キャラクタDIが示す地図上進行方向Adと逆の向きに、地図MPは斜め後方へスクロール表示される。
【0035】
図5は、カーナビゲーションシステムにより地図を用いた経路案内を行なう場合の、描画処理の流れを示すフローチャートの一例である。S1においては、周知の手法により目的地までの経路計算を行い、現在地直近の進行方向を決定する。そして、S2では車両の絶対進行方向を、GPS受信機5による測位結果の時間的変化やジャイロスコープ3による加速度検出方向の時間的変化、ないしそれらの組み合わせに基づく周知の手法にて特定する。そして、S3では、特定された絶対進行方向を地図データ上にマッピングすることで、地図上進行方向を特定する。なお、タッチパネル22からのユーザ操作により、地図上進行方向をマニュアル設定することも可能である。
【0036】
そして、S4に進み、その特定された地図上進行方向が、図3にて、基準指示方向からディスプレイの平面内傾角θだけ実進行方向D0側に傾いた方向、つまり、実進行方向D0に対応した目標方向と一致するように地図データの回転角度を決定する。S5では、その決定された回転角度にて地図を回転させ、画面SCR上に描画し、さらに地図上進行方向Adを示す指示キャラクタDIを重ね表示する。この実施形態では、画面SCRは上下端縁が水平となるように定められた長方形状であり、目標方向は、この画面SCRの上下端縁と角度(平面内傾角)θにて交わるように定められている。
【0037】
なお、地図をヘディングアップ表示する場合、車両の絶対進行方向は、ジャイロスコープ3による角加速度検出値の積分値を用い、GPS測位結果の時間的変化によりこれを補正する周知の手法により特定できる。そして、従来であれば、該特定された絶対進行方向がディスプレイ10の上下方向と一致するように、地図の角度を刻々変化させて表示することになる。車両の進行方向を示す指示キャラクタDIは、走行中の道路の線形に湾曲や屈曲が生じている場合は、遷移状態として、進行方向の変化に応じて地図が徐々に回転しつつ指示キャラクタDIが上下方向からずれた向きを指示することもあるが、直線ないしこれに近い道路を走行する際は、指示キャラクタDIがディスプレイ10の真上を向くように表示される。そして、本発明の上記実施形態では、ディスプレイ10の平面内傾角θを既知として、これを常時加味した形で地図表示の回転角度を補正するようにしていた。
【0038】
しかし、ジャイロスコープ3の取付形態を工夫すれば、ディスプレイ10の平面内傾角θが予め知れていなくとも、該ジャイロスコープ3の出力情報から該平面内傾角θを特定でき、地図の回転補正を実施できる。その一例を図9に示す。ジャイロスコープ3は周知の振動型角速度センサに加速度センサを組み合わせた3Dジャイロセンサにて構成されているものとする。車両がカーブ走行時に生ずる角速度は、振動型角速度センサにおいては、一定周波数で上下方向に強制振動される錘へのコリオリ力に由来した横方向振動の振幅に反映されるので、これを角速度信号として検出する。また、加速度センサは加速度検出方向が水平面内にて車両正面方向と一致するように取り付けられ、走行方向加速度と、勾配区間を定速走行する際においては勾配方向への重力分力ひいては当該勾配の角度を検出することができる。従来のカーナビゲーションシステムにおいては、この横方向振動の検出方向が、車両走行方向を法線とする直立仮想面内にて水平となるように3Dジャイロセンサ3を取り付けていた。また、ディスプレイ10の画面もこの直立仮想面とほぼ平行になっていた。
【0039】
本発明では、ディスプレイ10が平面内傾角θをもって傾けた形で車両に取り付けられるが、図9に示すように、3Dジャイロセンサ3をディスプレイ10の裏面に対し、加速度検出方向xがディスプレイの画面法線方向と一致し、かつ角速度検出方向yが画面水平方向と一致するように取り付けるのである。その結果、角速度信号の検出方向yは、車両の進行方向に対して直角な上記直立仮想面に対し、はじめからθだけ水平面内に傾いていることになる。すると、車両が直進する際にも、その直進方向の加速度が、各検出方向x及びyへの分力成分α,αとして、それぞれ加速度センサ及び角速度センサにより検出される。ディスプレイの平面内傾角をθとすれば、
tanθ=(α/α
であるから、
θ=Tan−1(α/α
として演算でき、該θの演算値をRAM83(図1)に記憶しておけば、それを用いて、前述と同様に地図表示の回転角度を補正することができる。この場合、平面内傾角θの演算は、IGスイッチON後において最初に直線加速する際に一度だけ行い、記憶するようにすればよい。ただし、ディスプレイ10の車両に対する取付角度(平面内傾角θ)が可変の場合は、直線加速(あるいは減速時でもよい)を行なう毎に平面内傾角θを再演算し、ディスプレイ10の取付角度が変化した場合は、記憶されている平面内傾角θをその都度新しい演算値にて更新するように構成することも可能である。
【0040】
なお、3Dジャイロセンサ3の出力は、カーナビゲーション装置において自立航法によるマップマッチング処理にも使用されるが、上記のようにディスプレイ10が傾けて取り付けられると、直進加減速時においても、カーブ走行時と同様にy方向の角速度を検出してしまうことになる。この場合、上記平面内傾角θが一旦特定されれば、以降は、x方向への加速度検出値αに一義的に対応して、
Δα=α・tanθ
だけ見かけ角速度値Δαが生ずるから、実際の角速度検出値αから該見かけ角速度値Δαを減じた、
αy’=α−Δα
を、マップマッチングを行なう際の真の角速度値として採用すればよい。
【0041】
次に、図6に示すように、地図MPは、地図面が画面SCRの奥行き方向に仮想的に傾斜した形で3次元俯瞰表示するともできる。この場合、図7の一番上に示すように、該地図MP面の奥行き方向傾角φをゼロと考えた場合(つまり、2次元表示の場合)の地図MPの回転角度を基準回転角度(ディスプレイ10の平面内傾角θと同等)として定めたとき、図7の以降に示すように、奥行き方向傾角φが大きくなるほど、該基準回転角度θに対する増分Δθが大きくなるように、該地図MPの回転角度を補正する。そして、角度θ’≡θ+Δθが、地図MPに奥行き方向傾角φを生じた場合の、画面SCR上で視認される地図上進行方向(指示キャラクタ)の基準指示方向からのずれ角を表わす。
【0042】
図8に示すように、奥行き方向傾角φを生じた場合の上記ずれ角θ’は、地図の左右方向縮尺の遠近法補正を行なわない場合、
θ’=Sin−1(sinθ/cosφ)
と表わすことができる。また、遠近法補正を用いる場合は、画面SCRから奥行き方向に距離Lだけ進んだときの、地図の左右方向の表示縮小率をα(L)とすれば、
θ’=Sin−1(α(L)・sinθ/cosφ)
と表わすことができる。このようにしてθ’を計算すれば、前述と同様に、当該θ’の向きに地図上進行方向Adが一致するように地図を回転させて表示する。これにより、地図の3次元俯瞰表示を行なった場合においても、地図上進行方向と実進行方向との整合度を良好に維持できる。
【0043】
なお、ディスプレイ10は、車室内にて前後方向の傾斜角度を可変に取り付けることも可能である。この場合、図6に示すように、そのディスプレイ自体の傾斜角度をΔφとしたとき、地図MPは、奥行き方向傾角φがさらにΔφだけ増加した形で視認されることになるので、上記φをφ+Δφとしてθ’を計算し、地図の回転を行なえばよい。また、ディスプレイ10は、左右方向の角度(つまり、平面内傾角)θを可変に構成することも可能である。この場合は、変更された平面内傾角θの値をその都度取得して、上記の計算及び地図の回転を行なえばよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の車両用地図表示装置の適用対象となるカーナビゲーションシステムの電気的構成の一例を示すブロック図。
【図2】ディスプレイの取付け実施形態の一例を示す説明図。
【図3】本発明に係る車両用地図表示装置の第一の表示例を示す説明図。
【図4】図3の表示例に係る比較例を示す説明図。
【図5】地図表示処理の流れを示すフローチャート。
【図6】本発明に係る車両用地図表示装置の第二の表示例を示す説明図。
【図7】図6における、地図の奥行き方向傾角に応じた回転角度補正の概念を説明する図。
【図8】回転角度補正の計算原理を示す説明図。
【図9】回転角度補正の別原理を示す説明図。
【符号の説明】
【0045】
1 位置検出器(現在地特定手段、地図上進行方向特定手段)
8 制御回路(現在地特定手段、地図上進行方向特定手段)
10 ディスプレイ
87 描画部(地図表示手段、回転角度補正手段)
100 カーナビゲーションシステム(地図表示装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両進行方向に対し少なくとも水平面内に傾角を生ずる形で画面が傾けて取り付けられたディスプレイと、
車両の現在地を特定する現在地特定手段と、
前記ディスプレイの画面上に、特定された前記現在地を含む地図を表示する地図表示手段と、
前記地図上における車両の進行方向である地図上進行方向を特定する地図上進行方向特定手段とを備え、
前記ディスプレイの画面の上下方向を、該ディスプレイを平面内傾角ゼロにて取り付けたと考えた場合の前記地図上進行方向を示す基準指示方向として、前記地図表示手段は、該平面内傾角を生じて取り付けられた前記ディスプレイの前記画面上に前記地図を、前記地図上進行方向を前記基準指示方向と一致させた標準地図表示状態よりも、当該地図上進行方向が前記車両の実進行方向へ近付くように、前記画面の面内に回転させて表示することを特徴とする車両用地図表示装置。
【請求項2】
前記車両の運転席に着座するユーザから見て前方助手席寄り側に前記ディスプレイが、画面左右端のうち運転席に近い側が走行方向前方側に、同じく遠い側が走行方向後方側に位置するよう傾けて配置され、
前記地図表示手段は、前記画面上に前記地図を、前記地図上進行方向が画面上下方向に定められた前記基準指示方向から前記運転席側に傾くよう、前記画面の面内に回転させた状態で表示する請求項1記載の車両用地図表示装置。
【請求項3】
前記地図上の前記現在地に、前記地図上進行方向を示す指示キャラクタを、前記基準指示方向から前記車両の実進行方向へ近付く向きに傾斜して表示する指示キャラクタ表示手段を有する請求項1又は請求項2に記載の車両用地図表示装置。
【請求項4】
前記指示キャラクタは前記画面上の定位置に固定表示されるとともに、前記地図表示手段は、前記画面の面内に該指示キャラクタの表示位置を中心として回転させた状態で前記地図を表示するものである請求項3記載の車両用地図表示装置。
【請求項5】
前記地図表示手段は、前記前記現在地が該地図上進行方向に沿って変化するに伴い、傾斜した前記指示キャラクタが示す地図上進行方向と逆の向きに、前記地図を前記画面上にて斜め後方へスクロール表示するものである請求項3又は請求項4に記載の車両用地図表示装置。
【請求項6】
前記地図表示手段は、前記画面上に前記地図を地図面が前記画面と平行になるよう2次元表示するものであり、前記地図の前記回転角度が、前記ディスプレイの前記平面内傾角と同等に定められてなる請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用地図表示装置。
【請求項7】
前記地図表示手段は、前記画面上に前記地図を地図面が前記画面の奥行き方向に仮想的に傾斜した形で3次元俯瞰表示するものであり、該地図面の奥行き方向傾角をゼロと考えた場合の前記地図の前記回転角度を前記ディスプレイの前記平面内傾角と同等の基準回転角度として定めたとき、前記奥行き方向傾角が大きくなるほど該基準回転角度に対する増加方向の差分が大きくなるように、該地図の回転角度を補正する回転角度補正手段を有する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の車両用地図表示装置。

【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−85765(P2009−85765A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255654(P2007−255654)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】