説明

車載用ナビゲーション装置およびプログラム

【課題】渋滞情報を表示するにあたり、適切に渋滞情報を表示可能であると共に、地図自体の視認性を向上させることが可能な車載用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】順調道路の道路番号を取得し(S300)、現在の渋滞道路から所定距離A(例えば200m)以上離れているか否かを判断する(S310)。ここで所定距離A以上離れていない場合(S310:NO)、描画データを通常通り書き出す(S330)。一方、所定距離A以上離れている場合は(S310:YES)、次に、所定距離B(B>A、例えば400m)以上離れているか否かを判断する(S320)。ここで所定距離B以上離れていない場合(S320:NO)、描画データを透過度50パーセントで書き出す(S350)。一方、所定距離B以上離れている場合(S320:YES)、描画データを透過度80パーセントで書き出す(S340)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渋滞状況を表示可能な車載用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置では、カラーディスプレイ装置などの表示装置を備えるのが一般的であり、その表示画面には、車両位置を示す現在地マークと、地図データに基づき描画される地図と、さらに地図データに対応して記憶された施設などの情報とが重ねて表示される。
ところで、近年、刻一刻と変化する交通状況を運転者に報知することなどを目的として、情報センタが整備されてきている。この情報センタからは、例えば、渋滞情報が配信される。したがって、ナビゲーション装置の中には、地図上の各道路に対応させて、渋滞状況を表示するものがある。例えば、渋滞度合いの高いほうから「渋滞」、「混雑」および「順調」という3段階に分け、それぞれを「赤色」、「黄色」、「青色」の矢印として、各道路に対応させて地図上に表示するナビゲーション装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−65778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、渋滞状況を示す矢印の表示/非表示を一括で切り換えることはできるものの、表示を選択したときは、渋滞状況を示す矢印がすべて、地図上に表示される。結果として、渋滞状況を示す矢印が込み入ってしまい、却って渋滞状況の認識が困難になることが往々にしてあった。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、有効な情報を適切に表示することで渋滞状況が認識困難となることを抑制可能な車載用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車載用ナビゲーション装置は、地図データを記憶する地図データ記憶手段と、地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づき、地図を表示する地図表示制御手段と、道路の渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、渋滞情報取得手段にて取得される渋滞情報に基づき、渋滞度合いが予め定められた基準を上回る道路を判断する道路状況判断手段と、地図表示制御手段にて表示される地図上に、渋滞情報に基づく各道路の渋滞状況を表示する道路状況表示制御手段と、を備え、道路状況表示制御手段は、基準を上回る道路との配置関係に応じた表示形態で、基準を上回る道路以外の道路の渋滞状況を表示することを特徴とする。
【0007】
つまり、渋滞度合いが予め定められた基準を上回る道路を判断し、この道路との配置関係に応じた表示形態で、基準を上回る道路以外の各道路の渋滞状況を表示するのである。渋滞状況の表示の一例が、道路に対応する矢印の表示である。なお、「渋滞状況」には、例えば、渋滞区間を通過するときの所要時間、渋滞区間での各車両の平均速度、渋滞区間の長さ、などが含まれる。渋滞度合いが基準を上回る道路は、例えば「渋滞道路」である。したがって、基準を上回る道路以外の各道路には、例えば「順調道路」が含まれる。順調道路はいわゆる「空き道」と呼ばれるものであり、この順調道路が渋滞道路のための抜け道として利用されることに着目すると、渋滞道路から離間した順調道路に対応する渋滞状況の表示にはあまり意味がない。したがって、基準を上回る道路との配置関係に応じた表示形態で渋滞状況を表示すれば、従来のような一律の表示とは異なり、有効な情報を適切に表示でき、渋滞状況が認識困難となることを抑制できる。
【0008】
具体的には、基準を上回る道路からの距離が大きくなるほど透過度を段階的に大きくする表示形態で、基準を上回る道路以外の道路の渋滞状況を表示することが例示される。ここで「透過度」とは、表示された情報の上に別の情報を重ねて表示する際、当該情報に重なって隠れてしまう領域の情報が透けて見える度合いである。このように透過度を段階的に大きくすることによって、有効な情報を適切に表示でき、渋滞情報が認識困難となることを抑制できる。
【0009】
なお、本発明は、次に示すようなプログラムの発明として実現することもできる。
本発明のプログラムは、地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づき、地図を表示する地図表示制御処理と、渋滞情報取得手段にて取得される渋滞情報に基づき、渋滞度合いが予め定められた基準を上回る道路を判断する道路状況判断処理と、地図表示制御処理にて表示される地図上に、渋滞情報に基づく各道路の渋滞状況を表示する道路状況表示制御処理とを含み、道路状況表示制御処理は、基準を上回る道路との配置関係に応じた表示形態で、基準を上回る道路以外の道路の渋滞状況を表示する処理を含むことを特徴とする。このようなプログラムをコンピュータシステムにて実行すれば、上述した車載用ナビゲーション装置と同様の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の車載用ナビゲーション装置1の全体構成を示すブロック図である。車載用ナビゲーション装置1は、制御部10を中心に構成されており、この制御部10に接続される位置検出器20、地図データ記憶部30、操作スイッチ群40、通信部50、描画部60、音声出力部70、および、情報記憶部80を備えている。なお、制御部10は通常のコンピュータとして構成されており、内部には、CPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらの構成を接続するバスラインなどが備えられている。また、描画部60には、ディスプレイ60aが電気的に接続されており、音声出力部70には、スピーカ70aが電気的に接続されている。
【0011】
位置検出器20は、いずれも周知の地磁気センサ21、ジャイロスコープ22、距離センサ23、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System )受信機24を有している。これらのセンサ等21〜24は、各々が性質の異なる誤差を持っているため、相互に補完しながら使用される。
【0012】
地図データ記憶部30は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ及び地図データを記憶している。地図データには、ノードデータ、および、道路データ(リンクデータ)が含まれる。ノードデータは、交差点などに設定されるノード(点)の情報であり、ノード番号、ノードの座標、ノードに接続される道路番号、などで構成されている。また、道路データは、ノード同士を結ぶ道路の情報であり、道路番号、道路の端部のノード番号、道路長、進行方向、などで構成されている。本実施形態では、ハードディスク装置(HDD)で構成している。なお、本実施形態ではHDDを用いたが、DVD−ROMやメモリカード等の他の媒体を用いても差し支えない。
操作スイッチ群40は、ディスプレイ60aと一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチやリモコン装置等で構成され、各種入力に使用される。
【0013】
通信部50は、情報センタ90からの情報を受信する。本実施形態では、情報センタ90は、VICS(登録商標、Vehicle Information and Communication System)センタとして実現されている。VICSセンタは、FM放送局の音声放送に多重化し、同一周波数帯域で、渋滞情報を含むVICS情報を送信する。
VICS情報には、渋滞区間等を特定するためのVICSノードデータ、および、VICS道路データが含まれる。これらのデータ構造は、地図データが有するノードデータおよび道路データと同様の構造となっている。ただし、ノード番号や道路番号が地図データのものとは異なっていたり、データ構造の細部が異なっていたりすることが考えられる。この場合、車載用ナビゲーション装置1側で、VICS情報を地図データに合わせて変換すればよい。もちろん、車載用ナビゲーション装置1側の地図データをVICS情報に合わせて作成してもよい。このようにすれば、VICS情報の変換処理が不要になるという点で有利である。
【0014】
また、本実施形態では、渋滞情報として、道路番号、渋滞区間の先頭位置(当該道路端点からの距離)、渋滞区間の長さ、および、渋滞度合いが配信される。このとき、道路番号にて道路が特定できるため、当該道路の端部のノードが特定できる。また、特定されたノードに接続される道路番号から、当該ノードが交差点であるか否かを判定できる。なお、ノードが交差点である場合、交差点であることを示す情報がノードデータに含まれるデータ構造としてもよい。また、当該道路における渋滞区間の先頭位置とその長さの情報から、渋滞区間の先頭位置の座標値、渋滞区間の最後尾の座標値が特定できる。さらにまた、渋滞度合いは、「渋滞」、「混雑」、「順調」および「不明」の4段階で示される。
【0015】
描画部60には、上述したようにディスプレイ60aが接続されている。ディスプレイ60aは、液晶やCRTを用いたカラーディスプレイである。このディスプレイ60aを介して情報表示が行われ、特に本実施形態では、地図表示に重ねて渋滞状況が表示されるようになっている。
音声出力部70にはスピーカ70aが接続されており、このスピーカ70aを介して音声による案内が行われる。また、情報記憶部80は、通信部50にて受信される渋滞情報を記憶するためのものであり、地図データ記憶部30と同様のHDDで構成されている。もちろん、メモリカード等の他の媒体を用いても差し支えない。
【0016】
次に、図2に示すフローチャートに基づき、情報受信処理を説明する。この情報受信処理は、所定時間間隔で実行される。
最初のステップS100(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す)において、情報受信を行う。この処理は、通信部50により、情報センタ90から送信されてくる交通情報を受信するものである。
【0017】
続くS110では、受信した交通情報が渋滞情報であるか否かを判断する。ここで渋滞情報であると判断された場合(S110:YES)、S120へ移行する。一方、渋滞情報でないと判断された場合(S110:NO)、S140へ移行する。
S120では、渋滞情報に含まれる道路番号および渋滞度合いを取得する。情報センタ90から送信されてくる渋滞情報には、上述したように、道路番号、および、渋滞度合いが含まれている。渋滞度合いは、「渋滞」、「混雑」、「順調」、および、「不明」の4段階で示されることは既に述べた。なお、渋滞度合いが段階的に示される情報でなければ、ここで、段階的な情報へ変換するようにしてもよい。
【0018】
続くS130では、渋滞度合い毎に、道路番号を記憶する。すなわち、「渋滞」、「混雑」および「順調」に対応させ、道路番号を情報記憶部80に記憶する。また、ここでは、当該情報の受信時刻も記憶する。かかる構成により、情報記憶部80を検索すれば、渋滞度合いである「渋滞」、「混雑」、「順調」にそれぞれ対応する「渋滞道路」、「混雑道路」、および「順調道路」を道路番号で特定することができる。また、受信時刻を記憶するため、ある時点で受信した交通情報よりも過去の時点で受信した交通情報に基づいて「渋滞道路」を特定することもできる。なお、S130の処理終了後、S150へ移行する。
【0019】
交通情報が渋滞情報でないと判断された場合に移行するS140では交通情報に応じたその他の処理を実行し、その後、S150へ移行する。
S150では、未処理の交通情報があるか否かを判断する。ここで、未処理情報があると判断された場合(S150:YES)、すなわち受信した交通情報で処理していないものがあるうちは、S110からの処理を繰り返す。一方、未処理情報がないと判断された場合(S150:NO)、すなわち受信した全ての交通情報を処理した場合には、本情報受信処理を終了する。
【0020】
次に、ディスプレイ60aに渋滞情報を表示するにあたって行われる描画データの書き出し処理を説明する。描画データとは、画像として処理可能なイメージデータである。本実施形態では、通信部50にて受信した渋滞情報のすべてに対し、対応する描画データを所定メモリへ書き出すものとする。この所定メモリは制御部10が有するものであり、当該所定メモリから所定区画範囲の描画データを描画部60へ転送することで、車両周辺の渋滞情報がディスプレイ60aに表示される。ここでは、最初に渋滞道路および混雑道路に関する描画データの書き出し処理である渋滞道路処理を説明し、続けて、順調道路に関する描画データの書き出し処理である順調道路処理を説明する。
【0021】
図3は、渋滞道路処理を示すフローチャートである。
最初のS200では、渋滞道路および混雑道路の道路番号を取得する。この処理は、情報記憶部80を検索し、渋滞度合いが「渋滞」または「混雑」である道路番号を取得するものである。
続くS210では、渋滞、混雑の情報を書き出す。具体的には、渋滞道路に対応させ、赤色の矢印を描画するための描画データを書き出す。また、混雑道路に対応させ、黄色の矢印を描画するための描画データを書き出す。
【0022】
次のS220では、すべての渋滞道路および混雑道路について処理したか否かを判断する。ここで、すべて処理したと判断された場合(S220:YES)、本渋滞道路処理を終了する。一方、処理していないものがあるうちは(S220:NO)、S200からの処理を繰り返す。
図4は、順調道路処理を示すフローチャートである。
【0023】
最初のS300では、順調道路の道路番号を取得する。この処理は、情報記憶部80を検索し、渋滞度合いが「順調」である道路番号を取得するものである。
次のS310では、当該順調道路が現在の渋滞道路から所定距離A(例えば200m)以上離れているか否かを判断する。したがって、本実施形態では、「渋滞度合いが予め定められた基準を上回る道路」を渋滞道路としている。現在の渋滞道路の道路番号は、上述したように、情報記憶部80を検索することで取得できる。また、本実施形態では、離れているか否かの判断を、道なり距離が所定距離A以上であるか否かで行う。道なり距離とは、渋滞道路上の基点と順調道路上の基点との間を結ぶ道路の距離である。この距離の基点となるのは、渋滞道路側では、渋滞道路の端部を示すノードである。また、順調道路側では、順調道路の端部を示すノードである。これらのノードは、上述したように道路データに含まれている。ここで所定距離A以上であると判断された場合(S310:YES)、S320へ移行する。一方、所定距離A以上でないと判断された場合(S310:NO)、S330にて通常通りの書き出しを行い、その後、S360へ移行する。通常通りの書き出しとは、透過度「0」の青色の矢印を描画するための描画データの書き出しである。
【0024】
S320では、所定距離Aよりも大きな所定距離B(例えば400m)以上離れているか否かを判断する。この処理は、所定距離A以上離れていると判断された順調道路が、さらに所定距離B以上離れているか否かを判断するものである。ここで所定距離B以上であると判断された場合(S320:YES)、例えば順調道路が渋滞道路から400m以上離れている場合には、S340にて透過度80パーセントの青色の矢印を描画するための描画データを書き出し、その後、S360へ移行する。一方、所定距離B以上でないと判断された場合(S320:NO)、例えば順調道路が渋滞道路から200m以上で400m未満の距離にある場合には、S350にて透過度50パーセントの青色の矢印を描画するための描画データを書き出し、その後、S360へ移行する。
【0025】
S360では、すべての順調道路について処理したか否かを判断する。ここで、すべて処理したと判断された場合(S360:YES)、本順調道路処理を終了する。一方、処理していないものがあるうちは(S360:NO)、S300からの処理を繰り返す。
これらの渋滞道路処理および順調道路処理の終了後、上述した所定メモリから所定区画範囲の描画データが描画部60に転送されることにより、ディスプレイ60aには、地図上に渋滞状況を示す矢印が重ねて表示されることになる。
【0026】
図5(a)は、ディスプレイ60aにおける画面表示例を示す説明図である。この画面表示例では上方が「北」であるとして、以下説明する。
この画面表示例には、南北方向の道路SNと東西方向の道路EWとが表示されている。これらの道路SN、EWに沿って矢印が描かれているが、太い実線で示す矢印が実際には赤色で表示される渋滞道路に対応する矢印である。また、細い実線で示す矢印が実際には青色で表示される順調道路に対応する矢印であり、同様に、一点鎖線で示す矢印が実際には透過度50パーセントの青色で表示される順調道路に対応する矢印であり、破線で示す矢印が透過度80パーセントの青色で表示される順調道路に対応する矢印である。
【0027】
なお、説明の便宜上、地点S、D1、C、D2、Bを道路SN上に示した。これらの地点S、D1、C、D2、Bは、実際に地図上に表示されるわけではない。ここでは、地点S、C、Bが渋滞道路の端部のノードである。また、地点Cは、道路SNと道路EWとの交差点のノードでもある。なお、本実施形態において渋滞道路上の基点となるのが、地点S、C、Bである。さらにまた、地点D1が渋滞区間の先頭位置を示し、地点D2が渋滞区間の最後尾位置を示す。道路の端部のノード(交差点のノードを含む)は、上述したように、渋滞情報として取得される道路番号に基づいて特定できる。また、渋滞区間の先頭位置の座標値および最後尾位置の座標値も、上述したように、渋滞情報に含まれる渋滞区間の先頭位置および渋滞区間の長さの情報から分かる。
【0028】
図5(a)は、記号Gで示すように、15時05分に受信したVICS情報に基づく表示となっている。図5(a)では、太い実線で表される矢印(一つを記号Jで示す)から、道路SNの北へ向かう車線に、渋滞が発生していることがわかる。
本実施形態では、順調道路の描画データを書き出すにあたり、渋滞道路の端部(地点S、B)および渋滞道路に含まれる交差点(交差点C)からの道なり距離が所定距離A(例えば200m)以上であるか否かを判断する(図4中のS310)。そして、所定距離A未満である場合(S310:NO)、通常通りの書き出しを行う(S330)。このため、図5(a)に示すように、例えば交差点Cから所定距離Aよりも小さい距離にある順調道路に対応する矢印は、記号T1で示すごとく、通常通り(透過度0パーセントで)表示されることになる。一方、所定距離A以上である場合には(S310:YES)、次に、所定距離B(B>A、例えば400m)以上離れているか否かを判断する(S320)。ここで所定距離B未満である場合(S320:NO)、すなわち所定距離A以上で所定距離B未満の距離に順調道路がある場合は、透過度50パーセントで書き出しを行う(S350)。一方、所定距離B以上である場合(S320:YES)、すなわち所定距離B以上の距離に順調道路がある場合は、透過度80パーセントで書き出しを行う(S360)。このため、図5(a)に示すように、例えば交差点Cから所定距離A以上で所定距離B未満の距離にある順調道路に対応する矢印は、記号T2で示すごとく、透過度50パーセントで表示されることになる。また例えば交差点Cから所定距離B以上の距離にある順調道路に対応する矢印は、記号T3で示すごとく、透過度80パーセントで表示されることになる。
【0029】
なお、本実施形態における地図データ記憶部30が「地図データ記憶手段」を構成し、通信部50が「渋滞情報取得手段」を構成し、制御部10が「道路状況判断手段」、「地図表示制御手段」および「道路状況表示制御手段」を構成する。また、図2中のS120およびS130が「道路状況判断手段」としての処理としての「道路状況判断処理」を構成し、図4に示した順調道路処理が「道路状況表示制御手段」としての処理である「道路状況表示制御処理」を構成する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態では、「渋滞度合いが予め定められる基準を上回る道路」である渋滞道路を判断し、渋滞道路との配置関係に応じた表示形態で順調道路の渋滞状況を表示する。具体的には、渋滞状況が道路に対応する矢印で表示され、順調道路に対応する矢印は、渋滞道路からの距離が大きくなるほど段階的に透過度を上げて表示される。ここでいう「順調道路」はいわゆる「空き道」と呼ばれるものであるが、この順調道路は渋滞道路からの抜け道として利用されるということに着目すると、渋滞道路から離間した順調道路の重要性は薄れてくる。したがって、このような順調道路の透過度を大きくするようにすれば、従来のような一律の表示とは異なり、有効な情報を適切に表示でき、渋滞状況が認識困難となることを抑制できる。
また、本実施形態では、順調道路の透過度を決定する際の渋滞道路との距離を、道なり距離としている。したがって、高速道路に平行に走る一般道路や、高架によって立体交差する道路など、渋滞道路との直線距離が近い場合であっても抜け道として利用できない順調道路については透過度が高く設定される。これによって、適切な渋滞状況の表示が可能となる。
【0031】
以下、本発明の技術思想の理解を容易にするため、上記実施形態のバリエーションを紹介する。
図5(b)は、記号Gで示すように、15時25分に受信したVICS情報に基づく表示となっている。すなわち、図5(a)に示した受信時刻である15時05分から20分後のVICS情報に基づくものである。このとき、図5(b)に記号T5で示すような渋滞道路に対応する矢印が表示される場合、この渋滞道路から離れた順調道路は、上記実施形態では、大きな透過度で表示される。これに対し、渋滞が解消されて間もない順調道路については、通常通りの矢印を表示するようにしてもよい。例えば30分以内に渋滞が解消されている順調道路に対応する矢印(その一つを記号T4で示した)を表示するという具合である。このようにすれば、渋滞が解消されて間もない道路区間を特定することができ、有意義な渋滞状況の表示を行うことができる。
【0032】
なお、上記実施形態では「配置関係に応じた表示形態」として透過度を50パーセント、80パーセントと段階的に変更しているが、連続的に透過度を設定してグラデーション表示を行うようにしてもよい。
【0033】
また、「配置関係に応じた表示形態」は、透過度の変更に限られない。例えば、細い矢印にしたり、小さい矢印にしたりすることも考えられる。すなわち、渋滞状況が表示されることで、隠れてしまう地図の領域を少なくするような態様であればよい。
さらにまた、上記実施形態において渋滞度合いは、「渋滞」、「混雑」、「順調」および「不明」の4段階で示されるようになっており、渋滞度合いが「渋滞」の道路を「渋滞度合いが予め定められた基準を上回る道路」としていた。これに対し、渋滞度合いが「混雑」である道路を「渋滞度合いが予め定められる基準を上回る道路」に含めて処理するようにしてもよい。なお、渋滞度合いが5段階以上で示される場合も同様である。
【0034】
また、上記実施形態では、渋滞道路から順調道路までの距離として、渋滞道路の端部(図5(a)中の地点S、B)、および、渋滞道路に含まれる交差点(交差点C)を基点とする距離を採用した。すなわち、順調道路が抜け道として利用されることを考えると、渋滞道路から順調道路への走行という観点から、渋滞道路の端部や交差点を基点にした距離とすることが好ましい。なお、同様の観点から、この基点に、例えば図5(a)に示す渋滞の先頭D1や渋滞の最後尾D2を採用してもよい。
【0035】
ところで、上記実施形態では、基点からの道なり距離を採用しているが、直線距離としてもよい。基点からの直線距離は、当該基点を中心とする円として示される。また、基点からの距離ではなく、道路からの直線距離を採用してもよい。道路からの直線距離は、当該道路上を円の中心が移動した場合の軌跡として示される。
さらに、「基準を上回る道路との配置関係」を判断する際、距離に基づく判断に限定されない。例えば、渋滞道路から順調道路までの間の道路を構成する道路データの数(リンク数)で判断するようにしてもよい。このようにリンク数で渋滞道路との配置関係を判断するようにした場合は、道なり距離で判断する場合と同様、高速道路と当該高速道路に平行に走る一般道路とのリンク数、高架によって立体交差する道路同士のリンク数は一般的に大きくなる。その結果、渋滞道路との直線距離が近い場合であっても抜け道として利用できない順調道路を適切に判定することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、情報センタ90がVICSセンタとして実現されていた。VICSセンタは、FM放送に交通情報を多重化して県単位で配信することが知られている。上記実施形態では、受信される渋滞情報のすべてについて処理を行い(図4中のS360)、描画データとして所定メモリへ書き出すようにした(S330〜S350)。これに対し、自車両の周辺部の渋滞情報だけを処理するようにしてもよい。この場合、例えば次の情報受信までの間に自車両が到達可能な範囲を求め、その範囲についての渋滞情報を処理するという具合である。さらに、情報センタ90は、VICSセンタそのものでなく、VICSセンタとは別個のセンタとして実現してもよい。またさらに、情報センタ90からの配信方法も限定されない。例えば、電話回線を利用して情報センタ90から交通情報を取得する構成としてもよい。
【0037】
なお、上記実施形態では、情報センタ90から渋滞情報を取得することを前提としていたが、地図データ記憶部30が、過去の渋滞情報を統計した統計情報を記憶している構成を採用してもよい。この場合、通信部50にて取得される渋滞情報に代え地図データ記憶部30に記憶された統計情報に基づき、渋滞道路および順調道路を判断する。このようにすれば、たとえ情報センタ90からの情報がない場合であっても、統計的な表示を行うことができる。
【0038】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態の車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における情報受信処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態における渋滞道路処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における順調道路処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態における渋滞状況の表示画面例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1:車載用ナビゲーション装置、10:制御部(道路状況判断手段、道路状況表示制御手段、地図表示制御手段)、20:位置検出器、21:地磁気センサ、22:ジャイロスコープ、23:距離センサ、24:GPS受信機、30:地図データ記憶部(地図データ記憶手段)、40:操作スイッチ群、50:通信部(渋滞情報取得手段)、60:描画部、60a:ディスプレイ、70:音声出力部、70a:スピーカ、80:情報記憶部(情報記憶手段)、90:情報センタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づき、地図を表示する地図表示制御手段と、
道路の渋滞情報を取得する渋滞情報取得手段と、
前記渋滞情報取得手段にて取得される前記渋滞情報に基づき、渋滞度合いが予め定められた基準を上回る道路を判断する道路状況判断手段と、
前記地図表示制御手段にて表示される地図上に、前記渋滞情報に基づく各道路の渋滞状況を表示する道路状況表示制御手段と、を備え、
前記道路状況表示制御手段は、前記基準を上回る道路との配置関係に応じた表示形態で、前記基準を上回る道路以外の道路の渋滞状況を表示することを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記道路状況表示制御手段は、前記基準を上回る道路からの距離が大きくなるほど透過度を段階的に大きくする表示形態で、前記基準を上回る道路以外の道路の渋滞状況を表示することを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
地図データ記憶手段に記憶された地図データに基づき、地図を表示する地図表示制御処理と、
渋滞情報取得手段にて取得される渋滞情報に基づき、渋滞度合いが予め定められた基準を上回る道路を判断する道路状況判断処理と、
前記地図表示制御処理にて表示される地図上に、前記渋滞情報に基づく各道路の渋滞状況を表示する道路状況表示制御処理とを含み、
前記道路状況表示制御処理は、前記基準を上回る道路との配置関係に応じた表示形態で、前記基準を上回る道路以外の道路の渋滞状況を表示する処理を含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−287964(P2009−287964A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138171(P2008−138171)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】