説明

車載用ナビゲーション装置及び車両信号検知方法

【課題】バック信号等の車両信号をその信号線の結線を行わなくても検知可能とし、自立航法の精度向上に寄与することができる「車載用ナビゲーション装置及び車両信号検知方法」を提供すること。
【解決手段】車両信号を利用してナビゲーションに係る処理を実行する機能を備えた車載用ナビゲーション装置において、あらかじめ車室内で車両信号の出力に付随して発生する当該車両信号の音のデータを記憶手段に登録しておき、車室内で発生する音をマイクロホンで検出しながら(S2)、マイクロホンを通して入力された音の信号と記憶手段に登録されている音のデータとを音声認識手段により比較照合し(S6)、当該入力された音の波形が車両信号の波形と一致するかどうかを判定し(S7)、一致すると判定したときにその旨を指示する信号を出力し(S8)、この信号により当該車両信号の検知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置及び車両信号検知方法に関し、特に、音声認識機能を利用して車両信号を検知するよう適応された車載用ナビゲーション装置及び車両信号検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な車載用ナビゲーション装置においては、ナビゲーションに係る一切の処理を制御するCPU等の制御装置、地図データを格納したCD−ROMやDVD−ROM等の記憶装置、LCDモニタ等の表示装置、自車の現在位置を検出するためのGPS受信機、自車の方位や走行速度等を検出するためのジャイロ等の自立航法センサや車速センサなどが設けられている。そして、制御装置により、自車の現在位置を含む地図データを記憶装置から読み出し、この地図データに基づいて自車位置の周囲の地図画像を表示装置の画面に描画すると共に、自車の現在位置を指示する自車位置マークを画面上に重ね合わせて表示し、自車の移動に応じて地図画像をスクロール表示したり、地図画像を画面に固定して自車位置マークを移動させたりして、自車が現在何処を走行しているのかを一目で判るようにしている。
【0003】
また、車載用ナビゲーション装置には、ユーザが目的地に向けて道路を間違うことなく容易に走行できるように案内する機能(経路誘導機能)が搭載されている。この経路誘導機能によれば、制御装置により、地図データを用いて出発地(典型的には自車位置)から設定された目的地までを結ぶ最適な経路を、横型探索法やダイクストラ法等のシミュレーション計算を行って探索し、その探索した経路を誘導経路として記憶しておき、走行中、地図画像上にその誘導経路を他の道路とは識別可能に(例えば、色を変えたり、線幅を太くして)表示したり、また誘導経路上で接近中の交差点まで所定距離に達したときに、音声案内と共に地図画像上にその交差点の拡大図(交差点での進行方向を示す矢印、交差点までの距離、交差点名などを含む)を表示したりすることで、目的地に向けた最適な経路をユーザが把握できるようになっている。
【0004】
かかるナビゲーション装置においては、各種センサ等から取得した車両信号をナビゲーションに係る種々の処理に利用している。車両信号としては、GPS受信機から出力されるGPS信号、ジャイロ等の自立航法センサから出力される信号、車速センサから出力される車速パルス(信号)、シフト位置センサから出力されるバック信号、ウィンカ(方向指示灯)の起動時に出力されるウィンカ信号などがある。特に車速パルスは、自立航法には不可欠の信号であり、GPS信号を受信していない状況もしくは受信できないような状況下でもジャイロを使用した自立航法で自車位置を検出する際に重要な役割を果たす。ただし、車速パルスはあくまでも車両の走行速度を指示する信号であり、この信号だけでは車両の進行方向(前に進んでいるのか後ろに進んでいるのか)は分からない。この進行方向を判断するためにはバック信号を取得する必要があり、かかるバック信号を利用したナビゲーション装置は現に市場に出回っている。
【0005】
また、最近のナビゲーション装置には音声認識機能を搭載したものも出現している。かかるナビゲーション装置では、例えば、施設を検索する際に、リモコン操作等のマニュアル操作を行わなくても、マイクロホンを介して施設名を音声入力するだけで施設の検索を簡単に行うことができる。
【0006】
上記の従来技術に関連する技術としては、例えば、特許文献1に記載されるように、集音マイクを利用して道路を走行する車両の種別を判定するようにした車両識別装置において、一定時間内における判別対象車種に固有の周波数帯域のレベルの全帯域の騒音レベルに対する比と、一定時間内における両レベル波形の相似度を考慮することによって車種を判別するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平5−325090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように従来の車載用ナビゲーション装置においては、車速パルスやバック信号等の車両信号を取得して自立航法等の処理に使用するものが実現されている。これら車両信号のうち車速パルス(信号)については、その信号線をナビゲーション装置本体に結線する方法は市場において比較的情報が流通しているため、純正製品でない他社製品のナビゲーションユニット(装置本体)を後で追加装備した場合でも、車速パルスの信号線を結線して自立航法の精度を高めることが可能である。
【0008】
しかしながら、バック信号については、その信号線を結線する方法はそれほど情報が出回っておらず、また、バック信号を使用するナビゲーション装置は純正製品に限られるケースが多いため、ユーザは、このバック信号を簡単に利用することができないといった不都合があった。すなわち、バック信号は自車が後方に移動(バック)したときの位置補正を行うのに使用することができるが、現状は、純正製品でない他社製品のナビゲーションユニットを後で追加装備したときにバック信号の信号線を容易にナビゲーション装置本体に結線することができない。
【0009】
また、ウィンカ信号については、例えば、本線から微小角分岐される道に進路を変更する際にウィンカ信号を利用して微小角分岐を判定する手法は知られているが、かかる手法を用いたナビゲーション装置は純正製品に限られるケースが多い。また、バック信号と同様にウィンカ信号についても、その信号線を結線する方法はそれほど情報が出回っていないため、このウィンカ信号も簡単に利用することができないといった問題があった。
【0010】
微小角分岐を判定する手法としては、上記のウィンカ信号を利用する方法以外に、ジャイロで検出された信号を適宜演算処理して行う方法が一般的である。しかし、ジャイロで検出される信号(レベル)は微小であるため、その判定の精度はそれほど高くはなく、信頼性は比較的低いものであった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、バック信号等の車両信号をその信号線の結線を行わなくても検知可能とし、ひいては自立航法の精度向上に寄与することができる車載用ナビゲーション装置及び車両信号検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の従来技術の課題を解決するため、本発明の一形態によれば、車室内の所定の箇所に設置されたマイクロホンと、あらかじめ車室内で車両信号の出力に付随して発生する当該車両信号の音のデータを登録した記憶手段と、前記マイクロホンを介して入力された音の信号と前記記憶手段に登録されている音のデータとを比較照合する音声認識手段とを備え、前記音声認識手段は、前記比較照合に基づいて当該入力された音の波形が車両信号の波形と一致するかどうかを判定し、一致すると判定したときにその旨を指示する信号を出力することを特徴とする車載用ナビゲーション装置が提供される。
【0013】
本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、車室内で発生する音(声)をマイクロホンで検出し、音声認識手段により、その検出された音の信号と記憶手段に登録されている音のデータとを比較照合して、当該検出された音の波形が車両信号の波形と一致するかどうかを判定し、一致すると判定したときにその旨を指示する信号を出力するようにしている。従って、この出力された信号を検知することで、その時点で入力されている信号は車両信号であると判断することができる。つまり、当該車両信号の信号線の結線(ナビゲーション装置への配線)を行わなくても、ナビゲーション装置では当該車両信号を音声認識により検知することができる。
【0014】
このようにして音声認識した情報(車両信号)はマップマッチングに利用することができる。例えば、バック信号の場合、AT車では「ピーピーピー」音を検知(音声認識)することで自車が「バック」の状態にあると認識し、その認識結果を自立航法の処理に活かすことができる。これにより、自立航法の精度(車両位置/車両方位の検出精度)を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明の他の形態によれば、車両信号を利用してナビゲーションに係る処理を実行する機能を備えた車載用ナビゲーション装置において、あらかじめ車室内で車両信号の出力に付随して発生する当該車両信号の音のデータを記憶手段に登録し、車室内で発生する音をマイクロホンで検出しながら、該マイクロホンを通して入力された音の信号と前記記憶手段に登録されている音のデータとを音声認識手段により比較照合し、前記比較照合に基づいて当該入力された音の波形が車両信号の波形と一致するかどうかを判定し、一致すると判定したときにその旨を指示する信号を出力し、該信号により当該車両信号の検知を行うことを特徴とする車両信号検知方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の構成をブロック図の形態で示したものである。
【0018】
本実施形態に係る車載用ナビゲーション装置30において、1は記録媒体としてのハードディスクドライブ(HDD)を示し、このHDD1によって駆動されるディスク(図示せず)には、各縮尺レベル(1/12500、1/25000、1/50000等)に応じて適当な大きさの経度幅及び緯度幅に区切られた地図データがその割り当てられた記憶領域に格納されている。この地図データには、経路探索やマップマッチング等の各種処理に必要な道路ユニットのデータ及び交差点の詳細を表す交差点ユニットのデータと共に、各種施設(コンビニエンスストア、ガソリンスタンド、スーパー・ディスカウントショップ、デパート、駅、空港など)に関するデータ(位置、住所、電話番号、ジャンル等の各種情報)が含まれている。道路ユニットは、交差点や分岐など複数の道路が交わる点に対応するノード(経緯度で表現された点)と、各ノード間を結ぶ道路や車線等に対応するリンクとを含んでいる。さらにHDD1には、施設のマニュアル検索の際に使用する検索データリストや音声認識による検索の際に使用するデータ(音声認識辞書)がそれぞれ割り当てられた記憶領域に格納されている。本実施形態では、HDD1を使用しているが、これに代えて、DVDドライブ(DVD−ROM)やCDドライブ(CD−ROM)等の他の記録媒体を使用してもよい。
【0019】
2は車室内で発生する音(音声を含む)検出してその音レベルに応じたアナログ波形信号に変換するマイクロホンを示し、例えば、運転席前方のサンバイザー又はルームミラーの近傍、ステアリングホイールの中央部、センターコンソール(ダッシュボード)の上などに適宜設置されている。このマイクロホン2は、基本的にはユーザ(例えば、運転者)が発する施設検索等に係る指示(音声)を入力するのに使用され、さらに本発明に関連する使用態様として、車両信号の出力に付随して発生する音(本実施形態では、バック信号に対応する「ピーピーピー」音とウィンカ信号に対応する「カチカチカチ」音)を検出するのに用いられる。
【0020】
3は後述するナビゲーション装置本体10を操作するための操作部を示し、例えば、リモートコントローラ(リモコン)の形態を有している。特に図示はしないが、このリモコンには、後述する表示装置7の画面に各種メニューを表示させたり、その表示画面上の各種メニューや各種項目等を選択したり、選択したメニュー等を実行させたりするための各種操作キーやボタン、ジョイスティック等が設けられている。4は外部の情報センタ等と通信するための携帯電話機や車載電話機等の通信機(携帯電話機の場合は専用のモデムが付属する)、5はGPS衛星から送られてくるGPS信号を受信して自車の現在位置の経度及び緯度を検出するGPS受信機、6は自車の方位を検出するジャイロ等の角度センサや一定の走行距離毎にパルスを発生する距離センサ等を備えた自立航法センサを示す。
【0021】
7はLCDモニタ等からなる表示装置を示し、少なくとも運転席から表示画面を見ることができるようにセンターコンソールのほぼ中間位置に設置されている。この表示装置7の画面には、後述するナビゲーション装置本体10からの制御に基づいて、ナビゲーションに係る案内情報(自車の現在位置の周囲の地図、自車位置マーク、自車位置から目的地までの誘導経路、音声認識に基づいた施設検索等の各種案内情報など)が表示される。8はスピーカを示し、同様にナビゲーション装置本体10からの制御に基づいて、上記のナビゲーションに係る案内情報を音声出力する。
【0022】
ナビゲーション装置本体10において、11はHDD1(ディスク)から読み出された地図データを一時的に格納するバッファメモリ、12はマイクロコンピュータ等により構成された制御部を示す。この制御部12は、特に図示はしないが、誘導経路探索プログラム等の各種プログラムを格納したROM等のメモリを内蔵している。制御部12は、基本的には、メモリに格納された各種プログラムに従い、GPS受信機5から出力される信号に基づいて自車の現在位置を検出したり、自立航法センサ6から出力される信号に基づいて自車の方位や走行速度を算出したり、表示させたい地図のデータをHDD1からバッファメモリ11に読み出したり、その読み出した地図データを用いて設定された探索条件で出発地(自車の現在位置)から目的地までの誘導経路を探索したりするなど、ナビゲーションに係る種々の処理を実行する。さらに制御部12は、本発明に関連する処理として、後述するデジタル信号プロセッサ(DSP)14と協働して音声認識に基づいた車両信号検知に係る処理を制御する機能を有している。また、この制御部12にはウィンドウ開閉信号が入力されており、後述するように車両のいずれかの窓(ウィンドウ)が「開」状態であるか「閉」状態であるかに応じて、制御部12は、車両信号を検知するための判定基準となるしきい値のレベルを下げるか下げないかを制御する制御信号を出力する。
【0023】
13は音声入力部を示し、マイクロホン2で検出された音(声)のアナログ波形信号を適宜増幅し、デジタル化して出力する。デジタル化された波形信号は制御部12に入力されると共に、DSP14に入力される。このDSP14は音声認識機能を内蔵し、後述するように制御部12からの制御に基づき、マイクロホン2で検出され音声入力部13を介して入力された音(声)信号の波形を後述するメモリにあらかじめ登録した車両信号(バック信号/ウィンカ信号)の波形と比較照合し(パターンマッチング処理)、両波形の一致(マッチング)を検知したときにその旨を指示する信号を制御部12に出力する。制御部12では、この信号を受信したときに、その時点で入力されている音を「車両信号音」と判断することができる(車両信号の検知)。DSP14の内部構成については後で説明する。
【0024】
15は本発明の特徴をなす車両信号音登録部を示し、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性半導体メモリからなる。この車両信号音登録部15には、検知対象とすべき車両信号のサンプル音(本実施形態では、バック信号に対する「ピーピーピー」音とウィンカ信号に対する「カチカチカチ」音)の波形データが登録されている。登録の態様としては、あらかじめ当該車両の車室内(窓を閉めきった状態)でバック信号とウィンカ信号をそれぞれ個別に出力させ、各々の出力に付随して発生する「ピーピーピー」音と「カチカチカチ」音をそれぞれ個別にマイクロホン2で検出し、検出したアナログ波形信号を音声入力部13を通して増幅及びデジタル化した後、制御部12においてWAV(又はWAVE)形式のデジタル波形データに変換し、車両信号音登録部15に「WAV波形」として保存しておく。
【0025】
16は制御部12からの制御に基づいてバッファメモリ11に読み出された地図データを用いて地図画像の描画処理を行う地図描画部、17は動作状況に応じて各種メニュー画面(操作画面)や自車位置マーク、カーソル等の各種マークを生成する操作画面・マーク発生部、18は制御部12により探索された誘導経路の出発地から目的地までの全てのノード(経緯度で表現された点の座標)に関するデータを格納しておくための誘導経路記憶部、19は制御部12からの制御に基づいて誘導経路記憶部18から誘導経路のデータを読み出し、当該誘導経路を他の道路とは異なる表示態様(例えば、色を変える、線幅を太くするなど)で描画する誘導経路描画部を示す。
【0026】
20は画像合成部を示し、制御部12からの制御に基づいて、地図描画部16で描画された地図画像に、誘導経路描画部19で描画された誘導経路、操作画面・マーク発生部17で生成された操作画面及び自車位置マーク等の各種マークを重ね合わせて、表示装置7の画面に表示させる機能を有している。21は音声出力部を示し、制御部12からの制御に基づいて上記のナビゲーションに係る案内情報(デジタル情報)をアナログ音声信号に変換してスピーカ8に出力するものである。
【0027】
次に、DSP(デジタル信号プロセッサ)14の内部構成について図2を参照しながら説明する。
【0028】
DSP14は、上述したように音声認識に基づいたパターンマッチングにより車両信号の検知を行うためのものであり、本発明に関連する機能ブロックとして、図示のようにCPU41と、メモリ(RAM)42と、バッファメモリ43と、音声認識処理部44と、しきい値設定部45とを備えている。CPU41は、制御部12からの制御に基づき、音声認識処理部44と協働して音声認識に基づいた車両信号検知に係る処理を実行する。RAM42は、その音声認識に基づいた車両信号検知に係る処理を実行する際に、車両信号音登録部15に登録されている車両信号のサンプル音の波形データを取り込むための一時メモリとして用いられる。バッファメモリ43は、マイクロホン2で検出され音声入力部13を通して増幅及びデジタル化された音(声)信号を逐次取り込み音声認識処理部44に送出するものである。また、しきい値設定部45には、制御部12からの制御に基づきCPU41を介して、車両信号(バック信号/ウィンカ信号)を検知するための判定基準となるしきい値が設定されている。このしきい値は、車両信号音登録部15にあらかじめ登録した車両信号のサンプル音(窓を閉めきった状態で取得した音)の最低レベルに設定されている。
【0029】
音声認識処理部44は、基本的には、バッファメモリ43を介して入力される音(声)信号とRAM42に取り込んだ車両信号(サンプル音)の波形データとのパターンマッチング処理を行う。その処理の方法として、例えば、CPU41からの制御に基づき、バッファメモリ43を介して音(声)信号を逐次サンプリング入力し、その入力した音(声)信号に対しフーリエ変換を行いその時点での各周波数帯域毎の音レベルを算出し、算出した各周波数帯域毎の信号のレベルと、しきい値設定部45で設定されたしきい値(車両信号のサンプル音の最低レベル)とを比較し、全周波数帯域において設定しきい値以上の場合に、その入力音(声)信号と車両信号のサンプル音の波形とを比較照合する(パターンマッチング処理)。そして、両者の一致(マッチング)を検知したときに、その旨を指示する信号をCPU41を介して制御部12に出力する。
【0030】
以上のように構成された本実施形態の車載用ナビゲーション装置30において、制御部12は「制御手段」に、DSP14は「音声認識手段」に、車両信号音登録部15は「記憶手段」に、それぞれ対応している。
【0031】
以下、本実施形態の車載用ナビゲーション装置30においてDSP14が制御部12と協働して行う音声認識に基づいた車両信号検知に係る処理について、その一例を示す図3を参照しながら説明する。本装置30の初期状態として、車両信号音登録部15にはバック信号とウィンカ信号の各サンプル音(「ピーピーピー」音と「カチカチカチ」音)の波形データが登録されており、また、車両の窓(ウィンドウ)は全て「閉」状態にあるものとする。
【0032】
このような状態で、最初のステップS1では、DSP14において、制御部12からの制御に基づきCPU41を介してRAM42に、車両信号音登録部15に登録されている車両信号のサンプル音の波形データを取り込む。
【0033】
次のステップS2では、DSP14においてCPU41からの制御に基づき音声認識処理部44に、マイクロホン2で検出した音(声)信号を音声入力部13及びバッファメモリ43を介して逐次サンプリング入力する。音声認識処理部44では、上述したようにその処理の一例として、入力した音(声)信号に対しフーリエ変換を行って各周波数帯域毎の音レベルを算出する。
【0034】
次のステップS3では、DSP14において音声認識処理部44により、その入力された音(声)信号のレベルが、しきい値設定部45で設定されたしきい値(車両信号のサンプル音の最低レベル)以上である(YES)か否(NO)かを判定する。すなわち、上記の処理例では、各周波数帯域毎に算出した各々の音レベルと設定しきい値とを比較し、全周波数帯域において設定しきい値以上にあるか否かを判定する。そして、判定結果がYESの場合にはステップS4に進み、判定結果がNOの場合にはステップS2に戻って上記の処理を繰り返す。
【0035】
ステップS4では、制御部12において、ウィンドウ開閉信号に応答して車両のいずれかの窓(ウィンドウ)が開いている(YES)か否(NO)かを判定する。判定結果がYESの場合にはステップS5に進み、判定結果がNOの場合にはステップS6に進む。このとき、制御部12からDSP14に対し、車両のいずれかの窓が開いているか否かに応じて、設定しきい値のレベルを下げるか否かを制御する制御信号が供給される。
【0036】
ステップS5では(窓が開いている場合)、DSP14において、制御部12から供給される制御信号によりCPU41からの制御に基づいてしきい値設定部45により、その設定しきい値を所定のレベルまで下げる。つまり、窓を開けていると、マイクロホン2には車外からの音(場合によっては他車から出力されるバック音も含まれる)も入力され、本来検知すべき車室内の車両信号の入力レベルが相対的に低下するため、その低下量に応じて設定しきい値も下げる必要があるからである。
【0037】
次のステップS6では、DSP14においてCPU41からの制御に基づき音声認識処理部44により、その入力音(声)の信号と登録音のデータ(RAM42に取り込んだ車両信号(サンプル音)の波形)とを比較照合する(パターンマッチング処理)。
【0038】
次のステップS7では、DSP14において音声認識処理部44により、その比較照合に基づいて両波形が「マッチング」した(YES)か否(NO)かを判定する。判定結果がYESの場合にはステップS8に進み、判定結果がNOの場合にはステップS2に戻って上記の処理を繰り返す。
【0039】
次のステップS8では、音声認識処理部44からCPU41を介して制御部12に、その旨を通知する。すなわち、入力音の信号と登録音のデータがマッチングした旨を指示する信号を制御部12に出力する。これにより、制御部12では、その時点で入力されている音を「車両信号音」と判断することができる(車両信号の検知)。そして、本処理フローは「終了」となる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る車載用ナビゲーション装置30(図1)によれば、車室内で発生する音(声)をマイクロホン2で検出しながら、DSP14(音声認識処理部44)において、マイクロホン2から音声入力部13を介して入力された音の信号と、RAM42に取り込んだ車両信号(サンプル音)の波形データとの比較照合(パターンマッチング処理)を行い、両波形の一致(マッチング)を検知したときにその旨を指示する信号を制御部12に出力するようにしている。従って、制御部12では、この信号を検知することで、その時点で入力されている信号は車両信号(バック信号又はウィンカ信号)であると判断することができる。つまり、当該車両信号の信号線の結線(ナビゲーション装置30への配線)を行わなくても、ナビゲーション装置30では当該車両信号を音声認識により検知することができる。
【0041】
このようにして音声認識した車両信号はマップマッチングに利用することができる。例えば、バック信号の場合、「ピーピーピー」音を検知(音声認識)することで、ナビゲーション装置30では自車が「バック」の状態にあると認識し、そのバック信号を自立航法の処理に活かすことができる。これにより、自立航法の精度(車両位置/車両方位の検出精度)を高めることが可能となる。
【0042】
また、ウィンカ信号の場合、交差点や分岐点(例えば、本線から微小角分岐される道に進路を変更する箇所など)において「カチカチカチ」音を検知(音声認識)することで、ナビゲーション装置30では自車が進路変更しようとしている状態にあると認識することができる(例えば、本線から降りたことを認識することができる)。そして、この認識した情報をマップマッチングに活かすことで自立航法の精度を高めることができる。従来の技術では、微小角分岐はジャイロの微小な信号の検知に基づいて判定しており、その信頼性は比較的低いものであったが、本実施形態では、ウィンカの「カチカチカチ」音を音声認識に基づき検知するようにしているので、より正確な認識が可能となる。
【0043】
さらに、マイコン(制御部)12と別個に設けたDSP14に音声認識機能(パターンマッチング処理機能)を内蔵させているので、制御部12では、本来行うべき処理(ナビゲーションに係る種々の処理)が中断されることなく、車両信号(バック信号/ウィンカ信号)を検知することができる。
【0044】
上述した実施形態では、入力音(声)の信号と登録音(車両信号のサンプル音)のデータとのパターンマッチング処理を行うに際し(図2のステップS6)、車両の窓が開いている場合には設定しきい値を所定のレベルまで下げるようにしている(ステップS5)。その際、自車周囲の状況によっては隣接車両がバック音を出力している場合もあり、この場合に、マイクロホン2にはその隣接車両からのバック音も入力されることになり、自車が出力しているバック音との識別が難しいようにも思われる。
【0045】
しかし、仮にその隣接車両が自車と同一車種であってそのバック音の検出波形が自車のものと類似していても、一般に車外で発生するバック音と車室内で発生するバック音とはレベル的にかなり相違があるので、このレベル差を比較することで両者の識別を行うことは十分に可能である。すなわち、ステップS6においてパターンマッチング処理を行う際に、マイクロホン2を通して検出される自車のバック音と隣接車両のバック音の各信号のレベルも併せて比較することで、自車のバック音を十分に識別することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、ナビゲーションに係る種々の処理を実行する制御部12と別個に設けたDSP14に音声認識機能を内蔵させた場合を例にとって説明したが、本発明の要旨(バック信号等の車両信号をその信号線の結線を行わなくても検知可能とすること)からも明らかなように、必ずしもDSP14を設ける必要はなく、同等の音声認識機能を制御部12に内蔵させてDSP14を省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置におけるDSPの内部構成を示すブロック図である。
【図3】図1の装置においてDSPが制御部と協働して行う音声認識に基づいた車両信号検知に係る処理の一例を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0048】
1…HDD、
2…マイクロホン、
3…操作部、
5…GPS受信機、
6…自立航法センサ、
7…表示装置、
8…スピーカ、
12…制御部(制御手段)、
14…DSP(音声認識手段)、
15…車両信号音登録部(記憶手段)、
30…車載用ナビゲーション装置、
42…RAM、
44…音声認識処理部、
45…しきい値設定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の所定の箇所に設置されたマイクロホンと、
あらかじめ車室内で車両信号の出力に付随して発生する当該車両信号の音のデータを登録した記憶手段と、
前記マイクロホンを介して入力された音の信号と前記記憶手段に登録されている音のデータとを比較照合する音声認識手段とを備え、
前記音声認識手段は、前記比較照合に基づいて当該入力された音の波形が車両信号の波形と一致するかどうかを判定し、一致すると判定したときにその旨を指示する信号を出力することを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
さらに、ナビゲーションに係る処理を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記音声認識手段から前記その旨を指示する信号を受信したときに当該車両信号を検知し、該検知した結果を自立航法の処理に利用することを特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記音声認識手段は、前記記憶手段に登録されている音に対応する車両信号を検知するための判定基準となるしきい値を可変に設定する手段を有し、
前記制御手段は、車両のいずれかのウィンドウが開いているか否かを指示するウィンドウ開閉信号に応答して、前記音声認識手段に対し前記しきい値の設定レベルを下げるか否かを制御する制御信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記記憶手段に登録されている車両信号の音のデータは、バック信号に対するサンプル音とウィンカ信号に対するサンプル音の各データを含むことを特徴とする請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
車両信号を利用してナビゲーションに係る処理を実行する機能を備えた車載用ナビゲーション装置において、
あらかじめ車室内で車両信号の出力に付随して発生する当該車両信号の音のデータを記憶手段に登録し、
車室内で発生する音をマイクロホンで検出しながら、該マイクロホンを通して入力された音の信号と前記記憶手段に登録されている音のデータとを音声認識手段により比較照合し、
前記比較照合に基づいて当該入力された音の波形が車両信号の波形と一致するかどうかを判定し、
一致すると判定したときにその旨を指示する信号を出力し、該信号により当該車両信号の検知を行うことを特徴とする車両信号検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−263651(P2007−263651A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87193(P2006−87193)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】