説明

車載用ナビゲーション装置

【課題】旋回走行を要する自走式の駐車場における旋回走行によって、自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、これらの誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる「車載用ナビゲーション装置」を提供すること。
【解決手段】自車位置・方位補正手段29,38により、駐車場における自車両の旋回走行の中心点を回転中心とした回転処理手段37による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位の補正および自車位置の補正を行うこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ナビゲーション装置に係り、特に、自車方位および自車位置を補正するのに好適な車載用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載用ナビゲーション装置においては、自車両が走行中の道路を正確に追尾するために、位置情報や方位、移動距離などから、自車両が今までに走行してきた走行軌跡と、地図データ上の道路(リンク)とを照合し、自車位置を、地図データにおける該当する道路上の位置に整合させるように補正するマップマッチングを行うようになっていた。
【0003】
マップマッチングを行うには、まず、自車位置を検出する必要がある。
【0004】
自車位置の検出方法の1つとしては、GPSを用いて自車位置(以下、電波航法位置と称する)を絶対座標として検出する電波航法が知られていた。
【0005】
また、電波航法以外の自車位置の検出方法としては、ジャイロセンサ等の自律航法センサを用いて自車両の方位を検出するとともに、車速パルスを用いて自車両の移動距離を算出することによって、自車位置(以下、自律航法位置と称する)を、1つ前の自車位置からの変化分(相対位置)として検出する自律航法が知られていた。この自律航法は、GPS衛星を捕捉することができない屋内等における自車位置の検出に活用されていた。
【0006】
そして、このような方法によって自車位置を検出した後には、この検出した自車位置に基づいて自車両の走行軌跡を推定し、自車位置に近い地図データ上の道路から複数のマップマッチングの候補(以下、マッチング候補と称する)を挙げ、これらのマッチング候補を自車両の走行軌跡と比較して、適切な道路上に自車位置をマッチングさせるようになっていた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−344065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、立体駐車場等の自走式の駐車場においては、駐車位置まで移動するために、また、駐車場から脱出するために、自車両が、傾斜を有する螺旋状の路面を旋回走行しながら移動することが必要となる場合があった。
【0009】
この種の旋回走行を要する自走式の駐車場において、自車両が旋回走行を繰り返しながら移動する際には、ジャイロセンサに、感度誤差、ゼロ点誤差または方位誤差が生じ、これにともなって、自律航法位置に誤差が発生していた。
【0010】
例えば、図4に示すように、水平状態の自車両1に対して15°の傾きを有するジャイロセンサ2を車載用ナビゲーション装置3とともに自車両1に取り付け、この自車両1によって、−5°の傾斜(上り坂)を有する立体駐車場内の螺旋状の路面を旋回走行しながら駐車のために上階の駐車場に向かう場合には、図5に示すように、ジャイロセンサ2の水平面に対する傾きが10°となる。
【0011】
ここで、図4に示した水平面に対するジャイロセンサ2の傾きが15°の場合におけるジャイロセンサ2の適正感度補正値は、
1/cos(15°)=1.0353
となる。
【0012】
一方、図5に示した水平面に対するジャイロセンサ2の傾きが10°の場合におけるジャイロセンサ2の適正感度補正値は、
1/cos(10°)=1.0154
となる。
【0013】
したがって、図5の場合のジャイロセンサ2の感度誤差は、
1.0353−1.0154=0.0199(+1.99%)となる。これは、自車両1が180°旋回するごとに、自車両1の方位(以下、自車方位と称する)に約3.5°の誤差が発生することを意味している。
【0014】
さらに、図4の自車両1が、立体駐車場における上階の駐車場に到着して所定時間駐車した後に、今度は、5°の傾斜(下り坂)を有する立体駐車場内の螺旋状の路面を旋回走行しながら脱出のために階下に向かう場合には、図6に示すように、ジャイロセンサ2の水平面に対する傾きが20°となる。
【0015】
図6の場合におけるジャイロセンサ2の適正感度補正値は、
1/cos(20°)=1.0642
となる。
【0016】
したがって、図6の場合のジャイロセンサ2の感度誤差は、
1.0353−1.0642=−0.0289(−2.89%)となる。これは、自車両1が180°旋回するごとに、自車方位に約5°の誤差が発生することを意味している。
【0017】
これにより、図7に示すように、立体駐車場を脱出した際におけるジャイロセンサ2によって検出される自車方位(図7における一点鎖線部矢印が示す方位)が実際の自車方位(実線部矢印が示す方位)と大きく異なってしまい、自律航法位置が正確な位置から大きくずれてしまう結果となっていた。
【0018】
なお、図7の破線は、自車両1が立体駐車場に進入して上階の駐車場に向かう際(立体駐車場進入時)の自律航法によって取得される自車両1の走行軌跡であり、図7の一点鎖線は、自車両1が上階の駐車場から階下に下って立体駐車場を脱出する際(立体駐車場脱出時)の自律航法によって取得される自車両1の走行軌跡である。
【0019】
このように、従来は、旋回走行を要する自走式の駐車場における旋回走行によって、自車方位および自車位置に誤差が発生してしまうといった問題が生じていた。
【0020】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、これらの誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる車載用ナビゲーション装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述した目的を達成するため、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場から脱出した後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記駐車場における前記自車両の旋回走行の中心点を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段とを備えたことを特徴としている。そして、このような構成によれば、駐車場における自車両の旋回走行の中心点を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位の補正および自車位置の補正(マップマッチング)を行うことが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、自車両が道路外の領域に進入した旨の判定である路外進入判定を行う路外進入判定手段と、この路外進入判定手段による前記路外進入判定の後に、前記自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場に進入した旨の判定である駐車場進入判定を行う駐車場進入判定手段と、この駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定の後に、前記自車両が前記駐車場から脱出した旨の判定である駐車場脱出判定を行う駐車場脱出判定手段と、この駐車場脱出判定手段による前記駐車場脱出判定の後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記路外進入判定手段による前記路外進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段とを備えたことを特徴としている。そして、このような構成によれば、路外進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することが可能となる。
【0023】
さらに、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、自車両の方位変化を検出する方位変化検出手段と、前記自車両が道路外の領域に進入した旨の判定である路外進入判定を行う路外進入判定手段と、この路外進入判定手段による前記路外進入判定の後に、前記自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場に進入した旨の判定である駐車場進入判定を行う駐車場進入判定手段と、この駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定の後に、前記自車両が前記駐車場から脱出した旨の判定である駐車場脱出判定を行う駐車場脱出判定手段と、この駐車場脱出判定手段による前記駐車場脱出判定の後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記路外進入判定の後に前記方位変化検出手段によって所定の閾値以上の前記自車両の方位変化が検出された過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段とを備えたことを特徴としている。そして、このような構成によれば、路外進入判定の後に所定の閾値以上の自車両の方位変化が検出された過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することが可能となる。
【0024】
さらにまた、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場に進入した旨の判定である駐車場進入判定を行う駐車場進入判定手段と、この駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定の後に、前記自車両が前記駐車場から脱出した旨の判定である駐車場脱出判定を行う駐車場脱出判定手段と、この駐車場脱出判定手段による前記駐車場脱出判定の後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段とを備えたことを特徴としている。そして、このような構成によれば、駐車場進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場から脱出した後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記駐車場内における装置電源のオフからオンへの切替えがなされた過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段とを備えたことを特徴としている。そして、このような構成によれば、駐車場内における装置電源のオフからオンへの切替えがなされた過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することが可能となる。
【0026】
さらに、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、前記直線状態・第1候補判定手段が、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における前記現在の自車位置と前記過去の自車位置との間の道程に対する当該現在の自車位置と当該過去の自車位置との間の直線距離の割合である直線率が所定の閾値以上となる場合に、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態であると判定するように形成されていることを特徴としている。そして、このような構成によれば、直線率を用いることによって、所定範囲の走行軌跡の直線状態を簡便に判定することが可能となる。
【0027】
さらにまた、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、前記駐車場進入判定手段が、道路外の領域における前記自車両の所定の走行距離あたりの前記自車両の方位変化が所定の閾値以上となる場合に、前記駐車場進入判定を行うように形成されていることを特徴としている。そして、このような構成によれば、道路外の領域における自車両の所定の走行距離あたりの自車両の方位変化に基づいて駐車場進入判定を行うことが可能となる。
【0028】
また、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、前記駐車場が、立体駐車場とされ、捕捉されたGPS衛星の個数が所定数以上となる場合または捕捉されたGPS衛星の仰角が所定の角度以上となる場合に、前記自車両が前記駐車場から脱出したと判定するように形成されていることを特徴としている。そして、このような構成によれば、捕捉されたGPS衛星の個数(以下、GPS捕捉数と称する)または捕捉されたGPS衛星の仰角(以下、GPS仰角と称する)に基づいて、自車両が立体駐車場から脱出したと判定することが可能となる。
【0029】
さらに、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、前記路外進入判定手段が、マップマッチングが不能な状態における前記自車両の走行距離が閾値以上となる場合に前記路外進入判定を行うように形成されていることを特徴としている。そして、このような構成によれば、マップマッチングが不能な状態における自車両の走行距離に基づいて路外進入判定を行うことが可能となる。
【0030】
さらにまた、本発明に係る車載用ナビゲーション装置は、前記駐車場が、立体駐車場または地下駐車場とされ、前記路外進入判定手段が、捕捉されたGPS衛星の個数が所定数よりも少ない場合に前記路外進入判定を行うように形成されていることを特徴としている。そして、このような構成によれば、GPS捕捉数に基づいて路外進入判定を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、駐車場における自車両の旋回走行の中心点を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位の補正および自車位置の補正(マップマッチング)を行うことができる結果、駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、これらの誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる。また、傾斜センサや駐車場内の地図データを要しないため、自車方位および自車位置の補正を安価に行うことができる。
【0032】
また、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、路外進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができる結果、駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、これらの誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、路外進入判定の後に所定の閾値以上の自車両の方位変化が検出された過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができる結果、駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、これらの誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる。
【0034】
さらにまた、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、駐車場進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができる結果、駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、これらの誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる。
【0035】
また、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、駐車場内における装置電源のオフからオンへの切替えがなされた過去の自車位置を回転中心とした回転処理手段による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができる結果、駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる。
【0036】
さらに、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、直線率を用いることによって、所定範囲の走行軌跡の直線状態を簡便に判定することができる結果、自車方位および自車位置の補正をさらに迅速かつ安価に行うことができる。
【0037】
さらにまた、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、道路外の領域における自車両の所定の走行距離あたりの自車両の方位変化に基づいて駐車場進入判定を行うことができる結果、駐車場進入判定を簡便かつ適切に行うことができ、ひいては、自車方位および自車位置の補正をさらに安価に行うことができる。
【0038】
また、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、GPS捕捉数またはGPS仰角に基づいて自車両が立体駐車場から脱出したと判定することができる結果、自車両が立体駐車場から脱出したことを簡便かつ適切に判定することができ、ひいては、自車方位および自車位置の適切な補正をさらに迅速かつ安価に行うことができる。
【0039】
さらに、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、マップマッチングが不能な状態における自車両の走行距離に基づいて路外進入判定を行うことができる結果、路外進入判定をさらに簡便かつ適切に行うことができ、ひいては、自車方位および自車位置の適切な補正をより安価に行うことができる。
【0040】
さらにまた、本発明に係る車載用ナビゲーション装置によれば、GPS捕捉数に基づいて路外進入判定を行うことができる結果、路外進入判定を簡便かつ適切に行うことができ、ひいては、自車方位および自車位置の補正をさらに安価に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態について、図1および図2を参照して説明する。
【0042】
なお、従来と基本的構成が同一またはこれに類する箇所については、同一の符号を用いて説明する。
【0043】
図1に示すように、本実施形態における車載用ナビゲーション装置5は、自車両を現在地から目的地まで案内するナビゲーションのための種々の制御および処理を行うナビゲーションメインユニット6を有している。
【0044】
ナビゲーションメインユニット6の入力側には、GPSレシーバ7が接続されており、このGPSレシーバ7は、GPS衛星8を捕捉して、捕捉されたGPS衛星8から軌道および時刻を含む情報(以下、GPS情報と称する)を受信するようになっている。そして、GPSレシーバ7は、GPS衛星8から受信したGPS情報を、ナビゲーションメインユニット6の内部に出力するようになっている。
【0045】
本実施形態において、GPSレシーバ7は、複数個のGPS衛星8を捕捉可能とされている。
【0046】
また、ナビゲーションメインユニット6の入力側には、自律航法センサとしてのジャイロセンサ2、ディスク読取装置10および入力操作部11がそれぞれ接続されている。ディスク読取装置10には、地図データ等のナビゲーションに必要な情報が格納されたディスク12が搭載されている。なお、入力操作部11は、リモコン、タッチパネルまたはリニアエンコーダ等であってもよい。また、ディスク12は、DVDまたはハードディスクであってもよい。
【0047】
さらに、ナビゲーションメインユニット6には、自車両1側から車速パルスが入力されるようになっている。
【0048】
一方、ナビゲーションメインユニット6の出力側には、ディスプレイ14およびスピーカ15がそれぞれ接続されている。
【0049】
ナビゲーションメインユニット6について詳述すると、このナビゲーションメインユニット6は、自車位置を計算する自車位置計算部16を有している。
【0050】
自車位置計算部16の入力側には、前述したGPSレシーバ7が接続されている。自車位置計算部16には、GPSレシーバ7から出力されたGPS情報が入力されるようになっている。
【0051】
そして、自車位置計算部16は、GPSレシーバ7側から入力されたGPS情報に基づいて、電波航法位置を計算するようになっている。
【0052】
また、自車位置計算部16の入力側には、前述したジャイロセンサ2が接続されている。自車位置計算部16には、ジャイロセンサ2から出力された自車両1の方位情報が入力されるようになっている。さらに、自車位置計算部16には、前述した車速パルスが入力されるようになっている。
【0053】
そして、自車位置計算部16は、入力された自車両1の方位情報および車速パルスに基づいて、自律航法位置を計算するようになっている。
【0054】
自車位置計算部16は、算出された自車位置が、地図データにおける道路上にない場合であって、地図データ上にマッチングに適した道路がある場合には、その道路上の位置に自車位置を補正するマップマッチングを行うようになっている。
【0055】
自車位置計算部16および入力操作部11には、地図読出制御部17が接続されており、この地図読出制御部17には、前述したディスク読取装置10が接続されている。
【0056】
地図読出制御部17は、ディスク読取装置10に対して、入力操作部11の操作によって指定された地点(例えば、自車位置)およびその周辺の地図データの読み出し要求を出力するようになっている。
【0057】
そして、ディスク読取装置10は、地図読出制御部17の読み出し要求に応じた地図データを、ディスク10から読み取るようになっている。
【0058】
ナビゲーションメインユニット6は、ディスク読取装置10に接続された地図バッファ19を有しており、この地図バッファ19には、ディスク読取装置10によって読み取られた地図データが一時的に保存されるようになっている。
【0059】
地図バッファ19には、地図描画部20が接続されており、この地図描画部20には、地図バッファ19に保存された地図データが入力されるようになっている。
【0060】
そして、地図描画部20は、地図バッファ19から入力された地図データに基づいて、入力操作部11の操作によってユーザが指定した自車位置等の地点およびその周辺の地図の画像を表示するための地図描画データを生成するようになっている。
【0061】
地図描画部20には、表示処理部21が接続されており、この表示処理部21には、前述したディスプレイ14が接続されている。
【0062】
表示処理部21には、地図描画部20によって生成された地図描画データが入力されるようになっている。
【0063】
そして、表示処理部21は、地図描画部20から入力された地図描画データを、ディスプレイ14の表示画面上に表示する処理を行うようになっている。
【0064】
自車位置計算部16には、自車位置描画部23が接続されており、この自車位置描画部23には、前述した表示処理部21が接続されている。
【0065】
自車位置描画部23には、自車位置計算部16によって算出された自車位置の情報が入力されるようになっている。なお、この自車位置の情報は、自車位置計算部16によってマップマッチングが行われた場合には、マップマッチング後の自車位置の情報となる。一方、自車位置の情報は、マップマッチングが最後まで行われなかった場合には、電波航法位置そのもの、または、自律航法位置そのものの情報となる。
【0066】
自車位置描画部23は、自車位置計算部16から入力された自車位置の情報に基づいて、自車位置のマークを表示するための自車位置描画データを生成するようになっている。
【0067】
自車位置描画部23によって生成された自車位置描画データは、表示処理部21に入力されるようになっている。
【0068】
そして、表示処理部21は、自車位置描画部23から入力された自車位置描画データに基づいて、自車位置のマークを自車位置および周辺の地図の画像上に重ねて表示するための処理を行うようになっている。
【0069】
入力操作部11、自車位置計算部16、地図読出制御部17および地図バッファ19には、ルート計算部24が接続されている。
【0070】
ルート計算部24は、自車位置計算部16によって算出された自車位置から入力操作部11の入力操作によって指定された目的地までの推奨ルートを算出するためのルート計算を行うようになっている。
【0071】
ルート計算部24は、ルート計算の際に、地図読出制御部17を介してディスク読取装置10に地図データ(道路ネットワークデータ等)を読み取らせ、この読み取らせた地図データをルート計算に利用するようになっている。
【0072】
ルート計算部24および地図バッファ19には、案内画像描画部25が接続されており、この案内画像描画部25には、表示処理部21が接続されている。
【0073】
案内画像描画部25は、ルート計算部24によって算出された推奨ルートに基づいて、地図上に推奨ルートを重ねて描画した画像や交差点拡大画像等の案内画像を表示するための案内画像描画データを生成するようになっている。
【0074】
案内画像描画データの生成には、必要に応じて地図バッファ19に格納された地図データが利用されるようになっている。
【0075】
案内画像描画部25によって生成された案内画像描画データは、表示処理部21に入力されるようになっている。
【0076】
そして、表示処理部21は、案内画像描画部25側から入力された案内画像描画データに基づいて、案内画像をディスプレイ14上に表示する処理を行うようになっている。
【0077】
ルート計算部24には、音声案内部26が接続されており、この音声案内部26には、前述したスピーカ15が接続されている。
【0078】
音声案内部26は、ルート計算部24によって算出された推奨ルートに基づいて、交差点右左折案内等の音声案内を行うための案内音声データを生成し、生成した案内音声データをスピーカ15に対して出力するようになっている。
【0079】
スピーカ15は、音声案内部26によって生成された案内音声データを音声出力するようになっている。
【0080】
自車位置計算部16とジャイロセンサ2との間には、ジャイロセンサ2によって検出される方位すなわち自車方位を補正するためのジャイロ方位補正部38が接続されている。
【0081】
自車位置計算部16について詳述すると、図2に示すように、自車位置計算部16は、路外進入判定部28を有しており、この路外進入判定部28は、自車両が道路外の領域に進入した旨の判定である路外進入判定を行うようになっている。路外進入判定の具体的な動作は後述する。
【0082】
路外進入判定部28の入力側には、マップマッチングおよびその制御を行うマップマッチング制御部29が接続されている。
【0083】
GPSレシーバ7とマップマッチング制御部29との間には、電波航法位置計算部18が接続されており、この電波航法位置計算部18は、GPSレシーバ7から出力されたGPS情報に基づいて電波航法位置を計算し、計算結果をマップマッチング制御部29に出力するようになっている。
【0084】
さらに、ジャイロセンサ2とマップマッチング制御部29との間には、自律航法位置計算部22が接続されており、この自律航法位置計算部22は、ジャイロセンサ2から出力された自車両1の方位情報および自車両1から出力された車速パルスに基づいて自律航法位置を計算し、計算結果をマップマッチング制御部29に出力するようになっている。
【0085】
マップマッチング制御部29は、自律航法位置計算部22または電波航法位置計算部18から計算結果が出力されると、自律航法位置または電波航法位置に基づいて自車両1の走行軌跡(以下、自車走行軌跡と称する)を推定するようになっている。
【0086】
そして、マップマッチング制御部29は、自車位置(自律航法位置または電波航法位置)周辺の地図データをディスク12から取得し、取得された地図データ上の道路から、複数のマッチング候補を挙げるようになっている。
【0087】
さらに、マップマッチング制御部29は、自車走行軌跡と、マッチング候補となる複数の地図データ上の道路とを比較して、マップマッチングの第1候補(最有力候補)となる地図データ上の道路(以下、マッチング第1候補道路と称する)を決めるようになっている。
【0088】
そして、マップマッチング制御部29は、マッチング第1候補道路が所定のマッチング条件(例えば、自車走行軌跡との間の距離の条件等)を満足する場合には、マッチング第1候補道路上の位置に自車位置を補正するマップマッチングを行うようになっている。マッチング条件のより具体的な内容については後述する。
【0089】
なお、マッチング第1候補道路が決められた場合であっても、そのマッチング第1候補道路がマッチング条件を満足しなければ、マップマッチングは行われない。
【0090】
マップマッチング制御部29の処理結果は、自車位置計算部16によって算出された自車位置(計算結果)として自車位置描画部23、ルート計算部24にそれぞれ出力されて、自車位置マークの描画または推奨ルートの計算に用いられる。なお、前述したように、マップマッチングが行われた場合には、マップマッチング後の自車位置が自車位置計算部16の計算結果となり、マップマッチングが行われなかった場合には、電波航法位置または自律航法位置が自車位置計算部16の計算結果となる。
【0091】
さらに、本実施形態において、マップマッチング制御部29の処理結果は、路外進入判定部28にも出力されるようになっている。
【0092】
路外進入判定部28は、マップマッチング制御部29の処理結果に基づいて、マップマッチングが不能な状態、すなわち、マッチング第1候補道路が決められない状態またはマッチング第1候補道路がマッチング条件を満足しない状態における自車両1の走行距離(以下、マッチング不能状態走行距離と称する)を計測するようになっている。
【0093】
そして、路外進入判定部28は、計測されたマッチング不能状態走行距離が閾値(例えば、30m)以上となる場合に、前記路外進入判定を行うようになっている。
【0094】
路外進入判定部28の出力側には、旋回走行中心点計算部31が接続されている。路外進入判定部28は、旋回走行中心点計算部31に対して、路外進入判定を行ったことを通知するようになっている。
【0095】
また、旋回走行中心点計算部31の入力側には、ジャイロセンサ2が接続されている。旋回走行中心点計算部31には、ジャイロセンサ2から出力された自車両1の方位情報が入力されるようになっている。
【0096】
さらに、旋回走行中心点計算部31には、車速パルスが入力されるようになっている。
【0097】
そして、旋回走行中心点計算部31は、路外進入判定部28から路外進入判定を行ったことが通知されると、入力された自車両1の方位情報と車速パルスとに基づいて、自車両1の旋回走行状態の検出を開始するようになっている。
【0098】
旋回走行中心点計算部31は、例えば、自車両1の所定の走行距離(例えば、10m)毎の所定の方位の変化が、ある程度の距離または時間以上連続して繰り返されたことを契機として、自車両1が旋回走行を行っていると判定するようにしてもよい。
【0099】
そして、旋回走行中心点計算部31は、自車両1が旋回走行を行った場合には、この旋回走行の中心点を計算するようになっている。そして、旋回走行中心点計算部31は、算出された旋回走行の中心点を記憶するようになっている。
【0100】
なお、旋回走行の中心点は、旋回走行における所定の走行距離ごとに算出された複数個の旋回走行の中心点の平均をとったものであってもよい。
【0101】
また、旋回走行の中心点は、旋回走行における走行軌跡の曲率中心を求めることによって算出するようにしてもよい。
【0102】
さらに、旋回走行の中心点の算出は、後述する立体駐車場進入判定の後に行うようにしてもよい。
【0103】
路外進入判定部28の出力側には、立体駐車場進入判定部33が接続されている。路外進入判定部28は、立体駐車場進入判定部33に対して、路外進入判定を行ったことを通知するようになっている。
【0104】
また、立体駐車場進入判定部33の入力側には、ジャイロセンサ2が接続されている。そして、立体駐車場進入判定部33には、ジャイロセンサ2によって出力された自車両1の方位情報が入力されるようになっている。
【0105】
さらに、立体駐車場進入判定部33には、車速パルスが入力されるようになっている。
【0106】
立体駐車場進入判定部33は、路外進入判定部28から路外進入判定を行ったことが通知されると、入力された自車両1の方位情報および車速パルスに基づいて、自車両1の所定の走行距離(例えば、200m)以内の自車両1の方位変化が所定の角度(例えば720°)以上となるか否かを判定するようになっている。
【0107】
そして、立体駐車場進入判定部33は、自車両1の所定の走行距離以内の自車両1の方位変化が所定の角度以上となる場合には、自車両1が旋回走行を要する自走式の駐車場としての立体駐車場に進入した旨の判定である駐車場進入判定としての立体駐車場進入判定を行うようになっている。
【0108】
なお、立体駐車場進入判定部33は、後述するGPS捕捉数検出部27によるGPS捕捉数が所定数(例えば、2個)よりも少ないことを立体駐車場進入判定の条件に加えてもよい。この条件は、立体駐車場のような建物内においては、GPS衛星の捕捉数が少なくなることを利用した有効な条件である。
【0109】
立体駐車場進入判定部33の出力側には、立体駐車場脱出判定部34が接続されている。立体駐車場進入判定部33は、立体駐車場脱出判定部34に対して、立体駐車場進入判定を行ったことを通知するようになっている。
【0110】
GPSレシーバ7と立体駐車場脱出判定部34との間には、GPS捕捉数検出部27が接続されており、このGPS捕捉数検出部27には、GPSレシーバ7から出力されたGPS情報が入力されるようになっている。
【0111】
そして、GPS捕捉数検出部27は、GPSレシーバ7側から入力されたGPS情報に基づいてGPS捕捉数を検出し、検出結果を立体駐車場脱出判定部34に出力するようになっている。
【0112】
また、GPSレシーバ7と立体駐車場脱出判定部34との間には、GPS仰角検出部30が接続されており、このGPS仰角検出部30には、GPSレシーバ7から出力されたGPS情報が入力されるようになっている。
【0113】
そして、GPS仰角検出部30は、GPSレシーバ7側から入力されたGPS情報に基づいてGPS仰角を検出し、検出結果を立体駐車場脱出判定部34に出力するようになっている。
【0114】
立体駐車場脱出判定部34は、立体駐車場進入判定部33から立体駐車場進入判定を行ったことが通知された後に、GPS捕捉数検出部27およびGPS仰角検出部30の検出結果に基づいて、GPS捕捉数が所定数(例えば、2個)以上となるか否かを判定するとともに、GPS仰角が所定の角度(例えば、30°)以上となるか否かを判定するようになっている。
【0115】
そして、立体駐車場脱出判定部34は、GPS捕捉数が所定数以上となり、または、GPS仰角が所定の角度以上となる場合には、自車両1が立体駐車場から脱出した旨の判定である駐車場脱出判定としての立体駐車場脱出判定を行うようになっている。
【0116】
ここで、GPS仰角を立体駐車場脱出判定の判定基準として有効に利用することができる場合としては、立体駐車場が、四方に壁がない高い屋内に存在する場合が考えられる。このような立体駐車場においては、たとえ、GPS衛星が把捉される場合があったとしても、GPS仰角が小さくなるため、このことを判定基準として自車両1が立体駐車場内に存在すると判定することができる。
【0117】
なお、立体駐車場脱出判定部34は、GPS捕捉数が所定数以上となり、かつ、GPS仰角が所定の角度以上となる場合に、立体駐車場脱出判定を行うようにしてもよい。このようにすれば、さらに確実な立体駐車場脱出判定を行うことができる。
【0118】
立体駐車場脱出判定部34の出力側には、直線状態・第1候補判定手段としての直線状態・第1候補判定部35が接続されており、この直線状態・第1候補判定部35には、マップマッチング制御部29が接続されている。
【0119】
立体駐車場脱出判定部34は、直線状態・第1候補判定部35に対して立体駐車場脱出判定を行ったことを通知するようになっている。
【0120】
直線状態・第1候補判定部35は、立体駐車場脱出判定部34から立体駐車場脱出判定を行ったことを通知されると、それ以降の自車走行軌跡の情報およびマッチング第1候補道路の情報をマップマッチング制御部29から取得するようになっている。
【0121】
そして、直線状態・第1候補判定部35は、取得された自車走行軌跡の情報に基づいて、立体駐車場から脱出した後の自車走行軌跡における現在の自車位置(例えば、自律航法位置)と、この現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置(例えば、自律航法位置)との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するようになっている。
【0122】
具体的には、直線状態・第1候補判定部35は、前記立体駐車場から脱出した後の自車走行軌跡における前記現在の自車位置と前記過去の自車位置との間の道程に対する当該現在の自車位置と当該過去の自車位置との間の直線距離の割合である直線率が所定の閾値(例えば、98%)以上となる場合には、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態であると判定するようになっている。
【0123】
なお、前記過去の自車位置は、立体駐車場脱出判定が行われた自車位置であってもよい。
【0124】
また、直線状態・第1候補判定部35は、前記所定範囲の走行軌跡の直線状態の判定とともに、地図データ上の同一の道路(リンク)が所定の走行距離以上連続してマッチング第1候補道路となっているか否かを判定するようになっている。
【0125】
直線状態・第1候補判定部35の出力側には、回転処理手段としての回転処理部37が接続されており、この回転処理部37には、マップマッチング制御部29および旋回走行中心点計算部31がそれぞれ接続されている。直線状態・第1候補判定部35は、回転処理部37に対して、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態であるとの判定を行ったこと、および、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続してマッチング第1候補道路となっているとの判定を行ったことを通知するようになっている。
【0126】
回転処理部37は、直線状態・第1候補判定部35からの通知を受けると、マップマッチング制御部29から前記所定範囲の走行軌跡を取得するとともに、旋回走行中心点計算部31から、旋回走行の中心点の計算結果を取得するようになっている。
【0127】
また、回転処理部37は、マップマッチング制御部29から取得された前記所定範囲の走行軌跡の方位を求めるようになっている。この所定範囲の走行軌跡の方位は、前記所定範囲の走行軌跡の始端部(前記過去の自車位置)から終端部(前記現在の自車位置)に向かう直線の矢印が示す方位と同義である。
【0128】
さらに、回転処理部37は、マッチング第1候補道路の方位を取得するようになっている。このマッチング第1候補道路の方位は、地図データから直接取得できるものであってもよい。
【0129】
なお、前記所定範囲の走行軌跡の方位および前記マッチング第1候補道路の方位の基準(すなわち、0°となる方向)としては、例えば、真東の方向を0°と設定してもよい。
【0130】
そして、回転処理部37は、前記所定範囲の走行軌跡を、旋回走行の中心点を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位とマッチング第1候補道路の方位との差分の角度だけマッチング第1候補道路側に回転させるようになっている。
【0131】
回転処理部37は、回転後の前記所定範囲の走行軌跡の情報をマップマッチング制御部29に出力するようになっている。
【0132】
マップマッチング制御部29は、自車位置・方位補正手段として機能し、回転処理部37から出力された前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡とマッチング第1候補道路との間のマッチング第1候補道路に直交する方向の間隔(以下、軌跡−第1候補間距離と称する)を計算するようになっている。
【0133】
そして、マップマッチング制御部29は、算出された軌跡−第1候補間距離が、マッチング条件としての所定の閾値以下となる場合には、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対してマッチング第1候補道路に直交する方向において臨むマッチング第1候補道路上の位置に補正するようになっている。
【0134】
このようにして、立体駐車場脱出後における自車位置の補正(マップマッチング)が行われるようになっている。
【0135】
回転処理部37とジャイロセンサ2との間には、前述したジャイロ方位補正部38が接続されている。回転処理部37は、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の情報をジャイロ方位補正部38に出力するようになっている。
【0136】
ジャイロ方位補正部38は、自車位置・方位補正手段として機能し、軌跡−第1候補間距離が所定の閾値以下となる場合に、ジャイロセンサ2に対して、ジャイロセンサ2によって検出される自車方位を前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する処理を行うようになっている。
【0137】
このようにして、立体駐車場脱出後における自車方位の補正が行われるようになっている。
【0138】
次に、車載用ナビゲーション装置5の具体的な動作について、図3を新たに参照して説明する。
【0139】
図3には、地図データ上の道路として、ノードnを介して接続された直線状の第1リンクL、第2リンクL 、第3リンクLおよび第4リンクLが表されている。第1リンクLは、第2リンクLとは直線状に接続され、第3リンクLおよび第4リンクLとは直交した状態として接続されている。
【0140】
また、図3は、第2リンクLの近傍に、地図データ上にはない立体駐車場39が実在することを示している。
【0141】
本実施形態においては、図3において破線で表された自車走行軌跡に示すように、まず、自車両1を運転して、第1リンクLに対応する道路(実際の道路)側から立体駐車場39に接近し、次いで、第2リンクLに対応する道路に沿って立体駐車場39の直近を走行した後、出入口39aを通って立体駐車場39内に進入する。
【0142】
次いで、自車両1が立体駐車場39内を直進すると、路外進入判定部28が、前述したマッチング不能状態走行距離が所定の閾値以上となったことを契機として、図3における自律航法位置A点において、路外進入判定を行う。
【0143】
路外進入判定の後、自車両1が、A点からさらに立体駐車場39内を進行し、上り傾斜を有する立体駐車場39内の螺旋状の路面に沿った旋回走行を開始した場合には、旋回走行中心点計算部31が、旋回走行の中心点を計算する。本実施形態においては、図3におけるS点が、旋回走行の中心点として算出される。
【0144】
旋回走行の中心点の算出の後、自車両1が、さらに旋回走行を繰り返して上階の駐車場への進行を続けると、立体駐車場脱出判定部34が、自車両1の所定の走行距離以内の自車両1の方位変化が所定の角度以上となったことを契機として、図3における自律航法位置B点において、立体駐車場進入判定を行う。
【0145】
そして、自車両1を上階の駐車場における自律航法位置C点に停車させると、車載用ナビゲーション装置5の電源がそのC点で一旦オンからオフへと切り替わる。このとき、車載用ナビゲーション装置5は、路外進入判定が行われたこと、旋回走行の中心点および立体駐車場進入判定が行われたことを記憶する。
【0146】
次いで、C点から自車両1を出発させると、C点において車載用ナビゲーション装置5の電源のオフからオンへの切替えがなされる。そして、今度は、下り傾斜を有する螺旋状の路面を旋回走行しながら階下に進行する。
【0147】
そして、螺旋状の路面を出た後に、出入口39aに向かって自車両1を進行させ、出入口39aから立体駐車場39を脱出すると、立体駐車場脱出判定部34が、GPS捕捉数が所定数以上となり、かつ、GPS仰角が所定の角度以上となったことを契機として、図3における自律航法位置D点において、立体駐車場脱出判定を行う。
【0148】
なお、図3に示すように、D点は、立体駐車場39における旋回走行によって自車方位および自律航法位置に誤差が発生したことによって、出入口39aに対応する位置から大きくずれている。すなわち、自車両1は、実際は、出入口39aを出た地点を走行しているのに対して、自車位置計算部16によって算出される自律航法位置は、D点となっている。
【0149】
次いで、立体駐車場39を脱出した後、自車両1が第2リンクLに対応する道路上を、立体駐車場39への進入時と同一の方向(図3における右方向)に向かって進行すると、マップマッチング制御部29によって、図3において実線で示す立体駐車場39を脱出した後の自車走行軌跡(以下、脱出後走行軌跡41と称する)が逐次計算される。
【0150】
このとき、立体駐車場39における旋回走行によって発生した自車方位および自律航法位置の誤差の影響によって、脱出後走行軌跡41は、第2リンクLから方位が大きくずれたものとなる。ただし、第2リンクLは、マッチング第1候補道路となっている。
【0151】
この脱出後走行軌跡41の終端部41aは、現在の自車位置(補正前の自車位置)を示している。
【0152】
脱出後走行軌跡41の情報は、直線状態・第1候補判定部35によって取得される。
【0153】
次いで、直線状態・第1候補判定部35は、脱出後走行軌跡41の情報に基づいて、脱出後走行軌跡41における現在の自車位置(終端部41a)と、この現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置としての立体駐車場脱出判定が行われたD点との間の走行軌跡(すなわち、脱出後走行軌跡41そのもの)が直線状態となっているか否かを判定する。なお、直線状態・第1候補判定部35は、脱出後走行軌跡41におけるD点よりも現在の自車位置寄りの点と現在の自車位置との間の一部の範囲の走行軌跡の直線状態を判定するようにしてもよい。
【0154】
この直線状態の判定の際に、直線状態・第1候補判定部35は、直線率、すなわち、脱出後走行軌跡41の道程に対するD点と現在の自車位置41aとの間の直線距離の割合が、所定の閾値以上となることを契機として、脱出後走行軌跡41が直線状態であると判定し、このことを回転処理部37に通知する。
【0155】
また、直線状態・第1候補判定部35は、直線状態の判定の際に、第2リンクLが所定の走行距離以上連続してマッチング第1候補道路となっている場合には、その旨の判定を行って、このことを回転処理部37に通知する。
【0156】
次いで、回転処理部37は、直線状態・第1候補判定部35からの通知を受けると、マップマッチング制御部29から脱出後走行軌跡41の情報を取得するとともに、旋回走行中心点計算部31から、旋回走行の中心点の計算結果を取得する。
【0157】
また、回転処理部37は、脱出後走行軌跡41の方位を求めるとともに、第2リンクLの方位を取得する。
【0158】
なお、図3に示すように、本実施形態においては、脱出後走行軌跡41の方位がθとされ、第2リンクLの方位がθとされている。
【0159】
そして、回転処理部37は、脱出後走行軌跡41を、旋回走行の中心点Sを回転中心として、脱出後走行軌跡41の方位θと第2リンクLの方位θとの差分の角度θ−θだけ第2リンクL側(図3における時計方向)に回転させる。
【0160】
回転後の脱出後走行軌跡41(以下、回転後走行軌跡42と称する)は、その始端部が、立体駐車場脱出判定が実際に行われた地点(出入口39a付近)またはその近傍に位置されたものとなっている。
【0161】
回転処理部37は、回転後の脱出後走行軌跡41(以下、回転後走行軌跡42と称する)の情報を、マップマッチング制御部29およびジャイロ方位補正部38にそれぞれ出力する。
【0162】
次いで、マップマッチング制御部29は、軌跡−第1候補間距離として、回転後走行軌跡42の終端部42aと第2リンクLとの間の第2リンクLに直交する方向の間隔dを計算する。
【0163】
そして、マップマッチング制御部29は、算出された軌跡−第1候補間距離dが、所定の閾値以下となる場合には、自車位置を、回転後走行軌跡42の終端部42aに対して第2リンクLに直交する方向において臨む第2リンクL上の位置であるP点に補正するようになっている。
【0164】
このP点は、回転後走行軌跡42の終端部42aを第2リンクL上に垂直に投影させた点となる。
【0165】
ここで、従来から、自車位置を補正する方法として、自車走行軌跡の終端部をマッチング第1候補道路上に垂直に投影させることによって自車位置を補正する投影法が知られているが、本実施形態における自車位置の補正は、このような従来の投影法とは異なる。
【0166】
すなわち、従来の投影法に従うならば、自車位置は、脱出後走行軌跡41の終端部41aを第2リンクL上に垂直に投影させたQ点に補正される。しかし、このようにして補正された自車位置は、図3における実際の自車位置よりも先行した位置となり、第2リンクLに対応する道路上における正確な自車位置を示しているということはできない。
【0167】
これに対して、回転後走行軌跡42を用いた投影法によって求められたP点は、実際の自車位置を正確に反映している。
【0168】
このとき、ジャイロ方位補正部38は、ジャイロセンサ2に対して、自車方位を回転後走行軌跡42の方位θに補正する処理を行う。
【0169】
以上述べたように、本実施形態によれば、立体駐車場における自車両の旋回走行の中心点を回転中心とした回転処理部37による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位の補正および自車位置の補正(マップマッチング)を行うことができる。この結果、立体駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、これらの誤差を迅速かつ適切に補正することができ、自車方位精度および自車位置精度を向上させることができる。また、傾斜センサや駐車場内の地図データを要しないため、自車方位および自車位置の補正を安価に実現することができる。
【0170】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0171】
例えば、回転処理部37が前記所定範囲の走行軌跡を回転させる際の回転中心は、前述した旋回走行の中心点に限る必要はない。
【0172】
例えば、回転処理部37が、直線状態・第1候補判定部35の判定を経た後の前記所定の走行軌跡を、路外進入判定部28による路外進入判定が行われた過去の自車位置(例えば、図3におけるA点)を中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位とマッチング第1候補道路の方位との差分の角度だけマッチング第1候補道路側に回転させるようにしてもよい。そして、回転後の前記所定範囲の走行軌跡とマッチング第1候補道路との軌跡−第1候補間距離が閾値以下となる場合に、マップマッチング制御部29によって、自車位置を、回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部をマッチング第1候補道路上に垂直投影させた位置に補正し、また、ジャイロ方位補正部38によって、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正するようにしてもよい。なお、この場合には、旋回走行中心点計算部31を設ける代りに、路外進入判定部28が、路外進入判定を行った自車位置を記憶しておくようにするとともに、回転処理部37が、路外進入判定部28から路外進入判定を行った自車位置(過去の自車位置)の情報を取得して前記所定範囲の走行軌跡の回転に利用できるようにすればよい。
【0173】
この場合には、路外進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心とした回転処理部37による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができるので、前述した実施形態と同様に、立体駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、誤差を迅速かつ適切に補正することができる。
【0174】
また、回転処理部37が、直線状態・第1候補判定部35の判定を経た後の前記所定の走行軌跡を、立体駐車場進入判定部33による立体駐車場進入判定が行われた過去の自車位置(例えば、図3におけるB点)を中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位とマッチング第1候補道路の方位との差分の角度だけマッチング第1候補道路側に回転させるようにしてもよい。そして、回転後の前記所定範囲の走行軌跡とマッチング第1候補道路との軌跡−第1候補間距離が閾値以下となる場合に、マップマッチング制御部29によって、自車位置を、回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部をマッチング第1候補道路上に垂直投影させた位置に補正し、また、ジャイロ方位補正部38によって、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正するようにしてもよい。なお、この場合には、旋回走行中心点計算部31を設ける代りに、立体駐車場進入判定部33が、立体駐車場進入判定を行った自車位置を記憶しておくようにするとともに、回転処理部37が、立体駐車場進入判定部33から立体駐車場進入判定を行った自車位置(過去の自車位置)の情報を取得して前記所定範囲の走行軌跡の回転に利用できるようにすればよい。
【0175】
この場合には、立体駐車場進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心とした回転処理部37による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができるので、前述した実施形態と同様に、立体駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、誤差を迅速かつ適切に補正することができる。
【0176】
さらに、回転処理部37が、直線状態・第1候補判定部35の判定を経た後の前記所定の走行軌跡を、路外進入判定の後に所定の閾値(例えば90°)以上の自車両1の方位変化が検出された過去の自車位置を中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位とマッチング第1候補道路の方位との差分の角度だけマッチング第1候補道路側に回転させるようにしてもよい。そして、回転後の前記所定範囲の走行軌跡とマッチング第1候補道路との軌跡−第1候補間距離が閾値以下となる場合に、マップマッチング制御部29によって、自車位置を、回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部をマッチング第1候補道路上に垂直投影させた位置に補正し、また、ジャイロ方位補正部38によって、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正するようにしてもよい。なお、この場合には、旋回走行中心点計算部31を設ける代りに、立体駐車場進入判定部33が、路外進入判定の後の自車両1の方位変化を検出して閾値以上の方位変化が検出された自車位置を記憶しておくようにするとともに、回転処理部37が、立体駐車場進入判定部33から、前記閾値以上の方位変化が検出された自車位置(過去の自車位置)の情報を取得して前記所定範囲の走行軌跡の回転に利用できるようにすればよい。
【0177】
この場合には、路外進入判定の後に所定の閾値以上の自車両1の方位変化が検出された過去の自車位置を回転中心とした回転処理部37による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができるので、前述した実施形態と同様に、立体駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、誤差を迅速かつ適切に補正することができる。
【0178】
さらにまた、回転処理部37が、直線状態・第1候補判定部35の判定を経た後の前記所定の走行軌跡を、立体駐車場内における装置電源のオフからオンへの切替えがなされた過去の自車位置(例えば、図3におけるC点)を中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位とマッチング第1候補道路の方位との差分の角度だけマッチング第1候補道路側に回転させるようにしてもよい。そして、回転後の前記所定範囲の走行軌跡とマッチング第1候補道路との軌跡−第1候補間距離が閾値以下となる場合に、マップマッチング制御部29によって、自車位置を、回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部をマッチング第1候補道路上に垂直投影させた位置に補正し、また、ジャイロ方位補正部38によって、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正するようにしてもよい。なお、この場合には、旋回走行中心点計算部31を設ける代りに、回転処理部37が、立体駐車場内における装置電源のオフからオンへの切替えがなされた自車位置を記憶しておくようにすることによって、前記所定範囲の走行軌跡の回転に利用できるようにすればよい。
【0179】
この場合には、立体駐車場内における装置電源のオフからオンへの切替えがなされた過去の自車位置を回転中心とした回転処理部37による回転後の所定範囲の走行軌跡を用いて、自車方位および自車位置を補正することができるので、前述した実施形態と同様に、立体駐車場における旋回走行によって自車方位および自車位置の誤差が発生したとしても、誤差を迅速かつ適切に補正することができる。
【0180】
また、前述した実施形態においては、路外進入判定の条件として、マッチング不能状態走行距離が閾値以上となることを挙げているが、これに限らず、GPS捕捉数が所定数よりも少ないことを、路外進入判定を行うための条件に含めるようにしてもよい。
【0181】
さらに、本発明によれば、旋回走行を要する自走式の駐車場として、地下駐車場を走行する場合であっても、前述した実施形態と同様に、地下駐車場における螺旋状の路面を旋回走行することによって発生した自車方位および自車位置の誤差を迅速かつ適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態を示すブロック図
【図2】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態において、自車位置計算部の詳細な構成を示すブロック図
【図3】本発明に係る車載用ナビゲーション装置の実施形態の動作を示す説明図
【図4】水平な路面上における自車両とジャイロセンサとの角度の関係を示す説明図
【図5】自車両が立体駐車場の上り傾斜面を走行する際のジャイロセンサの傾きを示す説明図
【図6】自車両が立体駐車場の下り傾斜面を走行する際のジャイロセンサの傾きを示す説明図
【図7】自車両が立体駐車場を走行することによって発生する自車方位および自律航法位置の誤差を示す説明図
【符号の説明】
【0183】
1 自車両
5 車載用ナビゲーション装置
29 マップマッチング制御部29
31 旋回走行中心点計算部
35 直線状態・第1候補判定部
37 回転処理部
38 ジャイロ方位補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場から脱出した後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、
この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記駐車場における前記自車両の旋回走行の中心点を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、
この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
自車両が道路外の領域に進入した旨の判定である路外進入判定を行う路外進入判定手段と、
この路外進入判定手段による前記路外進入判定の後に、前記自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場に進入した旨の判定である駐車場進入判定を行う駐車場進入判定手段と、
この駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定の後に、前記自車両が前記駐車場から脱出した旨の判定である駐車場脱出判定を行う駐車場脱出判定手段と、
この駐車場脱出判定手段による前記駐車場脱出判定の後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、
この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記路外進入判定手段による前記路外進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、
この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
自車両の方位変化を検出する方位変化検出手段と、
前記自車両が道路外の領域に進入した旨の判定である路外進入判定を行う路外進入判定手段と、
この路外進入判定手段による前記路外進入判定の後に、前記自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場に進入した旨の判定である駐車場進入判定を行う駐車場進入判定手段と、
この駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定の後に、前記自車両が前記駐車場から脱出した旨の判定である駐車場脱出判定を行う駐車場脱出判定手段と、
この駐車場脱出判定手段による前記駐車場脱出判定の後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、
この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記路外進入判定の後に前記方位変化検出手段によって所定の閾値以上の前記自車両の方位変化が検出された過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、
この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場に進入した旨の判定である駐車場進入判定を行う駐車場進入判定手段と、
この駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定の後に、前記自車両が前記駐車場から脱出した旨の判定である駐車場脱出判定を行う駐車場脱出判定手段と、
この駐車場脱出判定手段による前記駐車場脱出判定の後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、
この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記駐車場進入判定手段による前記駐車場進入判定が行われた過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、
この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
自車両が旋回走行を要する自走式の駐車場から脱出した後に、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における現在の自車位置とこの現在の自車位置から所定の直線距離遡った過去の自車位置との間の所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているか否かを判定するとともに、地図データ上の同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記自車両に対するマップマッチングの第1候補となっているか否かを判定する直線状態・第1候補判定手段と、
この直線状態・第1候補判定手段によって、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態となっているとともに、前記同一の道路が所定の走行距離以上連続して前記マップマッチングの第1候補となっていると判定された場合に、前記所定範囲の走行軌跡を、前記駐車場内における装置電源のオフからオンへの切替えがなされた過去の自車位置を回転中心として、前記所定範囲の走行軌跡の方位と前記同一の道路の方位との差分の角度だけ前記同一の道路側に回転させる回転処理手段と、
この回転処理手段による回転後の前記所定範囲の走行軌跡と前記同一の道路との間の前記同一の道路に直交する方向の間隔が閾値以下の場合に、自車位置を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の終端部に対して前記同一の道路に直交する方向において臨む前記同一の道路上の位置に補正し、かつ、自車方位を、前記回転後の前記所定範囲の走行軌跡の方位に補正する自車位置・方位補正手段と
を備えたことを特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記直線状態・第1候補判定手段が、前記駐車場から脱出した後の前記自車両の走行軌跡における前記現在の自車位置と前記過去の自車位置との間の道程に対する当該現在の自車位置と当該過去の自車位置との間の直線距離の割合である直線率が所定の閾値以上となる場合に、前記所定範囲の走行軌跡が直線状態であると判定するように形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項7】
前記駐車場進入判定手段が、道路外の領域における前記自車両の所定の走行距離あたりの前記自車両の方位変化が所定の閾値以上となる場合に、前記駐車場進入判定を行うように形成されていること
を特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項8】
前記駐車場が、立体駐車場とされ、捕捉されたGPS衛星の個数が所定数以上となる場合または捕捉されたGPS衛星の仰角が所定の角度以上となる場合に、前記自車両が前記駐車場から脱出したと判定するように形成されていること
を特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項9】
前記路外進入判定手段が、マップマッチングが不能な状態における前記自車両の走行距離が閾値以上となる場合に前記路外進入判定を行うように形成されていること
を特徴とする請求項2または請求項3に記載の車載用ナビゲーション装置。
【請求項10】
前記駐車場が、立体駐車場または地下駐車場とされ、前記路外進入判定手段が、捕捉されたGPS衛星の個数が所定数よりも少ない場合に前記路外進入判定を行うように形成されていること
を特徴とする請求項9に記載の車載用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−298339(P2007−298339A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125319(P2006−125319)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】