説明

車載用表示システム、表示方法及び車両

【課題】進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させる単眼視の車載用表示システム、表示方法及び車両を提供する。
【解決手段】自車両の進路前方の情報を取得する前方情報取得部と、進路前方に存在する先行車両740の情報を取得する先行車両情報取得部と、自車両に搭乗する観視者の片目の位置を推定する位置推定部と、表示オブジェクト180を有する映像情報を含む光束を生成し、片目に向けて投影する映像投影部と、を備える車載用表示システムが提供される。映像投影部は、先行車両740の位置よりも自車両の側の第1位置P01に対応する視野像VI内の第1視野像位置P01から、先行車両よりも先であって自車両が進路を変更すると推定される第2位置P02に対応する視野像内の第2視野像位置P02に到り、奥行き情報を有する表示オブジェクト180を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用表示システム、表示方法及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の表示装置として、車両の速度等の運行情報や目的地へのナビゲーション情報などの車両情報をフロントガラスに投影して、外界情報と車両情報とを同時に視認可能とするHUD(Head-Up Display)が開発されている。
【0003】
HUDは、見るヒトに対して直感的な表示の呈示が可能であり、運転者が観察する背景にマッチさせて経路表示などの情報の表示を行うことが提案されている。例えば、外界の状況に応じて表示する図形を変える方法(特許文献1)や、車速に応じて表示する図像等の大きさを変える方法(特許文献2)が提案されている。
【0004】
これらの技術を含め、通常のHUDの場合には、HUDの表示は両眼で観察される。HUDによって表示される虚像の奥行き位置は、光学的に設計された位置(光学的表示位置)であり、多くの場合、運転者から2〜3m先の位置に設定される。従って、両眼視のHUDの場合、運転者が運転中に遠方を見ながらHUDの表示を同時に見ようとすると、HUDの表示物は2重像となって認識されるため、非常に見にくい。逆に、HUDの表示を見ようとすると、両眼視差によって表示像は2〜3m先に認識されるために、背景の遠方を同時に認識することが困難である。
【0005】
さらに、HUDの表示像はフロントガラスなどに反射されて観察されるので、フロントガラスの反射スクリーンの厚さに起因した2重像が発生し、これによっても表示が見難くなる。
【0006】
このように、両眼視差に起因した見難さを解消するために、片目で表示像を観察する単眼視HUDが提案されている。例えば、両眼視差をなくして、HUDによる表示物の奥行き位置を光学的表示位置よりも遠くに見せる目的で片目のみに表示像を提示する技術がある。
また、上記の2重像を防止する目的で、片目のみに表示像を呈示する技術が提案されている(特許文献3)。
【0007】
このような単眼視HUDにおいて、前方に先行車があった場合、表示オブジェクトが先行車に重なったときには表示オブジェクトは先行車よりも手前に表示されることから、遮蔽効果によって表示オブジェクトは先行車よりも手前にあるように見える。従って、表示オブジェクトを先行車よりも遠方に知覚させることが困難である。特に、経路案内をするナビゲーション表示の場合には、先行車よりも遠い位置の曲がり角などを表示することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−284458号公報
【特許文献2】特開2006−17626号公報
【特許文献3】特開平7−228172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させる単眼視の車載用表示システム、表示方法及び車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、自車両の進路前方に関する前方情報を取得する前方情報取得部と、前記進路前方に存在する先行車両に関する先行車両情報を取得する先行車両情報取得部と、前記自車両に搭乗する観視者の片目の位置を推定する位置推定部と、前記前方情報取得部によって取得された前記前方情報と前記片目の位置とに基づいて、前記観視者が前記自車両の前記進路前方を観視したときの視野像を推定し、前記推定された視野像に基づいて、前記進路前方の目的の位置に対応する前記視野像内の位置に前記表示オブジェクトが配置されるように前記表示オブジェクトを生成し、前記表示オブジェクトを有する映像情報を含む光束を生成し、前記光束を前記片目の位置に基づいて前記観視者の前記片目に向けて投影する映像投影部であって、前記前方情報取得部によって取得された前記先行車両の位置よりも前記自車両の側の第1位置に対応する前記視野像内における第1視野像位置から、前記先行車両の位置の前記第1位置とは反対の側であって前記自車両が進路を変更すると推定される第2位置に対応する前記視野像内における第2視野像位置に到り、奥行き情報を有する前記表示オブジェクトを生成する映像投影部と、を備えたことを特徴とする車載用表示システムが提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、自車両の進路前方に関する前方情報を取得し、前記進路前方に存在する先行車両に関する先行車両情報を取得し、前記自車両に搭乗する観視者の片目の位置を推定し、前記前方情報と前記片目の位置とに基づいて、前記観視者が前記自車両の前記進路前方を観視したときの視野像を推定し、前記先行車両の位置よりも前記自車両の側の第1位置に対応する前記視野像内における第1視野像位置から、前記先行車両の位置の前記第1位置とは反対の側であって前記自車両が進路を変更すると推定される第2位置に対応する前記視野像内における第2視野像位置に到り、奥行き情報を有する前記表示オブジェクトを生成し、前記表示オブジェクトを有する映像を含む光束を生成し、前記光束を前記片目の位置に基づいて前記観視者の前記片目に向けて投影することを特徴とする表示方法が提供される。
【0012】
また、本発明の他の一態様によれば、上記の車載用表示システムと、前記車載用表示システムから出射される前記光束を前記観視者に向けて反射させるフロントガラスと、を備えたことを特徴とする車両が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させる単眼視の車載用表示システム、表示方法及び車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作状態を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの特性を示すグラフ図である。
【図8】第1の比較例の車載用表示システムの動作と特性を示す模式図である。
【図9】第2の比較例の車載用表示システムの動作と特性を示す模式図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作と特性を示す模式図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作を示すフローチャート図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作と特性を示す模式図である。
【図13】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作と特性を示す模式図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作を示す模式図である。
【図15】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作を示す模式図である。
【図16】本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作を示す模式図である。
【図17】本発明の第1の実施形態に係る別の車載用表示システムの構成を示す模式図である。
【図18】本発明の第1の実施形態に係る別の車載用表示システムの構成を示す模式図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に係る表示方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る車載用表示システムの構成を示す模式図である。
図3は、本実施形態に係る車載用表示システムの動作状態を示す模式図である。
図4〜6は、本実施形態に係る車載用表示システムの動作を示す模式図である。
【0017】
まず、図2〜図6によって、本実施形態に係る車載用表示ステムの構成及び動作の概要を説明する。
図2に表したように、本実施形態に係る車載用表示システム10は、前方情報取得部410と先行車両情報取得部420と位置推定部210と映像投影部115とを備える。
【0018】
前方情報取得部410は、自車両730の進路前方に関する情報である前方情報を取得する。先行車両情報取得部420は、自車両730の進路前方に存在する先行車両740に関する先行車両情報を取得する。位置推定部210は、自車両730に搭乗する観視者100の片目101の位置を推定する。映像投影部115は、表示オブジェクト180を有する映像を含む光束112を、推定された片目101の位置に基づいて観視者100の片目101に向けて投影する。
【0019】
自車両730は、例えば自動車などの車両であり、観視者100はその自動車を操縦する運転者(操縦者)である。すなわち、自車両730は、本実施形態に係る車載用表示システム10が搭載される車両である。
【0020】
前方情報は、自車両730の進路前方に関する情報であり、自車両730が進行すると推定される進行方向に関する進路前方に関する情報であり、道路や交差点の形状等を含む情報である。
【0021】
前方情報取得部410は、例えば、カメラなどによって撮像された自車両730の前方の像に基づいて前方情報を取得する。また、例えば、自車両730の位置をGPS(Global Positioning System)機能を用いて特定し、これに基づいて、各種の通信機能を用いて前方情報を取得する。また、例えば、道路や建物等に設置される撮像機能やレーダ機能とそれと連結された各種のデータベースとの通信によって、前方情報を取得しても良い。このように、前方情報取得部410における前方情報の取得方法は任意である。
【0022】
先行車両740は、例えば、自車両730の進路前方において、自車両730との距離が予め定められた距離以内に存在する車両である。例えば、この予め定められた距離は、例えば自車両730の移動速度や、自車両730が進行している道の幅などの各種の状況によって変えることができる。
【0023】
先行車両情報取得部420は、この先行車両740に関する先行車両情報を取得する。先行車両情報は、先行車両740の有無に関する情報を含む。すなわち、例えば、自車両730との距離が予め定められた距離以内に存在するという先行車両情報が取得できた場合には、先行車両740が存在するとし、それ以外の場合は、先行車両740が存在しないとする。
【0024】
先行車両情報取得部420は、例えば、カメラなどによって撮像された先行車両740の像に基づいて先行車両情報を取得する。また、例えば、車車間通信システムや路車間通信システムを用いて、先行車両情報を取得する。また、例えば、自車両730及び他車両のそれぞれの位置情報の例えば衛星通信システムを用いた授受によって、先行車両情報を取得する。このように、先行車両情報取得部420における先行車両情報の取得方法は任意である。
【0025】
表示オブジェクト180は、車載用表示システム10が観視者100に呈示する映像に設けられるものであり、例えば、車載用表示システム10が搭載される自車両730の運行情報に関する、進行方向を示す矢印等を含む表示の内容物である。すなわち、表示オブジェクト180は、例えば、ナビゲーションシステムにおける経路を示す矢印である。
【0026】
このような表示オブジェクト180は、例えば、地図情報から目的地までの経路を生成するナビゲーションシステムによって求められた経路と、例えばGPS等によって求められた自車両730の位置と、によって求められた、自車両730が進行すると予想される進行方向に基づいて生成される。なお、上記の経路を求める部分や自車両730の位置を求める部分は、車載用表示システム10の内部に組み込まれても良く、また、車載用表示システム10が搭載される自車両730に組み込まれても良い。
【0027】
図2に例示したように、車載用表示システム10は、例えば自車両730の中、すなわち、例えば、操縦者である観視者100からみて自車両730のダッシュボード720の奥に設けられる。
【0028】
映像投影部115は、例えば、映像データ生成部130と、映像形成部110と、投影部120と、を有する。
【0029】
映像データ生成部130は、表示オブジェクト180を有する映像に関するデータを生成する。そして、映像データ生成部130で生成された映像データを含む映像信号は、映像形成部110に供給される。
【0030】
映像形成部110は、映像データ生成部130から供給された映像信号に基づいて、映像形成部110の例えば画面に映像を形成する。映像形成部110としては、例えば、光源を有する液晶表示装置LCDを用いることができる。
【0031】
そして、投影部120は、映像形成部110で形成された映像を観視者100の片目101に投影する。
【0032】
投影部120には、例えば、投影レンズ、ミラー、及び、発散角(拡散角)を制御する各種の光学素子が用いられる。また、場合によっては、投影部120は光源を含む。
本具体例では、投影部120として、結像レンズ120a、発散角を制御するレンチキュラーレンズ120b、ミラー126及び非球面フレネルレンズ127が用いられている。
【0033】
そして、映像形成部110から出射した光束112は、結像レンズ120a、レンチキュラーレンズ120b、ミラー126及び非球面フレネルレンズ127を経て、車載用表示システム10が搭載される自車両730の例えばフロントガラス710(ウインドシールド、透明板)に設けられる反射体711(半透明の反射体)により反射され、観視者100の片目101に投影される。そして観視者100は、反射体711を介して、虚像形成位置310aの位置に形成された表示オブジェクト180の虚像310を知覚する。
【0034】
なお、映像投影部115の構成は任意であり、例えば、上記の映像データ生成部130、映像形成部110及び投影部120のそれぞれの構成も任意である。これらに関しては、後述するように各種の変形が可能である。
【0035】
一方、位置推定部210は、観視者100の映像が投影される片目101を推定する。位置推定部210は、例えば、観視者100を撮像する撮像部211と、撮像部211によって撮像された撮像画像を画像処理する画像処理部212と、画像処理部212で画像処理されたデータに基づいて、観視者100の片目101の位置を判断し、推定する演算部213と、を含むことができる。
【0036】
なお、撮像部211は、例えば、自車両730の運転席の前方や側方に配置され、例えば、操縦者である観視者100の顔面の像を撮像し、上記のように、観視者の片目101の位置を推定する。
【0037】
さらに、本具体例では、制御部250がさらに設けられており、制御部250は、位置推定部210で推定された観視者100の片目101の位置に基づいて、映像投影部115を制御することにより、光束112の投影範囲114aと投影位置114の少なくともいずれかを調整することができる。
【0038】
制御部250は、例えば、投影部120の一部を構成するミラー126に連結された駆動部126aを制御して、ミラー126の角度を制御することによって、投影位置114を制御する。これにより、観視者100の頭部105が動いた際にも、それに追従して、映像の呈示位置を制御することが可能となり、観視者100の頭部105の移動による映像呈示位置からの外れがなくなり、実用的な観視範囲を広くすることが可能になる。
【0039】
図3に表したように、本実施形態に係る車載用表示システム10においては、表示映像510として、表示オブジェクト180が表示され、フロントガラス710の反射体711(図示せず)に投影して表示される。これにより、観視者100は、外界映像520と表示映像510とを同時に見る。このように、車載用表示システム10は車載用のHUDとして用いられる。
【0040】
なお、表示オブジェクト180は、外界映像520の位置に対応させて表示映像510内での位置が制御される。
表示映像510は、このような表示オブジェクト180の他に、外界映像520とは独立して制御される、例えば、現在位置511、周辺の建物情報等512、速度や燃料等の車両情報514等を含むことができる。
【0041】
HUDは背景(外界映像520)に重畳した表示ができるため、観視者100は直感的に表示を把握できることが利点である。特に、単眼視HUDは、観視者100の注視点が遠くにあってもHUD表示も同時に見ることが可能であるので、外界に重畳させる表示に向いている。
【0042】
表示オブジェクト180を生成する映像投影部115の例えば映像データ生成部130は、仮想的な映像空間を有することができる。この仮想的な映像空間は、表示オブジェクト180が表示される虚像の表示位置を基準として、実空間と対応付けがされている。そして、仮想的な映像空間内の座標位置が、実空間に反映されるように表示オブジェクト180が生成される。
【0043】
図4に表したように、車載用表示システム10においては、表示オブジェクト180は、表示オブジェクト180が示す実空間RS内の目的の位置に対応した、観視者100の視野像VI内の位置に生成される。
【0044】
すなわち、映像投影部115は、前方情報取得部410によって取得された前方情報と、位置推定部210によって推定された片目101の位置と、に基づいて、観視者100が自車両730の進路前方を観視したときの視野像VIを推定する。例えば、観視者100が、進路前方を観視したときの道等の前方情報530を観視者100がどのように見ているかを推定し、推定した視野像VIに、実空間RSの道等の前方情報530に対応した像530vを推定する。なお、この際、像530vは実際に像として形成されなくとも良く、実空間RSにおける前方情報530の各位置に対応した仮想的な位置であっても良い。
【0045】
そして、推定された視野像VIに基づいて、進路前方の目的の位置(ターゲットの位置521)に対応する視野像VI内の位置(視野像VI内の位置521v)に表示オブジェクト180が配置されるように表示オブジェクト180は生成される。
上記の視野像VIの推定及び表示オブジェクト180の配置の方法の例に関しては後述する。
【0046】
そして、映像投影部115は、表示オブジェクト180を有する映像を含む光束112を生成し、光束112を位置推定部210によって推定された片目101の位置に基づいて観視者100の片目101に向けて投影する。
【0047】
これにより、観視者100は、視野像VI内に生成された表示オブジェクト180を、表示オブジェクト180が対応する進路前方の背景の像と重畳して観視することで、背景の像と表示オブジェクト180とを違和感無く見ることができる。
【0048】
この時、進路前方の実空間における3次元の軸(x軸、y軸及びz軸)に対応させて、視野像VI内に3次元の軸(x1軸、y1軸及びz1軸)を定義することができる。さらに、視野像VIに対応する仮想空間VS内における3次元の軸(α軸、β軸及びγ軸)を定義することができる。
【0049】
例えばz軸は、自車両730の進行方向であり、x軸方向は左右方向であり、y軸は上下方向とする。そして、x1軸、y1軸及びz1軸は、視野像VI内においてx軸、y軸及びz軸にそれぞれ対応する軸である。そして、α軸、β軸及びγ軸は、仮想空間VS内において、x軸、y軸及びz軸にそれぞれ対応する軸である。
【0050】
なお、視野像VI内の3次元の空間は、観視者100と視野像VIとの間の距離(z1方向の距離)が一定であるとして、視野像VIは、例えば縦軸Va(y1軸に相当)と横軸Ha(x1軸に相当)の2次元の空間(平面)を有するとすることができる。
【0051】
そして、例えば、仮想空間VS内の所定の位置に、仮想視点101a(仮想式な視点)が設定され、仮想視点101aの位置から仮想空間VS内の表示オブジェクト180vを見たときに、表示オブジェクト180が奥行き情報を有するように表示オブジェクト180を生成する。
【0052】
すなわち、実空間RSにおける奥行きに対応した仮想空間VSにおいて奥行き情報を有するように、表示オブジェクト180の例えば大きさや形状が制御される。表示オブジェクト180は、例えば遠近法による奥行き情報を有する。
【0053】
例えば、仮想空間VSにおいて、仮想視点101aに近い側では、表示オブジェクト180は大きく、遠い側では表示オブジェクト180は小さく制御される。
この時、視野像VIに重畳されて表示される表示オブジェクト180の大きさは、例えば、上方向(y1の値が増大する方向)に行くに従って小さくなり、下方向(y1の値が小さくなる方向)に行くに従って大きくなる。
【0054】
これによって、観視者100は、表示オブジェクト180を観視したときに、表示オブジェクト180が知覚されるべき実空間RS内での奥行きの位置に、表示オブジェクト180を知覚し易くなる。
【0055】
なお、表示オブジェクト180の形状は、図4に例示したように、曲率を持った矢印の形状や、進路を変更する地点に変曲点を持った形状などとすることができる。そして、その形状は、上記のように、奥行き情報を有する形状である。
【0056】
以下、視野像VIを推定する方法の一例について説明する。
図5は、車載用表示システム10における座標系を例示している。すなわち、同図(a)は観視者100の頭上からみたときの模式図であり、同図(b)は観視者100の側面方向から見たときの模式図である。
【0057】
ここで、同図(a)及び(b)に表したように、(x、y、z)座標系において、観視者100の観視する片目(例えば、優位眼であり、例えば右目)101の位置を片目位置E(Ex、Ey、Ez)とする。
そして、本実施形態に係る車載用表示システム10によって形成される表示オブジェクト180を含む光束112が、自車両730の反射体711において反射される位置を、視野像VI内の位置である視野像位置P(Px、Py、Pz)とする。
【0058】
ここで、所定の基準位置O(0、h1、0)を定める。ここで座標軸の原点を地面に接する位置とし、(0、0、0)とする。すなわち、基準位置Oは、座標軸の原点から高さh1の位置である。
【0059】
そして、上記の所定の基準位置Oからみたときの、自車両730の進路前方における任意の位置を実空間位置Q(Qx、Qy、Qz)とする。なお、実空間位置Q(Qx、Qy、Qz)は、前方情報取得部410によって取得された前方情報に基づいて求められる。
【0060】
基準位置Oからみて、片目位置Eのx軸方向におけるシフト量をw1とし、視野像位置Pのx軸方向におけるシフト量をw2とし、実空間位置Qのx軸方向におけるシフト量をw3とする。
一方、座標軸の原点からみて、片目位置Eのy軸方向におけるシフト量がEyであり、基準位置Oからみて、視野像位置Pのy軸方向におけるシフト量が(h1−h2)であり、実空間位置Qのy軸方向におけるシフト量が(h1−h3)である。
【0061】
また、基準位置Oと視野像位置Pとの間のz軸方向の距離を距離Iとし、基準位置Oと実空間位置Qとの間のz軸方向の距離を距離Lとする。
【0062】
実空間位置Q(Qx、Qy、Qz)は奥行き情報であるQzに関するデータを有しているが、このような実空間位置Q(Qx、Qy、Qz)は、視野像VI内においては、x1−y1平面内の2次元の位置として推定されるので、以下では、x1軸方向とy1軸方向とに対応するx軸方向とy軸方向とに関して説明する。
【0063】
図5(a)に例示したように、x軸方向に関していうと、実空間位置Q(Qx、Qy)のx軸からのシフト量w3と、視野像位置P(Px、Py)のx軸からのシフト量w2と、の比は、距離Lと距離Iとの比と同一である。従って、基準位置Oに観視者100の片目101が配置されているときは、視野像位置P(Px、Py)のx軸方向の値すなわち、シフト量w2はw3×I/Lによって求まる。もし、観視者100の片目101が基準位置Oからずれている場合は、そのずれ量、すなわち、距離Ex(w1)によって補正すれば良い。
【0064】
一方、図5(b)に例示したように、Y軸方向に関していうと、実空間位置Q(Qx、Qy)のy軸方向におけるシフト量(h1−h3)と、視野像位置P(Px、Py)のy軸方向におけるシフト量(h1−h2)と、の比は、距離Lと距離Iとの比と同一である。従って、基準位置Oに観視者100の片目101が配置されているときは、視野像位置P(Px、Py)のy軸方向の値、すなわちシフト量(h1−h2)が、(h1−h3)×I/Lによって求まる。もし、観視者100の片目101が基準位置Oからずれている場合は、そのずれ量、すなわち、距離(h1−Ey)によって補正すれば良い。
【0065】
このように、観視者100が自車両730の進路前方を観視したときの実空間RSにおける実空間位置Qが対応する視野像VIにおける視野像位置Pを推定することができる。
【0066】
上記の実空間RSから視野像VIを推定する方法と同様の方法によって、表示オブジェクト180が示す実空間RS内の目的の位置に対応した視野像VI内の位置に、表示オブジェクト180を生成することができる。
【0067】
例えば、視野像位置P(Px、Py、Pz)に表示オブジェクト180が配置されるとする。この時、表示オブジェクト180が配置される位置は、表示オブジェクト180に含まれる各点の位置である。
【0068】
そして、上記の所定の基準位置Oからみたときに、表示オブジェクト180の虚像が実空間上に知覚される位置を、上記の実空間位置Q(Qx、Qy、Qz)とする。この時、距離Lは、表示オブジェクト180を設定する際の設定奥行き距離となる。すなわち、基準位置Oからみて設定奥行き距離の位置が奥行き目標位置となる。
【0069】
シフト量w3とシフト量w2との比が、距離Lと距離Iとの比と同一であること、及び、シフト量(h1−h3)とシフト量(h1−h2)との比が、距離Lと距離Iとの比と同一であることに基づいて、表示オブジェクト180を実空間RSに対応した視野像VI内の所定の位置に配置して生成することができる。
【0070】
図6(a)は、片目位置E(Ex、Ey)の位置を例示している。すなわち、同図は、撮像部211によって撮像された観視者100の頭部105の撮像画像を例示している。同図に表したように、この撮像画像が画像処理部212で画像処理され、演算部213によって、観視者100の片目101の位置が判断され、推定される。このようにして、基準位置Oから見たときの片目101の位置である片目位置E(Ex、Ey)が、位置推定部210によって推定される。すなわち、Ex及びEyが位置推定部210によって算出される。
【0071】
図6(b)は、表示オブジェクト180が配置される視野像VI内のターゲットの位置の視野像位置P(Px、Py)を例示している。同図には、前方情報取得部410で取得された前方情報の像530v(道路の幅や形状など)が例示されている。そして、表示オブジェクト180を表示すべきターゲットの位置に対応する視野像位置P(Px、Py)が求められる。すなわち、例えば、自車両730の進行する道において表示オブジェクト180を表示すべき位置に対応した位置が、視野像位置P(Px、Py)として求められる。
【0072】
図6(c)は、視野像VIに重畳して知覚される表示オブジェクト180の表示オブジェクト位置P1(Px1、Py1)を例示している。すなわち同図は、車載用表示システム10によって、自車両730の反射体711に投影される表示オブジェクト180の位置である表示オブジェクト位置P1(Px1、Py1)を例示している。この表示オブジェクト位置P1(Px1、Py1)は、上記の片目位置E(Ex、Ey)及びターゲットの位置に対応する視野像位置P(Px、Py)に基づいて定められる。
【0073】
このようにして、観視者100が進路前方の道等の前方情報530を観視したときの視野像VI内の前方情報530に対応した像530vを推定し、これにより、表示オブジェクト180の各位置が、実空間RSに対応した視野像VI内の対応する各位置に配置されるように生成される。
【0074】
図1(a)は、観視者100が、光束112に含まれる映像(表示映像510)と、自車両730の進路前方の背景と、を観視したときの視野像VIと表示オブジェクト180とを模式的に例示している。
図1(b)は、光束112に含まれる映像(表示映像510)の表示オブジェクト180を例示している。
【0075】
図1(a)に表したように、視野像VIには、前方の道等に関する前方情報と先行車両740に関する先行車両情報とに関する情報が含まれ、観視者100は、視野像VI内の所定の位置に、道等と先行車両740の像を知覚する。
【0076】
図1(a)及び(b)に表したように、本実施形態に係る車載用表示システム10においては、映像投影部115は、先行車両740の位置よりも手前側(すなわち自車両730の側)の第1位置P01に対応する視野像VI内における第1視野像位置PV01から、自車両730が進路を変更すると推定される第2位置P02(進路変更位置)に対応する視野像VI内における第2視野像位置PV02に到る表示オブジェクト180を生成する。
【0077】
第1位置P01は、実空間RSにおける位置であり、先行車両740の位置P740よりも手前側(先行車両740よりも自車両730の側)の位置である。例えば、第1位置P01は、自車両730と先行車両740との間の位置である。例えば、第1位置P01は、自車両730からみて進路前方の所定の距離の位置に設定することができる。
【0078】
第2位置P02は、例えばナビゲーションシステム等によって、進路を変更することを促す道等の分岐点(交差点)などの位置であり、自車両730からみて先行車両740よりも前方(先行車両740の位置の第1位置P01とは反対の側)の位置である。
【0079】
そして、視野像VIにおいて、実空間RSの第1位置P01と第2位置P02とにそれぞれ対応する位置が、第1視野像位置PV01及び第2視野像位置PV02である。
【0080】
そして、表示オブジェクト180は、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02に到る。そして、この表示オブジェクト180は、既に説明したように、奥行き情報を有する。
【0081】
これにより、進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させる単眼視の車載用表示システムが提供できる。
【0082】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの特性を示すグラフ図である。
すなわち、同図は、車載用表示システム10に関する実験結果を例示している。この実験では、先行車両740が自車両730から見て進路前方の30mに位置にあり、自車両730が進路を変更すると推定される第2位置P02(進路変更位置)を自車両からみて、30m、45m、60m、75m及び120mの位置と変えて、その第2位置P02を示すように表示オブジェクト180の位置(矢印の先端の位置)を設定したときに、観視者100が知覚する奥行き位置を求めた。
【0083】
図7の横軸は、表示オブジェクト180の設定奥行き距離Ls(観視者100と設定奥行き位置との間の距離)を表し、縦軸は、観視者100が表示オブジェクト180を観視したときに知覚する主観的奥行き距離Lsub(観視者100と知覚した主観的奥行き位置との間の距離)を表している。
【0084】
そして、同図の破線C1は、設定奥行き距離Lsと主観的奥行き距離Lsubとが一致する場合の特性を例示しており、実線C2は、実験により実際に求められた主観的奥行き距離Lsubを表している。
【0085】
同図に表したように、本実施形態に係る車載用表示システム10においては、主観的奥行き距離Lsubは、設定奥行き距離Lsに実質的に一致している。そして、例えば、設定奥行き距離Lsを120mとした場合には、主観的奥行き距離Lsubは105mであり、先行車両740と自車両730との間の距離である30mを超えて、先行車両740よりも前方の奥行き設定位置に近い位置に表示オブジェクト180が知覚されている。
【0086】
比較例の車載用表示システムの構成は、本実施形態に係る車載用表示システム10に類似している。しかし、比較例の場合には、表示オブジェクト180の構成が本実施形態の場合と異なる。
【0087】
(第1の比較例)
図8は、第1の比較例の車載用表示システムの動作と特性を示す模式図である。
同図(a)は動作を例示する模式図であり、同図(b)は特性を例示するグラフ図である。
図8(a)に表したように、第1の比較例の車載用表示システムにおいては、表示オブジェクト180は、第2表示位置P02の位置に配置された形状を有している。すなわち、表示オブジェクト180は、第1位置P01に対応する第1視野像位置PV01から、第2位置P02に対応する第2視野像位置PV02に到っていない。
【0088】
第1の比較例において、表示オブジェクト180を、第2位置P02を自車両730からみて、30m、45m、60m、75m及び120mの位置と変えて配置したときに、観視者100が知覚する奥行き位置を実験により求めた。なお、この場合も、先行車両740は自車両730から見て進路前方の30mに位置に配置されている。
【0089】
この時、第2位置P02に対応する第2視野像位置PV02の位置に表示オブジェクト180が生成され、第2位置P02の位置(自車両730からみて、30m、45m、60m、75m及び120mの位置)のそれぞれに対応する視野像VIにおける各位置PV30、PV45、PV60、PV75及びPV120の位置に、表示オブジェクト180が配置される。そして、この時、その奥行き位置に対応させて表示オブジェクト180の大きさが変えられている。
【0090】
図8(b)は、この実験結果を例示している。図8(b)に表したように、第1の比較例の場合には、表示オブジェクト180が知覚される主観的奥行き距離Lsubは、設定奥行き距離Lsと、大きく異なっている。そして、例えば、設定奥行き距離Lsを120mとした場合には、主観的奥行き距離Lsubは約60mであり、設定奥行き位置とは大きくかけ離れた手前に知覚されている。
【0091】
(第2の比較例)
図9は、第2の比較例の車載用表示システムの動作と特性を示す模式図である。
同図(a)は動作を例示する模式図であり、同図(b)は特性を例示するグラフ図である。
図9(a)に表したように、第2の比較例の車載用表示システムにおいては、表示オブジェクト180は、第1位置P01に対応する第1視野像位置PV01から、第2位置P02に対応する第2視野像位置PV02に到るっているが、奥行き情報を有していない。すなわち、表示オブジェクト180の大きさ(例えば矢印の太さ)は、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02にかけて一定である。なお、同図では、先行車両740を表示していない。
【0092】
第2の比較例において、表示オブジェクト180を、第2位置P02を自車両730からみて、30m、45m、60m、75m及び120mの位置と変えて配置したときに、観視者100が知覚する奥行き位置を実験により求めた。なお、この場合には、表示オブジェクト180の奥行き位置をより知覚しやすいように、先行車両740が無い場合として実験を行った。
【0093】
図9(b)は、この実験結果を例示している。図9(b)に表したように、第2の比較例の場合も、表示オブジェクト180が知覚される主観的奥行き距離Lsubは、設定奥行き距離Lsとは、大きく異なっている。そして、例えば、設定奥行き距離Lsを120mとした場合には、主観的奥行き距離Lsubは約60mであり、設定奥行き位置とは大きくかけ離れた手前に知覚されている。
【0094】
これに対し、図7に関して説明したように、本実施形態に係る車載用表示システム10においては、第1及び第2の比較例に比べて、主観的奥行き距離Lsubは、設定奥行き距離Lsと良く一致している。このように、車載用表示システム10によれば、進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させる単眼視の車載用表示システムが提供できる。
【0095】
なお、上記においては、自車両730の進路前方に先行車両740が存在する場合の車載用表示システム10の動作について説明したが、本実施形態に係る車載用表示システム10において、先行車両740が存在しない場合の動作は任意である。
【0096】
例えば、先行車両740が存在しない場合も、先行車両740が存在する場合と同様に表示オブジェクト180を生成しても良い。すなわち、第1位置P01を自車両730からみて進路前方の所定の距離の位置に設定し、第2位置P02を進路を変更することを促す道等の分岐点(交差点)などの位置に設定し、第1位置P01と第2位置P02とにそれぞれに対応する第1視野像位置PV01及び第2視野像位置PV02を用いて、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02に到り、奥行き情報を有するように表示オブジェクト180を生成しても良い。
【0097】
また、これ以外の表示オブジェクト180を生成しても良い。以下、先行車両740が存在しない場合の動作の別の一例を説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作と特性を示す模式図である。
同図(a)は動作を例示する模式図であり、同図(b)は特性を例示するグラフ図である。
図10(a)に表したように、車載用表示システム10において、先行車両740が存在しない場合には、進路を変更することを促す道等の分岐点(交差点)などの第2位置P02に対応する第2視野像位置PV02の位置に表示オブジェクト180が生成されている。すなわち、第2位置P02の位置が自車両730からみて、30m、45m、60m、75m及び120mの場合には、それらに対応する視野像VIにおける各位置PV30、PV45、PV60、PV75及びPV120の位置に、表示オブジェクト180が配置される。そして、この時、その奥行き位置に対応させて表示オブジェクト180の大きさが変えられている。
【0098】
このような動作をさせた場合、図10(b)に表したように、主観的奥行き距離Lsubは、設定奥行き距離Lsに良く一致する。すなわち、先行車両740が存在しない場合には、表示オブジェクト180が先行車両740の像によって遮蔽されることがないので、表示された表示オブジェクト180は、設置された設定奥行き位置に精度良く知覚される。
【0099】
また、先行車両740が存在しない場合には、表示オブジェクト180は、定められた奥行き位置に表示され、進路を変更する地点の手間では、例えば矢印は上方向を向いている。そして、進路を変更する交差点等の地点にさしかかった時は、表示オブジェクト180の大きさや形は変化させずに、表示オブジェクト180の矢印の向きを、進路を変更する方向に回転させても良い。
【0100】
一方、先行車両が存在する場合には、例えば、進路を変更する地点の手前において、表示オブジェクト180の矢印の形状を徐々に変化させて、表示オブジェクト180の矢印の先端が先行車両740のよりも先に配置して、変更する進路の方向を表示する。
【0101】
このように、車載用表示システム10において、表示オブジェクト180は、先行車両740が検出された場合と検出されない場合とで異なることができる。先行車両740の有無によって、表示オブジェクト180の表示態様を変えることで、先行車両740と表示オブジェクト180との差をより認知し易くなり、進路を変える交差点等の位置をより分かりやすく知覚させることができる。
【0102】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの動作を示すフローチャート図である。
図11に表したように、まず、地図情報を取得する(ステップS001)。そして、目的位置を設定する(ステップS002)。そして、自車両730の位置である自車両位置情報を、例えばGPS等によって取得する(ステップS003)。そして、これらに基づいて、自車両730が進行すると推定される経路情報を生成する(ステップS004)。
【0103】
なお、上記のステップS003は、車載用表示システム10の内部で実施されても良く、また、車載用表示システム10の外部に設けられた例えばGPSやレーダシステムによって実施されても良い。また、上記のステップS001、S002及びS004も、車載用表示システム10の内部で実施されても良く、また、車載用表示システムの外部に設けられたナビゲーションシステムで実施されても良い。
【0104】
そして、自車両730の例えば進行中の各時刻における進路前方の前方情報を取得する(ステップS005)。すなわち、進行中の自車両730において、時間の経過につれて変化する前方情報を入手する。これは、前方情報取得部410によって実施される。
【0105】
そして、取得された前方情報に基づいて、進路を変更する位置を取得する(ステップS006)。すなわち、進行している自車両730において、進路が変更される分岐点を把握する。
【0106】
そして、先行車両740を検出する(ステップS007)。これには、例えば、カメラ等によって撮像された先行車両740の像や、車車間通信システムや路車間通信システムや衛星通信システムなどが用いられる。そして、先行車両740に関する情報が入手され、先行車両740の存在の有無の判断が行われる(ステップS008)。これは、先行車両情報取得部420によって実施される。
【0107】
そして、先行車両740の有無に基づいて、表示オブジェクト180が配置される第2位置P02(進路を変更する位置)が決定される(ステップS009)。そして、第1位置P01が決定される(ステップS010)。なお、この時、既に説明したように、先行車両740の有無に係わらず、第1位置P01及び第2位置P02をそれぞれ同じに設定しても良い。
【0108】
一方、観視者100の像をカメラなどによって撮像し(ステップS011)、これに基づいて観視者100の片目101の位置情報を取得する(ステップS012)。これは、位置推定部210によって実施される。
【0109】
そして、取得された片目101の位置情報に基づいて、図5に関して説明した基準位置O(0、h1、0)と片目位置E(Ex、Ey、Ez)との差の補正を行い(ステップS013)、決定された第1位置P01及び第2位置P02に基づいて、表示オブジェクト180を生成する(ステップS014)。すなわち、図5及び図6に関して説明した処理を行う。
【0110】
そして、必要に応じて、映像投影部115に含まれる各種の光学部品や映像形成部110に起因する画像の歪みの補正を行う(ステップS015)。
【0111】
以上の動作は、映像投影部115の例えば映像データ生成部130によって実施される。そして、生成された表示オブジェクト180を含む映像信号が映像形成部110に提供され、これに基づき、光束112が生成され、光束112が観視者100の片目101に投影される。
【0112】
これにより、進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させることができる。
【0113】
なお、上記のステップS001〜S015は、技術的に可能な範囲で入れ替えても良く、また同時に実施しても良い。
【0114】
なお、図1に例示したように、車載用表示システム10において、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の側の端は、視野像VIにおける先行車両740に対応する領域の外に配置されている。すなわち、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の側の端は、先行車両740の像740Iよりも外側に配置されている。これにより、第2視野像位置PV02が対応する第2位置P02(進路を変更することを促す道等の分岐点などの位置)をより正確に知覚させることができる。
【0115】
このように、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の側の端は、視野像VI内における先行車両740に対応する領域を含まない位置に配置されることが望ましい。
【0116】
また、図1に例示したように、車載用表示システム10において、表示オブジェクト180は、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02に到る連続的な形状を有することができる。これにより、第1視野像位置PV01から、先行車両740を経て、先行車両740よりも先の位置である第2視野像位置PV02に到る位置をより分かりやすく知覚させ、第2視野像位置PV02の奥行き位置をより正確に知覚させることができる。
【0117】
ただし、本発明は、これに限らず、以下に説明するように、表示オブジェクト180の表示態様は各種の変形が可能である。
【0118】
図12は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作と特性を示す模式図である。
同図(a)は動作を例示する模式図であり、同図(b)は特性を例示するグラフ図である。
図12(a)に表したように、車載用表示システム10の別の動作では、表示オブジェクト180は、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02に到る経路で移動するように生成される。そして、この時も、表示オブジェクト180は奥行き情報を有しており、例えば表示オブジェクト180の大きさは、第1視野像位置PV01の側よりも第2視野像位置PV02の側で小さい。
【0119】
なお、本具体例では、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の側の端は、視野像VIにおける先行車両740に対応する領域の外に配置されている。
すなわち、進路を変更する第2位置P01に対応する第2視野像位置PV02においては、表示オブジェクト180の矢印の先端は、進路を変更する方向に曲げられている。例えば、第1視野像位置PV01では矢印の方向は上向きであり、第2視野像位置PV02では矢印先端が先行車両740の像に重ならない位置まで水平方向に移動させされ、横方向を向いている。
【0120】
図12(b)に表したように、この場合も、主観的奥行き距離Lsubは、設定奥行き距離Lsに良く一致する。
【0121】
図13は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作と特性を示す模式図である。
同図(a)は動作を例示する模式図であり、同図(b)は特性を例示するグラフ図である。
図13(a)に表したように、この場合も、表示オブジェクト180は、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02に到る経路で移動するように生成される。
ただし、本具体例では、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の側の端は、視野像VIにおける先行車両740に対応する領域の内部に配置されている。
【0122】
図13(b)に表したように、この場合も、主観的奥行き距離Lsubは、設定奥行き距離Lsに良く一致するが、図12(b)と図13(b)とを比較すると、図12(b)に例示した特性の方が、主観的奥行き距離Lsubと設定奥行き距離Lsとの一致の程度はより高い。
【0123】
従って、図12及び図13に例示した結果から、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の側の端は、視野像VIにおける先行車両740に対応する領域の外に配置されることがより望ましいことがわかる。
【0124】
これにより、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の側の端が先行車両740の像によって遮蔽されることがなくなり、表示オブジェクト180の第2視野像位置PV02の奥行き位置をより正確に知覚させることができる。
【0125】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作を示す模式図である。
図14に表したように、車載用表示システム10の別の動作では、表示オブジェクト180は、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02に到り、断続的に配列した複数の表示オブジェクト要素180pを有している。
本具体例では、この複数の表示オブジェクト要素180pが同時に表示される。
【0126】
図15は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作を示す模式図である。
すなわち、同図(a)〜(c)は、異なる時刻における表示オブジェクト180の表示状態を例示しており、同図(a)が最初の時刻であり、同図(b)は同図(a)よりも後の時刻であり、同図(c)は同図(b)よりも後の時刻である。
【0127】
図15(a)〜(c)に表したように、車載用表示システム10において、表示オブジェクト180は、第1視野像位置PV01から第2視野像位置PV02に到り、断続的に配列した複数の表示オブジェクト要素180pを有し、この複数の表示オブジェクト要素180pは、順次に表示され、順次に消える。
【0128】
このように、本具体例では、複数の表示オブジェクト要素180pのうちの第1表示オブジェクト要素180p1は、第1表示オブジェクト要素180p1よりも第2視野像位置PV02の側に配置された第2表示オブジェクト要素180p2よりも時間的に先に消える。
このように、表示オブジェクト180をテロップのように表示させても良い。
【0129】
なお、図15(a)〜(c)に例示した動作において、複数の表示オブジェクト要素180pの数を多くし、第1視野像位置PV01の側の第1表示オブジェクト要素180p1と、第2視野像位置PV02の側の第2表示オブジェクト要素180p2と、の差を小さくした動作が、図12及び図13に例示した表示オブジェクト180が移動する動作に相当する。
【0130】
この他、任意の表示態様によって表示オブジェクト180を生成することができる。
【0131】
図16は、本発明の第1の実施形態に係る車載用表示システムの別の動作を示す模式図である。
すなわち、同図(a)は、進路の変更がなく自車両730が進行している場合の表示オブジェクト180を例示し、同図(b)は、進路を変更する場合の最初の時刻における表示オブジェクト180を例示し、同図(c)は、同図(b)よりも後の時刻における表示オブジェクト180を例示している。
【0132】
図16(a)に表したように、進路の変更がなく、自車両が道なりに進行している場合には、表示オブジェクト180は、例えば、先行車両740の手前の奥行き位置に対応して表示される。
【0133】
そして、図16(b)に表したように、進路を変更する際には、先行車両740の手前の位置に第1位置P01と、進路を変更する位置である第2位置P02とが設定され、まず、第1位置P01に対応する道路上の第1視野像位置PV01から、第2位置P02に対応する第2視野像位置PV02に向けて、表示オブジェクト180の矢印の根元から矢印の先端の方向に向けて矢印が延びる。
【0134】
その後、例えば、図16(c)に表したように、表示オブジェクト180の矢印の先端は、第2位置P02に対応する第2視野像位置PV02の位置に設定される。本具体例では、進路を変更する交差点において進行する方向が、表示オブジェクト180の矢印の先端の曲がりによって示されている。
【0135】
そして、表示オブジェクト180の矢印の根元の部分は大きく(太く)、矢印の先の部分は小さく(細く)表示されることによって、奥行に関する情報を示している。
【0136】
なお、上記の各動作において、表示オブジェクト180の少なくとも一部は、進路前方の道の表面の位置に対応する視野像内VIの位置に配置されることが望ましい。これにより、表示オブジェクト180の奥行き位置をより正確に知覚させることができる。
【0137】
なお、車載用表示システム10において、映像形成部110としては、例えば、LCDの他に、DMD(Digital Micromirror Device)、及び、MEMS(Micro-electro-mechanical System)等の各種光スイッチを用いることができる。また、映像形成部110には、レーザプロジェクタやLED(発光ダイオード)プロジェクタなどを用いることもでき、この場合は、レーザビームにより映像を形成する。映像形成部110として、光源としてLEDを用いたLCDを用いた場合は、装置を小型・省電力化できる。
【0138】
なお、上記では、光束112の発散角を制御する手段としてレンチキュラーレンズ120bを用いたが、この他に、拡散角度を制御した拡散板などを用いることもできる。
【0139】
ミラー126は、駆動部126aによって角度調整ができるようにすることができる。ミラー126として、平面鏡以外に、パワーを持った反射面として、凹面ミラーを用いることができ、この場合も駆動部126aによって、その角度を変えることができる。なお、表示される映像においては、ミラー126の角度などに依存した画像の歪みが発生することがあるが、これは映像データ生成部130において、歪み補正を行うことで、歪みのない映像を観視者100に呈示することができる。
【0140】
車載用表示システム10において、発散角が制御された光束112が観視者100に到達し、観視者100は片目101で映像を観視するが、観視者100の両眼の間隔は平均6cmであるので、観視者100の頭部105上における光束112の幅を6cm程度に制御すると両眼に映像が投影されることがない。なお、映像の見易さから観視者100の優位眼に映像を投影することが好ましい。
【0141】
なお、上記の具体例では、制御部250は、投影部120の一部を構成するミラー126に連結された駆動部126aを制御して、ミラー126の角度を制御したが、例えば、投影部120を構成する各種の光学部品を制御して、投影範囲114aを制御することができる。また、制御部250は、映像形成部110を制御して映像の輝度やコントラストなどを調整しても良い。
【0142】
なお、上記の具体例では、制御部250によって、推定された片目101の位置に基づいて光束112の投影範囲114aと投影位置114の少なくともいずれかを自動的に調整するが、本発明はこれに限らない。例えば、推定された片目101の位置に基づいて光束112の投影範囲114aと投影位置114の少なくともいずれかを手動で調整するようにしても良い。この場合は、例えば、投影部120によって撮像された観視者100の頭部105の画像を何らかのディスプレイで見ながら、駆動部126aを手動で制御して、ミラー126の角度を制御することができる。
【0143】
映像データ生成部130は、前方情報取得部410で取得された前方情報と、観視者100の推定された片目101の位置と、に基づいて表示オブジェクト180を含む映像に関するデータを生成する。片目101の位置が実質的に変動しない場合は、表示オブジェクト180は、前方情報取得部410で取得された前方情報に基づいて生成しても良く、この場合も、前方情報と片目101の位置とに基づいて表示オブジェクト180を含む映像に関するデータを生成するものとする。
【0144】
なお、位置推定部210の演算部213においては、例えば、特許第3279913号公報などに記載されている人物認証に関する技術を用いて、観視者100の顔認識と顔部品としての眼球位置を算出し、観視者100の映像を投影する片目101の位置を判断して推定する。
【0145】
図17は、本発明の第1の実施形態に係る別の車載用表示システムの構成を示す模式図である。
図17に表したように、本実施形態に係る別の車載用表示システム11は、前方情報検出部424と、経路生成部450と、をさらに備える。これ以外は、車載用表示システム10と同様とすることができるので説明を省略する。
【0146】
前方情報検出部424は、例えば、前方撮像部421(カメラ)と、前方撮像部421で撮像した画像を画像解析する画像解析部422と、画像解析部422で解析された画像から、道路や交差点の形状や障害物などに関する各種の情報を抽出し、前方情報を生成する前方情報生成部423と、を有している。これにより、前方情報として、前方情報検出部424により検出された前方の道路状況(道路や交差点の形状など)に関するデータが取得される。
【0147】
そして、前方情報検出部424によって検出された前方情報が、前方情報取得部410に供給される。
【0148】
また、前方情報検出部424は、前方撮像部421によって撮像した画像を画像解析することによって、先行車両740に関する情報も検出でき、前方情報検出部424によって検出された先行車両情報を先行車両情報取得部420に供給しても良い。
【0149】
なお、前方情報検出部424は、前方情報取得部410または先行車両情報取得部420に内蔵されても良い。
【0150】
一方、経路生成部450は、自車両730が進行すると推測される経路情報(ルート情報)を生成する。
【0151】
経路生成部450は、例えば、地図情報等と自車両730の現在位置とに基づいて、自車両730が進行すると推測される経路を算出する。このとき、例えば、いくつかの経路の候補を算出し、自車両730の操縦者である観視者100に選択を促して、その結果に基づき、経路を決定するようにしても良い。
【0152】
そして、図11に関して説明したように、生成された経路情報に基づいて、進路を変更する位置を求め、これに基づき表示オブジェクト180を生成する。
【0153】
なお、この経路生成部450は、例えば、映像データ生成部130に内蔵させることもできる。また、車載用表示システムに内蔵される各種の構成要素に内蔵されても良い。
【0154】
なお、この経路生成部450は、車載用表示システム11に設けられなくても良い。例えば、自車両730内に別途設けられるナビゲーションシステムに、経路生成部450に相当する部分が設けられ、そのナビゲータシステムで生成された、自車両730が進行すると推測される経路を入手して、映像データ生成部130は、表示オブジェクト180を含む映像データを生成しても良い。
【0155】
さらに、経路生成部450に相当する部分は、自車両730とは別に設けられても良い。この場合は、例えば無線技術によって、自車両730とは別に設けられた経路生成部450に相当する部分からデータを入手して、映像データ生成部130は、表示オブジェクト180を含む映像データを生成することができる。
【0156】
このように、経路生成部450(及びそれに相当する部分)は、任意の場所に設けることができる。
【0157】
図18は、本発明の第1の実施形態に係る別の車載用表示システムの構成を示す模式図である。
図18に表したように、本実施形態に係る別の車載用表示システム12は、映像投影部115の構成が、図2に例示した車載用表示システム10とは異なっている。具体的には、映像形成部110及び投影部120の構成が異なっている。また、本具体例は、制御部250が設けられていない例である。これ以外は、車載用表示システム10と同様なので説明を省略する。
【0158】
本実施例に係る車載用表示システム12においても、映像形成部110としては、例えば、LCD、DMD及びMEMS等の各種光スイッチを用いることができる。なお、映像形成部110には、レーザプロジェクタやLEDプロジェクタなどを用いることもできる。
【0159】
本具体例では、投影部120には、例えば、光源121、テーパライトガイド122、第1レンズ123、可変アパーチャ124、第2レンズ125、例えば凹面状の可動式のミラー126、及び、非球面フレネルレンズ127が用いられている。
なお、例えば、第1レンズ123の焦点距離をf1、第2レンズ125の焦点距離をf2とすると、可変アパーチャ124は、第1レンズ123からf1の距離で、第2レンズ125からf2の距離の位置に設置されている。
【0160】
そして、第2レンズ125から出射した光束は、映像形成部110に入射し、映像形成部110で形成された映像に基づいて変調された光束112となる。
【0161】
その光束112は、ミラー126及び非球面フレネルレンズ127を経て、車載用表示システム12が搭載される自車両730のフロントガラス710の反射体711により反射され、観視者100の片目101に投影される。
【0162】
なお、光源121には、LEDや高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザなど各種のものを用いることができる。また、非球面フレネルレンズ127は、例えば、フロントガラス710の形状に合わせて光束112の形(断面形状など)を制御できるように設計することができる。
【0163】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る表示方法について説明する。
図19は、本発明の第2の実施形態に係る表示方法を示すフローチャート図である。
図19に表したように、本発明の第2の実施形態に係る表示方法では、まず、自車両730の進路前方に関する前方情報を取得する(ステップSS1)。そして、進路前方に存在する先行車両740に関する先行車両情報を取得する(ステップSS2)。そして、自車両730に搭乗する観視者100者の片目101の位置を推定する(ステップSS3)。
【0164】
そして、前方情報と片目101の位置とに基づいて、観視者100が自車両730の進路前方を観視したときの視野像VIを推定する(ステップSS4)。
【0165】
そして、先行車両740の位置よりも自車両730の側の第1位置P01に対応する視野像VI内における第1視野像位置PV01から、先行車両740の位置の第1位置P01とは反対の側であって自車両730が進路を変更すると推定される第2位置P02に対応する視野像VI内における第2視野像位置PV02に到り、奥行き情報を有する表示オブジェクト180を生成する(ステップSS5)。
【0166】
そして、表示オブジェクト180を有する映像を含む光束112を生成する(ステップSS6)。そして、光束112を推定された片目101の位置に基づいて観視者100の片目101に向けて投影する(ステップSS7)。
【0167】
これにより、進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させる単眼視の表示方法が提供できる。
【0168】
なお、上記のステップSS1〜SS7は、技術的に可能な範囲で入れ替えても良く、また同時に実施しても良い。
【0169】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る車両について説明する。
本実施形態に係る車両は、上記の自車両730である。すなわち、図2に例示したように、自車両730は、第1の実施形態に係るいずれかの車載用表示システムと、前記車載用表示システムから出射される光束112を観視者100に向けて反射させるフロントガラス710と、を備える。
【0170】
例えば、図2に例示したように、自車両730は、例えば、観視者100からみて自車両730のダッシュボード720の奥に、車載用表示システム10を備える。
【0171】
これにより、進路を示す表示オブジェクトを先行車よりも遠方の所定の位置に知覚させる単眼視の表示を提供できる車両が提供できる。
【0172】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、車載用表示システム、表示方法及び車両を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0173】
その他、本発明の実施の形態として上述した車載用表示システム、表示方法及び車両を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての車載用表示システム、表示方法及び車両も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0174】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0175】
10、11、12 車載用表示システム
100 観視者
101 片目
101a 仮想視点
105 頭部
110 映像形成部
112 光束
114 投影位置
114a 投影範囲
115 映像投影部
120 投影部
120a 結像レンズ
120b レンチキュラーレンズ
121 光源
122 テーパライトガイド
123 第1レンズ
124 可変アパーチャ
125 第2レンズ
126 ミラー
126a 駆動部
127 非球面フレネルレンズ
130 映像データ生成部
180 表示オブジェクト180
180p 表示オブジェクト要素
180p1 第1表示オブジェクト要素
180p2 第2表示オブジェクト要素
180v 表示オブジェクト
210 位置推定部
211 撮像部
212 画像処理部
213 演算部
250 制御部
310 虚像
310a 虚像形成位置
410 前方情報取得部
410a 前方情報データ格納部
420 先行車両情報取得部
421 前方撮像部
422 画像解析部
423 前方情報生成部
424 前方情報検出部
450 経路生成部
510 表示映像
511 現在位置
512 建物情報等
514 車両情報
520 外界映像
521 ターゲットの位置
521v 視野像VI内の位置
530 前方情報
530v 像
710 フロントガラス
711 反射体
720 ダッシュボード
730 自車両(車両)
740 先行車両
740I 先行車両の像
O 基準位置
P 視野像位置
P01 第1位置
P02 第2位置
P1 表示オブジェクト位置
P740 先行車両の位置
PV01 第1視野像位置
PV02 第2視野像位置
PV30、PV45、PV60、PV75、PV120 位置
Q 実空間位置
RS 実空間
VI 視野像
VS 仮想空間(映像空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進路前方に関する前方情報を取得する前方情報取得部と、
前記進路前方に存在する先行車両に関する先行車両情報を取得する先行車両情報取得部と、
前記自車両に搭乗する観視者の片目の位置を推定する位置推定部と、
前記前方情報取得部によって取得された前記前方情報と前記片目の位置とに基づいて、前記観視者が前記自車両の前記進路前方を観視したときの視野像を推定し、前記推定された視野像に基づいて、前記進路前方の目的の位置に対応する前記視野像内の位置に表示オブジェクトが配置されるように前記表示オブジェクトを生成し、前記表示オブジェクトを有する映像情報を含む光束を生成し、前記光束を前記片目の位置に基づいて前記観視者の前記片目に向けて投影する映像投影部であって、
前記前方情報取得部によって取得された前記先行車両の位置よりも前記自車両の側の第1位置に対応する前記視野像内における第1視野像位置から、前記先行車両の位置の前記第1位置とは反対の側であって前記自車両が進路を変更すると推定される第2位置に対応する前記視野像内における第2視野像位置に到り、奥行き情報を有する前記表示オブジェクトを生成する映像投影部と、
を備えたことを特徴とする車載用表示システム。
【請求項2】
前記表示オブジェクトの前記第1視野像位置における大きさは、前記第2視野像位置における大きさよりも大きいことを特徴とする請求項1記載の車載用表示システム。
【請求項3】
前記表示オブジェクトの前記第2視野像位置の側の端は、前記視野像内における前記先行車両に対応する領域を含まない位置に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用表示システム。
【請求項4】
前記表示オブジェクトは、前記第1視野像位置から前記第2視野像位置に到る連続的な形状を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車載用表示システム。
【請求項5】
前記表示オブジェクトは、前記第1視野像位置から前記第2視野像位置に到り、断続的に配列した複数の表示オブジェクト要素を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車載用表示システム。
【請求項6】
前記複数の表示オブジェクト要素のうちの第1表示オブジェクト要素は、前記第1表示オブジェクト要素よりも前記第2視野像位置の側に配置された第2表示オブジェクト要素よりも時間的に先に消えることを特徴とする請求項5記載の車載用表示システム。
【請求項7】
前記表示オブジェクトの少なくとも一部が、前記第1視野像位置と前記第2視野像位置との間を移動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車載用表示システム。
【請求項8】
前記表示オブジェクトの少なくとも一部は、前記進路前方の道の位置に対応する前記視野像内の位置に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の車載用表示システム。
【請求項9】
前記先行車両情報取得部は、前記進路前方に前記先行車両が存在するという情報及び存在しないという情報を取得し、
前記表示オブジェクトは、前記進路前方に前記先行車両が存在するときと存在しないときとで異なることを特徴とする請求項1〜8記載の車載用表示システム。
【請求項10】
自車両の進路前方に関する前方情報を取得し、
前記進路前方に存在する先行車両に関する先行車両情報を取得し、
前記自車両に搭乗する観視者の片目の位置を推定し、
前記前方情報と前記片目の位置とに基づいて、前記観視者が前記自車両の前記進路前方を観視したときの視野像を推定し、
前記先行車両の位置よりも前記自車両の側の第1位置に対応する前記視野像内における第1視野像位置から、前記先行車両の位置の前記第1位置とは反対の側であって前記自車両が進路を変更すると推定される第2位置に対応する前記視野像内における第2視野像位置に到り、奥行き情報を有する前記表示オブジェクトを生成し、
前記表示オブジェクトを有する映像を含む光束を生成し、
前記光束を前記片目の位置に基づいて前記観視者の前記片目に向けて投影することを特徴とする表示方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の車載用表示システムと、
前記車載用表示システムから出射される前記光束を前記観視者に向けて反射させるフロントガラスと、
を備えたことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−221830(P2010−221830A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70893(P2009−70893)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】