説明

車載用表示装置、その制御方法及び制御プログラム

【課題】車両の進行方向前方の撮影画像を、車両の走行状況に応じて経路案内の表示された表示装置に表示させることにより、ユーザの操作なしで所望のタイミング又は場面に前方の画像を表示させる。
【解決手段】走行状況検出部52は、車両の速度、車両が走行中の道路種別、車両が走行中の道路の交通情報を検出する。走行状況判定部53は、上記各走行状況と、設定状況制御部54によって記憶装置9から読み出される予め設定された所定の状況とが一致するか否かを判定する。画像表示部55は、走行状況判定部53が走行状況と所定の状況とが「一致する」と判断した場合に、撮影部12から得られる車両進行方向前方のリアルタイム画像を表示部10に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に組み込まれる車載用表示装置に関し、特に、車両の進行方向前方の画像を表示する車載用表示装置、その制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理技術の発達にともない、車両などの移動体のためのナビゲーション装置が普及した。ナビゲーション装置は、予め用意された地図データを利用し、GPSなどで測位する自車の位置や向きなどを周辺地図上に表示したり、指定される目的地への経路を計算し表示装置への表示や合成音声などで案内するものである。
【0003】
このようなナビゲーション装置における車載用表示装置では、車両前方の映像を備え付けのカメラで撮影し、リアルタイムでこれを画面上に表示し、ナビゲーション装置等を操作している場合であっても、前方の情報を得ることのできるものが提案されている。
【特許文献1】特開平10−47978
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の車載用表示装置において、画面上に前方の画像が表示されるのは、運転者を含むユーザからのリモコン等による操作に基づくものであって、ユーザが所定の操作を行わなければ画像は表示されなかった。また、画面表示の契機が、ユーザの操作であるということは、このユーザが運転者であれば、進行方向前方から目を離して操作部を注視しなければ、画面表示がなされなかった。
【0005】
しかしながら、運転者が走行中に経路案内の表示された表示装置に目を移したり、ナビゲーション装置の操作を行うような状況は、一般的には、カーブが続く道路や交差点が入り組んだ市街地や繁華街などよりも、直線道路をある程度のスピード以上で走行している間など、走行状況が比較的単調で運転者に余裕がある場合が想定される。
【0006】
また、走行に集中しており、他の操作はなるべく簡便に済ませたいという運転者の心理状況を慮れば、画面表示に操作を条件付けたとしても、結局は表示のための操作をすることなく表示装置に目を移してしまうことが考えられる。
【0007】
そのため、ユーザの操作を必要とせずに、ユーザが経路案内のされた表示装置へ目を移すタイミング又は場面を想定し、表示装置に自動的に前方の撮影画像を映し出す技術が潜在的に望まれていた。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、車両の進行方向前方の撮影画像を、車両の走行状況に応じて経路案内の表示された表示装置に表示させることにより、ユーザの操作なしで所望のタイミング又は場面に前方の画像を表示させることのできる車載用表示装置、その制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、画像を含む情報を表示する表示部と、車両の進行方向前方を撮影する撮影部と、前記表示部に対する前記情報の表示を制御する制御部と、を備えた車載用表示装置において、前記制御部は、センサ群から得る航法データから車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、前記走行状況が所定の状況と一致するか否かを判定する走行状況判定手段と、前記走行状況判定手段により、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定された場合に、前記表示部の少なくとも一部に前記撮影部により撮影した画像を表示する画像表示手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項1の発明は、請求項6又は請求項11に記載の通り、制御部、表示部、撮影部といったハードウェア資源を用いて具体的に実現される車載用表示装置の制御方法又は制御プログラムとしても捉えることも可能である。
【0011】
以上のような態様では、車両のスピードや道路の種類、交通状況など車両の走行状況を検出し、予め設定された状況と検出した走行状況が合致する場合に、表示部に自動的に車両前方の画像を表示することができる。したがって、ユーザが走行中に経路案内の表示された表示部に目を移す状況を想定して、所定の走行状況をその想定する状況に設定することによって、ユーザが操作をすることなく、表示部に自動的に前方の撮影画像を映し出すことができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、前記所定の状況は、予め設定した車両の所定の速度を含み、前記走行状況判定手段は、前記車両の速度が前記所定の速度と一致した場合に、前記走行状況が前記所定の状況と一致したと判定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項7又は請求項12に記載の通り、制御部、表示部、撮影部といったハードウェア資源を用いて具体的に実現される車載用表示部の制御方法又は制御プログラムとしても捉えることも可能である。
【0014】
以上のような態様では、所定の状況を、例えば時速60km以上の状況など、速度を目安に設定することによって、直線道路をある程度のスピード以上で走行している状況に設定することができる。これにより、ユーザの操作を必要としなくても、ユーザが経路案内のされた表示部へ目を移すタイミング又は場面に合わせて、車両前方の画像を表示部に表示することができるようになる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記制御部は、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算手段を備え、前記所定の状況は、予め設定した所定の道路種別を含み、前記走行状況検出手段は、計算した前記現在位置が外部又は内部から提供される道路地図データのいずれの道路リンクに位置するかを検出し、前記走行状況判定手段は、検出した前記道路リンクが前記所定の道路種別と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定することを特徴とする。
【0016】
また、請求項3の発明は、請求項8又は請求項13に記載の通り、制御部、表示部、撮影部といったハードウェア資源を用いて具体的に実現される車載用表示装置の制御方法又は制御プログラムとしても捉えることも可能である。
【0017】
以上のような態様では、所定の状況を、例えば高速道路あるいは国道など、道路の種別で設定することにより、ユーザの操作なしで、ユーザが走行中に表示部に目を移したり、ナビゲーション装置の操作を行うような状況に合わせて、車両前方の画像を表示部に表示することができるようになる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、FM多重放送や道路上の発信機から渋滞や交通規制を含む道路交通情報を受信する受信機を備え、前記制御部は、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算手段を備え、前記所定の状況は、予め設定した所定の道路交通情報を含み、前記走行状況検出手段は、計算した前記現在位置に対応する道路に関する前記道路交通情報を前記受信機における受信データから取得し、前記走行状況判定手段は、受信した前記道路交通情報が、前記所定の道路交通情報と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定することを特徴とする。
【0019】
また、請求項4の発明は、請求項9又は請求項14に記載の通り、制御部、表示部、撮影部、受信機といったハードウェア資源を用いて具体的に実現される車載用表示装置の制御方法又は制御プログラムとしても捉えることも可能である。
【0020】
以上のような態様では、例えば、渋滞区間で車両が停止あるいはごく低速で進行しているような場合には、ユーザは、渋滞区間の長さや時間を確認したり、目的地までに残りの距離を確かめたりと表示装置に目を移すことが想定される。そこで、所定の状況を、車両が渋滞区間に位置する場合など道路交通情報を基準に設定し、いわゆるVICS情報などの道路交通情報を受信して、この情報と所定の状況とが一致する場合に表示部に車両前方の画像を表示することによって、ユーザの操作なしで、ユーザが走行中に表示部に目を移したり、ナビゲーション装置の操作を行うような状況に合わせて、画像表示を行うことができるようになる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、ユーザからの入力操作を受け付ける操作部を備え、前記制御部は、前記操作部におけるユーザの入力により、前記所定の状況の設定を受け付ける設定受付手段を備えることを特徴とする。
【0022】
また、請求項5の発明は、請求項11又は請求項15に記載の通り、制御部、表示部、撮影部、受信機、操作部といったハードウェア資源を用いて具体的に実現される車載用表示装置の制御方法又は制御プログラムとしても捉えることも可能である。
【0023】
以上のような態様では、上記のような走行速度、走行道路種別、道路交通状況からなる所定の状況をユーザによる入力操作によって、任意に設定可能とすることによって、各ユーザの走行状況に応じたきめ細かな設定を実現することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、車両の進行方向前方の撮影画像を、車両の走行状況に応じて経路案内の表示された表示装置に表示させることにより、ユーザの操作なしで所望のタイミング又は場面に前方の画像を表示させることのできる車載用表示装置、その制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、背景技術や課題での説明と共通の前提事項は繰り返さない。
【0026】
〔1.構成〕
本実施形態は、目的地への経路を案内するナビゲーション装置に組み込まれた車載用表示装置(以下「本装置」と呼ぶ)を説明するもので、その制御方法、制御プログラムとしても把握可能であり、本装置の構成を図1に示す。
【0027】
すなわち、1は、VICS情報を取得する為のFM多重受信及び処理部、2は、VICS情報を取得する為のビーコン受信及び処理部、3は、TV(各種のテレビジョン放送)を受信する為のTV受信及び処理部である。4は、測位技術(例えば、GPSレシーバ、ジャイロ、地磁気センサ、加速度センサ、車速パルス)により、現在位置、方位、速度など自車の挙動に関する航法情報を得る測位部である。
【0028】
5は、システム全体の制御を司るメインCPU及びその周辺回路であり、本装置各部の制御を含む情報処理を行う制御部である。6は、メインプログラムをロードする為のダイナミックRAM(DRAM)、7は、メイン電源オフの間も設定などメモリ内容を保持するためのバッテリーバックアップ付スタティックRAM(SRAM)、8は、起動時等に制御部5よりアクセスされるROMである。
【0029】
9は、記憶装置であり、HDD、DVD−ROM、CD−ROMなどのドライブを用いて、道路地図データ(典型的には、経路探索用データや地図表示用データ)・その他の検索データや地図関連データなどを記録する地図データ記憶手段である。また、本実施形態では、予め設定される走行状況のデータを格納する手段でもある。
【0030】
10は、地図などの情報を表示する表示部で、液晶表示パネルなどの表示画面を持つ。11は、表示部7用に設けられたビデオRAM(VRAM)である。
【0031】
12は、撮影部であり、車両の進行方向前方をリアルタイムで撮影するCCDカメラ等の撮影手段である。13は、情報や操作の入力を受け付ける入力部で、タッチキーなどからの入力を検出する制御装置であるが、入力部の構成や種類は自由で、表示部10周囲の操作スイッチ類のほか、リモコンユニット、表示パネルと一体のタッチセンサなどを単独、又は自由に組み合わせて用いればよい。
【0032】
〔1−1.制御部の役割〕
制御部5は、上記のようなプログラムの作用によって、図1に示す下記の各部分としての役割を実現するように構成されている。まず、ナビゲーション処理部50は、従来と同様のナビゲーション処理、例えば、目的地の指定受付、自車位置の管理、経路探索、誘導案内出力などを実行する部分であり、本実施形態において現在位置計算手段については、現在位置計算部51として規定しているが、実行する処理は従来と同様、自車位置を逐次計算するための手段である。より具体的には、GPS航法測位と自律航法測位とを組み合わせることで自車位置を計算するように構成される。なお、他の要素については、本発明特有の要素でないため、説明を省略する。
【0033】
走行状況検出部52は、測位部4から提供される航法データ、現在位置計算部51によって計算される現在位置情報、さらには記憶装置9から得られる地図データとから、車両の走行状況を検出する手段である。より具体的な走行状況としては、測位部4の各センサから得られる「速度設定」、車両の走行している道路リンクを現在位置情報と地図データとをマッチングさせることによって得られる車両が走行中の「道路設定」、現在位置情報およびVICS情報を参照して得られる走行中の道路の「交通情報設定」等である。
【0034】
走行状況判定部53は、走行状況検出部52から得られる上記各走行状況と、後述する設定状況制御部54によって記憶装置9から読み出される予め設定された所定の状況とが一致するか否かを判定する手段である。より具体的には、所定の状況が「速度設定」に関するものであって、設定が「時速40km以上」となっていた場合、走行状況検出部52から得られる走行速度が時速40kmを超えた場合には、走行状況判定部53は走行状況と所定の状況とが「一致する」と判断する。また、所定の走行状況が「道路設定」に関するものであって、設定が「国道」となっていた場合には、走行状況検出部52から得られる実際に車両が走行している道路が国道となった場合に、走行状況と所定の状況とが「一致する」と判断する。さらに、所定の走行状況が「交通情報設定」に関するものであって、設定が「渋滞区間」となっていた場合には、走行状況検出部52から得られる実際に車両が走行している道路がVICS情報による渋滞区間となった場合に、走行状況と所定の状況とが「一致する」と判断する。
【0035】
なお、この所定の状況は、複数を一度に設定可能である。この場合、例えば「速度設定」と「道路設定」の2つの状況を一度に設定すれば、走行状況判定部53は、実際の走行状態がこの2つの状況の設定と一致するか否かを判定することとなる。
【0036】
設定状況制御部54は、予め設定され、記憶装置9に記憶された「所定の状況」を読み出し、また、入力部13からのユーザの操作により、「所定の状況」の設定を受付け、新たに記憶装置9に保存したり、すでに記憶された「所定の状況」を書き換える手段である。
【0037】
画像表示部55は、走行状況判定部53が走行状況と所定の状況とが「一致する」と判断した場合に、撮影部12から得られる車両進行方向前方のリアルタイムの画像を表示部10に表示する手段である。なお、この表示の方法としては、表示部10の表示画面に対して全画面表示するのではなく、例えば、画面の右下や左右いずれか半分に表示するなど、ナビゲーション処理部50が実行する経路案内との兼ね合いやユーザが画像を認識できる程度の大きさで適宜表示する。なお、画像を表示する画面の領域については、公知の画像表示手段を用いた様々な態様が利用可能である。
【0038】
〔2.作用効果〕
以上のような本実施形態による処理の詳細を説明する。
本実施形態の車載用表示装置では、図2及び図3の画面例に示すように、まず設定状況制御部54が所定の状況の設定、すなわち、画面上のメニュー表示で「前方カメラ表示モード」の設定を受け付ける。
【0039】
より具体的には、図2は、「道路設定」に関して「前方カメラ表示モード」において設定する画面であり、図に示す状態は、ユーザが表示部10周囲の操作スイッチ類、リモコン、タッチセンサ等からなる入力部13から、道路種別として、太枠線で示す「高速道路」と「国道」とを選択した状態である。設定状況制御部54は、この選択に従い、設定された所定の状況を記憶装置9へ保存する。なお、この画面上では、設定する所定の状況として、複数の種別が選択されているが、一つのみを選択することも可能であるし、3つあるいは「全ての道路」として、全条件を含むような選択を行うことも可能である。
【0040】
図3は、車両の「速度設定」に関して「前方カメラ表示モード」において設定する画面であり、図に示す状態は、ユーザが上記の入力部13から、車両の速度として太枠線で示す「60km/h以上」を選択した状態である。設定状況制御部54は、この選択に従い、設定された所定の状況を記憶装置9へ保存する。
【0041】
図4は、VICS情報などの道路交通情報を設定する「交通情報設定」に関して「前方カメラ表示モード」において設定する画面であり、図に示す状態は、ユーザが上記の入力部13から、道路交通情報として太枠線で示す「渋滞区間」を選択した状態である。設定状況制御部54は、この選択に従い、設定された所定の状況を記憶装置9へ保存する。
【0042】
なお、以上のような「前方カメラ表示モード」での設定は、例えば、メニュー画面等から「前方確認カメラ道路選択」、「前方カメラ速度選択」あるいは「前方カメラVICS情報選択」といったメニューを選択・実行することにより行うことができる。また、各所定の状況の設定モードである「速度設定」、「道路設定」又は「交通情報設定」のうち、いずれか一つのみを選択して設定することも可能であるし、2つあるいは3つすべてを選択して設定することも可能である。
【0043】
ただし、本実施形態において、設定モード内における複数の設定(例えば「高速道路」と「国道」など。)は、「OR」条件であるが、設定モード間の指定条件(例えば「高速道路」と「渋滞区間」など。)は「AND」条件となるため、2つあるいは3つのモードが同時に選択された場合には、設定モード間の条件を2つ乃至3つを充足しない場合には、画像表示されないようになっている。
【0044】
また、この設定は、次回設定変更がなされるまで保持するようにしても良いし、表示装置が起動される度あるいはナビゲーション装置において新たな目的地が設定される度ごとに初期化され、新たに設定を求めるようにしてもよい。
【0045】
次に、以上のような「前方カメラ表示モード」の設定に基づく実際の画面表示処理について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の処理では、図2及び図3に示したように、上記「前方カメラ表示モード」の設定における「道路設定」において「高速道路」と「国道」とが選択され、「速度設定」において「60km/h以上」が選択された状態について説明する。
【0046】
まず、ナビゲーション処理部50の処理により、目的地の指定受付、自車位置の管理、経路探索がなされ、誘導案内が開始するのに伴って、本処理が開始する(START)。
【0047】
次に、設定状況制御部54は、「前方カメラ表示モード」における「前方確認カメラ道路選択」、「前方カメラ速度選択」あるいは「前方カメラ交通情報選択」のうちいずれかが設定されているか否かを確認する(S501)。そして、図2又は図3に示した各設定画面で、いずれの条件も設定されていない場合には(NO)、本処理を終了する(END)。なお、この場合、本装置を組み込んだナビゲーション装置としては、ナビゲーション処理部50による通常のナビゲーション処理が実行される。
【0048】
一方、いずれか一つでも設定されている場合には(YES)、まず走行状況判定部53が、「道路設定」と、走行状況検出部52によって検出される実際の走行状況における「走行道路」とが一致するか否かを判定する(S502)。具体的には、走行状況検出部52が、現在位置計算部51から得られる現在位置情報と記憶装置9から読み出される地図データとをマッチングさせ道路種別を検出すると、これを走行状況判定部53が、選択された「高速道路」又は「国道」のいずれかに当たるか否か判定する。
【0049】
そして、検出される道路種別が設定外の、例えば「県道」の場合には(NO)、本装置は、ナビゲーション処理部50によって提供されるナビゲーション画面のみを表示する(S506)。一方、検出される道路種別が「国道」の場合には(YES)、「速度設定」の判定処理に進む(S503)。
【0050】
このS503では、走行状況判定部53がまず「速度設定」と、走行状況検出部52によって検出される実際の走行状況における「車両の速度」とが一致するか否か判定する。具体的には、走行状況検出部52が、測位部4から得られる「車両の速度」を検出すると、これを走行状況判定部53が、選択された「60km/h以上」に当たるか否か判定し、検出される車両の速度が、例えば「40km/h」の場合には(NO)、本装置は、ナビゲーション処理部50によって提供されるナビゲーション画面のみを表示する(S506)。
【0051】
一方、検出される車両の速度が「80km/h」の場合には(YES)、画像表示部55が撮影部12において撮影される車両進行方向前方のリアルタイムの映像を表示部10の表示画面に表示させる(S504)。具体的には、図6の画面例に示すように、表示画面の右半分に表示する。なお、左半分は通常の経路案内が表示される。
【0052】
画像表示後、走行状況判定部53は、車両の走行状況が設定された条件、すなわち「道路設定」における「高速道路」及び「国道」の条件と、「速度設定」における「60km/h以上」の条件から外れたか否かを検出し(S505)、条件から外れていなければ(NO)、S504に戻って車両前方の画像を継続して表示する。一方、走行状況が上記条件から外れていれば(YES)、本装置は、ナビゲーション処理部50によって提供されるナビゲーション画面のみを表示する(S506)。
【0053】
そして、車両の走行状況が条件から外れた場合であっても、目的地までの経路において、車両が再度設定条件と合致する状況に入ることもあるため、目的地に到着するまでは、S502〜S506の処理を繰り返す(S507)。
【0054】
以上のような本実施形態によれば、走行状況検出部52において車両のスピードや道路の種類、交通状況など車両の走行状況を検出し、走行状況判定部53において予め設定された状況と検出した走行状況が合致すると判定される場合に、画像表示部55によって表示部10に自動的に車両前方の画像を表示することができる。したがって、ユーザが走行中に経路案内の表示された表示部10の表示画面に目を移す状況を想定して、所定の走行状況をその想定する状況に設定することによって、ユーザの操作が必要なく自動的に表示部10に対して前方の撮影画像を映し出すことができる。
【0055】
また、設定状況制御部54の処理により、所定の状況を、例えば時速60km以上の状況など、速度を目安に設定することによって、直線道路をある程度のスピード以上で走行している状況に設定することができる。
【0056】
さらに、設定状況制御部54の処理により、所定の状況を、例えば高速道路あるいは国道など、道路の種別で設定することにより、ユーザの操作なしで、ユーザが走行中に表示部に目を移したり、ナビゲーション装置の操作を行うような状況に合わせて、車両前方の画像を表示部10に表示することができるようになる。
【0057】
また、例えば、渋滞区間で車両が停止あるいはごく低速で進行しているような場合には、ユーザは、渋滞区間の長さや時間を確認したり、目的地までに残りの距離を確かめたりと表示装置に目を移すことが想定される。そこで、設定状況制御部54の処理により、所定の状況を、車両が渋滞区間に位置する場合など道路交通情報を基準に設定し、VICS情報などの道路交通情報を受信して、この情報と所定の状況とが一致する場合に表示部10に車両前方の画像を表示することによって、ユーザの操作なしで、ユーザが走行中に表示部に目を移したり、ナビゲーション装置の操作を行うような状況に合わせて、画像表示を行うことができるようになる。
【0058】
また、設定状況制御部54が、ユーザによる「所定の状況」の設定を入力部13から受け付けることによって、走行速度、走行道路種別、道路交通状況を各ユーザの目的、希望又は状況に応じて、きめ細かく設定することが可能となる。
【0059】
〔3.他の実施形態〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するもの及びそれ以外の他の実施形態も含むものである。例えば、上記実施形態では、設定モード間の指定条件(例えば「高速道路」と「渋滞区間」など。)は「AND」条件となるため、2つあるいは3つのモードが同時に選択された場合には、設定モード間の条件を2つ乃至3つを充足しない場合には画像表示されないように構成しているが、本発明では、このような構成に限られず、図7に示すように、「OR」条件として、いずれかの設定モードのいずれかの条件を充足する場合に、画像表示を行うように構成することも可能である。
【0060】
より具体的には、図6に示すように、上記実施形態同様、設定状況制御部54は、「前方カメラ表示モード」における設定画面(図2〜図4)のうちいずれかが設定されているか否かを確認した後(S701)、走行状況判定部53が「道路設定」と、走行状況検出部52によって検出される実際の走行状況における「走行道路」とが一致するか否か(S702)、「速度設定」と、走行状況検出部52によって検出される実際の走行状況における「速度」とが一致するか否か(S703)、「交通情報設定」と、走行状況検出部52によって検出される実際の走行状況における「交通情報」とが一致するか否か(S704)、をそれぞれ判定し、いずれか一つでも充足する場合には(各YES)、画像表示部55が車両前方の画像を表示部10の表示画面に表示するものである(S705)。
【0061】
なお、S706〜S708の処理は、上記実施形態のS505〜S507と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
以上のような他の実施形態においても、予め設定された状況と検出した走行状況が合致する場合に、表示部に自動的に車両前方の画像を表示することができるという、本発明の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態における速度設定の画面表示例を示す概念図。
【図3】本発明の実施形態における道路設定の画面表示例を示す概念図。
【図4】本発明の実施形態における交通情報設定の画面表示例を示す概念図。
【図5】本発明の実施形態における処理手順を例示するフローチャート。
【図6】本発明の実施形態における画面表示例を示す概念図。
【図7】本発明の他の実施形態における処理手順を例示するフローチャート。
【符号の説明】
【0064】
1…FM多重受信及び処理部
2…ビーコン受信及び処理部
3…TV受信及び処理部
4…測位部
5…制御部(メインCPU及びその周辺回路)
50…ナビゲーション処理部
51…現在位置計算部
52…走行状況検出部
53…走行状況判定部
54…設定状況制御部
55…画像表示部
6…ダイナミックRAM(DRAM)
7…スタティックRAM(SRAM)
8…ROM
9…地図データ及び状況データの記憶装置
10…表示部
11…ビデオRAM(VRAM)
12…撮影部
13…入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を含む情報を表示する表示部と、車両の進行方向前方を撮影する撮影部と、前記表示部に対する前記情報の表示を制御する制御部と、を備えた車載用表示装置において、
前記制御部は、
センサ群から得る航法データから車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、
前記走行状況が所定の状況と一致するか否かを判定する走行状況判定手段と、
前記走行状況判定手段により、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定された場合に、前記表示部の少なくとも一部に前記撮影部により撮影した画像を表示する画像表示手段と、を備えることを特徴とする車載用表示装置。
【請求項2】
前記所定の状況は、予め設定した車両の所定の速度を含み、
前記走行状況判定手段は、前記車両の速度が前記所定の速度と一致した場合に、前記走行状況が前記所定の状況と一致したと判定することを特徴とする請求項1に記載の車載用表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算手段を備え、
前記所定の状況は、予め設定した所定の道路種別を含み、
前記走行状況検出手段は、計算した前記現在位置が外部又は内部から提供される道路地図データのいずれの道路リンクに位置するかを検出し、
前記走行状況判定手段は、検出した前記道路リンクが前記所定の道路種別と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定すること、を特徴とする請求項1又は2記載の車載用表示装置。
【請求項4】
FM多重放送や道路上の発信機から渋滞や交通規制を含む道路交通情報を受信する受信機を備え、
前記制御部は、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算手段を備え、
前記所定の状況は、予め設定した所定の道路交通情報を含み、
前記走行状況検出手段は、計算した前記現在位置に対応する道路に関する前記道路交通情報を前記受信機における受信データから取得し、
前記走行状況判定手段は、受信した前記道路交通情報が、前記所定の道路交通情報と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定すること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車載用表示装置。
【請求項5】
ユーザからの入力操作を受け付ける操作部を備え、
前記制御部は、前記操作部におけるユーザの入力により、前記所定の状況の設定を受け付ける設定受付手段を備えること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車載用表示装置。
【請求項6】
画像を含む情報を表示する表示部と、車両の進行方向前方を撮影する撮影部と、前記表示部に対する前記情報の表示を制御する制御部と、を備えた車載用表示装置の制御方法において、
前記制御部が、
センサ群から得る航法データから車両の走行状況を検出する走行状況検出処理と、
前記走行状況が所定の状況と一致するか否かを判定する走行状況判定処理と、
前記走行状況判定処理により、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定された場合に、前記表示部の少なくとも一部に前記撮影部により撮影した画像を表示する画像表示処理と、を実行することを特徴とする車載用表示装置の制御方法。
【請求項7】
前記所定の状況は、予め設定した車両の所定の速度を含み、
前記走行状況判定処理は、前記車両の速度が前記所定の速度と一致した場合に、前記走行状況が前記所定の状況と一致したと判定することを特徴とする請求項6に記載の車載用表示装置の制御方法。
【請求項8】
前記制御部による処理には、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算処理を含み、
前記所定の状況は、予め設定した所定の道路種別を含み、
前記走行状況検出処理は、計算した前記現在位置が外部又は内部から提供される道路地図データのいずれの道路リンクに位置するかを検出し、
前記走行状況判定処理は、検出した前記道路リンクが前記所定の道路種別と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定することを特徴とする請求項6又は7に記載の車載用表示装置の制御方法。
【請求項9】
前記車載用表示装置に備えられたFM多重放送や道路上の発信機から渋滞や交通規制を含む道路交通情報を受信する受信機を用いて、
前記制御部による処理には、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算処理を含み、
前記所定の状況は、予め設定した所定の道路交通情報を含み、
前記走行状況検出処理は、計算した前記現在位置に対応する道路に関する前記道路交通情報を前記受信機における受信データから取得し、
前記走行状況判定処理は、受信した前記道路交通情報が、前記所定の道路交通情報と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の車載用表示装置の制御方法。
【請求項10】
前記車載用表示装置に備えられたユーザからの入力操作を受け付ける操作部を用いて、
前記制御部が、前記操作部におけるユーザの入力により、前記所定の状況の設定を受け付ける設定受付処理を実行することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の車載用表示装置の制御方法。
【請求項11】
画像を含む情報を表示する表示部と、車両の進行方向前方を撮影する撮影部と、前記表示部に対する前記情報の表示を制御する制御部と、を備えた車載用表示装置の制御プログラムにおいて、
前記プログラムは、前記制御部に、
センサ群から得る航法データから車両の走行状況を検出する走行状況検出処理と、
前記走行状況が所定の状況と一致するか否かを判定する走行状況判定処理と、
前記走行状況判定処理により、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定された場合に、前記表示部の少なくとも一部に前記撮影部により撮影した画像を表示する画像表示処理とを、実行させることを特徴とする車載用表示装置の制御プログラム。
【請求項12】
前記所定の状況は、予め設定した車両の所定の速度を含み、
前記走行状況判定処理は、前記車両の速度が前記所定の速度と一致した場合に、前記走行状況が前記所定の状況と一致したと判定するものであることを特徴とする請求項11に記載の車載用表示装置の制御プログラム。
【請求項13】
前記制御部に実行させる処理には、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算処理を含み、
前記所定の状況は、予め設定した所定の道路種別を含み、
前記走行状況検出処理は、計算した前記現在位置が外部又は内部から提供される道路地図データのいずれの道路リンクに位置するかを検出するものであり、
前記走行状況判定処理は、検出した前記道路リンクが前記所定の道路種別と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定するものであること、を特徴とする請求項11又は12記載の車載用表示装置の制御プログラム。
【請求項14】
前記車載用表示装置に備えられたFM多重放送や道路上の発信機から渋滞や交通規制を含む道路交通情報を受信する受信機を用いて、
前記制御部による処理には、センサ群から得る航法データから現在位置を計算する現在位置計算処理を含み、
前記所定の状況は、予め設定した所定の道路交通情報を含み、
前記走行状況検出処理は、計算した前記現在位置に対応する道路に関する前記道路交通情報を前記受信機における受信データから取得するものであり、
前記走行状況判定処理は、受信した前記道路交通情報が、前記所定の道路交通情報と一致する場合には、前記走行状況が前記所定の状況と一致すると判定するものであること、を特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の車載用表示装置の制御プログラム。
【請求項15】
前記車載用表示装置に備えられたユーザからの入力操作を受け付ける操作部を用いて、
前記操作部におけるユーザの入力により、前記所定の状況の設定を受け付ける設定受付処理を、前記制御部に実行させることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の車載用表示装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101212(P2007−101212A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287737(P2005−287737)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】