説明

透明膜の屈折率測定方法およびその装置並びに透明膜の膜厚測定方法およびその装置

【課題】測定対象物の表面を覆う透明膜の段差部分の屈折率と当該屈折率の影響を除去した物理膜厚とを干渉計を利用して精度よく、かつ高速に求める。
【解決手段】測定対象物と参照面とに所定周波数帯域の白色光を照射しながら両照射距離を相対的に変動させて干渉を生じさせ、CCDカメラで測定対象物の表面画像を取得する。この取得した画像の画素ごとに光強度値のピークとなる位置情報を求め、求まるピーク位置情報から透明膜の表面高さおよび透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求め、所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚の偏差を算出し、偏差の生じた領域の裏面が平坦であると仮定し、両領域の表面高さおよび光学膜厚の測定結果を利用して屈折率および物理膜厚を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明膜で覆われた半導体ウエハ、ガラス基板、金属基板などの測定対象物の屈折率を測定する方法およびその装置並びに透明膜の膜厚を測定する方法およびその装置に係り、特に、表面に段差を有する透明膜のその領域の屈折率および透明膜の屈折率の影響を除去した物理膜厚を求める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の方法および装置として、干渉計を利用し、予め測定対象物と同じ物質で物理膜厚が既知の試料の光学膜厚を測定し、屈折率=光学膜厚/物理膜厚により測定対象物であるフィルムの屈折率を求めている。
【0003】
また、他の方法として、表面の膜の1部を剥離し、そのときの表面段差(以下、適宜「物理膜厚」という)と、干渉縞波形ピークの間隔(位置情報)から得られる光学膜厚とから計算している(非特許文献参照)。
【0004】
【非特許文献1】Optical Profiler for surface Characterization and Film Thickness Measeurment 著者:Schmit, Unruh, Wan
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の各方法では次のような問題がある。
すなわち、従来の方法などは、測定対象物と同じ材質で物理膜厚が既知の試料を利用して予め屈折率を求めておく必要があり、測定作業が煩雑になっている。すなわち、測定対象物の屈折率を1回の測定で求めることができないといった問題がある。同様に、透明膜の屈折率が求まらなければ、屈折率の影響を除去した物理膜厚も同時に測定することができないといった問題もある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、干渉計を利用して表面に段差を有する透明膜の屈折率および当該屈折率の影響を除去した物理膜厚を効率、かつ、精度よく測定することのできる透明膜の屈折率測定方法およびその装置、並びに透明膜の膜厚測定方法およびその装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、第1の発明は、干渉計を利用し測定対象物の表面に形成された透明膜の屈折率測定方法であって、
白色光が照射される前記測定対象物の表面である測定面と参照面との距離を相対的に変動させながら、両面から反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせながら測定面の画像を所定間隔で連続して取得する過程と、
取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求める過程と、
求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求める過程と、
前記位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求める過程と、
所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較する過程と、
比較の結果、前記両膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両領域の表面高さおよび光学膜厚から屈折率を求める過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
(作用・効果) この方法によれば、白色光源を用いた干渉計を利用し、透明膜の表面および裏面の2箇所の干渉縞波形ピークの位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて、透明膜の表面および裏面高さに加えて光学膜厚が求められる。さらに、操作者が任意に決めた所定領域と、当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較し、両光学膜厚に偏差(以下、適宜「段差」という)が生じた場合、透明膜の裏面が平坦であると仮定するとともに、両領域の光学膜厚および表面高さを利用して、段差を形成する部分の未知パラメータであった透明膜の屈折率を求めることができる。すなわち、測定対象物と同一の試料を利用して予め光学膜厚などを測定しておく必要がなく、測定対象物の測定のみで透明膜に生じている段差部分の屈折率を短時間で測定することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の方法発明において、
前記屈折率は、前記両光学膜厚部分の表面高さの偏差をΔSとし、両光学膜厚の偏差をΔntとしたとき、Δnt/Δsにより求めることを特徴とする。
【0010】
(作用・効果) この方法発明によれば、Δnt/Δsのアルゴリズムを利用することにより、段差部分の透明膜の屈折率を容易に求めることができる。すなわち、第1の方法発明を好適に実施することができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の方法発明において、
前記所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の前記表面高さの偏差を補正し、屈折率を求めることを特徴とする。
【0012】
(作用・効果) この方法によれば、段差を形成する2領域の表面の傾斜を求め、当該傾斜を考慮して2領域が形成する段差の傾きを補正するので、測定精度の向上を図ることができる。
【0013】
第4の発明は、透明膜で覆われた測定対象物の表面である測定面と参照面とに照射する白色光を発生させる白色光源と、前記測定面と参照面との距離を変動させる変動手段と、前記白色光が照射された測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせるとともに前記測定面を撮像する撮像手段と、前記撮像された測定面上の複数箇所における干渉光の強度値を取り込むサンプリング手段と、前記サンプリング手段によって取り込まれた箇所ごとの複数個の強度値である各干渉光強度値群を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された各干渉光強度値群に基づいて特定箇所の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を求める演算手段とを備えた透明膜の屈折率測定装置であって、
前記白色光源から発生した白色光の周波数帯域を特定周波数帯域に制限する周波数帯域制限手段を備え、
前記サンプリング手段は、前記変動手段による前記測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって生じた干渉縞の変化に応じた箇所の干渉光の強度値を、前記特定周波数帯域の帯域幅に応じたサンプリング間隔で順次取込み、
前記記憶手段は、前記サンプリング間隔で取り込まれた複数個の強度値である干渉光強度値群を記憶し、
前記演算手段は、測定面の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を以下の処理にしたがって求める
(1)取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求め、
(2)求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求め、
(3)当該位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求め、
(4)所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較し、
(5)比較の結果、前記両光学膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両光学膜厚の表面高さおよび両光学膜厚から屈折率を求める、
ことを特徴とする。
【0014】
(作用・効果) この構成によれば、第1の方法発明を好適に実現することができる。
【0015】
第5の発明は、第4の装置発明において、
前記演算手段は、所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の表面高さの偏差を補正し、屈折率を求めることを特徴とする。
【0016】
(作用・効果) この構成によれば、第3の方法発明を好適に実現することができる。
【0017】
第6の発明は、干渉計を利用し測定対象物の表面に形成された透明膜の膜厚測定方法であって、
白色光が照射される前記測定対象物の表面である測定面と参照面との距離を相対的に変動させながら、両面から反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせながら測定面の画像を所定間隔で連続して取得する過程と、
取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求める過程と、
求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求める過程と、
前記位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求める過程と、
所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較する過程と、
比較の結果、前記両膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両領域の表面高さおよび光学膜厚から屈折率を求める過程と、
前記過程で求めた屈折率と当該屈折率を求めた領域の光学膜厚から屈折率の影響を除去した物理膜厚を求める過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
(作用・効果) この方法によれば、透明膜の段差を形成する2領域の表面高さと光学膜厚から屈折率を求めた後に、当該段差部分の光学膜厚から屈折率の影響を除去した物理膜厚を求めることができる。すなわち、測定対象物の測定のみで屈折率と物理膜厚を同時に測定することができる。
【0019】
第7の発明は、第6の方法発明において、
屈折率は、前記両光学膜厚部分の表面高さの偏差をΔSとし、両光学膜厚の偏差をΔntとしたとき、Δnt/Δsにより求めることを特徴とする。
【0020】
(作用・効果) この方法によれば、Δnt/Δsのアルゴリズムを利用することにより、段差部分の透明膜の屈折率を容易に求めることができる。
【0021】
第8の発明は、第6または第7の方法発明において、
前記所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の前記表面高さの偏差を補正し、屈折率を求め、
求めた前記屈折率と光学膜厚とに基づいて物理膜厚を求めることを特徴とする。
【0022】
(作用・効果) この方法によれば、段差部分の傾斜を補正した物理膜厚を精度よく求めることができる。
【0023】
第9の装置発明は、透明膜で覆われた測定対象物の表面である測定面と参照面とに照射する白色光を発生させる白色光源と、前記測定面と参照面との距離を変動させる変動手段と、前記白色光が照射された測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせるとともに前記測定面を撮像する撮像手段と、前記撮像された測定面上の複数箇所における干渉光の強度値を取り込むサンプリング手段と、前記サンプリング手段によって取り込まれた箇所ごとの複数個の強度値である各干渉光強度値群を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された各干渉光強度値群に基づいて特定箇所の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を求める演算手段とを備えた透明膜の膜厚測定装置であって、
前記白色光源から発生した白色光の周波数帯域を特定周波数帯域に制限する周波数帯域制限手段を備え、
前記サンプリング手段は、前記変動手段による前記測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって生じた干渉縞の変化に応じた箇所の干渉光の強度値を、前記特定周波数帯域の帯域幅に応じたサンプリング間隔で順次取込み、
前記記憶手段は、前記サンプリング間隔で取り込まれた複数個の強度値である干渉光強度値群を記憶し、
前記演算手段は、測定面の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を以下の処理にしたがって求める
(1)取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求め、
(2)求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求め、
(3)当該位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求め、
(4)所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較し、
(5)比較の結果、前記両光学膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両光学膜厚の表面高さおよび両光学膜厚から屈折率を求め、
(6)前記屈折率および当該屈折率を求めた領域の光学膜厚から屈折率の影響を除去した物理膜厚を求める
ことを特徴とする。
【0024】
(作用・効果) この構成によれば、上記第6の方法発明を好適に実現することができる。
【0025】
第10の発明は、第9の装置発明において、
前記演算手段は、所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の前記表面高さの偏差を補正し、屈折率を求め
求めた前記屈折率と光学膜厚とに基づいて物理膜厚を求めることを特徴とする。
【0026】
(作用・効果) この構成によれば、第8の方法発明を好適に実現できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る透明膜の屈折率測定方法およびその装置によると、干渉計を利用して表面に透明膜の形成された測定対象物のその表面を1回測定するだけで、表面に形成された透明膜の段差部分の屈折率を測定することができる。
【0028】
また、本発明に係る透明膜の膜厚測定方法およびその装置によると、干渉計を利用して表面に透明膜の形成された測定対象物のその表面を1回測定するだけで、表面に形成された透明膜の段差部分の屈折率と当該屈折率の影響を除去した物理膜厚を同時に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0030】
図1は、本発明の透明膜の屈折率および当該屈折率の影響を除去した物理膜厚を測定可能な表面形状測定装置の概略構成を示す図である。
【0031】
この表面形状測定装置は、半導体ウエハ、ガラス基板や金属基板などの測定対象物30の表面を覆った透明膜31および透明膜31の裏面側と接合している測定対象物30に形成された微細なパターンに、特定周波数帯域の白色光を照射する光学系ユニット1と、光学系ユニット1を制御する制御系ユニット2とを備えて構成されている。
【0032】
光学系ユニット1は、測定対象物30および参照面15(参照ミラー)に照射する白色光を発生させる白色光源10と、白色光源10から白色光を平行光にするコリメートレンズ11と、コリメートレンズ11からの白色光を測定対象物30の方向に反射する一方、測定対象物30の方向からの白色光を通過させるハーフミラー13と、ハーフミラー13で反射されてきた白色光を集光する対物レンズ14と、対物レンズ14を通過してきた白色光を、参照面15へ反射させる参照光と、透明膜31へ通過させる測定光とに分けるとともに、参照面15で反射してきた参照光と測定対象物30側から反射してきた測定光とを再びまとめて、干渉縞を発生させるビームスプリッタ17と、参照面15で参照光を反射させるために設けられたミラー16と、参照光と測定光とがまとめられた白色光を結像する結像レンズ18と、干渉縞とともに測定対象物30の表面を撮像するCCDカメラ19とを備えて構成されている。
【0033】
白色光源10は、例えば白色光ランプなどであり、比較的広い周波数帯域の白色光を発生させる。この白色光源10から発生された白色光は、コリメートレンズ11によって平行光とされ、ハーフミラー13に到達する。
【0034】
ハーフミラー13は、コリメータレンズ13からの平行光となった白色光を測定対象物30の方向に向けて反射する一方、測定対象物30の方向から戻ってきた白色光を通過させるものである。このハーフミラー13で反射された特定周波数帯域の白色光は、対物レンズ14に入射する。
【0035】
対物レンズ14は、入射してきた白色光を測定面に向けて集光するレンズである。この対物レンズ14によって集光される白色光は、参照面15を通過し、ビームスプリッタ17に到達する。
【0036】
ビームスプリッタ17は、対物レンズ14で集光される白色光を、参照面15で反射させるために、ビームスプリッタ17の例えば上面で反射させる参照光と、測定対象物30の表面30Aおよび透明膜31の表面31Aで反射させるために、ビームスプリッタ17を通過させる測定光とに分ける。また、参照光と測定光とを再びまとめることによって、干渉縞を発生させるものである。ビームスプリッタ17に達した白色光は、ビームスプリッタ17の上面で反射された参照光と、ビームスプリッタ17を通過する測定光とに分けられる。参照光は参照面15に達し、測定光は透明膜31と測定対象物31の両表面30A、31Aに達する。
【0037】
参照面15には、参照光をビームスプリッタ17の方向に反射させるためのミラー16が取り付けられており、このミラー16によって反射された参照光は、ビームスプリッタ17に達し、さらに、この参照光はビームスプリッタ17によって反射される。
【0038】
ビームスプリッタ17を通過した測定光は、測定面に向けて集光され、表面30A,31A上で反射する。この反射した2つの測定光は、ビームスプリッタ17に達して、そのビームスプリッタ17を通過する。
【0039】
ビームスプリッタ17は、参照光と測定光とを再びまとめる。このとき、参照面15とビームスプリッタ17との間の距離L1と、ビームスプリッタ17と測定対象面30A、31Aとの間の距離L2との、距離の違いによって光路差が生じる。この光路差に応じて、参照光と測定光とは干渉し合うことで、干渉縞が生じる。この干渉縞が生じた状態の白色光は、ハーフミラー13を通過し、結像レンズ18によって結像されて、CCDカメラ19に入射する。
【0040】
CCDカメラ19は、干渉縞が生じた状態の白色光とともに、測定光によって映し出される表面30A,31Aの焦点P、P’付近の画像を撮像する。この撮像した画像データは、制御系ユニット2によって収集される。また、後述で明らかになるが、本発明の変動手段に相当する制御系ユニット2の駆動部24によって、例えば光学系ユニット1が上下左右に変動される。特に、光学系ユニット1が上下方向に駆動されることによって、距離L1と距離L2との距離が変動される。これにより、距離L1と距離L2との距離の差に応じて、干渉縞が徐々に変化する。CCDカメラ19によって、後述する所定のサンプリング間隔ごとに、干渉縞の変化とともに表面30A、31Aの画像が撮像され、その画像データが制御系ユニット2によって収集される。CCDカメラ19は、本発明における撮像手段に相当する。
【0041】
制御系ユニット2は、表面形状測定装置の全体を統括的に制御や、所定の演算処理を行うためのCPU20と、CPU20によって逐次収集された画像データやCPU20での演算結果などの各種のデータを記憶するメモリ21と、サンプリング間隔やその他の設定情報を入力するマウスやキーボードなどの入力部22と、測定面30Aの画像などを表示するモニタ23と、CPU20の指示に応じて光学系ユニット1を上下左右に駆動する例えば3軸駆動型のサーボモータなどの駆動機構で構成される駆動部24とを備えるコンピュータシステムで構成されている。なお、CPU20は、本発明におけるサンプリング手段および演算手段に、メモリ21は本発明における記憶手段に、駆動部25は本発明における変動手段にそれぞれ相当する。
【0042】
CPU20は、いわゆる中央処理装置であって、CCDカメラ19、メモリ21および駆動部24を制御するとともに、CCDカメラ19で撮像した干渉縞を含む表面31Aの画像データに基づいて、測定対象物30の特定箇所の透明膜31の表面高さ、測定対象物30の表面高さ、透明膜31の屈折率の影響を含む光学膜厚D、透明膜の屈折率、当該屈折率の影響を除去して物理膜厚などを求める種々の演算処理を行う。この処理については後で詳細に説明する。
【0043】
さらに、CPU20には、モニタ23と、キーボードやマウスなどの入力部22とが接続されており、操作者は、モニタ23に表示される操作画面を観察しながら、入力部22から各種の設定情報の入力を行う。また、モニタ23には、表面30Aの測定終了後に、表面30A、31Aの表面高さ、透明膜31の膜厚、および測定対象面の凹凸形状などを数値や画像として表示される。
【0044】
駆動部24は、光学系ユニット1内の参照面15とビームスプリッタ17との間の固定された距離L1と、ビームスプリッタ17と測定対象面31Aとの間の可変の距離L2との距離の差を変化させるために、光学系ユニット1を直交3軸方向に変動させる装置であり、CPU20からの指示によって光学系ユニット1をX,Y,Z軸方向に駆動する例えば3軸駆動型のサーボモータを備える駆動機構で構成されている。なお、駆動部24は、本発明における変動手段に相当し、本発明における相対的距離とは、参照面15から測定対象面31Aまでの距離すなわち距離L1および距離L2を示す。本実施例では、光学系ユニット1を動作させるが、例えば測定対象物30が載置される図示していないテーブルを直交3軸方向に変動させるようにしてもよい。
【0045】
以下、本実施例の表面形状測定装置全体で行なわれる処理を図2のフローチャートを参照しながら具体的に説明する。なお、本実施例では、Si基板である測定対象物30の表面30Aに透明膜31として酸化膜(SiO2)を形成したものを用いたものとする。
【0046】
<ステップS1> 条件設定
光学系ユニットを図1に示すz軸方向に移動させるための走査速度や走査レンジなどの種々の条件を設定する。本実施例の場合、例えば、走査速度、図3〜図7に示す標本点間隔、走査レンジ、およびCCD19で取得する画像枚数などを設定する。
【0047】
<ステップS2> 測定データ取得
光学系ユニット1は、白色光源10から発生される白色光を測定対象物30および参照面15に向けて照射する。
【0048】
また、CPU20は、予め所定の測定場所に移動された光学系ユニット1をz軸方向に移動を開始させるための変動開始の指示を駆動部24に与える。駆動部24は、図示しないステッピングモータなどの駆動系を駆動して、光学系ユニット1をz軸方向に予め決められた距離だけ移動させる。これにより、参照面15と測定対象物側の両表面30A、31Aとの距離が変動される。
【0049】
CPU20は、光学系ユニット1がサンプリング間隔だけ移動するたびに、CCD19で撮像される干渉縞を含む測定対象物30の表面30Aおよび透明膜31の表面31Aの両方を含む測定面の画像データを収集してメモリ21に順次記憶する。光学系ユニット1が予め決められた距離だけ移動することで、メモリ21には光学系ユニット1の移動距離およびサンプリング間隔によって決まる複数枚の画像データが記憶される。
【0050】
<ステップS3> 特定箇所の干渉光強度値群を取得
例えば、操作者がモニタ23に表示される測定対象物30の表面側を観察しながら、測定面30の高さを測定したい複数の特定箇所または全面を入力部22から入力設定する。CPU20は、入力設定された複数の特定箇所を把握して、複数の特定箇所に相当する画素の濃度値、すなわち特定箇所における干渉光の強度値を、ステップS2で記憶された複数枚の画像データからそれぞれ取込む。これにより、各特定箇所における複数個の強度値(干渉光強度値群)が得られる。
【0051】
<ステップS4> 強度値からピーク位置を求める
CPU20は、図3に示すように、離散的に取得した特定箇所における干渉光強度値群に基づいて、干渉光の強度値の平均値を求める。さらに、干渉光強度値群の各強度値から平均値を減算した各値(調整値群)を求める。
【0052】
調整値をさらに2乗し、図5に示すように、強度値をプラス側に強調した特性値を求める。測定対象物30が透明膜31で覆われている場合、図5に示すように、2個のピークを含む干渉縞波形が現れる。このピーク領域を分離し、それぞれを平滑して、図6,図7を得る。さらに、各ピーク位置を求め、P1,P2とする。
【0053】
<ステップS5> 表面段差と光学膜厚の算出
CPU20は、2つのピーク位置P1,P2から透明膜31の表面高さ、測定対象物30の表面高さ、および透明膜31の屈折率の影響により物理膜厚に対して膜厚の変化した光学膜厚ntを算出する。なお、本実施例では、図8に示す測定対象物30の表面31Aから下方の破線で囲うように、透明膜31の屈折率の影響で光学膜厚nt1,nt2が物理膜厚t1,t2よりも厚くなっている。
【0054】
また、本実施例の場合は、干渉縞波形ピークは、表面30A,31Aと参照面との距離L1,L2に関連するので、透明膜31の表面高さのピーク位置は、図6に示すように、取得画像の1個目のピークP1(19枚目)であり、測定対象物30の表面高さのピーク位置は、図7に示すように、取得画像の2個目のピークP2(42枚目)である。したがって、透明膜31の表面高さ31Aをsとすると、s=P1×標本点間隔の式で表すことができる。
【0055】
また、透明膜31の屈折率の影響を含む光学膜厚ntを(P2−P1)×標本点間隔として求める。ここで、nは屈折率、tは物理膜厚である。
【0056】
<ステップS6> 屈折率の算出
ここで、領域が任意に所定領域を設定する。CPU20は、この設定条件に基づいて、所定領域と当該所定領域と隣接する領域とにおいて透明膜31の表面高さおよび算出済みの光学膜厚ntを利用するとともに、透明膜31の裏面が平坦であると仮定して段差の生じた比較側の領域の屈折率を算出する。本実施例の場合、単純平均化法により算出する場合を例に採って説明するが、この方法に限定されるものではない。具体的には、図8に示す左側の低背部を基準とし、当該部分について基準高さs1、光学膜厚nt1とする。同様に隣接画素の右側の比較部分について比較高さs2、光学膜厚t2とする。さらに、求める段差部分の屈折率をn、各部分の物理膜厚をt1,t2とすると、次式の関係が成り立つ。
【0057】
表面段差Δs=s1−s2=t1−t2 … (1)
膜厚段差Δnt=nt1−nt2 … (2)
【0058】
また、各段差部分の光学膜厚は、屈折率と物理膜厚の積に等しい。つまり、以下のように表現できる。
nt1=n*t1 … (3)
nt2=n*t2 … (4)
【0059】
上記式(1)〜(4)に基づき、屈折率nは、以下の式から求められる。
屈折率n=膜厚段差Δnt/表面段差Δs … (5)
【0060】
<ステップS7> 物理膜厚の算出
屈折率nが求まれば、当該屈折率および膜厚を求める演算式を利用して物理膜厚を算出する。
【0061】
<ステップS8> 表示
CPU20は、モニタ23に透明膜31の表面高さや測定対象物30の表面高さ、物理膜厚の情報を表示したり、それら各特定箇所の高さの情報に基づいた3次元または2次元の画像を表示したりする。操作者は、これらの表示を観察することで、透明膜31の表面31Aの凹凸形状を把握することができる。
【0062】
上述した実施例によれば、取得した強度値から直接的に特性値を求め、この特性値に含まれる透明膜31と測定対象物30の2個のピーク位置情報を求め、この求まるピーク位置情報に基づいて、測定対象物30および透明膜31の表面高さおよび透明膜31の屈折率の影響を含む光学膜厚を求めることができる。また、所定領域と当該領域に隣接する領域の透明膜31の表面高さと比較して表面段差Δsを算出し、さらに、表面段差Δsが生じた場合に、測定対象物30の表面30A(透明膜31の裏面)が平坦であると仮定し、表面段差Δsおよび膜厚段差Δntを算出する演算式の連立を利用することにより段差部分の屈折率nおよび屈折率nの影響を除去した透明膜31の物理膜厚が同時に算出される。すなわち、本実施例装置では、1回の測定で透明膜31の段差部分の屈折率と物理膜厚が同時に測定されるので、透明膜31の段差部分の未知パラメータを高速に測定することができる。
【0063】
なお、本発明は上述した実施例に限らず、次のように変形実施することができる。
【0064】
(1)上記実施例において、測定対象物30が傾斜状態で載置されている場合や、透明膜31が測定対象物30の傾斜面に形成されている場合、透明膜31の表面の傾斜を補正して求めるように構成することが好ましい。
【0065】
例えば、画素ごとに透明膜31の表面高さを図1のx軸方向に沿ってプロットしてゆくと、図9に示すように、2領域(領域1および領域2)の分布に分けることができる。ここで、両領域について同一勾配の平面となるようにフィッティングすることにより、図中の2本の実線が求まる。この同一勾配を有する領域1と領域2の表面高さから両領域の表面段差を算出する。つまり、評価関数=(第1領域の自乗誤差)+(第2領域の自乗誤差)の演算式により算出される値が最小となる平面を求める。
【0066】
この構成によれば、透明膜31の表面の傾きを補正して表面段差を算出することができるので、傾き誤差を除去した段差部分の屈折率と物理膜厚を精度よく測定することができる。
【0067】
(2)上記実施例において、透明膜31の膜厚が薄く測定対象物30の表面を撮像して取得した強度値群から干渉縞波形ピークを求める場合、干渉波形ピークが部分的に重畳するとき、透明膜31の表面31Aと測定対象物30の表面30Aの干渉波形ピークが重畳していると仮定し、光強度値群に基づいて、干渉波形ピークを2個に分離し、両ピークの位置情報を求め、当該位置情報から透明膜の表面および裏面高さを特定し、この特定した表面高さの位置情報を利用して物理膜厚および屈折率を求めるように構成することが好ましい。
【0068】
具体的には、上記実施例のステップSS4とS5の間で、CPU20が以下の演算処理を行う。例えば、観測値レベル数をL、観測値レベルiの頻度数をni(ただし、i=1,L)と仮定すると、頻度値総和NをN=Σn(i)と、相対頻度p(i)をp(i)=n(i)/Nと、全体平均値μTをμT=Σ[i・p(i)]の式で表すことができる。これらの式に基づいて、評価関数f(k)を次式の表すことができる。
【0069】
f(k)=[μT・ω(k)−μ(k)]2/[ω(k)・{1−ω(k)}]
【0070】
ただし、ω(k)=ω(k−1)+p(k)=Σp(i)であってkまでの累積頻度である。また、μ(k)=μ(k−1)+k・p(k)=Σi・p(i)であってkまでの平均値である。
【0071】
つまり、kの値を1からLまで順に変えてf(k)を計算し、f(k)が最大となるkの値を求める。この求まるkの値が閾値となる。この閾値に基づいて、ステップS3で導出した特性値を、図5に示すように、2個のピークのそれぞれを個別に有するように分離する。
【0072】
その後、分離した当該特性値ごとにピーク位置情報を求める。つまり、特性値ごとにローパスフィルタでそれぞれの特性値を平滑化することにより、図6および図7に示すような包絡線が得られる。これら包絡線から特性値が最大になるピーク位置を求める。例えば、本実施例の場合、計算に21点の単純平滑化法であって次式のようになる。
y(n)=[x(n-10)+ x(n-9)+…x(n-1)+ x(n)+ x(n+1)… +x(n-10)]/21
【0073】
この演算式により求まる2個のピークに基づいて、上記ステップS5以降の処理を行えばよい。
【0074】
(3)上記実施例では、撮像手段としてCCDカメラ19を用いたが、例えば、特定箇所の干渉光の強度値のみを撮像(検出)することに鑑みれば、一列または平面状に構成された受光素子など撮像手段を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本実施例に係る表面形状測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】表面形状測定装置における処理を示すフローチャートである。
【図3】特定関数のピーク位置を求める処理を説明するための説明図である。
【図4】特定関数のピーク位置を求める処理を説明するための説明図である。
【図5】特定関数のピーク位置を求める処理を説明するための説明図である。
【図6】特定関数のピーク位置を求める処理を説明するための説明図である。
【図7】特定関数のピーク位置を求める処理を説明するための説明図である。
【図8】透明膜の表面段差を示す横断面図である。
【図9】透明膜の表面段差の傾きを示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 … 光学系ユニット
2 … 制御系ユニット
10 … 白色光源
11 … コリメートレンズ
13 … ハーフミラー
14 … 対物レンズ
15 … 参照面
16 … ミラー
17 … ビームスプリッタ
18 … 結像レンズ
19 … CCDカメラ
20 … CPU
21 … メモリ
24 … 駆動部
30 … 測定対象物
30A… 測定面(測定対象物)
31 … 透明膜
31A… 測定面(透明膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計を利用し測定対象物の表面に形成された透明膜の屈折率測定方法であって、
白色光が照射される前記測定対象物の表面である測定面と参照面との距離を相対的に変動させながら、両面から反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせながら測定面の画像を所定間隔で連続して取得する過程と、
取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求める過程と、
求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求める過程と、
前記位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求める過程と、
所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較する過程と、
比較の結果、前記両膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両領域の表面高さおよび光学膜厚から屈折率を求める過程と、
を備えたことを特徴とする透明膜の屈折率測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の透明膜の屈折率測定方法において、
前記屈折率は、前記両光学膜厚部分の表面高さの偏差をΔSとし、両光学膜厚の偏差をΔntとしたとき、Δnt/Δsにより求める
ことを特徴とする透明膜の屈折率測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の透明膜の屈折率測定方法において、
前記所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の前記表面高さの偏差を補正し、屈折率を求める
ことを特徴とする透明膜の屈折率測定方法。
【請求項4】
透明膜で覆われた測定対象物の表面である測定面と参照面とに照射する白色光を発生させる白色光源と、前記測定面と参照面との距離を変動させる変動手段と、前記白色光が照射された測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせるとともに前記測定面を撮像する撮像手段と、前記撮像された測定面上の複数箇所における干渉光の強度値を取り込むサンプリング手段と、前記サンプリング手段によって取り込まれた箇所ごとの複数個の強度値である各干渉光強度値群を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された各干渉光強度値群に基づいて特定箇所の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を求める演算手段とを備えた透明膜の屈折率測定装置であって、
前記白色光源から発生した白色光の周波数帯域を特定周波数帯域に制限する周波数帯域制限手段を備え、
前記サンプリング手段は、前記変動手段による前記測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって生じた干渉縞の変化に応じた箇所の干渉光の強度値を、前記特定周波数帯域の帯域幅に応じたサンプリング間隔で順次取込み、
前記記憶手段は、前記サンプリング間隔で取り込まれた複数個の強度値である干渉光強度値群を記憶し、
前記演算手段は、測定面の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を以下の処理にしたがって求める、
(1)取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求め、
(2)求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求め、
(3)当該位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求め、
(4)所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較し、
(5)比較の結果、前記両光学膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両光学膜厚の表面高さおよび両光学膜厚から屈折率を求める、
ことを特徴とする透明膜の屈折率測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の透明膜の屈折率測定装置において、
前記演算手段は、所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の表面高さの偏差を補正し、屈折率を求める
ことを特徴とする透明膜の屈折率測定装置。
【請求項6】
干渉計を利用し測定対象物の表面に形成された透明膜の膜厚測定方法であって、
白色光が照射される前記測定対象物の表面である測定面と参照面との距離を相対的に変動させながら、両面から反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせながら測定面の画像を所定間隔で連続して取得する過程と、
取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求める過程と、
求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求める過程と、
前記位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求める過程と、
所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較する過程と、
比較の結果、前記両膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両領域の表面高さおよび光学膜厚から屈折率を求める過程と、
前記過程で求めた屈折率と当該屈折率を求めた領域の光学膜厚から屈折率の影響を除去した物理膜厚を求める過程と、
を備えたことを特徴とする透明膜の膜厚測定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の透明膜の膜厚測定方法において、
前記屈折率は、前記両光学膜厚部分の表面高さの偏差をΔSとし、両光学膜厚の偏差をΔntとしたとき、Δnt/Δsにより求める
ことを特徴とする透明膜の膜厚測定方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の透明膜の膜厚測定方法において、
前記所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の前記表面高さの偏差を補正し、屈折率を求め、
求めた前記屈折率と光学膜厚とに基づいて物理膜厚を求める
ことを特徴とする透明膜の膜厚測定方法。
【請求項9】
透明膜で覆われた測定対象物の表面である測定面と参照面とに照射する白色光を発生させる白色光源と、前記測定面と参照面との距離を変動させる変動手段と、前記白色光が照射された測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞の変化を生じさせるとともに前記測定面を撮像する撮像手段と、前記撮像された測定面上の複数箇所における干渉光の強度値を取り込むサンプリング手段と、前記サンプリング手段によって取り込まれた箇所ごとの複数個の強度値である各干渉光強度値群を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された各干渉光強度値群に基づいて特定箇所の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を求める演算手段とを備えた透明膜の膜厚測定装置であって、
前記白色光源から発生した白色光の周波数帯域を特定周波数帯域に制限する周波数帯域制限手段を備え、
前記サンプリング手段は、前記変動手段による前記測定面と参照面との距離の変動に伴って測定面と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって生じた干渉縞の変化に応じた箇所の干渉光の強度値を、前記特定周波数帯域の帯域幅に応じたサンプリング間隔で順次取込み、
前記記憶手段は、前記サンプリング間隔で取り込まれた複数個の強度値である干渉光強度値群を記憶し、
前記演算手段は、測定面の透明膜の表面高さ、透明膜の膜厚、および屈折率を以下の処理にしたがって求める、
(1)取得した複数枚の前記画像の各画素における干渉光の強度値群の変化を求め、
(2)求めた前記干渉光の強度値群から透明膜の表面と裏面の2箇所で生じる干渉縞波形ピークの位置情報を求め、
(3)当該位置情報に基づいて、前記透明膜の表面および裏面高さと透明膜の屈折率の影響を含む光学膜厚を求め、
(4)所定領域と当該領域と隣接する領域の光学膜厚を比較し、
(5)比較の結果、前記両光学膜厚に偏差が生じた場合、前記透明膜の裏面が平坦であると仮定し、両光学膜厚の表面高さおよび両光学膜厚から屈折率を求め、
(6)前記屈折率および当該屈折率を求めた領域の光学膜厚から屈折率の影響を除去した物理膜厚を求める
ことを特徴とする透明膜の膜厚測定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の透明膜の膜厚測定装置において、
前記演算手段は、所定領域の屈折率を求めるに前に両領域の透明膜の表面高さの傾きを求め、
前記両領域の傾きに基づいて両領域の前記表面高さの偏差を補正し、屈折率を求め
求めた前記屈折率と光学膜厚とに基づいて物理膜厚を求める
ことを特徴とする透明膜の膜厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−286630(P2008−286630A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131654(P2007−131654)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】