説明

通信型ナビゲーション装置、方法及びプログラム

【課題】通信型ナビゲーション装置において、異なる縮尺の地図データを受信し、保持しておくことで、通信不能の状況でもより多くの案内情報を提供すること。
【解決手段】現在位置を前記センター装置へ送信し、当該現在位置を含む所定範囲の、複数の縮尺の地図データを受信する通信部と、通信部が受信した地図データを保持する記憶部と、設定された縮尺の地図データを記憶部から読み出し、表示部に表示させる表示制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の縮尺を有する地図データを通信により取得し、地図表示を行う通信型ナビゲーション装置、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術における通信型ナビゲーション装置は、センター装置に蓄積された地図データを、インターネット等のコンピュータネットワーク、または移動体通信網を介して取得する。さらに、通信型ナビゲーション装置は、緯度経度に代表される現在位置情報を算出する現在位置算出手段を備えており、算出された現在地情報と取得した地図データを用いて、現在位置周辺の地図をディスプレイ画面上に表示する。
【0003】
このような通信型ナビゲーション装置は、常に最新の地図を参照することができると共に、保持するデータ量が非常に少なくて済み、小型軽量化できるという利点を持つ。
【0004】
しかし、通信状況が悪い場合や通信速度が遅い場合に、地図データの一部が受信できず、地図表示に欠落を生じる問題点がある。これに対し、例えば、あらかじめ出発地から目的地までの全経路図を受信して保持しておき、受信状態が悪くなったとき、当該全経路図を表示することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−240578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の通信型ナビゲーション装置は、通信状態の変化などにより地図データが取得できないときは、通信状態が回復するまで、全経路図を表示するのみで、縮尺の違う地図を表示することができなかった。
【0006】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、通信によりデータが取得できないときでも、縮尺を変更した地図を表示することができる通信型ナビゲーション装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信型ナビゲーション装置の第一の局面は、センター装置とデータの送受を行う通信型ナビゲーション装置であって、現在位置をセンター装置へ送信し、当該現在位置を含む所定範囲の、複数の縮尺の地図データを定期的に受信する通信部と、通信部が受信した地図データを、所定の条件で選択して保持する記憶部と、前記記憶部に保持された地図データから、指示された縮尺の地図データを読み出し、表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0008】
この構成により、通信不能の状況となり、前記地図データを受信することができなくなった場合に、予め受信しておいた別の縮尺の地図データを表示することができる。
【0009】
また、記憶部は、当該現在位置を含む所定範囲の、全ての縮尺の地図データを保持することを特徴とする。
【0010】
この構成により、通信不能の状況となり、地図データを受信することができなくなった場合に、広域の前記地図データを表示しているところで、より縮尺の大きい詳細な前記地図データを表示したいときでも、途切れることなく表示することができる。
【0011】
また、記憶部は、少なくとも表示部に表示されている縮尺を、最も広域な縮尺とする地図データを保持することを特徴とする。
【0012】
また、記憶部は、少なくとも目的地と全経路を含む縮尺を、最も広域な縮尺とする地図データを保持することを特徴とする。
【0013】
また、記憶部は、表示部に表示される縮尺の地図データを最初に保持し、その後、より詳細な縮尺の地図データを保持することを特徴とする。
【0014】
また、記憶部は、目的地と全経路を含む最も広域の縮尺の地図データを最初に保持し、その後、より詳細な縮尺の地図データを保持することを特徴とする。
【0015】
また、ユーザが入力部を介して、縮尺変更の指示をした際、前記記憶部に指示された縮尺の地図データがなく、かつ前記通信部による受信ができない場合、縮尺変更できないことをユーザに提示する制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
この構成により、通信不能の状況となり、地図データを受信することができなくなった場合でも、縮尺の変更が可能かどうかをユーザに提示することができる。
【0017】
第二の局面は、センター装置とデータの送受を行う通信型ナビゲーション方法であって、現在位置を前記センター装置へ送信し、当該現在位置を含む所定範囲の、複数の縮尺の地図データを定期的に受信する通信ステップと、通信ステップで受信した地図データを、所定の条件で選択して記憶部に保持する記憶ステップと、前記記憶部に保持された地図データから、指示された縮尺の地図データを記憶部から読み出し、表示部に表示させる表示制御ステップと、を備える。
【0018】
第三の局面は、コンピュータに下記のステップを実行させる、センター装置とデータの送受を行う通信型ナビゲーション用プログラムであって、現在位置をセンター装置へ送信し、当該現在位置を含む所定範囲の、複数の縮尺の地図データを定期的に受信する通信ステップと、通信ステップで受信した地図データを、所定の条件で選択して記憶部に保持する記憶ステップと、前記記憶部に保持された地図データから、指示された縮尺の地図データを記憶部から読み出し、表示部に表示させる表示制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、予め縮尺の違う地図データを通信を介して取得し、記憶部に保持しておくことにより、通信不可能な状況になった場合でも、地図の縮尺を変更して表示することが可能な通信型ナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の通信型ナビゲーション装置1について、図面を用いて説明する。なお、各図面において、本発明に直接関係のない構成要素の図示を省略している。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態の通信型ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。
【0022】
通信型ナビゲーション装置1は、通信部2と、記憶部3と、測位部4と、制御部5と、表示制御部6と、表示部7と、入力部8とを備える。
【0023】
通信部2は、通信型ナビゲーション装置1と地図データベース21を備えるセンター装置20とを携帯電話のデータ通信や無線LANなどの通信手段を介して、データの送受信を行う。なお、地図データベース21に蓄積される地図は、常に最新の状態となるようデータ更新される。
【0024】
記憶部3は、センター装置20から取得した地図データを一時的に記憶する。
【0025】
測位部4は、自車の現在位置、速度、進行方向を測定するためのものであり、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、車速センサ、ジャイロ(角速度)センサ、加速度センサ等である。GNSS受信機は、例えば、GPS受信機であり、複数の衛星からの電波を受信し、それを復調することで受信機の絶対位置を計測するものである。なお、自車の現在位置、速度、進行方向の測定は、GNSS受信機や各種センサを単独利用又は複合利用して行うことができる。
【0026】
制御部5は、通信型ナビゲーション装置1全体の動作を制御するものである。制御部5は、CPU或いはMPUと、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)等とから構成されている。CPU或いはMPUが、ROMに格納されるプログラムを実行することによって、図1に示される各機能ブロックの動作が制御される。また、CPU及びMPUは、プログラムの実行中、RAMを作業領域として使用する。
【0027】
表示制御部6は、記憶部3に一時記憶されている現在位置周辺の地図画像を、必要により自車位置マーク、最適経路などとともに表示部7の画面に表示する機能を有している。なお、最適経路は、現在位置からユーザが指定した目的地への道順を示すもので、道路上に線分を重畳する場合が多い。
【0028】
表示部7は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの表示デバイスである。
【0029】
入力部8は、ユーザが操作指示を入力するためのものである。入力部8の例としては、例えば、押圧式のスイッチを所定数並べたもの、タッチパネル式のもの、リモコン式のもの、ユーザの声を認識して通信型ナビゲーション装置1への入力情報に変換するマイクロフォン、音声認識エンジン等を挙げることができる。ユーザからの指示内容としては、例えば、目的地検索、経由地設定、目的地設定、経路探索条件設定、経路探索実行、縮尺変更(拡大/縮小)の指示等がある。
【0030】
以上のように構成された通信型ナビゲーション装置1の地図表示処理について、図2を用いてその動作を説明する。
【0031】
まず、制御部5は、測位部4が測定した現在位置を(ステップS101)、通信部2を介してセンター装置20へ送信する(ステップS102)。センター装置20に蓄積される地図データベース21は、図3のように縮尺の異なる地図データごとに、一定の大きさに切り分けられたブロックのデータが蓄積されており、センター装置20は、地図データをブロック単位で送信する。
【0032】
例えば、広域から順に50万分の1、10万分の1、1万分の1、2500分の1の地図データが蓄積されたセンター装置20では、通信型ナビゲーション装置1から送信されてきた緯度経度情報を基に、蓄積されている所定範囲の地図データを通信型ナビゲーション装置1へ送信する。通信部2は、センター装置20から送信されてきた地図データを受信する(ステップS103)。
【0033】
図4は、センター装置20から送信されてきた地図データを示しており、現在位置周辺の地図データでセンター装置20に蓄積されているすべての縮尺、ここでは一例として50万分の1、10万分の1、1万分の1、2500分の1の縮尺の地図データである。次に、受信した地図データを記憶部3に保存する(ステップS104)。表示制御部6は、その保存された地図データから設定されている縮尺の、またはユーザが選択した縮尺の地図データを表示部7に表示するよう制御する(ステップS105)。以上により、地図表示処理を終了する。この地図表示処理を所定の時間間隔で繰り返し、現在位置に応じた地図データを記憶部3に保持しておく。
【0034】
このように、本実施の形態の通信型ナビゲーション装置1によれば、センター装置20が蓄積している現在位置周辺のすべての縮尺の地図データを受信することにより、通信不能となり地図データを受信できない状況となったときでも、詳細地図から広域地図まですべて表示することができる。
【0035】
次に、上記の例では、所定範囲のすべての縮尺の地図データを通信部2で受信し、記憶部3に全て保存するとしたが、必要な縮尺の地図データのみを受信、もしくは、保存するようにした場合の別の画面表示例を図5を用いて説明する。
【0036】
図5は、表示部7に現在位置と1万分の1の地図データが表示されている状態を示している。このとき、より詳細な縮尺の2500分の1の地図データが点線で区切られた範囲で存在する場合、通信型ナビゲーション装置1は、通信部2を介して、1万分の1の地図データが示す地図の範囲のより詳細な縮尺の2500分の1の地図データをセンター装置20から受信する。
【0037】
このようにすれば、通信不能となり地図データを受信できない状況となったときでも、表示部7に表示されている範囲内において、詳細地図へと変更することにより、現在位置の動きに合わせて、途切れることなく詳細地図を表示することができる。
【0038】
次に、地図データ取得の手順について、図6のフローチャートを用いて詳しく説明する。
【0039】
ユーザが表示するよう設定した2500分の1の地図データを受信し表示する(ステップS601)。次に、制御部5は、目的地と経路が設定されているかどうかを判定し、設定されていない場合には(ステップS602でNo)、広域の地図データから順番に、50万分の1、10万分の1、1万分の1と地図データを受信し(ステップS606、S607、S608)、記憶部3へ保存する。
【0040】
ステップS602において、目的地と経路が設定されているとき(ステップS602でYes)、制御部5は、その目的地と全経路が含まれる縮尺の地図データが存在するかどうかを、詳細地図データから順番に判定し(ステップS603、S604、S605)、目的地と全経路が含まれると判定したときは、その縮尺の地図データと、その縮尺より詳細な地図データをセンター装置20から受信する。例えば、目的地と全経路が10万分の1の縮尺の地図データに含まれる場合(ステップS605でYes)、10万分の1と1万分の1の地図データを記憶部3へ保存する(ステップS607、およびステップS608)。また、目的地と全経路が含まれないと判定した場合は(ステップS605でNo)、50万分の1の縮尺の地図データから順番に受信する。
【0041】
以上のように、目的地や経路が設定されている場合、目的地が現在位置から近い場所にあり、50万分の1等の広域の地図データを必要としないときに、不必要な地図データの受信を行わず、効率的に地図データの受信をすることができる。
【0042】
次に、ユーザが指示した内容が実施可能かどうかを判定する処理について説明する。
【0043】
図7は、ユーザが指示した縮尺の地図が現在位置において表示可能かどうかを判定するフローチャートである。
【0044】
まず、ユーザが指示した地点と縮尺の地図データが(ステップS709)、図1の記憶部3に保持されているかどうかを判定し(ステップS710)、保持されている場合は図1の表示部7へ表示する(ステップS714)。保持されていない場合には、現在位置において通信可能かどうかを判定し(ステップS711)、通信可能であればセンター装置20より地図データを取得し、表示する。現在位置において通信不可能である場合には(ステップS711でNo)、ユーザへ実行不可能の情報を提示し、処理を終了する。
【0045】
以上のように、ユーザが指示した縮尺の地図が現在位置において通信不可能であるために処理を実行できない場合に、通信をしなくてもユーザへ縮尺変更の可否を通知することができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態を実現するソフトウェアのプログラム(実施の形態では図に示すフロー図に対応したプログラム)が装置に供給され、その装置のコンピュータが、供給されたプログラムを読出して、実行することによっても達成させる場合を含む。したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現させるためのナビゲーションプログラムも含む。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる通信型ナビゲーション装置は、ユーザの操作指示に対して、より多くの案内情報が提示可能な通信型ナビゲーション装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態における通信型ナビゲーション装置を示すブロック図
【図2】地図表示処理の流れを示すフローチャート
【図3】センター装置20に保持される地図データベースの一例を示す図
【図4】センター装置20から取得する地図データの一例を示す図
【図5】表示部7に現在位置と1万分の1の地図データが表示されている状態を示した図
【図6】地図データ取得の手順を示すフローチャート
【図7】ユーザ指示の実行可否を判定する処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0049】
1 通信型ナビゲーション装置
2 通信部
3 記憶部
4 測位部
5 制御部
6 表示制御部
7 表示部
8 入力部
20 センター装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センター装置とデータの送受を行う通信型ナビゲーション装置であって、
現在位置を前記センター装置へ送信し、当該現在位置を含む所定範囲の、複数の縮尺の地図データを定期的に受信する通信部と、
前記通信部が受信した地図データを、所定の条件で選択して保持する記憶部と、
前記記憶部に保持された地図データから、指示された縮尺の地図データを読み出し、表示部に表示させる表示制御部と、
を備えた通信型ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記記憶部は、当該現在位置を含む所定範囲の、全ての縮尺の地図データを保持することを特徴とする請求項1に記載の通信型ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記記憶部は、少なくとも表示部に表示されている縮尺を、最も広域な縮尺とする地図データを保持することを特徴とする請求項1に記載の通信型ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記記憶部は、少なくとも目的地と全経路を含む縮尺を、最も広域な縮尺とする地図データを保持することを特徴とする請求項1に記載の通信型ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記記憶部は、表示部に表示される縮尺の地図データを最初に保持し、その後、より詳細な縮尺の地図データを保持することを特徴とする請求項3に記載の通信型ナビゲーション装置。
【請求項6】
前記記憶部は、目的地と全経路を含む最も広域の縮尺の地図データを最初に保持し、その後、より詳細な縮尺の地図データを保持することを特徴とする請求項4に記載の通信型ナビゲーション装置。
【請求項7】
ユーザが入力部を介して、縮尺変更の指示をした際、前記記憶部に指示された縮尺の地図データがなく、かつ前記通信部による受信ができない場合、縮尺変更できないことをユーザに提示する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信型ナビゲーション装置。
【請求項8】
センター装置とデータの送受を行う通信型ナビゲーション方法であって、
現在位置を前記センター装置へ送信し、当該現在位置を含む所定範囲の、複数の縮尺の地図データを定期的に受信する通信ステップと、
前記通信ステップで受信した地図データを、所定の条件で選択して記憶部に保持する記憶ステップと、
前記記憶部に保持された地図データから、指示された縮尺の地図データを読み出し、表示部に表示させる表示制御ステップと、
を備えた通信型ナビゲーション方法。
【請求項9】
コンピュータに下記のステップを実行させる、センター装置とデータの送受を行う通信型ナビゲーション用プログラムであって、
現在位置を前記センター装置へ送信し、当該現在位置を含む所定範囲の、複数の縮尺の地図データを定期的に受信する通信ステップと、
前記通信ステップで受信した地図データを、所定の条件で選択して記憶部に保持する記憶ステップと、
前記記憶部に保持された地図データから、指示された縮尺の地図データを読み出し、表示部に表示させる表示制御ステップと、
を備えた通信型ナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−156605(P2009−156605A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332084(P2007−332084)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】