説明

速度検出装置および位置検出装置および位置決め装置

【課題】安価で簡易な構成によりスライダの位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置を実現する。
【解決手段】X軸方向に位置制御されるスライダ1と、このスライダ1と対向する面に磁極の歯が形成されてスライダ1と平面モータを構成するプラテン10とを有するとともに、
スライダ1のX軸方向の位置に応じた信号を出力するレゾルバ30と、スライダ1のX軸方向の加速度を検出する加速度センサ31とを備えた位置検出装置300を備え、
位置検出装置300がレゾルバ30と加速度センサ31の出力に基づいてスライダ1の位置を求めることを特徴とする位置決め装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は速度検出装置および位置検出装置およびこれらを用いた位置決め装置に関し、詳しくは、加速度センサおよび位置センサの出力に基づいて移動体の速度や位置を求めるものである。
【背景技術】
【0002】
図27は従来の位置決め装置の一例を示す構成図である。四辺形のプラテン10上に四辺形のスライダA,Bが搭載されており、プラテン10上でそれぞれ個別にX軸方向およびY軸方向に位置制御される。プラテン10とスライダA,Bのそれぞれの対向面には所定ピッチの磁極の歯(以下単に歯という)が形成されており、平面モータを構成している。この平面モータを駆動することによって、スライダA,Bはそれぞれ指定された位置に移動する。
【0003】
スライダA,Bの側辺の3辺にはバーミラーが設けられている。プラテン10の各辺10a〜10dには複数のレーザ干渉計が固定配置されている。一方の対向する辺10a,10bに配置されたレーザ干渉計はスライダA,BのX軸方向の位置検出を行い、他方の対向する辺10c,10dに配置されたレーザ干渉計はスライダA,BのY軸方向の位置検出を行う。これらのレーザ干渉計は、出射したレーザ光とこのレーザ光が各スライダA,Bのバーミラーで反射されて戻ってくる反射光との干渉に基づき、スライダA,Bの位置検出を行う。下記特許文献1には、レーザ干渉計を用いてスライダの位置検出を行う位置決め装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−163418
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スライダの位置検出に上記のようなレーザ干渉計を使用したシステムを採用すると、レーザ干渉計やバーミラーが高価であるため、多額の費用がかかるという問題がある。位置検出の精度や位置決め装置の規模によっては、スライダ1台につき3000万円に達する場合もある。さらに、レーザ干渉計に用いるレーザ光源は寿命が短く、1万〜数万時間程度で交換が必要となる。
【0006】
また、レーザ干渉計を使用したシステムでは、レーザ光を遮るものがあると位置検出ができないため、位置決め装置全体としての設計の自由度が低いという問題がある。たとえば図27の例では、スライダBのX軸方向の位置はプラテン10の辺10bに配置されたレーザ干渉計で検出されるが、スライダBがスライダAの背後(すなわちスライダAと辺10aの間)に回り込んでしまうと、辺10bのレーザ干渉計からのレーザ光がスライダAで遮られ、位置検出ができなくなってしまう。したがって、スライダA,Bの可動範囲は制約され、この点を考慮して位置決め装置を設計しなければならない。
【0007】
さらに、レーザ干渉計を使用したシステムでは、レーザ光を利用するため、温度や空気の揺らぎなどの周囲環境による影響が大きいという問題がある。
【0008】
本発明は、従来技術の問題をなくし、安価で簡易な構成によりスライダの位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置と、これに必要な速度検出装置および位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために、請求項1の発明は、
移動体の速度を検出する速度検出装置において、
移動体の加速度を検出する加速度センサと、
この加速度センサの出力を時間積分する第1の積分器と、
この第1の積分器の出力のうち高い周波数成分のみを通過させる第1のハイパスフィルタと、
前記移動体の位置に応じた信号を出力する位置センサと、
この位置センサの出力を時間微分する微分器と、
この微分器の出力のうち低い周波数成分のみを通過させる第1のローパスフィルタと、
前記微分器の出力と前記第1の積分器の出力との差分に基づいて前記第1の積分器の出力に生じた誤差を前記第1の積分器の入力にフィードバックする第1の誤差制御器と、
前記第1のハイパスフィルタと前記第1のローパスフィルタの出力に基づいて前記移動体の速度を求める第1の演算器と、
を備えたことを特徴とする速度検出装置である。
【0010】
請求項2の発明は、
請求項1に記載の速度検出装置において、
前記加速度センサの出力に生じる遅延時間を調整する遅延時間調整部を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、
請求項2に記載の速度検出装置において、
前記遅延時間調整部は、前記加速度センサの出力に生じる遅延時間が、前記位置センサの出力に生じる遅延時間に一致するように調整することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、
請求項2または3に記載の速度検出装置において、
前記遅延時間調整部は、
前記加速度センサの出力に所定のゲインを乗じて得られる値を前記第1の積分器の出力に加算することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の速度検出装置と、
この速度検出装置の出力を時間積分する第2の積分器と、
この第2の積分器の出力のうち高い周波数成分のみを通過させる第2のハイパスフィルタと、
前記位置センサの出力のうち低い周波数成分のみを通過させる第2のローパスフィルタと、
前記位置センサの出力と前記第2の積分器の出力との差分に基づいて前記第2の積分器の出力に生じた誤差を前記第2の積分器の入力にフィードバックする第2の誤差制御器と、
前記第2のハイパスフィルタと前記第2のローパスフィルタの出力に基づいて前記移動体の位置を求める第2の演算器と、
を備えたことを特徴とする位置検出装置である。
【0014】
請求項6の発明は、
互いに直交するX軸およびY軸の少なくとも1軸方向に位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されて前記スライダと平面モータを構成するプラテンとを有するとともに、
請求項5に記載の位置検出装置を備え、
前記位置センサが前記スライダの前記1軸方向の位置に応じた信号を出力するレゾルバであり、
前記加速度センサが前記スライダの前記1軸方向の加速度を検出し、
前記位置検出装置が前記レゾルバと前記加速度センサの出力に基づいて前記スライダの位置を求めることを特徴とする位置決め装置である。
【0015】
請求項7の発明は、
請求項6に記載の位置決め装置において、前記第1および第2のハイパスフィルタと前記第1および第2のローパスフィルタの少なくともいずれかは、遮断周波数を切り替える切替手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、
請求項7に記載の位置決め装置において、前記切替手段は、前記スライダの移動状況に応じて前記遮断周波数を切り替えることを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、
請求項7または8に記載の位置決め装置において、前記切替手段は、前記スライダの速度が所定値以上の場合には前記遮断周波数を比較的低い周波数に切り替え、前記スライダの速度が前記所定値以下の場合には前記遮断周波数を比較的高い周波数に切り替えることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、
請求項6〜9のいずれかに記載の位置決め装置において、前記加速度センサは、前記スライダの前記1軸方向に平行な中心線から前記1軸と直交する方向に等しい距離で配置されたことを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明は、
請求項6〜9のいずれかに記載の位置決め装置において、前記加速度センサは、前記スライダの対角の角部に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、
移動体の速度を、高い周波数領域の成分については加速度センサの出力に基づいて得られる速度信号を参照し、低い周波数領域の成分については位置センサの出力に基づいて得られる速度信号を参照して求めることにより、高い周波数領域および低い周波数領域のどちらの領域においても誤差の少ない速度信号を得ることができ、高精度に速度を検出できる。また、第1の誤差制御器を備えたことにより、第1の積分器による積分誤差が検出速度に与える影響を低減することができ、さらに高精度に速度を検出できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、
加速度センサの出力に生じる遅延時間を調整する遅延時間調整部を備えているため、遅延時間を調整することにより、加速度センサの出力に基づいて得られる信号の精度を高めることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、
遅延時間調整部は、加速度センサの出力に生じる遅延時間が、位置センサの出力に生じる遅延時間に一致するように調整するため、加速度センサと位置センサの出力に生じる遅延時間の差を解消でき、より高精度に速度を検出できる。
【0023】
請求項4の発明によれば、
遅延時間調整部は、加速度センサの出力に所定のゲインを乗じて得られる値を第1の積分器の出力に加算するため、簡単な構成で遅延時間調整部を実現できる。
【0024】
請求項5の発明によれば、
移動体の位置を、高い周波数領域の成分については請求項1〜4のいずれかに記載の速度検出装置の出力に基づいて得られる位置信号を参照し、低い周波数領域の成分については位置センサの出力に基づいて得られる位置信号を参照して求めることにより、高い周波数領域および低い周波数領域のどちらの領域においても誤差の少ない位置信号を得ることができ、高精度に位置を検出できる。また、第2の誤差制御器を備えたことにより、第1の積分器による積分誤差が検出位置に与える影響を低減することができ、さらに高精度に位置を検出できる。
【0025】
請求項6の発明によれば、
スライダの位置検出のためのセンサとして、レーザ干渉計ではなくレゾルバを利用することによって、安価で簡易な構成によりスライダの位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置を実現できる。
また、スライダの位置検出を請求項5に記載の位置検出装置で行うことにより、平面モータへのフィードバック信号の精度が向上し、スライダを高精度に位置決めできる。
【0026】
請求項7の発明によれば、
第1および第2のハイパスフィルタと第1および第2のローパスフィルタの遮断周波数を切り替える切替手段を備えているため、ハイパスフィルタとローパスフィルタの遮断周波数を可変にできる。
【0027】
請求項8の発明によれば、
遮断周波数をスライダの移動状況に応じて切り替えるため、スライダの加速、減速などの状態に合わせて最適な遮断周波数を選択できる。
【0028】
請求項9の発明によれば、
遮断周波数を、スライダの速度が所定値以上の場合には比較的低い周波数とし、スライダの速度が前記所定値以下の場合には比較的高い周波数に切り替えるため、スライダの速度リップルおよび加速度リップルを低減することができるとともに、位置決め動作時の待ち時間を短縮できる。
【0029】
請求項10の発明によれば、
加速度センサがスライダの1軸方向に平行な中心線からその1軸と直交する方向に等しい距離で配置されているため、加速度センサの出力の平均を取ることでその1軸方向の加速度を精度よく検出できる。さらに、その1軸方向のスライダの加速度を、スライダの回転方向の加速度に関係なく求めることができ、加速度を求める計算を簡単にできる。
【0030】
請求項11の発明によれば、
加速度センサがスライダの対角の角部に配置されているため、加速度センサ間の距離を大きくとることができ、スライダの回転方向の加速度をより精度よく検出できる。また、加速度センサとして2軸以上の加速度が検出できる加速度センサを用いれば、X軸およびY軸の両軸方向の加速度を少ない個数の加速度センサで検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明では、スライダの位置検出のためのセンサとしてレゾルバを利用する。レゾルバはコアとコイルのみで構成されているため、レーザ干渉計など他のセンサに比較して構造が簡単で安価であり、また高い耐環境性を持っている。さらに、レゾルバにはレーザ干渉計のレーザ光源のように寿命の短い部品がないため、メンテナンスが容易である。まず、レゾルバの動作原理について説明する。
【0032】
図1はレゾルバが位置に応じた信号を出力する動作原理の説明図である。レゾルバのセンサ部200は、コア201と、このコア201に巻かれたコイル202で構成される。センサ部200はプラテン10上に所定の空隙を介して配置される。コア201のプラテン10と対向する面には、プラテン10の歯と同じピッチLで歯が形成されている。
【0033】
プラテン10とコア201との間には、プラテン10の歯とコア201の歯の相対位置に応じたインピーダンスZが存在する。コイル201に励磁電圧として一定振幅の矩形電圧を入力すると、コア201が励磁されてプラテン10との間に磁気回路Bが形成される。この磁気回路BはインピーダンスZにより影響を受けるため、結果としてコイル202の端子間電圧はプラテン10とコア201の相対位置に応じて変化する。そこで、コイル202の端子間電圧を取り出し、その振幅を検出信号とする。
【0034】
図1の(a)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最大、すなわち位相差が0°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最小となり、検出信号は最大となる。
一方、図1の(b)は、コア201の歯とプラテン10の歯との対向する面積が最小、すなわち位相差が180°となる相対位置を示している。このときインピーダンスZは最大となり、検出信号は最小となる。
【0035】
センサ部200がプラテン10上を移動すると、インピーダンスZは正弦波状に変化する。そのため、検出信号は、図1の(c)に示すように、ピッチLの周期で正弦波状に変化する。
【0036】
レゾルバは、このようなセンサ部200を2組用意し、図2に示すようにプラテン10に対する位相を90°ずらして配置して構成する。センサ部200の一方をsin相、他方をcos相とし、これらのセンサ部から得られる検出信号のアークタンジェントを取ることによって、レゾルバのプラテン10に対する位相差、すなわちプラテン10の歯に対する相対位置が求められる。なお、プラテン10のどの歯に対する相対位置かは、検出信号が原点位置から繰り返す正弦波の山の数をカウントして求められる。以上より、レゾルバによって原点位置からの位置に応じた信号を取り出すことができる。
【実施例1】
【0037】
図3は、実施例1として、本発明を位置決め装置としてのリニアモータに適用した構成を示す上面図である。
プラテン10上にエアベアリングを利用してスライダ1が搭載されている。プラテン10とスライダ1のそれぞれの対向面にはX軸方向に一定ピッチLで歯10aが形成されており、平面モータを構成している。スライダ1は、プラテン10上でこの平面モータによりX軸方向に位置制御される。なお、本図ではプラテン10の歯を一部省略して示している。
【0038】
スライダ1は矩形状をしており、スライダ1の各辺はX軸またはこのX軸に直交するY軸のいずれかに沿うようにプラテン10上に配置されている。
【0039】
スライダ1のX軸に沿った側面の一方に、X軸方向の位置に応じた検出信号を出力するレゾルバ30が固定されている。レゾルバ30はスライダ1の側面のX軸方向の中央部に配置されている。レゾルバ30の出力は、スライダ1の中央部のX位置に応じた信号とみなせる。レゾルバ30のプラテン10との対向面にはX軸方向に一定ピッチLで歯が形成されており、これらの歯がプラテン10の歯と対向するように配置されている。
【0040】
スライダ1はプラテン10上をサーボ制御により目標位置まで移動する。平面モータにスライダ1の中央部の目標位置となる位置指令を与え、レゾルバ30の出力に基づいて検出されるスライダ1の中央部の現在位置をフィードバックすることにより速度指令を生成する。さらに、この速度指令に、レゾルバ30の出力に基づいて検出されたスライダ1の現在位置から算出される現在速度をフィードバックすることにより、スライダ1のサーボ制御を行う。スライダ1を精度よくかつ滑らかに移動させるためには、平面モータへのフィードバック信号の精度が重要である。
【0041】
ところで、レゾルバ30の出力に基づいて算出されるスライダ位置には、プラテン10の歯ピッチLを基本周期としたそのn次成分n/L(n:1〜∞)の和で表現される固定パターンの誤差が生じる。そのため、スライダ1を速度vで移動させると、レゾルバ30の出力に基づいて検出された位置には、周波数f=nv/Lで位置検出誤差が発生してしまう。したがって、レゾルバ30の出力をそのまま用いても、精度の高いフィードバック信号を生成することができず、スライダ1を精度よく滑らかに移動させることができない。
【0042】
例として、スライダ1を速度vで等速運動させる場合について説明する。スライダ1の真の現在位置、真の現在速度、真の現在加速度をそれぞれx,v,a(等速運動のためa=0となる。)とする。レゾルバ30の出力に基づいて得られたスライダ1の位置検出値をxRとし、この位置検出値xRに基づいて算出される速度検出値および加速度検出値をvR,aRとする。
【0043】
位置検出値xRは次式で表現される。Δxnおよびφnは、それぞれn次成分の誤差および位相である。

【0044】
スライダ1の速度検出値vRは、位置検出値xRの時間微分で表される。

【0045】

であるため、

【0046】
スライダ1の加速度検出値aRは、xRの二階時間微分で表される。

【0047】
スライダ1は等速運動しているため、

であり、式(4)の右辺第2項はゼロとなる。したがって、加速度検出値aRは、

となる。
【0048】
式(5)に表されるように、レゾルバ30の出力に基づいて加速度検出値aRを算出すると、スライダ1は等速運動しているにもかかわらず、加速度検出値aRはゼロにならない。
【0049】
すなわち、レゾルバ30の出力に基づいて得られた位置検出値xRを参照してスライダ1をサーボ制御すると、スライダ1には余計な加速度aRが与えられることになる。そのため、スライダ1が等速で移動するようにサーボ制御しているつもりでも、実際にはスライダ1を加速度aRで揺らしながら移動させることになってしまう。
【0050】
スライダ1には位置決めの対象となるワークが搭載される。スライダ1に加速度aRが与えられると、スライダ1に搭載されたワークにはF=M・aR(M:ワーク質量)の力が加えられる。力Fによって、ワークがスライダ1上で位置ずれを起こしたり、疲労破壊に至る場合がある。
【0051】
なお、式(5)によれば加速度aRの振幅は周波数f=nv/Lの2乗に比例する。つまり、レゾルバ30の出力に基づいて得られる位置検出値xRの誤差成分の周波数fが高いほど、加速度aRは大きくなり、ワークが受ける力Fも大きくなってしまう。
【0052】
そこで、スライダ1を精度よく滑らかに移動させてワークが受ける力Fを低減するため、スライダ1のサーボ制御にあたり、所定の周波数f0よりも低い周波数領域の成分についてはレゾルバ30の出力に基づいてフィードバック信号を生成し、周波数f0よりも高い周波数領域の成分については別の機構によりフィードバック信号を生成するものとする。
【0053】
図3に戻り、スライダ1に、スライダ1の加速度を検出する加速度センサ31が設けられている。本実施例では、加速度センサ31を用いて周波数f0よりも高い周波数領域の成分についてフィードバック信号を生成する。加速度センサ31で検出される加速度には、レゾルバ30と異なり、プラテン10の歯ピッチLに起因する固定パターンの誤差がない。そのため、検出された加速度を時間積分してスライダ1の速度信号や位置信号を求めても、周波数の高い領域で誤差を生じない。
【0054】
加速度センサ31は、スライダ1の上面の中央部に埋設され、スライダ1の上面は平滑な面となっている。レゾルバ30および加速度センサ31の出力は演算部32に入力される。レゾルバ30、加速度センサ31、演算部32でスライダ1の現在位置を検出する位置検出装置300を構成する。
【0055】
図4はスライダの位置決めを行うサーボ制御部のブロック図である。図示しない上位装置からスライダ1の位置指令Pcmdが与えられる。位置指令Pcmdはスライダ1を移動させたいX座標、すなわち目標位置を示す信号である。位置指令Pcmdは位置制御部100に入力される。位置制御部100は、スライダ1の目標位置に到達するまでの移動速度を決定し、速度指令Vcmdを速度制御部101に出力する。速度制御部101は速度指令Vcmdに応じた電流指令Icmdを生成し、アンプ102に出力する。アンプ102は、電流指令Icmdに応じた電流Ioをモータ103に供給する。モータ103は、電流Ioを駆動電流としてスライダ1を移動させる。スライダ1の移動に伴いスライダ1上に搭載されたワーク104が位置決めされる。
【0056】
位置検出装置300は、レゾルバ30および加速度センサ31によって、スライダ1の現在位置に応じた検出信号Xおよび現在加速度aを検出する。位置検出装置300は、検出信号Xおよび加速度aに基づいて、位置フィードバック信号Pfbおよび速度フィードバック信号Vfbを生成する。位置検出装置300は、生成した位置フィードバック信号Pfbを位置制御部100へフィードバックし、速度フィードバック信号Vfbを速度制御部101へフィードバックする。位置制御部100および速度制御部101は、これらのフィードバック信号Pfb,Vfbと、位置指令Pcmdおよび速度指令Vcmdとの偏差がそれぞれゼロとなるようにサーボ制御を行う。
なお、本図では位置制御部101と速度制御部102を機能ブロックのみで示しているが、実際にはCPUで構成される。
【0057】
図5は位置検出装置300のブロック図である。レゾルバ30から出力される検出信号Xは、位置情報であり、式(1)におけるxRに相当するものである。検出信号Xは微分器32aによって時間微分され、速度信号vRに変換される。この速度信号vRには、式(3)に示されるように、さまざまな周波数の成分が含まれている。ローパスフィルタ32bは、遮断周波数f0より低い周波数成分のみを通過させるフィルタである。速度信号vRは、ローパスフィルタ32bに入力され、周波数f0より高い周波数成分が除去される。ローパスフィルタ32bの出力vR’は、演算部32cに出力される。
【0058】
加速度センサ31から出力される加速度aは、積分器32dによって時間積分され、速度信号vaに変換される。ハイパスフィルタ32eは、ローパスフィルタ32bと同じ遮断周波数f0より高い周波数成分のみを通過させるフィルタである。速度信号vaは、ハイパスフィルタ32eに入力され、周波数f0よりも低い周波数成分が除去される。ハイパスフィルタ32eの出力va’は、演算部32cに出力される。
【0059】
演算部32cは、ローパスフィルタ32bから入力される速度信号vR’と、ハイパスフィルタ32eから入力される速度信号va’を加算し、速度信号Vfbを生成する。速度信号Vfbは、スライダ1の現在速度を示す速度フィードバック信号として、速度制御部101へフィードバックされる。
【0060】
速度信号vR’と速度信号va’を加算することは、周波数f0よりも低い周波数成分についてはレゾルバ30で検出された速度信号vR’を利用し、周波数f0よりも高い周波数成分については加速度センサ31で検出された速度信号va’で補完したことに相当する。これにより、周波数f0よりも高い周波数領域においても誤差の少ない速度信号Vfbを生成できる。
また、この速度信号Vfbを速度フィードバック信号として利用することにより、周波数f0よりも高い周波数領域の成分については加速度センサ31で検出した速度信号va’を参照し、周波数f0よりも低い周波数領域の成分についてはレゾルバ30により検出した速度信号vR’を参照して、スライダ1の速度フィードバック制御が行われる。
【0061】
ところで、加速度センサ31から出力される加速度aは、オフセット誤差やゲイン誤差を有している。そのため、加速度aを単純に積分器32dで積分するだけでは、これらの誤差に起因した積分誤差が速度信号vaに重畳してしまう。したがって、この積分誤差を低減するための機構が必要となる。
【0062】
積分器32dの積分誤差を低減するための機構として、誤差制御器32fを設ける。
オフセット誤差やゲイン誤差に起因する積分誤差は、周波数の低い領域の成分である。そのため、周波数の低い領域においては、加速度センサ31に基づいて求めた速度信号よりも、レゾルバ30に基づいて求めた速度信号の方が、誤差が少なく真値に近い値となる。
そこで、誤差制御器32fでは、速度信号vRに対する速度信号vaの偏差に基づいて加速度aに含まれるオフセット誤差やゲイン誤差を算出し、積分器32dの入力にフィードバックする。
【0063】
図6は誤差制御器32fの詳細とその周辺の構成を示す図であり、誤差制御の制御帯域を周波数fC=ω0/2πとした場合の構成例である。本図では、微分の処理を伝達関数s、積分の処理を伝達関数1/sで表現している。
誤差制御器32fに、速度信号vRと速度信号vaが入力される。誤差制御器32fは、入力された速度信号vRと速度信号vaとの差分を求めて、その差分に帰還ゲインω0を乗じる。さらに、(s+ω0)/sの処理を行い、積分器32dの入力に加算する。これにより、速度信号vaに重畳する積分誤差が低減され、速度フィードバック信号Vfbの精度を高めることができる。
周波数fCは、先に説明した遮断周波数f0よりも十分低く設定する。そのため、速度信号vRに重畳しているが、ローパスフィルタ32bで除去される周波数領域の誤差成分は、誤差制御器32fの動作には影響しない。
【0064】
ハイパスフィルタ32eおよびローパスフィルタ32bについて、さらに詳細に説明する。図7はハイパスフィルタ32eおよびローパスフィルタ32bの構成を示すブロック図であり、ハイパスフィルタ32eおよびローパスフィルタ32bをデジタル機能ブロックで表現したものである。
【0065】
ハイパスフィルタ32eおよびローパスフィルタ32bは、入力される速度信号va,vRを周期Tでデジタル変換し、下記の式(6)で表される処理を行う。式(6)の処理は、一般的なIIRフィルタの処理である。IIRフィルタは少ない次数でフィルタ特性を得ることができるデジタルフィルタであり、CPUの計算負荷を減らすことができる利点がある。なお、式(6)は1次のIIRフィルタである。

i:現在の入力値
i:現在の出力値
i-1:1周期前の入力値
i-1:1周期前の出力値
a,b,c:係数
【0066】
図7において、式(6)の入力値piに相当するものが速度信号va,vRであり、出力値qiに相当するものが速度信号va’,vR’である。z-1はz関数の逆関数であり、1周期T分の時間遅れに相当する。係数aH,bH,cHは、それぞれ式(6)における係数a,b,cに相当するものであり、32e全体が遮断周波数f0のハイパスフィルタとなるように決定される。同様に、係数aL,bL,cLは、それぞれ式(6)における係数a,b,cに相当するものであり、32b全体が遮断周波数f0のローパスフィルタとなるように決定される。
【0067】
ハイパスフィルタ32eにおいて、乗算器40で速度信号vaに係数bHを乗算し、加算器41に出力する。また、z-1演算子42で速度信号vaの1周期前の速度信号を求め、この速度信号に乗算器43で係数cHを乗算し、加算器44に出力する。さらに、z-1演算子45により速度信号va’の1周期前の速度信号を求め、この速度信号に乗算器46で係数aHを乗算し、加算器44に出力する。加算器44は、乗算器43,46からの出力を加算し、加算器41に出力する。加算器41は、加算器40,44からの出力を加算し、速度信号va’として出力する。以上により、式(6)の処理が実行される。
【0068】
同様に、ローパスフィルタ32bにおいて、乗算器50で速度信号vRに係数bLを乗算し、加算器51に出力する。また、z-1演算子52で速度信号vRの1周期前の速度信号を求め、この速度信号に乗算器53で係数cLを乗算し、加算器54に出力する。さらに、z-1演算子55により速度信号vR’の1周期前の速度信号を求め、この速度信号に乗算器56で係数aLを乗算し、加算器54に出力する。加算器54は、乗算器53,56からの出力を加算し、加算器51に出力する。加算器51は、加算器50,54からの出力を加算し、速度信号vR’とする。以上により、式(6)の処理が実行される。
【0069】
遮断周波数f0の決定について説明する。
図8は遮断周波数f0を決定するプロセスを説明するための図であり、(a)は速度信号vRの誤差成分、(b)は速度信号vRを微分して得られる加速度信号の誤差成分、(c)は速度信号vR’の誤差成分、(d)は速度信号vR’を微分して得られる加速度信号の誤差成分を例示したものである。すべて横軸はスライダ1の速度である。
【0070】
速度信号vRおよびこの速度信号vRを時間微分して得られる加速度信号には、(a),(b)に示すように、n次(n=1〜∞)の誤差成分が含まれている。各次数の誤差成分の大きさは、スライダ1の速度に応じて変化する。なお、図8では、n=1,2,3,6次成分のみを代表して示している。また、図8の(a)は式(3)、(b)は式(5)を図示したものと同等である。
【0071】
まず、スライダ1を移動させる速度範囲を定める。その後、ローパスフィルタ32bの遮断周波数を仮決めする。そして、ローパスフィルタ32bを通過した速度信号vR’を求め、さらにこの速度信号vR’を時間微分して得られる加速度信号に含まれる誤差成分を求める。求めた誤差成分のうち、スライダ1の速度範囲内で発生する誤差成分の絶対値の最大値を抽出する。抽出した誤差成分の絶対値をスライダ1に搭載されるワークが許容できる許容加速度値と比較する。誤差成分の絶対値が許容加速度値を上回っていた場合には、ローパスフィルタ32bの遮断周波数をより低い周波数に仮決めし、再度許容加速度値との比較を行う。誤差成分の最大値が許容加速度値以下となるまで一連の処理を繰り返し、誤差成分の最大値が許容加速度値以下となる最大周波数fmaxを求める。そして、遮断周波数f0は、この最大周波数fmaxよりも低い値に設定する。
【0072】
このように遮断周波数f0を適切に設定することにより、図8の(c),(d)に示すように、速度信号vR’および速度信号vR’を時間微分して得られる加速度信号に含まれる誤差成分を大きく除去することができる。
【0073】
図5に戻り説明する。演算器32cの出力は、積分器33dによって時間積分され、位置信号xaに変換される。ハイパスフィルタ33eはハイパスフィルタ32eと同じ構成のものであり、遮断周波数f0より高い周波数成分を通過させるフィルタである。位置信号xaは、ハイパスフィルタ33eに入力され、周波数f0よりも低い周波数成分が除去される。ハイパスフィルタ33eの出力xa’は、演算器33cに出力される。
【0074】
ローパスフィルタ33bはローパスフィルタ32bと同じ構成のものであり、遮断周波数f0より低い周波数成分を通過させるフィルタである。レゾルバ30の検出信号Xは、ローパスフィルタ33bに入力され、周波数f0より高い周波数成分が除去される。ローパスフィルタ33bの出力xR’は、演算器33cに出力される。
【0075】
演算器33cは、ローパスフィルタ33bから入力される位置信号xR’と、ハイパスフィルタ33eから入力される位置信号xa’を加算し、位置信号Pfbとする。位置信号Pfbは、スライダ1の現在位置を示す位置フィードバック信号として、位置制御部100へフィードバックされる。
【0076】
位置信号xR’と位置信号xa’を加算することは、周波数f0よりも低い周波数成分についてはレゾルバ30で検出された位置信号xR’を利用し、周波数f0よりも高い周波数成分については加速度センサ31で検出された位置信号xa’で補完したことに相当する。これにより、周波数f0よりも高い周波数領域においても誤差の少ない位置信号Pfbを生成できる。
また、この位置信号Pfbを位置フィードバック信号として利用することにより、周波数f0よりも高い周波数領域の成分については加速度センサ31により検出した位置信号xa’を参照し、周波数f0よりも低い周波数領域の成分についてはレゾルバ30により検出した位置信号xR’を参照して、スライダ1の位置フィードバック制御が行われる。
【0077】
ところで、積分器32dの積分誤差の低減のために誤差制御器32fが設けられているが、速度信号vaから完全に積分誤差を除去することはできない。そのため、速度信号vaから生成される速度信号Vfbにはわずかに積分誤差が残留してしまう。そのため、速度信号Vfbを単純に積分器33dで積分するだけでは、速度信号Vfbに残留した積分誤差に起因した積分誤差が位置信号xaに重畳してしまう。そこで、このような積分誤差の累積を防ぐために、誤差制御器33fを設ける。
【0078】
誤差制御器33fは、誤差制御器32fと同じ構成のものである。誤差制御器33fに、積分器33dから出力される位置信号xaおよびレゾルバの検出信号Xが入力される。誤差制御器32fは、検出信号Xに対する位置信号xaの偏差に基づいて速度信号Vfbに含まれる積分誤差を算出し、積分器33dの入力にフィードバックする。これにより積分器33dの積分誤差が低減され、積分誤差の累積が防止される。
【0079】
なお、微分器32a、積分器32d,33d、ローパスフィルタ32b,33b、ハイパスフィルタ32e,33e、演算器32c,33c、誤差制御器32f,33fで演算部32を構成している。
また、レゾルバ30、加速度センサ31、微分器32a、ローパスフィルタ32b、演算器32c、積分器32d、ハイパスフィルタ32e、誤差制御器32fで速度検出装置33aを構成している。
また、速度検出装置33a、ローパスフィルタ33b、演算器33c、積分器33d、ハイパスフィルタ33e、誤差制御器33fで位置検出装置300を構成している。
なお、図5において演算部32は機能ブロック図のみで示してあるが、実際には演算部32はプログラムがダウンロードされたCPUなどで構成される。
【0080】
図9は、速度検出装置33aの動作波形として、スライダ1の実速度から速度信号vR’,va’,Vfbへの伝達特性を示した図であり、(a)はレゾルバ30の出力に基づいて得られた速度信号vR’の伝達特性、(b)は加速度センサ31の出力に基づいて得られた速度信号va’の伝達特性、(c)は速度信号Vfbの伝達特性である。本図では、遮断周波数f0はおよそ100Hzに設定されている。
【0081】
図9の(a)に示すように、速度信号vR’は、ローパスフィルタ32bの作用により、およそ100Hzよりも高い周波数成分が減衰している。
一方、速度信号va’は、図9の(b)に示すように、ハイパスフィルタ32eの作用により、およそ100Hzよりも低い周波数成分が減衰している。
【0082】
図9の(a)と(b)を加算すると、図9の(c)に示す速度信号Vfbとなる。速度信号Vfbでは、ローパスフィルタ32bで減衰した高い周波数成分がハイパスフィルタ32eを通過した高い周波数成分で補完され、低い周波数成分から高い周波数成分まで広い周波数領域にわたり振幅が維持されている。
このようにして、速度信号Vfbを構成する速度信号は、遮断周波数f0を境として、速度信号vR’から速度信号va’へと切り替えられる。
【0083】
なお、すべての周波数領域において加速度センサ31の出力に基づいて速度信号および位置信号を求めることも可能である。しかし、加速度aのオフセット誤差は経時変化を伴いやすく、その変化量は予測しにくい。そのため、低い周波数領域の成分に関してはレゾルバ30の出力に基づいて求めた速度信号および位置信号の方が誤差の経時変化が少ない。そこで、すべての周波数領域について加速度センサ31によって速度信号および位置信号を求めることはせず、低い周波数領域の成分についてはレゾルバ30、高い周波数領域の成分については加速度センサ31によって求めた速度信号および位置信号を参照して、スライダ1のフィードバック制御を行う。
【0084】
本実施例のリニアモータは以上のように構成され、とくに速度検出装置33aが、
スライダ1の速度を、高い周波数領域の成分については加速度センサ31の出力に基づいて得られる速度信号va’を参照し、低い周波数領域の成分についてはレゾルバ30の出力に基づいて得られる速度信号vR’を参照して求めることにより、高い周波数領域および低い周波数領域のどちらの領域においても誤差の少ない速度信号を得ることができ、高精度にスライダ1の速度を検出することができる。また、誤差制御器32fを備えたことにより、積分器32dによる積分誤差が速度信号Vfbに与える影響を低減することができ、さらに高精度にスライダ1の速度を検出することができる。
【0085】
また、位置検出装置300が、
スライダ1の位置を、高い周波数領域の成分については請求項1に記載の速度検出装置33aの出力に基づいて得られる位置信号xa’を参照し、低い周波数領域の成分についてはレゾルバの出力に基づいて得られる位置信号xR’を参照して求めるので、高い周波数領域および低い周波数領域のどちらの領域においても誤差の少ない位置信号を得ることができ、高精度にスライダ1の位置を検出することができる。また、誤差制御器33fを備えたことにより、積分器33dによる積分誤差が位置信号Pfbに与える影響を低減することができ、さらに高精度にスライダ1の位置を検出することができる。
【0086】
また、スライダ1の位置検出のためのセンサとして、レーザ干渉計ではなくレゾルバ30を利用するので、安価で簡易な構成によりスライダ1の位置検出を安定して行うことができるとともに、設計の自由度の高い位置決め装置を実現することができる。
また、スライダ1の位置検出を位置検出装置300で行うことにより、平面モータへのフィードバック信号Pfb,Vfbの精度が向上し、スライダ1を高精度に位置決めすることができる。
【0087】
なお、本実施例では、加速度センサ31はスライダ1の上面部に埋設されているが、加速度センサ31はスライダ1に内蔵されていてもよい。
【0088】
また、本実施例では、ローパスフィルタ32b,33bおよびハイパスフィルタ32e,33eを1次のIIRフィルタで構成したが、2次以上の高次のものとしてもよい。高次のIIRフィルタを用いれば、フィルタの遮断特性を向上させることができる。
【0089】
また、本実施例では、ローパスフィルタ32b,33bおよびハイパスフィルタ32e,33eの遮断周波数f0を、速度信号vR’を時間微分して得られる加速度値に含まれる誤差成分に基づいて決定した。しかし、速度信号vR’を時間微分を計算するためには、Δxnおよびφn(n=1〜∞)がすべて既知である必要がある。実際には、Δxnおよびφn(n=1〜∞)のすべてを把握するのは困難であるため、Δxn,φnの代表的な値(たとえば、n=1,2,3,6)のみを用いて計算してもよい。あるいは、周波数f0は実験などにより経験的に求めてもよい。
【実施例2】
【0090】
スライダ1の移動状況に応じて、位置フィードバック信号Pfbに含まれる周波数成分の分布は変化する。
たとえば、スライダ1が停止している場合には、スライダ1には位置変化も加速度変化もないため、位置フィードバック信号Pfbには低い周波数領域の成分が多くなる。そのため、位置フィードバック信号Pfbを構成する位置信号は、レゾルバ30によって求められた位置信号xR”が支配的となる。
【0091】
一方、スライダ1の移動開始直後や停止直後には、スライダ1の加速度の変化が急峻となり、位置フィードバック信号Pfbには高い周波数領域の成分が多くなる。そのため、位置フィードバック信号Pfbを構成する位置信号は、加速度センサ31によって求められた位置信号xa”が支配的となる。
【0092】
つまり、スライダ1の移動状況に応じて、位置フィードバック信号Pfbに対してレゾルバ30および加速度センサ31がそれぞれ占める割合は変化する。この変化は、位置フィードバック信号Pfbを、共通の遮断周波数f0を有するローパスフィルタ33bおよびハイパスフィルタ33eを組み合わせて生成しているためである。
【0093】
位置フィードバック信号Pfbに占めるレゾルバ30および加速度センサ31の割合が変化するということは、位置フィードバック信号Pfbに含まれる検出誤差についても、レゾルバ30および加速度センサ31の占める割合が変化することを意味する。
【0094】
上記の例においては、スライダ1の停止直後は加速度センサ31の検出系に起因する誤差が支配的となり、停止後しばらく経過した後にはレゾルバ30の検出系に起因する誤差が支配的となる。これらレゾルバ30の検出系に起因する誤差と加速度センサ31の検出系に起因する誤差は、それぞれの検出系に固有の誤差である。そのため、スライダ1の移動状況に応じて位置フィードバック信号Pfbの検出誤差は時間とともに変化してしまう。
【0095】
したがって、スライダ1がプラテン10上の同じ地点に位置している場合であっても、スライダ1がその地点に停止した直後に得られる位置フィードバック信号Pfbと、停止後しばらく経過してから得られる位置フィードバック信号Pfbは異なるものとなる。つまり、位置フィードバック信号Pfbは時間とともに変化してしまう。そのため、この位置フィードバック信号Pfbをフィードバックしてスライダ1をサーボ制御すると、位置フィードバック信号Pfbの誤差の時間変化に応じてスライダ1が移動してしまう。
【0096】
最終的には、スライダ1はレゾルバ30の位置検出誤差が乗った位置に停止する。スライダ1を停止させて何らかの作業を行う場合には、スライダ1の位置が許容される誤差範囲内となるまでの待ち時間が必要になる。この待ち時間は、遮断周波数f0が高いほど短くなる。しかし、遮断周波数f0を高く設定すると、高い周波数領域までレゾルバ30による位置信号を参照して位置フィードバック制御を行うことになり、スライダ1の移動中の速度リップル、加速度リップルが大きくなってしまう。
【0097】
図10は遮断周波数f0が高い場合と低い場合の動作波形を示す図である。
図10の(a)は、位置制御部100に入力される位置指令Pcmdの時間微分値を示したものである。位置指令Pcmdの時間微分値は、スライダ1の目標位置に到達するまでの位置指令の時間微分値が台形波となるように制御される。スライダ1は、時刻t1〜t2は加速し、時刻t2〜t3は等速移動し、時刻t3〜t4は減速する。時刻t4でスライダ1は目標位置に到着し、位置指令の更新が完了する。
【0098】
図10の(b1)〜(b3)は遮断周波数f0が高い周波数に設定された場合の実際のスライダ1の動作波形例図であって、(b1)はスライダ1の速度、(b2)はスライダ1の加速度である。(b3)はスライダ1と目標位置までの距離であり、実線がスライダ1の実際の位置、破線が位置指令値Pcmdである。なお、スライダ1が最終的に目標位置からずれた位置で安定するのは、レゾルバ30の位置検出誤差のためである。
遮断周波数f0を高い周波数に設定したことにより、位置フィードバック信号Pfbに占めるレゾルバ30の割合が高くなり、スライダ1は目標位置に速やかに接近する。そのため、待ち時間は短い。しかし、速度および加速度に大きなリップルが発生してしまう。
【0099】
一方、図10の(c1)〜(c3)は遮断周波数f0が低い周波数に設定された場合の実際のスライダ1の動作波形例図であって、(c1)はスライダ1の速度、(c2)はスライダ1の加速度、(c3)はスライダ1の位置指令値Pcmdとの比較である。
遮断周波数f0を低い周波数に設定したことにより、速度および加速度のリップルが大幅に低減される。しかし、位置フィードバック信号Pfbに占めるレゾルバ30の割合が低くなるため、スライダ1が目標位置に到達するまで時間がかかり、待ち時間は長くなる。
【0100】
スライダ1の位置決め動作を行う場合、すなわち位置制御部100への位置指令を時間変化させてスライダ1を目標位置へ移動させる場合には、位置指令の更新が完了した後、いかに速やかにスライダ1を目標位置に到達させて待ち時間を短くするかが重要である。
【0101】
実施例2では、先の実施例1に対して、ローパスフィルタ32b,33bおよびハイパスフィルタ32e,33eの遮断周波数f0を可変とすることにより、スライダ移動中の速度リップルと加速度リップルの抑制および位置決め動作時の待ち時間の短縮化が図れる。
【0102】
図11は実施例2のサーボ制御部のブロック図である。以下実施例1と同じ構成要素には同じ番号を付して説明を省略する。
【0103】
位置検出装置300’は、レゾルバ30および加速度センサ31によってスライダ1の現在位置に応じた検出信号Xおよび現在加速度aを検出する。位置検出装置300’は、検出信号Xおよび現在加速度aに基づいて位置フィードバック信号Pfb’および速度フィードバック信号Vfb’を生成し、位置制御部100および速度制御部101へフィードバックする。位置制御部100および速度制御部101は、これらのフィードバック信号Pfb’,Vfb’と、位置指令Pcmdおよび速度指令Vcmdとの偏差がそれぞれゼロになるようにサーボ制御を行う。
【0104】
切替信号生成部105は、位置指令Pcmdに基づいて切替信号Sを生成する。切替信号生成部105は、位置指令Pcmdを時間微分して速度信号Vjを生成し、速度信号Vjの絶対値を所定の閾値Vthと比較する。切替信号生成部105は、速度信号Vjが閾値Vth以下の場合には切替信号SとしてH信号を出力し、速度信号Vjが閾値Vthを越えている場合にはL信号を出力する。
【0105】
切替信号Sは位置検出装置300’に入力される。位置検出装置300’には、遮断周波数を周波数fLまたはfH(fL<fH)に切り替え可能なローパスフィルタおよびハイパスフィルタが備えられている。位置検出装置300’は、切替信号Sによってこれらのフィルタの遮断周波数を切り替える。
【0106】
図12は位置検出装置300’のブロック図である。ローパスフィルタ32b’,33b’は、遮断周波数を周波数fLまたはfHに切り替えることができる。また、ハイパスフィルタ32e’,33e’は、遮断周波数を周波数fLまたはfHに切り替えることができる。各フィルタは、切替信号SがL信号の場合には遮断周波数を周波数fLに切り替え、切替信号SがH信号の場合には遮断周波数を周波数fHに切り替える。すなわち、速度信号Vjが閾値Vth以下の場合には遮断周波数として周波数fHが選択され、速度信号Vjが閾値Vthを越えている場合には遮断周波数として周波数fLが選択される。
【0107】
ローパスフィルタ32b’は、切替信号SがL信号の場合には入力された速度信号vRから周波数fLよりも高い周波数成分を除去し、速度信号SがH信号の場合には速度信号vRから周波数fHよりも高い周波数成分を除去する。
【0108】
ハイパスフィルタ32e’は、切替信号SがL信号の場合には入力された速度信号vaから周波数fLよりも低い周波数成分を除去し、速度信号SがH信号の場合には速度信号vaから周波数fHよりも低い周波数成分を除去する。
【0109】
ローパスフィルタ32b’の出力vR”およびハイパスフィルタ32e’の出力va”は、演算器32cに入力される。演算器32cは、速度信号vR”と速度信号va”を加算し、速度信号Vfb’を生成する。速度信号Vfb’は、スライダ1の現在速度を示す速度フィードバック信号として利用される。
【0110】
同様に、ローパスフィルタ33b’は、切替信号SがL信号の場合には入力された位置信号Xから周波数fLよりも高い周波数成分を除去し、速度信号SがH信号の場合には位置信号Xから周波数fHよりも高い周波数成分を除去する。
【0111】
ハイパスフィルタ33e’は、切替信号SがL信号の場合には入力された速度信号Vfb’から周波数fLよりも低い周波数成分を除去し、速度信号SがH信号の場合には速度信号Vfb’から周波数fHよりも低い周波数成分を除去する。
【0112】
ローパスフィルタ33b’の出力xR”およびハイパスフィルタ33e’の出力xa”は、演算器33cに入力される。演算器33cは、位置信号xR”と位置信号xa”を加算し、位置信号Pfb’を生成する。位置信号Pfb’は、スライダ1の現在位置を示す位置フィードバック信号として利用される。
【0113】
ハイパスフィルタ32e’およびローパスフィルタ32b’についてさらに詳細に説明する。
図13はハイパスフィルタ32e’およびローパスフィルタ32b’の構成を示すブロック図である。本図は、実施例1のハイパスフィルタ32eおよびローパスフィルタ32bに、切替手段47〜49、57〜59を追加した構成となっている。
【0114】
係数aHH,bHH,cHHはハイパスフィルタ32e’全体を遮断周波数fHのハイパスフィルタとする係数であり、係数aHL,bHL,cHLはハイパスフィルタ32e’全体を遮断周波数fLのハイパスフィルタとする係数である。
係数aLH,bLH,cLHはローパスフィルタ32b’全体を遮断周波数fHのローパスフィルタとする係数であり、係数aLL,bLL,cLLはローパスフィルタ32b’全体を遮断周波数fLのローパスフィルタとする係数である。
【0115】
切替信号SがL信号の場合には、切替手段47〜49、57〜59はそれぞれ係数aHL,bHL,cHL,aLL,bLL,cLLを選択する。切替信号SがH信号の場合には、切替手段47〜49、57〜59はそれぞれ係数aHH,bHH,cHH,aLH,bLH,cLHを選択する。乗算器46,40,43,56,50,53は、それぞれ切替手段47〜49、57〜59で選択された係数を乗算する。これにより、切替信号SがL信号の場合にはハイパスフィルタ32e’とローパスフィルタ32b’の遮断周波数は周波数fLに設定され、切替信号がH信号の場合には周波数fHに設定される。
【0116】
周波数fLは、最大周波数fmaxよりも十分に低い周波数に設定する。周波数fHについては、スライダ1の最大速度を速度Vthに制限した場合に許容される最大周波数fmax’を求め、この最大周波数fmax’以下の値とする。
【0117】
このように構成された位置決め装置では、スライダ1の速度が速度Vthを超えると切替信号SがL信号となり、ローパスフィルタ32b’,33b’およびハイパスフィルタ32e’,33e’の遮断周波数が周波数fLとなる。遮断周波数が低い周波数に設定されることにより、加速度センサ31に基づいて生成された位置信号が位置フィードバック信号Pfb’に占める割合が高くなり、速度リップルと加速度リップルが抑えられる。
【0118】
スライダ1が減速して速度Vth以下となると、切替信号SがH信号に切り替わり、ローパスフィルタ32b’,33b’およびハイパスフィルタ32e’,33e’の遮断周波数が周波数fHとなる。遮断周波数が高い周波数に設定されることにより、レゾルバ30に基づいて生成された位置信号が位置フィードバック信号Pfb’に占める割合が高くなり、スライダ1は速やかに目標位置に停止する。
【0119】
図14は本実施例のスライダ1の動作波形を示す図であって、(a)はスライダ1の速度、(b)はスライダ1の加速度である。(c)はスライダ1と目標位置までの距離であり、実線はスライダ1の実際の位置、破線は位置指令値である。
【0120】
図14の(a)では、図10の(b1)と比較して、速度リップルが大幅に低減されている。また、図14の(b)では、図10の(b2)と比較して、加速度リップルが大幅に低減されている。これにより、スライダ1は目標位置まで滑らかに移動する。
また、図14の(c)では、図10の(c3)と比較して、スライダ1が目標位置まで速やかに到達している。そのため、位置決め動作時の待ち時間が短くなる。
【0121】
本実施例によれば、実施例1と同じ効果を有するとともに、さらにローパスフィルタ32b’,33b’およびハイパスフィルタ32e’,33e’の遮断周波数を切り替える切替手段47〜49,57〜59を備えているため、これらのフィルタの遮断周波数を可変とすることができる。
【0122】
また、遮断周波数をスライダ1の移動状況に応じて切り替えるため、スライダ1の加速、減速などの状態に合わせて最適な遮断周波数を選択することができる。
【0123】
また、遮断周波数を、スライダ1の速度が所定の速度Vth以上の場合には比較的低い周波数fLとし、スライダ1の速度が速度Vth以下の場合には比較的高い周波数fHに切り替えるため、スライダ1の速度リップルおよび加速度リップルを低減することができるとともに、位置決め動作時の待ち時間を短縮することができる。
【0124】
なお、本実施例では、遮断周波数fHの決定にあたり、遮断周波数を切り替える速度Vthを先に決定しておき、スライダ1がこの速度Vthで移動したときに許容される最大周波数fmax’から遮断周波数fHを決定した。しかし、遮断周波数fHを先に決定しておき、その遮断周波数で許容されるスライダ1の移動速度から速度Vthを決定してもよい。
また、遮断周波数fHをパラメータとして変えながらスライダ1を移動させ、加速度センサ31から出力される加速度aが許容加速度値を満足しているかを確認しながら決定してもよい。
【0125】
また、本実施例では、切替信号Sの切り替えをひとつの閾値(速度Vth)を基準に行ったが、L信号からH信号に切り替える場合と、H信号からL信号に切り替える場合とで異なる閾値を用意してもよい。
【0126】
また、本実施例では、切替信号Sをスライダ1への位置指令の時間微分値、いわば速度に応じて切り替えたが、速度以外のものに応じて切り替えてもよい。たとえば、スライダ1の位置指令の更新前に切替信号SをL信号に切り替え、位置指令の更新が終了する所定時間前にH信号に切り替えるなど、位置指令のイベントに合わせて切り替えてもよい。なお、位置指令の更新終了から実際にスライダ1が目標位置に到達するまで時差があるため、位置指令の更新が終了した瞬間にH信号に切り替えてもよい。
【0127】
また、本実施例では、切替信号Sの生成に位置指令Pcmdから生成した速度信号Vjを利用したが、速度指令Vcmdやスライダ1の実速度を利用してもよい。ただし、速度指令Vcmdやスライダ1の実速度には種々の外乱やその外乱に対する補正量などが含まれているため、これらの信号に基づいて切替信号Sを生成する場合には、閾値となる速度Vthにヒステリシスを設けると切替処理が安定する。
あるいは、切替信号Sは、位置指令Pcmdを出力する上位装置において生成し、直接位置検出装置300’に出力してもよい。
【0128】
また、本実施例では、切替手段47〜49,57〜59で切り替えられる段数は2段であったが、より多くの係数を保持して複数段の切り替えを行うようにしてもよい。より多くの段数に切り替えることができれば、ローパスフィルタ32b’,33b’およびハイパスフィルタ32e’,33e’で切り替え可能な遮断周波数の段数を増やすことができる。スライダ1の停止間際から序所に遮断周波数を高い周波数に切り替えれば、スライダ1をより滑らかに停止させることができる。
【実施例3】
【0129】
図15は、実施例3として、本発明を2次元方向の平面モータに適用した構成を示す図である。
プラテン10上にはエアベアリングを利用してスライダ1’が搭載されている。スライダ1’は、プラテン10上でX軸方向、Y軸方向およびθ軸方向に位置制御される。プラテン10のスライダ1’の対向面にはX軸方向およびY軸方向に一定ピッチLの格子状に歯10bが形成されている。なお、本図ではプラテン10の歯10bを一部のみに示している。
【0130】
スライダ1’は矩形状をしており、スライダ1’の各辺はX軸またはこのX軸に直交するY軸のいずれかに沿うようにプラテン10上に配置されている。
【0131】
図16はスライダ1’のコアの配置図である。スライダ1’のプラテン10との対向面には、複数のコア1a〜1dが設けられており、プラテン10と平面モータを構成している。コア1a,1bには一定ピッチLの歯がX軸方向に形成され、スライダ1’をX軸方向に移動させる。コア1a,1bには一定ピッチLの歯がY軸方向に形成され、スライダ1’をY軸方向に移動させる。この平面モータを駆動することによって、スライダ1’はプラテン10上の指定されたX位置およびY位置に移動する。また、コア1a,1bに逆向きに推力を発生させることにより、スライダ1’のθ軸方向に推力を発生させる。以下、コア1aをX1コア、コア1bをX2コア、コア1cおよび1dをYコアと称する。
【0132】
スライダ1’の各側面の中央部にレゾルバ30a〜30dが固定されている。スライダ1’のX軸に沿う対向辺にレゾルバ30a,30bが配置され、Y軸に沿う対向辺にレゾルバ30c,30dが配置されている。レゾルバ30a,30bはX軸方向の位置に応じた検出信号を出力し、レゾルバ30c,30dはY軸方向の位置に応じた検出信号を検出する。
【0133】
レゾルバ30a,30bの出力の平均をとり、スライダ1’の中央部のX軸方向の現在位置に応じた検出信号XRとする。また、レゾルバ30c,30dの出力の平均をとり、スライダ1’の中央部のY軸方向の現在位置に応じた検出信号YRとする。また、レゾルバ30aとレゾルバ30bの出力の差分からスライダ1’の回転角θRを求める。
【0134】
スライダ1’の上面部に、加速度センサ31a〜31dが埋設されている。加速度センサ31a,31bはX軸方向の加速度を検出し、加速度センサ31c,31dはY軸方向の加速度を検出する。加速度センサ31a〜31dの出力に基づいて、スライダ1’のX軸方向の加速度AX,Y軸方向の加速度AY,θ軸方向の加速度Aθを求める。
【0135】
図17はスライダ1’上の加速度センサ31a〜31dの配置を示す図である。加速度センサ31a〜31dは、スライダ1’の中心点Cを原点としたとき、以下の位置に取り付けられている。なお、式(7−1)〜式(7−4)は、加速度センサの位置を極座標表示したものである。
加速度センサ31a:(rX1,θX1) ・・・(7−1)
加速度センサ31b:(rX2,θX2) ・・・(7−2)
加速度センサ31c:(rY1,θY1) ・・・(7−3)
加速度センサ31d:(rY2,θY2) ・・・(7−4)
【0136】
加速度センサ31a〜31dの出力は、以下のように表される。なお、BX1〜BY2は各加速度センサの出力に含まれるオフセット誤差である。

【0137】
式(8−1)〜式(8−4)を整理すると、加速度AX,AY,Aθは以下のように表される。

加速度センサ31a〜31dの出力に基づいて式(9)〜式(11)を計算することによって、加速度AX,AY,Aθを求める。
【0138】
図15に戻り、レゾルバ30a〜30dおよび加速度センサ31a〜31dの出力は、図示しない演算部320に入力される。レゾルバ30a〜30d、加速度センサ31a〜31d、演算部320で、スライダ1’のX軸方向およびY軸方向の現在位置および回転角θRを検出する位置検出装置301(図示せず)を構成する。この位置検出装置301の出力に基づいて、スライダ1’をX軸方向、Y軸方向およびθ軸方向にサーボ制御する。
【0139】
図18はスライダ1’の位置決めを行うサーボ制御部のブロック図である。図示しない上位装置からスライダ1’の位置指令Pxcmd,Pycmd,Pθcmdが与えられる。位置指令Pxcmd,Pycmdはスライダ1’を移動させたいX座標とY座標、すなわち目標位置を示す信号である。位置指令Pθcmdは、スライダ1’の目標回転角を示す信号である。位置指令Pxcmd,Pycmd,Pθcmdは、それぞれ位置制御部に入力される。各位置制御部は、位置指令Pxcmd,Pycmd,Pθcmdに応じた速度指令Vxcmd,Vycmd,Vθcmdを生成し、それぞれ速度制御部に出力する。各速度制御部は、入力された速度指令Vxcmd,Vycmd,Vθcmdに応じた電流指令Irx,Iry,Irθを生成し、指令分配器106に出力する。
【0140】
X1アンプ、X2アンプ、Yアンプは、それぞれX1コア、X2コア、Yコアに対応するアンプである。指令分配器106は、入力された電流指令Irx,Iry,Irθに基づいて、各アンプに与える実効電流指令Ix1cmd,Ix2cmd,Iycmdを生成する。X1アンプは実効電流指令Ix1cmdに応じた電流Iox1をX1アンプに供給し、X2アンプは実効電流指令Ix2cmdに応じた電流Iox2をX2アンプに供給し、Yアンプは実効電流指令Iycmdに応じた電流IoyをYアンプに供給する。各コアは、電流Iox1,Iox2,Ioyを駆動電流としてスライダ1’を移動させる。スライダ1’の移動に伴いスライダ1’上に搭載されたワークが位置決めされる。
【0141】
位置検出装置301は、レゾルバ30a〜30dによって、スライダ1’のX軸方向およびY軸方向の現在位置に応じた検出信号XR,YRと、回転角θRを検出する。また、位置検出装置301は、加速度センサ31a〜31dによって、スライダ1’のX軸方向、Y軸方向およびθ軸方向の加速度AX,AY,Aθを検出する。
【0142】
位置検出装置301は、検出信号XR,YR、回転角θRおよび加速度AX,AY,Aθに基づいて、位置フィードバック信号Pxfb、Pyfb、Pθfbおよび速度フィードバック信号Vxfb、Vyfb、Vθfbを生成する。位置検出装置301は、生成した位置フィードバック信号Pxfb、Pyfb、Pθfbを、それぞれ対応する位置制御部へフィードバックする。また、位置検出装置301は、生成した速度フィードバック信号Vxfb、Vyfb、Vθfbを、それぞれ対応する速度制御部へフィードバックする。
【0143】
各位置制御部は、フィードバック信号Pxfb、Pyfb、Pθfbと位置指令Pxcmd,Pycmd,Pθcmdとの偏差がそれぞれゼロとなるようにサーボ制御を行う。また、各速度制御部は、速度フィードバック信号Vxfb、Vyfb、Vθfbと速度指令Vxcmd,Vycmd,Vθcmdとの偏差がそれぞれゼロとなるようにサーボ制御を行う。
なお、図18では位置制御部、速度制御部、および指令分配器106を機能ブロックのみで示しているが、実際にはCPUで構成される。
【0144】
図19は指令分配器106の構成を示す図である。指令分配器106は、電流指令IrxからIrθを減算して実効電流指令Ix1cmdを生成する。また、指令分配器106は、電流指令IrxとIrθを加算して実効電流指令Ix2cmdを生成する。これにより、X1コアおよびX2コアにはスライダ1’の電流指令Irθが反映された実効電流指令が与えられることになり、スライダ1’の回転角が制御される。なお、電流指令Iryは、実効電流指令Iycmdとして出力される。
【0145】
図20は位置検出装置301を示すブロック図である。加速度算出部321および演算部322〜324で演算部320を構成する。演算部322〜324は実施例1における演算部32と同じ構成のものである。
【0146】
加速度算出部321は加速度センサ31a〜31dの出力が入力される。加速度算出部321は、式(9)〜式(11)の計算を行い、スライダ1’の加速度AX,AY,Aθを算出する。算出された加速度AX,AY,Aθは、それぞれ演算部322〜324に出力される。
【0147】
演算部322は、加速度AXおよび検出信号XRが入力され、X軸方向の位置フィードバック信号Pxfbおよび速度フィードバック信号Vxfbを出力する。
同様に、演算部323は、加速度AYおよび検出信号YRが入力され、Y軸方向の位置フィードバック信号Pyfbおよび速度フィードバック信号Vyfbを出力する。
また、演算部324は、加速度Aθおよび回転角θRが入力され、スライダ1’のθ軸方向の位置フィードバック信号Pθfbおよび回転速度フィードバック信号Vθfbを出力する。
【0148】
演算部322〜324から出力される各フィードバック信号は、スライダ1’のサーボ制御のフィードバック信号として利用される。
【0149】
なお、演算部320は、プログラムがダウンロードされたCPUなどで構成される。その他の構成は前記実施例1と同じである。
【0150】
本実施例によれば、スライダ1’のX軸方向およびY軸方向の位置フィードバック信号および速度フィードバック信号の精度を高めることができる。さらに、スライダ1’の1軸方向を検出するレゾルバおよび加速度センサがそれぞれ複数個設けられているため、スライダ1’のθ軸方向の加速度を求めることができる。これを用いることにより、スライダ1’のθ軸周りの位置フィードバック信号および速度フィードバック信号の精度を高めることができ、スライダ1’を精度よく制御することができる。
【0151】
なお、加速度センサ31a,31bを、

となるように配置すれば、式(9)の右辺第2項=0となる。このように配置すれば、加速度Aθに関係なく加速度AXを求めることができる。式(9)の計算を簡単にし、加速度Aθの影響を排除することにより、加速度AXの精度を高めることができる。
同様に、加速度センサ31c,31dを、

となるように配置すれば、式(10)の右辺第2項=0となる。このように配置すれば、加速度Aθに関係なく加速度AYを求めることができる。式(10)の計算を簡単にし、加速度Aθの影響を排除することにより、加速度AYの精度を高めることができる。
【0152】
図21は、式(12)および式(13)を満たす加速度センサ31a〜31dの配置の一例を示す図である。CxおよびCyは、それぞれスライダ1’のX軸方向およびY軸方向の中心線である。加速度センサ31a,31cと、加速度センサ31d,31bは、中心線Cxを間に挟むようにしてそれぞれX軸方向に距離dxの位置に配置されている。さらに、加速度センサ31a,31dと、加速度センサ31c,31bは、中心線Cyを間に挟むようにしてそれぞれY軸方向に距離dyの位置に配置されている。
【0153】
また、本実施例では、演算部322〜324を実施例1の演算部32と同じ構成のものとしたが、実施例2における演算部32’と同じ構成のものを使用してもよい。
【0154】
また、本実施例では、スライダ1’の回転角θRをレゾルバ30aとレゾルバ30bの出力の差分に基づいて求めたが、レゾルバ30cとレゾルバ30dの出力の差分に基づいてスライダ1’の回転角θRを求めてもよい。さらに、レゾルバ30aとレゾルバ30bから求めた回転角と、レゾルバ30cとレゾルバ30dから求めた回転角との平均をスライダ1’の回転角θRとしてもよい。
【実施例4】
【0155】
図22は本発明の実施例4を示す上面図である。本実施例は、先の実施例3に対して、加速度センサの種類や配置を変更したものである。
【0156】
実施例3では、加速度センサ31a〜31dはそれぞれ1軸方向の加速度を検出した。しかし、近年は、1つのデバイスで2軸以上の加速度が検出できる加速度センサが実用化されている。
【0157】
図22において、31e,31fはX軸方向およびY軸方向の2軸方向の加速度を検出する加速度センサである。加速度センサ31eは、スライダ1’のレゾルバ30a,30cが配置された側辺の角部に取り付けられている。加速度センサ31fは、スライダ1’のレゾルバ30b,30dが配置された側辺の角部に取り付けられている。
【0158】
本実施例は位置検出装置301’(図22では図示せず)を備える。位置検出装置301’は、レゾルバ30a〜30dによって、スライダ1’のX軸方向およびY軸方向の現在位置に応じた検出信号XR,YRと、回転角θRを検出する。また、位置検出装置301’は、加速度センサ31e,31fによって、スライダ1’のX軸方向、Y軸方向およびθ軸方向の加速度AX,AY,Aθを検出する。X軸方向、Y軸方向およびθ軸方向におけるサーボ制御部の構成は、実施例3と同様である。
【0159】
図23は本実施例における位置検出装置301’を示す図である。
位置検出装置301’は、加速度算出部321’および演算部322〜324から構成されている。
加速度算出部321’には、加速度センサ32e,32fから、それぞれX軸方向およびY軸方向の2軸方向の加速度が入力される。加速度算出部321’は、加速度センサ32e,32fの出力を、それぞれ同じ位置に配置された2つの加速度センサ(X軸方向用とY軸方向用)の出力とみなし、式(9)〜式(11)の計算を行う。その他の構成は前記実施例3と同じである。
【0160】
本実施例によれば、実施例3と同じ効果を有するとともに、さらに、加速度センサ32e,32fがスライダ1’の対角の角部に配置されているため、加速度センサ間の距離を大きくとることができ、スライダ1’のθ軸方向の加速度Aθをより精度よく検出することができる。
また、加速度センサ32e,32fとして2軸以上の加速度が検出できる加速度センサを用いたことにより、X軸およびY軸の両軸方向の加速度を少ない個数の加速度センサで検出することができる。
【実施例5】
【0161】
図24は実施例5の位置検出装置300”を示す図である。本実施例は、先の実施例1に対して、遅延時間調整部32gを追加したものである。
【0162】
レゾルバ30から出力される検出信号Xおよび加速度センサ31から出力される加速度aがそれぞれ演算部32”に到達するまでには、それぞれ固有の遅延時間tdr,tdaが存在する。加速度aの遅延時間tdaと検出信号Xの遅延時間tdrに差が生じている場合には、演算部32”に到達した加速度aおよび検出信号Xをそのまま利用するだけでは、遅延時間の差(tgap=tda−tdr)により速度信号va’と速度信号vR’に位相ずれが生じ、現在速度Vfbに誤差が生じてしまう。また、現在速度Vfbに基づいて算出される現在位置Xfbにも誤差が生じてしまう。
そこで、加速度aと検出信号Xの遅延時間の差(tgap)を低減することにより、より精度よく現在速度Vfbと現在位置Xfbを検出できるようにする。
【0163】
加速度aと検出信号Xの遅延時間の差(tgap)を低減する機構として、速度検出装置33a”に遅延時間調整部32gを設ける。遅延時間調整部32gは、加速度aの遅延時間tdaを検出信号Xの遅延時間tdrに一致させるように、速度信号vaに対して近似的に時間進み、もしくは時間遅れを生じさせる。これにより、速度信号vaと速度信号vRの位相ずれを解消し、ひいては速度信号va’と速度信号vR’の位相ずれを解消する。
【0164】
遅延時間調整部32gは、誤差制御器32fによる補正後の加速度aが入力される。遅延時間調整部32gは、この加速度aに所定のゲインKffを乗算して調整信号vadを生成し、この調整信号vadを積分器32dの出力に加算する。調整信号vadを加算して得られた速度信号は、速度信号vaとしてハイパスフィルタ32eおよび誤差制御器32fに入力される。
【0165】
ゲインKffは、加速度aと検出信号Xの遅延時間の差(tgap)に応じた値であり、実験的または経験的に求める。ゲインKffは、あらかじめ遅延時間調整部32gに保持させておく。ゲインKffに正の値を設定することにより速度信号vaに時間進みを生じさせ、ゲインKffに負の値を設定することにより速度信号vaに時間遅れを生じさせる。
【0166】
図25は遅延時間調整部32gによる遅延時間の調整を示す図であり、速度信号vaを示したものである。横軸は時間[s]、縦軸は速度[m/s]である。
ラインLは速度信号vaに遅延時間の調整を行わない場合、ラインLrは速度信号vaに時間進みを生じさせた場合、ラインLsは速度信号vaに時間遅れを生じさせた場合を示したものである。
なお、ゲインKff=0に設定した場合には、速度信号vaの調整を行わないことと同じであり、前記実施例1の構成と等価になる。
【0167】
検出信号Xの遅延時間tdrが加速度aの遅延時間tdaよりも大きい場合には、遅延時間tdaを大きくして遅延時間tdrに一致させるため、ゲインKffに負の値を設定し、速度信号vaに時間遅れを生じさせる。
一方、検出信号Xの遅延時間tdrが加速度aの遅延時間tdaよりも小さい場合には、遅延時間tdaを小さくして遅延時間tdrに一致させるため、ゲインKffに正の値を設定し、速度信号vaに時間進みを生じさせる。
【0168】
なお、ゲインKffに正の値を設定することは、現在の加速度aに基づいてゲインKffにに相当する時間分だけ将来の速度信号vaを推定していることに相当する。また、ゲインKffに負の値を設定することは、現在の加速度aに基づいてゲインKffに相当する時間分だけ過去の速度信号vaを推定していることに相当する。
このような遅延時間調整部32gを設けることにより、加速度aの遅延時間tdaを近似的に調整できる。その他の構成は前記実施例1と同じである。
【0169】
図26は、レゾルバ31の遅延時間tdrと加速度センサaの遅延時間tdaに差がある場合における、遅延時間調整部32gの効果の一例を示す図である。図26の(a)は位置指令値Pcmdを示している。図26の(b1)と(b2)は遅延時間調整部32gを設けていない場合、(c1)と(c2)は遅延時間調整部32gを設けた場合を示している。また、図26の(b1)と(c1)は位置指令Pcmdと検出された現在位置Pfbとの偏差、(b2)と(c2)は現在位置Pfbとスライダ1の現在位置の真値との偏差である。
なお、図26の(b1),(b2)は、位置指令Pcmdと検出された現在位置Pfbとの偏差であるため、0近傍の値となるのが望ましい。同様に、図26の(c1),(c2)は、現在位置Pfbとスライダ1の現在位置の真値との偏差であるため、0近傍の値となるのが望ましい。
【0170】
図26の(a)に示すように、位置指令値Pcmdによれば、スライダ1はおよそt=0.3[s]で目標位置に到達し、モータ103は停止するはずである。
【0171】
これに対し、図26の(b1)では、位置指令Pcmdと現在位置Pfbとの偏差が0に安定するまでにt=0.6[s]程度かかっている。また、(b2)では、現在位置Pfbと真値との偏差が0に安定するまでにt=1.0[s]程度と長時間を要している。これは、t=0.3[s]以降もスライダ1が移動し続け、位置が安定しないことを意味する。スライダ1の位置が安定するまでに時間かかると、スライダ1に搭載されたワークに対する作業を開始できる時刻が遅れ、スループットの低下を招くという問題がある。
【0172】
一方、図26の(c1),(c2)では、偏差が0に安定するまでの時間がともにt=0.5[s]に短縮され、それぞれ図26の(b1),(b2)と比較して大幅に改善されている。
【0173】
本実施例によれば、実施例1と同じ効果を有するとともに、加速度aに生じる遅延時間tdaを調整する遅延時間調整部32gを備えているため、速度信号vaや速度信号va’など加速度センサ31の出力に基づいて得られる信号の精度を高めることができる。
【0174】
また、遅延時間調整部32gは、加速度aに生じる遅延時間tdaを、レゾルバ30から出力される検出信号Xに生じる遅延時間tdrに一致するように調整するため、加速度センサ31とレゾルバ30の出力に生じる遅延時間の差を解消できる。これにより、より高精度に現在速度Vfbおよび現在位置Pfbを検出できる。
【0175】
また、遅延時間調整部32gは、加速度aに所定のゲインKffを乗じて得られる調整信号vadを積分器32dの出力に加算するため、簡単な構成で遅延時間調整部を実現できる。
なお、遅延時間調整部32gはソフトウェア的に構成できるため、ハードウェアの変更なしに安価に実現できる。また、遅延時間調整部32gをソフトウェアで構成すれば、ゲインKffの設定や変更も簡単に行うことができる。
【0176】
なお、本実施例は前記実施例1の変更例として説明したが、前記実施例2〜4にも同様に適用できる。すなわち、前記実施例2〜4において、遅延時間調整部32gを追加することで、加速度aと検出信号Xの遅延時間に差がある場合に、現在速度Vfbと現在位置Pfbをより精度よく検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】レゾルバによる位置検出の動作原理の説明図である。
【図2】レゾルバの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1を示す上面図である。
【図4】スライダの位置決めを行うサーボ制御部のブロック図である。
【図5】位置検出装置300のブロック図である。
【図6】誤差制御器32fの詳細とその周辺の構成を示す図である。
【図7】ハイパスフィルタ32eおよびローパスフィルタ32bのブロック図である。
【図8】遮断周波数f0を説明するための図である。
【図9】速度信号vR’,va’,Vfbの伝達特性を示す図である。
【図10】遮断周波数fが高い場合と低い場合の動作波形を示す図である。
【図11】本発明の実施例2の位置決め装置のサーボ制御を示すブロック図である。
【図12】位置検出装置300’のブロック図である。
【図13】ハイパスフィルタ32e’およびローパスフィルタ32b’のブロック図である。
【図14】実施例2のスライダ1の動作波形を示す図である。
【図15】本発明の実施例3を示す上面図である。
【図16】スライダ1’のコアの配置図である。
【図17】加速度センサ31a〜31dの配置を示す図である。
【図18】スライダ1’の位置決めを行うサーボ制御部のブロック図である。
【図19】指令分配器106の構成を示す図である。
【図20】実施例3の位置検出装置301を示すブロック図である。
【図21】加速度センサ31a〜31dの位置を示す図である。
【図22】本発明の実施例4を示す上面図である。
【図23】実施例4の位置検出装置301’を示すブロック図である。
【図24】実施例5の位置検出装置300”を示す図である。
【図25】遅延時間調整部32gによる遅延時間の調整を示す図である。
【図26】遅延時間調整部32gの効果の一例を示す図である。
【図27】従来例の位置決め装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0178】
1 スライダ
10 プラテン
30 レゾルバ
31 加速度センサ
32 演算部
32a 微分器
32b ローパスフィルタ
32c 演算器
32d 積分器
32e ハイパスフィルタ
32f 誤差制御器
32g 遅延時間調整部
33a 速度検出装置
33b ローパスフィルタ
33c 演算器
33d 積分器
33e ハイパスフィルタ
33f 誤差制御器
100 位置制御部
101 速度制御部
102 アンプ
103 モータ
104 ワーク
300 位置検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の速度を検出する速度検出装置において、
移動体の加速度を検出する加速度センサと、
この加速度センサの出力を時間積分する第1の積分器と、
この第1の積分器の出力のうち高い周波数成分のみを通過させる第1のハイパスフィルタと、
前記移動体の位置に応じた信号を出力する位置センサと、
この位置センサの出力を時間微分する微分器と、
この微分器の出力のうち低い周波数成分のみを通過させる第1のローパスフィルタと、
前記微分器の出力と前記第1の積分器の出力との差分に基づいて前記第1の積分器の出力に生じた誤差を前記第1の積分器の入力にフィードバックする第1の誤差制御器と、
前記第1のハイパスフィルタと前記第1のローパスフィルタの出力に基づいて前記移動体の速度を求める第1の演算器と、
を備えたことを特徴とする速度検出装置。
【請求項2】
前記加速度センサの出力に生じる遅延時間を調整する遅延時間調整部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の速度検出装置。
【請求項3】
前記遅延時間調整部は、前記加速度センサの出力に生じる遅延時間が、前記位置センサの出力に生じる遅延時間に一致するように調整することを特徴とする請求項2に記載の速度検出装置。
【請求項4】
前記遅延時間調整部は、
前記加速度センサの出力に所定のゲインを乗じて得られる値を前記第1の積分器の出力に加算することを特徴とする請求項2または3に記載の速度検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の速度検出装置と、
この速度検出装置の出力を時間積分する第2の積分器と、
この第2の積分器の出力のうち高い周波数成分のみを通過させる第2のハイパスフィルタと、
前記位置センサの出力のうち低い周波数成分のみを通過させる第2のローパスフィルタと、
前記位置センサの出力と前記第2の積分器の出力との差分に基づいて前記第2の積分器の出力に生じた誤差を前記第2の積分器の入力にフィードバックする第2の誤差制御器と、
前記第2のハイパスフィルタと前記第2のローパスフィルタの出力に基づいて前記移動体の位置を求める第2の演算器と、
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項6】
互いに直交するX軸およびY軸の少なくとも1軸方向に位置制御されるスライダと、このスライダと対向する面に磁極の歯が形成されて前記スライダと平面モータを構成するプラテンとを有するとともに、
請求項5に記載の位置検出装置を備え、
前記位置センサが前記スライダの前記1軸方向の位置に応じた信号を出力するレゾルバであり、
前記加速度センサが前記スライダの前記1軸方向の加速度を検出し、
前記位置検出装置が前記レゾルバと前記加速度センサの出力に基づいて前記スライダの位置を求めることを特徴とする位置決め装置。
【請求項7】
前記第1および第2のハイパスフィルタと前記第1および第2のローパスフィルタの少なくともいずれかは、遮断周波数を切り替える切替手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の位置決め装置。
【請求項8】
前記切替手段は、前記スライダの移動状況に応じて前記遮断周波数を切り替えることを特徴とする請求項7に記載の位置決め装置。
【請求項9】
前記切替手段は、前記スライダの速度が所定値以上の場合には前記遮断周波数を比較的低い周波数に切り替え、前記スライダの速度が前記所定値以下の場合には前記遮断周波数を比較的高い周波数に切り替えることを特徴とする請求項7または8に記載の位置決め装置。
【請求項10】
前記加速度センサは、前記スライダの前記1軸方向に平行な中心線から前記1軸と直交する方向に等しい距離で配置されたことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項11】
前記加速度センサは、前記スライダの対角の角部に配置されたことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図3】
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【図15】
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【図21】
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【図22】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−38896(P2010−38896A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320388(P2008−320388)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】