説明

連続供給機能を有する流体源から基板上に有機薄膜をコーティングする方法および装置

非重合化合物と流体担体の混合物を得ることによって基板上に非重合化合物の薄膜をコーティングする方法。この混合物(1)は次いで、非重合化合物および流体担体の実質的に全部をガス状に転換するのに十分な内部温度を有する加熱された蒸発ボックス(7)の内部につぎ込まれる。非重合化合物と流体担体は次いで、蒸発ボックス内の出口スリット(8)を介して蒸発ボックスから取り出される。非重合化合物が凝縮する基板が、出口スリットに隣接して、真空状態に維持されている。基板(10)は、たとえばウェブ・ローラ上を移動し、それによって非重合化合物の連続的なコーティングを基板にコーティングするのが可能になる。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、米国エネルギー省によって認められた契約DE-AC0676RLO1830に基づく米国政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明におけるある権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
該当無し
【0003】
発明の背景
様々な工業用途において薄膜が広く使用されているため、様々な種類の薄膜および薄膜を費用有効的に製造する方法の開発に関する研究が盛んに行われている。このような種類の薄膜として、小分子有機半導体があり、現在、ディスプレイ、トランジスタ、およびメモリを含む多数の用途に関して開発されている。このような材料の特定の関心対象分野として、室内照明用の有機発光デバイス(「OLED」)の用途がある。PoP実験(Proof-of principle)によって、OLEDが60lm/W程度で動作できることが分かっている。この値は明るさが低く、かつグリーン・デバイスの場合の値であるが、この効率での広域照明が十分に実現可能であることが証明されている。そればかりでなく、この結果は、デバイスで生成された光子の〜20%だけ観測者に逃げる平面デバイス形状で得られたものであり、したがって、デバイス効率の理論上の上限はグリーン・デバイスでは少なくとも300 lm/Wであることが分かる。他の用途は、有機薄膜トランジスタに基づく広域低コスト電子機器および低コスト・広域光起電機器である。
【0004】
このような材料によるエネルギー効率的な照明が可能であることが証明されているが、このような材料のための高品質で低コストで高スループットの成膜装置は現在存在しない。従来の物理的蒸着技術またはスピン・コーティングは、小域・高付加価値用途には有効であるが、低速すぎて低コスト照明器具の製造に対しては実施不能である。化学蒸着産業に関連する低真空およびシャワー・ヘッド形状を使用した有機気相成長法がロール型(Roll to roll)製造に必要な高蒸着速度を実現できることは証明されていない。印刷技術も低速過ぎ、一般にバッチ製造に制限されている。小分子半導体用の高スループットで連続供給できるロール型蒸着技術は、従来の照明手段に匹敵する所有コストを有するOLED照明パネルを大量に製造する唯一の実現可能な手段である可能性が高い。
【0005】
高分子多層蒸着(PML)は、アクリレート系のポリマーの、一様性の極めて高い薄膜を高速に堆積させる公知の技術である。一般に、PMLプロセスは2つの形態、すなわち蒸発形態と非蒸発形態を有する。それぞれのプロセスでは、まず、使用単量体、すなわち反応有機液体が脱気される。蒸発プロセスでは、単量体は、適切な量が超音波噴霧器を通して高温チューブに導入され、そこでフラッシュ蒸発し、単量体ガスとしてノズルから出る。単量体ガスは次いで、基板上で液体膜として凝縮し、その後、紫外線放射または電子線にさらされることによって固体ポリマーに架橋される。非蒸発プロセスでは、脱気された液体単量体がスロット付きダイ・オリフィスから基板上に押し出される。単量体は、次いで蒸発プロセスと同様に架橋される。塩類、黒鉛、または酸化物粉、およびその他の不揮発性材料を、単量体との均質混合物として堆積させることができる。このような混合物は、フラッシュ蒸発させることはできないが、電解液、陽極、陰極、および容量膜層には必要である。蒸発プロセスは、毎分1000フィート程度の速度で最大約10ミクロンの厚さを作製することが分かっている。非蒸発プロセスは、毎分数百フィートに近い基板速度で10ミクロンから約50ミルまでの厚さを堆積することが分かっている。PMLプロセスの様々な局面が、参照として本明細書に組み入れられる以下の米国特許に詳しく記載されている。第6,613,395号、Method of making molecularly doped composite polymer material、第6,570,325号、Environmental barrier material for organic light emitting device and method of making、第6,544,600号、Plasma enhanced chemical deposition of conjugated polymer、第6,522,967号、Environmental barrier material for organic light emitting device and method of making、第6,509,065号、Plasma enhanced chemical deposition of conjugated polymer、第6,506,461号、Methods for making polyurethanes as thin films、第6,497,924号、Method of making non-linear optical polymer、第6,497,598号、Environmental barrier material for organic light emitting device and method of making、第6,358,570号、Vacuum deposition and curing of oligomers and resins、第6,274,204号、Method of making non-linear optical polymer、第6,268,695号、Environmental barrier material for organic light emitting device and method of making、第6,288,436号、Method of making light emitting polymer composite material、第6,228,434号、Method of making a conformal coating of a microtextured surface、第6,224,948号、Plasma enhanced chemical deposition with low vapor pressure compounds、第6,217,947号、Plasma enhanced polymer deposition onto fixtures、第6,207,239号、Plasma enhanced chemical deposition of conjugated polymer、第6,207,238号、Plasma enhanced chemical deposition for high and/or low index of refraction polymers、第5,902,641号、Flash evaporation of liquid monomer particle mixture、第5,681,615号、Vacuum flash evaporated polymer composites、第5,547,508号、Vacuum deposition and curing of liquid monomers apparatus、第5,395,644号、Vacuum deposition and curing of liquid monomers、第5,260,095号、Vacuum deposition and curing of liquid monomers。
【0006】
残念なことに、PML蒸着の影響を受けやすい重合材料は電気的に不活性であり、ゲスト分子をPMLフラックスに組み入れることは不可能であるが、活性材料を十分に投入して効率的な低電圧OLEDのような電気的に活性のデバイスを実現することは困難である。さらに、一般に電子デバイスに適切な厚さの膜を作製するのに使用されるPMLの蒸発モードでは、ゲスト分子は、分別されてフラッシュ蒸発ボックスに入り、目標基板ではなくフラッシュ蒸発ボックスに蓄積する傾向がある。同様な手法が、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,471,327号に記載されている。米国特許第6,471,327号に記載されているように、機能材料を集束させる装置および方法は、機能材料との熱力学的に安定な混合物における加圧流体源を含む。入口および出口を有する放電装置は、入口が加圧源に連結される。放電装置は、機能材料のコリメート済みビームを生成するような形状を有し、この場合、流体は、放電装置の前方または後方の位置では気体状態である。流体は、圧縮液体と超臨界流体の一方であってよい。熱力学的に安定な混合物は、流体中に分散した機能材料と、流体中に溶解した機能材料とを含む。米国特許第6,471,327号に関する欠点には、超臨界流体などの高圧流体の取扱いに関する問題が含まれる。したがって、低コストまたは広域電子機器に関する製造上の問題を解決するには、PMLと同様の特性を有するが、有機半導体に有用であり、高圧下の気体に関する問題を解消する技術が必要である。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
したがって、本発明の目的は、非重合化合物の薄膜をコーティングする方法を提供する。本発明の方法は、いくつかの重要な点でPMLとは異なる。そのような重要な違いの1つは、一般に、フラッシュ蒸発ボックス内に向けられた超音波ノズルに液体形態で容易に供給される単量体材料またはオリゴマー材料から成り立つPMLコーティングと、一例として有機単量体のような、本発明のコーティングを最終的に形成する非重合化合物との違いに関する。本発明のコーティングは、主として室温で固体であり、多くは液相を通過せずに昇華し、したがって、PMLコーティングほど容易には蒸発しない。第2の重要な違いは、PMLコーティングは、単量体出発材またはオリゴマー出発材を使用するが、堆積の膜は通常、ポリマー状であるかまたは堆積直後の基板に対する処理によってポリマー状にされ、一方、本発明のコーティングは、化学的には出発材と実質的に同様であることである。これらの違いを解消するために、本発明は、非重合化合物と流体担体の混合物を提供する。混合物は通常、流体担体中の非重合化合物のスラリから成る。しかし、混合物は、非重合化合物の全部または一部を、流体担体中の溶液中に有しても、担体のコロイド状懸濁液として有しても、それらの組合せであってもよい。本明細書では、語「混合物」は、これらの可能性のすべてを考慮するように定義に解釈すべきである。この混合物は次いで、非重合化合物と流体担体の実質的に全部をガス状に転換するのに十分な内部温度を有する加熱された蒸発ボックスの内部につぎ込まれる。非重合化合物と流体担体は次いで、蒸発ボックス内の出口スリットを介して蒸発ボックスから取り出される。非重合化合物が凝縮する基板は、出口スリットに隣接し、真空状態に維持される。基板は、たとえばウェブ・ローラ上の蒸発ボックスに対して移動し、それによって、非重合化合物の連続的なコーティングを基板にコーティングするのが可能になる。
【0008】
通常、基板は、流体担体が基板上に凝縮しないような十分に高い温度に維持され、したがって、流体担体を含まない非重合コーティングのコーティングを形成することができる。しかし、この目的は、基板に接触したときに最初に凝縮する可能性のある流体担体が高速に蒸発するような十分に高い温度に基板を維持することによって実現することもできる。または、流体担体と非重合化合物の両方が蒸発ボックスの出口スリットの所で基板上に凝縮するのを可能にするのに十分な温度に基板を維持し、その後、基板の温度を、流体担体を蒸発させるのに十分な温度に上昇させることによって、流体担体を含まない非重合化合物のコーティングが同様に形成される。好ましい動作モードは、蒸発中の有機化合物および/または堆積後の膜の所望の形態(すなわち、結晶質または非晶質)に依存する可能性が高い。
【0009】
いずれの手法の下でも、目標は、流体担体を実質的に含まない非重合材料のコーティングを作製することである。このように、流体担体を捕捉することができ、その後流体担体を使用して、非重合化合物と流体担体との追加的な混合物を得ることが可能になる。流体担体の捕捉は、コールド・トラップを設けて流体担体を凝縮させることによって容易に行われる。
【0010】
このプロセス用の適切な装置が図1に示されている。図示のように、非重合化合物と流体担体1の混合物は、シリンジ・ポンプ4を有するリザーバ2内に維持されている。好ましくは、混合物を均質に維持するのに使用される、超音波攪拌、機械的振動、および磁気的攪拌を含むがそれらに限らない、混合物を攪拌する手段3をリザーバ2内に有する。ポンプ4が押されると、混合物1はキャピラリ5に沿って、好ましくは超音波チップまたは燃料噴射装置6の方へ送られる。混合物1はそれによって、超音波チップまたは燃料噴射装置6を通って蒸発ボックス内に噴霧形態で噴射される。蒸発ボックス7の内部は、加熱手段によって非重合化合物および流体担体を気体状態に維持するのに十分な温度に維持されている。制限するわけではないが、加熱手段は、図示のように抵抗コイル14を含んでよい。蒸発した流体担体および非重合化合物1は、出口スリット8を通って蒸発ボックス7から出て、非重合化合物は好ましくは、可動基板9上に凝縮する。制限するわけではないが、可動基板は、ウェブ・ローラ10上に設けることができる。可動基板は、ガラス板のように剛性であっても、プラスチック箔や金属箔のように可とう性であってもよい。ウェブ・ローラは、ポンプ11によって形成される真空に維持される。上記に指摘したように、流体担体を捕捉することができ、その後流体担体を使用して、ポンプの前方にコールド・トラップ12を設けることによって、非重合化合物と流体担体との追加的な混合物を得ることが可能になる。プラズマ源13を任意に使用して基板を処理し、それによって基板を洗浄し、基板上に堆積させられる層同士の付着を向上させることができる。蒸発ボックスの出口スリットは、図2に示されているように一連の出口スリットとして設けることもできる。
【0011】
非重合化合物と流体担体を完全に蒸発させるには、蒸発ボックス温度は、好ましくは100℃を超える。重要な基準は、ボックスが、流入する流体流全体を蒸発させるのに十分な程度に高温になり、かつこのような温度を所望の流体流入速度で維持するのに十分なエネルギーがボックスに与えられることである。このモードでは、基板上の堆積速度は、蒸発ボックスの温度には依存せず、流体ポンプ速度および基板上の凝縮効率にのみ依存する。さらに、たとえば混合物を使用することができ、制限するわけではないが、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル中の4%fac-トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムから成るドープ発光層、グリーンりん光OLED用の放射層を、成分と流体の両方を蒸発させるような温度に維持される蒸発ボックスで、流体担体中の成分材料の均質粉砕混合物から出発することによって堆積させることができる。これによって、空間的に分離された2つの供給源がそれぞれの供給源の温度によって調節される各材料の堆積速度で高真空チャンバ内で個々に加熱される、小分子有機半導体のドープ膜を作製するのに最も広く使用されている技術が改善される。問題は、蒸発速度が供給源温度に指数関数的に依存している第1のオーダーに対してであるので、非常に正確な温度調節が必要になることである。本発明では、蒸発ボックスを最低温度より高い温度に維持するだけでよく、堆積した膜の組成は実質的に、出発混合物の組成によって決定される。
【0012】
非重合化合物としては、金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートなどのOLED材料、または無機材料、あるいはそれらの混合物を含むがそれらに限定されない有機材料を選択することができる。本明細書では、語「非重合」は、混合物中に供給される化合物が、最終的に基板にコーティングされる化合物と実質的に同じであり、通常のPMLプロセスとは異なり重合されないことに留意されたい。したがって、特に、重合が可能であるが、蒸着プロセス中には重合されないいくつかの単量体は、本明細書では「非重合」化合物と呼ばれる。IUPAC定義に従ってオリゴマーも含まれる。適切なOLED材料は、OLED製造技術およびOLEDを利用した多層材料に適した構造と共に、特許文献に詳しく記載されている。適切なOLEDは、参照として本明細書に組み入れられる以下の米国特許に記載されている。第6,613,395号"Method of Making Molecularly Doped Composite Polymer Material." (2003)、第6,602,540号"Fabrication of non-polymeric flexible organic light emitting devices." (2003)、第6,596,134号"Method of Fabricating Transparent Contacts for Organic Devices." (2003)、第6,582,838号"Red-emitting organic light emitting devices (OLED's)." (2003)、第6,579,632号"OLEDs doped with phosphorescent compounds." (2003)、第6,570,325号"Environmental Barrier Material for Organic Light Emitting Device and Method of Making." (2003)、第6,558,736号"Low pressure vapor phase deposition of organic thin films." (2003)、第6,548,956号"Transparent contacts for organic devices." (2003)、第6,497,924号"Method of Making a Nonlinear Optical Polymer." (2002)、第6,469,437号"Highly Transparent Organic Light Emitting Devices Employing a Non-Metallic Cathode" (2002)、第6,468,819号"Method for Patterning Organic Thin Film Devices Using a Die"(2002)、第6,451,455号"Metal Complexes Bearing Both Electron Transporting and Hole Transporting Moieties" (2002)、第6,420,031号"Highly Transparent Non-Metallic Cathodes" (2002)、第6,403,392号"Method for Patterning Devices" (2002)、第6,396,860号"Organic Semiconductor Laser." (2002)、第6,365,270号"Organic Light Emitting Devices" (2002)、第6,358,631号"Mixed Vapor Deposited Films for Electroluminescent Devices" (2002)、第6,337,102号"Low Pressure Vapor Phase Deposition of Organic Thin Films." (2002)、第6,329,085号"Red-Emitting Organic Light Emitting Devices (OLED)" (2001)、第6,330,262号"Organic Semiconductor Lasers" (2001)、第6,303,238号"OLEDs doped with phosphorescent compounds" (2001)、第6,297,516号"Method for Deposition and Patterning of Organic Thin Film." (2001)、第6,294,398号"Method for Patterning Devices." (2001)、第6,274,980号"Single Color Stacked Organic Light Emitting Device." (2001)、第6,264,805号"Method of Fabricating Transparent Contacts for Organic Devices." (2001)、第6,232,714号"Saturated Full Color Stacked Organic Light Emitting Devices." (2001)、第6,214,631号"Method for Patterning Light Emitting Devices Incorporating a Movable Mask." (2001)、第6,160,828号"Organic Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser." (2000)、第6,125,226号"Light Emitting Devices Having High Brightness." (2000)、第6,111,902号"Organic Semiconductor Laser." (2000)、第6,097,147号"Structure for High Efficiency Electroluminescent Device." (2000)、第6,091,195号"Displays Having Mesa Pixel Configuration." (2000)、第6,048,630号"Red-Emitting Organic Light Emitting Devices (OLEDs)" (2000)、第6,046,543号"High Reliability, High Efficiency, Integratable Organic Light Emitting Devices and Methods of Producing Same" (2000)、第6,045,930号"Materials for Multicolor Light Emitting Diodes" (2000)、第6,030,715号"Azlactone-Related Dopants in the Emissive Layer of an OLED" (2000)、第6,030,700号"Organic Light Emitting Devices" (2000)、第6,013,538号"Method of Fabricating and Patterning OLEDs" (1999)、第6,005,252号"Method and Apparatus for Measuring Film Spectral Properties" (1999)、第5,998,803号"An Organic Light Emitting Device Containing a Hole Injection Enhancement Layer" (1999)、第5,986,401号"High Contrast Transparent Organic Light Emitting Device Display" (1999)、第5,981,306号"Method for Depositing Indium Tin Oxide Layers in Organic Light Emitting Devices" (1999)、第5,986,268号"Organic Luminescent Coating for Light Detectors" (1999)、第5,953,587号"Method for Deposition and Patterning of Organic Thin Film" (1999)、第5,917,280号"Stacked Organic Light Emitting Devices" (1999)、第5,932,895号"Saturated Full Color Stacked Organic Light Emitting Devices" (1999)、第5,874,803号"Light Emitting Device with Stack of OLEDs and Phosphor Downconverter" (1999)、第5,861,219号"Organic Light Emitting Devices Containing a Metal Complex of 5-Hydroxy-Quinoxaline As a Host Material" (1999)、第5,844,363号"Vacuum Deposited Non-polymeric Flexible Organic Light Emitting Devices" (1998)、第5,834,893号"High Efficiency Organic Light Emitting Devices with Light Directing Structures" (1998)、第5,757,139号"Driving Circuit for Stacked Organic Light Emitting Devices" (1998)、第5,757,026号"Multicolor OLED" (1998)、第5,721,160号"Multicolor Organic Light Emitting Devices" (1998)、第5,707,745号"Multicolor Organic Light Emitting Devices" (1998)、第5,703,436号"Transparent Contacts for Organic Devices" (1997)、第5,554,220号"Method and Apparatus Using Organic Vapor Phase Deposition for the Growth of Organic Thin Films with Large Optical Non-Linearities" (1996)。当業者に認識されるように、本発明は、発光デバイスの製造だけでなく、薄膜トランジスタ、光起電デバイス、ならびに有機材料の薄いコーティングを必要とするその他のデバイスおよび製品の製造に容易に適用可能である。
【0013】
流体担体は好ましくは、蒸発ボックスの好ましい温度で容易に蒸発し、非重合化合物の凝縮温度よりも高い温度で凝縮する流体である。適切な流体担体には、直鎖および分岐アルコールおよびジオール、アミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン、トルエン、ケトン、エステル、ハロゲン化溶媒、およびそれらの組合せが含まれるが、それらに限らない。
【0014】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の好ましい一態様を実証するために実験を行った。上記に説明し図1に示した装置は、既存のPMLシステムを修正することによって組み立てられており、これによって、溶媒担体に溶かした小分子有機半導体を搬送し、その後堆積させることが可能になった。シリンジ・ポンプは、有機/溶媒混合物を蒸発ボックスに噴霧する噴射装置に一定流量で該混合物を供給する供給源リザーバとして働いた。蒸発ボックスの温度は、混合物全体が、ボックス内に材料が堆積しないようにするのに十分な速度で蒸発するのに十分な温度であった。蒸気流は、スリットから出て可動ウェブ上に送られ、温度は所望の有機半導体のみが固体膜として堆積するように調節され、溶媒は堆積することも高速に蒸発することもなく、蒸着チャンバからつぎ込まれる。このようなPoP実験では、典型的な有機発光半導体、すなわち、アルミニウム(8-ヒドロキシキノリン)キレート(Alq3)の薄膜を、乳鉢および乳棒によって粉砕し、次いで超音波攪拌によって1-ヘキサノールと混合することによりスラリに形成した。Alq3の1-ヘキサノールへの投入量は約30重量%であった。システムにおける2回の別々のパスを使用して2層有機発光デバイスを組み立てた。基板は、幅7インチであり、最高毎分約10フィートの速度でシステムを通過させた。ただし、これよりもずっと速い速度が可能である。ウェブ温度を70°Fから90°Fの間に維持した。これらのPoP実験では、蒸発ボックスの温度を500°Fから700°Fの間に維持した。シリンジ・ポンプは、0.11 ml/分から1.65 ml/分の間の割合で混合物を供給した。ポンプ内の圧力を5psiから15psiの間に維持し、ポンプと蒸発ボックスとの間のキャピラリの内径を30 milから20 mlに縮め、ポンプ内に背圧を維持した。この直径は、この実験に使用した特定の圧力範囲および混合物に適していたが、当業者には、ポンプ内の背圧を防止する適切なサイズが混合物の粘度に依存することが認識され、それに応じてキャピラリが選択されよう。ウェブ・ローラを囲む真空を10-5トルから10-4トルの間に維持した。従来の真空熱成膜装置を使用して電極を取り付け、得られたデバイスが、挿入電流に応答して発光することを確認した。この実験によって作製された膜の例を図3に示す。
【0015】
このプロセスの製造形態では、溶媒を再循環用に回収することができる。この実験に使用した溶媒は1-ヘキサノールであり、非重合化合物はAlq3であった。しかし、1-ヘキサノールがAlq3には不十分な溶媒であり、この混合物が主として透明溶液ではなく(粉砕および超音波攪拌によって作られた)微細スラリであることに留意されたい。このことは、スラリが供給システムに詰まらないかぎりプロセスに対して許容される。溶媒の役割は、再充填可能な連続供給流体源としての役割に過ぎず、溶媒は、堆積後の薄膜に取り込まれないように構成される。溶媒の望ましい特性は、堆積後の膜への取込みを最小限に抑えるための十分に高い蒸気圧と、混合物を陽圧の下で供給システム内をうまく搬送するのに適した粘度(すなわち、温度調節ではなく流量調節)である。
【0016】
本発明の他の態様には、2つ以上の流体源リザーバが多重弁によって切り換えられる、上記の構成に基づく連続供給システムが含まれるがそれに限らない。蒸発ボックスの温度は、流体として流入するあらゆるものが蒸気として出るように調節され、したがって、膜厚は温度ではなく流量によって調節される。2つ以上の熱蒸発源を独立に制御する熱蒸発システムに使用されている現在の方法ではなく、流体リザーバにドーパントを事前に混合することによってドープ率を非常に正確に調節することによって、ドープ膜も使用可能である。熱昇華システムにおける蒸発率は温度に指数関数的に依存するので、正確なドープ制御は困難である。したがって、本発明はこの欠点を解消する。
【0017】
何らかの理由で事前混合が禁止されている場合、計量された複数の供給源が、別々の噴霧器を介するか、または両方の供給源を同じ噴霧器内に送ることによって、互いに独立に調節された速度で同じ蒸発ボックスに供給することができる。
【0018】
スリットから基板までの距離は、成膜装置の形状によって設定される限界内で調整することができるが、スリット・サイズ、流量、温度(したがって、ボックス内の圧力)を適切に最適化すれば、スリットから基板までの距離が短くても(すなわち、1cm以下)非常に長い出口スリット全体にわたって良好な一様性を得ることができる。これによって、複数の出口ノズルを使用して、インクジェット印刷に類似の(しかし、インクジェット印刷とは異なる)技術で、有機半導体の粗なパターン化を行う図2に示されている態様が得られる。マイクロ流体技術を使用して組み立てられたミクロン・スケール・ノズルは、基板上にミクロン・スケールのパターン化膜を堆積させることができる。他の態様では、各ノズルを、異なる供給源リザーバに連結し、たとえば、可動ウェブ上に赤色、青色、および緑色発光層を同時に堆積させたり、トランジスタ用途の場合に、有機電子回路の異種集積用のp、n、および金属有機材料を同時に堆積させたりするのを可能にするように別個の温度に調節することができる。基板位置の横ジッタを使用して、各パターンの縁部に予想されるガウス型線形を鋭くすることができ、小形シャッタを各ノズルの上方に設置することによって、基板搬送方向におけるパターン化を行うことができる。
【0019】
結び
本発明の好ましい態様を図示し説明したが、当業者には、本発明の広義の局面から逸脱せずに多数の変更および修正を施せることが明らかになろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の要旨および範囲内のすべてのそのような変更および修正を対象とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】PoP実験を行うのに使用された本発明の好ましい態様を示す概略図である。
【図2】蒸発ボックス内の複数のスリットを示す本発明の好ましい態様を示す概略図である。
【図3】上述の「好ましい態様の詳細な説明」に記載されたPoP実験によって得られた膜を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、基板上に非重合化合物の薄膜をコーティングする方法:
a. 該非重合化合物と流体担体の混合物を提供する段階;
b. 加熱された蒸発ボックスの内部に該混合物をつぎ込む段階;
c. 該非重合化合物および流体担体の実質的に全部をガス状に転換するのに十分な該加熱された蒸発ボックス内の温度に該混合物をさらす段階;
d. 該ガス状の該非重合化合物および流体担体を、該蒸発ボックス内の出口スリットを通して取り出す段階;ならびに
e. 真空に維持され該蒸発ボックス内の該出口スリットに対して移動する基板上に該非重合化合物を凝縮させる段階。
【請求項2】
流体担体が、基板上に凝縮しないような十分に高い温度に基板を維持する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
基板に接触している流体担体が、蒸発するように十分に高い温度に基板を維持する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法:
a. 流体担体および非重合化合物の両方を蒸発ボックスの出口スリットの所で基板上に凝縮するさせるのに十分な低い温度に基板を維持する段階;ならびに
b. その後、基板の温度を流体担体を蒸発させるのに十分な温度まで上昇させる段階。
【請求項5】
流体担体を捕捉し、その後、流体担体を再循環させて、非重合化合物の追加的な混合物を流体担体に提供する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該真空を得るのに使用されるポンプの前方にコールド・トラップを提供して流体担体を凝縮させる段階をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
該基板が、ウェブ・ローラ上に設けられる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該ボックス温度が、100℃を超える温度として供給される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
非重合化合物が、有機材料として選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該有機材料が、OLED材料および金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートから成る群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項11】
非重合化合物が、無機材料として選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
溶媒が、直鎖および分岐アルコールおよびジオール、アミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン、トルエン、ケトン、エステル、ハロゲン化溶媒、1-ヘキサノール、ならびにこれらの組合せから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
非重合化合物が、有機材料と無機材料の混合物として選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
該出口スリットが、一連の出口スリットとして設けられる、請求項1記載の方法。
【請求項15】
該混合物が、該蒸発ボックスの内側に微細なスプレーに噴霧化される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
該混合物が、超音波チップまたは燃料噴射装置を使用して微細なスプレーに噴霧化される、請求項16記載の方法。
【請求項17】
該混合物を、蒸発ボックスに導入する前に供給源リザーバ内で攪拌する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
該攪拌が、超音波攪拌、機械的振動、磁気的攪拌、およびそれらの組合せによってもたらされる、請求項18記載の方法。
【請求項19】
以下の段階を含む、基板上に金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートの薄膜をコーティングする方法:
a. 金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートと1-ヘキサノールの混合物を供給する段階;
b. 加熱された蒸発ボックスの内部に該混合物をつぎ込む段階;
c. 該金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートおよび1-ヘキサノールの実質的に全部をガス状に転換するのに十分な、該加熱された蒸発ボックス内の温度に該混合物をさらす段階;
d. 該ガス状の金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートおよび1-ヘキサノールを、該蒸発ボックス内の出口スリットを通して取り出す段階;ならびに
e. 真空に維持され該蒸発ボックス内の該出口スリットに対して移動する基板上に該金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートを凝縮させる段階。
【請求項20】
1-ヘキサノールが、基板上に凝縮しないよう十分に高い温度に基板を維持する段階をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項21】
基板に接触しているあらゆる1-ヘキサノールが、蒸発するよう十分に高い温度に基板を維持する段階をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
以下の段階をさらに含む、請求項20記載の方法:
a. 金属(8-ヒドロキシキノリン)キレートと1-ヘキサノールの両方を蒸発ボックスの出口スリットの所で基板上に凝縮するさせるのに十分な低い温度に基板を維持する段階;および
b. その後、基板の温度を、1-ヘキサノールを蒸発させるのに十分な温度まで上昇させる段階。
【請求項23】
該非重合化合物が、発光デバイスの一部または全部を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
該非重合化合物が、薄膜トランジスタの一部または全部を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
該非重合化合物が、光起電デバイスの一部または全部を形成する、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−517134(P2007−517134A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535551(P2006−535551)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/032861
【国際公開番号】WO2005/040450
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(504267013)バッテル メモリアル インスティチュート (8)
【Fターム(参考)】