説明

運転支援システム

【課題】燃料消費量の低減を図った給油指示を行う運転支援システムを提供する。
【解決手段】CPU21aが給油所から目的地までの運行によって車両が消費する燃料消費量を推定し、推定された燃料消費量と燃料残量とに基づき給油所での給油量を報知する。また、CPU21aは現在位置から目的地までの経路上にある給油所を検索し、複数検索された場合、現在位置から各給油所までの燃料消費量を推論し、推定した複数の燃料消費量から燃料残量を越えた燃料消費量を除いたもののうち、最大の燃料消費量が推論された給油所を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システムに係り、特に、給油指示を行う運転支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した給油指示を行う運転支援システムとしては、例えば、特許文献1、2に記載されたナビゲーション装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のものでは、車両の残燃料検出手段により残燃料が所定値以下になった場合に、運転者に給油時期が来たことを知らせ、経路上の給油所までの誘導を行う。
【0003】
また、特許文献2に記載のものでは、現在位置から目的地までの距離と、燃料の残量と、燃費とに基づいて、目的地に到達するまでに燃料切れが発生するか否か判別し、目的地に到達するまでに燃料切れが発生すると判別されたときに、そのことを運転者に報知する。さらに、燃料切れが発生すると判別されたとき、現在の燃料残量で到達しうる給油所を検索し、検索した給油所数Nが所定数N0以上である場合には、現在位置からの距離が遠いものから順にN0個の給油所が選択され、それらが最終的な給油候補として出力される。
【特許文献1】特開平5−71974号公報
【特許文献2】特開平11−14381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に配送業者において、配送車の燃料消費量は配送コストに反映することになるから、配送コストを下げるために、なるべく走行にかかる燃料消費量を減らしたいという要望があった。そこで配送業者では、事業所に給油所があるときは出発時に満タンにせず、運行が行えるぎりぎりの量を給油した状態で運行開始して、これにより車両総重量を減らし、省燃費化を図るという試みが行われていた。
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の発明では、現在の燃料残量で目的地まで到着するか否かを報知するだけで、その運行を行うためにどのくらいの給油が必要かを指示するものではない。従って、運転者自身が運行前に必要な給油量を判断して給油しなけばならなかった。
【0006】
また、運行途中で給油が必要なときも残量がゼロに近い状態で給油所に入り、その給油所から残りの運行に必要な分だけ給油することが省燃費化には望ましい。しかしながら、特許文献1又は2記載の発明では、省燃費という観点から給油所の誘導をおこなっていない。また、給油所に誘導するだけで、その給油所でどのくらいの給油量が必要か指示するものではない。従って、この場合も運転者自身がその給油所から残りの運行に必要な給油量を判断して給油しなければならなかった。いずれにしても従来では、省燃費を図るための給油指示を行うものはなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、燃料消費量の低減を図った給油指示を行う運転支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、給油所から目的地までの運行によって車両が消費する燃料消費量を推論する推論手段と、燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、前記推論された燃料消費量と前記計測した燃料残量とに基づき前記給油所での給油量を報知する給油量報知手段とを備えたことを特徴とする運転支援システムに存する。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、推定手段が給油所から目的地までの運行によって車両が消費する燃料消費量を推定する。給油量報知手段が推定された燃料消費量と燃料残量とに基づき給油所での給油量を報知する。従って、燃料残量が目的地までの運行に必要な燃料消費量となるぎりぎりの給油量を報知することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の運転支援システムであって、前記推論手段は、出発地及び目的地を含む運行情報の入力に応じて、前記出発地を前記給油所として推論を開始することを特徴とする運転支援システムに存する。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、推論手段が、出発地及び目的地を含む運行情報の入力に応じて、出発地を給油所として推論を開始する。従って、運行情報の入力に応じて推論を開始することにより、運行前に省燃費となる最適な給油量を報知することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、現在位置から目的地までの経路上にある給油所を検索する給油所検索手段と、前記給油所が複数検索された場合、現在位置から前記各給油所までの燃料消費量を推論する推論手段と、燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、前記推定した複数の燃料消費量から前記計測した燃料残量を越えた燃料消費量を除いたもののうち、最大の燃料消費量が推論された給油所を報知する給油所報知手段とを備えたことを特徴とする運転支援システムに存する。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、給油所検索手段は、現在位置から目的地までの経路上にある給油所を検索する。推論手段は、給油所が複数検索された場合、現在位置から各給油所までの燃料消費量を推論する。給油所報知手段は、推定した複数の燃料消費量から燃料残量を越えた燃料消費量を除いたもののうち、最大の燃料消費量が推論された給油所を報知する。従って、燃料残量がゼロに最も近くなる時点で通過する給油所を報知することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の運転支援システムであって、前記推論手段は、前記車両が走行している走行経路に関する走行経路情報を検出する走行経路情報検出手段と、前記車両の燃費情報を検出する燃費情報検出手段と、前記検出された現走行経路情報を入力とし、前記検出された現燃費情報を出力とする学習を行う学習手段とを有し、前記学習手段が行った学習結果を用いて、前記走行経路情報を入力とし、前記燃費情報を出力とする推論を行い、該推論を用いて前記燃料消費量を推論することを特徴とする運転支援システムに存する。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、推論手段において、走行経路情報検出手段は車両が走行している走行経路に関する走行経路情報を検出し、燃費情報検出手段は車両の燃費情報を検出し、学習手段は検出された現走行経路情報を入力とし、検出された現燃費情報を出力とする学習を行う。推論手段は、学習手段が行った学習結果を用いて、走行経路情報を入力とし、燃費情報を出力とする推論を行い、該推論を用いて燃料消費量を推論する。従って、走行経路情報検出手段及び燃費検出手段による検出結果を用いて、走行経路情報を入力とし、燃費情報を出力とした学習が行われ、その学習結果を用いて燃料消費量の推論が行われる。つまり、走行中に行われる学習により走行経路情報と燃費情報との関係を得ることができ、予め走行経路情報と燃費情報との関係を示すマップを作成する必要がない。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、燃料残量が目的地までの運行に必要な燃料消費量となるぎりぎりの給油量を報知することができるので、運転者自身が給油量を考えなくても、給油量報知に従って給油すれば最も車両重量を軽くして走行できる。すなわち最も燃費が良くなる給油指示を行うことができる運転支援システムを得ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、運行情報の入力に応じて推論を開始することにより、運行前に省燃費となる最適な給油量を報知することができるので、出発地に給油所があった場合は給油量を最適にして出発することができる運転支援システムを得ることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、燃料残量がゼロに最も近くなる時点で通過する給油所を報知することができるので、運転者自身が給油タイミングを考えなくても、給油所報知に従って給油すれば最も車両重量を軽くして走行できる。すなわち最も燃費が良くなる給油指示を行うことができる運転支援システムを得ることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、走行経路情報検出手段及び燃費検出手段による検出結果を用いて、走行経路情報を入力とし、燃費情報を出力とした学習が行われ、その学習結果を用いて燃料消費量の推論が行われる。つまり、走行中に行われる学習により走行経路情報と燃費情報との関係を得ることができ、予め走行経路情報と燃費情報との関係を示すマップを作成する必要がないので、コストダウンを図ると共に、車両を選ばず搭載することができる運転支援システムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の運転支援システムを、図面に基づいて説明する。本発明の運転支援システムは、例えば、荷物の回収、配達を行う配送車両に対して給油指示を行うシステムである。図1は、本発明の運転支援システムを組み込んだナビゲーション装置の一実施形態を示すブロック図である。同図に示すように、本発明のナビゲーション装置20内に備えられたマイクロコンピュータ(以下、μCOM)21には、燃料が例えば1cc消費される毎に出力される燃料パルスPfが供給されている。
【0021】
上述したμCOM21にはまた、全地球測位システム(Global Positioning System)を構成する人工衛星から測位信号S1をGPSアンテナAT1を用いて受信するGPSレシーバ22と、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication)を構成するVICSセンタからの渋滞情報、道路規制情報などを含む道路情報S2をVICSアンテナAT2を用いて受信するVICSレシーバ23と、車両の重量を計測して、自重情報Wを出力する自重計24とが接続され、上述した測位信号S1、道路情報S2及び自重情報Wがそれぞれ供給されている。
【0022】
μCOM21にはまた、地図データが格納された地図記憶部25と、液晶ディスプレイなどから構成される表示器26と、燃料残量を計測する燃料残量計27(=燃料残量計測手段)とが接続され、上述した燃料残量Sfが供給されている。
【0023】
μCOM21は、プログラムに従って各種の処理を行う中央処理ユニット(CPU)21a、CPU21aが行う処理のプログラムなどを格納した読み出し専用メモリであるROM21b、CPU21aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM21cなどを内蔵している。
【0024】
上述した構成のナビゲーション装置の動作について、図2〜図5を参照して以下説明する。CPU21aは、図2に示すようなファジィ化ニューロネットワークに従って、走行経路情報Rと、渋滞発生箇所、渋滞距離及び渋滞通過時間を含んだ渋滞情報T、自重情報Wを入力データとし、単位距離(例えば100m)当たりの燃料消費量αを出力データとした学習・推論を行うようになっている。なお、地図データ上において走行経路には予め番号R1、R2…などが割り振られており、車両が走行した経路に割り振られた番号を走行経路情報Rとして入力する。
【0025】
まず、ナビゲーション装置20内のCPU21aは、学習手段として働き、上述した学習を行うため、例えば、100mといった一定距離走行する毎に、学習データ作成処理を実行する。この学習データ作成処理におけるCPU21aの処理手順を図3のフローチャートを参照して以下説明する。ステップS1において、CPU21aは、走行経路情報検出手段として働き、GPSレシーバ22が受信した測位信号S1から現在位置を求め、求めた現在位置と地図記憶部25に記憶された地図データとから現走行経路情報Rpを検出する。
【0026】
また、CPU21aは、VICSレシーバ23が受信した道路情報S2から現渋滞情報Tpを検出する。さらに、CPU21aは、燃費情報検出手段として働き、燃料パルスPfから現在の100m当たりの燃料消費量αp(cc)を検出し、自重計24から現自重情報Wpを検出する。
【0027】
ステップS2においてCPU21aは、下記に示すように、検出した現走行経路情報Rp、現渋滞情報Tp、現自重情報Wpを入力データIwとし、現燃料消費量αpを出力データOw(教師信号)とした学習データを作成する。
Iw=(Rp、Tp、Wp)
Ow=(αp)
なお、図2のファジィ化ニューロを用いての学習・推論の詳細については後述する。
【0028】
また、運転者が運行情報を入力すると、ナビゲーション装置20内のCPU21aはナビゲーション処理を開始する。上記運行情報として、例えば、事業所Aから配送先P1でX1kgの荷物を積載し、配送先P2でX2kgの荷物をおろした後、事業所Aに戻る運行に関する情報が入力されたものとして以下説明する。ナビゲーション処理において、CPU21aは、地図記憶部25内の地図データから上述した運行を行うための経路検索を行う(ステップS10)。このとき、CPU21aは、VICSレシーバ23が受信した道路情報S2に含まれる道路規制情報から通行禁止箇所を検出し、通行禁止箇所を通る経路は除くように経路検索を行う。
【0029】
次に、CPU21aは、推論手段として働き、図2に示すファジィ化ニューロを用いて上記運行にかかる燃料消費量を推定する(ステップS11)。ステップS10において、CPU21aはまず図2に示すようなニューロネットワークへの入力するための(走行経路情報R、渋滞情報T、自重情報W)からなる入力データを作成する。入力データ作成において、まずCPU21aは、VICSレシーバ23が受信した道路情報S2から現渋滞情報Tpを求める。
【0030】
次に、CPU21aは、例えば、ステップS10の経路検索において、図5に示すように事業所Aから走行経路R1→R2を経由して配送先P1に至る経路R11と、走行経路R1→R3→R2を経由して配送先P1に至る経路R12との複数の経路を検索した場合、それぞれの経路R11、R12を構成する走行経路R1、R2、R3と、現渋滞情報Tp及び現自重情報Wpとを組み合わせた複数パターンの入力データI1、I2、I3を作成する。
I1=(R1、Tp、Wp)
I2=(R1、Tp、Wp)
I3=(R3、Tp、Wp)
【0031】
同様に、CPU21aは、例えば、ステップS10の経路検索において、図5に示すように、配送先P1から走行経路R4→R5を経由して配送先P2に至る経路R21と、走行経路R6のみを経由して配送先P2に至る経路R22との2つの走行経路を検索した場合、それぞれの経路R21、R22を構成する走行経路R4、R5、R6と、現渋滞情報Tp及び現自重情報Wpに積載量X1を加算した値とを組み合わせた複数パターンの入力データI4、I5、I6を作成する。
I4=(R4、Tp、Wp+X1)
I5=(R5、Tp、Wp+X1)
I6=(R6、Tp、Wp+X1)
【0032】
さらに同様に、CPU21aは、例えば、ステップS10の経路検索において、図5に示すように配送先P2から走行経路R5→R1を経由して事業所Aにいたる経路R31しか検索しなかった場合、経路R31を構成する走行経路R5、R1と、現渋滞情報Tp及び現自重情報Wpに積載量X1を加算し、荷卸量X2を減算した値とを組み合わせた複数パターンの入力データI7、I8を作成する。
I7=(R5、Tp、Wp+X1−X2)
I8=(R1、Tp、Wp+X1−X2)
【0033】
次に、CPU21aには、図3に示すようなネットワークに、生成した入力データI1〜I8を入力して、入力データI1〜I8に対する燃料消費量α1〜α8を推論する推論処理を行う。
【0034】
ここで、入力データI1=(R1、Tp、Wp)の入力に対して出力された燃料消費量α1は、渋滞情報Tp、自重情報Wpのときに走行経路R1を単位距離走行する毎に消費される燃料消費量の推定値に相当する。燃料消費量α2〜α8についても以下同様である。そこで、この燃料消費量α1〜α3に、経路R11、R12における走行経路R1〜R3の距離/単位距離を乗じて、走行経路R11、R12にかかる燃料消費量α11、α12をそれぞれ求める(例えば、経路R11が、ymの走行経路R1と、zmの走行経路R2とから構成されていれば、経路R11の走行にかかる燃料消費量α11は、α1×y/単位距離+α2×z/単位距離(cc)から求める)。また、燃料消費量α4〜α6に基づいて、走行経路R21、R22の走行にかかる燃料消費量α21、α22をそれぞれ求める。さらに、燃料消費量α7、α8に基づいて、走行経路R31の走行にかかる燃料消費量α31を求める。
【0035】
CPU21aは、推定した燃料消費量α11、α12のうち最も少ない燃料消費量α1minと、推論した燃料消費量α21、α22のうち最も少ない燃料消費量α2minと、推論した燃料消費量α31とを加算した値(=α1min+α2min+α31)を推論燃料消費量とする。
【0036】
その後、CPU21aは、配送先P1、配送先P2を経由地とする経路案内をスタートする(ステップS12)。このとき、事業所Aから配送先P1までの経路としては、例えば、推論した燃料消費量α11、α12のうち、α11が最小値であれば経路R11を案内し、α12が最小であれば経路R12を案内する。同様に配送先P2から配送先P3までの経路としては、たとえば、推論した燃料消費量α21、α22のうち、α21が最小であれば経路R21を案内し、α22が最小であれば経路R22を案内する。また、配送先P2から事業所Aまでの経路としては、経路R31を案内する。
【0037】
また、CPU21aは、給油量報知手段として働き、ステップS10で求めた推論燃料消費量から燃料残量計27が計測した燃料残量Sfを差し引いた値を給油量として表示器25に表示する(ステップS13)。これにより、運転者は運行前に事業所Aでどの程度給油すれば最小の燃料残量で運行できるかを把握することができる。なお、表示する給油量としては、例えば、推定燃料消費量から燃料残量Sfを差し引いた値に、安全マージン分を加算したものを給油量として表示してもよい。
【0038】
以上の給油量の表示により、車両の燃料残量が出発地から目的地までの運行に必要な燃料消費量となるぎりぎりの給油量を報知することができる。これにより、運転者自身が運行前に給油量を考えなくても、給油量報知に従って給油すれば最も車両重量を軽くして走行できる。すなわち最も燃費が良くなる給油量の指示を行うことができる。また、運行情報の入力に応じて燃料消費量の推論を開始して、給油量を報知することにより、運行前に省燃費となる最適な給油量を報知することができる。これにより、出発地に給油所があった場合は給油量を最適にして出発することができる。
【0039】
また、運行開始後に燃料残量Sfが所定量以下となると(ステップS14でY)、CPU21aは、給油所検索手段として働き、地図記憶部25からステップS11で案内を開始している走行経路上の給油所を検索する(ステップS15)。その後、CPU21aは、推論手段として働き、例えば複数の給油所G1〜Gnが検索できた場合、現在位置から各給油所G1〜Gnに到着するまでに消費する燃料消費量αg1〜αgnを推定する(ステップS16)。
【0040】
次に、CPU21aは、給油所報知手段として働き、推定した燃料消費量αg1〜αgnから現燃料残量Sfを超えるものは除き、除いた推定燃料消費量αg1〜αgnうちから最も多い燃料消費量αgmに対応する給油所Gmでの給油を指示する(ステップS17)。これにより、燃料残量がゼロに最も近くなる時点で通過する給油所Gmを報知することができ、運転者自身が給油タイミングを考えなくても、指示された給油所に従って給油すれば最も車両重量を軽くして走行できる。すなわち最も燃費が良くなる給油タイミングでの給油を行うことができる。
【0041】
その後、CPU21aは、測位信号S1に基づき給油を指示された給油所Gmに到着したと判断すると(ステップS18でY)、推論手段として働き、その給油所Gmから残りの運行にかかる燃料消費量を推定し(ステップS19)、給油量報知手段として働き、推定した燃料消費量から現燃料残量Sfを減じた値を給油量として表示器に表示して(ステップS20)、ステップS14に戻る。これにより、運転者自身が給油量を考えなくても、給油量報知に従って給油すれば最も車両重量を軽くして走行できる。すなわち最も燃費が良くなる給油量の指示を行うことができる。
【0042】
これに対して、CPU21aは、給油所Gmに到着していないと判断すると(ステップS18でN)、再びステップS14に戻り、ステップS15〜S18の処理が繰り返し行われる。また、このナビゲーション処理は、配送車が事業所Aに戻ってきて運行終了されると、終了する。
【0043】
本実施形態における学習・推論では、ファジィ化ニューロを用いている。ファジィ化ニューロとは、従来のニューラクネットワークとファジィ推論との互いの長所を融合させたものである。このファジィ化ニューロは、ファジ推論において一般的に用いられている台形状のメンバーシップ関数(以下、MF)というフィルタ関数と、重みwを持った素子を基本構成要素としている。このMFは、図2に示すように、入力データの度数分布を正規分布に近似することにより表現している。
【0044】
図2にファジィ化ニューロのネットワーク構成を示す。基本的なネットワーク構成としては、正規化テーブルNT1〜NT3からなる入力部、パターンセットPS1〜PS3、パターンテーブルPT1及びPT2の3層構造からなる前段部と、パターンセットPS4及びPS5、正規化テーブルNT4の2層構造からなり、前段部を反転させたような後段部とからなっている。入力部では、入力データはそれぞれ正規化テーブルNT1〜NT3にて正規化データに変換される。正規化された各入力データはそれぞれMFに入力され、そこで合致度に変換される。
【0045】
次段のパターンセットPS1〜PS3は、MFの集合体で構成され、各MFにより得られた合致度を、重みを用いて合成したものを出力とする。出力部のパターンテーブルPT1及びPT2では、複数のパターンセットPS1〜PS3から出力される合致度の中で最大のものを後段部へ出力する。後段部において、パターンセットPS4及びPS5では、パターンテーブルPT1及びPT2からの出力のうち、閾値を超えたものが出力され、その合致度によってリンク上のMFを変形し、後段の正規化テーブルNT4に伝達する。正規化テーブルNT4においては、伝達されたMF形状を合成したものの重心を取るなどしてデ・ファジィ化して、教示された出力データと等価な次元を持つ連続値に変換する。
【0046】
また、学習処理では、学習データ作成処理により作成された現走行経路情報Rp、渋滞情報Tp、現自重情報Wpを入力とし、単位距離走行当たりの現燃料消費量αpを教師信号として、メンバーシップ関数の形状変更やパターンセットの自動生成を行うが、このファジィ化ニューロでは1件の教師信号ごとに学習するのではなく、一定数蓄積後にまとめて学習するため、高速学習が可能となっている。
【0047】
また、上述したナビゲーション装置によれば、走行中に行われる学習により走行経路と燃料消費量との関係を得ることができ、予め走行経路と燃料消費量との関係を示すマップを作成する必要がなく、コストダウンを図ると共に、車両を選ばずに搭載することができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、図2に示すように、走行経路情報R、渋滞情報T、自重情報Wを入力として、燃費情報αを出力とした学習、推論に基づいて、例えば図5に示す経路R11、R12、R21、R22、R31を走行したときに消費する燃料消費量α11、α12、α21、α22、α31を求めていた。しかしながら、例えば、走行経路や渋滞状況によって車両の速度が変動し、この速度の変動に応じて燃費が変動することに着目し、走行経路情報Rの代わりに車両の速度vを入力として、学習・推論することも考えられる。
【0049】
具体的には、図4に示す学習データ作成処理において、CPU21aは、速度検出手段として働き、速度センサからの速度パルスに基づいて現速度vpを求め、走行経路情報Rpとして現速度vpを入力データIwとして、学習を行う。次に、例えば図5に示す走行経路R1、R2から構成される経路R11を走行したときに消費する燃料消費量α11の推定方法について説明する。ナビゲーション装置20内のCPU21aは、走行経路R1、R2の制限速度や、走行経路R1、R2上での渋滞情報などに基づいて、走行経路R1、R2の走行における平均速度v1、v2を推測する。この平均速度v1、v2を走行経路R1、R2の代わりに入力して、以下同様に推論を行う。
【0050】
このように、走行経路を走行しているときの速度を走行経路情報として、学習・推論することにより、車両の現在位置を検出するためのGPSや地図データを使わなくても簡単に、正確な燃料消費量を推論することができ、安価にかつ確実に燃料消費量の低減を図った運転支援を行ことができる。
【0051】
さらに、現渋滞情報を考慮した車両速度を走行経路情報として入力して、推論を行うことにより、渋滞を考慮した正確な燃料消費量を推論することができるので、より確実に燃料消費量の低減を図った運転支援を行うことができる。
【0052】
また、上述した実施形態では、走行経路R、渋滞情報T、自重情報Wを入力として、単位距離当たりの燃料消費量αを出力とした学習、推論を行っていた。しかしながら、例えば、走行経路情報R、渋滞情報T、自重情報Wに加えて運転者Dを入力して、学習、推論を行うことが考えられる。運転者には予め番号D1、D2…などが割り振られており、運転者に割り振られた番号を運転者Dとして入力する。これにより、運転者個人個人の運転技量も反映することができる。
【0053】
以上実施の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能である。ここで、本発明の要旨をまとめると以下のようになる。
(1) 給油所から目的地までの運行によって車両が消費する燃料消費量を推論する推論手段と、
燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、
前記推論された燃料消費量と前記計測した燃料残量とに基づき前記給油所での給油量を報知する給油量報知手段とを備えたことを特徴とする運転支援システム。
【0054】
(2) 現在位置から目的地までの経路上にある給油所を検索する給油所検索手段と、
前記給油所が複数検索された場合、現在位置から前記各給油所までの燃料消費量を推論する推論手段と、
燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、
前記推定した複数の燃料消費量から前記計測した燃料残量を越えた燃料消費量を除いたもののうち、最大の燃料消費量が推論された給油所を報知する給油所報知手段とを備えたことを特徴とする運転支援システム。
【0055】
(3) (1)又は(2)に記載の運転支援システムであって、
前記推論手段は、前記車両が走行している走行経路に関する走行経路情報を検出する走行経路情報検出手段と、前記車両の燃費情報を検出する燃費情報検出手段と、前記検出された現走行経路情報を入力とし、前記検出された現燃費情報を出力とする学習を行う学習手段とを有し、前記学習手段が行った学習結果を用いて、前記走行経路情報を入力とし、前記燃費情報を出力とする推論を行い、該推論を用いて前記燃料消費量を推論することを特徴とする運転支援システム。
【0056】
(4) (3)に記載の運転支援システムであって、
前記走行経路情報検出手段は、前記車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、地図データを記憶する地図データ記憶手段とを有し、前記検出された現在位置に対する地図データ上の経路を前記走行経路情報として検出することを特徴とする運転支援システム。
【0057】
(5) (3)又は(4)に記載の運転支援システムであって、
前記推論手段は、道路の渋滞情報を検出する渋滞情報検出手段をさらに備え、
前記学習手段は、前記検出された現走行経路情報及び前記検出された現渋滞情報を入力とし、前記検出された現燃費情報を出力とする学習を行い、
前記推論手段は、前記走行経路情報及び前記渋滞情報を入力とし、前記燃費情報を出力とする推論を行い、該推論を用いて前記燃料消費量の推論を行うことを特徴とする運転支援システム。
【0058】
(6) (3)に記載の運転支援システムであって、
前記走行経路情報検出手段は、前記車両の速度を検出する速度検出手段を有し、前記検出された車両の現速度を前記走行経路情報として検出することを特徴とする運転支援システム。
【0059】
(7) (6)に記載の運転支援システムであって、
道路の渋滞情報を検出する渋滞情報検出手段と、
燃料消費量を求めたい走行経路及び当該走行経路上の前記渋滞情報に対応した車両速度を前記走行経路情報として、前記推論手段に入力する入力手段とをさらに備え、
前記推論手段は、前記入力手段の入力に対して推論された燃費情報に基づいて、前記燃料消費量を推論することを特徴とする運転支援システム。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の運転支援システムを組み込んだナビゲーション装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の学習・推論で用いられるファジィ化ニューラルネットワークの一例である。
【図3】図1のナビゲーション装置を構成するCPU21aの学習データ作成処理における処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図1のナビゲーション装置を構成するCPU21aのナビゲーション処理における処理手順を示すフローチャートである。
【図5】事業所Aから配送先P1、P2を経由して事業所Aに戻ってくるまでの運行によって車両が消費する燃料消費量の推論を説明するための図である。
【符号の説明】
【0061】
21a CPU(推論手段、給油量報知手段、給油所検索手段、給油所報知手段、走行経路情報検出手段、燃費情報検出手段、学習手段)
27 燃料残量計(燃料残量計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油所から目的地までの運行によって車両が消費する燃料消費量を推論する推論手段と、
燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、
前記推論された燃料消費量と前記計測した燃料残量とに基づき前記給油所での給油量を報知する給油量報知手段とを備えたことを特徴とする運転支援システム。
【請求項2】
請求項1記載の運転支援システムであって、
前記推論手段は、出発地及び目的地を含む運行情報の入力に応じて、前記出発地を前記給油所として推論を開始することを特徴とする運転支援システム。
【請求項3】
現在位置から目的地までの経路上にある給油所を検索する給油所検索手段と、
前記給油所が複数検索された場合、現在位置から前記各給油所までの燃料消費量を推論する推論手段と、
燃料残量を計測する燃料残量計測手段と、
前記推定した複数の燃料消費量から前記計測した燃料残量を越えた燃料消費量を除いたもののうち、最大の燃料消費量が推論された給油所を報知する給油所報知手段とを備えたことを特徴とする運転支援システム。
【請求項4】
請求項1〜3何れか1項記載の運転支援システムであって、
前記推論手段は、前記車両が走行している走行経路に関する走行経路情報を検出する走行経路情報検出手段と、前記車両の燃費情報を検出する燃費情報検出手段と、前記検出された現走行経路情報を入力とし、前記検出された現燃費情報を出力とする学習を行う学習手段とを有し、前記学習手段が行った学習結果を用いて、前記走行経路情報を入力とし、前記燃費情報を出力とする推論を行い、該推論を用いて前記燃料消費量を推論することを特徴とする運転支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−112338(P2006−112338A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301362(P2004−301362)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】