説明

配線基板、その製造方法、及びコネクタ

【課題】カーボンコートを高精度に行なう方策を採らず、工程の増加や作業の煩雑化をもたらさない異方性導電性膜を利用したこと。
【解決手段】基板本体1と、この基板本体1上に形成された配線2と、この配線2を覆う異方性導電性膜5とを備え、この異方性導電性膜5は絶縁材料膜5aの表面から例えば耐マイグレーション性を有する導電性粒子5bが突出している。この導電性粒子5bの突出長dは、この導電性粒子5bの直径Dに対して0<d<D/2の範囲にある。導電性粒子5bは、金属粒子、金属コートされた絶縁材料粒子、導電性高分子材料粒子、導電性無機材料粒子のいずれかからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板本体の配線上に他の部品と接続可能な異方性導電性膜を有する配線基板、その製造方法、及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばフレキシブル基板等の配線基板のコネクタにあって、端子幅及び端子間の間隔が例えば100μmオーダ以下と狭い場合に、接続端子の配線に銀材料を用いた場合には、銀材料の端子部分が露出することになり、いわゆるマイグレーションが生じて端子間がショートする場合が起こる。
このような問題を解決する方策として、図6の断面に示すように銀材料の端子を個別に覆うようにカーボンによるコートを施し、マイグレーションを防止するという方策がある。すなわち、配線基板40上に銀材料の配線41を施し、この配線41をマイグレーションの起こりにくいカーボンにて完全に覆うようにコーティングすることで、銀材料が直接露出することがないのでマイグレーションを防止できるというものである。
【0003】
この場合、マイグレーションを防止するためには、銀材料の配線41をカーボンコート42にて完全に覆うことが必要であり、銀材料の配線41が上述のように微細になればエッチングによる加工や高精度な蒸着制御等の加工技術を用いる必要が生ずる。ところが、コネクタの端子の形成の途中にあってこのような加工技術を用いることは、極めて煩雑で精度を要する工程を介在させることであり、コネクタの端子の形成に当たってこのような加工技術はできれば除きたいものである。
【特許文献1】特開2003−243788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
更に別の方策として、特許文献1に開示された図7の断面に示すように、配線基板50上の配線51にあってその端子部全体を異方性導電性接着剤52にて完全に覆い、更にこの異方性導電性接着剤52上に金属箔53を配線51と同じパターンに被着して端子を形成する構造としたことにより、異方性導電性接着剤52の覆いにより配線51のマイグレーションを防止することも提案されている。
しかしながら、前述したように端子幅及び端子間の間隔が例えば100μmオーダ以下と狭くなっている微細加工の端子を得るに当たり、金属箔53を微細端子として配線51上に形成する被着作業、またこの被着に当たって金属箔53を配線51上に精密に位置合わせをする作業が必要になり、工程の増加、作業の煩雑化を招いている。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑み発明されたもので、カーボンコートにて高精度に端子を覆う方策を採らず、配線上に金属箔を重ねて形成する場合の工程の増加や作業の煩雑化をもたらさない異方性導電性膜を利用した配線基板、その製造方法、及びコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため本発明は、基板本体と、この基板本体上に形成された配線と、この配線を覆う異方性導電性膜とを備え、この異方性導電性膜は絶縁材料膜の表面から導電性粒子が突出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、導電性粒子を絶縁材料膜の表面から突出させる構造のため、配線を覆いマイグレーションを防止することを前提とした上で、導電性粒子を突出させるという作業のみにて配線を露出することになるので、従来のように工程の増加や作業の煩雑化を招来することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、フレキシブル基板等に代表される配線基板及びコネクタに係るもの、更には配線基板の製造方法にかかるものであるが、この実施形態ではコネクタを例にとって説明する。
〔実施形態〕
図1は、本実施形態を示すコネクタの一方の接続端子の断面図である。図1において、基板本体ここでは絶縁シート1上には、銀材料を用いて導電パターンが形成された配線2が被着され、この配線2を覆うように絶縁コート3が形成されている。コネクタの一方の接続端子を形成する絶縁シート1及び配線2の端部(以下端子部4という)は、絶縁コート3の代わりに配線2を覆うように異方性導電性膜5が被覆されている。この異方性導電性膜5は、絶縁材料膜5aと導電性粒子5bとからなり、この導電性粒子5bは絶縁材料膜5aの表面より突出して構成されている。
【0009】
ここにおいて、絶縁シート1は、例えばポリイミド、PET,液晶高分子材料等からなり、絶縁シート1上には銀あるいは銀合金等の金属が予めエッチング、印刷、あるいは塗布によって被着され配線2を形成する。銀あるいは銀合金は、マイグレーションが起こりやすい金属である。絶縁シート1の端子部4の配線2を覆い且つ絶縁コート3の端を一部覆うようにして被着した異方性導電性膜5は、絶縁材料膜5aの絶縁材料としてエポキシ、ウレタン、アクリルからなり、この絶縁材料膜5a内に分散された導電性粒子5bは、金属粒子、金やニッケルが表面に金属コートされた絶縁材料粒子、導電性ポリマー等の高分子材料粒子、導電性セラミックスや導電性繊維等の無機材料粒子からなる。この場合、導電性粒子5bとして銀を用いる場合、銀自体は前述したようにマイグレーションを生じやすい材料であるが、本実施形態では異方性導電性膜の導電性粒子5bを個別に独立して使用ししかも膜厚方向に通電することになるので、従来技術に述べるように銀端子にショートもたらすような不都合なマイグレーションは生じにくいと考えられる。異方性導電性膜5は、もともと異方性導電性接着剤であり、熱可塑性を有する場合に常温硬化性、熱硬化性、UV硬化性によって、固化される。
【0010】
絶縁材料膜5aの表面からの導電性粒子5bの突出長dは、この導電性粒子の直径Dに対して0<d<D/2の範囲とする。この突出長dが0の場合には、導電性粒子5bが絶縁材料膜5aの表面から露出せず接続端子として不十分であり、突出長dがD/2より大きな場合には、接続端子による摩擦等にて導電性粒子5bが絶縁材料膜5aより脱落しやすくなることによる。
また、端子部4での異方性導電性膜5のカバーエリアは、図2に示すように端子部4の配線2を覆うようにし、一部絶縁コート3の端を覆うような構造とする。
【0011】
ここで、コネクタの接続端子を形成する方法について、図3を参照して述べる。図3(a)において、絶縁シート1上にエッチング、印刷、塗布等により銀あるいは銀合金の配線2が形成され、この配線2を覆うように絶縁シート1上には、端子部4を除いて絶縁コート3が施される。そして、端子部4は、一部絶縁コート3に重なるように例えばシート状の異方性導電性膜5で覆われる。この場合、絶縁コート3に異方性導電性膜5を一部重ねるのは、配線2が一部でも露出しないようにするためであり、一部の露出による配線間のマイグレーションを抑えるためである。
【0012】
この後、図3(b)に示すように、押し当て部分30を先端に有するヘッド31によりシート状の異方性導電性膜5を配線2及び絶縁シート1に押し当てる。この場合、ヘッド31の押し当て部分30は、異方性導電性膜5に押し当て部分30で押圧したとき、絶縁材料膜5aの材質より硬い材質で絶縁材料を変形させると共に、導電性粒子5bの硬度より柔らかい材質を有し、異方性導電性膜5が接着性を有するので接着阻止のためフッ素樹脂やシリコン樹脂を少なくとも異方性導電性膜5との接触部分に備えられた構造を有する。しかも、異方性導電性膜5を絶縁シート1や配線2に接着するために、熱可塑性絶縁材料の異方性導電性膜の場合は加熱後降温させ、熱硬化性絶縁材料の異方性導電性膜の場合は加熱し、またUV硬化性絶縁材料の異方性導電際膜の場合はUV照射をすることになる。したがって、ヘッド31の少なくとも押し当て部分30は、耐熱性を有しあるいは耐UV性を有することが必要になる。
【0013】
こうして、ヘッド31の押し当て部分30にて異方性導電性膜5を絶縁シート1に押し付けつつ、加熱あるいはUV照射を行なうことにより、図3(c)に示すように絶縁材料膜5aの表面から導電性粒子5bが突出した構造の固化(接着後の硬くなった)した接続端子を得ることができる。この場合、押し当て部分30の押圧力の調整により導電性粒子5bの突出長さを前述のように加減することができる。
図4は、図1乃至図3による接続端子をコネクタの一方の接続端子とした場合のコネクタの断面図を示す。この図4に示すコネクタにおいて、一方の接続端子には、その絶縁シート1の下部に接続端子補強のため補強板32が接着されている。一方の接続端子の受けとなる他方の接続端子は、絶縁筐体33とその絶縁筐体33を通って異方性導電性膜5の突出した導電性粒子5bと接触可能な平板状コネクタ端子34とから構成される。すなわち、絶縁筐体33内には、他方の接続端子である平板状コネクタ端子34の舌片が位置し、絶縁筐体33内に一方の接続端子が挿入された状態では、平板状コネクタ端子34の舌片と異方性導電性膜5の突出した導電性粒子5bとが接触し、接続端子どおしが接続されることになる。この場合、絶縁シート1上の配線2にあっては、異方性導電性膜5のコーティングにより隣接配線間でのマイグレーションの発生は、起きない。
【0014】
図5は、図4の変形例を示したものであり、絶縁筐体33側の他方の接続端子も図1乃至図3に示す異方性導電性膜5の突出した導電性粒子5bを有する接続端子を備えたものである。すなわち絶縁筐体33の一部を基板331として配線332を被着し、この配線332を突出した導電性粒子334を有する異方性導電性膜333にて覆う構造となっており、この導電性粒子334と絶縁筐体33に挿入された一方の接続端子の異方性導電性膜5の突出した導電性粒子5bとが所定の接触圧にて接触することになる。本発明は、コネクタの接続端子の双方あるいはいずれか一方を突出した導電性粒子を有する異方性導電性膜にて配線を覆う構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の配線基板の断面図である。
【図2】図1の部分平面図である。
【図3】製造工程図である。
【図4】コネクタの一例の断面図である。
【図5】コネクタの変形例の断面図である。
【図6】一従来例の断面図である。
【図7】他の従来例の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体と、この基板本体上に形成された配線と、この配線を覆う異方性導電性膜とを備え、この異方性導電性膜は絶縁材料膜の表面から導電性粒子が突出していることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
絶縁材料膜の表面からの導電性粒子の突出長dは、この導電性粒子の直径Dに対して0<d<D/2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
導電性粒子は、金属粒子、金属コートされた絶縁材料粒子、導電性高分子材料粒子、導電性無機材料粒子のいずれかからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
基板本体に配線を形成してこの配線上を異方性導電性膜にて覆う工程と、この異方性導電性膜の絶縁材料より硬く導電性粒子よりも柔らかく且つ上記絶縁材料に対して剥離しやすい押し当て部分を有するヘッドにて上記異方性導電性膜を押圧して上記絶縁材料の表面から上記導電性粒子を突出させる工程と、上記絶縁材料を硬化させる工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
基板本体に形成された配線端を少なくとも一方の接続端子として、この一方の接続端子を含む二つの接続端子同士が接続可能に構成されたコネクタにおいて、上記一方の接続端子は、上記基板本体に形成された配線端を覆う異方性導電膜を有し、この異方性導電性膜は絶縁材料膜の表面から他方の接続端子と接触する導電性粒子を突出させた構造を有することを特徴とするコネクタ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−186273(P2006−186273A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381186(P2004−381186)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】