説明

銅配線の形成方法

【課題】CVD法により、埋め込み性、下地層との密着性に優れた銅配線形成方法の提供。
【解決手段】ホールや溝が形成された基板表面上に、金属原料としてテトラキスジエチルアミノバナジウム、テトラキスジメチルアミノバナジウム、テトラキスエチルメチルアミノバナジウム、テトラキスジエチルアミノチタン、テトラキスジメチルアミノチタン、テトラキスエチルメチルアミノチタンを、還元性ガスとしてターシャリーブチルヒドラジン、NH、H、SiH、Siを用いて、CVD法によりバナジウムまたはチタン含有膜からなる下地層を形成し、この上に、CVD法により銅含有膜を形成し、ホールや溝を埋め込み、配線を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅配線の形成方法、特に、CVD法により形成したバナジウムまたはチタン含有膜からなる下地層の上に、CVD法により銅含有膜を形成する銅配線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子(LSI、ICなど)を製造する際の配線では、下部配線と上部配線とを結ぶコンタクトホールや溝などに下地層としてバリア層および/または密着層を形成するのが一般的である。このバリア層は、配線材料と絶縁材料とが相互に拡散し、半導体素子の特性が劣化するのを防ぐことを目的として、また、密着層は、配線材料と絶縁材料との界面で膜剥離が生じるのを防ぐことを目的として、配線材料と絶縁材料との間に設けられることが多い。
【0003】
近年、コンタクトホールや溝内の配線材料として、従来のAlに代わって、より抵抗率の低い銅を用いることが提案されている。この場合、銅配線の下地層となるシリコン酸化物膜などの絶縁層中に銅が拡散するのを防ぐために、シリコン酸化物膜などと銅配線との間にバリア層を形成している。
【0004】
ところで、上記銅配線形成には、従来からメッキ法が用いられてきた。しかし、近年、LSIなどの配線スケールの縮小に伴い、コンタクトホールなどのサイズも細長くなり、メッキ液がこのアスペクト比の高い細長いホールなどの内部まで入り難くなるという問題が生じており、メッキ液による銅配線の形成が困難になっている。
【0005】
そこで、メッキ法に代わる銅配線形成方法として、CVD法に代表されるガスを用いる方法が検討されているのが現状である。
【0006】
しかしながら、CVD法を用いた銅配線形成プロセスでは、その膜形成が下地材料の表面特性に大きく影響され、(1)初期核の形成が困難であり、時間がかかることや、(2)島状成長し易いことといった問題があり、連続的な膜を形成することが困難であった。そのため、ホール径φ0.2μm以下、溝幅0.2μm以下では、アスペクト比が4以上の場合に、ホールなどへの穴埋めに際して、ボイドが発生してしまい、完全な穴埋めを行うことができなかった。これでは、メッキ法による穴埋めが困難になってくる径0.1μm以下のホールや溝への埋め込みがCVD法では行えず、将来大問題になる恐れがある。
【0007】
また、CVD法により形成された銅含有膜とバリア層などとの密着が取り難いという問題もあった。
【0008】
従って、CVD法により連続膜を形成するためには、成膜プロセスの初期段階での核形成を速めると共に、核形成密度を高くすることが必要であり、下地に使用されるバリア層(密着層)が重要となる。また、同時にバリア層(密着層)と銅含有膜との密着性が良好であることも銅配線形成には重要となる。
【0009】
CVD法により形成した銅膜を配線として用いる場合に、この膜との密着性が良く、かつ内部応力の小さいバリア層を形成するために、反応性スパッタ法やCVD法により窒化バナジウム膜を形成し、その上にCVD法により銅材料を成長させることが知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、バリア層形成用原料としては、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウム(III)などを用いているが、必ずしも良好なバリア層が得られていない。また、銅含有膜形成用原料としては、公知のヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(I)トリメチルビニルシラン[Cu(hfac)(tmvs)]などが用いられているが、下地層のためか、ホール径が小さい場合、必ずしも完全に穴埋めができていないのが実情である。
【0010】
上記した従来のCu(hfac)(tmvs)はまた、下地層のためか、形成される銅含有膜の再現がとれないこと(開口部:φ=0.2μm以下、アスペクト比:4以上の場合で、ホールなどの埋め込みが安定しないこと)、また、ホールなどの穴埋め後のアニール処理によりボイドが発生することなどの問題がある。
【0011】
図6および7に、従来技術において発生するボイドについて模式的に示す。図6には、従来のバリア層の上に従来の銅含有膜を埋め込んだ場合の、銅配線形成時のボイド発生状態を示し、図7には、従来の銅配線形成後のアニール処理によるボイド発生状態を示す。
【0012】
銅配線を形成する際には、上記のような問題があるため、LSIなどの配線を形成した際に、信頼性が得られないことになる。これは、Cu(hfac)(tmvs)錯体に代表される原料の不安定さが原因の一つではないかと考えられ、埋め込み性に優れ、かつ他の特性をも満足する銅含有膜形成用原料の開発が求められている。
【0013】
さらに、CVD法により銅含有膜を形成する際の原料として特殊な銅錯体が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この銅錯体を用いる場合に、いかなる条件を用いれば、所望の銅含有膜が得られるかは、未解決の問題である。
【特許文献1】特開2003−17437号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−292495号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、CVD法により、良好な特性を有する(例えば、後工程で形成する銅含有膜が穴埋め込み性に優れたものとなり、かつこの銅含有膜との良好な密着性などを有する)バナジウムまたはチタン含有膜からなる下地層をバリア層および/または密着層として形成し、この上に、CVD法により、良好な特性を有する銅含有膜を形成して、銅配線を形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の銅配線形成方法は、ホールや溝が形成された成膜対象物上に、4価のアミド系バナジウム有機金属原料ガスまたは4価の有機アミド系チタン有機金属原料ガスと還元性ガスとを用いて、CVD法によりバナジウムまたはチタン含有膜からなる下地層を形成し、この上に、CVD法により銅含有膜を形成し、該ホールや溝を埋め込むことを特徴とする。
【0016】
前記4価のアミド系バナジウム有機金属原料は、テトラキスジエチルアミノバナジウム(TDEAV)、テトラキスジメチルアミノバナジウム(TDMAV)またはテトラキスエチルメチルアミノバナジウムであり、また、前記4価のアミド系チタン有機金属原料がテトラキスジエチルアミノチタン(TDEAT)、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT)またはテトラキスエチルメチルアミノチタンであることが好ましい。
【0017】
前記還元性ガスは、乖離してHラジカルや、Hイオンを放出することができるガスであることが好ましい。
【0018】
前記還元性ガスは、ヒドラジン誘導体、NH、H、SiHおよびSiから選ばれたガスであることが好ましい。
【0019】
このヒドラジン誘導体は、ヒドラジンの水素原子の1つまたは2つをメチル基、エチル基、直鎖もしくは分枝のブチル基で置換したものであることが好ましい。この置換基は同じものであっても異なったものでもよい。また、ヒドラジン誘導体は、ターシャリーブチルヒドラジン(TBH)であることがさらに好ましい。
【0020】
前記4価のアミド系バナジウムまたはチタン有機金属原料ガスと還元性ガスとの反応を、成膜速度が成膜対象物の温度に依存する温度領域で行い、バナジウム含有膜またはチタン含有膜を形成することが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記銅含有膜を、前記有機金属原料ガスと還元性ガスとから形成された下地層の上に形成する際に、次の一般式(I)'で表されるβ−ジケトネート基(式中、Zは、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を、Xは、次の一般式(I−I)で表される基(式中、Rは、炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキレン基を、R、R、Rは、夫々独立して炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキル基を表す)を、Yは、式(I−I)で表される基(式中、Rは、炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキレン基を、R、R、Rは、夫々独立して炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキル基を表す)か、または炭素数1〜8の直鎖または分枝のアルキル基を表す)を配位子とする次の一般式(I)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである)
【0022】
【化1】

で表される銅錯体を用いて、CVD法により形成することを特徴とする。
【0023】
前記一般式(I)'で表されるβ−ジケトネート基として、式中、Zが、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、炭素原子数1〜8の直鎖もしくは分岐のアルキル基か、またはこのC1〜8アルキル基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよいβ−ジケトネート基を配位子とする前記一般式(I)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである)で表される銅錯体のガスを用いてもよい。
【0024】
また、前記一般式(I)'で表されるβ−ジケトネート基として、式中、Zが、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、式:C2n−O−C2m+1(式中、n=1〜8、m=0〜7、n+m≦8である)で表される基か、またはこの基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよいβ−ジケトネートを配位子とする前記一般式(I)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである)で表される銅錯体のガスを用いてもよい。
【0025】
さらに、前記一般式(I)'で表されるβ−ジケトネート基として、式中、Zが、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、C2n−CH=CH−C2m+1(n=0〜6、m=0〜6、n+m≦6である)で表される基か、またはこの基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよいβ−ジケトネートを配位子とする前記一般式(I)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである)で表される銅錯体のガスを用いてもよい。
【0026】
前記一般式(I)'で表される銅錯体の供給量が、成膜対象物の成膜面の単位面積あたり、以下の式:
8.0×10-1cc/min・cm2(3.6×10-5mol/min・cm2) ≧ 供給量 ≧ 3.6×10-3cc/min・cm2(1.6×10-7mol/min・cm2)
を満たす量であることが好ましい。下限値未満でも上限値を超えても良好な埋め込み特性は得られない。
【0027】
前記一般式(I)で表される銅錯体を用いて、CVD法により銅含有膜を形成する際の成膜温度が、150℃〜350℃であることが好ましい。150℃未満であると所定の成膜量を得るために多くの時間を要し、実用的ではない。また、350℃を超えると膜の抵抗率が高くなり、好ましくない。
【0028】
前記銅含有膜を形成する際に、還元性ガスとして水素原子含有ガスを用いることが好ましい。この水素原子含有ガスとしては、例えば、NH、H、SiH、Si及びヒドラジン誘導体(ヒドラジンの水素原子の1つまたは2つをメチル基、エチル基または直鎖もしくは分岐のブチル基で置換したものであり、置換基は同じであっても異なっていてもよい)から選ばれたガスであることが好ましい。この中でも、特に好ましいのはHガスである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、CVD法により銅含有膜を形成する際に、優れた段差被覆性をもつ下地層を形成することにより、高アスペクト比(例えば、17)を持つホールや溝(例えば、開口部がφ=0.05μmであるもの)内に、その側壁部分を含めてボイドのない均一な銅含有膜を埋め込むことができるという効果を奏する。
【0030】
また、本発明によれば、配線材料と絶縁材料とが相互に拡散することのないバリア層や、配線材料と絶縁材料との界面で膜剥離が生じることのない密着層を下地に用いることにより、そして、銅含有膜の形成に際して核形成密度が高い初期核の形成を短時間で容易に行うことができ、かつ連続的な膜を形成することができると共に、形成される銅含有膜との間で密着が取り易いバリア層および/密着層を下地に用いることにより、銅配線として有用な所望の銅含有膜を効率的に形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
まず、本発明の銅配線形成方法を実施するCVD装置の一構成例について図面を参照して説明する。このCVD装置は銅含有膜の下地層としてバリア層などを形成するためにも使用できるので、この装置の説明は、以下両工程を含んだ形で行う。
【0032】
図1に示すCVD装置は、キャリアガス(例えば、N、Ar、Heなど)や還元性ガス(例えば、NH、Hなど)などのガスの供給を行うガス供給装置1と、成膜原料の供給を行う原料供給装置2と、金属含有膜形成を行う反応装置3と、原料およびガスの排出を行う排出装置4とから構成されている。
【0033】
ガス供給装置1は、キャリアガスのガス源および還元性ガスのガス源から、それぞれ、マスフローコントローラー(図中、MFC1およびMFC2で示す)を通して各ガスの流量を制御しながら、配管を通して反応装置3内へと輸送する機能を有する。
【0034】
原料供給装置2は、原料容器201内の原料202の供給流量や供給圧力を制御しながら、反応装置3の反応室301内へ原料を輸送する機能を有する。図1によれば、この原料供給装置は、常温で液体または固体の原料に使用でき、例えば銅含有膜形成用原料、TDEAVやTDMAVなどのバナジウム含有膜形成用有機金属材料、TDEATやTDMATなどのチタン含有膜形成用有機金属材料や、ヒドラジン誘導体(例えば、ターシャリーブチルヒドラジン(TBH))などの還元性ガス材料を気化装置203を通してガス状にし、このガスを反応装置3内へ導入するために使用される。この原料供給装置の基本構成の一つを示す図1では、供給流量や供給圧力をマスフローコントローラー(図1中、L−MFCやMFC3で示す)や圧力計(図1中、204および205で示す)を介して制御しながら、原料ガスなどを反応室301へ輸送できるようになっている。原料容器201から反応装置3のシャワープレート302に至るまでの原料輸送用配管、バルブなどの各構成要素は全て温度制御されている。この温度制御範囲は、室温〜270℃程度が好ましい。これにより、原料ガスが液化、析出しないように制御され得る。
【0035】
反応装置3は、原料供給装置2から供給される原料ガス、還元性ガスおよびキャリアガスや、ガス供給装置1から供給されるキャリアガス、還元性ガスなどを基板Sに適切に供給するためのシャワープレート302と、基板S近傍の成膜雰囲気を保つための反応室301と、基板Sを設置でき、加熱できるようになっている基板設置台303(図示していないが、加熱手段を備えている)と、隣の基板搬送室などとの雰囲気を仕切るための仕切りバルブ304と、成膜雰囲気の圧力をモニターする圧力計305とから構成されている。このシャワープレート302は、金属(例えば、ステンレス鋼、Al、Al合金、ハステロイ(登録商標)、インコネル(カナダ・インコ(INCO)社製)など)で作製され、室温〜250℃の範囲で温度制御することが好ましい。反応室301は、金属(例えば、ステンレス鋼、Al、Al合金、ハステロイ、インコネルなど)で作製され、室温〜250℃の範囲で温度制御することが好ましい。基板設置台303は、金属(例えば、ステンレス鋼、Al、Al合金、ハステロイ、インコネルなど)またはセラミックス(例えば、Al、AlN、SiN、SiC、SiOなど)で作製され得る。好ましくはセラミックスであり、セラミックスの中でも、熱伝導が良く、高温でも温度分布の良いAlNで作製することが好ましい。AlNで作製した基板設置台303は、室温〜600℃の加熱に対応できる。仕切りバルブ304は、金属(例えば、ステンレス鋼、Al、Al合金、ハステロイ、インコネルなど)で作製され、バルブ内部、外部に温度モニターとヒーターなどの加熱手段とが設置され、室温〜250℃の範囲で温度制御することができるようになっている。圧力計305は、高温対応型を用いる。
【0036】
排出装置4は、反応室301内の雰囲気を調整する装置である。その基本的な構造は、図1に例示する通り、配管、排出バルブ401、圧力コントロールバルブ402、原料トラップ403、真空ポンプ404からなっている。反応室301から真空ポンプ404までの各構成要素は、温度制御され、その制御範囲は、室温〜250℃が好ましい。圧力コントロールバルブ402は、反応室301に設けられた圧力計305の値を基に、任意の設定値になるように連動して開閉できるようになっている。また、原料供給装置2を出た原料ガスが、排出装置4の原料トラップ403まで輸送できる配管5を設けることで、原料供給装置2から輸送される原料ガスの供給量が安定したところで、原料ガスの輸送経路を反応室301側に切り替えて、反応室301内へ原料ガスを安定して供給することが可能となる。また、原料ガスの供給が終了した際、配管5により原料ガスを原料トラップ403に切り替えることで、反応室301へのガス供給を即座に停止することができる。この原料トラップ403は、排出される原料ガスを回収する機能を有する装置であり、真空ポンプ404への負荷(ポンプ内部での閉塞)の軽減および原料の再利用を行う上で有効である。図1に示す真空ポンプ404の排気能力を上げるために、圧力コントロールバルブ402と真空ポンプ404との間に第2の真空ポンプを設置してもかまわない。
【0037】
上記原料供給装置は、図1に示す以外にも、例えば図2〜4に示すような構成を有するものであれば本発明において利用できる。図1を含めて、いずれの構成においても、供給流量や供給圧力をマスフローコントローラー(図2〜4中、L−MFCやMFC3、MFC4で示す)や圧力計(図2〜4中、204および205で示す)を介して制御しながら、原料ガスを反応室301内へ輸送できるように構成されている。なお、気化装置は図示していないが、随時設けることができる。
【0038】
図2に示す原料供給装置2では、所定の圧力の加圧ガス(N、Ar、Heなど)により原料容器201内の原料202をマスフローコントローラー(L−MFC)を介して反応室301へ輸送できるように構成されている。図3に示す原料供給装置2では、所定の圧力のキャリアガス、還元性ガスをマスフローコントローラー(MFC3)を介して原料容器201内の原料202と共に反応室301内へ輸送できるように構成されている。図4に示す原料供給装置2では、原料容器201内の原料202をマスフローコントローラー(MFC4)を介して反応室301内へ輸送できるように構成されている。
【0039】
本発明において、銅含有膜の形成に先だって基板上にバリア層および/または密着層を形成するために用いることができる金属原料としては、4価のアミド系バナジウムまたはチタン有機金属原料が好ましく、例えば、V[NR]、V[NR]・Cl、V[NR]・Cl、V[NR]・ClなどやTi[NR]、Ti[NR]・Cl、Ti[NR]・Cl、Ti[NR]・Clなどを使用できる。ここで、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、C2n+1(n=0〜4の整数)、C2mO(m=0〜4の整数である)、CHOHまたはフェニル基などから選ばれる。Clはこれ以外のハロゲン原子であってもよい。これらの金属原料の中でも、上記したTDEAV、TDMAV、TDEATおよびTDMATがより好ましい。
【0040】
還元性ガスとしては、乖離してHラジカルや、Hイオンを放出することができるガス、例えばヒドラジン誘導体(例えば、ターシャリーブチルヒドラジン(TBH):(CH)CNHNH)、NH、H、SiHなどが使用できる。その他のヒドラジン誘導体(例えば、1つまたは2つのHがメチル、エチル、直鎖もしくは分岐のブチルなどのアルキル基で置換されているもの)も使用できる。これらの還元性ガスのうち、TDEAVやTDEATガスと反応し、バナジウム含有膜やチタン含有膜を形成する際に、窒化を促進できるガス(TBHやNH)が好ましい。
【0041】
キャリアガスとしては、例えばアルゴン、ヘリウムなどの希ガスやNなどの不活性ガスを用いることができる。
【0042】
次に、本発明で用いることができる銅錯体の一例について説明する。
【0043】
この銅錯体の配位子として用いられ、銅β−ジケトナート錯体を与える、シリルエーテル含有β−ジケトン化合物の具体的な例としては、式(III)'〜(XIV)'に示される化合物を挙げることができる。
【0044】
【化2】

【0045】
これらのβ−ジケトン化合物は、公知の方法(例えば、特開2003−292495号公報参照)によって得ることができる。
【0046】
β−ジケトナート銅錯体、すなわちβ−ジケトンのエノラートアニオンが配位した銅錯体は、例えば、上記β−ジケトンと水酸化銅との反応(以下に示す銅錯体合成法1)によって得られる。合成で用いられる溶媒として、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、THF、ジメトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジクロロメタンなどのハロゲン類、イソプロパノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類など、ほとんどの有機溶媒が使用できる。合成法1において反応で生成する水は、反応溶媒、例えば、トルエンと共に、共沸脱水するかあるいは、THF溶媒のように反応後、室温で減圧下溶媒留去の際、溶媒と共に留去される方法で反応系外へ留去するか、あるいは脱水剤、例えば、無水硫酸ソーダ、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸銅、あるいはモレキュラシーブス、吸水性ポリマー(ノニオン系)などを反応系に共存させて脱水除去することができる。
【0047】
【化3】

【0048】
前記したシリルエーテル系のβ−ジケトナート配位子を含む銅錯体の例を式(VIII)に示す。これは、配位子として、上記式(VIII)'に示される化合物、すなわち前記一般式(I)において、Xが(CH)SiO−C(CH)−基、Yが(CH)CH−基、ZがHであるβ−ジケトンのエノラートアニオンを配位子とする銅錯体、ビス(2,6−ジメチル−2−(トリメチルシリルオキシ)−3,5−ヘプタンジオナト)銅(II)錯体:C2446CuOSi(以下、Cu(SOPD)またはSOPDと称す)である。
【0049】
【化4】

【0050】
上記式(III)'〜式(VII)'および(IX)'〜(XIV)'に示されるβ−ジケトンについても、夫々のβ−ジケトンのエノラートアニオンを配位子とし、式(VIII)と同様の構造式で表される銅錯体を与える。
【0051】
前記一般式(I)(ただし、Zが、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、炭素原子数1〜8の直鎖もしくは分岐のアルキル基か、またはこのC1〜8アルキル基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよい)で表される銅錯体としては、例えば、ビス(アセチルアセトナト)銅(II)、ビス(2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナト)銅(II)、ビス(ジピバロイルメタナト)銅(II)あるいはビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)銅(II)、ビス(6−エチル−2,2−ジメチル−3,5−デカンジオナト)銅(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅(II)などが挙げられる。
【0052】
また、前記一般式(I)(ただし、Zが、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、式:C2n−O−C2m+1(式中、n=1〜8、m=0〜7、n+m≦8である)で表される基か、またはこの基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよい)で表される銅錯体としては、例えば、ビス(1−エトキシ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオナト)銅(II)、ビス(1−エトキシ−5−メトキシ−2,4−ペンタンジオナト)銅(II)、ビス(1−トリフルオロメトキシ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオナト)銅(II)などが挙げられる。
【0053】
さらに、前記一般式(I)(ただし、Zが、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、C2n−CH=CH−C2m+1(n=0〜6、m=0〜6、n+m≦6である)で表される基か、またはこの基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよい)で表される銅錯体としては、例えば、ビス(2,2−ジメチル−6−ヘプタエン−3,5−ジオナト)銅(II)、ビス(1,7−デセン−4,6−ジオナト)銅(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−5−ヘキセン−2,4−ジオナト)銅(II)などが挙げられる。
【0054】
上記銅錯体を用いてCVD法(常圧または減圧CVD法)により銅含有膜を形成する際の気化方法としては、銅錯体自体を気化装置で直接気化させる方法、または銅錯体を適当な溶媒、例えば、ヘキサン、オクタン、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、テトラヒドロフランなどの溶媒に希釈し、気化装置にその溶液を輸送して気化させる方法などが使用できる。また、基板上への蒸着については公知のCVD法を使用できる。減圧下または不活性ガス存在下での単純な熱分解による銅蒸着の他に、還元性ガス、例えば水素などをこの銅錯体と共存させて、または水素ガス存在下においてプラズマCVD法で金属銅を蒸着させる方法でも使用できる。更に、酸素存在下での熱分解あるいはプラズマCVD法で、酸化銅膜を蒸着させることも可能である。
【0055】
本発明で用いることができる成膜対象物としては、半導体作製用基板であれば特に制限があるわけではなく、例えばホールや溝を開けたSiO/Si基板が以下の実施例では用いられるが、これ以外にも、Low−k基板を用いても構わない。このLow−k基板としては、SiOC系(例えば、商品名Black Diamond(AMAT社製)、Coral(Novellus社製)、Aurola(ASM社製)、Orion(TRIKON社製)、SiLK(Dow Chemical社製)、FLARE(Honeywell Electric Materials社製))、SiOF、HSQ、MSQ、NCS(Nano Crystal Silica(富士通製))などを挙げることができる。
【0056】
次に、上記CVD装置を用いて行う本発明の実施例について説明する。バリア層としてバナジウムまたはチタン含有膜を形成し、その上に銅含有膜を形成し、銅配線とする成膜プロセスについて説明する。
【実施例1】
【0057】
本実施例では、バナジウム窒化物膜からなるバリア層の形成条件を変化させて、このバリア層の上に形成する銅含有膜の初期核形成状態を調べた。
工程1:
図1に示すCVD装置を用いてバナジウム含有膜を形成した。膜を形成する基板Sとして、ケイ素酸化物膜の形成された8インチウェハー(SiO/Si)を用いた。
【0058】
反応装置3の仕切りバルブ304を開け、反応室301に隣接する室のロボットを用いて、基板Sを反応室内に搬送した。この搬送は、搬送の最中、基板Sの表面に炭素含有ガス(COまたはCO)、酸素含有ガス(O)、水(HO)などの空気中に存在するガスが付着したり、または基板内部に拡散するのを避けるために、真空中で行うことが望ましいので、本実施例では真空中で行った。
【0059】
反応室301内に搬送された基板Sを、その主面である表面をシャワープレート302側にし、裏面を基板設置台303側にして、反応室内の加熱手段を備えた基板設置台上に乗せた。この基板設置台は常に所定の成膜温度に保った。
【0060】
次いで、ガス供給装置1から、NガスをMFC1を介して1500sccmの流量に制御して反応室301内へ流し、反応室内の圧力を所定の成膜圧力に保って、基板温度が350℃になるように加熱した。0〜10分後、以下に示す成膜条件1〜4に従って成膜を開始した。原料として、TDEAV(テトラキスジエチルアミノバナジウム:V[N(C)])およびTDMAV(テトラキスジメチルアミノバナジウム:V[N(CH)])を用いた。なお、成膜条件2および4は、それぞれ、成膜条件1および3を実施した後に、連続して金属原料、金属原料用キャリアおよび還元性ガスの供給を停止して、キャリアNのみを1500sccm流し、反応室内を1分間パージした後成膜して表面の改質を行った基板を作製するものである。
【0061】
TDEAVを用いた場合
VN成膜条件1:
TDEAV供給量:84mg/min
TDEAV用キャリアN:400sccm
TBH流量:80sccm(NH流量:13sccm、H流量:1680sccm)
キャリアN:1500sccm
成膜圧力:340Pa
成膜時間:5min
成膜温度:350℃
膜厚:20nm
【0062】
VN成膜条件2:
TDEAV供給量:84mg/min
TDEAV用キャリアN:400sccm
キャリアN:1580sccm
成膜圧力:340Pa
成膜時間:5min
成膜温度:350℃
膜厚:25nm
【0063】
上記成膜条件1に従って作製されたバナジウム含有膜の電気抵抗率は2500〜3000μΩ・cmであり、成膜条件2で作製されたバナジウム含有膜の電気抵抗率は1200〜1500μΩ・cmであった。上記成膜条件1および2に従って作製されたバナジウム含有膜の組成をXPS法で調べた結果を以下の表1に示す。
【0064】
(表1)

【0065】
表1から明らかなように、還元性ガスを使用した方が使用しない場合よりバナジウムおよび窒素含量の高い膜が得られ、特にNHおよびTBHの場合に窒化が促進されていることが分かる。
【0066】
TDMAVを用いた場合
VN成膜条件3:
TDMAV供給量:84mg/min
TDMAV用キャリアN:400sccm
TBH流量:80sccm(NH流量:13sccm、H流量:1680sccm)
キャリアN:1580sccm
成膜圧力:340Pa
成膜時間:5min
成膜温度:300℃
膜厚:25nm
【0067】
VN成膜条件4:
成膜圧力:340Pa
成膜時間:5min
TDMAV供給量:84mg/min
TDMAV用キャリアN:400sccm
成膜温度:300℃
キャリアN:1580sccm
膜厚:25nm
【0068】
上記成膜条件3に従って作製されたバナジウム含有膜の電気抵抗率は1200〜3000μΩ・cmであり、成膜条件4に従って作製されたバナジウム含有膜の電気抵抗率は1000〜1500μΩ・cmであった。上記成膜条件3および4に従って作製されたバナジウム含有膜の組成をXPS法で調べた結果を以下の表2に示す。
【0069】
(表2)

【0070】
表2から明らかなように、還元性ガスを使用した方が使用しない場合と比べてバナジウム含量はほぼ同じであるが窒素含量の高い膜が得られ、特にNHおよびTBHの場合に窒化が促進されていることが分かる。
【0071】
比較のために、バリア層として、スパッタ法によるTaN膜を以下の条件に従って形成した。
【0072】
TaN成膜条件:
基板:SiO/Si
成膜圧力:3×10−2Pa
電力:15kW
ガス供給比:Ar:N=6:15
成膜温度:160℃
膜厚:20nm
【0073】
工程2:
本工程では、上記工程1で得られたバリア層の上に銅含有膜を形成する工程について説明する。
【0074】
図1に示すCVD装置を用いて以下の成膜プロセスを行った。上記工程1で得られたバナジウム含有膜の形成された基板を、その表面が酸化しないように、大気開放せず、反応室301の隣に設けられた搬送室(真空下)を経由して、銅含有膜形成用の反応室へ搬送し、所定温度に保たれている基板設置台303上に乗せた。また、バナジウム含有膜の形成されていないSiO/Si基板も同様にして銅含有膜形成用の反応室301内の基板設置台303に乗せた。これらの基板に対して、流量の制御されたHガスを供給し、反応室301内の圧力を一定に保ちながら、基板温度を設定温度になるように0〜10分間加熱した。この場合の圧力および基板加熱温度は、後に行う銅含有膜形成時の条件と同じにして行った。このHガスは基板表面の酸化物膜除去の効果もある。この場合、水素ガスを用いたが、使用するガスとしては、分子径が小さく、拡散し易く、熱伝導率が大きいといった特徴を持つと共に、乖離してHラジカルや、Hイオンを放出することができるガス、例えばTBH、NH、SiHなどやその他のヒドラジン誘導体も使用できる。
【0075】
次いで、水素雰囲気中にて、銅含有膜形成用原料を反応室301内の基板表面に供給し、以下の銅含有膜成膜条件1〜3に従って、基板上へ銅含有膜を形成し、初期核の形成およびバリア層と銅含有膜との密着性を評価した。この原料は、オクタン溶媒にCu(SOPD)錯体0.5molを溶かして1Lのオクタン液としたものを、原料容器に封入して使用した。
【0076】
銅含有膜形成条件1:
使用基板:
(1)工程1のVN成膜条件1に従って、還元性ガスとしてTBHを80sccm流しバリア層を形成した基板
(2)工程1のVN成膜条件1に従って、還元性ガスとしてNHを13sccm流してバリア層を形成した基板
(3)工程1のVN成膜条件1に従って、還元性ガスとしてHを1680sccm流してバリア層を形成した基板
(4)工程1のVN成膜条件2に従って、還元性ガスなしでバリア層を形成した基板
(5)工程1のVN成膜条件3に従って、還元性ガスとしてTBHを80sccm流してバリア層を形成した基板
(6)工程1のVN成膜条件3に従って、還元性ガスとしてNHを13sccm流してバリア層を形成した基板
(7)工程1のVN成膜条件3に従って、還元性ガスとしてHを1680sccm流してバリア層を形成した基板
(8)工程1のVN成膜条件4に従って、還元性ガスなしでバリア層を形成した基板
(9)バリア層なしのSiO2/Si基板
(10)工程1のTaN成膜条件に従って、バリア層を形成した基板
【0077】
成膜圧力:1780Pa
成膜時間:1min
SOPD供給量:78mg/min(3.15cc/min)
SOPD用キャリアN:400sccm
成膜温度:200〜350℃
:2500sccm
【0078】
上記のようにして得られた銅含有膜について、SEM、AFMにより、初期核の形成を確認した。その結果を表3に示す。
【0079】
(表3)

【0080】
表3において、○印は初期核形成が確認できたこと、×印は初期核形成が確認できなかったことを示す。上記により、銅含有膜形成の前に、TDEAV、TDMAV原料を用いた前処理を行うことにより、初期核形成を促進し、短時間で初期核の核密度を高密度化することが確認できた。
【0081】
銅含有膜形成条件2:
使用基板:
(1)工程1のVN成膜条件2に従って、還元性ガスなしでバリア層を形成した基板
(2)工程1のVN成膜条件4に従って、還元性ガスなしでバリア層を形成した基板
(3)バリア層なしのSiO/Si基板
(4)工程1のTaN成膜条件に従って、バリア層を形成した基板
【0082】
成膜圧力:1780Pa
成膜時間:15〜45min
SOPD供給量:78mg/min(3.15cc/min)
SOPD用キャリアN:400sccm
成膜温度:200〜350℃
:2500sccm
【0083】
上記のようにして得られた銅含有膜の膜厚は40〜260nmであった。この銅含有膜に対して、ダイヤモンドカッターにて、漢字の「田」印状に、5mm角4個の升目を、基板直径上のX−Y方向になど間隔で9カ所描き、表面に粘着テープを貼り付けた後、剥離させるテープテストを行った。
【0084】
その結果、VNバリア層の上に銅含有膜を形成した各サンプル共に、100nm以下の膜厚では、表面からの剥離は確認できなかった。また、270〜350℃で成膜したサンプルでは、最大260nmの膜厚でも、剥離は確認できなかった。これに対し、SiO膜表面に銅含有膜を直接形成した場合には、100nm以下の膜厚で、全部若しくは一部に銅含有膜の剥離が確認された。同様に、スパッタ法でSiO/Si基板上にTaN膜を形成した後、CVD法で銅含有膜を形成した場合にも、100nm以下の膜厚で、全部若しくは一部に銅含有膜の剥離が観察された。
【0085】
銅含有膜形成条件3:
使用基板:
(1)工程1のVN成膜条件1に従って、還元性ガスとしてTBHを80sccm流しバリア層を形成した基板
(2)工程1のVN成膜条件1に従って、還元性ガスとしてNHを13sccm流しバリア層を形成した基板
(3)工程1のVN成膜条件1に従って、還元性ガスとしてHを1680sccm流し(Nガスは流さない)バリア層を形成した基板
(4)工程1のVN成膜条件3に従って、還元性ガスとしてTBHを80sccm流してバリア層を形成した基板
(5)工程1のVN成膜条件3に従って、還元性ガスとしてNHを13sccm流しバリア層を形成した基板
(6)工程1のVN成膜条件3に従って、還元性ガスとしてHを1680sccm流し(Nガスは流さない)バリア層を形成した基板
(7)工程1のTaN成膜条件に従って、バリア層を形成した基板
(8)バリア層なしのSiO/Si基板
【0086】
成膜圧力:1780Pa
成膜時間:15〜45min
SOPD供給量:78mg/min(3.15cc/min)
SOPD用キャリアN:400sccm
成膜温度:200〜350℃
:2500sccm
【0087】
上記のようにして得られた銅含有膜の膜厚は30〜180nmであった。この銅含有膜に対して、上記と同様に、ダイヤモンドカッターにて、漢字の「田」印状に、5mm角4個の升目を、基板直径上のX−Y方向になど間隔で9カ所描き、表面に粘着テープを貼り付けた後、剥離させるテープテストを行った。
【0088】
その結果、VNバリア層の上に銅含有膜を形成した各サンプル共に、100nm以下の膜厚では、表面からの剥離は確認できなかった。また、270〜350℃で成膜したサンプルでは、最大180nmの膜厚でも、剥離は確認できなかった。還元性ガスとしてTBH、H、NHを用いたが、密着性に差はなかった。これに対し、SiO膜表面に直接銅含有膜を形成した場合には、100nm以下の膜厚で、全部若しくは一部に銅含有膜の剥離が確認された。同様に、スパッタ法でSiO/Si基板上にTaN膜を形成した後、CVD法で銅含有膜を形成した場合にも、100nm以下の膜厚で、全部若しくは一部に銅含有膜の剥離が観察された。
【実施例2】
【0089】
図1に示すCVD装置を用いてバナジウム含有膜を形成した。膜を形成する基板Sとして、ケイ素酸化物膜の形成された後に、種々のサイズのホールや溝が設けられた8インチウェハー(SiO/Si)を用いた。
【0090】
反応装置3の仕切りバルブ304を開け、反応室301に隣接する室のロボットを用いて、基板Sを反応室内に搬送した。この搬送は、搬送の最中、基板Sの表面に炭素含有ガス(COまたはCO)、酸素含有ガス(O)、水(HO)などの空気中に存在するガスが付着したり、または基板内部に拡散するのを避けるために、真空中で行うことが望ましいので、本実施例では真空中で行った。
【0091】
反応室301内に搬送された基板Sを、その主面である表面をシャワープレート302側にし、裏面を基板設置台303側にして、反応室内の加熱手段を備えた基板設置台上に乗せた。この基板設置台は常に所定の成膜温度に保たれていた。
【0092】
次いで、ガス供給装置1から、NガスをMFC1を介して1500sccmの流量に制御して反応室301内へ流し、反応室内の圧力を所定の成膜圧力に保って、基板温度が350℃になるように加熱した。0〜10分後、以下の工程1に従って成膜を開始した。原料として、TDEAV(テトラキスジエチルアミノバナジウム:V[N(C)])を用いた。還元性ガスとしてTBHを用いた。
【0093】
工程1(バナジウム含有膜形成):
上記プロセスを経て加熱された基板に対して、以下の基板作製条件1および2に従ってバナジウム含有膜を形成した。
【0094】
基板作製条件1:
基板:SiO/Si
TDEAV供給量:84mg/min
TDEAV用キャリアN:400sccm
TBH流量:80sccm
キャリアN:1500sccm
成膜圧力:340Pa
成膜時間:10〜20min
成膜温度:350℃
膜厚:50〜100nm
【0095】
上記基板作製条件1に従って、バナジウム含有膜を有し、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比が4以上のホールおよび溝の設けられている基板が得られた。
【0096】
上記では、還元性ガスとしてTBHを用いた場合について説明したが、TBHの代わりにNH用いても、同様に、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比(AR)が4以上のホールおよび溝の設けられている基板が作製できる。
【0097】
また、上記において、原料として、TDEAVの代わりに、TDMAV(テトラキスジメチルアミノバナジウム:V[N(CH)])を用い、成膜温度を300℃として成膜しても、同様に、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比が4以上のホールおよび溝の設けられている基板が作製できた。
【0098】
工程2(改質膜形成):
上記工程1の後、連続してTDEAV原料、TDEAV用キャリアおよびTBHの供給を停止させて、キャリアNのみを1500sccm流し、反応室内を1分間パージし、以下の基板作製条件2で基板表面の改質を行って、基板を作製した。
【0099】
基板作製条件2:
基板:バナジウム含有膜/SiO/Si(基板作成条件1で作製した基板)
TDEAV供給量:84mg/min
TDEAV用キャリアN:400sccm
キャリアN:1580sccm
成膜圧力:340Pa
成膜時間:1〜5min
成膜温度:350℃
膜厚:5〜25nm
【0100】
上記基板作製条件2に従って、表面の改質されたバナジウム含有膜を有し、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比が4以上のホールおよび溝の設けられている基板が得られた。
【0101】
キャリアガスとしてNの代わりにHを用いても、同様に、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比が4以上のホールおよび溝の設けられている基板を作製できる。
【0102】
ホールおよび溝が設けられたSiO/Si基板に直接基板作製条件1および2に従ってバナジウム含有膜を形成した場合、膜厚10nm、ボトムカバレッジが80%以上のホールおよび溝の設けられている基板を作製できた。
【実施例3】
【0103】
本実施例では、実施例2で得られたバリア層の形成された基板に対する、銅含有膜による穴埋め工程について説明する。
【0104】
図1に示すCVD装置を用いて以下の成膜プロセスを行った。実施例2で得られたバナジウム含有膜の形成された基板を、その表面が酸化しないように、大気開放せず、反応室301の隣に設けられた搬送室(真空下)を経由して、銅含有膜形成用の反応室へ搬送し、所定温度に保たれている基板設置台303上に乗せた。また、バナジウム含有膜の形成されていないSiO/Si基板も同様にして銅含有膜形成用の反応室301内の基板設置台303に乗せた。これらの基板に対して、流量の制御されたHガスを供給し、反応室301内の圧力を一定に保ちながら、基板温度を設定温度になるように所定の時間加熱した。この場合の圧力および基板加熱温度は、後に行う銅含有膜形成時の条件と同じにして行った。このHガスは基板表面の酸化物膜除去の効果もある。この場合、水素ガスを用いたが、使用するガスとしては、分子径が小さく、拡散し易く、熱伝導率が大きいといった特徴を持つと共に、乖離してHラジカルや、Hイオンを放出することができるガス、例えばTBH、NH、SiHなどやその他のヒドラジン誘導体も使用できる。
【0105】
次いで、水素雰囲気中にて、銅含有膜形成用原料を反応室301内の基板表面に供給し、以下の成膜条件1〜3に従って、基板上へ銅含有膜を形成し、ホールおよび溝内への埋め込みを行った。この場合の原料として、オクタン溶媒にCu(SOPD)錯体0.5molを溶かして1Lのオクタン液としたものを、原料容器に封入して使用した。この液体原料202を原料容器201から配管を経由して気化装置203へ輸送し、気化装置で気化した後、反応室301内の基板表面へ供給して成膜を行った。
【0106】
成膜条件1:
使用基板:実施例2の工程1および2(基板作製条件1および2)で作製した各基板
SOPD供給量:78mg/min(3.15cc/min)
基板表面積で割ったSOPD供給量:0.24mg/min・cm(1.0×10-2cc/min・cm)
SOPD用キャリアN:400sccm
:2500sccm
分圧:1497Pa
/SOPD比:793
分圧×H/SOPD比:1,187,000
成膜圧力:1780Pa
成膜時間:15〜45min
成膜温度:150〜350℃
【0107】
成膜条件2:
使用基板:実施例2の工程1および2で作製した各基板
SOPD供給量:57mg/min(2.3cc/min)
基板表面積で割ったSOPD供給量:0.17mg/min・cm(7.3×10−3cc/min・cm)
SOPD用キャリアN:200sccm
:1800sccm
分圧:1563Pa
/SOPD比:785
分圧×H/SOPD比:1,220,000
成膜圧力:1780Pa
成膜時間:15〜60min
成膜温度:150〜350℃
【0108】
成膜条件3:
使用基板:実施例2の工程1および2で作製した各基板
SOPD供給量:28mg/min(1.15cc/min)
基板表面積で割ったSOPD供給量:0.089mg/min・cm(3.6×10−3cc/min・cm)
SOPD用キャリアN:200sccm
:1800sccm
分圧:1570Pa
/SOPD比:1570
分圧×H/SOPD比:2,460,000
成膜温度:150〜350℃
成膜圧力:1780Pa
成膜時間:15〜90min
【0109】
上記したようにして、銅含有膜が基板のホールおよび溝内へ埋め込まれたが、その埋め込みの結果を纏めて以下の表4および5に示す。表4は、実施例2の工程1で作製した基板を使用した場合の結果を示し、表5は、実施例2の工程2で作製した基板を使用した場合の結果を示す。
【0110】
また、ホールおよび溝への銅含有膜が埋め込まれた状態を模式的に図5に示す。図5から明らかなように、ホールや溝内を含めて基板上に均一に形成されたバリア層の上に銅含有配線膜が均一に形成され、ホールや溝内が隙間なく埋め込まれている。
【0111】
(表4)

【0112】
(表5)

【0113】
表4および5中、成膜条件の項目において:
◎:ホールを全て満たした。
×:埋め込みができなかった。
括弧内は埋め込みが達成できたアスペクト比(AR)を示す。
【0114】
表4および5において、ホール・溝への埋め込みの確認は、SEMおよびTEMを用いて行った。なお、埋め込まれた銅含有膜にはボイドは確認されなかった。
【0115】
表4および5から、埋め込みが確認できた銅含有膜の成膜温度は、150℃〜350℃であった。また、埋め込み後、圧力360Paの水素または窒素雰囲気中で、3時間、500℃に加熱してアニール処理をしても、膜中にボイドの発生は確認できなかった。
【0116】
ホームおよび溝への埋め込みが確認でき、かつ高いアスペクト比の場合にも埋め込みが達成できた成膜条件1および2の場合に得られた膜ついて、そのシート抵抗を測定したところ、2〜7μΩ・cmであった。このシート抵抗の分布に関しては、8インチ基板上に銅含有膜を形成した場合において、埋め込みが確認できた成膜条件で、かつ成膜温度200〜300℃で、2〜10%であった。
【0117】
従って、上記結果から、銅含有膜形成条件のうち、Cu(SOPD)錯体の供給量を基板の成膜表面積で割った値として、錯体の単位面積供給量を9.0×10−2mg/min・cm(3.6×10−3cc/min・cm:1.6×10−7mol/min・cm)以上とすることにより、高アスペクト比18、20を持つ細穴(開口部φ=0.05μm)の埋め込みを行うことができたことが分かる。また、上限値は、成膜モフォロジーの悪化のために、2.0×10mg/min・cm(8.0×10−1cc/min・cm:3.6×10−5mol/min・cm)であった。
【0118】
なお、上記成膜プロセスにおいて銅含有膜形成の前にバリア層としてバナジウム含有膜を形成することにより、銅含有膜形成工程において初期核形成が促進され、短時間で初期核の核密度が高密度化されていることが確認でき、得られた基板において、バナジウム含有膜表面からの銅含有膜の剥離は観察されなかった。
【0119】
上記実施例2の原料TDEAVの代わりにTDMAV(テトラキスジメチルアミノバナジウム:V[N(CH)])を用いて得られたバリア層が設けられた基板に関しても、上記実施例3の銅含有膜穴埋め工程に従って銅含有膜を形成したところ、上記と同様な結果が得られた。
(比較例1)
【0120】
実施例2記載の銅含有膜穴埋め工程に従って埋め込みが確認できた成膜条件1および2を用い、ホールや溝が設けられたSiO基板(最小ホール径(φ):0.16μm、AR:6)の表面に、バリア層を形成することなく、直接銅含有膜を形成した際にも、ホールや溝の埋め込みは確認できた。しかし、銅含有膜は基板表面から簡単に剥離した。
【0121】
また、成膜条件3を用い、同様に直接銅含有膜を形成した。この場合は、ホールおよび溝のボトム部分に空間が見られ、完全な埋め込みは確認できなかった。
【実施例4】
【0122】
上記実施例2の原料TDEAVの代わりにTDEAT(テトラキスジエチルアミノチタン:Ti[N(C)])を用いて、実施例2記載の工程1および2を繰り返し、チタン含有膜からなるバリア層が設けられた基板を作製した。ただし、実施例2の基板作製条件1において、成膜温度は250℃とし、基板作製条件2において、基板はチタン含有膜/SiO/Si基板、また、成膜温度は250℃とし、残りの条件は全て同じにして行った。
【0123】
かくして、実施例2の基板作製条件1および2に従って、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比が4以上のホールおよび溝の設けられている基板が得られた。
【0124】
本実施例でも、実施例2と同様に、還元性ガスとしてTBHを用いた場合もNHを用いた場合も、同様に、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比(AR)が4以上のホールおよび溝の設けられている基板が作製できる。
【0125】
また、原料として、TDEATの代わりにTDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン)Ti[N(CH)])を用い、成膜温度を300℃として成膜しても、実施例2と同様に、最小ホール径がφ0.05μm、アスペクト比が4以上のホールおよび溝の設けられている基板が作製できた。
【実施例5】
【0126】
本実施例では、実施例4で得られたチタン含有膜(原料としてTDEAT使用)の形成された基板に対する、銅含有膜による穴埋め工程について説明する。
【0127】
実施例3の基板に代えて、チタン含有膜を形成した基板を用いたことを除いて、実施例3の成膜条件1〜3と全て同じ条件で実施例3のプロセスを繰り返し、銅含有膜を形成した。
【0128】
上記したようにして、銅含有膜が基板のホールおよび溝内へ埋め込まれたが、その埋め込みの結果を纏めて以下の表6および7に示す。表6は、実施例4、すなわち実施例2の工程1で作製した基板を使用した場合の結果を示し、表7は、実施例4すなわち実施例2の工程2で作製した基板を使用した場合の結果を示す。
【0129】
また、ホールおよび溝へ銅含有膜が埋め込まれた状態は上記した図5に示した場合と同様であり、ホールや溝内を含めて基板上に均一に形成されたバリア層の上に銅含有配線膜が均一に形成され、ホールや溝内が隙間なく埋め込まれていた。
【0130】
(表6)

【0131】
(表7)

【0132】
表6および7中、成膜条件の項目において:
◎:ホールを全て満たした。
×:埋め込みができなかった。
括弧内は埋め込みが達成できたアスペクト比(AR)を示す。
【0133】
表6および7において、ホール・溝への埋め込みの確認は、SEMおよびTEMを用いて行った。なお、埋め込まれた銅含有膜にはボイドは確認されなかった。
【0134】
表6および7から、埋め込みが確認できた銅含有膜の成膜温度は、150〜350℃であった。また、埋め込み後、圧力360Paの水素または窒素雰囲気中で、3時間、500℃に加熱してアニール処理をしても、膜中にボイドの発生は確認できなかった。
【0135】
ホールおよび溝への埋め込みが確認でき、かつ高いアスペクト比の場合にも埋め込みが達成できた成膜条件1および2の場合に得られた膜について、そのシート抵抗を測定したところ、2〜10μΩ・cmであった。このシート抵抗の分布に関しては、8インチ基板上に銅含有膜を形成した場合において、埋め込みが確認できた成膜条件で、かつ成膜温度200〜300℃で、2〜12%であった。
【0136】
従って、上記結果から、銅含有膜形成条件のうち、Cu(SOPD)錯体の供給量を基板の成膜表面積で割った値として、錯体の単位面積供給量を9.0×10−2mg/min・cm(3.6×10−3cc/min・cm:1.6×10−7mol/min・cm)以上とすることにより、高アスペクト比18、20を持つ細穴(開口部φ=0.05μm)の埋め込みを行うことができたことが分かる。また、上限値は、成膜モフォロジー悪化のために、2.0×10mg/min・cm(8.0×10−1cc/min・cm:3.6×10−5mol/min・cm))であった。
【0137】
なお、上記成膜プロセスにおいて銅含有膜形成の前にバリア層としてチタン含有膜を形成することにより、銅含有膜形成工程において初期核形成が促進され、短時間で初期核の核密度が高密度化されていることが確認でき、得られた基板において、チタン含有膜表面からの銅含有膜の剥離は観察されなかった。
【0138】
上記実施例4の原料TDEATの代わりにTDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン:Ti[N(CH)])を用いて得られたバリア層が設けられた基板に関しても、上記実施例5の銅含有膜穴埋め工程に従って銅含有膜を形成したところ、上記と同様な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によれば、埋め込み特性および下層のバリア層(密着層)との密着性に優れた所望の特性を有する銅含有配線を形成することができるので、本発明の方法は、半導体素子(LSI、ICなど)などの半導体産業を中心とした、金属配線、特に銅配線の分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の銅含有膜形成方法やバリア層形成を実施するためのCVD装置の一構成例を模式的に示す配置図。
【図2】図1に示すCVD装置の原料供給装置の別の実施の形態を模式的に示す配置図。
【図3】図1に示すCVD装置の原料供給装置のさらに別の実施の形態を模式的に示す配置図。
【図4】図1に示すCVD装置の原料供給装置のさらに別の実施の形態を模式的に示す配置図。
【図5】本発明によりホールおよび溝への銅含有膜が埋め込まれた状態を模式的に示す断面図。
【図6】従来のバリア層の上に従来の銅含有膜を埋め込んだ場合の、銅配線形成時のボイド発生状態を模式的に示す断面図。
【図7】従来の銅配線形成後のアニール処理によるボイド発生状態を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0141】
1 ガス供給装置 2 原料供給装置
201 原料容器 202 原料
203 気化装置 3 反応装置
301 反応室 302 シャワープレート
303 基板設置台 304 仕切りバルブ
4 排出装置 401 排出バルブ
402 圧力コントロールバルブ 403 原料トラップ
404 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホールや溝が形成された成膜対象物上に、4価のアミド系バナジウム有機金属原料ガスまたは4価の有機アミド系チタン有機金属原料ガスと還元性ガスとを用いて、CVD法によりバナジウムまたはチタン含有膜からなる下地層を形成し、この上に、CVD法により銅含有膜を形成し、該ホールや溝を埋め込むことを特徴とする銅配線の形成方法。
【請求項2】
前記4価のアミド系バナジウム有機金属原料が、テトラキスジエチルアミノバナジウム、テトラキスジメチルアミノバナジウムまたはテトラキスエチルメチルアミノバナジウムであり、また、前記4価のアミド系チタン有機金属原料がテトラキスジエチルアミノチタン、テトラキスジメチルアミノチタンまたはテトラキスエチルメチルアミノチタンであることを特徴とする請求項1記載の銅配線の形成方法。
【請求項3】
前記還元性ガスが、乖離してHラジカルや、Hイオンを放出することができるガスであることを特徴とする請求項1または2記載の銅配線の形成方法。
【請求項4】
前記還元性ガスが、ヒドラジン誘導体、NH、H、SiHおよびSiから選ばれたガスであることを特徴とする請求項3記載の銅配線の形成方法。
【請求項5】
前記ヒドラジン誘導体が、ヒドラジンの水素原子の1つまたは2つをメチル基、エチル基、直鎖または分枝のブチル基で置換したものである請求項4記載の銅配線の形成方法。
【請求項6】
前記ヒドラジン誘導体が、ターシャリーブチルヒドラジンであることを特徴とする請求項4記載の銅配線の形成方法。
【請求項7】
前記4価のアミド系バナジウムまたはチタン有機金属原料ガスと還元性ガスとの反応を、成膜速度が基板温度に依存する温度領域で行い、バナジウム含有膜またはチタン含有膜を形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項8】
前記銅含有膜を、次の一般式(I)'で表されるβ−ジケトネート基(式中、Zは、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を、Xは、次の一般式(I−I)で表される基(式中、Rは、炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキレン基を、R、R、Rは、夫々独立して炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキル基を表す)を、Yは、該一般式(I−I)で表される基(式中、Rは、炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキレン基を、R、R、Rは、夫々独立して炭素原子数1〜5の直鎖または分枝のアルキル基を表す)か、または炭素数1〜8の直鎖または分枝のアルキル基を表す)を配位子とする次の一般式(I)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである):
【化1】

で表される銅錯体のガスを用いて、CVD法により成膜対象物上に形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項9】
前記銅含有膜を、次の一般式(I−a)'で表されるβ−ジケトネート基(式中、Zは、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、炭素原子数1〜8の直鎖もしくは分岐のアルキル基か、またはこのC1〜8アルキル基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよい)を配位子とする次の一般式(I−a)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである):
【化2】

で表される銅錯体のガスを用いて、CVD法により成膜対象物上に形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項10】
前記銅含有膜を、次の一般式(I−b)'で表されるβ−ジケトネート基(式中、Zは、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、式:C2n−O−C2m+1(式中、n=1〜8、m=0〜7、n+m≦8である)で表される基か、またはこの基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよい)を配位子とする次の一般式(I−b)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである):
【化3】

で表される銅錯体のガスを用いて、CVD法により成膜対象物上に形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項11】
前記銅含有膜を、次の一般式(I−c)'で表されるβ−ジケトネート基(式中、Zは、H原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、XおよびYが、それぞれ、C2n−CH=CH−C2m+1(n=0〜6、m=0〜6、n+m≦6である)で表される基か、またはこの基の水素原子を最大で9ヶまでフッ素原子で置換したものを表し、このXおよびYは両者とも同じであっても異なっていてもよい)を配位子とする次の一般式(I−c)(式中、X、Y、Zは上記定義の通りである):
【化4】

で表される銅錯体のガスを用いて、CVD法により成膜対象物上に形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項12】
請求項1記載の銅含有膜の形成用原料の供給量、請求項8〜11記載の一般式(I)、(I−a)、(I−b)、(I−c)で表される銅錯体の供給量が、成膜対象物の成膜面の単位面積あたり、以下の式:
8.0×10-1cc/min・cm2(3.6×10-5mol/min・cm2) ≧ 供給量 ≧ 3.6×10-3cc/min・cm2(1.6×10-7mol/min・cm2)
を満足する量であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項13】
請求項1記載の銅含有膜の形成用原料、請求項8〜11記載の一般式(I)、(I−a)、(I−b)、(I−c)で表される銅錯体を用いて、CVD法により銅含有膜を形成する際の成膜温度が、150℃〜350℃であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項14】
前記銅含有膜を形成する際に、還元性ガスとして水素原子含有ガスを用いることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の銅配線の形成方法。
【請求項15】
前記水素原子含有ガスがHガスであることを特徴とする請求項14記載の銅配線の形成方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−93552(P2006−93552A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279365(P2004−279365)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】