錠剤検査装置及びPTP包装機
【課題】PTPシートの製造過程における錠剤の外観検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供する。
【解決手段】錠剤検査装置21は、照明装置22、カメラ23及び画像処理装置24等を備え、まず照明装置22から錠剤に対し照射される光の光量を段階的に変更し、当該錠剤を透過する透過光をカメラ23により撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する。そして、当該複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、錠剤の表面に係る三次元データを作成する。これに基づき、錠剤の外観形状が検査される。
【解決手段】錠剤検査装置21は、照明装置22、カメラ23及び画像処理装置24等を備え、まず照明装置22から錠剤に対し照射される光の光量を段階的に変更し、当該錠剤を透過する透過光をカメラ23により撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する。そして、当該複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、錠剤の表面に係る三次元データを作成する。これに基づき、錠剤の外観形状が検査される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造に際し用いられる錠剤検査装置、及び、該錠剤検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように前記包装用フィルムに取着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、ポケット部に錠剤が充填された後、カバーフィルムが取着される前段階等において、欠けの有無など錠剤の外観異常が検査される。このような外観検査としては、例えば二次元の輝度画像を基に検査を行う二次元検査や、三次元計測を行い、錠剤の形状を基に検査を行う三次元検査などが知られている。
【0004】
二次元検査では、例えば包装用フィルムのポケット部に収容された錠剤に向け照明装置から光が照射されると共に、当該照明装置とは反対側に設けられたカメラにて、錠剤を透過した透過光が撮像され、これにより得られた輝度画像に基づいて、錠剤表面に欠け等の異常があるか否かが検査される(例えば、特許文献1参照)。当該検査に係る輝度画像においては、欠け部分が比較的明るく映り、正常部分が比較的暗く映るため、これらの輝度差を考慮して所定の閾値を設定することで、欠けの有無を画像処理によって判別することができる。
【0005】
また、三次元計測法として光切断法を採用した一般的な三次元検査では、連続的に搬送される錠剤に対し斜め上方からスリット光を照射すると共に、当該錠剤からの反射光をカメラにて撮像し、そのデータを基に得られた各座標の高さデータを時系列に順次記憶していくことで錠剤の三次元データを生成し、欠けの有無等を判別する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−153534号公報
【特許文献2】特開2004−28604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記透過光を利用した二次元検査では、カメラのダイナミックレンジ不足により、錠剤の高さ方向全域に対応した正確な輝度階調が得られず、欠けの深さなど錠剤の外観形状を正確に把握することができないおそれがある。
【0008】
例えば錠剤の欠けには、ひび割れのような深いものもあれば、剥離と呼ばれる浅いものもある。そのため、照射光の光量が比較的少ない場合には、撮像された輝度画像において、浅い欠け部分が一般部と同様に暗部となり、当該欠け部分を適正に検出できないおそれがある。一方、照射光の光量が比較的多い場合には、撮像された輝度画像において、深い欠け部分が非錠剤領域と同様に輝度飽和してしまい、当該欠け部分を適正に検出できないおそれがある。
【0009】
また、上記光切断法を用いた三次元検査では、連続的に搬送される錠剤に対しスリット光を照射して撮像を行うため、錠剤の搬送速度との関係で、錠剤全域を細かく高さ計測できず、分解能が低下するおそれがある。
【0010】
結果として、検査精度が低下することが懸念される。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、PTPシートの製造過程における錠剤の外観検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0013】
手段1.PTPシートの製造過程において、帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記錠剤に対し所定の光を照射可能な照明手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を変更可能な光量変更手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記照明手段から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を段階的に変更して前記撮像手段により撮像した複数通りの輝度画像データを取得する輝度画像取得手段と、
前記複数通りの輝度画像データにおける各座標(各画素)毎の輝度値をそれぞれ合算して、少なくとも前記錠剤の表面に係る三次元データを作成する三次元形状取得手段と、
前記三次元データを基に、少なくとも前記錠剤の外観形状を検査する検査手段とを備えたことを特徴とする錠剤検査装置。
【0014】
上記手段1によれば、PTPシートの製造過程にあって、帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤の外観形状が検査される。
【0015】
具体的には、照明手段から錠剤に対し照射される光の光量を段階的に変更し、当該錠剤を透過する透過光を撮像手段により撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する。そして、当該複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、錠剤の表面に係る三次元データを作成する。これに基づき、錠剤の外観形状が検査される。なお、ここで「錠剤の表面」とは、撮像手段に対向する面を指す。また、錠剤の外観形状に係る検査としては、例えば錠剤に欠けや剥離等が存在するか否かを検出する検査や、刻印や割線等が適正に形成されているか否かを判別する検査等が挙げられる。
【0016】
本手段によれば、撮像手段のダイナミックレンジ不足を解消し、錠剤表面の凹凸の度合いに関係なく、錠剤表面全域に関して錠剤の外観形状に則したより正確な輝度階調を得ることができる。つまり、錠剤表面全域における高低の度合い(高さデータ)を明暗の度合い(輝度値)として取得することができる。また、二次元撮像により錠剤表面全域のデータを取得できるため、分解能を高めることができる。
【0017】
結果として、錠剤の外観形状をより正確に把握することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。さらには、透過光を利用する既存の2次元検査装置等を利用できるため、導入コスト等の削減を図ることができる。
【0018】
手段2.前記錠剤検査装置は、連続的に搬送される包装用フィルムのポケット部に収容された錠剤を検査可能に設けられたものであって、
前記包装用フィルムの搬送方向における異なる位置でそれぞれ撮像された前記複数通りの輝度画像データの相互間の座標系を合せる位置合せ手段を備えたことを特徴とする手段1に記載の錠剤検査装置。
【0019】
上記手段2によれば、錠剤(包装用フィルム)の搬送を停止させることなく、複数通りの輝度画像データの取得が可能となるため、検査効率ひいては生産性の向上を図ることができる。
【0020】
なお、従来の光切断法を用いた三次元検査では、錠剤の搬送速度を遅くすれば、分解能を高めることが可能となるが、かかる構成では生産性を低下させるおそれがある。本手段では、二次元撮像により錠剤表面全域のデータを取得できるため、分解能を高めるために錠剤の搬送速度を低下させる必要もなく、さらなる検査効率の向上等を図ることができる。
【0021】
手段3.前記照明手段から照射される光の光量は、前記錠剤の高さ方向に複数段階に区分けされた当該錠剤の所定の高さ範囲に合せてそれぞれ設定されていることを特徴とする手段1又は2に記載の錠剤検査装置。
【0022】
上記手段3によれば、例えばカメラのダイナミックレンジ等を考慮して、検出対象となる高さ範囲を予め設定し、それに合せて、変更する光の光量をそれぞれ設定しておくことにより、処理を簡素化し、さらなる検査効率の向上等を図ることができる。
【0023】
手段4.前記各光量の下で撮像される前記各輝度画像データ上において、少なくとも当該光量に対応する前記錠剤の所定の高さ範囲に存在する当該錠剤の表面に相当する領域内の画素の輝度値が飽和レベルに達しないよう設定されていることを特徴とする手段3に記載の錠剤検査装置。
【0024】
検出対象となった高さ範囲に存在する錠剤の表面に相当する領域内で一部でも輝度飽和していると、当該領域の輝度合算値が相対的に錠剤表面の高さに則したものとならないおそれがある。これに対し、本手段のようにすれば、より正確な三次元データを取得することができ、上記手段1等の作用効果をさらに高めることができる。
【0025】
手段5.前記検査手段は、
前記錠剤の三次元データに基づき、当該錠剤に係る互いに平行した複数の断面部の輪郭を抽出する断面輪郭抽出処理と、
前記各断面部の輪郭上の所定点における接線が、当該断面部の輪郭上に他の接点を有するか否かを判定する接線判定処理と、
前記所定点における接線が他に接点を有する場合に、当該接線と前記輪郭により囲まれた領域を欠け領域として認識する欠け領域認識処理と、
前記複数の断面部に係る前記欠け領域の連結成分である欠け空間の大きさを認識する欠け空間認識処理と、
前記欠け空間の大きさが許容範囲内か否かを判定する良否判定処理とを行うことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【0026】
なお、本手段における欠け空間の「大きさ」としては、例えば、欠け空間の「体積」、「表面積」、「錠剤表面側に露出する部分の面積」、「所定の方向に沿った長さ」など、欠けの程度を比較判別可能な種々の量が挙げられる。
【0027】
上記手段5によれば、錠剤の三次元形状を求め、そこから複数の断面部を採り、当該各断面部の輪郭とその接線との関係により欠けた領域(欠け領域)を認識し、当該欠け領域の連結成分である欠けた部分全体(欠け空間)の大きさを把握するといった方法に基づき、欠け(刻印や割線等を含む)の検出、ひいては錠剤の良否判定を行うことができる。
【0028】
手段6.手段1乃至5のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0029】
上記手段6のように、錠剤検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態におけるPTP包装機等の概略構成を示す模式図である。
【図2】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPシートを示す部分拡大断面図である。
【図3】照明装置を模式的に示す部分断面図である。
【図4】錠剤検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】(a)はチッピングが生じ、中央に割線を有し、かつ、刻印の付された錠剤を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)のJ−J線断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、照射する光量を段階的に変更して撮像した錠剤を現わした模式図である。
【図7】「検査ルーチン」を示すフローチャートである。
【図8】「三次元形状取得処理」を示すフローチャートである。
【図9】錠剤上の任意の点における輝度を得る基本原理を説明するための模式図である。
【図10】(a),(b)は、錠剤内部の等輝度線を現わした模式図である。
【図11】(a)は、チッピングが生じた錠剤を模式的に現わした図であり、(b)は、錠剤に対し第1光量の光を照射して撮像された第1輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図であり、(c)は、錠剤に対し第2光量の光を照射して撮像された第2輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図であり、(d)は、錠剤に対し第3光量の光を照射して撮像された第3輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図であり、(e)は、第1〜第3輝度画像データの輝度値を合算して得られた合算輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【図12】合算処理により得られるデータに相当するものであって、図5(a)のJ−J線に沿った輝度曲線を示すグラフである。
【図13】(a)は断面輪郭抽出処理を説明するための模式図であり、(b)は抽出された錠剤の断面部の輪郭を示す模式図である。
【図14】接線判定処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、錠剤検査装置をPTP包装機に装備することによって、PTP包装機においてPTPシートの不良(特に、チッピング、キャッピング、スティッキング等と称される錠剤表面の欠け等の異常)が検査される。
【0032】
図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルムとしての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルムとしての密封用フィルム4とを有している。容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、光透過性を有している(ここでは、透明を呈している)。密封用フィルム4は、アルミニウムによって構成されている。また、各ポケット部2には錠剤5が1つずつ収容されている。
【0033】
図1に示すように、PTP包装機7は、錠剤5を容器フィルム3に自動的に包装するものである。具体的には、PP、PVCなどの帯状の樹脂フィルムをフィルム送りロール9とテンションロール10,11とで、加熱装置12及び成形装置13に送り込み、錠剤5充填用のポケット部2を樹脂フィルムに成形する。そして、樹脂フィルムにポケット部2の成形された容器フィルム3が、充填装置14の下まで送られてくると、充填装置14が各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
【0034】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4は、テンションロール16,17を介してフィルム受けロール18の方へと案内されている。フィルム受けロール18には、加熱ロール19が圧接可能となっており、該加熱ロール19の外周面には、僅かに凸状に形成された格子状の線(図示略)が設けられている。そして、両ロール18,19間に、容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっている。両フィルム3,4が、両ロール18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着される。これによって、錠剤5が各ポケット部2に充填された長尺状のPTPフィルム20が製造される。
【0035】
さて、前記充填装置14の下流側、かつ、前記フィルム受けロール18及び加熱ロール19の上流側には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、容器フィルム3(充填された錠剤5)の不良を検査するための錠剤検査装置21が配設されている。当該錠剤検査装置21は、ポケット部2に充填された錠剤5の欠け等の表面異常の検出を主目的とする検査を行うものである。
【0036】
上記検査を経て、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後、PTPフィルム20は、図示しない打抜装置によってPTPシート1単位に裁断される。なお、錠剤検査装置21によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0037】
さて、PTP包装機7の概略は以上のとおりであるが、以下においては図4等に基づき、錠剤検査装置21についてより具体的に説明する。
【0038】
錠剤検査装置21は、照明手段としての照明装置22、撮像手段としてのカメラ23、画像処理装置24、モニタ25、及びキーボード26等を備えている。
【0039】
まずは、照明装置22について詳細に説明する。本実施形態における照明装置22は、容器フィルム3のポケット部2側に設けられており(図1参照)、面発光が可能となっている。図3に示すように照明装置22は、容器フィルム3に近い側(図の上側)において容器フィルム3と平行に延びる拡散板27を有しているとともに、その内部には、LED実装基板28が設けられている。そして、LED実装基板28には、赤外光を照射可能なLED28a(光源)が多数配列されている。
【0040】
さらに、前記拡散板27の容器フィルム3側の面には、角度透過率制御フィルタ29が取着されている。角度透過率制御フィルタ29は、カメラ23のレンズ部の画角よりも大きな光のみを透過しうるよう構成されており、光源からの光のカメラ23への直接の入射が制限されるようになっている。勿論、角度透過率制御フィルタ29を省略した構成としてもよい。
【0041】
また、カメラ23は、前記容器フィルム3を介して前記照明装置22とは反対側にあたる容器フィルム3のポケット部2開口部側(図1では上側)に設けられており、照明装置22から照射される光のうち、少なくとも錠剤5を透過した光を撮像可能となっている。本実施形態では、カメラ23としてCCDカメラが採用されている。これに限らず、CMOSカメラを採用してもよい。
【0042】
このように、本実施形態では、照明装置22から照射される光が錠剤5等を照らし、錠剤5等を透過した光が、カメラ23によって二次元撮像されるように構成されている。そして、カメラ23によって撮像された輝度画像データ(少なくとも各画素毎の輝度値を含む二次元の濃淡画像データ)は、カメラ23内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で画像処理装置24に入力されるようになっている。
【0043】
画像処理装置24は、図4に示すように、カメラ23に対応する画像メモリ41、三次元計測結果メモリ42、判定用メモリ44、検査結果及び統計データメモリ45、カメラタイミング制御手段46、CPU及び入出力インターフェース47、並びに、光量変更手段としての照明輝度制御手段48などから構成され、後述するような画像データの処理や、錠剤不良の判定等を実施可能となっている。
【0044】
画像メモリ41は、カメラ23により撮像された輝度画像データを順次記憶するものである。
【0045】
三次元計測結果メモリ42は、後述するように上記輝度画像データに基づいて得られた三次元データ(合算輝度画像データ)を順次記憶するものである。
【0046】
CPU及び入出力インターフェース47は、各種処理プログラムを判定用メモリ44の記憶内容などを使用しつつ実行するとともに、PTP包装機7に制御信号を送出し又はPTP包装機7から動作信号などの各種信号を送受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機7の不良シート排出機構などを制御することができるようになっている。また、CPU及び入出力インターフェース47は、モニタ25に表示データを送出する機能をも有する。かかる機能により、輝度画像データや不良検査結果などを、モニタ25に表示させることができるようになっている。さらに、CPU及び入出力インターフェース47は、キーボード26からのデータを入力する機能をも有する。
【0047】
検査結果及び統計データメモリ45は、輝度画像データに関する座標等のデータ、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース47の制御に基づき、適宜モニタ25に表示させることができる。また、これらの検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース47がPTP包装機7に制御信号を送出することもできる。
【0048】
カメラタイミング制御手段46は、カメラ23が撮像する輝度画像データを、画像メモリ41に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングはPTP包装機7に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとにカメラ23によるシート単位(例えば打ち抜かれるPTPシート単位)で撮像が行われる。
【0049】
照明輝度制御手段48は、照明装置22から照射される光の光量を変更制御するものである。照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの信号に基づいて制御され、後述するように所定位置を通過する錠剤5に適した光量の光が照明装置22から照射されるように、当該照明装置22を制御する。
【0050】
ここで、カメラ23により撮像される輝度画像データ等について、図5(a),(b)に示す錠剤5を撮像した場合を例に説明する。
【0051】
図5において、(a)は、チッピング(欠け)Tが生じ、かつ、中央に割線PLを有し、かつ、「C」字状の刻印KMの付された錠剤5を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のJ−J線断面図である。
【0052】
錠剤5は、薄肉となっている部位ほど光を透過しやすいため、薄肉部位ほど明るく映る傾向にある(図6参照)。図6(a)〜(c)は、後述するように、(a)よりも(b)、(b)よりも(c)と、照射する光量を段階的に多くして(3段階に変更して)撮像した錠剤5を現わした模式図である。図6(a)〜(c)から見てとれるように、錠剤5に照射される光の光量が多くなるにつれ、カメラ23のダイナミックレンジとの関係で、輝度画像データ上で輝度飽和する領域(図6の白抜き部分)が多くなる。
【0053】
次に、上記不良検査(錠剤5の欠けの検査)の手順について図7のフローチャート等に従って説明する。
【0054】
同図に示すように、「検査ルーチン」では、まずステップS101において三次元形状取得処理を実行する。
【0055】
まず図9,10を参照して原理説明を行った上で、図8のフローチャートに従って三次元形状取得処理の流れを詳しく説明する。
【0056】
図9に示すように、錠剤5に対し下方から均一に光を照射した場合における当該錠剤5の上面上の任意の点Pにおける輝度QPは、錠剤5の内部を通過する光が錠剤5の下面上の所定点An(nは1以上の自然数)から拡散しながら点Pへと届くため、所定点Anにおける輝度Qnを、点Anと点Pとの距離lnのm乗(但し、mの値は、拡散の度合いにより2乗〜3乗の間で変化し、錠剤5の種別ごとに異なる)で除算した値を積分したものとなる〔下式(1)参照〕。
【0057】
QP=R[(Q1/l1m)+(Q2/l2m)+・・・+(Qn/lnm)]…(1)
Rは定数。
【0058】
従って、図10(a),(b)に示した錠剤5内部の等輝度線(図10中の破線参照)から判るように、下方から光が照射された錠剤5の上面側寄りの等輝度線は、錠剤5の下面に形成された凹凸形状に影響を受けることなく、ほぼ水平となる。そのため、図10(a)に示すように、錠剤5の上面側に凹凸形状が存在しない場合には、錠剤5の上面全域でその輝度が一定となる。一方、図10(b)に示すように、錠剤5の上面側に凹凸形状が存在する場合には、高さの高い部分P1ほど輝度が小さく、高さの低い部分P2ほど輝度が大きくなる。つまり、錠剤5上面の所定点における輝度値は、その所定点における高さとみなすことができる。
【0059】
これを利用して錠剤5の上面側から撮像(輝度計測)することにより、錠剤5下面の凹凸形状にかかわらず、錠剤5上面の三次元データ(高さデータ)を取得することができる。
【0060】
図8に示すように、三次元形状取得処理においては、まずステップS201において第1輝度画像データ取得処理を実行する。
【0061】
詳しくは、カメラタイミング制御手段46の指示に基づき、所定の錠剤5(PTPシート1)がフィルム搬送方向第1位置を通過するタイミングに合せて、カメラ23による撮像が行われる。
【0062】
この際、照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの指示に基づき、カメラ23の撮像タイミングに合せて、照明装置22から照射される光の光量を予め定められた第1光量に設定する。これにより、第1光量の光を照射して撮像された第1輝度画像データが画像メモリ41に取り込まれることとなる。
【0063】
ここで、第1光量は、錠剤5の高さレベルの比較的低い領域H1(以下、低レベル領域H1という)に対応して比較的少ない値に設定されている〔図11(a),(b)参照〕。なお、図11において、(a)は、チッピングToが生じた錠剤5を模式的に現わした図であり、(b)は、当該錠剤5に対し第1光量の光を照射して撮像された第1輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【0064】
図11(a),(b)を見て判るように、錠剤5にチッピングTo等が生じている場合の第1輝度画像データにおいて、低レベル領域H1に対応する錠剤上面エリアE1に関しては、その高さの違いに応じた適切な輝度階調となる。一方、低レベル領域H1よりも高い高さレベルの領域H2,H3に対応する錠剤上面エリアE2,E3に関しては、光の透過量が少なく暗部となると共に、高さの違いに関係なく一定の輝度値となる。このため、例えば図5(a)に例示した錠剤5をステップS201の第1輝度画像データ取得処理で撮像した場合には、図6(a)に示すような第1輝度画像データが得られる。ここでは、比較的浅い刻印KMの部分が他の一般部と同様に暗部となり、検出できない状態となる。
【0065】
ステップS202においては、第2輝度画像データ取得処理を実行する。
【0066】
詳しくは、カメラタイミング制御手段46の指示に基づき、所定の錠剤5(PTPシート1)がフィルム搬送方向第2位置を通過するタイミングに合せて、カメラ23による撮像が行われる。
【0067】
この際、照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの指示に基づき、カメラ23の撮像タイミングに合せて、照明装置22から照射される光の光量を上記第1光量よりも光量の多い第2光量に変更する。これにより、第2光量の光を照射して撮像された第2輝度画像データが画像メモリ41に取り込まれることとなる。
【0068】
ここで、第2光量は、錠剤5の高さレベルの中程度の領域H2(以下、中レベル領域H2という)に対応して設定されている〔図11(a),(c)参照〕。なお、図11(c)は、錠剤5に対し第2光量の光を照射して撮像された第2輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【0069】
図11(a),(c)を見て判るように、第2輝度画像データにおいて、中レベル領域H2に対応する錠剤上面エリアE2に関しては、その高さの違いに応じた適切な輝度階調となる。一方、低レベル領域H1に対応する錠剤上面エリアE1に関しては、錠剤領域外のシート領域と同様に、一部の画素が輝度飽和した状態(輝度値が飽和輝度Wに達した状態)となる。また、中レベル領域H2よりも高い高さレベルの領域H3(以下、高レベル領域H3という)に対応する錠剤上面エリアE3に関しては、光の透過量が少なく暗部となると共に、高さの違いに関係なく一定の輝度値となる。このため、例えば図5(a)に例示した錠剤5をステップS202の第2輝度画像データ取得処理で撮像した場合には、図6(b)に示すような第2輝度画像データが得られる。ここでは、比較的深いチッピングTの部分が輝度飽和した状態となり、検出できない状態となる。
【0070】
ステップS203においては、第3輝度画像データ取得処理を実行する。
【0071】
詳しくは、カメラタイミング制御手段46の指示に基づき、所定の錠剤5(PTPシート1)がフィルム搬送方向第3位置を通過するタイミングに合せて、カメラ23による撮像が行われる。
【0072】
この際、照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの指示に基づき、カメラ23の撮像タイミングに合せて、照明装置22から照射される光の光量を上記第2光量よりも光量の多い第3光量に変更する。これにより、第3光量の光を照射して撮像された第3輝度画像データが画像メモリ41に取り込まれることとなる。
【0073】
ここで、第3光量は、錠剤5の高さレベルの比較的高い高レベル領域H3に対応して設定されている〔図11(a),(d)参照〕。なお、図11(d)は、錠剤5に対し第3光量の光を照射して撮像された第3輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【0074】
図11(a),(d)を見て判るように、第3輝度画像データにおいて、高レベル領域H3に対応する錠剤上面エリアE3に関しては、その高さの違いに応じた適切な輝度階調となる。一方、低レベル領域H1に対応する錠剤上面エリアE1、及び中レベル領域H2に対応する錠剤上面エリアE2に関しては、シート領域と同様に、大部分で画素が輝度飽和した状態となる。このため、例えば図5(a)に例示した錠剤5をステップS203の第3輝度画像データ取得処理で撮像した場合には、図6(c)に示すような第3輝度画像データが得られる。ここでは、チッピングT、割線PL、刻印KMの部分が共に輝度飽和した状態となり、区別できない状態となる。
【0075】
ステップS204においては、上記ステップS201〜S203で取得した第1〜第3輝度画像データの座標位置を位置合せする位置合せ処理を実行する。上記ステップS201〜S203の処理を実行する機能が本実施形態における輝度画像取得手段を構成し、ステップS204の処理を実行する機能が位置合せ手段を構成する。
【0076】
ここでは、例えば各輝度画像データにおいて、X軸方向及びY軸方向それぞれに錠剤5の射影をとり、その射影の中心位置を延長して交差する点を錠剤5の位置として検出する。これを基に、各輝度画像データにおける各錠剤5の位置を合せる。
【0077】
ステップS205では、ステップS204で位置合せした第1〜第3輝度画像データの同一座標位置における各画素の輝度値を合算する合算処理を実行する〔図11(e)参照〕。図11(e)は、第1〜第3輝度画像データの輝度値を合算して得られた合算輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。ステップS205の処理を実行する機能が本実施形態における三次元形状取得手段を構成する。
【0078】
ここで得られた合算輝度画像データは、高さデータ(高さZ軸方向の座標値)に変換された上で、錠剤5の三次元データとして三次元計測結果メモリ42に格納される。例えば図5(a)に例示した錠剤5に係る三次元データは、図5(a)のJ−J線に沿った輝度値が図12に示すような輝度曲線を示す。
【0079】
ここで、図7の検査ルーチンの説明に戻る。ステップS102では、断面輪郭抽出処理を実行する。具体的には、ステップS101において得られた錠剤5の三次元データを基に、図13(a)に示すように、錠剤5を所定水平方向Sと直交しかつ互いに平行した複数の平面K1〜Knにより切断し、各断面部の輪郭形状を抽出する。これにより、例えば平面K3に係る断面部では、図13(b)に示すような錠剤5表面の輪郭5aが抽出される。具体的には、輪郭5a上の各点の座標値が得られる。
【0080】
ステップS103では、接線判定処理を実行する。具体的には、ステップS102で得られた平面K1〜Knに係る各断面部の輪郭5a上の所定点における接線が、当該輪郭5a上に他の接点を有するか否かを判定する。本実施形態では、錠剤5の上面側全域にあたる各断面部の輪郭5a上のすべての点の接線についてこの処理が行われる。
【0081】
例えば、図14に示すように、錠剤5の各断面部の輪郭5aに沿ってA点、B点、C点…といった順序で、当該点に係る接線判定処理を順次実行していく。そして、欠け51の始点となるC点の位置においては、欠け51の終点となるD点とも接する接線52が検出される。
【0082】
ステップS104では、欠け領域認識処理を実行する。この処理では、例えば図14に示した接線52のように、ステップS103にて2点に接する接線が検出された場合に、当該接線と錠剤5の断面部の輪郭5aとにより囲まれた領域を欠け領域として認識する。図14に示した例では、接線52と錠剤5の断面部の輪郭5aとにより囲まれた欠け51の領域(散点模様を付した領域)が欠け領域Sxとして認識される。
【0083】
ステップS105では、欠け体積算出処理を実行する。この処理が本実施形態における欠け空間認識処理に相当する。具体的には、複数の断面部に係る欠け領域Sxの連結成分である欠け空間の体積(欠け体積)Vxを算出する。なお、欠けが複数存在する場合には、各欠け毎に欠け体積Vxが算出される。
【0084】
ステップS106では、ステップS105において算出した欠け体積Vxが、判定用メモリ44に予め記憶された判定基準値Vo以下か否かを判定する。かかる処理が良否判定処理を構成する。
【0085】
そして、欠け体積Vxが判定基準値Vo以下の場合には、ステップS107において良品判定を行い、本処理を終了する。一方、欠け体積Vxが判定基準値Voよりも大きいものが1つでもある場合には、ステップS108において不良判定を行い、本処理を一旦終了する。これらの検査結果は、モニタ25やPTP包装機7(不良シート排出機構を含む)に出力される。
【0086】
なお、上記ステップS101からステップS108の処理は、容器フィルム3上の各錠剤5について実行され、後にPTPシート1となって裁断されたときに同一シート上に一つでも不良判定された錠剤5が含まれているときは、そのシートは不良と判断され排出される。上記ステップS101〜S106の処理を実行する機能が本実施形態における検査手段を構成する。
【0087】
以上詳述したように、本実施形態によれば、錠剤5の外観形状を検査するにあたり、照明装置22から錠剤5に対し照射される光の光量を段階的に変更し、当該錠剤5を透過する透過光をカメラ23により撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する。そして、当該複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、錠剤5の表面に係る三次元データを作成する。これに基づき、錠剤5の外観形状が検査される。
【0088】
本実施形態によれば、カメラ23のダイナミックレンジ不足を解消し、錠剤5の表面の凹凸の度合いに関係なく、錠剤5の表面全域に関して錠剤5の外観形状に則したより正確な輝度階調を得ることができる。つまり、錠剤5の表面全域における高低の度合い(高さデータ)を明暗の度合い(輝度値)として取得することができる。また、二次元撮像により錠剤5の表面全域のデータを取得できるため、分解能を高めることができる。
【0089】
結果として、錠剤5の外観形状をより正確に把握することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。さらには、透過光を利用する既存の2次元検査装置等を利用できるため、導入コスト等の削減を図ることができる。
【0090】
また、錠剤5を連続的に搬送しながら複数通りの輝度画像データの取得が可能であると共に、分解能を高めるために錠剤5の搬送速度を低下させる必要もないため、検査効率ひいては生産性の向上を図ることができる。
【0091】
さらに、本実施形態では、錠剤5の三次元形状を求め、そこから複数の断面部を採り、当該各断面部における錠剤5表面の輪郭5aとその接線との関係により欠け領域Sxを認識し、当該欠け領域Sxの連結成分である欠け空間の体積(欠け体積)Vxを把握するといった方法に基づき、欠けの有無の検出、ひいては錠剤5の良否判定を行う構成となっている。これにより、錠剤5の形状、大きさ、姿勢等のバラツキに影響を受けることなく、比較的浅く小さな剥離状の欠けであっても、より確実に検出することができる。結果として、錠剤5の欠け等の検査に係る検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0092】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0093】
(a)上記実施形態では、検査対象となる錠剤5の態様例として、円盤形状の平錠を例示しているが、錠剤の種類はこれに限られるものではない。例えば中央部と周縁部とで厚みが異なる断面楕円形状のレンズ錠等であってもよい。
【0094】
(b)上記実施形態では、錠剤5に対し赤外光を照射する構成となっているが、照射光はこれに限定されるものではない。例えば可視光やX線を照射する構成としてもよい。
【0095】
X線を利用した場合には、容器フィルム3がアルミニウム製など可視光等を透過しない素材で形成されている場合や、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後工程に錠剤5の外観検査を行うことが可能となる。但し、製品や人体への影響、製造コスト等を考慮すれば、可視光や赤外光等を利用することが好ましい。
【0096】
(c)上記実施形態では、ポケット部2突出部側に照明装置22を配置し、ポケット部2開口部側にカメラ23を配置した構成となっているが、両者の位置関係を逆にした構成としてもよい。かかる構成によれば、ポケット部2突出部側に面した錠剤5の下面側の検査を行うことができる。また、錠剤5の上下両面にそれぞれ対応して、照明装置22及びカメラ23を2組備えた構成としてもよい。
【0097】
(d)上記実施形態では、錠剤5の外観形状に係る検査として、チッピングT等の異常が存在するか否かの検査を行っているが、これに代えて又は加えて、割線PLや刻印KM等が適正に形成されているか否かを判別する検査等を行う構成としてもよい。
【0098】
(e)上記実施形態では、錠剤5の各高さレベル領域H1〜H3に対応する第1〜第3光量に関して具体的な値を示していないが、第1〜第3光量は錠剤5の厚みや密度等に応じて、錠剤5の種別ごとに予め任意の値に設定される。但し、第1〜第3光量は、それぞれ当該光量の下で撮像される第1〜第3輝度画像データ上において、各高さレベル領域H1〜H3に対応する錠剤上面エリアE1〜E3内すべての画素の輝度値が飽和レベルに達しないレベルで設定されることが好ましい。
【0099】
(f)上記実施形態におけるステップS204の位置合せ処理では、取得した各輝度画像データを基に錠剤5の射影をとることにより当該錠剤5の位置を特定し、複数通りの輝度画像データにおける各錠剤5の位置合せを行う構成となっている。位置合せの手法は、これに限定されるものではなく、他の方法を採用してもよい。例えば、容器フィルム3の送り量(PTP包装機7のエンコーダの値)に基づき、複数通りの輝度画像データにおける各錠剤5の位置合せを行う構成としてもよい。
【0100】
(g)上記実施形態では、合算輝度画像データを一旦高さデータ(高さZ軸方向の座標値)に変換して、これを錠剤5の三次元データとして取り扱う構成となっている。これに限らず、例えば合算輝度画像データの合算輝度値をそのまま三次元データとして取り扱う構成としてもよいし、合算輝度値を再度、0から255までの256階調の値に変換したデータを三次元データとして取り扱う構成としてもよい。
【0101】
(h)上記実施形態では、錠剤5(容器フィルム3)を連続的に搬送しながら複数通りの輝度画像データを取得する構成となっているが、これに限らず、錠剤5の搬送を一旦停止した状態で照明装置22の光量を複数段階に変更して複数回撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する構成としてもよい。
【0102】
(i)上記実施形態では、錠剤5の三次元形状を求め、そこから複数の断面部を採り、当該各断面部における錠剤5表面の輪郭5aとその接線との関係により欠け領域Sxを認識し、当該欠け領域Sxの連結成分である欠け空間の体積(欠け体積)Vxを把握するといった方法で欠け51の有無の検出、ひいては錠剤5の良否判定を行う構成となっている。これに限らず、例えば、欠け51の「大きさ」として、欠け空間の「表面積」、「錠剤表面側に露出する部分の面積」、「所定の方向に沿った長さ」などを算出し、これに基づき錠剤5の良否判定を行う構成としてもよい。また、合算輝度画像データの合算輝度値が所定の閾値以上であるか否かを判別することにより欠けの有無等を検出する構成としてもよいし、予め記憶した良品基準データとの比較に基づいて錠剤5の良否判定を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…密封用フィルム、5…錠剤、7…PTP包装機、21…錠剤検査装置、22…照明装置、23…カメラ、24…画像処理装置、48…照明輝度制御手段、H1…低レベル領域、H2…中レベル領域、H3…高レベル領域、E1〜E3…錠剤上面エリア、T…チッピング、PL…割線、KM…刻印。
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造に際し用いられる錠剤検査装置、及び、該錠剤検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように前記包装用フィルムに取着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、ポケット部に錠剤が充填された後、カバーフィルムが取着される前段階等において、欠けの有無など錠剤の外観異常が検査される。このような外観検査としては、例えば二次元の輝度画像を基に検査を行う二次元検査や、三次元計測を行い、錠剤の形状を基に検査を行う三次元検査などが知られている。
【0004】
二次元検査では、例えば包装用フィルムのポケット部に収容された錠剤に向け照明装置から光が照射されると共に、当該照明装置とは反対側に設けられたカメラにて、錠剤を透過した透過光が撮像され、これにより得られた輝度画像に基づいて、錠剤表面に欠け等の異常があるか否かが検査される(例えば、特許文献1参照)。当該検査に係る輝度画像においては、欠け部分が比較的明るく映り、正常部分が比較的暗く映るため、これらの輝度差を考慮して所定の閾値を設定することで、欠けの有無を画像処理によって判別することができる。
【0005】
また、三次元計測法として光切断法を採用した一般的な三次元検査では、連続的に搬送される錠剤に対し斜め上方からスリット光を照射すると共に、当該錠剤からの反射光をカメラにて撮像し、そのデータを基に得られた各座標の高さデータを時系列に順次記憶していくことで錠剤の三次元データを生成し、欠けの有無等を判別する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−153534号公報
【特許文献2】特開2004−28604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記透過光を利用した二次元検査では、カメラのダイナミックレンジ不足により、錠剤の高さ方向全域に対応した正確な輝度階調が得られず、欠けの深さなど錠剤の外観形状を正確に把握することができないおそれがある。
【0008】
例えば錠剤の欠けには、ひび割れのような深いものもあれば、剥離と呼ばれる浅いものもある。そのため、照射光の光量が比較的少ない場合には、撮像された輝度画像において、浅い欠け部分が一般部と同様に暗部となり、当該欠け部分を適正に検出できないおそれがある。一方、照射光の光量が比較的多い場合には、撮像された輝度画像において、深い欠け部分が非錠剤領域と同様に輝度飽和してしまい、当該欠け部分を適正に検出できないおそれがある。
【0009】
また、上記光切断法を用いた三次元検査では、連続的に搬送される錠剤に対しスリット光を照射して撮像を行うため、錠剤の搬送速度との関係で、錠剤全域を細かく高さ計測できず、分解能が低下するおそれがある。
【0010】
結果として、検査精度が低下することが懸念される。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、PTPシートの製造過程における錠剤の外観検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0013】
手段1.PTPシートの製造過程において、帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記錠剤に対し所定の光を照射可能な照明手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を変更可能な光量変更手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記照明手段から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を段階的に変更して前記撮像手段により撮像した複数通りの輝度画像データを取得する輝度画像取得手段と、
前記複数通りの輝度画像データにおける各座標(各画素)毎の輝度値をそれぞれ合算して、少なくとも前記錠剤の表面に係る三次元データを作成する三次元形状取得手段と、
前記三次元データを基に、少なくとも前記錠剤の外観形状を検査する検査手段とを備えたことを特徴とする錠剤検査装置。
【0014】
上記手段1によれば、PTPシートの製造過程にあって、帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤の外観形状が検査される。
【0015】
具体的には、照明手段から錠剤に対し照射される光の光量を段階的に変更し、当該錠剤を透過する透過光を撮像手段により撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する。そして、当該複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、錠剤の表面に係る三次元データを作成する。これに基づき、錠剤の外観形状が検査される。なお、ここで「錠剤の表面」とは、撮像手段に対向する面を指す。また、錠剤の外観形状に係る検査としては、例えば錠剤に欠けや剥離等が存在するか否かを検出する検査や、刻印や割線等が適正に形成されているか否かを判別する検査等が挙げられる。
【0016】
本手段によれば、撮像手段のダイナミックレンジ不足を解消し、錠剤表面の凹凸の度合いに関係なく、錠剤表面全域に関して錠剤の外観形状に則したより正確な輝度階調を得ることができる。つまり、錠剤表面全域における高低の度合い(高さデータ)を明暗の度合い(輝度値)として取得することができる。また、二次元撮像により錠剤表面全域のデータを取得できるため、分解能を高めることができる。
【0017】
結果として、錠剤の外観形状をより正確に把握することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。さらには、透過光を利用する既存の2次元検査装置等を利用できるため、導入コスト等の削減を図ることができる。
【0018】
手段2.前記錠剤検査装置は、連続的に搬送される包装用フィルムのポケット部に収容された錠剤を検査可能に設けられたものであって、
前記包装用フィルムの搬送方向における異なる位置でそれぞれ撮像された前記複数通りの輝度画像データの相互間の座標系を合せる位置合せ手段を備えたことを特徴とする手段1に記載の錠剤検査装置。
【0019】
上記手段2によれば、錠剤(包装用フィルム)の搬送を停止させることなく、複数通りの輝度画像データの取得が可能となるため、検査効率ひいては生産性の向上を図ることができる。
【0020】
なお、従来の光切断法を用いた三次元検査では、錠剤の搬送速度を遅くすれば、分解能を高めることが可能となるが、かかる構成では生産性を低下させるおそれがある。本手段では、二次元撮像により錠剤表面全域のデータを取得できるため、分解能を高めるために錠剤の搬送速度を低下させる必要もなく、さらなる検査効率の向上等を図ることができる。
【0021】
手段3.前記照明手段から照射される光の光量は、前記錠剤の高さ方向に複数段階に区分けされた当該錠剤の所定の高さ範囲に合せてそれぞれ設定されていることを特徴とする手段1又は2に記載の錠剤検査装置。
【0022】
上記手段3によれば、例えばカメラのダイナミックレンジ等を考慮して、検出対象となる高さ範囲を予め設定し、それに合せて、変更する光の光量をそれぞれ設定しておくことにより、処理を簡素化し、さらなる検査効率の向上等を図ることができる。
【0023】
手段4.前記各光量の下で撮像される前記各輝度画像データ上において、少なくとも当該光量に対応する前記錠剤の所定の高さ範囲に存在する当該錠剤の表面に相当する領域内の画素の輝度値が飽和レベルに達しないよう設定されていることを特徴とする手段3に記載の錠剤検査装置。
【0024】
検出対象となった高さ範囲に存在する錠剤の表面に相当する領域内で一部でも輝度飽和していると、当該領域の輝度合算値が相対的に錠剤表面の高さに則したものとならないおそれがある。これに対し、本手段のようにすれば、より正確な三次元データを取得することができ、上記手段1等の作用効果をさらに高めることができる。
【0025】
手段5.前記検査手段は、
前記錠剤の三次元データに基づき、当該錠剤に係る互いに平行した複数の断面部の輪郭を抽出する断面輪郭抽出処理と、
前記各断面部の輪郭上の所定点における接線が、当該断面部の輪郭上に他の接点を有するか否かを判定する接線判定処理と、
前記所定点における接線が他に接点を有する場合に、当該接線と前記輪郭により囲まれた領域を欠け領域として認識する欠け領域認識処理と、
前記複数の断面部に係る前記欠け領域の連結成分である欠け空間の大きさを認識する欠け空間認識処理と、
前記欠け空間の大きさが許容範囲内か否かを判定する良否判定処理とを行うことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【0026】
なお、本手段における欠け空間の「大きさ」としては、例えば、欠け空間の「体積」、「表面積」、「錠剤表面側に露出する部分の面積」、「所定の方向に沿った長さ」など、欠けの程度を比較判別可能な種々の量が挙げられる。
【0027】
上記手段5によれば、錠剤の三次元形状を求め、そこから複数の断面部を採り、当該各断面部の輪郭とその接線との関係により欠けた領域(欠け領域)を認識し、当該欠け領域の連結成分である欠けた部分全体(欠け空間)の大きさを把握するといった方法に基づき、欠け(刻印や割線等を含む)の検出、ひいては錠剤の良否判定を行うことができる。
【0028】
手段6.手段1乃至5のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0029】
上記手段6のように、錠剤検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】一実施形態におけるPTP包装機等の概略構成を示す模式図である。
【図2】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPシートを示す部分拡大断面図である。
【図3】照明装置を模式的に示す部分断面図である。
【図4】錠剤検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】(a)はチッピングが生じ、中央に割線を有し、かつ、刻印の付された錠剤を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)のJ−J線断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、照射する光量を段階的に変更して撮像した錠剤を現わした模式図である。
【図7】「検査ルーチン」を示すフローチャートである。
【図8】「三次元形状取得処理」を示すフローチャートである。
【図9】錠剤上の任意の点における輝度を得る基本原理を説明するための模式図である。
【図10】(a),(b)は、錠剤内部の等輝度線を現わした模式図である。
【図11】(a)は、チッピングが生じた錠剤を模式的に現わした図であり、(b)は、錠剤に対し第1光量の光を照射して撮像された第1輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図であり、(c)は、錠剤に対し第2光量の光を照射して撮像された第2輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図であり、(d)は、錠剤に対し第3光量の光を照射して撮像された第3輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図であり、(e)は、第1〜第3輝度画像データの輝度値を合算して得られた合算輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【図12】合算処理により得られるデータに相当するものであって、図5(a)のJ−J線に沿った輝度曲線を示すグラフである。
【図13】(a)は断面輪郭抽出処理を説明するための模式図であり、(b)は抽出された錠剤の断面部の輪郭を示す模式図である。
【図14】接線判定処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、錠剤検査装置をPTP包装機に装備することによって、PTP包装機においてPTPシートの不良(特に、チッピング、キャッピング、スティッキング等と称される錠剤表面の欠け等の異常)が検査される。
【0032】
図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルムとしての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルムとしての密封用フィルム4とを有している。容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、光透過性を有している(ここでは、透明を呈している)。密封用フィルム4は、アルミニウムによって構成されている。また、各ポケット部2には錠剤5が1つずつ収容されている。
【0033】
図1に示すように、PTP包装機7は、錠剤5を容器フィルム3に自動的に包装するものである。具体的には、PP、PVCなどの帯状の樹脂フィルムをフィルム送りロール9とテンションロール10,11とで、加熱装置12及び成形装置13に送り込み、錠剤5充填用のポケット部2を樹脂フィルムに成形する。そして、樹脂フィルムにポケット部2の成形された容器フィルム3が、充填装置14の下まで送られてくると、充填装置14が各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
【0034】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4は、テンションロール16,17を介してフィルム受けロール18の方へと案内されている。フィルム受けロール18には、加熱ロール19が圧接可能となっており、該加熱ロール19の外周面には、僅かに凸状に形成された格子状の線(図示略)が設けられている。そして、両ロール18,19間に、容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっている。両フィルム3,4が、両ロール18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着される。これによって、錠剤5が各ポケット部2に充填された長尺状のPTPフィルム20が製造される。
【0035】
さて、前記充填装置14の下流側、かつ、前記フィルム受けロール18及び加熱ロール19の上流側には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、容器フィルム3(充填された錠剤5)の不良を検査するための錠剤検査装置21が配設されている。当該錠剤検査装置21は、ポケット部2に充填された錠剤5の欠け等の表面異常の検出を主目的とする検査を行うものである。
【0036】
上記検査を経て、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後、PTPフィルム20は、図示しない打抜装置によってPTPシート1単位に裁断される。なお、錠剤検査装置21によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0037】
さて、PTP包装機7の概略は以上のとおりであるが、以下においては図4等に基づき、錠剤検査装置21についてより具体的に説明する。
【0038】
錠剤検査装置21は、照明手段としての照明装置22、撮像手段としてのカメラ23、画像処理装置24、モニタ25、及びキーボード26等を備えている。
【0039】
まずは、照明装置22について詳細に説明する。本実施形態における照明装置22は、容器フィルム3のポケット部2側に設けられており(図1参照)、面発光が可能となっている。図3に示すように照明装置22は、容器フィルム3に近い側(図の上側)において容器フィルム3と平行に延びる拡散板27を有しているとともに、その内部には、LED実装基板28が設けられている。そして、LED実装基板28には、赤外光を照射可能なLED28a(光源)が多数配列されている。
【0040】
さらに、前記拡散板27の容器フィルム3側の面には、角度透過率制御フィルタ29が取着されている。角度透過率制御フィルタ29は、カメラ23のレンズ部の画角よりも大きな光のみを透過しうるよう構成されており、光源からの光のカメラ23への直接の入射が制限されるようになっている。勿論、角度透過率制御フィルタ29を省略した構成としてもよい。
【0041】
また、カメラ23は、前記容器フィルム3を介して前記照明装置22とは反対側にあたる容器フィルム3のポケット部2開口部側(図1では上側)に設けられており、照明装置22から照射される光のうち、少なくとも錠剤5を透過した光を撮像可能となっている。本実施形態では、カメラ23としてCCDカメラが採用されている。これに限らず、CMOSカメラを採用してもよい。
【0042】
このように、本実施形態では、照明装置22から照射される光が錠剤5等を照らし、錠剤5等を透過した光が、カメラ23によって二次元撮像されるように構成されている。そして、カメラ23によって撮像された輝度画像データ(少なくとも各画素毎の輝度値を含む二次元の濃淡画像データ)は、カメラ23内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で画像処理装置24に入力されるようになっている。
【0043】
画像処理装置24は、図4に示すように、カメラ23に対応する画像メモリ41、三次元計測結果メモリ42、判定用メモリ44、検査結果及び統計データメモリ45、カメラタイミング制御手段46、CPU及び入出力インターフェース47、並びに、光量変更手段としての照明輝度制御手段48などから構成され、後述するような画像データの処理や、錠剤不良の判定等を実施可能となっている。
【0044】
画像メモリ41は、カメラ23により撮像された輝度画像データを順次記憶するものである。
【0045】
三次元計測結果メモリ42は、後述するように上記輝度画像データに基づいて得られた三次元データ(合算輝度画像データ)を順次記憶するものである。
【0046】
CPU及び入出力インターフェース47は、各種処理プログラムを判定用メモリ44の記憶内容などを使用しつつ実行するとともに、PTP包装機7に制御信号を送出し又はPTP包装機7から動作信号などの各種信号を送受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機7の不良シート排出機構などを制御することができるようになっている。また、CPU及び入出力インターフェース47は、モニタ25に表示データを送出する機能をも有する。かかる機能により、輝度画像データや不良検査結果などを、モニタ25に表示させることができるようになっている。さらに、CPU及び入出力インターフェース47は、キーボード26からのデータを入力する機能をも有する。
【0047】
検査結果及び統計データメモリ45は、輝度画像データに関する座標等のデータ、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース47の制御に基づき、適宜モニタ25に表示させることができる。また、これらの検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース47がPTP包装機7に制御信号を送出することもできる。
【0048】
カメラタイミング制御手段46は、カメラ23が撮像する輝度画像データを、画像メモリ41に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングはPTP包装機7に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとにカメラ23によるシート単位(例えば打ち抜かれるPTPシート単位)で撮像が行われる。
【0049】
照明輝度制御手段48は、照明装置22から照射される光の光量を変更制御するものである。照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの信号に基づいて制御され、後述するように所定位置を通過する錠剤5に適した光量の光が照明装置22から照射されるように、当該照明装置22を制御する。
【0050】
ここで、カメラ23により撮像される輝度画像データ等について、図5(a),(b)に示す錠剤5を撮像した場合を例に説明する。
【0051】
図5において、(a)は、チッピング(欠け)Tが生じ、かつ、中央に割線PLを有し、かつ、「C」字状の刻印KMの付された錠剤5を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のJ−J線断面図である。
【0052】
錠剤5は、薄肉となっている部位ほど光を透過しやすいため、薄肉部位ほど明るく映る傾向にある(図6参照)。図6(a)〜(c)は、後述するように、(a)よりも(b)、(b)よりも(c)と、照射する光量を段階的に多くして(3段階に変更して)撮像した錠剤5を現わした模式図である。図6(a)〜(c)から見てとれるように、錠剤5に照射される光の光量が多くなるにつれ、カメラ23のダイナミックレンジとの関係で、輝度画像データ上で輝度飽和する領域(図6の白抜き部分)が多くなる。
【0053】
次に、上記不良検査(錠剤5の欠けの検査)の手順について図7のフローチャート等に従って説明する。
【0054】
同図に示すように、「検査ルーチン」では、まずステップS101において三次元形状取得処理を実行する。
【0055】
まず図9,10を参照して原理説明を行った上で、図8のフローチャートに従って三次元形状取得処理の流れを詳しく説明する。
【0056】
図9に示すように、錠剤5に対し下方から均一に光を照射した場合における当該錠剤5の上面上の任意の点Pにおける輝度QPは、錠剤5の内部を通過する光が錠剤5の下面上の所定点An(nは1以上の自然数)から拡散しながら点Pへと届くため、所定点Anにおける輝度Qnを、点Anと点Pとの距離lnのm乗(但し、mの値は、拡散の度合いにより2乗〜3乗の間で変化し、錠剤5の種別ごとに異なる)で除算した値を積分したものとなる〔下式(1)参照〕。
【0057】
QP=R[(Q1/l1m)+(Q2/l2m)+・・・+(Qn/lnm)]…(1)
Rは定数。
【0058】
従って、図10(a),(b)に示した錠剤5内部の等輝度線(図10中の破線参照)から判るように、下方から光が照射された錠剤5の上面側寄りの等輝度線は、錠剤5の下面に形成された凹凸形状に影響を受けることなく、ほぼ水平となる。そのため、図10(a)に示すように、錠剤5の上面側に凹凸形状が存在しない場合には、錠剤5の上面全域でその輝度が一定となる。一方、図10(b)に示すように、錠剤5の上面側に凹凸形状が存在する場合には、高さの高い部分P1ほど輝度が小さく、高さの低い部分P2ほど輝度が大きくなる。つまり、錠剤5上面の所定点における輝度値は、その所定点における高さとみなすことができる。
【0059】
これを利用して錠剤5の上面側から撮像(輝度計測)することにより、錠剤5下面の凹凸形状にかかわらず、錠剤5上面の三次元データ(高さデータ)を取得することができる。
【0060】
図8に示すように、三次元形状取得処理においては、まずステップS201において第1輝度画像データ取得処理を実行する。
【0061】
詳しくは、カメラタイミング制御手段46の指示に基づき、所定の錠剤5(PTPシート1)がフィルム搬送方向第1位置を通過するタイミングに合せて、カメラ23による撮像が行われる。
【0062】
この際、照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの指示に基づき、カメラ23の撮像タイミングに合せて、照明装置22から照射される光の光量を予め定められた第1光量に設定する。これにより、第1光量の光を照射して撮像された第1輝度画像データが画像メモリ41に取り込まれることとなる。
【0063】
ここで、第1光量は、錠剤5の高さレベルの比較的低い領域H1(以下、低レベル領域H1という)に対応して比較的少ない値に設定されている〔図11(a),(b)参照〕。なお、図11において、(a)は、チッピングToが生じた錠剤5を模式的に現わした図であり、(b)は、当該錠剤5に対し第1光量の光を照射して撮像された第1輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【0064】
図11(a),(b)を見て判るように、錠剤5にチッピングTo等が生じている場合の第1輝度画像データにおいて、低レベル領域H1に対応する錠剤上面エリアE1に関しては、その高さの違いに応じた適切な輝度階調となる。一方、低レベル領域H1よりも高い高さレベルの領域H2,H3に対応する錠剤上面エリアE2,E3に関しては、光の透過量が少なく暗部となると共に、高さの違いに関係なく一定の輝度値となる。このため、例えば図5(a)に例示した錠剤5をステップS201の第1輝度画像データ取得処理で撮像した場合には、図6(a)に示すような第1輝度画像データが得られる。ここでは、比較的浅い刻印KMの部分が他の一般部と同様に暗部となり、検出できない状態となる。
【0065】
ステップS202においては、第2輝度画像データ取得処理を実行する。
【0066】
詳しくは、カメラタイミング制御手段46の指示に基づき、所定の錠剤5(PTPシート1)がフィルム搬送方向第2位置を通過するタイミングに合せて、カメラ23による撮像が行われる。
【0067】
この際、照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの指示に基づき、カメラ23の撮像タイミングに合せて、照明装置22から照射される光の光量を上記第1光量よりも光量の多い第2光量に変更する。これにより、第2光量の光を照射して撮像された第2輝度画像データが画像メモリ41に取り込まれることとなる。
【0068】
ここで、第2光量は、錠剤5の高さレベルの中程度の領域H2(以下、中レベル領域H2という)に対応して設定されている〔図11(a),(c)参照〕。なお、図11(c)は、錠剤5に対し第2光量の光を照射して撮像された第2輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【0069】
図11(a),(c)を見て判るように、第2輝度画像データにおいて、中レベル領域H2に対応する錠剤上面エリアE2に関しては、その高さの違いに応じた適切な輝度階調となる。一方、低レベル領域H1に対応する錠剤上面エリアE1に関しては、錠剤領域外のシート領域と同様に、一部の画素が輝度飽和した状態(輝度値が飽和輝度Wに達した状態)となる。また、中レベル領域H2よりも高い高さレベルの領域H3(以下、高レベル領域H3という)に対応する錠剤上面エリアE3に関しては、光の透過量が少なく暗部となると共に、高さの違いに関係なく一定の輝度値となる。このため、例えば図5(a)に例示した錠剤5をステップS202の第2輝度画像データ取得処理で撮像した場合には、図6(b)に示すような第2輝度画像データが得られる。ここでは、比較的深いチッピングTの部分が輝度飽和した状態となり、検出できない状態となる。
【0070】
ステップS203においては、第3輝度画像データ取得処理を実行する。
【0071】
詳しくは、カメラタイミング制御手段46の指示に基づき、所定の錠剤5(PTPシート1)がフィルム搬送方向第3位置を通過するタイミングに合せて、カメラ23による撮像が行われる。
【0072】
この際、照明輝度制御手段48は、カメラタイミング制御手段46からの指示に基づき、カメラ23の撮像タイミングに合せて、照明装置22から照射される光の光量を上記第2光量よりも光量の多い第3光量に変更する。これにより、第3光量の光を照射して撮像された第3輝度画像データが画像メモリ41に取り込まれることとなる。
【0073】
ここで、第3光量は、錠剤5の高さレベルの比較的高い高レベル領域H3に対応して設定されている〔図11(a),(d)参照〕。なお、図11(d)は、錠剤5に対し第3光量の光を照射して撮像された第3輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。
【0074】
図11(a),(d)を見て判るように、第3輝度画像データにおいて、高レベル領域H3に対応する錠剤上面エリアE3に関しては、その高さの違いに応じた適切な輝度階調となる。一方、低レベル領域H1に対応する錠剤上面エリアE1、及び中レベル領域H2に対応する錠剤上面エリアE2に関しては、シート領域と同様に、大部分で画素が輝度飽和した状態となる。このため、例えば図5(a)に例示した錠剤5をステップS203の第3輝度画像データ取得処理で撮像した場合には、図6(c)に示すような第3輝度画像データが得られる。ここでは、チッピングT、割線PL、刻印KMの部分が共に輝度飽和した状態となり、区別できない状態となる。
【0075】
ステップS204においては、上記ステップS201〜S203で取得した第1〜第3輝度画像データの座標位置を位置合せする位置合せ処理を実行する。上記ステップS201〜S203の処理を実行する機能が本実施形態における輝度画像取得手段を構成し、ステップS204の処理を実行する機能が位置合せ手段を構成する。
【0076】
ここでは、例えば各輝度画像データにおいて、X軸方向及びY軸方向それぞれに錠剤5の射影をとり、その射影の中心位置を延長して交差する点を錠剤5の位置として検出する。これを基に、各輝度画像データにおける各錠剤5の位置を合せる。
【0077】
ステップS205では、ステップS204で位置合せした第1〜第3輝度画像データの同一座標位置における各画素の輝度値を合算する合算処理を実行する〔図11(e)参照〕。図11(e)は、第1〜第3輝度画像データの輝度値を合算して得られた合算輝度画像データにおける輝度階調を模式的に示した図である。ステップS205の処理を実行する機能が本実施形態における三次元形状取得手段を構成する。
【0078】
ここで得られた合算輝度画像データは、高さデータ(高さZ軸方向の座標値)に変換された上で、錠剤5の三次元データとして三次元計測結果メモリ42に格納される。例えば図5(a)に例示した錠剤5に係る三次元データは、図5(a)のJ−J線に沿った輝度値が図12に示すような輝度曲線を示す。
【0079】
ここで、図7の検査ルーチンの説明に戻る。ステップS102では、断面輪郭抽出処理を実行する。具体的には、ステップS101において得られた錠剤5の三次元データを基に、図13(a)に示すように、錠剤5を所定水平方向Sと直交しかつ互いに平行した複数の平面K1〜Knにより切断し、各断面部の輪郭形状を抽出する。これにより、例えば平面K3に係る断面部では、図13(b)に示すような錠剤5表面の輪郭5aが抽出される。具体的には、輪郭5a上の各点の座標値が得られる。
【0080】
ステップS103では、接線判定処理を実行する。具体的には、ステップS102で得られた平面K1〜Knに係る各断面部の輪郭5a上の所定点における接線が、当該輪郭5a上に他の接点を有するか否かを判定する。本実施形態では、錠剤5の上面側全域にあたる各断面部の輪郭5a上のすべての点の接線についてこの処理が行われる。
【0081】
例えば、図14に示すように、錠剤5の各断面部の輪郭5aに沿ってA点、B点、C点…といった順序で、当該点に係る接線判定処理を順次実行していく。そして、欠け51の始点となるC点の位置においては、欠け51の終点となるD点とも接する接線52が検出される。
【0082】
ステップS104では、欠け領域認識処理を実行する。この処理では、例えば図14に示した接線52のように、ステップS103にて2点に接する接線が検出された場合に、当該接線と錠剤5の断面部の輪郭5aとにより囲まれた領域を欠け領域として認識する。図14に示した例では、接線52と錠剤5の断面部の輪郭5aとにより囲まれた欠け51の領域(散点模様を付した領域)が欠け領域Sxとして認識される。
【0083】
ステップS105では、欠け体積算出処理を実行する。この処理が本実施形態における欠け空間認識処理に相当する。具体的には、複数の断面部に係る欠け領域Sxの連結成分である欠け空間の体積(欠け体積)Vxを算出する。なお、欠けが複数存在する場合には、各欠け毎に欠け体積Vxが算出される。
【0084】
ステップS106では、ステップS105において算出した欠け体積Vxが、判定用メモリ44に予め記憶された判定基準値Vo以下か否かを判定する。かかる処理が良否判定処理を構成する。
【0085】
そして、欠け体積Vxが判定基準値Vo以下の場合には、ステップS107において良品判定を行い、本処理を終了する。一方、欠け体積Vxが判定基準値Voよりも大きいものが1つでもある場合には、ステップS108において不良判定を行い、本処理を一旦終了する。これらの検査結果は、モニタ25やPTP包装機7(不良シート排出機構を含む)に出力される。
【0086】
なお、上記ステップS101からステップS108の処理は、容器フィルム3上の各錠剤5について実行され、後にPTPシート1となって裁断されたときに同一シート上に一つでも不良判定された錠剤5が含まれているときは、そのシートは不良と判断され排出される。上記ステップS101〜S106の処理を実行する機能が本実施形態における検査手段を構成する。
【0087】
以上詳述したように、本実施形態によれば、錠剤5の外観形状を検査するにあたり、照明装置22から錠剤5に対し照射される光の光量を段階的に変更し、当該錠剤5を透過する透過光をカメラ23により撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する。そして、当該複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、錠剤5の表面に係る三次元データを作成する。これに基づき、錠剤5の外観形状が検査される。
【0088】
本実施形態によれば、カメラ23のダイナミックレンジ不足を解消し、錠剤5の表面の凹凸の度合いに関係なく、錠剤5の表面全域に関して錠剤5の外観形状に則したより正確な輝度階調を得ることができる。つまり、錠剤5の表面全域における高低の度合い(高さデータ)を明暗の度合い(輝度値)として取得することができる。また、二次元撮像により錠剤5の表面全域のデータを取得できるため、分解能を高めることができる。
【0089】
結果として、錠剤5の外観形状をより正確に把握することができ、検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。さらには、透過光を利用する既存の2次元検査装置等を利用できるため、導入コスト等の削減を図ることができる。
【0090】
また、錠剤5を連続的に搬送しながら複数通りの輝度画像データの取得が可能であると共に、分解能を高めるために錠剤5の搬送速度を低下させる必要もないため、検査効率ひいては生産性の向上を図ることができる。
【0091】
さらに、本実施形態では、錠剤5の三次元形状を求め、そこから複数の断面部を採り、当該各断面部における錠剤5表面の輪郭5aとその接線との関係により欠け領域Sxを認識し、当該欠け領域Sxの連結成分である欠け空間の体積(欠け体積)Vxを把握するといった方法に基づき、欠けの有無の検出、ひいては錠剤5の良否判定を行う構成となっている。これにより、錠剤5の形状、大きさ、姿勢等のバラツキに影響を受けることなく、比較的浅く小さな剥離状の欠けであっても、より確実に検出することができる。結果として、錠剤5の欠け等の検査に係る検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0092】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0093】
(a)上記実施形態では、検査対象となる錠剤5の態様例として、円盤形状の平錠を例示しているが、錠剤の種類はこれに限られるものではない。例えば中央部と周縁部とで厚みが異なる断面楕円形状のレンズ錠等であってもよい。
【0094】
(b)上記実施形態では、錠剤5に対し赤外光を照射する構成となっているが、照射光はこれに限定されるものではない。例えば可視光やX線を照射する構成としてもよい。
【0095】
X線を利用した場合には、容器フィルム3がアルミニウム製など可視光等を透過しない素材で形成されている場合や、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後工程に錠剤5の外観検査を行うことが可能となる。但し、製品や人体への影響、製造コスト等を考慮すれば、可視光や赤外光等を利用することが好ましい。
【0096】
(c)上記実施形態では、ポケット部2突出部側に照明装置22を配置し、ポケット部2開口部側にカメラ23を配置した構成となっているが、両者の位置関係を逆にした構成としてもよい。かかる構成によれば、ポケット部2突出部側に面した錠剤5の下面側の検査を行うことができる。また、錠剤5の上下両面にそれぞれ対応して、照明装置22及びカメラ23を2組備えた構成としてもよい。
【0097】
(d)上記実施形態では、錠剤5の外観形状に係る検査として、チッピングT等の異常が存在するか否かの検査を行っているが、これに代えて又は加えて、割線PLや刻印KM等が適正に形成されているか否かを判別する検査等を行う構成としてもよい。
【0098】
(e)上記実施形態では、錠剤5の各高さレベル領域H1〜H3に対応する第1〜第3光量に関して具体的な値を示していないが、第1〜第3光量は錠剤5の厚みや密度等に応じて、錠剤5の種別ごとに予め任意の値に設定される。但し、第1〜第3光量は、それぞれ当該光量の下で撮像される第1〜第3輝度画像データ上において、各高さレベル領域H1〜H3に対応する錠剤上面エリアE1〜E3内すべての画素の輝度値が飽和レベルに達しないレベルで設定されることが好ましい。
【0099】
(f)上記実施形態におけるステップS204の位置合せ処理では、取得した各輝度画像データを基に錠剤5の射影をとることにより当該錠剤5の位置を特定し、複数通りの輝度画像データにおける各錠剤5の位置合せを行う構成となっている。位置合せの手法は、これに限定されるものではなく、他の方法を採用してもよい。例えば、容器フィルム3の送り量(PTP包装機7のエンコーダの値)に基づき、複数通りの輝度画像データにおける各錠剤5の位置合せを行う構成としてもよい。
【0100】
(g)上記実施形態では、合算輝度画像データを一旦高さデータ(高さZ軸方向の座標値)に変換して、これを錠剤5の三次元データとして取り扱う構成となっている。これに限らず、例えば合算輝度画像データの合算輝度値をそのまま三次元データとして取り扱う構成としてもよいし、合算輝度値を再度、0から255までの256階調の値に変換したデータを三次元データとして取り扱う構成としてもよい。
【0101】
(h)上記実施形態では、錠剤5(容器フィルム3)を連続的に搬送しながら複数通りの輝度画像データを取得する構成となっているが、これに限らず、錠剤5の搬送を一旦停止した状態で照明装置22の光量を複数段階に変更して複数回撮像することにより、複数通りの輝度画像データを取得する構成としてもよい。
【0102】
(i)上記実施形態では、錠剤5の三次元形状を求め、そこから複数の断面部を採り、当該各断面部における錠剤5表面の輪郭5aとその接線との関係により欠け領域Sxを認識し、当該欠け領域Sxの連結成分である欠け空間の体積(欠け体積)Vxを把握するといった方法で欠け51の有無の検出、ひいては錠剤5の良否判定を行う構成となっている。これに限らず、例えば、欠け51の「大きさ」として、欠け空間の「表面積」、「錠剤表面側に露出する部分の面積」、「所定の方向に沿った長さ」などを算出し、これに基づき錠剤5の良否判定を行う構成としてもよい。また、合算輝度画像データの合算輝度値が所定の閾値以上であるか否かを判別することにより欠けの有無等を検出する構成としてもよいし、予め記憶した良品基準データとの比較に基づいて錠剤5の良否判定を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…密封用フィルム、5…錠剤、7…PTP包装機、21…錠剤検査装置、22…照明装置、23…カメラ、24…画像処理装置、48…照明輝度制御手段、H1…低レベル領域、H2…中レベル領域、H3…高レベル領域、E1〜E3…錠剤上面エリア、T…チッピング、PL…割線、KM…刻印。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTPシートの製造過程において、帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記錠剤に対し所定の光を照射可能な照明手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を変更可能な光量変更手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記照明手段から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を段階的に変更して前記撮像手段により撮像した複数通りの輝度画像データを取得する輝度画像取得手段と、
前記複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、少なくとも前記錠剤の表面に係る三次元データを作成する三次元形状取得手段と、
前記三次元データを基に、少なくとも前記錠剤の外観形状を検査する検査手段とを備えたことを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項2】
前記錠剤検査装置は、連続的に搬送される包装用フィルムのポケット部に収容された錠剤を検査可能に設けられたものであって、
前記包装用フィルムの搬送方向における異なる位置でそれぞれ撮像された前記複数通りの輝度画像データの相互間の座標系を合せる位置合せ手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の錠剤検査装置。
【請求項3】
前記照明手段から照射される光の光量は、前記錠剤の高さ方向に複数段階に区分けされた当該錠剤の所定の高さ範囲に合せてそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤検査装置。
【請求項4】
前記各光量の下で撮像される前記各輝度画像データ上において、少なくとも当該光量に対応する前記錠剤の所定の高さ範囲に存在する当該錠剤の表面に相当する領域内の画素の輝度値が飽和レベルに達しないよう設定されていることを特徴とする請求項3に記載の錠剤検査装置。
【請求項5】
前記検査手段は、
前記錠剤の三次元データに基づき、当該錠剤に係る互いに平行した複数の断面部の輪郭を抽出する断面輪郭抽出処理と、
前記各断面部の輪郭上の所定点における接線が、当該断面部の輪郭上に他の接点を有するか否かを判定する接線判定処理と、
前記所定点における接線が他に接点を有する場合に、当該接線と前記輪郭により囲まれた領域を欠け領域として認識する欠け領域認識処理と、
前記複数の断面部に係る前記欠け領域の連結成分である欠け空間の大きさを認識する欠け空間認識処理と、
前記欠け空間の大きさが許容範囲内か否かを判定する良否判定処理とを行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【請求項1】
PTPシートの製造過程において、帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記錠剤に対し所定の光を照射可能な照明手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を変更可能な光量変更手段と、
前記照明手段とは前記包装用フィルムを介して反対側に設けられ、前記照明手段から照射され前記錠剤を透過する透過光を撮像可能な撮像手段と、
前記照明手段により照射される光の光量を段階的に変更して前記撮像手段により撮像した複数通りの輝度画像データを取得する輝度画像取得手段と、
前記複数通りの輝度画像データにおける各座標毎の輝度値をそれぞれ合算して、少なくとも前記錠剤の表面に係る三次元データを作成する三次元形状取得手段と、
前記三次元データを基に、少なくとも前記錠剤の外観形状を検査する検査手段とを備えたことを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項2】
前記錠剤検査装置は、連続的に搬送される包装用フィルムのポケット部に収容された錠剤を検査可能に設けられたものであって、
前記包装用フィルムの搬送方向における異なる位置でそれぞれ撮像された前記複数通りの輝度画像データの相互間の座標系を合せる位置合せ手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の錠剤検査装置。
【請求項3】
前記照明手段から照射される光の光量は、前記錠剤の高さ方向に複数段階に区分けされた当該錠剤の所定の高さ範囲に合せてそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤検査装置。
【請求項4】
前記各光量の下で撮像される前記各輝度画像データ上において、少なくとも当該光量に対応する前記錠剤の所定の高さ範囲に存在する当該錠剤の表面に相当する領域内の画素の輝度値が飽和レベルに達しないよう設定されていることを特徴とする請求項3に記載の錠剤検査装置。
【請求項5】
前記検査手段は、
前記錠剤の三次元データに基づき、当該錠剤に係る互いに平行した複数の断面部の輪郭を抽出する断面輪郭抽出処理と、
前記各断面部の輪郭上の所定点における接線が、当該断面部の輪郭上に他の接点を有するか否かを判定する接線判定処理と、
前記所定点における接線が他に接点を有する場合に、当該接線と前記輪郭により囲まれた領域を欠け領域として認識する欠け領域認識処理と、
前記複数の断面部に係る前記欠け領域の連結成分である欠け空間の大きさを認識する欠け空間認識処理と、
前記欠け空間の大きさが許容範囲内か否かを判定する良否判定処理とを行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−215519(P2012−215519A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82090(P2011−82090)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]