電動車両の冷却システム
【課題】従来と同等なトルクと出力を得ながら、電動車両に用いられるモータとインバータ電源の体格を小さくする。
【解決手段】車両を電動駆動する電動駆動手段1、2に冷却媒体を循環させる冷媒循環路6と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段3と、冷媒循環路6を通して熱交換手段3と電動駆動手段1、2との間で冷却媒体を循環させる冷媒循環手段5と、熱交換手段3に送風する送風手段4と、冷媒循環手段5と送風手段4を制御して電動駆動手段1、2の冷却を制御する制御手段23とを備え、制御手段23によって、電動駆動手段1、2による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、冷媒循環手段5と送風手段4を第一冷却モードで制御し、電動駆動手段1、2による車両の駆動力が第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、冷媒循環手段5と送風手段4を第一冷却モードよりも冷却能力が高い第二冷却モードで制御する。
【解決手段】車両を電動駆動する電動駆動手段1、2に冷却媒体を循環させる冷媒循環路6と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行う熱交換手段3と、冷媒循環路6を通して熱交換手段3と電動駆動手段1、2との間で冷却媒体を循環させる冷媒循環手段5と、熱交換手段3に送風する送風手段4と、冷媒循環手段5と送風手段4を制御して電動駆動手段1、2の冷却を制御する制御手段23とを備え、制御手段23によって、電動駆動手段1、2による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、冷媒循環手段5と送風手段4を第一冷却モードで制御し、電動駆動手段1、2による車両の駆動力が第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、冷媒循環手段5と送風手段4を第一冷却モードよりも冷却能力が高い第二冷却モードで制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動車両の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の車両駆動用モータとそのインバータ電源を冷却する電動車両の冷却システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−285106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両駆動用モータと前記モータを駆動するためのインバータ装置の大きさなどの体格は、発進時あるいは加速時、登坂時などを考慮して定められている。上述した負荷の極めて大きい条件で十分な出力を得るように前記モータやインバータ装置の体格を定めると、自ずとその体格は大きくなり、消費電力の増大につながる。
【0005】
しかし、実際に車両として日常的に使用されるモータの発生トルクあるいはインバータ装置の出力は最大トルクや最高出力ではなく、これらよりも小さい値であり、最大トルクや最高出力が必要とされる運転状態頻度は少ない。また高トルクあるいは高出力が要求されてもその持続時間は短い。つまり、電動車両、特に電気自動車においては、大トルクあるいは大出力で運転される頻度やその持続時間が短いにもかかわらず、大トルクあるいは大出力で運転に重点を置いた設計が為され、そのことが小型化あるいは軽量化を行う上での大きな課題となっている。
【0006】
本発明の目的は、大トルクあるいは大出力での運転に配慮すると共に、システムの簡素化あるいは軽量化に対応できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1の発明は、車両を電動駆動する電動駆動手段を冷却する冷却手段と、前記冷却手段を制御して前記電動駆動手段の冷却を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記電動駆動手段による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、第一冷却能力となる第一冷却モードで前記冷却手段を制御し、前記電動駆動手段による前記車両の駆動力が前記第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、前記第一冷却能力よりも高い第二冷却能力となる第二冷却モードで前記冷却手段を制御するとともに、前記第二冷却モードにおいて、前記制御手段は、前記電動駆動手段の回転速度が低いほど前記第二冷却能力が高くなるように、前記冷却手段を制御することを特徴とする電動車両の冷却システムである。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度は、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くしたことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度が、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くなるように、前記車両の変速比を規定したことを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項2または3に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記車両の速度は、前記車両の最高速度の1/2よりも高いことを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記電動駆動手段のトルクは、前記最高運転効率点が得られる前記回転速度に対応して前記電動駆動手段が発揮できる最大トルクの50〜75%の範囲に含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大トルク化あるいは大出力化に対応しつつ、モータあるいはインバータ装置の体格を小型化したシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図2】電動車両用冷却システムの変形例の構成を示す図
【図3】電動車両用冷却システムの他の変形例の構成を示す図
【図4】(a)は一般的な考え方を適用して制御する場合のモータの回転速度に対するトルク特性を示す図、(b)は本発明の一実施の形態のモータの回転速度に対するトルク特性を示す図
【図5】第一作動領域における第一冷却モードと第二作動領域における第二冷却モードのファンとポンプの運転方法(a)〜(d)を示す図
【図6】第1の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図7】第1の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャート
【図8】外気温による第一作動領域と第二作動領域との境界線の変更の様子を示す図
【図9】第一作動領域と第二作動領域の切換ハンチングを防止する方法を説明するための図
【図10】モータの出力および冷却能力と回転速度との関係を示す図
【図11】アクセル操作量の経時変化に伴うモータの回転速度の経時変化に応じたモータの冷却能力の経時変化を表す図
【図12】モータの運転効率が高い領域を、モータの回転速度のより高い領域に位置させた一例を示す図
【図13】モータ1の運転効率の最高効率点が中程度のトルクとなる一例を示した図
【図14】第2の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図15】第2の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャート
【図16】第3の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図17】第3の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャート
【図18】第4の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図19】第5の実施の形態の冷却制御を示すブロック図
【図20】モータ損失とポンプおよびファンの消費電力との和が最小となるモータ温度を説明するための図
【図21】第6の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図22】第6の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図23】第7の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図24】第7の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図25】第8の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図26】第8の実施の形態の暖房運転時の第一冷却媒体の流れを示す図
【図27】第9の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図28】第9の実施の形態の電動車両用冷却システムにおいて、高い冷却能力を得る場合の冷却媒体の流れを示す図
【図29】第10の実施の形態の電動車両冷却システムの構成を示す図
【図30】第10の実施の形態の電動車両用冷却システムにおいて、高い冷却能力を得る場合の冷却媒体の流れを示す図
【図31】第6の実施の形態の冷却システムを搭載した電動車両を横から見た図
【図32】第6の実施の形態の冷却システムを搭載した電動車両を上から見た図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明の実施の形態では、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄の記載内容に止まらず、製品化に向けてのいろいろな課題を解決し、これらの課題に対応する効果を奏している。その内の幾つかを次に列挙する。
【0011】
以下の実施の形態では、冷却機器例えばポンプとファンの消費電力を低減でき、電動車両全体の運転効率を向上することができる。
【0012】
以下の実施の形態では、インバータ装置やモータが発生する熱を車室内の暖房に利用することができ、エネルギー効率が向上する。
【0013】
以下の実施の形態では、インバータ装置やモータを冷却する為の圧縮機や熱交換器を利用して室内温度の調整を行うことができるので、システムの簡素化が可能となる。
【0014】
本発明の電動車両の冷却システムを電気自動車に適用した一実施の形態を説明する。なお、本発明は以下に定義する電気自動車に適用すると大変良好な効果を呈するが、必ずしも本発明は電気自動車に限定されるものではない。本発明はさらに建設機械などの電動車両に対して適用した場合にも良好な効果が得られる。また本発明は電気鉄道などの電動車両にも適用できる。
【0015】
以下の一実施の形態ではインバータ装置により駆動される交流モータを例に挙げて説明しており、以下に説明のモータが永久磁石を使用したモータである場合には誘導電動機に比べ回転子の発熱が少なく、他の方式のモータに比べ効率の向上が可能である。
【0016】
しかし本発明が適用可能なモータは交流モータに限定されず、例えばサイリスタレオナード装置などのコンバータ電源により駆動される直流モータ、あるいはチョッパ電源により駆動されるパルスモータなど、あらゆる種類の回転電機(モータ・ジェネレータ)に適用することができる。ただ、上述の如く、永久磁石を使用したモータが効率や小型軽量の観点で最も優れており、次に誘導電動機が、自動車用、車両用として、優れている。
【0017】
《発明の第1の実施の形態》
図1は第1の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示し、特に電動自動車用に最適な冷却システムを示す。この電動車両用冷却システムは、車両を走行するためのトルクを発生するモータ1とこのモータ1を駆動するための交流電力を発生するインバータ装置2とを冷却するためのラジエータ3、ファン4、ポンプ5、冷媒循環路6、ファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22および制御装置23を備えている。冷媒循環路6はポンプ5→ラジエータ3→インバータ装置2→モータ1→ポンプ5の経路で冷却媒体を循環する。ポンプ5から圧送された冷却媒体は、ラジエータ3でファン4により送風された空気により冷却され、インバータ装置2およびモータ1を冷却してふたたびポンプ5へ戻る。ここで冷却媒体としては水が最適であるが、油を使用することも可能である。上記インバータ装置2は、図示しない外部から電力を受け、この電力に基づいて上記モータ1を駆動する交流電力を発生する。
【0018】
上記電気自動車としては、純粋にモータにより走行する電気自動車と、エンジンとモータの両方を備えており両方の駆動力で走行するいわゆるハイブリッド車とがあり、本願で述べる電動車両はこれら両方を含む。さらに本願におけるモータ1は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機能を有するのみならず、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機能を備えており、モータ1が電気エネルギーに基づく機械エネルギーを発生するように動作するか、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する為の発電として動作するかは、上記インバータ装置2の動作に基づいて定まる。例えばモータ1の回転子の磁極位置に対して、インバータが発生する交流電力によるモータ1の固定子の回転磁界が進み側にある場合には、モータ1は電気エネルギーに基づくトルクを発生する。一方モータ1の回転子の磁極位置に対して、インバータが発生する交流電力によるモータ1の固定子の回転磁界が遅れ側にある場合には、モータ1は発電機として動作し、機械エネルギーに基づいて電気エネルギーを発生する。
【0019】
この実施の形態では、ラジエータ3で放熱され冷却された冷却媒体を先ずインバータ装置2へ送り、インバータ装置2を冷却した後にモータ1へ送ってモータ1を冷却している。インバータ装置2は、直流電力を交流電力に変換し、あるいは交流電力を直流電力に変換するためのパワー半導体素子を備えている。上記パワー半導体素子は上記変換動作の為のスイッチング動作時に発熱し、パワー半導体素子の温度が上昇する。インバータ装置2の上記パワー半導体素子を有する回路部は熱容量が小さく、モータ1を駆動する電流が増加すると発熱量の増加に基づいて温度が急上昇する。更に上記パワー半導体素子自身が高温により損傷を受け易い。上述のとおりインバータ装置2はモータ1よりも熱時定数が小さく、温度上昇に弱い為、冷却媒体を先にインバータ装置2へ循環して冷却し、その後でモータ1へ循環して冷却する経路が大変望ましい。しかし、先に冷却媒体をモータ1へ循環して冷却した後、インバータ装置2へ循環して冷却する経路とすることも可能である。
【0020】
また、図2に示すように、モータ1とインバータ装置2の冷媒循環路6を並列に接続し、ポンプ5から圧送された冷却媒体を、ラジエータ3を介してモータ1とインバータ装置2へ並行に循環させてもよい。さらには、図3(a)に示すモータ1用の冷媒循環路6m、ポンプ5mおよびラジエータ3mと、図3(b)に示すインバータ装置2用の冷媒循環路6i、ポンプ5iおよびラジエータ3iとを別個に配設してもよい。図3(a)において、ポンプ5mにより圧送された冷却媒体はラジエータ3mでファン4mにより送風された空気で冷却された後にモータ1へ導かれ、モータ1を冷却してポンプ5mへ戻る。また図3(b)において、ポンプ5iにより圧送された冷却媒体はラジエータ3iでファン4iにより送風された空気で冷却された後にインバータ装置2へ導かれ、インバータ装置2を冷却してポンプ5iへ戻る。
【0021】
この一実施の形態では、モータ1とインバータ装置2を電動車両用冷却システムの冷却対象とした例を示すが、モータ1とインバータ装置2の内のいずれか一方のみを冷却対象としてもよい。また、モータ1とインバータ装置2の他にインバータ装置2との間で直流電力の授受を行う蓄電装置(後述)を冷却対象に加えてもよい。
【0022】
図1において、制御装置23はCPU23cやメモリ23mなどを有しており、後述する冷却制御プログラムを実行してファン駆動装置21およびポンプ駆動装置22を制御し、モータ1とインバータ装置2の冷却を制御する。制御装置23には、自動車の車速を検出する車速センサ24、自動車のアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ25などが接続されている。
【0023】
次に、一実施の形態の電気自動車の走行駆動用モータ1とインバータ装置2の体格(サイズ、大きさ)の設計方法について説明する。一般に、モータやインバータ装置において体格と、最大トルクおよび最高出力と、冷却能力との間には互いに相関関係がある。例えば、モータの体格と冷却能力が決まると、モータを上限温度以下に保つモータ自体の発熱量が決まり、この発熱量を生じさせるモータの最大トルクと最高出力が決まる。また、モータの体格と最大トルクおよび最高出力が決まると、モータを上限温度以下に保つための冷却能力が決まる。一方、モータやインバータ電源の体格は最大トルクおよび最高出力に比例しており、体格が大きいほど最大トルクおよび最高出力が大きくなる。
【0024】
従来、モータやインバータ電源の体格は、発進時、加速時、登坂時などに必要な最大トルクや最高出力に基づいて設計されている。しかし、実際に車両として日常的に使用されるトルクや出力は最大トルクや最高出力よりも小さい値であり、通常走行時に最大トルクと最高出力が必要とされる頻度は低く、その時間も短い。従来は定常走行時のトルクや出力が小さいにも関わらず、使用頻度が低く短時間にしか用いられない最大トルクや最高出力を基準にして設計された大きな体格のモータやインバータ電源が用いられて来た。この一実施の形態では、モータとインバータ装置に対して適切な冷却を行うことによって、必要な最大トルクと最高出力に適切に対応しつつ、モータとインバータ電源の体格を小型化することが可能となる。
【0025】
図4(a)は一般的な設計方針に基づくモータの回転速度に対するトルク特性を示し、図4(b)は発明の一実施の形態のモータ1の回転速度に対するトルク特性を示す。図4(a)に示すように、一般的な設計方針に基づくモータにおいては、回転速度が低い領域ではトルクを最大トルク以下に制限して使用する。図4(a)においては、最大トルク線として示している。回転速度が高い領域では出力を最高出力以下に制限する出力一定、換言すれば、回転速度の増加に応じてトルクを低減する範囲内、で使用する。図4(a)においては、最高出力線として示している。図4(a)において、一般的な設計方針に従えば、モータとインバータ電源の体格は、発進時、加速時、登坂時などに必要な最大トルクと最高出力を極めて重要な要件としている。
【0026】
これに対し一実施の形態のモータ1とインバータ装置2においては、図4(b)に示すように、モータ1の回転速度とトルクで決まる作動領域が、第一作動領域(実線で表される第一トルク線および第一作用線の下側の領域)に加えて、第二作動領域(実線で表される第一トルク線および第一作用線の上側であって、かつ破線で表される第二トルク線および第二作用線の下側の領域)を含むようにすることにより、運転領域を広げる。第一作動領域を、平坦路をほぼ一定の速度で走行するときなどの定常走行時に必要な軽負荷時の作動領域とするとともに、第二作動領域を、定常走行時よりも大きなトルクと出力が必要な発進時、加速時、登坂時などの重負荷時の作動領域とする。
【0027】
図4(b)において、第二作動領域の破線で示す第二トルク線のトルクおよび第二出力線の出力は、図4(a)に示すモータの最大トルク線の最大トルクおよび最高出力線の最高出力と同等またはそれらより大きい。また、実線で示す第一作動領域と第二作動領域の境界線は、第二作動領域の第二トルク線のトルクよりも小さいトルクの第一トルク線と、第二作動領域の第二出力線の出力よりも低い出力の第一出力線を示す。
【0028】
また、この一実施の形態では、モータ1とインバータ装置2の冷却システムの冷却能力を上記図4に示すモータの回転速度−トルク特性に基づいて制御する。例えば次に説明する方法で制御することにより、熱的な課題に対応しつつモータあるいはインバータ装置の体格に対して大きな出力を得ることができる。上記第一作動領域と第二作動領域とを考慮して冷却能力を制御し、トルクと出力が大きな第二作動領域における冷却能力を第一作動領域における冷却能力よりも高くする。第一作動領域においては、モータ1とインバータ装置2により、図4(b)に実線で示す第一トルク線と第一出力線に囲まれた領域のトルクと出力を連続して発生させながら、モータ1とインバータ装置2がそれぞれの上限温度を超過することがない冷却能力を発揮させるように、ファン4とポンプ5を駆動制御する。この明細書では、第一作動領域におけるモータ1とインバータ装置2の冷却モードを第一冷却モードと呼ぶ。
【0029】
一方、第二作動領域では、モータ1とインバータ装置2により、図4(b)に破線で示す第二トルク線と第二出力線に囲まれたハッチング領域のトルクと出力を短時間に発生させながら、モータ1とインバータ装置2がそれぞれの上限温度を超過することがない冷却能力を発揮させるように、ファン4とポンプ5を駆動制御する。この明細書では、第二作動領域におけるモータ1とインバータ装置2の冷却モードを第二冷却モードと呼ぶ。
【0030】
第一トルク線と第一出力線に囲まれた第一作動領域のトルクと出力は、電動車両の発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に必要とされる大きなトルクおよび出力ではなく、上り下りの少ない平坦路を、加減速の少ない、ほぼ一定の、速度で走行するときなどの定常走行時に要求される軽負荷時のトルクおよび出力であり、連続して発生させることができる代表的なトルクおよび出力である。つまり、第一トルク線のトルクは連続定格トルク、第一出力線の出力は連続定格出力である。
【0031】
これに対し第二トルク線と第二出力線で囲まれた第二作動領域のトルクと出力は、電動車両の発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に要求される、定常走行時よりも大きなトルクおよび出力である。このような大きなトルクは、連続して長い時間要求される可能性が少ない短時間の要求で終了する傾向を有している。つまり、第二トルク線のトルクは短時間定格トルク、第二出力線の出力は短時間定格出力である。
【0032】
ここで、短時間とは、電動車両の発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に定常走行時よりも大きなトルクおよび出力を発生させる必要がある代表的な時間である。また、モータ1の上限温度はモータ1の絶縁材料等の許容温度に基づいて決定し、インバータ装置2の上限温度は電力変換用スイッチング素子等の許容温度に基づいて決定する。
【0033】
図5は、第一作動領域における第一冷却モードと第二作動領域における第二冷却モードのファン4とポンプ5の運転方法(a)〜(c)を示す。いずれの運転方法(a)〜(c)においても、第一冷却モードの冷却能力よりも第二冷却モードの冷却能力の方が高くなるようにファン4および/またはポンプ5を運転し、第一冷却モードでは、上述した定常走行時の小さいトルクと出力を連続的に発生させながら、モータ1およびインバータ装置2をそれぞれの上限温度以下に保つようにファン4とポンプ5を駆動制御し、第二冷却モードでは、発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に必要な大きなトルクおよび出力を短時間に発生させながら、モータ1およびインバータ装置2をそれぞれの上限温度以下に保つようにファン4とポンプ5を駆動制御する。
【0034】
図5に示すファン4とポンプ5の運転方法(a)では、第一冷却モードでファン4とポンプ5をそれぞれ所定速度で一定運転し、第二冷却モードではファン4とポンプ5を、それぞれモータ1で発生するトルクまたは出力に基づいて制御する、例えば冷却ファン4あるいはポンプ5能力を上記モータ1のトルクまたは出力に比例するように制御する。
【0035】
また、運転方法(b)ではファン4とポンプ5の運転方法を異ならせる。ファン4は、第一冷却モードでは所定速度で一定運転し、第二冷却モードではモータ1で発生するトルクまたは出力に基づき、例えば比例した冷却能力で運転する。これに対しポンプ5は、第一冷却モードと第二冷却モードのいずれにおいても所定速度で一定運転する。同様に、運転方法(c)においてもファン4とポンプ5の運転方法を異ならせる。ファン4は、第一冷却モードと第二冷却モードのいずれにおいても所定速度で一定運転する。これに対しポンプ5は、第一冷却モードでは所定速度で一定運転し、第二冷却モードでは、モータ1で発生するトルクまたは出力に基づいて、例えば比例した冷却能力で、運転する。
【0036】
第一冷却モードと第二冷却モードにおけるファン4とポンプ5の運転方法は、上述した図5に示す(a)〜(c)の運転方法によれば、運転モードによって発生する熱の影響に対して、温度上昇前に適切な対応が、より簡素化した制御で対応できる効果があるが、この方法に限定されず、第一冷却モードの冷却能力よりも第二冷却モードの冷却能力の方が高くなるような運転方法を行えばそうした効果が有る。なお、運転方法の内、モータ1で発生するトルクまたは出力に比例した冷却能力でファン4またはポンプ5を運転することによって、一定運転を行う場合に比べてファン4およびポンプ5を効率よく運転することができる。
【0037】
図6は第1の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図、図7は第1の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャートである。これらの図により第1の実施の形態の冷却モード選択動作を説明する。制御装置23のCPU23cは、マイクロコンピューターのソフトウエア形態により図6に示す冷却モード選択制御ブロックを構成し、イグニッションキースイッチ(不図示)がオンしている間、図7に示す冷却モード選択制御プログラムを繰り返し実行する。
【0038】
図7で符合Sはステップを現し、例えば符合S1はステップ1を意味し、符号S2はステップ2を意味する。ステップ1において、車速センサ24からの車速信号および、アクセルセンサ25からのアクセル操作量を表す信号が制御装置23に入力されると、制御装置23はこれらの信号に基づきモータ1の出力要求値を計算する。アクセルペダルの操作量は車両走行のための駆動力の要求であり、電動車両としてのモータ1のトルク要求値を表していると見ることができるので、アクセル操作量をトルク要求値に換算して車速に乗算し、電動車両の駆動力要求値、すなわちモータ1の出力要求値を計算する。
【0039】
ステップ2では、トルク要求値と車速に応じたモータ1のトルクと回転速度で決まる動作点が、上述した第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定する。まず、電動車両としてのトルク要求値を変速機(不図示)の変速比によりモータ1のトルクに換算するとともに、車速を変速機の変速比によりモータ1の回転速度に換算し、モータ1のトルクと回転速度に応じた動作点を決定する。次に、モータ1の動作点が第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定し、判定結果の作動領域に応じた冷却モードを選択する。
【0040】
モータ1の動作点が第一作動領域内にある場合はステップ4へ進んで第一冷却モードを選択し、モータ1の動作点が第二作動領域内にある場合にはステップ5へ進んで第二冷却モードを選択する。ステップ6で、冷却モードの選択結果に応じて、ファン駆動装置21へファン4の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力するとともに、ポンプ駆動装置22へポンプ5の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力する。
【0041】
一般的な考え方に基づく制御方法を適用した場合には、モータ1とインバータ装置2は、図4(a)に示す最大トルク線と最高出力線で囲まれる広い作動領域を一律の高い冷却能力で冷却を行いながら、最大トルク線の最大トルクと最高出力線の最高出力に連続して長時間対応できることを条件としてモータ1とインバータ装置2の体格を定めることとなる。このため上述した定常走行時の小さなトルクと出力に応じた体格よりも大きな体格になっている。これに対し一実施の形態では、モータ1の作動領域を、上述した定常走行時の小さなトルクと出力を発生する第一作動領域と、発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に大きなトルクと出力を発生する第二作動領域とに分ける。モータ1の動作領域が第二作動領域にある場合には、第一作動領域における冷却能力よりも高い冷却能力で冷却を行うように、ポンプ5やファン4などの過冷却の為の機器を制御する。そうすることによって、最大トルク線と最高出力線(図4(a)参照)に相当する第二作動領域の第二トルク線と第二出力線(図4(b)参照)に基づいてモータ1とインバータ装置2の体格を決定せず、それらよりも小さい第一作動領域の第一トルク線と第一出力線に基づいてモータ1とインバータ装置2の体格を決定することができる。そのため、モータ1とインバータ装置2の体格を、一般的な考え方による場合の体格よりも小さくすることができる。
【0042】
また、第1の実施の形態の電動車両用冷却システムによれば、効率の高い作動領域でモータ1を運転することができる。図4に示すモータの回転速度に対するトルクの特性図には、モータの運転効率を表す等効率線が示されている。一般的な制御方法を適用した場合は、図4(a)に示すように、最大トルク線と最高出力線に基づいてモータの体格を決定していたため、通常走行時に使用頻度の高い作動領域(図4(a)の破線で囲まれた領域)、すなわち定常走行時の小さなトルクと出力の動作点は、効率の低い領域になっている。これに対し第1の実施の形態では、図4(b)に示すように、定常走行時の第一トルク線と第一出力線に基づいてモータ1の体格を決定しているので、通常走行時に使用頻度の高い作動領域(図4(b)の破線で囲まれた領域)、すなわち定常走行時の小さなトルクと出力の動作点は、一般的な制御方法を適用した場合よりも効率の高い領域になっている。つまり、第1の実施の形態によれば、モータ1を従来よりも高い効率で運転することができ、消費電力を低減させることができる。
【0043】
さらに、第1の実施の形態によれば、大きなトルクと出力が必要な第二作動領域でのモータ運転時のファン4とポンプ5による冷却能力を、定常走行時の小さいトルクと出力が必要な第一作動領域でのモータ運転時のファン4とポンプ5による冷却能力より大きくしているので、ファン4とポンプ5およびそれらの駆動装置21、22の体格の小型化と消費電力の低減が可能である。
【0044】
ところで、冷却システムの冷却能力は、ファン4およびポンプ5の運転方法だけでなく、ラジエータ3において冷却媒体と熱交換を行う空気の温度によっても変化し、空気温度が高くなるほど冷却能力が低くなる。つまり、冷却能力は空気温度に反比例する。したがって、図4(b)に示すように、第一冷却モードと第二冷却モードとを切り換える第一作動領域と第二作動領域との境界線、すなわち第一トルク線と第一出力線を、図8に示すように空気温度すなわち外気温Tairに応じて変化させることが望ましい。つまり、外気温TairがT1、T2、T3(T1<T2<T3)と高くなるにしたがって第一トルク線のトルクと第一出力線の出力を小さくし、外気温Tairが高くなって冷却能力が低くなるにしたがって第二冷却モードへ切り替わりやすくし、外気温上昇にともなう冷却能力の低下を補償する。なお、外気温Tairは、図1に示す外気温センサ31によりラジエータ3に送風される空気の温度として検出される。
【0045】
また、第一冷却モードと第二冷却モードの切り替えのハンチングを防ぐために、図9に示すように第一作動領域と第二作動領域の境界線、すなわち第一トルク線と第一出力線を2本(実線と破線で示す)設定し、第一作動領域から第二作動領域への切り替えは“実線で示す”第一トルク線および第一出力線で判定し、第二作動領域から第一作動領域への切り替えは“破線で示す”第一トルク線および第一出力線で判定するようにしてもよい。あるいはまた、第一冷却モードと第二冷却モードの切り替えのハンチングを防ぐために、第一トルク線と第一出力線を1本のままにし、第一冷却モードから第二冷却モードへ切り換えられた後は、第二作動領域から第一作動領域への切り換えが必要になっても所定時間の間は切り替えを禁止するようにしてもよい。
【0046】
上述したように、図4(b)において、モータ1の回転速度が高い領域では出力を最高出力以下に制限する出力一定で使用するため、回転速度の増加に応じて発生するトルクを低減することとなる。また、上述したように、モータ1の最高出力と、冷却能力との間には互いに相関関係がある。一定の冷却能力の下では、モータ1を上限温度以下に保つモータ自体の発熱量が決まり、この発熱量を生じさせるモータ1の最大トルクと最高出力が決まる。モータ1の回転速度が高くなると発熱量が増加するため、モータ1を上限温度以下に保つための冷却能力が一定の場合、図4(b)に示すように、モータ1の回転速度が高いと、トルクは最大トルクまたは最高出力に従って低下する。換言すると、モータ1の回転速度が低いと、冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力をさらに大きく増加させることができる。
【0047】
図10は、モータ1の出力および冷却能力と回転速度との関係を示す図である。図10(b)に示すように、第二冷却モードによる冷却能力を発揮させる際、モータ1の回転速度が低い領域での冷却能力を引き上げることにより、図10(a)に示すように、モータ1の回転速度が低い領域において、より高いモータ出力を得ることができる。モータ1の回転速度が低い領域に属する回転速度N0において、冷却能力が最大値となっている。第二冷却モードによる冷却能力の引き上げはモータ1の回転速度に依存するため、具体的には、図1に示す制御装置23に入力されるモータ1の回転速度情報(不図示)に基づき、制御装置23がファン駆動装置21およびポンプ駆動装置22を制御することにより、冷却能力が制御される。
【0048】
図11は、アクセル操作量の経時変化に伴うモータ1の回転速度の経時変化に応じたモータ1およびインバータ装置2の冷却能力の経時変化を表す図である。時刻t0にアクセル操作量が所定値に変化し、以後、一定を保つ。すると、モータ1の回転速度は、最高出力を保ちながら徐々に加速して時刻tmaxに最大回転速度に到達し、以後、一定を保つ。このとき、モータ1およびインバータ装置2の冷却能力は、モータ1の回転速度が低い領域においては急速に増加して最大値に到達し、モータ1の回転速度が加速するにつれて徐々に減少していくこととなる。
【0049】
このようにして、モータ1の回転速度が低いときは、冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力をさらに大きく増加させることができる。上述したように、モータ1の回転速度が高くなると発熱量が増加する。モータ1を上限温度以下に保つための冷却能力が一定の場合、図4(b)に示すように、モータ1の回転速度が高くなるにつれ、トルクは最大トルクまたは最高出力に従って低下する。しかし、モータ1の運転効率の最高効率点を、モータ1の回転速度が高い領域に設定することにより発熱量を低減すると、モータ1の回転速度が高い領域において、より高いモータ出力を得ることができる。具体的には、図4(b)に示すモータ1の運転効率が高い領域を、モータ1の高回転速度領域に位置させるようにすることで、モータ1の発熱量を低減する。モータ1の高回転速度領域とは、たとえば、モータ1の回転速度が、図10(b)に示す冷却能力最大値を与えるモータ1の回転速度N0よりも十分に高い領域をいう。
【0050】
図12は、モータ1の運転効率が高い領域を、モータ1の回転速度のより高い領域に位置させた一例を示す図である。本発明の電動車両の冷却システムが適用される電気自動車における変速比は固定という前提の下、図4(a)と比べると、縦軸はモータ1のトルクを車両の駆動力に、横軸はモータ1の回転速度を車速に各々読み替えている。また、図4(a)における最大トルク線および最大出力線を、図12では包括して最大駆動力線DV1およびDV2として表している。モータ1の運転効率が高い領域を高車速領域に位置させた場合の最大駆動力線1を実線DV2で、最高効率点を内部が塗りつぶされた円PE2で示している。モータ1の運転効率が高い領域を高車速領域に位置させなかった場合の最大駆動力線を破線DV1で、最高効率点を斜線が内部に付された破線の円PE1で示している。
【0051】
モータ1の運転効率の最高効率点を高車速側に位置させることで、モータ1の発熱量が低減され、高車速側において最大駆動力を引き上げることができる。上述した固定の変速比を適当な設定値に設定することにより、モータ1の運転効率の最高効率点を高車速側に位置させることができる。ここで、車速抵抗を示す太い破線RRと最大駆動力線DV2との交点の車速として得られる最高車速をVmaxとし、最高車速Vmaxの1/2の車速にあたる中央車速をVmidとする。モータ1の運転効率の最高効率点が、たとえば中央車速Vmidよりもよりも高い最高効率車速Vηを与える位置となるように、変速比の設定値を決定する。こうして変速比を適当な設定値に設定することにより、高車速側において高い最大駆動力が得られることなる。なお、車速が中央車速Vmid以下である低車速側においては、上述したように、高車速側に比べて冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力、すなわち最大駆動力線DV2をさらに大きく増加させることができる。
【0052】
上述したように、モータ1の回転速度が低いときは、冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力をさらに大きく増加させることができるが、過度に増加させるとモータ1の発熱量が増加し過ぎて好ましくない。逆に、モータ1の最大トルクおよび最高出力の増加量が小さ過ぎても、走行抵抗を考慮するとやはり好ましくない。モータ1の運転効率の最高効率点のトルクの大きさについて、図13を参照して以下に説明する。
【0053】
図13は、図4(b)と同様にモータ1の回転速度に対するトルク特性を示しており、モータ1の運転効率の最高効率点が中程度のトルクとなる一例を示した図である。モータ1の運転効率の最高効率点のトルクおよび回転速度(最高効率速度)を、各々TηおよびNηとする。冷却能力を引き上げられた第二冷却モードにおける最高効率速度Nηでの最大トルクTmaxηは、最高効率速度Nηにおける第二トルク線および第二出力線上のモータトルクとして得られる。このとき、最高効率点のトルクTηは、最大トルクTmaxηに対して中トルクとなっている。具体的には、最高効率点のトルクTηは、最大トルクTmaxηの50〜75%の範囲にあることが好ましい。
【0054】
《発明の第2の実施の形態》
上述した第1の実施の形態では、車速信号とアクセル操作量を表す信号に基づいてモータ1の動作点をリアルタイムに計算し、モータ1の作動領域を判定して冷却モードを切り換える例を示したが、モータ1の動作点を予め予測し、予測結果の動作点によりモータ1の作動領域を判定して冷却モードを切り換えるようにした第2の実施の形態を説明する。図14は第2の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図である。なお、冷却モード選択制御以外については上述した第1の実施の形態と同様であり、図示と説明を省略する。
【0055】
この第2の実施の形態では、図1に示す車速センサ24とアクセルセンサ25以外に、道路勾配を検出する勾配センサ26、車両の重量を検出する車重センサ27および走行ルート情報を演算するナビゲーション装置28が制御装置23Aに接続される。ナビゲーション装置28はGPS受信機、VICS受信機、道路地図データ記憶装置(いずれも不図示)などを備え、車両の現在地から目的地までの最適な経路(誘導経路)を探索するとともに、現在地、誘導経路に沿った道路の勾配、平均車速、渋滞状況などを検出する。制御装置23Aは、ナビゲーション装置28から入力した誘導経路情報、勾配情報、平均車速情報および渋滞情報と車重センサ27から入力した車重などに基づいて、目的地までの誘導経路におけるモータ1のトルクと回転速度を計算して動作点を予測し、作動領域を判定する。この誘導経路上の道路におけるモータ1の作動領域は制御装置23Aのメモリ23m(図1参照)に記憶される。
【0056】
図15は、第2の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャートである。制御装置23AのCPU23cは、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされている間、図15に示す冷却モード選択制御プログラムを繰り返し実行する。なお、図7に示す第1の実施の形態と同様な制御ステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。上述したように、ステップ1〜3において、車速信号とアクセル操作量を表す信号に基づいてモータ1の出力要求値を計算し、車速とアクセル操作量に応じたモータ1の動作点が第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定する。第一作動領域内にあると判定された場合はステップ11へ進み、第二作動領域内にあると判定された場合はステップ5へ進む。
【0057】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定された場合には、ステップ11においてナビゲーション装置28により電動車両の現在地を検出し、続くステップ12でメモリ23mから現在地周辺の作動領域を読み出す。ステップ13では第二作動領域の区間が近づいているか否かを判別する。例えば、電動車両の現在地から誘導経路に沿って所定距離前方に第二作動領域の道路区間があるか否かを判別し、所定距離前方が第二作動領域の道路区間である場合にはステップ5へ進み、そうでなければステップ4へ進む。
【0058】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定され、かつ誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間がない場合には、ステップ4で第一冷却モードを選択する。一方、電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にない、つまり第二作動領域内にあると判定された場合、または、現在地におけるモータ1の作動領域が第一作動領域内にあると判定されても、誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間が近づいている場合には、ステップ5で第二冷却モードを選択する。ステップ6で、冷却モードの選択結果に応じて、ファン駆動装置21へファン4の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力するとともに、ポンプ駆動装置22へポンプ5の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力する。
【0059】
この第2の実施の形態によれば、予め目的地までの道路におけるモータ1の作動領域を予測し、発熱量が大きい第二作動領域でモータ1およびインバータ装置2が動作すると予測される場合には、第二作動領域の道路区間の所定距離手前で第一冷却モードから冷却能力の高い第二冷却モードへ切り替えることができるので、第二作動領域の道路区間におけるモータ1およびインバータ装置2の温度上昇を上限温度よりも低い温度に抑制することができる。換言すれば、上限温度に到達するまでに余裕ができ、図4(b)に示す第二トルク線と第二出力線で規定される最大トルクと最高出力の短時間定格をさらに大きな値に設定することができる。
【0060】
《発明の第3の実施の形態》
上述した第1および第2の実施の形態に冷却モードの手動選択機能を付加した第3の実施の形態を説明する。図16は第3の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図である。この第3の実施の形態では、図14に示す第2の実施の形態の構成に加え、手動切り替えスイッチ29が制御装置23Bに接続される。手動切り替えスイッチ29は電動車両の運転者が手動で冷却モードを選択するためのスイッチである。
【0061】
図17は、第3の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャートである。制御装置23BのCPU23cは、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされている間、図17に示す冷却モード選択制御プログラムを繰り返し実行する。なお、図7に示す第1の実施の形態および図15に示す第2の実施の形態と同様な制御ステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。上述したように、ステップ1〜3において、車速信号とアクセル操作量信号に基づいてモータ1の出力要求値を計算し、車速とアクセル操作量に応じたモータ1の動作点が第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定する。第一作動領域内にあると判定された場合はステップ11へ進み、第二作動領域内にあると判定された場合はステップ5へ進む。
【0062】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定された場合には、ステップ11において電動車両の現在地を検出するとともに、ステップ12でメモリ23mから現在地周辺の作動領域を読み出し、ステップ13で第二作動領域の道路区間が近づいているか否かを判別する。所定距離前方が第二作動領域の道路区間である場合にはステップ5へ進み、そうでなければステップ21へ進む。
【0063】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定され、かつ誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間がない場合には、ステップ21で手動切り替えスイッチ29により第二冷却モードが選択されているか否かを判別し、手動で第二冷却モードが選択されている場合はステップ5へ進み、第一冷却モードが選択されている場合はステップ4へ進む。制御装置23Bによりモータ1の動作点が第一作動領域内であると判別され、かつ現在地から所定距離前方までの間に第二作動領域の道路区間がなく、かつ手動で第一冷却モードが選択されている場合には、ステップ4で第一冷却モードを選択する。
【0064】
一方、電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にない、つまり第二作動領域内にあると判定された場合、または、現在地におけるモータ1の作動領域が第一作動領域内にあると判定されても、誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間が近づいている場合、または、手動で第二冷却モードが選択された場合には、ステップ5で第二冷却モードを選択する。ステップ6で、冷却モードの選択結果に応じて、ファン駆動装置21へファン4の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力するとともに、ポンプ駆動装置22へポンプ5の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力する。
【0065】
この第3の実施の形態によれば、運転者が手動で第二冷却モードを選択した場合には、制御装置23Bによる冷却モードの判別結果に拘わらず第二冷却モードを選択し、手動による冷却モードの選択結果と制御装置23Bによる冷却モードの判別結果とがともに第一冷却モードの場合に第一冷却モードを選択するようにしたので、電動車両の運転者が運転嗜好や運転時の気候条件および走行条件などにより冷却能力を高めたいと考えた場合には、運転者の意志を優先して冷却能力の高い第二冷却モードで冷却を行うことができ、第1および第2の実施の形態の冷却モードの自動選択機能に対して手動選択機能を効果的に組み入れることができる。
【0066】
《発明の第4の実施の形態》
第一冷却モードと第二冷却モードとを切り換える第一作動領域と第二作動領域との境界線、すなわち第一トルク線と第一出力線(図4(b)参照)を、電動車両の運転者ごとの運転履歴に応じて変更するようにした第4の実施の形態を説明する。図18は第4の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図である。この第4の実施の形態では、図16に示す第3の実施の形態の構成に加え、運転者識別装置30を制御装置23Cに接続するとともに、制御装置23Cのメモリ23mに運転者ごとの過去の運転履歴データを記憶する。なお、この第4の実施の形態の冷却モード選択制御は上述した第1〜第3の実施の形態の冷却モード選択制御と同様であり、フローチャートの図示と動作説明を省略する。
【0067】
運転者識別装置30は電動車両を運転する運転者を識別する。識別方法としては、運転免許証に添付されたICチップのデータを読み取って運転者を識別したり、電動車両の運転者ごとに異なるIDを記憶したイグニッションキーを用意し、IDを読み取って運転者を識別するなどの方法が考えられる。制御装置23Cのメモリ23mは識別された運転者ごとに運転履歴を記憶する。例えば、平均的な運転者よりも加速を求める傾向がある運転者には、平均的な運転者よりも大きなトルクと出力が必要となり、第二作動領域での運転頻度が多くなるため、冷却モードを切り換える第一トルク線と第一出力線を低トルク、低出力側に変更し、冷却能力が高い第二冷却モードが選択され易くする。これにより、平均的な運転者とモータ動作点が同じであっても、より加速を求める運転者に対しては冷却能力が高い第二冷却モードの範囲が拡大されることになり、運転者の運転特性に合ったモータ1およびインバータ装置2の冷却能力で冷却を行うことができる。
【0068】
《発明の第5の実施の形態》
一般に、モータとインバータ装置の効率はそれらの温度に応じて変化し、モータの動作点が同じであれば、すなわち同一のトルクと回転速度であれば、モータとインバータ装置の温度が高くなるほどそれらの効率は低下する。このため、モータやインバータ装置はそれらの温度に応じて冷却能力を変化させる必要がある。換言すれば、冷却能力を変化させてモータやインバータ装置の温度を変えることによって、モータやインバータ装置の効率を変えることができる。従来は、モータやインバータ装置のトルクや出力、あるいはそれらの温度に応じて冷却能力を変えることはあっても、温度による効率変化を考慮して冷却能力を制御することは行われていない。
【0069】
そこで、モータ1やインバータ装置2の運転効率にファン4やポンプ5などの補機の効率を加味し、これらの総合効率を考慮した冷却制御を行う第5の実施の形態を説明する。なお、モータ1の損失に比べてインバータ装置2の損失は少ないので、この第5の実施の形態ではモータ1のみの温度と損失に注目した冷却制御を説明する。また、この第5の実施の形態の冷却モード選択制御は上述した第1〜第3の実施の形態の冷却モード選択制御と同様であり、フローチャートの図示と動作説明を省略する。
【0070】
図19は第5の実施の形態の冷却制御を示すブロック図である。この第5の実施の形態では、図18に示す第4の実施の形態の構成に加え、外気温センサ31と冷却液温センサ32を制御装置23Dに接続するとともに、制御装置23DにCPU23cのソフトウエア形態による制御ブロック23c1〜23c6を備える。外気温センサ31は電動車両の外気温を検出し、冷却液温センサ32は冷却媒体の温度を検出する。
【0071】
制御ブロック23c1において上述したようにモータ1の動作点を予測計算する。モータ1の動作点と温度が決まればモータ1の銅損や風損などの損失電力が求められ、電力損失にともなう発熱量が求まる。制御ブロック23c2で計算結果の動作点でモータ1を駆動する際のモータ温度ごとの銅損や風損などの損失電力(発熱量)を計算する。次に、制御ブロック23c3ではモータ温度ごとの冷却装置(ファン4とポンプ5およびそれらの駆動制御装置21、22)の動作を計算する。具体的には、計算結果のモータ温度ごとのモータ損失電力に応じた発熱量を、冷却液温センサ32により検出された温度の冷却媒体を介して外気温センサ31により検出された温度の空気に放熱するための、ファン4とポンプ5の運転速度を計算する。
【0072】
次に、制御ブロック23c4でファン4とポンプ5を計算結果の運転速度で運転した場合のファン4、ポンプ5およびそれらの駆動装置21、22の消費電力を計算する。そして制御ブロック23c5において、図20に示すようにモータ温度ごとにモータ損失電力、ファン消費電力およびポンプ消費電力を加算して総和を求め、下限温度と上限温度との間で総和が最小となるモータ温度を最高効率温度であるとし、目標モータ温度に設定する。制御ブロック23c6では現在の外気温と冷却液温でモータ温度を目標温度にするための冷却装置すなわちファン4とポンプ5の運転速度を計算し、ファン動作指令とポンプ動作指令をファン駆動装置21とポンプ駆動装置22へ出力する。
【0073】
この第5の実施の形態により、モータ効率のみならず、冷却するために消費する冷却装置自体の消費電力を考慮した総合効率がより高くなるように、モータ温度でモータ1、インバータ装置2、ファン4およびポンプ5を運転することができ、省エネ運転を実現できる。なお、上述した例ではモータ損失のみに注目して冷却装置の運転状態を決定したが、モータ損失に加えインバータ装置2や蓄電装置(不図示)の損失を考慮して冷却装置の運転状態を決定するようにしてもよい。
【0074】
《発明の第6の実施の形態》
図21は第6の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図1に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。また、図21では、図1に示したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第6の実施の形態の電動車両用冷却システムは、冷却媒体の熱を外気に放熱する第一冷却系と、この第一冷却系と熱交換機8を介して熱交換を行ってモータ1およびインバータ装置2を冷却する第二冷却系とから構成される。
【0075】
まず第二冷却系は、ポンプ5、冷媒循環路6b、熱交換器8、冷却対象のモータ1およびインバータ装置2を備えており、冷媒循環路6bはポンプ5→熱交換器8→インバータ装置2→モータ1→ポンプ5の経路で冷却媒体を循環する。ポンプ5から圧送された冷却媒体は、熱交換器8において第一冷却系の冷却媒体との間で熱交換を行って冷却され、インバータ装置2およびモータ1を冷却してふたたびポンプ5へ戻る。ここで、冷却媒体としては、水あるいは油がモータ1あるいはインバータ装置2の冷却の為に適しているが、その他にハイドロフルオロカーボンあるいはハイドロクロロフルオロカーボンなどの代替フロンも使用可能である。
【0076】
次に第一冷却系は、ラジエータ3、ファン4、冷媒循環路6a、圧縮機7、熱交換器8および調節弁9を備えており、冷媒循環路6aは熱交換器8→圧縮機7→ラジエータ3→調節弁9→熱交換器8の経路で冷却媒体を循環する。この第一冷却系は冷凍サイクルであり、第一冷却媒体にはHFC−134aなどの冷凍サイクル用の冷媒が用いられ、ラジエータ3は凝縮器として、調節弁9は膨張弁として、熱交換器8は蒸発器としてそれぞれ機能する。熱交換器8で第二冷却系の第二冷却媒体の熱を吸収した第一冷却媒体は圧縮機7で圧縮され、ラジエータ3でファン4により送風された空気により冷却された後、調節弁9を介してふたたび熱交換器8へ戻る。
【0077】
図1に示す第1の実施の形態では、冷却対象のモータ1とインバータ装置2を冷却した冷却媒体をラジエータ3で空気との熱交換により放熱しているため、冷却媒体の温度をファン4によりラジエータ3に送風される空気の温度より低くできない。これに対し第6の実施の形態では、冷却対象のモータ1とインバータ装置2を冷却した第二冷却系の第二冷却媒体を熱交換器8で第一冷却系の第一冷却媒体に放熱し、さらに冷凍サイクルを用いた第一冷却系において第一冷却媒体をラジエータ3で空気に放熱しているので、第二冷却媒体の温度を空気温度より低くすることができ、より冷却能力を高くすることができる。
【0078】
なお、この第6の実施の形態では、第1の実施の形態の冷却系の機器に加え、圧縮機7および調節弁9という制御対象の機器が配設される。この第6の実施の形態の動作については電動車両に搭載された冷却システムとして後述する。
【0079】
《発明の第6の実施の形態の変形例》
図22は、図21に示す第6の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図21に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。この変形例では、第二冷却系のモータ1とポンプとの間にラジエータ14とファン15を設置する。なお、図22ではファン15の駆動装置の図示を省略する。第一冷却系を構成するファン4、圧縮機7、調節弁9などに不具合が発生してモータ1およびインバータ装置2の冷却能力が低下した場合に、ラジエータ14において第二冷却系の第二冷却媒体の熱をファン15により送風される空気に放熱し、図1に示す第1の実施の形態と同程度の冷却能力を確保する。これにより、第一冷却系に不具合が発生した場合でも、電動車両の運行を継続することができる。なお、第一冷却系の不具合時だけでなく常時、ラジエータ14とファン15による第二冷却媒体の冷却を行ってもよい。
【0080】
《発明の第7の実施の形態》
図23は第7の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図1および図21に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図23では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第7の実施の形態では、図21に示す第6の実施の形態に対し、第二冷却系を冷却対象冷却用の循環路6cと車室内空調用の循環路6dの二つの経路に分ける。
【0081】
まず冷却対象冷却用循環路6cでは、ポンプ5aから圧送された第二冷却媒体が熱交換器8aで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱した後、ラジエータ3aでファン4aにより送風された車室内空気から吸熱して車室内を冷却し、次にインバータ装置2とモータ1へ順次導かれてそれらの冷却対象を冷却する。また車室内空調用経路6dでは、ポンプ5bから圧送された第二冷却冷媒が熱交換器8bで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱した後、ラジエータ3bでファン4aにより送風された車室内空気から吸熱して車室内を冷却する。
【0082】
一方、第一冷却系では、第二冷却系の第二冷却媒体と熱交換を行う経路が二つに分かれており、冷却対象冷却用経路には調節弁9aと熱交換器8aが設けられ、車室内空調用経路には調節弁9bと熱交換器8bが設けられる。それ以外のラジエータ3、ファン4および圧縮機7については図21に示す第一冷却系と同様である。
【0083】
この第6の実施の形態によれば、モータ1やインバータ装置2などの冷却対象用と車室内の冷房用とに別々に冷凍サイクルを構築することなく、一つの冷凍サイクルで電動車両用駆動装置、すなわちモータ1とインバータ装置2の冷却と、車室内冷房とを実現することができる。このようにモータ1やインバータ装置2の発生する熱を車室内の温度調整に利用することにより、車室内向けの熱エネルギーを作り出すためのエネルギーを抑制でき、車両全体の効率が向上する。また、車室内の熱源を確保する為の電気エネルギーを熱エネルギーに変換するヒータなど、暖房のための熱発生装置を小型化できるメリットがある。さらに場合によっては、特別な熱発生装置の使用が不要となる。また圧縮機7およびファン4、ラジエータ3を共通に使用でき、全体システムが簡素化する。これらは大幅なコスト低減につながる。
【0084】
《発明の第7の実施の形態変形例》
図24は、図23に示す第7の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図23に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。この変形例では、第二冷却系の冷却対象冷却用循環路6cのモータ1とポンプ5aとの間にラジエータ14とファン15を設置する。なお、図24ではファン15の駆動装置の図示を省略する。第一冷却系を構成するファン4、圧縮機7、調節弁9などに不具合が発生してモータ1およびインバータ装置2の冷却能力が低下した場合に、ラジエータ14において第二冷却系の第二冷却媒体の熱をファン15により送風される空気に放熱し、図1に示す第1の実施の形態と同程度の冷却能力を確保する。これにより、第一冷却系に不具合が発生した場合でも、電動車両の運行を継続することができる。
【0085】
《発明の第8の実施の形態》
図25は第8の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図1および図23に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図25では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第8の実施の形態では、図23に示す第7の実施の形態に対して、圧縮機7の吐出側に四方弁10を設置し、冷凍サイクルの冷媒循環方向を切り替えることによって、冷房運転に加え暖房運転を可能にしている。図25の第一冷却系の冷媒循環路に示す矢印は、冷房運転中の第一冷却媒体(冷凍サイクル)の流れの方向を示している。圧縮機7で圧縮された冷却媒体はラジエータ3を凝縮器として通過した後、熱交換器8aおよび8bを蒸発器として第二冷却系の第二冷却媒体と熱交換(第二冷却媒体を冷却)した後、圧縮機7へ戻る。
【0086】
図26は第8の実施の形態の暖房運転時の第一冷却媒体の流れを示す。圧縮機7で圧縮された冷却媒体は、熱交換器8bを凝縮器として第二冷却系の室内空調用循環路6dを流れる第二冷却媒体に放熱して温めた後、熱交換器8aとラジエータ3を凝縮器として通過した後、圧縮機7へ戻る。熱交換器8aでは第二冷却系の冷却対象冷却用循環路6cを流れる第二冷却媒体と熱交換(放熱)する。つまり、モータ1やインバータ装置2を冷却した熱を熱交換器8aで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱しているので、モータ1やインバータ装置2の発熱を室内空調の暖房に利用することになる。これにより、暖房に必要な動力を低減することができる。
【0087】
この第8の実施の形態によれば、冷却対象機器の冷却と、車室内の冷房と、車室内の暖房のすべてを1つのシステムで実現することができる。さらに暖房運転時には、モータ1やインバータ装置2で発生した熱を暖房に利用することができるため、より効率の高い暖房運転が可能となる。
【0088】
なお、図25および図26に示す第8の実施の形態の冷却対象冷却用循環路6cにおいて、モータ1とポンプ5aとの間に図24に示すラジエータ14とファン15を設置し、第一冷却系の不具合時のバックアップを図るようにしてもよい。
【0089】
《発明の第9の実施の形態》
図27は第9の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、上述した各実施の形態の冷却システムを構成する機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図27では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第9の実施の形態では、図25および図26に示す第8の実施の形態に対して流路切り替え用三方弁12を追加し、モータ1やインバータ装置2の冷却能力を高める。すなわち、より高い冷却能力を得たい場合には、流路切り替え用三方弁12を図28に示すように設定し、第二冷却系の冷却対象冷却用循環路6cを流れる第二冷却媒体を2つの熱交換器8aと8bへ順に流して冷却する。図28において、実線で示す経路は冷却媒体が流れている経路、破線で示す経路は冷却媒体が流れていない経路である。
【0090】
この第9の実施の形態によれば、車室内の冷房は不可能となるが、冷却対象をより高い冷却能力で冷却することができる。車室内の冷房と両立させたい場合には、バイパス切り替え用三方弁11の代りに流量調節弁を2個設置し、室内空調用の熱交換器3aに流れる第二冷却媒体の流量を調節すればよい。
【0091】
なお、図27および図28に示す第9の実施の形態の冷却対象冷却用循環路6cにおいて、モータ1とポンプ5aとの間に図24に示すラジエータ14とファン15を設置し、第一冷却系の不具合時のバックアップを図るようにしてもよい。
【0092】
《発明の第10の実施の形態》
図29は第10の実施の形態の電動車両冷却システムの構成を示す。なお、上述した各実施の形態の冷却システムを構成する機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図29では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第10の実施の形態では、図25および図26に示す第8の実施の形態に対して流路切り替え用三方弁12を追加し、モータ1とインバータ装置2を並列に冷却することによって冷却能力を高める。
【0093】
すなわち、より高い冷却能力を得たい場合には、流路切り替え用三方弁12を図30に示すように設定し、モータ1をポンプ5bにより圧送され熱交換器8bで冷却された第二冷却媒体を用いて冷却するとともに、インバータ装置2をポンプ5aにより圧送され熱交換器8aで冷却された第二冷却媒体を用いて冷却する。図30において、実線で示す経路は冷却媒体が流れている経路、破線で示す経路は冷却媒体が流れていない経路である。これにより、車室内の冷房は不可能となるが、冷却対象はより高い冷却能力で冷却することができる。
【0094】
《第11の実施の形態》
上述した一実施の形態の電動車両用冷却システムを実際に電動車両に搭載した第11の実施の形態を説明する。この第11の実施の形態では、図21に示す第一冷却系と第二冷却系を備えた第6の実施の形態の電動車両用冷却システムを搭載した例を示すが、上述した第1〜第5、第7〜第10の実施の形態の電動車両用冷却システムのいずれも同様に電動車両に搭載することができる。
【0095】
図31は冷却システムを搭載した電動車両の前部を横から見た図であり、図32は同じ電動車両の前部を上から見た図である。なお、図21に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して説明する。図31および図32において、同図紙面右側が車両の進行方向であり、電動車両の電気駆動システムは車両の前部に搭載される。この実施の形態は前輪駆動方式の電動車両を例に挙げて説明するが、後輪駆動方式や4輪駆動方式の電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両にも上述した一実施の形態の電動車両用冷却システムを搭載することができる。
【0096】
この電動車両の電気駆動システムは、駆動エネルギーを蓄える蓄電装置51、蓄電装置51からモータ1への電力を制御するインバータ装置2、インバータ装置2からの電力を受けて回転トルクを発生するモータ1、モータ1のトルクを増幅する減速機52、減速機52の出力トルクを車輪へ伝達するドライブシャフト53、運転者の操作状態や冷却システムの状態に応じてモータ1の目標トルクや、冷却システムの運転状態を制御する制御装置23、インバータ装置2やモータ1を冷却する冷却システム50から構成される。以下では、モータ1、インバータ装置2、減速機52を特に駆動部品と呼ぶ。
【0097】
冷却システム50は、冷凍サイクルの第一冷却系と水冷の第二冷却系から構成される(図21参照)。冷凍サイクルの第一冷却系は、圧縮機7、ラジエータ(室外熱交換器)3、調節器(膨張弁)9、熱交換器8、冷媒循環路6aを備えている。ラジエータ3にはファン4が付設され、車両前方からの空気をラジエータ3へ送風する。この冷却風の流量は制御装置23によりファン4の回転速度を制御して調節される。一方、水冷の第二冷却系は、ポンプ5、熱交換器8、室内熱交換器54、整流板55、三方弁56,57、冷媒循環路(水冷配管)6bを備えている。室内熱交換器54にはファン58が付設され、車室内の空気を室内熱交換器54に送風して車室内の空調を行う。この風量は制御装置23によりファン58の回転速度を制御して調節される。
【0098】
図31および図32には図示を省略するが、この電動車両の冷却システム50では温度センサなどで検出された駆動部品および冷却媒体の温度が計測される。制御装置23は、駆動部品および冷却媒体の温度と電気駆動システムの構成部品の運転状態に基づいて圧縮機7、ファン4,58、ポンプ5、三方弁56,57を制御し、第一冷却系と第二冷却系の冷却媒体温度を制御する。
【0099】
この電動車両の冷却システム50では、圧縮機7、調節器(膨張弁)9、ラジエータ3および熱交換器8を連通する第一冷却系の冷媒循環路6aに代替フロンなどの冷凍サイクルに適した冷媒を流通し、この冷媒は圧縮機7を動力源とする冷凍サイクルによって冷却される。一方、熱交換器8、三方弁56,57、インバータ装置2、モータ1、ポンプ5を連通する第二冷却系の冷媒循環路6bには不凍液などの冷却水を流通し、インバータ装置2、モータ1などの駆動部品や室内を冷却する。なお、蓄電装置51を第二冷却系の冷却媒体により同時に冷却を行ってもよい。第二冷却系の冷媒循環路6bの冷却媒体(冷却水など)は熱交換器8を通過し、この熱交換器8において第一冷却系の冷媒循環路6aを流れる冷却媒体と熱交換(放熱)を行い冷却される。また、車室内を冷房(場合によっては暖房)するための空気は、室内熱交換器54を介してファン58により図31の破線矢印で示す方向へ送風し、車室内の温度を調節する。
【0100】
冷却システム50では、制御装置23により圧縮機7、ファン4,58、ポンプ5、三方弁56,57の動作を制御し、第一冷却系と第二冷却系の冷却媒体の温度を任意に変化させることができる。例えば、インバータ装置2とモータ1の負荷が高く駆動部品の温度が上昇した場合や、走行道路前方において駆動部品の温度上昇が予め予測される場合には冷却システム50の駆動出力を増大し、冷却媒体の温度を下げることができる。一般に、インバータ装置2はモータ1よりも熱容量が小さく、駆動負荷の増大に対して温度上昇が速いため、モータ1よりも低い冷却媒体温度と高い冷却応答性が必要とされる。したがって、熱交換器8から流出した冷却媒体が最初にインバータ装置2へ流入し、その後でモータ1へ流入するように第二冷却系を構成するのが望ましい。
【0101】
モータ1の駆動トルクによる振動や変位が車両骨格(車体フレーム)61に伝わらないようにするために、モータ1は車両骨格61に対して弾性体の支持部材(ゴムマウント)62と剛体のサブフレーム63を介して搭載される。モータ1はサブフレーム63に対しては剛に締結される。サブフレーム63には、モータ1の他にインバータ装置2、圧縮機7、調節器(膨張弁)9、ラジエータ(室外熱交換器)3、ファン4、室内熱交換器54、ポンプ5、三方弁56,57、熱交換器8などの冷却機器が剛に設置される。冷却システム50の構成部品(調節器9、圧縮機7、ポンプ5,三方弁56,57、熱交換器8,ラジエータ3、ファン4など)、インバータ装置2およびモータ1は、第一冷却系の冷媒循環路6aと第二冷却系の冷媒循環路6bによって互いに接続される。ここで、第一冷却系の冷媒循環路6aと第二冷却系の冷媒循環路6bは構成部品を一体構造とすれば省略できる。例えば、インバータ装置2とモータ1を一体ハウジングで構成すれば、第二冷却系の冷媒循環路6bをハウジング内の流路で代替でき、流路長をさらに短縮できる。
【0102】
一般的な車両のラジエータのように、冷却システム50のラジエータ3を車体先端のバンパー付近に設置する場合には、ラジエータ3と駆動部品(インバータ装置2およびモータ1)との接続にゴムホースなどの弾性体の配管を使用する必要がある。これは、駆動トルクに起因するモータ1と車体骨格61の相対変位を弾性体によって吸収するためである。このようにラジエータ3と駆動部品とを弾性体の配管を介して接続する場合には、互いの相対変位を吸収するために弾性体の比較的長い配管を介して接続しなければならない。そのため、ラジエータ3で冷却された冷媒が熱交換器8に到達して第二冷却系の冷却媒体を冷却し、温度が低下した第二冷却系の冷却媒体がインバータ装置2とモータ1に到達するまでには比較的長い時間がかかる。
【0103】
この実施の形態の冷却システム50では、車体骨格61に弾性支持されたサブフレーム63上にインバータ装置2、モータ1および冷却システム50を設置するようにしたので、モータ1の駆動トルクによる車体骨格61との相対変位を考慮する必要がなく、第一冷却系の冷媒循環路6aと第二冷却系の冷媒循環路6bの配管の長さを比較的短くする(あるいは省略する)ことが可能である。したがって、ラジエータ3で冷却された冷却媒体を短時間の内にインバータ装置2とモータ1へ到達させることができる上に、冷却媒体の容積と熱容量を低減できるため冷却媒体の温度を速やかに変えることができ、冷却応答性に優れた電動車両の冷却システム50を提供できる。
【0104】
また、この一実施の形態では、熱交換器8がラジエータ3とインバータ装置2との間に配設される。すなわち、図31,図32に示すように、ラジエータ3とインバータ装置2との間の最長距離を示す区間Lに対して、区間Lの領域に少なくともの熱交換器8の一部が配設される。これにより、熱交換器8が区間Lの外に配置されるのと比較して配管の長さを短くでき、ラジエータ3と熱交換器8で冷却された冷却媒体を短時間の内にインバータ装置2とモータ1へ圧送できる。
【0105】
図32に示す熱交換器8、ラジエータ3およびインバータ装置2の位置関係において、熱交換器8がラジエータ3とインバータ装置2との間の位置に配設されているため余分な配管長さを削減でき、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。
【0106】
また、ラジエータ3の冷媒出口は冷媒入口よりも熱交換器8の近くに配置される。これにより、冷媒出口が冷媒入口よりも熱交換器8から遠くに配置される場合と比較して、ラジエータ3で冷却された冷却媒体を比較的短時間で熱交換器8の冷媒入口へ到達させることができ、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。同様に、熱交換器8の冷媒出口は冷媒入口よりもインバータ装置2の近くに配置される。これにより、冷媒出口がインバータ装置2の冷媒入口から遠くに配置される場合と比較して、熱交換器8で冷却された冷却媒体を短時間でインバータ装置2へ到達させることができ、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。
【0107】
ラジエータ3は、電動車両の前進方向(図31の紙面右方向)に対して、駆動部品(インバータ装置2またはモータ1)よりも車両後方に配置される。これにより、可動式の導風板55を図31の実線で示す位置に制御すれば、駆動部品を冷却するときに放出されるラジエータ3の廃熱を図1に破線矢印で示す方向に沿って車室内へ導くことができる。特に、駆動部品の冷却性能を強化するために冷却媒体の温度を比較的低く制御する場合には、室内熱交換器54による車室内の暖房機能を代替したり、あるいは補うことができる。
【0108】
次に、この一実施の形態の冷却動作を説明する。冷房動作中には、第一冷却系の冷媒循環路6aの冷却媒体は、圧縮機7により図31に矢印で示す方向に流通する。冷却媒体は圧縮機7で高温・高圧のガスに圧縮され、次にラジエータ(室外熱交換器)3で空気中に熱を放出して凝縮し、高圧の液体となる。さらに、冷却媒体は調節器(膨張弁)9により減圧され、低圧・低温の冷媒(液とガスの二層冷媒)となる。その後、冷却媒体は第二冷却系の冷媒循環路6bを流通する冷却媒体(例えば冷却水)と熱交換器8を介して熱交換する。制御装置23は、圧縮機7を駆動制御して冷却媒体の温度と流量を調節する。
【0109】
熱交換器8で冷却された第二冷却系の冷却媒体はポンプ5により冷媒循環路6bを圧送され、冷却媒体の一部は室内熱交換器54を通過して室内の空気を冷却する。室内を冷却した冷却媒体はインバータ装置2とモータ1へ導かれる。三方弁56により室内熱交換器54への流路が遮断された場合には、熱交換器8を流出した冷却媒体が直接、インバータ装置2とモータ1へ圧送される。第二冷却系の冷却媒体はインバータ装置2とモータ1の熱を吸収して温度が上昇し、ポンプ5を介して熱交換器8へ戻る。制御装置23は、ポンプ5とファン4を駆動制御するとともに、三方弁56,57の流路を切り替えて第二冷却系の冷却媒体の温度と流量を調節する。
【0110】
例えば、インバータ装置2またはモータ1の温度が短時間に上昇する恐れがある場合や、温度が許容範囲を超える場合には、三方弁56により室内熱交換器54への冷却媒体の流通を遮断し、インバータ装置2またはモータ1へ冷却媒体を直接流入させる。すなわち、室内熱交換機54によって冷却媒体の温度が上昇するのを防ぎながら、熱交換器8からインバータ装置2およびモータ1への冷媒流路を短くする。これにより、短時間でインバータ装置2とモータ1へ流入する冷却媒体の温度を下げることができ、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。
【0111】
また、インバータ装置2の温度が許容範囲内であれば、インバータ装置2から流出する冷却媒体を、三方弁57を介してモータ1へ流入させ、モータ1を冷却する。しかし、インバータ装置2の温度が許容範囲を超える場合や、短時間に上昇する恐れがある場合には、三方弁57の流路を切り替えてモータ1への流入を遮断し、ポンプ5へ帰還させる。インバータ装置2の負荷が低減すれば、モータ1へも冷却冷媒が流れるように三方弁57を制御する。これにより、温度上昇が比較的緩やかなモータ1の冷却は一時的に休止されるが
、温度上昇が比較的急なインバータ装置2の温度上昇を速やかに抑えることができ、冷却応答性に優れた冷却システムを提供できる。
【0112】
さらに、冷却媒体の温度を下げると同時に、室内温度を上昇させる必要がある場合には、三方弁56を制御して冷却媒体が室内熱交換器54へ循環しないようにする。同時に、可動式の整流板55を図1に実線で示す位置に制御し、ラジエータ3から放出される熱を室内へ導く。このように、ラジエータ3がインバータ装置2とモータ1に一体配置されることによって、ラジエータ3と室内との距離が比較的近くなり、冷却媒体が低温の場合においてもラジエータ3の廃熱によって室内を暖めることができる。
【0113】
なお、上述した実施の形態とそれらの変形例において、実施の形態どうし、または実施の形態と変形例とのあらゆる組み合わせが可能である。
【0114】
上述した実施の形態とその変形例によれば以下のような作用効果を奏することができる。まず、車両を電動駆動するモータ1およびインバータ装置2に冷却媒体を循環させる冷媒循環路6と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行うラジエータ3と、冷媒循環路6を通してラジエータ3とモータ1およびインバータ装置2との間で冷却媒体を循環させるポンプ5と、ラジエータ3に送風するファン4と、ポンプ5とファン4を制御してモータ1およびインバータ装置2の冷却を制御する制御装置23とを備え、制御装置23によって、モータ1およびインバータ装置2による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、ポンプ5とファン4を第一冷却モードで制御し、モータ1およびインバータ装置2による車両の駆動力が第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、ポンプ5とファン4を第一冷却モードよりも冷却能力が高い第二冷却モードで制御するようにしたので、モータ1やインバータ装置2の体格(サイズ、大きさ)を過剰に大きくすることなく、従来と同等な駆動力を得ながら、モータ1とインバータ装置2の体格を小さくすることができる。その上さらに、高い駆動力を必要とするときのみ、冷却能力を上げるので、ポンプ5およびファン4の消費電力を低減でき、電動車両全体の運転効率を向上させることができる。
【0115】
上述した実施の形態とその変形例によれば、第一冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第一作動領域における車両の駆動力を連続して発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力とし、また第二冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第二作動領域における車両の駆動力を短時間に発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力としたので、第一作動領域におけるモータ1の連続定格トルクおよび連続定格出力を基準にしてモータ1およびインバータ装置2の体格を決定することができ、従来の第二作動領域におけるモータ1の最大トルクおよび最大出力を基準にしたモータ1およびインバータ装置2の体格に比べ、モータ1およびインバータ装置2の小型化を図りながら、第二作動領域におけるモータ1の短時間最大トルクおよび短時間最高出力を得ることができる。したがって、従来よりも小さな体格のモータ1およびインバータ装置2を用いて、車両の定常走行時にはモータ1から小さなトルクと出力を連続的に発生させ、車両の発進時、加速時、登坂時などにはモータ1から大きなトルクと出力を短時間に発生させることができる。
【0116】
上述した実施の形態とその変形例によれば、車速を検出する車速センサ24と、アクセルペダル操作量を検出するアクセルセンサ25とを備え、車速センサ24により検出された車速とアクセルセンサ25により検出されたアクセルペダル操作量に基づいて車両の駆動力を求め、車両の駆動力に応じたモータ1およびインバータ装置2のトルクと回転速度の動作点が第一作動領域と第二作動領域のいずれにあるかによって、第一冷却モードまたは第二冷却モードを選択するようにしたので、走行中のモータ1のトルクおよび出力に応じた冷却モードを正確に選択することができ、モータ1およびインバータ装置2を適切に冷却することができる。
【0117】
上述した実施の形態とその変形例によれば、第一冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第一作動領域における車両の駆動力を連続して発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力とし、また第二冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第二作動領域における車両の駆動力を短時間に発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力としている。また、第二冷却モードによる冷却能力を発揮させる際、モータ1の回転速度が低い領域での冷却能力を引き上げることとしたので、モータ1の回転速度が低い領域において、より高いモータ出力を得ることができる。
【0118】
上述した実施の形態とその変形例によれば、モータ1の運転効率が高い領域を、モータ1の高回転速度領域に設定した。これにより、高車速領域でのモータ1の発熱量が低減されるので、モータ1の高回転速度領域において、より高いモータ出力を得ることができる。変速比が固定の場合、その固定の変速比を適当な設定値に設定することにより、車両の最高車速の1/2よりも大きな高車速側において車両の最大駆動力を引き上げることができる。
【0119】
上述した実施の形態とその変形例によれば、モータ1の運転効率の最高効率点におけるトルクが、その最高効率点における回転速度に対するモータ1の最大トルクの50〜75%の範囲に含まれる。これにより、モータ1の発熱量が増加し過ぎず、かつ走行抵抗が考慮された適切な冷却能力を有することができる。
【0120】
上述した実施の形態とその変形例によれば、目的地までの経路、車両の現在地および道路情報を取得するナビゲーション装置28を備え、目的地までの経路の道路情報に基づいて経路上の道路におけるモータ1およびインバータ装置2の動作点を予測し、予測結果に基づいて現在地から所定距離前方に第二作動領域の道路がある場合には、現在地におけるモータ1およびインバータ装置2の動作点が第一作動領域にあっても第一冷却モードから第二冷却モードへ切り換えるようにしたので、第二作動領域の道路区間におけるモータ1およびインバータ装置2の温度上昇を上限温度よりも低い温度に抑制することができる。換言すれば、上限温度に到達するまでに余裕ができ、第二作動領域のトルクと出力の短時間定格をさらに大きな値に設定することができる。
【0121】
上述した実施の形態とその変形例によれば、乗員が第一冷却モードと第二の冷却モードを手動で切り換えるための手動切り替えスイッチ29を備え、手動切り替えスイッチ29により第二冷却モードが選択された場合には、モータ1およびインバータ装置2の動作点が第一作動領域にあっても第一冷却モードから第二冷却モードへ切り換えるようにしたので、車両の運転者が運転嗜好や運転時の気候条件および走行条件などにより冷却能力を高めたいと考えた場合には、運転者の意志を優先して冷却能力の高い第二冷却モードで冷却を行うことができ、冷却モードの自動選択機能に対して手動選択機能を効果的に組み入れることができる。
【0122】
上述した実施の形態とその変形例によれば、外気温を検出する外気温センサ31を備え、検出された外気温が高いほど、第一作動領域を狭くし第二作動領域を広くするようにしたので、外気温が高くなるほど第二作動領域へ切り換わり易くなり、外気温上昇にともなう冷却能力の低下を補償することができる。
【0123】
上述した実施の形態とその変形例によれば、車両の駆動力を得るためにモータ1およびインバータ装置2で発生する損失と、この損失にともなう発熱量を冷却するためのポンプ5およびファン4の消費電力との和が最小となるモータ1の目標温度を求め、モータ1の温度が目標温度となるようにポンプ5とファン4を制御するようにしたので、モータ1の効率のみならず、冷却するために消費するポンプ5とファン4自体の消費電力を考慮した総合効率が最も高くなるモータ温度でモータ1、インバータ装置2、ファン4およびポンプ5を運転することができ、省エネ運転を実現できる。
【0124】
上述した実施の形態とその変形例によれば、車両の運転者を識別する運転者識別装置30と、運転者ごとの運転履歴を記憶するメモリ23mとを備え、メモリ23mから運転者の運転履歴を読み出して運転傾向を判別し、判別結果の運転傾向に応じて第一作動領域と第二作動領域の境界を変更するようにしたので、平均的な運転者とモータ動作点が同じであっても、より加速を求める運転者に対しては冷却能力が高い第二冷却モードの範囲が拡大されることになり、運転者の運転特性に合ったモータ1およびインバータ装置2の冷却能力で冷却を行うことができる。
【0125】
上述した実施の形態とその変形例によれば、ラジエータ3の代わりに、冷媒循環路6bと異なる別冷媒循環路6aを有し、別冷媒循環路6aに冷却冷媒を圧縮する圧縮機7と、圧縮後の冷却冷媒を外気に放熱して凝縮するラジエータ3と、凝縮後の冷却冷媒の圧力を下げる調節弁9と、冷却冷媒を気化させて冷媒循環路6bの冷却冷媒から吸熱する熱交換器8とを備えたので、冷媒循環路6bを流れる冷却媒体の温度を空気温度より低くすることができ、より冷却能力を高くすることができる。
【0126】
上述した実施の形態とその変形例によれば、冷媒循環路6の上流側にインバータ装置2を配設し、下流側にモータ1を配設するようにしたので、モータ1とインバータ装置2の熱時定数を考慮した最適な冷却システムを構成することができる。
【符号の説明】
【0127】
1;モータ、2;インバータ装置、3;ラジエータ、4;ファン、5;ポンプ、7;圧縮機、8;熱交換器、9;調節弁、23;制御装置、23c;CPU、23m;メモリ、24;車速センサ、25;アクセルセンサ、28;ナビゲーション装置、29;手動切り替えスイッチ、30;運転者識別装置、31;外気温センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は電動車両の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両の車両駆動用モータとそのインバータ電源を冷却する電動車両の冷却システムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−285106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両駆動用モータと前記モータを駆動するためのインバータ装置の大きさなどの体格は、発進時あるいは加速時、登坂時などを考慮して定められている。上述した負荷の極めて大きい条件で十分な出力を得るように前記モータやインバータ装置の体格を定めると、自ずとその体格は大きくなり、消費電力の増大につながる。
【0005】
しかし、実際に車両として日常的に使用されるモータの発生トルクあるいはインバータ装置の出力は最大トルクや最高出力ではなく、これらよりも小さい値であり、最大トルクや最高出力が必要とされる運転状態頻度は少ない。また高トルクあるいは高出力が要求されてもその持続時間は短い。つまり、電動車両、特に電気自動車においては、大トルクあるいは大出力で運転される頻度やその持続時間が短いにもかかわらず、大トルクあるいは大出力で運転に重点を置いた設計が為され、そのことが小型化あるいは軽量化を行う上での大きな課題となっている。
【0006】
本発明の目的は、大トルクあるいは大出力での運転に配慮すると共に、システムの簡素化あるいは軽量化に対応できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1の発明は、車両を電動駆動する電動駆動手段を冷却する冷却手段と、前記冷却手段を制御して前記電動駆動手段の冷却を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記電動駆動手段による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、第一冷却能力となる第一冷却モードで前記冷却手段を制御し、前記電動駆動手段による前記車両の駆動力が前記第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、前記第一冷却能力よりも高い第二冷却能力となる第二冷却モードで前記冷却手段を制御するとともに、前記第二冷却モードにおいて、前記制御手段は、前記電動駆動手段の回転速度が低いほど前記第二冷却能力が高くなるように、前記冷却手段を制御することを特徴とする電動車両の冷却システムである。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度は、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くしたことを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度が、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くなるように、前記車両の変速比を規定したことを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項2または3に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記車両の速度は、前記車両の最高速度の1/2よりも高いことを特徴とする。
(5)請求項5の発明は、請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記電動駆動手段のトルクは、前記最高運転効率点が得られる前記回転速度に対応して前記電動駆動手段が発揮できる最大トルクの50〜75%の範囲に含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大トルク化あるいは大出力化に対応しつつ、モータあるいはインバータ装置の体格を小型化したシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図2】電動車両用冷却システムの変形例の構成を示す図
【図3】電動車両用冷却システムの他の変形例の構成を示す図
【図4】(a)は一般的な考え方を適用して制御する場合のモータの回転速度に対するトルク特性を示す図、(b)は本発明の一実施の形態のモータの回転速度に対するトルク特性を示す図
【図5】第一作動領域における第一冷却モードと第二作動領域における第二冷却モードのファンとポンプの運転方法(a)〜(d)を示す図
【図6】第1の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図7】第1の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャート
【図8】外気温による第一作動領域と第二作動領域との境界線の変更の様子を示す図
【図9】第一作動領域と第二作動領域の切換ハンチングを防止する方法を説明するための図
【図10】モータの出力および冷却能力と回転速度との関係を示す図
【図11】アクセル操作量の経時変化に伴うモータの回転速度の経時変化に応じたモータの冷却能力の経時変化を表す図
【図12】モータの運転効率が高い領域を、モータの回転速度のより高い領域に位置させた一例を示す図
【図13】モータ1の運転効率の最高効率点が中程度のトルクとなる一例を示した図
【図14】第2の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図15】第2の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャート
【図16】第3の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図17】第3の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャート
【図18】第4の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図
【図19】第5の実施の形態の冷却制御を示すブロック図
【図20】モータ損失とポンプおよびファンの消費電力との和が最小となるモータ温度を説明するための図
【図21】第6の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図22】第6の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図23】第7の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図24】第7の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図25】第8の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図26】第8の実施の形態の暖房運転時の第一冷却媒体の流れを示す図
【図27】第9の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す図
【図28】第9の実施の形態の電動車両用冷却システムにおいて、高い冷却能力を得る場合の冷却媒体の流れを示す図
【図29】第10の実施の形態の電動車両冷却システムの構成を示す図
【図30】第10の実施の形態の電動車両用冷却システムにおいて、高い冷却能力を得る場合の冷却媒体の流れを示す図
【図31】第6の実施の形態の冷却システムを搭載した電動車両を横から見た図
【図32】第6の実施の形態の冷却システムを搭載した電動車両を上から見た図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明の実施の形態では、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄の記載内容に止まらず、製品化に向けてのいろいろな課題を解決し、これらの課題に対応する効果を奏している。その内の幾つかを次に列挙する。
【0011】
以下の実施の形態では、冷却機器例えばポンプとファンの消費電力を低減でき、電動車両全体の運転効率を向上することができる。
【0012】
以下の実施の形態では、インバータ装置やモータが発生する熱を車室内の暖房に利用することができ、エネルギー効率が向上する。
【0013】
以下の実施の形態では、インバータ装置やモータを冷却する為の圧縮機や熱交換器を利用して室内温度の調整を行うことができるので、システムの簡素化が可能となる。
【0014】
本発明の電動車両の冷却システムを電気自動車に適用した一実施の形態を説明する。なお、本発明は以下に定義する電気自動車に適用すると大変良好な効果を呈するが、必ずしも本発明は電気自動車に限定されるものではない。本発明はさらに建設機械などの電動車両に対して適用した場合にも良好な効果が得られる。また本発明は電気鉄道などの電動車両にも適用できる。
【0015】
以下の一実施の形態ではインバータ装置により駆動される交流モータを例に挙げて説明しており、以下に説明のモータが永久磁石を使用したモータである場合には誘導電動機に比べ回転子の発熱が少なく、他の方式のモータに比べ効率の向上が可能である。
【0016】
しかし本発明が適用可能なモータは交流モータに限定されず、例えばサイリスタレオナード装置などのコンバータ電源により駆動される直流モータ、あるいはチョッパ電源により駆動されるパルスモータなど、あらゆる種類の回転電機(モータ・ジェネレータ)に適用することができる。ただ、上述の如く、永久磁石を使用したモータが効率や小型軽量の観点で最も優れており、次に誘導電動機が、自動車用、車両用として、優れている。
【0017】
《発明の第1の実施の形態》
図1は第1の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示し、特に電動自動車用に最適な冷却システムを示す。この電動車両用冷却システムは、車両を走行するためのトルクを発生するモータ1とこのモータ1を駆動するための交流電力を発生するインバータ装置2とを冷却するためのラジエータ3、ファン4、ポンプ5、冷媒循環路6、ファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22および制御装置23を備えている。冷媒循環路6はポンプ5→ラジエータ3→インバータ装置2→モータ1→ポンプ5の経路で冷却媒体を循環する。ポンプ5から圧送された冷却媒体は、ラジエータ3でファン4により送風された空気により冷却され、インバータ装置2およびモータ1を冷却してふたたびポンプ5へ戻る。ここで冷却媒体としては水が最適であるが、油を使用することも可能である。上記インバータ装置2は、図示しない外部から電力を受け、この電力に基づいて上記モータ1を駆動する交流電力を発生する。
【0018】
上記電気自動車としては、純粋にモータにより走行する電気自動車と、エンジンとモータの両方を備えており両方の駆動力で走行するいわゆるハイブリッド車とがあり、本願で述べる電動車両はこれら両方を含む。さらに本願におけるモータ1は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する機能を有するのみならず、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機能を備えており、モータ1が電気エネルギーに基づく機械エネルギーを発生するように動作するか、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する為の発電として動作するかは、上記インバータ装置2の動作に基づいて定まる。例えばモータ1の回転子の磁極位置に対して、インバータが発生する交流電力によるモータ1の固定子の回転磁界が進み側にある場合には、モータ1は電気エネルギーに基づくトルクを発生する。一方モータ1の回転子の磁極位置に対して、インバータが発生する交流電力によるモータ1の固定子の回転磁界が遅れ側にある場合には、モータ1は発電機として動作し、機械エネルギーに基づいて電気エネルギーを発生する。
【0019】
この実施の形態では、ラジエータ3で放熱され冷却された冷却媒体を先ずインバータ装置2へ送り、インバータ装置2を冷却した後にモータ1へ送ってモータ1を冷却している。インバータ装置2は、直流電力を交流電力に変換し、あるいは交流電力を直流電力に変換するためのパワー半導体素子を備えている。上記パワー半導体素子は上記変換動作の為のスイッチング動作時に発熱し、パワー半導体素子の温度が上昇する。インバータ装置2の上記パワー半導体素子を有する回路部は熱容量が小さく、モータ1を駆動する電流が増加すると発熱量の増加に基づいて温度が急上昇する。更に上記パワー半導体素子自身が高温により損傷を受け易い。上述のとおりインバータ装置2はモータ1よりも熱時定数が小さく、温度上昇に弱い為、冷却媒体を先にインバータ装置2へ循環して冷却し、その後でモータ1へ循環して冷却する経路が大変望ましい。しかし、先に冷却媒体をモータ1へ循環して冷却した後、インバータ装置2へ循環して冷却する経路とすることも可能である。
【0020】
また、図2に示すように、モータ1とインバータ装置2の冷媒循環路6を並列に接続し、ポンプ5から圧送された冷却媒体を、ラジエータ3を介してモータ1とインバータ装置2へ並行に循環させてもよい。さらには、図3(a)に示すモータ1用の冷媒循環路6m、ポンプ5mおよびラジエータ3mと、図3(b)に示すインバータ装置2用の冷媒循環路6i、ポンプ5iおよびラジエータ3iとを別個に配設してもよい。図3(a)において、ポンプ5mにより圧送された冷却媒体はラジエータ3mでファン4mにより送風された空気で冷却された後にモータ1へ導かれ、モータ1を冷却してポンプ5mへ戻る。また図3(b)において、ポンプ5iにより圧送された冷却媒体はラジエータ3iでファン4iにより送風された空気で冷却された後にインバータ装置2へ導かれ、インバータ装置2を冷却してポンプ5iへ戻る。
【0021】
この一実施の形態では、モータ1とインバータ装置2を電動車両用冷却システムの冷却対象とした例を示すが、モータ1とインバータ装置2の内のいずれか一方のみを冷却対象としてもよい。また、モータ1とインバータ装置2の他にインバータ装置2との間で直流電力の授受を行う蓄電装置(後述)を冷却対象に加えてもよい。
【0022】
図1において、制御装置23はCPU23cやメモリ23mなどを有しており、後述する冷却制御プログラムを実行してファン駆動装置21およびポンプ駆動装置22を制御し、モータ1とインバータ装置2の冷却を制御する。制御装置23には、自動車の車速を検出する車速センサ24、自動車のアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ25などが接続されている。
【0023】
次に、一実施の形態の電気自動車の走行駆動用モータ1とインバータ装置2の体格(サイズ、大きさ)の設計方法について説明する。一般に、モータやインバータ装置において体格と、最大トルクおよび最高出力と、冷却能力との間には互いに相関関係がある。例えば、モータの体格と冷却能力が決まると、モータを上限温度以下に保つモータ自体の発熱量が決まり、この発熱量を生じさせるモータの最大トルクと最高出力が決まる。また、モータの体格と最大トルクおよび最高出力が決まると、モータを上限温度以下に保つための冷却能力が決まる。一方、モータやインバータ電源の体格は最大トルクおよび最高出力に比例しており、体格が大きいほど最大トルクおよび最高出力が大きくなる。
【0024】
従来、モータやインバータ電源の体格は、発進時、加速時、登坂時などに必要な最大トルクや最高出力に基づいて設計されている。しかし、実際に車両として日常的に使用されるトルクや出力は最大トルクや最高出力よりも小さい値であり、通常走行時に最大トルクと最高出力が必要とされる頻度は低く、その時間も短い。従来は定常走行時のトルクや出力が小さいにも関わらず、使用頻度が低く短時間にしか用いられない最大トルクや最高出力を基準にして設計された大きな体格のモータやインバータ電源が用いられて来た。この一実施の形態では、モータとインバータ装置に対して適切な冷却を行うことによって、必要な最大トルクと最高出力に適切に対応しつつ、モータとインバータ電源の体格を小型化することが可能となる。
【0025】
図4(a)は一般的な設計方針に基づくモータの回転速度に対するトルク特性を示し、図4(b)は発明の一実施の形態のモータ1の回転速度に対するトルク特性を示す。図4(a)に示すように、一般的な設計方針に基づくモータにおいては、回転速度が低い領域ではトルクを最大トルク以下に制限して使用する。図4(a)においては、最大トルク線として示している。回転速度が高い領域では出力を最高出力以下に制限する出力一定、換言すれば、回転速度の増加に応じてトルクを低減する範囲内、で使用する。図4(a)においては、最高出力線として示している。図4(a)において、一般的な設計方針に従えば、モータとインバータ電源の体格は、発進時、加速時、登坂時などに必要な最大トルクと最高出力を極めて重要な要件としている。
【0026】
これに対し一実施の形態のモータ1とインバータ装置2においては、図4(b)に示すように、モータ1の回転速度とトルクで決まる作動領域が、第一作動領域(実線で表される第一トルク線および第一作用線の下側の領域)に加えて、第二作動領域(実線で表される第一トルク線および第一作用線の上側であって、かつ破線で表される第二トルク線および第二作用線の下側の領域)を含むようにすることにより、運転領域を広げる。第一作動領域を、平坦路をほぼ一定の速度で走行するときなどの定常走行時に必要な軽負荷時の作動領域とするとともに、第二作動領域を、定常走行時よりも大きなトルクと出力が必要な発進時、加速時、登坂時などの重負荷時の作動領域とする。
【0027】
図4(b)において、第二作動領域の破線で示す第二トルク線のトルクおよび第二出力線の出力は、図4(a)に示すモータの最大トルク線の最大トルクおよび最高出力線の最高出力と同等またはそれらより大きい。また、実線で示す第一作動領域と第二作動領域の境界線は、第二作動領域の第二トルク線のトルクよりも小さいトルクの第一トルク線と、第二作動領域の第二出力線の出力よりも低い出力の第一出力線を示す。
【0028】
また、この一実施の形態では、モータ1とインバータ装置2の冷却システムの冷却能力を上記図4に示すモータの回転速度−トルク特性に基づいて制御する。例えば次に説明する方法で制御することにより、熱的な課題に対応しつつモータあるいはインバータ装置の体格に対して大きな出力を得ることができる。上記第一作動領域と第二作動領域とを考慮して冷却能力を制御し、トルクと出力が大きな第二作動領域における冷却能力を第一作動領域における冷却能力よりも高くする。第一作動領域においては、モータ1とインバータ装置2により、図4(b)に実線で示す第一トルク線と第一出力線に囲まれた領域のトルクと出力を連続して発生させながら、モータ1とインバータ装置2がそれぞれの上限温度を超過することがない冷却能力を発揮させるように、ファン4とポンプ5を駆動制御する。この明細書では、第一作動領域におけるモータ1とインバータ装置2の冷却モードを第一冷却モードと呼ぶ。
【0029】
一方、第二作動領域では、モータ1とインバータ装置2により、図4(b)に破線で示す第二トルク線と第二出力線に囲まれたハッチング領域のトルクと出力を短時間に発生させながら、モータ1とインバータ装置2がそれぞれの上限温度を超過することがない冷却能力を発揮させるように、ファン4とポンプ5を駆動制御する。この明細書では、第二作動領域におけるモータ1とインバータ装置2の冷却モードを第二冷却モードと呼ぶ。
【0030】
第一トルク線と第一出力線に囲まれた第一作動領域のトルクと出力は、電動車両の発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に必要とされる大きなトルクおよび出力ではなく、上り下りの少ない平坦路を、加減速の少ない、ほぼ一定の、速度で走行するときなどの定常走行時に要求される軽負荷時のトルクおよび出力であり、連続して発生させることができる代表的なトルクおよび出力である。つまり、第一トルク線のトルクは連続定格トルク、第一出力線の出力は連続定格出力である。
【0031】
これに対し第二トルク線と第二出力線で囲まれた第二作動領域のトルクと出力は、電動車両の発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に要求される、定常走行時よりも大きなトルクおよび出力である。このような大きなトルクは、連続して長い時間要求される可能性が少ない短時間の要求で終了する傾向を有している。つまり、第二トルク線のトルクは短時間定格トルク、第二出力線の出力は短時間定格出力である。
【0032】
ここで、短時間とは、電動車両の発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に定常走行時よりも大きなトルクおよび出力を発生させる必要がある代表的な時間である。また、モータ1の上限温度はモータ1の絶縁材料等の許容温度に基づいて決定し、インバータ装置2の上限温度は電力変換用スイッチング素子等の許容温度に基づいて決定する。
【0033】
図5は、第一作動領域における第一冷却モードと第二作動領域における第二冷却モードのファン4とポンプ5の運転方法(a)〜(c)を示す。いずれの運転方法(a)〜(c)においても、第一冷却モードの冷却能力よりも第二冷却モードの冷却能力の方が高くなるようにファン4および/またはポンプ5を運転し、第一冷却モードでは、上述した定常走行時の小さいトルクと出力を連続的に発生させながら、モータ1およびインバータ装置2をそれぞれの上限温度以下に保つようにファン4とポンプ5を駆動制御し、第二冷却モードでは、発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に必要な大きなトルクおよび出力を短時間に発生させながら、モータ1およびインバータ装置2をそれぞれの上限温度以下に保つようにファン4とポンプ5を駆動制御する。
【0034】
図5に示すファン4とポンプ5の運転方法(a)では、第一冷却モードでファン4とポンプ5をそれぞれ所定速度で一定運転し、第二冷却モードではファン4とポンプ5を、それぞれモータ1で発生するトルクまたは出力に基づいて制御する、例えば冷却ファン4あるいはポンプ5能力を上記モータ1のトルクまたは出力に比例するように制御する。
【0035】
また、運転方法(b)ではファン4とポンプ5の運転方法を異ならせる。ファン4は、第一冷却モードでは所定速度で一定運転し、第二冷却モードではモータ1で発生するトルクまたは出力に基づき、例えば比例した冷却能力で運転する。これに対しポンプ5は、第一冷却モードと第二冷却モードのいずれにおいても所定速度で一定運転する。同様に、運転方法(c)においてもファン4とポンプ5の運転方法を異ならせる。ファン4は、第一冷却モードと第二冷却モードのいずれにおいても所定速度で一定運転する。これに対しポンプ5は、第一冷却モードでは所定速度で一定運転し、第二冷却モードでは、モータ1で発生するトルクまたは出力に基づいて、例えば比例した冷却能力で、運転する。
【0036】
第一冷却モードと第二冷却モードにおけるファン4とポンプ5の運転方法は、上述した図5に示す(a)〜(c)の運転方法によれば、運転モードによって発生する熱の影響に対して、温度上昇前に適切な対応が、より簡素化した制御で対応できる効果があるが、この方法に限定されず、第一冷却モードの冷却能力よりも第二冷却モードの冷却能力の方が高くなるような運転方法を行えばそうした効果が有る。なお、運転方法の内、モータ1で発生するトルクまたは出力に比例した冷却能力でファン4またはポンプ5を運転することによって、一定運転を行う場合に比べてファン4およびポンプ5を効率よく運転することができる。
【0037】
図6は第1の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図、図7は第1の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャートである。これらの図により第1の実施の形態の冷却モード選択動作を説明する。制御装置23のCPU23cは、マイクロコンピューターのソフトウエア形態により図6に示す冷却モード選択制御ブロックを構成し、イグニッションキースイッチ(不図示)がオンしている間、図7に示す冷却モード選択制御プログラムを繰り返し実行する。
【0038】
図7で符合Sはステップを現し、例えば符合S1はステップ1を意味し、符号S2はステップ2を意味する。ステップ1において、車速センサ24からの車速信号および、アクセルセンサ25からのアクセル操作量を表す信号が制御装置23に入力されると、制御装置23はこれらの信号に基づきモータ1の出力要求値を計算する。アクセルペダルの操作量は車両走行のための駆動力の要求であり、電動車両としてのモータ1のトルク要求値を表していると見ることができるので、アクセル操作量をトルク要求値に換算して車速に乗算し、電動車両の駆動力要求値、すなわちモータ1の出力要求値を計算する。
【0039】
ステップ2では、トルク要求値と車速に応じたモータ1のトルクと回転速度で決まる動作点が、上述した第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定する。まず、電動車両としてのトルク要求値を変速機(不図示)の変速比によりモータ1のトルクに換算するとともに、車速を変速機の変速比によりモータ1の回転速度に換算し、モータ1のトルクと回転速度に応じた動作点を決定する。次に、モータ1の動作点が第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定し、判定結果の作動領域に応じた冷却モードを選択する。
【0040】
モータ1の動作点が第一作動領域内にある場合はステップ4へ進んで第一冷却モードを選択し、モータ1の動作点が第二作動領域内にある場合にはステップ5へ進んで第二冷却モードを選択する。ステップ6で、冷却モードの選択結果に応じて、ファン駆動装置21へファン4の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力するとともに、ポンプ駆動装置22へポンプ5の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力する。
【0041】
一般的な考え方に基づく制御方法を適用した場合には、モータ1とインバータ装置2は、図4(a)に示す最大トルク線と最高出力線で囲まれる広い作動領域を一律の高い冷却能力で冷却を行いながら、最大トルク線の最大トルクと最高出力線の最高出力に連続して長時間対応できることを条件としてモータ1とインバータ装置2の体格を定めることとなる。このため上述した定常走行時の小さなトルクと出力に応じた体格よりも大きな体格になっている。これに対し一実施の形態では、モータ1の作動領域を、上述した定常走行時の小さなトルクと出力を発生する第一作動領域と、発進時、加速時、登坂時などの重負荷時に大きなトルクと出力を発生する第二作動領域とに分ける。モータ1の動作領域が第二作動領域にある場合には、第一作動領域における冷却能力よりも高い冷却能力で冷却を行うように、ポンプ5やファン4などの過冷却の為の機器を制御する。そうすることによって、最大トルク線と最高出力線(図4(a)参照)に相当する第二作動領域の第二トルク線と第二出力線(図4(b)参照)に基づいてモータ1とインバータ装置2の体格を決定せず、それらよりも小さい第一作動領域の第一トルク線と第一出力線に基づいてモータ1とインバータ装置2の体格を決定することができる。そのため、モータ1とインバータ装置2の体格を、一般的な考え方による場合の体格よりも小さくすることができる。
【0042】
また、第1の実施の形態の電動車両用冷却システムによれば、効率の高い作動領域でモータ1を運転することができる。図4に示すモータの回転速度に対するトルクの特性図には、モータの運転効率を表す等効率線が示されている。一般的な制御方法を適用した場合は、図4(a)に示すように、最大トルク線と最高出力線に基づいてモータの体格を決定していたため、通常走行時に使用頻度の高い作動領域(図4(a)の破線で囲まれた領域)、すなわち定常走行時の小さなトルクと出力の動作点は、効率の低い領域になっている。これに対し第1の実施の形態では、図4(b)に示すように、定常走行時の第一トルク線と第一出力線に基づいてモータ1の体格を決定しているので、通常走行時に使用頻度の高い作動領域(図4(b)の破線で囲まれた領域)、すなわち定常走行時の小さなトルクと出力の動作点は、一般的な制御方法を適用した場合よりも効率の高い領域になっている。つまり、第1の実施の形態によれば、モータ1を従来よりも高い効率で運転することができ、消費電力を低減させることができる。
【0043】
さらに、第1の実施の形態によれば、大きなトルクと出力が必要な第二作動領域でのモータ運転時のファン4とポンプ5による冷却能力を、定常走行時の小さいトルクと出力が必要な第一作動領域でのモータ運転時のファン4とポンプ5による冷却能力より大きくしているので、ファン4とポンプ5およびそれらの駆動装置21、22の体格の小型化と消費電力の低減が可能である。
【0044】
ところで、冷却システムの冷却能力は、ファン4およびポンプ5の運転方法だけでなく、ラジエータ3において冷却媒体と熱交換を行う空気の温度によっても変化し、空気温度が高くなるほど冷却能力が低くなる。つまり、冷却能力は空気温度に反比例する。したがって、図4(b)に示すように、第一冷却モードと第二冷却モードとを切り換える第一作動領域と第二作動領域との境界線、すなわち第一トルク線と第一出力線を、図8に示すように空気温度すなわち外気温Tairに応じて変化させることが望ましい。つまり、外気温TairがT1、T2、T3(T1<T2<T3)と高くなるにしたがって第一トルク線のトルクと第一出力線の出力を小さくし、外気温Tairが高くなって冷却能力が低くなるにしたがって第二冷却モードへ切り替わりやすくし、外気温上昇にともなう冷却能力の低下を補償する。なお、外気温Tairは、図1に示す外気温センサ31によりラジエータ3に送風される空気の温度として検出される。
【0045】
また、第一冷却モードと第二冷却モードの切り替えのハンチングを防ぐために、図9に示すように第一作動領域と第二作動領域の境界線、すなわち第一トルク線と第一出力線を2本(実線と破線で示す)設定し、第一作動領域から第二作動領域への切り替えは“実線で示す”第一トルク線および第一出力線で判定し、第二作動領域から第一作動領域への切り替えは“破線で示す”第一トルク線および第一出力線で判定するようにしてもよい。あるいはまた、第一冷却モードと第二冷却モードの切り替えのハンチングを防ぐために、第一トルク線と第一出力線を1本のままにし、第一冷却モードから第二冷却モードへ切り換えられた後は、第二作動領域から第一作動領域への切り換えが必要になっても所定時間の間は切り替えを禁止するようにしてもよい。
【0046】
上述したように、図4(b)において、モータ1の回転速度が高い領域では出力を最高出力以下に制限する出力一定で使用するため、回転速度の増加に応じて発生するトルクを低減することとなる。また、上述したように、モータ1の最高出力と、冷却能力との間には互いに相関関係がある。一定の冷却能力の下では、モータ1を上限温度以下に保つモータ自体の発熱量が決まり、この発熱量を生じさせるモータ1の最大トルクと最高出力が決まる。モータ1の回転速度が高くなると発熱量が増加するため、モータ1を上限温度以下に保つための冷却能力が一定の場合、図4(b)に示すように、モータ1の回転速度が高いと、トルクは最大トルクまたは最高出力に従って低下する。換言すると、モータ1の回転速度が低いと、冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力をさらに大きく増加させることができる。
【0047】
図10は、モータ1の出力および冷却能力と回転速度との関係を示す図である。図10(b)に示すように、第二冷却モードによる冷却能力を発揮させる際、モータ1の回転速度が低い領域での冷却能力を引き上げることにより、図10(a)に示すように、モータ1の回転速度が低い領域において、より高いモータ出力を得ることができる。モータ1の回転速度が低い領域に属する回転速度N0において、冷却能力が最大値となっている。第二冷却モードによる冷却能力の引き上げはモータ1の回転速度に依存するため、具体的には、図1に示す制御装置23に入力されるモータ1の回転速度情報(不図示)に基づき、制御装置23がファン駆動装置21およびポンプ駆動装置22を制御することにより、冷却能力が制御される。
【0048】
図11は、アクセル操作量の経時変化に伴うモータ1の回転速度の経時変化に応じたモータ1およびインバータ装置2の冷却能力の経時変化を表す図である。時刻t0にアクセル操作量が所定値に変化し、以後、一定を保つ。すると、モータ1の回転速度は、最高出力を保ちながら徐々に加速して時刻tmaxに最大回転速度に到達し、以後、一定を保つ。このとき、モータ1およびインバータ装置2の冷却能力は、モータ1の回転速度が低い領域においては急速に増加して最大値に到達し、モータ1の回転速度が加速するにつれて徐々に減少していくこととなる。
【0049】
このようにして、モータ1の回転速度が低いときは、冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力をさらに大きく増加させることができる。上述したように、モータ1の回転速度が高くなると発熱量が増加する。モータ1を上限温度以下に保つための冷却能力が一定の場合、図4(b)に示すように、モータ1の回転速度が高くなるにつれ、トルクは最大トルクまたは最高出力に従って低下する。しかし、モータ1の運転効率の最高効率点を、モータ1の回転速度が高い領域に設定することにより発熱量を低減すると、モータ1の回転速度が高い領域において、より高いモータ出力を得ることができる。具体的には、図4(b)に示すモータ1の運転効率が高い領域を、モータ1の高回転速度領域に位置させるようにすることで、モータ1の発熱量を低減する。モータ1の高回転速度領域とは、たとえば、モータ1の回転速度が、図10(b)に示す冷却能力最大値を与えるモータ1の回転速度N0よりも十分に高い領域をいう。
【0050】
図12は、モータ1の運転効率が高い領域を、モータ1の回転速度のより高い領域に位置させた一例を示す図である。本発明の電動車両の冷却システムが適用される電気自動車における変速比は固定という前提の下、図4(a)と比べると、縦軸はモータ1のトルクを車両の駆動力に、横軸はモータ1の回転速度を車速に各々読み替えている。また、図4(a)における最大トルク線および最大出力線を、図12では包括して最大駆動力線DV1およびDV2として表している。モータ1の運転効率が高い領域を高車速領域に位置させた場合の最大駆動力線1を実線DV2で、最高効率点を内部が塗りつぶされた円PE2で示している。モータ1の運転効率が高い領域を高車速領域に位置させなかった場合の最大駆動力線を破線DV1で、最高効率点を斜線が内部に付された破線の円PE1で示している。
【0051】
モータ1の運転効率の最高効率点を高車速側に位置させることで、モータ1の発熱量が低減され、高車速側において最大駆動力を引き上げることができる。上述した固定の変速比を適当な設定値に設定することにより、モータ1の運転効率の最高効率点を高車速側に位置させることができる。ここで、車速抵抗を示す太い破線RRと最大駆動力線DV2との交点の車速として得られる最高車速をVmaxとし、最高車速Vmaxの1/2の車速にあたる中央車速をVmidとする。モータ1の運転効率の最高効率点が、たとえば中央車速Vmidよりもよりも高い最高効率車速Vηを与える位置となるように、変速比の設定値を決定する。こうして変速比を適当な設定値に設定することにより、高車速側において高い最大駆動力が得られることなる。なお、車速が中央車速Vmid以下である低車速側においては、上述したように、高車速側に比べて冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力、すなわち最大駆動力線DV2をさらに大きく増加させることができる。
【0052】
上述したように、モータ1の回転速度が低いときは、冷却能力を引き上げることにより、モータ1の最大トルクおよび最高出力をさらに大きく増加させることができるが、過度に増加させるとモータ1の発熱量が増加し過ぎて好ましくない。逆に、モータ1の最大トルクおよび最高出力の増加量が小さ過ぎても、走行抵抗を考慮するとやはり好ましくない。モータ1の運転効率の最高効率点のトルクの大きさについて、図13を参照して以下に説明する。
【0053】
図13は、図4(b)と同様にモータ1の回転速度に対するトルク特性を示しており、モータ1の運転効率の最高効率点が中程度のトルクとなる一例を示した図である。モータ1の運転効率の最高効率点のトルクおよび回転速度(最高効率速度)を、各々TηおよびNηとする。冷却能力を引き上げられた第二冷却モードにおける最高効率速度Nηでの最大トルクTmaxηは、最高効率速度Nηにおける第二トルク線および第二出力線上のモータトルクとして得られる。このとき、最高効率点のトルクTηは、最大トルクTmaxηに対して中トルクとなっている。具体的には、最高効率点のトルクTηは、最大トルクTmaxηの50〜75%の範囲にあることが好ましい。
【0054】
《発明の第2の実施の形態》
上述した第1の実施の形態では、車速信号とアクセル操作量を表す信号に基づいてモータ1の動作点をリアルタイムに計算し、モータ1の作動領域を判定して冷却モードを切り換える例を示したが、モータ1の動作点を予め予測し、予測結果の動作点によりモータ1の作動領域を判定して冷却モードを切り換えるようにした第2の実施の形態を説明する。図14は第2の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図である。なお、冷却モード選択制御以外については上述した第1の実施の形態と同様であり、図示と説明を省略する。
【0055】
この第2の実施の形態では、図1に示す車速センサ24とアクセルセンサ25以外に、道路勾配を検出する勾配センサ26、車両の重量を検出する車重センサ27および走行ルート情報を演算するナビゲーション装置28が制御装置23Aに接続される。ナビゲーション装置28はGPS受信機、VICS受信機、道路地図データ記憶装置(いずれも不図示)などを備え、車両の現在地から目的地までの最適な経路(誘導経路)を探索するとともに、現在地、誘導経路に沿った道路の勾配、平均車速、渋滞状況などを検出する。制御装置23Aは、ナビゲーション装置28から入力した誘導経路情報、勾配情報、平均車速情報および渋滞情報と車重センサ27から入力した車重などに基づいて、目的地までの誘導経路におけるモータ1のトルクと回転速度を計算して動作点を予測し、作動領域を判定する。この誘導経路上の道路におけるモータ1の作動領域は制御装置23Aのメモリ23m(図1参照)に記憶される。
【0056】
図15は、第2の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャートである。制御装置23AのCPU23cは、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされている間、図15に示す冷却モード選択制御プログラムを繰り返し実行する。なお、図7に示す第1の実施の形態と同様な制御ステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。上述したように、ステップ1〜3において、車速信号とアクセル操作量を表す信号に基づいてモータ1の出力要求値を計算し、車速とアクセル操作量に応じたモータ1の動作点が第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定する。第一作動領域内にあると判定された場合はステップ11へ進み、第二作動領域内にあると判定された場合はステップ5へ進む。
【0057】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定された場合には、ステップ11においてナビゲーション装置28により電動車両の現在地を検出し、続くステップ12でメモリ23mから現在地周辺の作動領域を読み出す。ステップ13では第二作動領域の区間が近づいているか否かを判別する。例えば、電動車両の現在地から誘導経路に沿って所定距離前方に第二作動領域の道路区間があるか否かを判別し、所定距離前方が第二作動領域の道路区間である場合にはステップ5へ進み、そうでなければステップ4へ進む。
【0058】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定され、かつ誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間がない場合には、ステップ4で第一冷却モードを選択する。一方、電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にない、つまり第二作動領域内にあると判定された場合、または、現在地におけるモータ1の作動領域が第一作動領域内にあると判定されても、誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間が近づいている場合には、ステップ5で第二冷却モードを選択する。ステップ6で、冷却モードの選択結果に応じて、ファン駆動装置21へファン4の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力するとともに、ポンプ駆動装置22へポンプ5の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力する。
【0059】
この第2の実施の形態によれば、予め目的地までの道路におけるモータ1の作動領域を予測し、発熱量が大きい第二作動領域でモータ1およびインバータ装置2が動作すると予測される場合には、第二作動領域の道路区間の所定距離手前で第一冷却モードから冷却能力の高い第二冷却モードへ切り替えることができるので、第二作動領域の道路区間におけるモータ1およびインバータ装置2の温度上昇を上限温度よりも低い温度に抑制することができる。換言すれば、上限温度に到達するまでに余裕ができ、図4(b)に示す第二トルク線と第二出力線で規定される最大トルクと最高出力の短時間定格をさらに大きな値に設定することができる。
【0060】
《発明の第3の実施の形態》
上述した第1および第2の実施の形態に冷却モードの手動選択機能を付加した第3の実施の形態を説明する。図16は第3の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図である。この第3の実施の形態では、図14に示す第2の実施の形態の構成に加え、手動切り替えスイッチ29が制御装置23Bに接続される。手動切り替えスイッチ29は電動車両の運転者が手動で冷却モードを選択するためのスイッチである。
【0061】
図17は、第3の実施の形態の冷却モード選択制御プログラムを示すフローチャートである。制御装置23BのCPU23cは、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされている間、図17に示す冷却モード選択制御プログラムを繰り返し実行する。なお、図7に示す第1の実施の形態および図15に示す第2の実施の形態と同様な制御ステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。上述したように、ステップ1〜3において、車速信号とアクセル操作量信号に基づいてモータ1の出力要求値を計算し、車速とアクセル操作量に応じたモータ1の動作点が第一作動領域内にあるか、または第二作動領域内にあるかを判定する。第一作動領域内にあると判定された場合はステップ11へ進み、第二作動領域内にあると判定された場合はステップ5へ進む。
【0062】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定された場合には、ステップ11において電動車両の現在地を検出するとともに、ステップ12でメモリ23mから現在地周辺の作動領域を読み出し、ステップ13で第二作動領域の道路区間が近づいているか否かを判別する。所定距離前方が第二作動領域の道路区間である場合にはステップ5へ進み、そうでなければステップ21へ進む。
【0063】
電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にあると判定され、かつ誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間がない場合には、ステップ21で手動切り替えスイッチ29により第二冷却モードが選択されているか否かを判別し、手動で第二冷却モードが選択されている場合はステップ5へ進み、第一冷却モードが選択されている場合はステップ4へ進む。制御装置23Bによりモータ1の動作点が第一作動領域内であると判別され、かつ現在地から所定距離前方までの間に第二作動領域の道路区間がなく、かつ手動で第一冷却モードが選択されている場合には、ステップ4で第一冷却モードを選択する。
【0064】
一方、電動車両の車速とアクセル操作量に基づき計算されたモータ1の動作点が第一作動領域内にない、つまり第二作動領域内にあると判定された場合、または、現在地におけるモータ1の作動領域が第一作動領域内にあると判定されても、誘導経路上の所定距離前方に第二作動領域の道路区間が近づいている場合、または、手動で第二冷却モードが選択された場合には、ステップ5で第二冷却モードを選択する。ステップ6で、冷却モードの選択結果に応じて、ファン駆動装置21へファン4の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力するとともに、ポンプ駆動装置22へポンプ5の第一冷却モードまたは第二冷却モードの動作指令を出力する。
【0065】
この第3の実施の形態によれば、運転者が手動で第二冷却モードを選択した場合には、制御装置23Bによる冷却モードの判別結果に拘わらず第二冷却モードを選択し、手動による冷却モードの選択結果と制御装置23Bによる冷却モードの判別結果とがともに第一冷却モードの場合に第一冷却モードを選択するようにしたので、電動車両の運転者が運転嗜好や運転時の気候条件および走行条件などにより冷却能力を高めたいと考えた場合には、運転者の意志を優先して冷却能力の高い第二冷却モードで冷却を行うことができ、第1および第2の実施の形態の冷却モードの自動選択機能に対して手動選択機能を効果的に組み入れることができる。
【0066】
《発明の第4の実施の形態》
第一冷却モードと第二冷却モードとを切り換える第一作動領域と第二作動領域との境界線、すなわち第一トルク線と第一出力線(図4(b)参照)を、電動車両の運転者ごとの運転履歴に応じて変更するようにした第4の実施の形態を説明する。図18は第4の実施の形態における冷却モード選択制御を示すブロック図である。この第4の実施の形態では、図16に示す第3の実施の形態の構成に加え、運転者識別装置30を制御装置23Cに接続するとともに、制御装置23Cのメモリ23mに運転者ごとの過去の運転履歴データを記憶する。なお、この第4の実施の形態の冷却モード選択制御は上述した第1〜第3の実施の形態の冷却モード選択制御と同様であり、フローチャートの図示と動作説明を省略する。
【0067】
運転者識別装置30は電動車両を運転する運転者を識別する。識別方法としては、運転免許証に添付されたICチップのデータを読み取って運転者を識別したり、電動車両の運転者ごとに異なるIDを記憶したイグニッションキーを用意し、IDを読み取って運転者を識別するなどの方法が考えられる。制御装置23Cのメモリ23mは識別された運転者ごとに運転履歴を記憶する。例えば、平均的な運転者よりも加速を求める傾向がある運転者には、平均的な運転者よりも大きなトルクと出力が必要となり、第二作動領域での運転頻度が多くなるため、冷却モードを切り換える第一トルク線と第一出力線を低トルク、低出力側に変更し、冷却能力が高い第二冷却モードが選択され易くする。これにより、平均的な運転者とモータ動作点が同じであっても、より加速を求める運転者に対しては冷却能力が高い第二冷却モードの範囲が拡大されることになり、運転者の運転特性に合ったモータ1およびインバータ装置2の冷却能力で冷却を行うことができる。
【0068】
《発明の第5の実施の形態》
一般に、モータとインバータ装置の効率はそれらの温度に応じて変化し、モータの動作点が同じであれば、すなわち同一のトルクと回転速度であれば、モータとインバータ装置の温度が高くなるほどそれらの効率は低下する。このため、モータやインバータ装置はそれらの温度に応じて冷却能力を変化させる必要がある。換言すれば、冷却能力を変化させてモータやインバータ装置の温度を変えることによって、モータやインバータ装置の効率を変えることができる。従来は、モータやインバータ装置のトルクや出力、あるいはそれらの温度に応じて冷却能力を変えることはあっても、温度による効率変化を考慮して冷却能力を制御することは行われていない。
【0069】
そこで、モータ1やインバータ装置2の運転効率にファン4やポンプ5などの補機の効率を加味し、これらの総合効率を考慮した冷却制御を行う第5の実施の形態を説明する。なお、モータ1の損失に比べてインバータ装置2の損失は少ないので、この第5の実施の形態ではモータ1のみの温度と損失に注目した冷却制御を説明する。また、この第5の実施の形態の冷却モード選択制御は上述した第1〜第3の実施の形態の冷却モード選択制御と同様であり、フローチャートの図示と動作説明を省略する。
【0070】
図19は第5の実施の形態の冷却制御を示すブロック図である。この第5の実施の形態では、図18に示す第4の実施の形態の構成に加え、外気温センサ31と冷却液温センサ32を制御装置23Dに接続するとともに、制御装置23DにCPU23cのソフトウエア形態による制御ブロック23c1〜23c6を備える。外気温センサ31は電動車両の外気温を検出し、冷却液温センサ32は冷却媒体の温度を検出する。
【0071】
制御ブロック23c1において上述したようにモータ1の動作点を予測計算する。モータ1の動作点と温度が決まればモータ1の銅損や風損などの損失電力が求められ、電力損失にともなう発熱量が求まる。制御ブロック23c2で計算結果の動作点でモータ1を駆動する際のモータ温度ごとの銅損や風損などの損失電力(発熱量)を計算する。次に、制御ブロック23c3ではモータ温度ごとの冷却装置(ファン4とポンプ5およびそれらの駆動制御装置21、22)の動作を計算する。具体的には、計算結果のモータ温度ごとのモータ損失電力に応じた発熱量を、冷却液温センサ32により検出された温度の冷却媒体を介して外気温センサ31により検出された温度の空気に放熱するための、ファン4とポンプ5の運転速度を計算する。
【0072】
次に、制御ブロック23c4でファン4とポンプ5を計算結果の運転速度で運転した場合のファン4、ポンプ5およびそれらの駆動装置21、22の消費電力を計算する。そして制御ブロック23c5において、図20に示すようにモータ温度ごとにモータ損失電力、ファン消費電力およびポンプ消費電力を加算して総和を求め、下限温度と上限温度との間で総和が最小となるモータ温度を最高効率温度であるとし、目標モータ温度に設定する。制御ブロック23c6では現在の外気温と冷却液温でモータ温度を目標温度にするための冷却装置すなわちファン4とポンプ5の運転速度を計算し、ファン動作指令とポンプ動作指令をファン駆動装置21とポンプ駆動装置22へ出力する。
【0073】
この第5の実施の形態により、モータ効率のみならず、冷却するために消費する冷却装置自体の消費電力を考慮した総合効率がより高くなるように、モータ温度でモータ1、インバータ装置2、ファン4およびポンプ5を運転することができ、省エネ運転を実現できる。なお、上述した例ではモータ損失のみに注目して冷却装置の運転状態を決定したが、モータ損失に加えインバータ装置2や蓄電装置(不図示)の損失を考慮して冷却装置の運転状態を決定するようにしてもよい。
【0074】
《発明の第6の実施の形態》
図21は第6の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図1に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。また、図21では、図1に示したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第6の実施の形態の電動車両用冷却システムは、冷却媒体の熱を外気に放熱する第一冷却系と、この第一冷却系と熱交換機8を介して熱交換を行ってモータ1およびインバータ装置2を冷却する第二冷却系とから構成される。
【0075】
まず第二冷却系は、ポンプ5、冷媒循環路6b、熱交換器8、冷却対象のモータ1およびインバータ装置2を備えており、冷媒循環路6bはポンプ5→熱交換器8→インバータ装置2→モータ1→ポンプ5の経路で冷却媒体を循環する。ポンプ5から圧送された冷却媒体は、熱交換器8において第一冷却系の冷却媒体との間で熱交換を行って冷却され、インバータ装置2およびモータ1を冷却してふたたびポンプ5へ戻る。ここで、冷却媒体としては、水あるいは油がモータ1あるいはインバータ装置2の冷却の為に適しているが、その他にハイドロフルオロカーボンあるいはハイドロクロロフルオロカーボンなどの代替フロンも使用可能である。
【0076】
次に第一冷却系は、ラジエータ3、ファン4、冷媒循環路6a、圧縮機7、熱交換器8および調節弁9を備えており、冷媒循環路6aは熱交換器8→圧縮機7→ラジエータ3→調節弁9→熱交換器8の経路で冷却媒体を循環する。この第一冷却系は冷凍サイクルであり、第一冷却媒体にはHFC−134aなどの冷凍サイクル用の冷媒が用いられ、ラジエータ3は凝縮器として、調節弁9は膨張弁として、熱交換器8は蒸発器としてそれぞれ機能する。熱交換器8で第二冷却系の第二冷却媒体の熱を吸収した第一冷却媒体は圧縮機7で圧縮され、ラジエータ3でファン4により送風された空気により冷却された後、調節弁9を介してふたたび熱交換器8へ戻る。
【0077】
図1に示す第1の実施の形態では、冷却対象のモータ1とインバータ装置2を冷却した冷却媒体をラジエータ3で空気との熱交換により放熱しているため、冷却媒体の温度をファン4によりラジエータ3に送風される空気の温度より低くできない。これに対し第6の実施の形態では、冷却対象のモータ1とインバータ装置2を冷却した第二冷却系の第二冷却媒体を熱交換器8で第一冷却系の第一冷却媒体に放熱し、さらに冷凍サイクルを用いた第一冷却系において第一冷却媒体をラジエータ3で空気に放熱しているので、第二冷却媒体の温度を空気温度より低くすることができ、より冷却能力を高くすることができる。
【0078】
なお、この第6の実施の形態では、第1の実施の形態の冷却系の機器に加え、圧縮機7および調節弁9という制御対象の機器が配設される。この第6の実施の形態の動作については電動車両に搭載された冷却システムとして後述する。
【0079】
《発明の第6の実施の形態の変形例》
図22は、図21に示す第6の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図21に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。この変形例では、第二冷却系のモータ1とポンプとの間にラジエータ14とファン15を設置する。なお、図22ではファン15の駆動装置の図示を省略する。第一冷却系を構成するファン4、圧縮機7、調節弁9などに不具合が発生してモータ1およびインバータ装置2の冷却能力が低下した場合に、ラジエータ14において第二冷却系の第二冷却媒体の熱をファン15により送風される空気に放熱し、図1に示す第1の実施の形態と同程度の冷却能力を確保する。これにより、第一冷却系に不具合が発生した場合でも、電動車両の運行を継続することができる。なお、第一冷却系の不具合時だけでなく常時、ラジエータ14とファン15による第二冷却媒体の冷却を行ってもよい。
【0080】
《発明の第7の実施の形態》
図23は第7の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図1および図21に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図23では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第7の実施の形態では、図21に示す第6の実施の形態に対し、第二冷却系を冷却対象冷却用の循環路6cと車室内空調用の循環路6dの二つの経路に分ける。
【0081】
まず冷却対象冷却用循環路6cでは、ポンプ5aから圧送された第二冷却媒体が熱交換器8aで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱した後、ラジエータ3aでファン4aにより送風された車室内空気から吸熱して車室内を冷却し、次にインバータ装置2とモータ1へ順次導かれてそれらの冷却対象を冷却する。また車室内空調用経路6dでは、ポンプ5bから圧送された第二冷却冷媒が熱交換器8bで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱した後、ラジエータ3bでファン4aにより送風された車室内空気から吸熱して車室内を冷却する。
【0082】
一方、第一冷却系では、第二冷却系の第二冷却媒体と熱交換を行う経路が二つに分かれており、冷却対象冷却用経路には調節弁9aと熱交換器8aが設けられ、車室内空調用経路には調節弁9bと熱交換器8bが設けられる。それ以外のラジエータ3、ファン4および圧縮機7については図21に示す第一冷却系と同様である。
【0083】
この第6の実施の形態によれば、モータ1やインバータ装置2などの冷却対象用と車室内の冷房用とに別々に冷凍サイクルを構築することなく、一つの冷凍サイクルで電動車両用駆動装置、すなわちモータ1とインバータ装置2の冷却と、車室内冷房とを実現することができる。このようにモータ1やインバータ装置2の発生する熱を車室内の温度調整に利用することにより、車室内向けの熱エネルギーを作り出すためのエネルギーを抑制でき、車両全体の効率が向上する。また、車室内の熱源を確保する為の電気エネルギーを熱エネルギーに変換するヒータなど、暖房のための熱発生装置を小型化できるメリットがある。さらに場合によっては、特別な熱発生装置の使用が不要となる。また圧縮機7およびファン4、ラジエータ3を共通に使用でき、全体システムが簡素化する。これらは大幅なコスト低減につながる。
【0084】
《発明の第7の実施の形態変形例》
図24は、図23に示す第7の実施の形態の変形例の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図23に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明する。この変形例では、第二冷却系の冷却対象冷却用循環路6cのモータ1とポンプ5aとの間にラジエータ14とファン15を設置する。なお、図24ではファン15の駆動装置の図示を省略する。第一冷却系を構成するファン4、圧縮機7、調節弁9などに不具合が発生してモータ1およびインバータ装置2の冷却能力が低下した場合に、ラジエータ14において第二冷却系の第二冷却媒体の熱をファン15により送風される空気に放熱し、図1に示す第1の実施の形態と同程度の冷却能力を確保する。これにより、第一冷却系に不具合が発生した場合でも、電動車両の運行を継続することができる。
【0085】
《発明の第8の実施の形態》
図25は第8の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、図1および図23に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図25では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第8の実施の形態では、図23に示す第7の実施の形態に対して、圧縮機7の吐出側に四方弁10を設置し、冷凍サイクルの冷媒循環方向を切り替えることによって、冷房運転に加え暖房運転を可能にしている。図25の第一冷却系の冷媒循環路に示す矢印は、冷房運転中の第一冷却媒体(冷凍サイクル)の流れの方向を示している。圧縮機7で圧縮された冷却媒体はラジエータ3を凝縮器として通過した後、熱交換器8aおよび8bを蒸発器として第二冷却系の第二冷却媒体と熱交換(第二冷却媒体を冷却)した後、圧縮機7へ戻る。
【0086】
図26は第8の実施の形態の暖房運転時の第一冷却媒体の流れを示す。圧縮機7で圧縮された冷却媒体は、熱交換器8bを凝縮器として第二冷却系の室内空調用循環路6dを流れる第二冷却媒体に放熱して温めた後、熱交換器8aとラジエータ3を凝縮器として通過した後、圧縮機7へ戻る。熱交換器8aでは第二冷却系の冷却対象冷却用循環路6cを流れる第二冷却媒体と熱交換(放熱)する。つまり、モータ1やインバータ装置2を冷却した熱を熱交換器8aで第一冷却系の第一冷却媒体に放熱しているので、モータ1やインバータ装置2の発熱を室内空調の暖房に利用することになる。これにより、暖房に必要な動力を低減することができる。
【0087】
この第8の実施の形態によれば、冷却対象機器の冷却と、車室内の冷房と、車室内の暖房のすべてを1つのシステムで実現することができる。さらに暖房運転時には、モータ1やインバータ装置2で発生した熱を暖房に利用することができるため、より効率の高い暖房運転が可能となる。
【0088】
なお、図25および図26に示す第8の実施の形態の冷却対象冷却用循環路6cにおいて、モータ1とポンプ5aとの間に図24に示すラジエータ14とファン15を設置し、第一冷却系の不具合時のバックアップを図るようにしてもよい。
【0089】
《発明の第9の実施の形態》
図27は第9の実施の形態の電動車両用冷却システムの構成を示す。なお、上述した各実施の形態の冷却システムを構成する機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図27では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第9の実施の形態では、図25および図26に示す第8の実施の形態に対して流路切り替え用三方弁12を追加し、モータ1やインバータ装置2の冷却能力を高める。すなわち、より高い冷却能力を得たい場合には、流路切り替え用三方弁12を図28に示すように設定し、第二冷却系の冷却対象冷却用循環路6cを流れる第二冷却媒体を2つの熱交換器8aと8bへ順に流して冷却する。図28において、実線で示す経路は冷却媒体が流れている経路、破線で示す経路は冷却媒体が流れていない経路である。
【0090】
この第9の実施の形態によれば、車室内の冷房は不可能となるが、冷却対象をより高い冷却能力で冷却することができる。車室内の冷房と両立させたい場合には、バイパス切り替え用三方弁11の代りに流量調節弁を2個設置し、室内空調用の熱交換器3aに流れる第二冷却媒体の流量を調節すればよい。
【0091】
なお、図27および図28に示す第9の実施の形態の冷却対象冷却用循環路6cにおいて、モータ1とポンプ5aとの間に図24に示すラジエータ14とファン15を設置し、第一冷却系の不具合時のバックアップを図るようにしてもよい。
【0092】
《発明の第10の実施の形態》
図29は第10の実施の形態の電動車両冷却システムの構成を示す。なお、上述した各実施の形態の冷却システムを構成する機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して相違点を中心に説明するとともに、図29では上述したファン駆動装置21、ポンプ駆動装置22、制御装置23および制御装置23に接続される車速センサ24やアクセルセンサ25などの機器の図示と説明を省略する。この第10の実施の形態では、図25および図26に示す第8の実施の形態に対して流路切り替え用三方弁12を追加し、モータ1とインバータ装置2を並列に冷却することによって冷却能力を高める。
【0093】
すなわち、より高い冷却能力を得たい場合には、流路切り替え用三方弁12を図30に示すように設定し、モータ1をポンプ5bにより圧送され熱交換器8bで冷却された第二冷却媒体を用いて冷却するとともに、インバータ装置2をポンプ5aにより圧送され熱交換器8aで冷却された第二冷却媒体を用いて冷却する。図30において、実線で示す経路は冷却媒体が流れている経路、破線で示す経路は冷却媒体が流れていない経路である。これにより、車室内の冷房は不可能となるが、冷却対象はより高い冷却能力で冷却することができる。
【0094】
《第11の実施の形態》
上述した一実施の形態の電動車両用冷却システムを実際に電動車両に搭載した第11の実施の形態を説明する。この第11の実施の形態では、図21に示す第一冷却系と第二冷却系を備えた第6の実施の形態の電動車両用冷却システムを搭載した例を示すが、上述した第1〜第5、第7〜第10の実施の形態の電動車両用冷却システムのいずれも同様に電動車両に搭載することができる。
【0095】
図31は冷却システムを搭載した電動車両の前部を横から見た図であり、図32は同じ電動車両の前部を上から見た図である。なお、図21に示す機器と同様な機器に対しては同一の符号を付して説明する。図31および図32において、同図紙面右側が車両の進行方向であり、電動車両の電気駆動システムは車両の前部に搭載される。この実施の形態は前輪駆動方式の電動車両を例に挙げて説明するが、後輪駆動方式や4輪駆動方式の電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両にも上述した一実施の形態の電動車両用冷却システムを搭載することができる。
【0096】
この電動車両の電気駆動システムは、駆動エネルギーを蓄える蓄電装置51、蓄電装置51からモータ1への電力を制御するインバータ装置2、インバータ装置2からの電力を受けて回転トルクを発生するモータ1、モータ1のトルクを増幅する減速機52、減速機52の出力トルクを車輪へ伝達するドライブシャフト53、運転者の操作状態や冷却システムの状態に応じてモータ1の目標トルクや、冷却システムの運転状態を制御する制御装置23、インバータ装置2やモータ1を冷却する冷却システム50から構成される。以下では、モータ1、インバータ装置2、減速機52を特に駆動部品と呼ぶ。
【0097】
冷却システム50は、冷凍サイクルの第一冷却系と水冷の第二冷却系から構成される(図21参照)。冷凍サイクルの第一冷却系は、圧縮機7、ラジエータ(室外熱交換器)3、調節器(膨張弁)9、熱交換器8、冷媒循環路6aを備えている。ラジエータ3にはファン4が付設され、車両前方からの空気をラジエータ3へ送風する。この冷却風の流量は制御装置23によりファン4の回転速度を制御して調節される。一方、水冷の第二冷却系は、ポンプ5、熱交換器8、室内熱交換器54、整流板55、三方弁56,57、冷媒循環路(水冷配管)6bを備えている。室内熱交換器54にはファン58が付設され、車室内の空気を室内熱交換器54に送風して車室内の空調を行う。この風量は制御装置23によりファン58の回転速度を制御して調節される。
【0098】
図31および図32には図示を省略するが、この電動車両の冷却システム50では温度センサなどで検出された駆動部品および冷却媒体の温度が計測される。制御装置23は、駆動部品および冷却媒体の温度と電気駆動システムの構成部品の運転状態に基づいて圧縮機7、ファン4,58、ポンプ5、三方弁56,57を制御し、第一冷却系と第二冷却系の冷却媒体温度を制御する。
【0099】
この電動車両の冷却システム50では、圧縮機7、調節器(膨張弁)9、ラジエータ3および熱交換器8を連通する第一冷却系の冷媒循環路6aに代替フロンなどの冷凍サイクルに適した冷媒を流通し、この冷媒は圧縮機7を動力源とする冷凍サイクルによって冷却される。一方、熱交換器8、三方弁56,57、インバータ装置2、モータ1、ポンプ5を連通する第二冷却系の冷媒循環路6bには不凍液などの冷却水を流通し、インバータ装置2、モータ1などの駆動部品や室内を冷却する。なお、蓄電装置51を第二冷却系の冷却媒体により同時に冷却を行ってもよい。第二冷却系の冷媒循環路6bの冷却媒体(冷却水など)は熱交換器8を通過し、この熱交換器8において第一冷却系の冷媒循環路6aを流れる冷却媒体と熱交換(放熱)を行い冷却される。また、車室内を冷房(場合によっては暖房)するための空気は、室内熱交換器54を介してファン58により図31の破線矢印で示す方向へ送風し、車室内の温度を調節する。
【0100】
冷却システム50では、制御装置23により圧縮機7、ファン4,58、ポンプ5、三方弁56,57の動作を制御し、第一冷却系と第二冷却系の冷却媒体の温度を任意に変化させることができる。例えば、インバータ装置2とモータ1の負荷が高く駆動部品の温度が上昇した場合や、走行道路前方において駆動部品の温度上昇が予め予測される場合には冷却システム50の駆動出力を増大し、冷却媒体の温度を下げることができる。一般に、インバータ装置2はモータ1よりも熱容量が小さく、駆動負荷の増大に対して温度上昇が速いため、モータ1よりも低い冷却媒体温度と高い冷却応答性が必要とされる。したがって、熱交換器8から流出した冷却媒体が最初にインバータ装置2へ流入し、その後でモータ1へ流入するように第二冷却系を構成するのが望ましい。
【0101】
モータ1の駆動トルクによる振動や変位が車両骨格(車体フレーム)61に伝わらないようにするために、モータ1は車両骨格61に対して弾性体の支持部材(ゴムマウント)62と剛体のサブフレーム63を介して搭載される。モータ1はサブフレーム63に対しては剛に締結される。サブフレーム63には、モータ1の他にインバータ装置2、圧縮機7、調節器(膨張弁)9、ラジエータ(室外熱交換器)3、ファン4、室内熱交換器54、ポンプ5、三方弁56,57、熱交換器8などの冷却機器が剛に設置される。冷却システム50の構成部品(調節器9、圧縮機7、ポンプ5,三方弁56,57、熱交換器8,ラジエータ3、ファン4など)、インバータ装置2およびモータ1は、第一冷却系の冷媒循環路6aと第二冷却系の冷媒循環路6bによって互いに接続される。ここで、第一冷却系の冷媒循環路6aと第二冷却系の冷媒循環路6bは構成部品を一体構造とすれば省略できる。例えば、インバータ装置2とモータ1を一体ハウジングで構成すれば、第二冷却系の冷媒循環路6bをハウジング内の流路で代替でき、流路長をさらに短縮できる。
【0102】
一般的な車両のラジエータのように、冷却システム50のラジエータ3を車体先端のバンパー付近に設置する場合には、ラジエータ3と駆動部品(インバータ装置2およびモータ1)との接続にゴムホースなどの弾性体の配管を使用する必要がある。これは、駆動トルクに起因するモータ1と車体骨格61の相対変位を弾性体によって吸収するためである。このようにラジエータ3と駆動部品とを弾性体の配管を介して接続する場合には、互いの相対変位を吸収するために弾性体の比較的長い配管を介して接続しなければならない。そのため、ラジエータ3で冷却された冷媒が熱交換器8に到達して第二冷却系の冷却媒体を冷却し、温度が低下した第二冷却系の冷却媒体がインバータ装置2とモータ1に到達するまでには比較的長い時間がかかる。
【0103】
この実施の形態の冷却システム50では、車体骨格61に弾性支持されたサブフレーム63上にインバータ装置2、モータ1および冷却システム50を設置するようにしたので、モータ1の駆動トルクによる車体骨格61との相対変位を考慮する必要がなく、第一冷却系の冷媒循環路6aと第二冷却系の冷媒循環路6bの配管の長さを比較的短くする(あるいは省略する)ことが可能である。したがって、ラジエータ3で冷却された冷却媒体を短時間の内にインバータ装置2とモータ1へ到達させることができる上に、冷却媒体の容積と熱容量を低減できるため冷却媒体の温度を速やかに変えることができ、冷却応答性に優れた電動車両の冷却システム50を提供できる。
【0104】
また、この一実施の形態では、熱交換器8がラジエータ3とインバータ装置2との間に配設される。すなわち、図31,図32に示すように、ラジエータ3とインバータ装置2との間の最長距離を示す区間Lに対して、区間Lの領域に少なくともの熱交換器8の一部が配設される。これにより、熱交換器8が区間Lの外に配置されるのと比較して配管の長さを短くでき、ラジエータ3と熱交換器8で冷却された冷却媒体を短時間の内にインバータ装置2とモータ1へ圧送できる。
【0105】
図32に示す熱交換器8、ラジエータ3およびインバータ装置2の位置関係において、熱交換器8がラジエータ3とインバータ装置2との間の位置に配設されているため余分な配管長さを削減でき、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。
【0106】
また、ラジエータ3の冷媒出口は冷媒入口よりも熱交換器8の近くに配置される。これにより、冷媒出口が冷媒入口よりも熱交換器8から遠くに配置される場合と比較して、ラジエータ3で冷却された冷却媒体を比較的短時間で熱交換器8の冷媒入口へ到達させることができ、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。同様に、熱交換器8の冷媒出口は冷媒入口よりもインバータ装置2の近くに配置される。これにより、冷媒出口がインバータ装置2の冷媒入口から遠くに配置される場合と比較して、熱交換器8で冷却された冷却媒体を短時間でインバータ装置2へ到達させることができ、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。
【0107】
ラジエータ3は、電動車両の前進方向(図31の紙面右方向)に対して、駆動部品(インバータ装置2またはモータ1)よりも車両後方に配置される。これにより、可動式の導風板55を図31の実線で示す位置に制御すれば、駆動部品を冷却するときに放出されるラジエータ3の廃熱を図1に破線矢印で示す方向に沿って車室内へ導くことができる。特に、駆動部品の冷却性能を強化するために冷却媒体の温度を比較的低く制御する場合には、室内熱交換器54による車室内の暖房機能を代替したり、あるいは補うことができる。
【0108】
次に、この一実施の形態の冷却動作を説明する。冷房動作中には、第一冷却系の冷媒循環路6aの冷却媒体は、圧縮機7により図31に矢印で示す方向に流通する。冷却媒体は圧縮機7で高温・高圧のガスに圧縮され、次にラジエータ(室外熱交換器)3で空気中に熱を放出して凝縮し、高圧の液体となる。さらに、冷却媒体は調節器(膨張弁)9により減圧され、低圧・低温の冷媒(液とガスの二層冷媒)となる。その後、冷却媒体は第二冷却系の冷媒循環路6bを流通する冷却媒体(例えば冷却水)と熱交換器8を介して熱交換する。制御装置23は、圧縮機7を駆動制御して冷却媒体の温度と流量を調節する。
【0109】
熱交換器8で冷却された第二冷却系の冷却媒体はポンプ5により冷媒循環路6bを圧送され、冷却媒体の一部は室内熱交換器54を通過して室内の空気を冷却する。室内を冷却した冷却媒体はインバータ装置2とモータ1へ導かれる。三方弁56により室内熱交換器54への流路が遮断された場合には、熱交換器8を流出した冷却媒体が直接、インバータ装置2とモータ1へ圧送される。第二冷却系の冷却媒体はインバータ装置2とモータ1の熱を吸収して温度が上昇し、ポンプ5を介して熱交換器8へ戻る。制御装置23は、ポンプ5とファン4を駆動制御するとともに、三方弁56,57の流路を切り替えて第二冷却系の冷却媒体の温度と流量を調節する。
【0110】
例えば、インバータ装置2またはモータ1の温度が短時間に上昇する恐れがある場合や、温度が許容範囲を超える場合には、三方弁56により室内熱交換器54への冷却媒体の流通を遮断し、インバータ装置2またはモータ1へ冷却媒体を直接流入させる。すなわち、室内熱交換機54によって冷却媒体の温度が上昇するのを防ぎながら、熱交換器8からインバータ装置2およびモータ1への冷媒流路を短くする。これにより、短時間でインバータ装置2とモータ1へ流入する冷却媒体の温度を下げることができ、冷却応答性に優れた冷却システム50を提供できる。
【0111】
また、インバータ装置2の温度が許容範囲内であれば、インバータ装置2から流出する冷却媒体を、三方弁57を介してモータ1へ流入させ、モータ1を冷却する。しかし、インバータ装置2の温度が許容範囲を超える場合や、短時間に上昇する恐れがある場合には、三方弁57の流路を切り替えてモータ1への流入を遮断し、ポンプ5へ帰還させる。インバータ装置2の負荷が低減すれば、モータ1へも冷却冷媒が流れるように三方弁57を制御する。これにより、温度上昇が比較的緩やかなモータ1の冷却は一時的に休止されるが
、温度上昇が比較的急なインバータ装置2の温度上昇を速やかに抑えることができ、冷却応答性に優れた冷却システムを提供できる。
【0112】
さらに、冷却媒体の温度を下げると同時に、室内温度を上昇させる必要がある場合には、三方弁56を制御して冷却媒体が室内熱交換器54へ循環しないようにする。同時に、可動式の整流板55を図1に実線で示す位置に制御し、ラジエータ3から放出される熱を室内へ導く。このように、ラジエータ3がインバータ装置2とモータ1に一体配置されることによって、ラジエータ3と室内との距離が比較的近くなり、冷却媒体が低温の場合においてもラジエータ3の廃熱によって室内を暖めることができる。
【0113】
なお、上述した実施の形態とそれらの変形例において、実施の形態どうし、または実施の形態と変形例とのあらゆる組み合わせが可能である。
【0114】
上述した実施の形態とその変形例によれば以下のような作用効果を奏することができる。まず、車両を電動駆動するモータ1およびインバータ装置2に冷却媒体を循環させる冷媒循環路6と、冷却媒体と外気との間で熱交換を行うラジエータ3と、冷媒循環路6を通してラジエータ3とモータ1およびインバータ装置2との間で冷却媒体を循環させるポンプ5と、ラジエータ3に送風するファン4と、ポンプ5とファン4を制御してモータ1およびインバータ装置2の冷却を制御する制御装置23とを備え、制御装置23によって、モータ1およびインバータ装置2による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、ポンプ5とファン4を第一冷却モードで制御し、モータ1およびインバータ装置2による車両の駆動力が第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、ポンプ5とファン4を第一冷却モードよりも冷却能力が高い第二冷却モードで制御するようにしたので、モータ1やインバータ装置2の体格(サイズ、大きさ)を過剰に大きくすることなく、従来と同等な駆動力を得ながら、モータ1とインバータ装置2の体格を小さくすることができる。その上さらに、高い駆動力を必要とするときのみ、冷却能力を上げるので、ポンプ5およびファン4の消費電力を低減でき、電動車両全体の運転効率を向上させることができる。
【0115】
上述した実施の形態とその変形例によれば、第一冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第一作動領域における車両の駆動力を連続して発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力とし、また第二冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第二作動領域における車両の駆動力を短時間に発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力としたので、第一作動領域におけるモータ1の連続定格トルクおよび連続定格出力を基準にしてモータ1およびインバータ装置2の体格を決定することができ、従来の第二作動領域におけるモータ1の最大トルクおよび最大出力を基準にしたモータ1およびインバータ装置2の体格に比べ、モータ1およびインバータ装置2の小型化を図りながら、第二作動領域におけるモータ1の短時間最大トルクおよび短時間最高出力を得ることができる。したがって、従来よりも小さな体格のモータ1およびインバータ装置2を用いて、車両の定常走行時にはモータ1から小さなトルクと出力を連続的に発生させ、車両の発進時、加速時、登坂時などにはモータ1から大きなトルクと出力を短時間に発生させることができる。
【0116】
上述した実施の形態とその変形例によれば、車速を検出する車速センサ24と、アクセルペダル操作量を検出するアクセルセンサ25とを備え、車速センサ24により検出された車速とアクセルセンサ25により検出されたアクセルペダル操作量に基づいて車両の駆動力を求め、車両の駆動力に応じたモータ1およびインバータ装置2のトルクと回転速度の動作点が第一作動領域と第二作動領域のいずれにあるかによって、第一冷却モードまたは第二冷却モードを選択するようにしたので、走行中のモータ1のトルクおよび出力に応じた冷却モードを正確に選択することができ、モータ1およびインバータ装置2を適切に冷却することができる。
【0117】
上述した実施の形態とその変形例によれば、第一冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第一作動領域における車両の駆動力を連続して発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力とし、また第二冷却モードの冷却能力を、モータ1およびインバータ装置2により第二作動領域における車両の駆動力を短時間に発生させたときに、モータ1およびインバータ装置2の温度を上限温度以下に保つ冷却能力としている。また、第二冷却モードによる冷却能力を発揮させる際、モータ1の回転速度が低い領域での冷却能力を引き上げることとしたので、モータ1の回転速度が低い領域において、より高いモータ出力を得ることができる。
【0118】
上述した実施の形態とその変形例によれば、モータ1の運転効率が高い領域を、モータ1の高回転速度領域に設定した。これにより、高車速領域でのモータ1の発熱量が低減されるので、モータ1の高回転速度領域において、より高いモータ出力を得ることができる。変速比が固定の場合、その固定の変速比を適当な設定値に設定することにより、車両の最高車速の1/2よりも大きな高車速側において車両の最大駆動力を引き上げることができる。
【0119】
上述した実施の形態とその変形例によれば、モータ1の運転効率の最高効率点におけるトルクが、その最高効率点における回転速度に対するモータ1の最大トルクの50〜75%の範囲に含まれる。これにより、モータ1の発熱量が増加し過ぎず、かつ走行抵抗が考慮された適切な冷却能力を有することができる。
【0120】
上述した実施の形態とその変形例によれば、目的地までの経路、車両の現在地および道路情報を取得するナビゲーション装置28を備え、目的地までの経路の道路情報に基づいて経路上の道路におけるモータ1およびインバータ装置2の動作点を予測し、予測結果に基づいて現在地から所定距離前方に第二作動領域の道路がある場合には、現在地におけるモータ1およびインバータ装置2の動作点が第一作動領域にあっても第一冷却モードから第二冷却モードへ切り換えるようにしたので、第二作動領域の道路区間におけるモータ1およびインバータ装置2の温度上昇を上限温度よりも低い温度に抑制することができる。換言すれば、上限温度に到達するまでに余裕ができ、第二作動領域のトルクと出力の短時間定格をさらに大きな値に設定することができる。
【0121】
上述した実施の形態とその変形例によれば、乗員が第一冷却モードと第二の冷却モードを手動で切り換えるための手動切り替えスイッチ29を備え、手動切り替えスイッチ29により第二冷却モードが選択された場合には、モータ1およびインバータ装置2の動作点が第一作動領域にあっても第一冷却モードから第二冷却モードへ切り換えるようにしたので、車両の運転者が運転嗜好や運転時の気候条件および走行条件などにより冷却能力を高めたいと考えた場合には、運転者の意志を優先して冷却能力の高い第二冷却モードで冷却を行うことができ、冷却モードの自動選択機能に対して手動選択機能を効果的に組み入れることができる。
【0122】
上述した実施の形態とその変形例によれば、外気温を検出する外気温センサ31を備え、検出された外気温が高いほど、第一作動領域を狭くし第二作動領域を広くするようにしたので、外気温が高くなるほど第二作動領域へ切り換わり易くなり、外気温上昇にともなう冷却能力の低下を補償することができる。
【0123】
上述した実施の形態とその変形例によれば、車両の駆動力を得るためにモータ1およびインバータ装置2で発生する損失と、この損失にともなう発熱量を冷却するためのポンプ5およびファン4の消費電力との和が最小となるモータ1の目標温度を求め、モータ1の温度が目標温度となるようにポンプ5とファン4を制御するようにしたので、モータ1の効率のみならず、冷却するために消費するポンプ5とファン4自体の消費電力を考慮した総合効率が最も高くなるモータ温度でモータ1、インバータ装置2、ファン4およびポンプ5を運転することができ、省エネ運転を実現できる。
【0124】
上述した実施の形態とその変形例によれば、車両の運転者を識別する運転者識別装置30と、運転者ごとの運転履歴を記憶するメモリ23mとを備え、メモリ23mから運転者の運転履歴を読み出して運転傾向を判別し、判別結果の運転傾向に応じて第一作動領域と第二作動領域の境界を変更するようにしたので、平均的な運転者とモータ動作点が同じであっても、より加速を求める運転者に対しては冷却能力が高い第二冷却モードの範囲が拡大されることになり、運転者の運転特性に合ったモータ1およびインバータ装置2の冷却能力で冷却を行うことができる。
【0125】
上述した実施の形態とその変形例によれば、ラジエータ3の代わりに、冷媒循環路6bと異なる別冷媒循環路6aを有し、別冷媒循環路6aに冷却冷媒を圧縮する圧縮機7と、圧縮後の冷却冷媒を外気に放熱して凝縮するラジエータ3と、凝縮後の冷却冷媒の圧力を下げる調節弁9と、冷却冷媒を気化させて冷媒循環路6bの冷却冷媒から吸熱する熱交換器8とを備えたので、冷媒循環路6bを流れる冷却媒体の温度を空気温度より低くすることができ、より冷却能力を高くすることができる。
【0126】
上述した実施の形態とその変形例によれば、冷媒循環路6の上流側にインバータ装置2を配設し、下流側にモータ1を配設するようにしたので、モータ1とインバータ装置2の熱時定数を考慮した最適な冷却システムを構成することができる。
【符号の説明】
【0127】
1;モータ、2;インバータ装置、3;ラジエータ、4;ファン、5;ポンプ、7;圧縮機、8;熱交換器、9;調節弁、23;制御装置、23c;CPU、23m;メモリ、24;車速センサ、25;アクセルセンサ、28;ナビゲーション装置、29;手動切り替えスイッチ、30;運転者識別装置、31;外気温センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を電動駆動する電動駆動手段を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段を制御して前記電動駆動手段の冷却を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電動駆動手段による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、第一冷却能力となる第一冷却モードで前記冷却手段を制御し、前記電動駆動手段による前記車両の駆動力が前記第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、前記第一冷却能力よりも高い第二冷却能力となる第二冷却モードで前記冷却手段を制御するとともに、
前記第二冷却モードにおいて、前記制御手段は、前記電動駆動手段の回転速度が低いほど前記第二冷却能力が高くなるように、前記冷却手段を制御することを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度は、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くしたことを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度が、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くなるように、前記車両の変速比を規定したことを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記車両の速度は、前記車両の最高速度の1/2よりも高いことを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記電動駆動手段のトルクは、前記最高運転効率点が得られる前記回転速度に対応して前記電動駆動手段が発揮できる最大トルクの50〜75%の範囲に含まれることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項1】
車両を電動駆動する電動駆動手段を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段を制御して前記電動駆動手段の冷却を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記電動駆動手段による車両の駆動力が第一作動領域にある場合は、第一冷却能力となる第一冷却モードで前記冷却手段を制御し、前記電動駆動手段による前記車両の駆動力が前記第一作動領域よりも高い第二作動領域にある場合には、前記第一冷却能力よりも高い第二冷却能力となる第二冷却モードで前記冷却手段を制御するとともに、
前記第二冷却モードにおいて、前記制御手段は、前記電動駆動手段の回転速度が低いほど前記第二冷却能力が高くなるように、前記冷却手段を制御することを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度は、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くしたことを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点が得られる前記回転速度が、前記第二冷却能力の最大値を与える前記回転速度よりも高くなるように、前記車両の変速比を規定したことを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記車両の速度は、前記車両の最高速度の1/2よりも高いことを特徴とする電動車両の冷却システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電動車両の冷却システムにおいて、
前記電動駆動手段の最高運転効率点に対応する前記電動駆動手段のトルクは、前記最高運転効率点が得られる前記回転速度に対応して前記電動駆動手段が発揮できる最大トルクの50〜75%の範囲に含まれることを特徴とする電動車両の冷却システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2011−130642(P2011−130642A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289592(P2009−289592)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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