説明

電動車両用電源の電源管理装置

【課題】車両の走行状態に応じて複合電源を効果的に充放電させることができる電動車両用電源の電源管理装置を提供すること。
【解決手段】電源管理装置10は、二次電池12及びキャパシタ13と、二次電池12及びキャパシタ13の充放電を制御する充放電制御装置16と、車両の走行位置及び走行経路を検出するナビゲーション装置17と、検出された走行経路の履歴を記憶する走行経路履歴記憶手段18と、二次電池12及びキャパシタ13の充放電量を算出する充放電量算出手段19と、算出された充放電量の履歴を記憶する充放電量履歴記憶手段20と、二次電池12及びキャパシタ13に蓄電された電力の残容量を算出する残容量算出手段21とを備え、残容量算出手段21は、走行経路の履歴と充放電量の履歴とを重ね合わせることによって走行経路上の各位置における残容量を算出し、充放電制御装置16は、算出された残容量に基づいて充放電を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両に用いられる電源を管理する電動車両用電源の電源管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に用いられる電源を管理する技術として、様々なものが提案されている。
例えば、特許文献1には、ナビゲーションシステムとエネルギー管理とを密に統合する技術であって、ナビゲーションシステムにより現在の車両位置を連続的に監視し、ドライバーの要求を予想しつつエネルギー管理を行う技術が開示されている。具体的には、GPSと地図ナビゲーションシステムが、時間・場所・交通情報・道路状態・地形情報を入力情報として受けとる。そして、これらの情報から車両の発進、停止、加速及び減速等を予測し、この予測に基づいてバッテリを最適に制御するようになっている。
【0003】
また、特許文献2には、電動車両において、長時間の放電が可能な大容量蓄電装置(二次電池)と、充放電量の変動に即応可能な大出力蓄電装置(キャパシタ)とを組み合わせた複合電源を用いることにより、加速性能や回生能力の向上、航続距離の確保等を可能にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−47110号公報
【特許文献2】特開平5−30608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1には、バッテリとキャパシタとの組み合わせによる複合電源を用いた電動車両への適用についてはなんら開示されていないため、特許文献1の技術をそのまま複合電源を用いた電動車両に適合することができない。
また、上記特許文献2に開示された技術によると、車両が長時間停止した場合には、キャパシタに電力が残ったままの状態であるため、キャパシタの自己放電の影響により消費電力が増加してしまう。さらに、走行中においても、キャパシタの蓄電残容量が走行状態に応じた適正な値でない場合には、例えばキャパシタの残容量不足で加速時に加速不良が生じたり、例えばキャパシタの空容量不足で減速時に回生能力を有効活用できなかったりするおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、車両の走行状態に応じて複合電源を効果的に充放電させることができる電動車両用電源の電源管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置は、長時間の放電が可能な大容量蓄電装置と、充放電量の変動に即応可能な大出力蓄電装置と、前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置の充放電を制御する充放電制御装置とを備えた電動車両用電源の電源管理装置において、車両の走行位置及び走行経路を検出するナビゲーション装置と、前記ナビゲーション装置により検出された前記走行経路の履歴を記憶する走行経路履歴記憶手段と、前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置の充放電
量を算出する充放電量算出手段と、前記充放電量算出手段により算出された充放電量の履歴を記憶する充放電量履歴記憶手段と、前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置に蓄電された電力の残容量を算出する残容量算出手段とを備え、前記残容量算出手段は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路の履歴と、前記充放電量履歴記憶手段により記憶された充放電量の履歴とを重ね合わせることによって、前記走行経路上の各位置における前記残容量を算出し、前記充放電制御装置は、前記残容量算出手段により算出された前記残容量に基づいて、前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置の充放電量を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置では、残容量算出手段によって、走行履歴記憶手段により記憶された走行経路の履歴と、充放電量履歴記憶手段により記憶された充放電量の履歴とが重ね合わせられ、走行経路上の各位置における大容量蓄電装置及び大出力蓄電装置の電力の残容量が算出される。そして、充放電制御装置により、残容量算出手段によって算出された大容量蓄電装置及び大出力蓄電装置の残容量に基づき、大容量蓄電装置及び大出力蓄電装置の充放電が制御される。こうした態様により、車両の走行経路上における走行状態(例えば車両の加速、減速、停止等)と各走行状態で行われる充放電状態とを、走行経路履歴及び充放電量履歴からあらかじめ予測しつつ、この予測に基づいて走行状態に応じた効果的な充放電を行うことができる。
【0009】
本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置において、前記走行経路履歴記憶手段及び前記充放電量履歴記憶手段は、同じ曜日でかつ複数日分の履歴を記憶しており、前記残容量算出手段は、同じ曜日でかつ複数日分の平均値を前記残容量として算出することが望ましい。
【0010】
このように、残容量算出手段によって同じ曜日でかつ複数日分の平均値を大容量蓄電装置及び大出力蓄電装置の残容量として算出することにより、算出される残容量の精度を高めることができる。その結果、大容量蓄電装置及び大出力蓄電装置の充放電の制御を、より確実かつ効果的に行うことができる。
【0011】
本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置において、前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に複数日分の停車位置の重なりがある場合、車両が前記停車位置に到達したときに、前記大出力蓄電装置から前記大容量蓄電装置に電力を移動させることが望ましい。
【0012】
このように、複数日分の重なりがある停車位置に車両が到達したときに、充放電制御装置によって大出力蓄電装置から大容量蓄電装置に電力を移動させることにより、車両の長時間停止時に大出力蓄電装置に電力を残さないようにすることができる。これにより、大出力蓄電装置の自己放電の影響で消費電力が増加するのを防止することができる。
【0013】
本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置において、前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に所定消費電力又は所定消費電力量を超える消費区域がある場合、車両が前記消費区域に到達する前に、前記大容量蓄電装置から前記大出力蓄電装置に電力を移動させることが望ましい。
【0014】
このように、所定消費電力又は所定消費電力量を超える消費区域(例えば急な上り坂等)に車両が到達する前に、充放電制御装置によって大容量蓄電装置から大出力蓄電装置に電力を移動させることにより、あらかじめ大出力蓄電装置に必要な電力を確保することができる。これにより、車両が所定消費電力又は所定消費電力量を超える消費区域に到達したときに、大出力蓄電装置の電力を速やかに放電させて加速不良等を防止することができる。
【0015】
本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置において、前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に複数日分の停車位置の重なりがある場合、車両が前記停車位置に到達する前に、前記大出力蓄電装置の電力を消費させて前記大出力蓄電装置の残容量を所定値以下にすることが望ましい。
【0016】
このように、複数日分の重なりがある停車位置に車両が到達する前に、あらかじめ充放電制御装置によって大出力蓄電装置の電力を消費させて、大出力蓄電装置の残容量を所定値以下にすることにより、車両停止時における大出力蓄電装置の電力の残容量を少なくすることができる。その結果、大出力蓄電装置の自己放電の影響で消費電力が増加するのをより効果的に防止することができる。
【0017】
本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置において、前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に所定回生電力又は所定回生電力量を超える回生区域がある場合、車両が前記回生区域に到達する前に、前記大出力蓄電装置の電力を消費して前記大出力蓄電装置の残容量を所定値以下にすることが望ましい。
【0018】
このように、所定回生電力又は所定回生電力量を超える回生区域(例えば急な下り坂等)に車両が到達する前に、充放電制御装置によって大出力蓄電装置の電力を消費させて、大出力蓄電装置の残容量を所定値以下にすることにより、あらかじめ大出力蓄電装置に必要な空き容量を確保することができる。これにより、車両が所定回生電力又は所定回生電力量を超える回生区域に到達したときに、大出力蓄電装置に確実に回生電力を充電させて回生電力を有効に活用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置によれば、上記した通り、車両の走行状態に応じて複合電源を効果的に充放電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る電源管理装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】同電源管理装置を備えた電動車両の複数日分の走行の一例を示す図である。
【図3】図2に示す走行の一部において走行経路履歴と充放電量履歴と重ね合わせたものを示す図である。
【図4】車両停止に伴う電力移動の様子を示すフローチャートである。
【図5】消費電力増加に伴う電力移動の様子を示すフローチャートである。
【図6】所定消費電力超過区域を示す説明図である。
【図7】回生電力増加に伴う電力移動の様子を示すフローチャートである。
【図8】所定回生電力超過区域を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る電動車両用電源の電源管理装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る電源管理装置の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電源管理装置の全体構成を示す概略図である。
【0022】
電源管理装置10は、図1に示すように、車両を駆動するためのモータ11と、長時間の放電が可能な二次電池12と、充放電量の変動に即応可能なキャパシタ13と、二次電池12とキャパシタ13との間で行われる電力の移動を調節する双方向昇降圧コンバータ14と、二次電池12とモータ11との間で行われる電力の移動を制御するインバータ15と、二次電池12及びキャパシタ13の充電量及び放電量を制御する充放電制御装置16と、車両の走行位置及び走行経路を検出するナビゲーション装置17と、ナビゲーション装置17により検出された走行経路の履歴を記憶する走行経路履歴記憶手段18と、モータ11と二次電池12及びキャパシタ13との間で行われる充放電量を算出する充放電量算出手段19と、充放電量算出手段19により算出された充放電量の履歴を記憶する充放電量履歴記憶手段20と、二次電池12及びキャパシタ13に蓄電された電力の残容量を算出する残容量算出手段21とを備えている。
【0023】
モータ11は、図示しない車両の駆動輪と連結されており、車両の走行状態に応じて二次電池12及びキャパシタ13から電力の供給を受けたり、二次電池12及びキャパシタ13へ回生電力を供給したりするようになっている。なお、本実施形態では、モータ11として交流モータを採用しているが、直流モータを採用することもできる。この場合には、インバータ15を省略することができる。
【0024】
二次電池12としては、例えばリチウムイオン電池を採用することができる。この二次電池12には、二次電池12の端子間電圧V1を検出するための電圧計と、二次電池12の充放電時に流れる電流I1を検出するための電流計とが設けられている。なお、本実施形態の二次電池12が、本発明の「大容量蓄電装置」に相当する。
【0025】
キャパシタ13には、キャパシタ13の端子間電圧V2を検出するための電圧計と、キャパシタ13の充放電時に流れる電流I2を検出するための電流計とが設けられている。なお、本実施形態のキャパシタ13が、本発明の「大出力蓄電装置」に相当する。
【0026】
充放電制御装置16は、周知の中央処理装置(CPU)、読み出し書き換えメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)等を含み構成されている。この充放電制御装置16は、双方向昇降圧コンバータ14、インバータ15、ナビゲーション装置17、走行経路履歴記憶手段18、充放電量算出手段19、充放電量履歴記憶手段20及び残容量算出手段21に接続されており、各種信号を受信して信号の処理等を行い、後述する制御の信号を双方向昇降圧コンバータ14及びインバータ15に送信することにより、二次電池12及びキャパシタ13の充放電を制御するようになっている。また、充放電制御装置16は、図示しないアクセルセンサにより検出されるアクセル開度と、図示しないブレーキスイッチにより検出されたブレーキ踏力と、図示しない車速センサにより検出された車速とを受信することにより、現在の車両の走行状態を検出できるようなっている。
【0027】
ナビゲーション装置17は、現在の車両の走行位置及び走行経路を検出するものであり、周知のGPS機能等を備えている。そして、ナビゲーション装置17は、検出した車両の走行位置及び走行経路を、充放電制御装置16に送信するようになっている。
【0028】
走行経路履歴記憶手段18は、読み出し書き換えメモリ(RAM)等の記憶素子を備えており、ナビゲーション装置17から送信される車両の走行経路の履歴を記憶するとともに、記憶した車両の走行経路の履歴を充放電制御装置16及び残容量算出手段21に送信するようになっている。
【0029】
充放電量算出手段19は、二次電池12及びキャパシタ13にそれぞれ設けられた電圧計の電圧値V1,V2と、二次電池12及びキャパシタ13にそれぞれ設けられた電流計の電流値I1,I2とを入力情報として受け取り、各電圧値V1,V2及び各電流値I1,I2から、モータ11と二次電池12及びキャパシタ13との間で行われる充放電量を算出するようになっている。
【0030】
充放電量履歴記憶手段20は、読み出し書き換えメモリ(RAM)等の記憶素子を含み構成されており、充放電量算出手段19から送信される二次電池12及びキャパシタ13の充放電量の履歴を記憶するとともに、記憶した充放電量の履歴を充放電制御装置16及び残容量算出手段21に送信するようになっている。
【0031】
残容量算出手段21は、走行経路履歴記憶手段18により記憶された走行経路の履歴と、充放電量履歴記憶手段20により記憶された充放電量の履歴とを重ね合わせることによって、走行経路上の各位置における二次電池12及びキャパシタ13に蓄えられた電力の残容量を算出するものである。この残容量算出手段21は、二次電池12に蓄えられた電力の残容量と、キャパシタ13に蓄えられた電力の残容量とを、別々に算出するようになっている。例えば、残容量算出手段21は、車両の走行開始前に二次電池12及びキャパシタ13に残存する電力量を基準とし、記憶された走行経路上の各位置における充放電量の履歴に従って、二次電池12及びキャパシタ13の電力の残容量を増減させながら算出する。
【0032】
次に、上記のように構成された電源管理装置の動作の一例について、図2〜図8を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る電源管理装置を備えた電動車両の複数日分の走行の一例を示す図である。図3は、図2に示す走行の一部において走行経路履歴と充放電量履歴と重ね合わせたものを示す図である。図4は、車両停止に伴う電力移動の様子を示すフローチャートである。図5は、消費電力増加に伴う電力移動の様子を示すフローチャートである。図6は、所定消費電力超過区域を示す説明図である。図7は、回生電力増加に伴う電力移動の様子を示すフローチャートである。図8は、所定回生電力超過区域を示す説明図である。
【0033】
図2に示す一例では、平日における同じ曜日でかつ5日分の車両の走行情報が示されている。また、この一例では、自宅から会社へ出勤する際の走行経路及び会社から自宅へ帰宅する際の走行経路が同一経路の場合を示している。すなわち、この一例では、会社へ通勤していない28日前の走行経路を除いた、7日前、14日前、21日前、35日前の走行経路が同一経路となる。
【0034】
図3には、走行経路が同一となる7日前、14日前、21日前の3日分における走行経路履歴と充放電量履歴とを重ね合わせた場合が示されている。なお、時間帯にずれがある場合であっても、同一の走行経路を辿った場合には、重ね合わせの対象とすることができる。図3に示すように、この例では、自宅から会社までの通勤の際、時刻6時40分付近及び時刻6時50分付近で車両が急な上り坂を通過している(図3に破線で囲まれたA区域及びB区域を参照)。このとき、車両を駆動するモータ11の消費電力が大きくなるため、放電量が大きく上昇している。その後、時刻6時50分付近から時刻7時付近まで、長く緩やかな下り坂を通過している(図3に破線で囲まれたC区域を参照)。このとき、車両を駆動するモータ11から、長期間にわたって回生電力が得られる。その後、時刻7時10分付近では、有料道路(高速道路)の出口を通過している(図3に破線で囲まれたD区域を参照)。このとき、車両の急激な減速が行われるため、車両を駆動するモータ11から短時間に大きな回生電力が得られる。それ以降、会社までの道のりは、市街地道路となっており、充放電量に大きな変動はない。
【0035】
上記したように、この一例では、走行経路履歴記憶手段18及び充放電量履歴記憶手段20が、平日の同じ曜日でかつ5日分の履歴を記憶している。そして、残容量算出手段21は、例えば走行経路が同一となる7日前、14日前、21日前の3日分の平均値を二次電池12及びキャパシタ13に蓄電された電力の残容量として算出するようになっている。このように、残容量算出手段21によって同じ曜日でかつ複数日分の平均値を二次電池12及びキャパシタ13の残容量として算出することにより、算出される残容量の精度を高めることができる。その結果、二次電池12及びキャパシタ13の充放電の制御を、より確実かつ効果的に行うことができる。
【0036】
続いて、本実施形態に係る充放電制御装置が行う制御内容について説明する。以下では、(1)車両停止に伴う電力移動、(2)消費電力増加に伴う電力移動、(3)回生電力増加に伴う電力移動の3通りに分けて説明する。
【0037】
(1)車両停止に伴う電力移動
図4に示すように、ステップS41において、充放電制御装置16は、走行経路記憶手段18により記憶された走行経路の履歴に重なりがあるか否かを判断する。走行経路の履歴に重なりがない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、履歴の重なりがある場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS42に移行する。なお、例えば図2及び図3に示す一例では、7日前、14日前、21日前の走行経路に重なりがあるため、充放電制御装置16は、処理をステップS42へ移行することになる。
【0038】
ステップS42において、充放電制御装置16は、履歴の重なりがあった走行経路と、現在の走行経路とが同じ経路であるか否かを判断する。同じ経路でない場合に、充放電制御装置は、その後の処理を終了する。一方、同じ経路である場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS43に移行する。
【0039】
ステップS43において、充放電制御装置16は、車両が停止位置に到着したか否かを判断する。車両が停車位置に到着していない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、車両が停車位置に到着した場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS44に移行する。なお、図2及び図3に示す一例では、会社又は自宅などが車両の停止位置となる。
【0040】
ステップS44において、充放電制御装置16は、車両の停車が所定時間以上であるか否かを判断する。所定時間以上の停車でない場合に、充放電制御装置は、その後の処理を終了する。一方、所定時間以上の停車である場合に、充放電制御装置は、処理をステップS45に移行する。ここで、所定時間としては、例えば2〜3時間程度を挙げることができる。
【0041】
ステップS45において、充放電制御装置16は、キャパシタ13に蓄電されている電力を、二次電池12へと移動させる。そして、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。
【0042】
以上のように、複数日分の重なりがある所定時間以上の停車位置に車両が到達したときに、充放電制御装置16によってキャパシタ13から二次電池12に電力を移動させることにより、車両の長時間停止時にキャパシタ13に電力を残さないようにすることができる。これにより、キャパシタ13の自己放電の影響で消費電力が増加するのを防止することができる。
【0043】
(2)消費電力増加に伴う電力移動
図5に示すように、ステップS51において、充放電制御装置16は、走行経路記憶手段18により記憶された走行経路の履歴に重なりがあるか否かを判断する。走行経路の履歴に重なりがない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、履歴の重なりがある場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS52に移行する。なお、例えば図2及び図3に示す一例では、7日前、14日前、21日前の走行経路に重なりがあるため、充放電制御装置16は、処理をステップS52へ移行することになる。
【0044】
ステップS52において、充放電制御装置16は、履歴の重なりがあった走行経路と、現在の走行経路とが同じ経路であるか否かを判断する。同じ経路でない場合に、充放電制御装置は、その後の処理を終了する。一方、同じ経路である場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS53に移行する。
【0045】
ステップS53において、充放電制御装置16は、車両が所定消費電力超過区域の手前であるか否かを判断する。車両が所定消費電力超過区域の手前でない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、車両が所定消費電力超過区域の手前である場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS54に移行する。ここで、所定消費電力超過区域としては、図6に示すように、所定電力(例えば20kW程度)を超える電力が消費される区域(例えば図3に破線で囲まれたA区域及びB区域)を挙げることができる。なお、図6に斜線で示すように、消費電力量を基準に判断することもできる。
【0046】
ステップS54において、充放電制御装置16は、キャパシタ13の電力の残容量が不足しているか否かを判断する。すなわち、このステップS54で、充放電制御装置16は、所定消費電力超過区域で消費される電力を、キャパシタ13の電力の残容量で補うことができるか否かを判断する。そして、キャパシタ13の電力の残容量が不足していない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、キャパシタ13の電力の残容量が不足している場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS55に移行する。
【0047】
ステップS55において、充放電制御装置16は、二次電池12に蓄電されている電力を、キャパシタ13へと移動させる。そして、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。なお、キャパシタ13へ移動させる電力量としては、所定消費電力超過区域で消費される電力を、キャパシタ13の電力の残容量だけで補うことができるような電力量であることが好ましいが、キャパシタ13の充電可能容量を超える電力が所定消費電力超過区域で消費される場合には、充電可能容量の最大までキャパシタ13を充電すればよい。
【0048】
このように、所定消費電力又は所定消費電力量を超える消費区域に車両が到達する前に、充放電制御装置16によって二次電池12からキャパシタ13に電力を移動させることにより、あらかじめキャパシタ13に必要な電力を確保することができる。これにより、車両が例えば急な上り坂等に到達したときに、キャパシタ13の電力を速やかに放電させて加速不良等を防止することができる。
【0049】
(3)回生電力増加に伴う電力移動
図7に示すように、ステップS71において、充放電制御装置16は、走行経路記憶手段18により記憶された走行経路の履歴に重なりがあるか否かを判断する。走行経路の履歴に重なりがない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、履歴の重なりがある場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS72に移行する。なお、例えば図2及び図3に示す一例では、7日前、14日前、21日前の走行経路に重なりがあるため、充放電制御装置16は、処理をステップS72へ移行することになる。
【0050】
ステップS72において、充放電制御装置16は、履歴の重なりがあった走行経路と、現在の走行経路とが同じ経路であるか否かを判断する。同じ経路でない場合に、充放電制御装置は、その後の処理を終了する。一方、同じ経路である場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS73に移行する。
【0051】
ステップS73において、充放電制御装置16は、車両が所定回生電力超過区域の手前であるか否かを判断する。車両が所定回生電力超過区域の手前でない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、車両が所定回生電力超過区域の手前である場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS74に移行する。ここで、所定回生電力超過区域としては、図8に示すように、所定電力(例えば数kW程度)を超える電力が回生される区域(例えば図3に破線で囲まれたC区域及びD区域)を挙げることができる。なお、図8に斜線で示すように、回生電力量を基準に判断することもできる。
【0052】
ステップS74において、充放電制御装置16は、キャパシタ13の電力の空容量(充電可能容量から残容量を引いた量)が不足しているか否かを判断する。すなわち、このステップS74で、充放電制御装置16は、所定回生電力超過区域で回生される電力を、キャパシタ13の電力の空容量に充電することができるか否かを判断する。そして、キャパシタ13の電力の空容量が不足していない場合に、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。一方、キャパシタ13の電力の空容量が不足している場合に、充放電制御装置16は、処理をステップS75に移行する。
【0053】
ステップS75において、充放電制御装置16は、キャパシタ13の電力を消費してその残容量を所定値以下にする。そして、充放電制御装置16は、その後の処理を終了する。なお、残容量の所定値としては、所定回生電力超過区域で回生される電力を、キャパシタ13の電力の空容量だけに充電することができるような値であることが好ましいが、キャパシタ13の充電可能容量を超える電力が所定回生電力超過区域で回生される場合には、キャパシタ13の残容量をゼロにすればよい。
【0054】
このように、所定回生電力又は所定回生電力量を超える回生区域に車両が到達する前に、充放電制御装置16によってキャパシタ13の電力を消費させることにより、あらかじめキャパシタ13に必要な空き容量を確保することができる。これにより、車両が例えば急な下り坂等に到達したときに、キャパシタ13に確実に回生電力を充電させて回生電力を有効に活用することができる。
【0055】
以上、詳細に説明したとおり、本実施形態に係る電源管理装置10によれば、車両の走行経路上の走行状態(例えば車両の加速、減速、停止等)とその状態で行われる充放電状態とを、走行経路履歴及び充放電量履歴からあらかじめ予測しつつ、この予測に基づいて走行状態に応じた効果的な充放電を行うことができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【0057】
例えば、上記実施形態では、図6に示す所定電力や図8に示す所定電力が一定値である場合について説明したが、キャパシタ13の電力の残容量及び空容量やキャパシタ13の充放電量等に応じて変更させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 電源管理装置
11 モータ
12 二次電池
13 キャパシタ
14 双方向昇降圧コンバータ
15 インバータ
16 充放電制御装置
17 ナビゲーション装置
18 走行経路履歴記憶手段
19 充放電量算出手段
20 充放電量履歴記憶手段
21 残容量算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長時間の放電が可能な大容量蓄電装置と、充放電量の変動に即応可能な大出力蓄電装置と、前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置の充放電を制御する充放電制御装置とを備えた電動車両用電源の電源管理装置において、
車両の走行位置及び走行経路を検出するナビゲーション装置と、
前記ナビゲーション装置により検出された前記走行経路の履歴を記憶する走行経路履歴記憶手段と、
前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置の充放電量を算出する充放電量算出手段と、
前記充放電量算出手段により算出された充放電量の履歴を記憶する充放電量履歴記憶手段と、
前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置に蓄電された電力の残容量を算出する残容量算出手段とを備え、
前記残容量算出手段は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路の履歴と、前記充放電量履歴記憶手段により記憶された充放電量の履歴とを重ね合わせることによって、前記走行経路上の各位置における前記残容量を算出し、
前記充放電制御装置は、前記残容量算出手段により算出された前記残容量に基づいて、前記大容量蓄電装置及び前記大出力蓄電装置の充放電量を制御する
ことを特徴とする電動車両用電源の電源管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電動車両用電源の電源管理装置において、
前記走行経路履歴記憶手段及び前記充放電量履歴記憶手段は、同じ曜日でかつ複数日分の履歴を記憶しており、
前記残容量算出手段は、同じ曜日でかつ複数日分の平均値を前記残容量として算出する
ことを特徴とする電動車両用電源の電源管理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する電動車両用電源の電源管理装置において、
前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に複数日分の停車位置の重なりがある場合、車両が前記停車位置に到達したときに、前記大出力蓄電装置から前記大容量蓄電装置に電力を移動させる
ことを特徴とする電動車両用電源の電源管理装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載する電動車両用電源の電源管理装置において、
前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に所定消費電力又は所定消費電力量を超える消費区域がある場合、車両が前記消費区域に到達する前に、前記大容量蓄電装置から前記大出力蓄電装置に電力を移動させる
ことを特徴とする電動車両用電源の電源管理装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載する電動車両用電源の電源管理装置において、
前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に複数日分の停車位置の重なりがある場合、車両が前記停車位置に到達する前に、前記大出力蓄電装置の電力を消費させて前記大出力蓄電装置の残容量を所定値以下にする
ことを特徴とする電動車両用電源の電源管理装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載する電動車両用電源の電源管理装置において、
前記充放電制御装置は、前記走行経路履歴記憶手段により記憶された走行経路上に所定回生電力又は所定回生電力量を超える回生区域がある場合、車両が前記回生区域に到達する前に、前記大出力蓄電装置の電力を消費させて前記大出力蓄電装置の残容量を所定値以下にする
ことを特徴とする電動車両用電源の電源管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−178431(P2010−178431A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15680(P2009−15680)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】