説明

電圧制御発振器及びそれを備えた無線通信装置

【課題】バイアス抵抗の抵抗値を大きい値に維持して省電力化及び発振効率の向上を図りつつ、広帯域の変調信号に対応することができる電圧制御発振器及びそれを備えた無線通信装置を提供すること。
【解決手段】
印加される電圧に応じて静電容量値が変化するバラクタM1,M2を有し、当該バラクタM1,M2に制御端子T2を介して印加される制御信号に応じて共振周波数が変化する共振回路30と、共振回路30と並列に接続された負性抵抗回路40とを備え、制御信号の逆相信号が制御端子T3を介して印加されるキャパシタC3、C4をバラクタM1,M2に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振器及びそれを備えた無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波の無線信号を送受信する無線通信装置には、一般に、電圧制御発振器(VCO:voltage controlled oscillator)が搭載されている。
【0003】
図8に、従来の電圧制御発振器100の構成を示す。従来の電圧制御発振器100は、共振回路101と、この共振回路101に並列に接続される負性抵抗回路102とを備えている。
【0004】
共振回路101は、インダクタL101,L102をインダクタンス成分とし、バラクタM101,M102をキャパシタンス成分としてLC共振回路を構成している。
【0005】
バラクタM101とバラクタM102との接続点aには、外部から制御端子T1を介して制御信号が印加される。バラクタM101,M102は、静電容量値が変化する可変容量素子であり、制御端子T1に入力される制御信号の電圧値に応じて静電容量値が変化する。バラクタM101,M102の静電容量値が変化すると、共振回路101のキャパシタンス成分が変化するため、共振回路101の共振周波数が変化する。
【0006】
従来の電圧制御発振器100では、制御端子T1に入力される制御信号の電圧値を調整することで、当該電圧制御発振器100の発振周波数を所望の周波数に制御することができる。なお、抵抗R101,R102は、バラクタM101,M102にバイアス電圧を供給するバイアス抵抗である。また、キャパシタC101,C102は、インダクタL101、L102とM101、M102の動作電圧を分離するDCカット用のキャパシタである。このキャパシタC101,C102は、バラクタM101,M102の合成静電容量値に対し大きな値に設定される。
【0007】
このような電圧制御発振器では、従来から製品に求められる性能に応じた様々な改善が行われている。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の電圧制御発振器では、負性抵抗回路のトランジスタQ101,Q102のコレクターエミッタ間電圧VCEを、発振動作中のベースーエミッタ間電圧VBE以上かつトランジスタ耐圧BVCEO以下とすることで、位相雑音の改善を行っている。
【0009】
また、特許文献2に記載の電圧制御発振器では、抵抗R101,R102を介してバラクタM101,M102に供給する電圧を時間に応じて異なる2つ以上のレベルにシフトさせることにより、周波数可変特性の改善を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−200798号公報
【特許文献2】特開2008−67368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、FSK(frequency shift keying)変調した無線信号を送信する無線通信装置の場合、図9に示す電圧制御発振器200を用いることで、変調信号に応じて搬送波に変調がかけられた信号を出力することができる。
【0012】
電圧制御発振器200は、図9に示すように、制御端子に接続された一対のバラクタからなるバラクタ回路を2段設けている。これらのバラクタ回路の制御端子T1,T2から入力される制御信号の電圧値を制御することで、電圧制御発振器200の発振周波数が制御される。制御端子T1は、搬送波の周波数を制御するための制御端子であり、バラクタM201とバラクタM202との接続点aに接続される。また、制御端子T2は、変調周波数を制御するための制御端子であり、バラクタM203とバラクタM204との接続点bに接続される。
【0013】
ここで、図9に示す回路を、変調用のバラクタM203,M204に着目して書き直した等価回路を図10に示す。なお、搬送波の周波数は決まっているものとして図9に示すバラクタM201、M202を、キャパシタC202に置き換えている。
【0014】
この電圧制御発振器200では、制御端子T2に変調信号を入力することにより、キャパシタC202の静電容量値で決まる周波数の搬送波に変調がかけられた信号が出力端子VOUT−A、Bから出力される。
【0015】
無線通信装置では、扱う情報が文字情報から映像情報へと移行するなど扱う情報量の増加している。そのため、電圧制御発振器においては、広帯域の変調信号に対応できることが望ましい。
【0016】
図9,10に示す回路では、接続点bに入力される変調信号がLowレベルからHighレベルへと変化すると、バラクタM203、M204の静電容量値が変化する。このとき、バラクタM203、M204に蓄積された電荷は抵抗R201,R202を通り放電される。
【0017】
しかし、省電力化及び発振効率の向上のために、抵抗R201,R202の抵抗値には大きい値が必要とされる。抵抗R201,R202の抵抗値が大きいと放電特性は大きな時定数となり、バラクタM203、M204に蓄積された電荷は急激には変化せず、A点の電位は図11に示すように徐々に上昇する。
【0018】
従って、バラクタM203、M204の静電容量値が緩やかに変化し、発振周波数の変化も緩やかになる。図11では横軸は時間であり、縦軸は電圧であるが、この縦軸は周波数と考えることができる。従って、図中のΔfはこの緩やかな周波数変化を示している。FSK変調を行う無線通信装置では周波数偏移量が規定されるが、図11に示すような緩やかな周波数変化を示す場合、平均の周波数偏移量は周波数の最大変化量から低下してしまう。また、図11に示す例よりもさらに変調周波数が高い場合、バラクタM203、M204の放電が完了せずに、Δfの変化途中で逆相の変化区間となり、最大周波数偏移量も低下する。
【0019】
このように、図9に示す回路では、変調周波数が高いほど周波数偏移量が低下する特性となってしまう。
【0020】
そこで、本発明は、バイアス抵抗の抵抗値を大きい値に維持して省電力化及び発振効率の向上を図りつつ、広帯域の変調信号に対応することができる電圧制御発振器及びそれを備えた無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、電圧制御発振器において、印加される電圧に応じて静電容量値が変化するバラクタを有し、当該バラクタに印加される制御信号に応じて共振周波数が変化する共振回路と、前記共振回路に並列に接続された負性抵抗回路と、を備え、前記制御信号の逆相信号が印加されるキャパシタを前記バラクタに接続することとした。
【0022】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電圧制御発振器において、前記バラクタとして、前記制御信号が入力される第1制御端子にその一端がそれぞれ接続された第1バラクタと第2バラクタとを有しており、前記キャパシタとして、前記逆相信号が入力される第2制御端子と前記第1バラクタの他端との間に接続された第1キャパシタと、前記逆相信号が入力される第2制御端子と前記第2バラクタの他端との間に接続された第2キャパシタとを有することとした。
【0023】
また、請求項3に記載の発明は、無線通信装置において、電圧制御発振器を含むPLL回路と、前記電圧制御発振器に変調信号を入力して、前記PLL回路から変調された出力信号を出力させる変調信号発生器と、前記PLL回路の出力信号を電波に変換するアンテナと、を備え、前記電圧制御発振器は、前記変調信号を入力する入力端子と、印加される電圧に応じて静電容量値が変化するバラクタを有し、前記入力端子を介して前記バラクタに印加される変調信号に応じて共振周波数が変化する共振回路と、前記共振回路に並列に接続された負性抵抗回路と、を備え、前記変調信号の逆相信号が印加されるキャパシタを前記バラクタに接続することとした。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、変調信号の逆相信号が印加されるキャパシタをバラクタに接続したので、変調信号が変化したときにはバラクタの充放電がキャパシタにより相殺され、バラクタの充放電を高速に行うことができる。バイアス抵抗の抵抗値を大きい値に維持して省電力化及び発振効率の向上を図りつつ、広帯域の変調信号に対応することができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る無線通信装置の送信部の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る無線通信装置の受信部の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す電圧制御発振器の構成を示す回路図である。
【図4】図2に示す電圧制御発振器の等価回路である。
【図5】図1に示す電圧制御発振器の動作を説明するための図である。
【図6】図1に示す電圧制御発振器のA点の電圧波形を示す図である。
【図7】図1に示す電圧制御発振器の変調周波数の優位性を示す図である。
【図8】従来の電圧制御発振器の構成を示す図である。
【図9】従来の電圧制御発振器の構成を示す図である。
【図10】図9に示す電圧制御発振器の等価回路である。
【図11】図9に示す電圧制御発振器のA点の電圧波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[1.電圧制御発振器の概要]
本実施形態に係る電圧制御発振器は、FSK変調を行う無線通信装置などに用いられるものであり、共振回路と負性抵抗回路とを有して構成される。
【0027】
共振回路は、インダクタを含む誘導性回路と、印加される電圧に応じて静電容量値が変化するバラクタを含む容量性回路とを有しており、これらは並列に接続されている。この共振回路では、バラクタに印加される制御信号に応じて共振周波数が変化する。また、負性抵抗回路は、共振回路に並列に接続されており、共振回路から発振される信号に同期して共振回路に電流を供給する。
【0028】
そして、上記共振回路では、制御信号の逆相信号が印加されるキャパシタをバラクタに接続しており、変調信号が変化したときにはキャパシタによりバラクタの充放電を相殺して、バラクタの充放電を高速に行っている。
【0029】
その結果、バラクタにバイアス電圧を供給するバイアス抵抗の抵抗値を大きい値に維持して省電力化及び発振効率の向上を図りつつ、広帯域の変調信号に対応することができる。
【0030】
以下、本実施形態に係る電圧制御発振器の具体的構成について、FSK変調を行う無線通信装置を一例に挙げて説明する。
【0031】
[2.電圧制御発振器及び無線通信装置の具体的構成]
以下、本実施形態に係る電圧制御発振器及びそれを備えた無線通信装置の具体的構成について図面を参照して具体的に説明する。説明は、無線通信装置、電圧制御発振器の順で行う。
【0032】
[2.1.無線通信装置]
図1は、本実施形態に係る無線通信装置におけるFSK送信部10の回路構成を示すブロック図である。
【0033】
FSK送信部10は、図1に示すように、PLL回路11と、基準信号発生器12と、FSK変調信号発生器13(変調信号発生器の一例)と、アンテナ14とを備えている。
【0034】
基準信号発生器12は、基準信号S1を発生してPLL回路11に供給する。この基準信号S1によりPLL回路11から出力される搬送波の周波数が決定される。また、FSK変調信号発生器13は変調信号S3を発生してPLL回路11に供給する。この変調信号S3によりPLL回路11から搬送波に変調がかけられた信号が出力される。
【0035】
PLL回路11は、位相比較器15と、ループフィルタ(LPF)16と、電圧制御発振器17と、1/N分周器18とを有している。位相比較器15は、基準信号発生器12により生成された基準信号S1の位相との位相と1/N分周器18の出力信号の位相とを比較し、その比較結果に応じた制御信号を出力する。この制御信号は、電圧制御発振器17の発振周波数を制御する制御信号であり、LPF16により交流成分がカットされて、制御信号S2として電圧制御発振器17へ出力される。
【0036】
電圧制御発振器17は、LPF16から出力される制御信号S2に応じた周波数で発振し、発振周波数に応じた周波数を有する出力信号を生成する。この出力信号は、1/N分周器18により分周されて位相比較器15にフィードバックされる。
【0037】
また、電圧制御発振器17は、後述するように入力端子である制御端子T2を備えており、この制御端子T2にFSK変調信号発生器13で発生させた変調信号S3を入力できるようにしている。電圧制御発振器17は、この変調信号S3に応じて搬送波に変調をかけた出力信号を生成してアンテナ14へ出力し、アンテナ14から電波として出力するようにしている。
【0038】
さらに、FSK変調信号発生器13は、変調信号S3の位相を反転させた逆相信号S4を発生しており、この逆相信号S4は、電圧制御発振器17に備えられた入力端子である後述する制御端子T3に入力される。
【0039】
図2は、本願発明に係る無線通信装置におけるFSK受信部20の回路構成を示すブロック図である。
【0040】
FSK受信部20は、アンテナ21と、周波数変換回路22と、増幅回路23と、復調回路24とを備えている。また、FSK受信部20は、PLL回路25と、基準信号発生器26とを有しており、基準信号発生器26で発生させた基準信号に基づき、ローカル信号周波数に制御された出力信号をPLL回路25から出力させている。なお、PLL回路25は、公知のPLL回路を用いることができる。
【0041】
周波数変換回路22は、アンテナ21で捉えられ、かつ、FSK変調された信号を、PLL回路25の出力信号と掛け算し、中間周波数を有する中間周波数出力信号に変換する。
【0042】
増幅回路23は、周波数変換回路22により出力される中間周波数出力信号を増幅する。復調回路24は、増幅回路23で増幅した信号を復調する。これにより、図1に示すFSK送信部10が送信する信号に含まれる変調信号を、図2に示す復調回路24により復調出力信号として得ることができる。
【0043】
本実施形態の要旨は、このような無線通信装置において、PLL回路11を構成する電圧制御発振器17に後述する構成とすることで、省電力かつ広帯域な変調特性を持たせたことにある。
【0044】
[2.2.電圧制御発振器17の具体的構成]
次に、図1に示す電圧制御発振器17の具体的構成について説明する。本実施形態に係る電圧制御発振器17の共振回路30は、変調信号の逆相信号が印加されるキャパシタを設けており、変調信号が変化したときにキャパシタによりバラクタの充放電を高速に行うものであり、以下具体的に説明する。
【0045】
電圧制御発振器17は、図3に示すように、共振回路30と、この共振回路30に並列に接続された負性抵抗回路40とを有している。
【0046】
共振回路30は、インダクタL1,L2をインダクタンス成分とし、バラクタM1〜M4とC3、C4をキャパシタンス成分としたLC共振回路であり、インダクタンス成分とキャパシタンス成分は並列に接続されている。なお、キャパシタC1,C2は、L1、L2とM101、M102の動作電圧を分離するDCカット用のキャパシタであり、バラクタM1〜M4とC3、C4による合成静電容量値に対し大きな値に設定される。また、抵抗R1,R2は、バラクタM1〜M4にバイアス電圧を供給するバイアス抵抗である。
【0047】
この共振回路30では、インダクタL1,L2、バラクタM1,M2、バラクタM3,M4がそれぞれ直列に接続され、互いに並列に接続されている。また、インダクタL1とインダクタL2との接続点には、電源が接続されて、電源電圧Vccが供給される。
【0048】
バラクタM3とバラクタM4との接続点aには制御端子T1が接続されており、この制御端子T1には、LPF16から出力される制御信号S2が入力される。この制御信号S2によりバラクタM3,M4の静電容量値が調整され、電圧制御発振器17の出力端子VOUT−A,Bから出力される信号の搬送波成分の周波数が調整される。
【0049】
バラクタM1(第1バラクタの一例)とバラクタM2(第2バラクタの一例)との接続点bには制御端子T2(第1制御端子の一例)が接続されている。この制御端子T2には、FSK変調信号発生器13から出力される変調信号S3が入力される。この変調信号S3によりバラクタM1,M2の静電容量値が調整され、電圧制御発振器17の出力端子VOUT−A,Bから出力される信号の変調成分の周波数が調整される。
【0050】
さらに、キャパシタC3(第1キャパシタの一例)とキャパシタC4(第2キャパシタの一例)との接続点cには制御端子T3(第2制御端子の一例)が接続されている。この制御端子T3には、FSK変調信号発生器13から出力される逆相信号S4が入力される。この逆相信号S4により、変調信号S3によって充放電されるバラクタM1,M2の電荷を、キャパシタC3,C4により充放電することにより、バラクタM1,M2を高速に充放電させ、A点及びB点の収束点を改善するようにしている。
【0051】
負性抵抗回路40には、2つの発振トランジスタQ1,Q2が互いにクロスカップリングされた構成であり、定電流源Iを介して接地される。この発振トランジスタQ1,Q2は、図3に示す例ではMOSトランジスタとしているが、バイポーラトランジスタとしてもよい。負性抵抗回路40は、負性抵抗を発生して共振回路30の寄生抵抗成分による損失をキャンセルし、発振条件を満足させる機能を有する。
【0052】
以上のように構成された電圧制御発振器17において、キャパシタC3,C4の静電容量値は以下のようにして求めることができる。
【0053】
ここで、図3に示す回路を、変調用のバラクタM3,M4に着目して書き直した等価回路を図4に示す。なお、搬送波の周波数は決まっているものとして図3に示すバラクタM3,M4を、キャパシタC5に置き換えている。
【0054】
図4に示す等価回路において、例えば、図5に示すように、本実施形態に係る電圧制御発振器17では、制御端子T2に入力する変調信号S3がLowレベルからHighレベルに変化するときには、同時に制御端子T3に入力する逆相信号S4がHighレベルからLowレベルに変化する。
【0055】
従って、図5に示す向きの電流ΔIが流れ、バラクタM1,M2から電荷が放電され、その放電された電荷がキャパシタC3,C4に充電される。
【0056】
制御端子T2の電位がΔV変化した場合のバラクタM1,M2の静電容量値をQM、電荷変化量をΔQM、静電容量変化をΔCMとする。すると、バラクタM1,M2の電荷変化量ΔQMは、以下の式(1)で表すことができることができる。
【0057】
(数1)
ΔQM=ΔCM・ΔV ・・・(1)

【0058】
また、キャパシタC3,C4の静電容量値をCとすると、制御端子T2がΔV変化したときのキャパシタC3,C4の電荷変化量をΔQcは、以下の式(2)で表することができる。
【0059】
(数2)
ΔQC=C・ΔV ・・・(2)
【0060】
A点やB点の電位が緩やかな変動を起こさないようにするためには、バラクタM1,M2の電荷変化をキャパシタC3,C4の電荷変化で相殺すればよく、式(3)に示す関係となる。従って、式(1)〜(3)から、A点やB点の電位が緩やかな変動を起こさないようにするキャパシタC3,C4の静電容量値Cは、以下の式(4)で表すことができる。
【0061】
(数3)
ΔQM=ΔQC ・・・(3)
ΔCM=C ・・・(4)
【0062】
例えば、低電圧(Lowレベル)印加時のバラクタM1,M2の静電容量値をCMmin=0.2(pF)、高電圧(Highレベル)印加時のバラクタM1,M2の静電容量値をCMmax=0.5(pF)とする。
【0063】
このとき、ΔV変化した場合のバラクタM1,M2の静電容量値の変化量はΔCM=0.3(pF)であり、A点やB点の電位が緩やかな変動を起こさないときのキャパシタC3,C4の静電容量値はC=0.3(pF)となる。
【0064】
なお、その他の素子は、たとえば、インダクタL1,L2=50(nH)、キャパシタC5=2.7(pF)、キャパシタC1,C2=40(pF)などのように設定することができる。
【0065】
本実施形態に係る電圧制御発振器17の共振回路30のA点の電位の変化を図6に示す。同図に示すように、周波数変化Δfに相当する部分が小さくなり最大周波数偏移に素早く達しており、周波数偏移平均値=最大周波数偏移が得られる。このように、最大周波数偏移量と周波数偏移の平均の差が無くなると、図2に示すFSK受信部20での復調出力のS/Nが改善される。
【0066】
また、本実施形態に係る電圧制御発振器17では、図7に示すように、従来の電圧制御発振器200の特性(A線参照)に比べ、変調周波数が高い場合でも周波数偏移量の低下が起きにくい(B線参照)。従って、無線通信装置において、高速のデータ通信に対応可能となる。
【0067】
さらに、キャパシタC3,C4の静電容量値Cを精度よく設定することにより、制御端子T2に入力する変調信号S3が変化した直後でもバラクタM1,M2の充放電電流が抵抗R1,R2を流れない。そのため、抵抗R1,R2の抵抗値を大きな値にすることができ、省電力化及び発振効率の向上を図ることができる。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る電圧制御発振器17では、抵抗R1,R2により決まるバラクタM1,M2の動作点は、変調信号S3が加わっても変動しないため、所定のバイアス電圧が素早く加わるようになる。これにより高い変調周波数に対してもバラクタ容量変化が素早く得られ、変調度の低下が改善される。
【0069】
なお、図3に示す電圧制御発振器17は、差動の共振回路としているが、差動で発振動作している回路の中点を接地し、片側を省略することで、シングル動作の場合でも構成可能である。
【0070】
また、電圧制御発振器17は、制御端子T3には、制御端子T2に入力する変調信号S3とは逆相の逆相信号S4を入力するようにしたが、制御端子T2に入力する変調信号S3をインバータで反転させて制御端子T3に入力する逆相信号S4とすることが出来る。同様に制御端子T3に入力する逆相信号S4をインバータで反転させて制御端子T2に入力する変調信号S3とすることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 無線通信装置の送信部
11 PLL回路
17 電圧制御発振器
20 無線通信装置の受信部
30 共振回路
40 負性抵抗回路
M1 バラクタ(第1バラクタ)
M2 バラクタ(第2バラクタ)
M3,M4 バラクタ
C1 キャパシタ(第1キャパシタ)
C2 キャパシタ(第2キャパシタ)
T1 制御端子
T2 制御端子(第1制御端子)
T3 制御端子(第2制御端子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される電圧に応じて静電容量値が変化するバラクタを有し、当該バラクタに印加される制御信号に応じて共振周波数が変化する共振回路と、
前記共振回路に並列に接続された負性抵抗回路と、を備え、
前記制御信号の逆相信号が印加されるキャパシタを前記バラクタに接続した電圧制御発振器。
【請求項2】
前記バラクタとして、前記制御信号が入力される第1制御端子にその一端がそれぞれ接続された第1バラクタと第2バラクタとを有しており、
前記キャパシタとして、前記逆相信号が入力される第2制御端子と前記第1バラクタの他端との間に接続された第1キャパシタと、前記逆相信号が入力される第2制御端子と前記第2バラクタの他端との間に接続された第2キャパシタとを有する請求項1に記載の電圧制御発振器。
【請求項3】
電圧制御発振器を含むPLL回路と、
前記電圧制御発振器に変調信号を入力して、前記PLL回路から変調された出力信号を出力させる変調信号発生器と、
前記PLL回路の出力信号を電波に変換するアンテナと、を備え、
前記電圧制御発振器は、
前記変調信号を入力する入力端子と、
印加される電圧に応じて静電容量値が変化するバラクタを有し、前記入力端子を介して前記バラクタに印加される変調信号に応じて共振周波数が変化する共振回路と、
前記共振回路に並列に接続された負性抵抗回路と、を備え、
前記変調信号の逆相信号が印加されるキャパシタを前記バラクタに接続した無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−120045(P2011−120045A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276220(P2009−276220)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】