説明

電子装置用配線基板、その製造方法及びタッチパネル

【課題】配線としての積層膜の電気抵抗を低減し消費電力も低減することができるようにする。
【解決手段】本発明は、絶縁性透明基板2上に回路配線を備えた電子装置用配線基板1において、回路配線は、銅と微量の添加元素とからなる配線本体5と、配線本体5の外周側に形成された、絶縁性透明基板に接している第1の被膜層61と、絶縁性透明基板に接していない第2の被膜層62とを有し、第1および第2の被膜層61,62は、膜厚みが異なるとともに、厚み大である被膜層61は、透明な酸化物導電膜を形成しうる無機元素の酸化物と、添加元素の酸化物とを含む複合酸化物であり、第1および第2の被膜層61,62中の添加元素の濃度は、配線本体5中の添加元素の濃度よりも高い、ことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性透明基板上に回路配線を備えた電子装置用配線基板、その製造方法及びタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、PDP(プラズマディスプレイパネル)、有機ELディスプレイ等の表示装置や、その表示装置と組み合わせて使用されるタッチパネルは、画面が大型化しており、且つ微細化によって配線も細くなり、それに伴って配線の電気抵抗低減に対する要求が高まっている。
【0003】
これらの表示装置やタッチパネルには、必須の要素として透明導電膜が使用されている。この透明導電膜に配線を形成する場合、従来からAl合金が用いられてきたが、最近、Al合金より電気抵抗が低いCu合金が注目されている。このCu合金は表面が酸化しやすく、これを用いる場合にはCu合金と透明導電膜との界面にバリアメタル層を設ける等、何らかの酸化対策が必要であった。
【0004】
一方、透明導電膜を酸化インジウム錫(ITO)で形成し、そのITO膜上にバリアメタル層を設けずにCu合金配線を形成するようにした技術も提供され、その従来例として、例えば下記の特許文献1,2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−017926号公報
【特許文献2】特開2008−261895号公報
【0006】
上記の特許文献1には、バリアメタル層なしでITO膜と銅合金層を積層し、低いコンタクト抵抗を得る技術が開示されている。この場合、電流が流れる配線は、Zn、Mg、Ni、Mnから選ばれる少なくとも1種の元素を微量含有したCu金属膜で形成されている。
【0007】
また、特許文献2には、同様にバリアメタル層なしで用いる例として、液晶表示装置を構成するTFT基板の電極端子が、銅を主体とした導電層と、当該導電層を被覆する、酸化マンガンを主とする酸化物層とからなり、さらに、当該酸化物層は、透明電極との積層となる構造を有し、当該積層部がオーミック接合であることが開示されている。
【0008】
しかし、上記の特許文献1、2では、Cu合金からなる配線の一部が透明導電膜との接触部を有する構成であり、その接触部でオーミック接合を実現し接触抵抗を下げることしか考慮されていない。特許文献1では配線層の抵抗率を開示しているが、あくまで配線層としてのCu合金部の抵抗である。
【0009】
すなわち、上記の特許文献1、2において、配線層自体が透明導電膜とCu合金の積層膜からなる場合の電気抵抗、特に積層膜からなる配線層の、電流の流れに対して影響大となる長さ方向に沿った電気抵抗については何ら言及しておらず、当然、抵抗を下げるための条件についても開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は上記に鑑み提案されたもので、配線としてのCu合金膜と透明導電膜の積層膜の電気抵抗を低減し、消費電力も低減することができる電子装置用配線基板、その製造方法及びタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、絶縁性透明基板上に回路配線を備えた電子装置用配線基板において、前記回路配線は、銅と微量の添加元素とからなる配線本体と、前記配線本体の外周側に形成された、前記絶縁性透明基板に接している第1の被膜層と、前記絶縁性透明基板に接していない第2の被膜層と、を有し、前記第1および第2の被膜層は、膜厚みが異なるとともに、厚み大である被膜層は、透明な酸化物導電膜を形成しうる無機元素の酸化物と、前記添加元素の酸化物とを含む複合酸化物であり、前記第1および第2の被膜層中の前記添加元素の濃度は、前記配線本体中の前記添加元素の濃度よりも高い、ことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記した請求項1に記載の発明において、前記第1および第2の被膜層の内、厚み小である被膜層を、前記厚み大である被膜層と同一の構成元素からなる複合酸化物層とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記した請求項1または2に記載の発明において、前記無機元素を、インジウム、ガリウム、スズおよび亜鉛の内の少なくとも1つとするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記した請求項1から3の何れか1項に記載の発明において、前記添加元素を、クロム、マンガン、バナジウム、アルミニウムおよびマグネシウムの内の少なくとも1つとするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記した請求項1から4の何れか1項に記載の発明において、前記厚み大である被膜層における前記添加元素と前記無機元素の各濃度を、前記厚み小である被膜層におけるそれより高くするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記した請求項1から5の何れか1項に記載の発明において、前記配線本体と前記厚み大である被膜層との界面での導電特性を、オーミック特性を示すものとするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、前記した請求項1から6の何れか1項に記載の発明において、前記厚み大である被膜層を、膜厚が5nm以上で50nm以下とし、前記配線本体を、膜厚が100nm以上で1000nm以下とするものである。
【0018】
請求項8に記載の発明は、タッチパネルであって、前記の請求項1から7の何れか1項に記載の電子装置用配線基板を用いて構成したことを特徴としている。
【0019】
請求項9に記載の発明は、絶縁性透明基板上に回路配線を備えた電子装置用配線基板の製造方法において、前記絶縁性透明基板上に、無機元素の酸化物からなる透明導電膜を形成する工程と、前記透明導電膜上に、添加元素を含む銅からなる銅合金膜を形成する工程と、所定条件下での熱処理により、前記銅合金膜中の前記添加元素を当該銅合金膜から拡散させて当該銅合金膜を銅と微量の前記添加元素とからなる配線本体とするとともに、その配線本体の外周側に、複合酸化物からなる厚みの異なる2種の被膜層を形成する熱処理工程と、を有し、前記被膜層は、前記配線本体と前記絶縁性透明基板との間の前記透明導電膜が分解して形成された厚み大である被膜層と、前記絶縁性透明基板に接していない厚み小である被膜層とからなる、ことを特徴としている。
【0020】
請求項10に記載の発明は、絶縁性透明基板上に回路配線を備えた電子装置用配線基板の製造方法において、前記絶縁性透明基板上に、添加元素を含む銅からなる銅合金膜を形成する工程と、前記銅合金膜上に、無機元素の酸化物からなる透明導電膜を形成する工程と、所定条件下での熱処理により、前記銅合金膜中の前記添加元素を当該銅合金膜から拡散させて当該銅合金膜を銅と微量の前記添加元素とからなる配線本体とするとともに、その配線本体の外周側に、複合酸化物からなる厚みの異なる2種の被膜層を形成する熱処理工程と、を有し、前記被膜層は、前記銅合金膜上の前記透明導電膜が分解して形成された厚み大である被膜層と、前記絶縁性透明基板に接している厚み小である被膜層とからなる、ことを特徴としている。
【0021】
請求項11に記載の発明は、前記した請求項9または10に記載の発明において、前記厚み大、小の2種の被膜層の各々を、前記透明導電膜を構成する無機元素の酸化物と、前記添加元素の酸化物とを含むものとするものである。
【0022】
請求項12に記載の発明は、前記した請求項9から11の何れか1項に記載の発明において、前記透明導電膜を構成する前記無機元素を、インジウム、ガリウム、スズおよび亜鉛の内の少なくとも1つとするものである。
【0023】
請求項13に記載の発明は、前記した請求項9から12の何れか1項に記載の発明において、前記銅合金膜中の前記添加元素を、酸化物形成エネルギーの絶対値が、前記透明導電膜を構成する前記無機元素の酸化物形成エネルギーの絶対値より大きいものとするものである。
【0024】
請求項14に記載の発明は、前記した請求項9から13の何れか1項に記載の発明において、前記銅合金膜中の前記添加元素を、クロム、マンガン、バナジウム、アルミニウムおよびマグネシウムの内の少なくとも1つとするものである。
【0025】
請求項15に記載の発明は、前記した請求項9から14の何れか1項に記載の発明において、前記銅合金膜中の前記添加元素を、濃度が0.2at.%以上で、10at.%以下とするものである。
【0026】
請求項16に記載の発明は、前記した請求項9から15の何れか1項に記載の発明において、前記熱処理を、酸素を含む不活性気体からなる気流中で、または減圧下での酸素雰囲気からなる気流中で、150℃以上500℃以下の温度で行うものである。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、銅合金膜中の添加元素を当該銅合金膜から拡散させ配線本体をほぼ純銅に近いものとすることができ、配線本体の抵抗を大幅に小さくすることができる。また、透明導電膜が分解して形成された被膜層は、配線本体との間でハッキリとした界面を形成するには至らず、配線本体と被膜層とは、電気的に連続となっており、双方間の接触抵抗は小さい。このため、配線本体と被膜層とからなる、配線全体としての積層膜の電気抵抗を減少させることができ、消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の電子装置用配線基板製造方法の第1の実施形態を概略的に示す図であり、(a)は工程の前半を、(b)は工程の後半をそれぞれ示している。
【図2】本発明を適用した入力装置付き表示装置の構成を模式的に示す説明図である。
【図3】入力装置付き表示装置の平面的な構成を模式的に示す説明図である。
【図4】タッチパネルに形成される金属配線の製造方法をより具体的に説明するための図である。
【図5】銅合金膜の添加元素を8at.%のマンガン(Mn)とし、透明導電膜をITO膜とし、熱処理を300℃、30分として形成した積層膜の濃度分布の測定結果を示す図である。
【図6】銅合金膜の添加元素を4at.%のマンガン(Mn)とし、透明導電膜をITO膜とし、熱処理を300℃、30分として形成した積層膜の断面写真、およびその積層膜の各部位での化学成分分析結果を示す図である。
【図7】本発明の電子装置用配線基板製造方法の第2の実施形態を概略的に示す図であり、(a)は工程の前半を、(b)は工程の後半をそれぞれ示している。
【図8】第2の実施形態のより具体的な製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
先ず、本発明の第1の実施形態を図1〜図6を用いて説明する。
【0030】
図1は本発明の電子装置用配線基板製造方法の第1の実施形態を概略的に示す図であり、(a)は工程の前半を、(b)は工程の後半をそれぞれ示している。本発明の電子装置用配線基板1は、絶縁性透明基板2上に回路配線を備えたものであり、その製造は、概略下記の手順で行われる。すなわち、図1(a)に示すように、先ず、絶縁性透明基板2上に、無機元素の酸化物からなる透明導電膜3を形成し、次にその透明導電膜3上に、添加元素を含む銅からなる銅合金膜4を形成する。
【0031】
続いて、所定条件下での熱処理により、銅合金膜4中の添加元素を当該銅合金膜4から拡散させ、図1(b)に示すように、当該銅合金膜4を銅と微量の添加元素とからなる配線本体5とするとともに、その配線本体5の外周側に、複合酸化物からなる被膜層6を形成する。
【0032】
この被膜層6は、配線本体5と絶縁性透明基板2との間の透明導電膜3が分解して形成された被膜層61と、絶縁性透明基板2に接していない被膜層62とからなる。
【0033】
この発明によると、銅合金膜4中の添加元素を当該銅合金膜4から拡散させ、配線本体5をほぼ純銅に近いものとすることができ、配線本体5の抵抗を大幅に小さくすることができる。また、透明導電膜3が分解して形成された被膜層61は、配線本体5との間でハッキリとした界面を形成するには至らず、配線本体5と被膜層61とは、電気的に連続となっており、双方間の接触抵抗は小さい。このため、配線本体5と被膜層6とからなる、配線全体としての積層膜の電気抵抗を減少させることができ、消費電力を低減することができる。
【0034】
次に、本発明を表示装置の入力装置に適用した場合について、図2〜図6を用いて説明する。
【0035】
図2は本発明を適用した入力装置付き表示装置の構成を模式的に示す説明図、図3はこの入力装置付き表示装置の平面的な構成を模式的に示す説明図である。これらの図において、入力装置付き表示装置100は、画像生成装置としての画像表示装置101と、この画像表示装置101の、表示光を出射する側の面に重ねて配置されたパネル状の入力装置102とを有している。
【0036】
画像表示装置101は、一般的な液晶パネル、有機ELパネル等を用いることができ、動画や静止画を表示する。
【0037】
入力装置102は、静電容量型のタッチパネルであり、画像表示装置101と組み合わせて構成され、画像表示装置101の目視側、すなわちユーザーが操作する側に重ねて配設されている。この入力装置102は、1枚の絶縁性透明基板2aと、絶縁性透明基板2aの端部に接続されたフレキシブルフラットケーブル104とを備えている。フレキシブルフラットケーブル104には、入力装置102において入力位置の検出を行うための駆動回路(図示せず)が接続されている。入力装置102においては、絶縁性透明基板2aの上面に入力面が形成され、その入力面の外枠部を除いた領域が指先による入力が行われる入力領域102aになっている。
【0038】
この入力領域102aには、図3に示すように、矢印Xで示す方向に延在する第1の電極パターン11が複数列形成され、また矢印Yで示す方向に延在する第2の電極パターン12が複数列形成されている。
【0039】
第1の電極パターン11の各々は、矢印Xで示す方向に配列された菱形形状の大面積のパッド部11a、11a、…を備えている。また、第2の電極パターン12の各々は、矢印Yで示す方向に配列された菱形形状の大面積のパッド部12a、12a、…を備えている。
【0040】
第1の電極パターン11と第2の電極パターン12とは、絶縁性透明基板2aの同一面上に形成されているため、第1の電極パターン11と第2の電極パターン12との交差部分13が複数、存在している。第1の電極パターン11及び第2の電極パターン12は、それぞれ透明導電膜で形成されており、この交差部分13において両者は電気的に絶縁されている。そして、その交差部分13において、第2の電極パターン12のパッド部12aを形成している透明導電膜同士は、細幅形状の導電部材14で繋がって、第2の電極パターン12は、矢印Y方向に電気的に接続されている。一方、第1の電極パターン11の離間するパッド部11aを形成する透明導電膜同士は、別の細幅形状の導電部材15がブリッジするように配設されて繋がっており、それにより、第1の電極パターン11は、矢印X方向に電気的に接続されている。
【0041】
また、絶縁性透明基板2aにおいて入力領域102aの外側領域には、図3に示すように、第1の電極パターン11および第2の電極パターン12の各々に電気的に接続する複数の金属配線(配線パターン)70が形成されており、これらの金属配線70の端部には、フレキシブルフラットケーブル104を接続するための接続端子70tが成膜されている。
【0042】
このような構成の入力装置付き表示装置100において、入力装置102は、上記のように静電容量方式であり、パッド間の静電容量の変化を計測することにより、その位置を判別する。操作時、複数の第1の電極パターン11および複数の第2の電極パターン12に順次、電圧が印加される。ユーザーは画像表示装置101に表示された画像を、入力装置102を介して視認し、対応する入力情報を確認する。そして、画像表示装置101に表示された指示用画像に対応する位置を、入力装置102の入力領域102a上で指等を用いて触れることにより、情報の入力を行う。この時、導電体である指が触れると、入力装置102上に配設された検出電極との間で静電容量を持つようになる。その結果として指で触れた位置の静電容量が低下し、その位置を不図示の検出用駆動回路(検出部)により算出する。このようにして、いずれの箇所に指が触れたかを検出することができる。
【0043】
次に、本発明に係る金属配線70の製造方法および構成について説明する。金属配線70は、図3に示すように、パッド部11a、12a上に形成される金属配線71と、そのパッド部11a、12a上の金属配線71から接続端子70tまで延出した金属配線72とから成っている。この金属配線70は、概略、図1に示した手順で製造される。
【0044】
すなわち、金属配線71は、絶縁性透明基板2a上のパッド部11a、12aを形成する透明導電膜と、その透明導電膜上に成膜された銅合金からなる金属薄膜とを熱処理することによって形成される。その際に、双方間の接触電気抵抗ができるだけ小さくなるように、パッド部11a、12aに可能な限り長く接する構成となっている。
【0045】
金属配線72は、絶縁性透明基板2a上の、当該金属配線72と同じパターンにエッチングされた透明導電膜と、その透明導電膜上に成膜された銅合金からなる金属薄膜とを熱処理することによって形成される。
【0046】
図4はタッチパネルに形成される金属配線の製造方法をより具体的に説明するための図で、図3のA−A断面、およびB−B断面に概略対応している。なお、図4において、図1と略同一の構成要素には、図1に付した符号に添え字aを付加した符号を付している。
ここでは、金属配線70の製造方法について説明するが、入力装置102の電極パターン11、12も、この金属配線の製造工程の一部である、透明導電膜のパターニングにおいて同時に形成される。入力装置102の電極パターン11、12では、電極パッド11aのつなぎ部分の導電部材15の形成工程が更に加わることになる。
【0047】
金属配線70の製造は、先ず図4(a)に示すように、絶縁性透明基板2a上に透明導電膜3aを成膜する工程で開始し、得られた成膜はエッチングによってパターニングされる。
【0048】
ここで、絶縁性透明基板2aは、ガラス、フィルムを含む樹脂基板などの透明且つ絶縁性の材料を用いることができる。フィルムはその可撓性により、入力装置102の、衝撃による割れに対する強度を高めることができる。
【0049】
また、透明導電膜3aは無機酸化物からなり、この透明導電膜3aを構成する無機元素は、インジウム、ガリウム、スズおよび亜鉛の内の少なくとも1つである。具体的には、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等を用いることができ、好ましくはITOを用いる。成膜方法としては、スプレー熱分解法、CVD法等の化学的成膜法と、蒸着法、スパッタリング法等の物理的成膜法とに大別することができる。中でもスパッタリング法は、得られる膜の抵抗値及び透過率の経時変化が少なく、成膜条件の制御が容易であるため、好ましい。
【0050】
次に、図4(b)に示すように、透明導電膜3aを覆うように銅合金膜4aを成膜する。この銅合金膜4aは、銅と添加元素との合金であり、添加元素は、クロム、マンガン、バナジウム、アルミニウムおよびマグネシウムの内の少なくとも1つであり、濃度が0.2at.%以上で、10at.%以下である。濃度が0.2at.%以下であれば、後述する熱処理過程において複合酸化物6aが均質に形成されない、膜厚が薄くなるために密着性および耐久性が不足する、等の理由で不具合があり、10at.%以上であれば、配線本体5a中に添加元素が残存して抵抗値が十分に低下しないという理由で不具合が生じる。
【0051】
続いて、図4(c)に示すように、レジスト膜8を塗布して焼成し、その後図4(d)に示すように、露光・現像を行ってエッチングによりパターニングを行う。
【0052】
その後、レジスト膜8のはく離、洗浄を行い(図4(e))、絶縁性透明基板2a、透明導電膜3a、銅合金膜4aからなる積層体に所定条件下での熱処理を施す。この熱処理によって、銅合金膜4a中の添加元素が当該銅合金膜4aから拡散し、当該銅合金膜4aが銅と極微量の添加元素とからなる配線本体5aとなるとともに、その配線本体5aの外
周側に、複合酸化物からなる被膜層6aが形成される(図4(f))。
【0053】
被膜層6aは、配線本体5aと絶縁性透明基板2aとの間の透明導電膜3aが分解して形成された厚み大である被膜層61aと、絶縁性透明基板2aに接していない厚み小である被膜層62aとからなる。
【0054】
最後に、図4(g)に示すように、配線本体5aと被膜層6aとからなる積層膜を、二酸化珪素からなる保護膜9で覆う。このようにして、絶縁性透明基板2a上に、配線本体5aと被膜層6aとからなる金属配線70を回路配線として備えた入力装置用配線基板(電子装置用配線基板)10が製造される。
【0055】
なお、上記の説明では、図4(a)において透明導電膜3aのパターニングを銅合金膜4aの積層前に行うようにしたが、このパターニングは、適当なエッチング液を選択すれば、銅合金膜4aを積層後、工程の図4(d)において、2層を順に行うようにしてもよい。
【0056】
上記の熱処理は、酸素分圧が10-4Pa以上、10-1Pa以下の雰囲気中で行う。酸素分圧が10-4Pa未満であれば、添加元素が十分に酸化されないため配線本体5a中に残存して抵抗が減少しないという不具合が発生し、酸素分圧が10−1Paより大きい場合には、配線本体を構成する銅自体が酸化されて抵抗が上昇するという不具合が生じる。上記範囲内でも、下限側は10-3Pa以上が更に好適である。
上記の熱処理は、酸素分圧の条件が満足されていれば、酸素を含む不活性気体からなる気流中で行ってもよい。例えば全圧が1気圧(105Pa)の不活性気体中の酸素濃度は、0.01ppm(酸素分圧10-3Pa)〜1ppm(酸素分圧10-1Pa)の範囲とする。酸素濃度が0.001ppm(10-4Pa)以上であれば本発明の効果を奏するが、0.001から0.01ppmの範囲では、添加元素が十分に酸化されないため配線本体5a中に残存して、抵抗減少の効果は他の場合よりも若干劣る。1ppmより大きい濃度であれば、配線本体を構成する銅自体が酸化されて抵抗が上昇するという不具合が生じる。
【0057】
また、上記の熱処理は、150℃以上500℃以下の温度で行う。熱処理温度が150℃以下であれば、銅合金膜4aの添加元素が透明導電膜3aと十分に反応せず、同時に銅合金膜4aの添加元素が酸素と反応せず、その結果均質な被膜層6aを形成しないという不具合が生じ、500℃以上であれば、銅合金膜4aが酸化されてしまい抵抗が上昇するという不具合が生じる。
【0058】
本発明では、銅合金膜4a中の添加元素は、酸化物形成エネルギー(負の値となる)の絶対値が、透明導電膜3aを構成する無機元素の酸化物形成エネルギーの絶対値より大きいものが使用されている。このため、熱処理時に、銅合金膜4a中の添加元素が透明導電膜3a等の周囲に抜けやすくなり、当該銅合金膜4aからの拡散が容易となる。その結果、銅合金膜4aが純銅と極微量の添加元素とからなる配線本体5aとなるとともに、その配線本体5aの外周側に、複合酸化物からなる被膜層6aが形成される。したがって、配線本体5aの抵抗が小となる。また、透明導電膜3aが分解して形成された被膜層61aは、配線本体5との間でハッキリとした界面を形成するには至らず、配線本体5aと被膜層61aとは、電気的に連続となっており、双方間の接触抵抗は小さい。このため、配線本体5aと被膜層61aとからなる、配線全体としての積層膜の電気抵抗を減少させることができた。
【0059】
また、配線本体5aと厚み大である被膜層61aとの界面での導電特性は、オーミック特性を示した。
【0060】
上記の熱処理によって形成された配線本体5aは、膜厚が100nm以上で1000nm以下であった。また、被膜層6aのうち、透明導電膜3aが分解して形成された被膜層61aは、絶縁性透明基板2aに接していない被膜層62aと比較して膜厚が大であり、その膜厚は5nm以上で50nm以下であった。
【0061】
そして、厚み大、小の2種の被膜層61a、62aのうち、厚み小である被膜層62aは、厚み大である被膜層61aと同一の構成元素からなり、双方の被膜層61a、62aは何れも、透明導電膜3aを構成する無機元素の酸化物と、銅合金膜4aに含まれる添加元素の酸化物とを含んでいた。したがって、銅合金膜4aに含まれる添加元素は、透明導電膜3a側だけでなく、周囲の広い範囲で拡散しており、厚み小の被膜層62aも添加元素が銅合金膜4aから抜けることに貢献していることが分かった。
【0062】
また、厚み小である被膜層62aには、透明導電膜3aを構成する無機元素の酸化物、例えば酸化インジウムが存在しており、このことは、被膜層62aが添加元素の酸化物のみである場合よりも、金属配線70の表面の耐薬品性、耐腐食性を向上させる効果を発揮していると推測される。
【0063】
次に、銅合金膜4aの添加元素をマンガン(Mn)とし、透明導電膜3aをITO膜(無機元素がインジウム(In)とスズ(Sn))として金属配線70を製造した場合の金属配線70の抵抗率の測定結果について、表1を用いて説明する。ここで、金属配線70の抵抗率とは、金属配線70(配線本体5aと被膜層6aとからなる回路配線)の材料としての物性値とみなせる値であり、長さ方向に沿った電気抵抗を算出する場合の基準となる。
【表1】

【0064】
表1において、サンプル1〜4は、銅合金膜4a中のMn濃度、銅合金(Cu−Mn)膜4aの膜厚、透明導電膜(ITO)3aの膜厚、および熱処理条件を変化させて積層膜(金属配線)を形成した場合であり、そのサンプル1〜4の積層膜の熱処理後の抵抗率を四端子法で測定した結果を(4)の欄に示している。また、比較するために、銅合金(Cu−Mn)膜4aと透明導電膜(ITO)3aを個別に熱処理した膜が積層されたものとみなした場合、即ち本発明の複合酸化物が形成されていない積層膜での計算による抵抗率を(6)の欄に示している。表中、(5)の欄に付した(*)1は個別に熱処理した場合の実測値である。(*)2は推測値であるが、実績中の最も低い値を採用しており、(6)は実現可能な範囲の最小値と考えられる。
【0065】
この(4)の欄と(6)の欄とを比較すると、熱処理後の積層膜(金属配線)の抵抗率が最大で45%と大幅に低減していることが分かる。これは、銅合金膜4a中のMnを当該銅合金膜4aから拡散させ配線本体5aをほぼ純銅に近いものとすることができたこと、また透明導電膜3aが分解して形成された被膜層61aは、配線本体5aとの間でハッキリとした界面を形成するには至らず、配線本体5aと被膜層61aとは、電気的に一体化し連続となっており、双方間の接触抵抗が小さくなっていることによるものと考えられる。
【0066】
次に、銅合金膜4aの添加元素をマンガン(Mn)とし、透明導電膜3aをITO膜として金属配線70を製造した場合の金属配線70の接触抵抗率の測定結果について、表2を用いて説明する。ここで、金属配線70の接触抵抗率とは、金属配線70(配線本体5aと被膜層6aとからなる回路配線)の長さ方向に垂直な方向(積層方向)での抵抗を表わしている。
【表2】

【0067】
表2において、サンプル1〜3は、銅合金膜4a中のMn濃度を4原子%一定とし、各膜厚等も一定とし、熱処理条件のみ変化させて積層膜(金属配線)を形成した場合であり、サンプル1は、積層膜に熱処理を施さない場合、サンプル2は、酸素分圧1.0×10-3Paで、250℃、0.5時間の熱処理を行った場合、サンプル3は、酸素分圧1.0×10-3Paで、300℃、0.5時間の熱処理を行った場合である。このサンプル1〜3の積層膜の接触抵抗率を測定した結果を(4)の欄に示している。
【0068】
この表2において、接触抵抗率は、熱処理を行うことで小さくなり、サンプル2、サンプル3の順で低くなる。サンプル3はサンプル2に対して1桁小さな値を示している。このように、サンプル3において接触抵抗率が大幅に低減したのは、300℃での熱処理により、透明導電膜3aの分解による被膜層61aの形成、および配線本体5aと被膜層61aとの電気的な一体化が確実に行われたことによるものと考えられる。
【0069】
次に、銅合金膜4aの添加元素を、8at.%のマンガン(Mn)とし、透明導電膜3aをITO膜(無機元素がインジウム(In)とスズ(Sn))とし、熱処理を300℃、30分として形成した積層膜(金属配線70)の濃度分布の測定結果について、図5を用いて説明する。この図5において、横軸は積層膜表面からの距離(nm)であり、縦軸は濃度(%)である。
【0070】
表面からの深さに応じて、図5の領域M1は被膜層62a、領域M2は配線本体5a、領域M3は被膜層61a、領域M4は絶縁性透明基板2aとなる。配線本体5a(領域M2)には、ほぼ銅(Cu)のみが存在し、ITO膜が分解して形成された被膜層61a(領域M3)には、MnとInとCuが存在している。また、絶縁性透明基板2aに接していない被膜層62a(領域M1)にも、MnとInとCuとが存在しているが、MnとInの濃度は、被膜層61a中のMnとInより低いレベルとなっている。この濃度分布測定結果から、銅合金膜4a中のMnが当該銅合金膜4aから拡散し配線本体5aがほぼ純銅に近いものとなるとともに、被膜層61a、62aに拡散していることが分かる。また、透明導電膜3a中のInの一部が銅合金膜4aを通り抜けて表面まで拡散し被膜層62aを形成していることが分かる。
【0071】
次に、銅合金膜4aの添加元素を、4at.%のマンガン(Mn)とし、透明導電膜3aをITO膜(無機元素がインジウム(In)とスズ(Sn))とし、熱処理を300℃、30分として形成した積層膜(金属配線70)の断面写真、およびその積層膜の各部位で行った化学成分分析結果について、図6を用いて説明する。この図6において、断面写真からは、透明導電膜(ITO)3aが分解して形成された被膜層61aと、配線本体5aとの間はハッキリとした界面を形成するには至らず、配線本体5aと被膜層61aとは、一体化し連続したものとなっている。一方、化学成分分析結果から、この被膜層61aには、銅合金膜4aからのMn、Cu、透明導電膜3aのIn、および絶縁性透明基板からのSi、Cが酸化物として存在し、複合酸化物からなる層を形成していることが分かる。また、配線本体5aには、ほぼ銅(Cu)のみが存在し、表面の被膜層62aには、銅合金膜4aからのMn、Cu、透明導電膜3aのIn、および絶縁性透明基板からのSiが酸化物として存在し、被膜層61aと同様に、複合酸化物からなる層を形成している。但し、Mn、Cu、In、Siの各濃度は、被膜層61a中のそれらより低いレベルとなっている。
【0072】
続いて、本発明の第2の実施形態を図7、図8を用いて説明する。
【0073】
図7は本発明の電子装置用配線基板製造方法の第2の実施形態を概略的に示す図であり、(a)は工程の前半を、(b)は工程の後半をそれぞれ示している。この第2の実施形態が、上記の第1の実施形態と相違しているのは、銅合金膜を透明導電膜より先に成膜する点である。
【0074】
本発明の第2の実施形態における電子装置用配線基板1aは、絶縁性透明基板20上に回路配線を備えたものであり、その製造は、概略下記の手順で行われる。すなわち、図7(a)に示すように、先ず、絶縁性透明基板20上に、添加元素を含む銅からなる銅合金膜40を形成し、次にその銅合金膜40上に、無機元素の酸化物からなる透明導電膜30を形成する。
【0075】
続いて、所定条件下での熱処理により、銅合金膜40中の添加元素を当該銅合金膜40から拡散させて当該銅合金膜40を銅と微量の添加元素とからなる配線本体50とするとともに、その配線本体50の外周側に、複合酸化物からなる厚みの異なる2種の被膜層60を形成する。
【0076】
この被膜層60は、銅合金膜40上の透明導電膜30が分解して形成された厚み大である被膜層610と、絶縁性透明基板20に接している厚み小である被膜層620とからなる。
【0077】
この第2の実施形態によると、銅合金膜40中の添加元素を当該銅合金膜40から拡散させ、配線本体50をほぼ純銅に近いものとすることができ、配線本体50の抵抗を大幅に小さくすることができる。また、透明導電膜30が分解して形成された被膜層610は、配線本体50との間でハッキリとした界面を形成するには至らず、配線本体50と被膜層610とは、電気的に連続となっており、双方間の接触抵抗は小さい。このため、配線本体50と被膜層610とからなる、配線全体としての積層膜の電気抵抗を減少させることができ、消費電力を低減することができる。
【0078】
図8は第2の実施形態のより具体的な製造方法を説明するための図である。ここでは、上記の第1の実施形態の場合と同様に、タッチパネルの金属配線を製造する場合について説明する。なお、図8において、図7と略同一の構成要素には、図7に付した符号に添え字aを付加した符号を付している。
【0079】
金属配線70の製造は、先ず図8(a)に示すように、絶縁性透明基板20a上に銅合金膜40aを成膜する工程で開始し、得られた成膜はエッチングによってパターニングされる。
【0080】
次に、図8(b)に示すように、銅合金膜40aを覆うように透明導電膜30aを成膜する。
【0081】
続いて、図8(c)に示すように、レジスト膜80を塗布して焼成し、その後図8(d)に示すように、露光・現像を行ってエッチングによりパターニングを行う。
【0082】
その後、レジスト膜80の剥離・洗浄を行い(図8(e))、絶縁性透明基板20a、銅合金膜40a、透明導電膜30aからなる積層体に所定条件下での熱処理を施す。この熱処理によって、銅合金膜40a中の添加元素が当該銅合金膜40aから拡散し、当該銅合金膜40aが銅と極微量の添加元素とからなる配線本体50aとなるとともに、その配線本体50aの外周側に、複合酸化物からなる被膜層60aが形成される(図8(f))。
【0083】
被膜層60aは、銅合金膜40aと接する側の透明導電膜30aが分解して形成された厚み大である被膜層610aと、透明導電膜30aに接していない、銅合金膜周囲の厚み小である被膜層620aとからなる。
【0084】
最後に、図8(g)に示すように、配線本体50aと被膜層60aとからなる積層膜を、二酸化珪素からなる保護膜90で覆う。このようにして、絶縁性透明基板20a上に、配線本体50aと被膜層60aとからなる金属配線70aを回路配線として備えた入力装置用配線基板(電子装置用配線基板)10aが製造される。
【0085】
この第2の実施形態においても、上記の第1の実施形態の場合と同様に、配線全体としての積層膜の電気抵抗低減、配線本体と厚み大である被膜層との界面での導電特性がオーミック特性を示すこと、金属配線の表面の耐薬品性、耐腐食性の向上等の諸効果を発揮させることができた。
【符号の説明】
【0086】
1,1a 電子装置用配線基板
2,2a,20,20a 絶縁性透明基板
3,3a 透明導電膜
4,4a 銅合金膜
5,5a 配線本体
6,6a 被膜層
8,80 レジスト膜
9,90 保護膜
10,10a 入力装置用配線基板(電子装置用配線基板)
11 第1の電極パターン
11a パッド部
12 第2の電極パターン
12a パッド部
13 交差部分
14,15 導電部材
30,30a 透明導電膜
40,40a 銅合金膜
50,50a 配線本体
60,60a 被膜層
61,61a,610,610a 被膜層(厚み大)
62,62a,620,620a 被膜層(厚み小)
70,70a 金属配線
70t 接続端子
71,72 金属配線
100 表示装置
101 画像表示装置
102 入力装置
102a 入力領域
104 フレキシブルフラットケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性透明基板上に回路配線を備えた電子装置用配線基板において、
前記回路配線は、
銅と微量の添加元素とからなる配線本体と、
前記配線本体の外周側に形成された、前記絶縁性透明基板に接している第1の被膜層と、
前記絶縁性透明基板に接していない第2の被膜層と、を有し、
前記第1および第2の被膜層は、膜厚みが異なるとともに、厚み大である被膜層は、透明な酸化物導電膜を形成しうる無機元素の酸化物と、前記添加元素の酸化物とを含む複合酸化物であり、
前記第1および第2の被膜層中の前記添加元素の濃度は、前記配線本体中の前記添加元素の濃度よりも高い、
ことを特徴とする電子装置用配線基板。
【請求項2】
前記第1および第2の被膜層の内、厚み小である被膜層は、前記厚み大である被膜層と同一の構成元素からなる複合酸化物層である、請求項1に記載の電子装置用配線基板。
【請求項3】
前記無機元素は、インジウム、ガリウム、スズおよび亜鉛の内の少なくとも1つである、請求項1または2に記載の電子装置用配線基板。
【請求項4】
前記添加元素は、クロム、マンガン、バナジウム、アルミニウムおよびマグネシウムの内の少なくとも1つである、請求項1から3の何れか1項に記載の電子装置用配線基板。
【請求項5】
前記厚み大である被膜層における前記添加元素と前記無機元素の各濃度は、前記厚み小である被膜層におけるそれより高い、請求項1から4の何れか1項に記載の電子装置用配線基板。
【請求項6】
前記配線本体と前記厚み大である被膜層との界面での導電特性は、オーミック特性を示す、請求項1から5の何れか1項に記載の電子装置用配線基板。
【請求項7】
前記厚み大である被膜層は、膜厚が5nm以上で50nm以下であり、
前記配線本体は、膜厚が100nm以上で1000nm以下である、請求項1から6の何れか1項に記載の電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の電子装置用配線基板を用いて構成した、ことを特徴とするタッチパネル。
【請求項9】
絶縁性透明基板上に回路配線を備えた電子装置用配線基板の製造方法において、
前記絶縁性透明基板上に、無機元素の酸化物からなる透明導電膜を形成する工程と、
前記透明導電膜上に、添加元素を含む銅からなる銅合金膜を形成する工程と、
所定条件下での熱処理により、前記銅合金膜中の前記添加元素を当該銅合金膜から拡散させて当該銅合金膜を銅と微量の前記添加元素とからなる配線本体とするとともに、その配線本体の外周側に、複合酸化物からなる厚みの異なる2種の被膜層を形成する熱処理工程と、を有し、
前記被膜層は、前記配線本体と前記絶縁性透明基板との間の前記透明導電膜が分解して形成された厚み大である被膜層と、前記絶縁性透明基板に接していない厚み小である被膜層とからなる、
ことを特徴とする電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項10】
絶縁性透明基板上に回路配線を備えた電子装置用配線基板の製造方法において、
前記絶縁性透明基板上に、添加元素を含む銅からなる銅合金膜を形成する工程と、
前記銅合金膜上に、無機元素の酸化物からなる透明導電膜を形成する工程と、
所定条件下での熱処理により、前記銅合金膜中の前記添加元素を当該銅合金膜から拡散させて当該銅合金膜を銅と微量の前記添加元素とからなる配線本体とするとともに、その配線本体の外周側に、複合酸化物からなる厚みの異なる2種の被膜層を形成する熱処理工程と、を有し、
前記被膜層は、前記銅合金膜上の前記透明導電膜が分解して形成された厚み大である被膜層と、前記絶縁性透明基板に接している厚み小である被膜層とからなる、
ことを特徴とする電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記厚み大、小の2種の被膜層の各々は、前記透明導電膜を構成する無機元素の酸化物と、前記添加元素の酸化物とを含む、請求項9または10に記載の電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記透明導電膜を構成する前記無機元素は、インジウム、ガリウム、スズおよび亜鉛の内の少なくとも1つである、請求項9から11の何れか1項に記載の電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記銅合金膜中の前記添加元素は、酸化物形成エネルギーの絶対値が、前記透明導電膜を構成する前記無機元素の酸化物形成エネルギーの絶対値より大きい、請求項9から12の何れか1項に記載の電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項14】
前記銅合金膜中の前記添加元素は、クロム、マンガン、バナジウム、アルミニウムおよびマグネシウムの内の少なくとも1つである、請求項9から13の何れか1項に記載の電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項15】
前記銅合金膜中の前記添加元素は、濃度が0.2at.%以上で、10at.%以下である、請求項9から14の何れか1項に記載の電子装置用配線基板の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理は、酸素を含む不活性気体からなる気流中で、または減圧下での酸素雰囲気からなる気流中で、150℃以上500℃以下の温度で行う、請求項9から15の何れか1項に記載の電子装置用配線基板の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−54010(P2011−54010A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203459(P2009−203459)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)東北経済産業局、平成21年度地域イノベーション創出研究開発事業の委託研究成果に係る特許出願
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(591124765)ジオマテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】