説明

電子部品、電子部品用基材及びその製造方法

【課題】接続端子が微細化された場合であっても、十分なストローク量及び端子荷重を確保することができる電子部品、電子部品用基材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】貫通孔2f及びこの貫通孔2fに連通する溝20a、20b、20c、21a、21b、21cが形成された板状の基材本体2と、この基材本体2の貫通孔2f及び溝20a、20b、20c、21a、21b、21cに充填された樹脂の充填部14a、14b、14c及び基材本体2の少なくとも一方の面に樹脂の充填部14a、14b、14cと一体に形成された樹脂の突状弾性部10a、10bを有し貫通孔2fの両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体3と、他の電子部品と接触する部分が突状弾性部10a、10bの頂部に位置するように基材本体2に取り付けられた接続端子40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を電気基板等に実装する際に使用されるソケットなどに用いられ、接続端子と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保するために、前記接続端子に付勢力を付与可能な電子部品、電子部品用基材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数の電極端子を有するCPUやMPU等の電子部品をプリント基板上に取り付け、電子部品の電極端子とプリント基板の回路とを電気的に接続するために、電子部品用ソケットが使用されている。このような電子部品用ソケットには、ソケット本体の接続端子自体をバネ状に加工することによって、接続端子に付勢力を付与したものがあり、このような電子部品用ソケットは、電子部品をソケット本体に対して押圧することにより、電子部品の電極端子とソケット本体の接続端子との電気的接続を確保することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−158430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、CPUなどの電子部品の電極端子の端子間距離を狭くする傾向にあり、これに対応するために、電子部品用ソケットの接続端子の間隔も狭める必要がある。しかしながら、接続端子の間隔を狭めるためには、接続端子自体を微細化する必要があり、このように微細化された接続端子によっては、十分なストローク量及び端子荷重を実現することが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、接続端子が微細化された場合であっても、十分なストローク量及び端子荷重を確保することができる電子部品、電子部品用基材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、本発明に係る電子部品は、貫通孔及びこの貫通孔に連通する溝が形成された板状の基材本体と、この基材本体の前記貫通孔及び溝に充填された樹脂の充填部、及び前記基材本体の少なくとも一方の面に前記樹脂の充填部と一体に形成された樹脂の突状弾性部を有し、前記貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体と、他の電子部品と接触する部分が前記突状弾性部の頂部に位置するように前記基材本体に取り付けられた接続端子とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る電子部品用基材は、貫通孔及びこの貫通孔に連通する溝が形成された板状の基材本体と、この基材本体の前記貫通孔及び溝に充填された樹脂の充填部、及び前記基材本体の少なくとも一方の面に前記樹脂の充填部と一体に形成され他の電子部品と接触する接続端子の接触部に所定の端子荷重を付与する樹脂の突状弾性部を有し、前記貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電子部品用基材において、前記基材本体は、その両面に前記溝が形成され、前記突状弾性部は、前記基材本体の両面の前記溝上に形成されるとしても良いし、一方の面に前記溝が形成され、前記突状弾性部は、前記基材本体の他方の面の前記貫通孔が形成された位置に形成されるとしても良い。
【0009】
また、本発明に係る電子部品用基材の製造方法は、貫通孔及びこの貫通孔に連通する溝が形成された板状の基材本体を形成する基材本体形成工程と、突状弾性部を形成する金型キャビティが少なくとも一方に形成された第1の金型及び第2の金型を、前記金型キャビティ、前記貫通孔及び前記溝が連通するように、前記基材本体の両面にそれぞれ設置する金型設置工程と、前記第1及び第2の金型の少なくとも一方から前記溝を介して前記金型キャビティ及び前記貫通孔に樹脂を充填して、前記貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体を形成する樹脂注入工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電子部品用基材の製造方法において、前記基材本体形成工程は、前記基材本体の両面に溝を形成する工程であり、前記金型設置工程は、前記突状弾性部を形成する金型キャビティがそれぞれ形成された前記第1及び第2の金型を前記基材本体の両面に設置する工程であり、前記樹脂注入工程は、前記第1の金型から前記第1の金型に面する溝を介して前記第1の金型の金型キャビティに樹脂を充填すると共に、前記第1の金型に面する溝、前記貫通孔及び前記第2の金型に面する溝を介して前記第2の金型の金型キャビティに樹脂を充填する工程であるとしても良い。
【0011】
また、本発明に係る電子部品用基材の製造方法において、前記基材本体形成工程は、前記基材本体の一方の面に溝を形成する工程であり、前記金型設置工程は、第1の金型を前記基材本体の一方の面に設置すると共に、前記突状弾性部を形成する金型キャビティが形成された第2の金型を前記基材本体の他方の面に設置する工程であり、前記樹脂注入工程は、前記第1の金型から前記溝及び前記貫通孔を介して前記第2の金型の金型キャビティに樹脂を充填する工程であるとしても良い。
【0012】
本発明に係る電子部品によれば、基材本体に突状弾性部を有する樹脂成型体を形成すると共に、他の電子部品と接触する部分が突状弾性部の頂部に位置するように接続端子を基材本体に取り付けたので、接続端子と他の電子部品との接続時に、突状弾性部の頂部で接続端子の接続部を他の電子部品に押し付けることができる。これにより、接続端子が微細化された場合であっても、十分なストローク量及び端子荷重を確保することができる。
【0013】
また、本発明に係る電子部品用基材によれば、貫通孔及び溝に充填された樹脂の充填部、及びこれらと一体に形成された上述の突状弾性部を有する樹脂成形体における貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成しているので、突状弾性部が基材本体から剥がれることがなく、信頼性の高い電子部品用基材を提供することができる。
なお、基材本体の両面に溝が形成され、突状弾性部が、基材本体の両面の溝上に形成されていると、基材本体の両側に接続端子を配置することができ、両面からそれぞれ他の電子部品との接続を図ることができる。
また、基材本体の一方の面に溝が形成され、突状弾性部が、前記基材本体の他方の面の前記貫通孔が形成された位置に形成されていると、基材本体の一方側に接続端子を配置することができ、一方の面において他の電子部品との接続を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る電子部品用基材の製造方法によれば、溝を介して金型キャビティ及び貫通孔に樹脂を充填して、貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体を形成するので、基材本体から第1の金型及び第2の金型を離間する際に、樹脂成型体が金型に貼り付いて基材本体から剥がれることがなく、電子部品用基材の製造の安定性を確保することができる。
なお、突状弾性部を形成する金型キャビティがそれぞれ形成された第1及び第2の金型を基材本体の両面に設置し、第1の金型から第1の金型に面する溝を介して第1の金型の金型キャビティに樹脂を充填すると共に、第1の金型に面する溝、貫通孔及び第2の金型に面する溝を介して第2の金型の金型キャビティに樹脂を充填することにより、突状弾性部を基材本体の両面に有する樹脂成型体を形成することができる。
また、第1の金型を基材本体の一方の面に設置すると共に、突状弾性部を形成する金型キャビティが形成された第2の金型を基材本体の他方の面に設置し、第1の金型から溝及び貫通孔を介して第2の金型の金型キャビティに樹脂を充填することにより、基材本体の他方の面に溝を形成することなく、突状弾性部を基材本体の他方の面にのみ有する樹脂成型体を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、接続端子が微細化された場合であっても、十分なストローク量及び端子荷重を確保することができる電子部品、電子部品用基材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品用基材を示す正面斜視図である。
【図2】本実施形態に係る電子部品用基材の製造工程を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る電子部品用基材に溝及び貫通孔を形成した状態を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る電子部品用基材に接続端子を設けた電子部品を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A´線に沿った断面図である。
【図6】他の実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
【図7】図6のB−B´線に沿った断面図である。
【図8】他の実施形態に係る電子部品用基材の製造工程の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る電子部品用基材の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係る電子部品用基材1は、図1及び図2に示すように、方形の板状に形成された基材本体2と、基材本体2の表面2a及び裏面2bに形成される複数の突状弾性部10a、10bを含む樹脂成型体3とを備えている。
【0018】
基材本体2は、後述する突状弾性部10a、10bのインサート成型時の温度及び圧力に対する耐性、及び突状弾性部10a、10bを構成する樹脂との密着性を有する樹脂によって形成されている。このような樹脂としては、例えばガラス繊維強化エポキシ材、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など撓みの少ない剛性を有するエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックなどがある。このような剛性を有する樹脂により基材本体2を形成することにより、基材本体2の撓みにより生じる突状弾性部10a、10bの機械寸法及び機械特性の精度の低下を防止することができる。
【0019】
基材本体2の表面2aには、その一の側端2cから他の側端2dまで延びる3本の溝20a、20b、20cが等間隔に並列させて形成され、裏面2bの、各溝20a、20b及び20cのそれぞれに対向する位置には、溝21a、21b及び21cが、溝20a、20b、20cと同様に並列されて形成されている。また、基材本体10a、10bの対応する各溝20a及び21a、20b及び21b、20c及び21cには、それぞれ溝21a、21b、21cから溝20a、20b、20cに貫通する貫通孔2fが、突状弾性部10a、10bの形成される位置に形成されている。これら溝20a、20b、20c及び溝21a、21b、21cは、後述するように突状弾性部10を成型する樹脂をこれら溝の長手方向に流動させるのに十分な深さを有する。ここで、貫通孔2fの開口幅は、溝20a、20b、20c及び溝21a、21b、21cの溝幅よりも狭いことが好ましい。
【0020】
突状弾性部10a、10bは、円錐台形状で形成されており、その軸心が貫通孔2f上に位置するように、溝20a、20b、20c及び溝21a、21b、21c上にそれぞれ3つずつ等間隔をおいて設けられている。
【0021】
突状弾性部10a、10bは、本実施形態に係る電子部品用基材1に設けられる接続端子を他の電子部品の導電部と所望の接触荷重で電気的に接続できるように付勢力を付与可能な弾性を有し、上述した基材本体2を形成する樹脂と密着性を有する樹脂によって形成されている。このような樹脂としては、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどがある。この際、基材本体2と付勢力を付与可能な弾性を有する樹脂との密着性を向上させるために、基材本体2の表面にプライマ処理(プライマ剤の塗布)を行なっても良い。
【0022】
溝20a、20b、20c、溝21a、21b、21c及び貫通孔2fには、突状弾性部10a、10bを構成する樹脂と同一の樹脂が充填されており、溝20a、20b、20c、溝21a、21b、21c及び貫通孔2fに充填された樹脂からなる充填部14a、14b、14cは、突状弾性部10a、10bと一体的に樹脂成型体3を形成している。
【0023】
次に、この電子部品用基材1の製造方法について、図2及び図3に基づいて説明する。まず、図2(a)及び図3に示すように、基材本体2の表面2aの一の側端2cから他の側端2dまで延びる溝20a、20b、20cを形成し、同様にして基材本体2の裏面2bに溝21a、21b、21cを形成する(溝形成工程)。次に、基材本体2の裏面側に形成された各溝21a、21b、21cから表面側に形成された各溝20a、20b、20cに貫通する貫通孔2fを、突状弾性部10a、10bが形成される位置に形成する(貫通孔形成工程)。ここで、基材本体2の溝20a、20b、20c、21a、21b、21c及び貫通孔2fは、これら溝20a、20b、20c、21a、21b、21c及び貫通孔2fを有する基材本体2を射出成型等することにより、1工程で形成されても良い。次に、図2(b)に示すように、突状弾性部成型用の金型30を基材本体2に設置する(金型設置工程)。この金型30は、基材本体2の表面2a全域を覆うように構成された上金型33と、基材本体2の裏面2b全域及び側面を覆うように構成された下金型34とによって構成されており、上金型33には、基材本体2に設置した際に、各溝20a、20b、20cに連通する樹脂注入孔31が形成され、基材本体2の表面2aに対向する面30aの突状弾性部10aが形成される領域と整合する位置に、突状弾性部10aと同一形状のキャビティ32aが形成され、下金型34には、基材本体2の裏面2bに対向する面30bの突状弾性部10bが形成される領域と整合する位置に、突状弾性部10bと同一形状のキャビティ32bが形成されている。上述のように突状弾性部10a、10bは、基材本体2の表面側の溝20a、20b、20c及び裏面側の溝21a、21b、21c上に形成されるので、金型30を基板本体2に設置すると、表面側の溝20a、20b、20c及び裏面側の溝21a、21b、21cは、貫通孔2fを介してキャビティ32a及び32bに連通する状態となる。
【0024】
次に、図2(c)に示すように、樹脂注入孔31から裏面側の溝21a、21b、21cに溶融状態もしくは未架橋で流動性のある樹脂を注入することによって、溝21a、21b、21c、貫通孔2f、及び表面側の溝20a、20b、20c内に樹脂を流動させ、それに連通するキャビティ32a、32bに樹脂を充填する(樹脂注入工程)。
【0025】
次に、表面側の溝20a、20b、20cと、裏面側の溝21a、21b、21cと、貫通孔2fと、キャビティ32a、32bとに充填された樹脂を溶融状態から冷却により固化させた後、又は架橋反応により固化させた後、金型30を基材本体2から離間させる。これにより、基材本体2の表面2aには、溝20a、20b、20cに充填された樹脂からなる帯状の充填部14aとキャビティ32aに充填された樹脂からなる突状弾性部10aとが一体として成型され、基材本体2の裏面2bには、溝21a、21b、21cに充填された樹脂からなる帯状の充填部14bとキャビティ32bに充填された樹脂からなる突状弾性部10bとが一体として成型される。また、これら充填部14a及び突状弾性部10aと充填部14b及び突状弾性部10bとは、貫通孔2fに充填された樹脂からなる充填部14cを介して一体として成型される。以上の工程により、本実施形態に係る電子部品用基材1を得ることができる(図1及び図2(d)参照)。
【0026】
なお、上記金型設置工程の前に、基材本体2の溝20a、20b、20cを含む表面2a及び溝21a、21b、21cを含む裏面2bにプライマ処理を施しておくと、突状弾性部10a、10b及び充填部14a、14b、14cと基材本体2との密着性を向上させることができる。プライマ剤の塗布量は、一般に1〜10μm程度の厚さであるが、プライマ剤の粘度が高い場合や、基材本体2が微細な凹凸を持ちプライマ剤を均一に塗布することが困難である場合には、これよりも多くしても良い。
【0027】
本実施形態に係る電子部品用基材1の製造方法によれば、突状弾性部10a、10bと充填部14a、14b、14cとの成型に際し、溶融状態の樹脂を基材本体2の溝20a、20b、20c内を流動させ、溝20a、20b、20cからキャビティ32aに樹脂を充填させると共に、溝20a、20b、20cから貫通孔2f及び溝21a、21b、21cを介してキャビティ32bに樹脂を充填させるため、表面に樹脂注入痕が存在しない突状弾性部10a、10bを基材本体2の表面2a及び裏面2bに成型することができる。これにより、突状弾性部10a、10bの高さや形状のバラつきによる機械寸法及び機械特性のバラつきを無くすことができると共に、金型を簡素化し、金型費用の抑制を図ることができる。また、突状弾性部10a、10bの切削及び研磨等の後処理が不要となるため、加工工数が少なく、かつ後処理による仕上がり寸法の変化がない安定した形状の突状弾性部10a、10bを形成することができる。
【0028】
また、突状弾性部10a、10bと充填部14a、14bとが一体として成型されるため、基材本体2とこれら突状弾性部10a、10b及び充填部14a、14bとの接触面積が大きくなり、基材本体2に突状弾性部10a、10b及び充填部14a、14bを強固に接着させることができる。さらに、基材本体2の表面側の突状弾性部10a及び充填部14aと裏面側の突状弾性部10b及び充填部14bとを貫通孔2fに充填された樹脂からなる充填部14cを介して一体として成型し、樹脂成型体3を形成することにより、貫通孔2fの両端に位置する樹脂、すなわち表面側の充填部14a及び裏面側の充填部14bが貫通孔2fの両端に係止されることにより相互の抜け止めを形成するため、金型30の離間時に各突状弾性部10a及び10bが金型30に貼り付いて基材本体2から剥がれるのを抑制することができ、電子部品用基材1の製造の安定性を確保することができる。
【0029】
さらに、突状弾性部10a、10bの後処理が不要であることから、金型30の設計に際しては突状弾性部10a、10bの切削量や研摩量等を考慮することなく、突状弾性部10a、10bの仕上がり寸法で設計することができる。従って、要求される精度の金型によって成型すれば、所望する仕上がり精度の突状弾性部10a、10bを成型することができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る電子部品用基材1を使用した電子部品100について、図4及び図5に基づいて説明する。本実施形態に係る電子部品100には、図4に示すように、突状弾性部10a、10bと同数の接続端子40が各突状弾性部10a、10bと対となって設けられている。この接続端子40は、図5に示すように、銅合金(燐青銅やべリリウム銅等)などの導電性材料からなる帯状の平板をほぼコ字状に湾曲させて形成されている。接続端子40のコ字の水平部40a、40eは、突状弾性部10a、10bの上面(頭頂部)の上方に上面の中心を通る径方向の一端から他端に亘って位置する。この水平部40a、40eは、他の電子部品の導電部と電気的に接続する接触部として機能する。コ字の垂直部は、基材本体2の突状弾性部10a、10bの側方に基材本体2の表面2aから裏面2bまで貫通して形成された孔2eに挿入される支持部40cと、支持部40cの上端から突状弾性部10a、10bの斜面に沿って斜め上方又は下方に延びて水平部40a、40eの基端に連結する連結部40b、40dとから構成されている。基材本体2に形成された孔2eは、表面側の溝20a、20b、20c及び裏面側の21a、21b、21cを除いた領域に形成されている。この接続端子40は、例えば、板状の接続端子を基材本体の孔2eに圧入した後、板金加工を施してほぼコ字状に変形させることにより基材本体2に設けられる。
【0031】
このような接続端子40が設けられた電子部品100は、他の電子部品の導電部を接続端子40の水平部40a、40eに押圧すると、その水平部40a、40eが突状弾性部10a、10bの上面を押圧するので、突状弾性部10a、10bの復元力により水平部40a、40eに上方又は下方への付勢力が付与され、接続端子40と他の電子部品の導電部との電気的接続を確保することができる。また、本実施形態に係る電子部品100は、突状弾性部10a、10bの弾性変形により接続端子40に付勢力を付与しているので、接続端子40に多少の高さ不整などがあっても、接続安定性を確保することができ、さらに、十分なストローク量及び端子荷重を実現することができる。
【0032】
また、この発明によると、接続端子40はバネ性の高い合金(燐青銅やべリリウム銅)である必要はなく、より導電率の高い銅合金、例えば純銅(無酸素銅やタフピッチ銅、電解銅など)やそれに近い組成の、より柔軟な銅合金を用いても、充分な付勢力を付与することができる。
【0033】
本実施形態に係る電子部品用基材1において、表面側の溝20a、20b、20c及び裏面側の溝21a、21b、21cを基材本体2の一の側端2cから他の側端2dに亘って形成したが、基材本体2の一の側端2cから他の側端2dに亘らず、表面2a上にのみ形成しても良い。また、基材本体2の貫通孔2fは、突状弾性部10a、10bが成形される位置に形成されるとしたが、これに限定されず、突状弾性部10a、10bから外れた位置であっても、基材本体2の裏面2bに形成された溝21a、21b、21cから注入された樹脂を基材本体2の表面2aに形成された溝20a、20b、20cに流動させることができる位置に形成されていれば良い。
【0034】
また、基材本体2の裏面2bには、基材本体2の一の側端2cから他の側端2dまで延びる3本の溝21a、21b、21cが形成されるとしたが、これに限定されず、例えば貫通孔2f毎に設けられた凹部であっても良い。すなわち、基材本体2の表面2a又は裏面2bのいずれか一方に樹脂の流路として機能する溝が形成されていれば良い。基材本体2の裏面2bに凹部を形成する場合において、凹部は、基材本体2の貫通孔2fとともに断面逆T字又はL字をなす形状、又は貫通孔2fの中心軸に直交する断面が貫通孔2fの断面よりも大きい断面を有する形状で形成されることが好ましい。このように、基材本体2の裏面2bに形成された凹部が貫通孔2fとともに断面逆T字又はL字をなす形状、又は貫通孔2fの中心軸に直交する断面が貫通孔2fの断面よりも大きい断面を有する形状で形成されることにより、凹部に充填された樹脂が貫通孔2f内に引きずり込まれることなく貫通孔2fの両端に係止されるため、基材本体2の表面側の突状弾性部10a及び充填部14aが基材本体2から剥離することを防止する抜け止めとなる。
【0035】
また、本実施形態に係る電子部品用基材1において、基材本体2には、その表面2a及び裏面2bに溝20a、20b、20c及び21a、21b、21cが形成され、基材本体2の両面の溝20a、20b、20c、21a、21b、21c上には、突状弾性部10a、10bがそれぞれ形成されるとしたが、これに限定されず、例えば図6及び図7に示すように、基材本体2には、裏面2bにのみ溝21a、21b、21cが形成され、基材本体2の表面2aの貫通孔2fが形成された位置に突状弾性部10aが形成されるとしても良い。
この場合において、本実施形態に係る電子部品用基材1は、例えば図8(a)及び(b)に示すように、基材本体2の裏面2bにのみ溝21a、21b、21cを形成すると共に、基材本体2の表面2aには、突状弾性部10aと同一形状のキャビティ32aが形成された下金型34を設置し、基材本体2の裏面2bには、基材本体2に設置した際に各溝21a、21b、21cに連通する樹脂注入孔31が形成された上金型33を設置して、上金型33の樹脂注入孔31から溝21a、21b、21cを介してキャビティ32a及び貫通孔2fに樹脂を充填することにより、製造することができる。
このような電子部品用基材1´を使用した電子部品100´には、例えば図6及び7に示すように、基材本体2の裏面2b側に水平部40e及び連結部40dが形成されていないほぼ逆L字状の接続端子40´を用いることができる。また、接続端子40´の基端となる支持部40cは、基材本体2の孔2eから基材本体2の裏面2b側に突出し、はんだバンプ41を形成することなどによって固定されても良い。
【0036】
本実施形態に係る電子部品用基材1及び上述した他の実施形態に係る電子部品用基材において、樹脂成型体の構成は、基材本体2の表面2aの溝20a、20b、20c、裏面2bの溝21a、21b、21c及び貫通孔2fに充填された樹脂からなる充填部14a、14b、14cと基材本体2の表面2a及び裏面2bの突状弾性部10a及び10bとにより一体的に形成される構成、基材本体2の表面2aの溝20a、20b、20c、基材本体2の裏面2bの凹部及び貫通孔2fに充填された樹脂からなる充填部と基材本体2の表面2a及び裏面2bの突状弾性部10a及び10bとにより一体的に形成される構成、及び基材本体2の裏面2bの溝21a、21b、21c及び貫通孔2fに充填された樹脂からなる充填部と基材本体2の表面2aの突状弾性部10aとにより一体的に形成される構成を示したが、これに限定されず、樹脂成型体が、貫通孔2fの両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している構成を有していれば良い。
このような貫通孔2fの両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体の構成としては、上述した樹脂成型体の構成の他に、例えば、基材本体の表面に形成された溝、裏面に形成された凹部及び貫通孔に充填された樹脂からなる充填部と基材本体の裏面の突状弾性部とにより一体的に形成される構成、基材本体の表面に形成された溝、裏面に形成された溝及び貫通孔に充填された樹脂からなる充填部と基材本体の裏面の突状弾性部とにより一体的に形成される構成、基材本体の表面に形成された溝及び貫通孔に充填された樹脂からなる充填部と基材本体の表面及び裏面の突状弾性部とにより一体的に形成される構成、及び基材本体の表面に形成された溝、裏面に形成された凹部及び貫通孔に充填された樹脂からなる充填部と基材本体の表面の突状弾性部とにより一体的に形成される構成などがある。
【0037】
本実施形態に係る電子部品用基材1の製造方法において、突状弾性部成型用の金型30には、樹脂注入孔31が上金型33に形成されているとしたが、これに限定されず、下金型34又は上金型33及び下金型34の双方に形成されているとしても良く、上述した樹脂注入工程は、樹脂注入孔31を下金型34に形成した場合においては、下金型34の樹脂注入孔31から表面側の溝21a、21b、21cに溶融状態もしくは未架橋で流動性のある樹脂を注入し、樹脂注入孔31を上金型33及び下金型34の双方に形成した場合においては、上金型33の樹脂注入孔31から表面側の溝20a、20b、20cに溶融状態もしくは未架橋で流動性のある樹脂を注入すると同時に、下金型34の樹脂注入孔31から裏面側の溝21a、21b、21cに溶融状態もしくは未架橋で流動性のある樹脂を注入するとしても良い。
【0038】
本実施形態に係る電子部品100において、接続端子40は、導電性材料からなる帯状の平板をほぼコ字状に湾曲させて形成されるとしたが、これに限定されず、基材本体2の孔2eに導電性材料からなるピンを貫通させると共に、基材本体2の両面2a、2bに、例えばFPC(フレキシブルプリント基板)等の可撓性導電部材を配置し、この基材本体2に設けられたピンと、可撓性導電部材の導電部とを半田等により接合するとしても良い。この場合において、基材本体2に設けられたピンは、ピンを配置した状態において基材本体2をインサート成型する方法、基材本体2を成型した後にピンを孔2eに圧入する方法、又は基材本体2に固定させずに、基材本体2の孔2eにピンを貫通させた状態において、基材本体2の両面に配置した可撓性導電部材の導電部と半田等により接合させる方法などにより、基材本体2の孔2eからの脱落を防止することができる。
【0039】
本実施形態に係る電子部品用基材は、CPU、MPU、メモリ(記憶素子)等に代表される、IC、LSI、VLSI等の半導体パッケージをPCBやFPC(フレキシブルプリント基板)状に実装または搭載する際や、半導体パッケージまたは半導体パッケージの複合体(メモリボード等)を着脱可能な状態で実装または搭載する際に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…電子部品用基材、2…基材本体、2f…貫通孔、3…樹脂成型体、10a、10b…突状弾性部、14a、14b、14c…充填部、20a、20b、20c、21a、21b、21c…溝、30…金型、40…接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔及びこの貫通孔に連通する溝が形成された板状の基材本体と、
この基材本体の前記貫通孔及び溝に充填された樹脂の充填部、及び前記基材本体の少なくとも一方の面に前記樹脂の充填部と一体に形成された樹脂の突状弾性部を有し、前記貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体と、
他の電子部品と接触する部分が前記突状弾性部の頂部に位置するように前記基材本体に取り付けられた接続端子と
を備えたことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
貫通孔及びこの貫通孔に連通する溝が形成された板状の基材本体と、
この基材本体の前記貫通孔及び溝に充填された樹脂の充填部、及び前記基材本体の少なくとも一方の面に前記樹脂の充填部と一体に形成され他の電子部品と接触する接続端子の接触部に所定の端子荷重を付与する樹脂の突状弾性部を有し、前記貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体と
を備えたことを特徴とする電子部品用基材。
【請求項3】
前記基材本体は、その両面に前記溝が形成され、
前記突状弾性部は、前記基材本体の両面の前記溝上に形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の電子部品用基材。
【請求項4】
前記基材本体は、一方の面に前記溝が形成され、
前記突状弾性部は、前記基材本体の他方の面の前記貫通孔が形成された位置に形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の電子部品用基材。
【請求項5】
貫通孔及びこの貫通孔に連通する溝が形成された板状の基材本体を形成する基材本体形成工程と、
突状弾性部を形成する金型キャビティが少なくとも一方に形成された第1の金型及び第2の金型を、前記金型キャビティ、前記貫通孔及び前記溝が連通するように、前記基材本体の両面にそれぞれ設置する金型設置工程と、
前記第1及び第2の金型の少なくとも一方から前記溝を介して前記金型キャビティ及び前記貫通孔に樹脂を充填して、前記貫通孔の両端の樹脂が相互の抜け止めを形成している樹脂成型体を形成する樹脂注入工程と
を備えたことを特徴とする電子部品用基材の製造方法。
【請求項6】
前記基材本体形成工程は、前記基材本体の両面に溝を形成する工程であり、
前記金型設置工程は、前記突状弾性部を形成する金型キャビティがそれぞれ形成された前記第1及び第2の金型を前記基材本体の両面に設置する工程であり、
前記樹脂注入工程は、前記第1の金型から前記第1の金型に面する溝を介して前記第1の金型の金型キャビティに樹脂を充填すると共に、前記第1の金型に面する溝、前記貫通孔及び前記第2の金型に面する溝を介して前記第2の金型の金型キャビティに樹脂を充填する工程である
ことを特徴とする請求項5記載の電子部品用基材の製造方法。
【請求項7】
前記基材本体形成工程は、前記基材本体の一方の面に溝を形成する工程であり、
前記金型設置工程は、第1の金型を前記基材本体の一方の面に設置すると共に、前記突状弾性部を形成する金型キャビティが形成された第2の金型を前記基材本体の他方の面に設置する工程であり、
前記樹脂注入工程は、前記第1の金型から前記溝及び前記貫通孔を介して前記第2の金型の金型キャビティに樹脂を充填する工程である
ことを特徴とする請求項5記載の電子部品用基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−146350(P2011−146350A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8358(P2010−8358)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】