説明

電子部品内蔵基板および電子部品内蔵基板の製造方法

【課題】平面寸法や高さ寸法を大幅に縮小することが可能な電子部品内蔵基板および電子部品内蔵基板の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2枚の配線基板間10,20に電子部品30が配設され、配線基板の少なくとも一方側と電子部品30が電気的に接続され、配線基板10,20どうしが電気的に接続され、配線基板間が樹脂封止されている電子部品内蔵基板100であり、配線基板10の一方側に形成されたボンディングパッド12と電子部品30の電極32はボンディングワイヤ60により電気的に接続され、少なくとも電子部品30の電極32とボンディングワイヤ60との接続部が保護材70により被覆されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品内蔵基板および電子部品内蔵基板の製造方法に関し、より詳細には、電子部品内蔵基板の高さおよび平面積を縮小すると共に、電子部品と基板の電気的接続信頼性を向上させることが可能な電子部品内蔵基板および電子部品内蔵基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化に伴い、電子部品を高密度に実装した電子部品内蔵基板が開発されている。このような電子部品内蔵基板においては、図12に示すような配線基板間に電子部品を搭載し、配線基板間を樹脂により封止した構成のものがある(例えば、特許文献1の図1)。
【特許文献1】特開2003−347722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図12に示す電子部品内蔵基板は、上下の配線基板間の接続にはんだボールを用いているため、上下の配線基板を接続する前に既に搭載されている半導体素子等の電子部品がフラックス塗布、はんだボールリフロー、洗浄等の工程を経ることになり、電子部品に悪影響が及ぶ場合がある。
【0004】
特に、半導体素子等の電子部品をワイヤボンディングにより電子部品内蔵基板に搭載しようとすると、半導体素子のボンディングパッド(アルミニウム製の電極)やボンディングワイヤが外部環境に晒されることになる。
加えて、外力によりボンディングワイヤに変形や断線が生じるおそれや、リフロー後の洗浄工程に酸性の薬品を用いた場合においては、半導体素子のボンディングパッドに腐食が生じるという課題があり、電子部品内蔵基板に半導体素子をワイヤボンディングによって搭載することが困難であるといった課題があった。
【0005】
そこで、本発明者は、半導体素子等の電子部品をワイヤボンディングにより配線基板に搭載する第1の改良方法として、図13,図14に示すような構成に想到した。
図13,図14に示すように、配線基板10にワイヤボンディング接続した電子部品30のボンディングパッドである電極32とボンディングワイヤ60との接続部分をトランスファーモールド等によって樹脂70で封止することにより、第1の配線基板10に積層した第2の配線基板20をはんだボール40で電気的に接続する処理を行っても、電子部品30の電極32とボンディングワイヤ60の接続部分の電気的接続の信頼性の確保やボンディングワイヤ60を保護することが可能になった。この電子部品内蔵基板では、はんだボール40による第1の配線基板10と第2の配線基板の接続後、2つの基板10,20間に、封止樹脂50を充填する。
【0006】
しかしながら、電子部品30全体を樹脂70によりトランスファーモールドすると、図13,図14に示すように、電子部品30の外周部および電子部品30の上部に樹脂70の封止部分が形成されることになり、上下の基板10,20間の間隔が増加し、電子部品内蔵基板100の小型化(薄型化)を阻害する原因になるといった課題がある。また、上下の配線基板10,20間の離間距離が増えるため、上下の配線基板10,20間を接続する際に用いるはんだボール40の径寸法を大きくしなければならず、はんだボール40の設置エリアの増大により、電子部品内蔵基板100の小型化(平面積の縮小)が困難になるといった課題もある。
【0007】
そこで本発明は、電子部品のワイヤボンディング部(接続部)の保護材の被覆範囲を最小限に留めることにより、電子部品側の接続部を確実に保護しつつも、平面寸法(平面積)や高さ寸法を大幅に縮小することが可能な電子部品内蔵基板および電子部品内蔵基板の製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも2枚の配線基板間に電子部品が配設され、前記配線基板の少なくとも一方側と前記電子部品が電気的に接続されていると共に、前記配線基板どうしが電気的に接続され、かつ、前記配線基板間が樹脂封止されている電子部品内蔵基板であって、前記配線基板の一方側に形成されたボンディングパッドと前記電子部品の電極はボンディングワイヤにより電気的に接続されていて、少なくとも前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部が保護材により被覆されていることを特徴とする電子部品内蔵基板である。
【0009】
また、前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部は、前記ボンディングワイヤと前記配線基板の一方側の接続部と、前記ボンディングワイヤにより形成されるワイヤループの頂点部分が露出した状態で前記保護材により被覆されていることを特徴とする。これにより、保護材による被覆範囲を最小限に留めることができるため、電子部品内蔵基板の厚さおよび平面寸法を縮小し、電子部品内蔵基板を小型化することができる。
【0010】
また、前記基板どうしの電気的接続には、はんだボールが用いられていることを特徴とする。
また、前記はんだボールは、コアとなる導体からなる球状体の外表面にはんだを被覆することにより形成されたコア入りはんだボールであることを特徴とする。
これらにより、上下基板間を確実に接続することができる。また銅材のような導体からなる球状体をコアに持つはんだボールを用いることにより、はんだボールをリフローさせた後であっても、導体であるコアが残ることで上下基板の離間距離を一定に保ちながら電気的接続をとることができ、薄肉構造であっても平坦度の高い電子部品内蔵基板を提供することができる。
【0011】
また、他の発明は、第1の配線基板の所定箇所に電子部品を搭載する工程と、前記第1の配線基板に形成されたボンディングパッドと前記電子部品の電極をボンディングワイヤによって電気的に接続するワイヤボンディング工程と、少なくとも前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部を保護材により被覆する工程と、前記第1の配線基板とは別体に形成した第2の配線基板の片側面を、前記電子部品を搭載した前記第1の配線基板の一面側と対向するように、前記第1の配線基板と前記第2の配線基板とを積層すると共に、前記両配線基板をはんだボールをリフローさせることによって電気的に接続する工程と、前記はんだボールをリフローした後、前記第1の配線基板と前記第2の配線基板間を洗浄する工程と、前記第1の配線基板および前記第2の配線基板間を樹脂封止する工程を有することを特徴とする電子部品内蔵基板の製造方法である。
【0012】
また、前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部を保護材により被覆する工程において、前記ボンディングワイヤと前記第1の配線基板のボンディングパッドとの接続部と、前記ボンディングワイヤにより形成されるワイヤループの頂点部分を露出させた状態で前記保護材で被覆することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる電子部品内蔵基板および電子部品内蔵基板の製造方法によれば、平面寸法(平面積)および基板高さを大幅に縮小することが可能になる。また、電気的接続信頼性が高く小型な電子部品内蔵基板を低コストで提供することが可能になる。さらにはトランスファーモールドの金型の製作負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる電子部品内蔵基板の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態における電子部品内蔵基板の横断面図である。図2は、電子部品と配線基板のワイヤボンディング部分の状態を示す模式図である。
【0015】
本実施の形態における電子部品内蔵基板100は、2枚の配線基板10,20の間に電子部品30を搭載し、第1の配線基板である下層側配線基板10と第2の配線基板である上層側配線基板20がはんだボール40により電気的に接続されている。また、下層側配線基板10と上層側配線基板20の間には封止樹脂50が注入されている。下層側配線基板10に形成されたボンディングパッド12と電子部品30に形成された電極32はボンディングワイヤ60により電気的に接続されている。本図面においては、配線基板10,20の表面に形成されている配線の表示を省略している。
【0016】
下層側配線基板10の下面側にははんだなどに代表されるバンプ14が接合されている。一方下層側配線基板10の上面側にはチップキャパシタやチップレジスタ、インダクタ等といった回路部品16の他、半導体チップ等の電子部品30が載置されている。回路部品16は下層側配線基板10の配線(図示せず)にはんだ付けにより取り付けられている。電子部品30は接着剤により下層側配線基板10に取り付けられた後、金ワイヤからなるボンディングワイヤ60により電極32と下層側配線基板10のボンディングパッド12にワイヤボンディングされている。
【0017】
下層側配線基板10に設けられているボンディングパッド12は通常、銅からなるパッドに金メッキを施すことにより形成されている。また、電子部品30に設けられている接続部である電極32はアルミパッドにより形成されている。
下層側配線基板10には、上層側配線基板20が載置され、下層側配線基板10と上層側配線基板20はそれぞれの表面に形成された配線パターン(図示せず)と、はんだボール40により電気的に接続されている。本実施形態においては、導体である銅材からなる球状体に形成された銅コア42の外表面をはんだ44で被覆した銅コア入りのはんだボール40が用いられている。はんだボール40のはんだ44をリフローさせることにより、下層側配線基板10と上層側配線基板20が銅コア42により電気的に接続されるのである。下層側配線基板10と上層側配線基板20は少なくとも銅コア42の径寸法離間した状態で接続されることになる。
【0018】
また、ここでは、銅コア42を有するはんだボール40をリフローさせた後であっても、説明の便宜上、銅コア42の外周がはんだ44に覆われている状態で示しているが、実際の銅コア42を有するはんだボール40をリフローさせると、銅コア42とはんだ44は同心球状にはならないのは言うまでもない。
【0019】
はんだボール40のはんだ44が溶融すると、下層側配線基板10の上面と電子部品30の上面および側面と、上層側配線基板20の下面がはんだ44に含まれていたフラックス等により汚染されてしまう。また、下層側配線基板10と上層側配線基板20の間には、電子部品内蔵基板100の機械的強度を具備させるためと、電子部品30や回路部品16の保護のために封止樹脂50を注入する必要がある。ここで、下層側配線基板10と電子部品30と上層側配線基板20に封止樹脂50を確実に接着させるため、はんだボール40のリフロー後に、下層側配線基板10と上層側配線基板20間の洗浄を行う必要がある。この際、フラックス等の除去には酸が用いられることがあるため、半導体チップなどの電子部品30に設けられている電極32のアルミニウムが侵されてしまうおそれがある。そこで電子部品30の電極32を保護する必要がある。
【0020】
本実施形態においては、電子部品30の電極32と、下層側配線基板10のボンディングパッド12と、のワイヤボンディングが完了した後、下層側配線基板10に上層側配線基板20を積層する前に、電子部品30の電極32を保護材である樹脂70で被覆することを特徴としている。
樹脂70は、図1、図2に示すように、電子部品30の上面側(電極32の形成面)において、少なくとも電極32部分を含む領域を被覆している。樹脂70による被覆部分の形成はエポキシ等の樹脂のポッティングにより行われる。樹脂70で被覆部分を形成する際に、ボンディングワイヤ60により形成されたワイヤループの上端部(頂点)を含む所定部分および下層側配線基板10のボンディングパッド12との接続部分を樹脂70から露出させた状態にすると好適である。これにより、樹脂70の被覆部分の高さ寸法および平面寸法を小さくすることができ、電子部品内蔵基板100の小型化に好都合である。また、下層側配線基板10のボンディングパッド12およびボンディングワイヤ60は金により形成されているため、外部環境に晒されることによる接続部分の劣化や、洗浄に酸等の薬品を用いた場合であっても、ワイヤボンディング部分が侵されるおそれが無いからである。
【0021】
このように、電子部品30の電極32を、薬品に耐性を有する樹脂70からなる保護材で被覆しているので、酸等の強力な洗浄液を用いて配線基板間の洗浄処理を行ったとしても、電極32とボンディングワイヤ60との電気的接続の信頼性を維持することができる。
また、電極32とボンディングワイヤ60との接続の機械的強度も向上できる。保護材である樹脂70は電子部品30の電極32を含む最小限の範囲(高さ方向および幅方向)を被覆しているだけであるので、従来のトランスファーモールドにより形成された樹脂の高さ方向や平面方向の大きさに比べて大幅に高さ寸法および幅寸法を小さくすることができる。
【0022】
同様の理由により、下層側配線基板10と上層側配線基板20の対向面どうしの離間距離をワイヤループの高さで規定することができるので、はんだボール40の径寸法を小さくすることができる。このように小径のはんだボール40を用いることにより、電子部品内蔵基板100の厚さ寸法を薄くすることができると共に、はんだボール40の配設ピッチを狭くすることができるため面積を小さくすることができる。
さらには、樹脂70の幅寸法(平面積)が小さくなることにより、はんだボール40を電子部品30に近い位置に配設することができるので、電子部品内蔵基板100全体としての面積をさらに小さくすることができる。
【0023】
また、ボンディングワイヤ60の全体を保護材である樹脂70により被覆すれば、電子部品内蔵基板100の板厚寸法や平面寸法の小型化が若干阻害されるものの、下層側基板10と上層側基板20の間を封止樹脂50で封止するまでの間に、ボンディングワイヤ60の変形や断線等の事故から保護することができ、ワイヤボンディングによる電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0024】
このように、電子部品内蔵基板100において電子部品30の電極32を含む最小限範囲を樹脂70により保護することで、第1の配線基板である下層側配線基板10と電子部品30との電気的接続の信頼性を低下させることなく、第2の配線基板である上層側配線基板20を積層することができる。また、電子部品内蔵基板100の板厚や面積を大幅に小さくすることができる。本実施の形態においては、ボンディングワイヤ60のほとんどの部分が樹脂70からはみ出した状態になっているが、下層側配線基板10と上層側配線基板20との間には封止樹脂50が注入されるので、ボンディングワイヤ60は封止樹脂50により封止され、ボンディングワイヤ60を充分に保護することができる。
【0025】
(第2実施形態)
図3は本発明にかかる第2実施形態における電子部品内蔵基板の構造を示す横断面図である。本実施形態は、3枚の配線基板10a,10b,10cを板厚方向に積層し、各配線基板間10a,10bおよび10b,10cの間に電子部品である半導体素子30a,30bを搭載すると共に、ワイヤボンディング接続し、各配線基板間10a,10bおよび10b,10cの間をはんだボール40により電気的に接続し、各配線基板間10a,10bおよび10b,10cの間に封止樹脂50を封止した電子部品内蔵基板100である。図示するように、電子部品内蔵基板100の最上部に配設された配線基板10cの上面には、半導体素子30cを搭載し、回路部品16を配設することもできる。図3においては、半導体素子30cは配線基板10cの上面にフリップチップ接続されているが、フリップチップ接続に替えてワイヤボンディング接続を採用しても良い。
【0026】
半導体素子30a,30bはそれぞれ配線基板10a,10bにワイヤボンディング接続することにより配線基板10a,10bに電気的に接続されている。少なくとも電子部品30a,30bの電極32とボンディングワイヤ60の接続部分は、保護材である樹脂70をポッティングすることにより被覆されている。
【0027】
配線基板10cの上面に配設された回路部品16ははんだにより接続されている。フリップチップ接続された半導体素子30cと回路基板10cの間には、アンダーフィル樹脂80が注入されている。
【0028】
(第3実施形態)
図4は本発明にかかる第3実施形態における電子部品内蔵基板の構造を示す横断面図である。
本実施形態は、第1実施形態で説明した電子部品内蔵基板100の上層側配線基板20の上面に半導体素子30bを搭載し、半導体素子30bを上層側配線基板20にワイヤボンディング接続し、封止樹脂50により半導体素子30bを封止したものである。
【0029】
本形態を採用する場合には、上層側基板20上面に半導体素子30bを搭載し、ワイヤボンディングした後、封止樹脂50により封止し、上層側配線基板20の下面にはんだボール40を予め接合した状態としておくことができる(換言すれば、既存のBGAタイプの半導体装置を利用することができる)。半導体素子30aがワイヤボンディング接続され、半導体素子30aの電極32部分を樹脂70により保護した状態とした下層側配線基板10の上面に、BGAタイプの半導体装置に造りこんでおいた上層側配線基板20を積層すれば良い。はんだボール40をリフローし、下層側配線基板10と上層側配線基板20との電気的接続を取った後、下層側基板10と上層側配線基板20の間にエポキシ等の封止樹脂50を注入し封止すれば、図4に示す電子部品内蔵基板100が完成する。
本実施形態によれば、既に提供されているBGAタイプの半導体装置の基板を上層側配線基板20として利用することができ、高密度の電子部品内蔵基板100を提供することが可能である。
【0030】
(第4実施形態)
図5は本発明にかかる第4実施形態における電子部品内蔵基板の構造を示す横断面図である。より具体的には、図14の電子部品内蔵基板に本発明を適用した電子部品内蔵基板の状態を示した模式図である。本実施形態においては、第1実施形態ですでに説明した各部材番号を用いることにより詳細な説明は省略する。
本実施形態における電子部品内蔵基板100は、下層側配線基板10に第1の半導体素子30aがフリップチップ接続され、第1の半導体素子30aの上面に第2の半導体素子30bをスタックし、第2の半導体素子30bの電極32bと下層側配線基板10のボンディングパッド12とがワイヤボンディング接続されている。第1の半導体素子30aと第2の半導体素子30bとは接着剤により接続されている。
【0031】
図5に示すように、第1の半導体素子30aは下層側配線基板10に、はんだ等のバンプ36によりフリップチップ接続させた後にアンダーフィル樹脂80が注入されているので、はんだボール40により配線基板10,20間の接続をした後の洗浄工程を経ても下層側配線基板10と第1の半導体素子30aの接続部の電気的信頼性が低下することはない。第2の半導体素子30bの電極32b部分がアルミニウムパッド等の薬品耐性の低い材料である場合には、先の実施形態と同様に薬品耐性を有する樹脂70で電極32b部分を被覆する必要がある。本実施形態においては、保護材である樹脂70をポッティングすることにより、第2の半導体素子30bの電極32bとボンディングワイヤ60の接続部分を含む第2の半導体素子30bの上面部分の一部を被覆している。樹脂70のポッティング量によっては、図5に示すように、樹脂70が半導体素子30bの上面だけでなく、側面も被覆することがある。
【0032】
この場合においても、第2の半導体素子30bの電極32bに接続されているボンディングワイヤ60により形成されるワイヤループの頂点部分と下層側配線基板10のボンディングパッド12部分を樹脂70から露出させた状態としておけば、樹脂70の高さ方向の寸法を小さくすることができ、電子部品内蔵基板100の薄型化に貢献することは先の実施形態と同様である。
【0033】
(第5実施形態)
以上の実施形態は、電子部品内蔵基板100について説明しているが、本発明は、電子部品内蔵基板100以外にも、電子部品を内蔵したPOP構造の電子部品パッケージ200にも適用することができる。図6は本発明にかかる電子部品内蔵基板を用いたPOP構造の電子部品パッケージの構造を示す横断面図である。このようなPOP構造の電子部品パッケージ200は、第4実施形態で説明した電子部品内蔵基板(半導体パッケージ)100A,100Bを板厚方向に積層することにより形成したものである。
本実施形態を採用することにより、板厚方向の寸法および平面寸法が大幅に小型化され、電気的接続の信頼性の高いPOP構造の電子部品パッケージ200を提供することができる。
【0034】
(電子部品内蔵基板の製造方法)
次に、第1実施形態における電子部品内蔵基板100の製造方法について説明する。図7〜図11は、電子部品内蔵基板を製造する際の各工程における状態を示した説明断面図である。ここで、下層側配線基板10と上層側配線基板20の配線パターンの形成方法については、公知の方法を採用することができるため、ここでは詳細な説明を省略している。
【0035】
図7に示すように、第1の配線基板である下層側配線基板10に電子部品である半導体素子30を位置決めして載置する。半導体素子30は接着剤を介して下層側配線基板10に接着されている。半導体素子30を載置した後、半導体素子30の電極32と下層側配線基板10のボンディングパッド12との間をボンディングワイヤ60により接続し、半導体素子30と下層側配線基板10の配線パターンとを電気的に接続する。半導体素子30の電極32の部分にエポキシ等の樹脂70をポッティングして、電極32を樹脂70により被覆する。樹脂70はこの時点で硬化させる。
【0036】
次に、図8に示すように、回路部品16は下層側配線基板10の配線パターンの露出部分にはんだにより接合される。下層側配線基板10にはすでに半導体素子30がワイヤボンディング接続により搭載されているが、電極32が保護材である樹脂70により被覆されているので、下層側配線基板10に回路部品16を搭載する際に、フラックスやはんだにより電極32が侵されてしまうことがない。すなわち下層側配線基板10と半導体素子30の電気的接続の信頼性を維持することができる。
次に、図9に示すように、下面側に銅コア42を有するはんだボール40が接合された第2の配線基板である上層側配線基板20を位置決めして下層側配線基板10の上面に対向させた状態で載置する。はんだボール40の径寸法は、はんだボール40を構成する銅コア42の径寸法が下層側配線基板10の上面の高さ位置からボンディングワイヤ60のワイヤループの上端面(頂点)の高さ位置までの離間距離より大きい径寸法を有するものが用いられる。
【0037】
上層側配線基板20が下層側配線基板10に位置決めされて載置した後、はんだボール40をリフローし、銅コア42の外周を被覆しているはんだ44を溶融させて、下層側配線基板10と上層側配線基板20を電気的に接続する。はんだボール40のリフローが終わった後、下層側配線基板10と上層側配線基板20の間の空間に残留したフラックス等を除去するための洗浄を行う。洗浄の薬品には酸等を用いることがあるが、半導体チップ30の電極32には保護材である樹脂70が被覆されているので、半導体チップ30の電極32(アルミニウム製)とボンディングワイヤ60との電気的接続の信頼性は、電極32にボンディングワイヤ60を接続した時と同レベルに維持するこができる。
【0038】
次に、図10に示すように、下層側配線基板10と上層側配線基板20との間にエポキシ等の封止樹脂50を注入する。封止樹脂50の注入は、トランスファーモールドや毛細管現象を利用した流し込み方法により行うことができる。
このように、下層側配線基板10と上層側配線基板20の間は封止樹脂50により満たされることになるので、保護材である樹脂70により被覆されていなかったボンディングワイヤ60は、封止樹脂50により保護されることになる。
封止樹脂50の注入が完了した後、図11に示すように、下層側配線基板10の下面側にはんだ等のバンプ14を接合して、電子部品内蔵基板100が完成する。
【0039】
以上に、本発明にかかる電子部品内蔵基板100およびこれを用いたPOP構造のパッケージについて、実施形態に基づいて詳細に説明してきたが、本願発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で各種の改変を行っても本願発明の技術的範囲に属することはいうまでもない。
例えば、以上の実施形態においては、電子部品30として半導体素子を用いて説明しているが、電子部品30は半導体素子に限定されるものではなく、他の電子部品を用いてもよいものはもちろんである。
【0040】
また、第4実施形態に示したように、第1の配線基板である下層側配線基板10と第2の配線基板である上層側配線基板20間に複数の電子部品30a,30bを上下に積層させる際には、下方側の電子部品(半導体素子)30aと下層側配線基板10の接続をフリップチップ接続に替えてワイヤボンディング接続にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態における電子部品内蔵基板の横断面図である。
【図2】電子部品と基板のワイヤボンディング部分の状態を示す模式図である。
【図3】第2実施形態における電子部品内蔵基板の構造を示す横断面図である。
【図4】第3実施形態における電子部品内蔵基板の構造を示す横断面図である。
【図5】第4実施形態における電子部品内蔵基板の構造を示す横断面図である。
【図6】本発明にかかる電子部品内蔵基板を用いたPOP構造の電子部品パッケージの構造を示す横断面図である。
【図7】電子部品内蔵基板を製造する際の各工程における状態を示した説明断面図である。
【図8】電子部品内蔵基板を製造する際の各工程における状態を示した説明断面図である。
【図9】電子部品内蔵基板を製造する際の各工程における状態を示した説明断面図である。
【図10】電子部品内蔵基板を製造する際の各工程における状態を示した説明断面図である。
【図11】電子部品内蔵基板を製造する際の各工程における状態を示した説明断面図である。
【図12】配線基板間に電子部品を搭載し、配線基板間を樹脂により封止した電子部品内蔵基板の従来構造を示す横断面図である。
【図13】電子部品をワイヤボンディングにより配線基板に搭載した電子部品内蔵基板の第1の改良構造を示す横断面図である。
【図14】電子部品をワイヤボンディングにより配線基板に搭載した電子部品内蔵基板の第1の改良構造を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 下方側配線基板
12 ボンディングパッド
14 バンプ
16 回路部品
20 上層側配線基板
30,30a,30b,30c 電子部品(半導体素子)
32,32b 電極
40 はんだボール
42 銅コア
44 はんだ
50 封止樹脂
60 ボンディングワイヤ
70 樹脂(保護材)
80 アンダーフィル樹脂
100 電子部品内蔵基板
200 POP構造パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の配線基板間に電子部品が配設され、前記配線基板の少なくとも一方側と前記電子部品が電気的に接続されていると共に、前記配線基板どうしが電気的に接続され、かつ、前記配線基板間が樹脂封止されている電子部品内蔵基板であって、
前記配線基板の一方側に形成されたボンディングパッドと前記電子部品の電極はボンディングワイヤにより電気的に接続されていて、
少なくとも前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部が保護材により被覆されていることを特徴とする電子部品内蔵基板。
【請求項2】
前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部は、前記ボンディングワイヤと前記配線基板の一方側の接続部と、前記ボンディングワイヤにより形成されるワイヤループの頂点部分が露出した状態で前記保護材により被覆されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品内蔵基板。
【請求項3】
前記配線基板どうしの電気的接続には、はんだボールが用いられていることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品内蔵基板。
【請求項4】
前記はんだボールは、コアとなる導体からなる球状体の外表面にはんだを被覆することにより形成されたコア入りはんだボールであることを特徴とする請求項3記載の電子部品内蔵基板。
【請求項5】
第1の配線基板の所定箇所に電子部品を搭載する工程と、
前記第1の配線基板に形成されたボンディングパッドと前記電子部品の電極をボンディングワイヤによって電気的に接続するワイヤボンディング工程と、
少なくとも前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部を保護材により被覆する工程と、
前記第1の配線基板とは別体に形成した第2の配線基板の片側面を、前記電子部品を搭載した前記第1の配線基板の一面側と対向するように、前記第1の配線基板と前記第2の配線基板とを積層すると共に、前記両配線基板をはんだボールをリフローさせることによって電気的に接続する工程と、
前記はんだボールをリフローした後、前記第1の配線基板と前記第2の配線基板間を洗浄する工程と、
前記第1の配線基板および前記第2の配線基板間を樹脂封止する工程を有することを特徴とする電子部品内蔵基板の製造方法。
【請求項6】
前記電子部品の電極と前記ボンディングワイヤとの接続部を保護材により被覆する工程において、
前記ボンディングワイヤと前記第1の配線基板のボンディングパッドとの接続部と、前記ボンディングワイヤにより形成されるワイヤループの頂点部分を露出させた状態で前記保護材で被覆することを特徴とする請求項5記載の電子部品内蔵基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−153492(P2008−153492A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341004(P2006−341004)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】