説明

電気炉及びその制御方法

【課題】最大供給電力を越える電力量が電源設備から加熱ユニットへ供給される事態を回避できるようにすると共に、過電流を原因とするケーブルの焼損や、ブレーカーの不本意な断動作等を無くすことができるようにする。
【解決手段】炉体内に設けられた複数のヒーターユニット3、炉体1の目標加熱温度を設定する操作部54と、各々のゾーンにおける現在の温度を測定する温度センサー8と、現在の温度と目標加熱温度との差分を基準にしてヒーターユニット3を出力制御する制御装置50とを備え、炉体内のヒーターユニット3の出力と炉内温度上昇との関係を予めゾーン毎に求めた出力対温度特性情報と、温度センサー8から得られる温度測定情報と、操作部54から得られる温度設定情報とに基づいてヒーターユニット3に供給する電力をゾーン毎に制御するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板上に、はんだの粉末にフラックスを加えたソルダペーストを印刷し、その上に電子部品を載せて熱を加え、はんだを溶融して、プリント基板と電子部品とをはんだ付けをするリフロー炉及びその立ち上げ方法に適用可能な電気炉及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板と電子部品をソルダペーストではんだ付けする場合、リフロー炉が使用される場合が多い。リフロー炉は、トンネル状となっており、入り口方向から出口方向に向かって順次、予備加熱ゾーン、本加熱ゾーン、冷却ゾーンを有して構成されている。トンネル内には、入り口方向から出口方向に向かって搬送装置が走行している。該搬送装置は、ソルダペーストが塗布され、該塗布部に電子部品が搭載されたプリント基板を予備加熱ゾーンから冷却ゾーンに向けて搬送する。搬送装置で搬送されるプリント基板は、先ず予備加熱ゾーンで予備加熱され、次いで本加熱ゾーンで本加熱され、そして冷却ゾーンで冷却されてはんだ付けがなされる。
【0003】
リフロー炉は、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンに設置された多数の電熱ヒーターが、それぞれ電源に接続されており、電熱ヒーターと電源間にはスイッチが設置されている。そして多数の電熱ヒーターの近傍には、各電熱ヒーターの近傍の温度を検知する温度センサーが設置されており、該温度センサーは前述スイッチに接続されている。
【0004】
従来のリフロー炉では、リフロー炉の立ち上げ時に、全ての電熱ヒーターに通電して電熱ヒーターを一度に発熱状態にする。そして各電熱ヒーターの近傍の温度が設定温度に達したならば、その温度を温度センサーが感知し、スイッチに信号として送る。温度センサーからの信号を受けたスイッチは、電熱ヒーターへの通電を停止して電熱ヒーターがそれ以上に昇温しないようにする。
【0005】
その後、電熱ヒーターへの通電を停止したことで、電熱ヒーターの近傍の温度が設定温度よりも下がると、それをまた温度センサーが感知して、その信号をスイッチに送り、スイッチは電熱ヒーターに通電するようにして電熱ヒーター周囲を設定温度に戻す。このようにして電熱ヒーター近傍は、或る温度範囲をもって設定温度に保たれる。従って、従来のリフロー炉は、立ち上げ初期は全ての電熱ヒーターに電流が流れるため大電流となるが、それぞれの電熱ヒーター近傍が設定温度になるとスイッチが電熱ヒーターへの通電をON−OFFして、リフロー炉全体の電流量は、立ち上げ初期よりも少なく、立ち上げ初期の略50%程度で推移する。
【0006】
一般にリフロー炉の予備加熱温度は、63Sn−Pb(融点:183℃)のソルダペーストが塗布されたプリント基板場合、約150℃であり、鉛フリーはんだ、例えばSn−3Ag−0.5Cu(融点:217℃)のソルダペーストが塗布されたプリント基板の場合、約160℃である。ソルダペーストが塗布されたプリント基板を予備加熱するのは、ソルダペーストの飛散と電子部品の熱損傷を防ぐためである。
【0007】
つまり、ソルダペーストは溶剤を含むフラックスと粉末はんだとからなるものであるため、ソルダペーストがはんだの溶融温度以上の本加熱温度で急に加熱されると、ボイドの発生原因となる。また電子部品を高温に急加熱すると、ヒートショックで電子部品の機能が劣化するため、予備加熱では電子部品を徐々に加熱して本加熱ゾーンでの高温に対するヒートショックを緩和するようにする。
【0008】
リフロー炉の本加熱ゾーンでは、プリント基板をソルダペースト中の粉末はんだの融点以上に加熱して粉末はんだを溶融させることにより、はんだ付け部にはんだを付着させる。本加熱は、ソルダペーストの粉末はんだが63Sn−Pbである場合、ピーク温度が約230℃であり、粉末はんだが前述鉛フリーはんだの場合、ピーク温度が約235℃である。
【0009】
従って、リフロー炉では、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンの温度が所定の温度、即ち予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンに設置された多数の電熱ヒーター近傍が設定温度になっていないと、はんだ付け不良や電子部品の熱損傷等という不都合を生じさせる原因となる。そのためリフロー炉ではんだ付けを行う場合、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンは、必ず所定の温度になっていなければならない。
【0010】
リフロー炉における加熱は、電熱ヒーターの輻射熱だけのものと、熱風だけのもの、或いは輻射熱と熱風を併用したもの等がある。輻射熱は当然電熱ヒーターを使用しているが、熱風も必ず電熱ヒーターを使用している。つまり熱風を用いたリフロー炉は、熱風を発生する箱内に電熱ヒーターが設置され、該電熱ヒーターの発熱で加熱された気体をファンで吹き出させてプリント基板に当て、プリント基板を加熱するようになっている。
【0011】
従来のリフロー炉における立ち上げ方法は、輻射熱だけのものに限らず熱風のものも立ち上げ初期から、電熱ヒーターには通常使用時の電流、即ち電熱ヒーターの発熱効率が100%発揮できる最適な電流を流していた。例えば、一つの電熱ヒーターの発熱に最適な電流が15Aであれば、立ち上げ初期から電熱ヒーターに15Aの電流を流して、電熱ヒーターの発熱効率を最大限に活用していたものである。
【0012】
図5は従来例に係るリフロー炉の通電制御例を示すグラフ図である(特許文献2)。縦軸はヒーター電流%I[%]であり、横軸は通電時間t[h]である。図5に示すグラフのLとM1の線は、従来のリフロー炉の立ち上げ時における一カ所の電熱ヒーターの通電状態を説明したものである。従来のリフロー炉の立ち上げ時には、電熱ヒーターに通常使用時の100%の電流Lを連続して流し、或る時間αが経過すると、電熱ヒーター近傍設定温度になる。すると、この温度電熱ヒーター近傍に設置された温度センサーが検知し、スイッチに信号を送る。
【0013】
スイッチは、この信号により電熱ヒーターへの通電を停止する。その後、通電停止により電熱ヒーター近傍の温度が設定温度よりも下がると、それを温度センサーが検知し、スイッチに信号を送り、スイッチは電熱ヒーターに通電する。このようにリフロー炉では、電熱ヒーター近傍が設定温度になると電熱ヒーターへのON−OFFが行われ、断続的な電流M1となって設定温度が保たれる。
【0014】
ところで、リフロー炉では、ソルダペーストを加熱溶融したときに、ソルダペーストのフラックスがフュームとなり、それがリフロー炉を構成する金属に付着して結露し、やがてそれが大量に堆積する。するとソルダペーストのフラックス中に含まれているハロゲン化物のような活性剤が金属部分を腐食させるようになる。そこでトンネルを構成するマッフル、プリント基板を搬送する搬送装置、電熱ヒーターを収納する箱、等は、フラックスが付着しても腐食しにくいステンレスで構成されている。
【0015】
しかしながらステンレスは、熱伝導が悪く、しかもリフロー炉は安全構造にしてあるため、マッフルは板厚が厚く、搬送装置のレールが太くなっていて、トンネル内全体を加熱するためには大きい熱量が必要となる。それ故、リフロー炉では、立ち上げ時に冷えたトンネル内を所定の温度に昇温させるために電熱ヒーターは、電力量の大きいものを使用しなければならない。リフロー炉の各ゾーンに設置されたそれぞれの電熱ヒーターの容量は、前述のようにせいぜい15A程度である。この電熱ヒーターは、小さいリフロー炉でも6個、大きいリフロー炉では16個以上というように多数設置されている。従って、リフロー炉の立ち上げ時に、全ての電熱ヒーターに一度に通電すると、240A以上の大電流が流れるようになる。
【0016】
一般に、家庭用電気製品や通信機器を製造する工場では、消費電力の大きな装置が配置されていないため、工場内に導入する電気は大電流を流すような設備が設置されておらず、また太いケーブルも配備されていない。このような工場で大電流が必要なリフロー炉を立ち上げると、配電盤のブレーカーが落ちたり、ケーブルが発熱したりしてしまう。
【0017】
この種のリフロー炉の問題を解決するための技術として、特許文献1には、リフロー装置のヒーター立上げ方法が開示されている。このリフロー装置のヒーター立上げ方法によれば、炉体内に複数のヒーターが配設されたリフロー装置を立上げるにあたり、各ヒーターの立上げ時間をずらすようになされる。つまり、リフロー炉の立ち上げ時、全ての電熱ヒーターを一度に通電せず、一定時間経過毎に順次各ゾーンの電熱ヒーターに通電をしていく。このようにヒーターを立ち上げると、各ヒーターに流す平均電流の合計を少なくして、規定電流が少ない工場などにおいても、電源のダウンという事態を回避できる。大電流を使用できない工場におけるリフロー炉の立ち上げ時の不都合を解消できるというものである。
【0018】
また、特許文献2には、本出願人が先に出願したリフロー炉が開示されている。このリフロー炉によれば、複数の電熱ヒーター、温度センサー、温度調節器及び電力調整器を備える。電熱ヒーターはリフロー炉の予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンとに設置され、電力調整器に接続される。温度センサーは各々の電熱ヒーターの近傍に設置されて温度を検知する。温度調節器は温度センサーに接続され、温度センサーから出力される各々の電熱ヒーターの近傍の温度情報を入力して温度調整情報を電力調整器に出力する。
【0019】
これを前提にして、電力調整器が温度調整情報を入力して複数の電熱ヒーターに流す電流を0〜100%に可変設定する。例えば、リフロー炉の立ち上げ時に全ての電熱ヒーターに、リフロー炉の通常使用の電流に対して20〜80%の電流を連続して流し、それぞれの電熱ヒーター近傍の温度が所定の設定温度に達したならばそれぞれ電熱ヒーターにリフロー炉の通常使用と同一の電流を流すとともに通電のON−OFFを行って設定温度を維持する。このようにリフロー炉を構成すると、リフロー炉の立ち上げ時に大電流を流さないため、大電流使用設備のない工場であても、配電盤のブレーカーが落ちたり、リフロー炉まで這わす配線ケーブルが焼け焦げたりするような問題をおこすことがないというものである。
【0020】
更に、特許文献3には加熱装置の制御方法が開示されている。この加熱装置の制御方法によれば、ワークを搬送するコンベヤに沿って配置された炉体内の複数のゾーンにそれぞれ設けられたヒーターを立上げる場合に、加熱優先度の大きなゾーンと小さなゾーンとを含む複数のゾーンを組み合わせて複数のグループを作成し、各々のグループ内でのヒーターの消費電力を制限するようになされる。このように加熱装置を制御すると、限られた消費電力を有効利用して加熱装置を効果的に立上げることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平 07−212027号公報(第2頁 図1)
【特許文献2】特開2005−125340号公報(第6頁 図1)
【特許文献3】特開2007−078307号公報(第5頁 図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、特許文献1〜3に見られるようなリフロー炉によれば、次のような問題がある。
【0023】
i.プリント基板を規定の予備加熱温度と規定の本加熱温度で加熱しただけでは、部分的に温度が低くて、ソルダペーストが溶けなかったり、部分的に温度が高すぎて電子部品を熱損傷させてしまったりすることがある。これはリフロー炉の加熱状態がプリント基板の温度プロファイルに適合していないからである。ここに温度プロファイルとは、プリント基板をリフロー炉で加熱したときのプリント基板の各部分における温度上昇と加熱時間をグラフ化したものいう。
【0024】
プリント基板の状態、例えば、基板の材質、基板の厚き、基板の大きさ、電子部品の実装密度、電子部品の大きき等によって、それに適した温度プロファイルを描くような加熱条件に設定しなければならない。該温度プロファイルは、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンに設置された全ての電熱ヒーターの設定温度を決めて作られる。
【0025】
例えば、前日使用したソルダペーストの粉末はんだが63Sn−Pbであり、翌日のソルダペーストの粉末はんだがSn主成分の鉛フリーはんだである場合は、当然温度プロファイルを変えなければならない。この温度プロファイルの変更は、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンに設置された電熱ヒーターの設定温度を変えることにより行う。しかしながら特許文献1の立ち上げ方法は、予備加熱ゾーンと本加熱ゾーンに設置された全ての電熱ヒーターの設定温度が前日と変わった場合には、その都度、それぞれの電熱ヒーターヘの通電時間を測らなければならないという手間がかかるものであった。
【0026】
つまり、特許文献1では、それぞれの電熱ヒーターがその設定温度になるまでの時間が分からないため、各電熱ヒーターの設定温度が変わった場合、事前にこの時間を測っておかなければならない。そして、実際にリフロー炉の立ち上げを行う場合、事前に測っておいた時間まで加熱してから次の電熱ヒーターに通電するようにしていた。従って、特許文献1の立ち上げ方法は、はんだの種類やプリント基板の条件が変わる度に、それに適した温度プロファイルとなるよう全ての電熱ヒーターがその設定温度になるまでの時間を測らなければならないという手間がかかるものであった。
【0027】
ii.特許文献2の立ち上げ方法は、全ての電熱ヒーターヘの通電時に電流を少なくしても、各電熱ヒーターは設定温度まで昇温させることができることを利用した優れたものであるが、規定の電力量で対応するので、それぞれのプロファイルに応じて決めることができないので、消費電力を無駄に消費することがある。
【0028】
iii.特許文献3の加熱装置の制御方法においても、加熱優先度の大きなゾーンと小さなゾーンとを含む複数のゾーンを組み合わせて作った複数のグループの通電量が大きく異なるときは問題が発生しないが、組み合わせた各ゾーンの通電量に大きな相違がないときは、この方法でも全体の使用電力量が思ったよりも小さくならない。
【0029】
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、最大供給電力を越える電力量が電源設備から加熱ユニットへ供給される事態を回避できるようにすると共に、過電流を原因とするケーブルの焼損や、ブレーカーの不本意な断動作等を無くすことができるようにした電気炉及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明者は、各加熱ユニットごとに通電量とヒーター材料で決められる温度安定化が計られるポイントが有ること、加熱ユニットごとの温度安定化が計られるポイントを計数化して各ユニットの出力率の値とすることで、リフロー炉の立ち上げ時に大電流を必要としないで立ち上げが可能なことを見い出し、本発明を完成させた。
【0031】
本発明に係る電気炉は、炉体と、前記炉体の内部において複数のゾーンに区分して配設され、かつ、所定の電源設備に接続されて当該炉体内の温度を上昇するように加熱する複数の加熱ユニットと、前記炉体の目標加熱温度を設定する操作部と、前記操作部によって目標加熱温度が設定された前記炉体の各々の前記ゾーンにおける現在の温度を測定する温度測定部と、前記温度測定部によって測定された現在の温度と前記目標加熱温度との差分を基準にして前記加熱ユニットを出力制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記炉体内の加熱ユニットの出力と炉内温度上昇との関係を予めゾーン毎に求めた出力対温度特性情報と、前記温度測定部から得られる温度測定情報と、前記操作部から得られる温度設定情報とに基づいて前記加熱ユニットに供給する電力をゾーン毎に制御することを特徴とするものである。
【0032】
本発明に係る電気炉によれば、複数の加熱ユニットは、炉体内において複数のゾーンに区分して配設され、かつ、所定の電源設備に接続されて当該炉体内の温度を上昇するように加熱する。温度測定部は、各々のゾーンにおける現在の温度を測定する。操作部は、温度測定部によって測定された現在の温度に対する炉体の目標加熱温度を入力する。制御部は、電源設備に接続されて加熱ユニットを出力制御する。これを前提にして、制御部は、炉体内の加熱ユニットの出力と炉内温度上昇との関係を予めゾーン毎に求めた出力対温度特性情報と、温度測定部から得られる温度測定情報と、操作部から得られる温度設定情報とに基づいて加熱ユニットに供給する電力をゾーン毎に制御するようになる。
【0033】
例えば、加熱ユニットに印加する電圧を一定として、フルパワー時に加熱ユニットに流す電流に対して、限定パワー時に加熱ユニットに流す電流の割合を百分率で示した値を当該加熱ユニットの出力率としたとき、制御部は、炉体を目標加熱温度に立ち上げるとき、ゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて加熱ユニットの出力率を求め、ゾーン毎に求められた全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和と、電源設備から許容される最大供給電力に対する加熱ユニットの出力率の総和の上限値を百分率で示した%ヒーター最大総合出力とを比較し、全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和が、%ヒーター最大総合出力を越える場合は、各加熱ユニットの出力率の総和が、%ヒーター最大総合出力未満になるようにゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて各加熱ユニットの出力率を再度、求め、全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和が、%ヒーター最大総合出力以下となる場合は、ゾーン毎に求められた出力率で、当該加熱ユニットに電力を供給する。
【0034】
従って、複数のゾーンに区分された加熱ユニットをゾーン毎に出力対温度特性情報に倣って、しかも、電源設備から許容される最大供給電力の範囲内で、炉内を一定温度に立ち上げることができる。これにより、最大供給電力を越える電力量が電源設備から加熱ユニットへ供給される事態を回避できるので、電力用のケーブル及び配電用のブレーカーを保護できるようになる。過電流を原因とするケーブルの焼損や、ブレーカーの不本意な断動作等を無くすことができる。
【0035】
本発明に係る電気炉の制御方法は、少なくとも、炉体内において複数のゾーンに区分されて配設され、当該炉体内の温度を上昇するように加熱する複数の加熱ユニットと、前記炉体内に取り付けられた前記加熱ユニットの出力を制御する制御部とを備えた電気炉の制御方法において、前記制御部が、前記炉体内に取り付けられた前記加熱ユニットのゾーン毎に前記炉体内の加熱ユニットの出力と炉内温度上昇との関係を予め求めて出力対温度特性情報を作成するステップと、作成された前記出力対温度特性情報を前記炉体の立ち上げ時に参照して、複数のゾーンに区分された前記加熱ユニットに供給する電力をゾーン毎に制御するステップとを実行することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る電気炉及びその制御方法によれば、制御部は、炉体内の加熱ユニットの出力と炉内温度上昇との関係を予めゾーン毎に求めた出力対温度特性情報と、温度測定部から得られる温度測定情報と、操作部から得られる温度設定情報とに基づいて加熱ユニットに供給する電力をゾーン毎に制御するようになる。
【0037】
この構成によって、複数のゾーンに区分された加熱ユニットをゾーン毎に出力対温度特性情報に倣って、しかも、電源設備から許容される最大供給電力の最も短い時間の範囲内で、炉内を目標加熱温度に立ち上げることができる。これにより、最大供給電力を越える電力量が電源設備から加熱ユニットへ供給される事態を回避できるので、電力用のケーブル及び配電用のブレーカーを保護できるようになる。過電流を原因とするケーブルの焼損や、ブレーカーの不本意な断動作等を無くすことができる。
【0038】
さらに、消費電力の最大の使用を避けられるので、契約した電力量の中で最も効率良く電気炉を立ち上げることが可能であり、使用する電力量を削減できる。
【0039】
こればかりでなく、前日と相違するはんだのソルダペーストを用いたり、プリント基板の種類が変わったりした場合、それぞれの電熱ヒーターの設定温度を決めておくだけで、それらに適したプロファイルを描けるという安全性と合理性に優れたはんだ付け作業が行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る実施例としてのリフロー炉100の構成例を示す断面図である。
【図2】電熱ヒーターJX等の配線例及びその制御装置50の構成例を示すブロック図である。
【図3】リフロー炉100の立ち上げ時の制御例(メインルーチン)を示すフローチャートである。
【図4】リフロー炉100の立ち上げ時の制御例(サブルーチン)を示すフローチャートである。
【図5】従来例に係るリフロー炉の立ち上げ時の通電制御例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
現在、顧客工場の契約電力の削減を目的に、リフロー装置に省エネモードシステムが搭載されている。この省エネモードシステムによれば、最大電力を抑制するシステムであって、ヒーター立ち上げ時に、全ヒーターが同時に入電しないように制御される。
【0042】
このような技術背景にあって、本発明によれば、省エネモードシステムに加え、ヒーター立ち上げ時のヒーター入電効率最適化制御を実行することで、リフロー装置のヒーター入電制御をヒーター設定温度に対して変動させ、ヒーターの立ち上げ時間の短縮化を図っている。
【0043】
この発明では、リフロー炉の立ち上げ時に大電流を流さないため、大電流使用設備のない工場であっても、配電盤のブレーカーが落ちたり、リフロー炉まで這わす配線ケーブルが焼け焦げたりするような問題をおこすことがないばかりでなく、前日と相違するはんだのソルダペーストを用いたリプリント基板の種類が変わったりした場合、それぞれの電熱ヒーターの目標加熱温度SVを決めておくだけで、それらに適したプロファイルを描けるという安全性と合理性に優れたはんだ付け作業が行えるようになる。
【0044】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る電気炉及びその制御方法について説明する。図1に示すリフロー炉100は電気炉の一例を構成し、プリント基板12上に、はんだの粉末にフラックスを加えたはんだペーストを印刷し、その上に電子部品を載せて熱を加え、はんだを溶融して、プリント基板12と電子部品とをはんだ付けをするものである。
【0045】
リフロー炉100は、炉体1及び制御装置50を備えて構成される。炉体1は、断熱性を有して所定の形状に構成されており、その内部には細長いトンネル2が設けられている。トンネル2の内部は、プリント基板12を搬入する側から順に予備加熱ゾーン21、本加熱ゾーン22及び冷却ゾーン23の3つに加熱領域が区分け(画定)されている。予備加熱ゾーン21は更に2つのゾーンに加熱領域が区分け(画定)されている。予備加熱ゾーン21の2つのゾーンをプリント基板12を搬入する側から順に、以下でXゾーン、Yゾーンという。上述の本加熱ゾーン22は以下でZゾーンという。
【0046】
予備加熱ゾーン21と本加熱ゾーン22の上下部には、加熱ユニットの一例を構成する熱風吹き出し型のヒーターユニット3が設置されており、所定の電源設備に接続されて炉体1内の温度を上昇するように加熱する。本加熱ゾーン22に隣接した冷却ゾーン23の上下部には、冷却機4,4が設置されている。トンネル2の内部には、搬送装置5が矢印A’のように予備加熱ゾーン方向から冷却ゾーン方向に向かって走行するようになっている。
【0047】
この実施例では、説明を分かり易くするため、便宜上、予備加熱ゾーン21から本加熱ゾーン22に向かって、順次、トンネル2の上下部にヒーターユニット3を各々一対ずつ設置したXゾーン、Yゾーン、Zゾーンのように3つの加熱ゾーンを設けたリフロー炉100の例を示しているが、実際のリフロー炉では、大きいリフロー炉となると8つの加熱ゾーン以上を有したものもある。
【0048】
各々のヒーターユニット3には、吸い込み口6が設けられており、該吸い込み口6の両側に多数の孔部が穿設された吹き出し口7,7が形成されている。吸い込み口6の中には電熱ヒーターが配設されている。ここではX,Y,Zそれぞれのゾーンに設置された一対の電熱ヒーターを後の説明に便宜なように、Xゾーンの上部の電熱ヒーターをJX、Xゾーンの下部の電熱ヒーターをKX、Yゾーンの上部の電熱ヒーターをJY、Yゾーンの下部の電熱ヒーターをKY、Zゾーンの上部の電熱ヒーターをJZ、Zゾーンの下部の電熱ヒーターをKZとする。これらの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの近傍には温度測定部の一例を構成する温度センサー8が設置されている。各々の温度センサー8は、各々のゾーンにおける現在の温度を測定して制御装置50に温度測定信号S8を出力する。
【0049】
また、電熱ヒーター上部又は下部にはファン9が設置されており、該ファンはヒーターユニット3の外部に置かれたモーター10と連動している。従って、ヒーターユニット3では、モーター10を稼働させると、ファン9が回転し、両側の吹き出し口7から気体を吹き出して、中央の吸い込み口6から吸い込むようになる。吸い込み口6から吸い込まれた気体は、電熱ヒーターJX等で加熱されて、再度、吹き出し口7,7から吹き出し、搬送装置5で搬送されるプリント基板12を加熱するようになる。
【0050】
続いて、図2を参照して、炉体1内の電熱ヒーターJX等の配線例及びそれらを個別に制御する制御装置50の構成例について説明する。図2に示す6本の電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZは、各々が電力調整器Dを介して三相の電源11に接続される。
【0051】
この例では、Xゾーンの電熱ヒーターJX,KXと、Yゾーンの電熱ヒーターJYとがデルタ接続されている。また、Yゾーンの電熱ヒーターKYとZゾーンの電熱ヒーターJZ,KZとがデルタ接続されている。電源11から導出されたケーブルU,V間には、電熱ヒーターJY,KZが接続され、ケーブルV,W間には、電熱ヒーターJZ,KXが接続され、ケーブルW,U間には、電熱ヒーターJX,KYが各々接続される。
【0052】
電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの各々に接続された電力調整器Dは、当該電熱ヒーターJX等に流入する電流量を0〜100%の範囲において可変調整する機能を有している。電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの近傍には温度センサー8が設置され、各々の温度センサー8は、X,Y,Zそれぞれのゾーンにおける現在の温度PVを測定して温度調整用の制御装置50(制御部)に逐次、温度測定信号S8を出力する。
【0053】
上述の電力調整器Dは各々が制御装置50に接続され、当該制御装置50からの電力制御信号S52を入力して電熱ヒーターJX等に流れる電流を適宜な電流量に設定する機能の他に、電熱ヒーターJX等に流れる電流の通電をON/OFFしたりする。
【0054】
電力調整器Dには温度調整用の制御装置50が接続される。制御装置50は、データバス51、入出力ポート(以下I/Oポート52という)、メモリ部53、操作部54、CPU55及び電源部56を備えて構成される。制御装置50は電源11に接続されて電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZを個別に出力制御する。電源部56は、電源11又は図示しない単相の電源に接続され、I/Oポート52、メモリ部53、操作部54及びCPU55に制御用の低電圧を供給する。
【0055】
データバス51には、I/Oポート52、メモリ部53及びCPU55が接続される。I/Oポート52には操作部54が接続される。操作部54は、温度センサー8によって測定された現在の温度PVに対して、炉体1の目標加熱温度SVを設定する際に操作される。操作部54は目標加熱温度SVの入力の他、%ヒーター最大総合出力(以下%Pmaxという)を設定する際に操作される。ここに%ヒーター最大総合出力%Pmaxは、電源設備から当該リフロー炉に許容される最大供給電力に対する全ゾーンに係るヒーター合計出力の上限値を百分率で示したものをいう。
【0056】
I/Oポート52には操作部54の他に、電熱ヒーターJX等の近傍に設置された温度センサー8が接続される。温度センサー8はI/Oポート52に接続され、当該ゾーンの温度を検出して温度測定信号S8をI/Oポート52に出力する。I/Oポート52はアナログ・デジタル変換機能を有しており、温度測定信号S8をアナログ・デジタル変換した後の温度測定データがCPU55に出力される。
【0057】
メモリ部53は記憶部の一例を構成し、ゾーン毎に炉体1内の電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力と炉内温度上昇との関係を予め求めた出力対温度特性情報を記憶する。メモリ部53には、ワーク用のRAM、不揮発性のROMやEEPROM、ハードディスク等が使用される。メモリ部53には、出力対温度特性情報の他に温度センサー8から得られた現在の温度PVを示す温度測定データが記憶される。
【0058】
CPU55は、炉体1内の電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力と炉内温度上昇との関係を予めゾーン毎に求めた出力対温度特性情報と、温度センサー8から得られる温度測定情報と、操作部54から得られる温度設定情報とに基づいて電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZに供給する電力をゾーン毎に制御する。例えば、CPU55は、炉体1を目標加熱温度SVに立ち上げるとき、メモリ部53から当該ゾーン毎に出力対温度特性情報を読み出し、この出力対温度特性情報に基づいて電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZに供給する電力をゾーン毎に制御する。
【0059】
この例で、電熱ヒーターJX等に印加する電圧を一定として、フルパワー(出力100%)時に電熱ヒーターJXに流す電流に対して、限定パワー時に電熱ヒーターJXに流す電流の割合を百分率で示した値を当該電熱ヒーターJXの出力率%PD(以下で出力電力率ともいう)としたとき、CPU55は、炉体1を目標加熱温度SVに立ち上げる。このとき、CPU55は、ゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて電熱ヒーターJX等の出力率%PDを求め、ゾーン毎に求められた全てのX,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの各々の出力率%PDの総和Σ%PDと、電源設備から許容される最大供給電力に対する全ゾーンに係るヒーター合計出力の上限値を百分率で示した%Pmaxとを比較する。
【0060】
全てのX,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDの総和Σ%PDが、%Pmaxを越える場合は、電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDの総和Σ%PDが%Pmax未満になるようにX,Y,Zゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDを再計算し、全てのX,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDの総和Σ%PDが、%Pmax以下となる場合は、X,Y,Zゾーン毎に求められた出力率%PDで、当該電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZに電力を供給するようになされる。
【0061】
続いて、図3及び図4を参照して、リフロー炉100の立ち上げ時の制御方法について説明する。この例では、CPU55が、炉体1内に取り付けられた電熱ヒーターJX,JY,JZ、電熱ヒーターKX,KY,KZのゾーン毎に炉体1内の電熱ヒーターJX,JY,JZ、電熱ヒーターKX,KY,KZの出力と炉内温度上昇との関係を予め求めて出力対温度特性情報を作成し、ここで作成された出力対温度特性情報がメモリ部53に格納されている。CPU55は、少なくとも、炉体1内において、X,Y,Zゾーンの3つに区分されて配設され、当該炉体1内の温度を上昇するように加熱する6本の電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZと、これらの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZをX,Y,Zゾーン毎に出力を制御する制御装置50とを備えたリフロー炉100を工場の契約電力以内で立ち上げる場合を前提とする。この制御例では、%ヒーター最大総合出力%Pmaxが400%の場合であって、ヒーターの総本数が6である場合を例に挙げる。
【0062】
これらを制御条件にして、炉体1を目標加熱温度SVに立ち上げるとき、図3に示すステップST1でCPU55は、%ヒーター最大総合出力%Pmax及び、目標加熱温度SV℃を入力する。
【0063】
%ヒーター最大総合出力%Pmax及び目標加熱温度SVは、ユーザが操作部54を操作してCPU55に設定する。例えば仮にX,Y,Zゾーンの上部ヒーターを例にすれば、%ヒーター最大総合出力を%Pmax=400%に設定し、目標加熱温度をXゾーンはSV=180℃、YゾーンもSV=180℃、ZゾーンはSV=240を設定する。次に、ステップST2でCPU55はX,Y,Zゾーンの各々の現在の温度PVを取得する。このとき、X,Y,Zゾーンの各々の温度センサー8は、当該ゾーンにおける現在の温度を測定して温度測定信号S8をI/Oポート52に出力する。Xゾーンの上部及び下部の温度センサー8は、例えば、130℃を示す温度測定信号S8をI/Oポート52に出力する。I/Oポート52は、温度測定信号S8をアナログ・デジタル変換した後の温度測定データをCPU55に出力する。Yゾーンの上部及び下部の温度センサー8は、例えば、130℃を示す温度測定信号S8をI/Oポート52に出力する。I/Oポート52は、温度測定信号S8をアナログ・デジタル変換した後の温度測定データをCPU55に出力する。Zゾーンの上部及び下部の温度センサー8は、例えば、125℃を示す温度測定信号S8をI/Oポート52に出力する。I/Oポート52は、温度測定信号S8をアナログ・デジタル変換した後の温度測定データをCPU55に出力する。
【0064】
その後、ステップST3で、CPU55は、先に作成された出力対温度特性情報を参照して、X,Y,Zゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて電熱ヒーターJX,KX、電熱ヒーターJY,KY、電熱ヒーターJZ,KZの各々の出力率%PDを計算する。例えば、図4に示すサブルーチンをコールする。
【0065】
まず、図4に示すステップST31でCPU55は、X,Y,Zゾーン上下ヒーター毎に目標加熱温度SVと現在の温度PVとの差分温度Dε[℃]を(1)式、すなわち、
差分温度Dε=目標加熱温度SV−現在の温度PV・・・・・(1)
により算出する。
【0066】
上述した例によれば、Xゾーンの差分温度Dεは、(180−130)℃=50℃であり、Yゾーンの差分温度Dεも、(180−130)℃=50℃である。Zゾーンの差分温度Dεは、(240−125)℃=115℃である。
【0067】
次に、ステップST32でCPU55は、(1)式により得られた差分温度Dεを昇温特性定数Aを使用して補正後の差分温度Dε’を(2)式、すなわち、
差分温度Dε’=A×Dε=A×(SV−PV)・・・・・・(2)
により算出する。ここに昇温特性定数Aとは、X,Y,Zゾーン毎に電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの配置環境に対応した出力対温度特性情報から求めた定数をいう。昇温特性定数Aは、X,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZへの供給電力を同一に設定し、一定時間後の温度を測定する検証を2回以上行って、出力対温度特性情報を作成する。その際の縦軸はヒーター温度[℃]である。横軸はヒーター出力[%]である。
【0068】
ここで得られたデータから、各個ヒーター出力=100%時に最低温度となっているX又はY又はZゾーンを抽出し、抽出された当該ゾーンの電熱ヒーターJX,KX又は電熱ヒーターJY,KY又は電熱ヒーターJZ,KZの出力を「1」として、このゾーンの出力=「1」に対する他のゾーンの電熱ヒーターの出力の割合を0<A<1の範囲で昇温特性定数Aを表現したものである。この昇温特性定数Aは、最も立ち上がりの遅い加熱ゾーンに昇温時間(歩調)を合わせるための定数でもある。
【0069】
上述した例によれば、Zゾーンの差分温度Dεが115℃で、最も立ち上がりの遅い加熱ゾーンとして予想される。Xゾーンの昇温特性定数Aを例えば、0.9とし、Yゾーンの昇温特性定数Aを例えば、0.8とすると、Xゾーンの補正後の差分温度Dε’は、0.9×(180−130)℃=45.0℃であり、Yゾーンの補正後の差分温度Dε’は、0.8×(180−130)℃=40.0℃である。Zゾーンの差分温度Dεは、1×(240−125)℃=115℃のままである。
【0070】
次に、ステップST33でCPU55は目標加熱温度をSVとし、各々のゾーンの電熱ヒーターの出力と一定時間当たりの温度上昇率を表す傾き定数をB(以下出力傾き定数Bという)とし、炉体1を目標加熱温度SVに到達させるために最低限必要とする電熱ヒーターJX等に供給するベース供給電力であって、目標加熱温度SVに対応する電熱ヒーターJX等のヒーター出力を%Pbとし、ヒーター入電率が0%時の到達雰囲気の温度PVを定数(以下ベース温度定数Cという)としたとき、ヒーター出力%Pbを各ゾーン毎に(3)式、すなわち、
%Pb=(SV−C)×B ・・・・・(3)
により算出する。ここでヒーター入電率が0%にも拘らず現在温度が上昇することを示すベース温度定数Cを規定しているのは、各ゾーンのファンによる空気摩擦での温度上昇が存在する為である。ここで%Pbはその特性上、0%以上、100%以下の値となる。上述の(3)式が意味するところは、設定温度まで温度を上昇させる為に最低限必要とするヒーターへの供給電力を、ベース温度定数Cを基準にして設定温度とベース温度定数Cの差分値に出力傾き定数Bをかけることにより算出し、これを百分率で表したものである。
【0071】
出力傾き定数Bは、ヒーター温度[℃]対ヒーター出力[%]の特性情報から得られる定数であり、当該ゾーンの設置環境に対応した電熱ヒーターJX等の昇温能力を示す定数である。
【0072】
出力傾き定数Bは、例えば、X,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZにおける目標加熱温度SVを同一にして、X,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZに電力を供給し、現在の温度PVが目標加熱温度SVに移行して安定した状態のX,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZにおける供給電力を測定して、電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力特性を作成する。その際の縦軸は電熱ヒーターJX等のベース出力%Pbである。横軸は目標加熱温度SVである。
【0073】
ヒーター温度[℃]対ヒーター出力[%]の特性情報は、ほぼ一次関数(y=ax+b)により得られるので、出力傾き定数Bは、縦軸の2点間のベース出力%Pbの差分と、横軸の2点間の目標加熱温度SVの差分から求めるとよい。
【0074】
このように求めると、例えば、Xゾーンの出力傾き定数Bが1/4[%/℃]なる値として、Yゾーンの出力傾き定数Bが1/5[%/℃]として、Zゾーンの出力傾き定数Bが3/10[%/℃]として得られる。
【0075】
なお、ベース温度定数Cは、ベース出力%Pb対目標加熱温度SVの特性情報から得られるヒーター出力が%Pb=0%である状態のX,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの現在の温度PV(ゾーン内雰囲気温度)とする。
【0076】
例えば、Xゾーンの電熱ヒーターJX,KXのベース出力%Pb対目標加熱温度SVの特性において、ヒーター出力が%Pb=0%のとき、現在の温度がPV=80℃であるならば、ベース温度定数Cは80℃となる。同様にして、Yゾーンの電熱ヒーターJY,KYのベース出力%Pb対目標加熱温度SVの特性において、ヒーター出力が%Pb=0%のとき、現在の温度がPV=105℃であるならば、ベース温度定数Cは105℃となる。Zゾーンの電熱ヒーターJZ,KZのベース出力%Pb対目標加熱温度SVの特性において、ヒーター出力が%Pb=0%のとき、現在の温度がPV=90℃であるならば、ベース温度定数Cは90℃となる。
【0077】
上述した例によれば、目標加熱温度SVが180℃の場合である。Xゾーンの出力傾き定数Bを1/4とし、そのベース温度定数C=80℃とし、目標加熱温度SVをSV=180℃とすると、Xゾーンの電熱ヒーターJX,KXのベース出力%Pbは、(3)式より、
%Pb=1/4×(SV−80℃)
%Pb=1/4×(180℃−80℃)
=25%
となる。同様にして、Yゾーンの出力傾き定数Bを1/5とし、ベース温度定数CをC=105℃とし、目標加熱温度SVをSV=180℃とすると、Yゾーンの電熱ヒーターJY,KYのベース出力%Pbは、(3)式より、
%Pb=1/5×(SV−105℃)
%Pb=1/5×(180℃−105℃)
=15%
となる。同様にして、Zゾーンの出力傾き定数Bを3/10とし、ベース温度定数CをC=90℃とし、目標加熱温度SVをSV=180℃とすると、Zゾーンの電熱ヒーターJZ,KZのベース出力%Pbは、(3)式より、
%Pb=3/10×(SV−90℃)
%Pb=3/10×(240℃−90℃)
=45%
となる。
【0078】
ステップST34でCPU55は、当該ゾーンの電熱ヒーターJX等の出力率%PDを計算するために、X,Y,Zゾーン毎に求められた電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの補正後の差分温度Djx,Djy,Djz、Dkx,Dky,Dkz及び、電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZのベース出力%Pbの各々を合計して、ΣD及びΣ%Pbを算出する。
【0079】
上述した例によれば、Xゾーンの補正後の差分温度Dxが45.0℃、Yゾーンの補正後の差分温度Dyが40.0℃、及び、Zゾーンの補正後の差分温度Dzが115℃である。ここでは仮に各ゾーンの上下ヒーターは共に同特性、同設定温度、同現在温度であると仮定する。
補正後の差分温度Dx,Dy,Dzの合計は、(4)式、すなわち、
ΣD=Djx+Djy+Djz+Dkx+Dky+Dkz ・・・・・(4)
=45.0+40.0+115.0+45.0+40.0+115.0
=400.0[℃]
がCPU55によって算出される。
【0080】
また、Xゾーンの上部ヒーター出力を%Pbjxとし、Yゾーンの上部ヒーター出力を%Pbjyとし、Zゾーンの上部ヒーター出力を%Pbjzとしたとき、Xゾーンの上部ヒーター出力%Pbjxが25.0%、Yゾーンの上部ヒーター出力%Pbjyが15.0%及びZゾーンの上部ヒーター出力%Pbjzが45.0%である。
【0081】
従って、X,Y,Zゾーンのヒーター出力%Pbの合計は、(3)式によって得られた値を加算する(5)式、すなわち、
Σ%Pb=%Pbjx+%Pbjy+%Pbjz+%Pbkx+%Pbky+%Pbkz
・・・・・(5)
=25.0%+15.0%+45.0%+25.0%+15.0%+45.0%
=170.0%
がCPU55によって算出される。
【0082】
次に、ステップST35でCPU55は、上述の(4)式及び(5)式によって算出された値を用いて、X,Y,Zゾーン毎に電熱ヒーターJX,KX、電熱ヒーターJY,KY、電熱ヒーターJZ,KZの出力率%PDを(6)式、すなわち、
%PD={D×(%Pmax−Σ%Pb)/ΣD}+%Pb ・・・・・(6)
により算出する。
【0083】
ここで、Xゾーンの電熱ヒーターJX,KXの出力率を%PDxとすると、%PDxは、(7)式、すなわち、
%PDx={Dx×(%Pmax−Σ%Pb)/ΣD}+%Pbx ・・・・・(7)
により算出される。
【0084】
上述の(7)式の第1項目は、目標加熱温度SVに対応した電熱ヒーターJX,KX等のヒーター出力%Pbを、%ヒーター最大総合出力%Pmaxを基準にしてヒーター出力%Pbを増減する調整項であり、第2項目はXゾーンのヒーター出力%Pbで、電源11から供給される計算上のベース供給電力Pbである。ここで上述の制御条件より%Pmaxを400%とする。
【0085】
従って、Xゾーンの電熱ヒーターJX,KXの出力率%PDxは、
%PDx={45.0×(400−170)/400.0}
+25.0%
={45.0×(230)/400.0}+25.0%
=(25.9)+25.0%
=50.9%
がCPU55によって算出される。
【0086】
同様にして、Yゾーンの電熱ヒーターJY,KYの出力率%PDyは、
%PDy={40.0×(400−170)/400.0}
+15.0%
={40.0×(230)/400.0}+15.0%
=(23.0)+15.0%
=38.0%
がCPU55によって算出される。
【0087】
同様にして、Zゾーンの電熱ヒーターJZ,KZの出力率%PDzは、
%PDz={115×(400−170)/400.0}
+45.0%
={115×(230)/400.0}+45.0%
=(66.1)+45.0%
=111.1%
がCPU55によって算出される。そして、メインルーチンのステップST3にリターンした後、ステップST4に移行する。
【0088】
ステップST4で、CPU55はサブルーチンで算出した各ゾーンの電熱ヒーターの出力率%PDと、出力率上限値(判別基準値)100%とを比較して、出力率上限値100%を超えた出力率%PDの電熱ヒーターが1個でも有るか否かを判別する。出力率%PDが100%を超えた電気ヒーターの総数が0個の場合(無い場合)は、ステップST8に移行する。出力率上限値100%を超えた出力率%PDの電熱ヒーターが1個でも有る場合は、ステップST5に移行する。
【0089】
ステップST5で、CPU55は、出力率上限値100%を超えた出力率%PDの電熱ヒーターの個数をmとして、当該個数mを検出する。ここで、%ヒーター最大総合出力を%Pmaxとし、その補正演算用の%ヒーター最大総合出力を%Pmax’とし、出力率%PDが出力率上限値100%を超えた電熱ヒーターの個数をmとしたとき、%Pmax’を(8)式、すなわち、
%Pmax’=%Pmax−(m×100%) ・・・・・(8)
により算出する。
【0090】
上述の例では、Zゾーンの2個の電熱ヒーターJZ,KZの出力率%PDzが100%を超えているので、(8)式に、m=2個を代入して、補正演算用の%ヒーター最大総合出力を%Pmax’を算出する。ここで、前述のステップST3で算出された値と、再度、ステップST3で計算処理される値とを区別し判りやすい表現にするため、再計算処理した値に「’」を付け表現する。
【0091】
よって、ここで(8)式で求められる補正演算用の%ヒーター最大総合出力%Pmax’は、
%Pmax ’= 400.0%−(2×100%)
= 200.0%
となる。
【0092】
以降、%ヒーター最大総合出力を%Pmax’を再度、%ヒーター最大総合出力%Pmaxに代入してステップST6に移行する。ステップST6でCPU55は、%PDが100%を超えている電熱ヒーターJZ,KZの出力率%PDについて、100%を設定する。その後、ステップST7に移行して、CPU55は、%PDが100%である電熱ヒーター、この例では、電熱ヒーターJZ,KZを除いた状態で再算出処理をするべく、ステップST3に戻る。ここで、CPU55は、全ての電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの内、出力率%PDがヒーター出力上限率100%を超えていない電熱ヒーターJX,JY,KX,KYのみ、%Pmax’の再算出処理を実行する。
【0093】
上述のステップST5〜ST7が意味する所は、(6)式において過剰な出力率%PDが算出された電熱ヒーター、この例では、電熱ヒーターJZ,KZの出力率%PDzについて、その過剰分の出力率%PDzを、他の出力率%PDx,PDyが過剰に算出されていない電熱ヒーターJX,JY,KX,KYの出力率%PDx,%PDyに加算し、出力率%PDzを分配する事を目的とする。
【0094】
上述の例では、出力率%PDzがヒーター出力上限率100%を超えていない電熱ヒーターJX、KX、JY、KYについて、ステップST3で再計算処理を行う。
【0095】
すなわち、図4のサブルーチンをコールして、ステップST34の(4)式の変形式(4)’に従って、差分温度合計ΣD’を求めると、
ΣD’=Djx+Djy+Dkx+Dky ・・・・・(4)’
=45.0+40.0+45.0+40.0
=170[℃]
がCPU55によって算出される。
【0096】
さらに(5)式に従い、再度、ヒーター出力%Pb’の合計を求めると、
Σ%Pb’=%PbjX+%PbkX+%PbjY+%PbkX
=25.0%+15.0%+25.0%+15.0%
=80.0%
がCPU55によって算出される。
【0097】
次に、(6)式に従い、Xゾーンの電熱ヒーターJX,KXの出力率%PDx’を求める。
【0098】
%PDx’={Dx×(%Pmax−Σ%Pb)/ΣD’}+%Pbx
={45.0%×(200.0%−80.0%)/170}
+25.0%
=(45.0/170)×(120.0)+25.0%
=(0.265)×120.0+25.0
= 56.8%
がCPU55によって算出される。
【0099】
Yゾーンの電熱ヒーターJY,KYの出力率%PDy’は、
%PDy’=Dy×(%Pmax−Σ%Pb)/ΣD’}+%Pby
={40.0%×(200.0%−80.0%)/170}
+15.0
=43.2%
がCPU55によって算出される。
【0100】
その後、CPU55はステップST4で、再計算処理によって得られた各ゾーンの電熱ヒーターの出力率%PDと、出力率上限値(判別基準値)100%とを比較して、出力率%PDが出力率上限値100%を超えた電熱ヒーターが0個となった場合は、ステップST8に移行する。なお、ステップST3の再計算処理は、出力率上限値100%を超える出力率%PDの電熱ヒーターが検出されなくなるまで繰り返される。上述の場合、出力率%PDが100%を超えたヒーター総数が0個となったので、ステップST8に移行する。
【0101】
因みにΣ%PD’は、400%となって、%ヒーター最大総合出力%Pmax=400%に収まっている。その後、ステップST8で、CPU55は、(6)式によって得られた%PDx’=56.8%をXゾーンの電力調整器Dに設定し、%PDy’=43.2%をYゾーンの電力調整器Dに設定し、%PDz=100.0%をZゾーンの電力調整器Dに設定する。
【0102】
上述した例では、所定の電源設備に接続され、炉体1内において、X,Y,Zゾーンに区分して配設された電熱ヒーターJX,KXが再計算処理に基づく、%PDx’=56.8%に基づいてXゾーン内の温度を上昇するように加熱する。同様にして、電熱ヒーターJY,KYが%PDy’=43.2%に基づいてYゾーン内の温度を上昇するように加熱する。
【0103】
電熱ヒーターJZ,KZが%PDz’=100.0%に基づいてZゾーン内の温度を上昇するように加熱する。これにより、X,Y,Zゾーンの3つに区分された電熱ヒーターJX,JY,JZ、KX,KY,KZに供給する電力をゾーン毎に制御できるようになり、炉体1内のXゾーンの目標加熱温度SV=180℃、Yゾーンの目標加熱温度SV=180℃、Zゾーンの目標加熱温度SV=240℃に効率良く、短時間に立ち上がるようになる。
【0104】
このように、本発明に係るリフロー炉100及びその制御方法によれば、CPU55は、炉体1内の電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZ出力と炉内温度上昇との関係を予めゾーン毎に求めた出力対温度特性情報と、温度センサー8から得られる温度測定情報と、操作部54から得られる温度設定情報とに基づいて電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZに供給する電力に関して%ヒーター最大総合出力%Pmaxを越えない範囲内でゾーン毎に制御するようになる。
【0105】
従って、X,Y,Zゾーンの3つに区分された電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZをX,Y,Zゾーン毎に出力対温度特性情報に倣って、しかも、電源設備から許容される最大供給電力の範囲内で、炉内を目標加熱温度に立ち上げることができる。これにより、%ヒーター最大総合出力Pmaxを越える電力量が電源設備から電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZへ供給される事態を回避できるので、電力用のケーブル及び配電用のブレーカーを保護できるようになる。過電流を原因とするケーブルの焼損や、ブレーカーの不本意な断動作等を無くすことができる。
【0106】
上述の実施例では、%ヒーター最大総合出力%Pmaxが400%の場合について説明したが、電源設備に余裕が無い場合は、例えば、%Pmaxが250%、200%,150%,100%の場合についても、X,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDのΣ%PDが%Pmax以下となる再計算した電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDで、当該X,Y,Zゾーンの温度を上昇するように加熱できるようになる。
【0107】
なお、電源設備に余裕が有る場合は、出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて求めた電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDで当該X,Y,Zゾーンの温度を上昇するように加熱できるようになる。
【0108】
因みに、電力割り当て率をα(α<1)とし、当該工場の最大契約電力をWmaxしたとき、Wmaxに対して事前にリフロー炉での最大許容電力Pa=(1−α)Wmaxが割り振られる場合は、%ヒーター最大総合出力%Pmax=(1−α)Wmax×最大ヒーター数を用いて、電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZに供給する電力に関して%ヒーター最大総合出力%Pmaxを越えない範囲内でゾーン毎に制御してもよい。
【0109】
例えば、最大ヒーター数が「3」で、αが0.1,0,2,0,3,0.4の場合、最大許容電力Paは90%,80%,70%,60%となり、%Pmaxは、270%、240%,210%,180%となる。この場合についても、X,Y,Zゾーンの電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDのΣ%PDが%Pmax以下となる再計算した電熱ヒーターJX,JY,JZ,KX,KY,KZの出力率%PDで、当該X,Y,Zゾーンの温度を上昇するように加熱できるようになる。
【0110】
このように本発明方式の立ち上げ制御方法を採ることで、リフロー装置の最大電力を低減でき、かつ、最も短時間に効率良くヒーターを立ち上げることができた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、プリント基板上に、はんだの粉末にフラックスを加えたはんだペーストを印刷し、その上に電子部品を載せて熱を加え、はんだを溶融して、プリント基板と電子部品とをはんだ付けをする赤外線リフロー炉や、熱風リフロー炉以外にも高沸点の溶剤を用いたベーパーリフロー炉等の電気炉にも適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0112】
1 炉体
2 トンネル
3 ヒーターユニット(加熱ユニット)
4 冷却機
5 搬送装置
8 温度センサー
50 制御装置
51 データバス
52 I/Oポート部
53 メモリ部
54 操作部
55 CPU
JX,KX Xゾーンの電熱ヒーター
JY,KY Yゾーンの電熱ヒーター
JZ,KZ Zゾーンの電熱ヒーター
100 リフロー炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体と、
前記炉体の内部において複数のゾーンに区分して配設され、かつ、所定の電源設備に接続されて当該炉体内の温度を上昇するように加熱する複数の加熱ユニットと、
前記炉体の目標加熱温度を設定する操作部と、
前記操作部によって目標加熱温度が設定された前記炉体の各々の前記ゾーンにおける現在の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部によって測定された現在の温度と前記目標加熱温度との差分を基準にして前記加熱ユニットを出力制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記炉体内の加熱ユニットの出力と炉内温度上昇との関係を予めゾーン毎に求めた出力対温度特性情報と、前記温度測定部から得られる温度測定情報と、前記操作部から得られる温度設定情報とに基づいて前記加熱ユニットに供給する電力をゾーン毎に制御することを特徴とする電気炉。
【請求項2】
前記ゾーン毎に前記炉体内の加熱ユニットの出力と炉内温度上昇との関係を予め求めた出力対温度特性情報を記憶する不揮発性の記憶部を備え、
前記制御部は、
前記炉体を目標加熱温度に立ち上げる時に、
前記記憶部から当該ゾーン毎に出力対温度特性情報を読み出し、
前記出力対温度特性情報に基づいて前記加熱ユニットに供給する電力をゾーン毎に制御することを特徴とする請求項1に記載の電気炉。
【請求項3】
前記加熱ユニットに印加する電圧を一定として、フルパワー時に前記加熱ユニットに流す電流に対して、限定パワー時に前記加熱ユニットに流す電流の割合を百分率で示した値を当該加熱ユニットの出力率としたとき、
前記制御部は、
前記炉体を目標加熱温度に立ち上げるとき、
前記ゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて加熱ユニットの出力率を計算し、
前記ゾーン毎に求められた全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和と、前記電源設備から許容される最大供給電力に対する加熱ユニットの出力率の総和の上限値を百分率で示した%ヒーター最大総合出力とを比較し、
前記全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和が、前記%ヒーター最大総合出力を越える場合は、
前記加熱ユニットの出力率の総和が、当該%ヒーター最大総合出力未満になるように前記ゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて加熱ユニットの出力率を再計算し、
前記全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和が、前記%ヒーター最大総合出力以下となる場合は、前記ゾーン毎に求められた出力率で、当該加熱ユニットに電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の電気炉。
【請求項4】
少なくとも、炉体内において複数のゾーンに区分されて配設され、当該炉体内の温度を上昇するように加熱する複数の加熱ユニットと、前記加熱ユニットの出力を制御する制御部とを備えた電気炉の制御方法において、
前記制御部が、
前記炉体内に取り付けられた前記加熱ユニットのゾーン毎に前記炉体内の加熱ユニットの出力と炉内温度上昇との関係を予め求めて出力対温度特性情報を作成するステップと、
作成された前記出力対温度特性情報を前記炉体の立ち上げ時に参照して、複数のゾーンに区分された前記加熱ユニットに供給する電力をゾーン毎に制御するステップとを実行することを特徴とする電気炉の制御方法。
【請求項5】
前記出力対温度特性情報を作成する際に、
前記加熱ユニットに印加する電圧を一定として、フルパワー時に前記加熱ユニットに流す電流に対して、限定パワー時に前記加熱ユニットに流す電流の割合を百分率で示した値を当該加熱ユニットの出力率としたとき、
前記炉体を目標加熱温度に立ち上げ時に、
前記制御部が、
前記ゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて加熱ユニットの出力率を計算するステップと、
前記ゾーン毎に求められた全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和と、前記電源設備から許容される最大供給電力に対する加熱ユニットの出力率の総和の上限値を百分率で示した%ヒーター最大総合出力とを比較するステップと、
前記全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和が、前記%ヒーター最大総合出力を越える場合は、前記加熱ユニットの出力率の総和が当該%ヒーター最大総合出力未満になるように前記ゾーン毎に出力対温度特性情報と当該ゾーンの温度測定情報とに基づいて加熱ユニットの出力率を再計算するステップと、
前記全ゾーンの加熱ユニットの出力率の総和が前記%ヒーター最大総合出力以下となる場合は、前記ゾーン毎に求められた出力率で当該加熱ユニットに電力を供給するステップとを実行することを特徴とする請求項4に記載の電気炉の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−286179(P2010−286179A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140611(P2009−140611)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000199197)千住金属工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】