説明

電界効果トランジスタ、電界効果トランジスタの製造方法および電子装置

【課題】ゲートリーク電流の増加が抑制された信頼性の高い電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】 ゲート電極は、第1金属層16および第2金属層17を含み、
第2金属層17は、第1金属層16よりも導電率が高く、
第1金属層16の上方に、第2金属層17が積層され、
ソース電極18およびドレイン電極19は、半導体層12〜14上にオーム性接触し、
ゲート電極は、ソース電極18およびドレイン電極19の間に配置され、かつ、第1金属層16により半導体層上にショットキー性接触し、
半導体層上におけるソース電極18およびゲート電極の間、ならびに、ゲート電極およびドレイン電極19の間は、絶縁膜15Aにより覆われ、
かつ、
第2金属層17下面の全体が第1金属層16上面の上方に重なっているか、または、第1金属層16の厚みが絶縁膜15Aの厚み以上であることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果トランジスタ、電界効果トランジスタの製造方法および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor、FET)のうち、ゲート電極が半導体にショットキー性接触したMESFET(Metal−Semiconductor Field Effect Transistor)は、高速動作などの優れた特性を有する。
【0003】
MESFETにおいては、ゲート電極は、例えば、半導体層とショットキー性接触させるための第1の金属層(例えばNi)、および、それよりも導電率が高い第2の金属層(例えばAu)から形成される。このようなMESFETにおいて、高電圧印加時に十分な電流を得る等の目的で、半導体層上におけるゲート電極およびオーミック電極の間に、絶縁膜を配置することがある(例えば、特許文献1および2参照)。図9の断面図に、このようなMESFETの構造の一例を、模式的に示す。図示のとおり、このMESFETは、シリコン・カーバイド(SiC)基板10上に窒化アルミニウム(AlN)からなるバッファ層11が形成されている。AlNバッファ層11上には、窒化ガリウム(GaN)チャネル層12、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)電子供給層13、およびキャップ層14が前記順序で積層されて半導体積層構造を構成している。すなわち、このMESFETは、AlGaN/GaNのヘテロ接合を有するHFET(Hetero Junction Field Effect Transistor、ヘテロ接合電界効果トランジスタ)である。また、キャップ層14上面に接してソース電極およびドレイン電極(図示せず)が形成され、オーム性接触が取られている。また、AlGaN電子供給層に接してゲート電極が形成され、ショットキー性接触が取られている。ゲート電極は、Ni層16とAu層17の積層構造からなる。さらに、ゲート電極およびソース電極の間と、ゲート電極およびドレイン電極の間は、絶縁膜15Aで覆われ、ゲート電極表面は、絶縁膜(保護膜)15Bで覆われている。絶縁膜15Aおよび15Bは、それぞれSiNにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−531859号公報
【特許文献2】特許第4385206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らによる検討の結果、このようなMESFETは、ゲートリーク電流(トランジスタの動作と無関係な電流の漏れ)が大きくなるおそれがある。本発明者らは、図9に示す構造のMESFETに対し、信頼性試験項目の一つである高温通電試験を行った。図10のグラフに、その試験結果の一例を示す。図10左側のグラフは、ゲート電圧が負の場合の試験結果を示し、右側のグラフは、ゲート電圧が正の場合の試験結果を示す。両グラフにおいて、それぞれ、横軸は、ゲート電圧Vgを示し、縦軸は、ゲートリーク電流Igを示す。図示のとおり、通電の比較的初期段階において、FETのゲートショットキー特性に大幅なリーク電流が生じ、ストレス印加後においてゲートリーク電流が増加している。
【0006】
図10の試験を行ったMESFETにおいて、透過電子顕微鏡(TEM)観察および組成分析を行った結果、ゲート電極下部の両端付近において、Auが絶縁膜(SiN)側壁とNi電極の間に拡散するとともに、半導体層からゲート電極のAu中にGaが拡散していた。このようなAuとGaの拡散の原因は、必ずしも明らかではないが、下記(1)(2)の原因が推定される。

(1)図9に示すようにゲート電極を構成するNi層16の厚さが比較的薄いことから、Ni層16側面と絶縁膜15Aとの界面で、Ni層16のカバレッジ(前記界面の接合状態)が悪く、Ni層16の厚みが非常に薄くなっていること。
(2)Ni層16のうち、図9のNi層AからNi層Dに示す部分では、絶縁膜15Aと接触しているNiがAu中に拡散してほぼ消失していること(組成分析により確認)。
【0007】
前記(1)(2)により、ゲート電極下部両端においてAuが半導体層に接触しやすく、半導体中のGaがAu中へ拡散し、最終的にはゲート電極内部へもGaが拡散すると考えられる。このような金属拡散が生じることによりゲート電極両端においてAuとGaの合金が形成され、局所的にショットキー障壁高さφBが低下し、前記のようにゲートリーク電流が増大すると推測される。
【0008】
そこで、本発明は、ゲートリーク電流の増加が抑制された信頼性の高いMESFET(電界効果トランジスタ)、電界効果トランジスタの製造方法および電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の電界効果トランジスタは、
半導体層、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、および絶縁膜を有し、
前記ゲート電極は、第1金属層および第2金属層を含み、
前記第2金属層は、前記第1金属層よりも導電率が高く、
前記第1金属層の上方に、前記第2金属層が積層され、
前記ソース電極および前記ドレイン電極は、前記半導体層上にオーム性接触し、
前記ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置され、かつ、前記第1金属層により前記半導体層上にショットキー性接触し、
前記半導体層上における前記ソース電極および前記ゲート電極の間、ならびに、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間は、前記絶縁膜により覆われ、
かつ、
前記第2金属層下面の全体が前記第1金属層上面の上方に重なっているか、または、前記第1金属層の厚みが前記絶縁膜の厚み以上であることを特徴とする。
【0010】
本発明の製造方法は、
前記半導体層上に前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する、オーミック電極形成工程と、
前記半導体層上における前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に前記絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に、その上面から下面まで達する深さの開口部を形成する開口部形成工程と、
前記開口部を塞ぐように前記第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、
前記第1金属層上方に前記第2金属層を積層させる第2金属層形成工程とを含むことを特徴とする、前記本発明の電界効果トランジスタの製造方法である。
【0011】
本発明の電子装置は、本発明の電界効果トランジスタを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ゲートリーク電流の増加が抑制された信頼性の高いMESFET(電界効果トランジスタ)、電界効果トランジスタの製造方法および電子装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】第1の実施形態の電界効果トランジスタの構造を模式的に示す断面図である。
【図1B】図1Aの電界効果トランジスタにおけるゲート電極およびその付近の構造を示す拡大図である。
【図2A】第1の実施形態の電界効果トランジスタの変形例の構造を模式的に示す断面図である。
【図2B】図2Aの電界効果トランジスタにおけるゲート電極およびその付近の構造を示す拡大図である。
【図3】第1の実施形態の電界効果トランジスタのさらに別の変形例の構造を模式的に示す断面図である。
【図4】第1の実施形態の電界効果トランジスタのさらに別の変形例の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】図1Aの電界効果トランジスタの製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【図6】図2Aの電界効果トランジスタの製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【図7A】第2の実施形態の電界効果トランジスタの構造を模式的に示す断面図である。
【図7B】図7Aの電界効果トランジスタにおけるゲート電極およびその付近の構造を示す拡大図である。
【図8A】第2の実施形態の電界効果トランジスタの変形例の構造を模式的に示す断面図である。
【図8B】図8Aの電界効果トランジスタにおけるゲート電極およびその付近の構造を示す拡大図である。
【図9】本発明と関連する窒化ガリウム系電界効果トランジスタの構造の一例を模式的に示す断面図である。
【図10】図9の窒化ガリウム系電界効果トランジスタにおける、ストレス印加前後のゲートショットキー特性の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。
【0015】
本発明において「接合」とは、直接接触した状態でも良いし、他の構成要素を介してつなぎ合わされた状態でも良い。電極が半導体層と接合している状態とは、例えば、ソース電極、ドレイン電極もしくはゲート電極が半導体層に直接接触している状態、または、ゲート電極がゲート絶縁膜を介して半導体層とつなぎ合わされた状態等がある。また、「オーム性接触」または「ショットキー性接触」という場合は、直接接触した状態でも良いし、他の構成要素を介してつなぎ合わされた状態でも良い。例えば、電極と半導体層とがオーム性接触またはショットキー性接触している状態とは、前記電極と前記半導体層とが、直接接触した状態でも良いし、他の半導体層等を介してつなぎ合わされた状態でも良い。また、本発明において「電気的に接続」とは、電気的に何らかの相互作用が可能な状態であれば良い。より具体的には、「電気的に接続」は、直接接触した状態でも良いし、他の構成要素を介してつなぎ合わされた状態でも良く、通電可能な状態でも良いし、絶縁膜等を介して電気的な相互作用が可能な状態でも良い。
【0016】
また、本発明において、「上に」または「上方に」は、特に断らない限り、上面に直接接触している状態でも良いし、間に他の構成要素等が存在していても良い。同様に、「下に」または「下方に」も同様とする。また、「上面に」は、上面に直接接触している状態を指す。「下面に」も同様とする。本発明の電界効果トランジスタにおいて、「上」「上方」とは、特に断らない限り、前記半導体層において、前記ソース電極、前記ドレイン電極、前記ゲート電極、および前記絶縁膜が形成された面側を指す。本発明の半導体装置の各構成要素において、「上面」は、特に断らない限り、前記「上」または「上方」側の面を指す。
【0017】
また、本発明において、「組成」および「組成比」とは、例えば、AlGa1−xNの組成で表される半導体層において、xの数値を「Al組成比」というものとする。また、本発明において、一つの半導体層と他の半導体層との組成を比較する場合、導電性を発現させるための不純物(ドーパント)は、半導体層を構成する元素として考慮しないものとする。例えば、p型GaN層とn型GaN層とは、不純物(ドーパント)が異なるが、組成は同一であるものとする。また、例えば、n型GaN層と、不純物濃度がさらに高いnGaN層とがあった場合、それらの組成は同一であるものとする。
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態は例示であり、本発明を限定しない。各図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する部分は適宜説明を省略する場合がある。各図面は例示的な模式図であり、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合があり、各部の寸法比等は実物とは異なる場合がある。
【0019】
[第1の実施形態]
図1Aの断面図に、本発明の第1の実施形態に係る電界効果トランジスタ(MESFET)の構造の一例を模式的に示す。図示のとおり、このMESFETは、半導体層12〜14、ソース電極18、ドレイン電極19、ゲート電極、および絶縁膜15Aを有する。ゲート電極は、第1金属層16および第2金属層17を含む。第2金属層17は、第1金属層16よりも導電率が高く、第1金属層16の上方に、第2金属層17が積層されている。このMESFETは、基板10、および、基板10とエピタキシャル成長層の間の格子定数の差を緩和するためのバッファ層11をさらに含む。本発明のMESFETにおいて、バッファ層11は、なくても良いが、あれば好ましい。また、本発明のMESFETにおいて、半導体層の構造は特に限定されないが、同図のMESFETにおいては、GaN電子走行層12、AlGaN電子供給層13、およびGaNキャップ層14からなる。バッファ層11、GaN電子走行層12、AlGaN電子供給層13、およびGaNキャップ層14は、基板10上に前記順序で積層されている。すなわち、このMESFETは、AlGaN/GaNヘテロ接合を有するHFETである。
【0020】
ソース電極18およびドレイン電極19は、前記半導体層上(GaNキャップ層14上)にオーム性接触している。前記ゲート電極は、ソース電極18およびドレイン電極19の間に配置され、かつ、第1金属層16により前記半導体層上(GaNキャップ層14上)にショットキー性接触している。前記半導体層上におけるソース電極18および前記ゲート電極の間、ならびに、前記ゲート電極およびドレイン電極19の間は、絶縁膜15Aにより覆われている。同図において、第1金属層16は、絶縁膜15Aよりも厚い。すなわち、第1金属層16の厚みが絶縁膜15Aの厚み以上である。
【0021】
さらに、同図のMESFETにおける前記ゲート電極上部は、ソース電極18側およびドレイン電極19側に突出した突出部(ひさし)を有する。同図のMESFETにおいては、前記突出部は、第1金属層16および第2金属層17を含む。なお、以下、本発明のMESFETが有するゲート電極において、前記突出部(ひさし)を、「フィールドプレート電極(FP電極)」ということがあり、それ以外の部分を「ゲート電極部」ということがある。また、図1AのMESFETは、さらに、ファラデーシールド(FS)膜15Bおよびファラデーシールド電極20を含む。ファラデーシールド膜15Bは、絶縁膜15A上面、ソース電極18上面、ドレイン電極19上面、前記ゲート電極側面、および前記ゲート電極上面を覆っている。ファラデーシールド電極20は、ファラデーシールド膜15Bを介して、前記ゲート電極におけるドレイン電極19側の側面および上面を覆っている。なお、図1Bの拡大図に、図1Aにおける前記ゲート電極およびその付近の構造を示す。
【0022】
前記のとおり、このMESFET(電界効果トランジスタ)は、ゲート電極を構成する第1金属層16が、絶縁膜(フィールドプレート膜)15Aよりも厚く(第1金属層16の厚みが絶縁膜15Aの厚み以上に)形成されている。このため、絶縁膜15Aと第1金属層16側面との接触部分(図2Bにおいて、符号AおよびBで示す部分)に、第2金属層17が接触していない。図9を用いて説明したとおり、絶縁膜と第1金属層側面との接触部分では、前記第1金属層形成材料(図9ではNi)および前記第2金属層形成材料(図9ではAu)の相互拡散が起こりやすいことを、本発明者らは検証している。本実施形態のMESFETでは、絶縁膜15Aと第1金属層16側面との接触部分に第2金属層17が接触しないことにより、第1金属層16形成材料および第2金属層17形成材料の相互拡散が抑制できる。これにより、第2金属層17形成材料(例えばAu)の絶縁膜15A中への拡散を抑制できるため、第2金属層17形成材料が絶縁膜15Aを介して前記半導体層に接触することも抑制される。さらに、絶縁膜15Aが厚いために、第1金属層16側面および絶縁膜15Aの界面のカバレッジも良好であり、前記界面の隙間からの第2金属層17形成材料の侵入も抑制できる。したがって、前記半導体層の構成元素(例えばGa)が、前記ゲート電極中に拡散することも抑制可能である。以上の理由により、本実施形態のMESFETは、ゲートリーク電流の増加が抑制され、信頼性が高い。本発明によれば、例えば、高温での通電においてもゲートリーク電流の増大が防止されたMESFETを提供することも可能である。
【0023】
なお、本実施形態のMESFETは、図1Aに示した単位が複数連続して形成されたマルチフィンガー型のFETであっても良い。他の実施形態および他の図面に示すFETにおいても、同様である。
【0024】
図1Aに示す本実施形態のMESFETにおいて、第1金属層16の厚みは、絶縁膜15Aの厚みと等しくても良い。ただし、絶縁膜15Aと第1金属層16との接触部分に対する第2金属層17の接触をさらに確実に防止する観点から、例えば図1Aのように、第1金属層16の厚みが絶縁膜15Aの厚みよりも大きいことが好ましい。
【0025】
また、本発明のMESFETにおいて、前記第1金属層の形成材料は特に制限されないが、例えば、Ni(ニッケル)が好ましい。前記第2金属層の形成材料は特に制限されないが、例えば、Au(金)が好ましい。
【0026】
また、本発明のMESFETにおいて、図1Aに示したFP電極(前記ゲート電極の突出部)、ファラデーシールド(FS)膜15BおよびFS電極20は、なくても良い。図3の断面図に、本実施形態のMESFETの変形例を示す。図示のとおり、このMESFETは、前記FP電極(前記ゲート電極の突出部)、ファラデーシールド(FS)膜15BおよびFS電極20がない以外は図1AのMESFETと同じである。ただし、本発明のMESFETにおいて、FS膜およびFS電極があれば、電界遮蔽の観点から好ましい。また、前記FP電極(前記ゲート電極の突出部)があれば、高耐圧と電流コラプス抑制を両立しやすいため好ましい。
【0027】
また、本発明のMESFETにおいて、前記半導体層の形成材料は特に限定されないが、III−V族半導体から形成されていることが好ましく、III族窒化物半導体から形成されていることがより好ましい。前記III−V族半導体としては、例えば、GaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN、InAlN、InN、GaAs、AlGaAs、InAlGaAs等が挙げられる。前記III族窒化物半導体としては、例えば、GaN、AlGaN、InGaN、InAlGaN、InAlN、InN等が挙げられる。特に、III族窒化物半導体は、大きなバンドギャップ、高い飽和電子速度等の特性により、高出力動作、高温動作、高速動作などの優れた特性を実現しやすいため好ましい。
【0028】
また、前記半導体層の数は特に限定されず、1層でも複数でも良い。それら各層の構成も特に制限されず、例えば、公知のFET等に準じて良い。例えば、前記半導体層が、電子走行層および電子供給層を含み、前記電子供給層が、前記電子走行層の上方にヘテロ接合されていることが好ましい。このようなヘテロ接合電界効果トランジスタ(Hetero Junction Field Effect Transistor)は、高い電子移動度により、高出力動作、高温動作、高速動作などの優れた特性を実現しやすい。前記電子供給層の形成材料は、例えば、AlGaN等が挙げられる。前記電子走行層の形成材料は、例えば、GaN等が挙げられる。
【0029】
また、本発明のMESFETにおいて、前記絶縁膜(図1Aにおいては15A)は、例えば、少なくともシリコンおよび窒素を構成元素として含んでいても良く、または、少なくともシリコンおよび酸素を構成元素として含んでいても良い。前記絶縁膜の形成材料は、例えば、SiN、Si、SiO、SiON、SiOC、Al、Ta、HfO、ZrOおよびこれらの化合物等が挙げられる。また、前記ファラデーシールド膜(図1Aにおいては15B)の形成材料は、例えば、前記絶縁膜と同様でも良い。前記ファラデーシールド電極の形成材料も特に限定されず、例えば、公知のFET等に準じて良い。
【0030】
なお、前記半導体層、前記絶縁膜および前記ゲート電極の突出部(フィールドプレート電極)には、例えば、以下のような関係がある。ただし、この説明は例示であり、本発明を何ら限定しない。すなわち、まず、III族窒化物半導体を用いたトランジスタでは、基板表面に大きな負電荷が発生し、トランジスタ性能に大きな影響を与えることがある。例えば、アンドープGaNの上にAlGaNを成長させたAlGaN/GaNヘテロ構造では、自発分極とピエゾ分極との両作用によりヘテロ界面に正の固定電荷が発生する。このときAlGaN上面には負の分極電荷が発生する。分極電荷濃度はAlGaNの組成等によって変化するが、例えば、1×1013/cm2オーダーの極めて大きなシート電子濃度が発生する。このヘテロ構造にオーミック電極を形成し、前記オーミック電極間に電界を印加すると、1×1013/cm2オーダーの高電子濃度の電荷輸送に基づく電流が流れる。ここで、AlGaN上面に発生する負の分極電荷は、その上に堆積する絶縁膜(保護膜、またはパッシベーション膜とも言うことがある)の電気的性質によって、FET特性に大きな影響を与える。前記絶縁膜が窒化シリコン膜(SiN)の場合は、AlGaN上面に大きな負の固定電荷が存在すると、大きなゲート耐圧が得られるが、交流動作時の最大ドレイン電流が直流時に比べて低くなる傾向が見られる(電流コラプス)。一方、AlGaN上面の負電荷量が小いほど、ゲート耐圧は小さいが、交流動作時の最大ドレイン電流の低下も少ない傾向がある。前記ゲート電極の突出部(フィールドプレート電極、Field plate)により、このような耐圧低下と電流コラプスのトレードオフ関係を解消し、高耐圧と電流コラプスの抑制を両立可能である。
【0031】
本発明のMESFET(電界効果トランジスタ)の製造方法は、特に限定されないが、前記本発明の製造方法により製造することが好ましい。図1Aに示すMESFETの製造方法は特に限定されないが、例えば、図5の工程図に示す方法により製造できる。すなわち、まず、炭化シリコン(SiC)またはシリコン(Si)等から形成された半導体基板10上に、例えば有機金属気相成長法(Metal-organic vapor phase epitaxy、MOVPE)などにより、バッファ層11、GaNチャネル層12、AlGaN電子供給層13、およびGaNキャップ層14を前記順序でエピタキシャル成長させる(図示せず)。つぎに、通常のフォトリソグラフィーと電子ビーム(e-gun)蒸着により、前記半導体層上に、オーミック電極18および19を形成する(前記「オーミック電極形成工程」、図5(a))。さらに、前記半導体層上におけるソース電極18およびドレイン電極19の間に、例えばプラズマCVDにより、絶縁膜(保護膜、FP膜)15Aを形成する(前記「絶縁膜形成工程」、図5(b))。絶縁膜15Aは、図示のように、ソース電極18上およびドレイン電極19上にも形成しても良い。さらに、必要に応じ、前記半導体層の端に、隣の素子との絶縁を行うための絶縁イオン注入層21を形成する(図5(c))。続いて、絶縁膜15Aに、その上面から下面まで達する深さの開口部を、例えばドライエッチングにより形成する(前記「開口部形成工程」、図5(d))。つぎに、フォトレジスト(PR)をマスクとして、ゲート電極であるNi層(第1金属層)16およびAu層(第2金属層)17をこの順にそれぞれe-gun蒸着し、リフトオフによりゲート電極を形成する(前記「第1金属層形成工程」および前記「第2金属層形成工程」、図5(f))。このとき、フォトレジスト開口幅をゲート開口幅(前記開口部の幅)よりも大きくすることで、ゲート電極にひさし(突出部、FP電極)を形成することができる。また、ゲート電極を構成するNi層(第1金属層)16の厚さを絶縁膜15A(FP膜)よりも厚く形成することで、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端におけるAu(第2金属層形成材料)の拡散と、半導体層構成元素(例えばGa)の這い上がりを防止する。なお、Niは高融点金属であるため、膜厚を厚くする場合にe-gunで連続的に長時間蒸着すると、レジストが高温になり変質するなどの不具合を起こすことがある。このレジストの変質を防止するためには、例えば、Niの蒸着を必要な膜厚に応じて数回に分ければ良い。図5(f)の素子は、このまま本発明のMESFETとして用いることもできるが、さらに、例えばプラズマCVDにより、前記ゲート電極上面、前記ゲート電極側面、ソース電極18上面、および度連電極19上面を覆うように、絶縁膜(層間絶縁膜、FS膜)15Bを形成しても良い(図5(g))。なお、図5(g)では、便宜上、絶縁膜15Aおよび絶縁膜15Bの境界を実線で示しているが、絶縁膜15Aおよび絶縁膜15Bが同じ材質で形成されている場合は、両者の境界は明確でない。さらに、スルーホール(図示せず)とFS電極20を形成し(図5(h))、スルーホール部分にスパッタおよびAuメッキを用いて配線(図示せず)と電極パッド(図示せず)を形成し、図1Aに示すMESFETを製造することができる。
【0032】
つぎに、図2Aの断面図に、本実施形態のMESFETのさらに別の変形例を示す。図2Bの断面図に、図2AのMESFETのゲート電極およびその周囲の構造を模式的に示す。これらの図に示すとおり、このMESFETは、ゲート電極において、第2金属層17下面の全体が第1金属層16上面の上方に重なっている。すなわち、第2金属層17下面の面積が、第1金属層16上面の面積以下であり、かつ、第2金属層17下面が、第1金属層16上面からはみ出していない。また、同図では、第1金属層16の厚みは、絶縁膜15Aの厚みよりも小さい。前記ゲート電極上部の突出部(フィールドプレート電極)は、第2金属層17のみから形成されている。これら以外は、図2Aおよび図2Bに示すMESFETは、図1Aおよび図1Bに示すMESFETと同様である。
【0033】
図示のとおり、このMESFETは、絶縁膜15Aと第1金属層16側面との接触部分に、第2金属層17が接触していない。図9を用いて説明したとおり、絶縁膜と第1金属層側面との接触部分では、前記第1金属層形成材料(図9ではNi)および前記第2金属層形成材料(図9ではAu)の相互拡散が起こりやすいことを、本発明者らは検証している。本実施形態のMESFETでは、絶縁膜15Aと第1金属層16側面との接触部分に第2金属層17が接触しないことにより、第1金属層16形成材料および第2金属層17形成材料の相互拡散が抑制できる。これにより、第2金属層16形成材料(例えばAu)が絶縁膜15A中に拡散しないため、第2金属層17形成材料が絶縁膜15Aを介して前記半導体層に接触することが抑制される。したがって、前記半導体層の構成元素(例えばGa)が、前記ゲート電極中に拡散することも抑制可能である。以上の理由により、同図に示す構造のMESFETは、ゲートリーク電流の増加が抑制され、信頼性が高い。例えば、高温での通電においてもゲートリーク電流の増大が防止されたMESFETを提供することも可能である。また、図2Aおよび図2Bの構造では、さらに、絶縁膜15Aが、第1金属層16上面の縁を覆うように形成されている。このため、第1金属層16側面および絶縁膜15Aの界面のカバレッジも良好であり、前記界面の隙間からの第2金属層17形成材料の侵入も抑制できる。
【0034】
また、図1Aに示したMESFETと同様、FP電極(前記ゲート電極の突出部)、ファラデーシールド(FS)膜15BおよびFS電極20は、なくても良い。図4の断面図に、図2AのMESFETの変形例を示す。図示のとおり、このMESFETは、前記FP電極(前記ゲート電極の突出部)、ファラデーシールド(FS)膜15BおよびFS電極20がない以外は図2AのMESFETと同じである。ただし、前記のとおり、本発明のMESFETにおいて、FS膜およびFS電極があれば、電界遮蔽の観点から好ましい。また、前記FP電極(前記ゲート電極の突出部)があれば、高耐圧と電流コラプス抑制を両立しやすいため好ましい。
【0035】
また、第1金属層16の厚みは、図2Aおよび図2Bにおいては、絶縁膜15Aの厚みよりも小さいが、絶縁膜15Aの厚みと同じでもよいし、絶縁膜15Aの厚みよりも大きくても良い。
【0036】
図2AのMESFETの製造方法も特に制限されないが、例えば、図6の工程図に示す方法で製造できる。同図の製造方法においては、前記ゲート電極の構造を、図2Aおよび図2Bに示す構造とする。さらに、前記開口部形成工程および前記第1金属層形成工程(図6(d))後、前記第2金属層形成工程(図6(f))に先立ち、再度、絶縁膜15Aを、例えばプラズマCVDにより、第1金属層16上面の縁を覆うように形成する(図6(e))。これにより、第1金属層16側面および絶縁膜15Aの界面のカバレッジがさらに良好になる。これら以外は、図6の工程図に示す製造方法は、図5の工程図に示す製造方法と同様である。
【0037】
[第2の実施形態]
つぎに、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0038】
図7Aの断面図に、本実施形態(第2の実施形態)のMESFETの構造の一例を模式的に示す。図7Bの拡大図には、図7AのMESFETにおけるゲート電極およびその周囲の構造を示す。図示のとおり、このMESFETは、前記ゲート電極が、さらに、第3金属層(バリアメタル)22を含み、第3金属層22が、第1金属層16および第2金属層17の間に配置されている。第3金属層(バリアメタル)22の形成材料は特に限定されないが、Mo、Pt、W、Ti、Ta、ならびにこれらの窒化物およびシリサイドからなる群から選択される少なくとも一つから形成されていることが好ましく、Ptが特に好ましい。これ以外は、このMESFETは、図1Aおよび図1B(第1の実施形態)のMESFETと同様である。
【0039】
本実施形態のMESFETは、第1金属層16と第2金属層17が、直接接触せず、第3金属層(バリアメタル)22により分離されている。このため、第1金属層形成材料(例えばNi)および第2金属層形成材料(例えばAu)の相互拡散が、さらに効果的に抑制されている。これにより、第2金属層17形成材料(例えばAu)の絶縁膜15A中への拡散、および、第2金属層17形成材料が絶縁膜15Aを介して前記半導体層に接触することも、さらに効果的に抑制される。したがって、本実施形態のMESFETは、第1の実施形態のMESFETよりも、さらに、ゲートリーク電流の増加が抑制され、信頼性が高い。
【0040】
また、図8Aの断面図に、本実施形態のMESFETの変形例の構造を模式的に示す。図8Bの拡大図には、図8AのMESFETにおけるゲート電極およびその周囲の構造を示す。このMESFETは、前記ゲート電極が、第3金属層(バリアメタル)22を含むこと以外は、図2Aおよび図2B(第1の実施形態の変形例)のMESFETと同様である。より具体的には、図8Aおよび図8Bに示すとおり、このMESFETは、前記ゲート電極が、第3金属層(バリアメタル)22を含み、第3金属層22が、第1金属層16および第2金属層17の間に配置されている。第3金属層(バリアメタル)22の形成材料は、図7Aおよび図7BのMESFETと同様、特に限定されないが、Mo、Pt、W、Ti、Ta、ならびにこれらの窒化物およびシリサイドからなる群から選択される少なくとも一つから形成されていることが好ましい。図8Aおよび図8BのMESFETにおいては、第3金属層22の形成材料は、Moが特に好ましい。このMESFETは、図7Aおよび図7BのMESFETと同様の理由により、図2Aおよび図2B(第1の実施形態の変形例)のMESFETよりも、さらに、ゲートリーク電流の増加が抑制され、信頼性が高い。
【0041】
本実施形態のMESFETにおいては、第1の実施形態のMESFETと同様、FP電極(前記ゲート電極の突出部)、ファラデーシールド(FS)膜15BおよびFS電極20は、なくても良いが、あれば好ましい。
【0042】
本実施形態のMESFETの製造方法も特に制限されず、例えば、前記第1金属層および前記第2金属層の間に前記第3金属層を形成する以外は、第1の実施形態のMESFETと同様で良い。
【0043】
以上、本発明を各実施形態に即して説明したが、前述の通り、前記各実施形態は例示であり、種々の変更が可能である。
【0044】
前記絶縁膜(フィールドプレート膜)および前記ファラデーシールド膜の形成材料は、前記各材料等から自由に選ぶことが可能である。さらに他の絶縁膜を含む場合も、同様である。
【0045】
また、前記半導体層は、III−V族半導体およびIII族窒化物半導体のみには限定されず、例えば、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、燐化物系半導体(AlInGaPなど)、ダイヤモンド(C)、セレン化物系半導体(ZnMgSSeなど)など、どのような材料でも良い。
【0046】
また、前記各実施形態では、電子走行層材料としてGaNを用いたが、窒化インジウムガリウム(InGaN)、AlGaN、InAlN、InAlGaN、InNなど他のIII族窒化物半導体を用いても良いし、Si、SiC等を用いても良い。
【0047】
また、前記各実施形態では、電子供給層材料としてAlGaNを用いたが、電子走行層よりバンドギャップの大きい他のIII族窒化物半導体を用いても良い。前記III族窒化物半導体は、例えば、InGaN、AlGaN、InAlN、InAlGaN、GaN、AlNなどであっても良い。
【0048】
また、前記各実施形態では、電子供給層と電子走行層とのヘテロ接合構造を用いたが、電子供給層を設けなくても良い。この場合には、例えば、前記電子走行層を、n型のGaN等のIII族窒化物半導体、若しくは、n型のSi、SiC等によって構成しても良い。
【0049】
前記ゲート電極の形成材料は、前記各材料等から自由に選ぶことができる。また、前記オーミック電極(ソース電極およびドレイン電極)の形成材料は、特に限定されず、例えば、Ti/Al/Ni/Au、Ti/Al/モリブデン(Mo)/Au、Ti/Al/ニオビウム(Nb)/Au、Ti/Alなど、どのような材料でも良い。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
図1Aに示す構造のMESFETを、図5の工程図およびその説明(第1の実施形態)に基づいて製造した。基板10としては、SiC(0001)基板を用いた。その上に、AlNからなるバッファ層11を20nm、アンドープGaNチャネル層12を2.0μm、アンドープAl0.2Ga0.8N電子供給層13を250nm、およびGaNキャップ層14を20nm、MOVPEにより、前記順序でエピタキシャル成長層させた。FP膜15AおよびFS膜15Bには、プラズマCVDによるSiN膜を用い、厚さをそれぞれ60nm、200nmとした。ゲート電極には、Ni/Au電極、オーミック電極にはTi/Al/Ni/Au電極を用いた。ゲート電極のNi層16の厚さを、FP膜(絶縁膜)15Aの厚さよりも大きい80nmとし、Au層17の厚さを320nmとした。オーミック電極18、19の厚さは、それぞれ400nmとした。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0051】
[実施例2]
図1Aに示す構造のMESFETを、図5の工程図およびその説明(第1の実施形態)に基づいて製造した。本実施例では、FP膜15AとしてプラズマCVDによるSiON膜を用い、厚さを100nmとした。また、ゲート電極のNi層16の厚さを、FP膜(絶縁膜)15Aの厚さよりも大きい120nmとし、Au層17の厚さを280nmとした。これら以外は、実施例1のMESFETと同様とした。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0052】
なお、SiON膜はSiN膜に比べて膜中に発生する内部応力が小さいことから、クラックの発生なしに成膜可能な膜厚を大きく取れる。また酸素組成比を増加することにより成膜可能膜厚が増大し、膜厚に関する設計自由度が大きいという利点があり、例えばFP電極下のFP膜(絶縁膜)の厚さを厚くすることにより、容量低減による高周波特性の改善が得られる。
【0053】
[実施例3]
図2Aに示す構造のMESFETを、図6の工程図およびその説明(第1の実施形態)に基づいて製造した。本実施例では、ゲート電極のNi層16の厚さを35nmとし、Au層17の厚さを365nmとした。また、本実施例では、Ni層(第1金属層)16上面の幅(ソース電極からドレイン電極への方向の幅)は1.0μmとし、Au層(第2金属層)17上面(Ni層下面との界面)の幅(ソース電極からドレイン電極への方向の幅)は0.6μmとした。Au層(第2金属層)17の幅はNi層(第1金属層)16の幅よりも小さく、Au層(第2金属層)17下面の全体がNi層(第1金属層)16上面の上方に重なっていた。これら以外の各構成要素の材質、厚さおよび構成は、実施例1と同様とした。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0054】
[実施例4]
FP膜(絶縁膜)15Aを、SiNに代えてSiONとする以外は実施例3と同様のMESFETを製造した。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0055】
[実施例5]
図7Aに示す構造のMESFETを製造した。本実施例では、ゲート電極を、Ni/Pt/Au電極とした。すなわち、前記ゲート電極は、Ni層(第1金属層)16およびAu層(第2金属層)17の間に、Pt層(第3金属層)22を含む。Ni層16の厚さは80nm、Au層17の厚さは320nm、Pt層22の厚さは20nmとした。これら以外の各構成要素の材質、厚さおよび構成は、実施例1と同様とし、実施例1のMESFETと同様の製造方法により製造した。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0056】
[実施例6]
FP膜(絶縁膜)15Aとして、SiN膜に代えてプラズマCVDによるSiOC膜を用い、厚さを200nmとした。ゲート電極のNi層16の厚さを120nmとし、Au層17の厚さを280nm、Pt層22の厚さは20nmとした。これら以外の各構成要素の材質、厚さおよび構成は、実施例5と同様として、MESFETを製造した。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0057】
なお、SiOC膜はSiN膜に比べてストレスが小さいことから、窒化ガリウム系(III族窒化物半導体)電界効果トランジスタのキャリア発生を担っているAlGaN層のピエゾ分極に影響を与えずに膜厚を厚くすることができる。
【0058】
[実施例7]
図8Aに示す構造のMESFETを製造した。本実施例では、ゲート電極を、Ni/Pt/Au電極とした。すなわち、前記ゲート電極は、Ni層(第1金属層)16およびAu層(第2金属層)17の間に、Pt層(第3金属層)22を含む。Ni層16の厚さは80nm、Au層17の厚さは320nm、Pt層22の厚さは20nmとした。これら以外の各構成要素の材質、厚さおよび構成は、実施例3と同様とし、実施例3のMESFETと同様の製造方法により製造した。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0059】
[実施例8]
FP膜(絶縁膜)15Aとして、SiN膜に代えてプラズマCVDによるSiOC膜を用い、厚さを200nmとした。ゲート電極のNi層16の厚さを120nmとし、Au層17の厚さを280nm、Pt層22の厚さは20nmとした。これら以外の各構成要素の材質、厚さおよび構成は、実施例7と同様として、MESFETを製造した。本実施例のMESFETは、ゲート電極下部(ゲート電極部)両端付近でのAuおよびGaの拡散が抑制され、ゲートリーク電流が小さく高信頼なAlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET)であることを、透過電子顕微鏡(TEM)観察、組成分析および通電試験により確認した。
【0060】
以上のように、前記各実施例によれば、ゲート電極下部のエッジにおけるAuの拡散と、Gaの電極側への拡散が抑制されていた。その結果、高温での通電試験におけるゲートリーク電流が抑制された、信頼性の高いAlGaN/GaN系HFETが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上、説明したとおり、本発明によれば、ゲートリーク電流の増加が抑制された信頼性の高いMESFET(電界効果トランジスタ)、電界効果トランジスタの製造方法、および電子装置を提供することができる。前記のとおり、本発明の電子装置は、本発明のMESFETを含むことを特徴とする。本発明の電子装置としては、例えば、携帯電話基地局用増幅器、各種レーダ用増幅器等が挙げられるが、これに限定されず、電界効果トランジスタが使用される電子装置であれば、どのような装置でも良い。
【0062】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載しうるが、以下には限定されない。
【0063】
(付記1)
半導体層、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、および絶縁膜を有し、
前記ゲート電極は、第1金属層および第2金属層を含み、
前記第2金属層は、前記第1金属層よりも導電率が高く、
前記第1金属層の上方に、前記第2金属層が積層され、
前記ソース電極および前記ドレイン電極は、前記半導体層上にオーム性接触し、
前記ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置され、かつ、前記第1金属層により前記半導体層上にショットキー性接触し、
前記半導体層上における前記ソース電極および前記ゲート電極の間、ならびに、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間は、前記絶縁膜により覆われ、
かつ、
前記第2金属層下面の全体が前記第1金属層上面の上方に重なっているか、または、前記第1金属層の厚みが前記絶縁膜の厚み以上であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【0064】
(付記2)
前記ゲート電極上部が、前記ソース電極側および前記ドレイン電極側に突出した突出部を有することを特徴とする付記1記載の電界効果トランジスタ。
【0065】
(付記3)
前記半導体層が、III−V族半導体から形成されていることを特徴とする付記1または2に記載の電界効果トランジスタ。
【0066】
(付記4)
前記半導体層が、III族窒化物半導体から形成されていることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【0067】
(付記5)
前記半導体層が、電子走行層および電子供給層を含み、前記電子供給層が、前記電子走行層の上方にヘテロ接合されていることを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【0068】
(付記6)
前記第1金属層がNiから形成され、前記第2金属層がAuから形成されていることを特徴とする付記1から5のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【0069】
(付記7)
前記ゲート電極が、さらに、第3金属層を含み、前記第3金属層が、前記第1金属層および前記第2金属層の間に配置されていることを特徴とする付記1から6のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【0070】
(付記8)
前記第3金属層が、Mo、Pt、W、Ti、Ta、ならびにこれらの窒化物およびシリサイドからなる群から選択される少なくとも一つから形成されていることを特徴とする付記7記載の電界効果トランジスタ。
【0071】
(付記9)
前記絶縁膜が、少なくともシリコンおよび窒素を構成元素として含むことを特徴とする付記1から8のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【0072】
(付記10)
前記絶縁膜が、少なくともシリコンおよび酸素を構成元素として含むことを特徴とする付記1から9のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【0073】
(付記11)
前記半導体層上に前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する、オーミック電極形成工程と、
前記半導体層上における前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に前記絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に、その上面から下面まで達する深さの開口部を形成する開口部形成工程と、
前記開口部を塞ぐように前記第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、
前記第1金属層上方に前記第2金属層を積層させる第2金属層形成工程とを含むことを特徴とする、付記1から10のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
【0074】
(付記12)
付記1から10のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタを含むことを特徴とする電子装置。
【符号の説明】
【0075】
10 基板
11 バッファ層
12 GaNチャネル層
13 AlGaN電子供給層
14 GaNキャップ層
15A 絶縁膜(フィールドプレート膜)
15B 絶縁膜(ファラデーシールド膜)
16 ゲート電極の第1金属層(Ni層)
17 ゲート電極の第2金属層(Au層)
18 ソース電極
19 ドレイン電極
20 ファラデーシールド電極
21 絶縁イオン注入層
22 ゲート電極の第3金属層(バリアメタル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、および絶縁膜を有し、
前記ゲート電極は、第1金属層および第2金属層を含み、
前記第2金属層は、前記第1金属層よりも導電率が高く、
前記第1金属層の上方に、前記第2金属層が積層され、
前記ソース電極および前記ドレイン電極は、前記半導体層上にオーム性接触し、
前記ゲート電極は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に配置され、かつ、前記第1金属層により前記半導体層上にショットキー性接触し、
前記半導体層上における前記ソース電極および前記ゲート電極の間、ならびに、前記ゲート電極および前記ドレイン電極の間は、前記絶縁膜により覆われ、
かつ、
前記第2金属層下面の全体が前記第1金属層上面の上方に重なっているか、または、前記第1金属層の厚みが前記絶縁膜の厚み以上であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記半導体層が、III族窒化物半導体から形成されていることを特徴とする請求項1記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記半導体層が、電子走行層および電子供給層を含み、前記電子供給層が、前記電子走行層の上方にヘテロ接合されていることを特徴とする請求項1または2記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記第1金属層がNiから形成され、前記第2金属層がAuから形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記ゲート電極が、さらに、第3金属層を含み、前記第3金属層が、前記第1金属層および前記第2金属層の間に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記第3金属層が、Mo、Pt、W、Ti、Ta、ならびにこれらの窒化物およびシリサイドからなる群から選択される少なくとも一つから形成されていることを特徴とする請求項5記載の電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記絶縁膜が、少なくともシリコンおよび窒素を構成元素として含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記絶縁膜が、少なくともシリコンおよび酸素を構成元素として含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記半導体層上に前記ソース電極および前記ドレイン電極を形成する、オーミック電極形成工程と、
前記半導体層上における前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に前記絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に、その上面から下面まで達する深さの開口部を形成する開口部形成工程と、
前記開口部を塞ぐように前記第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、
前記第1金属層上方に前記第2金属層を積層させる第2金属層形成工程とを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタを含むことを特徴とする電子装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−238805(P2011−238805A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109696(P2010−109696)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】