説明

静電容量型加速度センサ

【課題】簡単な構造で、かつ検出感度に優れる静電容量型加速度センサを提供すること。
【解決手段】内部に空洞10を有する半導体基板2の表面部(上壁11)に、互いに間隔を空けて噛み合うZ固定電極61とZ可動電極62とを形成する。そして、各Z可動電極62の電極部66において、半導体基板2の表面から空洞10へ向かう厚さ方向途中部まで、誘電層70を埋め込む。これにより、Z固定電極61の電極部64とZ可動電極62の電極部66とが対向することによって構成されるキャパシタに、電極間距離d1に基づく容量と、電極間距離d2に基づく容量とを付与することによって、同一キャパシタ内において、静電容量の差を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型加速度センサは、互いに対向する電極間(固定電極−可動電極間)の静電容量の変化量を検出することにより、加速度を検出する。
特許文献1の図1a〜図1gに開示された加速度センサ(100)は、たとえば、絶縁層(132)を介して順に積層されたSi電極(112)およびメタル電極(122)の2層からなる固定部(400)と、固定部(400)のSi電極(112)と同一形状をなし、基準姿勢(特許文献1の図1d)において当該Si電極(112)に完全に向かい合うSi電極(116)の単層からなる可動部(300)とを備えている。この加速度センサ(100)は、加速度の作用により上下に振動する可動部(300)のSi電極(116)と、固定部(400)のSi電極(112)との間の静電容量の変化量を検出することにより、Z軸方向の加速度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6792804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上下に振動する可動電極とそれに噛み合う固定電極との間の静電容量の変化量に基づいて加速度を検出する手法において、加速度ベクトルを正確に検出するには、静電容量の変化量だけでなく、可動電極の変位方向を検出する必要がある。より具体的には、可動電極が、固定電極に対して上側に振れているか下側に振れているかを検出する必要がある。このような検出を行うことにより、加速度がZ軸方向の上側および下側のいずれに作用しているか確実に検出できる。
【0005】
特許文献1の加速度センサ(100)では、可動部(300)のSi電極(116)と、固定部(400)のSi電極(112)およびメタル電極(122)とがそれぞれ独立したキャパシタを構成している。そして、当該加速度センサ(100)は、Si電極(116)とメタル電極(122)とにより構成されるキャパシタ(142)の静電容量が、可動部(300)が上昇するに従って増加し(特許文献1の図1b)、可動部(300)が下降するに従って減少する(特許文献1の図1f)という原理を利用して、可動部(300)の変位方向を検出している。
【0006】
しかしながら、1つの固定部(400)に独立したキャパシタ構造を複数設ける必要があるので、センサ構造が複雑になるという不具合がある。
本発明の目的は、簡単な構造で、かつ検出感度に優れる静電容量型加速度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、内部に上壁および底壁が形成された空洞を有し、当該空洞の前記上壁を形成する表面部および前記底壁を形成する裏面部を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記表面部を加工して形成され、互いに間隔を空けて噛み合う櫛歯状の第1電極および第2電極とを含み、前記第1電極または前記第2電極が他方に対して上下したときの加速度を、前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量の変化を検出することにより検出する静電容量型加速度センサであって、前記第1電極は、前記第2電極との対向方向に直交する厚さ方向に沿って、その表面または裏面から途中部に至る所定厚さを有し、前記対向方向に沿って所定幅を有する誘電層と、当該誘電層を除く残余の部分からなる導電層とを含む、静電容量型加速度センサである。
【0008】
この構成によれば、加速度を検出するためのキャパシタは、第1電極と第2電極とが互いに対向することによって構成されている。当該キャパシタは、第1電極または第2電極の振動によって変化する静電容量の変化量に基づいて、加速度を検出する。
当該キャパシタにおいて、第1電極の一部は、第1電極と第2電極との対向方向に直交する厚さ方向に沿って所定厚さを有し、当該対向方向に沿って所定幅を有する誘電層により構成されている。
【0009】
これにより、当該キャパシタにおいて、誘電層と第2電極とが対向する部分では、キャパシタの電極間距離d1が、当該キャパシタ本来の電極間距離d2(第1電極と第2電極との距離)よりも、誘電層の幅W分大きくなる(つまり、d1=d2+W)。そのため、同一のキャパシタ内において、静電容量の差を設けることができる。
たとえば、第1電極がZ軸方向に沿って振動する可動電極であって、その可動電極(第1電極)の表面から途中部に誘電層が埋め込まれている場合の加速度を検出する方法について説明する。
【0010】
センサにZ軸方向の加速度が作用すると、櫛歯状の第1電極(可動電極)が振り子であるかのように、同じく櫛歯状の第2電極(固定電極)を振動の中心として、第2電極に対してZ軸方向に沿って上下に振動する。
この際、第1電極が、第2電極に対して最初に空洞から離れる側(上側)へ振れると、キャパシタの静電容量は、誘電層が第2電極と対向している間、電極間距離d1に基づく減少率D1(D1≧0)で減少する。その後、誘電層が第2電極の上方に完全に食み出し、導電層のみが第2電極と対向する状態になると、その時点からの静電容量は、本来の電極間距離d2に基づく減少率D2(D2≧0)で減少する。この静電容量の減少率D2は、電極間距離d2が電極間距離d1よりも小さく、単位時間当たりに減少する静電容量が大きくなるので、減少率D1よりも大きくなる。すなわち、第1電極が上側へ振れ始める場合、キャパシタの静電容量は、第1の減少率D1で減少した後、第1の減少率D1よりも大きな第2の減少率D2で減少する。
【0011】
これに対し、第1電極が、第2電極に対して最初に空洞に近づく側(下側)へ振れると、キャパシタの静電容量は、誘電層の一部が第2電極よりも下方に食み出し始めるまでの間、電極間距離d2に基づく減少率D2で減少する。その後、誘電層の一部が第2電極よりも下方に食み出し始めると、その時点からの静電容量は、電極間距離d1に基づく減少率D1で減少する。この静電容量の減少率D1は、電極間距離d1が電極間距離d2よりも大きく、単位時間当たりに減少する静電容量が小さくなるので、減少率D2よりも小さくなる。すなわち、第1電極が下側へ振れ始める場合、キャパシタの静電容量は、第2の減少率D2で減少した後、第2の減少率D2よりも小さな第1の減少率D1で減少する。
【0012】
したがって、当該キャパシタの静電容量が、相対的に小さな減少率D1で減少した後、相対的に大きな減少率D2で減少するのか(D1→D2)、または、相対的に大きな減少率D2で減少した後、相対的に小さな減少率D1で減少するのか(D2→D1)を検出することにより、第1電極が最初に振れた方向(空洞から離れる方向または空洞に近づく方向)を容易に把握することができる。その結果、加速度ベクトルの方向を正確に検出できるので、検出感度を向上させることができる。
【0013】
しかも、このような検出感度の向上が、キャパシタを構成する第1電極に誘電層を埋め込むことによって発現されるので、センサ構造の複雑化を防止することができる。
また、請求項2記載の発明は、前記誘電層が、前記第1電極の幅方向一端側に片寄って形成されており、前記導電層は、前記誘電層に対して前記幅方向他端側に隣接して形成された第1部分と、前記誘電層の下方に形成され、前記第1部分よりも大きな幅を有する第2部分とを含む、請求項1に記載の静電容量型加速度センサである。
【0014】
この構成によれば、導電層が、第1電極の表面から裏面に至るまで厚さ方向全域にわたって形成されている。
そのため、たとえば、前述のように第1電極がZ軸方向に沿って振動する可動電極である場合、第2電極に対する第1電極の振れる方向(上側方向または下側方向)に関わらず、第1電極の導電層と第2電極との対向面積が、必ず減少する。具体的には、第1電極が、最初に上側に振れると、導電層の第1部分と第2電極との対向面積が減少し、一方、最初に下側に振れると、導電層の第2部分と第2電極との対向面積が減少する。すなわち、この構成は、前述の検出方法において、D1>0およびD2>0の場合を表している。
【0015】
これにより、第1電極の振れ始め直後に静電容量の変化を検出できるので、振れ始め直後の加速度ベクトルの大きさも検出することができる。
また、請求項3記載の発明は、前記誘電層が、前記第1電極の幅方向一端から他端に至るまで形成され、前記第1電極と同じ幅を有しており、前記第1電極が、当該誘電層と、当該誘電層の下方に形成された前記導電層との積層構造を有している、請求項1に記載の静電容量型加速度センサ。
【0016】
この構成によれば、第1電極の表面または裏面から途中部までの部分が、全て誘電層で構成されている。この場合、誘電層と第2電極とが対向する部分においては、第2電極に対向する導電層が存在しないので、静電容量が0(ゼロ)となる。
そのため、たとえば、前述のように第1電極がZ軸方向に沿って振動する可動電極である場合、第1電極が最初に上側へ振れると、キャパシタの静電容量は、誘電層が第2電極と対向している間、変化しない(つまり、D1=0)。その後、誘電層が第2電極の上方に完全に食み出し、導電層のみが第2電極と対向する状態になると、その時点からの静電容量は、本来の電極間距離d2に基づく減少率D2(D2>0)で減少する。
【0017】
これに対し、第1電極が最初に下側へ振れると、キャパシタの静電容量は、誘電層が第2電極よりも下方に食み出し始めるまでの間、電極間距離d2に基づく減少率D2(D>0)で減少する。その後、誘電層が第2電極よりも下方に食み出し始めると、その時点からの静電容量は、変化しない(つまり、D1=0)。
したがって、この構成によれば、加速度ベクトルの方向を、静電容量の減少率が0か0でないか、つまり、静電容量の変化の有無に基づいて判断することができる。よって、加速度検出を簡易に行うことができる。
【0018】
また、前記第1電極および前記第2電極は、請求項4に記載のように、前記第1電極が可動電極であり、前記第2電極が固定電極であってもよい。また、請求項5記載のように、前記第1電極が固定電極であり、前記第2電極が可動電極であってもよい。
また、請求項6記載の発明は、前記半導体基板が、導電性シリコン基板である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電容量型加速度センサである。
【0019】
半導体基板が導電性シリコン基板であれば、所定の形状に成形された第1電極および第2電極に対して導電性を付与するための特別な処理を施さなくても、成形後の構造をそのまま電極として利用することができる。また、電極として利用される部分を除く部分を、配線として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る加速度センサの模式平面図である。
【図2】図1に示すセンサ部の模式平面図である。
【図3】図2に示すX軸センサの要部平面図である。
【図4】図2に示すX軸センサの要部断面図であって、図3の切断面IV−IVにおける断面を示す。
【図5】図2に示すZ軸センサの要部平面図である。
【図6】図2に示すZ軸センサの要部断面図であって、図5の切断面VI−VIにおける断面を示す。
【図7A】本発明の一実施形態に係る加速度センサの製造工程の一部を示す断面図であって、図6と同じ位置での切断面を示す。
【図7B】図7Aの次の工程を示す図である。
【図7C】図7Bの次の工程を示す図である。
【図7D】図7Cの次の工程を示す図である。
【図7E】図7Dの次の工程を示す図である。
【図7F】図7Eの次の工程を示す図である。
【図7G】図7Fの次の工程を示す図である。
【図8】図6に示すZ可動電極の変形例を示す図である。
【図9】図6に示す誘電層の変形例を示す図である。
【図10】図8に示す誘電層の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<加速度センサの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る加速度センサの模式平面図である。
加速度センサ1は、平面視四角形状の半導体基板2と、半導体基板2の中央部に配置されたセンサ部3と、半導体基板2におけるセンサ部3の側方に配置され、センサ部3に電力を供給するための電極パッド4とを含んでいる。
【0022】
センサ部3は、三次元空間において直交する3つの軸に沿う方向に作用する加速度をそれぞれ検出するセンサとして、X軸センサ5、Y軸センサ6およびZ軸センサ7を有している。この実施形態では、半導体基板2の表面に沿って直交する2方向をX軸方向およびY軸方向とし、これらX軸およびY軸方向に直交する半導体基板2の厚さ方向に沿う方向をZ軸とする。
【0023】
これら3つのセンサ5〜7は、たとえばシリコン基板からなる蓋基板8が半導体基板2の表面に接合されることにより、蓋基板8により覆われて密閉されている。
電極パッド4は、互いに等しい間隔を空けて複数(図1では、5つ)設けられている。
<X軸センサおよびY軸センサの構成>
次に、図2〜図4を参照して、X軸センサおよびY軸センサの構成を説明する。
【0024】
図2は、図1に示すセンサ部の模式平面図である。図3は、図2に示すX軸センサの要部平面図である。図4は、図2に示すX軸センサの要部断面図であって、図3の切断面IV−IVにおける断面を示す。
半導体基板2は、導電性シリコン基板(たとえば、5Ω・m〜500Ω・mの抵抗率を有する低抵抗基板)からなる。この半導体基板2は、内部に空洞10を有しており、当該空洞10を表面側から区画する天面を有する半導体基板2の上壁11(表面部)にX軸センサ5、Y軸センサ6およびZ軸センサ7が形成されている。つまり、X軸センサ5、Y軸センサ6およびZ軸センサ7は半導体基板2の一部からなり、空洞10を裏面側から区画する底面を有する半導体基板2の底壁12(裏面部)に対して浮いた状態で支持されている。
【0025】
X軸センサ5およびY軸センサ6は、間隔を空けて互いに隣接して配置されており、これらX軸センサ5およびY軸センサ6のそれぞれを取り囲むようにZ軸センサ7が配置されている。この実施形態では、Y軸センサ6は、X軸センサ5を平面視で90°回転させたものとほぼ同様の構成を有している。したがって、以下では、Y軸センサ6の構成については、X軸センサ5の各部の説明の際に、当該各部に対応する部分を括弧書きで併記して、具体的な説明に代える。
【0026】
X軸センサ5とZ軸センサ7との間およびY軸センサ6とZ軸センサ7との間には、これらを浮いた状態で支持するための支持部14が形成されている。支持部14は、半導体基板2の空洞10を横側から区画する側面を有する一側壁15から、Z軸センサ7を横切ってX軸センサ5およびY軸センサ6へ向かって延びる直線部16と、X軸センサ5およびY軸センサ6を取り囲む環状部17とを一体的に含んでいる。
【0027】
X軸センサ5およびY軸センサ6は、個々の環状部17の内側に配置され、環状部17の内側壁における相対する2箇所において両持ち支持されている。Z軸センサ7は、直線部16の両側壁において両持ち支持されている。
X軸センサ5(Y軸センサ6)は、空洞10内に設けられた支持部14に固定されたX固定電極21(Y固定電極41)と、X固定電極21に対して振動可能に保持されたX可動電極22(Y可動電極42)とを有している。X固定電極21およびX可動電極22は、同じ厚さで形成されている。
【0028】
X固定電極21(Y固定電極41)は、支持部14に固定された平面視四角環状のベース部23(Y固定電極41のベース部43)と、ベース部23の内壁に沿って等しい間隔を空けて櫛歯状に配列された複数組の電極部24(Y固定電極41の電極部44)とを含んでいる。
X可動電極22(Y可動電極42)は、X固定電極21の電極部24を横切る方向に延び、その両端が、当該方向に沿って伸縮自在なビーム部25(Y軸センサ6のビーム部45)を介してX固定電極21のベース部23に接続されたベース部26(Y可動電極42のベース部46)と、当該ベース部26から、互いに隣接するX固定電極21の電極部24間に向かって両側に延び、X固定電極21の電極部24に接触しないように噛み合う櫛歯状に配列された電極部27(Y可動電極42の電極部47)とを含んでいる。
【0029】
X軸センサ5では、ビーム部25が伸縮してX可動電極22のベース部26が半導体基板2の表面に沿って振動(振動Ux)することによって、X固定電極21の電極部24に櫛歯状に噛み合ったX可動電極22の個々の電極部27が、X固定電極21の電極部24に対して近づく方向および離れる方向に交互に振動する。
X固定電極21のベース部23は、互いに平行に延びる直線状の主フレームを有しており、当該主フレームに沿って三角形の空間が繰り返されるように、主フレームに対して補強フレームが組み合わされたトラス状の骨組み構造を有している。
【0030】
また、X固定電極21の電極部24は、個々の基端部がベース部23に接続され、それらの先端部が互いに対向する平面視直線状の2つの電極部を1組として、それらが等しい間隔を空けて複数設けられている。個々の電極部24は、互いに平行に延びる直線状の主フレームと、当該主フレーム間に架設された複数の横フレームとを含む平面視梯子状の骨組み構造を有している。
【0031】
X可動電極22のベース部26は、互いに平行に延びる複数(この実施形態では、6本)の直線状のフレームからなり、その両端がビーム部25に接続されている。ビーム部25は、X可動電極22のベース部26の両端に2つずつ設けられている。
また、X可動電極22の電極部27は、ベース部26の各フレームを横切って互いに平行に延びる直線状の主フレームと、当該主フレーム間に架設された複数の横フレームとを含む平面視梯子状の骨組み構造を有している。
【0032】
また、X可動電極22では、個々の電極部27を振動方向Uxに直交する方向に沿って2分割するライン上に、その表面から空洞10に至るまで、横フレームを横切る絶縁層28(この実施形態では、酸化シリコン)が埋め込まれている。この絶縁層28により、個々の電極部27が、振動方向Uxに沿って一方側および他方側の2つに絶縁分離されている。これにより、分離されたX可動電極22の電極部27が、X可動電極22において、それぞれ独立した電極として機能する。
【0033】
X固定電極21およびX可動電極22を含む半導体基板2の表面には、酸化シリコン(SiO)からなる第1絶縁膜33および第2絶縁膜34が順に積層されている。
この第2絶縁膜34上に、X第1センサ配線29(Y第1センサ配線49)およびX第2センサ配線30(Y第2センサ配線50)が形成されている。
X第1センサ配線29は、2つに絶縁分離された個々の電極部27の一方側(この実施形態では、図3の紙面左側)に駆動電圧を供給するとともに、当該電極部27から静電容量の変化に伴う電圧の変化を検出する。これに対し、X第2センサ配線30は、2つに絶縁分離された個々の電極部27の他方側(この実施形態では、図3の紙面右側)に駆動電圧を供給するとともに、当該電極部27から静電容量の変化に伴う電圧の変化を検出する。
【0034】
X第1および第2センサ配線29,30は、この実施形態では、アルミニウム(Al)からなる。X第1および第2センサ配線29,30は、第1および第2絶縁膜33,34を貫通して個々の電極部27に電気的に接続されている。
そして、X第1および第2センサ配線29,30は、X可動電極22のビーム部25、X固定電極21のベース部23を介して支持部14上に引き回され、その一部が電極パッド4として露出している。なお、X第1および第2センサ配線29,30は、それぞれX可動電極22のビーム部25を通過する区間においては、導電性の半導体基板2の一部からなるビーム部25自体を電流路として利用している。ビーム部25上にアルミニウム配線を設けないので、ビーム部25の伸縮性を保持することができる。
【0035】
また、支持部14には、X固定電極21の電極部24から静電容量の変化に伴う電圧の変化を検出するX第3センサ配線32が引き回されており、このX第3センサ配線32も他の配線29,30と同様に、その一部が電極パッド4として露出している(図示せず)。
半導体基板2において、X固定電極21およびX可動電極22の上面および側面は、第1絶縁膜33および第2絶縁膜34とともに、酸化シリコン(SiO)からなる保護薄膜35で被覆されている。
【0036】
また、半導体基板2の表面における空洞10外の部分では、第2絶縁膜34上に、第3絶縁膜36、第4絶縁膜37、第5絶縁膜38および表面保護膜39が順に積層されている。
上記の構造のX軸センサ6では、X可動電極22に対してX軸方向の加速度が作用すると、ビーム部25が伸縮してX可動電極22のベース部26が半導体基板2の表面に沿って振動することによって、X固定電極21の電極部24に櫛歯状に噛み合ったX可動電極22の個々の電極部27が、X固定電極21の電極部24に対して近づく方向および離れる方向に交互に振動する。これにより、互いに隣接するX固定電極21の電極部24と、X可動電極22の電極部27との対向距離dxが変化する。そして、当該対向距離dxの変化に起因するX可動電極22−X固定電極21間の静電容量の変化を検出することによって、X軸方向の加速度axが検出される。
【0037】
なお、この実施形態では、X軸方向の加速度axは、絶縁分離されたX可動電極22の一方および他方それぞれの電極部の検出値の差分をとることにより求められる。
また、Y軸センサ7では、Y可動電極42に対してY軸方向の加速度が作用すると、ビーム部45が伸縮してY可動電極42のベース部46が半導体基板2の表面に沿って振動することによって、Y固定電極41の電極部44に櫛歯状に噛み合ったY可動電極42の個々の電極部47が、Y固定電極41の電極部44に対して近づく方向および離れる方向に交互に振動する。これにより、互いに隣接するY固定電極41の電極部44と、Y可動電極42の電極部47との対向距離が変化する。そして、当該対向距離の変化に起因するY可動電極42−Y固定電極41間の静電容量の変化を検出することによって、Y軸方向の加速度ayが検出される。
<Z軸センサの構成>
次に、図2および図5〜図6を参照して、Z軸センサの構成を説明する。
【0038】
図5は、図2に示すZ軸センサの要部平面図である。図6は、図2に示すZ軸センサの要部断面図であって、図5の切断面VI−VIにおける断面を示す。
図2を参照して、導電性シリコンからなる半導体基板2は、上述したように、内部に空洞10を有している。半導体基板2の上壁11(表面部)には、X軸センサ5およびY軸センサ6のそれぞれを取り囲むように、半導体基板2の底壁12に対して浮いた状態で支持部14に支持されたZ軸センサ7が配置されている。
【0039】
Z軸センサ7は、空洞10内に設けられた支持部14(直線部16)に固定された第2電極としてのZ固定電極61と、Z固定電極61に対して振動可能に保持された第1電極としてのZ可動電極62とを有している。Z固定電極61およびZ可動電極62は、同じ厚さで形成されている。
このZ軸センサ7では、2つのZ軸センサ7のうち一方のZ軸センサ7は、Z可動電極62が支持部14の環状部17を取り囲むように配置されており、このZ可動電極62をさらに取り囲むように、Z固定電極61が配置されている。他方のZ軸センサ7は、Z固定電極61が支持部14の環状部17を取り囲むように配置されており、このZ固定電極61をさらに取り囲むように、Z可動電極62が配置されている。Z固定電極61およびZ可動電極62は、支持部14の直線部16の両側壁に一体的に接続されている。
【0040】
Z固定電極61は、支持部14に固定された平面視四角環状のベース部63と、当該ベース部63における、X軸センサ5(Y軸センサ6)に対して直線部16とは反対側の部分に設けられ、櫛歯状に配列された電極部64とを含んでいる。
Z可動電極62は、平面視四角環状のベース部65と、当該ベース部65から、互いに隣接するZ固定電極61の櫛歯状の電極部64の各間に向かって延び、Z固定電極61の電極部64に接触しないように噛み合うように櫛歯状に配列された電極部66とを含んでいる。このZ可動電極62のベース部65は、互いに平行に延びる直線状の主フレームを有しており、当該主フレームに沿って三角形の空間が繰り返されるように、主フレームに対して補強フレームが組み合わされたトラス状の骨組み構造を有している。かかる構造のZ可動電極62のベース部65は、電極部66が配置される側とは反対側の部分において、補強フレームが省略されている区間を有しており、当該区間の主フレームがZ可動電極62を上下動可能にするためのビーム部67として機能する。
【0041】
すなわち、このZ軸センサ7では、ビーム部67が弾性的に歪み、Z可動電極62のベース部65があたかも振り子であるかのように、ビーム部67を支点として空洞10に対して近づく方向および離れる方向に回動(振動Uz)することによって、Z固定電極61の電極部64に櫛歯状に噛み合ったZ可動電極62の電極部66が上下に振動する。
Z固定電極61のベース部63は、互いに平行に延びる直線状の主フレームを有しており、当該主フレームに沿って三角形の空間が繰り返されるように、主フレームに対して補強フレームが組み合わされたトラス状の骨組み構造を有している。
【0042】
Z固定電極61の個々の電極部64は、基端部がZ固定電極61のベース部63に接続され、先端部がZ可動電極62へ向かって延び、ベース部63の内壁に沿って等しい間隔を空けて櫛歯状に配列されている。また、個々の電極部64の基端部寄りの部分には、電極部64を幅方向に横切るように、その表面から空洞10に至るまで絶縁層68(この実施形態では、酸化シリコン)が埋め込まれている。この絶縁層68により、Z固定電極61の個々の電極部64が、Z固定電極61の他の部分から絶縁されている。
【0043】
Z可動電極62の個々の電極部66は、基端部がZ可動電極62のベース部65に接続され、先端部がZ固定電極61の電極部64の各間へ向かって延び、Z固定電極61の電極部64に接触しないように噛み合う櫛歯状に配列されている。これにより、各電極部66の幅方向一方側および他方側には、電極部64が一つずつ配置されている。
Z可動電極62の個々の電極部66の基端部寄りの部分には、電極部66を幅方向に横切るように、半導体基板2の表面から空洞10に至るまで絶縁層74(この実施形態では、酸化シリコン)が埋め込まれている。この絶縁層74により、Z可動電極62の個々の電極部66が、Z可動電極62の他の部分から絶縁されている。
【0044】
各電極部66には、半導体基板2の表面から空洞10へ向かう厚さ方向途中部まで、誘電層70(この実施形態では、酸化シリコン)が埋め込まれている。
各誘電層70は、電極部66の幅方向一端側(各電極部66の基端部から先端部へ向かう方向に対して右側)に片寄って設けられている。これにより、電極部66は、平面視において、幅方向一端側に設けられた誘電層70と、当該誘電層70に対して他端側(各電極部66の基端部から先端部へ向かう方向に対して左側)に設けられた導電層80とに区画されている。
【0045】
導電層80は、電極部66において半導体基板2の一部を利用して構成された部分である。導電層80は、誘電層70に対して幅方向他端側に隣接して形成された第1部分76と、誘電層70に対して厚さ方向空洞10側に隣接して形成された第2部分78とを一体的に有している。
Z固定電極61およびZ可動電極62を含む半導体基板2の表面には、上述したように、酸化シリコン(SiO)からなる第1絶縁膜33および第2絶縁膜34が順に積層されている。
【0046】
第2絶縁膜34上には、Z第1センサ配線75およびZ第2センサ配線77が形成されている。Z第1センサ配線75およびZ第2センサ配線77は、互いに隣接するZ固定電極61の電極部64およびZ可動電極62の電極部66(導電層80)にそれぞれ接続されている。
具体的には、Z第1センサ配線75は、Z固定電極61のベース部63に沿って形成され、Z固定電極61の個々の電極部64の絶縁層68を跨って電極部64の先端部へ向かって分岐するアルミニウム配線を含んでいる。その分岐されたアルミニウム配線は、個々の電極部64における絶縁層68よりも先端側に、第1絶縁膜33および第2絶縁膜34を貫通して電気的に接続されている。また、図2に示すように、Z第1センサ配線75は、Z固定電極61のベース部63を介して支持部14上に引き回され、その一部が電極パッド4として露出している。
【0047】
Z第2センサ配線77は、Z可動電極62のベース部65に沿って形成され、Z可動電極62の個々の電極部66の基端部寄りの絶縁層74を跨って電極部66へ向かって分岐するアルミニウム配線を含んでいる。その分岐されたアルミニウム配線は、個々の電極部66に、第1絶縁膜33および第2絶縁膜34を貫通して電気的に接続されている。また、図2に示すように、Z第2センサ配線77は、Z可動電極62のベース部65を介して支持部14上に引き回され、その一部が電極パッド4として露出している。
【0048】
半導体基板2において、Z固定電極61およびZ可動電極62の上面および側面は、第1絶縁膜33および第2絶縁膜34とともに、酸化シリコン(SiO)からなる保護薄膜35で被覆されている。
また、半導体基板2の表面における空洞10外の部分では、第2絶縁膜34上に、第3絶縁膜36、第4絶縁膜37、第5絶縁膜38および表面保護膜39が順に積層されている。
【0049】
そして、このZ軸センサ7では、Z第1センサ配線75が接続された電極部64と、Z第2センサ配線77が接続された電極部66の導電層80とが、互いに対向し、これらの間に一定電圧が印加され、その対向面積Sの変化により静電容量が変化する容量素子(キャパシタ)の電極を構成している。
Z可動電極62に対してZ軸方向の加速度が作用すると、櫛歯状のZ可動電極62が振り子であるかのように、同じく櫛歯状のZ固定電極61を振動の中心として、Z固定電極61に対してZ軸方向に沿って上下に振動する。これにより、互いに隣接するZ固定電極61の電極部64と、Z可動電極62の電極部66との対向面積Sが変化する。そして、当該対向面積Sの変化に起因するZ可動電極62−Z固定電極61間の静電容量の変化を検出することによって、Z軸方向の加速度azが検出される。
【0050】
この実施形態では、電極部66の導電層80が、誘電層70を介してZ固定電極61の電極部64に対向する第1部分76と、誘電層70を介さずに電極部64に対向する第2部分78とを有している。
したがって、Z固定電極61の電極部64とZ可動電極62の電極部66とが対向することによって構成されるキャパシタにおいて、導電層80の第1部分76と電極部64ととが対向する部分では、キャパシタの電極間距離d1が、当該キャパシタ本来の電極間距離d2(導電層80の第2部分78とZ固定電極61の電極部64との距離)よりも、誘電層70の幅W分大きくなる(つまり、d1=d2+W)。そのため、同一のキャパシタ内において、静電容量の差を設けることができる。
【0051】
そのため、Z可動電極62が、Z固定電極61に対して最初に空洞10から離れる側(上側)へ振れると、キャパシタの静電容量は、導電層80の第1部分76がZ固定電極61の電極部64と対向している間、電極間距離d1に基づく減少率D1(D1>0)で減少する。その後、第1部分76がZ固定電極61の上方に完全に食み出し、導電層80の第2部分78のみがZ固定電極61の電極部64と対向する状態になると、その時点からの静電容量は、本来の電極間距離d2に基づく減少率D2(D2>0)で減少する。
【0052】
この静電容量の減少率D2は、電極間距離d2が電極間距離d1よりも小さく、単位時間当たりに減少する静電容量が大きくなるので、減少率D1よりも大きくなる。すなわち、Z可動電極62が上側へ振れ始める場合、キャパシタの静電容量は、第1の減少率D1で減少した後、第1の減少率D1よりも大きな第2の減少率D2で減少する。
これに対し、Z可動電極62が、Z固定電極61に対して最初に空洞10に近づく側(下側)へ振れると、キャパシタの静電容量は、第2部分78がZ固定電極61よりも下方に完全に食み出すまでの間、電極間距離d2に基づく減少率D2で減少する。その後、第2部分78がZ固定電極61よりも下方に完全に食み出し、第1部分76のみがZ固定電極61の電極部64と対向する状態になると、その時点からの静電容量は、電極間距離d1に基づく減少率D1で減少する。この静電容量の減少率D1は、電極間距離d1が電極間距離d2よりも大きく、単位時間当たりに減少する静電容量が小さくなるので、減少率D2よりも小さくなる。すなわち、Z可動電極62が下側へ振れ始める場合、キャパシタの静電容量は、第2の減少率D2で減少した後、第2の減少率D2よりも小さな第1の減少率D1で減少する。
【0053】
したがって、当該キャパシタの静電容量が、相対的に小さな減少率D1で減少した後、相対的に大きな減少率D2で減少するのか(D1→D2)、または、相対的に大きな減少率D2で減少した後、相対的に小さな減少率D1で減少するのか(D2→D1)を検出することにより、Z可動電極62が最初に振れた方向(空洞10から離れる方向または空洞10に近づく方向)を容易に把握することができる。その結果、加速度ベクトルの方向を正確に検出できるので、検出感度を向上させることができる。
【0054】
しかも、この実施形態では、導電層80が、第1部分76および第2部分78を一体的に有することによって、Z可動電極62の表面から裏面に至るまで厚さ方向全域にわたって形成されている。そのため、Z固定電極61に対するZ可動電極62の振れる方向(上側方向または下側方向)に関わらず、Z可動電極62の導電層80とZ固定電極61との対向面積Sが、必ず減少する。具体的には、Z可動電極62が、最初に上側に振れると、導電層80の第1部分76とZ固定電極61の電極部64との対向面積が減少し、一方、最初に下側に振れると、導電層80の第2部分78とZ固定電極61の電極部64との対向面積が減少する。
【0055】
これにより、Z可動電極62の振れ始め直後に静電容量の変化を検出できるので、振れ始め直後の加速度ベクトルの大きさも検出することができる。
また、このような検出感度の向上が、キャパシタを構成するZ可動電極62の電極部66に誘電層70を埋め込むことによって発現されるので、センサ構造の複雑化を防止することができる。
【0056】
さらに、半導体基板2が導電性シリコン基板であるので、所定の形状に成形されたX固定電極21,Y固定電極41およびZ固定電極61、ならびにX可動電極22,Y可動電極42およびZ可動電極62に対して導電性を付与するための特別な処理を施さなくても、成形後の構造をそのまま電極として利用することができる。また、電極として利用される部分を除く部分を、配線(Z第1センサ配線75、Z第2センサ配線77など)として利用することができる。
【0057】
なお、この実施形態では、Z軸方向の加速度azは、X軸センサ6を取り囲むZ軸センサ7の検出値と、Y軸センサ7を取り囲むZ軸センサ7の検出値との差分をとることにより求められる。差分は、たとえば、図2に示すように、X軸センサ5を取り囲むZ軸センサ7の固定電極および可動電極と、Y軸センサ6を取り囲むZ軸センサ7の固定電極および可動電極との位置関係を反対にすることによって得ることができる。これにより、1対のZ軸センサ7間において、Z可動電極62の揺れ方が異なるので、差分が生じることとなる。
<加速度センサ1の製造方法>
次に、図7A〜図7Gを参照して、上述したジャイロセンサの製造工程を工程順に説明する。なお、この項では、Z軸センサの製造工程のみを図示し、X軸センサおよびY軸センサの製造工程は省略するが、X軸センサおよびY軸センサの製造工程は、Z軸センサの製造工程と同様にして、Z軸センサの製造工程と並行して実行される。
【0058】
図7A〜図7Gは、本発明の一実施形態に係る加速度センサ1の製造工程の一部を工程順に示す模式的な断面図であって、図6と同じ位置での切断面を示す。
この加速度センサ1を製造するには、まず、図7Aに示すように、導電性シリコンからなる半導体基板2の表面が熱酸化(たとえば、温度1100〜1200℃、膜厚5000Å)される。これにより、半導体基板2の表面に第1絶縁膜33が形成される。次いで、公知のパターニング技術により、第1絶縁膜33がパターニングされ、誘電層70および絶縁層68,74を埋め込むべき領域に開口が形成される。次いで、第1絶縁膜33をハードマスクとする異方性のディープRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)により、具体的にはボッシュプロセスにより、半導体基板2が掘り下げられる。これにより、半導体基板2にトレンチが形成される。ボッシュプロセスでは、SF(六フッ化硫黄)を使用して半導体基板2をエッチングする工程と、C(パーフルオロシクロブタン)を使用してエッチング面に保護膜を形成する工程とが交互に繰り返される。これにより、高いアスペクト比で半導体基板2をエッチングすることができるが、エッチング面(トレンチの内周面)にスキャロップと呼ばれる波状の凹凸が形成される。続いて、半導体基板2に形成されたトレンチ内部および半導体基板2の表面が熱酸化され(たとえば、温度1100〜1200℃)、その後、酸化膜の表面がエッチバックされる(たとえば、エッチバック後の膜厚が21800Å)。これにより、トレンチを埋め尽くす誘電層70および絶縁層68,74が同時に形成される(誘電層70および絶縁層74のみ図示)。
【0059】
次いで、図7Bに示すように、CVD法により、半導体基板2上に、酸化シリコンからなる第2絶縁膜34が積層される。次いで、第2絶縁膜34および第1絶縁膜33が連続してエッチングされる。これにより、第2絶縁膜34および第1絶縁膜33にコンタクトホールが形成される。次いで、当該コンタクトホールを埋め尽くすコンタクトプラグが形成された後、スパッタ法により、第2絶縁膜34上にアルミニウムが堆積(たとえば、7000Å)され、そのアルミニウム堆積層がパターニングされる。これにより、第2絶縁膜34上に、配線75,77が形成される。
【0060】
次いで、図7Cに示すように、CVD法により、第2絶縁膜34上に、第3絶縁膜36第4絶縁膜37、第5絶縁膜38および表面保護膜39が順に積層される。次いで、半導体基板2の空洞10を形成すべき領域上の第3〜第5絶縁膜36〜38および表面保護膜39が、エッチングにより除去される。
次いで、図7Dに示すように、Z固定電極61およびZ可動電極62を形成すべき領域以外の領域に開口を有するレジストが、第2絶縁膜34上に形成される。続いて、当該レジストをマスクとする異方性のディープRIEにより、具体的にはボッシュプロセスにより、半導体基板2が掘り下げられる。これにより、半導体基板2の表面部が、Z固定電極61およびZ可動電極62の形状に成形されるとともに、それらの間にトレンチ60が形成される。ボッシュプロセスでは、SF(六フッ化硫黄)を使用して半導体基板2をエッチングする工程と、C(パーフルオロシクロブタン)を使用してエッチング面に保護膜を形成する工程とが交互に繰り返される。ディープRIE後、レジストが剥離される。
【0061】
次いで、図7Eに示すように、熱酸化法またはPECVD法により、Z固定電極61、Z可動電極62の表面全域およびトレンチ60の内面全域(つまり、トレンチ60を区画する側面および底面)に、酸化シリコン(SiO)からなる保護薄膜35が形成される。
次いで、図7Fに示すように、エッチバックにより、保護薄膜35におけるトレンチ60の底面上の部分が除去される。これにより、トレンチ60の底面が露出した状態となる。
【0062】
次いで、図7Gに示すように、表面保護膜39をマスクとする異方性のディープRIEにより、トレンチ60の底面がさらに掘り下げられる。これにより、トレンチ60の底部に、半導体基板2の結晶面が露出した露出空間83が形成される。この異方性のディープRIEに引き続いて、等方性のRIEにより、トレンチ60の露出空間83に反応性イオンおよびエッチングガスが供給される。そして、その反応性イオンなどの作用により、半導体基板2が、各露出空間83を起点に半導体基板2の厚さ方向にエッチングされつつ、半導体基板2の表面に平行な方向にエッチングされる。これにより、互いに隣接する全ての露出空間83が一体化して、半導体基板2の内部に空洞10が形成されるとともに、空洞10内において、Z固定電極61およびZ可動電極62が浮いた状態となる。
【0063】
以上の工程を経て、図1に示す加速度センサ1(Z軸センサ7)が得られる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、図8に示すように、Z可動電極62の電極部66は、電極部66の幅方向一端から他端まで形成された誘電層81と、当該誘電層81の下方に形成された導電層82との積層構造を有していてもよい。
【0064】
この構成によれば、Z可動電極62の表面または裏面から途中部までの部分が、全て誘電層81で構成されている。この場合、Z固定電極61の電極部64とZ可動電極62の電極部66とが対向することによって構成されるキャパシタにおいて、誘電層81とZ固定電極61の電極部64とが対向する部分では、Z固定電極61に対向する導電層が存在しないので、静電容量が0(ゼロ)となる。
【0065】
そのため、Z可動電極62が、Z固定電極61に対して最初に空洞10から離れる側(上側)へ振れると、キャパシタの静電容量は、誘電層81がZ固定電極61の電極部64と対向している間、変化しない(つまり、減少率D1=0)。その後、誘電層81がZ固定電極61の上方に完全に食み出し、導電層82のみがZ固定電極61と対向する状態になると、その時点からの静電容量は、本来の電極間距離d2に基づく減少率D2(D2>0)で減少する。
【0066】
これに対し、Z可動電極62が最初に空洞10に近づく側(下側)へ振れると、キャパシタの静電容量は、導電層82がZ固定電極61の電極部64と対向している間、電極間距離d2に基づく減少率D2で減少する。その後、導電層82がZ固定電極61よりも下方に完全に食み出し、誘電層81のみがZ固定電極61と対向する状態となると、その時点からの静電容量は、変化しない(つまり、減少率D1=0)。
【0067】
したがって、この構成によれば、加速度ベクトルの方向を、静電容量の減少率が0か0でないか、つまり、静電容量の変化の有無に基づいて判断することができる。よって、加速度検出を簡易に行うことができる。
また、誘電層70,81の材料は、誘電性を有する材料であれば、酸化シリコンでなくてもよい。
【0068】
また、誘電層70は、図9に示すように、Z可動電極62に設けられる代わりに、Z固定電極61に設けられていてもよい。また、誘電層81も同様に、図10に示すように、Z可動電極62に設けられる代わりに、Z固定電極61に設けられていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 加速度センサ
2 半導体基板
7 Z軸センサ
10 空洞
11 (空洞の)上壁
12 (空洞の)底壁
61 Z固定電極
62 Z可動電極
64 (Z固定電極の)電極部
66 (Z可動電極の)電極部
70 誘電層
76 第1部分
78 第2部分
80 導電層
81 誘電層
82 導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に上壁および底壁が形成された空洞を有し、当該空洞の前記上壁を形成する表面部および前記底壁を形成する裏面部を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記表面部を加工して形成され、互いに間隔を空けて噛み合う櫛歯状の第1電極および第2電極とを含み、
前記第1電極または前記第2電極が他方に対して上下したときの加速度を、前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量の変化を検出することにより検出する静電容量型加速度センサであって、
前記第1電極は、前記第2電極との対向方向に直交する厚さ方向に沿って、その表面または裏面から途中部に至る所定厚さを有し、前記対向方向に沿って所定幅を有する誘電層と、当該誘電層を除く残余の部分からなる導電層とを含む、静電容量型加速度センサ。
【請求項2】
前記誘電層が、前記第1電極の幅方向一端側に片寄って形成されており、
前記導電層は、前記誘電層に対して前記幅方向他端側に隣接して形成された第1部分と、前記誘電層の下方に形成され、前記第1部分よりも大きな幅を有する第2部分とを含む、請求項1に記載の静電容量型加速度センサ。
【請求項3】
前記誘電層が、前記第1電極の幅方向一端から他端に至るまで形成され、前記第1電極と同じ幅を有しており、
前記第1電極が、当該誘電層と、当該誘電層の下方に形成された前記導電層との積層構造を有している、請求項1に記載の静電容量型加速度センサ。
【請求項4】
前記第1電極が可動電極であり、前記第2電極が固定電極である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電容量型加速度センサ。
【請求項5】
前記第1電極が固定電極であり、前記第2電極が可動電極である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電容量型加速度センサ。
【請求項6】
前記半導体基板が、導電性シリコン基板である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電容量型加速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−88083(P2012−88083A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232910(P2010−232910)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】