説明

非対称のポケットドープ領域を有するメモリトランジスタおよびメモリユニット

本発明は、特に、ソース領域(S)近傍において、ポケットドープ領域(114)を1つ有しているフラッシュメモリトランジスタ(T11)に関する。上記メモリトランジスタ(T11)は、読み出し処理中において、ロードメモリ状態を妨害することなく機能する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、集積メモリトランジスタに関するものであり、例えば、半導体基板において次のように構成される。
【0002】
−2つのターミナル領域、通常、チャネル領域のドープタイプから外れるとともに、ソース領域およびドレイン領域に関連するドープタイプでドープされる。特に、このターミナル領域は、また、同ターミナル領域よりもより軽くドープされた拡張が維持される。
【0003】
−チャネル領域は、上記ターミナル領域の間に配置されるものであり、このチャネル領域は、通常、基板ベーシックドープと一致するか、または、いわゆるウェルドープと一致するように軽くドープされるとともに、ターミナル領域間の反転チャネルを形成するように供給され、
−制御領域は、通常、電気伝導的であるとともに、ゲートに関連し、
−電荷蓄積領域は、上記制御領域とチャネル領域との間に配置され、この電荷蓄積領域は、電気伝導性または電気絶縁性の材料を含むとともに、フローティングゲートに関連し、
−ポケットドープ領域は、チャネル領域と同一のドープタイプを有するが、チャネル領域とは異なるドーパント濃度を有する。
【0004】
このようなメモリトランジスタは、例えば、フラッシュ−EEPROM(Electrical Erasable Programmable Read Only Memory)として用いられ、すなわち、また供給電圧がスイッチオフされた後には、揮発性の様式において電荷を蓄積するメモリユニットを含んでいる。一例としては、上記メモリトランジスタは、いわゆる、その制御領域が電荷蓄積領域の近傍および上方に位置している、スプリットゲートトランジスタと呼ばれる。
【0005】
上記ポケットドープ領域は、また、ポケットに関連するとともに、例えばターミナル領域またはその拡張に隣接する。このポケットドープ領域は、完成前(premature)のパンチスルーに妨げられるとともに、例えば、対称に、または、上記2つのターミナル領域付近に構成される。
【0006】
本発明の目的は、電気的特性を向上するとともに、特に、小さなチップエリアが求められるメモリトランジスタを説明することにある。さらには、このようなメモリトランジスタを有するメモリユニット、動作方法および組み立て方法を説明することにある。
【0007】
本発明は、第1の確実な問題群が、上記メモリトランジスタの小型化を妨げることを考慮することに基づいている。そのことについて、図2を参照して以下に詳細に説明すると、メモリトランジスタまたはメモリセルを読み出すときに、n−チャネルメモリトランジスタの場合には、電荷蓄積領域に、熱い電子(hot electron)と呼ばれる、阻害影響の例が特に起こる。上記電子は、ドレインまたは電子シンクを動作させるターミナル領域の近傍で最大に加速される。メモリトランジスタについて要求されるサービスライフまたは電荷蓄積時間を構成する複数年を超えて、1日当たり一つの電子と同様に小さい影響は、例えば、「ストアされない電荷」状態から「ストアされる電荷」状態の変化のように、メモリトランジスタの荷電状態において変化を導くことができる。
【0008】
発生した熱い電子を妨げる目的で、本発明に係るメモリセルの場合では、電界強度勾配の大きさはドレイン側で縮小され、そのため、電場はまた減少する。これは、次の手段により達成される。
【0009】
−ソース側ポケットドープ領域は、ドレインターミナル領域よりもソースターミナル領域に近い位置に配置されるとともに、上記チャネル領域と同じドープタイプを有しているが、上記チャネル領域よりも望ましくは高いドーパント濃度を有しており、
−このような、ドレインターミナル領域により近いもう一つのポケットドープ領域の欠損、このドレイン側での上記ポケットの欠損は特別な場合であるが、(この欠損)により達成される、メモリトランジスタの非対称構造による。代わりに、ポケットがドレイン側で用いられるが、それでも低い投与量でドープされる。
【0010】
− そして、ソースターミナル領域の上記事実の効力によって、上記メモリトランジスタの読み出し動作モードにおいて、電子がチャネル領域へ輸送するために、電子ソースすなわち、1つのソース、として提供される。
【0011】
上記規模の小型化は、このように、メモリセルの信頼性の減少無しで可能である。同様に維持された規模では、信頼性は増加する。
【0012】
1つの展開として、上記ソース側ポケットドープ領域、でなければ、ドレイン側ポケットドープ領域は、このように、ソースおよびドレイン間でパンチスルーを妨げる目的のチャネル領域よりも、高いドーパントの濃度を有している。一例としては、1つの領域での最大ドーパント濃度は、ドーパント濃度の組み合わせにおいて参考ポイントとして提供される。
【0013】
1つの展開として、非対称は、ソースターミナル領域よりもドレインターミナル領域により近く配置されるとともに、チャネル領域と同じドープタイプを有しているが、このチャネル領域とは異なるドーパント濃度を有しているドレイン側ポケットドープ領域の全欠損により導かれる。非対称は、このように、単純な方法で製造することができる。
【0014】
代わりの展開としては、非対称は、上記ソース側ポケットドープ領域に関しては非対称であるとともに、チャネル領域と同じドープタイプを有しているが、このチャネル領域とは異なるドーパント濃度を有している、ドレイン側ポケットドープ領域により導かれる。上記非対称は、以下の特徴の少なくとも1つの効力により発生する。
【0015】
−上記ソース側ポケットドープ領域において、ドーパントの純濃度と比較して、ドレイン側ポケットドープ領域において、異なるドーパントの純濃度という効力、
−ソース側ポケットドープ領域の形態と比較して、ドレイン側ポケットドープ領域の異なる形態という効力、
−上記ソース側ポケットドープ領域の位置と比較して、ドレイン側ポケットドープ領域の異なる位置という効力。
【0016】
1つの展開として、ターミナル領域は、制御領域の中央を貫通するとともに、電荷蓄積領域の中央を貫通するミラー軸に関して、互いに対称に形成される。ターミナル領域における非対称の製造のための追加的な処置は、メモリトランジスタの組み立て中に、必要ないことを意味する。
【0017】
代わりの展開としては、ターミナル領域はミラー軸に関して非対称に形成される。この非対称は、結果として、メモリトランジスタまたはメモリユニットの電気的特性を向上させる。
【0018】
1つの展開として、それぞれの場合におけるターミナル領域が、チャネル領域とは異なるドープタイプのドープを有する主たるターミナル領域を含む。この展開では、1つのターミナル領域または両方のターミナル領域は、主たる領域と同じドープタイプであるが、主たる領域よりも低いドーパント濃度のドープを含む、拡張領域を有する。拡張領域の機能は、ゲート電極により制御されるチャネル領域に、ターミナル領域の接続を形成すること、または、ターミナルゾーンからチャネルゾーンへの変遷における同様の電界勾配を生成することにある。非対称ポケット挿入の効力により、より小さなドーパント勾配は、ソース側よりもドレイン側に形成される。その結果、より小さなフィールド勾配は、対称ソース/ドレイン構造の場合よりも読み出しの間ドレイン側に優勢である。
【0019】
本発明は、加えて、本発明またはその展開によって、メモリトランジスタのマルチプル性(multiplicity)を有するメモリユニットに関連する。一例としては、メモリユニットは、数百万のメモリトランジスタを含み、そのために、特に、高い要求が電荷蓄積の信頼性を作り出す。
【0020】
1つの展開として、上記メモリトランジスタは、上記メモリユニットにおいて、マトリクス形態に配置され、1つのワードライン方向では、各場合において、上記マトリクスの1行(row)のメモリトランジスタの制御領域は、ワード線を経由して電気伝導的に接続される。ワード線方向について横断的に位置しているビット線方向において、上記マトリクスの1列(column)のドレインターミナル領域は、ビット線を経由して互いに電気伝導的に接続される。ワード線は、ワード線デコーダに、電気伝導的に接続されているか、または接続可能である。ビット線は、ビット線デコーダ、および/または、電荷蓄積領域の荷電状態を検出するセンサ回路に、電気伝導的に接続されているか、または接続可能である。センサ回路は、また、センサアンプに関連する。
【0021】
メモリユニットは、例えば、AND原理により構成される。しかしながら、これは、1列の異なるメモリトランジスタのターミナル領域が、連続して接続されている、NAND原理に従う代わりの形態のメモリユニットを構築することを排除しない。1つの選択肢として、このメモリユニットは、仮想の接地電位での構成に従って構成される。スプリットゲートセルでの構成は、また、本発明に係るメモリセルを含んでよい。
【0022】
本発明は、メモリトランジスタの動作のための方法にも関連し、メモリトランジスタがトンネル電流でプログラムされる方法に従い、漏出電流は別として、ソースおよびドレインの間で、電流の流出は生じない。対比として、電荷キャリアがソース側(ソース側注入)で向上する場合、または、ソースおよびドレイン間のいわゆる熱く速い(hot and fast)電子(ホットチャネル注入)でのプログラミングの場合、100ナノアンペアを超える電流が流れる。
【0023】
次の展開では、メモリトランジスタは、チャネル領域および誘電体(dielectric)の間の中間を通って流れる、望ましくは完全な中間で同じ電流度合いでの、トンネル電流でプログラムされ、フィールドがポケットドープ領域により影響されるゾーンを除外する。この方法は、またUCP(Uniform Channel Programming)に関連する。特に、このプログラム方法は、速い電子生成のための高いフィールド勾配また、ターミナル領域でフィールドがスパイクすることを要求せず、そのため、ポケットドープ領域は、プログラミング中、妨害を引き起こさない。1つの配置として、トンネル電流は、また、末梢を遂行するために用いられる。
【0024】
1つの展開では、メモリトランジスタは、n−チャネルトランジスタである。以下のステップは、メモリトランジスタの荷電状態を読み出すときに実行される。
【0025】
−ソースターミナル領域への接地電位の適用、
−ドレインターミナル領域の正電位の適用、
−制御またはゲート領域の適用、このゲート電位は、正ドレイン電位よりも大きな大きさを有する。
【0026】
非対称に配置されるポケットドープ領域の効力、または、互いについて非対称的に配されるポケットドープ領域の効力により、この読み出し動作モードの場合に達成されることは、チャネル領域の電子は、電荷蓄積領域へのエネルギー障壁を超えるために十分なエネルギーを有さないことである。それゆえ、また、読み出し状態のための電荷蓄積層においてストアされた、荷電状態の妨害を発生させない。
【0027】
本発明は、非対称に配置されるポケットドープ領域を有するメモリトランジスタを組み立てるための方法に関連する。上記ポケットドープ領域は、斜め注入(inclined implantation)方法により製造され、この場合において、1つの展開では、ドレインターミナル領域が、その近傍で、結局、形成するために予定されている、ポケットドープ領域が無いか、または低ドーパント濃度を有するポケットドープ領域は、例えば、レジストにより、注入の前のマスクで被覆される。代わりとして、制御領域は、ドレイン領域を覆う(shade)ために提供され、斜め注入は一方向でのみ遂行される。この選択肢は、特に、例えば、伝統的なAND設計の場合に、メモリセルアレイのドレイン領域の全てが覆われるポケットドープ領域に向かう、斜め注入方向である場合に、使用される。
【0028】
本発明について、添付図面を参照しながら以下に説明する。添付図面は以下の通りである。
【0029】
図1は、フラッシュメモリセルアレイの回路図を示す。
【0030】
図2は、読み出し中のメモリセルにおける電位状態を示す図である。
【0031】
図3は、メモリセルアレイのビット線方向の断面図である。
【0032】
図4は、一メモリセル内のソースとドレイン間におけるドーパント濃度を示す図である。
【0033】
図1は、フラッシュメモリセルアレイ10の回路図であり、複数のメモリセルが縦および横に行列形式で配置されている。図1は、T11からT22までの4つのセルを図示している。1つ目の指数は列(column)を表し、2つ目の指数は行(row)を表している。例えばメモリセルT12は、1列目の2行目に位置している。T11からT22までのメモリセルの構成は互いに同一である。T11からT13までの構成について、図2〜図3を参照しながら以下に詳述する。
【0034】
典型的な実施形態において、上記行列の2つの行が図示されている。1行目のメモリセルT11およびT12は、横方向に位置しているワード線WL1によってゲート電極に接続されている。ワード線WL1には、ワード線WL2が隣接している。ワード線WL2も同様に横方向に位置しており、特に、メモリセルT11およびT12のゲート電極を接続している。その他のワード線20は点で示す。
【0035】
典型的な実施形態において、上記行列の2つの列がさらに図示されている。1列目のメモリセルT11およびT12は、縦方向に位置しているローカルビット線BL1によってドレイン電極に接続されている。ローカルビット線BL1には、ローカルビット線BL2が隣接している。ローカルビット線BL2も同様に縦方向に位置しており、特に、メモリセルT21およびT22のドレイン電極Dを接続している。その他のローカルビット線30は点で示す。ローカルビット線BL1およびBL2は、それぞれ、上記行列における列の一部の区域にのみ伸びている。ローカルビット線BL1およびBL2は、スイッチングトランジスタ(図示せず)を介して、グローバルビット線に接続されている。グローバルビット線は、それぞれ、上記行列の列全体に伸びている。分かりやすくするため、グローバルビット線も同様に、図1には示されていない。
【0036】
縦のメモリセルのソース電極Sは、ローカルソース線によって接続されている。従って、メモリセルT11、T12などのソース電極Sは、ローカルソース線40によって互いに接続されている。2列目のメモリセルT21およびT22のソース電極Sは、ローカルソース線42を介して、電気的に伝導するように互いに接続されている。
【0037】
ローカルソース線40および42は、それぞれ、スイッチングトランジスタT10およびT20のドレインDへ至る。スイッチングトランジスタT10およびT20のゲートGは、制御線SGに接続されている。スイッチングトランジスタT10およびT20のソース端子Sは、接地電位を有している共通ソース線50に接続されている。
【0038】
図1に示すメモリユニット10は、ローカルAND構造を有したメモリユニットである。それぞれ、例えば、列内にある8個または16個のセルがAND構造を形成している。しかしグローバルビット線に沿って、AND構造を有した複数のローカルブロックがある。
【0039】
図2は、メモリセルT11の断面に基づいた、読み出し中のメモリセルT11における電位状態を示している。メモリセルT11は、弱くp−ドープされたウェル102内にあるシリコン半導体基板100上に位置している。ソース領域Sおよびドレイン領域Dは、強度にp−ドープされている。ソース拡張領域110およびドレイン拡張領域112は、軽度にn−ドープされている。p−ウェル102よりも強度にp−ドープされているポケットドープ領域(pocket doping region)114は、ソース拡張領域110にのみ形成されている。ポケットドープ領域114を除いて、メモリセルT11は、ミラー軸116を中心にして鏡面対称的に構成されている。
【0040】
基板100と電気伝導性のフローティングゲート118との間には、トンネル誘電体120が位置している。このトンネル誘電体120の厚さは、例えば8ナノメートルから最大10ナノメートルまでの範囲内にある。誘電体122は、フローティングゲート118とゲートGとの間に位置している。
【0041】
読み出し中のメモリセルT11の電位状態は、例としては次の通りである。
【0042】
−ソースSおよびウェル102において0ボルトまたは接地電位、
−ドレインDにおいて+1.2ボルト、
−ゲートにおいて+3.3ボルト。
【0043】
このような電位状態のために、ソースSとドレインDとの間の基板102の表面に、反転チャネル(inversion channel)124が形成される。電子は、上記反転チャネル内のソースからドレインへ向かって加速される。パンチスルーは、ポケットドープ領域114によって防止される。ドレインDにはポケットドープ領域が存在していないために、過度に広い範囲へ電子が加速されることが防止される。従来のメモリセルの場合では、個々の電子がフローティングゲートへと押し入れられる可能性があったが、メモリセルT11の場合では防止できる。これは、対称またはミラー軸116とドレインDとの間にポケットドープ領域が存在していないからである。従ってメモリセルT11は、読み出し動作が例え毎日行われたとしても、10年または15年以上もその荷電状態を変えずに蓄えておくことができる。
【0044】
図3は、スイッチングトランジスタT10からメモリセルT11、T12、そしてメモリセルT13へ至るまでの、ビット線方向に沿った断面の一例を示している。ローカルビット線BL1、ローカルソース線40、制御線SG、および共通ソース線50が、例えば金属層(図示せず)内に含まれている。ワード線WL1、WL2、およびワード線WLは、例えば高ドープされた多結晶シリコンから形成されている。
【0045】
以下のコンタクトは、トランジスタT10〜T13を接続する機能を果たす。
【0046】
−共通ソース線50に接続されたコンタクト150は、スイッチングトランジスタT10のソース領域Sへ至る。
【0047】
−制御線SGに接続されたコンタクト152は、スイッチングトランジスタT10のゲートGへ至る。
【0048】
−ローカルソース線40に接続されたコンタクト154は、n型ドープ領域170へ至る。n型ドープ領域170は、スイッチングトランジスタT10のドレインD、およびメモリセルT11のメモリトランジスタのソースSを形成している。
【0049】
−コンタクト156は、ワード線WL1とメモリセルT11のゲートGとの間に位置している。
【0050】
−コンタクト158は、ローカルビット線BL1とn型ドープ領域172との間に位置している。n型ドープ領域172は、メモリセルT11およびT12のドレイン領域Dを形成している。
【0051】
−コンタクト160は、ワード線WL2とメモリセルT12のゲートGとの間に位置している。
【0052】
−ローカルソース線40に接続されたコンタクト162は、n型ドープ領域174へ至る。n型ドープ領域174は、メモリセルT12のメモリトランジスタのソースS、およびメモリセルT13のメモリトランジスタのソースSを形成している。
【0053】
−コンタクト164は、ワード線WL3とメモリセルT13のゲートGとの間に位置している。
【0054】
−コンタクト166は、ローカルビット線BL1とn型ドープ領域176との間に位置している。n型ドープ領域176は、メモリセルT13およびT14のドレイン領域Dを形成している。
【0055】
さらなるコンタクト180は、ワード線WLx、ソース線40、ワード線WLx+1、ビット線BL1などを選択的に接続する機能を果たす。
【0056】
弱くn−ドープされた拡張領域90は、スイッチングトランジスタT10のソースSに形成されている。拡散領域170および176と比べて弱くn−ドープされた2つの拡張領域192と194、196と198、200と202、ならびに204と206は、それぞれ、隣接した2つのチャネル領域に向かって、上記拡散領域に形成されている。
【0057】
スイッチングトランジスタT10の拡張領域190および192には、それぞれ、ポケットドープ領域210および212が位置している。ポケットドープ領域210および212は、拡張領域190および192とは反対のドープ型(doping type)を有し、チャネル領域またはp−ウェル102と同じドープ型を有している。しかしながら、ポケットドープ領域210および212は、p−ウェル102よりもさらに高ドープされている。ポケットドープ領域210および212と同じドープ型および同じドーパント濃度を有しているポケットドープ領域216〜218は、それぞれ、メモリセルT11〜T13のソース側にある拡張領域194、200、202などにのみ位置している。これとは対照的に、ドレイン側の拡張領域196、198、204、206などには、ポケットドープ領域はない。図3は、図2からは外れたメモリセルT11のドーピングプロファイルを示している。しかしながら、上記ドーピングプロファイルは双方とも、図2を参照しながら説明した抑圧エラー(suppressing error)の機能を果たす。
【0058】
ドープ領域170、172、174、および拡張領域190〜206は注入によって形成されている。注入方向は、基板100への標準方向Nとは正反対である。対照的に、ポケットドープ領域210〜218は斜め注入によって形成されている。斜め注入の注入方向は、垂直注入の角度よりも10度以上大きく逸れる。
【0059】
図4は、図式250において、ドーパントの純濃度の程度を表す曲線251を図式的に示している。ドーパントの純濃度は、ビット線方向の位置の関数としてy軸上に対数的に示されている。ビット線方向の位置は、x軸254上に示されている。ドーパントの純濃度は、伝導型nへと導くドーパント原子と、伝導型pへと導くドーパント原子との差によってもたらされる。上記ドーパントの純濃度は、ドーパント原子が例えば立方センチメートル当たり1015から、ドーパント原子が例えば立方センチメートル当たり1022までの範囲内において、y軸252上に示されている。x軸254の始点は、例えば基板100におけるメモリセルT11のソースSの位置を表している。図示されている部分のx軸254は、メモリセルT11のドレインDにおいて終端している。
【0060】
曲線251は、次のような、ソースSからドレインDまでの連続的な特性を有している。
【0061】
−ドープ領域170では、例えばドーパント原子としてヒ素またはリンが大部分を占めているため、ドーパント純濃度N1が高い。ドーパント濃度N1は、例えば、ドーパント原子が立方センチメートル当たり1020〜1022の範囲内にある。典型的な実施形態では、ドーパント原子が立方センチメートル当たり5 1020である。
【0062】
−ドーパントの純濃度N2は、拡張領域194において、少なくとも10の1乗低い。典型的な実施形態では、ドーパント濃度N2は、ドーパント原子が立方センチメートル当たり5 1019である。
【0063】
−拡張領域194とポケットドープ領域214との遷移部におけるドーパントの純濃度は、ドーパント原子が立方センチメートル当たり約1015である。
【0064】
−ドーパントの純濃度N3の極大値は、ドーパント原子として例えばホウ素が大部分を占めているため、ポケットドープ領域214のほぼ中心にある。典型的な実施形態では、N3は、例えば、ドーパント原子が立方センチメートル当たり5 1018である。N3は、一般的には、チャネルにおけるドーパント濃度よりも10の1乗高い。
【0065】
−値N3からN4へと緩やかに下降している部分のドーパント濃度は、例えば、ドーパント原子が立方センチメートル当たり5 1017である。
【0066】
−チャネル領域と拡張領域196との境界において、値N4から、ドーパント原子が立方センチメートル当たり1015へ急激に下降している。
【0067】
−拡張領域196において、値がN2まで上昇している。
【0068】
−ドレインドープ領域172における値はN1である。
【0069】
2つの最小値間の距離、すなわちポケットドープ領域の長さを含めたチャネル長は、典型的な実施形態では120ナノメートルである。別の典型的な実施形態では、上記チャネル長は120ナノメートル未満である。
【0070】
ドーパント純濃度が大幅に上昇している「硬い」n/p接合は、ポケットドープ領域214において生じる。これに対して、拡張領域196のポケットドープ領域ではドーパントが欠損しているか、あるいは少ない。このためp/n接合が「より柔らかく」なり、ドーパント純濃度の増減がより小さくなる。曲線251におけるドレイン側の極小値の上昇は、そこに存在している電界強度の程度(measure)である。拡張領域196における最小値では、曲線251の上昇の大きさ、あるいは曲線251の最初の誘導体(first derivative)は小さい。これらは、電界強度の低下に関連している。
【0071】
拡張領域196付近における電界強度の低下によって、チャネル領域において予め加速された電子の加速が、破線で示した曲線特性260と比べて緩やかになる。曲線特性260は、互いに非対称である2つのポケットドープ領域を有している場合の曲線である。加速が緩やかになることによって、チャネル領域の末端において電子の速度が低下する。この速度低下によって、メモリセルT11の読み出し中にフローティングゲート118へ電子が押し入れられるという憂慮すべき事態を防止できる。
【0072】
別の典型的な実施形態では、ドレイン側のポケットドープ領域262は、ソース側のポケットドープ領域114または214に加えて用いられる。ドレイン側のポケットドープ領域の最大ドーパント濃度N5は、N3とN4との間のドーパント濃度、例えばN3とN4との中間である。すなわち、上述した値に対して、ドーパント原子は立方センチメートル当たり1 1018である。従って、この場合においても、読み出し中にプログラミングが不正確になるという事態を抑制できる。しかし、その上、パンチスルー電圧がさらに上昇する。
【0073】
例えば、ドレイン側のポケットドープ領域262、およびソース側のポケットドープ領域214に対する基本的なドーピングは、それぞれ、拡張領域110および112、ならびに、190および192の場合と同じリソグラフィ、特に同じフォトマスクを用いて行われる。ドレイン側の領域あるいはドレイン側の領域に対して備えられた領域は、ドーピング後あるいはドーピング前に、追加的なマスクによって覆われる。これは、斜め注入をさらに行うことによって、ソース側のポケットドープ領域におけるドーパント濃度を上げるためである。
【0074】
他の典型的な実施形態では、それぞれのメモリセルは、1つ以上のトランジスタ(例えば、メモリトランジスタおよび駆動トランジスタ)を含んでいる。
【0075】
n型チャネルトランジスタに対する典型的な実施形態について説明してきたが、p型チャネルトランジスタに対する技術的効果も同様に当てはまる。p型チャネルトランジスタの場合は、非対称のポケットがあるため、読み出し中の正孔の加速はより緩やかである。これにより、チャネル領域に隣接している酸化膜への損傷を防ぐことができる。従って、フローティングゲートの誘電体の劣化度が低減する。p型チャネルトランジスタの場合は、電位状態およびドープ型は、指定された電位状態およびドープ型とは逆になるように選択しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】フラッシュメモリセルアレイの回路図を示す。
【図2】読み出し中のメモリセルにおける電位状態を示す図である。
【図3】メモリセルアレイのビット線方向の断面図である。
【図4】一メモリセル内のソースとドレイン間におけるドーパント濃度を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
D ドレイン電極(ドレイン、ドレイン領域、ドレインターミナル領域)
G ゲート(制御領域)
S ソース電極(ソース、ソース領域、ソース端子、ソースターミナル領域)
BL1,BL2 ローカルビット線(ビット線)
T11〜T13,T21〜T22 メモリトランジスタ
WL1〜WL3 ワード線
10 フラッシュメモリセルアレイ・メモリユニット
40 ローカルソース線(ソース線)
42 ローカルソース線(ソース線)
102 ウェル(チャネル領域)
110 ソース拡張領域
112 ドレイン拡張領域
114 ソース側ポケットドープ領域
118 フローティングゲート(電荷蓄積領域)
124 反転チャネル(チャネル領域)
126 絶縁体
262 ドレイン側ポケットドープ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリトランジスタ(T11)の読み出し動作モードにおいて、ドレインターミナル領域(D)と、
ソースターミナル領域(S)とを有しており、チャネル領域(102)へ電子を輸送するための電子ソースとして供給され、
上記ターミナル領域(S、D)の間に配置されるチャネル領域(102)を有しており、
制御領域(G)を有しており、
制御領域(G)およびチャネル領域(102)の間に配置される電荷蓄積領域(118)を有しており、
ドレインターミナル領域(D)よりもソースターミナル領域により近い位置に配置され、チャネル領域(102)と同じドープタイプであるがチャネル領域(102)よりも異なるドーパント濃度を有する、ソース側ポケットドープ領域(114)を有しており、
ソース側ポケットドープ領域(114)については対称であるとともに、ソースターミナル領域(S)よりもドレインターミナル領域により近い位置に配置される、ドレイン側ポケットドープ領域の欠損により引き起こされる、非対称構造を有する、集積メモリトランジスタ(T11)。
【請求項2】
上記非対称が、ソースターミナル領域(S)よりもドレインターミナル領域(D)により近く配置され、かつ、チャネル領域(102)と同じドープタイプを有しているが、このチャネル領域(102)よりも異なるドーパント濃度を有するドレイン側ポケットドープ領域の欠損により引き起こされることを特徴とする請求項1に記載のメモリトランジスタ(T11)。
【請求項3】
上記非対称が、ソース側ポケットドープ領域(114)について非対称であり、チャネル領域(102)と同じドープタイプを有するがチャネル領域(102)よりも異なるドーパント濃度を有し、少なくとも、次の特徴の何れかの効力、
−上記ソース側ポケットドープ領域(114)のドーパント濃度と比較して、ドレイン側ポケットドープ領域(262)の異なるドーパント濃度という効力、
−ソース側ポケットドープ領域(114)の形態と比較して、ドレイン側ポケットドープ領域(262)の異なる形態という効力、
−ソース側ターミナル領域(S)について上記ソース側ポケットドープ領域(114)の位置と比較して、ドレイン側ターミナル領域(D)についてドレイン側ポケットドープ領域(262)の異なる位置という効力、
により、上記非対称が生ずる、ドレイン側ポケットドープ領域(262)により引き起こされることを特徴とする請求項1に記載のメモリトランジスタ(T11)。
【請求項4】
制御領域(G)の中央を貫通するとともに電荷蓄積領域(118)の中央を貫通するミラー軸に関して、互いに対称に形成される、ターミナル領域(S、D)、
または、上記ターミナル領域(S、D)は反射軸に関して非対称に形成されることを特徴とする前述の請求項の何れか1項に記載のメモリトランジスタ(T11)。
【請求項5】
チャネル領域(102)とは異なるドープタイプのドーピングを有する主たるターミナル領域を含むターミナル領域(S、D)、および、望ましくはターミナル領域(S、D)の何れか1つ、または、両方のターミナル領域(S、D)が、主たる領域と同じドープタイプであるが、主たる領域より低いドーパント濃度のドーピングを含む拡張領域(112、114)を含むことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のメモリトランジスタ(T11)。
【請求項6】
上記ポケットドープ領域(114)、または、チャネル領域(102)よりも高いドーパント濃度を有するポケットドープ領域(114、262)、
および、望ましくはドーパントの純濃度を考慮して、ドレイン側ポケットドープ領域(262)より高いドーパント濃度を有する、望ましいソース側ポケットドープ領域(114)を特徴とする前述の請求項の何れか1項に記載のメモリトランジスタ(T11)。
【請求項7】
前述した請求項の何れか1項に記載のメモリトランジスタ(T11〜T22)のマルチプル性を特徴とするメモリユニット(10)。
【請求項8】
メモリトランジスタ(T11〜T22)はマトリクス形態で配置され、
ワード線方向において、上記マトリクスにおける行のメモリトランジスタの制御領域(G)は、何れの場合でも、ワード線(WL1〜WL3)を経由して電気伝導的に接続され、
さらに、ワード線方向について横断的に位置しているビット線方向において、上記マトリクスにおける1列のドレインターミナル領域(D)は、ビット線(BL1、BL2)を経由して、何れの場合でも電気伝導的に接続されることを特徴とする請求項7に記載のメモリユニット(10)。
【請求項9】
ワード線(WL1、WL2)は、ワード線デコーダに、電気伝導的に接続されているか、または接続可能であり、
かつ、ビット線(BL1、BL2)は、ビット線デコーダ、および/または、電荷蓄積領域(118)の荷電状態を検出するセンサ回路に、電気伝導的に接続されているか、または接続可能であることを特徴とする請求項8に記載のメモリユニット(10)。
【請求項10】
上記マトリクスにおける1列のソースターミナル領域(S)は、何れの場合も、上記マトリクスにおける1列のメモリトランジスタのターミナル領域(S)にのみ接続される、ソース線(40、42)を経由して互いに電気伝導的に接続されていることを特徴とする請求項8または9に記載のメモリユニット(10)。
【請求項11】
請求項1ないし6の何れか1項に記載のメモリトランジスタ(T11)を動作させる方法、または、請求項7ないし10の何れか1項に記載のメモリユニット(10)を動作させる方法であって、次のステップ、
トンネル電流によるメモリトランジスタ(T11)のプログラミングにおいて、プログラミングの間で、チャネル領域(124)において、望ましくは1ナノアンペアより小さい電流が流れることを特徴とする方法。
【請求項12】
チャネル領域(124)および絶縁体(126)の間の中間を通って流れる、望ましくは、完全な中間で同じ電流度合いでの、トンネル電流によるメモリトランジスタ(T11)のプログラミングであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
n−チャネルトランジスタの荷電状態を読み出すときに、次のステップ、
ソースターミナル領域(S)への接地電位または正電位の適用、
ソースターミナル領域(S)での電位と比較してより正の電位のドレインターミナル領域(D)への適用、
および、望ましくは、上記制御領域(G)への正電位の適用であり、この電位は、ソースターミナル領域(S)での電位よりもより正であるか、
または、p−チャネルメモリトランジスタの荷電状態を読み出すときに、次のステップ、
ソースターミナル領域(S)への負電位の適用、
ソースターミナル領域(S)での電位と比較してより負の電位のドレインターミナル領域(D)への適用、
および、上記制御領域(G)への負電位の適用であり、この電位は、ソースターミナル領域(S)での電位よりもより負であることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1ないし6の何れか1項に記載のメモリトランジスタ(T11)を組み立てる方法、または、請求項7ないし10の何れか1項に記載のメモリユニット(10)を組み立てる方法であって、次のステップ、
斜め注入により上記ポケットドープ領域を製造することを特徴とする方法。
【請求項15】
注入の前のマスクでドレインターミナル領域(D)を被覆するか、または、注入の間に積み重ねられているゲートによって、ドレインターミナル領域(D)を覆うことを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−511084(P2007−511084A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538834(P2006−538834)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052623
【国際公開番号】WO2005/048349
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (331)
【Fターム(参考)】