説明

駐車支援装置

【課題】運転の技量が不足している運転者であっても最適な経路に沿って車両を移動させて駐車目標位置に導くことが可能な駐車支援システムを構成する。
【解決手段】車両Bに備えたカメラ12、13からの撮影画像をモニタ10に表示し、駐車目標位置設定手段24で設定された駐車目標位置に車両を移動させた場合には、推奨位置のイメージと、到達位置のイメージと、ステアリングホイールの操作情報とを、誘導情報出力手段29がモニタ10に表示する。この表示に基づいてステアリングホイールを操作することで操作結果がモニタ10の到達位置のイメージが反映され、車両を駐車目標位置に導くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車支援装置に関し、詳しくは、車両に備えたカメラの撮影画像をモニタに表示し、このモニタに対して駐車目標位置に車両を誘導するための情報を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された駐車支援装置としては特許文献1、特許文献2に記載されるものが存在する。特許文献1では、車両の後方を撮影するカメラからの映像をディスプレイに表示すると共に、このディスプレイに対して、ステアリング量、車速等に基づいた予想走行軌跡等の映像に合成して表示する。
【0003】
そして、駐車を行う際には、駐車場の生映像と共に、ステアリングを最大舵角に操作した場合における固定軌跡と、ステアリング操作に対応して予想される予想走行軌跡と、必要とする転舵量の判断基準となるマーカがディスプレイに表示される。これに基づいて駐車目標位置へ駐車の可否をディスプレイの表示において判断できるものである。
【0004】
特許文献2では、車両の後部に備えた後方カメラで撮影された画像をディスプレイに表示し、このディスプレイに対して、駐車位置の情報を重畳して表示する。ディスプレイにおいて駐車目標位置の設定を行い、駐車形態に基づいて、車両の現在位置から駐車目標位置までの駐車経路を計算し、カメラのイメージと重ね合わせて表示する。そして、車両を駐車目標位置に移動させる場合にはステアリングの自動制御によって駐車経路に沿って車両を移動させる制御が行われる。
【0005】
【特許文献1】特開2000‐280823号公報 (段落番号〔0013〕〜〔0048〕、図1〜図16)
【特許文献2】特開2005‐67565号公報 (段落番号〔0028〕〜〔0100〕、図1〜図16)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両に備えたカメラの映像をモニタ等に表示し、このモニタにおいて駐車目標位置を確認する状態で、モニタに対して車両の予想走行軌跡を表示すること(特許文献1)や、モニタに対して駐車目標位置を表示し、この駐車目標位置の情報に基づいて車両を駐車目標位置に誘導する処理を行うもの(特許文献2)は駐車時における運転者の負担を小さくできるものである。
【0007】
特に、モニタに対して駐車を支援するための情報を表示するものでは、車両を後進させて駐車目標位置に車両を導く場合のように運転席から駐車目標位置の確認が困難な状況において有効となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1のように車両の予想走行軌跡と固定軌跡等をモニタに表示するものでは、車両を駐車目標位置に導く理想的な経路に対する車両位置の把握が困難となる。しかも、適正なステアリング操作量を把握し難く、どうすれば車両を理想的な経路に沿って移動させるのか理解しがたい。このため、運転の技量が不足している運転者では、車両の走行を停止した状態でステアリングハンドルの操作(据え切り)を必要とすることもある。このようなステアリング操作はドライバの通常の操作形態と異なり、駐車までに時間を要し、タイヤの摩耗を招く観点において改善の余地がある。
【0009】
また、特許文献2のように自動的なステアリング操作によって駐車目標位置に車両を導くものでは、ステアリング操作系やアクセル操作系を自動的に作動させるためのアクチュエータや制御系等の構成を必要とするため複雑化しやすくコスト高を招く。
【0010】
本発明の目的は、運転の技量が不足している運転者であっても最適な経路に沿って車両を移動させて駐車目標位置に導くことが可能な駐車支援システムを合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、車両に備えたカメラで撮影した撮影画像をモニタに表示する画像表示手段と、駐車しようとする目標位置である駐車目標位置を設定すると共に、前記車両を前記駐車目標位置に導く誘導経路を演算して駐車完了まで記憶する誘導経路生成手段とを備え、車両位置を逐次取得し、前記誘導経路と現在の車両位置との位置関係を示す誘導情報を前記モニタに表示する誘導情報出力手段が備えられた点にある。
【0012】
この構成により、駐車目標位置に車両を導く際には、カメラからの撮影画像とともにモニタに表示される誘導情報に基づいて誘導経路と車両位置との位置関係を把握する。そして、車両の移動時には逐次取得される車両位置に基づいてモニタに誘導情報が表示され、この誘導情報に基づいてステアリング操作を行うことによって車両を駐車目標位置に導くことができる。その結果、運転の技量が不足している運転者であっても最適な誘導経路に沿って車両を移動させて駐車目標位置に導き得る駐車支援システムが構成された。特に、本発明では、誘導経路が駐車完了まで記憶されるので、例えば、車両の移動時に誘導経路を補正するもののように、補正後の誘導経路が道路の窪みや突出物等の障害物が存在する領域に設定されるような不都合を生じないため、運転者は安心感をもって駐車を行うことができる。
【0013】
本発明は、前記誘導経路から車両が外れた場合に、前記車両を前記誘導経路に復帰させるための復帰経路を生成する復帰経路生成手段を備えると共に、前記誘導情報出力手段は、前記復帰経路に沿う移動によって前記車両を前記誘導経路に復帰させるステアリング操作方向を前記誘導情報と併せて前記モニタに表示しても良い。この構成によると、駐車目標位置に車両を導く際には、モニタに表示されるステアリング操作方向に従ってステアリング操作を行うことにより、車両を復帰経路に沿って移動させることになりステアリング操作を誤ることがない。
【0014】
本発明は、前記誘導情報出力手段が、前記ステアリング操作方向とステアリング操作量とを前記誘導情報と併せて前記モニタに表示しても良い。この構成によると、モニタに表示されるステアリング操作方向と、ステアリング操作量とに従ってステアリング操作を行うことにより、精度の高いステアリング操作を実現する。
【0015】
本発明は、前記誘導経路から車両が外れた場合に、前記復帰経路生成手段が車両の移動速度と車両のステアリング角とに基づいて前記復帰経路を生成しても良い。この構成によると、車両が誘導経路から外れた場合には、車両の移動速度と、その時点でのステアリング角とから復帰経路が生成されるので、生成される復帰経路の形態に無理がない。
【0016】
本発明は、前記誘導経路生成手段が、最大ステアリング角の所定割合以下のステアリング角で車両を駐車目標位置に導くように前記誘導経路を設定し、前記復帰経路生成手段は、前記所定割合を超えるステアリング角で車両を誘導経路に復帰させる復帰経路の生成が許されている。これによると、誘導経路生成手段で生成される誘導経路において最大ステアリング角でステアリング操作を行う必要がなく、誘導経路から車両が外れた場合にもステアリング操作を行うことにより復帰経路に沿って車両を移動させ誘導経路に導くことが可能となる。
【0017】
本発明は、前記誘導情報出力手段が、前記車両を前記誘導経路に復帰させるステアリング方向を音声で前記誘導情報としてスピーカから出力しても良い。この構成によると、駐車目標位置に車両を導く際には、スピーカから出力される音声に従ってステアリング操作を行うことにより、モニタに視線を向けずともステアリング操作を誤ることがない。
【0018】
本発明は、前記誘導経路に対する車両位置と車両姿勢との関係から前記誘導経路に車両の復帰が不能であることを判断した場合には、復帰不能であるメッセージを出力しても良い。この構成によると、誘導経路上に車両を移動させることが不能であることをメッセージから把握できることになり、駐車目標位置へ車両を導く操作の再試行を早期に行える。
【0019】
本発明は、前記画像表示手段が、前記カメラで撮影した撮影画像を逐次更新して前記モニタに表示し、前記誘導情報出力手段は前記駐車目標位置と前記誘導経路とを前記撮影画像に合成して表示しても良い。この構成によると、駐車目標位置に向けて車両を移動させている際にも、モニタにはカメラで撮影された画像と、駐車目標位置と、誘導経路とが逐次更新する形態で表示され、リアルタイムで駐車目標位置への車両を導く操作をモニタの情報に基づいて行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕図1〜図4に示すように、前車輪1、後車輪2を有した車両Bのルーム内に運転座席3とステアリングホイール4とを備え、その前部にメータ類を有したパネル5を配置し、前記運転座席3の側部に変速を行うシフトレバー6を配置して自動車が構成されている。
【0021】
前記ステアリングホイール4は回転操作力を前車輪1に伝えて駆動操向を行うパワーステアリングユニットPSと連動している。車両前部にはエンジンEと、このエンジンEからの動力を変速して前車輪1に伝えるトルクコンバータやCVT等で成る変速機構Tとが配置されている。前記運転座席3の近傍には走行速度を制御するアクセルペダル7と、前車輪1及び後車輪2のブレーキ装置BKを操作して夫々に制動力を作用させるブレーキペダル8とが並列配置されている。
【0022】
前記運転座席3の近傍のコンソールの上部位置には、車両Bの現在位置をGPS(Global Positioning System )を利用して地図上に表示するナビゲータ用のモニタ10を備えている。このモニタ10の表示面にはタッチパネル10Tが形成され、モニタ10のケースにはスピーカ11を備えている。
【0023】
このモニタ10は、本発明の駐車支援装置に兼用されるものであるが、本発明の駐車支援装置では専用のモニタを備え、専用のスピーカを備えても良い。また、スピーカとしてはパネル5に備えることや、ドアの内側に備えたものを用いても良い。
【0024】
車両Bの前端にフロントカメラ12を備え、車両Bの後端にリヤカメラ13を備えている。フロントカメラ12とリヤカメラ13とは、広角度の視野(画角)を有する光学レンズからの光線をCCD等の撮像素子に導く構造を有するとともに、撮影した情報を動画情報としてリアルタイムで出力するように構成されている。
【0025】
フロントカメラ12は車両Bの前方の地面を主な撮影領域に設定しており、リヤカメラ13は車両Bの後方の地面を主な撮影領域に設定している。
【0026】
前記ステアリングホイール4の操作系にはステアリング操作方向と操作量とを計測するステアリングセンサ14を備え、前記シフトレバー6の操作系にはシフト位置を判別するシフト位置センサ15を備えている。
【0027】
前記変速機構Tには駆動系の回転量から車両Bの移動量を計測する移動距離センサ16を備えている。尚、この移動距離センサ16として、前車輪1と後車輪2との少なくとも一方の回転量を計測するフォトインタラプタ型やピックアップ型のセンサを用いても良い。そして、車両Bの中央部には走行制御を行うECUとして制御ユニット20を配置している。
【0028】
制御ユニット20は、本発明の駐車支援装置において主要な処理を行うものであり、車両Bを駐車目標位置に導くための誘導情報を出力する。
【0029】
また、この制御ユニット20における情報の入出力系を図5に示している。同図に示す制御系が本発明の駐車支援装置の全体構成であり、この制御系では、フロントカメラ12とリヤカメラ13との撮影画像のうちモニタ10に表示すべきものを画像セレクタ17で選択する表示系を備えている。
【0030】
尚、フロントカメラ12とリヤカメラ13との撮影画像のうち画像セレクタ17で選択されたものをモニタ10に表示する系で本発明の画像表示手段が構成されている。
【0031】
この制御ユニット20は、情報の入出力を行う入出力インタフェース21を備えており、この入出力インタフェース21に対して、フロントカメラ12の撮影画像と、リヤカメラ13の撮影画像のうち画像セレクタ17で選択された撮影画像が入力する。また、制御ユニット20で生成された誘導情報のイメージが画像合成ユニット18を介してモニタ10に表示され、誘導情報の音声がスピーカ11に出力される。
【0032】
この構成から、制御ユニット20の制御に拘わらず、フロントカメラ12の撮影画像と、リヤカメラ13の撮影画像のうち画像セレクタ17で選択された撮影画像がモニタ10に逐次表示される。
【0033】
また、入出力インタフェース21に対してステアリングセンサ14、シフト位置センサ15、移動距離センサ16からの情報が入力する。
【0034】
この制御ユニット20は、入出力インタフェース21に入力した情報を処理するマイクロプロセッサCPUを備えている。このマイクロプロセッサCPUのデータバスに対して半導体メモリ22、画像取得手段23、駐車目標位置設定手段24、現在位置・現在姿勢取得手段25、誘導経路生成手段26、復帰経路生成手段27、誤差判別手段28、誘導情報出力手段29夫々が接続している。
【0035】
この制御系では、データバスの他にコントロールバスやアドレスバス等を必要とするものであるが、複雑化を避けるために図面にはコントロールバスやアドレスバス、あるいは、インタフェース類を示していない。
【0036】
また、この制御系では、画像取得手段23、駐車目標位置設定手段24、現在位置・現在姿勢取得手段25、誘導経路生成手段26、復帰経路生成手段27、誤差判別手段28、誘導情報出力手段29夫々をソフトウエアで構成することを想定しているが、これらをハードウエアで構成することや、これらをハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで構成するものであっても良い。
【0037】
この制御ユニット20は、図10、図11に示す駐車目標位置P、車両Bの現在位置、車両Bの現在姿勢、誘導経路C等の情報を地面上に想定した平面座標系において処理する。また、この処理を行う際の情報が半導体メモリ22に展開し記憶される。
【0038】
前記画像取得手段23は、前記フロントカメラ12又はリヤカメラ13からの撮影画像を取得する。
【0039】
駐車目標位置設定手段24は、前記タッチパネル10Tに対するオペレータ(運転者)の操作に基づいてモニタ10に表示した駐車エリアPEをモニタ10の表示面において移動させることで、オペレータが指定した駐車エリアPEに含まれる領域を駐車目標位置Pとする。そして、この駐車目標位置Pの領域を平面座標系の情報として設定し、半導体メモリ22に保存する。
【0040】
現在位置・現在姿勢取得手段25は、停車状態において駐車目標位置設定手段24で駐車目標位置Pを設定した際に、停車状態の車両Bのフロントカメラ12又はリヤカメラ13からの撮影画像を画像取得手段23で取得し、駐車目標位置Pから車両Bまでの距離、車両Bの姿勢を平面座標系の情報として取得する。
【0041】
更に、この現在位置・現在姿勢取得手段25は、駐車目標位置Pに導くために車両Bを移動させている状況でステアリングセンサ14と移動距離センサ16とからの情報に基づいた処理と、フロントカメラ12又はリヤカメラ13からの撮影画像に基づいた処理との少なくとも一方の処理により車両Bの位置(車両Bの現在位置)、車両Bの姿勢(車両Bの現在姿勢)を平面座標系の情報として逐次取得する。
【0042】
誘導経路生成手段26は、駐車目標位置設定手段24で駐車目標位置Pが設定された際に、この駐車目標位置Pと、停車状態の車両Bの現在位置と現在姿勢とに基づいて車両Bを駐車目標位置Pに導くために推奨される誘導経路C(図10、図11を参照)を平面座標系の情報として設定し、半導体メモリ22に保存する。
【0043】
この誘導経路生成手段26が誘導経路Cを生成する場合には、車両Bの現在位置から駐車目標に車両Bを導く際に最大ステアリング角(最大舵角)の所定割合以下のステアリング角での操作で車両Bを誘導経路Cに沿って導くことが可能な誘導経路Cが生成される。具体的な一例を挙げると、車両Bの現在位置から最大ステアリング角の70%程度のステアリング角以内の操作によって車両Bを目標駐車位置に導くことが可能な誘導経路Cが生成されることになる。
【0044】
復帰経路生成手段27は、車両Bの移動により、車両Bが誘導経路Cから外れた場合に、車両Bを誘導経路Cに復帰させるために図16に示す復帰経路Rを生成する。
【0045】
つまり、誘導経路Cの幅方向の中心位置Cxを基準にすると、車両Bの中心が誘導経路Cから(誘導経路Cの中心位置Cxから)外れた場合には、基準位置Fにおける車両Bの移動速度と車両Bのステアリング角とに基づいて前記復帰経路Rを生成し、この復帰経路Rが生成されることで前記誘導経路C上に復帰位置Gが設定される。
【0046】
この復帰経路Rを、復帰経路生成手段27を生成する際には、前記誘導経路生成手段26が誘導経路Cを生成した際における所定割合を超えるステアリング角で車両Bを復帰位置Gに導くことが可能となるように、この復帰経路Rが生成される。
【0047】
具体的な一例を挙げると、車両Bの現在位置から最大ステアリング角の70%を超えるステアリング角(例えば最大ステアリング角の90%)となる操作を行うことにより誘導経路Cに車両Bを復帰させる復帰経路Rが生成され、復帰位置Gが設定される。尚、この復帰経路生成手段27は、誘導経路Cから車両Bが外れる都度、復帰経路Rを形成する処理を行うことになるが、復帰経路Rに沿って車両B移動していることを判別した場合には、復帰経路Rを再度生成することはない。
【0048】
誤差判別手段28は、誘導経路C又は復帰経路Rに対する車両Bの現在位置と、現在姿勢との誤差を逐次判別して誘導情報出力手段29に与える。
【0049】
また、誤差判別手段28は、車両Bを誘導経路Cに復帰させることが不能であることを判別した場合に、この誤差判別手段28は、復帰不能であることを示す情報をモニタ10に表示すると共に、人の言葉によるメッセージでスピーカ11に出力する。
【0050】
誘導情報出力手段29は、誤差判別手段28から与えられる情報を逐次取得し、この情報に基づいて、誘導経路Cと車両Bとの位置関係を示す誘導情報と、車両Bを誘導経路Cに復帰させるための誘導情報とをモニタ10又はスピーカ11に逐次出力する。
【0051】
誘導情報出力手段29がモニタ10に出力する誘導情報としては、駐車目標位置Pの駐車エリアPEのイメージと、誘導経路Cのイメージと、設定量移動した際に推奨される車両Bの推奨位置Xのイメージと、設定量移動した際の車両Bの到達位置Zのイメージと、ステアリングホイール4の操作情報Sのイメージが設定されている。
【0052】
また、誘導情報出力手段29がスピーカ11に出力する誘導情報としては、ステアリング操作方向と、ステアリング操作量とを示す音声とが含まれる。
【0053】
推奨位置Xとは、ステアリングホイール4を最適量操作した状態で車両Bを設定距離だけ移動した際に車両Bが到達する位置である。また、到達位置Zとは、現在のステアリングホイール4の操作量を維持したまま車両Bを設定距離だけ移動した際に車両Bが到達すると推定される位置である。操作情報Sとは、ステアリング操作方向とステアリング操作量とを表す矢印(図11を参照)が設定されている。
【0054】
〔制御形態〕
前記制御ユニット20により車両Bを駐車位置に誘導する際の処理の概要を図6のフローチャートに示している。
【0055】
駐車すべき位置の近傍に車両Bを停車させた状態で駐車モードを選択した後には、オペレータ(運転者)の操作によって駐車目標位置Pが決定された後に、誘導経路Cが設定される(#101〜#104ステップ)。
【0056】
この制御では、縦列駐車(図示せず)と、並列駐車との何れかの駐車モードの選択が可能である。そして、駐車モードを選択した場合には、図11に示す如く、リヤカメラ13からの撮影画像がモニタ10に表示され、このモニタ10には駐車エリアPEを示すイメージが初期位置に表示される。
【0057】
モニタ10には、初期状態で駐車エリア候補PXのイメージが表示されると共に、この駐車エリア候補PXのイメージを移動させる矢印形の複数の移動ボタン31と、駐車支援制御を中止する中止ボタン32と、駐車目標位置Pを決定する決定ボタン33とが表示される。尚、これらの移動ボタン31、中止ボタン32、決定ボタン33にオペレータが指等を接触させた場合には、操作位置がタッチパネル10Tによって取得される。
【0058】
そして、モニタ10に表示された移動ボタン31に指を接触させることにより、駐車エリア候補PXを駐車目標位置Pとする位置まで移動させ、決定ボタン33を操作することにより、決定された位置の駐車エリア候補PXが駐車エリアPEとして指定される。
【0059】
制御ユニット20での処理では、モニタ10に表示された撮影画像のモニタ上での座標系と、平面座標系との相関が予め取得されている。これによりモニタ10に表示される駐車エリアPEの形状は撮影画像の遠近感に対応して変形させる処理が実現される。
【0060】
このモニタ10に表示されている駐車目標位置Pと車両Bとの位置関係、及び、駐車目標位置Pに対する車両Bの姿勢が、モニタ10に表示されている撮影画像の座標系と、平面座標系との相関から平面座標系の情報として取得される。そして、これらからの情報から誘導経路Cを設定する処理が行われる。この処理で誘導経路Cの設定が不能である場合には、設定不能のメッセージをモニタ10に表示して駐車支援ルーチンを終了する(#104、#105ステップ)。
【0061】
尚、停車位置の車両Bのステアリングホイール4を限界まで操作した場合でも、車両Bを駐車目標位置Pに導くことができない場合に、設定不能と判断される。
【0062】
また、誘導経路Cの設定が可能である場合には、駐車目標位置Pと誘導経路Cとを平面座標系の情報として記憶する(#106ステップ)。尚、駐車目標位置Pと誘導経路Cとの位置関係を図10のように表すことが可能である。
【0063】
このように誘導経路Cを生成する処理としては、演算に基づくものであっても、予め設定されているテーブルデータから取得するものであっても良い。また、このように設定される誘導経路Cはステアリングホイール4を限界に設定する操作を含まないように設定される。つまり、前述した通り、誘導経路生成手段26は、最大ステアリング角(最大舵角)の所定割合(例えば70%の角度)以下で車両Bを駐車目標位置Pに導くように誘導経路Cが設定される。
【0064】
次に、車両Bの移動を開始した場合には、誘導経路Cに対する現在の車両位置と、現在の車両姿勢とを比較する。比較の結果、車両Bを誘導経路Cに復帰できない場合には復帰不能であることを示すメッセージをモニタ10に表示する(#107〜#110ステップ)。
【0065】
この復帰不能であることを示すメッセージは誤差判別手段28が出力するものであるが、誘導情報出力手段29が出力しても良い。
【0066】
また、#108ステップでは、誘導経路C又は復帰経路Rと、現在の車両Bとを比較する。つまり、誘導経路Cと車両Bとの間にズレがない場合には復帰経路Rが生成されないので、このステップでは復帰経路Rが設定されていない場合には誘導経路Cと、現在の車両Bの位置・姿勢との比較を行う。また、復帰経路Rが生成されている場合には、復帰経路Rと、現在の車両Bの位置・姿勢との比較を行う。
【0067】
また、このステップでは、車両Bが誘導経路Cから外れたことを判別した場合に、復帰経路生成手段27が、その基準位置Fと、車両Bの移動速度とに基づいて復帰経路Rを生成する。この復帰経路Rが生成される際には、前述した通り、誘導経路Cを生成する際において設定された所定割合(例えば70%)を超える割合(例えば90%)が許される。そして、最大ステアリング角(最大舵角)に対して許された割合(90%)のステアリング角でステアリング操作することで、基準位置Fから車両Bを誘導経路Cに復帰させる復帰位置Gを設定するように復帰経路Rが設定される。
【0068】
現在の車両位置と現在の車両姿勢とを、現在位置・現在姿勢取得手段25が取得して比較する処理(#108ステップ)では、車両Bを移動させている状況でステアリングセンサ14と移動距離センサ16とからの情報に基づいて、車両Bが設定距離移動する毎に、誤差判別手段28が車両位置と車両姿勢との誤差を算出する。特に、復帰経路Rが設定されている場合には、復帰経路Rに対する車両Bの現在位置と、現在姿勢との誤差を逐次判別して誘導情報出力手段29に与える。
【0069】
また、現在位置・現在姿勢取得手段25では、フロントカメラ12又はリヤカメラ13からの撮影画像に基づいた処理により、設定距離移動する毎に車両位置と車両姿勢との誤差を取得しても良い。特に、このように撮影画像に基づいて誤差を取得する処理と、ステアリングセンサ14と移動距離センサ16とからの情報に基づいて誤差を取得する処理とを総合して誤差を取得するように誤差判別手段28の処理形態を設定しても良い。
【0070】
そして、復帰不能のメッセージが表示された場合には、駐車目標位置Pに向かう車両Bの移動を停止し、車両Bを前進させる等、誘導経路Cに復帰可能な位置まで車両Bを移動させることが必要となる。このように車両Bを逆方向に移動させた場合にも、誘導経路Cに対する現在の車両位置と、現在の車両姿勢とを比較する処理は実行されているので、誘導情報は逐次出力される。
【0071】
復帰不能でない場合には、比較結果から誘導情報を出力する(#111ステップ)。この処理では、車両Bの移動を開始し、誘導経路Cに対して現在の車両位置と車両姿勢とが図12に示すように誤差が生じている位置関係にある場合に、モニタ10には図13に示す誘導情報が表示される。
【0072】
具体的には、駐車エリアPEのイメージと、誘導経路C上における推奨位置Xのイメージと、車両Bが現実に到達した到達位置Zのイメージと、ステアリングホイール4の操作情報Sとの誘導情報が表示される。そして、スピーカ11からはステアリング操作方向・操作量が音声で出力される。
【0073】
この実施形態では、駐車エリアPEのイメージを黄色、推奨位置Xのイメージを青色、到達位置Zのイメージを赤色に設定する等、夫々は異なる色相でモニタ10に表示される。また、到達位置Zのイメージは、推奨位置Xのイメージとの表示位置の差が拡大するほど鮮やかな色相に変更することや、点滅速度を高めるようにすることで、誘導経路との誤差が拡大したことを視覚で捉え得るようにしても良い。
【0074】
到達位置Zのイメージは次のような処理によって生成される。つまり、駐車目標位置Pを設定した際の車両Bの位置を基準にして、車両Bが移動した位置と姿勢と移動距離センサ16の情報とステアリングセンサ14からの情報に基づいて取得する。次に、車両Bが現実に存在する位置から、更に、ステアリングホイール4の操作状態を維持したまま設定距離(例えば0.5メートルや、1.0メートル)移動した際における車両Bの到達位置を求める。そして、この到達位置における車両Bの後端位置に対応する枠状のイメージを到達位置Zのイメージとするのである。
【0075】
推奨位置Xのイメージは次のような処理によって生成される。つまり、到達位置Zのイメージを生成するため取得した移動距離センサ16の情報に基づいて車両Bの移動距離を取得する。次に、このように取得した移動距離だけ車両Bが誘導経路C上を移動した際の位置から、更に、車両Bを誘導経路Cに沿って設定距離(例えば0.5メートル)移動した際に車両Bが達する位置を求める。そして、この位置における車両Bの後端位置に対応する枠状のイメージを推奨位置Xのイメージにするのである。
【0076】
つまり、この推奨位置Xのイメージは、誘導経路Cに沿って車両Bを理想的に移動させた場合における車両Bの後端位置に対応するのである。
【0077】
尚、到達位置Zのイメージとして、現在の車両位置と、車両姿勢とをそのままイメージとして表示するものであっても良い。これと同様に、推奨位置Xのイメージとして、現在の車両位置に対応する位置における理想的な車両位置と車両姿勢とを示すイメージを表示するものであっても良い。
【0078】
ステアリングの操作情報Sのイメージとしては、ステアリング操作の方向を矢印で表し、ステアリング操作量を矢印の長さで表している。
【0079】
ステアリング操作情報の音声としては、図7のグラフに示すように、現在の車両Bを誘導経路Cに戻すために必要なステアリング操作量(ズレ量)が大きいほど音量を増大させる。また、この音量の設定と同時に図8のグラフに示すように、ステアリング操作方向に対応して音声の周波数を切り換えることや、この音量の設定と同時に図9に示すように、ズレ量に対応して周波数を高くするもの等が設定されている。
【0080】
このようにステアリングの操作情報の音声としては、間歇的に出力される電子音を想定しているが、ステアリング操作方向とステアリング操作量との少なくとも一方を人の言葉によって出力するように構成したものでも良い。
【0081】
このような処理により、誘導経路Cに対して現在の車両位置と車両姿勢とに誤差(ズレ)がある場合には、図13に示す如く推奨位置Xのイメージと、到達位置Zのイメージにもズレが現れ、車両Bを誘導経路Cに戻すためのステアリングの操作情報Sも表示される。
【0082】
このことから、誘導情報の出力に基づいて、必要なステアリング操作を行いながら車両Bを移動させた場合には、図14に示すように、車両Bの位置と姿勢とが誘導経路Cに近接するものとなり、推奨位置Xのイメージと、到達位置Zのイメージとが図15に示す如く重なり合う方向に変化する。
【0083】
そして、駐車目標位置Pに車両Bを導き、駐車を完了した後には、情報を消去して駐車支援ルーチンを終了する(#112、#113ステップ)。
【0084】
〔制御の別実施形態〕
【0085】
(a)この実施形態では並列駐車について説明したが、縦列駐車や、車両をスイッチバックさせる形態で駐車目標位置Pに導く駐車モードに適用することも可能である。このような駐車モードでは車両Bを駐車目標位置Pに導く際にはステアリングホイール4の操作方向を切り換えることや、車両Bを駐車目標位置Pに導く際に車両Bの前進と後進との切り換えることを必要とするが、これに対応した誘導経路Cを設定することで車両Bを駐車目標位置Pに導くことが可能となる。
【0086】
(b)本発明では推奨位置Xのイメージと、到達位置Zのイメージをモニタ10に表示するものでは誘導経路Cの表示を省略することも可能である。
【0087】
(c)本発明では到達位置Zのイメージと、誘導経路Cとをモニタ10に表示することで推奨位置Xのイメージの表示を省略することも可能である。
【0088】
(d)推奨位置Xのイメージと、到達位置Zのイメージとを枠状のイメージに代えてライン状に設定することや、複数のドットとして表示することも可能である。
【0089】
〔実施形態の効果〕
このように、本発明によると、駐車モードが選択された場合には、車両Bを停車させた初期の車両Bの位置から車両Bを駐車目標位置Pに導く誘導経路Cが記憶される。そして、車両Bを駐車目標位置Pに導く際には、設定された誘導経路Cに対する現在の車両位置と、車両姿勢との誤差に基づいて、誘導情報がモニタ10に表示される。これと同時に、誘導情報としてステアリング操作方向と操作量とを示す情報がスピーカ11に出力される。これにより、運転の技量が不足している運転者であっても誘導情報に基づいてステアリングホイール4の操作を行いながら車両Bを移動させることで、最適な誘導経路Cに沿って車両Bを移動させ駐車目標位置Pに車両Bを導くことが可能となる。
【0090】
また、車両Bを駐車目標位置Pに導くために車両Bを移動させた場合には、誘導経路Cに対する車両Bの位置、姿勢のズレをモニタ10に表示された推奨位置Xのイメージと到達位置Zのイメージとの差から視覚的に把握できる。更に、モニタ10に表示されるステアリングホイール4の操作情報Sに従って、ステアリングホイール4を操作するだけで、車両Bが誘導経路Cの方向に移動し、車両Bの姿勢の適正となる。
【0091】
更に、ステアリングホイール4を操作した場合には、推奨位置Xのイメージと、到達位置Zとのイメージとが重なり合う方向に表示が変化するので、ステアリング操作の適否を視覚的に容易に確認できるものとなる。また、ステアリング操作方向を聴覚によっても把握できるので、モニタ10から視線を外した場合でも、必要とするステアリング操作方向とステアリング操作量を音声によって把握できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】自動車の一部切り欠き斜視図
【図2】フロントカメラの位置を示す車両前部の斜視図
【図3】運転座席前部のパネルの部位を示す図
【図4】車両の構成を示すブロック図
【図5】制御系のブロック回路図
【図6】駐車支援ルーチンのフローチャート
【図7】ステアリング操作量と音量との関係をグラフ化した図
【図8】ステアリング操作量と周波数との関係をグラフ化した図
【図9】ステアリング操作量と周波数との関係をグラフ化した図
【図10】停車位置と駐車目標位置との関係と誘導経路との平面図
【図11】駐車目標位置を設定する際のモニタの表示内容を示す図
【図12】車両の移動時の車両と駐車目標位置との平面図
【図13】車両の移動時のモニタに表示内容を示す図
【図14】駐車目標位置に導く直前の車両と駐車目標位置との平面図
【図15】駐車目標位置に導く直前のモニタの表示内容を示す図
【図16】復帰経路を模式的に示す平面図
【符号の説明】
【0093】
10 モニタ
11 スピーカ
12、13 カメラ(フロントカメラ、リヤカメラ)
27 復帰経路生成手段
29 誘導情報出力手段
B 車両
C 誘導経路
P 駐車目標位置
R 復帰経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えたカメラで撮影した撮影画像をモニタに表示する画像表示手段と、駐車しようとする目標位置である駐車目標位置を設定すると共に、前記車両を前記駐車目標位置に導く誘導経路を演算して駐車完了まで記憶する誘導経路生成手段とを備え、
車両位置を逐次取得し、前記誘導経路と現在の車両位置との位置関係を示す誘導情報を前記モニタに表示する誘導情報出力手段が備えられている駐車支援装置。
【請求項2】
前記誘導経路から車両が外れた場合に、前記車両を前記誘導経路に復帰させるための復帰経路を生成する復帰経路生成手段を備えると共に、前記誘導情報出力手段は、前記復帰経路に沿う移動によって前記車両を前記誘導経路に復帰させるステアリング操作方向を前記誘導情報と併せて前記モニタに表示する請求項1記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記誘導情報出力手段は、前記ステアリング操作方向とステアリング操作量とを前記誘導情報と併せて前記モニタに表示する請求項2記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記誘導経路から車両が外れた場合に、前記復帰経路生成手段が車両の移動速度と車両のステアリング角とに基づいて前記復帰経路を生成する請求項2記載の駐車支援装置。
【請求項5】
前記誘導経路生成手段が、最大ステアリング角の所定割合以下のステアリング角で車両を駐車目標位置に導くように前記誘導経路を設定し、
前記復帰経路生成手段は、前記所定割合を超えるステアリング角で車両を誘導経路に復帰させる復帰経路の生成が許される請求項2〜4のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項6】
前記誘導情報出力手段は、前記車両を前記誘導経路に復帰させるステアリング方向を音声で前記誘導情報としてスピーカから出力する請求項1記載の駐車支援装置。
【請求項7】
前記誘導経路に対する車両位置と車両姿勢との関係から前記誘導経路に車両の復帰が不能であることを判断した場合には、復帰不能であるメッセージを出力する請求項1〜6のいずれか一項に記載の駐車支援装置。
【請求項8】
前記画像表示手段は、前記カメラで撮影した撮影画像を逐次更新して前記モニタに表示し、前記誘導情報出力手段は前記駐車目標位置と前記誘導経路とを前記撮影画像に合成して表示する請求項1〜6のいずれか一項に記載の駐車支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−208742(P2009−208742A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56705(P2008−56705)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】