説明

高圧タンク

【課題】簡便な手段によって、表面樹脂層の破壊を防止することが可能な樹脂製の高圧タンクを提供することである。
【解決手段】高圧タンク10は、高圧ガスの収容空間17を形成する樹脂製のライナー11と、ライナー11の外表面を被覆する繊維強化樹脂層12と、繊維強化樹脂層12の一部である表面樹脂層に溶剤を塗布して発泡させることで多孔化した表面発泡樹脂層13と、を備える。表面発泡樹脂層13は、例えば、塗布する溶剤量を適切に調整することでタンクのバースト強度を低下させることなく多孔質構造の形態を調整することができ、ガス透過性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧タンクに係り、特に、樹脂製のライナーを繊維強化樹脂層で被覆した樹脂製の高圧タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池の開発が盛んに行なわれ水素ガスが充填された高圧タンクが車両等に搭載される機会が増えてきたこともあり、高圧タンクの軽量化が強く要求されている。軽量性に優れた高圧タンクとして、樹脂製の高圧タンクが開発されている。図4(a)に示すように、樹脂製の高圧タンクは、樹脂製のライナー11を備え、その外表面に繊維強化樹脂層12を設けて補強した構造を有している。ここで、図4は、従来の高圧タンクの積層構造を示す図であって、後述の図2に対応する図である。
【0003】
図4(a)に示すように、繊維強化樹脂層12の表面には、通常、表面樹脂層18が形成されている。表面樹脂層18は、樹脂が含浸された繊維をライナー11に巻き付けて繊維強化樹脂層12を形成する際に、余分な樹脂が外側にブリードすることで形成される樹脂のみからなる緻密な層である。即ち、繊維強化樹脂層12と表面樹脂層18とは一体化した連続層である。
【0004】
本発明に関連する技術として、特許文献1には、アルミニウム合金からなるライナーと、当該ライナーを被覆する繊維強化樹脂層を備え、当該繊維強化樹脂層の外面を熱収縮チューブで被覆した高圧タンクが開示されている。また、特許文献1には、熱収縮チューブが複数の通気孔を有しており、熱収縮チューブを熱収縮させて樹脂含浸繊維束層内部に存在している気体を樹脂含浸繊維束層外に押し出す際、樹脂含浸繊維束層の外面に達した気体は通気孔を介して熱収縮チューブの外側に排出できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐309219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、繊維強化樹脂層12を備える高圧タンクには、表面樹脂層18が形成される。この表面樹脂層18は、図4(b)に示すように、ガスを遮断する機能(ガスバリア性)を有している。樹脂製の高圧タンクでは、ガスを完全に遮断するライナー11が存在しないことから、タンクに充填されたガスは経時的にライナー11を透過する。そして、ライナー11を透過したガスが、樹脂のみからなる緻密な表面樹脂層18によって遮断されるのである。
【0007】
図4(c)に示すように、表面樹脂層18によってライナー11を透過したガスが遮断されてガスの蓄積量が限界点に達すると、表面樹脂層18が破壊されてガスが一気に放出することが起こり得る。このとき、ガスの放出量は安全上問題にならない程度であるが、表面樹脂層18の破壊によって異音が発生する。また、表面樹脂層18は、タンクに耐損傷性等を付与する保護層としての役割を持つので、破壊されると耐損傷性等が低下する可能性もある。
【0008】
一方、特許文献1に記載の高圧タンクのように、アルミニウム合金からなる金属製ライナーを備えるタンクでは、ライナーによってガスが完全に遮断されるため表面樹脂層が破壊されるという課題が存在しない。したがって、特許文献1には、繊維強化樹脂層の表面樹脂層に関する記載が存在しない。以上のように、特許文献1の技術を含む従来技術では、樹脂製の高圧タンクにおいて、表面樹脂層の破壊を防止することは困難であった。
【0009】
本発明の目的は、表面樹脂層の破壊を防止することが可能な樹脂製の高圧タンクを提供することである。また、本発明のもう1つの目的は、従来の基本プロセスを変更することなく簡便な操作を付加するだけで、当該高圧タンクを製造できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高圧タンクは、樹脂製のライナーと、ライナーの外表面を被覆する繊維強化樹脂層と、繊維強化樹脂層の外側に設けられる表面樹脂層と、を備える高圧タンクにおいて、表面樹脂層に多孔化処理を施すことで、多孔質構造を有する表面多孔質樹脂層が形成されたことを特徴とする。即ち、本発明に係る高圧タンクは、樹脂製のライナーと、繊維強化樹脂層と、多孔質構造を有する表面樹脂層である表面多孔質樹脂層と、を備える。ここで、多孔化処理としては、表面樹脂層を発泡させて多孔化する処理であることが好ましい。
【0011】
なお、表面樹脂層は、繊維強化樹脂層の外側に別途設けた層であってもよいが、通常、繊維強化樹脂層の形成過程において余分な樹脂成分が外側にブリードすることで形成される。その場合、表面樹脂層は繊維強化樹脂層の一部を構成する。即ち、本発明に係る高圧タンクは、樹脂製のライナーと、ライナーの外表面を被覆すると共に、樹脂成分が外側にブリードして表面樹脂層が形成された繊維強化樹脂層と、を備える高圧タンクにおいて、表面樹脂層に多孔化処理を施すことで、多孔質構造を有する表面多孔質樹脂層が形成されたことを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、多孔質構造によってガス透過性が向上するため、ライナーを透過したガスがライナーの外側で遮断されることを抑制することができる。即ち、多孔質構造を有する表面樹脂層である表面多孔質樹脂層は、ライナーを透過したガスの蓄積により破壊されることがない。
【0013】
本発明に係る高圧タンクの製造方法は、樹脂製のライナーの外表面に未硬化の樹脂成分を含む繊維を巻き付けて未硬化繊維強化樹脂層を形成する工程を備える高圧タンクの製造方法において、未硬化繊維強化樹脂層の未硬化の樹脂成分が外側にブリードして形成された未硬化表面樹脂層に溶剤を塗布して浸透させる溶剤塗布工程と、未硬化繊維強化樹脂層の樹脂成分を硬化させると共に、溶剤を蒸発除去して表面樹脂層を発泡させ多孔化する加熱処理工程と、をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、未硬化表面樹脂層に溶剤を塗布する操作を追加するだけで、表面樹脂層を発泡させて表面多孔質樹脂層を形成することができる。ここで、溶剤としては、未硬化の樹脂成分に浸透して良好に混和(相溶化)し、加熱処理工程で容易に蒸発除去可能な溶剤を用いることが好ましい。また、タンクのバースト強度を維持しながら、ガス透過性を増加させて表面樹脂層(表面多孔質樹脂層)の破壊を防止するために、溶剤の使用量が適切な範囲に調整される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る高圧タンクによれば、表面樹脂層を多孔化する(即ち、表面多孔質樹脂層を形成する)ことで表面樹脂層の破壊を防止することができる。また、本発明に係る高圧タンクの製造方法によれば、従来の基本プロセスを変更することなく簡便な操作を付加するだけで、表面樹脂層の破壊を防止可能な高圧タンクを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る実施の形態である高圧タンクの構造を示す図である。
【図2】図1に示す高圧タンクの積層構造断面(A部)を拡大した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態である高圧タンクの製造手順を示すフローチャートである。
【図4】従来技術の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を用いて、本発明に係る高圧タンクの実施形態につき、以下詳細に説明する。以下では、高圧タンクは、燃料電池車両に搭載される高圧の水素ガスが充填されたタンクとして説明するが、その他の用途についても適用することができる。また、高圧タンクに充填可能なガスとしては、高圧の水素ガスに限定されない。
【0018】
図1及び図2を用いて高圧タンク10の構成を説明する。図1に示すように、高圧タンク10は、両端がドーム状に丸みを帯びた略円筒形状の水素ガス貯蔵容器である。高圧タンク10は、ガスバリア性を有するライナー11と、表面発泡樹脂層13を含む繊維強化樹脂層12と、を備える。また、高圧タンク10には、両端に開口部が形成され、一方の開口部に口金14が、他方の開口部にエンドボス16が、それぞれ取り付けられている。
【0019】
ライナー11は、高圧の水素ガスが充填される収容空間17を形成する樹脂製部材である。一般的に、ライナー11は、略円筒形状等に加工可能な熱可塑性樹脂から構成される。ライナー11を構成する樹脂は、加工性が良好であって、水素ガスを収容空間17内に保持する性能、即ち、ガスバリア性が良好な樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、及びエチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0020】
ライナー11は、上記のように、両端にドーム部を有する略円筒形状を有している。ライナー11の各ドーム部には、開口部がそれぞれ形成され、口金14及びエンドボス16がそれぞれの開口部に設けられる。詳しくは後述するように、繊維強化樹脂層12はライナー11の外表面に沿って形成されるので、ライナー11の形状が高圧タンク10の形状を決定することになる。
【0021】
口金14は、収容空間17に充填された水素ガスの取り出し口である。口金14には、例えば、バルブ15を設置することができ、バルブ15と嵌合する図示しない溝等が形成されている。口金14としては、アルミニウム合金等の金属材料を所定の形状に加工したものを用いることができる。
【0022】
エンドボス16は、口金14と反対側のドーム部に設けられた部材であって、繊維強化樹脂層12を形成する際にライナー11を回転させるシャフトを取り付けるための部材である。なお、シャフトは、エンドボス16だけでなく口金14にも取り付けられる。エンドボス16は、口金14と同様に、アルミニウム合金等の金属材料から構成できる。
【0023】
繊維強化樹脂層12は、ライナー11の外表面を被覆する層であって、ライナー11を補強して高圧タンク10の剛性や耐圧性等の機械的強度を向上させる機能を有する。一般的に、繊維強化樹脂層12は、熱硬化性樹脂及び強化繊維から構成される。ここで、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、及びエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、特に、機械的強度等の観点からエポキシ樹脂を用いることが好ましい。強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、及び炭素繊維等を用いることができ、特に、軽量性や機械的強度等の観点から炭素繊維を用いることが好ましい。
【0024】
一般的に、エポキシ樹脂とは、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの共重合体等であるプレポリマーと、ポリアミン等である硬化剤と、を混合して熱硬化することで得られる樹脂である。エポキシ樹脂は、未硬化状態では流動性があり、熱硬化後は強靭な架橋構造を形成してメチルエチルケトン(MEK)等の溶剤に不溶となる。
【0025】
繊維強化樹脂層12は、未硬化の樹脂(例えば、エポキシ樹脂)が含浸された繊維(例えば、炭素繊維)をライナー11の外表面に巻き付け、樹脂を硬化させることにより形成される。例えば、ライナー11の口金14とエンドボス16にシャフトを取り付けて回転自在に支持し、回転させながら樹脂含浸繊維をヘリカル巻きとフープ巻きとを併用して巻き付ける。そして、樹脂の硬化温度で加熱して樹脂成分を硬化させる。ヘリカル巻きとフープ巻きとを併用することで、高圧タンク10の軸方向(長手方向)及び径方向について耐圧性等の機械的強度を確保することができる。
【0026】
表面発泡樹脂層13は、繊維強化樹脂層12の未硬化のエポキシ樹脂が外側にブリードして形成された表面樹脂層を発泡させて多孔化した層である。即ち、表面発泡樹脂層13は、多孔質構造を有する表面樹脂層である。ここで、表面樹脂層(非多孔質構造)は、繊維強化樹脂層12の形成過程、即ち、樹脂含浸繊維の巻き付け時に余分な樹脂成分が外側に押し出されて形成される樹脂のみからなる層である。即ち、表面樹脂層及びこれを多孔化した表面発泡樹脂層13は、繊維強化樹脂層12の一部である。なお、繊維に含浸する樹脂量を適切に調整することで、表面発泡樹脂層13が適切な厚みに調整されてタンクの機械的強度を確保することができる。例えば、タンクの機械的強度を確保するためには、1〜2mmの表面樹脂層が形成される程度の樹脂成分が通常必要である。
【0027】
なお、表面発泡樹脂層13は、タンクに耐損傷性等を付与する保護層として機能する。例えば、エポキシ樹脂から構成される表面発泡樹脂層13は、強靭な樹脂であるから、耐損傷性や耐衝撃性等に優れた保護層として機能する。
【0028】
表面発泡樹脂層13は、上記のように、表面樹脂層を多孔化処理して得られた多孔質構造を有している。本実施形態において多孔質構造とは、多数の孔を含む構造であって、表面樹脂層を発泡させて多孔化した構造(発泡構造)である。一般的に、当該発泡構造は、独立気泡構造及び連続気泡構造の両方を含んでいる。ここで、独立気泡構造とは、孔が独立しており隣接する孔同士が繋がっていない構造であり、連続気泡構造とは、孔が繋がって連通している構造を意味する。なお、ガス透過性向上の観点から、連続気泡構造を増加させることが好ましい。
【0029】
図2に示すように、表面発泡樹脂層13は、ガス透過性が高いのでライナー11を透過した水素ガスを遮蔽することなく外部に放出することが可能である。したがって、表面発泡樹脂層13が内圧の上昇によって破壊されることはない。このような機能を有する表面発泡樹脂層13は、従来の高圧タンクの製造工程に、未硬化表面樹脂層に対して溶剤を塗布する工程を加えることによって形成することができる。なお、発泡構造の形態(独立気泡構造、連続気泡構造)や孔のサイズ等は、例えば、使用する溶剤の種類や量によって任意に調整することができる。
【0030】
溶剤としては、未硬化状態の樹脂との相溶性が良好であり、且つ後述の加熱処理工程における加熱温度よりも沸点が低いものが好ましい。繊維強化樹脂層12(表面発泡樹脂層13)を構成する樹脂がエポキシ樹脂である場合には、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、ジメチルアセトアミド、アセトン等を適用することができ、特に、MEKを用いることが好ましい。また、2種類以上の溶剤を混合して、相溶性や蒸発温度を調整することもできる。
【0031】
溶剤の使用量は、エポキシ樹脂、MEKを例に挙げると、未硬化表面樹脂層のエポキシ樹脂重量に対して、例えば、1%(1重量%)とすることができる。溶剤を1重量%程度塗布すると良好な多孔質構造を形成することができ、タンクのバースト強度が低下することなく表面発泡樹脂層13の破壊を防止することができる。なお、溶剤の使用量が多すぎると、溶剤が繊維強化樹脂層12まで浸透してタンクのバースト強度が低下する。一方、溶剤の量が少なすぎる場合は、ガス透過性を十分に向上させることができず表面発泡樹脂層13が破壊されるおそれがある。
【0032】
図3を用いて、上記構成を備える高圧タンク10の製造手順を以下説明する。図3は、高圧タンク10の製造手順を示すフローチャートであり、口金14及びエンドボス16を取り付けたライナー11に繊維強化樹脂層12を被覆する手順以降を示している。
【0033】
まず初めに、ライナー11の口金14とエンドボス16にシャフトを取り付けて回転自在に支持する。そして、ライナー11を回転させながら、ライナー11の外表面を被覆するように未硬化樹脂が含浸された繊維を巻き付ける(S10)。巻き付け手法は、略軸方向に沿って巻き付ける所謂ヘリカル巻き、及び略径方向に沿って巻き付ける所謂ループ巻きがあって、両者が交互に行なわれることが好ましい。この工程によって、ライナー11の外表面に未硬化繊維強化樹脂層が形成される。
【0034】
さらに、S10の繊維の巻き付け工程において、繊維に含浸された余分な未硬化樹脂が外側にブリードすることで、未硬化繊維強化樹脂層の外表面に未硬化樹脂のみからなる未硬化表面樹脂層が形成される。例えば、未硬化繊維強化樹脂層の厚みが2〜3mmであり、表面樹脂層の厚みが1〜2mmである。
【0035】
次に、MEK等の溶剤を未硬化表面樹脂層に塗布して浸透させる(S11)。具体的には、スプレー等の塗布器を用いて、未硬化表面樹脂層の全体に溶剤を均一に噴霧する。上記のように、溶剤としては、未硬化樹脂との混和性(相溶性)が良好で内部に浸透可能なものであって、後述の加熱処理工程の加熱温度よりも沸点の低い溶剤が好ましい。また、溶剤の使用量は、例えば、未硬化表面樹脂層を構成する樹脂重量に対して1重量%程度であることが好ましい。
【0036】
次に、未硬化樹脂を硬化させるための加熱処理を行う(S12)。当該加熱処理工程は、表面樹脂層を発泡させて多孔質構造を形成するための工程でもある。例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合、その硬化温度は140℃〜150℃である。未硬化表面樹脂層に塗布された溶剤は、140℃〜150℃の高温で蒸発除去されるので、溶剤が存在した部分が孔となって多孔質構造が得られる。このようにして、樹脂成分が硬化して繊維強化樹脂層12が形成されると共に、多孔質構造を有する表面発泡樹脂層13が形成される。
【0037】
以上のように、従来の製造プロセスに溶剤を塗布する操作を追加するだけで、樹脂製のライナー11と、ライナー11の外表面を被覆する繊維強化樹脂層12と、繊維強化樹脂層12の表面に形成される表面発泡樹脂層13と、を備える高圧タンク10が得られる。高圧タンク10は、表面樹脂層が発泡して多孔化した表面発泡樹脂層13であるためガス透過性が高く、ライナー11を透過したガスがライナー11の外部で遮断されることを抑制することができる。即ち、多孔質構造を有する表面樹脂層である表面発泡樹脂層13は、ライナー11を透過したガスの蓄積により破壊されることがない。
【0038】
表面発泡樹脂層13の多孔質構造は、塗布する溶剤量等を適切に調整することで良好な形態に調整可能である。即ち、高圧タンク10によれば、塗布する溶剤量等を適切に調整することで表面樹脂層のみを多孔化処理することができ、高いバースト強度を維持しながら表面樹脂層(表面発泡樹脂層13)のガス透過性を向上させて破壊を防止することができる。
【0039】
なお、タンクのバースト強度を低下させることなく、樹脂成分のブリードを抑えて繊維強化樹脂層を形成できた場合には、保護層として繊維強化樹脂層とは別の表面多孔質樹脂層を設けることもできる。その場合、当該表面多孔質樹脂層は、ガスの遮断による破壊を防止するために、上記の表面発泡樹脂層13と同様の多孔質構造を有する必要がある。
【符号の説明】
【0040】
10 高圧タンク、11 ライナー、12 繊維強化樹脂層、13 表面発泡樹脂層、14 口金、15 バルブ、16 エンドボス、17 収容空間、18 表面樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のライナーと、
ライナーの外表面を被覆する繊維強化樹脂層と、
繊維強化樹脂層の外側に設けられる表面樹脂層と、
を備える高圧タンクにおいて、
表面樹脂層に多孔化処理を施すことで、多孔質構造を有する表面多孔質樹脂層が形成された高圧タンク。
【請求項2】
樹脂製のライナーと、
ライナーの外表面を被覆すると共に、樹脂成分が外側にブリードして表面樹脂層が形成された繊維強化樹脂層と、
を備える高圧タンクにおいて、
表面樹脂層に多孔化処理を施すことで、多孔質構造を有する表面多孔質樹脂層が形成された高圧タンク。
【請求項3】
樹脂製のライナーの外表面に未硬化の樹脂成分を含む繊維を巻き付けて未硬化繊維強化樹脂層を形成する工程を備える高圧タンクの製造方法において、
未硬化繊維強化樹脂層の未硬化の樹脂成分が外側にブリードして形成された未硬化表面樹脂層に溶剤を塗布して浸透させる工程と、
未硬化繊維強化樹脂層の樹脂成分を硬化させると共に、溶剤を蒸発除去して表面樹脂層を発泡させ多孔化する加熱処理工程と、
をさらに備えることを特徴とする高圧タンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−144860(P2011−144860A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5247(P2010−5247)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】