説明

2軸加速度センサ

【課題】2方向の加速度を精度よく感知することができ、小型化及び製造コストの低減化を可能とする2軸加速度センサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、平板状の錘部、この錘部の側面を囲う枠部、上記錘部の側面と枠部の内面とを連結する1又は複数の梁部、及び上記梁部に付設される歪み感知手段を備える平板状の2軸加速度センサであって、上記梁部の厚さが幅より大きく、上記1又は複数の梁部が、厚さ方向と垂直な直交2方向の正負それぞれの加速度に対する撓みパターンの組合せが異なる少なくとも2つの変形領域を有し、上記歪み感知手段として、上記各変形領域の両端側かつその幅方向両側近傍に二対のピエゾ抵抗素子が配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁の変形によって2軸方向の加速度を検出する2軸加速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
錘部に働く慣性力により生じる梁の歪みを、ピエゾ抵抗素子などで感知することで加速度を検出する加速度センサが様々な分野で用いられている。
【0003】
このような加速度センサとしては、(1)錘部が直交する2つの梁によって支持される構造を有する3軸加速度センサ(特開平8−285883号公報参照)、(2)固定部と板状の錘とを接続する直線状の梁部を有し、梁部の厚みが錘の厚みと等しく、梁部の幅は錘より細い形状を有する片持梁式加速度センサ(特開平8−160066号公報参照)などが開発されている。
【0004】
上記(1)の3軸加速度センサは、2つの梁に対する直交方向の加速度も検知するものであるため、錘の厚さに比して、梁の厚さが薄い構造となっている。このため、センサ全体として厚さの異なる部分が生じるため、基板を貼り合わせて製造する必要があるなど、高コストとなる。また、梁の厚さが薄い構造となっているため、逆に2つの梁がなす平面方向への梁の歪みは生じにくく、この方向の加速度に対する感度は十分ではない。
【0005】
また、上記(2)の片持梁式加速度センサは、幅の狭い形状の梁部を有しているため、この幅方向の加速度に対する梁の歪みが大きく、この方向の感度を高めることができる。しかし、2軸の加速度を検出するためには、少なくとも2つの錘が必要であるため、センサが大型化し、また、製造コストも増大するという不都合を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−285883号公報
【特許文献2】特開平8−160066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような不都合に基づいてなされたものであり、2方向の加速度を精度よく感知することができ、小型化及び製造コストの低減化を可能とする2軸加速度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
平板状の錘部、
この錘部の側面を囲う枠部、
上記錘部の側面と枠部の内面とを連結する1又は複数の梁部、及び
上記梁部に付設される歪み感知手段
を備える平板状の2軸加速度センサであって、
上記梁部の厚さが幅より大きく、
上記1又は複数の梁部が、厚さ方向と垂直な直交2方向の正負それぞれの加速度に対する撓みパターンの組合せが異なる少なくとも2つの変形領域を有し、
上記歪み感知手段として、上記各変形領域の両端側かつその幅方向両側近傍に二対のピエゾ抵抗素子が配設されていることを特徴とする2軸加速度センサである。
【0009】
当該2軸加速度センサは、梁部が少なくとも2つの変形領域を有している。この少なくとも2つの変形領域は、厚さ方向に垂直な直交2方向の正負それぞれの加速度に対する撓みパターンを有し、この4種の加速度毎の撓みパターンの各変形領域間の組み合わせが、4つ全て異なるように設けられている。また、この各変形領域の四隅にピエゾ抵抗素子が配設されている。従って当該2軸加速度センサによれば、各変形領域の撓みパターンをピエゾ抵抗素子で検知することで、1つの錘部で2方向の加速度を検出することができるため、センサ自体を小型化することができ、また、製造コストを抑えることができる。
【0010】
また、当該2軸加速度センサは、梁部の幅がこの厚みより小さくなっているため、厚み方向の加速度に対して梁部が歪みにくい。従って、当該2軸加速度センサによれば、厚み方向の加速度の影響を抑え、この方向と垂直な平面における加速度を精度よく検出することができる。
【0011】
さらに当該2軸加速度センサは、梁部の厚みに対して上限を設けていないため、錘部、枠部及び梁部の厚さを全て等しくすることができる。この場合、当該2軸加速度センサを高価なSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることなく、1枚の基板から加工して成形することができ、製造コストを抑えることができるとともに構造がシンプルであるため梁部が破壊されにくい。さらには、このように1枚の基板から成形すると、工程中での破損が少なく、また、高精度な微細形状とすることで耐衝撃性を高めることができる。
【0012】
また、当該2軸加速度センサによれば、2対の抵抗素子を変形領域に対して対称に配置することもでき、この場合、撓みにより各抵抗素子に生じる抵抗差が同程度となるため、より感度を高めることができる。さらには、当該2軸加速度センサによれば、これらのピエゾ抵抗素子を梁部の片面側に全て配設することができるため、製造工程を単純化し、製造コストをより抑えることができる。
【0013】
上記1の梁部が、枠部の対向する内面間に架け渡されており、この1の梁部の中央に錘部が連結部を介して接続されているとよい。当該2軸加速度センサによれば、梁部をこのように構成することで、この1つの梁部が左右対称な2つの変形領域を有することができる。従って、当該2軸加速度センサにおいては、1の梁部に直交2方向に対応する2組の歪み感知手段を配置することができるため、構造がシンプルになり、製造コストをより抑えることができる。
【0014】
上記複数の梁部として、長さ方向が上記直交2方向のうちの一方を向くx方向梁部と他方を向くy方向梁部とを備え、これらのx方向梁部とy方向梁部とが垂直に連結されているとよい。上記梁部が、このように垂直に連結された構造を有することによって、この梁部を厚さ方向に垂直な直交2方向のそれぞれの加速度に対して撓み可能な構造とすることができる。また、当該2軸加速度センサによれば、梁部が垂直に連結された部分を有することで、厚さ方向に垂直な2方向のそれぞれの加速度に対して、大きな変位を持って撓むことができるため、検出感度を高めることができる。
【0015】
上記x方向梁部及びy方向梁部を複数備え、上記歪み感知手段が、複数のx方向梁部及びy方向梁部にそれぞれ付設されているとよい。当該2軸加速度センサによれば、このように各方向の加速度に対応する歪み感知手段を、複数の梁部に複数配置することで、加速度に応じた歪みに対する出力を平均化することができ、検出精度をより高めることができる。また、当該2軸加速度センサによれば、例えば、これら複数の歪み感知手段の出力の差が大きい場合にエラー表示をする機能を設けることなどにより、センサの故障等を容易に把握することができる。
【0016】
当該2軸加速度センサの平面形状が線対称又は点対称であるとよい。当該2軸加速度センサを線対称又は点対称の形状とすることで、錘部が正負の加速度に対し対称に移動し、それぞれの撓みパターンも対称性を有することができる。この際、歪み感知手段への入力パラメーターが正負の範囲で対称に変位する。従って、当該2軸加速度センサによれば、感知する2方向の加速度をより高精度で検出することができる。
【0017】
当該2軸加速度センサが、上記歪み感知手段として、4個のピエゾ抵抗素子を連結するホイートストンブリッジ回路を備えているとよい。当該2軸加速度センサによれば、それぞれの加速度に対する歪みモードに応じた圧変化を、ブリッジ回路を組んだ4つの抵抗素子で感受することで、精度をより高めることができる。
【0018】
ここで、「撓みパターン」とは、S字状などの点対称かつ非線対称な形状変化を有する撓み、弓状などの線対称かつ非線対称な形状変化を有する撓み、点対称かつ線対称な伸縮による撓み等の撓みの形状、その撓みの方向及び撓みそのものの有無などの撓みの形式をいう。なお、ある加速度に対して、他の変形領域において撓みが生じていれば、1の「変形領域」において撓みが生じていないという「撓みパターン」をとる場合もある。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の2軸加速度センサは、2方向の加速度を精度よく感知することができ、また小型化が可能で、製造コストも低減することができる。従って、本発明の2軸加速度センサは、各種家電製品、自動車部品、ロボット部品等に使用される各種加速度センサとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る2軸加速度センサの模式的斜視図であり、(b)はその平面図である。
【図2】(a)〜(d)は図1の2軸加速度センサの作動状態を示す模式的平面図である。
【図3】図1の2軸加速度センサの梁部及び歪み感知手段を示す模式的拡大図である。
【図4】図1の2軸加速度センサの歪み感知手段の回路図である。
【図5】(a)は図1の2軸加速度センサの製造方法の第1工程を示す模式的平面図であり、(b)はそのA−A線矢視断面図である。
【図6】(a)は図1の2軸加速度センサの製造方法の第2工程を示す模式的平面図であり、(b)はそのA−A線矢視断面図である。
【図7】(a)は図1の2軸加速度センサの製造方法の第3工程を示す模式的平面図であり、(b)はそのA−A線矢視断面図である。
【図8】(a)は図1の2軸加速度センサの製造方法の第4工程を示す模式的平面図であり、(b)はそのA−A線矢視断面図である。
【図9】(a)は図1の2軸加速度センサの製造方法の第5工程を示す模式的平面図であり、(b)はそのA−A線矢視断面図である。
【図10】(a)は図1の2軸加速度センサの製造方法の第6工程を示す模式的平面図であり、(b)はそのA−A線矢視断面図、(c)はそのB−B線矢視断面図である。
【図11】(a)は図1の2軸加速度センサの製造方法の第7工程を示す模式的平面図であり、(b)はそのA−A線矢視断面図、(c)はそのB−B線矢視断面図である。
【図12】(a)は本発明の第2実施形態に係る2軸加速度センサの模式的平面図であり、(b)及び(c)はその作動状態を示す模式的平面図である。
【図13】(a)は本発明の第3実施形態に係る2軸加速度センサの模式的平面図であり、(b)及び(c)はその作動状態を示す模式的平面図である。
【図14】第1〜3の実施形態とは異なる2軸加速度センサの模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の2軸加速度センサの実施の形態を詳説する。
【0022】
<第1実施形態>
図1の2軸加速度センサ1は、平面視で略正方形の平板状体である。この2軸加速度センサ1のサイズとしては特に限定されず、用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば縦横(X及びY方向)の長さとしては、0.3mm以上2mm以下程度であり、0.5mm以上1mm以下が好ましい。また、この2軸加速度センサ1の厚さ(Z方向の長さ)としては、例えば1.5mm以下であり、0.2mm以上1mm以下が好ましい。
【0023】
当該2軸加速度センサ1は、平板状の錘部2、この錘部2の側面を囲う枠部3、上記錘部2の側面と枠部3の内面とを連結する梁部4、及び上記梁部4に付設される歪み感知手段6を備えている。この錘部2、枠部3及び梁部4は、後に製造方法の説明にて詳述するように、枠部3の外枠の大きさを有する均質な平板(基板)から、この平板に厚さ方向に貫通する溝部5を設けることによって形成されているものである。この溝部5の幅は、5μm〜50μm程度である。
【0024】
錘部2は、平面視で略正方形の板状体である。この錘部2が、厚さ方向と垂直な方向の加速度に対して移動する部分となる。この錘部2のサイズとしては、加速度に対して移動可能な質量を有すべく、枠部3のサイズ等と比して、一定の体積を有していれば特に限定されないが、例えば縦横(X方向及びY方向)の長さとして0.4mm以上0.8mm以下が好ましい。また、この錘部2の厚さ(Z方向の長さ)は、上述したこの2軸加速度センサ1自体の厚さとなっている。
【0025】
枠部3は、錘部2の側面を囲う4枚の帯状板材から形成されており、扁平な四角筒状に形成されている。この枠部3を形成する各帯状板材の幅としては、50μm〜200μm程度である。また、枠部3の厚さ(Z方向の長さ)は、錘部2の厚さと等しい。
【0026】
梁部4は、枠部3の対向する内面間、具体的には対向配設される一対の帯状板材の一端部近傍に、X軸方向に架け渡されている。この梁部4の中央の一側壁に、錘部2が連結部7を介して接続されている。
【0027】
梁部4の幅(Y方向の長さ)はこの厚み(Z方向の長さ)より小さく形成されており、具体的な幅は、2μm以上100μm以下程度であり、5μm以上20μm以下が好ましい。なお、梁部4の厚さは、この2軸加速度センサ1自体の厚さと等しく、例えば1.5mm以下であり、0.2mm以上1mm以下が好ましい。
【0028】
連結部7の幅(X方向の長さ)は、特に限定されないが、この厚みより小さく形成されていることが好ましい。なお、連結部7の厚さ(Z方向の長さ)は、この2軸加速度センサ1自体の厚さと等しく、例えば1.5mm以下であり、0.2mm以上1mm以下が好ましい。また、連結部7は、溝部5によって分離された梁部4と錘部2との連結部分であるので、この連結部7の長さは、溝部5の幅となっている。
【0029】
この2軸加速度センサ1は、2つの変形領域D及びDを有する。この2つの変形領域D及びDは、厚さ方向(Z方向)に垂直な直交2方向(X及びY方向)の正負それぞれの加速度(αx−、αx+、αyー及びαy+)に対する撓みパターンを有する。この加速度毎の撓みパターンの、2つの変形領域D及びD間の組み合わせは、4つ全て異なるように設けられている。以下、この撓みパターン及びその組み合わせについて、図2を参照に説明する。
【0030】
図2(a)は、2軸加速度センサ1が、厚さ方向に垂直な方向でありかつ梁部4の長手方向である方向(X軸方向)の負方向(図2における左方向)へ加速度(αx−)が生じた際の、錘部2の移動及び梁部4の撓みパターンを表した模式図である。図2(b)は、図2(a)とは逆方向へ加速度(αx+)が生じた際の、錘部2の移動及び梁部4の撓みパターンを表した模式図である。図2(c)は、2軸加速度センサ1が、厚さ方向及び上記X軸方向に垂直な方向である方向(Y軸方向)の負方向(図2における下方向)へ加速度(αy−)が生じた際の、錘部2の移動及び梁部4の撓みパターンを表した模式図である。図2(d)は、図2(c)とは逆方向へ加速度(αy+)が生じた際の、錘部2の移動及び梁部4の撓みパターンを表した模式図である。
【0031】
図2(a)に示されるように、X軸に対するマイナス方向(図2(a)における左方向)に加速度(αx−)が生じると、錘部2は慣性力によって加速度の方向と反対の方向、すなわち、X軸に対するプラス方向(図2(a)における右側方向)に重心が移動する。この際、梁部4においては、連結部7が延出する中央部分の側面が、錘部2の移動と同方向を向くように撓む。梁部4の両端は、枠部3の内面によって固定されているため、梁部4は、連結部7を境にした2つの変形領域(図2における左側の変形領域をD、右側の変形領域をDとする。)が共にS字状に撓むこととなる。この際、変形領域D及びDは同じ方向のS字状撓みをとっている。すなわち、どちらの変形領域も、図2における左側かつ下側部分(d11及びd21)及び右側かつ上側部分(d13及びd23)が圧縮され、逆に右側かつ下側部分(d12及びd22)及び左側かつ上側部分(d14及びd24)が伸長している。なお、2軸加速度センサ1におけるこの方向のS字状の撓みパターンを「S+」と略する。
【0032】
図2(b)に示されるように、X軸に対する+方向(図2(a)における左方向)に加速度(αx+)が生じると、2つの変形領域D及びDは、共に図2(a)とは逆方向のS字状の撓みパターン「S−」をとる。具体的には、どちらの変形領域も、図2における左側かつ下側部分(d11及びd21)及び右側かつ上側部分(d13及びd23)が伸長し、逆に右側かつ下側部分(d12及びd22)及び左側かつ上側部分(d14及びd24)が圧縮されている。
【0033】
図2(c)に示されるように、Y軸に対するマイナス方向(図2(c)における下方向)に加速度(αy−)が生じると、錘部2は慣性力によって加速度の方向と反対の方向、すなわち、Y軸に対するプラス方向(図2(c)における上側方向)に重心が移動する。この際、梁部4において、中央部分の側面が、連結部7を介して錘部2の移動によって押されて、上側に撓む。梁部4の両端は、枠部3の内面によって固定されているため、梁部4は、全体として弓状に撓む、すなわち、2つの変形領域D及びDは連結部7を対称軸として線対称に共にS字状に撓むこととなる。この際、変形領域Dは、「S−」の撓みパターン(d11及びd13が伸長し、d12及びd14が圧縮されている。)をとり、変形領域Dは、「S+」の撓みパターン(d21及びd23が圧縮され、d22及びd24が伸長している。)をとる。
【0034】
また、図2(d)に示されるように、Y軸に対して逆向き、すなわちプラス方向(図2(d)における上方向)に加速度(αy+)が生じると、図2(c)とは逆に、変形領域Dは、「S+」の撓みパターン(d11及びd13が圧縮され、d12及びd14が伸長している。)をとり、変形領域Dは、「S−」の撓みパターン(d21及びd23が伸長し、d22及びd24が圧縮されている。)をとる。
【0035】
以上の、2軸加速度センサ1の撓みパターンの組み合わせをまとめると、以下の表1のとおりである。
【0036】
【表1】

【0037】
このように、当該2軸加速度センサ1によれば、4つの加速度(αx−、αx+、αy−及びαy+)毎の撓みパターンの、2つの変形領域D及びD間の4つの組み合わせが全て異なっている。
【0038】
歪み感知手段6としては、2つの変形領域D及びDそれぞれの両端側かつその幅方向両側近傍に二対の、計8つのピエゾ抵抗素子が配設されている。
【0039】
X軸方向の加速度を感知する歪み感知手段として、図1(b)にて図示するように、具体的に4つのピエゾ抵抗素子6x、6x、6x及び6xを有し、この4つの抵抗素子がホイートストンブリッジ回路を構成している。ピエゾ抵抗素子6xは、変形領域Dにおけるd11部分に、ピエゾ抵抗素子6xは、変形領域Dにおけるd12部分に、ピエゾ抵抗素子6xは、変形領域Dにおけるd21部分に、ピエゾ抵抗素子6xは、変形領域Dにおけるd22部分に配設されている。
【0040】
Y軸方向の加速度を感知する歪み感知手段として、図1(b)にて図示するように、具体的に4つのピエゾ抵抗素子6y、6y、6y及び6yを有し、この4つの抵抗素子がホイートストンブリッジ回路を構成している。ピエゾ抵抗素子6yは、変形領域Dにおけるd14部分に、ピエゾ抵抗素子6yは、変形領域Dにおけるd13部分に、ピエゾ抵抗素子6yは、変形領域Dにおけるd23部分に、ピエゾ抵抗素子6yは、変形領域Dにおけるd24部分に配設されている。
【0041】
なお、これらのいずれのピエゾ抵抗素子も、梁部4表面には露出しておらず、パッシベーション層によって被覆されている。
【0042】
上述のように配設された各ピエゾ抵抗素子6x〜6xにおいては、X軸におけるマイナス方向の加速度(αx−)が生じた際には、6x及び6xには圧縮応力が生じ、6x及び6xには引っ張り応力が生じる(図2(a)参照)。逆に、X軸におけるプラス方向の加速度(αx+)が生じた際には、6x及び6xには引っ張り応力が生じ、6x及び6xには圧縮応力が生じる(図2(b)参照)。
【0043】
また、上述のように配設された各ピエゾ抵抗素子6y〜6yにおいては、Y軸におけるマイナス方向の加速度(αy−)が生じた際には、6y及び6yには圧縮応力が生じ、6y及び6yには引っ張り応力が生じる(図2(c)参照)。逆に、y軸におけるプラス方向の加速度(αy+)が生じた際には、6y及び6yには引っ張り応力が生じ、6y及び6yには圧縮応力が生じる(図2(d)参照)。
【0044】
歪み感知手段6のそれぞれのピエゾ抵抗素子6x〜6x及び6y〜6yは、図3に示されるように、低抵抗層12及び配線層20によって配線され、ホイートストンブリッジ回路を構成する。当該2軸加速度センサ1によれば、X軸方向及びY軸方向いずれの加速度に対しても、各ピエゾ抵抗素子の電気抵抗の変化が図4に示すホイートストンブリッジ回路の電圧の変化として検出される。このため、当該2軸加速度センサ1によればそれぞれの加速度に対する歪みモードに応じた圧変化を、ブリッジ回路を組んだ4つの抵抗素子で感受することで、精度をより高めることができる。また、4つの抵抗素子を撓みパターンに対して対称に配置することで、歪みにより生じる抵抗差を同程度とすることができ、より感度を高めることができる。なお、図4において、Rは6x又は6yを表し、Rは6x又は6yを表し、Rは6x又は6yを表し、Rは6x又は6yを表している。
【0045】
このように当該2軸加速度センサ1によれば、梁部4が2つの変形領域D及びDを有している。この2つの変形領域D及びDは、上述のように厚さ方向(Z方向)に垂直な直交2方向(X及びY方向)の正負それぞれの加速度に対する撓みパターンを有し、表1のとおり加速度毎の撓みパターンの各変形領域間の組み合わせが、4つ全て異なるように設けられている。また、上述のようにこの変形領域D及びDの四隅にピエゾ抵抗素子が配設されている。従って当該2軸加速度センサによれば、各変形領域の撓みパターンを各ピエゾ抵抗素子で検知することで、1つの錘部で2方向の加速度を検出することができるため、センサ自体を小型化することができ、また、製造コストを抑えることができる。
【0046】
また、当該2軸加速度センサ1は、上述のように梁部4の幅がこの厚みより小さくなっていることから、厚み方向(Z軸方向)の加速度に対して梁部4が歪みにくい。従って、当該2軸加速度センサ1によれば、厚み方向の加速度の影響を抑え、この方向と垂直な平面(X軸及びY軸を含む平面)における加速度を精度よく検出することができる。
【0047】
さらには、当該2軸加速度センサ1は、錘部2、枠部3及び梁部4の厚さを全て等しく設けているため、高価なSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることなく、1枚の基板から加工して成形することができ、製造コストを抑えることができる。また、当該2軸加速度センサ1は、構造がシンプルであるため梁部4が破壊されにくい。さらには、1枚の基板から成形すると、工程中での破損が少なく、また、高精度な微細形状とすることもでき、この場合、耐衝撃性を高めることができる。
【0048】
また、当該2軸加速度センサ1は、上述のように、梁部4が枠部3の対向する内面間に架け渡されており、この梁部4の中央の一側面に錘部2が連結部7を介して接続されている構造をとっている。当該2軸加速度センサ1によれば、梁部4をこのように構成することでこの1つの梁部4が左右対称な2つの変形領域D及びDを有することができる。従って当該2軸加速度センサ1においては、1の梁部4に直交2方向に対応する2組の歪み感知手段を配置することができるため、構造がシンプルになり、製造コストをより抑えることができる。また、当該2軸加速度センサ1は、各抵抗素子を変形領域D及びDに対して対称に配置しているため、撓みにより各抵抗素子に生じる抵抗差が同程度となって、より感度を高めることができる。
【0049】
また、当該2軸加速度センサ1は、上述のとおり線対称形状を有している。このため、当該2軸加速度センサによれば、錘部2が正負の加速度に対し対称に移動し、それぞれの歪みモードも対称性を有することができ、歪み感知手段6への入力パラメーターが正負の範囲で対称に変位する。従って、当該2軸加速度センサ1によれば、感知する2軸に対して正負対称性高く、より高精度で加速度を検出することができる。
【0050】
さらには、当該2軸加速度センサ1によれば、歪み感知手段を構成する各ピエゾ抵抗素子を梁部4の片面側に全て配設することもでき、製造工程を単純化し、コストをより抑えることができる。また、当該2軸加速度センサ1によれば、これらのピエゾ抵抗素子を備えるホイートストンブリッジ回路を、以下の製造方法で詳述するように、1層で配線することができる。従って、当該2軸加速度センサ1によれば、製造工程を単純化し、製造コストをより抑えることができる。
【0051】
<製造方法>
当該2軸加速度センサ1の製造方法としては特に限定されず、公知の方法で製造することができるが、一例として、以下の第1〜第7工程を有するフォトレジストによる製造方法を示す。
【0052】
(第1工程)
図5に示されるように、シリコン製の基板11上に、第1フォトレジスト13を形成する。このシリコン製の基板11の厚さとしては、例えば、625μmのものを用いることができる。この第1フォトレジスト13で形成されるパターンをマスクとして、上記基板11に不純物をイオン注入し、低抵抗層12を形成する。この低抵抗層12は、ピエゾ抵抗素子を電気的に接続する配線となる。この不純物イオンとしては、例えば、ホウ素イオンを2×1020/cmの濃度でイオン注入する。次いで、第1フォトレジスト13をマスクとして、上記基板11をエッチングし、アライメントマークを形成する。その後、第1フォトレジスト13を除去した後、ラピッドサーマルアニール処理等により、注入した不純物イオンを活性化させる。
【0053】
(第2工程)
図6に示されるように、上記処理の後、基板11上に第2フォトレジスト15からなるパターンを形成する。上記第2フォトレジスト15としては、例えば、厚さ1μmのポジ型フォトレジストを用い、塗布、プリベーク後、マスクを用いて露光した後、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)等の有機アルカリ現像液を用いて現像する。なお、ポジ型フォトレジストを用いる代わりに、ネガ型フォトレジストを用いても良い。
【0054】
次いで、上記第2フォトレジスト15をマスクとして、上記基板11内に不純物をイオン注入し、ピエゾ抵抗層17を形成する。このイオン注入としては、例えば、ホウ素イオンを2×1018/cmの濃度で150KeVの加速電圧で行うことができる。イオン注入後、上記第2フォトレジスト15を除去し、ラピッドサーマルアニール処理等により注入した不純物イオンを活性化させる。
【0055】
(第3工程)
図7に示されるように、次いで、基板11上に、絶縁層14を形成する。この絶縁層14の厚さは、例えば、1μmとして設計する。また、絶縁層14は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりSiOやSixNyを用いて成膜する。また、LP(Low Pressure)−CVDによりSiOxNyを用いて成膜しても良い。
【0056】
(第4工程)
次いで、上記記絶縁層14上に第3フォトレジストからなるコンタクトホール用パターンを形成する。この第3フォトレジストからなるコンタクトホール用パターンをマスクとして、上記絶縁層14をエッチングする。このエッチング方法としては、例えば、CHFをエッチングガスとして用いた反応性イオンエッチング法にて、SiOから形成されている上記絶縁層14をエッチングし、上記基板11を露出させ、第3フォトレジストを除去することで、コンタクトホール19を完成させることができる(図8参照)。
【0057】
(第5工程)
次いで、上記絶縁層14及び基板11上に配線層20を成膜する。この配線層20としては、例えば、厚さ0.6μmのアルミニウムを用いることができる。なお、アルミニウムを成膜する前に、例えば、密着層として、厚さ300Aのチタンや、バリアメタルとして、TiNxを成膜しても良い。また、アルミニウムのかわりにAlSi、AlSiCuなどを用いても良い。この配線層20の成膜後、第4フォトレジストからなる配線層用パターンを設け、これをマスクとして、上記配線層20をエッチングする。このエッチング方法としては、例えば、Clガスを用いた反応性イオンエッチング法にて、アルミニウムからなる配線層20をエッチングすることができる。なお、反応性イオンエッチング法のかわりに、リン酸、硝酸混合液からなるウェットエッチングを用いても良い。但し、絶縁層14がSixNyから形成されている場合には一緒にエッチングされてしまうので、リン酸、硝酸混合液以外を用いることが好ましい。次いで、上記第4フォトレジストからなるパターンを除去することで、配線層20が形成される(図9参照)。このパターン除去には、例えば、アセトン、NMP(N−メチルジピロリドン)、アミン系剥離液、Oアッシング等を用いることができる。
【0058】
(第6工程)
次いで、図10に示されるように、上記絶縁層14及び配線層20上にパッシベーション層21を成膜する。このパッシベーション層21としては、例えば、厚さ0.5μmのSixNyを用いることができる。なお、SixNyを用いるかわりにSiO、PSG、BSG、BPSG等を用いて成膜しても良い。
【0059】
次いで、このパッシベーション層21上に、第5フォトレジストパターンを形成後、この第5フォトレジストパターンをマスクとして、上記パッシベーション層21をエッチングし、パッド電極開口23を形成し、パッド電極22を露出させる。このエッチング方法としては、例えば、CHFをエッチングガスとして用いた反応性イオンエッチング法にて、Siからなる上記パッシベーション層21をエッチングすることができる。この第5フォトレジストパターンは、上述と同様な方法等により除去される。
【0060】
(第7工程)
図11にて示されるように、次いで、表面に第6フォトレジスト24を形成する。この第6フォトレジスト24をマスクにして、上記パッシベーション層21及び絶縁層14をエッチングする。このパッシベーション層21及び絶縁層14のエッチングとしては、例えば、CHFガスを用いた反応性イオンエッチングを用いることができる。次いで、上記第6フォトレジスト24、パッシベーション層21及び絶縁層14をマスクにして、基板11をエッチング(DeepRIE)することで、溝部5を形成する。この基板11のエッチング方法としては、例えば、パッシベーション(Cプラズマ)とエッチング(SFプラズマ)とのステップを短く交互に繰り返す、いわゆるボッシュプロセスで行うことができる。基板11のエッチング終了後、上記第6フォトレジストパターン24を除去することで、2軸加速度センサ1を得ることができる。
【0061】
なお、第6フォトレジスト24を除去した後、上記パッシベーション層21及び絶縁層14をマスクとして基板11をエッチングしても良い。
【0062】
この製造方法によれば、当該2軸加速度センサの形状をエッチングによる微細加工で形成することができ、製造工程での破損が少ないため、歩留まりを向上させ、製造コストを抑えることができる。また、この製造方法によれば、エッチングにより溝部を微細な構造とすることができ、耐衝撃性に優れた構造を有する2軸加速度センサを容易に形成することができる。さらには、この製造方法によれば、複数層を有する高価なSOI基板等を用いず、単層のシリコン基板から形成することができるため、製造コストを抑えることができる。
【0063】
<第2実施形態>
図12の2軸加速度センサ31も、平面視で略正方形の平板状体である。この2軸加速度センサ31は、平面視で略正方形を有する平板状体であるの錘部32、この錘部32の側面を囲う枠部33、上記錘部32の側面と枠部33の内面とを連結する計4本の梁部34、及び上記梁部34に付設される歪み感知手段36を備えている。
【0064】
この2軸加速度センサ31は、4本の梁部34として、枠部33の内面からX方向に延出する2本のx方向梁部34xと、錘部32の側面からY方向に延出する2本のy方向梁部34yとを備え、これらの2対のx方向梁部とy方向梁部とは両延出方向先端が垂直に連結されている。すなわち、x方向梁部とy方向梁部とでL字状を形成し、錘部32は計4本の梁部34からなる2組のL字状構造体で支えられている。
【0065】
当該2軸加速度センサ31によれば、上記各2本の梁部34が、このように垂直に連結された構造を有することによって、この梁部を厚さ方向に垂直な直交2方向のそれぞれの加速度に対して撓み可能な構造とすることができる。また、当該2軸加速度センサ31によれば、梁部34が垂直に連結された部分を有することで、厚さ方向に垂直な2方向のそれぞれの加速度に対して、大きな変位を持って撓むことができるため、検出感度を高めることができる。
【0066】
この2軸加速度センサ31においては、各y方向梁部34y及びx方向梁部34xが、それぞれ変形領域D及びDとなる。また、y及びx方向梁部はそれぞれ2本存在するため、各変形領域D及びDも2領域ずつ存在している。この2軸加速度センサ31における各変形領域の撓みパターン及びその組み合わせについて、図12(b)及び(c)を参照に説明する。
【0067】
図12(b)に示されるように、X軸に対するマイナス方向(図12(b)における左方向)に加速度(αx−)が生じると、錘部32は、X軸に対するプラス方向(図12(b)における右方向)に重心が移動する。この際、2本のy方向梁部34y、すなわち変形領域Dにおいては、それぞれS字状に撓むこととなる(2軸加速度センサ31におけるこの撓みパターンを「S+」とする。)。一方、X軸に対して上述と逆方向に加速度(αx+)が生じると、2本のy方向梁部34y、すなわち変形領域Dは、それぞれ上述と逆向きのS字状に撓むこととなる(2軸加速度センサ31におけるこの撓みパターンを「S−」とする。)。なお、X軸方向の加速度に対しては、x方向梁部34x、すなわち変形領域Dは、撓みが生じない(この撓みパターンを「0」とする。)。
【0068】
また、図12(c)に示されるように、Y軸に対するマイナス方向(図12(c)における下方向)に加速度(αy−)が生じると、錘部32は、Y軸に対するプラス方向(図12(c)における上方向)に重心が移動する。この際、2本のx方向梁部34x、すなわち変形領域Dにおいては、それぞれS字状に歪むこととなる(2軸加速度センサ31におけるこの撓みパターンを「S’+」とする。)。一方、Y軸に対して上述と逆方向に加速度(αy+)が生じると、2本のx方向梁部34x、すなわち変形領域Dは、それぞれ上述と逆向きのS字状に撓むこととなる(2軸加速度センサ31におけるこの撓みパターンを「S’−」とする。)。なお、Y軸方向の加速度に対しては、y方向梁部34y、すなわち変形領域Dは、撓みが生じない。
【0069】
以上の、2軸加速度センサ31の撓みパターンの組み合わせをまとめると、以下の表2のとおりである。
【0070】
【表2】

【0071】
このように、当該2軸加速度センサ31も、4つの加速度(αx−、αx+、αy−及びαy+)毎の撓みパターンの、2つの変形領域D及びD間の4つの組み合わせが全て異なっている。
【0072】
歪み感知手段36としては、それぞれ2領域の変形領域D及びDそれぞれの両端側かつその幅方向両側近傍に、計16つのピエゾ抵抗素子が配設されている。これらのピエゾ抵抗素子は、各梁部34毎に配設される4個の抵抗素子毎に4組のホイートストンブリッジ回路を形成する。
【0073】
すなわち、2本のx方向梁部34xに配設された2組のホイートストンブリッジ回路からなる2組の歪み感知手段36がY方向の加速度を感知することができる。一方、2本のy方向梁部34yに配設された2組のホイートストンブリッジ回路からなる2組の歪み感知手段36がX方向の加速度を感知することができる。
【0074】
当該2軸加速度センサ31によれば、このように各方向(X方向及びY方向)の加速度に対応する歪み感知手段36を、複数の梁部に複数配置することで、加速度に応じた歪みに対する出力を平均化することができ、検出精度をより高めることができる。また、当該2軸加速度センサによれば、例えば、これら複数の歪み感知手段36の出力の差が大きい場合にエラー表示をする機能を設けることなどにより、センサの故障等を容易に把握することができる。
【0075】
また、当該2軸加速度センサ31は、点対称形状を有しており、錘部32が正負の加速度に対し対称に移動し、それぞれの撓みパターンも対称性を有することができる。従って当該2軸加速度センサ31によれば、感知する2方向の加速度をより高精度で検出することができる。
【0076】
<第3実施形態>
図13の2軸加速度センサ41も、平面視で略正方形の平板状体である。この2軸加速度センサ41は、平板状体の錘部42、この錘部42の側面を囲う枠部43、上記錘部42の側面と枠部43の内面とを連結する2本の梁部44、及び上記梁部44に付設される歪み感知手段46を備えている。
【0077】
この2軸加速度センサ41は、2本の梁部44として、枠部43の内面における対面する2面間をx方向に架け渡しているx方向梁部44xと、このx方向梁部44xの中央から延出し、錘部42の一側面の中央に接続されるy方向梁部44yとを備え、これら2本の梁部44は垂直に連結されている。
【0078】
当該2軸加速度センサ41も、上記2本の梁部44が、このように垂直に連結された構造を有することによって、この梁部を厚さ方向に垂直な直交2方向(X及びY方向)のそれぞれの加速度に対して撓み可能な構造とすることができる。また、当該2軸加速度センサ41によれば、2本の梁部44が垂直に連結された部分を有することで、厚さ方向に垂直な2方向のそれぞれの加速度に対して、大きな変位を持って歪むことができるため、検出感度を高めることができる。
【0079】
この2軸加速度センサ41においては、y方向梁部44y及びx方向梁部44xが、それぞれ変形領域D及びDとなる。この2軸加速度センサ41における各変形領域の撓みパターン及びその組み合わせについて、図13(b)及び(c)を参照に説明する。
【0080】
図13(b)に示されるように、X軸に対するマイナス方向(図13(b)における左方向)に加速度(αx−)が生じると、錘部42は、X軸に対するプラス方向(図13(b)における右方向)に重心が移動する。この際、y方向梁部44y、すなわち変形領域Dにおいては、S字状に撓むこととなる(2軸加速度センサ41におけるこの撓みパターンを「S+」とする。)。一方、X軸に対して上述と逆方向に加速度(αx+)が生じると、y方向梁部44y、すなわち変形領域Dは、逆向きのS字状に撓むこととなる(2軸加速度センサ41におけるこの撓みパターンを「S−」とする。)。なお、X軸方向の加速度に対しては、x方向梁部44x、すなわち変形領域Dは、撓みが生じない(この撓みパターンを「0」とする。)。
【0081】
また、図13(c)に示されるように、Y軸に対するマイナス方向(図13(c)における下方向)に加速度(αy−)が生じると、錘部42は、Y軸に対するプラス方向(図13(c)における上方向)に重心が移動する。この際、x方向梁部44x、すなわち変形領域Dにおいては、上に沿った弓状に撓むこととなる(2軸加速度センサ41におけるこの撓みパターンを「弓+」とする。)。一方、Y軸に対して上述と逆方向に加速度(αy+)が生じると、x方向梁部44x、すなわち変形領域Dは、下に沿った弓状に撓むこととなる(2軸加速度センサ41におけるこの撓みパターンを「弓−」とする。)。なお、Y軸方向の加速度に対しては、y方向梁部44y、すなわち変形領域Dは、撓みが生じない。
【0082】
以上の、2軸加速度センサ41の撓みパターンの組み合わせをまとめると、以下の表3のとおりである。
【0083】
【表3】

【0084】
このように、当該2軸加速度センサ41も、4つの加速度(αx−、αx+、αy−及びαy+)毎の撓みパターンの、2つの変形領域D及びD間の4つの組み合わせが全て異なっている。
【0085】
歪み感知手段46としては、変形領域D及びDそれぞれの両端側かつその幅方向両側近傍に、計8つのピエゾ抵抗素子が配設されている。これらのピエゾ抵抗素子は、x方向梁部44x及びy方向梁部44yにそれぞれ配設される4つの抵抗素子毎に2組のホイートストンブリッジ回路を形成している。すなわち、x方向梁部44xに配設されたホイートストンブリッジ回路からなる歪み感知手段46がY方向の加速度を感知することができる。一方、y方向梁部44yに配設されたホイートストンブリッジ回路からなる歪み感知手段46がX方向の加速度を感知することができる。
【0086】
<その他の実施形態>
本発明の2軸加速度センサは、上述の各実施形態に限定されるものではなく、例えば、図14の2軸加速度センサ51のように、2本の梁部54が屈曲している部分を有していなくともよい。この2軸加速度センサ51においては、X軸方向及びY軸方向の加速度に対して、2本の梁部54に対応する2つの変形領域D及びDが、図1の2軸加速度センサ1の梁部4の変形領域D及びDと同様の撓みパターンをとることができる。よって、2軸加速度センサ51においても、梁部54の適当な位置に2つの歪み感知手段を配置することによって、2方向の加速度を感知することができる。
【0087】
また、2軸加速度センサが備える梁部は曲線状であってもよい。梁部が曲線状であっても、特定の少なくとも2つの変形領域を有すれば、2軸加速度センサは、この2方向の加速度を感知することができる。
【0088】
また、本発明の2軸加速度センサは、均質な素材から形成されていなくとも、例えば、異なる部材からなる錘部、枠部及び梁部を接合することによって形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明の2軸加速度センサは、2方向の加速度を精度よく感知することができ、また、小型化が可能で、製造コストも低減することができる。従って、本発明の2軸加速度センサは、各種家電製品、自動車部品、ロボット部品等に使用される各種加速度センサとして用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
1、31、41、51 2軸加速度センサ
2、32、42 錘部
3、33、43 枠部
4、34、44、54 梁部
34x、44x x方向梁部
34y、44y y方向梁部
5 溝部
6、36、46 歪み感知手段
6x、6x、6x、6x、6y、6y、6y、6y ピエゾ抵抗素子
7 連結部
11 基板
12 低抵抗層
13 第1フォトレジスト
14 絶縁層
15 第2フォトレジスト
17 ピエゾ抵抗層
19 コンタクトホール
20 配線層
21 パッシベーション層
22 パッド電極
23 パッド電極開口
24 第6フォトレジスト
、D、D、D、D、D、D、D 変形領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の錘部、
この錘部の側面を囲う枠部、
上記錘部の側面と枠部の内面とを連結する1又は複数の梁部、及び
上記梁部に付設される歪み感知手段
を備える平板状の2軸加速度センサであって、
上記梁部の厚さが幅より大きく、
上記1又は複数の梁部が、厚さ方向と垂直な直交2方向の正負それぞれの加速度に対する撓みパターンの組合せが異なる少なくとも2つの変形領域を有し、
上記歪み感知手段として、上記各変形領域の両端側かつその幅方向両側近傍に二対のピエゾ抵抗素子が配設されていることを特徴とする2軸加速度センサ。
【請求項2】
上記1の梁部が、枠部の対向する内面間に架け渡されており、
この1の梁部の中央に錘部が連結部を介して接続されている請求項1に記載の2軸加速度センサ。
【請求項3】
上記複数の梁部として、長さ方向が上記直交2方向のうちの一方を向くx方向梁部と他方を向くy方向梁部とを備え、
これらのx方向梁部とy方向梁部とが垂直に連結されている請求項1に記載の2軸加速度センサ。
【請求項4】
上記x方向梁部及びy方向梁部を複数備え、
上記歪み感知手段が、複数のx方向梁部及びy方向梁部にそれぞれ付設されている請求項3に記載の2軸加速度センサ。
【請求項5】
平面形状が線対称又は点対称である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の2軸加速度センサ。
【請求項6】
上記歪み感知手段として、4個のピエゾ抵抗素子を連結するホイートストンブリッジ回路を備えている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の2軸加速度センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−13562(P2012−13562A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150854(P2010−150854)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】