説明

4自由度拘束ブレーキ装置及びパラレルリンク型ロボット

【課題】4自由度を拘束できるブレーキ装置を得る。該ブレーキ装置を用いブレーキ装置の数が少ないパラレルリンク型ロボットを得る。
【解決手段】拘束対象部材1を球状の中間部材2の中心穴に貫通させる。中間部材2は複数(3つ)に分割されている。中間部材2の外周には、ブレーキ動作部3a、3bが配設されている。磁気コア4a、4bに電流が流れると、ブレーキ動作部3a、3bは中間部材2から離れる(図4(a)参照)。拘束対象部材1も回転、軸方向への移動ができる。電流が絶たれた状態では、バネ7により、ブレーキ動作部3a、3bが中間部材2を圧接し、中間部材2が拘束対象部材1を圧接し、拘束対象部材1は任意の方向への揺動と、軸方向への移動及び軸中心線回りの回転の4自由度が拘束される(図4(b)参照)。パラレルリンクン型ロボットにこのブレーキ装置を用いることで、ブレーキ装置数を減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー源が絶たれたときブレーキが作動する負作動型のブレーキ装置であって、4自由度を拘束制動できるブレーキ装置に関する。及び、該4自由度拘束ブレーキ装置を使用したパラレルリンク型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ装置は、被対称物に対してブレーキ力を作動させて、その被対象物を拘束し、その移動を減速、停止させ、被対象物を固定させるものとして使用される。通常、回転等の1方向に移動している被対象物に対して作動させて、その移動を減速、停止、保持させる用途に使用されている。モータ等の回転型アクチュエータでその可動部が駆動される機械等にあっては、該アクチュエータの出力軸に対してブレーキ力を与えるブレーキ装置を設けて、可動部の減速、停止、保持を図るようにしたものが一般的である。
【0003】
一方、ベースとなる固定部材に複数のアクチュエータを取り付け、該アクチュエータの出力軸に連結されたリンクをそれぞれ駆動して、各リンクの先端に取り付けた可動部の位置、姿勢を制御するようにしたパラレルリンク型機構部で構成されたパラレルリンク型ロボットや作業装置が種々開発されている。このパラレルリンク型ロボットや作業装置は、構造がシンプルであること、可動部が軽量であるために高加速度を得ることができること、可動部の支持剛性が高いこと、駆動源のモータ等のアクチュエータの動力を効率よく使用することができること、などのメリットがあり各種作業に利用されている。
【0004】
パラレルリンク型ロボットや作業装置の代表的な形態として、a.アクチュエータと可動部間を2つの平行するリンクで平行四辺形を構成した平行リンク機構で連結し、可動部の姿勢は固定で、位置のみ変化させるようにした3自由度のタイプ、b.「a」の3自由度のパラレルリンク型ロボットの可動部上に固定された回転軸を1軸追加し4自由度としたタイプ(特許文献1参照)、c.可動部の位置と姿勢を変化させる6自由度のタイプ(特許文献2、3参照)がある。また、パラレルリンク機構の可動部にシリアルリンク機構を搭載したハイブリッドタイプと呼ばれる形態も公知である(特許文献4参照)。
【0005】
上述した「a」、「b」のタイプのパラレルリンク型ロボットの構造はシンプルなため、安価に作ることができ、また保守性にも優れる反面、自由度が3または4なのでアプリケーションは限定され、主にピックアンドプレースのような搬送用途に用いられる。「c」のタイプのパラレルリンク型ロボットは6自由度を有しており、可動部の位置と共に姿勢も変化させることができるが、姿勢の変化量はあまり大きくない。主にマシニングセンタなどの工作機械やフライトシミュレータ等に用いられている。
【0006】
又、ワークに対して加工を行う作業機にパラレルリンク型機構部を適用したものにおいて、パラレルリンク型機構部の可動部にツールを取り付け、鉛直軸回りに回転すると共に水平軸回りに回転するテーブルにワークを取り付け、パラレルリンク型機構部の姿勢の変化量が小さいことを、テーブルの回転によって補うようにした発明も知られている(特許文献5参照)。
【0007】
図18は、上述した「b」のタイプの4自由度を有するパラレルリンク型ロボット100の一例である。パラレルリンク型ロボット100は、3つの位置制御用アクチュエータ104と1つのエンドエフェクタ用の回転型アクチュエータ105の、合計4つのアクチュエータを備えている。パラレルリンク型ロボット100のベース103は、一端が基台101に固定された複数の支柱102により支持されている。各位置制御用アクチュエータ104はベース103から垂下したそれぞれのアクチュエータ固定部材108に垂直に固定されており、該位置制御用アクチュエータ104は、ベースの中心から等距離で等角度間隔毎に配置されている。
【0008】
可動部110は、各位置制御用アクチュエータ104とそれぞれの出力シャフト109と共に回転するリンク112と、そのリンク112とジョイント113を介してそれぞれの平行リンク機構111を介して連結されている。平行リンク機構111は、それぞれのリンク112にユニバーサルジョイント等のジョイント113を介して一端が連結された2本のロッド114と、さらに、該2本のロッド114の他端とジョイント113に連結された可動部110で構成され、2本のロッド114は平行に配置されている。
【0009】
各位置制御用アクチュエータ104の出力シャフト109と共に回転するリンク112に設けられた2個のジョイント113は、出力シャフト109と平行であるようにそれぞれのロッド114と接続される。3つの位置制御用アクチュエータ104の回転位置を制御することによって、各位置制御用アクチュエータ104の出力シャフト109に結合された各リンク112と、ジョイント113、ロッド114からなる平行リンク機構111により、可動部110は常にベース103に対して水平を保って、その位置が制御されることになる。
【0010】
ベース103の中心部には、エンドエフェクタ用アクチュエータ105が取り付けられている。エンドエフェクタ用アクチュエータ105の出力軸にはジョイント118を介して伝達シャフト117が接続され、伝達シャフト117の他端は、ジョイント118を介して可動部110上に設けられた回転機構115の回転軸116に接続されている。回転軸116の他端には可動部110の反対面側(伝達シャフト117が取り付けられる面とは反対側の面)に突出するようにエンドエフェクタ119が接続されており、エンドエフェクタ用アクチュエータ105の動力を伝達シャフト117を介してエンドエフェクタ119に伝達し該エンドエフェクタ119を回転させその姿勢を制御するように構成されている。伝達シャフト117は、スプライン継手等で構成された伸縮自在なシャフトであり、伝達シャフト117の両端に取り付けられているジョイント118には、例えばユニバーサルジョイント等の2自由度のジョイントで構成されている。
【0011】
又、位置制御用アクチュエータ104の出力シャフト109及びエンドエフェクタ用アクチュエータ105の出力シャフトには、それぞれブレーキ装置106を備えている。このブレーキ装置106は、エネルギー源(これらアクチュエータが電気モータであるときは電源)が絶たれたときブレーキを作動させる負動作型のブレーキ装置である。
【0012】
各位置制御用アクチュエータ104を駆動することによって、平行リンク機構111を介して、可動部110をその姿勢を変えずに保持したまま、3次元空間上の位置(直交するX、Y、Z軸上の位置)を制御する。又、エンドエフェクタ用アクチュエータ105を駆動し伝達シャフト117を介して回転軸116の回転位置を制御して、エンドエフェクタ119の姿勢を制御することによって、各種作業を実施する。又、該パラレルロボットの動作を停止する、非制御時には、ロボット100へのエネルギー供給が絶たれて各ブレーキ装置106へのエネルギー供給が絶たれることにより、各ブレーキ装置106のブレーキが作動し、各アクチュエータ104、105の出力軸をロックし、回転移動を停止し、固定することから、可動部110は、その位置を保持した状態で停止することになる。
【0013】
図18に示したパラレルリンク型ロボットの例は、4自由度を有する上述した「b」タイプのパラレルリンク型ロボットの例であるが、3自由度の上述した「a」タイプのパラレルリンク型ロボットロボットは、図18において、エンドエフェクタ用アクチュエータ105を有さず、回転軸116の回転位置の制御は行わず、可動部110の位置のみを制御できるようにしたものである。
【0014】
以上のように、ブレーキ装置は1自由度を拘束するものが一般的であることから、パラレルリンク型ロボットの可動部のように3自由度を有する被対象物に対しても、被対象物(可動部)を駆動するアクチュエータの出力軸にブレーキを作動させ、被対象物(可動部)を保持するようにしている。なお、ブレーキ装置ではないがカメラ用雲台において、カメラ台の回転と揺動の3自由度をロックするようにした技術は知られている。
【0015】
【特許文献1】特表昭63−501860号公報
【特許文献2】特開平6−270077号公報
【特許文献3】特開平10−286788号公報
【特許文献4】特開平7−148679号公報
【特許文献5】特開2000−94245号公報
【特許文献6】特許第3212535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、パラレルリンク型ロボットにおいては、ロボット手先位置の可動部を複数のアクチュエータで駆動するものであり、該可動部を駆動するアクチュエータには、非制御時において可動部の重力が作用する。この重力の作用で、又は何らかの外乱で可動部が移動することを防止するために、各アクチュエータ毎にブレーキ装置を設けて可動部の移動を防止している。このパラレルリンク型ロボットでは、各アクチュエータの出力位置がロボット手先位置の可動部の位置に直接影響を与える。いずれかのアクチュエータのブレーキが故障すると、この可動部の位置を保持できなくなる可能性が生じる。例えば図18に示した例で、3つの位置制御用アクチュエータ104のそれぞれに設けられたブレーキ装置106のいずれか1つが故障したとき、残る2つのアクチュエータのブレーキ装置106によって、可動部110の位置を保持することになるが、これでは十分に可動部110の位置を保持することが難しいという問題がある。
【0017】
又、エンドエフェクタ用アクチュエータ105に設けられた、ブレーキ装置106が故障したときも、エンドエフェクタの回転位置を保持することができず、ロボットの手先の姿勢の1つである回転方向の位置が保持できなくなる。
しかも、ブレーキ装置106がアクチュエータの数だけ必要となる。図18に示したパラレルリンク型ロボットの場合4つのアクチュエータを有し、それぞれブレーキ装置を備える必要がある。
ブレーキ装置の数が増加すれば、その分故障等のトラブルの発生が多くなり、装置の稼動効率が低下する。
【0018】
そこで、本発明は、上述した問題を改善するために、4自由度を拘束できるブレーキ装置を提供することを目的とし、かつ、この4自由度を拘束できるブレーキ装置を用いて上述した問題点を改善したパラレルリンク型ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願請求項1〜請求項9に係る発明は、4自由度拘束ブレーキ装置に係わる発明であり、請求項1に係る発明は、軸状の拘束対象部材と中間部材とブレーキ装置の固定部に直接接続されるブレーキ動作部を有し、拘束対象部材と中間部材の界面は略円筒形状であるとともにブレーキ動作部と中間部材の界面は略球面形状に形成され、拘束対象部材と中間部材、または中間部材とブレーキ動作部がそれぞれ複数の要素に分割され、ブレーキ動作エネルギー源が絶たれたときに分割された要素の1以上がブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにてその相対位置を変化させ、該要素の変位に基づいて他の分割された要素が変位し、拘束対象部材と中間部材、中間部材とブレーキ動作部の間の隙間がそれぞれ無くなるとともに摩擦力を発生する圧力を発生させ、その摩擦力により拘束対象部材とブレーキ動作部の相対運動を減速させて拘束し、拘束対象部材の軸方向への移動と軸中心回りの回転及び任意の方向への傾きの4自由度を拘束する4自由度拘束ブレーキ装置である。
【0020】
請求項2に係る発明は、前記中間部材と前記ブレーキ動作部がそれぞれ複数の要素に分割され、ブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにより変位する要素をブレーキ動作部としたものであり、請求項3に係る発明は、前記拘束対象部材と中間部材がそれぞれ複数の要素に分割され、ブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにより変位要素を拘束対象部材としたものである。さらに、請求項4に係る発明は、前記中間部材を、複数の要素に分割した方向と直交する方向に溝を設け、該溝に前記複数の要素を束ねるバネ部材を配設したものである。
【0021】
請求項5に係る発明は、軸状の拘束対象部材と中間部材とブレーキ装置の固定部に直接接続されるブレーキ動作部を有し、拘束対象部材と中間部材の界面は略円筒形状であるとともにブレーキ動作部と中間部材の界面は略球面形状に形成され、中間部材は複数の要素に分割され、ブレーキ動作エネルギー源が絶たれたとき中間部材はブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにて外側には膨張し、内側には収縮し、拘束対象部材と中間部材、中間部材とブレーキ動作部の間の隙間がそれぞれ無くなるとともに摩擦力を発生する圧力を発生させ、その摩擦力により拘束対象部材とブレーキ動作部の相対運動を減速させて拘束し、拘束対象部材の軸方向への移動と軸中心回りの回転及び任意の方向への傾きの4自由度を拘束する4自由度拘束ブレーキ装置である。
【0022】
又、請求項6に係る発明は、上述した各発明において、前記エネルギーを蓄える要素をバネ要素とし、ブレーキ動作エネルギーを電気エネルギーとした。請求項7に係る発明は、前記請求項1〜4に係る発明において、前記エネルギーを蓄える要素をバネ要素とし、ブレーキ動作エネルギーを供給される流体の圧力としたものである。又、請求項8に係る発明は、請求項6に係る発明において、前記ブレーキ動作部は反発力を発生するバネ要素と円形の磁気コアからなるソレノイドアクチュエータをもち、ソレノイドアクチュエータの動作方向が拘束対象部材の略軸方向であるものとし、請求項9に係る発明は、拘束対象部材の略半径方向であるものとした。
【0023】
請求項10〜請求項13に係る発明は、上述した4自由度拘束ブレーキ装置を用いたパラレルリンク型ロボットに係る発明である。請求項10に係る発明は、ベースに3つのアクチュエータが配設され、該3つのアクチュエータと可動部間を平行リンク機構でそれぞれ接続することにより、該可動部の3次元位置を制御するパラレルリンク型ロボットにおいて、前記ベースに請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の発明の4自由度拘束ブレーキ装置を設け、該4自由度拘束ブレーキ装置の拘束対象部材を前記可動部とジョイントで接続したことを特徴とするパラレルリンク型ロボットである。
【0024】
又、請求項11に係る発明は、ベースに3つのアクチュエータが配設され、該3つのアクチュエータと可動部間を平行リンク機構でそれぞれ接続することにより、該可動部の3次元位置を制御すると共に、前記可動部にエンドエフェクタが取り付けられる回転軸を備え、該回転軸をジョイント及びロッドを介して回転駆動する回転軸駆動用のアクチュエータを前記ベースに備えたパラレルリンク型ロボットにおいて、前記ベースに請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の4自由度拘束ブレーキ装置を設け、前記ロッドは前記回転軸駆動用のアクチュエータの出力回転軸と軸方向移動自在で回転力の伝達を受けるよう構成され、該ロッドが前記4自由度拘束ブレーキ装置の拘束対象部材とされていることを特徴とするパラレルリンク型ロボットである。
【0025】
そして、この請求項11に係る発明において、請求項12に係る発明は、前記ベースに取り付けられた前記4自由度拘束ブレーキ装置の上部にスライド付きジンバル機構を配置し、該ジンバル機構のスライド及び揺動が可能な部材に前記回転軸駆動用のアクチュエータを取り付け、前記可動部の移動に応じて傾斜するロッドに対応して前記回転軸駆動用のアクチュエータも傾斜しスライドするようにした。又、請求項13に係る発明は、前記ベースに前記回転軸駆動用のアクチュエータを取り付け、該回転軸駆動用のアクチュエータの上部に前記4自由度拘束ブレーキ装置を配置とし、前記回転軸駆動用のアクチュエータの出力回転部は、ダイヤフラムで結合されたスプライン穴を有するシャフトを有し、前記ロッドはスプライン歯を備え、前記シャフトのスプライン穴に前記ロッドが挿入されスプライン結合して構成した。
【発明の効果】
【0026】
軸状の拘束対象部材の軸方向への移動、軸方向回りの回転及び揺動の4自由度を拘束できるものであるから、機械や装置において、4自由度を有する可動部の移動を1つのブレーキ装置で拘束できる。これにより、1自由度しか拘束できない従来のブレーキ装置に比べ、機械や装置からブレーキ装置の数を減らすことができる。ブレーキ装置の数が減ることにより、その分故障率を減らすことができ、機械や装置の稼動効率を上げることができる。
【0027】
又、この4自由度拘束ブレーキ装置を用いたパラレルリンク型ロボットにおいても、従来アクチュエータ毎に設けていたブレーキ装置を減らし1台ですみ、その分、機械や装置の故障率を低下させることができる。又、4自由度拘束ブレーキ装置でパラレルリンク型ロボットの可動部を拘束している状態では、可動部の位置を保持したまま、可動部を駆動するアクチュエータや可動部とアクチュエータを結合するリンク機構等の交換や保守を行うことができる。そして、その後、ロボットを復旧するときには、ロボットプログラムの再原点復帰作業やキャリブレーション作業を行う必要がなく、作業効率をよくするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。図1(c)は、該実施形態の正面図、図1(b)は、図1(c)のA−A断面図、図1(a)は、図1(b)のB−Bの断面図である。
本発明の4自由度拘束ブレーキ装置は、軸状の拘束対象部材1の4自由度を拘束するもので、この第1実施形態では略球状の中間部材2、第1、第2のブレーキ動作部3a、3b、第1,第2のブレーキ動作部3a、3bをそれぞれ作動させる磁気コア4a、4bと予圧用のバネ7で構成される磁気ソレノイド、該磁気コア4a、4bのコイル5に電力を供給するためのコネクタ8、スリーブ9、ガイドピン10等で構成されている。磁気コア4a、4bには、図1(b)に示すように、複数の予圧用のバネ7が挿入される複数のバネ穴11(6箇所)、ガイド穴12(3箇所)が設けられている。なお、図1(b)では、中間部材2、第1,第2のブレーキ動作部3a、3bを取り除いた状態を示している。
【0029】
図2は、中間部材2の説明図である。図2(a)は平面図、図2(b)正面図である。中間部材2は外形が略球形状であり、重力が作用する方向に複数に分割されている。この実施形態では、2a、2b、2cに3分割されており、該中間部材2の中央には分割方向に略円筒形状の穴2dが形成されており、該穴2dに軸状の拘束対象部材1が挿入されるもので、この拘束対象部材1と中間部材2の界面は略円筒形状となっている。又、中間部材2の外形は略球状に形成され、該中間部材2の球状面に対してブレーキ動作部3a、3bに設けられた摩擦部材13が対向し、中間部材2とブレーキ動作部3a、3bの界面は略球面形状となっている。
図3はブレーキ動作部3a、3bの説明図であり、図3では図1におけるブレーキ動作部3bの例を示している。図3(a)は、ブレーキ動作部の正面図(図1(a)の上方から見た図)、図3(b)は側面図、図3(c)は図3(b)の下側から見た図である。
ブレーキ動作部3a、3bは、摩擦部材13が設けられ中間部材2の球面と対向する円弧状部分と、該円弧状部分から延びる磁気コア4a、4bの磁気が作用する鍔状部で形成されている。鍔状部には、回転を拘束するための複数(3箇所)の回転拘束ノッチ14が形成されている。
【0030】
2つのブレーキ動作部3a、3bの回転を拘束するための回転拘束ノッチ14を合わせ、該回転拘束ノッチ14にスリーブ9を装着し、このブレーキ動作部3a、3bの上に磁気コア4a、4bを配設し、ガイドピン10をガイド穴12を介してスリーブ9の穴に嵌合して固定する。スリーブ9は2つ(上下)の磁気コア4a、4bに挟まれて保持され、このスリーブ9によって、2つ(上下)の磁気コア4a、4bの間隔が正しく位置決めされる。そして、磁気コア4a、4bのバネ穴11に予圧用のバネ7を装着し、ブレーキ固定部6を磁気コア4a、4bの外周に配置し、この磁気コア4a、4bと予圧用のバネ7によって、ソレノイドアクチュエータを構成しており、予圧用のバネ7がブレーキ動作部3a、3bとブレーキ固定部6で圧縮され、反発力が発生するように装着し、ブレーキ固定部6を締め付け固定することによってこの4自由度拘束ブレーキ装置が得られる。そして、中間部材2の円筒状穴に拘束対象部材1を挿入し、この拘束対象部材1をこのブレーキ装置によって拘束するものである。
【0031】
図1(a)の状態は、磁気コア4a、4bのコイル5への電力の供給が絶たれ、ブレーキが作動した状態を示している。又、図4はこのブレーキ装置の動作状態を説明する説明図であり、図4(a)、図4(c)は、ブレーキ装置へ電力が供給されて、ブレーキが作動していない状態を示し、図4(b)は、ブレーキが作動している状態を示している。なお、図4(b)、図4(c)は拘束対象部材1が傾斜しているときの状態を示している。
【0032】
ブレーキ装置への電力供給が絶たれた状態では、ブレーキ動作部3a、3bには予圧用のバネ7の反発力が作用して図1(a)、図4(b)に示すように、2つのブレーキ動作部3a、3bの鍔部が若干の隙間を残して接近する。その結果、ブレーキ動作部3a、3bの摩擦部材13が、中間部材2の球面形状面に押圧され、中間部材2の分割された3つの部材はその中心方向に移動し、拘束対象部材1をこの中間部材2で拘束することになる。すなわち、ブレーキ動作部3a、3bで中間部材2を拘束とし、中間部材2で拘束対象部材1を拘束することになるから、中間部材2と拘束対象部材1は一体のものとなる。その結果、中間部材2は、直交する3つの軸(例えば直交するX、Y、Z軸)回りの回転が拘束され(3自由度の拘束)、かつ、中間部材2によって軸状の拘束対象部材1の軸方向の移動が拘束される(1自由度の拘束)ことになるから、拘束対象部材1は、直交する3軸回りの回転(各任意の方向への揺動と軸中心回りの回転)と、軸方向の移動が拘束されることになり4自由度が拘束されることになる。なお、中間部材2は拘束対象部材1を拘束するものであることから、中間部材2に設けられた穴の面、すなわち拘束対象部材1を拘束する面はブレーキ効果を高めるための表面処理や摩擦材料を張り付けておくことが望ましい。又、中間部材2がブレーキ動作部3a、3bで締め付けられ、ブレーキが作動するときでも、中間部材2を複数(3つ)の要素(2a、2b、2c)に分割した分割隙間が残るように設計しておく。ブレーキ動作部3a、3bに設けられた摩擦部材13が摩耗で消耗しても、分割された中間部材が互いに突き当たってブレーキ不良が生じないようにするためである。
【0033】
一方、ブレーキ装置のコイル5への電力が供給されたときには、磁気コア4a、4bがブレーキ動作部3a、3bをバネ7の力に抗して引き付けることから、図4(a)、図4(c)に示すように、2つのブレーキ動作部は引き離され、上側のブレーキ動作部3aはスリーブ9にガイドされて上側に移動し、下側のブレーキ動作部3bはスリーブ9にガイドされて下側に移動し、この位置が保持されることから、ブレーキ動作部3a、3bの摩擦部材13は中間部材2の略球面形状面への押圧力はほとんど作用しなくなる。これによって、中間部材2は自由に回転が可能となり、かつ、中間部材2が拘束対象部材1を締め付ける力もほとんどなくなることから、拘束対象部材1は軸方向への移動も可能となる。すなわち、拘束対象部材1は、その揺動、回転及び軸方向への移動が可能となり、拘束対象部材1の4自由度が確保されることになる。
【0034】
なお、図4(b)は、拘束対象部材1が傾いた状態で、ブレーキ装置への電力供給が停止され、ブレーキが作動して拘束対象部材1の4自由度を拘束している状態を示しているものであり、拘束対象部材1が傾いている状態でも、ブレーキが作動したときは、その状態を保持することになる。又、図4(c)は、拘束対象部材1が傾いた状態で、ブレーキ装置へ電力が供給され、ブレーキが作動していない状態を示す図である。なお、ブレーキが作動していない状態では、中間部材2は、重力の影響で落下し、下側のブレーキ動作部3に接することになるが、中間部材2の質量は小さく、この接触に伴う摩擦抵抗はブレーキ力に比べ小さいものである。
【0035】
図5は、本発明の第2の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
図5(a)は、図1(b)と同じように該ブレーキ装置の中央断面図である。又、図5(b)は、ブレーキ動作部の平面図、5(c)、図5(d)は、図5(a)のA−A断面図で、図5(c)は電力が遮断されブレーキが作動している状態を示す図、図5(d)は、電力が供給され、ブレーキが作動していない状態を示す図である。なお、第1の実施形態と同じ部材は、同一の符号を付している。
【0036】
この第2の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、スリーブ9’が第1の実施形態と比べその長さが短いこと、及びブレーキ動作部3a、3bに回転拘束ノッチ14と回転拘束ピン穴15が交互に設けられている点である。そして、上下の2つのブレーキ動作部3a、3bは、一方のブレーキ動作部3a(3b)の回転拘束ノッチ14に他方のブレーキ動作部3b(3a)の回転拘束ピン穴15が対応するように配設され、回転拘束ノッチ14にスリーブ9’が挿入され、該スリーブ9’と回転拘束ピン穴15にガイドピン10が挿入されて固定される。スリーブ9’の一端は該スリーブ9’を挿入した側の磁気コア4a、4bによって支えられる。他の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0037】
図5(d)は、磁気コア4a、4bのコイル5に電力が供給されブレーキ動作部3a、3bが磁気コア4a、4bで吸引されて、中間部材2、拘束対象部材1の拘束を解いた状態である。この状態から、磁気コア4a、4bのコイル5への電力の供給が絶たれたとき、ブレーキ動作部3a、3bは、バネ7の反発力で互いにその鍔部が近づくように付勢され、上側のブレーキ動作部3aは下に、下側のブレーキ動作部3bは上に移動する。例えば、図5(c)に示すように、上側のブレーキ動作部3aが下に移動したとき、下側の側のブレーキ動作部3bの回転拘束ノッチ14に装着されたスリーブ9’の端部に当接することによって、それ以上の下方向への移動はできない。同様に、下側のブレーキ動作部3bが上方向に移動したとき、上側の側のブレーキ動作部3aの回転拘束ノッチ14に装着されたスリーブ9’の端部に当接することによって、それ以上の上方向への移動はできない。これによって、バネの反発力で移動する上下のブレーキ動作部3a、3bは、上下間の略中央位置に移動することになり、拘束対象部材1の位置精度を向上させる。
【0038】
図6は、本発明の第3の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。この第3の実施形態と第1,第2の実施形態と相違する点は、駆動エネルギーが電気の代わりに圧力媒体を用いた圧力媒体式ブレーキ装置である点である。図6(c)は、第1の実施形態の図1(b)と同じように、ブレーキ装置の中央断面図であり、図6(a)、図6(b)は、図6(c)のA−A断面図である。なお、第1、第2の実施形態と同等の部材には同一の符号を付している。
【0039】
2つ(上下)のブレーキ動作部3a、3bの鍔部間に、ブラダ16が配設されている。このブラダ16が配設された部分に対応して球状の中間部材2を取り巻くようにリング17が配設されている。このリング17は、中間部材2を押圧するものではなく、ブラダ17が膨張したとき、ブラダの中間部材2への方向への拡大を阻止しするものである。ブラダ16には、圧力媒体供給チューブ18が接続されている。ブレーキ固定部6にはガイドピン10を挿入するガイド穴19が複数設けられており、該ガイド穴19にガイドピン10が挿入され該ガイドピン10でガイドされた、ブレーキ動作部3a、3bが図6(a)において上下方向移動可能となっている。又、2つ(上下)のブレーキ動作部3a、3bの鍔部分とブレーキ固定部6の間には、予圧バネ用穴20で位置決めされて圧縮されたバネ7が複数装着されている。
【0040】
圧力媒体がブラダ16に供給されていない状態では、図6(a)に示すように、ブレーキ動作部3a、3bが予圧用のバネ7の反発力によって押圧され、上側のブレーキ動作部3aは下方に移動し、下側のブレーキ動作部3bは、上側に移動して、ブラダ16を圧縮、縮小させ、各ブレーキ動作部3a、3bの摩擦部材13によって中間部材2を押圧し、該中間部材2を圧縮して拘束し、かつ、中間部材2が拘束対象部材1を押圧して拘束する。これによって、第1,第2の実施形態と同様に、中間部材2の直交する3軸の回りの回転を拘束し、拘束対象部材1の軸方向への移動を拘束する。これによって拘束対象部材1の4自由度を拘束する。
【0041】
一方、ブラダ16に圧力媒体が供給されると、図6(b)に示すようにブラダ16は膨張する。このとき、リング17によって、中間部材2の方向へはその膨張が規制されることから、ブラダ16は、上下のブレーキ動作部3a、3bへの方向に膨張し、上側のブレーキ動作部3aを上に、下側のブレーキ動作部3bを下側に移動させる。その結果、2つ(上下)のブレーキ動作部3a、3bの摩擦部材13は、中間部材2を押圧しなくなることから、中間部材2は、自由に回転可能となり、かつ、中間部材2は拘束対象部材1を押圧しなくなることから、拘束対象部材1は軸方向への移動が可能となる。これによって、拘束対象部材1は、直交する3軸回りの回転(揺動と軸中心の回転)と軸方向への移動が自由となる。
この圧力媒体式ブレーキは、一般に大きなブレーキ力を発生させることができ、又、圧力が失われるとブレーキ力が作動するのでフェィルセーフ性に優れている。
【0042】
図7は、本発明の第4の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
この第4の実施形態は、上述した第1〜第3の実施形態と比較し、ブレーキ動作部の移動方向が異なる。又、複数(3つ)に分割された中間部材2を束ねるバネ部材を設けている点で異なる。図7(a)、図7(b)は、ブレーキ装置を拘束対象部材1の軸方向に切断した断面図で、図7(a)は、ブレーキが作動している状態を示す図であり、図7(b)は、ブレーキ非動作状態の図である。又、図7(c)は、図7(a)のA−A断面図てある。
この第4の実施形態では、球状の中間部材2の半径方向に移動する4つのブレーキ動作部21a〜21dが球状の中間部材2を囲むように配置され、ブレーキ動作部21a〜21dは磁気コア22a〜22dによって駆動される。又、ブレーキ動作部21a〜21dとブレーキ固定部6間には、ブレーキ動作部21a〜21dを中間部材2に押し付けるように反発力を発生する圧縮されたバネ7が配設されている。又、3つに分割された球状の中間部材2は、その分割方向とは直交する方向に溝23が設けられ、該溝23には、バネ部材24が挿入され3つに分割された中間部材2を束ねている。このバネ部材24による3つに分割された中間部材2を束ねる力は弱く、この束ねる力で中間部材2が拘束対象部材1を圧迫し、拘束対象部材1の軸移動の阻害になるほどの力を発生しない程度のものとしている。
【0043】
磁気コア22a〜22dのコイル5への電力供給が絶たれた状態では、図7(a)に示すように、ブレーキ動作部21a〜21dはバネ7によって付勢されて中間部材2の方向(該中間部材の半径方向)に移動し、ブレーキ動作部21a〜21dの摩擦部材13によって、中間部材2を押圧し該中間部材2を圧縮し拘束する。また、中間部材が圧縮されることによって、該中間部材2が拘束対象部材1を押圧して該拘束対象部材1の軸方向の移動を拘束している。よって、拘束対象部材1は、その揺動、及び軸方向への移動ができない。
【0044】
磁気コア22a〜22dのコイル5への電力が供給されると、磁気コア22a〜22dがバネ7の力に抗してブレーキ動作部21a〜21dを引き付け、中間部材2から離れるようにブレーキ動作部21a〜21dを半径方向に移動させ、図7(b)に示す状態とすることから、ブレーキ動作部21a〜21dの摩擦部材13は中間部材2の球状面から離れ、押圧しなくなることから、中間部材2の拘束が解かれるから、これに伴って、拘束対象部材1の中間部材2による拘束も解かれるので、中間部材2は、直交する3軸方向の各軸回りの回転が可能となり、拘束対象部材1は軸方向への移動及び任意方向への移動が可能となる。
【0045】
なお、分割された中間部材2束ねるための溝23やバネ部材24の構成は、上述した第1〜3の実施形態及び後述する中間部材2を分割して複数の要素にする他の実施形態にも適用できるものである。
【0046】
図8は、本発明の第5の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
この第5の実施形態は、上述した第4の実施形態と比較し、中間部材2を押圧するブレーキ動作部が1方向にしか設けられていない点で相違するものである。図8(a)、図8(c)は、ブレーキ装置を拘束対象部材1の軸方向に切断した断面図で、図8(a)は、ブレーキが作動している状態を示す図であり、図8(c)は、ブレーキ非動作状態の図である。又、図8(b)は、図8(a)のA−A断面図である。なお、第5の実施形態と同じ要素は同一符号を付している。
この第5の実施形態では、球状の中間部材2の一方の側に中間部材2に対向する面が中間部材2の球状面に沿うような形状し、その面に摩擦部材13が設けられたブレーキ固定部25が配設されている。このブレーキ固定部25が配設された反対側には電磁ソレノイド装置が配置されている。すなわち、磁気コア22で駆動され球状の中間部材2の半径方向に移動するブレーキ動作部21が設けられブレーキ固定部6とブレーキ動作部21との間には、ブレーキ動作部21を中間部材2の方向に押圧する圧縮されたバネ7が複数配設されている。
【0047】
磁気コア22のコイル5への電力の供給が絶たれた状態では、図8(a)に示すようにバネ7でブレーキ動作部21が中間部材2の方向に押圧され移動し、ブレーキ動作部21に設けた摩擦部材13が、中間部材2の球状面を押圧すると共に、ブレーキ固定部25の摩擦部材13が中間部材2の球状面を押圧することによって、中間部材2を拘束する。
中間部材2がブレーキ動作部21、ブレーキ固定部25で押圧されることによって、該中間部材2が拘束対象部材1を押圧して拘束する。これによって、拘束対象部材1の任意の方向の揺動と軸方向の移動と軸中心回りの回転が拘束され4自由度が拘束されることになる。
【0048】
一方、磁気コア22のコイル5に電力が供給されると、ブレーキ動作部21が磁気コア22で吸引されることから、ブレーキ動作部21の中間部材2への押圧が解かれる。この押圧が解かれることにより、中間部材2及び拘束対象部材1が押圧方向とは逆方向に僅か移動し、ブレーキ固定部25と中間部材2の接触力が小さくなり、中間部材2の回転、拘束対象部材1の軸方向への移動が可能となる。
【0049】
図9は、本発明の第6の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
この第6の実施形態は、中間部材の中心部に挿通される拘束対象部材が膨張することによってブレーキが作動するようにしたものである。この第6の実施形態では、中間部材は第1〜第5の実施形態と同様に分割されているものである。さらに、この第6の実施形態では、拘束対象部材のシャフト1’が軸方向に複数(図9では2つ)に分割され、かつ中空とされ、該中空のシャフト1’内には、作動媒体28が封入され、さらに、該作動媒体28を加熱する熱媒体29が配設されている。
図9では図示していないが、このシャフト1’が第1〜第5の実施形態における中間部材2と同じ形態の中間部材2の中央部の穴に挿入されている。さらに、この分割され、外周面が略球状の中間部材2を取り囲むように固定部と一体のブレーキ動作部が配置されている。このブレーキ動作部は、第1〜第5の実施形態のように、移動するものではなく固定部に固定されているものである。
【0050】
作動媒体としては、エネルギー(電流)が投入されたとき、作動媒体28の体積が縮小し、エネルギー(電流)の供給が絶たれたとき、作動媒体28の体積が膨張するものを選ぶ、この実施形態では、このブレーキ装置が氷点下温度の下で使用される場合の例を示しており、作動媒体28としては、水を主体とした作動媒体を用い、熱媒体29としては絶縁された電熱線を用いる。
熱媒体29の電熱線への電流を絶つと、作動媒体28は水系であるため、周囲環境の温度が氷点下であることから冷却されて固化し、膨張する。そのため、図9(b)に示すように、拘束対象部材のシャフト1’は半径方向に移動し、中間部材を押圧し、この境界での相対移動ができなくなる。又、中間部材も押圧されることによって膨張し、該中間部材を取り囲むブレーキ動作部に圧接され、中間部材もこの境界での相対移動ができなくなる。よって、拘束対象部材のシャフト1’中間部材、ブレーキ動作部は一体となって、相対移動ができなくなるから、拘束対象部材のシャフト1’の4自由度は拘束されることになる。
【0051】
一方、熱媒体29の電熱線へ電流を流すと、固化された作動媒体28は溶融されて縮小し、図9(a)に示すように、拘束対象部材のシャフト1’は半径方向に縮小することから、拘束対象部材のシャフト1’は、中間部材を押圧しなくなり、ほとんど非接触の状態となる。その結果、中間部材も収縮し、該中間部材を取り囲むブレーキ動作部との接触圧が小さくなり、この境界での接触も小さいものとなり、中間部材は直交する3軸回りに回転可能となり、かつ、拘束対象部材のシャフト1’は中間部材に対して軸方向に移動可能となる。これにより、拘束対象部材のシャフト1’は任意の方向への揺動と軸方向への移動が可能となり4自由度の動作が可能となる。
【0052】
なお、作動媒体28として流動パラフィン等の常温で液体の材料を用い、熱媒体29としては不凍液又はさらに固化温度が低いシリコン油などを用いてもよい。この場合、ペルチェ素子等の冷却機構と、熱媒体を循環させる機構と拘束対象部材1’に熱媒体を循環させるホース等の図示しない付帯設備を必要とする。
【0053】
図10は、本発明の第7の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
この第7の実施形態では、上述した各実施形態と同じように中間部材2が3つ(2a、2b、2c)に分割されている。又、この分割された各中間部材は、外側中間部材と内側中間部材に分割され、さらに、外側中間部材は上述した分割方向と直交する方向に2分割されている。これにより、外側中間部材2a−1a、2a−1b、2b−1a(図示せず)、2b−1b(図示せず)、2c−1a、2c−1bの6つの要素に分割されている。又、内側中間部材は2a−2、2b−2(図示せず)、2c−2の3つの要素に分割されている。
【0054】
各外側中間部材2a−1a、2a−1b、2b−1a、2b−1b、2c−1a、2c−1bには、ソレノイド30を備え、かつ、外側中間部材2aと内側中間部材2b間には、反発力を発生させる圧縮されたバネ31が配設され、これにより電磁アクチュエータを備える中間部材2が構成されている。又、該中間部材2の外周には、第1〜第5の実施形態のようにブレーキ動作部が配設されているが、このブレーキ動作部は、第6の実施形態と同じように固定部と一体化され、固定されているものである。
【0055】
各電磁アクチュエータのソレノイド30への励磁電流を遮断すると、バネ31により内側中間部材2a−2〜2c−2は、球状の中間部材2の中心方向に押圧されて、その中心部を貫通する拘束対象部材1をその摩擦部材13が施された部分で押圧し摩擦力を発生させて拘束する。又、各外側中間部材2a−1〜2c−1はバネ31で押されて中間部材2の外径は拡大し、各外側中間部材2a−1〜2c−1は固定されたブレーキ動作部材(図示せず)に押圧され、摩擦力が発生し、中間部材2の移動を拘束する。これによって、拘束対象部材1の軸方向への移動及び傾き移動は拘束され、位置姿勢が保持されることになる。
【0056】
一方、各電磁アクチュエータのソレノイド30に励磁電流が供給されると、中間部材2の外側及び内側部材は互いに引き付け合い、中間部材2の外径は縮小し、内径は拡大する。その結果、拘束対象部材1と中間部材2との接触摩擦が無くなり(又は小さくなり)、ブレーキ動作部と中間部材2の接触も無くなる(又は小さくなる)ことから、中間部材は直交する3軸回りの回転が自由となり、かつ拘束対象部材1の中間部材に対する軸方向への相対移動が可能となり、拘束対象部材1の任意の方向への揺動と軸方向への移動、軸心回りの回転の4自由度が自由となる。なお、この第7実施形態においても、第4の実施形態と同様に、分割された中間部材の要素を束ねるためのバネ部材を設けてもよい。この場合、例えば、図10において、外側中間部材を上下に分割した分割位置より上下方向にオフセットした位置に溝をそれぞれ設け、該バネ部材を該溝に装着して、上側の外側中間部材2a−1a、2b−1a、2c−1a及び下側の外側中間部材2a−1b、2b−1b、2c−1bをそれぞれ束ねるようにしてもよいものである。
【0057】
以上のように、本発明の各実施形態では、軸状の拘束対象部材1の任意の方向への傾斜(揺動)と、軸心回りの回転、軸方向への移動の4自由度に対して同時にブレーキを作用させることができ、4自由度を1つのブレーキ装置で一度に拘束できるものである。
【0058】
この4自由度を拘束することができることを利用し、この4自由度拘束ブレーキ装置を用いたパラレルリンク型ロボットの第1の実施形態を図11に示す。
この図11に示すパラレルリンク型ロボットは、図18に示した従来のパラレルリンク型ロボットにおいて、エンドエフェクタ用アクチュエータ105を備えないタイプのもので、可動部をその姿勢を保持したまま位置が制御される、パラレルリンク型ロボットに4自由度拘束ブレーキ装置を適用した例である。
【0059】
パラレルリンク型ロボット50は、3つの位置制御用アクチュエータ54を備えている(図18に示した従来のパラレルリンク型ロボットにおける位置制御用アクチュエータにはブレーキ装置を備えているが、本発明のパラレルリンク型ロボットの実施形態では、ブレーキ装置を備えていない)。パラレルリンク型ロボット50のベース53は、一端が基台51に固定された複数の支柱52により支持されている。各位置制御用アクチュエータ54はベース53から垂下したそれぞれのアクチュエータ固定部56に固定されており、該位置制御用アクチュエータ54は、ベース53の中心から等距離で等角度間隔毎に配置されている。
【0060】
可動部57は、各位置制御用アクチュエータ54とそれぞれの平行リンク機構58を介して連結されている。平行リンク機構58は、位置制御用アクチュエータ54の出力回転軸に固定され該出力回転軸と共に回転するリンク59と、該リンク59にユニバーサルジョイント等のジョイント60を介して一端が連結された2本のロッド61と、さらに、該2本のロッド61の他端とジョイント60で連結された可動部57で構成され、2本のロッド61は平行に配置されている。
【0061】
3つの位置制御用アクチュエータ54の回転位置を制御することによって、各位置制御用アクチュエータ54の出力回転軸に結合された各平行リンク機構58により、可動部57は常にベース53に対してその姿勢(この例では水平な姿勢)を保って、その位置が制御されることになる。
【0062】
ベース53の中心部には、4自由度拘束ブレーキ装置55が取り付けられている。この4自由度拘束ブレーキ装置55は上述した第1〜第7の実施形態に示すいずれのものでもよい。
【0063】
可動部57には、2自由度以上のジョイント62を介してブレーキロッド63が連結されており、このブレーキロッド63が4自由度拘束ブレーキ装置55の拘束対象部材を構成する。
ロボット50を動作させるときには、4自由度拘束ブレーキ装置55にもエネルギーが供給され、ブレーキ装置55の拘束対象部材としてのブレーキロッド63は、前述したように、自由に軸方向に移動することも任意の方向に揺動することもできる。この状態で、各位置制御用アクチュエータ54を駆動することによって、平行リンク機構58を介して、可動部57をその姿勢を変えずに保持したまま、3次元空間上の位置(直交するX、Y、Z軸上の位置)を制御し、可動部57に取り付けられたエンドエフェクタ64等の手先位置を制御し、各種作業を実施する。
【0064】
該パラレルリンク型ロボット50の動作を停止する、非制御時には、ブレーキ装置55へのエネルギー供給が絶たれる。これによって、4自由度拘束ブレーキ装置の各実施形態で説明したように、ブレーキが作動し、中間部材2が、拘束対象部材のブレーキロッド63を拘束し、かつ中間部材2はブレーキ動作部材によってその回転が拘束されることになるから、拘束対象部材のブレーキロッド63は、その軸方向への移動も、傾き角度を変更することもできなく、ブレーキが作動したとき(エネルギーの供給が停止したとき)の状態を保持する。すなわち、可動部57はその位置、すなわちロボットの手先位置を1つのブレーキ装置55で保持することになる。
【0065】
以上のように、従来のパラレルリンク型ロボットでは、アクチュエータの数だけブレーキ装置を必要としたが、本実施形態では、4自由度拘束ブレーキ装置55の1つだけで、ロボット手先位置(可動部の位置)を保持できるので、ロボットの非制御時に、4自由度拘束ブレーキ装置55でブレーキロッド63を拘束しておけば、アクチュエータ54や平行リンク機構58のリンク59やロッド61、ジョイント60等の部品交換を行っても、ロボットの手先位置には影響をなく、変化しないから、その後復旧するとき、ロボットプログラムの再原点復帰作業やキャリブレーション作業が不要となるという効果がある。
【0066】
図12は、4自由度拘束ブレーキ装置を用いたパラレルリンク型ロボットの第2の実施形態である。この実施形態と図11に示した第1の実施形態との相違する点は、可動部に回転軸を備え、該回転軸にエンドエフェクタを取り付けて、該エンドエフェクタの回転位置を制御できるようにした4自由度のパラレルリンク型ロボットの例である。すなわち、図18に示した従来の4自由度のパラレルリンク型ロボットに4自由度拘束ブレーキ装置を適用したものである。なお、図11に示した第1の実施形態と同じ部材は同一の符号を付している。
【0067】
このパラレルリンク型ロボット70の可動部57には、回転軸72が設けられており、該回転軸72には、エンドエフェクタ76が取り付けられる。回転軸72はジョイント77を介してブレーキロッド71が接続されている。ベース53の中央部には、4自由度拘束ブレーキ装置55が配設され、該4自由度拘束ブレーキ装置55には、ブレーキロッド71が挿通され、このブレーキロッド71が4自由度拘束ブレーキ装置55の拘束対象部材とされる。さらに、4自由度拘束ブレーキ装置55の上方位置にはスライド機構付きジンバル機構73が配設され、該ジンバル機構73のモータ取り付け面には回転軸72を駆動し、エンドエフェクタ76の姿勢を制御するエンドエフェクタ用のモータ74が取り付けられ、該モータ74のロータ軸とブレーキロッド71は、軸方向移動自在で回転力の伝達が可能に構成されており、この実施形態ではスプライン結合されている。
【0068】
該モータ74のロータ軸はブレーキロッド71のスプライン歯と係合するスプライン溝を内周面に備え、貫通するスプライン穴を有する軸で構成されており、ブレーキロッド71の外周にはスプライン歯が設けられている。これによってロータ軸とブレーキロッド71はスプライン結合で連結されている。なお、符号75は、該モータ74に設けられた、位置、速度を検出するためのエンコーダである。又、他の構成は図11に示した第1の実施形態のパラレルリンク型ロボットの構成と同じである。
【0069】
図13は、ジンバル機構73の説明図である。図13(a)は平面図、図13(b)は側面図、図13(c)は背面図(図13(b)において右から見た図)、図13(d)は動作状態説明図である。
【0070】
モータ74を取り付けるモータ取り付け面を有するモータ取付部材73aは、第1の軸73bに固定されている。第1の軸73bはその両端部でそれぞれ第1の軸取付部材73dに軸方向にスライド可能で回転可能に軸支されている。第2の軸73cは2つに分断されそれぞれベース53に取り付けられる固定部材73eにスライド及び回転可能にそれぞれ軸支されている。第2の軸73cのモータ取付部材73a側の端部は、第2の軸取付部材73fに固定されている。さらに、第2の軸取付部材73fは屈曲した連結部材73gの一端が固定され、その他端は第1の軸取付部材73dは固定されている。
【0071】
そのため、モータ取付部材73aは、直交する第1の軸73bの軸方向、第2の軸73cの軸方向にスライドが可能であると共に、第1の軸73bの回り、第2の軸73cの回りにも回転し揺動できるものとなっている。図13(c)は、モータ取付部材73aが、第1、第2の軸の中間位置にあるときの状態を示し、図13(d)は、第1の軸方向の左右方向において左にスライドし、かつ、第2の軸方向の上下方向において、下方向にスライドした状態を示している。
【0072】
又、図14は、パラレルリンク型ロボット70のベース53に取り付けたジンバル機構73のモータ取付部材73aの取付面にモータ74を取り付けた状態での、モータ74の第1の軸73b方向への傾き(第2の軸73c回りの回転)を説明する図である。
3つの位置制御用アクチュエータ54を駆動して、可動部57を移動させると、該可動部57とジョイント77で連結されたブレーキロッド71は、スプライン結合されたモータ74のロータ軸に対してその軸方向に相対移動し、図12において、上下動すると共に傾く。このブレーキロッド71の傾きは、ブレーキ装置55の球状の中間部材2の中心を支点として傾く。図14(a)は、ブレーキロッド71が傾かず垂直な状態を示している。一方、図14(b)は、ブレーキロッド71がジンバル機構73の第1の軸73b方向に傾いた状態(第2の軸73cの回りに回転し傾いた状態)を示しており、ブレーキロッド71がブレーキ装置55の中間部材2の中心を支点として傾くことにより、モータ取付部材73aも傾き、モータ74も傾く。さらに、図14(a)に示すように、ブレーキロッド71が傾いていない状態では、ブレーキ装置55の球状の中間部材2の中心と、ジンバル機構73のモータ取付部材73aのロータ軸であるブレーキロッド71を通す貫通穴の第1の軸方向での位置は同じであるが、ブレーキロッド71は、可動部57の移動によって、ブレーキ装置55の球状の中間部材2の中心を支点として傾くものであるから、その傾き分モータ取付部材73aの前記貫通穴の部分も移動することになり、図14(b)に示すように、第1の軸方向に傾いたとき、モータ取付部材73aも第1の軸方向にスライドすることになる。
【0073】
図15は、ブレーキロッド71がジンバル機構73第2の軸方向に傾いたとの説明図である。図15(a)は、傾きがなく、ブレーキロッド71が垂直な状態を示している。図15(b)は、ブレーキロッド71がジンバル機構73の第2の軸73c方向に傾いた状態を示し、モータ取付部材73aは第1の軸73b回りに回転し傾き及びモータ74も同様に傾く。又、モータ取付部材73a及びモータ74は図15(a)の状態と比較し、傾いた方向の第2の軸方向にスライドする。
【0074】
このパラレルリンク型ロボットの第2の実施形態においても、各アクチュエータ毎にブレーキ装置を設ける必要がなく、各アクチュエータ54の動力を切断する前に、4自由度拘束ブレーキ装置55のブレーキを作動させれば、各アクチュエータ54の動力を絶っても、1つの4自由度拘束ブレーキ装置55だけで、ロボットの手先位置(可動部の位置)が保持される。さらに、ブレーキロッド71の中心軸回りの回転も拘束されるものであるから、エンドエフェクタ76の回転位置も保持されることになる。
【0075】
ブレーキ装置が1台で済み、ブレーキ装置の数が少なくなる分、その故障率も低下するから、ロボットの運転効率を向上させることができる。又、ロボットの非制御時で4自由度拘束ブレーキ装置55のブレーキを作用させている状態で、アクチュエータや平行リンク機構のリンクやロッド等の主要部品の交換を行っても、ロボット手先位置(可動部の位置)は保持されるので、その後、ロボットを復旧させるとき、ロボットプログラムの再原点復帰作業やキャリブレーション作業を必要とせず、作業効率をよくするものである。
【0076】
図16は、4自由度拘束ブレーキ装置55を適用したパラレルリンク型ロボットの第3の実施形態の概要図である。この第3の実施形態で用いる4自由度拘束ブレーキ装置55は、上述した第1〜第7の実施形態のいずれかの4自由度拘束ブレーキ装置55でよいものである。
この第3のパラレルリンク型ロボット80の実施形態と第2のパラレルリンク型ロボット70の実施形態との差異は、エンドエフェクタが取り付けられる可動部に設けられた回転軸を駆動するアクチュエータの構成及び該アクチュエータと可動部とを連結するロッドの構造が相違すること、又、回転軸駆動用のアクチュエータと4自由度拘束ブレーキ装置55の配設位置が相違する点である。他は第2のパラレルリンク型ロボットの実施形態と同じである。
【0077】
図17は、この第3のパラレルリンク型ロボット80の実施形態における可動部57に設けた回転軸72を駆動する駆動用のアクチュエータと、該アクチュエータと可動部とを連結するロッドの説明図である。
この回転軸駆動用のアクチュエータはモータ81で構成され、該モータ81のステータ82はパラレルリンク型ロボットのベース53に固定される。該モータ81のロータ83内部にダイヤフラム84が設けられ、該ダイヤフラム84には、スプライン機構を構成するスプライン溝が形成された穴を有するスプライン穴用シャフト85が取り付けられており、該スプライン穴用シャフト85のスプライン穴にはブレーキロッド86が挿入され、該ブレーキロッド86はスプライン穴用シャフト85に対して相対的に移動する範囲の長さに亘ってスプライン歯が形成され、スプライン穴用シャフト85の溝とスプライン歯は係合している。モータ81が駆動されると、ロータ83の回転はダイヤフラム84を介して、スプライン穴用シャフト85を回転させ、該スプライン穴用シャフト85とスプライン結合されているブレーキロッド86は回転することになる。又、ブレーキロッド86はスプライン穴用シャフト85に対して軸方向にも移動可能である。
さらに、4自由度拘束ブレーキ装置55とステータ82上部の間にはスライドプレート87が設けられ、ブレーキロッド86は、モータ81のステータ82の上部に設けられた4自由度拘束ブレーキ装置55の中間部材2の中心部の穴を貫通している。また、ブレーキロッド86は、前述したパラレルリンク型ロボットの第2の実施形態と同様に、可動部57に設けられた回転軸72とカルダン型ユニバーサルジョイント又は球面ジョイント等のジョイント77を介して連結され、該ブレーキロッド86の回転を回転軸72に伝達し、該回転軸72取り付けられるエンドエフェクタ76の姿勢(回転位置)を制御する。
【0078】
各位置制御用アクチュエータ54を駆動し、可動部57の位置(ロボット手先位置)を制御する。該可動部57の移動位置に応じて、ブレーキロッド86は、モータ81のロータ83とはスプライン穴用シャフト85、ダイヤフラム84を介して結合されているものであるから、傾斜が可能であり、このダイヤフラム84の中心位置を支点として傾斜する。この傾き分、下部にスライドプレート87aを持つ4自由度拘束ブレーキ装置55とステータ82上部のスライドプレート87bに対して平行に移動するが、ダイヤフラム84の中心位置は変化しない。
又、該ブレーキロッド86は、スプライン穴用シャフト85に対して軸方向に移動する。すなわち、ブレーキロッド86は図16において、可動部57の位置に応じて上下動すると共に傾斜する。そして、モータ81を駆動することにより、ロータ83の回転をスプライン穴用シャフト85を介してブレーキロッド86を回転させ、可動部57の回転軸72を回転させてエンドエフェクタ76の回転位置を制御する。
【0079】
ロボット80を停止させるときは、各位置制御用アクチュエータ54へのエネルギー供給を停止する前に、4自由度拘束ブレーキ装置55へのエネルギー供給を停止させて該4自由度拘束ブレーキ装置55のブレーキを作動させて、中間部材2及びブレーキロッド86を拘束し、その後、各位置制御用アクチュエータ54へのエネルギー供給を停止する。 中間部材2及びブレーキロッド86が拘束され、またブレーキロッド86がダイヤフラム84の中心位置を支点としていることから、ブレーキロッド86は、軸方向への移動、回転、傾き角度を変えることもできない。その結果、可動部57の位置、エンドエフェクタの位置、すなわち、ロボット手先位置が変化することはなく、かつエンドエフェクタの姿勢も変化しない。
【0080】
このパラレルリンク型ロボット80の第3の実施形態においても、ブレーキ装置が1つでよく、その数を少なくすることができ、かつ、ブレーキ装置がブレーキを作用させているときには、可動部の位置(ロボット先端位置)を保持できるから、各位置制御用のアクチュエータ54や平行リンク機構58等の部品の交換を行っても、その後のロボット復旧時に、ロボットプログラムの再原点復帰作業やキャリブレーション作業を行う必要がなく、作業効率をよくするものである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の4自由度拘束ブレーキ装置は、上述したように、パラレルリンク型ロボットのブレーキ装置として使用することに適しているが、これ以外にも、3軸回りの回転及び軸方向の移動を拘束する必要がある機構や装置にも、この4自由度拘束ブレーキ装置は適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
【図2】同第1の実施形態における中間部材の説明図である。
【図3】同第1の実施形態におけるブレーキ動作部の説明図である。
【図4】同第1の実施形態におけるブレーキ装置の動作状態の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
【図7】本発明の第4の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
【図8】本発明の第5の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
【図9】本発明の第6の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
【図10】本発明の第7の実施形態の4自由度拘束ブレーキ装置の説明図である。
【図11】本発明の4自由度拘束ブレーキ装置を使用するパラレルリンク型ロボットの本発明の第1の実施形態の説明図である。
【図12】本発明の4自由度拘束ブレーキ装置を使用するパラレルリンク型ロボットの本発明の第2の実施形態の説明図である。
【図13】本発明のパラレルリンク型ロボットの第2の実施形態におけるジンバル機構の説明図である。
【図14】本発明のパラレルリンク型ロボットの第2の実施形態におけるジンバル機構の第1の軸方向への傾きを説明する説明図である。
【図15】本発明のパラレルリンク型ロボットの第2の実施形態におけるジンバル機構の第2の軸方向への傾きを説明する説明図である。
【図16】本発明の4自由度拘束ブレーキ装置を使用するパラレルリンク型ロボットの本発明の第3の実施形態の説明図である。
【図17】本発明のパラレルリンク型ロボットの第3の実施形態における回転軸駆動用のアクチュエータと、該アクチュエータと可動部とを連結するロッドの説明図である。
【図18】従来のパラレルリンク型ロボットの一例の概要図である。
【符号の説明】
【0083】
1 拘束対象部材
2 中間部材
3a、3b ブレーキ動作部
4a、4b 磁気コア
5 コイル
6 ブレーキ固定部
7 バネ
8 コネクタ
9 スリーブ
10 ガイドピン
11 バネ穴
12 ガイド穴
13 摩擦部材
14 回転拘束ノッチ
15 回転拘束ピン穴
16 ブラダ
17 リング
18 圧力媒体供給チューブ
19 ガイド穴
20 予圧バネ用穴
21、21a、21b、21c、21d ブレーキ動作部
22、22a、22b、22c、22d 磁気コア
23 溝
24 バネ部材
25 ブレーキ固定部
28 作動媒体
29 熱媒体
30 ソレノイド
31 バネ
50、70、80 パラレルリンク型ロボット
51 基台
53 ベース
54 位置制御用アクチュエータ
55 4自由度拘束ブレーキ装置
57 可動部
58 平行リンク機構
62、77 ジョイント
63 ブレーキロッド
64 エンドエフェクタ
71 ブレーキロッド
72 回転軸
73 ジンバル機構
74 モータ
76 エンドエフェクタ
81 モータ
82 ステータ
83 ロータ
84 ダイヤフラム
85 スプライン穴用シャフト
86 ブレーキロッド
87 スライドプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状の拘束対象部材と中間部材とブレーキ装置の固定部に直接接続されるブレーキ動作部を有し、拘束対象部材と中間部材の界面は略円筒形状であるとともにブレーキ動作部と中間部材の界面は略球面形状に形成され、拘束対象部材と中間部材、または中間部材とブレーキ動作部がそれぞれ複数の要素に分割され、ブレーキ動作エネルギー源が絶たれたときに分割された要素の1以上がブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにてその相対位置を変化させ、該要素の変位に基づいて他の分割された要素が変位し、拘束対象部材と中間部材、中間部材とブレーキ動作部の間の隙間がそれぞれ無くなるとともに摩擦力を発生する圧力を発生させ、その摩擦力により拘束対象部材とブレーキ動作部の相対運動を減速させて拘束し、拘束対象部材の軸方向への移動と軸中心回りの回転及び任意の方向への傾きの4自由度を拘束する4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項2】
前記中間部材と前記ブレーキ動作部がそれぞれ複数の要素に分割され、ブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにより変位する要素がブレーキ動作部である請求項1に記載の4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項3】
前記拘束対象部材と前記中間部材がそれぞれ複数の要素に分割され、ブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにより変位要素が拘束対象部材である請求項1に記載の4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項4】
前記中間部材は、複数の要素に分割された方向と直交する方向に溝を備え、該溝に前記複数の要素を束ねるバネ部材が配設されている請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項5】
軸状の拘束対象部材と中間部材とブレーキ装置の固定部に直接接続されるブレーキ動作部を有し、拘束対象部材と中間部材の界面は略円筒形状であるとともにブレーキ動作部と中間部材の界面は略球面形状に形成され、中間部材は複数の要素に分割され、ブレーキ動作エネルギー源が絶たれたとき中間部材はブレーキ装置に蓄えられたエネルギーにて外側には膨張し、内側には収縮し、拘束対象部材と中間部材、中間部材とブレーキ動作部の間の隙間がそれぞれ無くなるとともに摩擦力を発生する圧力を発生させ、その摩擦力により拘束対象部材とブレーキ動作部の相対運動を減速させて拘束し、拘束対象部材の軸方向への移動と軸中心回りの回転及び任意の方向への傾きの4自由度を拘束する4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項6】
前記エネルギーを蓄える要素がバネ要素であり、ブレーキ動作エネルギーは電気エネルギーである請求項1乃至5の内いずれか1項に記載の4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項7】
前記エネルギーを蓄える要素がバネ要素であり、ブレーキ動作エネルギーは供給される流体の圧力である請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項8】
前記ブレーキ動作部は反発力を発生するバネ要素と円形の磁気コアからなるソレノイドアクチュエータをもち、ソレノイドアクチュエータの動作方向は拘束対象部材の略軸方向である請求項6に記載の4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項9】
前記ブレーキ動作部は反発力を発生するバネ要素と円形の磁気コアからなるソレノイドアクチュエータをもち、ソレノイドアクチュエータの動作方向は拘束対象部材の略半径方向である請求項6に記載の4自由度拘束ブレーキ装置。
【請求項10】
ベースに3つのアクチュエータが配設され、該3つのアクチュエータとそれぞれ一体的に設けられたリンクを、そのリンクの他端と可動部間を平行リンク機構でそれぞれ接続することにより、該可動部の3次元位置を制御するパラレルリンク型ロボットにおいて、前記ベースに請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の4自由度拘束ブレーキ装置を設け、該4自由度拘束ブレーキ装置の拘束対象部材を前記可動部とジョイントで接続したことを特徴とするパラレルリンク型ロボット。
【請求項11】
ベースに3つのアクチュエータが配設され、該3つのアクチュエータとそれぞれ一体的に設けられたリンクを、そのリンクの他端と可動部間を平行リンク機構でそれぞれ接続することにより、該可動部の3次元位置を制御すると共に、前記可動部にエンドエフェクタが取り付けられる回転軸を備え、該回転軸をジョイント及びロッドを介して回転駆動する回転軸駆動用のアクチュエータを前記ベースに備えたパラレルリンク型ロボットにおいて、
前記ベースに請求項1乃至9の内いずれか1項に記載の4自由度拘束ブレーキ装置を設け、
前記ロッドは前記回転軸駆動用のアクチュエータの出力回転軸と軸方向移動自在で回転力の伝達を受けるよう構成され、該ロッドが前記4自由度拘束ブレーキ装置の拘束対象部材とされていることを特徴とするパラレルリンク型ロボット。
【請求項12】
前記ベースに取り付けられた前記4自由度拘束ブレーキ装置の上部にスライド付きジンバル機構を配置し、該ジンバル機構のスライド及び揺動が可能な部材に前記回転軸駆動用のアクチュエータを取り付け、前記可動部の移動に応じて傾斜するロッドに対応して前記回転軸駆動用のアクチュエータも傾斜しスライドするようにした請求項11に記載のパラレルリンク型ロボット。
【請求項13】
前記ベースに前記回転軸駆動用のアクチュエータを取り付け、該回転軸駆動用のアクチュエータの上部に前記4自由度拘束ブレーキ装置を配置とし、前記回転軸駆動用のアクチュエータの出力回転部は、ダイヤフラムで結合されたスプライン穴を有するシャフトを有し、前記ロッドはスプライン歯を備え、前記シャフトのスプライン穴に前記ロッドが挿入されスプライン結合されている請求項11に記載のパラレルリンク型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−286363(P2008−286363A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134377(P2007−134377)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】