説明

DC/DCコンバータ、DC/DCコンバータ装置、電気車両及びDC/DCコンバータの制御方法

【課題】動作モードの切替に伴う電圧及び電流の変動を抑制する。
【解決手段】I項再設定処理部112は、DC/DCコンバータ36の動作モード(1次電圧制御モード、2次電圧制御モード及び電流制限モード)の切替時に、切替前の動作モードの駆動デューティに応じたI項をPID処理部110に出力する。PID処理部110は、入力された前記I項に基づいてPID制御を行う。これにより、駆動デューティ設定部108から出力される切替直後の駆動デューティは、切替前の駆動デューティと略等しくなり、この結果、切替前後の駆動デューティが連続することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1電力装置と第2電力装置との間に配置され且つスイッチング素子を所定のデューティで駆動するDC/DCコンバータ及びその制御方法、該DC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置、並びに、前記DC/DCコンバータ装置を備える電気車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリと燃料電池とを併用して車両走行用の電動機を駆動する電気車両において、前記燃料電池をインバータを介して前記電動機に接続すると共に、前記バッテリを双方向電圧変換器として機能するDC/DCコンバータを介して前記燃料電池に接続することが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この場合、前記DC/DCコンバータ装置は、前記DC/DCコンバータの2次側の電圧(以下、2次電圧ともいう。)、すなわち、前記燃料電池の電圧(端子間電圧)を制御すると共に、前記DC/DCコンバータの各相の通過電流量が、該各相を構成するスイッチング素子の素子温度に応じた通過電流許容値以下となるように、該通過電流量を制御する。
【0004】
【特許文献1】特開2007−159315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリに補機が接続されている場合に、前記バッテリとDC/DCコンバータとを接続する電力ケーブルに断線が発生した場合には、該バッテリ側に接続されている前記補機への印加電圧を適正な電圧に保持するために、通常時に行われている2次電圧の制御(以下、2次電圧制御モードともいう。)を中断し、前記DC/DCコンバータの1次側の電圧(以下、1次電圧ともいう。)、すなわち、前記バッテリ側の電圧を制御して前記補機を保護し且つ正常動作させる制御(以下、1次電圧制御モードともいう。)を行うことが望ましい。
【0006】
また、電気車両では、バッテリの出力端にヒューズが設けられ、過電流が発生したときに直ちに溶断して過大な電流が前記バッテリから流れ出ることを防止することで該バッテリを保護することが望ましいが、実際に、前記ヒューズが溶断した場合には、該ヒューズを交換するまで前記バッテリから電力を前記DC/DCコンバータ及びインバータを介して電動機に供給することができなくなって、前記電気車両を走行させることができない。そこで、前記ヒューズが溶断に至る前に、前記2次電圧制御モードを中断して、前記DC/DCコンバータを通流する電流を所定の閾値以下とする制御(以下、電流制限モードともいう。)に切り替わることが望ましい。
【0007】
しかしながら、前記DC/DCコンバータの動作モードとしての前記1次電圧制御モード、前記2次電圧制御モード及び前記電流制限モードは、制御対象が互いに異なるので、単純に、前記動作モードを変更するだけでは、切替の前後において、前記1次電圧、前記2次電圧及び前記電流が一時的にオーバーシュートする等の電圧及び電流の変動(乱れ)が発生するおそれがある。
【0008】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、動作モードの切替に伴う電圧及び電流の変動を抑制することが可能となるDC/DCコンバータ及びその制御方法、該DC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置、並びに、前記DC/DCコンバータ装置を備える電気車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るDC/DCコンバータは、第1電力装置と第2電力装置との間に配置され且つスイッチング素子を所定のデューティで駆動するDC/DCコンバータにおいて、前記DC/DCコンバータの前記第1電力装置側の電圧(1次電圧)を制御する1次電圧制御モードと、前記DC/DCコンバータの前記第2電力装置側の電圧(2次電圧)を制御する2次電圧制御モードと、前記DC/DCコンバータを介して前記第1電力装置と前記第2電力装置との間を流れる電流の値が閾値を上回らないように、前記1次電圧又は前記2次電圧を制御する電流制限モードとのうち、少なくとも2つのモードを動作モードとして備え、前記少なくとも2つの動作モードの切替時に切替前後の前記デューティが連続していることを特徴としている。
【0010】
また、この発明に係るDC/DCコンバータの制御方法は、第1電力装置と第2電力装置との間に配置され且つスイッチング素子を所定のデューティで駆動するDC/DCコンバータの制御方法において、前記DC/DCコンバータの1次電圧を制御する1次電圧制御モード、前記DC/DCコンバータの2次電圧を制御する2次電圧制御モード、及び前記DC/DCコンバータを介して前記第1電力装置と前記第2電力装置との間を流れる電流の値が閾値を上回らないように、前記1次電圧又は前記2次電圧を制御する電流制限モードのうち、少なくとも2つのモードを前記DC/DCコンバータの動作モードとして設定し、設定した前記少なくとも2つの動作モードの切替時に切替前後の前記デューティを連続させることを特徴としている。
【0011】
これらの発明によれば、前記動作モードの切替時に切替前後の前記デューティに連続性を持たせることにより、該動作モードの切替直後における電圧及び電流の変動を抑制することが可能となる。
【0012】
また、この発明に係るDC/DCコンバータ装置は、前記DC/DCコンバータと、前記スイッチング素子を駆動する制御部とを備え、前記制御部は、前記各動作モードにおいて、積分動作を含むフィードバック制御により前記デューティを設定することを特徴としている。
【0013】
この場合、前記制御部は、前記各動作モードにおいて前記フィードバック制御の積分項を設定し、前記動作モードの切替時に切替前後の前記デューティが略等しくなるように切替後の前記動作モードにおける前記積分項を設定することにより、前記動作モードの切替前後における前記デューティの唐突な変化(急変)を確実に防止することができ、この結果、切替直後における電圧及び電流の変動を効率よく抑制することが可能となる。
【0014】
また、前記制御部は、前記各動作モードにおいて比例動作、前記積分動作及び微分動作を含む前記フィードバック制御を行い、前記動作モードの切替時に切替前の前記動作モードにおけるデューティと切替後の前記動作モードにおける比例項及び微分項との差に基づいて、切替後の前記動作モードにおける前記積分項を設定することで、比例積分微分動作(PID動作)により電圧及び電流を制御するDC/DCコンバータ装置に、この発明を適用することが可能となる。
【0015】
さらに、前記制御部は、前記動作モードが前記第1電圧制御モード又は前記第2電圧制御モードである場合に、前記1次電圧又は前記2次電圧を目標電圧に設定するためのフィードフォワード制御を行うことも可能である。
【0016】
この場合、前記制御部は、前記動作モードが前記第1電圧制御モード又は前記第2電圧制御モードに切り替わる時に、切替前の前記動作モードにおけるデューティと切替後の前記動作モードにおける前記比例項、前記微分項及び前記フィードフォワード制御のフィードフォワード項との差に基づいて、切替後の前記動作モードにおける前記積分項を設定することで、前記PID動作及び前記フィードフォワード制御により電圧及び電流を制御するDC/DCコンバータ装置に、この発明を適用することが可能となる。
【0017】
そして、前記制御部は、前記第1電力装置側での断線の可能性の有無に基づいて前記1次電圧制御モードから前記2次電圧制御モードへの切替又は前記2次電圧制御モードから前記1次電圧制御モードへの切替を行うか、あるいは、前記電流の値が前記閾値を上回るか否かに基づいて前記1次電圧制御モード又は前記2次電圧制御モードから前記電流制限モードへの切替を行い、さらに、前記電流制限モードへの切替後に、前記1次電圧又は前記2次電圧を監視して前記電流制限モードでの制御から前記1次電圧制御モード又は前記2次電圧制御モードでの制御に復帰することが好ましい。
【0018】
これにより、前記2次電圧制御モードから前記1次電圧制御モードへの切替後に前記DC/DCコンバータの動作モードを前記2次電圧制御モードに速やかに復帰させることが可能となる。また、前記動作モードが前記1次電圧制御モード又は前記2次電圧制御モードから前記電流制限モードに切り替わった場合でも、前記電流制限モードから前記1次電圧制御モード又は前記2次電圧制御モードに速やかに復帰させることが可能となる。
【0019】
そして、この発明に係る電気車両は、上述したDC/DCコンバータ装置を備え、前記第1電力装置は、補機に接続され且つ前記1次電圧を発生する蓄電装置であり、前記第2電力装置は、車輪を回転させる電動機と該電動機を駆動するインバータに接続され且つ発電電圧を発生する発電装置とを有し、前記発電電圧又は前記電動機が発電機として動作したときに前記インバータに発生する回生電圧を前記2次電圧とすることを特徴としている。
【0020】
これにより、前記動作モードの切替時における電圧及び電流の変動を確実に抑制することができ、前記蓄電装置、前記電動機及び前記発電装置の長寿命化を実現することが可能となる。
【0021】
この場合、前記発電装置が燃料電池であれば、電圧及び電流の変動に伴う燃料電池のスタック構造の劣化を確実に防止することが可能となり、該燃料電池の長寿命化を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、動作モードの切替時に切替前後のデューティに連続性を持たせることにより、該動作モードの切替直後における電圧及び電流の変動を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明に係るDC/DCコンバータの制御方法を実施するDC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置が適用された電気車両の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、この発明に係る電気車両の一実施形態に係る燃料電池車両20の回路図である。
【0025】
この燃料電池車両20は、基本的には、発電装置として発電電圧Vfを発生する燃料電池22と、エネルギストレージでありバッテリ電圧Vbatを発生する蓄電装置(バッテリという。)24とから構成されるハイブリッド型の電源システムと、このハイブリッド電源システムから電流(電力)がインバータ34を通じて供給される負荷としての走行用のモータ26(電動機)と、バッテリ24が接続される1次側1Sと燃料電池22とモータ26(インバータ34)とが接続される2次側2Sとの間で昇降圧の電圧変換を行うDC/DCコンバータ装置{VCU(Voltage Control Unit)という。}23とから構成される。モータ26の回転は、減速機12、シャフト14を通じて車輪16に伝達され、車輪16を回転させる。
【0026】
この実施形態において、第1電力装置はバッテリ24から構成され、第2電力装置は燃料電池22と回生動作中のモータ26とにより構成される。この場合、バッテリ24は、電力線18を介してVCU23の1次側1Sに接続される。
【0027】
VCU23は、DC/DCコンバータ36と、これを構成するスイッチング素子81、82を駆動制御する制御部としてのコンバータ制御部54とから構成される。
【0028】
燃料電池22は、例えば、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで両側から挟み込んで形成されたセルを積層したスタック構造である。燃料電池22には、水素タンク28とエアコンプレッサ30が配管により接続されている。燃料電池22内で反応ガスである水素(燃料ガス)と空気(酸化剤ガス)の電気化学反応により生成された発電電流Ifは、電流センサ32及びダイオード(ディスコネクトダイオードともいう。)33を介して、インバータ34及び(又は)DC/DCコンバータ36側に供給される。
【0029】
インバータ34は、直流/交流変換を行い、モータ電流Imをモータ26に供給する一方、回生動作に伴う交流/直流変換後のモータ電流Imを2次側2SからDC/DCコンバータ36を通じて1次側1Sに供給する。
【0030】
この場合、回生電圧又は発電電圧Vfである2次電圧V2がDC/DCコンバータ36により低電圧に変換された1次電圧V1は、ダウンバータ42により降圧されてさらに低電圧とされ、ライト、パワーウインド、ワイパー用電動機等の補機44に補機電流Iauとして供給されると共に、1次電圧V1に余剰分があればバッテリ電流Ibat(シンク電流Ibsk)としてバッテリ24に流し込まれバッテリ24を充電する。
【0031】
1次側1Sに接続されるバッテリ24は、例えば、リチウムイオン2次電池、ニッケル水素2次電池又はキャパシタを利用することができる。この実施形態ではリチウムイオン2次電池を利用している。
【0032】
バッテリ24は、ダウンバータ42を通じて補機44に補機電流Iauを供給すると共に、DC/DCコンバータ36を通じてインバータ34にモータ電流Imを供給するためのバッテリ電流Ibat(ソース電流Ibse)を流し出す。この場合、バッテリ24の出力点には直列にバッテリ短絡保護用のヒューズ25が挿入されている。
【0033】
なお、インバータ34に供給されるモータ電流Imは、バッテリ電流IbatがVCU23により変換された2次電流I2と発電電流Ifの合成電流である。
【0034】
ダウンバータ42は、出力側に絶縁トランスを有し、補機44の正極側には前記絶縁トランスの2次コイル側の整流電圧が供給され、負極側はシャーシに接地されている。
【0035】
1次側1S及び2次側2Sには、それぞれ平滑用のコンデンサ38、39が設けられている。2次側2Sのコンデンサ39には、並列に、すなわち燃料電池22に対しても並列に、抵抗器40が接続されている。
【0036】
燃料電池22を含むシステムはFC制御部50により制御され、インバータ34とモータ26を含むシステムはインバータ駆動部を含むモータ制御部52により制御され、DC/DCコンバータ36を含むシステムはコンバータ駆動部を含むコンバータ制御部54により、それぞれ基本的に制御される。
【0037】
そして、これらFC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54は、燃料電池22の総負荷量Lt等を決定する上位制御部としての統括制御部56により制御される。
【0038】
統括制御部56、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54は、それぞれCPU、ROM、RAM、タイマの他、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェース、並びに、必要に応じてDSP(Digital Signal Processor)等を有している。
【0039】
統括制御部56、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54は、車内LANであるCAN(Controller Area Network)等の通信線70を通じて相互に接続され、各種スイッチ及び各種センサからの入出力情報を共有し、これら各種スイッチ及び各種センサからの入出力情報を入力として各CPUが各ROMに格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。
【0040】
ここで、車両状態を検出する各種スイッチ及び各種センサとしては、発電電流Ifを検出する電流センサ32の他、1次電圧V1(バッテリ電圧Vbatに等しい。)を検出する電圧センサ61、1次電流I1を検出する電流センサ62、2次電圧V2(ディスコネクトダイオード33が導通しているとき、略燃料電池22の発電電圧Vfに等しい。)を検出する電圧センサ63、2次電流I2を検出する電流センサ64、通信線70に接続されるイグニッションスイッチ(IGSW)65、アクセルセンサ66、ブレーキセンサ67、車速センサ68、及び上記したライト、パワーウインド、ワイパー用電動機等の補機44の操作部55等がある。
【0041】
統括制御部56は、燃料電池22の状態、バッテリ24の状態、モータ26の状態及び補機44の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定した燃料電池車両20の総負荷要求量Ltから、燃料電池22が負担すべき燃料電池分担負荷量(要求出力)Lfと、バッテリ24が負担すべきバッテリ分担負荷量(要求出力)Lbと、回生電源が負担すべき回生電源分担負荷量Lrの配分(分担)を調停しながら決定し、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54に指令を送出する。
【0042】
DC/DCコンバータ36は、バッテリ24(第1電力装置)と第2電力装置{燃料電池22又は回生電源(インバータ34とモータ26)}との間に配置された、MOSFET又はIGBT等からなる上アームスイッチング素子81及び下アームスイッチング素子82の相アームUAから構成されている。各アームスイッチング素子81、82には、それぞれ、並列にダイオード83、84が接続されている。DC/DCコンバータ36により1次電圧V1と2次電圧V2との間で電圧を変換する際に、エネルギを放出及び蓄積する1個のリアクトル90が、相アームUAの中点(接続点)とバッテリ24との間に挿入されている。上アームスイッチング素子81は、コンバータ制御部54から出力されるゲート駆動信号(駆動電圧)UH(のハイレベル)によりオンにされ、一方で、下アームスイッチング素子82は、ゲート駆動信号(駆動電圧)UL(のハイレベル)によりオンにされる。
【0043】
1次電圧V1、代表的には、負荷が接続されていないときのバッテリ24の開放電圧OCV(Open Circuit Voltage)は、図2の燃料電池出力特性(電流電圧特性)91上に示すように、この燃料電池22の発電電圧Vfの最低電圧Vfminより高い電圧に設定されている。なお、図2において、OCV≒V1としている。
【0044】
2次電圧V2は、燃料電池22が発電動作しているときには燃料電池22の発電電圧Vfに等しい電圧にされる。
【0045】
ただし、燃料電池22の発電電圧Vfがバッテリ24の電圧Vbat(=V1)に等しくなったときには、図2に一点鎖線の太線で示す直結状態とされる。直結状態では、上アームスイッチング素子81に供給される駆動信号UHのデューティが100[%]にされ、2次側2Sから1次側1Sへ電流が流れる場合には上アームスイッチング素子81がオンにされて該上アームスイッチング素子81を通じて電流が流れ、1次側1Sから2次側2Sへ電流が流れる場合にはダイオード83が導通して該ダイオード83を通じて電流が流れる。
【0046】
ここで、VCU23による燃料電池22の出力制御について説明する。
【0047】
水素タンク28からの燃料ガス及びエアコンプレッサ30からの圧縮空気が供給されている発電時に、燃料電池22の発電電流Ifは、図2に示した特性91{関数F(Vf)という。}上で2次電圧V2、すなわち発電電圧Vfをコンバータ制御部54によりDC/DCコンバータ36を通じて設定することにより決定される。つまり、発電電流Ifは、発電電圧Vfの関数F(Vf)値として決定される。If=F(Vf)であり、例えば発電電圧VfをVf=Vfa=V2と設定すれば、その発電電圧Vfa(V2)の関数値としての発電電流Ifaが決定される。{Ifa=F(Vfa)=F(V2)}。
【0048】
具体的に、燃料電池22は、第2出力電圧である発電電圧Vfの減少に応じて流し出されるソース電流としての発電電流Ifが増加し、発電電圧Vfの増加に応じて流し出される発電電流Ifが減少する。
【0049】
このように、燃料電池22は、2次電圧V2(発電電圧Vf)を決定することにより発電電流Ifが決定されるので、燃料電池車両20等、燃料電池22を含むシステムでは、通常時には、DC/DCコンバータ36の2次側2Sの2次電圧V2(発電電圧Vf)が、コンバータ制御部54を含むVCU23のフィードバック制御の目標電圧(目標値)に設定される。すなわち、VCU23により燃料電池22の出力(発電電流If)が制御される共に、DC/DCコンバータ36では、2次電圧V2を目標電圧に制御する2次電圧制御モードが該DC/DCコンバータ36の動作モードとして設定される。以上が、VCU23による燃料電池22の出力制御の説明である。
【0050】
ただし、ダウンバータ42とバッテリ24間の電力線18の断線故障等によりバッテリ24が開放状態にされる等、バッテリ24(第1電力装置)が故障とみなされる特殊な場合に、DC/DCコンバータ36の動作モードは、1次電圧V1がVCU23によるフィードバック制御の目標電圧とされる1次電圧制御モードに設定される(切り替えられる)。
【0051】
また、バッテリ24から流れ出すソース電流Ibseが閾値(電流制限値)Ithseを上回る値となったとき、又はバッテリ24に流れ込むシンク電流Ibskが閾値(電流制限値)Ithskを上回る値となったときには、バッテリ24の劣化を防止すること、ヒューズ25の溶断を防止すること、並びにリアクトル90の飽和を防止することのために、2次電圧制御モード(又は1次電圧制御モード)から1次電流I1を目標電流とする制御(電流上限制限制御あるいは電流制限モード)に切り替わる(設定される)。なお、電圧センサ61の検出電圧によりバッテリ24が短絡されたことをコンバータ制御部54が検出したときには、1次電流I1を目標電流とする制御は行わないのでヒューズ25が溶断し、バッテリ24を保護する。
【0052】
従って、DC/DCコンバータ36には、前記1次電圧制御モード、前記2次電圧制御モード及び前記電流制限モードのうち少なくとも2つの制御モードが動作モードとして設定され、該DC/DCコンバータ36は、設定された動作モードに従って動作する。なお、設定された前記各動作モードに関して、一方の動作モードから他方の動作モードに切り替えるための判断(制御)処理は、後述するように、コンバータ制御部54(又は統括制御部56)にて行われる。
【0053】
図3A〜図3Cは、上述したDC/DCコンバータ36の各動作モード(1次電圧制御モード、2次電圧制御モード及び電流制限モード)におけるコンバータ制御部54内の機能ブロック図を示す。
【0054】
すなわち、図3A〜図3Cは、コンバータ制御部54における駆動信号UH、ULのデューティ(駆動デューティ)の設定に関わる機能ブロック図であって、図3Aは、前記動作モードが2次電圧制御モードである場合を示し、図3Bは、前記動作モードが1次電圧制御モードである場合を示し、図3Cは、前記動作モードが電流制限モードである場合を示している。
【0055】
図3Aの2次電圧制御モードにおいて、コンバータ制御部54は、減算部100、比例積分微分(PID)演算部102、除算部104、加算部106及び駆動デューティ設定部108から構成され、PID演算部102は、PID処理部110及び積分項(I項)再設定処理部112を有する。
【0056】
減算部100は、2次電圧V2の目標電圧と、電圧センサ63にて検出された2次電圧V2との偏差を算出してPID処理部110及びI項再設定処理部112に出力する。PID処理部110は、前記偏差を用いたPID制御により前記目標電圧に応じた駆動デューティのフィードバック項(F/B項)を算出し、算出した前記F/B項を加算部106に出力する。除算部104は、電圧センサ61にて検出された1次電圧V1を前記目標電圧で除したものを前記駆動デューティのフィードフォワード項(F/F項)として加算部106に出力する。加算部106は、前記F/B項と前記F/F項との和を駆動デューティ設定部108に出力する。駆動デューティ設定部108は、入力された前記F/B項及び前記F/F項に基づいて駆動信号UH、ULの駆動デューティを計算し、計算した前記駆動デューティを出力する。
【0057】
I項再設定処理部112は、所定時間間隔(例えば、コンバータ制御部54の処理周期)毎に、現在(今回)の制御モードと前回の制御モードとを比較して、DC/DCコンバータ36の動作モードが切り替わったか否かを判断する。
【0058】
この場合、I項再設定処理部112は、前記動作モードが切り替わった(1次電圧制御モード又は電流制限モードから2次電圧制御モードに切り替わった)ことを判断した際に、前回の制御モードの駆動デューティ(前回の駆動デューティ)に応じた積分項(I項)を算出し、算出した前記I項を今回の駆動デューティにおけるI項としてPID処理部110に出力(再設定)する。PID処理部110は、入力された前記I項を、今回のI動作におけるI項とみなしてPID制御を行う。
【0059】
従って、PID処理部110から出力される前記F/B項は、前記前回の駆動デューティに応じたF/B項であり、駆動デューティ設定部108から出力される今回の駆動デューティは、前記前回の駆動デューティに応じた駆動デューティとなる。すなわち、I項再設定処理部112からPID処理部110に対して、前記前回の駆動デューティに応じたI項が再設定されることにより、駆動デューティ設定部108から出力される前記今回の駆動デューティは、前記前回の駆動デューティと略等しくなる(前回の駆動デューティ≒今回の駆動デューティ)。
【0060】
ここで、I項再設定処理部112からPID処理部110に再設定されるI項(I項設定値)及び切替直後における今回の制御モードの駆動デューティ(今回の駆動デューティ)は、下記の(1)式及び(2)式で表わされる。
(I項設定値)=(前回の駆動デューティ)−(今回のF/F項)
−(今回のP項)−(今回のD項) (1)
(今回の駆動デューティ)=(今回のF/F項)+(今回のP項)
+(今回のI項)+(今回のD項)
=(今回のF/F項)+(今回のP項)
+{(前回の駆動デューティ)−(今回のF/F項)
−(今回のP項)−(今回のD項)}+(今回のD項)
=(前回の駆動デューティ) (2)
【0061】
なお、前記(1)式及び(2)式において、「前回」は動作モードの切替直前をいい、「今回」は動作モードの切替直後をいう。また、「P項」は、PID動作における比例項をいい、「D項」は、PID動作における微分項をいう。
【0062】
また、図3Bに示す1次電圧制御モードにおいて、コンバータ制御部54は、図3Aの2次電圧制御モードの場合と同様に、減算部100、PID演算部102、除算部104、加算部106及び駆動デューティ設定部108を有する点では共通しているが、下記の点が異なる。
【0063】
すなわち、減算部100は、1次電圧V1の目標電圧と、電圧センサ61にて検出された1次電圧V1との偏差を算出してPID処理部110及びI項再設定処理部112に出力する。除算部104は、前記目標電圧を前記2次電圧V2で除したものをF/F項として加算部106に出力する。I項再設定処理部112は、DC/DCコンバータ36の動作モードが切り替わった(2次電圧制御モード又は電流制限モードから1次電圧制御モードに切り替わった)ことを判断した際には、前回の駆動デューティに応じたI項を算出し、算出した前記I項を今回の駆動デューティにおけるI項としてPID処理部110に出力(再設定)する。
【0064】
なお、I項再設定処理部112からPID処理部110に出力されるI項設定値及び切替直後における今回の駆動デューティは、切替後の動作モードが1次電圧制御モードであっても、前述の(1)式及び(2)式でそれぞれ表わされる。
【0065】
さらに、図3Cに示す電流制限モードにおいて、コンバータ制御部54は、図3Aの2次電圧制御モード及び図3Bの1次電圧制御モードの場合とは異なり、F/F項を出力する除算部104や、加算部106を有しない。また、下記の点も異なる。
【0066】
すなわち、減算部100は、1次電流I1の目標電流と、電流センサ62にて検出された1次電流I1との偏差を算出してPID処理部110及びI項再設定処理部112に出力する。PID処理部110は、前記偏差を用いたPID制御により前記目標電流に応じたF/B項を算出し、算出した前記F/B項を駆動デューティ設定部108に出力する。駆動デューティ設定部108は、前記F/B項に基づいて駆動デューティを計算し、計算した前記駆動デューティを出力する。
【0067】
この場合、I項再設定処理部112は、DC/DCコンバータ36の動作モードが切り替わった(1次電圧制御モード又は2次電圧制御モードから電流制限モードに切り替わった)ことを判断した際には、前回の駆動デューティに応じたI項を算出し、算出した前記I項を今回の駆動デューティにおけるI項としてPID処理部110に出力する。
【0068】
ここで、前記電流制限モードにおいて、I項再設定処理部112からPID処理部110に出力(再設定)されるI項設定値及び切替直後における今回の駆動デューティは、下記の(3)式及び(4)式で表わされる。
(I項設定値)=(前回の駆動デューティ)−(今回のP項)
−(今回のD項) (3)
(今回の駆動デューティ)=(今回のP項)+(今回のI項)
+(今回のD項)
=(今回のP項)+{(前回の駆動デューティ)
−(今回のP項)−(今回のD項)}+(今回のD項)
=(前回の駆動デューティ) (4)
【0069】
なお、上述したI項設定値は、I項再設定処理部112にてDC/DCコンバータ36の動作モードが切り替わったと判定したときに該I項再設定処理部112からPID処理部110に出力されるものであり、前記動作モードの切替がないと判定された場合には、前記I項設定値はPID処理部110に出力されることはなく、従って、PID処理部110は、前記I項設定値の入力がないときには、現在のI項に基づいてPID演算を行う。
【0070】
この実施形態に係る燃料電池車両20は、基本的には以上のように構成され且つ動作するものであり、次に、DC/DCコンバータ36の動作モードの切替に関わる燃料電池車両20の動作について、図1〜図6を参照して説明する。
【0071】
電力線18の断線が発生せず、あるいは、バッテリ24から流れ出すソース電流Ibseが閾値Ithseを上回る値又はバッテリ24に流れ込むシンク電流Ibskが閾値Ithskを上回る値ではない、通常時には、前述した2次電圧制御モードが実施される。
【0072】
この2次電圧制御モードにおいて、統括制御部56は、燃料電池22の状態、バッテリ24の状態、モータ26の状態及び補機44の状態の他、各種スイッチ及び各種センサからの入力(負荷要求)に基づき決定した燃料電池車両20の総負荷要求量Ltから、燃料電池22が負担すべき燃料電池分担負荷量(要求出力)Lfと、バッテリ24が負担すべきバッテリ分担負荷量(要求出力)Lbと、回生電源が負担すべき回生電源分担負荷量Lrの配分(分担)を調停しながら決定し、FC制御部50、モータ制御部52及びコンバータ制御部54に指令を送出する。
【0073】
図4は、2次電圧制御モードでの処理の詳細を示している。ステップS11において、統括制御部56により、それぞれが負荷要求であるモータ26の電力要求と補機44の電力要求とエアコンプレッサ30の電力要求から総負荷要求量Ltが決定(算出)されると、ステップS12において、統括制御部56は、決定した総負荷要求量Ltを出力するための燃料電池分担負荷量Lfと、バッテリ分担負荷量Lbと、回生電源分担負荷量Lrの配分を決定し、FC制御部50、コンバータ制御部54及びモータ制御部52に指令を与える。ここで、燃料電池分担負荷量Lfを決定する場合、燃料電池22の効率ηが考慮される。
【0074】
次いで、ステップS13において、統括制御部56により決定された燃料電池分担負荷量(実質的に、コンバータ制御部54に対する発電電圧Vfの指令電圧V2comが含まれる。)Lfが通信線70を通じてコンバータ制御部54に指令として送信される。
【0075】
燃料電池分担負荷量Lfの指令を受信したコンバータ制御部54は、ステップS14において、2次電圧V2、換言すれば、燃料電池22の発電電圧Vfが、統括制御部56から指令された指令電圧V2comとなるようにDC/DCコンバータ36のスイッチング素子81、82の駆動デューティ(駆動信号UH、ULのオンデューティ)を制御する。この場合、駆動デューティは、図3Aに示す2次電圧制御モードにおけるコンバータ制御部54の構成によって制御(算出)される。すなわち、ステップS14において、2次電圧V2が指令電圧V2comとなるように昇圧動作又は降圧動作が行われる。なお、図1に示すDC/DCコンバータ36の如き回路構成における昇圧動作又は降圧動作については、周知であるので、その詳細な説明については省略する。
【0076】
また、FC制御部50及びモータ制御部52も統括制御部56からの指令に応じて所定の処理を実行する。
【0077】
さらに、統括制御部56に対して、FC制御部50、コンバータ制御部54及びモータ制御部52から制御結果が逐次報告される。
【0078】
そして、この実施形態では、上記の処理中に、スイッチング素子81、82のスイッチング周期2π毎に、コンバータ制御部54は、電力線18の断線の可能性検出処理を行う。
【0079】
この電力線18の断線検出処理では、電圧センサ61により検出される1次電圧V1の変化速度(上昇速度又は下降速度)VS1[V/s]([V/s]=[ボルト/秒])を検出(算出)する。
【0080】
この場合、バッテリ24からバッテリ電流Ibatが放電電流として流れ出しているときに電力線18が断線すると、1次電圧V1は急激に減少を開始し、一方で、バッテリ24に対してバッテリ電流Ibatが充電電流として流れ込んでいるときに電力線18が断線すると、1次電圧V1は急激に上昇を開始する。
【0081】
そこで、コンバータ制御部54では、1次電圧V1の変化速度V1sが、閾値速度VSrefより大きい場合には、電力線18に断線が発生したと推定して(断線の可能性があるものとして)、直ちに、DC/DCコンバータ36の動作モードを2次電圧制御モード(図3A参照)から1次電圧制御モード(図3B参照)に切り替える。
【0082】
なお、閾値速度VSrefは、例えば、設計開発時に、1次電圧V1の上昇速度と下降速度の双方で、シミュレーション及び実験による追試により値が予め定められる。この場合、現在の1次電流I1とバッテリ電流Ibatの値、並びに補機44の負荷に応じて上昇・下降変化速度の各閾値速度VSrefの表(マップ)を作成しておくこともできる。
【0083】
また、コンバータ制御部54は、1次電圧V1の変化速度VS1が閾値速度VSrefを超えた場合、電力線18が断線したものと推定して、2次電圧制御モードから1次電圧制御モードに切り替えることも可能である。そして、コンバータ制御部54は、2次電圧制御モードから1次電圧制御モードに切り替えた旨を統括制御部56に通知する。
【0084】
図5A及び図5Bは、制御モードの切替前後(ここでは、2次電圧制御モードから1次電圧制御モードへの切替の前後)における駆動デューティの時間的変化を模式的に示すグラフであり、図6は、前記切替前後における1次電圧V1及び2次電圧V2の時間的変化を模式的に示すグラフである。
【0085】
なお、図5A〜図6において、時刻t20は、制御モードが切り替わる時刻である。また、図5A及び図5Bにおいて、左側のグラフは、時刻t20の前後において、I項再設定処理部112(図3B参照)によるI項の再設定処理が行われない場合を示し、右側のグラフは、前記I項の再設定処理が行われる場合を示している。
【0086】
図5A及び図5Bにおいて、I項の再設定処理が行われない場合に、駆動デューティの時間的変化を示す直線120及び曲線124は、時刻t20の前後において不連続となる。すなわち、直線120において、時刻t20前の制御モード(切替前の制御モード)に応じた直線120aと、時刻t20後の制御モード(切替後の制御モード)に応じた直線120bとが、時刻t20の前後で不連続となっている。また、曲線124において、時刻t20前の制御モード(切替前の制御モード)に応じた曲線124aと、時刻t20後の制御モード(切替後の制御モード)に応じた曲線124bとが、時刻t20の前後で不連続となっている。これは、時刻t20前の制御モード(2次電圧制御モード)と、時刻t20後の制御モード(1次電圧制御モード)との間では、制御対象(1次電圧V1、2時電圧V2)が互いに異なることから、それぞれ異なる目標電圧に応じた駆動デューティにて制御が行われることに起因している。
【0087】
これに対して、図5A及び図5Bにおいて、I項の再設定処理が行われる場合には、駆動デューティの時間的変化を示す直線122及び曲線126は、時刻t20の前後において連続している。
【0088】
すなわち、直線122において、時刻t20直前の駆動デューティ(切替前の制御モードの駆動デューティ)と、時刻t20直後の駆動デューティ(切替後の制御モードの駆動デューティ)とは一致しており、該直線122は、時刻t20の前後で連続している。また、曲線126についても、時刻t20直前の駆動デューティ(切替前の制御モードの駆動デューティ)と、時刻t20直後の駆動デューティ(切替後の制御モードの駆動デューティ)とは一致し、該曲線126は、時刻t20の前後で連続している。
【0089】
これは、図3Bに示すように、I項再設定処理部112は、時刻t20の前後で前記動作モードが切り替わったか否かを判断して、切り替わったことを判断した場合には、切替直後の動作モード(1次電圧制御モード)の駆動デューティが切替前の動作モード(2次電圧制御モード)の駆動デューティとなるように、前記切替前の動作モードの駆動デューティに応じたI項を出力し、さらに、PID処理部110は、入力された前記I項を、前記切替直後のPID制御におけるI項とみなしてF/B項の算出処理を行うためである。
【0090】
これにより、駆動デューティ設定部108は、前記I項に応じた駆動デューティ、すなわち、前記切替前の制御モードの駆動デューティに応じた駆動デューティを、切替後の制御モードの駆動デューティとして出力する。この結果、図6に示すように、時刻t20までは2次電圧制御モード(2次電圧V2の曲線130を目標電圧の直線132に一致させる制御)を行っていたものを、時刻t20において1次電圧制御モード(1次電圧V1の曲線134を目標電圧の直線136に一致させる制御)に切り替えた際に、時刻t20の前後で駆動デューティを連続させるようにしたので(図5A及び図5B参照)、1次電圧V1を目標電圧に短時間で且つ確実に一致させることが可能となる。
【0091】
この場合、コンバータ制御部54では、時刻t20以降、直線122及び曲線126が速やかに切替後の制御モードにおける本来の直線120b及び曲線124bと一致するように、駆動デューティの演算処理を行う。すなわち、時刻t20以降は制御モードの切替がないので、I項再設定処理部112からPID処理部110へのI項設定値の出力はなく、従って、PID処理部110は、現在のI項に基づいてPID演算を行う。
【0092】
なお、図6において、曲線138及び140は、いずれも、上記のI項の再設定処理を行わない場合を示しており、時刻t20の直後において、オーバーシュート(曲線138)及びアンダーシュート(曲線140)の電圧変動が発生している。
【0093】
また、統括制御部56は、2次電圧制御モードから1次電圧制御モードに移行し開始した旨の通知をコンバータ制御部54から受け取った時点から数秒(2〜3秒から5〜6秒ほどの時間)の経過を待ち、断線確定判定を行う。この場合、統括制御部56は、その数秒の間、例えば、補機電流Iauが全て1次電流I1により賄われている(Iau≒I1)と判定した場合には電力線18が断線したことを確定する。
【0094】
その一方で、統括制御部56は、前記数秒経過中の間で、例えば、補機電流Iauがバッテリ電流Ibatでも賄われている{Iau=Ibat+I1(I1=0の場合も含む。)}と判定した場合には前記断線可能性が誤りであると確定判定し、現在の1次電圧制御モードから2次電圧制御モードに切り替える。この切替時においても、I項再設定処理部112は、切替時刻の前後において、切替前の1次電圧制御モードの駆動デューティと切替直後の2次電圧制御モードの駆動デューティとが一致するようなI項をPID処理部110に出力する。
【0095】
また、前記2次電圧制御モード(図3A参照)中に、バッテリ24から流れ出すソース電流Ibseの値が閾値Ithseを上回る値となったとき、あるいは、バッテリ24に流れ込むシンク電流Ibskが閾値Ithskを上回る値となったときに、コンバータ制御部54は、バッテリ24が劣化するおそれがあるか、ヒューズ25が溶断するおそれがあるか、あるいは、リアクトル90が飽和するおそれがあるものと判断し、該2次電圧制御モードを中断して、ソース電流Ibse又はシンク電流Ibskの値が閾値Ithse又はIthskに保持されるようにDC/DCコンバータ36を制御する電流制限モード(図3C参照)に切り替える。
【0096】
この場合でも、コンバータ制御部54のI項再設定処理部112は、切替時刻の前後において、切替前の2次電圧制御モードの駆動デューティと切替直後の電流制限モードの駆動デューティとが一致するようなI項をPID処理部110に出力し、該PID処理部110は、入力された前記I項に基づいてPID制御を行う。また、電流制限モードへの切替後に、コンバータ制御部54は、2次電圧V2を監視して、電流制限の必要性がなくなったものと判断した場合には、電流制限モードでの制御から2次電圧制御モードでの制御に復帰する(切り替える)。
【0097】
例えば、ソース電流Ibseに対する電流制限モードにおいて、コンバータ制御部54は、2次電圧V2を監視して、該2次電圧V2が統括制御部56からの指令電圧V2comを上回ったときに、電流制限の必要性がなくなったものと判断し、電流制限モードでの制御から2次電圧制御モードでの制御に復帰する。また、シンク電流Ibskに対する電流制限モードにおいて、コンバータ制御部54は、2次電圧V2を監視して、該2次電圧V2が指令電圧V2comを下回ったときに、電流制限の必要性がなくなったものと判断し、電流制限モードでの制御から2次電圧制御モードでの制御に復帰する。あるいは、コンバータ制御部54は、電流制限モードへの切替後に、2次電圧V2を監視して、該2次電圧V2が切替前の2次電圧V2にまで増加したときに、電流制限の必要性がなくなったものと判断し、電流制限モードでの制御から2次電圧制御モードでの制御に復帰する。
【0098】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、DC/DCコンバータ36の動作モードの切替時に、切替前後の駆動デューティに連続性を持たせることにより、前記動作モードの切替直後における1次電圧V1、2次電圧V2及び1次電流I1の変動を抑制することが可能となる。
【0099】
また、前記動作モードの切替時に、切替前後の駆動デューティが略等しくなるように、切替後の動作モードにおけるI項を設定すれば、前記動作モードの切替前後における前記駆動デューティの唐突な変化(急変)を確実に防止することができ、この結果、切替直後における1次電圧V1、2次電圧及び1次電流I1の変動を効率よく抑制することが可能となる。
【0100】
また、前述した(1)式及び(3)式に基づいてI項を再設定すれば、切替直後の1次電圧V1、2次電圧V2及び1次電流I1の変動を確実に抑制できるので、PID動作により1次電圧V1、2次電圧V2及び1次電流I1が制御されるDC/DCコンバータに、この実施形態を容易に適用することができる。
【0101】
さらに、この実施形態は、フィードフォワード制御が行われるDC/DCコンバータや、PID動作及びフィードフォワード制御が行われるDC/DCコンバータにも適用可能である。すなわち、この実施形態において、コンバータ制御部54は、図3A及び図3Bに示すように、フィードバック制御及びフィードフォワード制御を行うように構成されているが、除算部104を省略して、フィードバック制御のみ行うように該コンバータ制御部54を構成しても、上述した効果が得られる。
【0102】
さらにまた、電力線18の断線の可能性の有無に基づいて、1次電圧制御モードから2次電圧制御モードへの切替又は2次電圧制御モードから1次電圧制御モードへの切替を行うか、あるいは、ソース電流Ibse又はシンク電流Ibskが閾値Ithse又はIthskを上回る値となるか否かに基づいて、1次電圧制御モード又は2次電圧制御モードから電流制限モードへの切替を行い、さらに、電流制限モードへの切替後に、1次電圧V1又は2次電圧V2を監視して電流制限モードでの制御から1次電圧制御モード又は2次電圧制御モードでの制御に復帰する(切り替える)ようにしてもよい。
【0103】
これにより、2次電圧制御モードから1次電圧制御モードへの切替後にDC/DCコンバータ36の動作モードを2次電圧制御モードに速やかに復帰させることが可能となる。また、前記動作モードが1次電圧制御モード又は2次電圧制御モードから電流制限モードに切り替わった場合でも、電流制限モードから1次電圧制御モード又は2次電圧制御モードに速やかに復帰させることが可能となる。
【0104】
さらにまた、動作モードの切替時における1次電圧V1、2次電圧V2及び1次電流I1の変動を確実に抑制することができることから、バッテリ24、モータ26及び燃料電池22の長寿命化を実現することが可能となる。特に、燃料電池22については、1次電圧V1、2次電圧V2及び1次電流I1の変動に伴う燃料電池22のスタック構造の劣化を確実に防止することが可能となるので、該燃料電池22の長寿命化を容易に実現することができる。
【0105】
この実施形態は、上述した1相の相アームUAが配置されたDC/DCコンバータ36を備えるVCU23に限らず、2相以上の複数の相の相アームが配置されたDC/DCコンバータを備えるDC/DCコンバータ装置にも適用可能である。すなわち、この実施形態は、相アームの相数に関わりなく、上述の効果を奏することができる。
【0106】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】この発明の一実施形態に係る燃料電池車両の回路図である。
【図2】燃料電池の電流電圧特性の説明図である。
【図3】図3A〜図3Cは、DC/DCコンバータの各動作モードに対応するコンバータ制御部の機能ブロック図である。
【図4】コンバータ制御部により駆動制御されるDC/DCコンバータの基本動作についての説明に供されるフローチャートである。
【図5】図5A及び図5Bは、制御モードの切替前後における駆動デューティの時間的変化を模式的に示すグラフである。
【図6】制御モードの切替前後における1次電圧及び2次電圧の時間的変化を模式的に示すグラフである。
【符号の説明】
【0108】
20…燃料電池車両 22…燃料電池
23…DC/DCコンバータ装置(VCU)
24…蓄電装置(バッテリ) 26…モータ
34…インバータ 36…DC/DCコンバータ
54…コンバータ制御部 56…統括制御部
100…減算部 102…PID演算部
104…除算部 106…加算部
108…駆動デューティ設定部 110…PID処理部
112…I項再設定処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電力装置と第2電力装置との間に配置され、スイッチング素子を所定のデューティで駆動するDC/DCコンバータにおいて、
前記DC/DCコンバータの前記第1電力装置側の電圧(以下、1次電圧という。)を制御する1次電圧制御モードと、
前記DC/DCコンバータの前記第2電力装置側の電圧(以下、2次電圧という。)を制御する2次電圧制御モードと、
前記DC/DCコンバータを介して前記第1電力装置と前記第2電力装置との間を流れる電流の値が閾値を上回らないように、前記1次電圧又は前記2次電圧を制御する電流制限モードと、
のうち、少なくとも2つのモードを動作モードとして備え、
前記少なくとも2つの動作モードの切替時に、切替前後の前記デューティが連続している
ことを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
請求項1記載のDC/DCコンバータと、前記スイッチング素子を駆動する制御部とを備え、
前記制御部は、前記各動作モードにおいて、積分動作を含むフィードバック制御により前記デューティを設定する
ことを特徴とするDC/DCコンバータ装置。
【請求項3】
請求項2記載のDC/DCコンバータ装置において、
前記制御部は、
前記各動作モードにおいて、前記フィードバック制御の積分項を設定し、
前記動作モードの切替時に、切替前後の前記デューティが略等しくなるように、切替後の前記動作モードにおける前記積分項を設定する
ことを特徴とするDC/DCコンバータ装置。
【請求項4】
請求項3記載のDC/DCコンバータ装置において、
前記制御部は、
前記各動作モードにおいて比例動作、前記積分動作及び微分動作を含む前記フィードバック制御を行い、
前記動作モードの切替時に、切替前の前記動作モードにおけるデューティと、切替後の前記動作モードにおける比例項及び微分項との差に基づいて、切替後の前記動作モードにおける前記積分項を設定する
ことを特徴とするDC/DCコンバータ装置。
【請求項5】
請求項4記載のDC/DCコンバータ装置において、
前記制御部は、前記動作モードが前記第1電圧制御モード又は前記第2電圧制御モードである場合に、前記1次電圧又は前記2次電圧を目標電圧に設定するためのフィードフォワード制御をさらに行う
ことを特徴とするDC/DCコンバータ装置。
【請求項6】
請求項5記載のDC/DCコンバータ装置において、
前記制御部は、
前記動作モードが前記第1電圧制御モード又は前記第2電圧制御モードに切り替わる時に、切替前の前記動作モードにおけるデューティと、切替後の前記動作モードにおける前記比例項、前記微分項及び前記フィードフォワード制御のフィードフォワード項との差に基づいて、切替後の前記動作モードにおける前記積分項を設定する
ことを特徴とするDC/DCコンバータ装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ装置において、
前記制御部は、
前記第1電力装置側での断線の可能性の有無に基づいて、前記1次電圧制御モードから前記2次電圧制御モードへの切替又は前記2次電圧制御モードから前記1次電圧制御モードへの切替を行うか、
あるいは、前記電流の値が前記閾値を上回るか否かに基づいて、前記1次電圧制御モード又は前記2次電圧制御モードから前記電流制限モードへの切替を行い、さらに、前記電流制限モードへの切替後に、前記1次電圧又は前記2次電圧を監視して前記電流制限モードでの制御から前記1次電圧制御モード又は前記2次電圧制御モードでの制御に復帰する
ことを特徴とするDC/DCコンバータ装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ装置を備え、
前記第1電力装置は、補機に接続され、且つ前記1次電圧を発生する蓄電装置であり、
前記第2電力装置は、車輪を回転させる電動機と、該電動機を駆動するインバータに接続され且つ発電電圧を発生する発電装置とを有し、前記発電電圧又は前記電動機が発電機として動作したときに前記インバータに発生する回生電圧を前記2次電圧とする
ことを特徴とする電気車両。
【請求項9】
請求項8記載の電気車両において、
前記発電装置が、燃料電池である
ことを特徴とする電気車両。
【請求項10】
第1電力装置と第2電力装置との間に配置され、スイッチング素子を所定のデューティで駆動するDC/DCコンバータの制御方法において、
前記DC/DCコンバータの前記第1電力装置側の電圧(以下、1次電圧という。)を制御する1次電圧制御モード、前記DC/DCコンバータの前記第2電力装置側の電圧(以下、2次電圧という。)を制御する2次電圧制御モード、及び前記DC/DCコンバータを介して前記第1電力装置と前記第2電力装置との間を流れる電流の値が閾値を上回らないように、前記1次電圧又は前記2次電圧を制御する電流制限モードのうち、少なくとも2つのモードを前記DC/DCコンバータの動作モードとして設定し、
設定した前記少なくとも2つの動作モードの切替時に、切替前後の前記デューティを連続させる
ことを特徴とするDC/DCコンバータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−201318(P2009−201318A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42944(P2008−42944)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】