説明

DPP−4阻害剤(リナグリプチン)を任意で他の抗糖尿病薬と組み合わせて含む抗糖尿病薬

本発明は、中でも、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害および高血糖から選択される、1つまたは複数の状態の治療または予防に適した抗糖尿病薬に関する。加えて本発明は、代謝障害および関連した状態を予防または治療するための方法に関する。薬物療法は、DPP−4阻害剤(好ましくはリナグリプチン)を用いた単剤療法、またはDPP−4阻害剤と第2および/または第3の抗糖尿病薬を用いた併用療法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖障害および高血糖から選択される1つまたは複数の状態の治療または予防に適したDPP−4阻害剤、さらに本明細書中に定義されているそのようなDPP−4阻害剤と、任意で1つまたは複数の他の活性物質とを含む医薬組成物または組合せ、代謝障害の治療における、特に抗糖尿病薬としてのその使用に関する。
【0002】
さらに本発明は、本明細書中これより後に定義されるDPP−4阻害剤を、1つまたは複数の他の活性物質と組み合わせて投与してもよいことを特徴とする、それを必要とする患者における、
−代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、または治療するための、
−血糖コントロールを改善するための、および/または、空腹時血漿グルコース、摂食後血漿グルコースおよび/もしくはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための、
−耐糖能障害、空腹時血糖障害、インスリン抵抗性および/またはメタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、または寛解するための、
−糖尿病合併症からなる群から選択される、状態もしくは障害を予防、その進行を緩除、遅延、または治療するための、
−体重および/もしくは体脂肪を減少するための、または、体重および/もしくは体脂肪の増加を予防するための、または、体重および/もしくは体脂肪の減少を促進するための、
−膵β細胞の変性を予防もしくは治療するための、および/または、膵β細胞の機能を改善、および/もしくは回復もしくは保護するための、および/または、膵臓のインスリン分泌機能を回復するための、
−肝脂肪または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患または状態を予防、緩徐、遅延、または治療するための、
−インスリン感受性を維持および/もしくは改善するための、および/または、高インスリン血症および/もしくはインスリン抵抗性を治療もしくは予防するための、
−移植術後新発症型糖尿病(NODAT)および/または移植術後メタボリックシンドローム(PTMS)を予防、その進行を緩徐、遅延、または治療するための、
−微小血管性および大血管性の疾患およびイベント、移植片拒絶、感染症、ならびに死亡を含めた、NODATおよび/またはPTMS合併症を予防、遅延、または減少させるための、
−高尿酸血症および高尿酸血症に伴う状態を治療するための
方法に関する。
【0003】
加えて、本発明は、本明細書中のこれより前後に記載されている方法における使用のための薬物を製造するための、DPP−4阻害剤の使用に関する。
本発明はまた、本明細書中のこれより前後に記載されている方法における使用のための薬物を製造するための、本発明による医薬組成物または組合せの使用に関する。
本発明はまた、本明細書中のこれより前後に記載されている方法における使用のための、本明細書中で定義されたDPP−4阻害剤に関し、前記方法が、1つまたは複数の他の活性物質(例えば、本明細書中に記述されているものから選択してもよい)と任意で組み合わせて、患者にDPP−4阻害剤を投与するステップを含む。
【背景技術】
【0004】
2型糖尿病は、合併症の発生頻度が高いことから、平均余命を有意に低下させる、ますます広がっている疾患である。糖尿病に伴い微小血管性合併症が生じることから、先進国において、2型糖尿病は現在、成人発症の視力喪失、腎不全、および切断術の最も頻度の高い要因である。加えて、2型糖尿病の存在は、循環器系疾患リスクの2から5倍の上昇を伴う。
【0005】
疾患が長期間にわたり持続した後、2型糖尿病のほとんどの患者は、経口療法で最終的に失敗し、インスリン依存性となり、毎日の注射および1日複数回のグルコース測定が必要となる。
【0006】
UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)は、メトホルミン、スルホニル尿素またはインスリンを用いた集中治療は、結果として、限られた血糖コントロールの改善(HbA1cの差は約0.9%)をもたらすだけであったことを実証した。加えて、集中治療の治療群内の患者でさえ、血糖コントロールは、時間の経過とともに有意に悪化し、これにより、β細胞機能の悪化を引き起こした。重要なことに、集中治療は、大血管性合併症、すなわち心血管イベントの有意な減少を伴わなかった。したがって2型糖尿病の多くの患者は、処置が不十分なままであり、これは、一部には、現在の血糖上昇抑制治療に長期的効果に限界があること、耐性が生じることおよび投薬が不便であるためである。
【0007】
従来から治療に使用されてきた経口の抗糖尿病薬(例えば、1次治療もしくは2次治療、および/または単剤療法もしくは(初期療法または追加療法)併用療法)として、メトホルミン、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、グリニドおよびα−グルコシダーゼ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
従来から治療に使用されてきた非経口の抗糖尿病薬として(例えば、1次治療もしくは2次治療、および/または単剤療法もしくは(初期療法または追加療法)併用療法)として、GLP−1またはGLP−1類縁体、およびインスリンまたはインスリン類縁体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
治療が高い割合で失敗することは、2型糖尿病を患う患者に、高い割合で起こる、長期間の高血糖合併症または慢性的損傷(微小血管および大血管合併症、例えば糖尿病性腎症、網膜症もしくはニューロパシー、または循環器系の合併症を含む)の主な原因である。
したがって、安全性プロファイルの改善を同時に示しながら、血糖コントロールに関して、疾患修飾特性に関して、ならびに循環器系の病的状態および死亡率の低下に関して、優れた効果のある方法、薬物および医薬組成物またはこれらの組合せに対する、未だ満たされていない医学的必要性が存在する。
【0009】
DPP−4阻害剤は、2型糖尿病を患う患者における、治療または血糖コントロールの改善のために開発されている、別の新規な種類の薬剤を表す。
【0010】
例えば、DPP−4阻害剤およびその使用は、WO2002/068420、WO2004/018467、WO2004/018468、WO2004/018469、WO2004/041820、WO2004/046148、WO2005/051950、WO2005/082906、WO2005/063750、WO2005/085246、WO2006/027204、WO2006/029769、WO2007/014886、WO2004/050658、WO2004/111051、WO2005/058901、WO2005/097798、WO2006/068163、WO2007/071738、WO2008/017670、WO2007/128724、WO2007/128721またはWO2007/128761、またはWO2009/121945において開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、代謝障害、特に2型糖尿病を予防、その進行を緩徐、遅延、または治療するための薬物および/または方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、それを必要とする患者、特に2型糖尿病を患う患者における、血糖コントロールを改善するための薬物および/または方法を提供することである。
本発明の別の目的は、例えばメトホルミンなどの抗糖尿病薬を用いた単剤療法にもかかわらず、または2もしくは3つの抗糖尿病薬を用いた併用療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な患者における、血糖コントロールを改善するための薬物および/または方法を提供することである。
本発明の別の目的は、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、インスリン抵抗性および/またはメタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩徐、または遅延させるための薬物および/または方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、糖尿病合併症からなる群からの状態または障害を予防、その進行を緩徐、遅延、または治療するための薬物および/または方法を提供することである。
本発明のさらなる目的は、それを必要とする患者における、体重を減少させ、または体重の増加を予防するための薬物および/または方法を提供することである。
本発明の別の目的は、代謝障害、特に糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、および/または高血糖の治療に高い効果がある薬物を提供することであり、この薬物は、薬理学的および/または薬物動態学的および/または物理化学的特性を、優れたものから非常に優れたものまで有する。
本発明のさらなる目的は、本明細書中のこれより前および以下の記載により、ならびに例から、当業者には明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の範囲内で、驚くべきことに、本明細書中に定義されたDPP−4阻害剤、ならびに本明細書中に定義されたDPP−4阻害剤を含む医薬組成物または組合せ、および任意で1つまたは複数の他の活性物質が、代謝障害を予防、進行を緩除、遅延(例えば開始を遅延させる)、または治療するため、特に患者の血糖コントロールを改善するために有利に使用することができることが現在判明している。これにより、2型糖尿病、過体重、肥満、糖尿病および類似の疾患状態の合併症の治療および予防における新しい治療の可能性が開かれる。
【0014】
したがって、第1の態様において、本発明は、
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)ビグアニド(特にメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)ビグアニド(特にメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬と
を含む医薬組成物もしくは組合せ、または医薬的に許容されるその塩を提供する。
下位態様において、本発明は、
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)ビグアニド(特にメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールおよびGLP−1類縁体からなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬と
を含む医薬組成物もしくは組合せ、または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0015】
別の下位態様において、本発明は、
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールおよびGLP−1類縁体からなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)ビグアニド(特にメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬と
を含む医薬組成物もしくは組合せ、または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0016】
さらなる下位態様において、本発明は、
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミン、スルホニル尿素およびピオグリタゾンからなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールおよびGLP−1類縁体からなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬と
を含む医薬組成物もしくは組合せ、または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0017】
さらなる下位態様において、本発明は、
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールおよびGLP−1類縁体からなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミン、スルホニル尿素およびピオグリタゾンからなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬と、
を含む医薬組成物もしくは組合せ、または医薬的に許容されるその塩を提供する。
またさらなる下位態様において、本発明は、
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミンおよびピオグリタゾンンからなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミン、スルホニル尿素およびピオグリタゾンからなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬と、
を含む医薬組成物もしくは組合せ、または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0018】
またさらなる下位態様において、本発明は、
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミン、スルホニル尿素およびピオグリタゾンからなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミンおよびピオグリタゾンからなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬と
を含む医薬組成物もしくは組合せ、または医薬的に許容されるその塩を提供する。
【0019】
第2の抗糖尿病薬に加えて、第3の抗糖尿病薬が選択される場合、前記第3の抗糖尿病薬は、第2の抗糖尿病薬とは別の種類から選択されるのが好ましい。したがって、第2および第3の抗糖尿病薬は異なるものであり、好ましくは、これらは異なる種類のものである(例えば第2の抗糖尿病薬がビグアニド類から選択される場合、第3の抗糖尿病薬は、別の種類から選択されるのが好ましい)ことが理解されよう。抗糖尿病薬の種類は上述の、例えばビグアニド類、チアゾリジンジオン類、スルホニル尿素類、グリニド類、α−グルコシダーゼ阻害剤類、GLP−1類縁体類などである。
【0020】
本発明のある実施形態は、本明細書中に定義されているDPP−4阻害剤および/または唯一の有効成分としてDPP−4阻害剤を含む医薬組成物を用いた単剤療法を指す。
本発明による組合せおよび/または併用療法内で、ある特定の実施形態は、2剤併用および/または2剤併用療法を指し、別の実施形態は、3剤併用および/または3剤併用療法を指す。
【0021】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、高血糖、摂食後の高血糖、過体重、肥満およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、進行を緩徐、遅延、または治療するための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0022】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、血糖コントロールを改善するための、および/または、空腹時血漿グルコース、摂食後血漿グルコースおよび/またはグリコシル化されたヘモグロビンHbA1cを低下させるための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
本発明による医薬組成物はまた、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、インスリン抵抗性および/またはメタボリックシンドロームに関連する疾患または状態に関する価値ある疾患修飾特性を有し得る。
【0023】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、インスリン抵抗性および/またはメタボリックシンドロームからの、2型糖尿病への進行を予防、緩徐、遅延、または寛解させるための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)を、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0024】
本発明による医薬組成物または組合せの使用により、それを必要とする患者における、血糖コントロールの改善を得ることができ、血糖値レベルの増加に関連した、またはこれに起因する状態および/または疾患も治療することができる。
【0025】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、糖尿病の合併症、例えば白内障、ならびに微小血管性および大血管性疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパシー、学習障害および記憶障害、神経変性障害または認知障害、心臓血管または脳血管の疾患、組織虚血、糖尿病性足病変または胃潰瘍、動脈硬化症、高血圧、内皮障害、心筋梗塞、急性冠不全症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢性動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心臓リズム障害および血管再狭窄からなる群から選択される状態または障害を予防、進行を緩除、遅延、または治療するための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。糖尿病性腎症の特定の1つまたは複数の態様では、例えば過灌流、タンパク尿およびアルブミン尿(例えば微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿)などを、治療し、これらの進行を遅延させ、またはこれらの開始を遅延させ、もしくは予防することができる。「組織虚血」という用語は、糖尿病性大血管症、糖尿病性微小血管症、障害された傷の治癒および糖尿病の潰瘍を特に含む。「微小血管性および大血管性の疾患」および「微小血管性および大血管性の合併症」という用語は、本出願では交換可能なように使用される。
【0026】
本発明の実施形態では、本発明による医薬組成物または組合せの投与により、体重の増加がなくなるか、または体重の減少さえ結果として起こる。
【0027】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、体重および/もしくは体脂肪を減少するための、または、体重および/もしくは体脂肪の増加を予防するための、または、体重および/もしくは体脂肪の減少を促進させるための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0028】
本発明の実施形態では、本発明による医薬組成物または組合せの投与により、β細胞変性およびβ細胞機能の低下、例えば膵β細胞のアポトーシスまたはネクローシスなどを遅延させ、または予防することができる。さらに、膵臓細胞の機能を改善し、または回復させることができ、膵β細胞の数および大きさを増加させることができる。高血糖により妨害された膵のβ細胞の分化の状態および増生を、本発明による医薬組成物を用いた治療で正常化できることを示すことができる。
【0029】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、膵β細胞の変性および/もしくは膵β細胞機能の低下を予防、緩除、遅延、もしくは治療するための、および/または、膵β細胞機能を改善および/または回復させるための、および/または、膵臓のインスリン分泌機能を回復させるための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0030】
本発明の実施形態では、本発明による医薬組成物または組合せの投与により、異所性脂肪、特に肝脂肪の異常な蓄積を低下させ、または阻害することができる。
【0031】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、肝脂肪または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患または状態を予防、緩除、遅延、または治療するための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。肝脂肪または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患または状態は、一般的な脂肪肝、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、過栄養誘発性脂肪肝、糖尿病脂肪肝、アルコール誘発性脂肪肝または中毒性脂肪肝、特に肝脂肪変性、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)および/または肝線維症を含めた非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)からなる群から特に選択される。
【0032】
本発明のさらなる態様に従い、それを必要とする患者における、肝臓の脂肪変性、(肝臓の)炎症および/または肝脂肪の異常な蓄積を予防、進行を緩除、遅延、軽減、治療し、または寛解するための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0033】
本発明の別の態様は、それを必要とする患者における、インスリン感受性を維持および/もしくは改善するための、および/または、高インスリン血症および/またはインスリン抵抗性を治療もしくは予防するための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0034】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、移植術後新発症型糖尿病(NODAT)および/または移植術後メタボリックシンドローム(PTMS)を予防し、進行を緩除、遅延、または治療するための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
本発明のさらなる態様に従い、それを必要とする患者における、微小血管性および大血管性疾患およびイベント、移植片拒絶、感染症、および死亡を含めたNODATおよび/またはPTMS合併症を予防、遅延、または低下させるための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0035】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、高尿酸血症および高尿酸血症関連状態、例えば痛風、高血圧および腎不全などを治療するための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0036】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、
−1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、高血糖、摂食後の高血糖、過体重、肥満およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、もしくは治療するための、または
−血糖コントロールを改善するための、および/または、空腹時血漿グルコース、摂食後血漿グルコースおよび/もしくはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための、または
−耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、インスリン抵抗性および/もしくはメタボリックシンドロームから2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、もしくは寛解させるための、または
−糖尿病合併症、例えば白内障、ならびに微小血管性および大血管性疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパシー、組織虚血、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中および末梢性動脈閉塞性疾患などからなる群から選択される状態または障害を予防、その進行を緩除、遅延、もしくは治療するための、または
−体重および/もしくは体脂肪を減少させるための、または、体重および/もしくは体脂肪の増加を予防するための、または、体重および/もしくは体脂肪の減少を促進させるための、または
−膵β細胞の変性および/もしくは膵β細胞の機能の低下を予防、緩除、遅延、もしくは治療するための、および/または、膵β細胞の機能を改善および/もしくは回復させるための、および/または、膵臓のインスリン分泌機能を回復させるための、または
−肝脂肪または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患もしくは状態を予防、緩除、遅延、もしくは治療するための、または
−インスリン感受性を維持および/もしくは改善するための、および/または、高インスリン血症および/もしくはインスリン抵抗性を治療もしくは予防するための、または
−移植術後新発症型糖尿病(NODAT)および/または移植術後メタボリックシンドローム(PTMS)を予防、その進行を緩除し、遅延、もしくは治療するための、または
−微小血管性および大血管性疾患およびイベント、移植片拒絶、感染症、および死亡を含めたNODATおよび/もしくはPTMS合併症を予防、緩除、または低下させるための、または
−高尿酸血症および高尿酸血症状態を治療するための、
薬物を製造するための、DPP−4阻害剤の使用であって、
DPP−4阻害剤を、例えば単独で、または任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは本明細書中のこれより前後に定義されている)と組み合わせて投与することを特徴とする使用が提供される。
【0037】
本発明の別の態様に従い、それを必要とする患者における、
−1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、高血糖、摂食後の高血糖、過体重、肥満およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、もしくは治療するための、または
−血糖コントロールを改善するための、および/または、空腹時血漿グルコース、摂食後血漿グルコースおよび/もしくはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための、または
−耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、インスリン抵抗性および/もしくはメタボリックシンドロームからの2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、もしくは寛解させるための、または
−糖尿病合併症、例えば白内障、ならびに微小血管性および大血管性の疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパシー、組織虚血、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中および末梢性動脈閉塞性疾患などからなる群から選択される状態もしくは障害を予防、その進行を緩除、遅延、もしくは治療するための、または
−体重および/もしくは体脂肪を減少させるための、または、体重および/もしくは体脂肪の増加を予防するための、または、体重および/または体脂肪の減少を促進させるための、または
−膵β細胞の変性および/もしくは膵β細胞機能の低下を予防、緩除、遅延、もしくは治療し、および/または、膵β細胞の機能を改善および/もしくは回復させるための、および/または、膵臓のインスリン分泌機能を回復させるための、または
−肝脂肪または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患もしくは状態を予防、緩除、遅延、もしくは治療するための、または
−インスリン感受性を維持および/もしくは改善するための、および/または、高インスリン血症および/もしくはインスリン抵抗性を治療もしくは予防するための、
薬物を製造するための、本明細書中のこれより前後に定義されている第2の抗糖尿病薬の使用であって、
この第2抗糖尿病薬を、例えば、DPP−4阻害剤と、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは、本明細書中のこれより前後に定義されている)と組み合わせて投与されることを特徴とする使用が提供される。
【0038】
本発明の別の態様に従い、本明細書中のこれより前後に記載されている治療法および予防法のための薬物を製造するための、本発明による医薬組成物の使用が提供される。
【0039】
定義
本発明による医薬組成物の「有効成分」という用語は、本発明による、DPP−4阻害剤、および/または第2の抗糖尿病薬、および/または第3の抗糖尿病薬を意味する。
【0040】
ヒト患者の「体型指数」または「BMI」という用語は、体重(キログラム)を、身長(メートル)の二乗で割ったもの、よってBMIは、kg/m2という単位を有するものと定義される。
「過体重」は、個体のBMIが25kg/m2を超え、30kg/m2未満である状態と定義される。「過体重」および「肥満気味」という用語は、交換可能なように使用される。
【0041】
「肥満」という用語は、個体のBMIが、30kg/m2以上である状態と定義される。WHO定義によると、肥満という用語は、以下の通り分類することができる:「肥満クラスI」という用語は、BMIが30kg/m2以上、35kg/m2未満の状態である。「肥満クラスII」という用語は、BMIが35kg/m2以上、40kg/m2未満の状態である。「肥満クラスIII」という用語は、BMIが40kg/m2以上の状態である。
「内臓肥満」という用語は、ウエストとヒップの比率が、男性で1.0以上、女性で0.8以上と測定される状態と定義される。内臓肥満は、インスリン抵抗性および糖尿病前症の発症に対するリスクを定義している。
「腹部肥満」という用語は、ウエスト周りが、男性で>40インチまたは>102cm、女性で>35インチまたは>94cmである状態と通常定義される。日本民族または日本人患者に関しては、腹部肥満は、ウエスト周りが男性で≧85cm、女性で≧90cmと定義することができる(例えば、日本のメタボリックシンドローム診断基準検討委員会を参照)。
【0042】
「正常血糖」という用語は、対象の空腹時血中グルコース濃度が、正常域内、すなわち70mg/dLを超え(3.89mmol/L)、110mg/dL(6.11mmol/L)未満または100mgmg/dL(5.6mmol/L)未満である状態と定義される。「空腹時」という単語は、医学用語として通常の意味を有する。
「高血糖」という用語は、対象の空腹時血中グルコース濃度が、正常域よりも上回る、すなわち、110mg/dL(6.11mmol/L)または100mgmg/dL(5.6mmol/L)を超える状態と定義される。「空腹時」という単語は、医学用語として通常の意味を有する。
【0043】
「低血糖」という用語は、対象の血糖値濃度が、正常域である60〜115mg/dL(3.3〜6.3mmol/L)を下回る、特に70mg/dL(3.89mmol/L)未満である状態と定義される。
【0044】
「食後の高血糖」という用語は、摂食から2時間後の、対象の血糖値または血清グルコース濃度が200mg/dL(11.11mmol/L)を超える状態と定義される。
「空腹時血糖障害」または「IFG」という用語は、対象の空腹時血糖値濃度または空腹時血清グルコース濃度が、100〜125mg/dl(すなわち5.6〜6.9mmol/l)の範囲、特に110mg/dLを超え、126mg/dl(7.00mmol/L)未満である状態と定義される。「正常な空腹時グルコース」を有する対象の空腹時グルコース濃度は、100mg/dlより小さい、すなわち5.6mmol/lよりも小さい。
【0045】
「耐糖能障害」または「IGT」という用語は、対象の摂食から2時間後の血糖値または血清グルコース濃度が、140mg/dL(7.78mmol/L)を超え、200mg/dL(11.11mmol/L)未満である状態と定義される。異常な耐糖能、すなわち摂食から2時間後の血糖値または血清グルコース濃度は、絶食後75gのグルコースを摂取してから2時間後、血漿1dL中のグルコースmgとして、血糖レベルを測定することができる。「正常な耐糖能」を有する対象の、摂食から2時間後の血糖値または血清グルコース濃度は、140mg/dl(7.78mmol/L)よりも小さい。
【0046】
「高インスリン血症」という用語は、正常血糖の有無に関わらず、インスリン抵抗性を有する対象の空腹時または摂食後の血清または血漿インスリン濃度が、ウエストとヒップの比率が<1.0(男性)または<0.8(女性)である、インスリン抵抗性を持たない、正常な痩せた個体のものよりも上昇している状態と定義される。
「インスリン感作」、「インスリン抵抗性を改善する」または「インスリン抵抗性を低下させる」という用語は、同義であり、交換可能なように使用される。
「インスリン抵抗性」という用語は、正常な血糖状態を維持するために、グルコース負荷に対する正常な反応よりも過剰な循環インスリンレベルが必要とされる状態と定義される(Ford ES, et.al. JAMA. (2002) 287:356-9)。インスリン抵抗性をもとめる方法が、オイグリセミック高インスリン血症クランプ試験である。インスリン−グルコース併用点滴技術の範囲内で、グルコースに対するインスリンの割合をもとめる。グルコース吸収が、調査した基礎集団の25パーセンタイル未満であれば、インスリン抵抗性であると判明する(WHO定義)。クランプ試験より簡単な試験が、最小モデルと呼ばれるもので、静脈内のグルコース負荷試験の間、インスリンおよびグルコースの血中濃度を、固定された時間間隔で測定し、これらからインスリン抵抗性を計算する。この方法では、肝臓のインスリン抵抗性と、末梢性インスリン抵抗性とを区別することができない。
【0047】
さらに、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性を有する患者の治療への反応、インスリン感受性および高インスリン血症は、インスリン抵抗性の信頼できる指標である「インスリン抵抗性に対するホメオスタシスモデル評価(HOMA−IR)」のスコアを評価することによって数量化することができる(Katsuki A, et al. Diabetes Care 2001; 24: 362-5)。さらなる参照として、インスリン感受性に対するHOMA指数の決定法(Matthews et al., Diabetologia 1985、28: 412-19)、インタクトなプロインスリンのインスリンに対する割合(Forst et al., Diabetes 2003、52(Suppl.1):A459)およびオイグリセミッククランプ試験がある。加えて、血漿アディポネクチンレベルは、インスリン感受性の潜在的代理値としてモニターすることができる。ホメオスタシス評価モデル(HOMA)IRのスコアによるインスリン抵抗性の見積りは、以下の式で計算される(Galvin P, et al. Diabet Med 1992, 9:921-8):
HOMA−IR=[空腹時血清インスリン(μU/mL)]×[空腹時血漿グルコース(mmol/L)/22.5]
【0048】
一般に、他のパラメータを日常の臨床診療において使用することによって、インスリン抵抗性を評価することができる。例えば、トリグリセリドレベルの増加は、インスリン抵抗性の存在と有意に相関しているので、患者のトリグリセリド濃度を使用すことが好ましい。
【0049】
IGTもしくはIFGの発症、または2型糖尿病の素因がある患者は、高インスリン血症と共に正常血糖を有し、定義により、インスリン抵抗性を有する。インスリン抵抗性のある典型的な患者は、通常過体重または肥満である。インスリン抵抗性が検出できた場合、これは、糖尿病前症の存在を示す特に強い暗示である。したがって、グルコースホメオスタシスを維持するために、健常な人間の2〜3倍の多量のインスリンを必要とすることがあり、これなしでは、任意の臨床症状が生じる可能性がある。
【0050】
膵臓β細胞の機能を調査する方法は、インスリン感受性、高インスリン血症またはインスリン抵抗性に関する上記方法と同様である:β細胞機能の改善は、β細胞機能に対するHOMA指数(Matthews et al., Diabetologia 1985、28: 412-19)、インタクトなプロインスリンのインスリンに対する割合(Forst et al., Diabetes 2003、52(Suppl.1): A459)、経口のグルコース負荷試験または食事負荷試験後のインスリン/Cペプチド分泌をもとめることにより、または高血糖性クランプ試験および/または頻繁にサンプリングした試料の静脈内グルコース負荷試験後の最小モデリングを使用することによって(Stumvoll et al., Eur J Clin Invest 2001、31: 380-81)測定できる。
【0051】
「糖尿病前症」という用語は、個体が2型糖尿病を発症しやすい状態である。糖尿病前症は、耐糖能障害の定義を拡大適用して、空腹時血中グルコースが、高い正常域≧100mg/dL内にある個体(J. B. Meigs, et al. Diabetes 2003; 52:1475-1484)および空腹時高インスリン血症(上昇した血漿インスリン濃度)を有する個体を含む。深刻な健康上の脅威としての糖尿病前症を識別するための科学的および医学的基礎は、米国糖尿病学会および米国国立糖尿病消化器腎臓病研究所によって共同で発表された「2型糖尿病の予防と遅延(The Prevention or Delay of Type 2 Diabetes)」と題する見解表明の中で説明されている(Diabetes Care 2002、25:742-749)。
【0052】
インスリン抵抗性を有する可能性のある個体は、以下の属性のうちの2つ以上を有する者である:1)過体重または肥満、2)高血圧、3)高脂血症、4)1人または複数の一親等がIGTまたはIFGまたは2型糖尿病と診断されている。インスリン抵抗性は、これらの個体において、HOMA−IRスコアを計算することによって確認できる。本発明の目的のため、インスリン抵抗性は、個体が>4.0のHOMA−IRスコア、またはグルコースおよびインスリンのアッセイを実施する実験室に対して規定された正常値の上限を超えるHOMA−IRスコアを有する臨床状態と定義される。
【0053】
「2型糖尿病」という用語は、対象の空腹時血中グルコースまたは血清グルコース濃度が125mg/dL(6.94mmol/L)を超える状態であると定義される。血糖値の測定は、所定の医学的分析における標準的方法である。グルコース負荷試験を実施する場合、糖尿病患者の血糖レベルは、空腹の胃に75gのグルコースを摂取してから2時間後、血漿1dL(11.1mmol/l)あたりのグルコースが200mgを超えることになる。グルコース負荷試験において、75gのグルコースを10〜12時間の絶食後に被験患者に経口的に投与し、グルコース摂取の直前、ならびに摂取から1および2時間後に血糖レベルを記録する。健常対象において、血糖レベルは、グルコースを摂取する前で、血漿1dLあたり60〜110mgの間、グルコースを摂取してから1時間後で1dLあたり200mg未満、2時間後で1dLあたり140mg未満である。2時間後の値が140〜200mgの間である場合、異常な耐糖能とみなされる。
「後期2型糖尿病」という用語は、第二次性(抗糖尿病性)薬物障害、インスリン治療の適用および微小血管性および大血管性合併症、例えば糖尿病性腎症、または冠動脈心疾患(CHD)などへの進行を伴う患者(2型糖尿病)を含む。
【0054】
「HbA1c」という用語は、ヘモグロビンB鎖の非酵素的糖化産生物を指す。この測定は、当業者に周知である。糖尿病の治療をモニターする上で、HbA1c値は、非常に重要である。その産生は、基本的に血糖レベルおよび赤血球の寿命に依存するので、「血糖記憶」という意味でHbA1cは、それ以前の4〜6週間の平均血糖レベルを反映している。そのHbA1c値が強化糖尿病治療により一貫して十分に調整されている糖尿病患者(すなわち、検体中の総ヘモグロビンが6.5%未満)は、糖尿病性微小血管症からかなり強固に保護されている。例えば、メトホルミンは、独力で、糖尿病患者において1.0〜1.5%程度のHbA1c値の平均的改善を達成する。このHbA1C値の低下は、すべての糖尿病患者において、所望する標的範囲である6.5%未満、好ましくは6%未満のHbA1cを達成するのに十分ではない。
【0055】
本発明の範囲の「不十分な血糖コントロール」または「不適切な血糖コントロール」という用語は、患者が6.5%を超える、特に7.0%を超える、さらにより好ましくは7.5%を超える、特に8%を超えるHbA1c値を示す状態を意味する。
【0056】
「メタボリックシンドローム」、または「シンドロームX」(代謝障害という文脈で使用される場合)とも呼ばれ、「代謝異常症候群」とも呼ばれるのは、インスリン抵抗性であるという主要な特徴を有する複合性症候群である(Laaksonen DE, et al. Am J Epidemiol 2002;156:1070-7)。ATPIII/NCEPガイドライン(成人における高血中コレステロールの発見、評価および治療に関する米国コレステロール教育プログラム(NCEP)専門家委員会の第3次報告のエグゼクティブサマリー(成人治療委員会III)(Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III) JAMA: Journal of the American Medical Association (2001) 285:2486-2497))
によると、以下のリスクファクターのうちの3つ以上が存在する場合、メタボリックシンドロームという診断が下される:
1.腹部肥満:男性で>40インチもしくは>102cmのウエスト周り、女性で>35インチもしくは>94cmのウエスト周りと定義されるか、または日本民族もしくは日本人患者に関しては、男性で≧85cmおよび女性で≧90cmのウエスト周りと定義される。
2.トリグリセリド:≧150mg/dL
3.HDL−コレステロール:<40mg/dL(男性)
4.血圧:≧130/85mmHg(SBP≧130またはDBP≧85)
5.空腹時血中グルコース:≧110mg/dLまたは≧100mg/dL。
【0057】
NCEPの定義は、検証されている(Laaksonen DE, et al. Am J Epidemiol. (2002) 156:1070-7)。血中トリグリセリドおよびHDLコレステロールは、医学的分析における標準的方法でも求めることができ、例えばThomas L(編集者):「実験および診断(Labor und Diagnose)」、TH-Books Verlagsgesellschaft mbH, Frankfurt/Main, 2000に記載されている。
【0058】
一般的に使用される定義によると、収縮期血圧(SBP)が140mmHgの値を超え、弛緩期血圧(DBP)が90mmHgの値を超えた場合、高血圧と診断される。患者が顕性糖尿病を患っている場合、収縮期血圧を130mmHg未満のレベルまで低下させ、弛緩期血圧を80mmHg未満のレベルまで低下させることが現在推奨されている。
【0059】
NODAT(移植術後の新しい糖尿病の開始)およびPTMS(移植術後メタボリックシンドローム)の定義は、2型糖尿病に対しては米国糖尿病学会および国際糖尿病連合(IDF)の診断基準に、メタボリックシンドローム対してはアメリカ心臓協会/国立心臓・肺・血液研究所の診断基準に厳密に従う。NODATおよび/またはPTMSは、微小血管性および大血管性疾患およびイベント、移植片拒絶、感染症、ならびに死亡のリスクの増大を伴う。一部の予測材料が、NODATおよび/またはPTMSに関連した潜在的リスクファクターとして同定されているが、これらには、より高齢での移植、男性の性別、移植術前の体型指数、移植術前の糖尿病、および免疫抑制が含まれる。
【0060】
「高尿酸血症」という用語は、全血清尿酸レベルが高い状態を意味する。ヒト血液において、3.6mg/dL(約214μモル/L)〜8.3mg/dL(約494μモル/L)の間の尿酸濃度は、米国医師会で正常とみなされている。高い全血清尿酸レベル、または高尿酸血症は、いくつかの病気を伴うことが多い。例えば、高い全血清尿酸レベルは痛風として知られる関節の一種の関節炎を起こす可能性がある。痛風は、血流中の全尿酸レベルの濃度上昇が原因で、関節の関節軟骨、腱および周囲の組織上に蓄積されたモノナトリウム尿酸または尿酸結晶により生じる状態である。これらの組織上に蓄積された尿酸塩または尿酸は、これら組織の炎症性の反応を挑発する。尿中の尿酸が飽和レベルになると、尿酸塩または尿酸が腎臓内で結晶化した場合、腎石が形成されることになり得る。さらに、高い全血清尿酸レベルは、循環器系疾患および高血圧を含めた、いわゆるメタボリックシンドロームを伴うことが多い。
【0061】
本発明の範囲で「DPP−4阻害剤」という用語は、酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−4)について抑制活性を示す化合物に関する。このような抑制活性は、IC50値により特徴づけることができる。DPP−4阻害剤は、好ましくは10000nM未満、好ましくは1000nM未満のIC50値を示す。あるDPP−4阻害剤は、100nM未満、さらには≦50nMのIC50値を示す。DPP−4阻害剤のIC50値は、通常0.01nMを超え、さらには0.1nMを超える。DPP−IV阻害剤は、生物および非生物、特に非ペプチド性化合物を含み得る。DPP−4に対する抑制効果は、文献において既知の方法、特に、その全体が本明細書に参照により組み込まれている、出願WO02/068420またはWO2004/018468(34頁)に記載されている通りもとめることができる。「DPP−4阻害剤」という用語はまた、それぞれの結晶形態を含めた、任意の医薬的に許容されるその塩、水和物および溶媒和物を含む。
【0062】
「治療」および「治療する」という用語は、特に顕性の形態で、前記状態をすでに発症している患者の治療上の処置を含む。治療上の処置は、特定の適応症の症状を和らげるための対症療法、または適応症の状態を寛解もしくは部分的に寛解させるため、または疾患の進行を停止もしくは遅延させるための原因療法であってよい。したがって、本発明の組成物および方法は、例えばある期間にわたり治療上の処置として、ならびに慢性的治療として使用してもよい。
【0063】
「予防的に治療する」、「予防として治療する」および「予防する」という用語は、交換可能なように使用され、本明細書中のこれより前に記載の状態を引き起こすリスクのある患者の治療、したがって前記リスクを低下させることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明による態様、特に医薬組成物、方法および使用は、本明細書中のこれより前後に定義されているDPP−4阻害剤、第2および/または第3の抗糖尿病薬を指す。本発明による方法および使用において、第2の抗糖尿病薬、第3の抗糖尿病薬を投与してもよい、すなわちDPP−4阻害剤を、第2の抗糖尿病薬と、第3の抗糖尿病薬と組み合わせて、または第2の抗糖尿病薬なしで、任意で第3の抗糖尿病薬なしで投与してもよい。本発明による方法および使用において、第3の抗糖尿病薬を投与してもよい、すなわち、DPP−4阻害剤と第2抗糖尿病薬とを、第3の抗糖尿病薬と組み合わせて、または第3の抗糖尿病薬なしで投与する。
第1の実施形態(実施形態A)では、本発明の文脈においてDPP−4阻害剤は、式(I)の
【0065】
【化1】

または式(II)
【0066】
【化2】

または式(III)
【0067】
【化3】

または式(IV)
【0068】
【化4】

(式中、R1は、([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル、(キナゾリン−2−イル)メチル、(キノキサリン−6−イル)メチル、(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル、2−シアノ−ベンジル、(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル、(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル、(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル、または(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチルを示し、R2は、3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル、(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノまたは(2−(S)−アミノ−プロピル)−メチルアミノ、またはその医薬的に許容される塩を示す)
の任意のDPP−4阻害剤または医薬的に許容されるその塩である。
【0069】
第2の実施形態(実施形態B)では、本発明の文脈においてDPP−4阻害剤は、
シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、
(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリル、
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン、
(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン、
(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オン、
(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、
(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリル、
5−{(S)−2−[2−((S)−2−シアノ−ピロリジン−1−イル)−2−オキソ−エチルアミノ]−プロピル}−5−(1H−テトラゾール−5−イル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−2,8−ジカルボン酸ビス−ジメチルアミド、
3−{(2S,4S)−4−[4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−5−イル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2−イルカルボニル}チアゾリジン、
[(2R)−1−{[(3R)−ピロリジン−3−イルアミノ]アセチル}ピロリジン−2−イル]ボロン酸、
(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、
2−({6−[(3R)−3−アミノ−3−メチルピペリジン−1−イル]−1,3−ジメチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル}メチル)−4−フルオロベンゾニトリル、および
6−[(3R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル]−5−(2−クロロ−5−フルオロ−ベンジル)−1,3−ジメチル−1,5−ジヒドロ−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−2,4−ジオン、
からなる群から選択されるDPP−4阻害剤または医薬的に許容されるその塩である。
【0070】
第1の実施形態(実施形態A)に関して、好ましいDPP−4阻害剤は、以下の化合物および医薬的に許容されるその塩のいずれかまたはすべてである:
・ 1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2004/018468の実施例2(142)と比較のこと):
【0071】
【化5】

・ 1−[([1,5]ナフチリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2004/018468の実施例2(252)と比較のこと):
【0072】
【化6】

・ 1−[(キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2004/018468の実施例2(80)と比較のこと):
【0073】
【化7】

・ 2−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−(ブタ−2−イニル)−5−(4−メチル−キナゾリン−2−イルメチル)−3,5−ジヒドロ−イミダゾ[4,5−d]ピリダジン−4−オン(WO 2004/050658の実施例136と比較のこと):
【0074】
【化8】

・ 1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチイン−1−イル)−8−[(2−アミノ−2−メチル−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(WO 2006/029769の実施例2(1)と比較のこと):
【0075】
【化9】

・ 1−[(3−シアノ−キノリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2005/085246の実施例1(30)と比較のこと):
【0076】
【化10】

・ 1−(2−シアノ−ベンジル)−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2005/085246の実施例1(39)と比較のこと):
【0077】
【化11】

・ 1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−[(S)−(2−アミノ−プロピル)−メチルアミノ]−キサンチン(WO 2006/029769の実施例2(4)と比較のこと):
【0078】
【化12】

・ 1−[(3−シアノ−ピリジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2005/085246の実施例1(52)と比較のこと):
【0079】
【化13】

・ 1−[(4−メチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2005/085246の実施例1(81)と比較のこと):
【0080】
【化14】

・ 1−[(4,6−ジメチル−ピリミジン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2005/085246の実施例1(82)と比較のこと):
【0081】
【化15】

・ 1−[(キノキサリン−6−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−((R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン(WO 2005/085246の実施例1(83)と比較のこと):
【0082】
【化16】

【0083】
本発明の実施形態Aの上述のDPP−4阻害剤の中で、より好ましいDPP−4阻害剤は、1−[(4−メチル−キナゾリン−2−イル)メチル]−3−メチル−7−(2−ブチン−1−イル)−8−(3−(R)−アミノ−ピペリジン−1−イル)−キサンチン、特にその遊離塩基(リナグリプチンまたはBI1356としても知られている)である。
さらなるDPP−4阻害剤として、以下の化合物を挙げることができる:
−以下の構造式Aを有するシタグリプチン(MK−0431)は、(3R)−3−アミノ−1−[3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−5H−[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7−イル]−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−1−オン、または、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンと称する。
【0084】
【化17】

【0085】
一実施形態では、シタグリプチンは、二水素リン酸塩、すなわちシタグリプチンリン酸塩の形態である。さらなる実施形態では、シタグリプチンリン酸塩は、結晶性無水物または一水和物の形態である。この実施形態の一種類は、シタグリプチンリン酸塩一水和物を指す。シタグリプチン遊離塩基および医薬的に許容されるその塩は、米国特許第6,699,871号およびWO03/004498の実施例7で開示されている。結晶性シタグリプチンリン酸塩一水和物は、WO2005/003135およびWO2007/050485で開示されている。
【0086】
この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
シタグリプチンの錠剤製剤は、Januvia(登録商標)という商品名で市販されている。シタグリプチン/メトホルミンの組合せの錠剤製剤は、Janumet(登録商標)という商品名で市販されている。
−以下の構造式Bを有するビルダグリプチン(LAF−237)は、(2S)−{[(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アミノ]アセチル}ピロリジン−2−カルボニトリルであり、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンとも称する。
【0087】
【化18】

【0088】
ビルダグリプチンは、米国特許第6,166,063およびWO00/34241の実施例1で具体的に開示されている。ビルダグリプチンの特定の塩は、WO2007/019255で開示されている。ビルダグリプチンの結晶形態ならびにビルダグリプチンの錠剤製剤はWO2006/078593で開示されている。ビルダグリプチンは、WO00/34241またはWO2005/067976に記載の通り製剤化することができる。改質された放出用ビルダグリプチン製剤は、WO2006/135723に記載されている。
【0089】
この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0090】
ビルダグリプチンの錠剤製剤は、Galvus(登録商標)という商品名で市販されることが見込まれている。ビルダグリプチン/メトホルミンの組合せの錠剤製剤は、Eucreas(登録商標)という商品名で市販される。
−以下の構造式Cを有するサクサグリプチン(BMS−477118)は、(1S,3S,5S)−2−{(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)アセチル}−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリルであり、(S)−3−ヒドロキシアダマンチルグリシン−L−cis−4,5−メタノプロリンニトリルとも称する。
【0091】
【化19】

【0092】
サクサグリプチンは、米国特許第6,395,767号およびWO01/68603の実施例60で具体的に開示されている。
一実施形態では、サクサグリプチンは、WO2004/052850に開示されているそのHCl塩またはその一安息香酸塩の形態である。さらなる実施形態では、サクサグリプチンは、遊離塩基の形態である。またさらなる実施形態では、サクサグリプチンは、WO2004/052850に開示されている遊離塩基の一水和物の形態である。サクサグリプチンのHCl塩およびその遊離塩基の結晶形態は、WO2008/131149に開示されている。サクサグリプチンを調製するための方法は、WO2005/106011およびWO2005/115982でも開示されている。サクサグリプチンは、WO2005/117841に記載の通り錠剤へと製剤化することができる。
【0093】
この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
−以下の構造式Eを有するアログリプチン(SYR−322)は、2−({6−[(3R)−3−アミノピペリジン−1−イル]−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イル}メチル)ベンゾニトリルである。
【0094】
【化20】

【0095】
アログリプチンは、US2005/261271、EP1586571およびWO2005/095381で具体的に開示されている。一実施形態では、アログリプチンは、それぞれWO2007/035629に記載されている、その安息香酸塩、その塩酸塩またはそのトシル酸塩の形態である。実施形態の一種類では、アログリプチンベンゾエートについて言及している。アログリプチンベンゾエートの多形体は、WO2007/035372で開示されている。アログリプチンを調製するための方法は、WO2007/112368、特にWO2007/035629で開示されている。アログリプチン(すなわちその安息香酸塩)は、錠剤へと製剤化することができ、WO2007/033266に記載の通り投与することができる。アログリプチン/ピオグリタゾンの固体製剤ならびにその調製および使用は、WO2008/093882に記載されている。アログリプチン/メトホルミンの固体製剤ならびにその調製および使用は、WO2009/011451に記載されている。
【0096】
この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0097】
−(2S)−1−{[2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エチルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたは医薬的に許容されるその塩、好ましくはそのメシル酸塩、または(2S)−1−{[1,1,−ジメチル−3−(4−ピリジン−3−イル−イミダゾール−1−イル)−プロピルアミノ]−アセチル}−ピロリジン−2−カルボニトリルまたは医薬的に許容されるその塩:
これらの化合物およびこれらの調製のための方法は、WO03/037327で開示されている。
【0098】
前者化合物のメシル酸塩ならびにその結晶性多形体は、WO2006/100181で開示されている。後者の化合物のフマル酸塩ならびにその結晶性多形体は、WO2007/071576で開示されている。これらの化合物は、WO2007/017423に記載の医薬組成物へと製剤化することができる。
これらの化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0099】
−(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン(またカルメグリプチンとも称す)または医薬的に許容されるその塩:
【0100】
【化21】

この化合物およびその調製のための方法は、WO2005/000848に開示されている。この化合物(具体的にその二塩酸塩)を調製するための方法は、WO2008/031749、WO2008/031750およびWO2008/055814でも開示されている。この化合物は、WO2007/017423に記載の医薬組成物へと製剤化することができる。
【0101】
この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−((2S,4S)−4−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ピロリジン−2−イル)メタノン(ゴソグリプチンとも称する)または医薬的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製のための方法は、WO2005/116014およびUS7291618で開示されている。
【0102】
この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
−(1((3S,4S)−4−アミノ−1−(4−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)ピロリジン−3−イル)−5,5−ジフルオロピペリジン−2−オンまたは医薬的に許容されるその塩:
【0103】
【化22】

この化合物およびその調製の方法は、WO2007/148185およびUS20070299076に開示されている。この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0104】
−(2S,4S)−1−{2−[(3S,1R)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンチルアミノ]−アセチル}−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル(メログリプチンとも称する)またはその医薬的に許容される塩:
【0105】
【化23】

この化合物およびその調製の方法は、WO2006/040625およびWO2008/001195に開示されている。具体的に主張された塩にはメタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩が含まれる。この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
−(R)−2−[6−(3−アミノ−ピペリジン−1−イル)−3−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−イルメチル]−4−フルオロ−ベンゾニトリルまたは医薬的に許容されるその塩:
【0106】
【化24】

この化合物およびその調製の方法およびその使用は、WO2005/095381、US2007060530、WO2007/033350、WO2007/035629、WO2007/074884、WO2007/112368、WO2008/033851、WO2008/114800およびWO2008/114807に開示されている。具体的に主張された塩には、コハク酸塩(WO2008/067465)、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、(R)−マンデル酸塩および塩酸塩が含まれる。この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0107】
−5−{(S)−2−[2−((S)−2−シアノ−ピロリジン−1−イル)−2−オキソ−エチルアミノ]−プロピル}−5−(1H−テトラゾル−5−イル)−10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−2,8−ジカルボン酸ビス−ジメチルアミドまたは医薬的に許容されるその塩:
【0108】
【化25】

この化合物およびその調製の方法は、WO2006/116157およびUS2006/270701で開示されている。この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0109】
−3−{(2S,4S)−4−[4−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾール−5−イル)ピペラジン−1−イル]ピロリジン−2−イルカルボニル}チアゾリジン(テネリグリプチンとも称する)または医薬的に許容されるその塩:
【0110】
この化合物およびその調製の方法は、WO02/14271で開示されている。特定の塩は、WO2006/088129およびWO2006/118127で開示されている(中でも塩酸塩、臭化水素酸塩が含まれる)。この化合物を用いた併用療法がWO2006/129785に記載されている。この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0111】
−[(2R)−1−{[(3R)−ピロリジン−3−イルアミノ]アセチル}ピロリジン−2−イル]ボロン酸(ドゥトグリプチンとも称す)または医薬的に許容されるその塩:
この化合物およびその調製方法は、WO2005/047297、WO2008/109681およびWO2009/009751で開示されている。特定の塩が、WO2008/027273で開示されている(クエン酸塩、酒石酸塩が含まれる)。この化合物の製剤化がWO2008/144730に記載されている。この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0112】
−(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]oct−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリルまたはその医薬的に許容される塩:
この化合物およびその調製の方法は、WO2005/075421、US2008/146818およびWO2008/114857に開示されている。この化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0113】
−2−({6−[(3R)−3−アミノ−3−メチルピペリジン−1−イル]−1,3−ジメチル−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−5−イル}メチル)−4−フルオロベンゾニトリルまたは医薬的に許容されるその塩、または6−[(3R)−3−アミノ−ピペリジン−1−イル]−5−(2−クロロ−5−フルオロ−ベンジル)−1,3−ジメチル−1,5−ジヒドロ−ピロロ[3,2−d]ピリミジン−2,4−ジオンもしくは医薬的に許容されるその塩:
これらの化合物およびこれらの調製の方法は、それぞれWO2009/084497およびWO2006/068163に開示されている。これらの化合物またはその塩を、例えば製造、製剤化または使用するための方法の詳細については、これら文献が上で参照されている。
【0114】
好ましくはそのDPP−4阻害剤は、リナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、サクサグリプチン、カルメグリプチン、メログリプチン、ゴソグリプチン、テネリグリプチンおよびドゥトグリプチン、または本明細書中に記載のDPP−4阻害剤のうちの1つの医薬的に許容される塩、もしくはそのプロドラッグからなる群G2から選択される。
【0115】
本発明内で強調されるべき特に好ましいDPP−4阻害剤はリナグリプチンである。本明細書中で使用されている「リナグリプチン」という用語は、リナグリプチン、ならびにその水和物および溶媒和物を含めた医薬的に許容されるその塩、およびその結晶形態を指す。結晶形態は、WO2007/128721に記載されている。リナグリプチンを製造する方法は、例えば特許出願WO2004/018468およびWO2006/048427に記載されている。リナグリプチンは、構造的に類似のDPP−4阻害剤から区別される、ひときわ優れた作用強度および持続性効果、有利な薬理学的特性、受容体選択性、有利な副作用プロファイルとを合わせ持ち、または単剤療法において、および/または本発明による、第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬と組み合わせて使用した場合、予想外の治療上の利点または改善をもたらす。
【0116】
いかなる疑いも回避するため、特定されたDPP−4阻害剤に関連して上で引用された前述の文献のそれぞれの開示は、その全体が本明細書に参照により具体的に組み込まれている。
本発明の一態様において、本発明による医薬組成物、方法および使用は、唯一の有効成分として(すなわち、第2および第3の抗糖尿病薬は両方とも存在しない)DPP−4阻害剤を含む組成物、および/または、DPP−4阻害剤をそれぞれ単独で用いた単剤療法に関する。
本発明の別の態様では、本発明による医薬組成物、組合せ、方法および使用は、DPP−4阻害剤と、第2の抗糖尿病薬を唯一の有効成分として(すなわち、第3の抗糖尿病薬は存在しない)含むそのような組成物または組合せ、および/または、DPP−4阻害剤および第2の抗糖尿病薬をそれぞれ用いた2剤併用療法に関する。
本発明の別の態様では、本発明による医薬組成物、組合せ、方法および使用は、DPP−4阻害剤と、第2および第3の抗糖尿病薬とを含むそのような組成物または組合せ、および/またはDPP−4阻害剤、第2および第3の抗糖尿病薬をそれぞれ用いた3剤併用療法に関する。
【0117】
さらに、本発明によるDPP−4阻害剤は、前記DPP−4阻害剤が、慢性腎不全(例えば軽度、中等度または重度の腎臓機能障害または末期腎疾患)を患っている2型糖尿病患者の腎糸球体機能および/または尿細管機能を有意に損なわず、および/または前記DPP−4阻害剤は、障害された腎機能(例えば軽度、中等度または重度の腎臓機能障害または末期腎疾患)を患っている2型糖尿病患者において投与調整を必要としないことをさらに特徴とする。
【0118】
第2の抗糖尿病薬および、存在する場合、第3の抗糖尿病薬は、ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤、GLP−1類縁体または医薬的に許容されるその塩からなる群G3から選択される。以下の好ましい実施形態では、第2および/または第3の抗糖尿病薬に関して記載されている。
【0119】
群G3はビグアニドを含む。ビグアニドの例は、メトホルミン、フェンホルミンおよびブホルミンである。好ましいビグアニドはメトホルミンである。DPP−4阻害剤は、ビグアニド、特にメトホルミンと組み合わせて、より効果的な血糖コントロールを提供することができ、および/またはビグアニドと共に作用することによって、一般的に2型糖尿病を伴うメタボリックシンドロームに対して、例えば全体的に有利な効果のある、例えば減量ができる。
「メトホルミン」という用語は、本明細書中で使用する場合、メトホルミンまたは医薬的に許容されるその塩、例えば塩酸塩、メトホルミン(2:1)フマル酸塩、およびメトホルミン(2:1)コハク酸塩、臭化水素酸塩、p−クロロフェノキシ酢酸塩またはエンボン酸塩、および他の公知の、一塩基性および二塩基性カルボン酸のメトホルミン塩を指す。本明細書中で使用されるメトホルミンは、メトホルミン塩酸塩が好ましい。
【0120】
群G3は、チアゾリジンジオンを含む。チアゾリジンジオン(TZD)の例はピオグリタゾンおよびロシグリタゾンである。TZD治療は、体重増加および脂肪再分布を伴う。加えて、TZDは、液体保持を引き起こし、うっ血性心不全を患う患者には適応されない。TZDを用いた長期治療は、骨破断のリスクの上昇をさらに伴う。DPP−4阻害剤は、チアゾリジンジオン、特にピオグリタゾンと組み合わせて、より効果的な血糖コントロールを提供でき、および/またはTZDを用いた治療の副作用を最小限に抑えることができる。
【0121】
「ピオグリタゾン」という用語は、本明細書中で使用する場合、ピオグリタゾンを指し、これには、その鏡像異性体、その混合物およびそのラセミ体、または医薬的に許容されるその塩例えばその塩酸塩などが含まれる。
「ロシグリタゾン」という用語は、本明細書中で使用する場合、ロシグリタゾンを指し、これには、その鏡像異性体、その混合物およびそのラセミ体、または医薬的に許容されるその塩、例えばそのマレイン酸塩などが含まれる。
【0122】
群G3は、スルホニル尿素を含む。スルホニル尿素の例は、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド、グリブリド、グリソキセピドおよびグリクラジドである。好ましいスルホニル尿素は、トルブタミド、グリキドン、グリベンクラミドおよびグリメピリド、特にグリベンクラミドおよびグリメピリドである。スルホニル尿素の効果は、治療の経過と共に徐々に消えるので、DPP−4阻害剤とスルホニル尿素との組合せは、より良い血糖コントロールの点から患者に追加の利益をもたらすことができる。また、スルホニル尿素を用いた治療は、通常、治療の経過と共に、ゆっくりとした体重増加を伴うので、DPP−4阻害剤は、スルホニル尿素を用いた治療のこの副作用を最小限に抑え、および/またはメタボリックシンドロームを改善することができる。また、スルホニル尿素と組み合わせたDPP−4阻害剤は、スルホニル尿素の別の望ましくない副作用である低血糖を最小限に抑えることができる。この組合せはまたスルホニル尿素の投与量の削減を可能とすることができ、これは低血糖の低下へとつながり得る。
【0123】
群「グリベンクラミド」、「グリメピリド」、「グリキドン」、「グリボルヌリド」、「グリクラジド」、「グリソキセピド」、「トルブタミド」および「グリピジド」の各用語は、本明細書中で使用する場合、それぞれ活性のある薬剤または医薬的に許容されるその塩を指す。
【0124】
群G3は、グリニドを含む。グリニドの例は、ナテグリニド、レパグリニドおよびミチグリニドである。これらの効果は、治療の経過と共に徐々に消えるので、DPP−4阻害剤とメグリチニドとの組合せは、より良い血糖コントロールの点から患者に追加の利益をもたらすことができる。また、メグリチニドを用いた治療は、通常、治療の経過と共に、ゆっくりとした体重増加を伴うので、DPP−4阻害剤は、メグリチニドを用いた治療のこの副作用を最小限に抑え、および/またはメタボリックシンドロームを改善することができる。また、メグリチニドと組み合わせたDPP−4阻害剤は、メグリチニドの別の望ましくない副作用である低血糖を最小限に抑えることができる。この組合せはまたメグリチニドの投与の削減を可能とすることができ、これは低血糖の低下へとつながり得る。
【0125】
「ナテグリニド」という用語は、本明細書中で使用する場合、ナテグリニドを指し、これには、その鏡像異性体、その混合物およびそのラセミ体、または医薬的に許容されるその塩およびそのエステルが含まれる。
「レパグリニド」という用語は、本明細書中で使用する場合、レパグリニドを指し、これには、その鏡像異性体、その混合物およびそのラセミ体、または医薬的に許容されるその塩およびそのエステルが含まれる。
【0126】
群G3は、α−グルコシダーゼ阻害剤を含む。α−グルコシダーゼ阻害剤の例は、アカルボース、ボグリボースおよびミグリトールである。DPP−4阻害剤とα−グルコシダーゼ阻害剤との組合せの追加の利益は、より効果的な血糖コントロール、例えば、個々の薬剤の投与量の削減、および/またはα−グルコシダーゼ阻害剤の望ましくない消化器系副作用の軽減などに関連する。
群「アカルボース」、「ボグリボース」および「ミグリトール」の各用語は、本明細書中で使用する場合、それぞれの活性のある薬剤または医薬的に許容されるその塩を指す。
【0127】
群G3は、GLP−1類縁体阻害剤を含む。GLP−1類縁体の例は、エクセナチド、リラグルチド、タスポグルチド、セマグルチド、アルビグルチド、およびリキシセナチドである。DPP−4阻害剤およびGLP−1類縁体の組合せは、優れた血糖コントロール、例えば個々の薬剤の投与量の削減などを達成し得る。加えて、例えばGLP−1類縁体の減量能力は、DPP−4阻害剤の特性と共に正に作用し得る。他方では、例えばより低い投与量のGLP−1類縁体がDPP−4阻害剤と組み合わせて適用される場合、副作用の削減(例えば吐き気、消化器系副作用、例えば嘔吐など)を達成できる。
【0128】
群「エクセナチド」、「リラグルチド」、「タスポグルチド」、「セマグルチド」、「アルビグルチド」および「リキシセナチド」の各用語は、本明細書中で使用する場合、それぞれの活性のある薬剤または医薬的に許容されるその塩を指す。
【0129】
一実施形態(実施形態E1)では、本発明による医薬組成物、組合せ、方法および使用は、DPP−4阻害剤と、第2の抗糖尿病薬とが、好ましくは表1の記入項目に従い選択される組合せに関する。
【0130】
表1
【表1】











【0131】
ある特定の実施形態では(実施形態E2)、本発明による医薬組成物、組合せ、方法および使用は、DPP−4阻害剤がリナグリプチンである組合せに関する。実施形態E2によると、第2の抗糖尿病薬は、好ましくは表2の記入項目に従い選択される。
【0132】
表2
【表2】

【0133】
DPP−4阻害剤と、第2の抗糖尿病薬と、任意で、第3の抗糖尿病薬との、本発明による組合せは、特に本明細書中で以下に記載されている患者において、DPP−4阻害剤または第2の抗糖尿病薬または第3の抗糖尿病薬のいずれかを単独で用いた単剤療法、例えばメトホルミンの単剤療法、または第2の抗糖尿病薬および第3の抗糖尿病薬を用いた2剤療法と比較して、血糖コントロールを改善することを認めることができる。さらに、本発明による、DPP−4阻害剤と、第2の抗糖尿病薬と、第3の抗糖尿病薬との、3剤併用は、特に本明細書中で以下に記載されている患者において、DPP−4阻害剤と、第2の抗糖尿病薬もしくは第3の抗糖尿病薬のいずれかとを用いた、または第2の抗糖尿病薬と第3の抗糖尿病薬とを用いた併用療法と比較して、血糖コントロールを改善することを認めることができる。血糖コントロールの改善は、血糖値の低下が増加したこと、およびHbA1cの低下が増加したことにより判定される。患者、特に本明細書中で以下に記載されている患者において単剤療法を用いて、ある最高の投与量を超えた薬剤投与により、血糖コントロールをさらに有意に改善することはできない。加えて、最高の投与量を用いた長期治療は、潜在的な副作用を考慮すると好ましくないこともある。したがって、血糖コントロールを満足させることは、DPP−4阻害剤または第2の抗糖尿病薬または第3の抗糖尿病薬のいずれかを単独で用いる単剤療法を介して全患者が達成可能でないこともある。単剤療法により完全な血糖コントロールが得られない場合、2剤療法が必要となり得る。DPP−4阻害剤および第2の抗糖尿病薬および第3の抗糖尿病薬から選択される2つの薬剤を用いた併用療法でさえも、全患者に対する、および/または長期間にわたる、完全な血糖コントロールを得ることができないこともある。2剤療法から完全な血糖コントロールを得ることができない場合、3剤療法が必要となり得る。血糖コントロールが不十分なこのような患者は、糖尿病の進行が継続することがあり、糖尿病に伴う合併症、例えば大血管性合併症が起こり得る。本発明による医薬組成物または組合せならびに方法により、より多数の患者およびより長い期間にわたる治療上の処置に対して、例えば、組合せパートナーのうちの1つを用いて、または、組合せパートナーのうちの2つをそれぞれ用いた2剤療法を用いて、単剤療法と比較した2剤または3剤併用療法の場合、HbA1c値を所望の標的範囲、例えば<7%、好ましくは<6.5%へと低下させることが可能となる。
【0134】
加えて、本発明による、DPP−4阻害剤と、第2の治療薬、任意で第3の治療薬との組合せは、DPP−4阻害剤または第2もしくは第3の抗糖尿病薬のいずれかの投与量の低下、または2もしくは3つの有効成分の投与量の低下さえも認めることができる。投与量の低下は、1つまたは複数の有効成分のより高い投与量を用いた治療における副作用、特に第2および/または第3の抗糖尿病薬により引き起こされる副作用に関して、別の方法ではこの副作用に潜在的に悩まされていたであろう患者に有利である。したがって、本発明による医薬組合せならびに方法は、より少ない副作用を示し、これによって治療がより耐えられるものとなり、患者の治療へのコンプライアンスが改善される。
【0135】
本発明によるDPP−4阻害剤は、活性のあるGLP−1レベルの増加を介して、患者のグルカゴン分泌を低下させることができる。したがって、これにより肝臓のグルコース産生を制限することになる。さらに、DPP−4阻害剤により生じた、活性のあるGLP−1の上昇レベルは、β細胞再生および新生に対して有利な効果を生じることになる。DPP−4阻害剤のすべてのこれらの特徴により、本発明の医薬組成物または組合せまたは方法は、かなり有用で、治療上関連性のあるものとなることができる。
本発明が、治療または予防を必要とする患者に言及している場合、これは、主にヒトにおける治療および予防に関するが、医薬組成物は、哺乳動物における獣医薬にも適宜使用することができる。本発明の範囲では、成人患者は、18才以上の年齢のヒトであることが好ましい。同様に本発明の範囲内では、患者は青年のヒト、すなわち年齢10から18才未満のヒト、好ましくは年齢13から18才未満である。
【0136】
本発明の一実施形態では、本発明による治療または予防は、過体重および肥満、特にクラスIの肥満、クラスIIの肥満、クラスIIIの肥満、内臓肥満および腹部肥満からなる群から選択される1つまたは複数の状態であると診断された、そのような治療または予防を必要とする患者に適している。加えて、本発明による治療または予防は、体重増加が禁忌である患者に有利に適している。例えば第2および/または第3の抗糖尿病薬の投与が原因の、治療での任意の体重増加作用を、減弱することができるか、またはさらに回避することができる。
【0137】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の医薬組成物または組合せは、血糖コントロールに関して、特に空腹時血漿グルコース、摂食後の血漿グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)の低下の点では、非常に優れた効果を示す。本発明による医薬組成物または組合せを投与することによって、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上、さらにより好ましくは3.0%以上のHbA1cの低下を達成でき、この低下は特に1.0%から3.0%の範囲である。
【0138】
さらに、本発明による方法および/または使用は、以下の状態のうちの1つ、または2つ以上を示す患者に応用できる:
(a)110mg/dLを超える、100mg/dLを超える、特に125mg/dLを超える、空腹時血中グルコースまたは血清グルコース濃度、
(b)140mg/dL以上の摂食後血漿グルコース、
(c)6.5%以上、特に7.0%以上、特に7.5%以上、さらにより特定して8.0%以上のHbA1c値。
【0139】
本発明はまた、2型糖尿病を有するか、または糖尿病前症の最初の徴候を示す患者の血糖コントロールを改善するための医薬組成物または組合せの使用を開示する。したがって、本発明はまた、糖尿病の予防も含む。したがって、糖尿病前症の上述の徴候のうちの1つが現れたらすぐに、本発明の医薬組成物または組合せを使用して、血糖コントロールを改善すれば、顕性2型糖尿病の開始を遅延または予防することができる。
さらに、本発明の医薬組成物または組合せは、インスリン依存性のある患者、
すなわち治療を受けている患者、
またはさもなければ、インスリンもしくはインスリン誘導体、またはインスリン代替物、またはインスリンもしくはその誘導体もしくは代替物を含む製剤を用いて治療を受けることになる、または必要となる患者の治療に特に適している。これらの患者は、糖尿病2型を患う患者および糖尿病1型を患う患者を含む。
【0140】
したがって、本発明の実施形態によると、耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームおよび/または2型もしくは1型糖尿病と診断された、それを必要とする患者において、血糖コントロールを改善するため、および/または空腹時血漿グルコース、摂食後血漿グルコースならびに/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための方法であって、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬(これらは、本明細書中のこれより前後に定義されている)とを、例えば組み合わせて、この患者に投与することを特徴とする方法が提供される。
【0141】
本発明の別の実施形態により、ダイエットおよび運動の付加物として、患者、特に2型糖尿病を患う成人患者における、血糖コントロールを改善するための方法が提供される。
他に明記されていない限り、本発明の意味の範囲の患者は、薬物治療経験のない患者および/または薬剤で事前に治療した患者、例えば1つもしくは複数の従来の経口および/もしくは非経口の抗糖尿病薬で治療した患者を含み得る。したがって、他に明記されていない限り、本発明の意味の範囲内の併用療法には、最初の併用療法、代替式および/または追加式併用療法が含まれてもよい。
【0142】
本発明に従い医薬組成物または組合せを使用することによって、特に第2もしくは第3の抗糖尿病薬、または第2の抗糖尿病薬と第3の抗糖尿病薬との組合せを用いた治療にもかかわらず、例えばメトホルミンまたはメトホルミンと第3の抗糖尿病薬との組合せを用いた最大耐容性を示す投与量の経口単剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な患者でさえ、血糖コントロールの改善を達成できることを認めることができる。
【0143】
したがって、本発明による医薬組成物または組合せを使用することによって、メトホルミン、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)もしくはスルホニル尿素を用いた最大耐容性を示す投与量の経口単剤療法、またはメトホルミンとスルホニル尿素、メトホルミンとチアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)、もしくはチアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)とスルホニル尿素を用いた経口併用療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な患者でさえも血糖コントロールの改善が達成できることが認められる。
本発明による組合せを使用することによって、特に、DPP−4阻害剤またはDPP−4阻害剤と、第2もしくは第3の抗糖尿病薬との組合せを用いた治療、例えばDPP−4阻害剤を用いた最大の耐容性を示す投与量の経口単剤療法、またはDPP−4阻害剤と第2もしくは第3の抗糖尿病薬の2剤併用を用いた治療にもかかわらず、血糖コントロールが不十分な患者でさえ、血糖コントロールの改善が達成できることをさらに認めることができる。
【0144】
メトホルミンに関する最大耐容性を示す投与量は、例えば1日あたり2000mg、1日あたり1500mg(例えばアジア諸国において)または850mgを1日3回またはその任意の当量である。シタグリプチンに関する最大耐容性を示す投与量は、例えば100mgを1日1回またはその任意の当量である。
【0145】
したがって、本発明による方法および/または使用は、以下の状態のうちの1つ、または2つ以上を示す患者に応用できる:
(a)ダイエットおよび運動のみでは、不十分な血糖コントロール
(b)メトホルミンを用いた経口単剤療法にもかかわらず、特に最大の耐容性を示す投与量でのメトホルミンの経口単剤療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール
(c)第2または第3の抗糖尿病薬を用いた経口単剤療法にもかかわらず、特に最大の耐容性を示す投与量での第2または第3の抗糖尿病薬の経口単剤療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール
(d)第2および第3の抗糖尿病薬の群から選択される2つの薬剤を用いた併用療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール
(e)チアゾリジンジオンを用いた経口単剤療法にもかかわらず、特に、最大の耐容性を示す投与量でのチアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)での経口単剤療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール
(f)スルホニル尿素を用いた経口単剤療法にもかかわらず、特に、最大の耐容性を示す投与量のスルホニル尿素での経口単剤療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール
(g)メトホルミン、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)およびスルホニル尿素からなる群から選択される2つの薬剤を用いた併用療法にもかかわらず、例えばメトホルミン/ピオグリタゾン、メトホルミン/スルホニル尿素、およびスルホニル尿素/ピオグリタゾンから選択される2剤併用を用いた併用療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール。
【0146】
本発明による方法および/または使用は、以下の状態のうちの1つまたは複数を示す患者にさらに適用できる:
(h)インスリン(例えばさらに従来の経口抗糖尿病薬有り無しで)での治療にもかかわらず、不十分な血糖コントロール
(i)インスリンと、第2および/または第3の抗糖尿病薬との併用療法にもかかわらず、特にインスリンと、最大の耐容性を示す投与量のメトホルミン、チアゾリジンジオン(例えばピオグリタゾン)またはスルホニル尿素とを用いた併用療法にもかかわらず、例えば、メトホルミン/インスリン、スルホニル尿素/インスリン、およびピオグリタゾン/インスリンから選択される2剤併用を用いた併用療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール。
【0147】
本発明による2剤または3剤の併用方法および/または使用は、以下の状態、それぞれ(j)または(k)を示す患者にさらに応用できる:
(j)DPP−4阻害剤を用いた経口単剤療法にもかかわらず、特に最大の耐容性を示す投与量でのDPP−4阻害剤の経口単剤療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール
(k)DPP−4阻害剤と、第2または第3の抗糖尿病薬とを用いた経口併用療法にもかかわらず、特に組合せパートナーのうちの少なくとも1つの最大の耐容性を示す投与量での経口の2剤療法にもかかわらず、不十分な血糖コントロール。
【0148】
本発明の一実施形態では、医薬組成物または組合せは、以下の状態のうちの1つまたは複数を有すると診断されている患者の治療に適している
−インスリン抵抗性、
−高インスリン血症、
−糖尿病前症、
−2型糖尿病、特に後期2型糖尿病を有する
−1型糖尿病。
【0149】
さらに、本発明による医薬組成物または組合せは、特に以下の状態のうちの1つまたは複数を有すると診断されている患者の治療に適している
(a)肥満(クラスI、IIおよび/またはIII肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満、
(b)トリグリセリド血中レベル≧150mg/dL、
(c)HDL−コレステロール血中レベルが、女性患者で<40mg/dL、男性患者で<50mg/dL、
(d)収縮期血圧≧130mmHgおよび弛緩期血圧≧85mmHg、
(e)空腹時血中グルコースレベル≧110mg/dLまたは≧100mg/dL。
【0150】
耐糖能障害(IGT)、空腹時血糖障害(IFG)、インスリン抵抗性、および/またはメタボリックシンドロームと診断されている患者は、循環器系疾患、例えば心筋梗塞、冠動脈心疾患、心不全、血栓塞栓症などを発症するリスクがより高いことに悩まされていることが想定される。本発明による血糖コントロールは、結果として循環器系のリスクを軽減することができる。
【0151】
さらに、本発明による医薬組成物および方法は、臓器移植術後の患者、特に以下の状態のうちの1つまたは複数を有すると診断されている患者の治療に、特に適している
(a)高齢、特に50才を超える、
(b)男性の性別、
(c)過体重、肥満(クラスI、IIおよび/またはIII肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満、
(d)移植術前糖尿病、
(e)免疫抑制治療。
【0152】
本発明による医薬組成物または組合せは、特に本明細書中のDPP−4阻害剤が原因で、優れた安全性プロファイルを示す。したがって、本発明による治療もしくは予防は、例えばメトホルミンなどの別の抗糖尿病薬を用いた単剤療法が禁忌である患者、および/または治療量でのそのような薬剤に対し不耐性である患者において可能である。特に、本発明による治療または予防は、以下の障害のうちの1つまたは複数に対し、より高いリスクを示すまたは有する患者において好都合にも可能であってよい:腎不全または疾患、心疾患、心不全、肝臓疾患、肺性心疾患、異化状態および/または乳酸アシドーシスの危険、または女性患者が妊娠中もしくは授乳中である。
【0153】
さらに、本発明による医薬組成物または組合せの投与は、結果として低血糖のリスクを生じない、またはリスクが低いことが認められる。したがって、本発明による治療または予防はまた、低血糖に対してより高いリスクを示すか、または有する患者において好都合にも可能である。
【0154】
本発明による医薬組成物または組合せは、本明細書中のこれより前後に記載されている疾患および/または状態の長期の治療または予防、特に2型糖尿病を患う患者の長期血糖コントロールに、特に適している。
「長期」という用語は、本明細書中のこれより前後で使用する場合、12週間よりも長い期間、好ましくは25週間よりも長い期間、さらにより好ましくは1年よりも長い期間内での患者の治療または患者における投与を示す。
したがって、本発明のある特定の実施形態は、2型糖尿病を患う患者、特に後期2型糖尿病の患者、特に過体重、肥満(クラスI、クラスIIおよび/またはクラスIII肥満を含む)、内臓肥満および/または腹部肥満とさらに診断されている患者における、血糖コントロールの改善、特に長期改善のための治療、好ましくは経口治療のための方法を提供する。
【0155】
DPP−4阻害剤と、第2の抗糖尿病薬と、任意で第3の抗糖尿病薬とが一緒に、例えば1つの単一製剤または2つもしくは3つの個別の製剤で同時に投与された場合、および/またはこれらが2つもしくは3つの個別の製剤で、交互に、例えば連続して投与された場合の両方で、上述の効果が観察される。
【0156】
本発明内では、組合せまたは組み合わせた使用は、成分の個別投与、逐次的投与、同時投与、併用投与、経時的に時差をつけた投与、または交互の投与を予想していることを理解されたい。DPP−4阻害剤および他の活性物質(複数可)は、単一剤形またはそれぞれ個別の剤形で投与できることを理解されたい。
【0157】
この文脈での、本発明の意味の範囲内での「組合せ」または「組み合わせた」には、固定および非固定の形態および使用も含まれるが、これらに限定されない。
本発明による治療または予防における使用に必要な、患者に投与される、本発明による医薬組成物の量は、その投与経路、治療または予防が必要な状態の性質および重症度、患者の年齢、体重および状態、併用薬により異なることになり、最終的には担当医の判断によることになることを理解されたい。しかし、一般的に、本発明による、DPP−4阻害剤と、任意で第2の抗糖尿病薬および/または第3の抗糖尿病薬とは、これらの投与が治療している患者の血糖コントロールを改善させるだけの十分な量で、医薬組成物、組合せまたは剤形中に含まれる。
【0158】
DPP−4阻害剤の量の以下の好ましい範囲において、本発明による医薬組成物および方法および使用に用いる第2および/または第3の抗糖尿病薬が記載される。これらの範囲は、成人患者、特にヒト、例えば体重約70kgのヒトに関して1日あたり投与される量を指し、1日2、3、4回以上の投与に対して、および他の投与経路に対して、および患者の年齢に対して適宜適応することができる。投与量および量の範囲は、個々の活性部分に対して計算される。有利には、本発明の併用療法では、単剤療法に使用される、または従来の治療剤に使用される、個々のDPP−4阻害剤および/または個々の第2抗糖尿病薬および/または第3の抗糖尿病薬をより低い投与量で利用するので、これら薬剤が単剤療法として使用される場合に発生する、予測される毒性および有害な副作用を回避する。
【0159】
本発明の範囲内で、医薬組成物または組合せは、経口的に投与されるのが好ましい。他の投与形態が可能であり、本明細書中でこれより後に記載する。好ましくは、DPP−4阻害剤および/または第2の抗糖尿病薬および/または第3の抗糖尿病薬を含む1つまたは複数の剤形は、経口であるか、または通常周知である。
一般的に、本発明の組合せ、組合せ方法または組み合わせた使用によるDPP−4阻害剤の量は、前記DPP−4阻害剤を用いた単剤療法に対して通常推奨される量の1/5から1/1の範囲が好ましい。
【0160】
経口投与される場合のリナグリプチンの好ましい投与量の範囲は、1日あたり0.5mg〜10mg、好ましくは2.5mg〜10mg、最も好ましくは1日あたり1mg〜5mgである。医薬組成物の好ましい量の範囲は、0.5〜10mg、特に1〜5mgである。特定の有効成分含有量の例は、1、2.5、5または10mgである。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1または2回行ってもよい。リナグリプチンに適した製剤は、その開示が、その全体において、本明細書中に組み込まれている出願WO2007/128724で開示された製剤であってよい。
【0161】
リナグリプチン/メトホルミンの2剤併用の典型的な有効成分含量は、2.5/500mg、2.5/850mgおよび2.5/1000mgであり、これを1日1〜3回、特に1日2回投与することができる。
【0162】
経口投与される場合のシタグリプチンの好ましい投与量範囲は、1日あたり10〜200mg、特に25〜150mgである。推奨されているシタグリプチンの投与量は、活性部分(遊離塩基水和物)に対して計算したものが、1日1回100mgまたは1日2回50mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、10〜150mg、特に25〜100mgである。例として、25、50、75または100mgがある。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1または2回行ってもよい。シタグリプチンの塩、特にリン酸塩一水和物の当量は、適宜計算することができる。シタグリプチンの調整した投与量は、例えば25および50mgであり、好ましくは、腎不全を患う患者に使用する。シタグリプチン/メトホルミンの2剤併用の典型的な有効成分含量は、50/500mgおよび50/1000mgである。
【0163】
経口投与される場合のビルダグリプチンの好ましい投与量範囲は、1日10〜150mg、特に1日25〜150mg、25と100mg、または25と50mg、または50と100mgである。例えばビルダグリプチンの1日の投与量は50または100mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、10〜150mg、特に25〜100mgである。例として、25、50、75または100mgがある。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1または2回行ってもよい。ビルダグリプチン/メトホルミンの2剤併用の典型的な有効成分含量は、50/850mgおよび50/1000mgである。
【0164】
経口投与される場合のアログリプチンの好ましい投与量の範囲は、1日5〜250mg、特に1日10から150mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、5〜150mg、特に10〜100mgである。例として、10、12.5、20、25、50、75および100mgがある。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1回または2回行ってもよい。
【0165】
経口投与される場合のサクサグリプチンの好ましい投与量範囲は、1日2.5〜100mg、特に1日2.5から50mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、2.5〜100mg、特に2.5〜50mgである。例として、2.5、5、10、15、20、30、40、50および100mgがある。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1回または2回行ってもよい。サクサグリプチン/メトホルミンの2剤併用の典型的な有効成分含量は、2.5/500mgおよび2.5/1000mgである。
経口投与される場合のドゥトグリプチンの好ましい投与量の範囲は、1日50〜400mg、特に1日100〜400mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、50〜400mgである。例として、50、100、200、300および400mgがある。有効成分の適用は、1日3回まで、好ましくは1日1回または2回行ってもよい。
【0166】
本発明のDPP−4阻害剤の特別な実施形態は、低用量レベルで、例えば患者一人につき1日あたり、<100mgまたは<70mg、好ましくは<50mg、より好ましくは患者一人につき1日あたり<30mgまたは<20mg、さらにより好ましくは、1mg〜10mg(必要であれば、1から4回の単回用量へ、特に1または2回の単回用量へと分割し、これらの単回用量は、同じ量であってよい)、特に1mg〜5mg(より詳細には5mg)の投与量レベルで、優先的には、1日一回経口投与され、より優先的には、1日の任意の時間に、食事有り無しで投与される、経口的に投与された、治療上効果的なDPP−4阻害剤を指す。したがって、例えば、1日の経口量、5mgのBI1356を、1日1回の投与計画(すなわち5mgのBI1356を1日一回)で、または1日2回の投与計画(すなわち2.5mgのBI1356を1日2回)で、1日の任意の時間に、食事有り無しで投与することができる。
【0167】
一般的に、本発明の組合せ、組合せ方法および/または組み合わせた使用における第2および/または第3の抗糖尿病薬の量は、前記抗糖尿病薬を用いた単剤療法に対して通常推奨される量の1/5〜1/1の範囲が好ましい。単剤療法と比較して、より低い投与量の個別の第2および/または第3の抗糖尿病薬を用いることは、これら薬剤が単剤療法として使用される場合に発生する、予測される毒性および有害な副作用を回避または最小限に抑えることができる。
【0168】
経口投与される場合のメトホルミンの好ましい投与量範囲は、1日あたり250〜3000mg、特に500〜2000mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、250〜1000、特にそれぞれ500〜1000mgまたは250〜850mgである。例として、500、750、850または1000mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回または3回である。例えば500、750および850mgの量は、好ましくは、1日1回、1日2回または1日3回の毎日投薬が必要となり、1000mgの量は、好ましくは、1日1回のまたは1日2回の毎日投薬が必要となる。ある制御放出または持続放出製剤は、1日一回の投薬が可能である。メトホルミンは、例えば、グルコファージ(商標)、グルコファージ−D(商標)またはグルコファージ−XR(商標)の商標で市販されている形態で投与することができる。
【0169】
経口投与される場合のピオグリタゾンの好ましい投与量範囲は、1日あたり5〜50mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、それぞれ5〜50mg、10〜45mgおよび15〜45mgである。例として、15、30または45mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回または2回、特に1日1回である。ピオグリタゾンは、例えば、ACTOS(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
経口投与される場合のロシグリタゾンの好ましい投与量範囲は、1日あたり1mg〜10mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、1〜10mg、2〜8mg、4〜8mgおよび1〜4mgである。例として、1、2、4または8mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回または2回である。好ましくは、投与量は、1日8mgを超えてはならない。ロシグリタゾンは、例えばAVANDIA(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
【0170】
経口投与される場合のチアゾリジンジオン(上述のピオグリタゾンまたはロシグリタゾン以外)の好ましい投与量範囲は、1日あたり2〜100mgである。1日1回、2回または3回の投与に対するこの医薬組成物の好ましい量の範囲は、それぞれ2〜100、1〜50および1〜33mgである。
【0171】
経口投与される場合のグリベンクラミドの好ましい投与量範囲は、1日あたり0.5〜15mg、特に1〜10mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、0.5〜5mg、特に1〜4mgである。例として、1.0、1.75および3.5mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回または3回である。グリベンクラミドは、例えば、EUGLUCON(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
【0172】
経口投与される場合のグリメピリドの好ましい投与量範囲は、1日あたり0.5〜10mg、特に1〜6mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、0.5〜10mg、特に1〜6mgである。例として、1、2、3、4、および6mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回または3回、好ましくは1日1回である。グリメピリドは、例えばAMARYL(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
経口投与される場合のグリキドンの好ましい投与量範囲は、1日あたり5〜150mg、特に15〜120mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、5〜120mg、特に5〜30mgである。例として、10、20、30mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回、3回または4回である。グリキドンは、例えばGLURENORM(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
経口投与される場合のグリボルヌリドの好ましい投与量範囲は、1日あたり5〜75mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、5〜75mg、特に10〜50mgである。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回または3回である。
【0173】
経口投与される場合のグリクラジドの好ましい投与量範囲は、1日あたり20〜300mg、特に40〜240mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、20〜240mg、特に20〜80mgである。例として、20、30、40および50mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回または3回である。
経口投与される場合のグリソキセピドの好ましい投与量範囲は、1日あたり1〜20mg、特に1〜16mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、1〜8mg、特に1〜4mgである。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回、3回または4回である。
経口投与される場合のトルブタミドの好ましい投与量範囲は、1日あたり100〜3000mg、好ましくは500〜2000mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、100〜1000mgである。好ましくは前記量の投与は、1日1回または2回である。
【0174】
経口投与される場合のグリピジドの好ましい投与量範囲は、1日あたり1から50mg、特に2.5〜40mgである。1日1回、2回または3回の投与に対するこの医薬組成物の好ましい量の範囲は、それぞれ1〜50、0.5〜25および0.3〜17mgである。
経口投与される場合のナテグリニドの好ましい投与量範囲は、1日あたり30〜500mg、特に60〜360mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、30〜120mgである。例として、30、60および120mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回または3回である。ナテグリニドは、例えばSTARLIX(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
経口投与される場合のレパグリニドの好ましい投与量範囲は、1日あたり0.1から16mg、特に0.5〜6mgである。
【0175】
この医薬組成物の好ましい量の範囲は、0.5〜4mgである。例として、0.5、1、2または4mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回、3回または4回である。レパグリニドは、例えばNOVONORM(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
【0176】
経口投与される場合のアカルボースの好ましい投与量範囲は、1日あたり50〜1000mg、特に50〜600mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、50〜150mgである。例として、50および100mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回、3回または4回である。アカルボースは、例えばGlucobay(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
経口投与される場合のボグリボースの好ましい投与量範囲は、1日あたり100から1000mg、特に200〜600mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、50〜300mgである。例として、50、100、150、200および300mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回、3回または4回である。ボグリボースは、例えば、Basen(商標)またはVoglisan(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
【0177】
経口投与される場合のミグリトールの好ましい投与量範囲は、1日あたり25〜500mg、特に25〜300mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、25〜100mgである。例として、25、50および100mgがある。好ましくは前記量の投与は、1日1回、2回、3回または4回である。ミグリトールは、例えばGlyset(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。
【0178】
経口投与される場合のGLP−1類縁体、特にエクセナチドの好ましい投与量範囲は、1日あたり5〜30μg、特に5〜20μgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、5〜10μgである。例として5および10μgがある。好ましくは前記量の投与は、皮下注射で、1日1回、2回、3回または4回である。エクセナチドは、例えばByetta(商標)の商標でそれが市販されている形態で投与することができる。長く作用する製剤、好ましくは週に1回の皮下注射のための製剤は、0.1〜3.0mg、好ましくは0.5〜2.0mgの量のエクセナチドを含む。例として0.8mgおよび2.0mgがある。長く作用するエクセナチドの製剤の例は、Byetta LAR(商標)である。
リラグルチドの好ましい投与量範囲は、1日あたり0.5〜3mg、特に0.5〜2mgである。この医薬組成物の好ましい量の範囲は、0.5〜2mgである。例として、0.6、1.2および1.8mgがある。好ましくは前記量の投与は、皮下注射で1日1回または2回である。
【0179】
本発明の医薬組成物および方法および使用におけるDPP−4阻害剤ならびに第2および/または第3の治療薬の量は、本明細書中でこれより前に提供されているそれぞれの投与量の範囲に一致する。例えば、本発明による医薬組成物、組合せ、方法および使用における好ましい投与量の範囲は、0.5〜10mg(特に1〜5mg、特に2.5mgまたは5mg)の量のリナグリプチンおよび/または250〜1000mg(特に500mg、850mgまたは1000mg)の量のメトホルミンである。1日1回または2回の経口投与が好ましい。
【0180】
本発明による組合せ方法および組み合わせた使用では、DPP−4阻害剤およびその第2および/または第3の治療薬は、組み合わせて投与され、これには、有効成分が同じ時間、すなわち同時に、または基本的に同じ時間に投与されるか、または有効成分が交互に、すなわち最初に1つまたは2つの有効成分が投与され、ある時間をおいて、他方の2つまたは1つの有効成分が投与される、すなわち3つの有効成分のうちの少なくとも2つが順次投与されることが含まれるが、これらに限定されない。この時間は、30分〜12時間の範囲であってよい。併用投与または交互投与は、1日1回、2回、3回または4回、好ましくは1日1回または2回であってよい。
【0181】
DPP−4阻害剤と、第2および/または第3の抗糖尿病薬とを組み合わせた投与に関しては、1つの単一剤形、例えば1つの錠剤もしくはカプセル剤中に、3つすべての有効成分が存在してもよく、または有効成分のうちの1つもしくは2つが、個別の剤形、例えば2つの異なるもしくは等しい剤形中に存在してもよい。
【0182】
交互の投与に関しては、有効成分のうちの1つまたは2つが、個別の剤形、例えば2つの異なるまたは等しい剤形中に存在する。
したがって、本発明の医薬組合せは、DPP−4阻害剤と、第2の抗糖尿病薬と、任意で第3の抗糖尿病薬とを含む単一剤形として存在し得る。あるいは本発明の医薬組合せは、一方の剤形がDPP−4阻害剤を含み、他方の剤形が、第2の抗糖尿病薬に加えて、任意で第3の抗糖尿病薬を含み、または、3剤併用の場合、一方の剤形が、DPP−4阻害剤に加えて、第2または第3の抗糖尿病薬のうちのいずれかを含み、他方の剤形が、それぞれ、第3または第2の抗糖尿病薬を含む、2つの個別の剤形として存在し得る。あるいは、3剤併用の場合、本発明の医薬組合せは、一方の剤形がDPP−4阻害剤を含み、第2の剤形が、第2の抗糖尿病薬を含み、第3の剤形が、第3の抗糖尿病薬を含む、3つの個別の剤形として存在し得る。あるいは、2剤併用の場合、本発明の医薬組合せは、1つの剤形がDPP−4阻害剤を含み、第2の剤形が、第2の抗糖尿病薬を含む、2つの個別の剤形として存在し得る。
【0183】
例えば、一方の有効成分を、1日1回の投与が必要な他方の有効成分(複数可)よりも頻繁に、例えば1日あたり2回投与しなければならないというケースが生じ得る。したがって「併用投与」には、最初にすべての有効成分を組み合わせて投与し、ある時間をおいて、ある有効成分を投与する(さらに逆もまた同じである)投与スキームも含まれる。
したがって、本発明はまた、個別の剤形中に存在する医薬組合せを含み、この場合、一方の剤形が、DPP−4阻害剤と、第2の治療薬と、任意で第3の治療薬とを含み、他方の剤形が第2および/または第3の治療薬のみを含む。
したがって、本発明はまた、有効成分の個別使用、逐次的使用、同時使用、併用した使用、交互の使用または経時的に時差をつけた使用のための医薬組成物または組合せも含む。
個別または複合剤形、好ましくはパーツのキットとして存在する医薬組成物は、患者の個々の治療必要性に柔軟に適合する併用療法に有用である。
【0184】
第1の実施形態によると、パーツのキットは、
(a)DPP−4阻害剤および少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含む剤形を含有する第1の容器と、
(b)第2の抗糖尿病薬および少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含む剤形を含有する第2の容器と、任意で、
(c)第3の抗糖尿病薬および少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含む剤形を含有する第3の容器と
を含む。
【0185】
第2の実施形態によると、パーツのキットは、
(a)DPP−4阻害剤、および第2または第3の抗糖尿病薬、および少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含む剤形を含有する第1の容器と、
(b)それぞれ第3または第2の抗糖尿病薬、および少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含む剤形を含有する第2の容器と
を含む。
【0186】
第3の実施形態によると、パーツのキットは、
(a)DPP−4阻害剤および少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含む剤形を含有する第1の容器と、
(b)第2および第3の抗糖尿病薬ならびに少なくとも1つの医薬的に許容される担体を含む剤形を含有する第2の容器と
を含む。
【0187】
本発明のさらなる態様は、本発明による個別の剤形として存在する医薬組合せと、個別の剤形が組合せて投与されるという指示書を含むラベルまたは添付文書とを含む製造物である。
第1の実施形態によると、製造物は、(a)本発明によるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物と、(b)薬物が、例えば、本発明による第2の抗糖尿病薬を含む薬物と共に、または本発明による第2の抗糖尿病薬および第3の抗糖尿病薬を含む固定されたもしくは自由な組合せ(例えば薬物)と共に、組み合わせて投与し得る、または投与されることになるという指示書を含むラベルまたは添付文書とを含む。
第2の実施形態によると、製造物は、(a)本発明による第2の抗糖尿病薬と、(b)薬物が、例えば、本発明によるDPP−4阻害剤を含む薬物と共に、またはDPP−4阻害剤と、本発明による第3の抗糖尿病薬とを含む、固定されたもしくは自由な組合せ(例えば薬物)と共に、組み合わせて投与し得る、または投与されることになるという指示書を含むラベルまたは添付文書とを含む。
第3の実施形態によると、製造物は、(a)DPP−4阻害剤および本発明による第2の抗糖尿病薬を含む医薬組成物と、(b)薬物が、例えば、本発明による第3の抗糖尿病薬を含む薬物と共に、組み合わせて投与し得る、または投与されることになるという指示書を含むラベルまたは添付文書とを含む。
【0188】
本発明による医薬組成物の所望の投与量は、1日1回として好都合に提供されてもよいし、例えば1日あたり2回または3回以上の投与として適切な間隔で投与される、分割された投与量として提供されてもよい。
【0189】
医薬組成物は、経口、直腸、経鼻、局所的(口腔および舌下を含む)、経皮、経膣もしくは非経口(筋肉内、皮下および静脈内を含む)投与用に液体または固体の形態で、または吸入または吹送法による投与に適した形態で投与するため製剤化することができる。経口投与が好ましい。製剤は、適切ならば、別々の投与単位で好都合に提供してもよいし、薬剤の分野では周知の、任意の方法で調製してもよい。すべての方法は、有効成分を、1つまたは複数の医薬的に許容される担体、例えば液体担体と、または細かく粉砕した固体担体、またはこれらの両方と混合するステップと、次いで、必要に応じて、この生成物を所望の製剤へと成形するステップとを含む。
医薬組成物は、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、カプレット剤、軟質カプセル剤、丸剤、経口溶液剤、シロップ剤、乾性シロップ剤、咀嚼錠剤、トローチ剤、発泡性錠剤、ドロップ剤、懸濁剤、急速溶解錠剤、経口の急速分散錠剤などの形態で製剤化することができる。
医薬組成物およびその剤形は、好ましくは1つまたは複数の医薬的に許容できる担体を含む。好ましい担体は、製剤のもう一方の成分と相容性であり、そのレシピエントに有害ではないという意味で、「許容できる」ものである。医薬的に許容される担体の例は、当業者であれば既知である。
【0190】
経口投与に適した医薬組成物は、例えば、それぞれ所定の量の有効成分を含有する、軟質ゼラチンカプセル剤を含めたカプセル剤、カシェ剤または錠剤などの個別の単位として、散剤または顆粒剤として、溶液剤、懸濁剤または乳剤、例えばシロップ剤、エリキシル剤または自己乳化デリバリーシステム(SEDDS)として好都合に提供してもよい。有効成分はまた、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤として提供してもよい。経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、従来の添加剤、例えば結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤を含有してもよい。錠剤は、当分野で周知の方法で、コーティングされてもよい。経口の液体製剤は、例えば、水性もしくは油性懸濁剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤の形態であってもよいし、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルを用いて構成するための乾燥製品として提供されてもよい。このような液体製剤は、従来の添加物、例えば懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含んでもよい)、または保存剤などを含有してもよい。
【0191】
本発明による医薬組成物は、非経口投与(例えば注射、例えばボーラス投与または持続注入)用に製剤化してもよいし、アンプル、充填済シリンジ、少量注入に入った単位用量形態または保存剤を加えた多数回用量容器で提供してもよい。組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁剤、溶液剤、または乳剤の形態を取ってもよく、例えば懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などのフォーミュラリー収載剤を含有してもよい。あるいは、有効成分は、適切なビヒクル、例えば滅菌された、発熱物質を含まない水を用いて、使用前に構成される、滅菌固体の無菌単離により、または溶液からの凍結乾燥により得られる散剤などの形態であってもよい。
【0192】
担体が固体である直腸投与に適した医薬組成物は、単位剤形の坐剤として提供するのが最も好ましい。適切な担体として、ココアバターおよび当技術分野で一般的に使用される他の物質が挙げられ、坐剤は、活性化合物(複数可)と、軟化または溶融した担体(複数可)とを混和し、続いてこれを冷却し、型で成形することによって、好都合に形成することができる。
【0193】
温血脊椎動物、特にヒトにおける医薬的応用のため、本発明の化合物は、通常、0.001〜100mg/kg(体重)の投与量、好ましくは0.1〜15mg/kgの投与量で、それぞれの場合、1日1〜4回使用する。この目的のために、化合物を他の活性物質と組み合わせてもよいが、化合物は、1つまたは複数の不活性な従来の担体および/または賦形剤と一緒に、例えばコーンスターチ、ラクトース、グルコース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロースまたは脂肪性物質、例えば固い脂肪またはこれらの適切な混合物と共に、従来のガレヌス製剤、例えば素錠またはコーティング錠、カプセル剤、散剤、懸濁剤または坐剤などへと組み込むことができる。
【0194】
こうして、本明細書中に定義されているDPP−4阻害剤を含む、本発明による医薬組成物は、当技術分野で記載された医薬的に許容される製剤添加剤を用いて当業者により調製される。そのような添加剤の例として、これらに限定されないが、賦形剤、結合剤、担体、充填剤、潤滑剤、流動促進剤、結晶化遅延剤、崩壊剤、可溶化剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤および乳化剤が挙げられる。
【0195】
実施形態Aによる化合物に適した賦形剤の例として、セルロース粉末、リン酸水素カルシウム、エリスリトール、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、マンニトール、アルファ化デンプンまたはキシリトールが挙げられる。これら賦形剤の中でも、マンニトール、低置換ヒドロキシプロピルセルロースおよびアルファ化デンプンが特に重要である。
実施形態Aによる化合物に適した潤滑剤の例として、タルク、ポリエチレングリコール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、水素化したヒマシ油またはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。これら潤滑剤の中で、ステアリン酸マグネシウムが特に重要である。
実施形態Aによる化合物に適した結合剤の例として、コポビドン(ビニルピロリドンと他のビニル誘導体との共重合物)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、アルファ化デンプン、または低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)が挙げられる。これらの結合剤の中で、コポビドンおよびアルファ化デンプンが特に重要である。
実施形態Aによる化合物に適した崩壊剤の例として、コーンスターチまたはクロスポビドンが挙げられる。これらの崩壊剤の中でも、コーンスターチが特に重要である
本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤の医薬製剤を調製する適切な方法は、
・活性物質を、適切な錠剤化添加剤と共に、粉末混合物へと直接錠剤化する、
・適切な添加剤と共に造粒化し、その後適切な添加剤と混合し、その後錠剤化ならびに薄膜コーティングを行う、または
・粉末混合物または顆粒剤をカプセル剤中に充填する
ことである。
【0196】
適切な造粒方法は、
・強力撹拌機内での湿式造粒、続いて流動層乾燥する、
・ワンポット造粒する、
・流動層造粒する、または
・適切な添加剤と共に乾式造粒(例えばローラー圧縮)し、その後錠剤化またはカプセル剤へ充填する
ことである。
【0197】
本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤の代表的組成物は、第1賦形剤のマンニトール、第2賦形剤として追加の結合剤特性を有するアルファ化デンプン、結合剤コポビドン、崩壊剤コーンスターチ、および潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含み、このうちコポビドンおよび/またはコーンスターチは、任意であってよい。
本発明のDPP−4阻害剤の剤形、製剤および投与に関する詳細については、科学文献および/または公開特許文献、特に本明細書中に引用されたものを参照されたい。
【0198】
医薬組成物(または製剤)は、様々な方式で包装することができる。一般的に、流通用の物品は、適切な形態で医薬組成物を含有する容器を含む。錠剤は通常、容易な取り扱い、流通および保管のため、および保管中に環境との接触が長引いた場合、組成物の適切な安定度を保証するため、適切な一次包装内に詰められている。錠剤用の一次容器は、ビンまたはブリスター包装であってよい。
【0199】
例えば、本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物または組合せ用の適切なビンは、ガラスまたはポリマー(好ましくはポリプロピレン(PP)または高密度ポリエチレン(HD−PE))から作製し、ねじ口で密閉することができる。ねじ口は、小児が中身を入手することを予防または妨害する小児に安全な安全密封(例えば押して回す密封法)で提供することもできる。必要であれば(例えば、高湿度の地域では)、乾燥剤の追加使用(例えば、ベントナイト粘土、モレキュラーシーブ、または、好ましくは、シリカゲル)により、包装された組成物の有効期間を延長することができる。
【0200】
例えば本発明の実施形態AによるDPP−4阻害剤を含む医薬組成物または組合せ用の適切なブリスター包装は上部の箔(錠剤で破ることができる)および底面部分(錠剤用ポケットを含有する)を含む、またはこれらから形成される。先端の箔は、金属箔、特に、その内側の側面(封着側面)が熱融着ポリマー層でコーティングされた、アルミニウムまたはアルミニウム合金箔(例えば厚さ20μm〜45μm、好ましくは20μm〜25μmのもの)を含有してもよい。底面部分は、ポリ(塩化ビニリデン)(PVDC)でコーティングした多層ポリマー箔(例えばポリ(塩化ビニル)(PVC)、またはポリ(クロロトリフルオロエチレン)(PCTFE))で積層したPVC箔または多層ポリマー−金属−ポリマー箔(例えば、冷間成形可能な積層したPVC/アルミニウム/ポリアミド組成物)を含有し得る。
【0201】
この物品は、ラベルまたは添付文書をさらに含んでもよく、これらラベルまたは添付文書とは、治療用製品の市販のパッケージに慣習として入っている指示書を指し、そのような治療用製品の使用に関する適応症、使用、投与量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含有し得る。一実施形態では、このラベルまたは添付文書は、組成物が、本明細書中に記載されている目的のいずれかのために使用することができることを示している。
【0202】
本発明による医薬組成物および方法は、本明細書中でこれより前に記載されている疾患および状態の治療および予防において有利な効果を示す。2剤併用は、有効成分を用いた単剤療法と比較して有利な効果を示す。3剤併用は、3つの有効成分のうちの1または2つを用いた2剤療法と比較して、有利な効果を示す。例えば、効果、有効成分含量、投与回数、薬力学的特性、薬物動態学的特性、よりわずかな有害作用、便利さ、コンプライアンスなどに関して、有利な効果を見ることができる。
【0203】
リナグリプチンに関して、その合成方法は当業者には既知であり、文献で記載されているように、特にその開示が本明細書中に組み込まれている、WO2002/068420、WO2004/018468、またはWO2006/048427に記述されている通りである。特定のDPP−4阻害剤の多形性結晶の変形および製剤は、その開示がその全体において、本明細書中に組み込まれている、それぞれWO2007/128721およびWO2007/128724に開示されている。メトホルミンまたは他の組合せパートナーを用いた特定のDPP−4阻害剤の製剤は、その開示が、その全体において本明細書中に組み込まれているWO2009/121945に記載されている。
【0204】
さらなるDPP−4阻害剤のための合成方法は、科学文献および/または公開特許文献、特に本明細書中のこれより前に引用されたものに記載されている。
有効成分、特にそのDPP−4阻害剤および/またはその第2の抗糖尿病薬および/またはその第3の抗糖尿病薬は、医薬的に許容される塩の形態で存在し得る。医薬的に許容される塩として、これらに限定されることなく、例えば無機酸の塩、例えば塩酸、硫酸およびリン酸など、有機カルボン酸の塩、例えばシュウ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸およびグルタミン酸、ならびに有機スルホン酸の塩、例えばメタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸などが挙げられる。塩は、化合物と酸を、適切な量および割合で、溶媒および分解剤中で合わせることによって形成することができる。これらは、他の塩の形態からの陽イオン交換または陰イオン交換により得ることもできる。
【0205】
有効成分または医薬的に許容されるその塩は、溶媒和物の形態、例えば水和物またはアルコール付加反応物などで存在し得る。
【0206】
本発明の範囲内の上述の活性物質、組合せおよび方法のうちのいずれかを、当技術分野で公知の動物モデルにより試験することができる。本発明によるDPP−4阻害剤、医薬組成物、組合せおよび方法の、薬理学的に関連する特性を評価するのに適したインビボ実験を以下に記載する:
本発明によるDPP−4阻害剤、医薬組成物、組合せおよび方法は、遺伝的に高インスリン性または糖尿病の動物、例えば、db/dbマウス、ob/obマウス、Zucker Fatty(fa/fa)ラットまたはZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットなどで試験することができる。加えて、これらは、実験的に誘発させた糖尿病を患う動物、例えば、ストレプトゾトシンで前処理したHanWistarまたはSprague Dawleyラットなどで試験することができる。
【0207】
本発明による組合せの血糖コントロールへの効果は、DPP−4阻害剤、第2の抗糖尿病薬、任意で第3の抗糖尿病薬の単独での単剤投与後、および併用投与後、本明細書中のこれより前に記載されている動物モデルの経口グルコース負荷試験において、試験することができる。一晩絶食した動物における経口グルコース検証後、血糖値の時間経過が続く。本発明による組合せは、ピークグルコース濃度の低下またはグルコースAUCの低下により測定した場合、各単剤療法、または3つの有効成分のうちの2つの組合せをそれぞれ用いた2剤併用療法と比較して、グルコース可動域を有意に改善することができる。加えて、本明細書中のこれより前に記載の動物モデルにおいて、DPP−4阻害剤、第2の治療薬、および任意で第3の治療薬を単独で複数回投与後、および併用投与後、血中HbA1c値を測定することによって、血糖コントロールへの効果を判定することができる。本発明による組合せは、各単剤療法または、3つの有効成分のうちの2つの組合せをそれぞれ用いた2剤併用療法と比較して、HbA1cを有意に低下させることができる。
【0208】
1つまたは複数のDPP−4阻害剤、第2および第3の抗糖尿病薬の予測され得る投与量の削減は、本明細書中のこれより前に記載の動物モデルにおいて、より低い投与量での併用療法および単剤療法または2剤併用療法の、血糖コントロールに対する効果を試験することができる。より低い投与量での本発明による併用は、プラセボ治療と比較して、血糖コントロールを有意に改善することができ、その一方で、より低い投与量での単剤療法、または、それぞれより低い投与量での2剤併用療法は、それぞれ改善しない。
【0209】
単回投与または複数回投与後の本発明による治療による活性のあるGLP−1レベルの増加は、空腹時または摂食後の条件のいずれかにおいて、本明細書中のこれより前に記載の動物モデルの血漿中のこれらのレベルを測定することによって判定することができる。同様に、血漿中のグルカゴンレベルの低下は、同じ条件下で測定することができる。
β細胞再生および新生についての、DPP−4阻害剤の、単独または本発明による第2の抗糖尿病薬、および任意で第3の抗糖尿病薬と組み合わせた場合の優れた効果は、本明細書中のこれより前に記載の動物モデルにおいて、複数回投与後、膵臓インスリン含有量の増加を測定することにより、または膵臓部分の免疫組織化学的染色後の形態計測分析によるβ細胞質量の増加を測定することにより、または単離した膵島でのグルコース−刺激によるインスリン分泌の増加を測定することにより判定することができる。
【0210】
異なる代謝性機能障害が同時に起こることが多いので、いくつかの異なる活性成分を互いに組み合わせるように指示することがかなり多い。したがって、診断された機能障害に応じて、DPP−4阻害剤を、それぞれの障害に対して通例の活性物質、例えば他の抗糖尿病の物質、特に、血液中の血糖レベルまたは脂質濃度を低下させ、血液中のHDLレベルを上昇させ、血圧を低下させる活性物質、またはアテローム性動脈硬化症もしくは肥満の治療で指示された活性物質の中から選択される、1つまたは複数の活性物質と組み合わせた場合、改善された治療成果が得られる。
【0211】
単剤療法でのこれらの使用に加えて、上述のDPP−4阻害剤はまた、それを用いて改善された治療結果を得ることができる他の活性物質と関連して使用される。このような併用療法は、物質の自由な組合せまたは固定された組合せの形態、例えば錠剤またはカプセル剤などにより提供されてもよい。これに必要とされる組合せパートナーの医薬製剤は、医薬組成物として商業的に入手するか、または従来の方法を用いて当業者により製剤化するかのいずれでもよい。商業的に医薬組成物として得られる活性物質は、例えばドイツ製薬工業連合(the Federal Association of the Pharmaceutical Industry)発行の年刊医薬品リスト「Rote Liste(登録商標)」、処方箋薬に関する製造業者情報を掲載した年刊書籍の最新編集版「Physicians' Desk Reference」など、従来技術の多くの箇所に記載されている。
【0212】
抗糖尿病の組合せパートナーの例は、メトホルミン、スルホニル尿素、例えばグリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリクイドン、グリボルヌリドおよびグリクラジド;ナテグリニド;レパグリニド;チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾンおよびピオグリタゾンなど;PPARγモジュレーター、例えばメタグリダーゼなど;PPAR−γアゴニスト、例えばGI262570;PPAR−γアンタゴニスト;PPAR−γ/αモジュレーター、例えばテサグリタザル、ムラグリタザル、アレグリタザル、インデグリタザル(indeglitazar)およびKRP297など;PPAR−γ/α/δモジュレーター;AMPK−活性化剤、例えばAICARなど;アセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACC1およびACC2)阻害剤;ジアシルグリセロール−アセチルトランスフェラーゼ(DGAT)阻害剤;膵β細胞GCRPアゴニスト、例えばSMT3−受容体−アゴニストおよびGPR119;11β−HSD−阻害剤;FGF19アゴニストまたは類縁体;α−グルコシダーゼ遮断剤、例えばアカルボース、ボグリボースおよびミグリトールなど;α2−アンタゴニスト;インスリンおよびインスリン類縁体、例えばヒトインスリン、インスリンリスプロ、インスリングルシリン、r−DNA−インスリンアスパルト、NPHインスリン、インスリンデテミル、インスリン亜鉛懸濁液およびインスリングラルギン;消化管抑制ペプチド(GIP);アミリンおよびアミリン類縁体(例えばプラムリンチドまたはダバリンチド);GLP−1およびGLP−1類縁体、例えばExendin−4、例えばエクセナチド、エクセナチドLAR、リラグルチド、タスポグルチド、リキシセナチド(AVE−0010)、LY−2428757(GLP−1のペグ化バージョン)、LY−2189265(IgG4−Fc重鎖に結合したGLP−1類縁体)、セマグルチドまたはアルビグルチド;SGLT2−阻害剤、例えばダパグリフロジン、セルグリフロジン(KGT−1251)、アチグリフロジン(atigliflozin)、カナグリフロジンまたは(1S)−1,5−アンヒドロ−1−[3−(1−ベンゾチオフェン−2−イルメチル)−4−フルオロフェニル]−D−グルシトール;タンパク質チロシン−フォスファターゼ阻害剤(例えばトロズスクエミン);グルコース−6−フォスファターゼ阻害剤;フルクトース−1,6−ビスフォスファターゼモジュレーター;グリコーゲンホスホリルアーゼモジュレーター;グルカゴン受容体アンタゴニスト;ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)阻害剤;ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(PDK)阻害剤;チロシン−キナーゼ阻害剤(50mg〜600mg)、例えばPDGF−受容体−キナーゼ(EP−A−564409、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、およびWO2006/041976を参照);グルコキナーゼ活性化剤を含む、グルコキナーゼ/制御タンパク質モジュレーター;グリコーゲン合成酵素キナーゼ阻害剤;SH2−ドメイン含有イノシトール5−フォスファターゼ2型(SHIP2)阻害剤;IKK阻害剤、例えば高用量のサリチレート、JNK1阻害剤;プロテインキナーゼC−θ阻害剤;β3アゴニスト、例えばリトベグロン、YM178、ソラベグロン、タリベグロン、N−5984、GRC−1087、ラファベグロン、FMP825;アルドースレダクターゼ阻害剤、例えばAS3201、ゼナレスタット、フィダレスタット、エパルレスタット、ラニレスタット、NZ−314、CP−744809、およびCT−112;SGLT−1またはSGLT−2阻害剤;KV1.3チャネル阻害剤;GPR40モジュレーター;SCD−1阻害剤;CCR−2アンタゴニスト;ドーパミン受容体アゴニスト(ブロモクリプチンメシレート[シクロセット])、サーチュイン刺激薬;および他のDPPIV阻害剤である。
【0213】
メトホルミンは、通常、1日あたり約500mgから2000mg〜2500mgまでの異なる投与量で、約100mg〜500mgまたは200mg〜850mg(1日1〜3回)、または約300mg〜1000mgを1日1回もしくは2回の様々な投与計画を用いて、または遅延放出性メトホルミンを、約100mg〜1000mgまたは好ましくは500mg〜1000mgの投与量で、1日1回もしくは2回、または約500mg〜2000mgの投与量で1日1回投与する。特定の有効成分含量は、メトホルミン塩酸塩が250、500、625、750、850および1000mgであってよい。
【0214】
10から16才の年齢の小児に対して推奨されるメトホルミンの開始投与量は、1日1回500mgである。この投与量で十分な結果が得られない場合、投与量を1日2回500mgに増やしてもよい。さらなる増加は、一週間に500mgの増加で、最大1日量2000mgまで、分割した投与量を投与して(例えば2または3回に分割した投与量)遂行することができる。メトホルミンは、吐き気を少なくするために食事と共に投与することができる。
【0215】
ピオグリタゾンの投与量は通常、1日1回約1〜10mg、15mg、30mg、または45mgである。
【0216】
ロシグリタゾンは通常、1日1回(または2回に分けて)4〜8mg(典型的な有効成分含量は、2、4および8mg)の投与量で投与する。
【0217】
グリベンクラミド(グリブリド)は通常、1日1回(または2回に分けて)2.5〜5から20mg(典型的な有効成分含量は1.25、2.5および5mg)の投与量で投与するか、または微細化したグリベンクラミドは、1日1回(または2回に分けて)0.75〜3から12mg(典型的な有効成分含量は1.5、3、4.5および6mg)の投与量で投与する。
グリピジドは通常、1日1回(または40mgまでの2回に分けて)2.5から10〜20mg(典型的な有効成分含量は5および10mg)の投与量で投与し、または持続放出性グリベンクラミドは、1日1回5〜10mg(20mgまで)(典型的な有効成分含量は、2.5、5および10mg)の投与量で投与する。
グリメピリドは通常、1日1回1〜2から4mg(8mgまで)(典型的な有効成分含量は1、2および4mg)の投与量で投与する。
グリベンクラミド/メトホルミンの2剤併用は通常、1日1回1.25/250〜1日2回10/1000mg(典型的な有効成分含量は、1.25/250、2.5/500および5/500mg)の投与量で投与する。
グリピジド/メトホルミンの2剤併用は通常、1日2回2.5/250〜10/1000mg(典型的な有効成分含量は、2.5/250、2.5/500および5/500mg)の投与量で投与する。
グリメピリド/メトホルミンの2剤併用は通常、1日2回1/250〜4/1000mgの投与量で投与する。
【0218】
ロシグリタゾン/グリメピリドの2剤併用は通常、1日1回または2回で4/1mgから、1日2回で4/2mg(典型的な有効成分含量は、4/1、4/2、4/4、8/2および8/4mg)の投与量で投与する。
ピオグリタゾン/グリメピリドの2剤併用は通常、1日1回30/2から30/4mg(典型的な有効成分含量は、30/4および45/4mg)の投与量で投与する。
ロシグリタゾン/メトホルミンの2剤併用は通常、1日2回1/500〜4/1000mg(典型的な有効成分含量は、1/500、2/500、4/500、2/1000および4/1000mg)の投与量で投与する。
【0219】
ピオグリタゾン/メトホルミンの2剤併用は通常、1日1回または1日2回15/500〜1日3回15/850mg(典型的な有効成分含量は、15/500および15/850mg)の投与量で投与する。
【0220】
非スルホニル尿素インスリン分泌促進物質ナテグリニドは通常、食事と共に60〜120mg(360mg/日まで、典型的な有効成分含量は、60および120mg)の投与量で投与し、レパグリニドは通常、食事と共に0.5〜4mg(16mg/日まで、典型的な有効成分含量は、0.5、1および2mg)の投与量で投与する。レパグリニド/メトホルミンの2剤併用は、1/500および2/850mg有効成分含量で利用できる。
【0221】
アカルボースは通常、食事と共に25〜100mgの投与量で投与される。ミグリトールは通常、食事と共に25〜100mgの投与量で投与される。
血液中の脂質レベルを低下させる組合せパートナーの例は、HMG−CoA−レダクターゼ阻害剤、例えばシンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチンおよびロスバスタチンなど;フィブラート、例えばベザフィブラート、フェノフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、エトフィブラートおよびエトフィリンクロフィブレートなど;ニコチン酸およびその誘導体、例えばアシピモックスなど;PPAR−αアゴニスト;PPAR−デルタアゴニスト;アシル−コエンザイムA阻害剤:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT、EC2.3.1.26)、例えばアバシミベなど;コレステロール再吸収阻害剤、例えばエゼチミブなど;胆汁酸に結合する物質、例えばコレスチラミン、コレスチポールおよびコレセベラムなど;胆汁酸輸送阻害剤;HDL調節活性物質、例えばD4F、リバースD4F、LXR調節活性物質およびFXR調節活性物質など;CETP阻害剤、例えばトルセトラピブ、JTT−705(ダルセトラピブ)またはWO2007/005572(アナセトラピブ)の化合物12;LDL受容体モジュレーター;MTP阻害剤(例えばロミタピド);およびApoB100アンチセンスRNAなどである。
【0222】
アトルバスタチンの投与量は通常、1日1回1mg〜40mgまたは10mg〜80mgである。
【0223】
血圧を低下させる組合せパートナーの例は、β受容体遮断薬、例えばアテノロール、ビソプロロール、セリプロロール、メトプロロールおよびカルベジロールなど、利尿剤、例えばヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、クシパミド、フロセミド、ピレタニド、トラセミド、スピロノラクトン、エプレレノン、アミロライドおよびトリアムテレンなど;カルシウムチャネル遮断剤、例えばアムロジピン、ニフェジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニピジン、マニジピン、イスラジピン、ニルバジピン、ベラパミル、ガロパミルおよびジルチアゼムなど;ACE阻害剤、例えばラミプリル、リシノプリル、シラザプリル、キナプリル、カプトプリル、エナラプリル、ベナゼプリル、ペリンドプリル、フォシノプリルおよびトランドラプリルなど、ならびにアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、例えばテルミサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタンおよびエプロサルタンなどである。
【0224】
テルミサルタンの投与量は通常、1日あたり20mg〜320mgまたは40mg〜160mgである。
【0225】
血液中のHDLレベルを上昇させる組合せパートナーの例は、コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤;内皮リパーゼ阻害剤;ABC1のレギュレーター;LXRαアンタゴニスト;LXRβアゴニスト;PPARδアゴニスト;LXRα/βレギュレーター;およびアポリポタンパク質A−Iの発現および/または血漿中濃度を増加させる物質である。
【0226】
肥満の治療のための組合せパートナーの例は、シブトラミン;テトラヒドロリプスタチン(オーリスタット);アリザイム(セチリスタット);デクスフェンフルラミン;アキソキン;カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、例えばCB1アンタゴニストリモノバント;MCH−1受容体アンタゴニスト;MC4受容体アゴニスト;NPY5ならびにNPY2アンタゴニスト(例えばベルネペリット);β3−ARアゴニスト、例えばSB−418790およびAD−9677;5HT2c受容体アゴニスト、例えばAPD356(ロルカセリン);ミオスタチン阻害剤;Acrp30およびアディポネクチン;ステロイルCoAデサチュラーゼ(SCD1)阻害剤;脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤;CCK受容体アゴニスト;グレリン受容体モジュレーター;Pyy3−36;オレキシン受容体アンタゴニスト;およびテソフェンシン;ならびに2剤併用ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、トピラメート/フェンテルミンおよびプラムリンチド/メトレレプチンである。
【0227】
アテローム性動脈硬化症の治療のための組合せパートナーの例は、ホスホリパーゼA2阻害剤;チロシン−キナーゼ阻害剤(50mg〜600mg)、例えばPDGF−受容体−キナーゼ(EP−A−564409、WO98/35958、US5093330、WO2004/005281、およびWO2006/041976を参照);oxLDL抗体およびoxLDLワクチン;apoA−1 Milano;ASA;およびVCAM−1阻害剤である。
【0228】
本発明は、本明細書中に記載されている特定の実施形態に範囲が限定されない。本明細書中に記載されているものに加えた本発明の様々な変更が、本発明の開示から当業者に明らかとなり得る。このような変更は、付随する特許請求の範囲の範囲内に入ることを意図している。
本明細書中で引用されたすべての特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
本発明のさらなる実施形態、特徴および利点は、以下の実施例から明らかとなり得る。以下の実施例は、本発明の原理を、これを限定することなく、例を用いて図示する役割を果たしている。
薬理学的実施例
【0229】
以下の実施例は、本発明によるDPP−4阻害剤または組合せの血糖コントロールに対する有利な効果を示している。
【0230】
(例1)
第1の実施例に従い、経口グルコース負荷試験を、一晩絶食したオスのZucker Diabetic Fatty(ZDF)ラット(ZDF/Crl−Leprfa)で実施する。投与前の血液試料を尾部の出血から得る。血糖値を血糖値計で測定し、動物を無作為抽出して血糖値(n=5/群)を測定する。続いて、この群に、ビヒクルを単独で(3mM HClおよび0.015%のPolysorbat80を含有する0.5%水性ヒドロキシエチルセルロース)、もしくはDPP−4阻害剤または第2もしくは第3の抗糖尿病薬を含有するビヒクル、またはDPP−4阻害剤に加えて、第2の抗糖尿病薬、これに任意で第3の抗糖尿病薬を加えた組合せの単回経口投与を行う。あるいは、この試験は、チアゾリジンジオンの場合のように、明らかになるまでより長い時間が必要とされる抗糖尿病効果をもたらすそれぞれの薬剤の複数回投与後に実施することができる。化合物投与から30分後、動物に経口でグルコース負荷(2g/kg)を与える。グルコース検証から、30分、60分、90分、120分、および180分後尾部の血液中の血糖値を測定する。グルコース可動域を、反応性グルコースAUCを計算することによって定量化する。データを平均±SEMとして提示する。両側性、不対スチューデントt−試験を、対照群および活性群との統計的比較用に使用する。
【0231】
(例2)
第2の実施例に従い、経口グルコース負荷試験を、一晩絶食した、体重約200gのオスのSprague Dawleyラット(Crl:CD(SD))で実施する。投与前の血液試料を尾部の出血から得る。血糖値を血糖値計で測定し、動物を無作為抽出して血糖値(n=5/群)を測定する。続いて、この群に、ビヒクルを単独で(0.015%のPolysorbat80を含有する0.5%水性ヒドロキシエチルセルロース)、または、DPP−4阻害剤もしくは第2もしくは第3の抗糖尿病薬を含有するビヒクル、またはDPP−4阻害剤に加えて、第2の抗糖尿病薬、これに任意で第3の抗糖尿病薬を加えた組合せの単回経口投与を行う。あるいはこの群に、ビヒクルを単独で、またはDPP−4阻害剤、または第2の抗糖尿病薬に加えて第3の抗糖尿病薬のいずれかを含有するビヒクル、またはDPP−4阻害剤に加えて、第2抗糖尿病薬と第3の抗糖尿病薬の組合せの単回経口投与を行う。あるいは、この試験は、チアゾリジンジオンの場合のように、明らかにされるまでより長い時間が必要とされる抗糖尿病効果をもたらすそれぞれの薬剤の複数回投与後に実施することができる。化合物投与から30分後、動物に経口でグルコース負荷(2g/kg)を与える。グルコース検証から30分、60分、90分、および120分後、尾部の血液中の血糖値を測定する。グルコース可動域を、反応性グルコースAUCを計算することによって定量化する。データを平均±S.E.Mとして提示する。統計的比較は、スチューデントt検定により行う。
【0232】
(例3)
糖尿病前症の治療
病的な空腹時グルコースおよび/または耐糖能障害を特徴とする糖尿病前症の治療における、本発明による医薬組成物または組合せの効果は、臨床試験を用いて試験できる。短期間(例えば2〜4週間)の試験において、治療の成功は、空腹時グルコース値および/または試験のための治療期間終了時の食後のグルコース値または負荷試験(既定の食事の後の経口グルコース負荷試験または食事負荷試験)後のグルコース値を求め、これらの値と、試験開始前の値および/またはプラセボ群の値とを比較することにより試験される。加えて、フルクトサミン値を治療前後でもとめ、初期値および/またはそのプラセボ値と比較することができる。空腹時または非空腹時のグルコースレベルの有意な低下は、治療の効果を実証する。長期間(12週間以上)の試験において、治療の成功は、HbA1c値の決定、初期値および/またはプラセボ群の値との比較により試験される。初期値および/またはプラセボ値と比較したHbA1c値の有意な変化は、糖尿病前症の治療に対するDPP−4阻害剤または本発明による組合せの効果を実証する。
【0233】
(例4)
顕性2型糖尿病の予防
病的な空腹時グルコースおよび/または耐糖能障害(糖尿病前症)を患う患者の治療はまた、顕性2型糖尿病への移行を予防するという目的を探究していくことである。治療の効果は、本発明による医薬組成物もしくは組合せのいずれかを用いて、またはプラセボを用いて、または非薬物治療もしくは他の薬物での治療を用いて、糖尿病前症患者を長期間(例えば1〜5年)にわたり治療する、比較臨床試験で調査できる。治療の間および治療終了時に、空腹時グルコースをもとめ、および/または負荷試験(例えばoGTT)を行うことにより、どの程度の数の患者が顕性2型糖尿病を示すか、すなわち空腹時グルコースレベル>125mg/dlおよび/またはoGTTによる2時間値>199mg/dlを示すか判定するための確認が行われる。治療の他の形態の1つと比較して、本発明によるDPP−4阻害剤または組合せで治療した場合、顕性2型糖尿病を示す患者の数の有意な減少は、糖尿病前症の顕性糖尿病への移行を予防することにおいて、効果を実証する。
【0234】
(例5)
2型糖尿病の治療
グルコース代謝状況に急速な改善を起こすことに加えて、本発明による医薬組成物または組合せを用いた2型糖尿病を患う患者の治療は、長期の代謝状況の悪化を予防する。これは、長期間、例えば3カ月〜1年またはさらに1〜6年の間、本発明による医薬組成物または組合せで患者を治療し、他の抗糖尿病薬で治療した患者と比較することで観察できる。空腹時グルコースおよび/またはHbA1c値における増加がないかまたはほんのわずかの増加が観察される場合、他の抗糖尿病薬で治療した患者と比較して、治療が成功したという証拠が存在する。他の薬物で治療した患者と比較して、本発明による医薬組成物または組合せで治療した患者の中で、グルコース代謝位置において、付加的な経口の抗糖尿病薬を用いた、またはインスリンを用いた、またはインスリン類縁体を用いた治療が指示される位置への悪化(例えば、HbA1c値の>6.5%または>7%への増加)を経験するパーセンテージが有意により小さい場合、治療の成功のさらなる証拠が得られる。
【0235】
(例6)
インスリン抵抗性の治療
異なる長さの期間(例えば2週間〜12カ月)の間実行する臨床試験において、治療の成功は、オイグリセミック高インスリン血症クランプ試験を用いて確認する。初期値と比較した場合、またはプラセボ群もしくは異なる治療を受けた群と比較した場合、試験終了時のグルコース注入速度の有意な上昇は、インスリン抵抗性の治療における本発明によるDPP−4阻害剤、医薬組成物または組合せの効果を証明している。
【0236】
(例7)
高血糖の治療
異なる長さの期間(例えば1日〜24カ月)の間実行する臨床試験において、高血糖を患う患者における治療の成功は、空腹時グルコースまたは非空腹時グルコース(例えば、食後またはoGTTもしくは定義された食事を用いた負荷試験の後)をもとめることにより確認する。初期値と比較した場合、またはプラセボ群もしくは異なる治療を受けた群と比較した場合、試験中または試験終了時のこれらグルコース値の有意な低下は、高血糖治療における本発明によるDPP−4阻害剤、医薬組成物または組合せの効果を証明している。
【0237】
(例8)
微小血管性または大血管性合併症の予防
本発明によるDPP−4阻害剤、医薬組成物または組合せを用いた2型糖尿病または糖尿病前症患者の治療は、微小血管性合併症(例えば、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性足病変、糖尿病性潰瘍)または大血管性合併症(例えば、心筋梗塞、急性冠状動脈症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢性動脈閉塞疾患、心筋症、心不全、心臓リズム障害、血管再狭窄)を予防し、または低下させ、または発症リスクを低下させる。2型糖尿病または糖尿病前症を患う患者は、長期間、例えば1〜6年間、本発明による医薬組成物または組合せを用いて治療し、他の抗糖尿病薬またはプラセボを用いて治療した患者と比較する。他の抗糖尿病薬またはプラセボを用いて治療した患者と比較した場合、治療の成功の証拠は、単一または多数の合併症の数がより少ないことに見出すことができる。大血管性イベント、糖尿病性足病変および/または糖尿病性潰瘍の場合、数は既往歴および様々な試験方法によりカウントされる。糖尿病性網膜症の場合、治療の成功は、コンピュータ−制御された照明および眼の背景の評価または他の眼科の方法により判定される。糖尿病性ニューロパシーの場合、既往歴および臨床試験に加えて、神経伝導速度を、例えば、較正されたチューニングフォークを用いて測定することができる。糖尿病性腎症に関しては、以下のパラメータを、試験開始前、試験中および試験終了時に調査することができる:アルブミンの分泌、クレアチニン排除、血清クレアチニン値、血清クレアチニン値が2倍になるまで要する時間、透析が必要とされるまでに要する時間。
【0238】
(例9)
メタボリックシンドロームの治療
本発明によるDPP−4阻害剤、医薬組成物または組合せの効果は、空腹時グルコースまたは非空腹時グルコース(例えば食後、またはoGTTもしくは定義された食事を用いた負荷試験)またはHbA1c値をもとめることにより、異なる実行時間(例えば12週間〜6年)での臨床試験で試験することができる。初期値と比較した場合またはプラセボ群または異なる治療を受けた群と比較した場合、試験中または試験終了時のこれらのグルコース値またはHbA1c値の有意な低下は、メタボリックシンドロームの治療における活性物質または活性物質の組合せの効果を証明している。この例は、試験開始時の初期値と比較した場合、またはプラセボもしくは異なる治療で治療した患者の群と比較した場合の、収縮期血圧および/もしくは弛緩期血圧の低下、血漿トリグリセリドの低下、全コレステロールもしくはLDLコレステロールの低下、HDLコレステロールの増加、または体重の減少である。
【0239】
(例10a)
NODATおよび/またはPTMS、ならびにNODAT/PTMS合併症の予防
本発明による医薬組成物を用いた、臓器移植術後の患者の治療は、NODATおよび/またはPTMSの発症、ならびに合併症を予防する。治療の効果は、移植術前または直後の患者が、長期間(例えば1〜5年)にわたり、本発明の医薬組成物を用いて、またはプラセボを用いて、または非薬物治療もしくは他の薬物による治療を用いて治療される、比較臨床試験において調査することができる。治療中および治療終了時における、NODAT、PTMS、微小血管性および大血管性合併症、移植片拒絶、感染症および死亡の発生率を評価することになる。これらの合併症が現れる患者の数の有意な減少が、NODAT、PTMS、および合併症の発症を予防する効果を実証する。
【0240】
(例10b)
合併症の予防、遅延または低下を伴う、NODATおよび/またはPTMSの治療
本発明による医薬組成物を用いた、NODATおよび/またはPTMSを患う患者の治療は、NODAT/PTMS合併症の発症を予防し、遅延させ、または低下させる。治療の効果は、NODATおよび/またはPTMSを患う患者が、長期間(例えば1〜5年)にわたり、本発明による医薬組成物を用いて、またはプラセボを用いて、または非薬物治療もしくは他の薬物による治療を用いて治療される、比較臨床試験において調査することができる。治療中および治療終了時における、微小血管性および大血管性合併症、移植片拒絶、感染症および死亡の発生率を評価することになる。これらの合併症が現れる患者の数の有意な減少が、NODATおよび/またはPTMS合併症の発症を予防し、遅延させまたは低下させる効果を実証する。
【0241】
(例12)
高尿酸血症の治療
尿酸レベルが正常域(8.3mg/dLまたは494μモル/Lより上)より上に上昇した患者、または尿酸レベルが6.0mg/dLもしくは357μモル/Lを超える痛風もしくは痛風性関節炎の病歴のある患者は、痛風または痛風性関節炎を将来発症する有意なリスクがあると共に、循環器系疾患のリスクが増加する。痛風または痛風性関節炎の将来の発症または再発を予防する手段として、尿酸の血清レベルの低下を目的とする治療を提供することができる。さらに、血清尿酸レベルの低下は、循環器系疾患のリスクを低下させることができる。この目的のために、尿酸レベルが上昇している、または痛風もしくは痛風性関節炎の病歴のある患者を、本発明による医薬組成物を用いて、またはプラセボを用いて、または非薬物治療もしくは他の薬物による治療を用いて、長期間(例えば6カ月〜4年)にわたり治療する。治療中および治療終了時に、血清尿酸レベルおよび痛風または痛風性関節炎発現の発症数をもとめることにより確認を行う。本発明による医薬組成物で治療した場合、異なる種類の治療と比較して、尿酸の6.0mg/dL未満への低下および/もしくは痛風または痛風性関節炎の発現の発症がより少ないことは、偶発性の痛風または痛風性関節炎の予防または高尿酸血症の治療における医薬組成物の効果の証拠である。
【0242】
(例13)
リナグリプチンが齧歯類モデルの脂肪肝を改善
脂肪肝は、2型糖尿病を患う患者の特徴であり、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の原因の基礎となる。リナグリプチンは、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)の選択的および非腎臓排出性阻害剤である。食餌誘発性肥満モデル(DIO、2カ月または3カ月餌を与えた)において、リナグリプチン(3および30mg/kg/d、n=10)を用いた4週間の治療の効果を調査する。肝臓脂質含有量を、インビボのおよびエキソビボで、肝臓トリグリセリドの分析により、磁気共鳴法(MRS)で検出する。DPP−4活性は、対照と比較して、67%〜80%および79%〜89%(それぞれ3および30mg/kg)の分だけ、有意に(p<0.001)阻害する。OGTT(AUC)に続く血糖値レベルは、16%〜20%(3mg/kg/d)および20%〜26%(30mg/kg/d)の範囲で有意に抑制される(p<0.01)。2カ月餌を与えたDIOマウスにおける3mg/kg投与以外は、肝臓脂肪含有量(MRS検出)は、有意に低下している。肝臓脂肪含有量(MRS)の有意な低下は、早くも治療2週間目には目に見える。MRSで測定した肝臓脂質含有量と、エキソビボで測定した肝臓トリグリセリドレベルとの間の相関関係は、r2=0.565(p<0.0001)である。
【0243】
3番目の試験で、14日間のリナグリプチン治療(3mg/kg/d)後にob/obマウスを分析し、盲検法の組織学的採点法を実施する(重症度および脂肪含有量の程度、炎症のマーカー)。DPP−4活性は、80%阻害され、血糖値AUCの低下は、25%である。組織学的採点法により、リナグリプチン群(2.2±0.13、n=9、p<0.01)と、対照群(3±0.18、n=10)では、肝臓の脂肪変性および炎症が少ないことが明らかである。結論として、リナグリプチンは、2つの異なる齧歯類モデルにおいて、恐らく肝臓に特異的なインスリン感作効果が原因で、肝臓の脂肪含有量および組織学的NAFLDを有意に低下させている。肝臓の脂肪変性の寛解は、2型糖尿病ならびにNAFLDを患う患者におけるリナグリプチンの使用を支持している。
【0244】
製剤の例
以下の製剤の例は、当技術分野で既知の方法と同様に得られるものであるが、これらの例の内容に限定されることなく、より完全に本発明を例示する働きをする。「活性物質」という用語は、本発明による1つまたは複数の化合物を意味する、すなわち本発明による、DPP−4阻害剤または第2もしくは第3の抗糖尿病性化合物、または前記有効成分のうちの2または3つの組合せ、例えば表1または2に列挙された組合せから選択されるものなどを意味する。DPP−4阻害剤リナグリプチンに対する追加の適切な製剤は、その開示が、その全体において本明細書中に組み込まれている、出願WO2007/128724で開示された製剤であってよい。他のDPP−4阻害剤に対する追加の適切な製剤は、市販されている製剤、または「発明の背景」の段落内で、上で引用された特許出願に記載された製剤、または文献に記載のもの、例えば「Rote Liste(登録商標)」(ドイツ)「Physician's Desk Reference」の最新号に開示されているものであってよい。
【0245】
例1:10mlあたり75mgの活性物質を含有するドライアンプル
組成物:
活性物質 75.0mg
マンニトール 50.0mg
注射用水 10.0mlまで
調製:
活性物質およびマンニトールを水に溶解する。包装後、溶液を凍結乾燥する。使用する溶液を生成するため、生成物を注射用水に溶解する。
【0246】
例2:2mlにつき35mgの活性物質を含有するドライアンプル
組成物:
活性物質 35.0mg
マンニトール 100.0mg
注射用水 2.0mlまで
調製:
活性物質およびマンニトールを水に溶解する。包装後、溶液を凍結乾燥する。
【0247】
使用する溶液を生成するため、生成物を注射用水に溶解する。
【0248】
例3:50mgの活性物質を含有する錠剤
組成物:
(1)活性物質 50.0mg
(2)マンニトール 98.0mg
(3)トウモロコシデンプン 50.0mg
(4)ポリビニルピロリドン 15.0mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
215.0mg
調製:
(1)、(2)および(3)を一緒に混合し、(4)の水溶液を用いて顆粒状にする。(5)を乾燥させた顆粒状物質に加える。この混合物から、錠剤を固め、2平面とし、両面に刻印し、1面に分割用切れ込みを入れる。
錠剤の直径:9mm.
【0249】
例4:350mgの活性物質を含有する錠剤
調製:
(1)活性物質 350.0mg
(2)マンニトール 136.0mg
(3)トウモロコシデンプン 80.0mg
(4)ポリビニルピロリドン 30.0mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
600.0mg
(1)、(2)および(3)を一緒に混合し、(4)の水溶液を用いて顆粒状にする。(5)を乾燥させた顆粒状物質に加える。この混合物から、錠剤を固め、2平面とし、両面に刻印し、1面に分割用切れ込みを入れる。
錠剤の直径:12mm.
【0250】
例5:50mgの活性物質を含有するカプセル剤
組成物:
(1)活性物質 50.0mg
(2)乾燥トウモロコシデンプン 58.0mg
(3)マンニトール 50.0mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 2.0mg
160.0mg
調製:
(1)を(3)で粉末化する。激しく混合しながら、この粉砕物を(2)および(4)の混合物に加える。この粉末混合物をカプセル充填機内でサイズ3の硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0251】
例6:350mgの活性物質を含有するカプセル剤
組成物:
(1)活性物質 350.0mg
(2)乾燥トウモロコシデンプン 46.0mg
(3)マンニトール 30.0mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 4.0mg
430.0mg
調製:
(1)を(3)で粉末化する。激しく混合しながら、この粉砕物を(2)および(4)の混合物に加える。この粉末混合物をカプセル充填機内でサイズ0の硬質ゼラチンカプセルに充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)ビグアニド、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬、
を含む医薬組成物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)ビグアニド(特にメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールおよびGLP−1類縁体からなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬、
を含む、請求項1に記載の医薬組成物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項3】
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールおよびGLP−1類縁体からなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)ビグアニド(特にメトホルミン)、チアゾリジンジオン、スルホニル尿素、グリニド、α−グルコシダーゼ阻害剤およびGLP−1類縁体からなる群G3から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬、
を含む、請求項1に記載の医薬組成物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項4】
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミン、スルホニル尿素およびピオグリタゾンからなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミン、スルホニル尿素、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールおよびGLP−1類縁体からなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬、
を含む、請求項1、2または3に記載の医薬組成物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項5】
(a)DPP−4阻害剤と、任意で、
(b)メトホルミンおよびピオグリタゾンからなる群から選択される第2の抗糖尿病薬と、任意で、
(c)メトホルミン、スルホニル尿素およびピオグリタゾンからなる群から選択される、(b)と異なる第3の抗糖尿病薬、
を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の医薬組成物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項6】
第2および/または第3の抗糖尿病薬が、メトホルミン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、シグリタゾン、グリベンクラミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリキドン、グリボルヌリド、グリブリド、グリソエピド、グリクラジド、ナテグリニド、レパグリニド、ミチグリニド、アカルボース、ボグリボース、ミグリトール、エクセナチド、リラグルチド、タスポグルチド、セマグルチド、アルビグルチドおよびリキシセナチドまたは前記治療薬のうちの1つの医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1、2または3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
DPP−4阻害剤が、リナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、サクサグリプチン、カルメグリプチン、メログリプチン、ゴソグリプチン、テネリグリプチンおよびドゥトグリプチンまたは前記DPP−4阻害剤のうちの1つの医薬的に許容される塩もしくはそのプロドラッグからなる群G2から選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
1つまたは複数の医薬的に許容される担体をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が、成分の同時使用または逐次使用に適していることを特徴とする、請求項1から8の1項に記載の医薬組合せ。
【請求項10】
成分が1つの単一の剤形内に存在する、または各成分が別個の剤形内に存在することを特徴とする、請求項1から9の1項に記載の医薬組合せ。
【請求項11】
DPP−4阻害剤および第2の抗糖尿病薬が単一の剤形内に存在し、第3の抗糖尿病薬が、別個の剤形内に存在することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の医薬組合せ。
【請求項12】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖障害、高血糖、摂食後の高血糖、過体重、肥満およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、または治療するための方法。
【請求項13】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、血糖コントロールを改善するための、および/または、空腹時血漿グルコース、摂食後血漿グルコースおよび/またはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための方法。
【請求項14】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、耐糖能障害、空腹時血糖障害、インスリン抵抗性および/またはメタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、または寛解するための方法。
【請求項15】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、糖尿病の合併症、例えば白内障、ならびに微小血管性および大血管性疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパシー、組織虚血、糖尿病性足病変、動脈硬化、心筋梗塞、急性冠不全症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢性動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心臓リズム障害および血管再狭窄からなる群から選択される状態または障害を予防、その進行を緩除、遅延、または治療するための方法。
【請求項16】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、体重および/もしくは体脂肪を減少するための、体重および/もしくは体脂肪の増加を予防するための、または、体重および/もしくは体脂肪の減少を促進するための方法。
【請求項17】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、膵β細胞の変性および/もしくは膵β細胞の機能の低下を予防、緩除、遅延、または治療するための、および/または、膵β細胞の機能を改善および/もしくは回復もしくは保護するための、および/または、膵臓のインスリン分泌機能を回復するための方法。
【請求項18】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、肝脂肪または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患または状態を予防、緩除、遅延、または治療するための方法。
【請求項19】
請求項7に記載のDPP−4阻害剤と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第2の抗糖尿病薬と、任意で請求項1から6のいずれか1項に記載の第3の抗糖尿病薬とが、交互投与を含む併用投与により患者に投与されることを特徴とする、必要とする患者における、インスリン感受性を維持および/もしくは改善するための、および/または、高インスリン血症および/もしくはインスリン抵抗性を治療もしくは予防するための方法。
【請求項20】
それを必要とする患者において、
−1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖障害、高血糖、摂食後の高血糖、過体重、肥満およびメタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、または治療するための、または
−血糖コントロールを改善するための、および/または、空腹時血漿グルコース、摂食後の血漿グルコースおよび/もしくはグリコシル化ヘモグロビンHbA1cを低下させるための、または
−耐糖能障害、インスリン抵抗性および/またはメタボリックシンドロームから2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、又は、寛解するための、または
−糖尿病合併症、例えば白内障、ならびに微小血管性および大血管性疾患、例えば腎症、網膜症、ニューロパシー、学習障害および記憶障害、神経変性障害もしくは認知障害、心臓血管もしくは脳血管の疾患、組織虚血、糖尿病性足病変もしくは胃潰瘍、動脈硬化、高血圧、内皮障害、心筋梗塞、急性冠不全症候群、不安定狭心症、安定狭心症、脳卒中、末梢性動脈閉塞性疾患、心筋症、心不全、心臓リズム障害および血管再狭窄からなる群から選択される状態もしくは障害を予防、その進行を緩徐、遅延、または治療するための、または
−体重および/もしくは体脂肪を減少するための、または、体重および/もしくは体脂肪の増加を予防するための、または、体重および/もしくは体脂肪の減少を促進させるための、または
−膵β細胞の変性および/もしくは膵β細胞の機能の低下を予防、緩徐、遅延、または治療するための、および/または、膵β細胞の機能を改善および/もしくは回復もしくは保護するための、および/または、膵臓のインスリン分泌機能を回復するための、または
−肝脂肪または異所性脂肪の異常な蓄積に起因する疾患もしくは状態を予防、緩徐、遅延、または治療するための、または
−インスリン感受性を維持および/もしくは改善するための、および/または、高インスリン血症および/もしくはインスリン抵抗性を治療もしくは予防するための、または
−移植術後新発症型糖尿病(NODAT)および/または移植術後メタボリックシンドローム(PTMS)を予防、その進行を緩徐、遅延、または治療するための、または
−微小血管性および大血管性疾患およびイベント、移植片拒絶、感染症、ならびに死亡を含めたNODATおよび/またはPTMS合併症を予防、遅延、または低下させるための、または
−高尿酸血症および高尿酸血症状態を治療するための、
薬物製造のための、請求項1から11の1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項21】
患者が、過体重、肥満、内臓肥満および腹部肥満からなる群から選択される1つまたは複数の状態であると診断されている個体である、請求項12から19の1項に記載の方法または請求項20に記載の使用。
【請求項22】
患者が、
(a)100または110mg/dLを超える、特に125mg/dLを超える、空腹時血中グルコースまたは血清グルコース濃度、
(b)140mg/dL以上の摂食後血漿グルコース、
(c)6.5%以上、特に7.0%以上のHbA1c値
の状態のうちの1または2つ以上を示す個体である、請求項12から19の1項に記載の方法または請求項20に記載の使用。
【請求項23】
患者が、
(a)肥満、内臓肥満および/または腹部肥満、
(b)トリグリセリド血中濃度≧150mg/dL、
(c)HDL−コレステロール血中濃度<40mg/dL(女性患者)および<50mg/dL(男性患者)、
(d)収縮期血圧≧130mmHgおよび弛緩期血圧≧85mmHg、
(e)空腹時血中グルコース濃度≧100または110mg/dL
のうちの1つ、2つ、または3つ以上の状態が存在する個体である、請求項12から19の1項に記載の方法または請求項20に記載の使用。
【請求項24】
患者が、ダイエットおよび運動にもかかわらず、または第2もしくは第3の抗糖尿病薬を用いた単剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分である、請求項12から19の1項に記載の方法または請求項20に記載の使用。
【請求項25】
患者が、ダイエットおよび運動にもかかわらず、または第2および第3の抗糖尿病薬を用いた2剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分である、請求項12から19の1項に記載の方法または請求項20に記載の使用。
【請求項26】
患者が、ダイエットおよび運動にもかかわらず、またはDPP−4阻害剤または第2もしくは第3の抗糖尿病薬のいずれかを用いた単剤療法にもかかわらず、または第2および第3の抗糖尿病薬を用いた2剤療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分である、請求項12から19の1項に記載の2剤併用方法または請求項20に記載の2剤併用使用。
【請求項27】
患者が、ダイエットおよび運動にもかかわらず、またはDPP−4阻害剤、第2もしくは第3の抗糖尿病薬のいずれかを用いた単剤療法にもかかわらず、またはDPP−4阻害剤、第2および第3の抗糖尿病薬の群から選択される2つの薬剤を用いた併用療法にもかかわらず、血糖コントロールが不十分である、請求項12から19の1項に記載の3剤併用方法または請求項20に記載の3剤併用使用。
【請求項28】
DPP−4阻害剤がリナグリプチンである、請求項1から27のいずれか1項に記載の医薬組成物、組合せ、方法または使用。

【公表番号】特表2012−517977(P2012−517977A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549582(P2011−549582)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051817
【国際公開番号】WO2010/092163
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】