説明

EGRシステム

【課題】リフトセンサを用いることなく、EGR装置のバルブの開度を推定することにより、EGR装置を精度よく制御すると共に、コストを低減する。
【解決手段】EGRシステム10では、EGR装置20の非作動状態において、各センサ100〜108、130〜134を用いて吸気装置14の吸気状態と吸入空気量、吸入空気の負圧及び/又はエンジン回転数とをそれぞれ検出する。ECU110は、検出された吸気状態と吸入空気量、吸入空気の負圧及び/又はエンジン回転数とに基づいて、EGR装置20のバルブ24の開度をマップ138、140、144を用いて推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気系と排気系とを接続する排気還流手段に排気ガス再循環装置(以下、EGR装置ともいう。)を設けることにより、該内燃機関から排出された排気ガスの一部を排気系から吸気系に還流させるEGRシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関から排出される排気ガス中の有害成分を除去するために、EGR装置を含むEGRシステムが用いられている。EGRシステムでは、内燃機関の吸気系と排気系とを接続する排気還流手段の途中にEGR装置を設け、該EGR装置によって吸気系と排気系とを連通させることにより、該内燃機関から排出された排気ガスの一部を吸気系に再循環させ、排気ガス中に含まれるNOx等の有害成分を減少させる。
【0003】
ところで、EGR装置を含めたEGRシステムの故障の有無を診断するための技術が特許文献1及び2に開示されている。
【0004】
特許文献1には、EGR装置において、排気ガスの流量を制御するバルブの位置(リフト量、開度)をリフトセンサ(開度センサ)で検出し、検出したバルブのリフト量に基づいて、EGR装置を含むEGRシステムの故障の有無を診断することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、インテークマニホールド(吸気系)から内燃機関に吸入される吸入空気の負圧を測定し、測定した負圧に基づいて、EGR装置の異常を検知することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−46787号公報
【特許文献2】特開2009−287392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したEGRシステムにおいて、EGR装置のバルブ又は排気還流手段に、内燃機関の燃焼に起因した燃焼生成物の付着等があれば、排気系から吸気系に再循環される排気ガスの還流量が減少する。この結果、EGR装置を制御して所望の還流量の排気ガスを吸気系へ還流させようとしても、該所望の還流量と実際の還流量とが異なることになる。
【0008】
従って、特許文献1の技術を用いて、リフトセンサで検出したバルブのリフト量に基づいて排気ガスの還流量を制御しても、該排気ガスの還流量を適正に制御することやEGR装置の故障を検知することが困難となる。
【0009】
また、リフトセンサは、比較的高価であるため、EGR装置のバルブの位置検出や該EGR装置の故障の有無の診断にかかるコストが増大する。
【0010】
一方、特許文献2の技術は、吸入空気の負圧のみに基づきEGR装置の故障の有無を診断する。吸入空気の負圧は、EGR装置の故障以外の他の要因の影響も受けやすいため、該吸入空気の負圧が他の要因の影響を受けた場合には、EGR装置の故障を誤検知する可能性が高くなる。
【0011】
また、特許文献2の技術は、動作中の内燃機関(エンジン)が意図せずに停止した状態(エンジンストップ状態)に至らないと、EGR装置の故障を検知することができない。
【0012】
本発明は、前記の種々の課題を考慮してなされたものであり、リフトセンサを用いることなくEGR装置のバルブの開度を推定することにより、EGR装置を精度よく制御すると共に、コストを低減することができるEGRシステムを提供することを目的とする。また、本発明は、EGR装置の故障の検知精度を高めることができるEGRシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、内燃機関の吸気系と排気系とを接続する排気還流手段と、該排気還流手段に設けられたEGR装置とを有し、該EGR装置を介して前記吸気系と前記排気系とを連通させることにより、前記内燃機関から排出された排気ガスの一部を前記排気系から前記排気還流手段を介して前記吸気系に還流させるようにしたEGRシステムに関する。
【0014】
そして、本発明に係るEGRシステムは、前記の目的を達成するために、
前記EGR装置は、前記排気ガスの流量を制御するバルブを有し、
前記EGRシステムは、
前記吸気系の吸気状態を検出可能な吸気状態検出手段と、
前記吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段、前記吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気の負圧を検出する負圧検出手段、及び/又は、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記吸入空気量検出手段によって検出された吸入空気量、前記負圧検出手段によって検出された吸入空気の負圧、及び/又は、前記回転数検出手段によって検出された回転数と、前記吸気状態検出手段によって検出された吸気状態とに基づき、前記バルブの開度を推定するバルブ開度推定手段と、
をさらに有することを特徴としている。
【0015】
このように、本発明によれば、リフトセンサ(開度センサ)を用いることなく、既存のセンサである前記吸入空気量検出手段、前記負圧検出手段及び/又は前記回転数検出手段と前記吸気状態検出手段とを用いて検出した前記吸入空気量、前記吸入空気の負圧及び/又は前記回転数と前記吸気状態とに基づいて前記EGR装置のバルブの開度を推定するので、前記内燃機関の燃焼に起因した燃焼生成物の前記バルブや前記排気還流手段への付着等によって前記排気ガスの還流量が減少する可能性があっても、前記EGR装置を精度よく制御することが可能になると共に、コストを低減することができる。また、前記EGR装置の故障の検知精度も高めることが可能となる。
【0016】
ここで、前記EGRシステムは、前記バルブ開度推定手段で推定した前記バルブの開度が所定の閾値を超えるか否か(所定範囲内であるか否か)を判定し、前記バルブの開度が前記閾値よりも大きい場合(前記所定範囲を超える場合)には前記EGR装置の故障を示す警告信号を出力する判定手段と、前記警告信号に基づいて前記EGR装置が故障していることを外部に警告(報知)する警告手段とをさらに有することが好ましい。これにより、実際のバルブの開度に応じて警告信号が出力され、前記警告手段から外部に前記EGR装置の故障を報知することができる。この結果、信頼度の高い前記EGR装置の故障検知が可能になる。また、ユーザ(ドライバー)は、前記警告手段からの報知内容に基づいて、前記EGR装置が故障したことを直ちに把握することができ、該EGR装置の交換等の必要な故障対応を速やかに行うことが可能となる。
【0017】
また、前記バルブへの燃焼生成物の付着等によって前記EGR装置が故障するおそれがある場合には、前記バルブを全開及び全閉させて、前記燃焼生成物の付着等を解消する故障解消モードを実施することが望ましい。このような故障解消モードを実施するため、前記EGRシステムは、前記バルブを全開及び全閉にさせるための信号を前記EGR装置に出力する信号出力手段をさらに有し、前記信号出力手段は、推定された前記バルブの開度が所定の第1閾値より大きい場合には、該推定された前記バルブの開度に応じて、前記信号の出力回数を変化させることが好ましい。
【0018】
この場合、前記バルブの開度が前記EGR装置の故障発生の判断基準となる前記第1閾値よりも大きければ、前記バルブの開度に応じて前記信号の出力回数を変化させることで、前記故障解消モードを実施することができる。これにより、前記バルブの開度に関わりなく一律に前記バルブの全開及び全閉を一定回数行う場合と比較して、前記バルブの全開及び全閉に要する通電時間を短くすることができる。このようにして前記通電時間の無駄を省くことで、前記EGRシステムの省電力化を実現することができる。特に、前記内燃機関の動作停止時に前記故障解消モードを実行すれば、前記燃焼生成物を含む前記排気ガスの前記内燃機関への混入に起因したエミッションの悪化を回避することができるので、前記燃焼生成物の付着等を効果的に解消することができる。
【0019】
また、前記EGRシステムは、前記信号出力手段によって前記信号が所定回数出力された後に、推定された前記バルブの開度が所定の第2閾値より大きくなった場合に、前記EGR装置が故障していることを警告する警告手段をさらに有することが好ましい。この場合、前記第2閾値は、前記故障解消モードを実施しても前記燃焼生成物の付着等を解消できない程度の開度に応じた閾値である。従って、前記故障解消モードを実施しても、前記バルブの開度が前記第2閾値よりも大きければ、前記警告手段による警告が必ず行われるので、前記EGR装置の故障や故障原因を容易に特定することができる。
【0020】
この場合、前記吸入空気量検出手段、前記負圧検出手段及び/又は前記回転数検出手段は、前記内燃機関の始動直後に前記吸入空気量、前記吸入空気の負圧及び/又は前記回転数を検出することが好ましい。これにより、前記EGR装置の故障を精度よく検知することができる。
【0021】
なお、前記吸気状態検出手段とは、前記内燃機関の吸気状態を検出するためのセンサであり、下記のような構成要素であることが好ましい。
【0022】
すなわち、上述した本発明に係るEGRシステムは、下記(1)〜(5)の構成を有する。
【0023】
(1) 前記吸気状態検出手段は、前記内燃機関内の冷却水の温度を検出する水温センサであり、前記バルブ開度推定手段は、前記吸入空気量の最大値(最大吸入空気量)、前記吸入空気の最低負圧(前記吸気系(例えば、インテークマニホールド)内の圧力の最小値)及び/又は前記回転数の最大値(最大回転数)と、前記水温センサが検出した前記冷却水の温度とを用いて、前記バルブの開度を推定する。
【0024】
(2) 前記吸気系には、該吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気量を調整するためのスロットルバルブが設けられ、前記吸気状態検出手段は、前記スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサであり、前記バルブ開度推定手段は、前記最大吸入空気量、前記最低負圧及び/又は前記最大回転数と前記スロットル開度センサが検出した前記スロットルバルブの開度とを用いて、前記EGR装置のバルブの開度を推定する。
【0025】
(3) 前記吸気系には、前記吸入空気に対する二次ガスを該吸気系に供給するための二次ガス供給用バルブも設けられ、前記吸気状態検出手段は、前記二次ガス供給用バルブの開度を検出する二次ガス用開度センサであり、前記バルブ開度推定手段は、前記最大吸入空気量、前記最低負圧及び/又は前記最大回転数と前記二次ガス用開度センサが検出した前記二次ガス供給用バルブの開度とを用いて、前記EGR装置のバルブの開度を推定する。
【0026】
(4) 上記(3)の場合において、前記二次ガス供給用バルブは、前記内燃機関内に発生した前記二次ガスとしてのブローバイガスを前記吸気系に導くブローバイガス還元装置を構成する逆止弁である。
【0027】
(5) 前記吸気系には、該吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気量を調整するためのスロットルバルブと、該スロットルバルブをバイパスするバイパス通路とが設けられ、前記吸気状態検出手段は、前記バイパス通路に設けられ、アイドル状態の前記内燃機関に吸入される吸入空気量を調整するための調整用バルブの開度を検出する二次空気用開度センサである。なお、前記二次空気は、前記調整用バルブ及び前記バイパス通路を経由して、前記吸気系における前記スロットルバルブの下流側に供給される吸入空気の一部である。
【0028】
上述した(1)〜(5)のいずれの構成においても、前記吸入空気量、前記最低負圧及び/又は前記最大回転数と前記吸気系の吸気状態とを検出することが可能であるため、前記バルブ開度推定手段は、検出された前記吸入空気量、前記最低負圧及び/又は前記最大回転数と前記吸気状態とに基づいて前記EGR装置のバルブの開度を精度よく推定することができる。
【0029】
そして、上述した本発明に係るEGRシステムは、前記EGR装置を制御することにより、前記排気ガスの一部を前記吸気系に還流させる制御手段と、前記排気系に設けられ、空燃比を検出する空燃比検出手段とをさらに有し、前記制御手段は、前記EGR装置を制御して前記排気ガスの一部を前記吸気系に還流させる場合に、前記空燃比検出手段で検出された前記空燃比が所定範囲内にあれば、前記バルブ開度推定手段が推定した前記EGR装置のバルブの開度を所定値に補正することが好ましい。このように、前記空燃比も考慮して、前記EGR装置のバルブの開度を補正することにより、前記排気ガスの還流量を一層精度よく制御することができる。
【0030】
また、本発明に係るEGRシステムは、前記排気系に設けられ、空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記吸気系における前記内燃機関の有する燃料噴射手段より噴射される燃料の噴射時間を設定する燃料噴射時間設定手段とをさらに有し、前記燃料噴射時間設定手段は、前記空燃比検出手段で検出された前記空燃比が所定範囲内から外れている場合には、前記噴射時間を所定値に補正することが好ましい。前記空燃比を考慮して、前記噴射時間を補正することにより、前記燃料噴射手段からの前記燃料の噴射量を精度よく制御することができるので、前記内燃機関の燃費が向上する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0032】
すなわち、リフトセンサ(開度センサ)を用いることなく、既存のセンサである吸入空気量検出手段、負圧検出手段及び/又は回転数検出手段と吸気状態検出手段とを用いて検出した吸入空気量、吸入空気の負圧及び/又は内燃機関の回転数と吸気状態とに基づいてEGR装置のバルブの開度を推定するので、前記内燃機関の燃焼に起因した燃焼生成物の前記バルブや排気還流手段への付着によって排気ガスの還流量が減少する可能性があっても、前記EGR装置を精度よく制御することが可能になると共に、コストを低減することができる。また、前記EGR装置の故障の検知精度も高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態に係るEGRシステムの概略構成説明図である。
【図2】図2A及び図2Bは、EGR装置のバルブの開度の推定動作及びEGR装置の故障検知動作、並びに、空燃比に対するフィードバック制御処理をそれぞれ説明するためのフローチャートである。
【図3】図3A〜図3Cは、図2Aのフローチャートにおいて用いられるEGR装置のバルブの開度(リフト量)を推定するためのマップである。
【図4】図4Aは、EGR装置に供給されるEGR制御信号のデューティを算出するためのマップであり、図4Bは、インジェクタに供給されるインジェクタ制御信号の通電時間を算出するためのマップであり、図4Cは、図4Aのデューティを補正するためのマップであり、図4Dは、図4Bの通電時間を補正するためのマップである。
【図5】図5Aは、EGR装置のバルブに対する故障解消モードの実施を説明するためのフローチャートであり、図5Bは、図5Aのフローチャートで用いられるリフト量からバルブの全開及び全閉の実行回数を決定するためのマップである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係るEGRシステムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0035】
[本実施形態の構成]
図1において、本実施形態に係るEGRシステム10は、エンジン(内燃機関)12に吸気装置(吸気系)14と排気装置(排気系)16とを設け、吸気装置14と排気装置16とをEGR通路(排気還流手段)18で接続し、該EGR通路18の途中にEGR装置20を設けた構成において、EGR装置20を制御することで吸気装置14と排気装置16とを連通させて、エンジン12から排出される排気ガスの一部を吸気装置14に再循環させると共に、該EGR装置20の故障の有無を診断するための装置である。なお、図1では、複数のシリンダを有する多気筒のエンジン12と、該エンジン12に接続された吸気装置14及び排気装置16とを模式的に図示している。また、EGR装置20は、シャフト22の先端に装着されたバルブ24を備え、シャフト22を変位させてバルブ24を弁開状態にすることで、吸気装置14と排気装置16とを連通可能である。
【0036】
ここで、EGRシステム10が適用されるエンジン12、吸気装置14及び排気装置16について説明する。
【0037】
エンジン12は、例えば、自動車や自動二輪車等の車両に搭載され、エンジン本体30の内部には複数のシリンダ室32が形成されている。各シリンダ室32には、ピストン34が軸線方向に沿って変位自在に設けられている。すなわち、ピストン34のストローク変位により、エンジン12における吸気、圧縮、燃焼及び排気の各行程が行われる。そして、ピストン34からコネクティングロッド36及びクランクシャフト38を介してエンジン12の駆動力が出力される。なお、図1では、1つのシリンダ室32のみ図示している。
【0038】
また、シリンダ室32の上方に形成される燃焼室39には、吸気ポート40及び排気ポート42がそれぞれ開口している。吸気ポート40には吸気バルブ44が設けられる一方で、排気ポート42には排気バルブ46が設けられている。吸気ポート40と排気ポート42との間の燃焼室39の上方には、各燃焼室39毎に点火プラグ48が設けられている。
【0039】
さらに、エンジン本体30にはウォータジャケット50が形成され、図示しないラジエータとウォータジャケット50との間で冷却水を循環させることにより、エンジン12のピストン34等を冷却することができる。
【0040】
さらにまた、エンジン12には、シリンダ室32内に発生したブローバイガス(二次ガス)を吸気装置14に導くためのブローバイガス還元装置(PCV)52が設けられている。
【0041】
PCV52は、シリンダ室32に連通し、ブローバイガスが通過するガス通路54と、ガス通路54の下流側の吸気ポート40及び排気ポート42近傍に形成されたチャンバ56と、チャンバ56からブローバイガスをエンジン12外に排出させるための逆止弁(二次ガス供給用バルブ)58と、チャンバ56を逆止弁58を介して吸気装置14のタンク部64に連結させるガス通路59とから構成される。従って、ブローバイガスは、シリンダ室32からガス通路54、チャンバ56、逆止弁58及びガス通路59を通過して吸気装置14に導かれ、エアクリーナ72を通じて外部から吸気装置14に取り込まれた吸入空気と共に、吸気ポート40に吸入される。
【0042】
各吸気ポート40には、吸気装置14を構成するインテークマニホールド60の吸気分岐管62がそれぞれ接続されている。インテークマニホールド60は、下流側としてのエンジン12側で複数本に分岐するように枝状に形成された各吸気分岐管62と、各吸気分岐管62と接続するように形成され、所定容量を有するタンク部64と、タンク部64の上流側に形成され、各吸気分岐管62を纏める吸気集合管66とから構成される。なお、前述のように、図1では、1つのシリンダ室32のみ図示しているため、インテークマニホールド60についても、1つの吸気分岐管62のみ図示している。
【0043】
吸気集合管66には、図示しないアクセルペダルの操作に連動して開閉するスロットルバルブ68を含むスロットルボディ70が設けられている。スロットルボディ70の上流側にはエアクリーナ72が設けられ、該エアクリーナ72を通じて外部からインテークマニホールド60に吸入空気が取り込まれる。この場合、エアクリーナ72によって吸入空気に含有される塵埃等が好適に除去される。
【0044】
また、各吸気分岐管62には、燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射手段)74が吸気ポート40と対向するようにそれぞれ配設されている。なお、インジェクタ74が燃焼室39内に直接向けて配設される直噴エンジンにも適用可能である。
【0045】
さらに、吸気集合管66には、スロットルボディ70をバイパスするようにアイドル回転数制御装置76が並設されている。アイドル回転数制御装置76は、スロットルバルブ68をバイパスするバイパス通路78と、バイパス通路78に設けられ、アイドル状態のエンジン12に吸入される吸入空気量を調整するための調整用バルブ(IACV、二次空気供給用バルブ)79とから構成される。従って、スロットルバルブ68が閉じている場合には、吸入空気(二次空気)がバイパス通路78及び調整用バルブ79を経由して、吸気集合管66におけるスロットルバルブ68の下流側に流入する。
【0046】
一方、各排気ポート42には、排気装置16を構成するエキゾーストマニホールド80の排気分岐管82がそれぞれ接続されている。エキゾーストマニホールド80は、上流側としてのエンジン12側で複数本に分岐するように枝状に形成された各排気分岐管82と、各排気分岐管82を纏める排気集合管84とから構成される。排気集合管84には、エンジン12の排気行程によって各排気ポート42から排気された排気ガス中のCO、HC及びNOx等を浄化する三元触媒等の触媒86が設けられている。なお、図1では、エキゾーストマニホールド80についても、1つの排気分岐管82のみ図示している。
【0047】
排気集合管84の上流側と吸気分岐管62の下流側とは、EGR通路18で接続されている。EGR通路18は、排気集合管84の上流側から延びる排気側排気還流管90をEGR装置20の入力ポート92に接続すると共に、吸気分岐管62の下流側から延びる吸気側排気還流管94をEGR装置20の出力ポート96に接続することにより構成される。
【0048】
そして、EGR装置20においては、シャフト22が軸線方向に変位して、バルブ24が入力ポート92から離間すれば、弁開状態となり、排気ガスの一部を排気集合管84から排気側排気還流管90、EGR装置20及び吸気側排気還流管94を介して、吸気分岐管62に還流させることができる。この結果、吸気装置14に還流された排気ガスと、該吸気装置14の上流側からの吸入空気及びブローバイガスとに対して、インジェクタ74から燃料を噴射すると、吸気ポート40近傍で燃料と吸入空気、還流された排気ガス及びブローバイガスとが混合した混合気が形成され、エンジン12の吸気行程において、該混合気を燃焼室39に吸入することができる。なお、シャフト22の軸線方向への変位によって、バルブ24が入力ポート92を閉塞すれば、EGR装置20は弁閉状態となり、排気集合管84と吸気分岐管62との連通状態が遮断される(排気ガスの還流動作が停止に至る)。
【0049】
また、図1において、エンジン12、吸気装置14及び排気装置16には、吸気系統に関わる各種の状態、すなわち、吸気装置14の吸気状態と、吸入空気の負圧PB、吸入空気量AFMQAIR及び/又はエンジン回転数(内燃機関の回転数)NEとを検出するために、下記の検出手段が配設されている。
【0050】
吸気装置14の吸気集合管66には、外部からエアクリーナ72を通じて吸気集合管66に取り込まれた吸入空気の量(吸入空気量AFMQAIR)を検出するセンサとしてのエアフローメータ(吸入空気量検出手段)100が設けられている。また、タンク部64には、エンジン12の吸気行程において、吸気装置14からエンジン12の燃焼室39に吸入される吸入空気の負圧PBを検出する負圧センサ(負圧検出手段)102が設けられている。さらに、スロットルボディ70には、スロットルバルブ68の開度を検出するスロットル開度センサ130が設けられている。さらにまた、アイドル回転数制御装置76には、IACV79の開度を検出するIACV開度センサ(二次空気用開度センサ)132が設けられている。なお、以下の説明において、エアフローメータ100は、センサ100ともいう。
【0051】
エンジン12には、クランクシャフト38のクランク角に基づいて、エンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ(回転数検出手段)104(例えば、クランクポジションセンサ)が設けられている。また、エンジン本体30には、ウォータジャケット50内の冷却水の温度(水温TW)を検出する水温センサ106が設けられている。さらに、エンジン本体30には、逆止弁58の開度を検出する逆止弁開度センサ(二次ガス用開度センサ)134も設けられている。
【0052】
排気装置16の排気集合管84には、排気ガスに対してリーンからリッチにかけての広範囲にわたる空燃比LAFをリニアに検出可能な空燃比検出手段としての広域空燃比センサ(LAFセンサ)108が設けられている。なお、LAFセンサ108は、排気ガス中の酸素濃度に基づき空燃比LAFを検出するので、排気ガスの一部が流入する排気側排気還流管90にLAFセンサ108を設けてもよい。
【0053】
これらのセンサ100〜108、130〜134の検出結果(を示す検出信号)は、エンジンコントロールユニット(ECU)110に出力される。
【0054】
ECU(バルブ開度推定手段、判定手段、信号出力手段)110は、上述の各センサ100〜108、130〜134の検出結果に基づいて、エンジン12、EGR装置20、点火プラグ48、逆止弁58、スロットルバルブ68、インジェクタ74及びIACV79等を制御する。また、ECU110は、各種の情報を記憶するメモリ112と、バルブ24の開度(シャフト22の軸線方向への移動に起因した入力ポート92に対するバルブ24のリフト量)を推定するための推定処理、及び、EGR装置20の故障診断処理に用いられる各種のマップ138〜144と、空燃比LAFに対するフィードバック制御に用いられる各種のマップ146〜152と、エンジン12の燃焼に起因した燃焼生成物のバルブ24への付着等によってEGR装置20が故障するおそれがある場合に、燃焼生成物の付着等を解消するための故障解消モードを実施する際に用いられるマップ154とを有する。
【0055】
この場合、ECU110は、各センサ100〜106の検出結果と、マップ138、140、144とを用いて、EGR装置20が作動していない状態でのバルブ24のリフト量を推定すると共に、推定したリフト量に基づいてEGR装置20の故障の有無を診断する。また、ECU110は、推定したリフト量が0でない場合(弁閉状態でない場合)には、該リフト量とマップ142とを用いて、EGR装置20に供給されるEGR制御信号のデューティの補正量Open_Dutyを決定する。さらに、EGR装置20に対する故障診断処理を行った結果、該EGR装置20に何らかの故障が発生したと判断した場合には、該故障の発生を示す警告信号を警告手段としての故障警告灯(MIL)122に出力する。MIL122は、警告信号に基づいて、EGR装置20の故障の発生を外部(ドライバー)に報知する。
【0056】
また、空燃比LAFに対するフィードバック制御を行う場合、ECU110は、各センサ102〜108の検出結果と、マップ146〜152と、デューティの補正量Open_Dutyとを用いて、EGR制御信号のデューティを補正すると共に、インジェクタ74から噴射する燃料の噴射時間(インジェクタ74に供給される該インジェクタ74への通電時間)を補正する。
【0057】
従って、本実施形態に係るEGRシステム10は、上述したEGR通路18及びEGR装置20と、各センサ100〜108、130〜134と、ECU110(及び該ECU110内の各構成要素)と、MIL122とにより構成される。
【0058】
なお、前述した故障解消モードの実施が必要とされるEGR装置20の主たる故障原因には、下記(1)〜(3)がある。すなわち、(1)バルブ24と図示しないバルブシートとの間に異物が挟まった状態となる異物噛込、(2)バルブ24及びバルブシートのシート面の少なくとも一方に燃焼生成物が局所的に堆積した状態となるデポジット、(3)シャフト22と図示しない軸受との間に燃焼生成物が固着して該シャフト22が動かない状態となるスティック、がある。
【0059】
そこで、EGRシステム10では、このような異物噛込、デポジット、スティック等のEGR装置20の故障原因を解消するために、エンジン12の動作停止時(イグニッションスイッチのオフ時)に、バルブ24の全開と全閉とを繰り返し実行することにより、異物噛込、デポジット、スティックを除去する故障解消モードを実施する。
【0060】
具体的に、ECU110は、バルブ24のリフト量とバルブ24の全開及び全閉の実行回数との関係を示すマップ154を有している。そこで、ECU110は、推定したバルブ24のリフト量がEGR装置20の故障発生の判断基準となる所定の第1閾値より大きければ、マップ154を参照して、推定したバルブ24の開度から故障解消モードの実施時におけるバルブ24の全開及び全閉の実行回数を決定し、決定した実行回数に応じたEGR制御信号をEGR装置20に供給する。
【0061】
この場合、EGR制御信号は、バルブ24の全開動作に対して100%のフルデューティとなり、全閉動作に対して0%のデューティとなるパルス信号である。すなわち、EGR制御信号は、バルブ24の全開及び全閉の実行回数分だけのパルスから構成される信号である。従って、EGR装置20では、該EGR制御信号のパルスに従って、バルブ24の全開及び全閉を実行回数分だけ行わせることができる。
【0062】
また、ECU110は、上述した故障解消モードの実施後に推定したバルブ24のリフト量が、デポジット等の故障原因を解消できなかったときのリフト量を示す所定の第2閾値より大きければ、故障解消モードを実施しても故障原因を解消できなかったと判断し、その判断結果を示す警告信号をMIL122に出力する。MIL122は、この警告信号に基づいて、EGR装置20の故障と、故障原因を解消できなかったこととをドライバーに報知する。
【0063】
なお、上記の第1閾値と第2閾値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0064】
[本実施形態の動作]
本実施形態に係るEGRシステム10は、以上のように構成されるものであり、次に、該EGRシステム10の動作について、図2A〜図5Bを参照しながら説明する。なお、この説明では、必要に応じて、図1も参照しながら説明する。
【0065】
図2Aは、EGRシステム10によるEGR装置20のバルブ24のリフト量の推定処理、及び、EGR装置20の故障診断処理のフローチャートである。図2Bは、空燃比LAFに対するフィードバック制御処理のフローチャートである。
【0066】
先ず、EGRシステム10によるEGR装置20のバルブ24のリフト量の推定処理、及び、EGR装置20の故障診断処理について、図2A及び図3A〜図3Cを参照しながら説明する。
【0067】
図2AのステップS1において、ドライバーが図示しないイグニッションスイッチをオンにすると、水温センサ106は、ウォータジャケット50内の冷却水の水温TWを検出し、該水温TWを示す検出信号をECU110に出力する(ステップS2)。
【0068】
ステップS3でエンジン12が始動を開始すると、エアフローメータ100は、吸入空気量AFMQAIRを逐次検出して、該吸入空気量AFMQAIRを示す検出信号をECU110に出力し、負圧センサ102は、吸入空気の負圧PBを逐次検出して、負圧PBを示す検出信号をECU110に出力し、エンジン回転数センサ104は、エンジン回転数NEを逐次検出して、該エンジン回転数NEを示す検出信号をECU110に出力する。なお、ECU110は、エンジン12の始動開始に伴い、エンジン12の動作停止を示すエンジン停止フラグを立てないようにする(エンジン停止フラグ=0)。エンジン停止フラグは、メモリ112に記憶される。
【0069】
ところで、エンジン12が始動を開始すると、吸入空気量AFMQAIRは、短時間で急激に増大した後に、最大吸入空気量MAX_AFMQAIRに至り、その後、急速に低下して略一定値に落ち着く。また、負圧PBについても、エンジン12の始動開始後、短時間で急激に低下した後に、最低負圧MIN_PB(吸気装置14(例えば、インテークマニホールド60)内の圧力の最小値)に至り、その後、急速に上昇して略一定値に落ち着く。さらに、エンジン回転数NEについても、エンジン12の始動開始後、短時間で急激に増大した後に、最大エンジン回転数MAX_NE(エンジン回転数NEの最大値)に至り、その後、徐々に低下して略一定値に落ち着く。
【0070】
一方、エンジン12の燃焼に起因した燃焼生成物のEGR通路18内やバルブ24への付着等によって、排気装置16から吸気装置14に再循環される排気ガスの還流量が減少する。この結果、ECU110がEGR装置20を制御して所望の還流量の排気ガスを吸気装置14へ還流させようとしても、該所望の還流量と実際の還流量とが異なることになる。
【0071】
さらに、バルブ24への燃焼生成物の付着等に起因して、弁閉状態であるはずのEGR装置20のバルブ24が開いていれば、吸気装置14が外部から吸入空気を取り込んでも、該吸入空気がEGR通路18及びEGR装置20にリークする可能性がある。従って、EGR装置20の非作動領域において、このようなリークが発生すると、EGR装置20の弁閉状態(正常時)と比較して、最低負圧MIN_PBが上昇したり(最低負圧MIN_PBの絶対値が低下したり)、最大吸入空気量MAX_AFMQAIRが低下したり、最大エンジン回転数MAX_NEが低下することがある。
【0072】
そこで、ステップS4において、ECU110は、エアフローメータ100から最大吸入空気量MAX_AFMQAIRを示す検出信号、負圧センサ102から最低負圧MIN_PBを示す検出信号、及び/又は、エンジン回転数センサ104から最大エンジン回転数MAX_NEを示す検出信号が入力された場合には、最大吸入空気量MAX_AFMQAIR、最低負圧MIN_PB及び/又は最大エンジン回転数MAX_NEをメモリ112に記憶する。
【0073】
次のステップS5において、ECU110は、マップ140を参照して、最低負圧MIN_PB及び水温TWに応じたバルブ24のリフト量を決定するか、マップ144を参照して、最大吸入空気量MAX_AFMQAIR及び水温TWに応じたバルブ24のリフト量を決定するか、あるいは、マップ138を参照して、最大エンジン回転数MAX_NE及び水温TWに応じたバルブ24のリフト量を決定する。
【0074】
図3Aは、マップ140に示す水温TWと最低負圧MIN_PBとリフト量との関係を示すグラフである。このグラフにおいて、複数の実線(曲線)は、異なるバルブ24のリフト量毎の水温TWと最低負圧MIN_PBとの関係を示す曲線であり、水温TWは、上記の各種のバルブ24の制御において支配的なパラメータであるため、同じ水温TWであれば、略同一の吸気状態と考えられ、特に、バルブ24のリフト量が大きくなる程、最低負圧MIN_PBは上昇する(最低負圧MIN_PBの絶対値は小さくなる)。
【0075】
また、図3Bは、マップ144に示す水温TWと最大吸入空気量MAX_AFMQAIRとリフト量との関係を示すグラフである。このグラフにおいても同様に、複数の実線(曲線)は、異なるリフト量毎の水温TWと最大吸入空気量MAX_AFMQAIRとの関係を示す曲線であり、同じ水温TWであれば、リフト量が大きくなる程、最大吸入空気量MAX_AFMQAIRは低下する。
【0076】
さらに、図3Cは、マップ138に示す水温TWと最大エンジン回転数MAX_NEとリフト量との関係を示すグラフである。このグラフにおいても同様に、複数の実線(直線)は、異なるリフト量毎の水温TWと最大エンジン回転数MAX_NEとの関係を示す直線であり、同じ水温TWであれば、リフト量が大きくなる程、最大エンジン回転数MAX_NEは低下する。
【0077】
従って、ステップS5において、ECU110は、検出した水温TW及び最低負圧MIN_PB、検出した水温TW及び最大吸入空気量MAX_AFMQAIR、あるいは、検出した水温TW及び最大エンジン回転数MAX_NEに対応する曲線又は直線を特定し、該曲線又は直線の示すリフト量を、エンジン12の始動開始直後における非作動状態のEGR装置20でのバルブ24のリフト量Open_Liftとして特定する。特定されたリフト量Open_Liftは、メモリ112に記憶される。
【0078】
ステップS6において、ECU110は、リフト量Open_Liftが0であるか否か(バルブ24が弁閉状態であるか否か)を判定する。
【0079】
Open_Lift=0である場合、ECU110は、バルブ24が弁閉状態にあるので、EGR装置20が故障していないと診断し、今回の故障診断結果を示す今回故障フラグを立てず(今回故障フラグ=0)、該今回故障フラグをメモリ112に記憶する(ステップS7)。
【0080】
一方、ステップS6において、Open_Liftが0ではなく所定の範囲内にある場合(ステップS6:NO、ステップS8:YES)、例えば、「0<Open_Lift<所定の閾値」である場合、ステップS9において、ECU110は、バルブ24が僅かに開いているが、故障と判断する程度のリフト量ではないと診断し、今回故障フラグを立てず(今回故障フラグ=0)、該今回故障フラグをメモリ112に記憶する。
【0081】
この結果、次のステップS10において、ECU110は、マップ142を参照して、リフト量Open_Liftに応じたEGR制御信号のデューティの補正量Open_Duty(以下、デューティOpen_Dutyともいう。)を決定する。決定したデューティOpen_Dutyもメモリ112に記憶される。なお、このデューティOpen_Dutyは、弁閉状態のEGR装置20に所定のデューティのEGR制御信号を供給してバルブ24を弁開状態に移行させる場合に、当該所定のデューティに対するオフセット量を示すデューティである。
【0082】
また、ステップS8において、リフト量Open_Liftが所定の範囲(第1閾値、第2閾値)から外れている場合(ステップS8:NO)、すなわち、「Open_Lift≧所定の閾値」である場合、ステップS11において、ECU110は、故障と判断できる程度のリフト量であると診断し、今回故障フラグを立て(今回故障フラグ=1)、該今回故障フラグをメモリ112に記憶する。
【0083】
ところで、ステップS7、S9、S11によりメモリ112に記憶された今回故障フラグは、いずれも、今回の故障診断結果を示すものである。そのため、図2Aの処理を実行した際に、メモリ112に既に記憶されている今回故障フラグは、前回の処理において故障診断され、メモリ112に記憶された前回の処理での今回故障フラグ(以下、「前回故障フラグ」ともいう。)である。
【0084】
図5A及び図5Bにおいて詳述するが、前回故障フラグ=0であって、且つ、今回故障フラグ=1の場合、EGRシステム10では、エンジン12の動作停止直後から次回の図2Aの処理開始前(次回のエンジン12の動作開始前)までの間のエンジン12の動作停止時に、デポジット等の解消を目的とする故障解消モードが実施される。
【0085】
そのため、前回の図2Aの処理において、前回故障フラグ=1であれば、前回のエンジン12の動作停止直後から今回の図2Aの処理開始前までの間のエンジン12の動作停止時に、故障解消モードが既に実施されていたことになる。
【0086】
そこで、次のステップS12において、ECU110は、前回故障フラグ=0であるか否かを判定する。前回故障フラグ=0であれば(ステップS12:YES)、ECU110は、前回の図2Aの処理の段階ではEGR装置20の故障が発生していないが、今回故障フラグ=1(ステップS11)であるので、エンジン12の動作停止後に、図5A及び図5Bの故障解消モードを実施することを決定する。すなわち、前回故障フラグ=0である場合における今回の図2Aの処理でのステップS8の故障診断処理は、リフト量Open_Liftが故障解消モードの実施の判断基準となる閾値(第1閾値)よりも大きいか否かを判断する処理となる。
【0087】
一方、ステップS12において、前回故障フラグ=1であれば(ステップS12:NO)、ECU110は、今回故障フラグ=1(ステップS11)でもあるので、今回の図2Aの処理に先立ち実施された故障解消モードによっても、デポジット等が解消しなかったと判断する。すなわち、前回故障フラグ=1である場合における今回の図2Aの処理でのステップS8の故障診断処理は、前回の故障解消モードの実施によってもデポジット等を解消することができなかったことから、リフト量Open_LiftがEGR装置20の故障の判断基準となる閾値(第2閾値)よりも大きくなっているか否かを判断する処理となる。
【0088】
そして、ECU110は、前回故障フラグ=1、且つ、今回故障フラグ=1であれば、次に、EGR装置20の故障を示す警告信号をMIL122に出力する。MIL122は、警告信号に基づいて、EGR装置20に故障が発生したことを外部に報知する。これにより、ドライバーは、故障解消モードを実施してもデポジット等が解消されなかった(EGR装置20の故障が解消されなかった)と判断し、イグニッションスイッチをオフにして、EGR装置20の交換等の故障対応を速やかに取ることができる。
【0089】
なお、前回故障フラグ=1であっても、今回故障フラグ=0である場合には、故障解消モードの実施によってデポジット等が解消されたことになるので、MIL122による報知は行われないことは勿論である。
【0090】
また、リフト量Open_Liftと最低負圧MIN_PB、最大吸入空気量MAX_AFMQAIR、及び、最大エンジン回転数MAX_NEとの間には、図3A〜図3Cに示す関係がある。従って、リフト量Open_Liftが所定の閾値を超える場合(閾値を超えるようなリークがEGR装置20に発生している場合)には、検出された最低負圧MIN_PBが前記閾値に応じた負圧PBの値よりも上昇し、検出された最大吸入空気量MAX_AFMQAIRが前記閾値に応じた吸入空気量AFMQAIRの値よりも小さくなり、あるいは、検出された最大エンジン回転数MAX_NEが前記閾値に応じたエンジン回転数NEの値よりも低くなった、と判断することもできる。
【0091】
また、図3A〜図3Cに示すように、水温TWによって最低負圧MIN_PB、最大吸入空気量MAX_AFMQAIR、及び、最大エンジン回転数MAX_NEの値が変化するため、ECU110は、該水温TWに応じて閾値を変更してもよい。
【0092】
さらに、図2Aの処理後、ドライバーがイグニッションスイッチをオフにしてエンジン12が動作停止に至った場合、ECU110は、エンジン停止フラグを立てる(エンジン停止フラグ=1)。エンジン停止フラグは、メモリ112に記憶される。
【0093】
次に、空燃比LAFに対するフィードバック制御処理について、図2B及び図4A〜図4Dを参照しながら説明する。なお、このフィードバック制御処理は、図2Aのリフト量Open_Liftの推定処理及び故障診断処理から所定時間経過した後に行われる処理である。
【0094】
図2BのステップS20において、ECU110は、水温TWがEGR装置20を動作可能な温度であれば(ステップS20:YES)、次のステップS21において、エンジン回転数センサ104が検出したエンジン回転数NE及び負圧センサ102が検出した吸入空気の負圧PBをメモリ112に記憶する。なお、前記温度は、EGR装置20が安定的に動作すると共に、LAFセンサ108が活性化するような水温である。
【0095】
次のステップS22において、ECU110は、マップ150を参照して、メモリ112に記憶された現在のエンジン回転数NE及び負圧PBがEGR装置20を安定的に動作することができる領域のデータであるか否かを判定する。
【0096】
図4Aは、マップ150の詳細を図示したものであり、マップ150中、D1〜D6の欄は、EGR装置20を安定的に動作することができる領域であり、それ以外の「0」の欄は、EGR装置20の安定動作が図れない領域である。従って、ECU110は、マップ150中、現在のエンジン回転数NE及び負圧PBに該当する欄がD1〜D6のいずれかの欄であれば(ステップS22:YES)、ステップS23において、該当する欄に格納されているデューティDi(i=1〜6)を、EGR装置20に供給されるEGR制御信号のデューティIni_Duty(の初期値)として設定する。
【0097】
次のステップS24において、ECU110は、前述したリフト量Open_Liftの推定処理において、オフセット量としてのデューティOpen_Dutyを算出した場合には、デューティIni_DutyからデューティOpen_Dutyを減算し、減算後のデューティ(Ini_Duty−Open_Duty)を有するEGR制御信号をEGR装置20に供給する。従って、EGR装置20では、(Ini_Duty−Open_Duty)のデューティのEGR制御信号が供給されると、図示しないソレノイドが励磁されて、シャフト22が軸線方向に変位し、バルブ24は、弁閉状態から弁開状態に変化する。
【0098】
それ故、エンジン12の燃焼に起因した燃焼生成物がEGR通路18内やバルブ24に付着していたとしても、バルブ24のリフト量を、デューティ(Ini_Duty−Open_Duty)に応じたリフト量に精度よく制御することが可能となるため、エンジン12から排出された排気ガスの一部を排気装置16からEGR通路18及びEGR装置20を介して吸気装置14に確実に再循環させることができる。
【0099】
一方、ステップS25において、ECU110は、マップ152を参照して、メモリ112に記憶された現在のエンジン回転数NE及び負圧PBに応じたインジェクタ74からの燃料の噴射時間、より詳細には、ECU110からインジェクタ74に供給される、前記噴射時間に応じたインジェクタ制御信号の通電時間を示すデューティIni_Tiを特定する。
【0100】
図4Bは、マップ152の詳細を図示したものであり、マップ152中、Ti1〜Ti6の欄は、前述した図4AのD1〜D6の欄に対応している。また、それ以外の「1」の欄は、図4Aの「0」の欄に対応している。従って、ECU110は、マップ152中、該当する欄に格納されているデューティTij(j=1〜6)を、インジェクタ74に供給されるインジェクタ制御信号の通電時間を示すデューティIni_Ti(の初期値)として設定する。この結果、ECU110からインジェクタ74にIni_Tiのデューティのインジェクタ制御信号が供給されると、インジェクタ74は、デューティIni_Ti(の通電時間)に応じた噴射時間だけ燃料を噴射することができる。
【0101】
一方、LAFセンサ108は、既に活性化しており、空燃比LAFを逐次検出して、その検出信号をECU110に出力している。そこで、ステップS26において、ECU110は、LAFセンサ108からの検出信号の示す空燃比LAFをメモリ112に記憶し、次のステップS27において、メモリ112に記憶された実際の空燃比LAFと理論空燃比(例えば、14.7)との偏差ΔAF(ΔAF=LAF−14.7)を算出する。
【0102】
次のステップS28において、ECU110は、偏差ΔAFが所定の範囲内(例えば、図4Cに示す両矢印の範囲内)にあるか否かを判定する。
【0103】
ステップS28において、偏差ΔAFが所定の範囲内にあれば、ECU110は、マップ146を参照して、この偏差ΔAFが0になるような、EGR装置20に供給されるEGR制御信号のデューティの補正量AF_Dutyを算出する(ステップS29)。
【0104】
図4Cは、マップ146に示す偏差ΔAFと補正量AF_Dutyとの関係を示すグラフである。ECU110は、両矢印の範囲内に偏差ΔAFがあれば、該偏差ΔAFに応じた補正量AF_Dutyを特定する。
【0105】
そして、ECU110は、現在のEGR装置20に供給されているEGR制御信号のデューティ(例えば、前述した(Ini_Duty−Open_Duty))に補正量AF_Dutyを加算して該デューティを補正し、補正後のデューティを有する新たなEGR制御信号をEGR装置20に供給する(ステップS30)。これにより、EGR装置20は、補正後のデューティに従ってバルブ24を開閉するため、バルブ24のリフト量は、(補正前のデューティ+AF_Duty)に応じたリフト量に変化する。この結果、LAFセンサ108で検出される空燃比LAFは、理論空燃比に近づくようにフィードバック制御される。
【0106】
一方、ステップS28において、偏差ΔAFが所定の範囲から外れていれば(ステップS28:NO)、ECU110は、マップ148を参照して、この偏差ΔAFが0になるような、インジェクタ74に供給されるインジェクタ制御信号のデューティの補正量AF_Tiを算出する。
【0107】
図4Dは、マップ148に示す偏差ΔAFと補正量AF_Tiとの関係を示すグラフである。ECU110は、矢印の範囲に偏差ΔAFがあれば、該偏差ΔAFに応じた補正量AF_Tiを特定する。
【0108】
そして、ECU110は、インジェクタ74に供給されている現在のインジェクタ制御信号の通電時間を示すデューティ(例えば、前述したIni_Ti)に補正量AF_Tiを加算して該デューティを補正し、補正後のデューティを有する新たなインジェクタ制御信号をインジェクタ74に供給する(ステップS31)。これにより、インジェクタ74は、補正後のデューティに応じた噴射時間に燃料を噴射するため、この場合でも、LAFセンサ108で検出される空燃比LAFは、理論空燃比に近づくようにフィードバック制御される。
【0109】
なお、前述したステップS20において、水温TWがEGR装置20を動作可能な程度の温度に上昇していない場合には(ステップS20:NO)、上記のステップS21〜S31の処理は実行されない。
【0110】
そして、ステップS32において、ECU110は、図2Aで説明した故障診断処理の結果、フラグ=1であれば(ステップS32:NO)、EGR装置20の故障対応を行う(ステップS33)。
【0111】
なお、前述のように、スロットル開度センサ130は、スロットルバルブ68の開度を検出し、IACV開度センサ132は、IACV79の開度を検出し、逆止弁開度センサ134は、逆止弁58の開度を検出している。スロットルバルブ68の開度、及び、IACV79の開度により吸入空気量AFMQAIRが調整され、吸入空気の負圧PBによって逆止弁58からブローバイガスが排出される。
【0112】
従って、本実施形態では、水温TWに代替して、スロットル開度センサ130が検出したスロットルバルブ68の開度、IACV開度センサ132が検出したIACV79の開度、又は、逆止弁開度センサ134が検出した逆止弁58の開度を用いて、バルブ24のリフト量を推定してもよい。この場合には、図3A〜図3Cと同様に、異なるリフト量毎のスロットルバルブ68の開度、IACV79の開度、又は、逆止弁58の開度と水温TWとの関係を示すマップをECU110に予め格納し、バルブ24のリフト量の推定処理の際に、このマップを参照してバルブ24のリフト量を推定すればよい。
【0113】
図5Aは、図2Aの処理後、エンジン12の動作停止時に実施される故障解消モードのフローチャートである。また、図5Bは、故障解消モードの実施時に使用されるマップ154を示す説明図である。
【0114】
図5AのステップS40において、ECU110は、メモリ112に記憶されたエンジン停止フラグが1であるか否かを判定する。エンジン停止フラグ=0である場合(ステップS40:NO)、ECU110は、エンジン12が動作中であると判断し、故障解消モードを実施しない。
【0115】
エンジン停止フラグ=1である場合(ステップS40:YES)、ECU110は、エンジン12が動作停止中であると判断し、次のステップS41において、今回故障フラグ=1であるか否かを判断する。今回故障フラグ=0である場合(ステップS41:NO)、ECU110は、EGR装置20の故障が発生していないと判断し、故障解消モードを実施しない。
【0116】
今回故障フラグ=1である場合(ステップS41:YES)、ECU110は、図2Aの処理(故障診断処理)によって、EGR装置20が故障と診断されたと判断し、ステップS42以降の故障解消モードを実施することを決定する。
【0117】
具体的に、ステップS42において、ECU110は、図2Aのリフト量の推定処理によって推定されたリフト量Open_Liftをメモリ112から読み出す。
【0118】
次のステップS43において、ECU110は、図5Bに示すマップ154を用いて、推定されたリフト量Open_Liftから、バルブ24を全開(オン)及び全閉(オフ)を繰り返し行う実行回数を決定する。
【0119】
次のステップS44において、ECU110は、決定した実行回数を示すEGR制御信号をEGR装置20に供給する。これにより、EGR装置20は、EGR制御信号を構成する実行回数分のパルス信号に従って、バルブ24の全開及び全閉を実行回数分だけ繰り返し行う。この結果、バルブ24及びバルブシートでのデポジット等を解消するための故障解消モードが実行される。
【0120】
なお、ステップS44では、ECU110からEGR装置20へのEGR制御信号の供給により、100%のフルデューティでバルブ24が全開される一方で、0%のデューティでバルブ24が全閉される。これにより、EGR装置20における異物噛込、デポジット、スティックを解消することが可能となる。
【0121】
また、図5Bでは、リフト量Open_Liftに応じてオン及びオフの実行回数が多くなっている。これは、例えば、デポジットによりバルブ24が閉まらない場合、リフト量Open_Liftが大きいほどデポジット量が多いので、実行回数を増やしてデポジットを取り除く必要があるためである。
【0122】
なお、図5AのステップS41では、今回故障フラグを用いて故障解消モードを実施すべきか否かを決定しているが、本実施形態では、必要に応じて、前回故障フラグを用いて故障解消モードを実施すべきか否かを決定することも可能である。
【0123】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るEGRシステム10によれば、リフトセンサ(開度センサ)を用いることなく、既存のセンサ100〜108、130〜134を用いて、吸気装置14の吸気状態と、最大吸入空気量MAX_AFMQAIR、最低負圧MIN_PB及び/又は最大エンジン回転数MAX_NEとを検出し、検出した吸気状態と最大吸入空気量MAX_AFMQAIR、最低負圧MIN_PB及び/又は最大エンジン回転数MAX_NEとに基づいてEGR装置20のバルブ24の開度を推定するので、エンジン12の燃焼に起因した燃焼生成物のバルブ24やEGR通路18への付着等によって排気ガスの還流量が減少する可能性があっても、EGR装置20を精度よく制御することが可能になると共に、コストを低減することができる。また、EGR装置20の故障の検知精度も高めることが可能となる。
【0124】
さらに、ECU110は、実際のバルブ24のリフト量(開度)が所定範囲を超える場合には、EGR装置20の故障を示す警告信号をMIL122に供給するので、MIL122から外部にEGR装置20の故障を確実に報知することができる。この結果、信頼度の高いEGR装置20の故障検知が可能になる。また、ドライバーは、MIL122からの報知内容に基づいて、EGR装置20が故障したことを直ちに把握することができ、該EGR装置20の交換等の必要な故障対応を速やかに行うことが可能となる。
【0125】
また、異物噛込、デポジット、スティックに起因してEGR装置20が故障するおそれがある場合には、バルブ24を全開及び全閉させて、これらの故障原因を解消する故障解消モードが実施される。すなわち、ECU110は、リフト量Open_Liftが第1閾値よりも大きい場合には、リフト量Open_Liftからバルブ24を全開及び全閉させる実行回数を図5Bのマップ154を用いて決定し、決定した実行回数に応じたEGR制御信号をEGR装置20に出力する。つまり、ECU110は、リフト量Open_Liftに応じて全開及び全閉の実行回数を変化させる。
【0126】
このように、本実施形態では、リフト量Open_Liftに関わりなく一律にバルブ24の全開及び全閉を一定回数行う場合と比較して、バルブ24の全開及び全閉に要する通電時間を短くすることができる。通電時間の無駄を省くことで、EGRシステム10の省電力化を実現することができる。
【0127】
しかも、故障解消モードは、エンジン12の動作停止時に実行されるので、燃焼生成物を含む排気ガスがエンジン12に混入してエミッションが悪化することを回避することができる。この結果、異物噛込、デポジット、スティックを効果的に解消することができる。
【0128】
また、故障解消モードの実施後に、エンジン12の動作を開始させて、図2Aの処理を行った結果、リフト量Open_Liftが第2閾値より大きくなった場合には、故障解消モードを実施しても、異物噛込、デポジット、スティックを解消することができなかったことになる。このような場合には、MIL122によってEGR装置20の故障がドライバーに報知されるので、ドライバーは、EGR装置20の故障原因を容易に特定することができる。
【0129】
また、EGRシステム10では、エンジン12の始動直後に各センサ100〜108、130〜134を用いて吸気装置14の吸気状態と最大吸入空気量MAX_AFMQAIR、最低負圧MIN_PB及び/又は最大エンジン回転数MAX_NEとを検出するので、EGR装置20の故障を速やかに検知することができる。
【0130】
また、EGRシステム10では、ECU110がEGR装置20を制御して排気ガスの一部を吸気装置14に還流させる場合に、LAFセンサ108で検出された空燃比LAFが所定範囲内にあれば、推定したバルブ24のリフト量に応じたEGR制御信号のデューティをAF_Dutyを用いて補正する。このように、空燃比LAFを考慮して前記デューティが補正されるので、補正後のデューティを有するEGR制御信号をEGR装置20に供給すれば、バルブ24のリフト量を容易に補正することができ、排気ガスの還流量を一層精度よく制御することができる。この結果、空燃比LAFを理論空燃比に近づけることも可能となる。
【0131】
また、LAFセンサ108で検出された空燃比LAFが所定範囲から外れている場合には、インジェクタ74の噴射時間に応じた通電時間を示すデューティをAF_Tiで補正する。このように、空燃比LAFを考慮して前記デューティを補正することにより、補正後のデューティを有するインジェクタ制御信号をインジェクタ74に供給すれば、インジェクタ74からの燃料の噴射時間を補正することができる。この結果、インジェクタ74からの燃料の噴射量を精度よく制御することができて、エンジン12の燃費が向上すると共に、空燃比LAFを理論空燃比に近づけることが可能となる。
【0132】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0133】
10…EGRシステム 12…エンジン
14…吸気装置 16…排気装置
18…EGR通路 20…EGR装置
24…バルブ 39…燃焼室
50…ウォータジャケット 52…PCV
58…逆止弁 60…インテークマニホールド
74…インジェクタ 76…アイドル回転数制御装置
78…バイパス通路 79…IACV
80…エキゾーストマニホールド 100…エアフローメータ
102…負圧センサ 104…エンジン回転数センサ
106…水温センサ 108…LAFセンサ
110…ECU 122…MIL
130…スロットル開度センサ 132…IACV開度センサ
134…逆止弁開度センサ 138〜154…マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系と排気系とを接続する排気還流手段と、該排気還流手段に設けられ、前記吸気系と前記排気系とを連通させることにより、前記内燃機関から排出された排気ガスの一部を前記排気系から前記排気還流手段を介して前記吸気系に還流させる排気ガス再循環装置(以下、EGR装置という。)とを有するEGRシステムにおいて、
前記EGR装置は、前記排気ガスの流量を制御するバルブを有し、
前記EGRシステムは、
前記吸気系の吸気状態を検出可能な吸気状態検出手段と、
前記吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段、前記吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気の負圧を検出する負圧検出手段、及び/又は、前記内燃機関の回転数を検出する回転数検出手段と、
前記吸入空気量検出手段によって検出された吸入空気量、前記負圧検出手段によって検出された吸入空気の負圧、及び/又は、前記回転数検出手段によって検出された回転数と、前記吸気状態検出手段によって検出された吸気状態とに基づき、前記バルブの開度を推定するバルブ開度推定手段と、
をさらに有する
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項2】
請求項1記載のEGRシステムにおいて、
推定された前記バルブの開度が所定の閾値より大きい場合には、前記EGR装置が故障していることを警告する警告手段をさらに有する
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項3】
請求項1記載のEGRシステムにおいて、
前記バルブを全開及び全閉にさせるための信号を前記EGR装置に出力する信号出力手段をさらに有し、
前記信号出力手段は、推定された前記バルブの開度が所定の第1閾値より大きい場合には、該推定された前記バルブの開度に応じて、前記信号の出力回数を変化させる
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項4】
請求項3記載のEGRシステムにおいて、
前記信号出力手段によって前記信号が所定回数出力された後に、推定された前記バルブの開度が所定の第2閾値より大きくなった場合に、前記EGR装置が故障していることを警告する警告手段をさらに有する
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のEGRシステムにおいて、
前記吸気状態検出手段は、前記内燃機関内の冷却水の温度を検出する水温センサである
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のEGRシステムにおいて、
前記吸気系には、前記吸入空気に対する二次ガスを該吸気系に供給するための二次ガス供給用バルブが設けられ、
前記吸気状態検出手段は、前記二次ガス供給用バルブの開度を検出する二次ガス用開度センサである
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項7】
請求項6記載のEGRシステムにおいて、
前記二次ガス供給用バルブは、前記内燃機関内に発生した前記二次ガスとしてのブローバイガスを前記吸気系に導くブローバイガス還元装置を構成する逆止弁である
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のEGRシステムにおいて、
前記吸気系には、該吸気系から前記内燃機関に吸入される吸入空気量を調整するためのスロットルバルブと、該スロットルバルブをバイパスするバイパス通路とが設けられ、
前記吸気状態検出手段は、前記バイパス通路に設けられ、アイドル状態の前記内燃機関に吸入される吸入空気量を調整するための調整用バルブの開度を検出する二次空気用開度センサである
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のEGRシステムにおいて、
前記EGR装置を制御することにより、前記排気ガスの一部を前記吸気系に還流させる制御手段と、
前記排気系に設けられ、空燃比を検出する空燃比検出手段と、
をさらに有し、
前記制御手段は、前記EGR装置を制御して前記排気ガスの一部を前記吸気系に還流させる場合に、前記空燃比検出手段で検出された前記空燃比が所定範囲内にあれば、前記バルブ開度推定手段が推定した前記EGR装置のバルブの開度を所定値に補正する
ことを特徴とするEGRシステム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のEGRシステムにおいて、
前記排気系に設けられ、空燃比を検出する空燃比検出手段と、
前記吸気系における前記内燃機関の有する燃料噴射手段より噴射される燃料の噴射時間を設定する燃料噴射時間設定手段と、
をさらに有し、
前記燃料噴射時間設定手段は、前記空燃比検出手段で検出された前記空燃比が所定範囲内から外れている場合には、前記噴射時間を所定値に補正する
ことを特徴とするEGRシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−83249(P2013−83249A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214502(P2012−214502)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】