III族−窒化物のGe上への形成
【課題】良好な結晶品質を有するGaN層のようなIII族−窒化物が得られる方法で形成されたIII族−窒化物/基板構造と、少なくとも1つのそのような構造を含む半導体デバイスを提供する。
【解決手段】基板1の上に、例えばGaN層5のような、III族−窒化物層の堆積または成長を行う方法であり、基板1は、少なくともGe表面3、好適には六方対称を有する。この方法は、基板1を400℃と940℃の間の窒化温度に加熱するとともに、基板1を窒化ガスの流れに露出させる工程と、続いて、100℃と940℃の間の堆積温度で、Ge表面3の上に、例えばGaN層5のようなIII族−窒化物を堆積する工程を含む。
【解決手段】基板1の上に、例えばGaN層5のような、III族−窒化物層の堆積または成長を行う方法であり、基板1は、少なくともGe表面3、好適には六方対称を有する。この方法は、基板1を400℃と940℃の間の窒化温度に加熱するとともに、基板1を窒化ガスの流れに露出させる工程と、続いて、100℃と940℃の間の堆積温度で、Ge表面3の上に、例えばGaN層5のようなIII族−窒化物を堆積する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上へのIII族−窒化物の形成に関する。特に、本発明は、Ge基板上に、GaNのようなIII族−窒化物を形成(堆積)または成長する方法に関する。Ge基板は、六方対称を有する少なくともGe表面を有する。本発明は、また、少なくともGe表面を有する基板上に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を含むデバイスであって、本発明にかかる方法を用いて形成されたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
III族−窒化物は、過去10年の間、例えば半導体プロセスにおいて重要となった。応用の例として、高出力および高周波に応用される高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor: HEMT)や、青色LED等がある。
【0003】
単結晶III族−窒化物基板は、今までのところ商業的に得られないため、適当な基板上にそのようなIII族−窒化物の成長を最適化する多くの努力が払われてきた。III族−窒化物をその上に成長するために最も一般的に使用される基板は、シリコン、サファイア、および炭化シリコンである。しかしながら、それらの基板上へのIII族−窒化物の成長または堆積には、大きな格子不整合(lattice mismatch)と熱的不整合(thermal mismatch)の問題があり、高い結晶品質の材料の形成が困難である。表1は、III族−窒化物成長に一般に用いられる基板の材料特性を、GaNに対する理論的な熱的不整合や格子不整合とともに示す。また、示すように、表1は、Geの特性とともに、GaNとの対応する理論的格子不整合および熱的不整合を示す。
【0004】
【表1】
表1:GaN、サファイア、6−HSiC、Si(111)、Ge(111)、AlN、GaN、InN、および参照Ge(111)の材料特性である。格子不整合と温度不整合は、GaNに対するものである。
【0005】
GaNと、炭化シリコン(SiC)またはシリコン(Si)基板の間の高い熱的不整合のため、それらの基板上へのGaNの成長は高い引っ張り熱歪を生じ、冷却後にGaN層中にクラックを形成する。特に、Si基板の場合、GaNとSiの間にバッファ層が与えられ、引っ張り熱応力を調整する。
【0006】
上述のSiまたはSiC基板上にGaNを成長させる前に、追加のまたは中間の層が必要となる。例えば、基板のSiと、Si基板の上に堆積されるGaN層のGa原子との間でエッチング反応が起きるため、GaNはSi上に直接成長しない。それゆえに、例えばAlN層のような追加の層が、GaNとSiの間に形成される。他の例では、SiC上のGaNの濡れ性は良くないため、最初にSiC基板上にAlNを成長させた後に、その基板の上にGaNが堆積される。SiC上のAlNの存在は、また、後に堆積されるGaNとSiC基板の間の格子不整合を低減し、濡れ性を改善する。このため、濡れ性が良いために、AlNはGaN上よりSiC上に良く成長する。中間層が無ければ、SiC上でGaNは3次元に成長する。
【0007】
サファイア基板の場合、導入された応力は、大きいが圧縮である。それにもかかわらず、圧縮応力は、基板にクラックを形成する。サファイア基板上で良好な結晶品質を有するGaNの直接成長は不可能である。
【0008】
更に、サファイアとシリコン炭化物は、それぞれが大きなバンドギャップである8eVと2.26eVを有するため、均一の加熱することが困難である。1.12eVであるシリコンのバンドギャップは、均一な加熱を可能にするが、自然酸化膜を除去するために高温が必要となる。
【0009】
EP1548807では、III族−窒化物の材料が、多孔質の上層を有するシリコン基板の上に堆積させることが開示された。好適には基板から遠ざかる方向に増加するGe濃度を有する、Geを含む中間層が、最初に基板上に形成され、その後に、III族−窒化物材料の層が基板上に形成される。Ge含有中間層は、好適にはSiGeである。Ge含有中間層は、熱応力を低減するために用いられ、多孔質上部Si層の酸化や窒化に対する保護層である。多孔質上部層は、SiとIII族−窒化物との間に大きな格子不整合を低減する。
【0010】
EP1548807に記載された方法は、このように、基板上にIII族−窒化物が堆積できる前に、基板上に追加の層を堆積させる必要がある。
【0011】
しかしながら、バッファ層や中間層の使用は、基板の材料と窒化物層の間にバリア層を形成する。III族−窒化物/基板構造が例えば半導体デバイスに使用された場合、これは欠点となる。
【0012】
表1より、GaNとGeの間の熱的不整合は、−5.5%であり、表1で述べた他の基板に比べて小さい。GaN、InN、およびAlNのようなIII族−窒化物では、熱膨張係数は、それぞれ5.6、3.8、および4.2である。GaAsは5.7の熱膨張係数を有し、Geは5.9の熱膨張係数を有する。このように、熱的不整合を最小にするために、Geの上に成長させるにはGaNが最良の選択であろう。また、GaAsも、その上にGeを備えることで、GaNを成長させるのに良い基板であろう。このように、GaNを堆積させる基板として、または一般にIII族−窒化物を堆積させる基板としてGeを用いた場合、成長後の冷却中の追加の熱応力の制限となる。これは、特に、高いGa濃度の窒化物の場合である。
【0013】
Ge基板上へのIII族−窒化物の成長、特にGaNの成長は、異なる理由から興味深い。例えば、上述のように、GaNまたはInGaNおよび高いGa含有量のAlGaNのようなIII族−窒化物と、Geとの間で小さな熱的不整合を有する。更に、Geは、比較的安価である。更に、Geは小さなバンドギャップ(0.66eV)を有し、例えば分子線エピタキシ(MBE)のような放射化熱を用いた堆積システム中で均一で再現性良く加熱できる。Ge基板の均一な加熱の可能性は、III族−窒化物層を基板の上に堆積し、良好な結晶品質の、GaNのようなIII族−窒化物材料の均一な層を形成する場合に有利である。しかしながら、Geと、例えばGaNのようなIII族−窒化物との間の格子不整合が、一般にシリコン、サファイア、または炭化シリコンのような基板を用いた場合より大きくなるという問題が発生した。大きな格子不整合は、悪い結晶品質の例えばGaNのようなIII族−窒化物を成長させ、これは半導体デバイスには使用できない。
【0014】
Journal of Crystal Growth, 279, (2005), p.311では、E. Trybusらは、プラズマアシスト分子線ビームエピタキシを用いてGaドープされたゲルマニウム(111)基板の上に、InNを成長させることを報告している。11.3%の格子不整合が、InN層とGaドープのGe(111)基板との間で観察された。形成されたInN層の結晶学的構造は、複結晶X線回折(double-crystal XRD)を用いて研究された。InNに対して得られた最良の半値全幅(FWHM)値は、約144秒角(arcsecond)であり、最良のロッキングカーブ測定は、約2597秒角FWHMであり、大きな傾斜とモザイク粒界構造を示している。更に、回折コントラスト顕微鏡により、0.4μmの厚みのInN膜が、高密度の貫通転位や結晶粒界を含むことが示された。
【0015】
上記文献中で形成されたInN/Ge構造において、InN層とGe基板との間に高い格子不整合が存在している。そのような高い格子不整合は、多くの欠陥を生じさせる。例えばInNとGeとの間の、約−36%の熱的不整合は、例えば冷却中のような、堆積後に、InN層に追加の応力を与える、更に、形成されたInN/Ge構造は、InN層とGe基板との間に粗い界面を示す。多分、これはInとGeとの間の共晶反応に起因するGeとInNの混合によると思われる。XRDオメガ2シータ(omega-2theta)のFWHMは約144秒角であり、ロッキングカーブFWHMは約2597秒角である。後者は、サファイア上に成長したInNの300秒角より小さな値と比較して、Ge(111)上に直接成長したInNは、比較的劣った結晶品質であることを示す。このように、InとGeの間の共晶反応のために、Ge上に高品質のInNを直接形成することは困難である。このため、そのような構造は、例えば半導体デバイスに使用するのには適していない。
【0016】
今日まで、コスト効率良く、形成されたIII族−窒化物/Ge構造が例えば半導体デバイスへの使用に適するような、Ge基板上にIII族−窒化物、特にGaNを形成する満足な方法は、開発されなかった。
【発明の概要】
【0017】
本発明の具体例の目的は、少なくともGe表面を含む、例えばGaNのようなIII族−窒化物を形成する良好な方法を提供することである。Ge表面は、六方晶系または六重対称(six-fold symmetry)であることが好ましい。本発明の具体例の更なる目的は、本発明の具体例にかかる方法で形成されたデバイスを提供することである。
【0018】
本発明の具体例にかかる方法の長所は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層と、例えばGe基板や少なくともGe表面を含む基板のような基板との間に、中間層を堆積させる必要が無いことであり、これにより処理時間と処理コストが低減できる。
【0019】
更に、本発明の方法で作製されたIII族−窒化物/Ge構造は、半導体デバイスへの使用に適している。
【0020】
一の形態では、本発明は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を、少なくともGe表面を含む基板上に堆積させる方法を提供する。この方法は、例えば400℃と940℃の間の温度のような、Geの溶融温度より低い温度に基板を加熱し、そのGe基板の上に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を堆積させる工程を含む。
【0021】
一の形態では、本発明は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を、少なくともGe表面を含む基板上に堆積させる方法を提供する。Ge表面は、六方晶系または六重対称でも良い。この方法は、GaN層のようなIII族−窒化物層を形成する前の第1工程で、基板を400℃と940℃の間の窒化温度に加熱するとともに、基板を窒素ガス流に晒すことにより窒化工程が行われる。N2ガス原子は表面と結合するには安定すぎるため、窒素分子を、窒素ガス流から原子状の窒素原子に分裂させるのが良い。
【0022】
これにより、窒化工程は、原子状の窒素ビームに基板を晒すことにより行われる。この結果、GaN層は、Ge表面の上に形成される。続いて、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層がこのようにして形成されたGeN層の上に堆積される。この堆積工程のために、窒化温度に依存して、例えばGaN層のようなIII族−窒化物が基板上に形成される、100℃と940℃の間の堆積温度まで、基板は加熱され又は冷却される。
【0023】
III族−窒化物の堆積前にGe表面を窒化して基板のGe表面上に形成されたGeN層は、III族−窒化物層を、六方対称を有するGe表面の上に適応させる。Ge表面上でその軸上にGaNを成長させる場合、成長面に4°のGaN格子の回転を持たせると、更に、基板のGe表面の上に、GaNが適応するのを容易にする。基板の回転は、GaNとGeの間の表面と界面エネルギーを最小にすることで行われる(以下参照)。
【0024】
更に、本発明の具体例の方法は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層と、基板との間に、追加の層の更なる堆積工程を必要としない。
【0025】
本発明にかかる方法の窒化工程は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の堆積と同じ堆積チャンバ中で行うことができる。更に、追加の準備は必要とされない。なぜなら、窒化ガス供給手段は、どのみち、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の堆積中に用いられるからである。
【0026】
上述のように、本発明の具体例にかかる方法は、コスト効果のある方法であり、例えば半導体の処理において重要である。
【0027】
本発明の具体例では、基板は、Ge表面を形成するGe層を上部に有する適当な材料から形成され、好ましくは六方晶または六重対称の基板を備え、例えば、Ge層を上部に有するGaAsやGe層を上部に有するSiである。本発明の他の具体例では、基板は、Ge表面を形成するGe層を上部に有するGeバルク基板からなり、好ましくは六方晶または六重対称の基板からなる。基板は全体がGeから形成され、好ましくは六方晶または六重対称の基板からなるものであっても良い。
【0028】
基板は、六方対称を有するGe(111)またはオフカットGe(111)表面層を含んでも良い。本発明の具体例では、基板はGe(111)層またはオフカットGe(111)層をその上に含むサポートを含んでも良い。サポートは、例えば、Si、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAs、オフカットGaAs(111)でも良く、またはSi、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAsを含むものでも良い。サポートの上のGe(111)層またはオフカットGe(111)層の膜厚は、0.4nmと500μmの間である。
【0029】
本発明の具体例では、窒化温度は、好適には550℃と850℃の間で選択される。
【0030】
本発明の具体例では、更に、堆積温度は、550℃と850℃の間で選択される。
【0031】
本発明の具体例では、窒化温度と堆積温度は、互いに等しくなるように選択される。しかしながら、本発明の具体例では、窒化温度と堆積温度は、互いに異なるように選択されても良い。
【0032】
本発明のこの形態の具体例では、GaN層は、分子線エピタキシ(MBE)で堆積されても良い。MBEで使用される堆積温度は、940℃であるGeの融点より低い。
【0033】
他の具体例では、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の膜厚は、0.5nmと100μmの間から選択される。例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の膜厚は、堆積温度と堆積速度に依存する。
【0034】
本発明の具体例では、方法は更に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層のドーピング工程を含んでも良い。これは、成長中またはその後に、例えばイオン注入により、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層に他の元素を導入することで行われる。GaNの場合にドーピングに適した元素は、n型GaNの形成にはSi、p型GaNの形成Mgが用いられる。
【0035】
更なる具体例では、方法は、更に、例えばGaN/Ge基板のような形成されたIII族−窒化物層/Ge基板を堆積チャンバから取り出した後に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層のパターニング工程を含む。これは、例えばリソグラフィとして当業者に知られた適当な技術で行っても良い。
【0036】
第1の形態の他の具体例では、後にパターニングされるかまたはパターニングされない少なくとも1の追加の層が、好ましくは六方対称である、少なくともGe表面を含む基板の上に形成された、例えばGsN層のようなIII族−窒化物層の上に堆積されても良い。これは、例えばGaNのようなIII族−窒化物層が堆積されたものと同じ堆積チャンバ中で行われても良いが、当業者に知られた他の技術で行われても良い。しかしながら、本発明の他の具体例では、例えば異なった機能を有する複数の追加の層が、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の上に堆積されても良い。
【0037】
少なくとも1つの追加の層は、例えば、III族−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、半導体材料、またはSiN、AiO、Al2O3のような絶縁体、有機物絶縁材料等であっても良い。少なくとも1つの追加の層は、また、1以上の上述の材料の組み合わせから形成されても良い。例えば、少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaN、InAlGaN、Al濃度が50%より低いAlGaN、In濃度が25%より高いInGaNを含んでも良い。本発明の具体例では、適当な含有量のGaおよびInまたはAlを有する、InGaNまたはInxGa1−xN、InAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yNが、少なくとも1つの追加の層を形成するのに用いられても良い。
【0038】
本発明は、また、半導体プロセスにおける、本発明の具体例にかかる方法の使用を提供する。
【0039】
更に、本発明は、ヘテロ接合ダイオードの形成のための、本発明の具体例にかかる方法の使用を提供する。
【0040】
本発明の他の形態では、
少なくともGe表面を含み、好適には六方対称を有する基板と、
例えばGaN層のようなIII族−窒化物層と、
基板と、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層との間のGeN層であって、六方対称を有するGe表面と、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層とに直接接続されたGeN層と、を含む構造が提供される。
【0041】
本発明の具体例では、基板は、サポートとも呼ばれるバルク基板から形成されても良い。この基板は、Ge表面を形成するGe層をその上に備えた適当な材料を含み、好ましくは、例えば上部にGe層を有するGaAsまたは上部にGe層を有するSiのような、六方対称または六重対称の基板を有する。本発明の他の具体例では、基板は、Ge表面を形成するGe層をその上部に有するGeバルク基板から形成され、好適には六方対称または六重対称の基板から形成される。基板は、全体がGeから形成されても良く、好適には六方対称または六重対称を有する。
【0042】
基板は、六方対称のGe(111)またはオフカットGe(111)表面層を含む。本発明の具体例では、基板は、その上面にGe(111)またはオフカットGe(111)表面層を含むサポートを含んでも良い。サポートは、例えば、Si、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAs、オフカットGaAs(111)でも良く、またはSi、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAs、オフカットGaAs(111)を含むものでも良い。Ge(111)層またはオフカットGe(111)層の膜厚は、0.4nmと500μmの間である。
【0043】
例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の膜厚は、0.5nmと100μmの間で良い。III族−窒化物がGaNである具体例では、GaN層のX線回折(XRD)オメガスキャンの半値全幅(FWHM)は、好適には700角秒より小さい。しかしながら、本発明の具体例では、より高いFWHMを有するGaN層も、本発明に含まれる。III族−窒化物が例えばAlNやInNから形成された場合、層はGaN層より低い品質を有する。例えば約30%のInまたはAlのような、より高いInまたはAl含有量の、AlGaNまたはAlxGa1−xN、InGaNまたはInxGa1−xN、およびInAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yNは、本発明の具体例にかかる方法により形成されたGaN層より低品質である。本発明の具体例にかかる方法により形成された低Al含有量のAlGaN層は、本発明の具体例にかかる方法で少なくともGe表面を有する基板上に形成したGaN層より良好な特性な特性を有する。
【0044】
本発明の具体例では、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層がパターニングされても良い。
【0045】
他の具体例では、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の上に、少なくとも1つの追加の層が存在する。1つの層のみが存在しても良く、または、例えばそれぞれが異なる機能を有する、交互に重なった複数の層が存在しても良い。
【0046】
少なくとも1つの追加の層は、例えば、III−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、半導体材料、または例えばSiN、SiO、Al2O3のような絶縁体、有機物絶縁材料等でも良い。例えば、少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaNまたはInxGa1−xN、InAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yNまたはAlxGa1−xN、低Al濃度(50%より低い)のAlGaNまたはAlxGa1−xN、高IN濃度(25%より高い)のInGaNまたはInxGa1−xNを含んでも良く、またはAlN、InN、AlGaNまたはAlxGa1−xN、InGaNまたはInxGa1−xN、InAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yN、低Al濃度(50%より低い)のAlGaNまたはAlxGa1−xN、高IN濃度(25%より高い)を含むことができる。本発明の具体例では、AlGaNまたはAlxGa1−xN、InGaNまたはInxGa1−xN、またはあらゆる含有量のGaおよびInまたはAlを有するInAlGaAsまたはInxAlyGa1−x−yNが、少なくとも1つの追加の層を形成するのに用いられても良い。
【0047】
本発明の具体例では、少なくとも1つの追加の層はパターニングされる。他の具体例では、少なくとも1つの追加の層が結晶層の場合、少なくとも1つの追加の層のX線回折(XRD)オメガスキャンのFWHMは、700秒より小さいことが好ましい。
【0048】
本発明の更なる形態では、本発明の具体例にかかる方法で形成された、少なくとも1つの構造を含む半導体装置が提供される。
【0049】
特定の具体例では、半導体装置はヘテロ接合ダイオードまたはヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)でも良く、または直接光電気セルであっても良い。
【0050】
本発明の特定のおよび好適な形態は、添付の独立請求項および従属請求項に示される。従属請求項の特徴は、単に請求項に示されたままではなく、必要に応じて、独立請求項の特徴と組み合わされ、他の従属請求項の特徴と組み合わされても良い。
【0051】
この分野で装置の一定の改良、変化、および進化があるが、本発明のコンセプトは、従来の技術から出発する、より効果的で、安定で、信頼できるこの性質の装置を含む実質的に新規な改良を表していると信じる。
【0052】
本発明の上述のおよび他の特徴、性質および長所は、本発明の原理を例示の方法で示す図面とともに、以下の記載から明らかになるであろう。この記載は、単に例示目的であり、発明の範囲を限定するものではない。以下で引用される参照図面は、添付の図面をいう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明の具体例にかかる方法の連続した工程を示す。
【図1B】本発明の具体例にかかる方法の連続した工程を示す。
【図1C】本発明の具体例にかかる方法の連続した工程を示す。
【図2】本発明の具体例にかかるp−Ge上のn−GaNからなるジャンクションダイオードを示す。
【図3】本発明の具体例にかかるn−Ge上のn−GaNからなるジャンクションダイオードを示す。
【図4】本発明の具体例にかかるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)を示す。
【図5】Ge(111)基板上に堆積した38nmのGaN層のXRDオメガスキャンを示す。
【図6】Ge(111)基板上に堆積した38nmのGaN層のXRDオメガ2シータスキャンを示す。
【図7A】窒化されたGe(111)基板のXPS結果を示す。
【図7B】窒化されたGe(111)基板のXPS結果を示す。
【図8】Ge結晶に対するGaNの回転を表すXRDスペクトルを示す。
【図9】Ge(111)基板上に堆積された450nm膜厚のGaN層のSIMS結果を示す。
【図10】上部(GaN)から底部(p−Ge)まで測定されたp−Ge(111)基板上の450nm膜厚のGaN層の電流−電圧(IV)特性を示す。
【図11】上部(GaN)から底部(n−Ge)まで測定されたn−Ge(111)基板上の約200nm膜厚のGaN層の電流−電圧(IV)特性を示す。
【図12】Ge(111)基板上に堆積された4nm膜厚のGaN層上の50nm膜厚のInN層のXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図13】Ge基板に対するGaNの1つの粒のミスオリエンテーションを模式的に示す。
【図14】Ge(111)基板上の約97nm膜厚のAlN層のXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図15】約700℃での高温窒化あり(曲線24)と窒化無し(曲線25)の、Ge基板上に成長させた約50nmのInN層のXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図16】Ge(111)基板上に直接成長させた約280nmのAlGaNのXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図17】(110)に向かって約4.7°のミスオリエンテーションを有するGe(111)基板上の約100nm膜厚のGaN層のファイスキャンを示す。
【0054】
異なる図面において、同一参照番号は、同一または類似の要素を示す。
【詳細な説明】
【0055】
本発明は、特定の具体例について、添付図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定されるものである。記載された図面は、単に概略であり、限定するものではない。図面において、図示目的で、いくつかの要素の大きさは拡張され、縮尺通りに記載されていない。寸法と相対寸法は、本発明の実施の実際の縮小には対応していない。
【0056】
更に、説明や請求の範囲中の、上、下等の用語は、記載目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる位置でも操作できることを理解すべきである。
【0057】
請求の範囲で使用される「含む(comprising)」の用語は、それ以降に示される要素に限定して解釈されること排除するものであり、他の要素や工程を排除しない。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分は、その通りに解釈され、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除してはならない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。本発明では、単にデバイスに関連した構成要素がAとBであることを意味する。
【0058】
この明細書を通じて参照される「一の具体例(one embodiment)」または「具体例(an embodiment)」は、この具体例に関係して記載された特定の長所、構造、または特徴は、本発明の少なくとも1つの具体例に含まれることを意味する。このように、この明細書を通して多くの場所の「一の具体例(one embodiment)」または「具体例(an embodiment)」の語句の表現は、同じ具体例を表す必要はなく、表しても構わない。更に、特定の長所、構造、または特徴は、この記載から当業者に明らかなように、1またはそれ以上の具体例中で適当な方法で組み合わせることができる。
【0059】
同様に、本発明の例示の記載中において、能率的に開示し、多くの発明の形態の1またはそれ以上の理解を助ける目的で、本発明の多くの長所は、時には1つの具体例、図面、またはその記載中にまとめられることを評価すべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求される発明がそれぞれの請求項に記載されたものより多くの特徴を必要とすることを意図して表されていると解釈すべきではない。むしろ、以下の請求項が表すように、発明の態様は、1つの記載された具体例の全ての長所より少なくなる。このように詳細な説明に続く請求の範囲は、これにより詳細な説明中に明確に含まれ、それぞれの請求項は、この発明の別々の具体例としてそれ自身で成立する。
【0060】
更に、ここで記載された幾つかの具体例は幾つかの特徴で、他の具体例に含まれる以外の特徴を含み、異なった具体例の長所の組み合わせは、本発明の範囲に入ることを意味し、当業者に理解されるように異なった具体例を形成する。例えば、以下の請求の範囲では、請求された具体例のいくつかは、他の組み合わせにおいても使用することができる。
【0061】
ここで与えられる記載において、多くの特別な細部が示される。しかしながら、本発明の具体例はそれらの特別な細部無しに実施できることを理解すべきである。他の例では、公知の方法、構造、および技術は、この記載の理解をわかりにくくしないために、詳細には示されていない。
【0062】
本発明は、本発明の多くの具体例の詳細な記載によって記載される。本発明の他の具体例が、本発明の真実の精神や技術的示唆から離れることなく、当業者の知識により形成できることができ、本発明は、添付された請求の範囲の文言によってのみ限定されることは明らかである。
【0063】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)層のようなIII族−窒化物層を、少なくともゲルマニウム(Ge)表面層を有する基板の上にコスト効果のある方法で堆積させる方法を提供する。例えばGaNのような六方晶のIII族−窒化物層と、立方晶基板との間の、対称の問題を克服するために、Ge上部層の少なくとも上部表面は、六方対称または六重対称を有すべきである。上部表面とは、例えば、GaN層のようなIII族−窒化物層がその上に堆積されるGe上部層の側を意味する。
【0064】
一の形態では、この方法は、例えば400℃と940℃の間のような、Geの融点より低い温度に基板を加熱し、Ge表面に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を堆積させる工程を含む。
【0065】
他の形態では、本発明の具体例にかかる方法は、400℃と940℃の間、好適には550℃と850℃の間の堆積温度に基板を加熱しながら、基板を窒素ガス流に晒す工程を含む。続いて、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層が、100℃と940℃の間、好適には550℃と850℃の間の堆積温度で、Ge表面上に堆積される。これらの工程の幾つかまたは全ては、処理装置の堆積チャンバ中で行われても良い。
【0066】
本発明の具体例は、GaN、AlN、InNのような基板上にIII族−窒化物を堆積できることを開示する。本発明の具体例では、III−窒化物は、InGaN、AlGaN、InAlGaNのようなIII族−窒化物合金を含む。なお、説明中のどこかで言及されたそれぞれがInxGa1−xN、AlxGa1−xN、およびInxAlyGa1−x−yNであるInGaN、AlGaNおよびInAlGaAsは、いずれの含有量のGaおよびInおよび/またはAlをも有することを意味する。以下の記載において、本発明は、GaN層の手段により説明される。これは単に説明を容易にするためであり、本発明をいずれかに限定することを意図するものではないことが理解されよう。本発明は、また他のIII族−窒化物層や、上述のようなIII族−窒化物の合金にも適用できる。
【0067】
本発明の具体例では、基板は適当な材料から形成され、またサポートとも呼ばれ、基板の六方対称または六重対称を備えた少なくともGe上部表面を有する上部Ge層を有する。例えば、上部Ge層を有するGaAsや上部Ge層を有するSiである。本発明の具体例では、「サポート」の文言は、使用できる、またはその上にデバイス、回路または結晶層が形成できるあらゆる下層の材料を含む。他の代わりの具体例では、この「サポート」は、例えばドープされたまたはアンドープのシリコン、ガリウムアーセナイド(GaAs)、ガリウムアーセナイドフォスファイド(GaAsP)、インジウムフォスファイド(InP)、またはSi基板上のシリコンゲルマニウム(SiGe)のような半導体基板を含んでも良い。
【0068】
また、例えばAlNのような1またはそれ以上の中間層を有して、例えばGaNオンサファイアやGaNオンSiのようなサファイアやSiの上に成長させたIII族−窒化物も、サポートとして使用できる。「サポート」は、半導体基板部分に加えて、例えばSiO2やSi3N4層のような絶縁層を含んでも良い。
【0069】
このように、「サポート」の用語は、シリコン・オン・ガラス基板、シリコン・オン・サファイア基板を含む。「サポート」の用語は、このように、一般に、興味のある層や部分の下にある層の要素を定義するのに使用される。また、「サポート」は、例えばガラス、プラスチック、または金属層のような、その上に層が形成されたいかなる他のベースも含む。六方対称または六重対称の少なくとも上部部分を有するGe層が、サポートの上に提供されても良い。
【0070】
本発明の具体例では、基板またはサポートは、基板の六方対称または六重対称を有するGe層を上部に有するGeバルク基板から形成されても良い。
【0071】
例えば、本発明の具体例では、例えば、Ge(111)基板、またはオフカットGe(111)即ちオフオリエンテッドGe(111)、または傾斜Ge(111)のような表面が少なくとも六方対称または六重対称のGe基板が使用されても良い。オフカット角度は、好ましくは、0°と15°の間、または2°と10°の間、または4°と8°の間、または4°と6°との間、例えば2°、4°、4.7°、6°、8°である。
【0072】
本発明の具体例では、基板は、他の基板(例えばSiまたはSiC)の上の少なくとも表面において六方対称または六重対称のGeの上部層を含むバルクGeサポートを含んでも良い。上部層とは、GaN層がその上に堆積される側の、バルクGeサポートの側を意味する。Geの上部層は、例えばGe(111)上部層やオフカットまたは傾斜Ge(111)上部層である。例えば、Ge上部層を有するシリコンまたはSiC基板であり、六方対称または六重対称を有するGe(111)上部層は、本発明の具体例にかかる基板として使用される。
【0073】
本発明の具体例では、基板はGe上部層を有するサポートを含みGe上部層の膜厚は0.4nmと500μmの間であり、例えば5nmと500μmの間、0.4nmと100μmの間、10nmと100μmの間、100nmと10μmの間、500nmと1000nmの間である。
【0074】
Geは940℃の融点を有する。それゆえに、実際の金属有機物化学気相成長(MOCVD)を用いて、少なくともGe上部層を含む基板の上へのGaNの堆積または成長は、最良の選択ではない。なぜなら、現状のMOCVDプロセスの最適堆積温度は非常に高く、940℃より高いからである。近年、GaNの堆積や成長に使用するために、分子線エピタキシ(MBE)が開発された。MBE中の堆積温度は、400℃と900℃の間の範囲であり、Geの融点より低く、このように、MBEは、本発明の具体例にかかる方法に用いるのに適している。
【0075】
異なった型のMBE堆積は公知であり、本発明の具体例にかかる方法として使用できる。例えばプラズマアシストMBEまたはアンモニアMBEである。原理的に、Geの融点(940℃)より低い温度で働く公知の堆積技術が、本発明の具体例により、GaNをGe上に堆積するのに使用できる。
【0076】
本発明の具体例にかかる方法の、続く工程が、図1Aから図1Cに示されている。それらの図面は、この方法を説明することを目的とし、いかなる方法においても本発明を限定することを意図するものではない。
【0077】
図1Aに示される例では、基板1は、Ge上部層3を備えたサポート2から形成される。Ge上部層3は、六方対称または六重対称を有し、少なくともサポート2から離れた上面に設けられる。
【0078】
本発明では、GaN成長の前に、Ge上部層に窒化工程が行われ、即ち、Ge上部層3が、400℃と940℃の間の温度のような十分に高い温度で窒素ガス流に晒される。N2ガス原子は非常に安定であり、基板1の表面3と結合しないので、窒素ガス流からの窒素分子は、窒素原子に分裂させられる。例えば、プラズマアシストMBEが使用された場合、窒素ガス流からの窒素分子は、窒素原子に分けられる。アンモニアMBEの場合、温度上昇によりNH3が基板で窒素原子に分離する。
【0079】
これにより、Ge上部層の少なくとも1つの上方の層のGe原子がGeNに変わり、これにより、基板1のGe上部層3の上に、薄いGeN層4を形成する(図1B参照)。薄いGeN層4は、0.1nmと100nmの間、好適には0.1nmと5nmの間、更に好適には0.1nmと2nmの間の膜厚を有する。GeN層4の膜厚は、窒化工程の時間および温度により、および窒化工程中の窒素ガス流により(後述)決定される。
【0080】
反射高エネルギー電子回折(RHEED)実験から、窒化中に、基板1の表面で再組織化が起きていることが分かる。これは、RHEED回折パターン中のGe線(streak)の間で、中間の線が存在することにより反映される。窒化中に、メインのGe線の間の距離は変化せず、これは、形成されたGeNは、下層のGe上部層3と同じ面内の格子パラメータを引き継ぐことを示す。これらの格子パラメータは、公知の安定したGeN層の格子パラメータとは異なる。
【0081】
それゆえに、GeN層4は安定ではなく準安定であり、GeN層4の膜厚は制限されると結論づけられる。GeN層4が非常に厚い場合、GeNは、その上にGaNを成長させるのに有用でない安定なGeNの格子パラメータを表す。安定GeN相についての更なる情報が、V.F.Synorovらによる、Soviet Physics Journal, vol.10, No.3, P.7-11 (1967)の"Production of Nitrides on the surface of monocrystalline Ge"に見られる。
【0082】
GeN層4の存在は、本発明にかかる方法の次の工程で、GaNの結晶成長を可能にする(後述)。基板1を窒素ガス流に晒す間の温度は、窒化温度とも呼ばれ、400℃と940℃との間、550℃と850℃との間、700℃と800℃との間、例えば700℃である。基板1のGe上部層3が窒素ガス流に晒される時間は、また露出時間とよばれ、窒化温度と窒素ガス流のフローパラメータに依存する。窒素ガス流は、好適には、1sccmと2sccm(Standard Cubic Centimeters per minute)の間であることが好ましい。
【0083】
しかしながら、2sccmより高い、または1sccmより低い窒素ガス流も、本発明の具体例で使用することができる。好適には、露出時間は1秒と30分の間であり、より好適には30秒と2分の間であり、例えば60秒である。しかしながら、本発明の他の具体例では、より短いまたはより長い時間が窒素ガス流や窒化温度に応じて使用しても良い。所定の窒素ガス流では、露出時間が短かすぎて、GeN層4は形成されない。
【0084】
一方、所定の窒素ガス流では、露出時間が長すぎて、GeN層4の表面は粗くなる。これは、粗いGeN層4の上に続いて堆積されるGaN層の品質や、GeN層4と続いて堆積されるGaN層との間の界面の品質を悪くし、これを通して、GaN/基板構造は、例えば半導体装置で使用するのに適さなくなる。
【0085】
窒素ガス流、窒化が行われる温度、および窒化が行われる時間を制御することにより、GeN層4の膜厚のような特性が制御できる。窒化パラメータを制御することにより、基板1の上に形成されるGeN層4が、スムースな表面を有する。スムースな表面を有するとは、GeN表面の粗さが好適には2nmより高くなく、より好適には1nmより高くなく、更に好適には0.4nmであることを意味する。GeN層4のスムースな表面は、連続して堆積されるGaN層が良好な結晶品質を有することを確実にする(後述)。
【0086】
上述のように基板1を窒素ガス流に晒してGeN層4を形成した後、GaN層5がGeN層4の上に堆積される(図1C参照)。基板1を窒素ガス流とGaフラックスに晒す工程と、基板1を加熱する工程は、同時に行われる。好適には、窒素ガス流とGaフラックスは、同等の原子フラックスを有する。換言すれば、窒素ガス流とGaフラックスの原子比率は1/1である。堆積されたGaN層5中のGaとNの原子比率は1/1であるため、これにより、窒素ガス流とGaフラックスの原子比率が1/1で無い場合と比較して、良好な結晶品質が得られ、堆積したGaNs層5の格子中に欠陥は殆ど存在しなくなる。
【0087】
それにもかかわらず、本発明の具体例では、窒素またはGaが過剰なフラックス、または原子比率が1/1ではない窒素とGaのフラックスが同様に用いられても良い。GaN層5の堆積中に、基板1が、100℃と940℃の間、400℃と940℃の間、好適には550℃と850℃の間、例えば700℃である堆積温度に加熱される。堆積中、堆積チャンバ中の圧力は、10−6Torrと10−4Torrの間で、好適には1×10−5Torrと5×10−5Torrの間である。
【0088】
しかしながら、本発明の具体例では、より高いまたはより低い圧力を用いても良い。GaNの堆積速度は、10nm/hと2000nm/hの間で、好適には180nm/hと690nm/hの間で、圧力、温度、およびガス流のようなプロセスパラメータに依存する。しかしながら、本発明の具体例では、より低いまたはより高い堆積速度も可能である。
【0089】
GaN層5の膜厚は堆積速度と堆積時間に依存し、0.5nmと1cmの間、好適には0.5nmと100μmの間、より好適には0.5nmと10μmの間、更に好適には0.5nmと1000nmの間、0.5nmと500nmの間、0.5nmと100nmの間、0.5nmと20nmの間、0.5nmと10nmの間、0.5nmと2nmの間、または1原子層と5原子層の間に対応しても良い。必要とされる堆積時間は、特定の適用において、堆積速度と、必要とされるGaN層5の膜厚に依存する。
【0090】
本発明の具体例では、GaN層5はドーピングされても良い。これは、GaN層5の堆積または成長中に行われる。効果的なn型およびp型のドーピングは、電子デバイスの製造において重要である。GaN層5のドーピングは、GaNの成長中に、または例えばイオン注入のように成長後に、他の元素を導入することにより達成される。GaNドーピングの元素の例は、n型GaNに対してはSiであり、p型GaNに対してはMgである。なお、補償しなければならない高いn型バックグラウンドドーピング密度(不作為)のために、p−GaNの成長または堆積は困難である。p−GaNの形成が困難であるため、p/n−GaN接合の実現は困難である。また、構造の困難さゆえに、p型材料上にn−GaN層を含むp/nヘテロ接合の形成も困難である。本発明の具体例にかかる方法は、Ge基板上に高品質のn−GaNの堆積を可能にするため、高品質で、例えばn−GaN/p−Geのようなp/nヘテロ接合が形成できる。
【0091】
本発明の具体例にかかる方法を用いることにより、高品質のGaN層5の堆積が可能となる。これは、X線回折(XRD)オメガおよびXRDオメガ−2シータスキャン実験から結論づけられる(後述)。例えば、膜厚が40nmのGaN層5に対して、オメガスキャンのXRD半値全幅(FWHM)は、100秒と1000秒の間であり、好適には200秒と700秒の間であり、更に好適には300秒と600秒の間である。低いXRDのFWHM値は、良好に繰り返される結晶構造を表す。
【0092】
これにより、XRDのFWHM値がより低くなるとGaN層5の結晶品質はより良くなり、より適した形成されたGaN/Ge構造が、例えば半導体デバイスに使用できるようになる。これは、より高い電子移動度により、より良い電気特性となるからである。例えば、従来の方法で、Siまたはサファイア上に堆積された数ミクロンの膜厚の厚いGaN層5では、300秒から600秒のオメガスキャンのXRDのFWHM値が測定された。比較のために、膜厚100μmのバルクGaN層5(異なった材料の基板で支えられるものではない)に対して、200から300のXRDのFWHM値が得られた。
【0093】
更に、GaN層5と基板1のGeの間の良好な界面品質を示す線が、オメガ−2シータスキャン中で見られた。形成されたGeN層4は非常に薄く、好適には1又は2原子層程度に薄いため、オメガ−2シータスキャンでは検出できない。GaN堆積が行われる前に窒化が行われたチャンバから窒化された基板が取り出された場合、GeN層4はXPSで測定できる。GaNが成長された場合、このGeN層4はより薄くなり、または部分的に消滅する、それにもかかわらず、Ge基板1をGaN層5に接合する少なくとも1原子層のGeNが常に残される。
【0094】
Siの上に中間層を有して形成されたGaNや、GaNと基板の間に中間層を有するGaNオンサファイアと、同等またはより優れた結晶品質が見出された。Si上やサファイア上の数原子層膜厚の厚いGaN層は、オメガスキャンのXRDのFWHMにおいて、300から600秒角の値を示す。比較のために、膜厚数100μmのバルクGaN基板(異なった材料の基板で支えられるものではない)に対して、200から300のXRDのFWHM値が得られた。
【0095】
表1から、GaNとGeの間の理論的な格子不整合、即ち−20.3%が見られる。しかしながら、本発明の具体例にかかる方法で堆積されたGaN層5は良好な品質を示す。これは、GaN層5の堆積前に、基板1のGe表面上のGeN層4が形成されるためである。既に検討したように、GeN層4は、その上にGeN層4が形成されるGa層3の上と同じ面内格子パラメータを取得する。GaNの場合、GaN格子が成長表面の面で4°回転しているのが分かる。これにより、GaN層5は、六方対称のGe表面の上部に適応する。これは、更に、Ge上のGaNを形成するエネルギを最小にするため、良好な結晶品質のGaN層5の成長を容易にする。この回転は、またミスオリエンテーションとも呼ばれる。
【0096】
図13は、Ge基板1のGeに対するGaNの1つの粒子のミスオリエンテーションを示す。Aで表される大きな円はGe原子であり、Bで表されるより小さな円はGa原子である。図13に示すように、GaNは面内で4°以上回転される。この回転により、最小の界面エネルギーで、GaN格子がGa格子に適応するようになる。この回転は、また、反対の方向にも起きる。基板1のGe表面が対称であるため、回転に対して好ましい方向はなく、即ち、エネルギー的に好ましい方向な無い。成長は、異なる核生成サイトから始まり、回転の方向は無作為に選択される。成長が行われた場合、異なる核生成サイトは、互いに接触するまで成長する。
【0097】
これにより、粒に対して2つの異なるオリエンテーションを有する層が得られる。これゆえに、Ge格子に対するGaN格子の回転の発生は、打ち消される。即ち、2つの回転した相が得られ、1つの相は時計回りに回転し、他の相は反時計回りに回転する。一つの相が得られた場合、より良い結晶品質が得られる。カットオフGe(111)基板を用いることにより、2つの相の形成は抑制され、1つの相のGaNが得られる(後述)。
【0098】
本発明の具体例にかかる方法の長所は、基板1とGaN層5との間に、中間層の追加の成長が必要でないことであり、これにより、処理時間とコストが削減できる。
【0099】
更に、本発明にかかる方法の窒化工程は、GaN層5の堆積が行われた堆積チャンバとで行われても良い。更に、窒素ガス流提供手段は、GaN層5の堆積中にも使用されるように、すでに存在しているため、追加の提供は要しない。
【0100】
Ge上部表面3を有する基板1の上にGaNを堆積できることの他の長所は、Geがnドープまたはpドープできる半導体であることに起因する。このため、少なくともGe上部表面3を含む基板1の上にGaNを成長または堆積する可能性は、それらの基板を、例えば縦型半導体装置のように、半導体装置のバックコンタクトとして使用することを可能とする。装置が形成された場合、オーミック接合をGe上に形成しなければならない。
【0101】
Geに対するオーミック接合は、構造の上部から形成され、即ちGaN層5が堆積された構造の側、および/または構造の裏側に形成される。構造の上部からコンタクトが形成される場合、Ge上に堆積されたGaN層5は、例えばエッチングで除去されるべきである。例えば、n−GaN層5とp−Ge基板1との間に形成された接合は、ダイオード構造として使用でき、またはヘテロ接合バイポーラトランジスタとして使用できる(後述)。第1に、Ge基板1は、この基板1の上に形成されたバックコンタクトデバイスに使用できる。
【0102】
導電性サポート2が、GaN成長のテンプレートとして上部のGe層3を用いる場合、例えばドープされたGaAs、ドープされたSiのようなこの導電性サポート2は、装置の一部となるGe上部層3と接触し、またはサポート2は、上部のデバイスと接続するのに用いられるGe上部層3に接触するために使用できる。第2に、GaNとGeの間のヘテロ接合を使用するヘテロ接合デバイスが形成できる。このヘテロ接合デバイスは、裏面または上面から接続できる。
【0103】
まとめると、本発明の具体例にかかる方法を用いた、六方対称または六重対称である少なくともGe上部表面3を含む基板1上への、GaN層5の成長は特徴的である。なぜならば、GeとAlGaN、InGaN、およびGa含有量の高いInAlGaNとの間と同様に、GaNとGeの間の熱的不整合が小さいからである。更に、Geに対する全てのIII族−窒化物の熱的不整合はマイナスである。これは熱的不整合から生じる応力は圧縮であり、III族−窒化物層のクラックにつながらないことを意味する。
【0104】
これは、応力が引っ張りである場合と反対である。なぜなら、引っ張り応力は、例えばGaN層5において、III族−窒化物層のクラックにつながるからである。圧縮応力は、しかしながら、基板のクラックを発生させるかもしれないが、しかし、Ge基板の強度がこれを防止している。しかしながら、GaN、高いGa含有量のInGaNまたはAlGaNの場合、熱的不整合は小さく、圧縮応力も小さくなり、基板のクラックは発生しない。
【0105】
Ge基板1を用いた場合の他の特徴は、Geの均一加熱の可能性と、比較的安いGeの価格である。本発明の具体例にかかる方法は、より特徴的である。なぜなら、例えばGaNのようなIII族−窒化物と基板1のGeとの間に中間層を堆積する必要が無いためである。更に、本発明の具体例にかかる方法は、n−GaNとp−Geとの間のヘテロ接合を使用するデバイスの作製を可能とし、デバイスのバックコンタクトの形成を可能とする。
【0106】
既に述べたように、基板1の上の薄いGeN層4の存在と特性は、基板1の上に堆積または成長したGaN層5が良好な結晶品質を有することを確実にする。薄いGeN層4は、電気誘導を有しない。GeN層4は非常に薄く、好適には1または2原子層膜厚であり、一方で窒素は基板1のGeに接続し、他方でGaN層5のGaに接続する、GeとGaNの間の遷移と見なされる。
【0107】
本発明の具体例にかかる方法で得られたGaN層5は、そのような良い結晶品質を有するため、例えば他の窒化物材料(例えば、III−窒化物)、酸化物、金属、または絶縁体(例えば、酸化物、窒化物、有機物絶縁体等)のような、少なくとも1つの他の材料からなる追加の層が、GaN層5の上に成長または堆積しても良い。また、アモルファスGeのようなアモルファス半導体も、GaN層5の上に成長させることができる。本発明の具体例では、1の追加の層は、例えばGaN層5のようなIII族−窒化物層の上に堆積される。
【0108】
しかしながら、本発明の他の具体例では、例えば異なる機能を有する複数の追加の層が、例えばGaN層5のようなIII族−窒化物層の上に堆積される。これにより、異なったデバイスの作製が可能となる。好適には、GaN層5の上に成長する他の材料は、例えばAlN、InN、AlGaN、InGaN、InAlGaN、低Al濃度(50%より低い)のAlGaN、高In濃度(25%より高い)のInGaNのようなIII族−窒化物である。
【0109】
本発明の具体例では、InGaN、AlGaN、およびあらゆる含有量のGaおよびInまたはAlのInAlGaNが、少なくとも1つの追加の層を形成するために使用される。50%より高いAl含有量のAlGaNの場合、品質は低くなる。この理由は、より多くのAlが合金中に存在すると、好適な成長温度やより高くなるためである。成長温度は、MBE成長プロセスでは約940℃に制限される。
【0110】
少なくとも1つの追加の層がGaN層5の上に形成された場合、GaN層5は非常に薄くなり、例えば0.5nmと20nmの間、0.5nmと10nmの間、0.5nmと2nmの間であり、または1原子層(monolayer)と5原子層の間に対応する厚みを有しても良い。本発明の他の具体例では、より厚いGaN層5を堆積させても良い。
【0111】
応用に使用するために、および/または半導体装置を作製するために、本発明の具体例にかかる方法で得られたGaN層5がパターニングされる。GaN層5の上に堆積される他の材料は、もし必要であれば、パターニングされる。パターニングは、例えばリソグラフィのような、当業者に知られた適当な技術を用いて行われる。
【0112】
既に述べたように、p−GaNは成長が困難であるため、GaNのp−n接合を形成することは非常に困難である。GaNとGeの間のp−nヘテロ接合の使用により、例えば、光ダイオード、pn接合ダイオード、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ、太陽電池、LED、および他のデバイスに使用される構造が形成できる。
【0113】
図2には、p−Ge基板7上のn−GaN層6からなるpn接合ダイオードが示される。n−GaN層6とp−Ge基板7の一部が、図2に示すようにエッチングされる。pn接合は、n−GaN層6とp−Ge基板7との間の界面に形成される。オーミックコンタクト9は、n−GaN層6とp−Ge基板7に形成される。コンタクトのための他のまたは追加の可能性は、p−Ge基板7に裏面のオーミックコンタクト10を形成することによる。
【0114】
n−Ge基板11上に堆積されたn−GaN層6からなるジャンクションダイオードである他の例が、図3に示される。n−nヘテロ接合は、n−GaN層6とn−Ge基板11の間の界面12に形成される。図2に示すジャンクションダイオードと同様に、図3のジャンクションダイオードのコンタクトは、nGe基板11の表面にオーミックコンタクト9を、裏面にオーミックコンタクト10を、形成することにより可能となる。
【0115】
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)についての更なる例が図4に示される。HBTは、n−Ge層11と、n−Ge層11の上に形成されたp−Ge層7とからなる基板13を含む。基板13の上に、n−GaN層6が形成される、n−GaN層6はHBTのエミッタとして働き、p−Ge層7はHBTのベースとして働き、n−Ge層11はHBTのコレクタとして働く。オーミックコンタクト9、10は、デバイスの異なる層を接続するために、HBTデバイスに形成される。n−Ge層11は、オーミックコンタクト10を介して裏面から、および/またはn−GaN層5の一部およびp−Ge層7の一部をエッチング除去し、n−Ge層の表面側にオーミックコンタクト9を形成することにより、コンタクトできる。
【0116】
例えば、GeまたはGaNと接触した他の半導体材料または導電性材料を用いることにより、本発明の具体例にかかる方法を用いて他のHBT構造を形成できる。例えば、n−GaN層6は、n−Si層の上に横たわるp−Ge層7の上に堆積または成長されて、他のタイプのHBT構造が作製されても良い。他の例は、p−Ge層と最終的にn−GaN層(図示せず)がその上にあるnドープGaAs層を有する絶縁性GaAs基板である。他の可能性は、n−GaN層がその上にあるp−Ge層を有するn−GaAs基板である。
【0117】
例えば、他の応用は、Ge太陽電池、Geトランジスタ、または他のデバイスのGaN保護膜である。直接光電気分解(Direct Photo Electrolysis)も現実的であり、本発明の具体例にかかる方法で作製されたGaN/Ge構造またはInGaN/Ge構造の上に、InGaNが形成される。例えば太陽電池への応用は、本発明の具体例にかかる方法で形成された、p−Ge基板上のGaN層の上の(n−)InGaNからなる構造を含み、InGaN/GaNとGeとの間のヘテロ接合が、形成された電子−正孔ペアを分離するのに用いられる。
【0118】
太陽電池への適用の他の例は、本発明の具体例にかかる方法で形成されたp−Ge基板上の(n−)InGaN層を含み、InGaNとGeとの間のヘテロ接合が、形成された電子−正孔ペアを分離するのに用いられる。更に、光ダイオードが、例えばp−Ge基板上にn−GaN層堆積して形成される。LEDは、例えばp−Ge基板上に、GaNバッファ層を有してまたは有さずに、高ドープn−GaNをp−InGaN上に形成し、高ドープn−Ge基板上に、GaNバッファ層を有してまたは有さずにp−InGaNを形成し、p−Ge基板上のp−GaNの上のn−GaNとして形成される。高い意図しないバックグラウンドのキャリア濃度のため、p−InGaNはp−GaNより更に成長が困難である。
【0119】
好ましくは六方対称または六角対称のような、少なくともGe上部層3を含む基板1の上にGaN層5を堆積または成長する可能性は、Geからなるまたはこれを含むデバイスおよびIII−窒化物からなるまたはこれを含むデバイスの集積化を可能とする。
【0120】
これ以降、幾つかの例は、本発明の具体例にかかる方法を示す目的で記載される。それらの例は、いかなる方法においても本発明を限定することを意図しない。
【0121】
例1
第1の例では、Ge(111)基板1の上にGaN層5が成長され、結晶品質が研究された。第1に、Ge(111)基板1が洗浄され、基板1の表面に存在する酸化物および/または有機材料は除去された。洗浄は、化学洗浄で行われた。洗浄後、Ge(111)基板1はMBE装置に入れられ、排気されるとともに、約550℃に加熱された。GaN層5の成長に先立って、基板1のGe表面3が、550℃と750℃の間の窒化温度で、窒素ガス流に晒された。これにより、薄いGeN層4が形成され、GaN層5の結晶成長を可能とする。GeN層4を形成した後、最適な成長条件を決めるために、窒素ガス流の次にGaソース流を、異なった実験に対して550℃と800℃の間の異なった堆積温度で供給し、GaNを堆積させた。
【0122】
本発明の例では、プラズマアシストMBEが使用され、窒素ガス流のための窒素ソースは、窒素プラズマにより形成される。窒素ガス流とGaフラックスは、既に述べたように、好適には、同程度の原子フラックスを有する。堆積中、堆積チャンバは、10−5Torrのオーダーであった。堆積速度は、180から690nm/hのオーダーである。膜厚が1.5nmと450nmの間の異なるGaN層5が堆積された。
【0123】
成長中、異なったGaN層5の表面モフォロジと結晶品質とが、反射高エネルギー電子回折(RHEED)を用いて研究された。GaN層5は、その後、XRDオメガ−2シータスキャンとオメガスキャンを用いて研究された。
【0124】
最初の実験では、約10nmの薄いGaN層5が、550℃の堆積温度で堆積または成長された。この薄いGaN層5の上に、より厚い310nm程度のGaN層が、より高い温度750℃で堆積された。
【0125】
第2の実験では、約35nmの薄いGaN層が、750℃の温度で堆積された。この層の上に、より厚い290nm程度のGaN層が、薄いGaN層の堆積温度より低い異なる温度、例えば約550℃、約620℃、および約690℃で堆積された。約800℃の温度での成長(即ち、薄いGaN層の温度より上)が行われたが、結果の層の結晶品質は、750℃で成長させた試料より良くなかった。
【0126】
これらの実験から、最良の結晶品質を有するGaN層5は、薄い層と、より厚い層の双方が、より高い温度、例えば750℃で堆積された場合に得られると結論づけられる。堆積温度が高いほど、結果の層の結晶品質が得なることが観察された。しかしながら、750℃より高い堆積温度では、堆積された層の結晶品質は実質的に何も改良されない。更に、GaN層5が非常に高い温度で堆積されると、EHEEDは表面が粗くなることを示した。
【0127】
GaN成長が始めると、RHEED回折パターンは、数10秒間で、Ge線からGaN線へのスムースな移行を示した。遷移の間、表面のあれは観察されなかった。RHEED線はスムースなままでありスポットを示さず、滑らかな表面を示す。
【0128】
これは、GaN格子が、Ge結晶の上に良く適応することを示す。これは、薄いGeN層4があるためであり、その膜厚はほんの1原子層から2原子層である。
【0129】
RHEED回折パターンで見られるメインの線の間の距離は、Geが窒化されても変わらない。これは、形成されたGeN層4が、下層の基板のGeと同じ面内の格子パラメータを有することを示す。これは、GaNとGeの間の−20.3%である理論的な格子不整合に基づく予想と矛盾する。この大きな格子不整合から、GaN成長の最初において、RHEED実験中にあれが予想される。
【0130】
RHEED線の間の距離は、GaN成長の初期に急に変化する。GaNとGeの格子の線の間の距離を分析することで、基板1の上に約40nmの薄いGaN層5を成長した場合、面内の格子パラメータが3.20(±0.02)Åが予想される。これは、GaNには応力がかからず、GaN成長は最初から弛緩した状態であることを示す。応力を逃がすために結晶に応力がかかった場合には欠陥が発生するため、これは良い兆候である。
【0131】
表2では、結晶品質に関する結果が、Ge(111)上の38nmの薄いGaN層について示される。
【0132】
【表2】
表2:Ge(111)基板上の38nm膜厚のGaN層の実験結果
【0133】
Ge(111)基板1の上の38nm膜厚のGaN層5の例では、オメガスキャンのXRDのFWHM値が、単に371秒角となり(図5参照)、GaN層5の薄い膜厚を考慮すると非常によい値である。XRDのFHM値が低いほど、GaN層5の結晶品質が良くなり、形成されたGaN/Ge構造は例えば半導体デバイスに使用するのにより適するようになる。これは、より高い電子移動度による、より良好な電気特性のためである。
【0134】
参照番号14で示すように、薄層フリンジ(fringe)がオメガ−2シータスキャンで見られる(図6参照)。そのようなフリンジ14の存在は、キエッシグフリンジ(Kiessig fringe)と呼ばれ、GaN層5(ピーク15で表示)とGe基板1(ピーク16で表示)の間の良好な界面品質を表している。既に検討したように、GeN層4は好適には数原子層よりずっと厚く、GeとGaNの間で自然な遷移を示すが、XRD実験で観察するには薄すぎる。
【0135】
本発明の例により形成されたGaN層5は、GaNと基板の間に少なくとも1つの中間層を有するSi基板上に成長または堆積されたGaNの結晶品質と同等または縒より良好な結晶品質を有する。これは、良好な品質のGaNと基板の間に少なくとも1つの中間層(低温成長させた低品質GaN層)を有するサファイア基板上のGaNで得られる結晶品質と同等である。
【0136】
厚いGaN層、即ち1μmより厚い膜厚のGaN層5に対して、サファイア上のGaNでは、XRDオメガスキャンの平均値300秒角が得られ、Si上のGaNでは、XRDオメガスキャンの平均値600秒角が得られる(前述)。薄い層では、GaNをその上に成長させるための、他の基板はGeと比較できない。例えばこの例の40nm膜厚のGaN層5のような薄い層は、Ge上のGaNについての本発明の具体例にかかる方法で得られた良好な品質では、Si、サファイア、またはSiCの上に成長できない。より厚い層では、サファイアが良好な品質となる。
【0137】
XDRオメガ−2シータスキャン分析(図6)から、面外の格子パラメータ5.1897(±0.0008)Åが、GaNピーク15の位置(角度)を見ると、見出される。この実験値を標準の格子パラメータである5.18524Åと比較すると、この実験で得られたGaN層5は、成長後に小さな圧縮状態にあることがわかる。これは、−87mの半径(radius)が測定されたGeN/Ge構造で行われた曲率測定と一致する。この結果は、GaNとGeの間の−20.3%の理論的な格子不整合に基づく予想と矛盾する。この格子不整合の値からは、非常に広い引っ張り応力が予想される。
【0138】
第1の例で形成された窒化されたGe基板に対して行ったX線光電子分光法(XPS)測定は、Geのピーク(図7A参照)とGeNのピーク(図7B参照)を示す。第2の、Geピークの直ぐ後の図7Aの小さなピークは、Ge−窒化物結合による。図7Bは、この第2の、小さなピークが窒化物結合によることを証明する。なぜならば、この結合エネルギーは、(WN、BN、およびNaSCNに対して)参照の窒化物の結合エネルギーと一致するからであり、図7Bに示すように、これらは397eVと398eVとの間にある。
【0139】
図7Aは、Ge基板(Ge−Ge結合)に起因する大きなピークを示す。図7A中の小さなピークは、Geと他の元素との結合による。図7Bは、窒素と他の元素との結合に起因するピークを示す。このことは、図7Aの小さなピークはGeとNの結合によることを示す。例えばGeのような、元素の結合のピークは、他の元素と結合した場合に、わずかだけシフトする。Nと結合したGeのピークは、Geと結合したGeのピークに対して、わずかにシフトしている。
【0140】
GeN層の膜厚に対して、ピークの大きさが表れる。小さなピークからは、GeNの膜厚が見積もれる。図7Aのスペクトラムも最も小さなピークがGe3N4に対応する場合、0.7nmの膜厚が見出される。図7Aおよび図7Bに示す測定は、Ge基板1とGaN層5との間にGeN層4の形成を示す。
【0141】
表3は、XPS測定で見出された原子濃度が、窒素ガス流に晒す前後において、Ge基板1の表面に対して表される。晒した後、GeとNの双方が存在し、GeN層4の存在が示される。
【0142】
【表3】
表3:窒素ガス流に晒す前(RefGe)と、晒した後(GeN/Ge)の、Ge基板上で21.88°で測定した原子濃度
【0143】
既に検討したように、RHEED実験は、Ge表面が窒化された場合、表面の再構成を示す。線は同じ部分に残り、これは面内の格子パラメータが同じままであることを示す。XPS実験から、本発明の具体例にかかる方法の窒化工程中に、GeN層4が形成されることがわかる。RHEED実験から、このGeN層4は、面内の格子パラメータを変化させず、それゆえに、GeNは基板1のGe層と同じ面内格子パラメータを取ることがわかる。
【0144】
XPSスペクトルは、Ge格子に対してGaN格子が4°回転していることを示す(図8および図13)。互いに格子を回転させることにより、格子が互いにより整合するようになる(後述)。GaN格子とGe格子の互いに対する回転は、GaNとGeの間の表面および界面エネルギーを最小にするように行われる。
【0145】
GaNの堆積や成長に先んじるGeN層4の形成や、成長表面の面内における4°のGaN格子の回転(これは、TEMとXRDで観測された)は、六方対称のGe表面の上に、予想したよりも良好に適用することを示し、これは先に述べた応力により確認された。この回転は、Ge結晶に対するGaNの回転を表すXPSスペクトルを示す、図8に表される。GaNとGeの間の熱的不整合は小さく(+5.5%)、成長後に試料が冷却された場合、小さな圧縮応力となる。
【0146】
Ge基板1の上の450nm膜厚のGaN層5に対するSIMSの結果(図9参照)は、Ge基板1へのGa原子の限定的な拡散と、GaN層5へのGe原子の限定的な拡散を示す。それらのグラフにおいて、曲線17はGeプロファイルを示し、曲線18はGaプロファイルを示す。
【0147】
実験から、最良の層品質は、約50nmまたはそれ以下の薄層で得られることが分かる、より厚い層に対して、品質は若干低下するが、まだ良好である。これは、GaN層が厚くなると、表面温度が変化するという事実によるであろう。なぜならば、GaNは、Ge基板とは異なって熱を吸収し、また熱伝導性も異なるためである。これにより、成長中、表面温度が変化し、それゆえに最適な必要な成長パラメータも同様に変化する。
【0148】
例2
第2の例では、膜厚が450nmで、本来備わったn型(意図せずにドープされた)のGaN層5が、約20Ω・cmの抵抗を有するp−Ge(111)基板1の上に堆積または成長させた。GaN層5は、760℃の堆積温度でMBEを用いて堆積され、図2に示すものと類似の構造を形成した。この構造では、I−V特性が測定された。それゆえに、針が、GeおよびGaNの上のオーミックコンタクト9、10に下ろされた(図2参照)。IV曲線は図10に示される。整流特性が観察され、これは、Ge基板1とGaN層5との間のp−nヘテロ接合が良好なことを示す。
【0149】
更に、第2の例では、n−Ge基板1とn−GaN層6との間の接合が表された。それゆえに、約200nmの膜厚のGaN層6は、本発明の具体例にかかるn−Ge基板11の上に堆積また成長させられ、図3に示すものと類似の構造が形成された。GaN層6とGe基板11中にメサがエッチングされ、良好に規定された大きさの構造を造る。上部のオーミックコンタクト9は、n−GaN層6の上に形成された。図3に示すように、裏面オーミックコンタクト10は、n−Ge基板11の裏面上に形成された。I−V測定が直径750μmのn−GaN/n−Ge構造の上で行われた。
【0150】
それゆえに、1つの針は、(n−GaN層6の側で)n−GaN/n−Ge構造のオーミックコンタクト9の上に接続され、他の針は、n−GaN/n−Ge構造の裏面オーミックコンタクト10の上に接続された。n−Ge基板11の上の約200nm膜厚のn−GaN層6に対するIV特性が、図11に示される。Ge基板11とGaN層6との間の良好なn−nヘテロ接合を示す整流特性が観察される。
【0151】
この第2の例で形成されたGaN/Ge構造で見られた整流特性は、例えばGe基板とGaN層の間の接合が使用される半導体デバイスの応用において、このような基板の使用を約束する。
【0152】
例3
第3の例では、InN層がGaN中間層を用いてGe上に成長され、言い換えれば、本発明の具体例にかかる方法を用いて得られたGaN/Ge構造の上にInN層が成長させられる。第3の例では、GaN層5は5nmの膜厚を有し、GaN層5の上のInN層は50nmの膜厚を有する。839秒角のオメガ/2シータFWHMと、903秒角のオメガスキャンFWHMが測定された。ロッキングカーブ値は、GeN基板1上のInNに対して以前に報告されたものより大幅に小さく、これは、GaN層5の上に堆積したInN層が良好な結晶品質を有することを意味する。
【0153】
図12において、例3で形成された構造に対する、オメガ/2シータスキャンが示される。オメガ/2シータスキャンは、InとInNが良好な結晶品質を有することを表す(111)Geピーク19、(002)InNピーク20、および(002)GaNピーク21を示す。GeNピークは観察されない。これは、GeN層4は、1原子層または2原子層の膜厚であることが好ましく、2つの材料即ちGeとBaNの間の結合または遷移として考えられ、1原子層または2原子層の膜厚の場合、これは実際の層とは考えられないためである。
【0154】
例4
更なる例では、Ge(111)上へのAlNの成長が研究された。それゆえに、約97nm膜厚のAlN層が、Ge(111)基板1の上も成長された。図14に、そのようなGe(111)上の約97nmのAlNのオメガ/2シータXRDスキャンが示される。この図は、2つのピーク、即ちGeピーク(参照番号22で表示)とAlNピーク(参照番号23で表示)を示す。約248秒角のオメガ/2シータスキャンのFWHMが観察された。オメガスキャンのFWHMは、約1828秒角となった。
【0155】
本発明の具体例にかかる方法を用いてGe上に結晶AlNが成長できることが確認されたにもかかわらず、Ge上に成長したGaNに比較した場合、結晶品質は低い。このAlN層は、AlNの成長に先立つ窒化工程を含む本発明の具体例にかかる方法を用いて、Ge(111)基板1の上に成長された。
【0156】
例5
本発明の具体例にかかる方法を用いて、Ge基板1の上にInNを成長することが可能なことが、更に示された。図15は、Ge基板1上に成長させた約50nmのInN層のオメガ/2シータスキャンであり、InN成長前に約700℃の高温窒化が行われた場合(参照番号24で表示の曲線)と、InN成長前に窒化が行われない場合(参照番号25で表示の曲線)とを示す。InN成長前に高温窒化が行われた場合、オメガ/2シータスキャンは2つのピーク、即ちGeピーク(参照番号26で表示)とInNピーク(参照番号27で表示)を示す。InN成長前に窒化が行われない場合、1つのピーク、即ちGeピーク26のみが観察される。
【0157】
双方の場合、即ち、窒化が行われた場合と窒化が行われなかった場合、InNの成長は約250から350℃で行われた。窒化は結晶InNとなり、一方、窒化工程が無くこれにより基板1とInN層5の間にGeN層4を形成しないプロセスは、アモルファス(非結晶)のInNとなる。これは、オメガ/2シータスキャン中のInNピークの不存在により確認される。
【0158】
例6
図16に、Ge(111)基板1の上に成長させた約280nm膜厚のAlGaN層5オメガ/2シータスキャンが示される。AlGaN層5は、約8%のAl、および約92%のGaを含む。成長温度は約750℃であり、Geの窒化が成長に先立って行われる。この場合、AlGaN層5の品質が、比較される膜厚のGaN層の品質より僅かに低いが、なおも非常に良好である。
【0159】
オメガ/2シータスキャンでは、(参照番号29で表示される)AlGaNピークは、純粋のGaNに比較して少し右に動いた。なぜならば、合金中に追加のAlが存在するためである。この実験から、本発明の具体例にかかる方法を用いて、高品質のAlGaNが成長できることがわかる。
【0160】
例7
最後の実験では、本発明の具体例にかかる方法により、(110)方向に約4.7°のミスオリエンテーションを有するGe(111)基板1の上に、約300nm膜厚のGaN層5が成長される。基板温度と窒素ガス流は、良好な結晶品質が得られるように最適化された。[0002]軸回りのファイスキャン(phi scan)(図17参照)が行われた。参照番号30で表された曲線は、Ge(220)に対するものである。ファイスキャンでは、成長の対称面で格子の回転を見るために、異なった角度の下で試料が見られる。一方、オメガ/2シータスキャンでは、成長方向に(即ち、実質的に表面に垂直に)結晶の繰り返しが見られる。参照番号31で表される曲線はGaN(10−11)である。
【0161】
軸上のGe(111)基板1の2つの代わりに(前述)、(参照番号33で表される)1つのGaNピークのみが観察される。異なるピークは、(前で検討したように)層の面で回転した、異なるGaN相の存在を示す、1つのピークのみが存在するという事実は、1つのGaN相のみが存在することを示す。これは、軸上の基板の2つに代えて1つのGaN相を得るために、オフカットGe(111)基板1が使用できることを示す。
【0162】
なお、堆積温度は、堆積されるIII族−窒化物の種類に依存する。例えば、InNについては、堆積温度は窒化温度より低いことが好ましく、一方、GaNについては、堆積温度は窒化温度と同じで良い。
【0163】
本発明にかかるデバイスについて、好適な具体例、特定の構造や形態が、材料とともに、ここで検討されたが、形態は細部の様々な変化や変形は、本発明の範囲や精神から離れることなく行うことができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上へのIII族−窒化物の形成に関する。特に、本発明は、Ge基板上に、GaNのようなIII族−窒化物を形成(堆積)または成長する方法に関する。Ge基板は、六方対称を有する少なくともGe表面を有する。本発明は、また、少なくともGe表面を有する基板上に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を含むデバイスであって、本発明にかかる方法を用いて形成されたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
III族−窒化物は、過去10年の間、例えば半導体プロセスにおいて重要となった。応用の例として、高出力および高周波に応用される高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor: HEMT)や、青色LED等がある。
【0003】
単結晶III族−窒化物基板は、今までのところ商業的に得られないため、適当な基板上にそのようなIII族−窒化物の成長を最適化する多くの努力が払われてきた。III族−窒化物をその上に成長するために最も一般的に使用される基板は、シリコン、サファイア、および炭化シリコンである。しかしながら、それらの基板上へのIII族−窒化物の成長または堆積には、大きな格子不整合(lattice mismatch)と熱的不整合(thermal mismatch)の問題があり、高い結晶品質の材料の形成が困難である。表1は、III族−窒化物成長に一般に用いられる基板の材料特性を、GaNに対する理論的な熱的不整合や格子不整合とともに示す。また、示すように、表1は、Geの特性とともに、GaNとの対応する理論的格子不整合および熱的不整合を示す。
【0004】
【表1】
表1:GaN、サファイア、6−HSiC、Si(111)、Ge(111)、AlN、GaN、InN、および参照Ge(111)の材料特性である。格子不整合と温度不整合は、GaNに対するものである。
【0005】
GaNと、炭化シリコン(SiC)またはシリコン(Si)基板の間の高い熱的不整合のため、それらの基板上へのGaNの成長は高い引っ張り熱歪を生じ、冷却後にGaN層中にクラックを形成する。特に、Si基板の場合、GaNとSiの間にバッファ層が与えられ、引っ張り熱応力を調整する。
【0006】
上述のSiまたはSiC基板上にGaNを成長させる前に、追加のまたは中間の層が必要となる。例えば、基板のSiと、Si基板の上に堆積されるGaN層のGa原子との間でエッチング反応が起きるため、GaNはSi上に直接成長しない。それゆえに、例えばAlN層のような追加の層が、GaNとSiの間に形成される。他の例では、SiC上のGaNの濡れ性は良くないため、最初にSiC基板上にAlNを成長させた後に、その基板の上にGaNが堆積される。SiC上のAlNの存在は、また、後に堆積されるGaNとSiC基板の間の格子不整合を低減し、濡れ性を改善する。このため、濡れ性が良いために、AlNはGaN上よりSiC上に良く成長する。中間層が無ければ、SiC上でGaNは3次元に成長する。
【0007】
サファイア基板の場合、導入された応力は、大きいが圧縮である。それにもかかわらず、圧縮応力は、基板にクラックを形成する。サファイア基板上で良好な結晶品質を有するGaNの直接成長は不可能である。
【0008】
更に、サファイアとシリコン炭化物は、それぞれが大きなバンドギャップである8eVと2.26eVを有するため、均一の加熱することが困難である。1.12eVであるシリコンのバンドギャップは、均一な加熱を可能にするが、自然酸化膜を除去するために高温が必要となる。
【0009】
EP1548807では、III族−窒化物の材料が、多孔質の上層を有するシリコン基板の上に堆積させることが開示された。好適には基板から遠ざかる方向に増加するGe濃度を有する、Geを含む中間層が、最初に基板上に形成され、その後に、III族−窒化物材料の層が基板上に形成される。Ge含有中間層は、好適にはSiGeである。Ge含有中間層は、熱応力を低減するために用いられ、多孔質上部Si層の酸化や窒化に対する保護層である。多孔質上部層は、SiとIII族−窒化物との間に大きな格子不整合を低減する。
【0010】
EP1548807に記載された方法は、このように、基板上にIII族−窒化物が堆積できる前に、基板上に追加の層を堆積させる必要がある。
【0011】
しかしながら、バッファ層や中間層の使用は、基板の材料と窒化物層の間にバリア層を形成する。III族−窒化物/基板構造が例えば半導体デバイスに使用された場合、これは欠点となる。
【0012】
表1より、GaNとGeの間の熱的不整合は、−5.5%であり、表1で述べた他の基板に比べて小さい。GaN、InN、およびAlNのようなIII族−窒化物では、熱膨張係数は、それぞれ5.6、3.8、および4.2である。GaAsは5.7の熱膨張係数を有し、Geは5.9の熱膨張係数を有する。このように、熱的不整合を最小にするために、Geの上に成長させるにはGaNが最良の選択であろう。また、GaAsも、その上にGeを備えることで、GaNを成長させるのに良い基板であろう。このように、GaNを堆積させる基板として、または一般にIII族−窒化物を堆積させる基板としてGeを用いた場合、成長後の冷却中の追加の熱応力の制限となる。これは、特に、高いGa濃度の窒化物の場合である。
【0013】
Ge基板上へのIII族−窒化物の成長、特にGaNの成長は、異なる理由から興味深い。例えば、上述のように、GaNまたはInGaNおよび高いGa含有量のAlGaNのようなIII族−窒化物と、Geとの間で小さな熱的不整合を有する。更に、Geは、比較的安価である。更に、Geは小さなバンドギャップ(0.66eV)を有し、例えば分子線エピタキシ(MBE)のような放射化熱を用いた堆積システム中で均一で再現性良く加熱できる。Ge基板の均一な加熱の可能性は、III族−窒化物層を基板の上に堆積し、良好な結晶品質の、GaNのようなIII族−窒化物材料の均一な層を形成する場合に有利である。しかしながら、Geと、例えばGaNのようなIII族−窒化物との間の格子不整合が、一般にシリコン、サファイア、または炭化シリコンのような基板を用いた場合より大きくなるという問題が発生した。大きな格子不整合は、悪い結晶品質の例えばGaNのようなIII族−窒化物を成長させ、これは半導体デバイスには使用できない。
【0014】
Journal of Crystal Growth, 279, (2005), p.311では、E. Trybusらは、プラズマアシスト分子線ビームエピタキシを用いてGaドープされたゲルマニウム(111)基板の上に、InNを成長させることを報告している。11.3%の格子不整合が、InN層とGaドープのGe(111)基板との間で観察された。形成されたInN層の結晶学的構造は、複結晶X線回折(double-crystal XRD)を用いて研究された。InNに対して得られた最良の半値全幅(FWHM)値は、約144秒角(arcsecond)であり、最良のロッキングカーブ測定は、約2597秒角FWHMであり、大きな傾斜とモザイク粒界構造を示している。更に、回折コントラスト顕微鏡により、0.4μmの厚みのInN膜が、高密度の貫通転位や結晶粒界を含むことが示された。
【0015】
上記文献中で形成されたInN/Ge構造において、InN層とGe基板との間に高い格子不整合が存在している。そのような高い格子不整合は、多くの欠陥を生じさせる。例えばInNとGeとの間の、約−36%の熱的不整合は、例えば冷却中のような、堆積後に、InN層に追加の応力を与える、更に、形成されたInN/Ge構造は、InN層とGe基板との間に粗い界面を示す。多分、これはInとGeとの間の共晶反応に起因するGeとInNの混合によると思われる。XRDオメガ2シータ(omega-2theta)のFWHMは約144秒角であり、ロッキングカーブFWHMは約2597秒角である。後者は、サファイア上に成長したInNの300秒角より小さな値と比較して、Ge(111)上に直接成長したInNは、比較的劣った結晶品質であることを示す。このように、InとGeの間の共晶反応のために、Ge上に高品質のInNを直接形成することは困難である。このため、そのような構造は、例えば半導体デバイスに使用するのには適していない。
【0016】
今日まで、コスト効率良く、形成されたIII族−窒化物/Ge構造が例えば半導体デバイスへの使用に適するような、Ge基板上にIII族−窒化物、特にGaNを形成する満足な方法は、開発されなかった。
【発明の概要】
【0017】
本発明の具体例の目的は、少なくともGe表面を含む、例えばGaNのようなIII族−窒化物を形成する良好な方法を提供することである。Ge表面は、六方晶系または六重対称(six-fold symmetry)であることが好ましい。本発明の具体例の更なる目的は、本発明の具体例にかかる方法で形成されたデバイスを提供することである。
【0018】
本発明の具体例にかかる方法の長所は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層と、例えばGe基板や少なくともGe表面を含む基板のような基板との間に、中間層を堆積させる必要が無いことであり、これにより処理時間と処理コストが低減できる。
【0019】
更に、本発明の方法で作製されたIII族−窒化物/Ge構造は、半導体デバイスへの使用に適している。
【0020】
一の形態では、本発明は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を、少なくともGe表面を含む基板上に堆積させる方法を提供する。この方法は、例えば400℃と940℃の間の温度のような、Geの溶融温度より低い温度に基板を加熱し、そのGe基板の上に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を堆積させる工程を含む。
【0021】
一の形態では、本発明は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を、少なくともGe表面を含む基板上に堆積させる方法を提供する。Ge表面は、六方晶系または六重対称でも良い。この方法は、GaN層のようなIII族−窒化物層を形成する前の第1工程で、基板を400℃と940℃の間の窒化温度に加熱するとともに、基板を窒素ガス流に晒すことにより窒化工程が行われる。N2ガス原子は表面と結合するには安定すぎるため、窒素分子を、窒素ガス流から原子状の窒素原子に分裂させるのが良い。
【0022】
これにより、窒化工程は、原子状の窒素ビームに基板を晒すことにより行われる。この結果、GaN層は、Ge表面の上に形成される。続いて、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層がこのようにして形成されたGeN層の上に堆積される。この堆積工程のために、窒化温度に依存して、例えばGaN層のようなIII族−窒化物が基板上に形成される、100℃と940℃の間の堆積温度まで、基板は加熱され又は冷却される。
【0023】
III族−窒化物の堆積前にGe表面を窒化して基板のGe表面上に形成されたGeN層は、III族−窒化物層を、六方対称を有するGe表面の上に適応させる。Ge表面上でその軸上にGaNを成長させる場合、成長面に4°のGaN格子の回転を持たせると、更に、基板のGe表面の上に、GaNが適応するのを容易にする。基板の回転は、GaNとGeの間の表面と界面エネルギーを最小にすることで行われる(以下参照)。
【0024】
更に、本発明の具体例の方法は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層と、基板との間に、追加の層の更なる堆積工程を必要としない。
【0025】
本発明にかかる方法の窒化工程は、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の堆積と同じ堆積チャンバ中で行うことができる。更に、追加の準備は必要とされない。なぜなら、窒化ガス供給手段は、どのみち、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の堆積中に用いられるからである。
【0026】
上述のように、本発明の具体例にかかる方法は、コスト効果のある方法であり、例えば半導体の処理において重要である。
【0027】
本発明の具体例では、基板は、Ge表面を形成するGe層を上部に有する適当な材料から形成され、好ましくは六方晶または六重対称の基板を備え、例えば、Ge層を上部に有するGaAsやGe層を上部に有するSiである。本発明の他の具体例では、基板は、Ge表面を形成するGe層を上部に有するGeバルク基板からなり、好ましくは六方晶または六重対称の基板からなる。基板は全体がGeから形成され、好ましくは六方晶または六重対称の基板からなるものであっても良い。
【0028】
基板は、六方対称を有するGe(111)またはオフカットGe(111)表面層を含んでも良い。本発明の具体例では、基板はGe(111)層またはオフカットGe(111)層をその上に含むサポートを含んでも良い。サポートは、例えば、Si、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAs、オフカットGaAs(111)でも良く、またはSi、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAsを含むものでも良い。サポートの上のGe(111)層またはオフカットGe(111)層の膜厚は、0.4nmと500μmの間である。
【0029】
本発明の具体例では、窒化温度は、好適には550℃と850℃の間で選択される。
【0030】
本発明の具体例では、更に、堆積温度は、550℃と850℃の間で選択される。
【0031】
本発明の具体例では、窒化温度と堆積温度は、互いに等しくなるように選択される。しかしながら、本発明の具体例では、窒化温度と堆積温度は、互いに異なるように選択されても良い。
【0032】
本発明のこの形態の具体例では、GaN層は、分子線エピタキシ(MBE)で堆積されても良い。MBEで使用される堆積温度は、940℃であるGeの融点より低い。
【0033】
他の具体例では、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の膜厚は、0.5nmと100μmの間から選択される。例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の膜厚は、堆積温度と堆積速度に依存する。
【0034】
本発明の具体例では、方法は更に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層のドーピング工程を含んでも良い。これは、成長中またはその後に、例えばイオン注入により、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層に他の元素を導入することで行われる。GaNの場合にドーピングに適した元素は、n型GaNの形成にはSi、p型GaNの形成Mgが用いられる。
【0035】
更なる具体例では、方法は、更に、例えばGaN/Ge基板のような形成されたIII族−窒化物層/Ge基板を堆積チャンバから取り出した後に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層のパターニング工程を含む。これは、例えばリソグラフィとして当業者に知られた適当な技術で行っても良い。
【0036】
第1の形態の他の具体例では、後にパターニングされるかまたはパターニングされない少なくとも1の追加の層が、好ましくは六方対称である、少なくともGe表面を含む基板の上に形成された、例えばGsN層のようなIII族−窒化物層の上に堆積されても良い。これは、例えばGaNのようなIII族−窒化物層が堆積されたものと同じ堆積チャンバ中で行われても良いが、当業者に知られた他の技術で行われても良い。しかしながら、本発明の他の具体例では、例えば異なった機能を有する複数の追加の層が、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の上に堆積されても良い。
【0037】
少なくとも1つの追加の層は、例えば、III族−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、半導体材料、またはSiN、AiO、Al2O3のような絶縁体、有機物絶縁材料等であっても良い。少なくとも1つの追加の層は、また、1以上の上述の材料の組み合わせから形成されても良い。例えば、少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaN、InAlGaN、Al濃度が50%より低いAlGaN、In濃度が25%より高いInGaNを含んでも良い。本発明の具体例では、適当な含有量のGaおよびInまたはAlを有する、InGaNまたはInxGa1−xN、InAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yNが、少なくとも1つの追加の層を形成するのに用いられても良い。
【0038】
本発明は、また、半導体プロセスにおける、本発明の具体例にかかる方法の使用を提供する。
【0039】
更に、本発明は、ヘテロ接合ダイオードの形成のための、本発明の具体例にかかる方法の使用を提供する。
【0040】
本発明の他の形態では、
少なくともGe表面を含み、好適には六方対称を有する基板と、
例えばGaN層のようなIII族−窒化物層と、
基板と、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層との間のGeN層であって、六方対称を有するGe表面と、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層とに直接接続されたGeN層と、を含む構造が提供される。
【0041】
本発明の具体例では、基板は、サポートとも呼ばれるバルク基板から形成されても良い。この基板は、Ge表面を形成するGe層をその上に備えた適当な材料を含み、好ましくは、例えば上部にGe層を有するGaAsまたは上部にGe層を有するSiのような、六方対称または六重対称の基板を有する。本発明の他の具体例では、基板は、Ge表面を形成するGe層をその上部に有するGeバルク基板から形成され、好適には六方対称または六重対称の基板から形成される。基板は、全体がGeから形成されても良く、好適には六方対称または六重対称を有する。
【0042】
基板は、六方対称のGe(111)またはオフカットGe(111)表面層を含む。本発明の具体例では、基板は、その上面にGe(111)またはオフカットGe(111)表面層を含むサポートを含んでも良い。サポートは、例えば、Si、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAs、オフカットGaAs(111)でも良く、またはSi、SiC、サファイア(Al2O3)、オフカットSi(111)、GaAs、オフカットGaAs(111)を含むものでも良い。Ge(111)層またはオフカットGe(111)層の膜厚は、0.4nmと500μmの間である。
【0043】
例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の膜厚は、0.5nmと100μmの間で良い。III族−窒化物がGaNである具体例では、GaN層のX線回折(XRD)オメガスキャンの半値全幅(FWHM)は、好適には700角秒より小さい。しかしながら、本発明の具体例では、より高いFWHMを有するGaN層も、本発明に含まれる。III族−窒化物が例えばAlNやInNから形成された場合、層はGaN層より低い品質を有する。例えば約30%のInまたはAlのような、より高いInまたはAl含有量の、AlGaNまたはAlxGa1−xN、InGaNまたはInxGa1−xN、およびInAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yNは、本発明の具体例にかかる方法により形成されたGaN層より低品質である。本発明の具体例にかかる方法により形成された低Al含有量のAlGaN層は、本発明の具体例にかかる方法で少なくともGe表面を有する基板上に形成したGaN層より良好な特性な特性を有する。
【0044】
本発明の具体例では、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層がパターニングされても良い。
【0045】
他の具体例では、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層の上に、少なくとも1つの追加の層が存在する。1つの層のみが存在しても良く、または、例えばそれぞれが異なる機能を有する、交互に重なった複数の層が存在しても良い。
【0046】
少なくとも1つの追加の層は、例えば、III−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、半導体材料、または例えばSiN、SiO、Al2O3のような絶縁体、有機物絶縁材料等でも良い。例えば、少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaNまたはInxGa1−xN、InAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yNまたはAlxGa1−xN、低Al濃度(50%より低い)のAlGaNまたはAlxGa1−xN、高IN濃度(25%より高い)のInGaNまたはInxGa1−xNを含んでも良く、またはAlN、InN、AlGaNまたはAlxGa1−xN、InGaNまたはInxGa1−xN、InAlGaNまたはInxAlyGa1−x−yN、低Al濃度(50%より低い)のAlGaNまたはAlxGa1−xN、高IN濃度(25%より高い)を含むことができる。本発明の具体例では、AlGaNまたはAlxGa1−xN、InGaNまたはInxGa1−xN、またはあらゆる含有量のGaおよびInまたはAlを有するInAlGaAsまたはInxAlyGa1−x−yNが、少なくとも1つの追加の層を形成するのに用いられても良い。
【0047】
本発明の具体例では、少なくとも1つの追加の層はパターニングされる。他の具体例では、少なくとも1つの追加の層が結晶層の場合、少なくとも1つの追加の層のX線回折(XRD)オメガスキャンのFWHMは、700秒より小さいことが好ましい。
【0048】
本発明の更なる形態では、本発明の具体例にかかる方法で形成された、少なくとも1つの構造を含む半導体装置が提供される。
【0049】
特定の具体例では、半導体装置はヘテロ接合ダイオードまたはヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)でも良く、または直接光電気セルであっても良い。
【0050】
本発明の特定のおよび好適な形態は、添付の独立請求項および従属請求項に示される。従属請求項の特徴は、単に請求項に示されたままではなく、必要に応じて、独立請求項の特徴と組み合わされ、他の従属請求項の特徴と組み合わされても良い。
【0051】
この分野で装置の一定の改良、変化、および進化があるが、本発明のコンセプトは、従来の技術から出発する、より効果的で、安定で、信頼できるこの性質の装置を含む実質的に新規な改良を表していると信じる。
【0052】
本発明の上述のおよび他の特徴、性質および長所は、本発明の原理を例示の方法で示す図面とともに、以下の記載から明らかになるであろう。この記載は、単に例示目的であり、発明の範囲を限定するものではない。以下で引用される参照図面は、添付の図面をいう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明の具体例にかかる方法の連続した工程を示す。
【図1B】本発明の具体例にかかる方法の連続した工程を示す。
【図1C】本発明の具体例にかかる方法の連続した工程を示す。
【図2】本発明の具体例にかかるp−Ge上のn−GaNからなるジャンクションダイオードを示す。
【図3】本発明の具体例にかかるn−Ge上のn−GaNからなるジャンクションダイオードを示す。
【図4】本発明の具体例にかかるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)を示す。
【図5】Ge(111)基板上に堆積した38nmのGaN層のXRDオメガスキャンを示す。
【図6】Ge(111)基板上に堆積した38nmのGaN層のXRDオメガ2シータスキャンを示す。
【図7A】窒化されたGe(111)基板のXPS結果を示す。
【図7B】窒化されたGe(111)基板のXPS結果を示す。
【図8】Ge結晶に対するGaNの回転を表すXRDスペクトルを示す。
【図9】Ge(111)基板上に堆積された450nm膜厚のGaN層のSIMS結果を示す。
【図10】上部(GaN)から底部(p−Ge)まで測定されたp−Ge(111)基板上の450nm膜厚のGaN層の電流−電圧(IV)特性を示す。
【図11】上部(GaN)から底部(n−Ge)まで測定されたn−Ge(111)基板上の約200nm膜厚のGaN層の電流−電圧(IV)特性を示す。
【図12】Ge(111)基板上に堆積された4nm膜厚のGaN層上の50nm膜厚のInN層のXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図13】Ge基板に対するGaNの1つの粒のミスオリエンテーションを模式的に示す。
【図14】Ge(111)基板上の約97nm膜厚のAlN層のXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図15】約700℃での高温窒化あり(曲線24)と窒化無し(曲線25)の、Ge基板上に成長させた約50nmのInN層のXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図16】Ge(111)基板上に直接成長させた約280nmのAlGaNのXRDオメガ/2シータスキャンを示す。
【図17】(110)に向かって約4.7°のミスオリエンテーションを有するGe(111)基板上の約100nm膜厚のGaN層のファイスキャンを示す。
【0054】
異なる図面において、同一参照番号は、同一または類似の要素を示す。
【詳細な説明】
【0055】
本発明は、特定の具体例について、添付図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定されるものである。記載された図面は、単に概略であり、限定するものではない。図面において、図示目的で、いくつかの要素の大きさは拡張され、縮尺通りに記載されていない。寸法と相対寸法は、本発明の実施の実際の縮小には対応していない。
【0056】
更に、説明や請求の範囲中の、上、下等の用語は、記載目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる位置でも操作できることを理解すべきである。
【0057】
請求の範囲で使用される「含む(comprising)」の用語は、それ以降に示される要素に限定して解釈されること排除するものであり、他の要素や工程を排除しない。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分は、その通りに解釈され、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除してはならない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。本発明では、単にデバイスに関連した構成要素がAとBであることを意味する。
【0058】
この明細書を通じて参照される「一の具体例(one embodiment)」または「具体例(an embodiment)」は、この具体例に関係して記載された特定の長所、構造、または特徴は、本発明の少なくとも1つの具体例に含まれることを意味する。このように、この明細書を通して多くの場所の「一の具体例(one embodiment)」または「具体例(an embodiment)」の語句の表現は、同じ具体例を表す必要はなく、表しても構わない。更に、特定の長所、構造、または特徴は、この記載から当業者に明らかなように、1またはそれ以上の具体例中で適当な方法で組み合わせることができる。
【0059】
同様に、本発明の例示の記載中において、能率的に開示し、多くの発明の形態の1またはそれ以上の理解を助ける目的で、本発明の多くの長所は、時には1つの具体例、図面、またはその記載中にまとめられることを評価すべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求される発明がそれぞれの請求項に記載されたものより多くの特徴を必要とすることを意図して表されていると解釈すべきではない。むしろ、以下の請求項が表すように、発明の態様は、1つの記載された具体例の全ての長所より少なくなる。このように詳細な説明に続く請求の範囲は、これにより詳細な説明中に明確に含まれ、それぞれの請求項は、この発明の別々の具体例としてそれ自身で成立する。
【0060】
更に、ここで記載された幾つかの具体例は幾つかの特徴で、他の具体例に含まれる以外の特徴を含み、異なった具体例の長所の組み合わせは、本発明の範囲に入ることを意味し、当業者に理解されるように異なった具体例を形成する。例えば、以下の請求の範囲では、請求された具体例のいくつかは、他の組み合わせにおいても使用することができる。
【0061】
ここで与えられる記載において、多くの特別な細部が示される。しかしながら、本発明の具体例はそれらの特別な細部無しに実施できることを理解すべきである。他の例では、公知の方法、構造、および技術は、この記載の理解をわかりにくくしないために、詳細には示されていない。
【0062】
本発明は、本発明の多くの具体例の詳細な記載によって記載される。本発明の他の具体例が、本発明の真実の精神や技術的示唆から離れることなく、当業者の知識により形成できることができ、本発明は、添付された請求の範囲の文言によってのみ限定されることは明らかである。
【0063】
本発明は、窒化ガリウム(GaN)層のようなIII族−窒化物層を、少なくともゲルマニウム(Ge)表面層を有する基板の上にコスト効果のある方法で堆積させる方法を提供する。例えばGaNのような六方晶のIII族−窒化物層と、立方晶基板との間の、対称の問題を克服するために、Ge上部層の少なくとも上部表面は、六方対称または六重対称を有すべきである。上部表面とは、例えば、GaN層のようなIII族−窒化物層がその上に堆積されるGe上部層の側を意味する。
【0064】
一の形態では、この方法は、例えば400℃と940℃の間のような、Geの融点より低い温度に基板を加熱し、Ge表面に、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層を堆積させる工程を含む。
【0065】
他の形態では、本発明の具体例にかかる方法は、400℃と940℃の間、好適には550℃と850℃の間の堆積温度に基板を加熱しながら、基板を窒素ガス流に晒す工程を含む。続いて、例えばGaN層のようなIII族−窒化物層が、100℃と940℃の間、好適には550℃と850℃の間の堆積温度で、Ge表面上に堆積される。これらの工程の幾つかまたは全ては、処理装置の堆積チャンバ中で行われても良い。
【0066】
本発明の具体例は、GaN、AlN、InNのような基板上にIII族−窒化物を堆積できることを開示する。本発明の具体例では、III−窒化物は、InGaN、AlGaN、InAlGaNのようなIII族−窒化物合金を含む。なお、説明中のどこかで言及されたそれぞれがInxGa1−xN、AlxGa1−xN、およびInxAlyGa1−x−yNであるInGaN、AlGaNおよびInAlGaAsは、いずれの含有量のGaおよびInおよび/またはAlをも有することを意味する。以下の記載において、本発明は、GaN層の手段により説明される。これは単に説明を容易にするためであり、本発明をいずれかに限定することを意図するものではないことが理解されよう。本発明は、また他のIII族−窒化物層や、上述のようなIII族−窒化物の合金にも適用できる。
【0067】
本発明の具体例では、基板は適当な材料から形成され、またサポートとも呼ばれ、基板の六方対称または六重対称を備えた少なくともGe上部表面を有する上部Ge層を有する。例えば、上部Ge層を有するGaAsや上部Ge層を有するSiである。本発明の具体例では、「サポート」の文言は、使用できる、またはその上にデバイス、回路または結晶層が形成できるあらゆる下層の材料を含む。他の代わりの具体例では、この「サポート」は、例えばドープされたまたはアンドープのシリコン、ガリウムアーセナイド(GaAs)、ガリウムアーセナイドフォスファイド(GaAsP)、インジウムフォスファイド(InP)、またはSi基板上のシリコンゲルマニウム(SiGe)のような半導体基板を含んでも良い。
【0068】
また、例えばAlNのような1またはそれ以上の中間層を有して、例えばGaNオンサファイアやGaNオンSiのようなサファイアやSiの上に成長させたIII族−窒化物も、サポートとして使用できる。「サポート」は、半導体基板部分に加えて、例えばSiO2やSi3N4層のような絶縁層を含んでも良い。
【0069】
このように、「サポート」の用語は、シリコン・オン・ガラス基板、シリコン・オン・サファイア基板を含む。「サポート」の用語は、このように、一般に、興味のある層や部分の下にある層の要素を定義するのに使用される。また、「サポート」は、例えばガラス、プラスチック、または金属層のような、その上に層が形成されたいかなる他のベースも含む。六方対称または六重対称の少なくとも上部部分を有するGe層が、サポートの上に提供されても良い。
【0070】
本発明の具体例では、基板またはサポートは、基板の六方対称または六重対称を有するGe層を上部に有するGeバルク基板から形成されても良い。
【0071】
例えば、本発明の具体例では、例えば、Ge(111)基板、またはオフカットGe(111)即ちオフオリエンテッドGe(111)、または傾斜Ge(111)のような表面が少なくとも六方対称または六重対称のGe基板が使用されても良い。オフカット角度は、好ましくは、0°と15°の間、または2°と10°の間、または4°と8°の間、または4°と6°との間、例えば2°、4°、4.7°、6°、8°である。
【0072】
本発明の具体例では、基板は、他の基板(例えばSiまたはSiC)の上の少なくとも表面において六方対称または六重対称のGeの上部層を含むバルクGeサポートを含んでも良い。上部層とは、GaN層がその上に堆積される側の、バルクGeサポートの側を意味する。Geの上部層は、例えばGe(111)上部層やオフカットまたは傾斜Ge(111)上部層である。例えば、Ge上部層を有するシリコンまたはSiC基板であり、六方対称または六重対称を有するGe(111)上部層は、本発明の具体例にかかる基板として使用される。
【0073】
本発明の具体例では、基板はGe上部層を有するサポートを含みGe上部層の膜厚は0.4nmと500μmの間であり、例えば5nmと500μmの間、0.4nmと100μmの間、10nmと100μmの間、100nmと10μmの間、500nmと1000nmの間である。
【0074】
Geは940℃の融点を有する。それゆえに、実際の金属有機物化学気相成長(MOCVD)を用いて、少なくともGe上部層を含む基板の上へのGaNの堆積または成長は、最良の選択ではない。なぜなら、現状のMOCVDプロセスの最適堆積温度は非常に高く、940℃より高いからである。近年、GaNの堆積や成長に使用するために、分子線エピタキシ(MBE)が開発された。MBE中の堆積温度は、400℃と900℃の間の範囲であり、Geの融点より低く、このように、MBEは、本発明の具体例にかかる方法に用いるのに適している。
【0075】
異なった型のMBE堆積は公知であり、本発明の具体例にかかる方法として使用できる。例えばプラズマアシストMBEまたはアンモニアMBEである。原理的に、Geの融点(940℃)より低い温度で働く公知の堆積技術が、本発明の具体例により、GaNをGe上に堆積するのに使用できる。
【0076】
本発明の具体例にかかる方法の、続く工程が、図1Aから図1Cに示されている。それらの図面は、この方法を説明することを目的とし、いかなる方法においても本発明を限定することを意図するものではない。
【0077】
図1Aに示される例では、基板1は、Ge上部層3を備えたサポート2から形成される。Ge上部層3は、六方対称または六重対称を有し、少なくともサポート2から離れた上面に設けられる。
【0078】
本発明では、GaN成長の前に、Ge上部層に窒化工程が行われ、即ち、Ge上部層3が、400℃と940℃の間の温度のような十分に高い温度で窒素ガス流に晒される。N2ガス原子は非常に安定であり、基板1の表面3と結合しないので、窒素ガス流からの窒素分子は、窒素原子に分裂させられる。例えば、プラズマアシストMBEが使用された場合、窒素ガス流からの窒素分子は、窒素原子に分けられる。アンモニアMBEの場合、温度上昇によりNH3が基板で窒素原子に分離する。
【0079】
これにより、Ge上部層の少なくとも1つの上方の層のGe原子がGeNに変わり、これにより、基板1のGe上部層3の上に、薄いGeN層4を形成する(図1B参照)。薄いGeN層4は、0.1nmと100nmの間、好適には0.1nmと5nmの間、更に好適には0.1nmと2nmの間の膜厚を有する。GeN層4の膜厚は、窒化工程の時間および温度により、および窒化工程中の窒素ガス流により(後述)決定される。
【0080】
反射高エネルギー電子回折(RHEED)実験から、窒化中に、基板1の表面で再組織化が起きていることが分かる。これは、RHEED回折パターン中のGe線(streak)の間で、中間の線が存在することにより反映される。窒化中に、メインのGe線の間の距離は変化せず、これは、形成されたGeNは、下層のGe上部層3と同じ面内の格子パラメータを引き継ぐことを示す。これらの格子パラメータは、公知の安定したGeN層の格子パラメータとは異なる。
【0081】
それゆえに、GeN層4は安定ではなく準安定であり、GeN層4の膜厚は制限されると結論づけられる。GeN層4が非常に厚い場合、GeNは、その上にGaNを成長させるのに有用でない安定なGeNの格子パラメータを表す。安定GeN相についての更なる情報が、V.F.Synorovらによる、Soviet Physics Journal, vol.10, No.3, P.7-11 (1967)の"Production of Nitrides on the surface of monocrystalline Ge"に見られる。
【0082】
GeN層4の存在は、本発明にかかる方法の次の工程で、GaNの結晶成長を可能にする(後述)。基板1を窒素ガス流に晒す間の温度は、窒化温度とも呼ばれ、400℃と940℃との間、550℃と850℃との間、700℃と800℃との間、例えば700℃である。基板1のGe上部層3が窒素ガス流に晒される時間は、また露出時間とよばれ、窒化温度と窒素ガス流のフローパラメータに依存する。窒素ガス流は、好適には、1sccmと2sccm(Standard Cubic Centimeters per minute)の間であることが好ましい。
【0083】
しかしながら、2sccmより高い、または1sccmより低い窒素ガス流も、本発明の具体例で使用することができる。好適には、露出時間は1秒と30分の間であり、より好適には30秒と2分の間であり、例えば60秒である。しかしながら、本発明の他の具体例では、より短いまたはより長い時間が窒素ガス流や窒化温度に応じて使用しても良い。所定の窒素ガス流では、露出時間が短かすぎて、GeN層4は形成されない。
【0084】
一方、所定の窒素ガス流では、露出時間が長すぎて、GeN層4の表面は粗くなる。これは、粗いGeN層4の上に続いて堆積されるGaN層の品質や、GeN層4と続いて堆積されるGaN層との間の界面の品質を悪くし、これを通して、GaN/基板構造は、例えば半導体装置で使用するのに適さなくなる。
【0085】
窒素ガス流、窒化が行われる温度、および窒化が行われる時間を制御することにより、GeN層4の膜厚のような特性が制御できる。窒化パラメータを制御することにより、基板1の上に形成されるGeN層4が、スムースな表面を有する。スムースな表面を有するとは、GeN表面の粗さが好適には2nmより高くなく、より好適には1nmより高くなく、更に好適には0.4nmであることを意味する。GeN層4のスムースな表面は、連続して堆積されるGaN層が良好な結晶品質を有することを確実にする(後述)。
【0086】
上述のように基板1を窒素ガス流に晒してGeN層4を形成した後、GaN層5がGeN層4の上に堆積される(図1C参照)。基板1を窒素ガス流とGaフラックスに晒す工程と、基板1を加熱する工程は、同時に行われる。好適には、窒素ガス流とGaフラックスは、同等の原子フラックスを有する。換言すれば、窒素ガス流とGaフラックスの原子比率は1/1である。堆積されたGaN層5中のGaとNの原子比率は1/1であるため、これにより、窒素ガス流とGaフラックスの原子比率が1/1で無い場合と比較して、良好な結晶品質が得られ、堆積したGaNs層5の格子中に欠陥は殆ど存在しなくなる。
【0087】
それにもかかわらず、本発明の具体例では、窒素またはGaが過剰なフラックス、または原子比率が1/1ではない窒素とGaのフラックスが同様に用いられても良い。GaN層5の堆積中に、基板1が、100℃と940℃の間、400℃と940℃の間、好適には550℃と850℃の間、例えば700℃である堆積温度に加熱される。堆積中、堆積チャンバ中の圧力は、10−6Torrと10−4Torrの間で、好適には1×10−5Torrと5×10−5Torrの間である。
【0088】
しかしながら、本発明の具体例では、より高いまたはより低い圧力を用いても良い。GaNの堆積速度は、10nm/hと2000nm/hの間で、好適には180nm/hと690nm/hの間で、圧力、温度、およびガス流のようなプロセスパラメータに依存する。しかしながら、本発明の具体例では、より低いまたはより高い堆積速度も可能である。
【0089】
GaN層5の膜厚は堆積速度と堆積時間に依存し、0.5nmと1cmの間、好適には0.5nmと100μmの間、より好適には0.5nmと10μmの間、更に好適には0.5nmと1000nmの間、0.5nmと500nmの間、0.5nmと100nmの間、0.5nmと20nmの間、0.5nmと10nmの間、0.5nmと2nmの間、または1原子層と5原子層の間に対応しても良い。必要とされる堆積時間は、特定の適用において、堆積速度と、必要とされるGaN層5の膜厚に依存する。
【0090】
本発明の具体例では、GaN層5はドーピングされても良い。これは、GaN層5の堆積または成長中に行われる。効果的なn型およびp型のドーピングは、電子デバイスの製造において重要である。GaN層5のドーピングは、GaNの成長中に、または例えばイオン注入のように成長後に、他の元素を導入することにより達成される。GaNドーピングの元素の例は、n型GaNに対してはSiであり、p型GaNに対してはMgである。なお、補償しなければならない高いn型バックグラウンドドーピング密度(不作為)のために、p−GaNの成長または堆積は困難である。p−GaNの形成が困難であるため、p/n−GaN接合の実現は困難である。また、構造の困難さゆえに、p型材料上にn−GaN層を含むp/nヘテロ接合の形成も困難である。本発明の具体例にかかる方法は、Ge基板上に高品質のn−GaNの堆積を可能にするため、高品質で、例えばn−GaN/p−Geのようなp/nヘテロ接合が形成できる。
【0091】
本発明の具体例にかかる方法を用いることにより、高品質のGaN層5の堆積が可能となる。これは、X線回折(XRD)オメガおよびXRDオメガ−2シータスキャン実験から結論づけられる(後述)。例えば、膜厚が40nmのGaN層5に対して、オメガスキャンのXRD半値全幅(FWHM)は、100秒と1000秒の間であり、好適には200秒と700秒の間であり、更に好適には300秒と600秒の間である。低いXRDのFWHM値は、良好に繰り返される結晶構造を表す。
【0092】
これにより、XRDのFWHM値がより低くなるとGaN層5の結晶品質はより良くなり、より適した形成されたGaN/Ge構造が、例えば半導体デバイスに使用できるようになる。これは、より高い電子移動度により、より良い電気特性となるからである。例えば、従来の方法で、Siまたはサファイア上に堆積された数ミクロンの膜厚の厚いGaN層5では、300秒から600秒のオメガスキャンのXRDのFWHM値が測定された。比較のために、膜厚100μmのバルクGaN層5(異なった材料の基板で支えられるものではない)に対して、200から300のXRDのFWHM値が得られた。
【0093】
更に、GaN層5と基板1のGeの間の良好な界面品質を示す線が、オメガ−2シータスキャン中で見られた。形成されたGeN層4は非常に薄く、好適には1又は2原子層程度に薄いため、オメガ−2シータスキャンでは検出できない。GaN堆積が行われる前に窒化が行われたチャンバから窒化された基板が取り出された場合、GeN層4はXPSで測定できる。GaNが成長された場合、このGeN層4はより薄くなり、または部分的に消滅する、それにもかかわらず、Ge基板1をGaN層5に接合する少なくとも1原子層のGeNが常に残される。
【0094】
Siの上に中間層を有して形成されたGaNや、GaNと基板の間に中間層を有するGaNオンサファイアと、同等またはより優れた結晶品質が見出された。Si上やサファイア上の数原子層膜厚の厚いGaN層は、オメガスキャンのXRDのFWHMにおいて、300から600秒角の値を示す。比較のために、膜厚数100μmのバルクGaN基板(異なった材料の基板で支えられるものではない)に対して、200から300のXRDのFWHM値が得られた。
【0095】
表1から、GaNとGeの間の理論的な格子不整合、即ち−20.3%が見られる。しかしながら、本発明の具体例にかかる方法で堆積されたGaN層5は良好な品質を示す。これは、GaN層5の堆積前に、基板1のGe表面上のGeN層4が形成されるためである。既に検討したように、GeN層4は、その上にGeN層4が形成されるGa層3の上と同じ面内格子パラメータを取得する。GaNの場合、GaN格子が成長表面の面で4°回転しているのが分かる。これにより、GaN層5は、六方対称のGe表面の上部に適応する。これは、更に、Ge上のGaNを形成するエネルギを最小にするため、良好な結晶品質のGaN層5の成長を容易にする。この回転は、またミスオリエンテーションとも呼ばれる。
【0096】
図13は、Ge基板1のGeに対するGaNの1つの粒子のミスオリエンテーションを示す。Aで表される大きな円はGe原子であり、Bで表されるより小さな円はGa原子である。図13に示すように、GaNは面内で4°以上回転される。この回転により、最小の界面エネルギーで、GaN格子がGa格子に適応するようになる。この回転は、また、反対の方向にも起きる。基板1のGe表面が対称であるため、回転に対して好ましい方向はなく、即ち、エネルギー的に好ましい方向な無い。成長は、異なる核生成サイトから始まり、回転の方向は無作為に選択される。成長が行われた場合、異なる核生成サイトは、互いに接触するまで成長する。
【0097】
これにより、粒に対して2つの異なるオリエンテーションを有する層が得られる。これゆえに、Ge格子に対するGaN格子の回転の発生は、打ち消される。即ち、2つの回転した相が得られ、1つの相は時計回りに回転し、他の相は反時計回りに回転する。一つの相が得られた場合、より良い結晶品質が得られる。カットオフGe(111)基板を用いることにより、2つの相の形成は抑制され、1つの相のGaNが得られる(後述)。
【0098】
本発明の具体例にかかる方法の長所は、基板1とGaN層5との間に、中間層の追加の成長が必要でないことであり、これにより、処理時間とコストが削減できる。
【0099】
更に、本発明にかかる方法の窒化工程は、GaN層5の堆積が行われた堆積チャンバとで行われても良い。更に、窒素ガス流提供手段は、GaN層5の堆積中にも使用されるように、すでに存在しているため、追加の提供は要しない。
【0100】
Ge上部表面3を有する基板1の上にGaNを堆積できることの他の長所は、Geがnドープまたはpドープできる半導体であることに起因する。このため、少なくともGe上部表面3を含む基板1の上にGaNを成長または堆積する可能性は、それらの基板を、例えば縦型半導体装置のように、半導体装置のバックコンタクトとして使用することを可能とする。装置が形成された場合、オーミック接合をGe上に形成しなければならない。
【0101】
Geに対するオーミック接合は、構造の上部から形成され、即ちGaN層5が堆積された構造の側、および/または構造の裏側に形成される。構造の上部からコンタクトが形成される場合、Ge上に堆積されたGaN層5は、例えばエッチングで除去されるべきである。例えば、n−GaN層5とp−Ge基板1との間に形成された接合は、ダイオード構造として使用でき、またはヘテロ接合バイポーラトランジスタとして使用できる(後述)。第1に、Ge基板1は、この基板1の上に形成されたバックコンタクトデバイスに使用できる。
【0102】
導電性サポート2が、GaN成長のテンプレートとして上部のGe層3を用いる場合、例えばドープされたGaAs、ドープされたSiのようなこの導電性サポート2は、装置の一部となるGe上部層3と接触し、またはサポート2は、上部のデバイスと接続するのに用いられるGe上部層3に接触するために使用できる。第2に、GaNとGeの間のヘテロ接合を使用するヘテロ接合デバイスが形成できる。このヘテロ接合デバイスは、裏面または上面から接続できる。
【0103】
まとめると、本発明の具体例にかかる方法を用いた、六方対称または六重対称である少なくともGe上部表面3を含む基板1上への、GaN層5の成長は特徴的である。なぜならば、GeとAlGaN、InGaN、およびGa含有量の高いInAlGaNとの間と同様に、GaNとGeの間の熱的不整合が小さいからである。更に、Geに対する全てのIII族−窒化物の熱的不整合はマイナスである。これは熱的不整合から生じる応力は圧縮であり、III族−窒化物層のクラックにつながらないことを意味する。
【0104】
これは、応力が引っ張りである場合と反対である。なぜなら、引っ張り応力は、例えばGaN層5において、III族−窒化物層のクラックにつながるからである。圧縮応力は、しかしながら、基板のクラックを発生させるかもしれないが、しかし、Ge基板の強度がこれを防止している。しかしながら、GaN、高いGa含有量のInGaNまたはAlGaNの場合、熱的不整合は小さく、圧縮応力も小さくなり、基板のクラックは発生しない。
【0105】
Ge基板1を用いた場合の他の特徴は、Geの均一加熱の可能性と、比較的安いGeの価格である。本発明の具体例にかかる方法は、より特徴的である。なぜなら、例えばGaNのようなIII族−窒化物と基板1のGeとの間に中間層を堆積する必要が無いためである。更に、本発明の具体例にかかる方法は、n−GaNとp−Geとの間のヘテロ接合を使用するデバイスの作製を可能とし、デバイスのバックコンタクトの形成を可能とする。
【0106】
既に述べたように、基板1の上の薄いGeN層4の存在と特性は、基板1の上に堆積または成長したGaN層5が良好な結晶品質を有することを確実にする。薄いGeN層4は、電気誘導を有しない。GeN層4は非常に薄く、好適には1または2原子層膜厚であり、一方で窒素は基板1のGeに接続し、他方でGaN層5のGaに接続する、GeとGaNの間の遷移と見なされる。
【0107】
本発明の具体例にかかる方法で得られたGaN層5は、そのような良い結晶品質を有するため、例えば他の窒化物材料(例えば、III−窒化物)、酸化物、金属、または絶縁体(例えば、酸化物、窒化物、有機物絶縁体等)のような、少なくとも1つの他の材料からなる追加の層が、GaN層5の上に成長または堆積しても良い。また、アモルファスGeのようなアモルファス半導体も、GaN層5の上に成長させることができる。本発明の具体例では、1の追加の層は、例えばGaN層5のようなIII族−窒化物層の上に堆積される。
【0108】
しかしながら、本発明の他の具体例では、例えば異なる機能を有する複数の追加の層が、例えばGaN層5のようなIII族−窒化物層の上に堆積される。これにより、異なったデバイスの作製が可能となる。好適には、GaN層5の上に成長する他の材料は、例えばAlN、InN、AlGaN、InGaN、InAlGaN、低Al濃度(50%より低い)のAlGaN、高In濃度(25%より高い)のInGaNのようなIII族−窒化物である。
【0109】
本発明の具体例では、InGaN、AlGaN、およびあらゆる含有量のGaおよびInまたはAlのInAlGaNが、少なくとも1つの追加の層を形成するために使用される。50%より高いAl含有量のAlGaNの場合、品質は低くなる。この理由は、より多くのAlが合金中に存在すると、好適な成長温度やより高くなるためである。成長温度は、MBE成長プロセスでは約940℃に制限される。
【0110】
少なくとも1つの追加の層がGaN層5の上に形成された場合、GaN層5は非常に薄くなり、例えば0.5nmと20nmの間、0.5nmと10nmの間、0.5nmと2nmの間であり、または1原子層(monolayer)と5原子層の間に対応する厚みを有しても良い。本発明の他の具体例では、より厚いGaN層5を堆積させても良い。
【0111】
応用に使用するために、および/または半導体装置を作製するために、本発明の具体例にかかる方法で得られたGaN層5がパターニングされる。GaN層5の上に堆積される他の材料は、もし必要であれば、パターニングされる。パターニングは、例えばリソグラフィのような、当業者に知られた適当な技術を用いて行われる。
【0112】
既に述べたように、p−GaNは成長が困難であるため、GaNのp−n接合を形成することは非常に困難である。GaNとGeの間のp−nヘテロ接合の使用により、例えば、光ダイオード、pn接合ダイオード、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ、太陽電池、LED、および他のデバイスに使用される構造が形成できる。
【0113】
図2には、p−Ge基板7上のn−GaN層6からなるpn接合ダイオードが示される。n−GaN層6とp−Ge基板7の一部が、図2に示すようにエッチングされる。pn接合は、n−GaN層6とp−Ge基板7との間の界面に形成される。オーミックコンタクト9は、n−GaN層6とp−Ge基板7に形成される。コンタクトのための他のまたは追加の可能性は、p−Ge基板7に裏面のオーミックコンタクト10を形成することによる。
【0114】
n−Ge基板11上に堆積されたn−GaN層6からなるジャンクションダイオードである他の例が、図3に示される。n−nヘテロ接合は、n−GaN層6とn−Ge基板11の間の界面12に形成される。図2に示すジャンクションダイオードと同様に、図3のジャンクションダイオードのコンタクトは、nGe基板11の表面にオーミックコンタクト9を、裏面にオーミックコンタクト10を、形成することにより可能となる。
【0115】
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)についての更なる例が図4に示される。HBTは、n−Ge層11と、n−Ge層11の上に形成されたp−Ge層7とからなる基板13を含む。基板13の上に、n−GaN層6が形成される、n−GaN層6はHBTのエミッタとして働き、p−Ge層7はHBTのベースとして働き、n−Ge層11はHBTのコレクタとして働く。オーミックコンタクト9、10は、デバイスの異なる層を接続するために、HBTデバイスに形成される。n−Ge層11は、オーミックコンタクト10を介して裏面から、および/またはn−GaN層5の一部およびp−Ge層7の一部をエッチング除去し、n−Ge層の表面側にオーミックコンタクト9を形成することにより、コンタクトできる。
【0116】
例えば、GeまたはGaNと接触した他の半導体材料または導電性材料を用いることにより、本発明の具体例にかかる方法を用いて他のHBT構造を形成できる。例えば、n−GaN層6は、n−Si層の上に横たわるp−Ge層7の上に堆積または成長されて、他のタイプのHBT構造が作製されても良い。他の例は、p−Ge層と最終的にn−GaN層(図示せず)がその上にあるnドープGaAs層を有する絶縁性GaAs基板である。他の可能性は、n−GaN層がその上にあるp−Ge層を有するn−GaAs基板である。
【0117】
例えば、他の応用は、Ge太陽電池、Geトランジスタ、または他のデバイスのGaN保護膜である。直接光電気分解(Direct Photo Electrolysis)も現実的であり、本発明の具体例にかかる方法で作製されたGaN/Ge構造またはInGaN/Ge構造の上に、InGaNが形成される。例えば太陽電池への応用は、本発明の具体例にかかる方法で形成された、p−Ge基板上のGaN層の上の(n−)InGaNからなる構造を含み、InGaN/GaNとGeとの間のヘテロ接合が、形成された電子−正孔ペアを分離するのに用いられる。
【0118】
太陽電池への適用の他の例は、本発明の具体例にかかる方法で形成されたp−Ge基板上の(n−)InGaN層を含み、InGaNとGeとの間のヘテロ接合が、形成された電子−正孔ペアを分離するのに用いられる。更に、光ダイオードが、例えばp−Ge基板上にn−GaN層堆積して形成される。LEDは、例えばp−Ge基板上に、GaNバッファ層を有してまたは有さずに、高ドープn−GaNをp−InGaN上に形成し、高ドープn−Ge基板上に、GaNバッファ層を有してまたは有さずにp−InGaNを形成し、p−Ge基板上のp−GaNの上のn−GaNとして形成される。高い意図しないバックグラウンドのキャリア濃度のため、p−InGaNはp−GaNより更に成長が困難である。
【0119】
好ましくは六方対称または六角対称のような、少なくともGe上部層3を含む基板1の上にGaN層5を堆積または成長する可能性は、Geからなるまたはこれを含むデバイスおよびIII−窒化物からなるまたはこれを含むデバイスの集積化を可能とする。
【0120】
これ以降、幾つかの例は、本発明の具体例にかかる方法を示す目的で記載される。それらの例は、いかなる方法においても本発明を限定することを意図しない。
【0121】
例1
第1の例では、Ge(111)基板1の上にGaN層5が成長され、結晶品質が研究された。第1に、Ge(111)基板1が洗浄され、基板1の表面に存在する酸化物および/または有機材料は除去された。洗浄は、化学洗浄で行われた。洗浄後、Ge(111)基板1はMBE装置に入れられ、排気されるとともに、約550℃に加熱された。GaN層5の成長に先立って、基板1のGe表面3が、550℃と750℃の間の窒化温度で、窒素ガス流に晒された。これにより、薄いGeN層4が形成され、GaN層5の結晶成長を可能とする。GeN層4を形成した後、最適な成長条件を決めるために、窒素ガス流の次にGaソース流を、異なった実験に対して550℃と800℃の間の異なった堆積温度で供給し、GaNを堆積させた。
【0122】
本発明の例では、プラズマアシストMBEが使用され、窒素ガス流のための窒素ソースは、窒素プラズマにより形成される。窒素ガス流とGaフラックスは、既に述べたように、好適には、同程度の原子フラックスを有する。堆積中、堆積チャンバは、10−5Torrのオーダーであった。堆積速度は、180から690nm/hのオーダーである。膜厚が1.5nmと450nmの間の異なるGaN層5が堆積された。
【0123】
成長中、異なったGaN層5の表面モフォロジと結晶品質とが、反射高エネルギー電子回折(RHEED)を用いて研究された。GaN層5は、その後、XRDオメガ−2シータスキャンとオメガスキャンを用いて研究された。
【0124】
最初の実験では、約10nmの薄いGaN層5が、550℃の堆積温度で堆積または成長された。この薄いGaN層5の上に、より厚い310nm程度のGaN層が、より高い温度750℃で堆積された。
【0125】
第2の実験では、約35nmの薄いGaN層が、750℃の温度で堆積された。この層の上に、より厚い290nm程度のGaN層が、薄いGaN層の堆積温度より低い異なる温度、例えば約550℃、約620℃、および約690℃で堆積された。約800℃の温度での成長(即ち、薄いGaN層の温度より上)が行われたが、結果の層の結晶品質は、750℃で成長させた試料より良くなかった。
【0126】
これらの実験から、最良の結晶品質を有するGaN層5は、薄い層と、より厚い層の双方が、より高い温度、例えば750℃で堆積された場合に得られると結論づけられる。堆積温度が高いほど、結果の層の結晶品質が得なることが観察された。しかしながら、750℃より高い堆積温度では、堆積された層の結晶品質は実質的に何も改良されない。更に、GaN層5が非常に高い温度で堆積されると、EHEEDは表面が粗くなることを示した。
【0127】
GaN成長が始めると、RHEED回折パターンは、数10秒間で、Ge線からGaN線へのスムースな移行を示した。遷移の間、表面のあれは観察されなかった。RHEED線はスムースなままでありスポットを示さず、滑らかな表面を示す。
【0128】
これは、GaN格子が、Ge結晶の上に良く適応することを示す。これは、薄いGeN層4があるためであり、その膜厚はほんの1原子層から2原子層である。
【0129】
RHEED回折パターンで見られるメインの線の間の距離は、Geが窒化されても変わらない。これは、形成されたGeN層4が、下層の基板のGeと同じ面内の格子パラメータを有することを示す。これは、GaNとGeの間の−20.3%である理論的な格子不整合に基づく予想と矛盾する。この大きな格子不整合から、GaN成長の最初において、RHEED実験中にあれが予想される。
【0130】
RHEED線の間の距離は、GaN成長の初期に急に変化する。GaNとGeの格子の線の間の距離を分析することで、基板1の上に約40nmの薄いGaN層5を成長した場合、面内の格子パラメータが3.20(±0.02)Åが予想される。これは、GaNには応力がかからず、GaN成長は最初から弛緩した状態であることを示す。応力を逃がすために結晶に応力がかかった場合には欠陥が発生するため、これは良い兆候である。
【0131】
表2では、結晶品質に関する結果が、Ge(111)上の38nmの薄いGaN層について示される。
【0132】
【表2】
表2:Ge(111)基板上の38nm膜厚のGaN層の実験結果
【0133】
Ge(111)基板1の上の38nm膜厚のGaN層5の例では、オメガスキャンのXRDのFWHM値が、単に371秒角となり(図5参照)、GaN層5の薄い膜厚を考慮すると非常によい値である。XRDのFHM値が低いほど、GaN層5の結晶品質が良くなり、形成されたGaN/Ge構造は例えば半導体デバイスに使用するのにより適するようになる。これは、より高い電子移動度による、より良好な電気特性のためである。
【0134】
参照番号14で示すように、薄層フリンジ(fringe)がオメガ−2シータスキャンで見られる(図6参照)。そのようなフリンジ14の存在は、キエッシグフリンジ(Kiessig fringe)と呼ばれ、GaN層5(ピーク15で表示)とGe基板1(ピーク16で表示)の間の良好な界面品質を表している。既に検討したように、GeN層4は好適には数原子層よりずっと厚く、GeとGaNの間で自然な遷移を示すが、XRD実験で観察するには薄すぎる。
【0135】
本発明の例により形成されたGaN層5は、GaNと基板の間に少なくとも1つの中間層を有するSi基板上に成長または堆積されたGaNの結晶品質と同等または縒より良好な結晶品質を有する。これは、良好な品質のGaNと基板の間に少なくとも1つの中間層(低温成長させた低品質GaN層)を有するサファイア基板上のGaNで得られる結晶品質と同等である。
【0136】
厚いGaN層、即ち1μmより厚い膜厚のGaN層5に対して、サファイア上のGaNでは、XRDオメガスキャンの平均値300秒角が得られ、Si上のGaNでは、XRDオメガスキャンの平均値600秒角が得られる(前述)。薄い層では、GaNをその上に成長させるための、他の基板はGeと比較できない。例えばこの例の40nm膜厚のGaN層5のような薄い層は、Ge上のGaNについての本発明の具体例にかかる方法で得られた良好な品質では、Si、サファイア、またはSiCの上に成長できない。より厚い層では、サファイアが良好な品質となる。
【0137】
XDRオメガ−2シータスキャン分析(図6)から、面外の格子パラメータ5.1897(±0.0008)Åが、GaNピーク15の位置(角度)を見ると、見出される。この実験値を標準の格子パラメータである5.18524Åと比較すると、この実験で得られたGaN層5は、成長後に小さな圧縮状態にあることがわかる。これは、−87mの半径(radius)が測定されたGeN/Ge構造で行われた曲率測定と一致する。この結果は、GaNとGeの間の−20.3%の理論的な格子不整合に基づく予想と矛盾する。この格子不整合の値からは、非常に広い引っ張り応力が予想される。
【0138】
第1の例で形成された窒化されたGe基板に対して行ったX線光電子分光法(XPS)測定は、Geのピーク(図7A参照)とGeNのピーク(図7B参照)を示す。第2の、Geピークの直ぐ後の図7Aの小さなピークは、Ge−窒化物結合による。図7Bは、この第2の、小さなピークが窒化物結合によることを証明する。なぜならば、この結合エネルギーは、(WN、BN、およびNaSCNに対して)参照の窒化物の結合エネルギーと一致するからであり、図7Bに示すように、これらは397eVと398eVとの間にある。
【0139】
図7Aは、Ge基板(Ge−Ge結合)に起因する大きなピークを示す。図7A中の小さなピークは、Geと他の元素との結合による。図7Bは、窒素と他の元素との結合に起因するピークを示す。このことは、図7Aの小さなピークはGeとNの結合によることを示す。例えばGeのような、元素の結合のピークは、他の元素と結合した場合に、わずかだけシフトする。Nと結合したGeのピークは、Geと結合したGeのピークに対して、わずかにシフトしている。
【0140】
GeN層の膜厚に対して、ピークの大きさが表れる。小さなピークからは、GeNの膜厚が見積もれる。図7Aのスペクトラムも最も小さなピークがGe3N4に対応する場合、0.7nmの膜厚が見出される。図7Aおよび図7Bに示す測定は、Ge基板1とGaN層5との間にGeN層4の形成を示す。
【0141】
表3は、XPS測定で見出された原子濃度が、窒素ガス流に晒す前後において、Ge基板1の表面に対して表される。晒した後、GeとNの双方が存在し、GeN層4の存在が示される。
【0142】
【表3】
表3:窒素ガス流に晒す前(RefGe)と、晒した後(GeN/Ge)の、Ge基板上で21.88°で測定した原子濃度
【0143】
既に検討したように、RHEED実験は、Ge表面が窒化された場合、表面の再構成を示す。線は同じ部分に残り、これは面内の格子パラメータが同じままであることを示す。XPS実験から、本発明の具体例にかかる方法の窒化工程中に、GeN層4が形成されることがわかる。RHEED実験から、このGeN層4は、面内の格子パラメータを変化させず、それゆえに、GeNは基板1のGe層と同じ面内格子パラメータを取ることがわかる。
【0144】
XPSスペクトルは、Ge格子に対してGaN格子が4°回転していることを示す(図8および図13)。互いに格子を回転させることにより、格子が互いにより整合するようになる(後述)。GaN格子とGe格子の互いに対する回転は、GaNとGeの間の表面および界面エネルギーを最小にするように行われる。
【0145】
GaNの堆積や成長に先んじるGeN層4の形成や、成長表面の面内における4°のGaN格子の回転(これは、TEMとXRDで観測された)は、六方対称のGe表面の上に、予想したよりも良好に適用することを示し、これは先に述べた応力により確認された。この回転は、Ge結晶に対するGaNの回転を表すXPSスペクトルを示す、図8に表される。GaNとGeの間の熱的不整合は小さく(+5.5%)、成長後に試料が冷却された場合、小さな圧縮応力となる。
【0146】
Ge基板1の上の450nm膜厚のGaN層5に対するSIMSの結果(図9参照)は、Ge基板1へのGa原子の限定的な拡散と、GaN層5へのGe原子の限定的な拡散を示す。それらのグラフにおいて、曲線17はGeプロファイルを示し、曲線18はGaプロファイルを示す。
【0147】
実験から、最良の層品質は、約50nmまたはそれ以下の薄層で得られることが分かる、より厚い層に対して、品質は若干低下するが、まだ良好である。これは、GaN層が厚くなると、表面温度が変化するという事実によるであろう。なぜならば、GaNは、Ge基板とは異なって熱を吸収し、また熱伝導性も異なるためである。これにより、成長中、表面温度が変化し、それゆえに最適な必要な成長パラメータも同様に変化する。
【0148】
例2
第2の例では、膜厚が450nmで、本来備わったn型(意図せずにドープされた)のGaN層5が、約20Ω・cmの抵抗を有するp−Ge(111)基板1の上に堆積または成長させた。GaN層5は、760℃の堆積温度でMBEを用いて堆積され、図2に示すものと類似の構造を形成した。この構造では、I−V特性が測定された。それゆえに、針が、GeおよびGaNの上のオーミックコンタクト9、10に下ろされた(図2参照)。IV曲線は図10に示される。整流特性が観察され、これは、Ge基板1とGaN層5との間のp−nヘテロ接合が良好なことを示す。
【0149】
更に、第2の例では、n−Ge基板1とn−GaN層6との間の接合が表された。それゆえに、約200nmの膜厚のGaN層6は、本発明の具体例にかかるn−Ge基板11の上に堆積また成長させられ、図3に示すものと類似の構造が形成された。GaN層6とGe基板11中にメサがエッチングされ、良好に規定された大きさの構造を造る。上部のオーミックコンタクト9は、n−GaN層6の上に形成された。図3に示すように、裏面オーミックコンタクト10は、n−Ge基板11の裏面上に形成された。I−V測定が直径750μmのn−GaN/n−Ge構造の上で行われた。
【0150】
それゆえに、1つの針は、(n−GaN層6の側で)n−GaN/n−Ge構造のオーミックコンタクト9の上に接続され、他の針は、n−GaN/n−Ge構造の裏面オーミックコンタクト10の上に接続された。n−Ge基板11の上の約200nm膜厚のn−GaN層6に対するIV特性が、図11に示される。Ge基板11とGaN層6との間の良好なn−nヘテロ接合を示す整流特性が観察される。
【0151】
この第2の例で形成されたGaN/Ge構造で見られた整流特性は、例えばGe基板とGaN層の間の接合が使用される半導体デバイスの応用において、このような基板の使用を約束する。
【0152】
例3
第3の例では、InN層がGaN中間層を用いてGe上に成長され、言い換えれば、本発明の具体例にかかる方法を用いて得られたGaN/Ge構造の上にInN層が成長させられる。第3の例では、GaN層5は5nmの膜厚を有し、GaN層5の上のInN層は50nmの膜厚を有する。839秒角のオメガ/2シータFWHMと、903秒角のオメガスキャンFWHMが測定された。ロッキングカーブ値は、GeN基板1上のInNに対して以前に報告されたものより大幅に小さく、これは、GaN層5の上に堆積したInN層が良好な結晶品質を有することを意味する。
【0153】
図12において、例3で形成された構造に対する、オメガ/2シータスキャンが示される。オメガ/2シータスキャンは、InとInNが良好な結晶品質を有することを表す(111)Geピーク19、(002)InNピーク20、および(002)GaNピーク21を示す。GeNピークは観察されない。これは、GeN層4は、1原子層または2原子層の膜厚であることが好ましく、2つの材料即ちGeとBaNの間の結合または遷移として考えられ、1原子層または2原子層の膜厚の場合、これは実際の層とは考えられないためである。
【0154】
例4
更なる例では、Ge(111)上へのAlNの成長が研究された。それゆえに、約97nm膜厚のAlN層が、Ge(111)基板1の上も成長された。図14に、そのようなGe(111)上の約97nmのAlNのオメガ/2シータXRDスキャンが示される。この図は、2つのピーク、即ちGeピーク(参照番号22で表示)とAlNピーク(参照番号23で表示)を示す。約248秒角のオメガ/2シータスキャンのFWHMが観察された。オメガスキャンのFWHMは、約1828秒角となった。
【0155】
本発明の具体例にかかる方法を用いてGe上に結晶AlNが成長できることが確認されたにもかかわらず、Ge上に成長したGaNに比較した場合、結晶品質は低い。このAlN層は、AlNの成長に先立つ窒化工程を含む本発明の具体例にかかる方法を用いて、Ge(111)基板1の上に成長された。
【0156】
例5
本発明の具体例にかかる方法を用いて、Ge基板1の上にInNを成長することが可能なことが、更に示された。図15は、Ge基板1上に成長させた約50nmのInN層のオメガ/2シータスキャンであり、InN成長前に約700℃の高温窒化が行われた場合(参照番号24で表示の曲線)と、InN成長前に窒化が行われない場合(参照番号25で表示の曲線)とを示す。InN成長前に高温窒化が行われた場合、オメガ/2シータスキャンは2つのピーク、即ちGeピーク(参照番号26で表示)とInNピーク(参照番号27で表示)を示す。InN成長前に窒化が行われない場合、1つのピーク、即ちGeピーク26のみが観察される。
【0157】
双方の場合、即ち、窒化が行われた場合と窒化が行われなかった場合、InNの成長は約250から350℃で行われた。窒化は結晶InNとなり、一方、窒化工程が無くこれにより基板1とInN層5の間にGeN層4を形成しないプロセスは、アモルファス(非結晶)のInNとなる。これは、オメガ/2シータスキャン中のInNピークの不存在により確認される。
【0158】
例6
図16に、Ge(111)基板1の上に成長させた約280nm膜厚のAlGaN層5オメガ/2シータスキャンが示される。AlGaN層5は、約8%のAl、および約92%のGaを含む。成長温度は約750℃であり、Geの窒化が成長に先立って行われる。この場合、AlGaN層5の品質が、比較される膜厚のGaN層の品質より僅かに低いが、なおも非常に良好である。
【0159】
オメガ/2シータスキャンでは、(参照番号29で表示される)AlGaNピークは、純粋のGaNに比較して少し右に動いた。なぜならば、合金中に追加のAlが存在するためである。この実験から、本発明の具体例にかかる方法を用いて、高品質のAlGaNが成長できることがわかる。
【0160】
例7
最後の実験では、本発明の具体例にかかる方法により、(110)方向に約4.7°のミスオリエンテーションを有するGe(111)基板1の上に、約300nm膜厚のGaN層5が成長される。基板温度と窒素ガス流は、良好な結晶品質が得られるように最適化された。[0002]軸回りのファイスキャン(phi scan)(図17参照)が行われた。参照番号30で表された曲線は、Ge(220)に対するものである。ファイスキャンでは、成長の対称面で格子の回転を見るために、異なった角度の下で試料が見られる。一方、オメガ/2シータスキャンでは、成長方向に(即ち、実質的に表面に垂直に)結晶の繰り返しが見られる。参照番号31で表される曲線はGaN(10−11)である。
【0161】
軸上のGe(111)基板1の2つの代わりに(前述)、(参照番号33で表される)1つのGaNピークのみが観察される。異なるピークは、(前で検討したように)層の面で回転した、異なるGaN相の存在を示す、1つのピークのみが存在するという事実は、1つのGaN相のみが存在することを示す。これは、軸上の基板の2つに代えて1つのGaN相を得るために、オフカットGe(111)基板1が使用できることを示す。
【0162】
なお、堆積温度は、堆積されるIII族−窒化物の種類に依存する。例えば、InNについては、堆積温度は窒化温度より低いことが好ましく、一方、GaNについては、堆積温度は窒化温度と同じで良い。
【0163】
本発明にかかるデバイスについて、好適な具体例、特定の構造や形態が、材料とともに、ここで検討されたが、形態は細部の様々な変化や変形は、本発明の範囲や精神から離れることなく行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)上にIII族−窒化物層(5)を堆積する方法であって、基板(1)は少なくともGe表面(3)を含み、この方法は、
400℃と940℃の間の温度に基板(1)を加熱する工程と、
Ge表面(3)の上にIII族−窒化物層(5)を堆積する工程と、を含む方法。
【請求項2】
基板(1)を加熱するとともに、III族−窒化物層(5)の堆積する前に、基板(1)を窒素ガス流に晒す工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板(1)は、少なくとも六方対称のGe表面(3)を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
III族−窒化物層(5)は、分子線エピタキシ(MBE)で堆積される請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
基板(1)は、400℃と940℃との間の温度で、好適には100℃と940℃との間の温度、好適には550℃と850℃との間の温度で、窒素ガス流に晒される請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
III族−窒化物層(5)をGe表面(3)上に堆積する工程は、550℃と850℃との間の堆積温度で行われる請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
III族−窒化物層(5)の堆積工程は、0.5nmと100μmとの間の膜厚のIII族−窒化物層(5)を堆積することにより行われる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
更に、III族−窒化物層(5)をドーピングする工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
更に、III族−窒化物層(5)をパターニングする工程を含む請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
更に、少なくとも1つの追加の層を、III族−窒化物層(5)の上に堆積する工程を含む請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の層は、III族−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、絶縁体、および半導体材料を含むグループから選択される材料を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaN、およびInAlGaNを含むグループから選択される材料を含む請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
更に、III族−窒化物層(5)の上に堆積した少なくとも1つの追加の層をパターニングする工程を含む請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
半導体プロセスへの、請求項1〜13のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項15】
ジャンクションダイオードの形成のための、請求項1〜13のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項16】
少なくともGe表面(3)を含む基板(1)と、
III族−窒化物層(5)と、
基板(1)とIII族−窒化物層(5)との間のGeN層(4)であって、基板(1)のGe表面(3)と、III族−窒化物層(5)とに直接接触したGeN層(4)と、を含む構造。
【請求項17】
基板(1)は、少なくとも六方対称を有する表面を備えたGe(111)またはオフカットGe(111)である請求項16に記載の構造。
【請求項18】
基板(1)は、Ge上部層(3)を有するサポート(2)を含む請求項16に記載の構造。
【請求項19】
Ge上部層(3)は、六方対称層を有する表面を備えたGe(111)、または六方対称層を有する表面を備えたオフカットGe(111)を含む請求項18に記載の構造。
【請求項20】
Ge(111)層またはオフカットGe(111)層の膜厚は、0.4nmと100μmとの間である請求項19に記載の構造。
【請求項21】
サポート(2)は、Si、SiC、サファイア、GaAs、オフカットSi(111)、およびオフカットGaAs(111)を含むグループから選択される材料を含む請求項18〜20のいずれかに記載の構造。
【請求項22】
III族−窒化物層(5)の膜厚は、0.5nmと100μmとの間である請求項16〜21のいずれかに記載の構造。
【請求項23】
III族−窒化物層(5)がパターニングされる請求項16〜22のいずれかに記載の構造。
【請求項24】
III族−窒化物層(5)のx線回折オメガスキャンの半値全幅は、700秒角より小さい請求項16〜23のいずれかに記載の構造。
【請求項25】
更に、III族−窒化物層(5)の上に、少なくとも1つの追加の層を含む請求項16〜24のいずれかに記載の構造。
【請求項26】
少なくとも1つの追加の層は、III族−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、絶縁体、および半導体材料を含むグループから選択される材料を含む請求項25に記載の構造。
【請求項27】
少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaN、およびInAlGaNを含むグループから選択される材料を含む請求項26に記載の構造。
【請求項28】
少なくとも1つの追加の層がパターニングされる請求項25〜27のいずれかに記載の構造。
【請求項29】
請求項16〜28に記載の少なくとも1つの構造を含む半導体装置。
【請求項30】
半導体装置はジャンクションダイオードである請求項29に記載の半導体装置。
【請求項1】
基板(1)上にIII族−窒化物層(5)を堆積する方法であって、基板(1)は少なくともGe表面(3)を含み、この方法は、
400℃と940℃の間の温度に基板(1)を加熱する工程と、
Ge表面(3)の上にIII族−窒化物層(5)を堆積する工程と、を含む方法。
【請求項2】
基板(1)を加熱するとともに、III族−窒化物層(5)の堆積する前に、基板(1)を窒素ガス流に晒す工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板(1)は、少なくとも六方対称のGe表面(3)を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
III族−窒化物層(5)は、分子線エピタキシ(MBE)で堆積される請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
基板(1)は、400℃と940℃との間の温度で、好適には100℃と940℃との間の温度、好適には550℃と850℃との間の温度で、窒素ガス流に晒される請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
III族−窒化物層(5)をGe表面(3)上に堆積する工程は、550℃と850℃との間の堆積温度で行われる請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
III族−窒化物層(5)の堆積工程は、0.5nmと100μmとの間の膜厚のIII族−窒化物層(5)を堆積することにより行われる請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
更に、III族−窒化物層(5)をドーピングする工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
更に、III族−窒化物層(5)をパターニングする工程を含む請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
更に、少なくとも1つの追加の層を、III族−窒化物層(5)の上に堆積する工程を含む請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の層は、III族−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、絶縁体、および半導体材料を含むグループから選択される材料を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaN、およびInAlGaNを含むグループから選択される材料を含む請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
更に、III族−窒化物層(5)の上に堆積した少なくとも1つの追加の層をパターニングする工程を含む請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
半導体プロセスへの、請求項1〜13のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項15】
ジャンクションダイオードの形成のための、請求項1〜13のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項16】
少なくともGe表面(3)を含む基板(1)と、
III族−窒化物層(5)と、
基板(1)とIII族−窒化物層(5)との間のGeN層(4)であって、基板(1)のGe表面(3)と、III族−窒化物層(5)とに直接接触したGeN層(4)と、を含む構造。
【請求項17】
基板(1)は、少なくとも六方対称を有する表面を備えたGe(111)またはオフカットGe(111)である請求項16に記載の構造。
【請求項18】
基板(1)は、Ge上部層(3)を有するサポート(2)を含む請求項16に記載の構造。
【請求項19】
Ge上部層(3)は、六方対称層を有する表面を備えたGe(111)、または六方対称層を有する表面を備えたオフカットGe(111)を含む請求項18に記載の構造。
【請求項20】
Ge(111)層またはオフカットGe(111)層の膜厚は、0.4nmと100μmとの間である請求項19に記載の構造。
【請求項21】
サポート(2)は、Si、SiC、サファイア、GaAs、オフカットSi(111)、およびオフカットGaAs(111)を含むグループから選択される材料を含む請求項18〜20のいずれかに記載の構造。
【請求項22】
III族−窒化物層(5)の膜厚は、0.5nmと100μmとの間である請求項16〜21のいずれかに記載の構造。
【請求項23】
III族−窒化物層(5)がパターニングされる請求項16〜22のいずれかに記載の構造。
【請求項24】
III族−窒化物層(5)のx線回折オメガスキャンの半値全幅は、700秒角より小さい請求項16〜23のいずれかに記載の構造。
【請求項25】
更に、III族−窒化物層(5)の上に、少なくとも1つの追加の層を含む請求項16〜24のいずれかに記載の構造。
【請求項26】
少なくとも1つの追加の層は、III族−窒化物材料、III−V材料、酸化物、金属、絶縁体、および半導体材料を含むグループから選択される材料を含む請求項25に記載の構造。
【請求項27】
少なくとも1つの追加の層は、AlN、InN、AlGaN、InGaN、およびInAlGaNを含むグループから選択される材料を含む請求項26に記載の構造。
【請求項28】
少なくとも1つの追加の層がパターニングされる請求項25〜27のいずれかに記載の構造。
【請求項29】
請求項16〜28に記載の少なくとも1つの構造を含む半導体装置。
【請求項30】
半導体装置はジャンクションダイオードである請求項29に記載の半導体装置。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−116751(P2012−116751A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−12665(P2012−12665)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2009−521133(P2009−521133)の分割
【原出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(596099561)
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSITEIT BRUSSEL
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12665(P2012−12665)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2009−521133(P2009−521133)の分割
【原出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(596099561)
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSITEIT BRUSSEL
【Fターム(参考)】
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